JP2004179209A - 半導体レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャリアのオーバーフローを抑制し、かつアスペクト比が小さくなる構成の長波長域の半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】本半導体レーザ素子10は、n型GaAs基板12上に、n型下部クラッド層14、光ガイド層16、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層18、光ガイド層20、p型上部クラッド層22、及びp型で不純物濃度の高いGaAsコンタクト層24の積層構造を備える。下部クラッド層は屈折率がn3 のAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14A、屈折率がn2 のGaAs下部中間クラッド層14B、及び屈折率がn1 のAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cで構成されている。上部クラッド層も同じである。
下部中間クラッド層14Bの屈折率:n2
>下部上層クラッド層14Cの屈折率:n3
>下部下層クラッド層14Aの屈折率:n1
の関係が成立している。上部クラッド層も同じである。
【選択図】 図1
【解決手段】本半導体レーザ素子10は、n型GaAs基板12上に、n型下部クラッド層14、光ガイド層16、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層18、光ガイド層20、p型上部クラッド層22、及びp型で不純物濃度の高いGaAsコンタクト層24の積層構造を備える。下部クラッド層は屈折率がn3 のAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14A、屈折率がn2 のGaAs下部中間クラッド層14B、及び屈折率がn1 のAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cで構成されている。上部クラッド層も同じである。
下部中間クラッド層14Bの屈折率:n2
>下部上層クラッド層14Cの屈折率:n3
>下部下層クラッド層14Aの屈折率:n1
の関係が成立している。上部クラッド層も同じである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子に関し、更に詳細には、遠視野像(Far Field Pattern : FFP)のΘ⊥が小さく、従ってアスペクト比(Θ⊥/Θ//)の小さい半導体レーザ素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長波長、例えば波長1.3μmで発光する半導体レーザ素子は、主として、光通信用の光源として利用されており、今後の光通信技術の核となる発光デバイスである。
現在、長波長の半導体レーザ素子の発光層には、様々な材料が用いられているものの、その中で、GaInNAsは、GaAs基板上に作製することが出来る材料系として、近年、注目されている。
GaAsを基板として用いる場合、クラッド層の材料として格子整合系であるAlGaAsを用いたSCH(Separated Confinement Heterostructures)構造を半導体レーザ素子の光閉じ込め構造として適用することが多い。
【0003】
ここで、図6を参照して、AlGaAs系のSCH構造の半導体レーザ素子の一例の基本的構成を説明する。図6は従来のAlGaAs系SCH構造半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。図6中、図1に示す部位と同じものには、同じ符号を付している。
従来のSCH構造半導体レーザ素子80は、図6に示すように、n型GaAs基板12上に、n型Al0.47Ga0.53As下部クラッド層82、Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層16、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層18、Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層20、p型Al0.47Ga0.53As上部クラッド層84、及びp型で不純物濃度の高いGaAsコンタクト層24の積層構造を備えている。
【0004】
積層構造のうちコンタクト層24、及び上部クラッド層84の上層部は、ストライプ状のリッジ86として形成されている。
リッジ86を構成する上部クラッド層84の上層部は、SiO2 膜28で埋め込まれている。
p側電極30がGaAsコンタクト層24及びSiO2 膜28上に形成され、n型電極32がn型GaAs基板12の裏面に形成されている。
【0005】
従来のAlGaAs系半導体レーザ素子では、キャリアのオーバーフローを抑制するために、上述のように、Al組成が0.3以上のAlGaAsがクラッド層として用いられているが、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層とAl組成が0.3以上のAlGaAsクラッド層の屈折率差が大きすぎるためにレーザ特性のひとつであるFFP(Far Field Pattern )であるΘ⊥が40°以上になってしまう(Ricoh Technical Report No.23 ,September,1997,p11参照)。
【0006】
【非特許文献1】
Ricoh Technical Report No.23 ,September,1997,p11
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
仮に、FFPのΘ⊥が40°以上であると、通常、Θ//は10°前後であるので、結果としてアスペクト比(Θ⊥/ Θ//)の値は4以上になってしまう。
アスペクト比が大きくなりすぎると、半導体レーザ素子と光ファイバとを光結合する際の光結合損失が大きくなる。その結果、光ファイバの出力端で所要光強度を得るためには、半導体レーザ素子の発光強度を大きくして、大きな光結合損失を補うことが必要になるので、半導体レーザ素子の素子寿命が低下する可能性があり、光通信を発展させる上で、大きな問題となっていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、キャリアのオーバーフローを抑制し、かつアスペクト比が小さくなる構成の長波長域の半導体レーザ素子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
ところで、活性層とクラッド層との屈折率差が大きいと、光閉じ込め効果が強くなって、Θ⊥が大きくなる。屈折率差が小さいと、Θ⊥は小さくなるものの、活性層とクラッド層との間のΔEgが小さくなって、キャリアがオーバーフローして電流効率が低下し、しきい値電流が上昇する。
本発明の課題は、キャリアのオーバーフローを抑制しつつ、Θ⊥が小さい半導体レーザ素子を実現することである。
【0010】
そこで、本発明者は、キャリアのオーバーフローを抑制する層と、クラッド層の実効的屈折率を低下させてΔnを小さくする層と、クラッド層の膜厚を維持する層の少なくとも3層の化合物半導体層でクラッド層を構成することを着想し、実験により着想の有効性を確認して、本発明を発明するに到った。
【0011】
上記目的を達成するために、上述の知見に基づいて、本発明に係る半導体レーザ素子は、SCH(Separated Confinement Heterostructures)構造の半導体レーザ素子において、
下部クラッド層及び上部クラッド層の少なくともいずれか一方のクラッド層(以下、特定クラッド層と言う)が、屈折率の相互に異なる少なくとも3層以上の化合物半導体多層膜で形成され、
特定クラッド層の実効的屈折率が、活性層の屈折率より少なくとも0.15小さいことを特徴としている。
【0012】
本発明で、特定クラッド層と活性層との屈折率差を0.15以上と規定しているのは、クラッド層の役割として屈折率差を利用した光の閉じ込め効果と同時に、バンドギャップ差を利用したキャリアの閉じ込め効果を求めているからである。両者の効果を同時に成立させるためには、0.15以上の屈折率差が必要であり、その屈折率差に相当するバンドギャップ差が必要であるからである。
好適には、特定クラッド層が、活性層側から順に、n1 、n2 、及びn3 の屈折率を有する3層の第1、第2、及び第3の化合物半導体層から構成されるとき、屈折率n1 、n2 、n3 が、
n2 >n3 >n1
の関係にある。
第1の化合物半導体層は、小さい屈折率n1 により活性層に対する屈折率差を確保する。屈折率n2 の第2の化合物半導体層は比較的大きな屈折率を有して、Θ⊥を小さくし、かつキャリアのオーバーフローを抑制する。屈折率n3 の第3の化合物半導体層は第1の化合物半導体層と第2の化合物半導体層の中間の特性を有して、クラッド層の所望膜厚を確保する。第2の化合物半導体層は、キャリアのオーバーフローを抑制するために、活性層に近い位置に設けてある。
【0013】
本発明の具体的な例では、特定クラッド層が、III 族元素として少なくともGa、又は少なくともAlとGaとを含み、V族元素として少なくともAsを含む。
更には、屈折率がn2 の第2の化合物半導体層はGaAs層であり、屈折率がn1 の第1の化合物半導体層、及び屈折率がn3 の第3の化合物半導体層は、それぞれ、AlGaAs層である。屈折率がn1 及びn3 の第1及び第3の化合物半導体層を構成するAlGaAs層は、Al組成が相互に異なっていることにより、屈折率を変えている。
【0014】
本発明の変形例では、屈折率がn1 の第1の化合物半導体層は、屈折率の相互に異なる化合物半導体層を積層してなる、実効的屈折率n1 ′の多層膜として構成され、
n2 >n3 >n1 ′
の関係を満たす。
また、屈折率n2 の化合物半導体層は、屈折率の相互に異なる化合物半導体層を積層してなる、実効的屈折率n2 ′の多層膜として構成され、
n2 ′>n3 >n1
の関係を満たす。
【0015】
本発明の好適な実施態様では、活性層が、III 族元素としてGaとInとを、V族元素としてAsとNとを含む。これにより、長波長の面発光半導体レーザ素子を実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示した導電型、膜種、膜厚、成膜方法、その他寸法等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
実施形態例1
本実施形態例は本発明に係る半導体レーザ素子の実施形態の一例である。図1は本実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図、図2(a)は本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図2(b)は図2(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
本実施形態例の半導体レーザ素子10は、図1に示すように、n型GaAs基板12上に、n型下部クラッド層14、膜厚100nmでAlx Ga1−x As(0≦x<1)からなる光ガイド層16、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)からなる活性層18、膜厚100nmでAlx Ga1−x As(0≦x<1)からなる光ガイド層20、p型上部クラッド層22、及びp型で不純物濃度の高いGaAsコンタクト層24の積層構造を備えている。
【0017】
下部クラッド層14は、膜厚が十分に厚い、例えば1.0μm以上の膜厚で屈折率がn3 のAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14A、膜厚が100nmで屈折率がn2 のGaAs下部中間クラッド層14B、及び膜厚が200nmで屈折率がn1 のAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cで構成されている。
上部クラッド層22は、膜厚が200nmで屈折率がn1 のAl0.47Ga0.53As上部下層クラッド層22D、膜厚が100nmで屈折率がn2 のGaAs上部中間クラッド層22E、及び膜厚が十分に厚い、例えば1.0μm以上の膜厚で屈折率がn3 のAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22Fで構成されている。
【0018】
積層構造のうち、コンタクト層24、並びに上部クラッド層22のAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22F及びGaAs上部中間クラッド層22Eは、ストライプ状のリッジ26として形成されている。
リッジ26を構成するAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22F及びGaAs上部中間クラッド層22Eは、SiO2 膜28で埋め込まれている。
p側電極30がGaAsコンタクト層24及びSiO2 膜28上に形成され、n型電極32がn型GaAs基板12の裏面に形成されている。
【0019】
本実施形態例では、下部クラッド層14を構成するAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14A、GaAs下部中間クラッド層14B、及びAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14CのAl組成を、それぞれ、0.30、0.0、及び0.47と変えることにより、
下部中間クラッド層14Bの屈折率:n2
>下部上層クラッド層14Cの屈折率:n3
>下部下層クラッド層14Aの屈折率:n1
の関係を成立させている。
本実施形態例では、活性層18の屈折率と下部クラッド層14の実効的屈折率との屈折率差、及び活性層18の屈折率と上部クラッド層22の実効的屈折率との屈折率差は、両者とも0.29程度である。
【0020】
GaAs下部中間クラッド層14Bは、GaAsで形成され、Alを含まないので、屈折率が大きく、下部クラッド層14の実効的屈折率を大きくして、活性層18との屈折率差Δnを小さくしている。また、GaAs下部中間クラッド層14Bは、バンドギャップ・エネルギーEgが大きいので、キャリアのオーバーフローを抑制するストッパ層の機能を果たしている。GaAs下部中間クラッド層14Bは、キャリアのオーバーフローを抑制するために、活性層18に近い位置に設けてある。
Al0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cは、Al組成が0.47と大きく、従って屈折率が小さく、下部クラッド層14の活性層18に対する屈折率差を確保している。
また、Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14Aは、GaAs下部中間クラッド層14BとAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cとの中間の特性を有し、下部クラッド層14の所要膜厚を確保する機能を果たしている。
【0021】
上部クラッド層22を構成するAl0.47Ga0.53As上部下層クラッド層22F、GaAs上部中間クラッド層22E、及びAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22Dも、それぞれ、上述した下部クラッド層14を構成するAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14C、GaAs下部中間クラッド層14B、及びAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14Aと同様の構成であって、同様の機能を有する。
【0022】
実施形態例1の半導体レーザ素子10のΘ⊥を測定したところ、図3の黒点(1)に示すように、約32°であった。一方、下部クラッド層及び上部クラッド層の全層をAl0.47Ga0.53Asで形成した図6に示す従来のAlGaAs系半導体レーザ素子80のΘ⊥は、図3の黒点(2)に示すように、約47°であって、実施形態例1の半導体レーザ素子10のΘ⊥に比べて、著しく高かった。
本実施形態例では、以上のように、下部クラッド層14及び上部クラッド層22を構成することにより、Θ⊥を小さくして、アスペクト比(Θ⊥/Θ//)を小さくすることができる。
【0023】
実施形態例2
本実施形態例は本発明に係る半導体レーザ素子の実施形態の別の例であって、図4(a)は本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図4(b)は図4(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。図4中、図1と同じ部位には同じ符号を付している。
本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造40は、図4に示すように、下部クラッド層42及び上部クラッド層44の構成が異なることを除いて、実施形態例1の半導体レーザ素子10と同じ積層構造を備え、同じリッジ構造を備えている。
【0024】
本実施形態例では、下部クラッド層42は、実施形態例1と同じAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層42A及びGaAs下部中間クラッド層42Bを有する。また、下部クラッド層42は、下部上層クラッド層42CとしてAl0.30Ga0.70Asからなる下部上層第1クラッド層46と、下部上層第1クラッド層46上に積層されたAl0.47Ga0.53Asからなる下部上層第2クラッド層48とからなる多層膜を有する。
尚、下部上層クラッド層42Cは、実施形態例1のAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cとほぼ同じ実効的屈折率を有するように、Al0.30Ga0.70As下部上層第1クラッド層46及びAl0.47Ga0.53As下部上層第2クラッド層48の膜厚が設定されている。
【0025】
また、上部クラッド層44は、上部下層クラッド層44Dとして、Al0.47Ga0.53Asからなる上部下層第1クラッド層50と、Al0.30Ga0.70Asからなる上部下層第2クラッド層52とからなる多層膜を有する。また、上部クラッド層44は、上部下層クラッド層44D上に、実施形態例1と同じGaAs上部中間クラッド層44E、及びAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層44Fを有する。
尚、下層クラッド層44Dは、実施形態例1の下層クラッド層14Dとほぼ同じ実効的屈折率を有するように、Al0.47Ga0.53As上部下層第1クラッド層50及びAl0.30Ga0.70As上部下層第2クラッド層52の膜厚が設定されている。
【0026】
実施形態例2の半導体レーザ素子40のΘ⊥を測定したところ、図3の黒点(3)に示すように、約33°であった。
本実施形態例では、以上のように、下部クラッド層42及び上部クラッド層44を構成することにより、Θ⊥を小さくして、アスペクト比(Θ⊥/Θ//)を小さくすることができる。
【0027】
実施形態例3
本実施形態例は本発明に係る半導体レーザ素子の実施形態の更に別の例であって、図5(a)は本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図5(b)は図5(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。図5中、図1と同じ部位には同じ符号を付している。
本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造60は、図5に示すように、下部クラッド層62及び上部クラッド層64の構成が異なることを除いて、実施形態例1の半導体レーザ素子10と同じ積層構造を備え、同じリッジ構造を備えている。
【0028】
本実施形態例では、下部クラッド層62は、実施形態例1と同じAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層62A及びAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層62Cを有する。
そして、下部クラッド層62は、下部中間クラッド層62Bとして、順次、積層された、GaAsからなる下部中間第1クラッド層66、Al0.30Ga0.70Asからなる下部中間第2クラッド層68、及びGaAsからなる下部中間第3クラッド層70の多層膜を有する。
尚、下部中間クラッド層62Bは、実施形態例1のGaAs下部中間クラッド層14Bと同じ実効的屈折率を有するように、GaAs下部中間第1クラッド層66、Al0.30Ga0.70As下部中間第2クラッド層68、及びGaAs下部中間第3クラッド層70の膜厚が設定されている。
【0029】
また、上部クラッド層64は、実施形態例1と同じAl0.47Ga0.53As上部下層クラッド層64D及びAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層64Fを有する。
そして、上部クラッド層64は、上部中間クラッド層64Eとして、順次、積層された、GaAsからなる上部中間第1クラッド層72、Al0.30Ga0.70Asからなる上部中間第2クラッド層74、及びGaAsからなる上部中間第3クラッド層76の多層膜を有する。
尚、上部中間クラッド層64Eは、実施形態例1のGaAs上部中間クラッド層14Eと同じ実効的屈折率を有するように、GaAs上部中間第1クラッド層72、Al0.30Ga0.70As上部中間第2クラッド層74、及びGaAs上部中間第3クラッド層76の膜厚が設定されている。
【0030】
本実施形態例では、以上のように、下部クラッド層52及び上部クラッド層54を構成することにより、Θ⊥を小さくして、アスペクト比(Θ⊥/Θ//)を小さくすることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、下部クラッド層及び上部クラッド層の少なくともいずれか一方のクラッド層(以下、特定クラッド層と言う)を屈折率の相互に異なる少なくとも3層以上の化合物半導体多層膜で構成し、かつ特定クラッド層の実効的屈折率を活性層の屈折率より少なくとも0.15小さく設定することにより、キャリアのオーバーフローを抑制し、かつΘ⊥を低下させて、アスペクト比を低くすることができる。
本発明に係る半導体レーザ素子を適用することにより、半導体レーザ素子と光ファイバとの光結合効率を高めることができ、半導体レーザ素子の光出力を低くすることができるので、光出力増加による半導体レーザ素子の素子寿命の低下を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)は実施形態例1の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図2(b)は図2(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
【図3】実施形態例1及び2の半導体レーザ素子のΘ⊥と従来の半導体レーザ素子のΘ⊥とを比較するグラフである。
【図4】図4(a)は実施形態例2の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図4(b)は図4(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
【図5】図5(a)は実施形態例3の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図5(b)は図5(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
【図6】従来のAlGaAs系SCH構造の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10……実施形態例1の半導体レーザ素子、12……n型GaAs基板、14……n型下部クラッド層、14A……Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層、14B……GaAs下部中間クラッド層、14C……Al0.47Ga0.53As下部上層クラッド層、16……Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層、18……Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層、20……Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層、22……p型上部クラッド層、22D……Al0.47Ga0.53As上部下層クラッド層、22E……GaAs上部中間クラッド層、22F……Al0.30Ga0.70As上部下層クラッド層、24……p型GaAsコンタクト層、26……リッジ、28……SiO2 膜、30……p側電極、32……n側電極、40……実施形態例2の半導体レーザ素子の積層構造、42……下部クラッド層、42A……Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層、42B……GaAs下部中間クラッド層、42C……下部上層クラッド層、44……上部クラッド層、44D……上部下層クラッド層、44E……GaAs上部中間クラッド層、44F……Al0.30Ga0.70As上部上層クラッド層、46……Al0.30Ga0.70As下部上層第1クラッド層、48……Al0.47Ga0.53As下部上層第2クラッド層、50……Al0.47Ga0.53As上部下層第1クラッド層、52……Al0.30Ga0.70As上部下層第2クラッド層、60……実施形態例3の半導体レーザ素子の積層構造、62……下部クラッド層、62A……Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層、62B……下部中間クラッド層、62C……Al0.47Ga0.53As下部上層クラッド層、64……上部クラッド層、64D……Al0.47Ga0.53As上部下層クラッド層、64E……上部中間クラッド層、64F……Al0.30Ga0.70As上部上層クラッド層、66……GaAs下部中間第1クラッド層、68……Al0.30Ga0.70As下部中間第2クラッド層、70……GaAs下部中間第3クラッド層、72……GaAs上部中間第1クラッド層、74……Al0.30Ga0.70As上部中間第2クラッド層、76……GaAs上部中間第3クラッド層、80……従来のSCH構造半導体レーザ素子、82……n型Al0.47Ga0.53As下部クラッド層、84……p型Al0.47Ga0.53As上部クラッド層、86……リッジ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子に関し、更に詳細には、遠視野像(Far Field Pattern : FFP)のΘ⊥が小さく、従ってアスペクト比(Θ⊥/Θ//)の小さい半導体レーザ素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長波長、例えば波長1.3μmで発光する半導体レーザ素子は、主として、光通信用の光源として利用されており、今後の光通信技術の核となる発光デバイスである。
現在、長波長の半導体レーザ素子の発光層には、様々な材料が用いられているものの、その中で、GaInNAsは、GaAs基板上に作製することが出来る材料系として、近年、注目されている。
GaAsを基板として用いる場合、クラッド層の材料として格子整合系であるAlGaAsを用いたSCH(Separated Confinement Heterostructures)構造を半導体レーザ素子の光閉じ込め構造として適用することが多い。
【0003】
ここで、図6を参照して、AlGaAs系のSCH構造の半導体レーザ素子の一例の基本的構成を説明する。図6は従来のAlGaAs系SCH構造半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。図6中、図1に示す部位と同じものには、同じ符号を付している。
従来のSCH構造半導体レーザ素子80は、図6に示すように、n型GaAs基板12上に、n型Al0.47Ga0.53As下部クラッド層82、Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層16、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層18、Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層20、p型Al0.47Ga0.53As上部クラッド層84、及びp型で不純物濃度の高いGaAsコンタクト層24の積層構造を備えている。
【0004】
積層構造のうちコンタクト層24、及び上部クラッド層84の上層部は、ストライプ状のリッジ86として形成されている。
リッジ86を構成する上部クラッド層84の上層部は、SiO2 膜28で埋め込まれている。
p側電極30がGaAsコンタクト層24及びSiO2 膜28上に形成され、n型電極32がn型GaAs基板12の裏面に形成されている。
【0005】
従来のAlGaAs系半導体レーザ素子では、キャリアのオーバーフローを抑制するために、上述のように、Al組成が0.3以上のAlGaAsがクラッド層として用いられているが、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層とAl組成が0.3以上のAlGaAsクラッド層の屈折率差が大きすぎるためにレーザ特性のひとつであるFFP(Far Field Pattern )であるΘ⊥が40°以上になってしまう(Ricoh Technical Report No.23 ,September,1997,p11参照)。
【0006】
【非特許文献1】
Ricoh Technical Report No.23 ,September,1997,p11
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
仮に、FFPのΘ⊥が40°以上であると、通常、Θ//は10°前後であるので、結果としてアスペクト比(Θ⊥/ Θ//)の値は4以上になってしまう。
アスペクト比が大きくなりすぎると、半導体レーザ素子と光ファイバとを光結合する際の光結合損失が大きくなる。その結果、光ファイバの出力端で所要光強度を得るためには、半導体レーザ素子の発光強度を大きくして、大きな光結合損失を補うことが必要になるので、半導体レーザ素子の素子寿命が低下する可能性があり、光通信を発展させる上で、大きな問題となっていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、キャリアのオーバーフローを抑制し、かつアスペクト比が小さくなる構成の長波長域の半導体レーザ素子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
ところで、活性層とクラッド層との屈折率差が大きいと、光閉じ込め効果が強くなって、Θ⊥が大きくなる。屈折率差が小さいと、Θ⊥は小さくなるものの、活性層とクラッド層との間のΔEgが小さくなって、キャリアがオーバーフローして電流効率が低下し、しきい値電流が上昇する。
本発明の課題は、キャリアのオーバーフローを抑制しつつ、Θ⊥が小さい半導体レーザ素子を実現することである。
【0010】
そこで、本発明者は、キャリアのオーバーフローを抑制する層と、クラッド層の実効的屈折率を低下させてΔnを小さくする層と、クラッド層の膜厚を維持する層の少なくとも3層の化合物半導体層でクラッド層を構成することを着想し、実験により着想の有効性を確認して、本発明を発明するに到った。
【0011】
上記目的を達成するために、上述の知見に基づいて、本発明に係る半導体レーザ素子は、SCH(Separated Confinement Heterostructures)構造の半導体レーザ素子において、
下部クラッド層及び上部クラッド層の少なくともいずれか一方のクラッド層(以下、特定クラッド層と言う)が、屈折率の相互に異なる少なくとも3層以上の化合物半導体多層膜で形成され、
特定クラッド層の実効的屈折率が、活性層の屈折率より少なくとも0.15小さいことを特徴としている。
【0012】
本発明で、特定クラッド層と活性層との屈折率差を0.15以上と規定しているのは、クラッド層の役割として屈折率差を利用した光の閉じ込め効果と同時に、バンドギャップ差を利用したキャリアの閉じ込め効果を求めているからである。両者の効果を同時に成立させるためには、0.15以上の屈折率差が必要であり、その屈折率差に相当するバンドギャップ差が必要であるからである。
好適には、特定クラッド層が、活性層側から順に、n1 、n2 、及びn3 の屈折率を有する3層の第1、第2、及び第3の化合物半導体層から構成されるとき、屈折率n1 、n2 、n3 が、
n2 >n3 >n1
の関係にある。
第1の化合物半導体層は、小さい屈折率n1 により活性層に対する屈折率差を確保する。屈折率n2 の第2の化合物半導体層は比較的大きな屈折率を有して、Θ⊥を小さくし、かつキャリアのオーバーフローを抑制する。屈折率n3 の第3の化合物半導体層は第1の化合物半導体層と第2の化合物半導体層の中間の特性を有して、クラッド層の所望膜厚を確保する。第2の化合物半導体層は、キャリアのオーバーフローを抑制するために、活性層に近い位置に設けてある。
【0013】
本発明の具体的な例では、特定クラッド層が、III 族元素として少なくともGa、又は少なくともAlとGaとを含み、V族元素として少なくともAsを含む。
更には、屈折率がn2 の第2の化合物半導体層はGaAs層であり、屈折率がn1 の第1の化合物半導体層、及び屈折率がn3 の第3の化合物半導体層は、それぞれ、AlGaAs層である。屈折率がn1 及びn3 の第1及び第3の化合物半導体層を構成するAlGaAs層は、Al組成が相互に異なっていることにより、屈折率を変えている。
【0014】
本発明の変形例では、屈折率がn1 の第1の化合物半導体層は、屈折率の相互に異なる化合物半導体層を積層してなる、実効的屈折率n1 ′の多層膜として構成され、
n2 >n3 >n1 ′
の関係を満たす。
また、屈折率n2 の化合物半導体層は、屈折率の相互に異なる化合物半導体層を積層してなる、実効的屈折率n2 ′の多層膜として構成され、
n2 ′>n3 >n1
の関係を満たす。
【0015】
本発明の好適な実施態様では、活性層が、III 族元素としてGaとInとを、V族元素としてAsとNとを含む。これにより、長波長の面発光半導体レーザ素子を実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示した導電型、膜種、膜厚、成膜方法、その他寸法等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
実施形態例1
本実施形態例は本発明に係る半導体レーザ素子の実施形態の一例である。図1は本実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図、図2(a)は本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図2(b)は図2(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
本実施形態例の半導体レーザ素子10は、図1に示すように、n型GaAs基板12上に、n型下部クラッド層14、膜厚100nmでAlx Ga1−x As(0≦x<1)からなる光ガイド層16、Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)からなる活性層18、膜厚100nmでAlx Ga1−x As(0≦x<1)からなる光ガイド層20、p型上部クラッド層22、及びp型で不純物濃度の高いGaAsコンタクト層24の積層構造を備えている。
【0017】
下部クラッド層14は、膜厚が十分に厚い、例えば1.0μm以上の膜厚で屈折率がn3 のAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14A、膜厚が100nmで屈折率がn2 のGaAs下部中間クラッド層14B、及び膜厚が200nmで屈折率がn1 のAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cで構成されている。
上部クラッド層22は、膜厚が200nmで屈折率がn1 のAl0.47Ga0.53As上部下層クラッド層22D、膜厚が100nmで屈折率がn2 のGaAs上部中間クラッド層22E、及び膜厚が十分に厚い、例えば1.0μm以上の膜厚で屈折率がn3 のAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22Fで構成されている。
【0018】
積層構造のうち、コンタクト層24、並びに上部クラッド層22のAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22F及びGaAs上部中間クラッド層22Eは、ストライプ状のリッジ26として形成されている。
リッジ26を構成するAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22F及びGaAs上部中間クラッド層22Eは、SiO2 膜28で埋め込まれている。
p側電極30がGaAsコンタクト層24及びSiO2 膜28上に形成され、n型電極32がn型GaAs基板12の裏面に形成されている。
【0019】
本実施形態例では、下部クラッド層14を構成するAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14A、GaAs下部中間クラッド層14B、及びAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14CのAl組成を、それぞれ、0.30、0.0、及び0.47と変えることにより、
下部中間クラッド層14Bの屈折率:n2
>下部上層クラッド層14Cの屈折率:n3
>下部下層クラッド層14Aの屈折率:n1
の関係を成立させている。
本実施形態例では、活性層18の屈折率と下部クラッド層14の実効的屈折率との屈折率差、及び活性層18の屈折率と上部クラッド層22の実効的屈折率との屈折率差は、両者とも0.29程度である。
【0020】
GaAs下部中間クラッド層14Bは、GaAsで形成され、Alを含まないので、屈折率が大きく、下部クラッド層14の実効的屈折率を大きくして、活性層18との屈折率差Δnを小さくしている。また、GaAs下部中間クラッド層14Bは、バンドギャップ・エネルギーEgが大きいので、キャリアのオーバーフローを抑制するストッパ層の機能を果たしている。GaAs下部中間クラッド層14Bは、キャリアのオーバーフローを抑制するために、活性層18に近い位置に設けてある。
Al0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cは、Al組成が0.47と大きく、従って屈折率が小さく、下部クラッド層14の活性層18に対する屈折率差を確保している。
また、Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14Aは、GaAs下部中間クラッド層14BとAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cとの中間の特性を有し、下部クラッド層14の所要膜厚を確保する機能を果たしている。
【0021】
上部クラッド層22を構成するAl0.47Ga0.53As上部下層クラッド層22F、GaAs上部中間クラッド層22E、及びAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層22Dも、それぞれ、上述した下部クラッド層14を構成するAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14C、GaAs下部中間クラッド層14B、及びAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層14Aと同様の構成であって、同様の機能を有する。
【0022】
実施形態例1の半導体レーザ素子10のΘ⊥を測定したところ、図3の黒点(1)に示すように、約32°であった。一方、下部クラッド層及び上部クラッド層の全層をAl0.47Ga0.53Asで形成した図6に示す従来のAlGaAs系半導体レーザ素子80のΘ⊥は、図3の黒点(2)に示すように、約47°であって、実施形態例1の半導体レーザ素子10のΘ⊥に比べて、著しく高かった。
本実施形態例では、以上のように、下部クラッド層14及び上部クラッド層22を構成することにより、Θ⊥を小さくして、アスペクト比(Θ⊥/Θ//)を小さくすることができる。
【0023】
実施形態例2
本実施形態例は本発明に係る半導体レーザ素子の実施形態の別の例であって、図4(a)は本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図4(b)は図4(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。図4中、図1と同じ部位には同じ符号を付している。
本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造40は、図4に示すように、下部クラッド層42及び上部クラッド層44の構成が異なることを除いて、実施形態例1の半導体レーザ素子10と同じ積層構造を備え、同じリッジ構造を備えている。
【0024】
本実施形態例では、下部クラッド層42は、実施形態例1と同じAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層42A及びGaAs下部中間クラッド層42Bを有する。また、下部クラッド層42は、下部上層クラッド層42CとしてAl0.30Ga0.70Asからなる下部上層第1クラッド層46と、下部上層第1クラッド層46上に積層されたAl0.47Ga0.53Asからなる下部上層第2クラッド層48とからなる多層膜を有する。
尚、下部上層クラッド層42Cは、実施形態例1のAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層14Cとほぼ同じ実効的屈折率を有するように、Al0.30Ga0.70As下部上層第1クラッド層46及びAl0.47Ga0.53As下部上層第2クラッド層48の膜厚が設定されている。
【0025】
また、上部クラッド層44は、上部下層クラッド層44Dとして、Al0.47Ga0.53Asからなる上部下層第1クラッド層50と、Al0.30Ga0.70Asからなる上部下層第2クラッド層52とからなる多層膜を有する。また、上部クラッド層44は、上部下層クラッド層44D上に、実施形態例1と同じGaAs上部中間クラッド層44E、及びAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層44Fを有する。
尚、下層クラッド層44Dは、実施形態例1の下層クラッド層14Dとほぼ同じ実効的屈折率を有するように、Al0.47Ga0.53As上部下層第1クラッド層50及びAl0.30Ga0.70As上部下層第2クラッド層52の膜厚が設定されている。
【0026】
実施形態例2の半導体レーザ素子40のΘ⊥を測定したところ、図3の黒点(3)に示すように、約33°であった。
本実施形態例では、以上のように、下部クラッド層42及び上部クラッド層44を構成することにより、Θ⊥を小さくして、アスペクト比(Θ⊥/Θ//)を小さくすることができる。
【0027】
実施形態例3
本実施形態例は本発明に係る半導体レーザ素子の実施形態の更に別の例であって、図5(a)は本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図5(b)は図5(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。図5中、図1と同じ部位には同じ符号を付している。
本実施形態例の半導体レーザ素子の積層構造60は、図5に示すように、下部クラッド層62及び上部クラッド層64の構成が異なることを除いて、実施形態例1の半導体レーザ素子10と同じ積層構造を備え、同じリッジ構造を備えている。
【0028】
本実施形態例では、下部クラッド層62は、実施形態例1と同じAl0.30Ga0.70As下部下層クラッド層62A及びAl0.47Ga0.53As下部上層クラッド層62Cを有する。
そして、下部クラッド層62は、下部中間クラッド層62Bとして、順次、積層された、GaAsからなる下部中間第1クラッド層66、Al0.30Ga0.70Asからなる下部中間第2クラッド層68、及びGaAsからなる下部中間第3クラッド層70の多層膜を有する。
尚、下部中間クラッド層62Bは、実施形態例1のGaAs下部中間クラッド層14Bと同じ実効的屈折率を有するように、GaAs下部中間第1クラッド層66、Al0.30Ga0.70As下部中間第2クラッド層68、及びGaAs下部中間第3クラッド層70の膜厚が設定されている。
【0029】
また、上部クラッド層64は、実施形態例1と同じAl0.47Ga0.53As上部下層クラッド層64D及びAl0.30Ga0.70As上部上層クラッド層64Fを有する。
そして、上部クラッド層64は、上部中間クラッド層64Eとして、順次、積層された、GaAsからなる上部中間第1クラッド層72、Al0.30Ga0.70Asからなる上部中間第2クラッド層74、及びGaAsからなる上部中間第3クラッド層76の多層膜を有する。
尚、上部中間クラッド層64Eは、実施形態例1のGaAs上部中間クラッド層14Eと同じ実効的屈折率を有するように、GaAs上部中間第1クラッド層72、Al0.30Ga0.70As上部中間第2クラッド層74、及びGaAs上部中間第3クラッド層76の膜厚が設定されている。
【0030】
本実施形態例では、以上のように、下部クラッド層52及び上部クラッド層54を構成することにより、Θ⊥を小さくして、アスペクト比(Θ⊥/Θ//)を小さくすることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、下部クラッド層及び上部クラッド層の少なくともいずれか一方のクラッド層(以下、特定クラッド層と言う)を屈折率の相互に異なる少なくとも3層以上の化合物半導体多層膜で構成し、かつ特定クラッド層の実効的屈折率を活性層の屈折率より少なくとも0.15小さく設定することにより、キャリアのオーバーフローを抑制し、かつΘ⊥を低下させて、アスペクト比を低くすることができる。
本発明に係る半導体レーザ素子を適用することにより、半導体レーザ素子と光ファイバとの光結合効率を高めることができ、半導体レーザ素子の光出力を低くすることができるので、光出力増加による半導体レーザ素子の素子寿命の低下を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)は実施形態例1の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図2(b)は図2(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
【図3】実施形態例1及び2の半導体レーザ素子のΘ⊥と従来の半導体レーザ素子のΘ⊥とを比較するグラフである。
【図4】図4(a)は実施形態例2の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図4(b)は図4(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
【図5】図5(a)は実施形態例3の半導体レーザ素子の積層構造を示す層構造図、及び図5(b)は図5(a)の積層構造を構成する各化合物半導体層の屈折率の大小を示す図である。
【図6】従来のAlGaAs系SCH構造の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10……実施形態例1の半導体レーザ素子、12……n型GaAs基板、14……n型下部クラッド層、14A……Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層、14B……GaAs下部中間クラッド層、14C……Al0.47Ga0.53As下部上層クラッド層、16……Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層、18……Ga1−y Iny Nz As1−z (0<y≦1、0<z≦1)活性層、20……Alx Ga1−x As(0≦x<1)光ガイド層、22……p型上部クラッド層、22D……Al0.47Ga0.53As上部下層クラッド層、22E……GaAs上部中間クラッド層、22F……Al0.30Ga0.70As上部下層クラッド層、24……p型GaAsコンタクト層、26……リッジ、28……SiO2 膜、30……p側電極、32……n側電極、40……実施形態例2の半導体レーザ素子の積層構造、42……下部クラッド層、42A……Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層、42B……GaAs下部中間クラッド層、42C……下部上層クラッド層、44……上部クラッド層、44D……上部下層クラッド層、44E……GaAs上部中間クラッド層、44F……Al0.30Ga0.70As上部上層クラッド層、46……Al0.30Ga0.70As下部上層第1クラッド層、48……Al0.47Ga0.53As下部上層第2クラッド層、50……Al0.47Ga0.53As上部下層第1クラッド層、52……Al0.30Ga0.70As上部下層第2クラッド層、60……実施形態例3の半導体レーザ素子の積層構造、62……下部クラッド層、62A……Al0.30Ga0.70As下部下層クラッド層、62B……下部中間クラッド層、62C……Al0.47Ga0.53As下部上層クラッド層、64……上部クラッド層、64D……Al0.47Ga0.53As上部下層クラッド層、64E……上部中間クラッド層、64F……Al0.30Ga0.70As上部上層クラッド層、66……GaAs下部中間第1クラッド層、68……Al0.30Ga0.70As下部中間第2クラッド層、70……GaAs下部中間第3クラッド層、72……GaAs上部中間第1クラッド層、74……Al0.30Ga0.70As上部中間第2クラッド層、76……GaAs上部中間第3クラッド層、80……従来のSCH構造半導体レーザ素子、82……n型Al0.47Ga0.53As下部クラッド層、84……p型Al0.47Ga0.53As上部クラッド層、86……リッジ。
Claims (10)
- SCH(Separated Confinement Heterostructures)構造の半導体レーザ素子において、
下部クラッド層及び上部クラッド層の少なくともいずれか一方のクラッド層(以下、特定クラッド層と言う)が、屈折率の相互に異なる少なくとも3層以上の化合物半導体多層膜で形成され、
特定クラッド層の実効的屈折率が、活性層の屈折率より少なくとも0.15小さいことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 特定クラッド層が、活性層側から順に、n1 、n2 、及びn3 の屈折率を有する3層の第1、第2、及び第3の化合物半導体層から構成されるとき、屈折率n1 、n2 、n3 が、
n2 >n3 >n1
の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子。 - 特定クラッド層が、III 族元素として少なくともGa、又は少なくともAlとGaとを含み、V族元素として少なくともAsを含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ素子。
- 屈折率がn2 の第2の化合物半導体層は、GaAs層であることを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ素子。
- 屈折率がn1 の第1の化合物半導体層、及び屈折率がn3 の第3の化合物半導体層は、それぞれ、AlGaAs層であることを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ素子。
- 屈折率がn1 及びn3 の第1及び第3の化合物半導体層をそれぞれ構成するAlGaAs層は、Al組成が相互に異なっていることを特徴とする請求項5に記載の半導体レーザ素子。
- 屈折率がn1 の第1の化合物半導体層は、屈折率の相互に異なる化合物半導体層を積層してなる、実効的屈折率n1 ′の多層膜として構成され、
n2 >n3 >n1 ′
の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ素子。 - 屈折率n2 の化合物半導体層は、屈折率の相互に異なる化合物半導体層を積層してなる、実効的屈折率n2 ′の多層膜として構成され、
n2 ′>n3 >n1
の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ素子。 - GaAs基板上に形成されていることを特徴とする請求項3から8のうちのいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 活性層が、III 族元素としてGaとInとを、V族元素としてAsとNとを含むことを特徴とする請求項3から9のうちのいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
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