JP2004177236A - 生体物質検出装置およびそれに使用される新規生体物質構造物ならびにその製造および利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】標的生体物質を標識化合物で修飾することなしに、生体物質チップを用いた標的生体物質の検出、定量が行える、生体物質チップの製造法および標的生体物質の検出、定量法を提供すること。
【解決手段】基板に固定化させたプローブ生体物質に対して、あらかじめハイブリダイゼーションにより検出生体物質を結合させた生体物質チップを製造しておき、この生体物質チップ上のプローブ生体物質に対して標的生体物質をハイブリダイゼーションさせるとともに検出生体物質を脱離させ、標的生体物質をハイブリダイゼーションする前後で検出生体物質からの信号の変化量を測定することで検出および定量を行い、標的生体物質を標識することなしに、標的生体物質を検出、定量する。
【選択図】 図1
【解決手段】基板に固定化させたプローブ生体物質に対して、あらかじめハイブリダイゼーションにより検出生体物質を結合させた生体物質チップを製造しておき、この生体物質チップ上のプローブ生体物質に対して標的生体物質をハイブリダイゼーションさせるとともに検出生体物質を脱離させ、標的生体物質をハイブリダイゼーションする前後で検出生体物質からの信号の変化量を測定することで検出および定量を行い、標的生体物質を標識することなしに、標的生体物質を検出、定量する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、効率よく生体物質を検出および定量することができる新規システム、デバイスおよび方法、ならびにそれに使用する生体物質構築物およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップなど)では、固体支持体(例えば、平面状表面もしくは固体球面状表面)に共有結合もしくは静電的相互作用によりプローブ核酸を多種類結合させることにより製造されている。このようなデバイスでは、そのデバイス上のプローブ生体物質(例えば、核酸)と標的生体物質(例えば、核酸)との間の相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)により、標的核酸を検出および定量している。この際、標的生体物質は蛍光物質などの標識化合物で標識しておく必要性があるが、標的核酸は、一般的には細胞から取り出した、遺伝子をコードするDNA、RNAなどであり、これらの蛍光物質等による標識は非常の多くの操作を経て行われている。
【0003】
従来の生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップ)を用いた標的生体物質(例えば、核酸)の検出および定量法は、サンプル(細胞等)から標的生体物質(例えば、遺伝子をコードする核酸)を取りだし、蛍光物質などの標識化合物をその標的生体物質に結合させた後、デバイスまたはデバイスに使用される支持体上のプローブ核酸と、標識化合物を結合した標的生体物質とともにハイブリダイズさせ、プローブ核酸にハイブリダイズした、標識化合物で標識された標的生体物質からの信号を読みとることで検出及び定量を行っている。
【0004】
ここで、標的生体物質の標識を行うためには、例えば、核酸の場合、変性、昇温、遠心、冷却など数十ステップに達する操作を行う必要がある。これらの操作は、非常に複雑かつ熟練を要する操作である。さらに、標識操作は、高価な試薬が必要であることや、多数の器具が必要である結果、多くの時間がかかり、コストも高くなる。また、多数の操作が必要なことから多くの器具を使用する必要があり、これらが原因で、汚染(コンタミ)が発生しやすく、器具などへの標的生体物質の吸着による標的生体物質の減少が生じることや、標的生体物質に完全に標識できないことなどが原因で、定量性に大きな問題が生じる。特に、RNAを標識する場合には、その安定性の低さから標識操作を行う間に分解等が生じることは深刻な問題である。
【0005】
検出する生体物質(例えば、核酸)を標識化合物で標識する工程に多くの操作が必要であり、これが原因で種々の問題が発生する。従って、この工程を省略することが出来れば、標識工程が原因となる種々の問題を回避することができるはずである。
【0006】
標的生体物質(例えば、核酸)を標識化合物で標識していない、未修飾の標的生体物質(例えば、核酸)を用いた核酸の検出法が、水晶発振子微量天秤、表面プラズモン共鳴等を用いた方法で行われているが、基板上に多数の複雑な構造を持った検出用センサーを並べることの困難さや検出感度の点から実用化にまで至っていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−243857号公報
【特許文献2】
特表平3−505157号公報
【特許文献3】
特表平4−505763号公報
【非特許文献1】
S.P.Fodor et al.(1993)Nature 364:555−556
【非特許文献2】
M.Schena (1995)Science 270:467−470
【非特許文献3】
C.A.Mirkin et al.(1996)Nature 382:607−609
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題に鑑み、本発明は、生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップ)を使用する際に生じる、これらの種々の問題点を標的生体物質を直接標識化合物で標識しないことによって解決することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、支持体(例えば、基板)に固定化させたプローブ生体物質(例えば、核酸)に対してあらかじめ検出生体物質(例えば、核酸、これは必要に応じて標識されている)を結合させた生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップ)を製造することにより解決された。ここで、このデバイス上のプローブ生体物質に対して標的生体物質を相互作用(例えば、ハイブリダイズ)させることにより検出生体物質を脱離させ、標的生体物質を相互作用(ハイブリダイゼーション)の前後での検出生体物質からの信号の変化量を測定することで定性および/または定量を行い、標的生体物質を標識することなしに、標的生体物質を検出および定量できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は、A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;およびB)該プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含する生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイスを提供する。このデバイスにおいて、上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複することを特徴とする。
【0011】
本発明では、感度の点およびデバイスの製造のしやすさやの観点から、標識化合物を用いたデバイス(例えば、核酸チップ)の製造を行う方が好ましい。特に、標識化合物として蛍光物質を用いた場合、蛍光物質を用いた標的核酸の検出は長年にわたり研究されており、また、関連する装置も十分に改良がなされていることから、そのような物質を標識として用いることがより好ましい。
【0012】
以上のことを考慮して鋭意検討を重ねた結果、本発明では、標識化合物を標的核酸に結合するのではなく、支持体上に結合したプローブ生体物質の方に検出生体物質を相互作用させるかまたはその検出生体物質に標識化合物を結合するという新たな発想によって、従来の技術で問題とされてきた課題を解決することができた。
【0013】
しかし、支持体上に固定化したプローブ生体物質に対して標識化合物を結合させた後、標的核酸をハイブリダイゼーションしても、標的生体物質がハイブリダイズしたかどうか検出することは困難であることから、標識は検出生体物質の方に行うことが好ましい。また、核酸である場合、プローブ核酸に制限酵素認識部位を導入するか、またはタンパク質である場合、プローブタンパク質に特異的ペプチド配列を導入することにより、標的生体物質とプローブ生体物質をハイブリダイズさせた後に、形成した制限酵素認識部位で二重鎖を制限酵素または特異的ペプチド配列に対する特異的プロテアーゼまたはペプチダーゼで切断する方法も考えられる。この場合、特定の配列を導入することが必要であり、また、高価な制限酵素またはプロテアーゼが必要であることや、一度使用した生体物質デバイスを再利用できない。従って、好ましくは、支持体上に固定化したプローブ生体物質に対して検出生体物質を相互作用(例えば、ハイブリダイズ)させ、標的生体物質をプローブ生体物質に対して相互作用するとともに、検出生体物質をプローブ生体物質から脱離させ、その前後で検出生体物質からの信号を検出、定量し、その信号量の差を用いて標的生体物質の検出、定量を行う。
【0014】
しかしこれらの手法でも、支持体に固定化するプローブ生体物質、そのプローブ生体物質に対して全体もしくは部分的に相互作用する検出生体物質(必要に応じて標識される)を合成する必要があり、固定化するプローブ生体物質の種類に対して2倍の種類の生体物質を合成する必要があることから製造コストは上昇する。そこで、プローブ生体物質、生化学的もしくは化学的に分解(切断)可能な部位を有するリンカー、検出生体物質を結合させた生体物質構築物を一個の構築物として合成し、リンカーをそのリンカーが分解可能な条件下(例えば、核酸分解酵素もしくはアルカリ溶液の存在下など)により分解させることで、一度にプローブ生体物質および検出生体物質(必要に応じて標識される)が相互作用した形で調製することによってより有利に本発明のデバイスを製造することができる。例えば、5’側から検出生体物質として蛍光標識されたDNA、リンカーとしてRNA、プローブ生体物質としてプローブDNAをその順序で配置し(ここで、プローブDNAと標識DNAとは少なくとも一部相補的である)、RNAをアルカリ条件下で分解後、残った標識DNAと支持体(例えば、基板)に固定したプローブDNAをハイブリダイズさせることで、有利なDNAチップを製造することができる。
【0015】
従って、本発明は、以下を提供する。
【0016】
(1) 生体物質構築物であって、
A)目的とする標的に対して相互作用する、プローブ生体物質;
B)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質;および
C)上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である、リンカー、
を包含し、
上記リンカーは、上記プローブ生体物質と上記検出生体物質とを連結し、
上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、生体物質構築物。
【0017】
(2) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸またはその誘導体である、項目1に記載の生体物質構築物。
【0018】
(3) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、ポリペプチドまたはその誘導体である、項目1に記載の生体物質構築物。
【0019】
(4) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAであり、上記リンカーはRNAである、項目1に記載の生体物質構築物。
【0020】
(5) 上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する、項目1に記載の生体物質構築物。
【0021】
(6) さらに標識を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0022】
(7) 上記検出生体物質は、標識を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0023】
(8) 上記検出生体物質は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される標識を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0024】
(9) 上記検出生体物質は、蛍光物質を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0025】
(10) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である、項目1に記載の生体物質構築物。
【0026】
(11) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係に基づく、項目1に記載の生体物質構築物。
【0027】
(12) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、抗原抗体反応に基づく、項目1に記載の生体物質構築物。
【0028】
(13) 項目1に記載の生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイス。
【0029】
(14) 上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、項目13に記載の生体物質検出デバイス。
【0030】
(15) 上記生体物質検出デバイスは、核酸チップである、項目13に記載の生体物質検出デバイス。
【0031】
(16) 上記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、項目13に記載の生体物質検出デバイス。
【0032】
(17) 支持体を含む生体物質検出デバイスであって、
上記支持体には、生体物質構築物が配置され、
上記生体物質構築物は、
A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;および
B)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含し、
上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、
生体物質検出デバイス。
【0033】
(18) 上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0034】
(19) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸またはその誘導体である、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0035】
(20) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、ポリペプチドまたはその誘導体である、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0036】
(21) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAを含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0037】
(22) さらに標識を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0038】
(23) 上記検出生体物質は、標識を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0039】
(24) 上記検出生体物質は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される標識を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0040】
(25) 上記検出生体物質は、蛍光物質を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0041】
(26) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0042】
(27) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係に基づく、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0043】
(28) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、抗原抗体反応に基づく、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0044】
(29) 生体物質検出デバイスを製造する方法であって、
A)項目1に記載の生体物質構築物を支持体に配置する工程;および
B)上記支持体を、上記リンカーが分解可能な条件下に供する工程、
を包含する、方法。
【0045】
(30) 上記生体物質検出デバイスは生体物質チップである、項目29に記載の方法。
【0046】
(31) 上記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、項目29に記載の方法。
【0047】
(32) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAであり、上記リンカーはRNAであり、上記分解可能な条件は、RNA分解酵素またはアルカリによる処理である、項目29に記載の方法。
【0048】
(33) 上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する、項目29に記載の方法。
【0049】
(34) 上記生体構築物質はさらに標識を含み、上記標識は上記分解可能な条件下で分解しないかまたは上記リンカーよりも分解の程度が少ない、項目29に記載の方法。
【0050】
(35) サンプル中の標的生体物質を検出または定量を行う方法であって、
A)生体物質検出デバイスを提供する工程であって、上記生体物質検出デバイスは、
A−1)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;および
A−2)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、
を包含する、生体物質構築物が配置された支持体を含み、
上記検出生体物質と上記標的生体物質とは識別可能であり、
上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、工程;
B)上記サンプルを、上記標的生体物質と上記プローブ生体物質とが複合体を形成する条件下で上記生体物質検出デバイスに曝す工程;ならびに
C)上記標的生体物質と上記プローブ生体物質との複合体の量を測定し、上記複合体の量と、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の合計量との相違から上記標的生体物質の存在または量を同定する工程、
を包含する、方法。
【0051】
(36) 上記検出生体物質は標識を含み、上記複合体の量と上記合計量との相違は上記標識の存在または量の増減から算出される、項目35に記載の方法。
【0052】
(37) 上記検出生体物質と上記標的生体物質とは、異なる生体物質を含む、項目35に記載の方法。
【0053】
(38) 上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、項目35に記載の方法。
【0054】
(39) 上記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、項目35に記載の方法。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0056】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0057】
本明細書において「プローブ」とは、特定の物質、部位、状態などを検出するための分子をいう。従って、「プローブ生体物質」とは、特定の物質、部位、状態などを検出するための生体物質をいう。そのような生体物質は、特定の検出対象と特異的に相互作用することができる限り、どのような物質もよい。本明細書では、特に、プローブ生体物質は、支持体上に、直接または高分子化合物などを介して結合させたものをいう。そのようなプローブ生体物質には、例えば、核酸、ポリペプチド、ポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。生体物質が核酸である場合、プローブ生体物質はプローブ核酸ともいう。
【0058】
本明細書において「リンカー」とは、ある分子と別の分子とを連結するための分子内部分をいう。本明細書においてリンカーは、プローブ生体物質と検出生体物質とを連結する。本発明において用いられるリンカーは、プローブ生体物質および検出生体物質が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である。その結果、そのような分解可能な条件下で、リンカーのみが分解されて、プローブ生体物質と検出生体物質との複合体が形成される。リンカーは、プローブ生体物質または検出生体物質と同じ物質であってもよく(例えば、DNA、ペプチド)、異なる物質(他の生体物質がDNAであり、リンカーがRNAである)であってもよい。リンカーが他の生体物質と同じ物質である場合、そのリンカーは特異的な切断部位(例えば、制限酵素部位、プロテアーゼの切断部位など)を含むことが好ましい。
【0059】
本明細書において「検出」(detection)とは、生体物質に関して用いられる場合、ある検出対象が検知されるとき、その生体物質自体またはその生体物質に付属する標識などにより、その検出対象の検出を可能にするための生体物質をいう。そのような検出生体物質には、例えば、核酸、ポリペプチド、ポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。生体物質が核酸である場合、検出生体物質は検出核酸ともいう。
【0060】
本明細書において「標的」(target)とは、生体物質に関して用いられるとき、検出を行う対象の生体物質をいう。従って、標的核酸というときは、例えば、目的とする細胞などから取りだした所望の核酸分子をいう。標的生体物質は、生体に由来するかまたは生体に関連する物質であって、その検出の対象とする限り、どのような物質であってもよい。そのような標的生体物質には、例えば、核酸、ポリペプチド、ポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0061】
本明細書において「サンプル」は、生体物質を含むかまたは含むと予想されるものであればどのようなものでもよい。したがって、サンプルは、生物の全部または一部から取り出されたものであり得る。
【0062】
本明細書において使用される用語「生体物質」または「生体分子」とは、生体に関連する物質または分子をいう。生体物質は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されない。生体に影響を与え得る分子であれば生体物質の定義に入る。したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された分子も生体への効果を目的としている限り、生体物質の定義に入る。生体物質には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、有機低分子など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。従って、本発明の支持体に結合され得る限り、生体物質には、細胞自体、組織の一部も包含され得る。
【0063】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、生物に由来する場合、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
【0064】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、臓器または器官に由来する場合、どのような臓器または器官由来でもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。植物の場合、そのような器官としては、カルス、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0065】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、組織に由来する場合、どのような組織由来でもよい。本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、構成細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われる。
【0066】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、細胞に由来する場合、どのような細胞由来でもよい。本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。本発明では対象となる細胞は、体細胞であっても胚細胞であってもよい。そのような細胞としては、動物の場合、例えば、胚性幹細胞、体性幹細胞、分化細胞(例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞など)など、植物の場合、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などからのに由来する細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0067】
本明細書において使用される用語「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義に包含されるのはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変である。
【0068】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよく、誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログも含む。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。したがって、「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。そのようなアミノ酸誘導体またはアミノ酸アナログを含むタンパク質またはポリペプチドなどは、特に、本明細書においてタンパク質またはポリペプチドの誘導体またはアナログということがある。
【0069】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0070】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチドのような、当該分野において公知のオリゴヌクレオチドのアナログおよび誘導体をも含む。従って、この用語には、DNA、RNA、それらの誘導体、例えば、リン酸結合部位を修飾したホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミデートの他、2’−O−メチル型RNA等、糖部分を修飾した誘導体、塩基部分を修飾した誘導体、さらに、核酸とは大きく異なった化学構造でも、例えば、PNA(ペプチド型核酸)等の様に核酸とハイブリダイゼーションが行えるものも含まれる。オリゴヌクレオチドには、cDNAなども含まれるがそれらに限定されない。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。ヌクレオチドとしては、DNA、RNAなどが含まれるがそれらに限定されない。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド型核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。そのような誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む核酸を、特に、本明細書において核酸の誘導体またはアナログということがある。
【0071】
用語「ポリサッカリド」、「多糖」、「オリゴサッカリド」、「糖」および「炭水化物」は、本明細書において互換的に使用され、少なくとも1つの水酸基および少なくとも1つのアルデヒド基またはケトン基を含む、ポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトンをいう。代表的に、ポリサッカリドとしては、Cn(H2O)mで表わされ、多価アルコールのアルデヒド,ケトン,酸、多価アルコール自体、それらの誘導体および置換体、ならびにそれらのアセタール型ポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。「単糖」または「モノサッカリド」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式CnH2nOnで表されるものをいう。ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9および10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース,後者をケトースという。ポリサッカリドには、糖以外の物質(例えば、ペプチド)などと複合した複合糖質もまた含まれ得る。多糖の生物学的機能としては生体エネルギーの貯蔵(例えば澱粉、グリコゲン、イヌリンなど)、構造支持(例えば、セルロース、キチン、グリコサミノグリカンなど)が挙げられる。しかし,細胞膜や細胞壁の多糖成分は細胞分裂の過程に直接関与したり、細胞と細胞との間、細胞とウイルスとの間、細胞と抗体との間などの相互認識、生体防御機構に関わることも多く、生体におけるその意義は大きい。
【0072】
本明細書において「脂質」とは、体を構成する物質のうち水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい物質群をいい、多種類の有機化合物が含まれる。一般に長鎖脂肪酸とその誘導体または類似体を脂質と呼ぶことが多いが、広義にはステロイド、カロテノイド、テルペノイド、イソプレノイド、脂溶性ビタミンなどの生体内にある水不溶で有機溶媒に易溶の有機化合物群を脂質と総称する。脂質としては、単純脂質(中性脂質)、複合脂質、誘導脂質などが挙げられる。単純脂質は、肪酸と各種アルコールとのエステルである。複合脂質は、脂肪酸とアルコールのほかにリン酸、糖、硫酸、アミンなど極性基をもつ化合物で、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、C−P結合をもつ脂質、硫脂質などが挙げられるがそれらに限定されない。脂質は、エネルギーの貯蔵として意味を有するほかに、情報伝達物質として働くことが知られており、その機能を調査することは意義深い。
【0073】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはポリサッカリド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはポリサッカリドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリサッカリドの場合、例えば、その長さの下限としては、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のサッカリドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0074】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0075】
本明細書では塩基配列およびアミノ酸配列の同一性、類似性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0076】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。
【0077】
「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、抑制を目的とする遺伝子のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。核酸配列の相同性は、たとえばAltschulら(J.Mol.Biol.215,403−410(1990))が開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより、scoreで類似度が示される。
【0078】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。
【0079】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0080】
「発現量」とは、目的の細胞、生物などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量の測定方法としては、特異的抗体を用いたELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法などが挙げられる。mRNAレベルでの発現の測定方法としては、ノーザンブロット法、ドットブロット法などの分子生物学的測定方法が挙げられるがそれらに限定されない。このような方法を用いて本発明の検出デバイスを製造することができる。本明細書において、好ましい実施形態では、遺伝子の発現量または発現レベルは、mRNAレベルの発現の量またはレベルをいう。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。本明細書において、好ましい実施形態では、遺伝子の発現量または発現レベルの変化は、mRNAレベルの発現の量またはレベルでの変化をいう。
【0081】
転写レベルは、絶対的または相対的に定量され得る。絶対的な定量は、1つ以上の既知濃度の標的核酸の包含によって、または既知量の標的核酸自体を用いて、そして公知の標的核酸との未知のハイブリダイゼーション強度を参照して(例えば、標準曲線の作成によって)、行うことができる。あるいは、相対定量は、転写物の2つ以上の多型性形態の間でのハイブリダイゼーションシグナルの比較によって達成され得る。このような解析は、コンピュータシステムを用いて行うことができる。
【0082】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
【0083】
本明細書において、遺伝子の発現量の測定は、種々のストリンジェンシー条件下で行われ得る。そのようなストリンジェンシー条件としては、ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、低い程度にストリンジェントな条件などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0084】
本明細書において「分解」とは、化合物が2種以上のより簡単な物質に変化する化学反応をいう。ある物質、例えば、リンカーとしてのRNAがある一定条件で分解する場合、分解後には、そのRNAは一部または全部が消失している。従って、リンカーが分解した場合、リンカーが連結していた2つの生体物質は、分離する。そのような分解は、リンカーの部分の一部において行われてもよい。そのような場合、分解の後もその部分の一部は残存する。そのような場合、本明細書において「切断」ともいう。従って、本明細書において「切断」という概念は、「分解」に包含される。
【0085】
本明細書において「分解可能」とは、物質について用いられるとき、ある一定条件の下で、その物質の少なくとも一部、好ましくは全部が分解されることをいう。リンカーが分解可能である場合、そのリンカーが連結する第一の物質と第二の物質とは、そのリンカーが分解可能な条件下におかれた場合、その第一の物質と第二の物質とが分離される。ただし、この第一の物質と第二の物質とは、本発明では、相互作用可能であり、分離後も、相互作用により会合した状態のままでいる。本明細書において分解可能である条件は、例えば、特定の物理的条件(温度、湿度、圧力、光、磁場、電場、紫外線、紫外線、電磁波など)、特定の化学的条件(pH、イオン強度、特定の化学物質(酸素など)の存在、金属、金属イオン、錯体など)、特定の生化学的条件(例えば、制限酵素の存在、ペプチダーゼ/プロテアーゼの存在、リボザイム、酵素などの存在)、他の条件(機械的条件など)、上記条件が複合化した条件などが挙げられるがそれらに限定されない。分解可能な条件は、本発明の検出デバイスの目的に応じてまたは製造条件の簡便さなどに応じて変更することができる。
【0086】
本明細書において「安定な」とは、生体物質について用いられるとき、ある条件において、その生体物質が実質的に分解しないことをいう。
【0087】
本明細書において「制限酵素」または「制限エンドヌクレアーゼ」とは、互換可能に用いられ、2本鎖DNAの特定の塩基配列を認識して、リン酸基を5’末端に残す形で両鎖のホスホジエステル結合を加水分解する酵素をいう。したがって、制限酵素を用いる場合、対象となるDNAは、特異的部分でのみ分解すなわち切断が生じる。そのような特異的部分を、本明細書において「制限酵素部位」または「制限部位」という。
【0088】
本明細書において「RNA分解酵素」とは、RNAを分解することができる酵素一般をいう。好ましくは、本発明において用いられるRNA分解酵素は、DNAを分解しない。そのようなRNA分解酵素としては、例えば、リボヌクレアーゼI、II、環状化リボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼH、P、T1が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、エンドヌクレアーゼ活性を有するものが使用される。
【0089】
本明細書において「アルカリ条件」とは、RNAが分解するpHである条件をいう。RNAはアルカリ条件下ではリボースの2位の水酸基の求核性が増大するため2’−3’環状エステルを生成する形での加水分解が速やかに進行する。この化学的特性はDNAに比べてRNAが不安定であることから、本明細書において用いられるアルカリ条件としては、DNAが分解しないかもしくは分解がそれほど顕著でない条件であって、RNAが分解する条件をいう。そのようなアルカリ条件としては、pH7.0以上(温度は0℃〜100℃以下)が挙げられるがそれらに限定されない。そのようなアルカリ条件を与える物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0090】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0091】
本明細書において第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」とは、第一の生体物質が、第二の生体物質に対して、第二の生体物質以外の生体物質(特に、第二の生体物質を含むサンプル中に存在する他の生体物質)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。生体物質について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、生体物質がともに核酸である場合、第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」ことには、第一の生体物質が、第二の生体物質に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、生体物質がともにタンパク質である場合、第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の生体物質がタンパク質および核酸を含む場合、第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。
【0092】
そのようなレセプター−リガンドの関係にある分子としては、例えば、ドーパミンレセプター、ホルモンレセプター、TNFレセプター、EGFレセプター、インスリンレセプター、ケモカインレセプター、環境ホルモンレセプター、ウイルス性レセプター、細胞表面レセプターなどならびにそのリガンド(ドーパミン、ホルモン、TNF、EGF、インスリン、ケモカイン、環境ホルモンなど)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0093】
そのような抗原抗体反応にある分子としては、例えば、抗原として血球表面抗原タンパク質、ウイルス、細菌、植物・動物アレルゲン、微生物、ハウスダスト、抗体としてイムノグロブリン(例えば、上記抗原に対して特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0094】
そのような基質−酵素の関係にある分子としては、例えば、アルコール脱水素酵素−NAD、乳酸脱水素酵素−NADまたはNADH、トレオニン脱水素酵素−アデノシンモノホスフェートなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0095】
本明細書において「少なくとも一部と特異的に相互作用する」とは、2つの生体物質に関して使用され、おのおのの生体物質の少なくとも一部同士が特異的に相互作用することをいう。そのような「一部」の程度または範囲は、生体物質によって変動し、例えば、生体物質が核酸であれば、相補性を有するに充分であり得る長さである。生体物質がタンパク質であれば、例えば、各々の相互作用を生じるに充分な長さである。そのような長さは相互作用の種類によって変動するが、通常少なくとも3アミノ酸であり、好ましくは、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも15アミノ酸などであり得る。生体物質が核酸およびタンパク質以外の物質である場合でも、当業者は当該分野において周知の技術を用いて適宜相互作用するに足る最小限の部分を決定することができる。
【0096】
本命最初において、抗体またはリンパ球レセプターとの結合性を、「抗原性」(antigecity)という。抗体産生などの免疫応答を誘導する特性を「免疫原性」(immunogenicity)という。抗原として使用される物質は、例えば、その目的とする物質(例えば、タンパク質)を少なくとも1つ含む。含まれる物質は、全長が好ましいが、免疫を惹起し得るエピトープを少なくとも一つ含んでいれば、部分配列でもよい。本明細書において、「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。エピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。
【0097】
本明細書において「相補性」とは、核酸の塩基間に見られる特異的な対合関係をいう。通常、アデニンとチミン(またはウラシル)との間、グアニンとシトシンとの間で水素結合により特異的な対合がおこる性質をいうが、それらに限定されない。
【0098】
本明細書において「相補的」であるとは、ある核酸について用いられるとき、その核酸と別の核酸との間に相補性が少なくとも一部存在することをいう。好ましくは、相補的な核酸とは、別の核酸と完全な相補性を有することをいうが、標的を検出することができる程度に相補性を有する限り、完全さはなくてもよく、本発明では、完全な相補性を有することには限定されない。
【0099】
本明細書において「少なくとも一部に相補性を有する」とは、2つ以上の核酸についていうとき、その一部(例えば、少なくとも5ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長、さらに好ましくは15ヌクレオチド長)において相補性を有することをいう。上記「少なくとも一部」の長さは、相互作用を生じさせるに十分な程度の長さであることが好ましい。ある実施形態では、この「少なくとも一部」の長さは少なくとも20ヌクレオチド長であることが好ましい。理論上実質的に別の分子が偶然にハイブリダイズすることがないからである。この相補性のある箇所は、プローブ核酸の5’側にあっても中間部にあっても3’側にあってもよい。また、相補性は、飛び飛びにあってもよい。
【0100】
本明細書において「標識」とは、物質を同定するために、他とは異なった特徴をその物質に付与させる手段(物質など)をいう。そのような標識としては、例えば、同位体、スピン、親和力、色素、ビオチン法、化学発光法、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子などが含まれるがそれらに限定されない。蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、Texas Red、Indocarboxyanine(Cy3)、Indodicarbocyanin(Cy5)、Alexa488、Rhodamine Greenなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0101】
本明細書において使用される用語「基板」および「支持体」は、本明細書において、互換可能に使用され、本発明のデバイス(例えば、クロマトグラフィー基材、チップ、アレイなど)の基礎が構築される材料(好ましくは固体)をいう。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体物質(特に、プローブ生体物質)に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
【0102】
基板または支持体として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。当然、クロマトグラフィー基材として通常使用されるもの(例えば、多孔質シリカ、非多孔質シリカ、ポリスチレン共重合体、アルミナ、金属被覆材料、炭素材料、ガラス、繊維、細管内壁)もまた、本発明の支持体として使用され得る。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、核酸ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。
【0103】
そのような支持体または基板は検出デバイスとして使用することができる限り、どのような形状であってもよい。そのような形状としては、平面状、球面状、破砕状、細管内および外壁の表面などが挙げられる。好ましくは、例えば、生体物質検出チップとして使用する場合、平面状または球面状であり得る。また、クロマトグラフィー基材として使用する場合は、そのような支持体または基板は平面状または球面状であり得るがそれらに限定されない。
【0104】
本発明の「検出デバイス」は、標的物質の検出を行うことができる限り、どのような形態を採ってもよい。そのような形態としては、例えば、クロマトグラフィー基材、生体物質検出チップ(例えば、DNAチップのような核酸チップ)、表面プラズモンチップ、水晶発振子マイクロバランスチップ、原子間力顕微鏡で検出するようなデバイス、球状固定基板固定化した生体物質構造物をフローサイトメトリーなどのレーザー測定により検出するデバイスなどが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、そのような検出デバイスは、クロマトグラフィー樹脂または生体物質検出チップであり得る。より好ましくは、そのような検出デバイスは、生体物質検出チップであり得る。
【0105】
本明細書において使用されるクロマトグラフィー基材は、当該分野において周知の技術を用いて製造および使用され得る。そのような技術は、例えば、P.Cuatrecasa et al.(1968)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 61:636−643;M.N.Lipsett et al.(1964) J.Biol.Chem.236:857−862;M.Radermecker(1969)Immunochemistry 6:484−488;およびP.O.Larsson et al.(1971)Biotech.Bioeng.13:393−398などに記載されており、これらの文献に記載される内容は、本明細書においてその全体が参考として援用される。
【0106】
検出技術において、物質を直接測定してもよいし、物質から発される信号を測定してもよい。そのような技術は当該分野において周知であり、例えば、「DNAチップ応用技術」松永是 シーエムシー(2000);「DNAチップ応用技術II」松永是 シーエムシー(2001)などに記載されている。
【0107】
本明細書において「チップ」とは、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。本明細書において、「生体物質チップ」、「生体分子チップ」または「生体物質検出チップ」とは、基板と、生体物質とを含み、その生体物質が本発明の構造(ここで、プローブ生体物質および検出生体物質とは特異的に相互作用している)を有するものをいう。本発明の生体物質チップは、その基板に対して本明細書の生体物質構築物を配置することによって作製することができる。
【0108】
従って、本明細書では、「核酸チップ」とは、固体基板上の表面に多数の種類の核酸(プローブ核酸および検出核酸。ここで、このプローブ核酸とこの検出核酸とはハイブリダイズしている)を配置し、標的核酸とプローブ核酸とをハイブリダイズさせることにより、標的核酸を検出および/または定量するチップをいう
本明細書において用いられるように、「アレイ」とは、固相表面または膜上の固定物体の固定されたパターンまたはそのようなパターンを有する分子集団を意味する。典型的に、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている核酸配列を捕獲するように結合した生体物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質−RNA融合分子、タンパク質、脂質、糖、有機低分子など)で構成される。アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、生体分子の一定の集合をいう。
【0109】
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴う生体分子との関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスの形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。各々のアドレスのサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、分析物の量および/または利用可能な試薬、生体分子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1〜2nmから数cm(たとえば、1mm〜2mm〜数cmなど、125×80mm、10×10mmなど)の範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
【0110】
(一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、クロマトグラフィー技術、計測機器および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
【0111】
分子生物学および組換えDNA技術は、例えば、Maniatis,T.etal.(1982).Molecular Cloning :A Laboratory Manual,Cold Spring Harborならびにその第二版(1987)およびその第三版(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Sambrook,J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods andApplications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methodsfrom Current Protocols in MolecularBiology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0112】
本発明において用いられる生体物質は、生体から採取され得るほか、当業者に公知の方法によっ化学的に合成され得る。例えば、自動固相ペプチド合成機を用いた合成方法は、以下により記載される:Stewart,J.M.et al.(1984).Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.;Grant,G.A.(1992).Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman;Bodanszky,M.(1993).Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Bodanszky,M.et al.(1994).ThePractice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Fields,G.B.(1997).Phase Peptide Synthesis,Academic Press;Pennington,M.W.et al.(I 994).Peptide Synthesis Protocols,Humana Press;Fields,G.B.(1997).Solid−Phase Peptide Synthesis,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I 996).Bioconjugate Techniques,AcademicPress。オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystemsなどにより市販されるDNA合成機の何れかを用いて、自動化学合成により調製され得る。自動オリゴヌクレオチドの合成のための組成物および方法は、例えば、米国特許第4,415,732号,Caruthers et al.(1983);米国特許第4,500,707号およびCaruthers(1985);米国特許第4,668,777号,Caruthers et al.(1987)に開示される。
【0113】
本発明では、生体物質(たとえば、有機低分子、コンビナトリアルケミストリー生成物)のライブラリーを、基板に結合させ得、これを用いて分子をスクリーニングするためのチップを生成することができる。本発明で使用する化合物ライブラリは、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術、醗酵方法、植物および細胞抽出手順などが挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの手段により、作製することができるかまたは入手することができる。コンビナトリアルライブラリを作成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、E.R.Felder,Chimia 1994,48,512−541;Gallopら、J.Med.Chem.1994,37,1233−1251;R.A.Houghten,Trends Genet.1993,9,235−239;Houghtenら、Nature 1991,354,84−86;Lamら、Nature 1991,354,82−84;Carellら、Chem.Biol.1995,3,171−183;Maddenら、Perspectives in Drug Discovery and Design2,269−282;Cwirlaら、Biochemistry 1990,87,6378−6382;Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992,89,5381−5383;Gordonら、J.Med.Chem.1994,37,1385−1401;Leblら、Biopolymers 1995,37 177−198;およびそれらで引用された参考文献を参照のこと。これらの参考文献は、その全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0114】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0115】
フォトリソグラフィー技術は、Fordor et al.によって開発された技術であり、光反応性保護基を利用する(Science,251、767(1991)を参照)。この保護基は、各塩基モノマーと同種、あるいは別種の塩基モノマーとの結合を阻害する働きがあり、この保護基が結合している塩基末端には、新たな塩基の結合反応は生じない。また、この保護基は、光照射によって容易に除去することができる。まず、基板全面にこの保護基を有するアミノ基を固定化させておく。次に、所望の塩基を結合させたいスポットにのみ、通常の半導体プロセスで使用されるフォトリソグラフィー技術と同様の方法を使って、選択的に光照射を行う。これにより、光が照射された部分の塩基のみ、後続の結合によって次の塩基を導入できる。ここに、同じ保護基を末端に有する所望の塩基を結合させる。そして、フォトマスクの形状を変更して、別のスポットに選択的に光照射を行う。このあと、同様にして、保護基を有する塩基を結合させる。この工程をスポット毎に所望の塩基配列が得られるまで繰返すことによってDNAアレイが作製される。本明細書において、フォトリソグラフィー技術が使用され得る。
【0116】
「アレイ」または「マイクロアレイ」(DNAが配置されている場合、DNAマイクロアレイとも呼ばれる)については、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。以下、DNAアレイおよびそれを使用する遺伝子分析方法を簡単に説明する。
【0117】
「DNAアレイ」または「DNAマイクロアレイ」とは、DNAを基板上に整列(array)させて、固定させたデバイスをいう。DNAアレイは、基板の大きさまたは載せるDNAの密度によって、DNAマクロアレイおよびDNAマイクロアレイなどに分けられるが、本明細書では、特に断らない限り、DNAアレイは、DNAマイクロアレイと互換的に使用される。マクロとマイクロとの境界は厳密に決まっているわけではないが、一般に、「DNAマクロアレイ」とは、メンブレン上にDNAをスポットした高密度フィルター(high density filter)をいい、「DNAマイクロアレイ」とは、ガラス、シリコンなどの基板表面にDNAを載せたものをいう。載せる種類によって、cDNAアレイ、オリゴDNAアレイなどがある。
【0118】
高密度オリゴDNAマイクロアレイのうち、半導体集積回路製造のためのフォトリソグラフィー技術を応用し、基板上で一度に複数種のオリゴDNAを合成することで作製されたものを、半導体チップになぞらえて、特に「DNAチップ(chip)」という。この方法を用いて作製されたものとしては、GeneChip(登録商標)(Affimetrix、CA、米国)などが挙げられる(Marshall Aら、(1998)Nat.Biotechnol.16:27−31およびRamsay Gら、(1998)Nat.Biotechnol.16 40−44を参照のこと)。好ましくは、本発明におけるマイクロアレイを用いた遺伝子解析においては、このGeneChip(登録商標)が用いられ得る。DNAチップは、狭義には上記のように定義されるが、DNAアレイまたはDNAマイクロアレイ全体をいうこともあり、従って、cDNAのような既成のDNAが高密度で配置されたチップもまた、DNAチップと呼ばれ得る。
【0119】
DNAマイクロアレイは、このように、ガラス基板上に数千〜数万またはそれを超える遺伝子DNAを高密度に配列したデバイスであることから、cDNA、cRNAまたはゲノムDNAとのハイブリダイゼーションによって、遺伝子発現のプロファイルまたは遺伝子多型をゲノムスケールで解析することが可能となっている。この手法により、シグナル伝達系および/または転写制御経路の解析(Fambrough Dら(1999),Cell 97,727−741)、組織修復の機構の解析(Iyer VRら、(1999),Science 283:83−87)、医薬品の作用機構(Marton MJ、(1999),Nat.Med.4:1293−1301)、発生・分化の過程における遺伝子発現変動の広汎な解析、病態に伴って発現変動する遺伝子群の同定、またはシグナル伝達系もしくは転写制御に関与する新たな遺伝子の発見などが可能となってきた。また、遺伝子多型についても、多数のSNPを1つのDNAマイクロアレイで解析することが可能となっている(Cargill Mら、(1999),Nat.Genet.22:231−238)。
【0120】
従来は、二蛍光標識法などにより対象が検出されていた。この方法では、2つの異なるmRNAサンプルをそれぞれ異なる蛍光で標識し、同一マイクロアレイ上で競合的ハイブリダイゼーションを行って、両方の蛍光を測定し、それを比較することで遺伝子発現の相違を検出する。蛍光色素としては、例えば、Cy5およびCy3などが最も用いられているが、それらに限定されない。Cy3およびCy5の利点は、蛍光波長の重なりが殆どないという点である。二蛍光標識法は、遺伝子発現の相違のみならず、変異または多型性を検出するためにも使用され得る。しかし、このような二蛍光標識法は、標識が煩雑であるという欠点があった。本発明はこの欠点を解消する。
【0121】
蛍光標識の場合、検出するための装置は当該分野において周知であり、慣用されている。例えば、Stanford Universityのグループは、オリジナルスキャナを開発している。このスキャナは、蛍光顕微鏡と稼動ステージとを組み合わせたものである(http://cmgm.stanford.edu/pbrownを参照)。従来型のゲル用蛍光イメージアナライザであるFMBIO(日立ソフトウェアエンジニアリング)、Storm(Molecular Dynamics)などでも、スポットがそれほど高密度でなければ、DNAマイクロアレイの読み取りを行い得る。その他に利用可能な検出器としては、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型));Luminexシステム(日立ソフトウェアエンジニアリング;フローサイトメトリー型)、SPR−MACS(日本レーザ電子、ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社;表面プラズモン型)などが挙げられる。
【0122】
アレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysistechnology consortium)と呼ばれる形式などが挙げられる。
【0123】
(発明の利用)
本発明の検出デバイスは、例えば、診断、法医学、薬物探索(医薬品のスクリーニング)および開発、分子生物学的分析(例えば、アレイベースのヌクレオチド配列分析およびアレイベースの遺伝子配列分析)、タンパク質特性および機能の分析、薬理ゲノム学、プロテオミクス、環境調査ならびにさらなる生物学、化学、農学、畜産学上の分析において使用され得る。
【0124】
本発明の検出デバイスは、種々の遺伝子の検出に使用することができ、検出する遺伝子は特に限定されない。そのような検出される遺伝子としては、例えば、ウイルス病原体(たとえば、肝炎ウイルス(A、B、C、D、E、F、G型)、HIV、インフルエンザウイルス、ヘルペス群ウイルス、アデノウイルス、ヒトポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパルボウイルス、ムンプスウイルス、ヒトロタウイルス、エンテロウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、HTLVを含むがそれらに限定されない)の遺伝子;細菌病原体(たとえば、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ菌、ヘリコバクターピロリ菌、カンピロバクター、コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、エルシニア、淋菌、リステリア菌、レプトスピラ、レジオネラ菌、スピロヘータ、肺炎マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアを含むがそれらに限定されない)の遺伝子、マラリア、赤痢アメーバ、病原真菌、寄生生物、真菌の遺伝子などの検出に用いることができる。
【0125】
本発明の検出デバイスはまた、感染性疾患(例えば、AIDS、インフルエンザなど)、遺伝性疾患、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、家族性結腸ポリープ症、神経腺維腫症、家族性乳癌、色素性乾皮症、脳腫瘍、口腔癌、食道癌、胃癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、甲状腺腫瘍、乳腺腫瘍、泌尿器腫瘍、男性器腫瘍、女性器腫瘍、皮膚腫瘍、骨・軟部腫瘍、白血病、リンパ腫、固形腫瘍、等の腫瘍性疾患などを検査および診断するために使用され得る。
【0126】
本発明はさらに、RFLP、SNP(スニップ。一塩基多型)解析等の多型解析、塩基配列の解析等にも適応することが可能である。本発明はまた、医薬品、動物医薬のスクリーニングにおいて使用することができる。
【0127】
本発明はまた、医療以外にも、食品検査、検疫、医薬品検査、法医学、農業、畜産、漁業、林業などで、生体分子の検査が必要なものに全て適応可能である。本発明においては特に、食料の安全目的のための(たとえば、BSE検査)使用も企図される。
【0128】
本発明はまた、生化学検査データを検出するために用いられ得る。生化学検査の項目としては、たとえば、総蛋白、アルブミン、チモール反応、クンケル硫酸亜鉛試験、血漿アンモニア、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、総ビリルビン、直接ビリルビン、GOT、GPT、コリンエステラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ロイシンアミノペプチターゼ、γ−グルタミルトランスペプチターゼ、クレアチニンフォスキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、ナトリウム、カリウム、塩素イオン、総カルシウム、無機リン、血清鉄、不飽和鉄結合能、血清浸透圧、総コレステロール、遊離コレステロール、HDL−コレステロール、トリグリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸、血漿グルコース、インシュリン、BSP停滞率、ICG消失率、ICG停滞率、髄液・総蛋白、髄液・糖、髄液・塩素、尿・総蛋白、尿・ブドウ糖、尿・アミラーゼ、尿・尿酸、尿・尿素窒素、尿・クレアチニン、尿・カルシウム、尿・浸透圧、尿・無機リン、尿・ナトリウム、尿・カリウム、尿・クロール、尿中Nアセチルグルコサミニダーゼ、1時間クレアチニンクレアランス、24時間クレアチニンクレアランス、フェノールスルホンフタレイン、C反応性タンパクなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような検査項目を測定する方法および原理は当該分野において周知慣用されている。
【0129】
本発明はまた、生体から直接採取したサンプル以外に、PCR、リガーゼ連鎖反応、SDA、NASBA法等で増幅した遺伝子の検出に対しても用いることは可能である。本発明が検査または診断目的とする試料は特に限定されず、例えば、血液、血清、白血球、尿、便、精液、唾液、組織、培養細胞、喀痰等を用いることができる。
【0130】
(好ましい実施形態の説明)
1つの局面において、本発明は、生体物質構築物を提供する。この生体物質構築物は、検出デバイスを作製するために用いられる。本発明の生体物質構築物は、A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;B)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質;C)上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である、リンカー、を包含する。ここで、上記リンカーは、上記プローブ生体物質と上記検出生体物質とを連結する。ここで、この連結は、共有結合であっても非共有結合であってもよい。この連結は、非共有結合が好ましい。共有結合である場合、分解条件下でも結合が破壊されず、残留物が残存する可能性が高まるからである。上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する。一部相互作用する部分が重複することによって、検出生体物質と、標的生体物質とは競合的にプローブ生体物質と反応することができる。このことにより、本発明の検出デバイスにおいて、競合する標的生体物質が少なくとも一部検出生体物質と置き換わる。置き換わることにより、標的生体物質の検出が可能となる。本発明において、標的生体物質と、検出生体物質とは互いに識別可能であることが好ましい。ここで、識別可能とは、物理的、化学的、生化学的、生物学的などの手段で2つの物質が識別可能であることを意味する。従って、質量(例えば、分子の長さ)によって識別することもできる。ある実施形態では、検出生体物質が標識化合物により標識されることが好ましい。標識化合物の存在不存在およびその量の増減により、標的生体物質の同定および定量を行うことができる。
【0131】
1つの実施形態において、本発明の生体物質構築物における上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、各々独立して、核酸またはその誘導体、ポリペプチドまたはその誘導体であり得る。双方とも核酸またはその誘導体およびポリペプチドまたはその誘導体であってもよい。双方ともが同じカテゴリーの物質であることにより、双方が安定な(かつ、リンカーが分解可能な)条件の選択肢が増えるからである。
【0132】
好ましい実施形態では、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAであり、上記リンカーはRNAである。この構成をとることにより、DNAが安定であり、かつ、RNAが不安定な条件(例えば、特定のRNA分解酵素の存在下、アルカリ条件など)の選択肢を選択することが容易になる。そのような条件は、慣用的に準備することができることから、好ましい。
【0133】
別の好ましい実施形態では、上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する。このようにリンカーに特異的な制限酵素部位を有する場合、その制限酵素部位を特異的に切断する制限酵素による処理を行うことにより、本発明の検出デバイスを簡便に製造することができる。
【0134】
好ましい実施形態において、本発明の生体物質構築物は、さらに標識を含む。この標識は、上記検出生体物質に含まれることが好ましい。このような構成は、例えば、生体物質が核酸である場合、図1(A)に示されるように5’側から蛍光物質を結合した検出核酸(D)、核酸切断部位(好ましくはRNA)(E)、プローブ核酸(F)の順番に配列したキメラ核酸を核酸自動合成機で合成することによって作製することができる。そのような核酸自動合成機を合成することは当該分野において周知である。核酸以外の場合でも端に標識(例えば蛍光物質)を付着させることが好ましいが、これに限定されず、配列の途中に標識を導入することも可能である。そのような方法としては、例えば、核酸の場合H−ホスホネート法などが挙げられる。そのような技術を用いると、リン酸部位であれば、どのような場所でも蛍光物質を導入することができる。
【0135】
検出核酸に対して、図1では5’側に蛍光物質を結合しているが、検出核酸のどの部位に蛍光物質を結合させても良い。標識化合物として、図1では蛍光物質を使用しているが、金属微粒子、酸化還元性化合物、ホストゲスト反応を行う化合物など標識を行うことができるものならば特に限定しない。従って、上記標識は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される物質を含む、生体物質構築物を包含する。
【0136】
1つの好ましい実施形態では、上記検出生体物質は、蛍光物質を含む。蛍光物質の検出は、当該分野において周知であり、慣用される装置を用いることによって容易に行うことができるからである。そのような技術は、例えば、その他に利用可能な検出器としては、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene TipScanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型))などが挙げられるがそれに限定されない。そのような技術を記載する文献としては、例えば、Mark Schena編加藤郁之進監訳「DNAマイクロアレイ」第二章 TaKaRaが挙げられるがそれに限定されない。
【0137】
1つの実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である。従って、この実施形態において、プローブ生体物質と検出生体物質とは、少なくとも一部、例えば、少なくとも10ヌクレオチド長連続して相補性を有する。より好ましくは、これら両方の生体物質は、少なくとも15ヌクレオチド長連続して、より好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも25ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも30ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは40ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは50ヌクレオチド長連続して相補性を有する。ある実施形態では、一方の生体物質の全部が他方の生体物質の一部と完全に相補的であってもよい。あるいは、両方の生体物質が全部完全に相補的であってもよい。
【0138】
1つの実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係に基づいていてもよい。好ましくは、そのようなレセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係としては、例えば、メタンフェタミン−モノクローナル抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。このような例は、これら2つの物質(プローブ生体物質および検出生体物質)が安定な条件で、リンカーとして選ばれる部分を構成する物質が少なくとも1つの分解する条件が存在する限り、どのような例を選択してもよい。好ましくは、リンカーが分解する条件のうちの少なくとも1つにおいて、プローブ生体物質と検出生体物質とが少なくとも部分的に相互作用すべきである。検出デバイスを作製する際に1工程で分解および相互作用の2工程が完了するからである。
【0139】
別の局面において、本発明は、上記本発明の生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイスを提供する。このような生体物質検出デバイスは、その後にリンカーが分解する(好ましくは、プローブ生体物質および検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である)条件下に曝すことにより、標的を検出および定量することができる生体物質検出デバイスとして完成させることができる。従って、このようなデバイスは、生体物質検出デバイスの前駆装置ということができる。本発明において、このような前駆装置は、直ちに上記分解条件に曝すことにより検出デバイスの完成品とすることもできるが、そのまま出荷して、ユーザーが使用直前に完成品とすることもできる。プローブ生体物質と検出生体物質とを含む相互作用物の安定性を高めるために、例えば、プローブ生体物質として核酸、検出生体物質として核酸を用いた場合、形成した相補的二重鎖が保存中に誘拐し、検出核酸がチップからはがれてしまう可能性がある。これを防ぐ方法としてこのような前駆装置を用いることも考えられる。特に、検出生体物質の鎖長が短い場合には、この方が有利である。
【0140】
好ましい実施形態において、上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップ、クロマトグラフィー基材などであり得る。より好ましくは、上記生体物質検出デバイスは、核酸チップである。
【0141】
別の局面において、本発明は、生体物質検出デバイスを提供する。このデバイスは、A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;およびB)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含する生体物質構築物が配置された支持体を含む。ここで、上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する。一部相互作用する部分が重複することによって、検出生体物質と、標的生体物質とは競合的にプローブ生体物質と反応することができるからである。このことにより、本発明の検出デバイスにおいて、競合する標的生体物質が少なくとも一部検出生体物質と置き換わる。本発明において、標的生体物質と、検出生体物質とは互いに識別可能であることが好ましい。ここで、識別可能とは、物理的、化学的、生化学的、生物学的などの手段で2つの物質が識別可能であることを意味する。従って、質量(例えば、分子の長さ)によって識別することもできる。ある実施形態では、検出生体物質が標識化合物により標識されることが好ましい。標識化合物の存在不存在およびその量の増減により、標的生体物質の同定および定量を行うことができるからである。
【0142】
好ましい実施形態において、上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである。チップを使用することにより、分析を自動化することが容易になる。そのような分析の自動化は、当該分野において周知でありそのような自動化は例えば、Mark Schena編加藤郁之進監訳「DNAマイクロアレイ」第二章 TaKaRaに記載されている。
【0143】
ある実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、各々独立して、核酸またはその誘導体、ポリペプチドまたはその誘導体などであり得る。双方とも核酸またはその誘導体およびポリペプチドまたはその誘導体であってもよい。また、双方が異なるカテゴリー(例えば、プローブ生体物質は核酸であり、検出生体物質はタンパク質)であってもよい。異なるカテゴリーの場合、標的生体物質との競合反応の選択肢が双方が同じ場合に比べて異なり得る。このように、物質のカテゴリーの選択は、目的とする検出・定量に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0144】
より好ましくは、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAである。DNAを選択することにより、DNAチップの解析に関連する技術をそのまま適用することができる。
【0145】
本発明の検出デバイスは、さらに標識を含んでいてもよい。標識を含むことにより、検出・定量が容易になるからである。この標識は、上記検出生体物質に含まれることが好ましい。このような構成は、例えば、生体物質が核酸である場合、図1に示されるように、標的核酸(G)を加え、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度以上でプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度以下に昇温すると、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度がプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度よりも十分低ければ、プローブ核酸(F)と標的核酸(G)が二重鎖を形成する。プローブ核酸(F)と標的核酸(D)とが形成する二重鎖の融解温度以下に冷却すると、標的核酸がハイブリダイゼーションしていないプローブ核酸(F)と検出核酸(D)がハイブリダイゼーションするが、ハイブリダイゼーションする相手のない検出核酸(D)は溶液中に溶解する。ここで洗浄を行う(図1(C))。図1(B)の状態で核酸チップから読みとった検出核酸からの信号量から、図1(C)の状態で読みとった核酸チップ上の検出核酸からの信号量を差し引くと、標的核酸の検出および定量が可能となる。
【0146】
上記標識としては、例えば、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される物質が挙げられるがそれらに限定されない。当業者は、標識の種類によりその検出手段を適切に選択することができる。例えば、蛍光物質の場合は、上述したように高橋豊三著「DNAプローブの開発技術」第5章 CMC出版を参照することができる。包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子の場合にも、例えば、W.Fritzsche(2001)Reviews in Molecular Biotechnology 82:37−46;C.A.Mirkin et al.(1996)Nature 382:607−609などを参照することができる。
【0147】
好ましくは、標識は蛍光物質であり得る。蛍光物質は、容易に検出することができるからであり、放射性同位体などと異なり、身体への有害な影響が少ないとされているからである。しかし、状況に応じて、放射性同位体を標識として用いてもよい。そのような標識の選択は当業者は状況に応じて行うことができる。
【0148】
別の実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である。従って、この実施形態において、プローブ生体物質と検出生体物質とは、少なくとも一部、例えば、少なくとも10ヌクレオチド長連続して相補性を有する。より好ましくは、これら両方の生体物質は、少なくとも15ヌクレオチド長連続して、より好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも25ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも30ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは40ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは50ヌクレオチド長連続して相補性を有する。
【0149】
ある実施形態では、一方の生体物質の全部が他方の生体物質の一部と完全に相補的であってもよい。あるいは、両方の生体物質が全部完全に相補的であってもよい。
【0150】
1つの実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係に基づいていてもよい。好ましくは、そのようなレセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係としては、例えば、メタンフェタミン−モノクローナル抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。このような例は、これら2つの物質(プローブ生体物質および検出生体物質)が分析する条件において解離することができる関係であれば、どのようなものでもよい。1つの実施形態において、標的生体物質のほうが、検出生体物質よりも、より強くプローブ生体物質と相互作用することが好ましい。このことにより、標的生体物質が微量であってもより高感度に検出することができるからである。
【0151】
別の局面において、本発明は、生体物質検出デバイスを製造する方法を提供する。この方法は、A)本発明の生体物質構築物を支持体に配置する工程;およびB)上記支持体を、上記リンカーが分解可能な条件下に供する工程、を包含する。このような分解可能な条件は、好ましくは、プローブ生体物質および検出生体物質の両方が安定である条件である。上記分解可能な条件がプローブ生体物質および検出生体物質の少なくとも一方が不安定な条件である場合、生体物質を保護する機構を施してもよい。そのような機構としては、例えば、核酸分解酵素に対して耐性を有する修飾型オリゴヌクレオチド(例えば、リン酸結合部位を修飾したホスホロチオエート型核酸、メチルホスホネート型核酸、ホスホロアミデート型核酸(Oligodexynucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression. J.Cohen ed. CRC Press(1989)を参照のこと)を用いることができる。さらに、生体物質を保護するために生体物質の一部または全体に対して相互作用をする物質(例えば、生体物質が核酸の場合、相補的な核酸)を用いて二重鎖を形成させ、安定性を増すことができる。さらに、生体物質に構造を持たせる(すなわち、一本鎖または二本鎖以外の構造例えば、ループ構造、三重鎖、四重鎖などの分解酵素が認識して分解しない構造を持たせる)ことによって、核酸分解酵素が認識しないようにすることにより安定性を増すことができる。例えば、生体物質が核酸である場合、ループ構造、三重鎖、四重鎖などの構造を形成させることで安定性を増すことができる。分解した後、好ましくは、生体物質構築物中のプローブ生体物質と検出生体物質とが特異的に相互作用する工程を行うことによって、より効率的に本発明の検出デバイスを製造することができる。通常はそのような2つの生体物質は、リンカーの分解する条件下では、効率的に相互作用しないからである。しかし、リンカーの分解する条件によっては、このような2つの生体物質が十分に特異的に相互作用しており、そのような場合は、上記工程は特に必要ではない。また、必要に応じて、リンカーの分解物などを洗浄する工程を行ってもよい。そのような洗浄条件は当該分野において周知であり、当業者は、例えば、通常の分子生物学でのアッセイにおいて使用される洗浄条件を適宜適合させることによって適切な洗浄条件を選択することができる。
【0152】
好ましい実施形態では、本発明は、生体物質チップを製造する方法を提供する。このようなチップに用いられる基板は、当該分野において周知のものが使用され得る。基板または任意の形状の支持体に対して、本発明の生体物質構築物を配置する。配置の方法は当該分野に周知の技術を用いることができ、このような方法は、例えば、林崎良英監修、岡崎康司編集「必ずデータが出るDNAマイクロアレイ実践マニュアル」羊土社 p41−56(2000)に記載されている。この生体物質構築物は、基板または支持体に対して共有結合または非共有結合により結合させ固定化することができる。このような共有結合または非共有結合による結合および固定化の方法は、当該分野において周知であり、例えば、君塚房夫、加藤郁之進著「蛋白質 核酸 酵素」vol.43−13「DNAチップ技術とその応用」共立出版p2004−p2011(1998)に記載されている。この固定化の際の条件において、生体物質構築物が分解しないことが好ましいが、完全に分解しない条件であるか、分解を抑える機構を使用する場合は、生体物質構築物が分解する条件であってもよい。
【0153】
次に、基板または支持体に生体物質構築物が固定化された後、この基板または支持体をリンカーを分解または切断する条件に曝す。そのような条件としては、例えば、リンカーにRNAが用いられ、他の生体物質としてRNA分解酵素に耐性の物質(例えば、DNA)が用いられる場合は、RNA分解酵素が用いられ得る。また、リンカーにRNAが用いられ、他の生体物質としてアルカリ条件下で安定である物質(例えば、DNA)を用いる場合は、アルカリ条件が用いられる。そのようなアルカリ条件としては、例えば、pH7〜14が挙げられ、特に、pH8〜11が好ましい。そのようなアルカリ条件を与える物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、希水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水が好ましい。
【0154】
別の好ましい実施形態では、上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する。このようにリンカーに特異的な制限酵素部位を有する場合、その制限酵素部位を特異的に切断する制限酵素による処理を行うことにより、本発明の検出デバイスを簡便に製造することができる。
【0155】
リンカーを分解または切断した後、検出核酸は通常生体物質構築物すなわちプローブ核酸からは分離される。リンカーを分解または切断する条件が溶液中で行われる場合は、そのような検出核酸は、その溶液中に溶解した状態にある。その後、好ましくは、このチップをプローブ核酸と検出核酸とがハイブリダイズする条件下に置くことにより、二重鎖が形成される。そのようなハイブリダイズする条件としては、プローブ核酸と検出核酸とが形成する二重鎖の融解温度以下に保つことが挙げられるがそれに限定されない。リンカーが分解または切断する条件において、すでにハイブリダイズしているような条件では、新たに二重鎖を形成させる工程を行う必要はない。その後、必要に応じて、分解した核酸や分解に使用した酵素やアルカリなどを除去するために洗浄してもよい。これにより、核酸チップである生体物質検出チップを完成させることができる。そのようなチップは、好ましくは、プローブ生体物質と検出生体物質とが形成する相互作用構造物の構造が安定に保たれる条件にあることが有利である。例えば、プローブ生体物質および検出生体物質がともに核酸である場合、両者の間で相補的相互作用により形成した二重鎖の少なくとも融解温度以下で保存することが好ましい。
【0156】
生体物質検出デバイスがクロマトグラフィー基材の場合もまた、当該分野において周知の樹脂調製方法を応用してデバイスを作製することができる。そのような方法は、例えば、山崎誠、石井信一、岩井浩一編「アフィニティークロマトグラフィー」講談社サイエンティフィック(1975)に記載されている。具体的には例えば、以下のように作製する。生体物質検出デバイスが核酸である場合を例として説明する。金メッキした粒径数μmの微粒子に、チオール基を導入したオリゴヌクレオチド誘導体を結合させ、標識を行った検出核酸をそのオリゴヌクレオチド誘導体に相補的二重鎖形成により二重鎖を形成させ、この微粒子をクロマトグラフィー用カラムに充填する。ここに、未標識の標的核酸を加えることで、プローブ核酸にハイブリダイズさせるとともに検出核酸をクロマトグラフィー用カラムから溶出させ、その核酸を検出する。このとき、標識化合物を何種類か混合しておけば、その種類および量比から標的核酸の種類が判明する。
【0157】
好ましくは、本発明の検出デバイスを製造する方法において、検出デバイスまたは生体構築物質には標識がさらに含まれていてもよい。そのような標識は、当該分野において生体物質を標識することができることが公知であるようなものであれば、どのようなものでも使用することができ、例えば、同位体、スピン、親和力、色素、ビオチン法、化学発光法、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子などが含まれるがそれらに限定されない。好ましくは、標識として蛍光物質が使用される。標識を使用する場合、使用される標識は本発明の検出デバイス製造方法において用いられる分解可能な条件下で分解しないかまたは上記リンカーよりも分解の程度が少ないことが好ましい。より好ましくは、標識は、上記分解条件において分解しないか、または分解しないように保護され得る。そのような化学置換基を保護する方法は当該分野において周知であり、当業者であれば適切な技術を用いて保護することができる。
【0158】
1つの局面において、本発明は、サンプル中の標的生体物質を検出または定量を行う方法を提供する。この方法は、A)生体物質検出デバイスを提供する工程;B)上記サンプルを、上記標的生体物質と上記プローブ生体物質とが複合体を形成する条件下で上記生体物質検出デバイスに曝す工程;ならびにC)上記標的生体物質と上記プローブ生体物質との複合体の量を測定し、上記複合体の量と、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の合計量との相違から上記標的生体物質の存在または量を同定する工程、を包含する。ここで、上記生体物質検出デバイスは、A−1)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;およびA−2)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含する、生体物質構築物が配置された支持体を含む。この生体物質検出デバイスにおいて、上記検出生体物質と上記標的生体物質とは識別可能であり、上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複することが特徴である。一部相互作用する部分が重複することによって、検出生体物質と、標的生体物質とは競合的にプローブ生体物質と反応することができる。このことにより、本発明の検出デバイスにおいて、競合する標的生体物質が少なくとも一部検出生体物質と置き換わる。置き換わることにより、標的生体物質の検出が可能となる。識別可能とは、物理的、化学的、生化学的、生物学的などの手段で2つの物質が識別可能であることを意味する。従って、質量(例えば、分子の長さ)によって識別することもできる。
【0159】
ある実施形態では、検出生体物質が標識化合物により標識されることが好ましい。標識化合物の存在不存在およびその量の増減により、標的生体物質の同定および定量を行うことができる。そのような同定または定量は、上記複合体の量と上記合計量との相違は上記標識の存在または量の増減から算出される。そのような同定または定量は、手動で行ってもよいが、自動化することもできる。同定または定量において、あらかじめサンプルとの接触前の情報を入手することが好ましい。生体物質検出デバイスにおける反応前の信号強度は、通常は計算によりまたは予めの測定によりバックグラウンドとして知ることができるが、反応条件によっては、そのようなバックグラウンド値を知ることが不可能であるか、変動することがある。そのような場合は、検出反応の直前にバックグラウンド値を測定することが好ましい。そのような測定は、一つ一つ行うことも可能であるが、スキャナを用いて一度にスキャンすることも可能である。そのようなスキャナは当該分野において周知であり、例えば、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型))が挙げられるがそれらに限定されない。そのようなスキャナなどで読み取ったデータは、反応の前後を比較することにより、反応による変化を評価することができる。そのような評価は、手動で行ってもよいが、好ましくは、自動化し、コンピュータを用いて行うことができる。そのようなデータ処理は、当業者であでば当該分野において周知の技術を適宜組み合わせて行うことができる。
【0160】
ある好ましい実施形態において、検出生体物質と、標的生体物質とは、異なる生体物質(例えば、核酸および核酸誘導体)を含む。その結果、2つの生体物質が異なり、反応の前後の特定のパラメータ(例えば、質量、信号など)を測定するだけで同定および定量を行うことができる。
【0161】
本発明の生体物質検出方法において、生体物質検出デバイスはチップであることが好ましい。生体物質チップは、例えば、DNAチップであり得、チップ解析技術に関連する周知および公知の技術を利用することができる。そのような技術は、本明細書において他の場所において示した文献にも記載されている。
【0162】
別の実施形態において、生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材であり得る。クロマトグラフィー基材を用いることにより、クロマトグラフィー技術に関連する周知および公知の技術を利用することができる。そのような技術は、本明細書において他の場所において示した文献にも記載されている。
【0163】
本発明の検出デバイスはまた、再利用するように構築することができる。そのような構築方法としては、リンカーおよび検出生体物質を複数使用することが挙げられる。例えば、二つの核酸、すなわち検出生体物質とリンカーとの組み合わせを1回以上繰り返すことでプローブ核酸に対して回数倍の量の検出核酸を調製することもできる。コストおよびプローブ生体物質に対して標的生体物質を完全に相互作用させる必要性から、この繰り返しは2回以上行い、プローブ生体物質に対して等倍以上の濃度の検出生体物質を用いることで生体物質検出デバイスを製造することが望ましい。また、核酸の場合、プローブ生体物質と、検出生体物質あるいは標的生体物質の形成する二重鎖の融解温度の高い方の二重鎖の融解温度以上に昇温し、プローブ生体物質以外の化合物を洗い流すことによって、一度使用した検出デバイスを再利用することができる。ここで、基板または支持体上に固定化されたプローブ生体物質に対して複数倍量検出生体物質を製造しておき、最初に製造するのに必要となった検出生体物質の残りを用いて、再利用用の検出デバイスの製造を行うことができる。
【0164】
従来の核酸チップを用いて標的核酸を検出する際には、細胞から取りだす等の方法で得た標的核酸に蛍光物質等の標識化合物を結合させることが一般的に行われているが、この標識過程は非常に多くのステップから構成されており、この事が原因で非常に多くの問題が生じていたが、本発明の手法を用いると標的生体物質に対して標識化合物を結合させる必要がないので、これらの問題点の多くを解決できた。
【0165】
本発明のように、標的生体物質を標識せずに検出および/または定量を行うことにより、標的生体物質を標識するためには多数の工程が回避される。そのような標識工程では、それらの工程から混入するヌクレアーゼ等の分解酵素やピペッティング操作や遠心分離、フィルター処理などによる標的生体物質の機械的切断、昇温、冷却などによる標的核酸の分解などの可能性が著しく低下する。特に、標的核酸として最も一般的に使用されているRNAの場合には、RNAの安定性の低さから、本発明の効果は非常に大きくなる。さらに、これらの分解による標的生体物質の濃度の低下や容器などへの吸着も全くなくなり、また、標的生体物質を蛍光物質などの標識化合物で標識する場合には、完全に標識化合物で標的生体物質を標識することは困難なので、これらのことが原因で起こる定量性の低下も防げる。また、標的生体物質の標識を全く行う必要がないので、これらの操作に作業者の熟練を必要とせず、標識操作に必要な時間が短縮でき、より早く結果を得ることができるハイスループットに対応した核酸チップである。
【0166】
また、標識操作に必要な、遠心機やインキュベータなどの装置も必要とせず、標識操作に必要な種々の高価な試薬も必要とせず、従来の核酸チップを用いた遺伝子の検出およびび定量法と比較してコストを大幅に下げることができる。
【0167】
また、プローブ生体物質と検出生体物質とを同時に合成しているので、プローブ生体物質と検出生体物質とを個別に合成するよりもコストを大幅に下げることができる。プローブ生体物質に対して、検出生体物質を大量に合成することができるので、検出生体物質を保存しておくことが出来、一度使用した生体物質検出デバイスから検出生体物質および標的生体物質を昇温などにより取り除いた後に、保存しておいた検出生体物質をプローブ生体物質に対して、相互作用させることで、生体物質検出デバイスの再利用も可能となる。
【0168】
プローブ生体物質と検出生体物質とが二重鎖を形成している状態で出荷することができるので、これまでのように一本鎖の状態での出荷時に問題となるプローブ生体物質と基板との相互作用を避けることができる。これにより、検出感度が顕著に上昇した。
【0169】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解されるべきである。
【0170】
【実施例】
(実施例1:生体物質構築物の構築および基板上への固定)
本発明での核酸チップの製造法およびその検出法について、すべての部分ををDNAとした場合を実施例1として記載する。このような例は、図1に示したとおりである。
【0171】
5’側から蛍光物質を結合した検出核酸(D)、核酸切断部位(E)、プローブ核酸(F)の順番に配列したキメラ核酸を核酸自動合成機で合成し、固体基板上にこのキメラ核酸を固定化した(図1(A))。以下に具体的な手順を示す。
【0172】
ミリジェン社製核酸自動合成機を用いて、DNA合成用のアミダイト試薬(アデニン、チミン、シトシン、グアノシンの4,4’−ジメトキシトリチル−シアノエチルホスホロアミデートモノマーを用いて、DMTr−d(TAGATACGAATCAGTCGAATG)−3’−CPGを合成した。次に、RNA合成用のアミダイト試薬のボトルをXボトルに取り付け、5’−r(UUUUU)−3’を引き続き合成した。続いて、DNA合成用のアミダイト試薬を用いて、5’−d(ATTCGATCTA)−3’を合成した。最後に、1−ジメトキシトリチルオキシ−2−(N−チオウレア(ジ−O−ピバロイル−フルオレセイン)−4−アミノブチル)−プロピル−3−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト(桑名貿易株式会社、東京都)を合成したオリゴマーに結合させた。合成したオリゴマーを含むCPG担体をアンモニア処理し、真空下アンモニアを除去した。これをSeppak(日本ウォーダズ株式会社、東京都)を用いて精製した。オリゴマーに結合しているジメトキシトリチル基を核酸自動合成機に付属のデブロック剤に用いて除去した。溶媒を除去後、オリゴマーをトリエチルアミン−酢酸緩衝液に溶解し、Seppakを用いて精製し、目的とするオリゴマー、5’−d(ATCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCGAATG)−3’を得た。このほかに、9種類のキメラ核酸を合成した(例えば、5’−d(TGCATACTA)−r(UUUUU)−d(TATCAGGATCCGAGTATAGA)−3’)。
【0173】
市販のポリ−L−リジンコーティングスライドガラスに対して、上記合成したキメラ核酸水溶液をスタンピング装置を用いてスタンプした。
【0174】
作製したスライドガラスを水蒸気を用いて再水和し、UV光を照射することによって架橋を行った。
【0175】
無水コハク酸、1−メチル−2−ピロリドンから調製されたブロッキング溶液に作製したスライドグラスを沈め、20分間浸透させた後、超純水、エタノールを用いて洗浄後、乾燥させた。
【0176】
(実施例2:生体物質検出チップの調製)
実施例1において調製し、基板に固定化した検出チップの前駆装置に対して、核酸分解酵素(制限酵素)で核酸切断部位(E)を切断もしくは分解し、溶液中に検出核酸(D)を溶解させた。プローブ核酸(F)と検出核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度以下に反応系を保ち、プローブ核酸(F)と検出核酸(D)とがハイブリダイゼーションにより二重鎖を形成させた(図1(B))。分解した核酸や分解に使用した酵素やアルカリなどを除去するために洗浄した。これにより、核酸チップである生体物質検出チップが完成した。以下に具体的な手順を示す。
【0177】
実施例1で作製した核酸固定化スライドガラスを50mM水酸化ナトリウム水溶液中に沈めた。20分後、反応系を5℃に保ち、プローブ核酸と検出核酸とが二重鎖を形成するまで3時間放置した。スライドガラスを取り出し、超純水を用いて洗浄し、生体物質検出チップを作製した。保存は、冷蔵庫中で行った。
【0178】
(実施例3:生体物質検出チップを用いた生体物質の検出および定量)
次に、実施例2で製造した生体物質検出チップを用いて、生体物質を検出および定量した。標的核酸(G)を加え、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度以上でプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度以下に昇温すると、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度がプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度よりも十分低ければ、プローブ核酸(F)と標的核酸(G)が二重鎖を形成する。プローブ核酸(F)と標的核酸(D)とが形成する二重鎖の融解温度以下に冷却すると、標的核酸がハイブリダイゼーションしていないプローブ核酸(F)と検出核酸(D)がハイブリダイゼーションするが、ハイブリダイゼーションする相手のない検出核酸(D)は溶液中に溶解する。ここで洗浄を行う(図1(C))。図1(B)の状態で核酸チップから読みとった検出核酸からの信号量から、図1(C)の状態で読みとった核酸チップ上の検出核酸からの信号量を差し引くことにより、標的核酸の検出および定量した。以下に具体的な手順を示す。
【0179】
蛍光スキャナーを用いて、実施例2で作製した生体物質検出チップを読み取り、各スポットごとの蛍光を定量化しておいた。
【0180】
蛍光物質などを標識していない標的核酸5’−d(CATTCGACTGATTCGATCTA)−3’および実施例2で作製した生体物質検出チップに固定化した核酸に対して相補性を全く示さない20量体オリゴデオキシリボヌクレオチドを核酸自動合成機を用いて合成した。
【0181】
ハイブリカセットに実施例2で作製した生体物質検出チップをセットし、その上に上記の標的核酸を塗布したハイブリスリップを載せた。乾燥防止のためにスライドガラスの端にSSC(sodium citrate)緩衝溶液を滴下しさらにハイブリカセットの両端の溝に超純水を加えた。ハイブリッドカセットのふたをして、65℃のヒートブロックに移し、12時間反応させた。
【0182】
ハイブリダイゼーション後、生体物質検出チップを1℃の超純水で洗浄し乾燥後、蛍光スキャナーで各スポットごとの蛍光を定量化した。
【0183】
ハイブリダイゼーション前の蛍光の定量値とハイブリダイゼーション後の蛍光の定量値を差し引いた結果、標的核酸に相補的なスポットの傾向強度は減少したが、それ以外のスポットは、ハイブリダイゼーション前後でほとんど変化がなかった。蛍光強度から計算した標的核酸のハイブリダイゼーション量は95%であった。また、他の種類の配列を有するキメラ核酸を用いた場合でも、同様の結果が得られた。従って、本発明は、構築物中に含まれる具体的な配列にかかわらずどのようなものでも実施することができる。
【0184】
(実施例4:標識の位置を変動させた例)
検出核酸に対して、図1では5’側に蛍光物質を結合しているが、検出核酸のどの部位に蛍光物質を結合させても良い。従ってこの実施例において、別の部位に蛍光物質を結合させた例を実証する。以下に具体的な手順を示す。
【0185】
実施例1に示した方法を用いてDMTr−5’d(GATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCGAAT)−3’を合成した。次に、合成機のXボトルに取り付けた1−ジメトキシトリチルオキシ−2−(N−チオウレア(ジ−O−ピバロイル−フルオレセイン)−4−アミノブチル)−プロピル−3−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイトを反応させ、最後にDMTr−d(ATC)をこの後に合成した。
【0186】
脱保護および精製は、実施例1と同様の手法で行った。
【0187】
スライドガラスへの固定化および検出核酸の生成および蛍光スキャナーを用いた定量には、実施例1〜3に示した方法と同様の方法を用いた。
【0188】
この場合もまた、ハイブリダイゼーション前の蛍光の定量値とハイブリダイゼーション後の蛍光の定量値を差し引いた結果、標的核酸に相補的なスポットの傾向強度は減少したが、それ以外のスポットは、ハイブリダイゼーション前後でほとんど変化がなかった。蛍光強度から計算した標的核酸のハイブリダイゼーション量は95%であった。
【0189】
(実施例5:金ナノ微粒子を用いた例)
標識化合物として、図1では蛍光物質を使用しているが、金属微粒子、酸化還元性化合物、ホストゲスト反応を行う化合物など標識を行うことができるものならば特に限定しない。従って、この実施例では、金ナノ微粒子を利用する系を用いた。以下に具体的な手順を示す。
【0190】
0.00025MのHAuCl4、0.00025Mのクエン酸を20mLの水溶液中で攪拌する。氷で冷やした0.1M NaBH4を加えると直ちに赤色となり、粒径4nmの金ナノ微粒子が生成した。
【0191】
実施例1で示した方法で核酸自動合成機を用いて、DMTr−5’−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCAGAATG)−3’を合成した。核酸自動合成機のXボトルに、1−O−ジメトキシトリチル−ヘキシル−ジスルフィド,1’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]ホスホロアミダイトを入れ、引き続いて合成した。実施例1に示した方法で、脱保護および精製を行い、末端のチオール基はジチオスレイトールで脱保護することで、5’末端にチオール基を有するキメラ核酸を合成した。
【0192】
金ナノ微粒子と、チオール基を有するキメラ核酸との結合は、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)中で金ナノ微粒子とキメラ核酸とをインキュベートすることによって結合させた。
【0193】
(実施例6:核酸チップの再利用)
図1では、検出核酸(D)の3’側に核酸切断部位(E)をつなげているが、この二つの核酸、すなわち(D)と(E)との組み合わせを1回以上繰り返すことでプローブ核酸(F)に対して回数倍の量の検出核酸を調製することもできる。コストおよびプローブ核酸(F)に対して標的DNA(D)を完全にハイブリダイズさせる必要性から、この繰り返しは2回以上行い、プローブ核酸に対して等倍以上の濃度の検出核酸を用いることで核酸チップを製造することが望ましい。また、プローブ核酸と、検出核酸あるいは標的核酸の形成する二重鎖の融解温度の高い方の二重鎖の融解温度以上に昇温し、プローブ核酸以外の化合物を洗い流すことによって、一度使用した核酸チップを再利用することができる。ここで、基板上に固定化されたプローブ核酸に対して複数倍量検出核酸を製造しておき、最初に製造するのに必要となった検出核酸の残りを用いて、再利用用の核酸チップの製造を行うことができる。以下に具体的な手順を示す。
【0194】
実施例1で示した方法で核酸自動合成機を用いて、DMTr−5’−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCGAATG)−3’を合成した。
【0195】
実施例1および2でこのキメラオリゴデオキシヌクレオチドをガラス基板上に固定化し、アルカリ処理を行い、ハイブリダイゼーション後、洗浄溶液を回収し、エタノール沈澱を行って検出核酸を回収した。
【0196】
製作した生体物質検出チップを使用した後、70℃の超純水中に2時間沈め、生体物質検出チップから標的核酸を除去した。室温下、超純水で洗浄し、乾燥後、回収した検出核酸を善良生体物質検出チップ上に再塗布した。2℃の超順水中にこれを再度沈め、未反応の検出核酸を除去した。ここで再生した生体物質検出チップを再使用するかできるか実施例3に従って検査したところ、再使用することができることが確認された。
【0197】
(実施例7:プローブ核酸における検出核酸との相補的領域の位置の変更)
核酸切断部位(E)の3’側には、プローブ核酸(F)を結合する。図1では、プローブ核酸の5’側に検出核酸と相補的な領域を設けているが、この領域はプローブ核酸の配列の中であればよく、特に限定しない。本発明では、配列の真ん中あたりに相補的な領域を有する例でも実施することができる
(実施例8:プローブ核酸における標的核酸との相補的領域の位置の変更)
標的核酸(G)と相補的な領域は、図1では、5’側に設けているが、この領域はプローブ核酸の領域内であればよく特に限定しない。また、検出核酸(D)とプローブ核酸(F)との配列は、完全に相補的であることが望ましいが、一部相補的でなくてもかまわない。さらに、プローブ核酸(F)と標的核酸(G)との配列も、完全に相補的であることが望ましいが、一部相補的でなくてもかまわない。本発明では、真ん中あたりに相補的領域を有する、一部相補的でない例であっても実施することができる。
【0198】
(実施例9:核酸の方向の変更)
図1では、検出核酸(D)の3’側に核酸切断部位(E)を配置し、その3’側にプローブ核酸(F)を配置しているが、プローブ核酸(F)の3’側に核酸切断部位(E)、その3’側に検出核酸(D)を配置してもかまわない。本発明では、そのような配置でも実施することができる。
【0199】
(実施例10:検出デバイスの別の製造方法)
プローブ核酸(F)、核酸切断部位(E)、標識化合物を結合させていない検出核酸(D)を合成後、基板に固定化し、標識化合物を検出核酸に結合させてもかまわない。こうすることで、標識化合物を付けるコストが低下する。この実施例では、後から標識する方法を実証する。以下に具体的な手順を示す。
【0200】
実施例1と同様の手法で、5’−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCAGAATG)−SH−3’を合成した。ただし、CPG担体は、1−O−ジメトキシトリチル−プロピル−ジスルフィド、1’−スクシニル−1caa−CPGを用いた。また、ジチオスレイトール脱保護を行うことで、3’末端にチオール基を導入した。
【0201】
金メッキしたスライドガラス上に、50mMリン酸緩衝液中に溶解させた上記チオール化キメラ核酸をスポットした。このスライドガラスを乾燥させた後、窒素ガスで充填したグローブボックス上で入れた。乾燥アセトニトリル中に溶解させた1−ジメトキシトリチルオキシ−2−(N−チオウレア(ジ−O−ピバロイル−フルオレセイン)−4−アミノブチル)−プロピル−3−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイトをこのスライドガラス上に塗布し、乾燥アセトニトリルで二度洗浄することで、生体物質検出チップを製造した。
【0202】
この生体物質検出チップを分析に使用したところ、このチップもまた、上記実施例の他の装置と同様にサンプル中の生体物質を標識することなく、効率よく分析に使用することができることが実証された。
【0203】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0204】
【発明の効果】
本発明により、検出の標的となるサンプル中の生体物質を標識することなく、簡便に分析することができる。
【0205】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態を示す例示である。
【図2】本発明のデバイスの製造工程および使用工程を示す1実施形態の例示である。
【図3】本発明の自動化分析の1実施形態の例示である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、効率よく生体物質を検出および定量することができる新規システム、デバイスおよび方法、ならびにそれに使用する生体物質構築物およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップなど)では、固体支持体(例えば、平面状表面もしくは固体球面状表面)に共有結合もしくは静電的相互作用によりプローブ核酸を多種類結合させることにより製造されている。このようなデバイスでは、そのデバイス上のプローブ生体物質(例えば、核酸)と標的生体物質(例えば、核酸)との間の相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)により、標的核酸を検出および定量している。この際、標的生体物質は蛍光物質などの標識化合物で標識しておく必要性があるが、標的核酸は、一般的には細胞から取り出した、遺伝子をコードするDNA、RNAなどであり、これらの蛍光物質等による標識は非常の多くの操作を経て行われている。
【0003】
従来の生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップ)を用いた標的生体物質(例えば、核酸)の検出および定量法は、サンプル(細胞等)から標的生体物質(例えば、遺伝子をコードする核酸)を取りだし、蛍光物質などの標識化合物をその標的生体物質に結合させた後、デバイスまたはデバイスに使用される支持体上のプローブ核酸と、標識化合物を結合した標的生体物質とともにハイブリダイズさせ、プローブ核酸にハイブリダイズした、標識化合物で標識された標的生体物質からの信号を読みとることで検出及び定量を行っている。
【0004】
ここで、標的生体物質の標識を行うためには、例えば、核酸の場合、変性、昇温、遠心、冷却など数十ステップに達する操作を行う必要がある。これらの操作は、非常に複雑かつ熟練を要する操作である。さらに、標識操作は、高価な試薬が必要であることや、多数の器具が必要である結果、多くの時間がかかり、コストも高くなる。また、多数の操作が必要なことから多くの器具を使用する必要があり、これらが原因で、汚染(コンタミ)が発生しやすく、器具などへの標的生体物質の吸着による標的生体物質の減少が生じることや、標的生体物質に完全に標識できないことなどが原因で、定量性に大きな問題が生じる。特に、RNAを標識する場合には、その安定性の低さから標識操作を行う間に分解等が生じることは深刻な問題である。
【0005】
検出する生体物質(例えば、核酸)を標識化合物で標識する工程に多くの操作が必要であり、これが原因で種々の問題が発生する。従って、この工程を省略することが出来れば、標識工程が原因となる種々の問題を回避することができるはずである。
【0006】
標的生体物質(例えば、核酸)を標識化合物で標識していない、未修飾の標的生体物質(例えば、核酸)を用いた核酸の検出法が、水晶発振子微量天秤、表面プラズモン共鳴等を用いた方法で行われているが、基板上に多数の複雑な構造を持った検出用センサーを並べることの困難さや検出感度の点から実用化にまで至っていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−243857号公報
【特許文献2】
特表平3−505157号公報
【特許文献3】
特表平4−505763号公報
【非特許文献1】
S.P.Fodor et al.(1993)Nature 364:555−556
【非特許文献2】
M.Schena (1995)Science 270:467−470
【非特許文献3】
C.A.Mirkin et al.(1996)Nature 382:607−609
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題に鑑み、本発明は、生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップ)を使用する際に生じる、これらの種々の問題点を標的生体物質を直接標識化合物で標識しないことによって解決することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、支持体(例えば、基板)に固定化させたプローブ生体物質(例えば、核酸)に対してあらかじめ検出生体物質(例えば、核酸、これは必要に応じて標識されている)を結合させた生体物質検出デバイス(例えば、核酸チップ)を製造することにより解決された。ここで、このデバイス上のプローブ生体物質に対して標的生体物質を相互作用(例えば、ハイブリダイズ)させることにより検出生体物質を脱離させ、標的生体物質を相互作用(ハイブリダイゼーション)の前後での検出生体物質からの信号の変化量を測定することで定性および/または定量を行い、標的生体物質を標識することなしに、標的生体物質を検出および定量できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は、A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;およびB)該プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含する生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイスを提供する。このデバイスにおいて、上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複することを特徴とする。
【0011】
本発明では、感度の点およびデバイスの製造のしやすさやの観点から、標識化合物を用いたデバイス(例えば、核酸チップ)の製造を行う方が好ましい。特に、標識化合物として蛍光物質を用いた場合、蛍光物質を用いた標的核酸の検出は長年にわたり研究されており、また、関連する装置も十分に改良がなされていることから、そのような物質を標識として用いることがより好ましい。
【0012】
以上のことを考慮して鋭意検討を重ねた結果、本発明では、標識化合物を標的核酸に結合するのではなく、支持体上に結合したプローブ生体物質の方に検出生体物質を相互作用させるかまたはその検出生体物質に標識化合物を結合するという新たな発想によって、従来の技術で問題とされてきた課題を解決することができた。
【0013】
しかし、支持体上に固定化したプローブ生体物質に対して標識化合物を結合させた後、標的核酸をハイブリダイゼーションしても、標的生体物質がハイブリダイズしたかどうか検出することは困難であることから、標識は検出生体物質の方に行うことが好ましい。また、核酸である場合、プローブ核酸に制限酵素認識部位を導入するか、またはタンパク質である場合、プローブタンパク質に特異的ペプチド配列を導入することにより、標的生体物質とプローブ生体物質をハイブリダイズさせた後に、形成した制限酵素認識部位で二重鎖を制限酵素または特異的ペプチド配列に対する特異的プロテアーゼまたはペプチダーゼで切断する方法も考えられる。この場合、特定の配列を導入することが必要であり、また、高価な制限酵素またはプロテアーゼが必要であることや、一度使用した生体物質デバイスを再利用できない。従って、好ましくは、支持体上に固定化したプローブ生体物質に対して検出生体物質を相互作用(例えば、ハイブリダイズ)させ、標的生体物質をプローブ生体物質に対して相互作用するとともに、検出生体物質をプローブ生体物質から脱離させ、その前後で検出生体物質からの信号を検出、定量し、その信号量の差を用いて標的生体物質の検出、定量を行う。
【0014】
しかしこれらの手法でも、支持体に固定化するプローブ生体物質、そのプローブ生体物質に対して全体もしくは部分的に相互作用する検出生体物質(必要に応じて標識される)を合成する必要があり、固定化するプローブ生体物質の種類に対して2倍の種類の生体物質を合成する必要があることから製造コストは上昇する。そこで、プローブ生体物質、生化学的もしくは化学的に分解(切断)可能な部位を有するリンカー、検出生体物質を結合させた生体物質構築物を一個の構築物として合成し、リンカーをそのリンカーが分解可能な条件下(例えば、核酸分解酵素もしくはアルカリ溶液の存在下など)により分解させることで、一度にプローブ生体物質および検出生体物質(必要に応じて標識される)が相互作用した形で調製することによってより有利に本発明のデバイスを製造することができる。例えば、5’側から検出生体物質として蛍光標識されたDNA、リンカーとしてRNA、プローブ生体物質としてプローブDNAをその順序で配置し(ここで、プローブDNAと標識DNAとは少なくとも一部相補的である)、RNAをアルカリ条件下で分解後、残った標識DNAと支持体(例えば、基板)に固定したプローブDNAをハイブリダイズさせることで、有利なDNAチップを製造することができる。
【0015】
従って、本発明は、以下を提供する。
【0016】
(1) 生体物質構築物であって、
A)目的とする標的に対して相互作用する、プローブ生体物質;
B)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質;および
C)上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である、リンカー、
を包含し、
上記リンカーは、上記プローブ生体物質と上記検出生体物質とを連結し、
上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、生体物質構築物。
【0017】
(2) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸またはその誘導体である、項目1に記載の生体物質構築物。
【0018】
(3) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、ポリペプチドまたはその誘導体である、項目1に記載の生体物質構築物。
【0019】
(4) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAであり、上記リンカーはRNAである、項目1に記載の生体物質構築物。
【0020】
(5) 上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する、項目1に記載の生体物質構築物。
【0021】
(6) さらに標識を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0022】
(7) 上記検出生体物質は、標識を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0023】
(8) 上記検出生体物質は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される標識を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0024】
(9) 上記検出生体物質は、蛍光物質を含む、項目1に記載の生体物質構築物。
【0025】
(10) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である、項目1に記載の生体物質構築物。
【0026】
(11) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係に基づく、項目1に記載の生体物質構築物。
【0027】
(12) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、抗原抗体反応に基づく、項目1に記載の生体物質構築物。
【0028】
(13) 項目1に記載の生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイス。
【0029】
(14) 上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、項目13に記載の生体物質検出デバイス。
【0030】
(15) 上記生体物質検出デバイスは、核酸チップである、項目13に記載の生体物質検出デバイス。
【0031】
(16) 上記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、項目13に記載の生体物質検出デバイス。
【0032】
(17) 支持体を含む生体物質検出デバイスであって、
上記支持体には、生体物質構築物が配置され、
上記生体物質構築物は、
A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;および
B)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含し、
上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、
生体物質検出デバイス。
【0033】
(18) 上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0034】
(19) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸またはその誘導体である、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0035】
(20) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、ポリペプチドまたはその誘導体である、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0036】
(21) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAを含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0037】
(22) さらに標識を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0038】
(23) 上記検出生体物質は、標識を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0039】
(24) 上記検出生体物質は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される標識を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0040】
(25) 上記検出生体物質は、蛍光物質を含む、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0041】
(26) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0042】
(27) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係に基づく、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0043】
(28) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、抗原抗体反応に基づく、項目17に記載の生体物質検出デバイス。
【0044】
(29) 生体物質検出デバイスを製造する方法であって、
A)項目1に記載の生体物質構築物を支持体に配置する工程;および
B)上記支持体を、上記リンカーが分解可能な条件下に供する工程、
を包含する、方法。
【0045】
(30) 上記生体物質検出デバイスは生体物質チップである、項目29に記載の方法。
【0046】
(31) 上記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、項目29に記載の方法。
【0047】
(32) 上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAであり、上記リンカーはRNAであり、上記分解可能な条件は、RNA分解酵素またはアルカリによる処理である、項目29に記載の方法。
【0048】
(33) 上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する、項目29に記載の方法。
【0049】
(34) 上記生体構築物質はさらに標識を含み、上記標識は上記分解可能な条件下で分解しないかまたは上記リンカーよりも分解の程度が少ない、項目29に記載の方法。
【0050】
(35) サンプル中の標的生体物質を検出または定量を行う方法であって、
A)生体物質検出デバイスを提供する工程であって、上記生体物質検出デバイスは、
A−1)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;および
A−2)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、
を包含する、生体物質構築物が配置された支持体を含み、
上記検出生体物質と上記標的生体物質とは識別可能であり、
上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、工程;
B)上記サンプルを、上記標的生体物質と上記プローブ生体物質とが複合体を形成する条件下で上記生体物質検出デバイスに曝す工程;ならびに
C)上記標的生体物質と上記プローブ生体物質との複合体の量を測定し、上記複合体の量と、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の合計量との相違から上記標的生体物質の存在または量を同定する工程、
を包含する、方法。
【0051】
(36) 上記検出生体物質は標識を含み、上記複合体の量と上記合計量との相違は上記標識の存在または量の増減から算出される、項目35に記載の方法。
【0052】
(37) 上記検出生体物質と上記標的生体物質とは、異なる生体物質を含む、項目35に記載の方法。
【0053】
(38) 上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、項目35に記載の方法。
【0054】
(39) 上記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、項目35に記載の方法。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0056】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0057】
本明細書において「プローブ」とは、特定の物質、部位、状態などを検出するための分子をいう。従って、「プローブ生体物質」とは、特定の物質、部位、状態などを検出するための生体物質をいう。そのような生体物質は、特定の検出対象と特異的に相互作用することができる限り、どのような物質もよい。本明細書では、特に、プローブ生体物質は、支持体上に、直接または高分子化合物などを介して結合させたものをいう。そのようなプローブ生体物質には、例えば、核酸、ポリペプチド、ポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。生体物質が核酸である場合、プローブ生体物質はプローブ核酸ともいう。
【0058】
本明細書において「リンカー」とは、ある分子と別の分子とを連結するための分子内部分をいう。本明細書においてリンカーは、プローブ生体物質と検出生体物質とを連結する。本発明において用いられるリンカーは、プローブ生体物質および検出生体物質が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である。その結果、そのような分解可能な条件下で、リンカーのみが分解されて、プローブ生体物質と検出生体物質との複合体が形成される。リンカーは、プローブ生体物質または検出生体物質と同じ物質であってもよく(例えば、DNA、ペプチド)、異なる物質(他の生体物質がDNAであり、リンカーがRNAである)であってもよい。リンカーが他の生体物質と同じ物質である場合、そのリンカーは特異的な切断部位(例えば、制限酵素部位、プロテアーゼの切断部位など)を含むことが好ましい。
【0059】
本明細書において「検出」(detection)とは、生体物質に関して用いられる場合、ある検出対象が検知されるとき、その生体物質自体またはその生体物質に付属する標識などにより、その検出対象の検出を可能にするための生体物質をいう。そのような検出生体物質には、例えば、核酸、ポリペプチド、ポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。生体物質が核酸である場合、検出生体物質は検出核酸ともいう。
【0060】
本明細書において「標的」(target)とは、生体物質に関して用いられるとき、検出を行う対象の生体物質をいう。従って、標的核酸というときは、例えば、目的とする細胞などから取りだした所望の核酸分子をいう。標的生体物質は、生体に由来するかまたは生体に関連する物質であって、その検出の対象とする限り、どのような物質であってもよい。そのような標的生体物質には、例えば、核酸、ポリペプチド、ポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0061】
本明細書において「サンプル」は、生体物質を含むかまたは含むと予想されるものであればどのようなものでもよい。したがって、サンプルは、生物の全部または一部から取り出されたものであり得る。
【0062】
本明細書において使用される用語「生体物質」または「生体分子」とは、生体に関連する物質または分子をいう。生体物質は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されない。生体に影響を与え得る分子であれば生体物質の定義に入る。したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された分子も生体への効果を目的としている限り、生体物質の定義に入る。生体物質には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、有機低分子など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。従って、本発明の支持体に結合され得る限り、生体物質には、細胞自体、組織の一部も包含され得る。
【0063】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、生物に由来する場合、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
【0064】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、臓器または器官に由来する場合、どのような臓器または器官由来でもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。植物の場合、そのような器官としては、カルス、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0065】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、組織に由来する場合、どのような組織由来でもよい。本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、構成細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われる。
【0066】
本発明において検出または定量の対象となるサンプルは、細胞に由来する場合、どのような細胞由来でもよい。本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。本発明では対象となる細胞は、体細胞であっても胚細胞であってもよい。そのような細胞としては、動物の場合、例えば、胚性幹細胞、体性幹細胞、分化細胞(例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞など)など、植物の場合、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などからのに由来する細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0067】
本明細書において使用される用語「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義に包含されるのはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変である。
【0068】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよく、誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログも含む。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。したがって、「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。そのようなアミノ酸誘導体またはアミノ酸アナログを含むタンパク質またはポリペプチドなどは、特に、本明細書においてタンパク質またはポリペプチドの誘導体またはアナログということがある。
【0069】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0070】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチドのような、当該分野において公知のオリゴヌクレオチドのアナログおよび誘導体をも含む。従って、この用語には、DNA、RNA、それらの誘導体、例えば、リン酸結合部位を修飾したホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミデートの他、2’−O−メチル型RNA等、糖部分を修飾した誘導体、塩基部分を修飾した誘導体、さらに、核酸とは大きく異なった化学構造でも、例えば、PNA(ペプチド型核酸)等の様に核酸とハイブリダイゼーションが行えるものも含まれる。オリゴヌクレオチドには、cDNAなども含まれるがそれらに限定されない。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。ヌクレオチドとしては、DNA、RNAなどが含まれるがそれらに限定されない。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド型核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。そのような誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む核酸を、特に、本明細書において核酸の誘導体またはアナログということがある。
【0071】
用語「ポリサッカリド」、「多糖」、「オリゴサッカリド」、「糖」および「炭水化物」は、本明細書において互換的に使用され、少なくとも1つの水酸基および少なくとも1つのアルデヒド基またはケトン基を含む、ポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトンをいう。代表的に、ポリサッカリドとしては、Cn(H2O)mで表わされ、多価アルコールのアルデヒド,ケトン,酸、多価アルコール自体、それらの誘導体および置換体、ならびにそれらのアセタール型ポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。「単糖」または「モノサッカリド」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式CnH2nOnで表されるものをいう。ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9および10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース,後者をケトースという。ポリサッカリドには、糖以外の物質(例えば、ペプチド)などと複合した複合糖質もまた含まれ得る。多糖の生物学的機能としては生体エネルギーの貯蔵(例えば澱粉、グリコゲン、イヌリンなど)、構造支持(例えば、セルロース、キチン、グリコサミノグリカンなど)が挙げられる。しかし,細胞膜や細胞壁の多糖成分は細胞分裂の過程に直接関与したり、細胞と細胞との間、細胞とウイルスとの間、細胞と抗体との間などの相互認識、生体防御機構に関わることも多く、生体におけるその意義は大きい。
【0072】
本明細書において「脂質」とは、体を構成する物質のうち水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい物質群をいい、多種類の有機化合物が含まれる。一般に長鎖脂肪酸とその誘導体または類似体を脂質と呼ぶことが多いが、広義にはステロイド、カロテノイド、テルペノイド、イソプレノイド、脂溶性ビタミンなどの生体内にある水不溶で有機溶媒に易溶の有機化合物群を脂質と総称する。脂質としては、単純脂質(中性脂質)、複合脂質、誘導脂質などが挙げられる。単純脂質は、肪酸と各種アルコールとのエステルである。複合脂質は、脂肪酸とアルコールのほかにリン酸、糖、硫酸、アミンなど極性基をもつ化合物で、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、C−P結合をもつ脂質、硫脂質などが挙げられるがそれらに限定されない。脂質は、エネルギーの貯蔵として意味を有するほかに、情報伝達物質として働くことが知られており、その機能を調査することは意義深い。
【0073】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはポリサッカリド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはポリサッカリドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリサッカリドの場合、例えば、その長さの下限としては、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のサッカリドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0074】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0075】
本明細書では塩基配列およびアミノ酸配列の同一性、類似性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0076】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。
【0077】
「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、抑制を目的とする遺伝子のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。核酸配列の相同性は、たとえばAltschulら(J.Mol.Biol.215,403−410(1990))が開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより、scoreで類似度が示される。
【0078】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。
【0079】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0080】
「発現量」とは、目的の細胞、生物などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量の測定方法としては、特異的抗体を用いたELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法などが挙げられる。mRNAレベルでの発現の測定方法としては、ノーザンブロット法、ドットブロット法などの分子生物学的測定方法が挙げられるがそれらに限定されない。このような方法を用いて本発明の検出デバイスを製造することができる。本明細書において、好ましい実施形態では、遺伝子の発現量または発現レベルは、mRNAレベルの発現の量またはレベルをいう。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。本明細書において、好ましい実施形態では、遺伝子の発現量または発現レベルの変化は、mRNAレベルの発現の量またはレベルでの変化をいう。
【0081】
転写レベルは、絶対的または相対的に定量され得る。絶対的な定量は、1つ以上の既知濃度の標的核酸の包含によって、または既知量の標的核酸自体を用いて、そして公知の標的核酸との未知のハイブリダイゼーション強度を参照して(例えば、標準曲線の作成によって)、行うことができる。あるいは、相対定量は、転写物の2つ以上の多型性形態の間でのハイブリダイゼーションシグナルの比較によって達成され得る。このような解析は、コンピュータシステムを用いて行うことができる。
【0082】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
【0083】
本明細書において、遺伝子の発現量の測定は、種々のストリンジェンシー条件下で行われ得る。そのようなストリンジェンシー条件としては、ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、低い程度にストリンジェントな条件などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0084】
本明細書において「分解」とは、化合物が2種以上のより簡単な物質に変化する化学反応をいう。ある物質、例えば、リンカーとしてのRNAがある一定条件で分解する場合、分解後には、そのRNAは一部または全部が消失している。従って、リンカーが分解した場合、リンカーが連結していた2つの生体物質は、分離する。そのような分解は、リンカーの部分の一部において行われてもよい。そのような場合、分解の後もその部分の一部は残存する。そのような場合、本明細書において「切断」ともいう。従って、本明細書において「切断」という概念は、「分解」に包含される。
【0085】
本明細書において「分解可能」とは、物質について用いられるとき、ある一定条件の下で、その物質の少なくとも一部、好ましくは全部が分解されることをいう。リンカーが分解可能である場合、そのリンカーが連結する第一の物質と第二の物質とは、そのリンカーが分解可能な条件下におかれた場合、その第一の物質と第二の物質とが分離される。ただし、この第一の物質と第二の物質とは、本発明では、相互作用可能であり、分離後も、相互作用により会合した状態のままでいる。本明細書において分解可能である条件は、例えば、特定の物理的条件(温度、湿度、圧力、光、磁場、電場、紫外線、紫外線、電磁波など)、特定の化学的条件(pH、イオン強度、特定の化学物質(酸素など)の存在、金属、金属イオン、錯体など)、特定の生化学的条件(例えば、制限酵素の存在、ペプチダーゼ/プロテアーゼの存在、リボザイム、酵素などの存在)、他の条件(機械的条件など)、上記条件が複合化した条件などが挙げられるがそれらに限定されない。分解可能な条件は、本発明の検出デバイスの目的に応じてまたは製造条件の簡便さなどに応じて変更することができる。
【0086】
本明細書において「安定な」とは、生体物質について用いられるとき、ある条件において、その生体物質が実質的に分解しないことをいう。
【0087】
本明細書において「制限酵素」または「制限エンドヌクレアーゼ」とは、互換可能に用いられ、2本鎖DNAの特定の塩基配列を認識して、リン酸基を5’末端に残す形で両鎖のホスホジエステル結合を加水分解する酵素をいう。したがって、制限酵素を用いる場合、対象となるDNAは、特異的部分でのみ分解すなわち切断が生じる。そのような特異的部分を、本明細書において「制限酵素部位」または「制限部位」という。
【0088】
本明細書において「RNA分解酵素」とは、RNAを分解することができる酵素一般をいう。好ましくは、本発明において用いられるRNA分解酵素は、DNAを分解しない。そのようなRNA分解酵素としては、例えば、リボヌクレアーゼI、II、環状化リボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼH、P、T1が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、エンドヌクレアーゼ活性を有するものが使用される。
【0089】
本明細書において「アルカリ条件」とは、RNAが分解するpHである条件をいう。RNAはアルカリ条件下ではリボースの2位の水酸基の求核性が増大するため2’−3’環状エステルを生成する形での加水分解が速やかに進行する。この化学的特性はDNAに比べてRNAが不安定であることから、本明細書において用いられるアルカリ条件としては、DNAが分解しないかもしくは分解がそれほど顕著でない条件であって、RNAが分解する条件をいう。そのようなアルカリ条件としては、pH7.0以上(温度は0℃〜100℃以下)が挙げられるがそれらに限定されない。そのようなアルカリ条件を与える物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0090】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0091】
本明細書において第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」とは、第一の生体物質が、第二の生体物質に対して、第二の生体物質以外の生体物質(特に、第二の生体物質を含むサンプル中に存在する他の生体物質)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。生体物質について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、生体物質がともに核酸である場合、第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」ことには、第一の生体物質が、第二の生体物質に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、生体物質がともにタンパク質である場合、第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の生体物質がタンパク質および核酸を含む場合、第一の生体物質が第二の生体物質に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。
【0092】
そのようなレセプター−リガンドの関係にある分子としては、例えば、ドーパミンレセプター、ホルモンレセプター、TNFレセプター、EGFレセプター、インスリンレセプター、ケモカインレセプター、環境ホルモンレセプター、ウイルス性レセプター、細胞表面レセプターなどならびにそのリガンド(ドーパミン、ホルモン、TNF、EGF、インスリン、ケモカイン、環境ホルモンなど)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0093】
そのような抗原抗体反応にある分子としては、例えば、抗原として血球表面抗原タンパク質、ウイルス、細菌、植物・動物アレルゲン、微生物、ハウスダスト、抗体としてイムノグロブリン(例えば、上記抗原に対して特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0094】
そのような基質−酵素の関係にある分子としては、例えば、アルコール脱水素酵素−NAD、乳酸脱水素酵素−NADまたはNADH、トレオニン脱水素酵素−アデノシンモノホスフェートなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0095】
本明細書において「少なくとも一部と特異的に相互作用する」とは、2つの生体物質に関して使用され、おのおのの生体物質の少なくとも一部同士が特異的に相互作用することをいう。そのような「一部」の程度または範囲は、生体物質によって変動し、例えば、生体物質が核酸であれば、相補性を有するに充分であり得る長さである。生体物質がタンパク質であれば、例えば、各々の相互作用を生じるに充分な長さである。そのような長さは相互作用の種類によって変動するが、通常少なくとも3アミノ酸であり、好ましくは、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも15アミノ酸などであり得る。生体物質が核酸およびタンパク質以外の物質である場合でも、当業者は当該分野において周知の技術を用いて適宜相互作用するに足る最小限の部分を決定することができる。
【0096】
本命最初において、抗体またはリンパ球レセプターとの結合性を、「抗原性」(antigecity)という。抗体産生などの免疫応答を誘導する特性を「免疫原性」(immunogenicity)という。抗原として使用される物質は、例えば、その目的とする物質(例えば、タンパク質)を少なくとも1つ含む。含まれる物質は、全長が好ましいが、免疫を惹起し得るエピトープを少なくとも一つ含んでいれば、部分配列でもよい。本明細書において、「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。エピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。
【0097】
本明細書において「相補性」とは、核酸の塩基間に見られる特異的な対合関係をいう。通常、アデニンとチミン(またはウラシル)との間、グアニンとシトシンとの間で水素結合により特異的な対合がおこる性質をいうが、それらに限定されない。
【0098】
本明細書において「相補的」であるとは、ある核酸について用いられるとき、その核酸と別の核酸との間に相補性が少なくとも一部存在することをいう。好ましくは、相補的な核酸とは、別の核酸と完全な相補性を有することをいうが、標的を検出することができる程度に相補性を有する限り、完全さはなくてもよく、本発明では、完全な相補性を有することには限定されない。
【0099】
本明細書において「少なくとも一部に相補性を有する」とは、2つ以上の核酸についていうとき、その一部(例えば、少なくとも5ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長、さらに好ましくは15ヌクレオチド長)において相補性を有することをいう。上記「少なくとも一部」の長さは、相互作用を生じさせるに十分な程度の長さであることが好ましい。ある実施形態では、この「少なくとも一部」の長さは少なくとも20ヌクレオチド長であることが好ましい。理論上実質的に別の分子が偶然にハイブリダイズすることがないからである。この相補性のある箇所は、プローブ核酸の5’側にあっても中間部にあっても3’側にあってもよい。また、相補性は、飛び飛びにあってもよい。
【0100】
本明細書において「標識」とは、物質を同定するために、他とは異なった特徴をその物質に付与させる手段(物質など)をいう。そのような標識としては、例えば、同位体、スピン、親和力、色素、ビオチン法、化学発光法、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子などが含まれるがそれらに限定されない。蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、Texas Red、Indocarboxyanine(Cy3)、Indodicarbocyanin(Cy5)、Alexa488、Rhodamine Greenなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0101】
本明細書において使用される用語「基板」および「支持体」は、本明細書において、互換可能に使用され、本発明のデバイス(例えば、クロマトグラフィー基材、チップ、アレイなど)の基礎が構築される材料(好ましくは固体)をいう。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体物質(特に、プローブ生体物質)に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
【0102】
基板または支持体として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。当然、クロマトグラフィー基材として通常使用されるもの(例えば、多孔質シリカ、非多孔質シリカ、ポリスチレン共重合体、アルミナ、金属被覆材料、炭素材料、ガラス、繊維、細管内壁)もまた、本発明の支持体として使用され得る。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、核酸ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。
【0103】
そのような支持体または基板は検出デバイスとして使用することができる限り、どのような形状であってもよい。そのような形状としては、平面状、球面状、破砕状、細管内および外壁の表面などが挙げられる。好ましくは、例えば、生体物質検出チップとして使用する場合、平面状または球面状であり得る。また、クロマトグラフィー基材として使用する場合は、そのような支持体または基板は平面状または球面状であり得るがそれらに限定されない。
【0104】
本発明の「検出デバイス」は、標的物質の検出を行うことができる限り、どのような形態を採ってもよい。そのような形態としては、例えば、クロマトグラフィー基材、生体物質検出チップ(例えば、DNAチップのような核酸チップ)、表面プラズモンチップ、水晶発振子マイクロバランスチップ、原子間力顕微鏡で検出するようなデバイス、球状固定基板固定化した生体物質構造物をフローサイトメトリーなどのレーザー測定により検出するデバイスなどが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、そのような検出デバイスは、クロマトグラフィー樹脂または生体物質検出チップであり得る。より好ましくは、そのような検出デバイスは、生体物質検出チップであり得る。
【0105】
本明細書において使用されるクロマトグラフィー基材は、当該分野において周知の技術を用いて製造および使用され得る。そのような技術は、例えば、P.Cuatrecasa et al.(1968)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 61:636−643;M.N.Lipsett et al.(1964) J.Biol.Chem.236:857−862;M.Radermecker(1969)Immunochemistry 6:484−488;およびP.O.Larsson et al.(1971)Biotech.Bioeng.13:393−398などに記載されており、これらの文献に記載される内容は、本明細書においてその全体が参考として援用される。
【0106】
検出技術において、物質を直接測定してもよいし、物質から発される信号を測定してもよい。そのような技術は当該分野において周知であり、例えば、「DNAチップ応用技術」松永是 シーエムシー(2000);「DNAチップ応用技術II」松永是 シーエムシー(2001)などに記載されている。
【0107】
本明細書において「チップ」とは、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。本明細書において、「生体物質チップ」、「生体分子チップ」または「生体物質検出チップ」とは、基板と、生体物質とを含み、その生体物質が本発明の構造(ここで、プローブ生体物質および検出生体物質とは特異的に相互作用している)を有するものをいう。本発明の生体物質チップは、その基板に対して本明細書の生体物質構築物を配置することによって作製することができる。
【0108】
従って、本明細書では、「核酸チップ」とは、固体基板上の表面に多数の種類の核酸(プローブ核酸および検出核酸。ここで、このプローブ核酸とこの検出核酸とはハイブリダイズしている)を配置し、標的核酸とプローブ核酸とをハイブリダイズさせることにより、標的核酸を検出および/または定量するチップをいう
本明細書において用いられるように、「アレイ」とは、固相表面または膜上の固定物体の固定されたパターンまたはそのようなパターンを有する分子集団を意味する。典型的に、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている核酸配列を捕獲するように結合した生体物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質−RNA融合分子、タンパク質、脂質、糖、有機低分子など)で構成される。アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、生体分子の一定の集合をいう。
【0109】
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴う生体分子との関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスの形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。各々のアドレスのサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、分析物の量および/または利用可能な試薬、生体分子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1〜2nmから数cm(たとえば、1mm〜2mm〜数cmなど、125×80mm、10×10mmなど)の範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
【0110】
(一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、クロマトグラフィー技術、計測機器および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
【0111】
分子生物学および組換えDNA技術は、例えば、Maniatis,T.etal.(1982).Molecular Cloning :A Laboratory Manual,Cold Spring Harborならびにその第二版(1987)およびその第三版(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Sambrook,J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods andApplications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methodsfrom Current Protocols in MolecularBiology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0112】
本発明において用いられる生体物質は、生体から採取され得るほか、当業者に公知の方法によっ化学的に合成され得る。例えば、自動固相ペプチド合成機を用いた合成方法は、以下により記載される:Stewart,J.M.et al.(1984).Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.;Grant,G.A.(1992).Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman;Bodanszky,M.(1993).Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Bodanszky,M.et al.(1994).ThePractice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Fields,G.B.(1997).Phase Peptide Synthesis,Academic Press;Pennington,M.W.et al.(I 994).Peptide Synthesis Protocols,Humana Press;Fields,G.B.(1997).Solid−Phase Peptide Synthesis,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I 996).Bioconjugate Techniques,AcademicPress。オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystemsなどにより市販されるDNA合成機の何れかを用いて、自動化学合成により調製され得る。自動オリゴヌクレオチドの合成のための組成物および方法は、例えば、米国特許第4,415,732号,Caruthers et al.(1983);米国特許第4,500,707号およびCaruthers(1985);米国特許第4,668,777号,Caruthers et al.(1987)に開示される。
【0113】
本発明では、生体物質(たとえば、有機低分子、コンビナトリアルケミストリー生成物)のライブラリーを、基板に結合させ得、これを用いて分子をスクリーニングするためのチップを生成することができる。本発明で使用する化合物ライブラリは、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術、醗酵方法、植物および細胞抽出手順などが挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの手段により、作製することができるかまたは入手することができる。コンビナトリアルライブラリを作成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、E.R.Felder,Chimia 1994,48,512−541;Gallopら、J.Med.Chem.1994,37,1233−1251;R.A.Houghten,Trends Genet.1993,9,235−239;Houghtenら、Nature 1991,354,84−86;Lamら、Nature 1991,354,82−84;Carellら、Chem.Biol.1995,3,171−183;Maddenら、Perspectives in Drug Discovery and Design2,269−282;Cwirlaら、Biochemistry 1990,87,6378−6382;Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992,89,5381−5383;Gordonら、J.Med.Chem.1994,37,1385−1401;Leblら、Biopolymers 1995,37 177−198;およびそれらで引用された参考文献を参照のこと。これらの参考文献は、その全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0114】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0115】
フォトリソグラフィー技術は、Fordor et al.によって開発された技術であり、光反応性保護基を利用する(Science,251、767(1991)を参照)。この保護基は、各塩基モノマーと同種、あるいは別種の塩基モノマーとの結合を阻害する働きがあり、この保護基が結合している塩基末端には、新たな塩基の結合反応は生じない。また、この保護基は、光照射によって容易に除去することができる。まず、基板全面にこの保護基を有するアミノ基を固定化させておく。次に、所望の塩基を結合させたいスポットにのみ、通常の半導体プロセスで使用されるフォトリソグラフィー技術と同様の方法を使って、選択的に光照射を行う。これにより、光が照射された部分の塩基のみ、後続の結合によって次の塩基を導入できる。ここに、同じ保護基を末端に有する所望の塩基を結合させる。そして、フォトマスクの形状を変更して、別のスポットに選択的に光照射を行う。このあと、同様にして、保護基を有する塩基を結合させる。この工程をスポット毎に所望の塩基配列が得られるまで繰返すことによってDNAアレイが作製される。本明細書において、フォトリソグラフィー技術が使用され得る。
【0116】
「アレイ」または「マイクロアレイ」(DNAが配置されている場合、DNAマイクロアレイとも呼ばれる)については、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。以下、DNAアレイおよびそれを使用する遺伝子分析方法を簡単に説明する。
【0117】
「DNAアレイ」または「DNAマイクロアレイ」とは、DNAを基板上に整列(array)させて、固定させたデバイスをいう。DNAアレイは、基板の大きさまたは載せるDNAの密度によって、DNAマクロアレイおよびDNAマイクロアレイなどに分けられるが、本明細書では、特に断らない限り、DNAアレイは、DNAマイクロアレイと互換的に使用される。マクロとマイクロとの境界は厳密に決まっているわけではないが、一般に、「DNAマクロアレイ」とは、メンブレン上にDNAをスポットした高密度フィルター(high density filter)をいい、「DNAマイクロアレイ」とは、ガラス、シリコンなどの基板表面にDNAを載せたものをいう。載せる種類によって、cDNAアレイ、オリゴDNAアレイなどがある。
【0118】
高密度オリゴDNAマイクロアレイのうち、半導体集積回路製造のためのフォトリソグラフィー技術を応用し、基板上で一度に複数種のオリゴDNAを合成することで作製されたものを、半導体チップになぞらえて、特に「DNAチップ(chip)」という。この方法を用いて作製されたものとしては、GeneChip(登録商標)(Affimetrix、CA、米国)などが挙げられる(Marshall Aら、(1998)Nat.Biotechnol.16:27−31およびRamsay Gら、(1998)Nat.Biotechnol.16 40−44を参照のこと)。好ましくは、本発明におけるマイクロアレイを用いた遺伝子解析においては、このGeneChip(登録商標)が用いられ得る。DNAチップは、狭義には上記のように定義されるが、DNAアレイまたはDNAマイクロアレイ全体をいうこともあり、従って、cDNAのような既成のDNAが高密度で配置されたチップもまた、DNAチップと呼ばれ得る。
【0119】
DNAマイクロアレイは、このように、ガラス基板上に数千〜数万またはそれを超える遺伝子DNAを高密度に配列したデバイスであることから、cDNA、cRNAまたはゲノムDNAとのハイブリダイゼーションによって、遺伝子発現のプロファイルまたは遺伝子多型をゲノムスケールで解析することが可能となっている。この手法により、シグナル伝達系および/または転写制御経路の解析(Fambrough Dら(1999),Cell 97,727−741)、組織修復の機構の解析(Iyer VRら、(1999),Science 283:83−87)、医薬品の作用機構(Marton MJ、(1999),Nat.Med.4:1293−1301)、発生・分化の過程における遺伝子発現変動の広汎な解析、病態に伴って発現変動する遺伝子群の同定、またはシグナル伝達系もしくは転写制御に関与する新たな遺伝子の発見などが可能となってきた。また、遺伝子多型についても、多数のSNPを1つのDNAマイクロアレイで解析することが可能となっている(Cargill Mら、(1999),Nat.Genet.22:231−238)。
【0120】
従来は、二蛍光標識法などにより対象が検出されていた。この方法では、2つの異なるmRNAサンプルをそれぞれ異なる蛍光で標識し、同一マイクロアレイ上で競合的ハイブリダイゼーションを行って、両方の蛍光を測定し、それを比較することで遺伝子発現の相違を検出する。蛍光色素としては、例えば、Cy5およびCy3などが最も用いられているが、それらに限定されない。Cy3およびCy5の利点は、蛍光波長の重なりが殆どないという点である。二蛍光標識法は、遺伝子発現の相違のみならず、変異または多型性を検出するためにも使用され得る。しかし、このような二蛍光標識法は、標識が煩雑であるという欠点があった。本発明はこの欠点を解消する。
【0121】
蛍光標識の場合、検出するための装置は当該分野において周知であり、慣用されている。例えば、Stanford Universityのグループは、オリジナルスキャナを開発している。このスキャナは、蛍光顕微鏡と稼動ステージとを組み合わせたものである(http://cmgm.stanford.edu/pbrownを参照)。従来型のゲル用蛍光イメージアナライザであるFMBIO(日立ソフトウェアエンジニアリング)、Storm(Molecular Dynamics)などでも、スポットがそれほど高密度でなければ、DNAマイクロアレイの読み取りを行い得る。その他に利用可能な検出器としては、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型));Luminexシステム(日立ソフトウェアエンジニアリング;フローサイトメトリー型)、SPR−MACS(日本レーザ電子、ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社;表面プラズモン型)などが挙げられる。
【0122】
アレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysistechnology consortium)と呼ばれる形式などが挙げられる。
【0123】
(発明の利用)
本発明の検出デバイスは、例えば、診断、法医学、薬物探索(医薬品のスクリーニング)および開発、分子生物学的分析(例えば、アレイベースのヌクレオチド配列分析およびアレイベースの遺伝子配列分析)、タンパク質特性および機能の分析、薬理ゲノム学、プロテオミクス、環境調査ならびにさらなる生物学、化学、農学、畜産学上の分析において使用され得る。
【0124】
本発明の検出デバイスは、種々の遺伝子の検出に使用することができ、検出する遺伝子は特に限定されない。そのような検出される遺伝子としては、例えば、ウイルス病原体(たとえば、肝炎ウイルス(A、B、C、D、E、F、G型)、HIV、インフルエンザウイルス、ヘルペス群ウイルス、アデノウイルス、ヒトポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパルボウイルス、ムンプスウイルス、ヒトロタウイルス、エンテロウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、HTLVを含むがそれらに限定されない)の遺伝子;細菌病原体(たとえば、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ菌、ヘリコバクターピロリ菌、カンピロバクター、コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、エルシニア、淋菌、リステリア菌、レプトスピラ、レジオネラ菌、スピロヘータ、肺炎マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアを含むがそれらに限定されない)の遺伝子、マラリア、赤痢アメーバ、病原真菌、寄生生物、真菌の遺伝子などの検出に用いることができる。
【0125】
本発明の検出デバイスはまた、感染性疾患(例えば、AIDS、インフルエンザなど)、遺伝性疾患、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、家族性結腸ポリープ症、神経腺維腫症、家族性乳癌、色素性乾皮症、脳腫瘍、口腔癌、食道癌、胃癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、甲状腺腫瘍、乳腺腫瘍、泌尿器腫瘍、男性器腫瘍、女性器腫瘍、皮膚腫瘍、骨・軟部腫瘍、白血病、リンパ腫、固形腫瘍、等の腫瘍性疾患などを検査および診断するために使用され得る。
【0126】
本発明はさらに、RFLP、SNP(スニップ。一塩基多型)解析等の多型解析、塩基配列の解析等にも適応することが可能である。本発明はまた、医薬品、動物医薬のスクリーニングにおいて使用することができる。
【0127】
本発明はまた、医療以外にも、食品検査、検疫、医薬品検査、法医学、農業、畜産、漁業、林業などで、生体分子の検査が必要なものに全て適応可能である。本発明においては特に、食料の安全目的のための(たとえば、BSE検査)使用も企図される。
【0128】
本発明はまた、生化学検査データを検出するために用いられ得る。生化学検査の項目としては、たとえば、総蛋白、アルブミン、チモール反応、クンケル硫酸亜鉛試験、血漿アンモニア、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、総ビリルビン、直接ビリルビン、GOT、GPT、コリンエステラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ロイシンアミノペプチターゼ、γ−グルタミルトランスペプチターゼ、クレアチニンフォスキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、ナトリウム、カリウム、塩素イオン、総カルシウム、無機リン、血清鉄、不飽和鉄結合能、血清浸透圧、総コレステロール、遊離コレステロール、HDL−コレステロール、トリグリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸、血漿グルコース、インシュリン、BSP停滞率、ICG消失率、ICG停滞率、髄液・総蛋白、髄液・糖、髄液・塩素、尿・総蛋白、尿・ブドウ糖、尿・アミラーゼ、尿・尿酸、尿・尿素窒素、尿・クレアチニン、尿・カルシウム、尿・浸透圧、尿・無機リン、尿・ナトリウム、尿・カリウム、尿・クロール、尿中Nアセチルグルコサミニダーゼ、1時間クレアチニンクレアランス、24時間クレアチニンクレアランス、フェノールスルホンフタレイン、C反応性タンパクなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような検査項目を測定する方法および原理は当該分野において周知慣用されている。
【0129】
本発明はまた、生体から直接採取したサンプル以外に、PCR、リガーゼ連鎖反応、SDA、NASBA法等で増幅した遺伝子の検出に対しても用いることは可能である。本発明が検査または診断目的とする試料は特に限定されず、例えば、血液、血清、白血球、尿、便、精液、唾液、組織、培養細胞、喀痰等を用いることができる。
【0130】
(好ましい実施形態の説明)
1つの局面において、本発明は、生体物質構築物を提供する。この生体物質構築物は、検出デバイスを作製するために用いられる。本発明の生体物質構築物は、A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;B)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質;C)上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である、リンカー、を包含する。ここで、上記リンカーは、上記プローブ生体物質と上記検出生体物質とを連結する。ここで、この連結は、共有結合であっても非共有結合であってもよい。この連結は、非共有結合が好ましい。共有結合である場合、分解条件下でも結合が破壊されず、残留物が残存する可能性が高まるからである。上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する。一部相互作用する部分が重複することによって、検出生体物質と、標的生体物質とは競合的にプローブ生体物質と反応することができる。このことにより、本発明の検出デバイスにおいて、競合する標的生体物質が少なくとも一部検出生体物質と置き換わる。置き換わることにより、標的生体物質の検出が可能となる。本発明において、標的生体物質と、検出生体物質とは互いに識別可能であることが好ましい。ここで、識別可能とは、物理的、化学的、生化学的、生物学的などの手段で2つの物質が識別可能であることを意味する。従って、質量(例えば、分子の長さ)によって識別することもできる。ある実施形態では、検出生体物質が標識化合物により標識されることが好ましい。標識化合物の存在不存在およびその量の増減により、標的生体物質の同定および定量を行うことができる。
【0131】
1つの実施形態において、本発明の生体物質構築物における上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、各々独立して、核酸またはその誘導体、ポリペプチドまたはその誘導体であり得る。双方とも核酸またはその誘導体およびポリペプチドまたはその誘導体であってもよい。双方ともが同じカテゴリーの物質であることにより、双方が安定な(かつ、リンカーが分解可能な)条件の選択肢が増えるからである。
【0132】
好ましい実施形態では、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAであり、上記リンカーはRNAである。この構成をとることにより、DNAが安定であり、かつ、RNAが不安定な条件(例えば、特定のRNA分解酵素の存在下、アルカリ条件など)の選択肢を選択することが容易になる。そのような条件は、慣用的に準備することができることから、好ましい。
【0133】
別の好ましい実施形態では、上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する。このようにリンカーに特異的な制限酵素部位を有する場合、その制限酵素部位を特異的に切断する制限酵素による処理を行うことにより、本発明の検出デバイスを簡便に製造することができる。
【0134】
好ましい実施形態において、本発明の生体物質構築物は、さらに標識を含む。この標識は、上記検出生体物質に含まれることが好ましい。このような構成は、例えば、生体物質が核酸である場合、図1(A)に示されるように5’側から蛍光物質を結合した検出核酸(D)、核酸切断部位(好ましくはRNA)(E)、プローブ核酸(F)の順番に配列したキメラ核酸を核酸自動合成機で合成することによって作製することができる。そのような核酸自動合成機を合成することは当該分野において周知である。核酸以外の場合でも端に標識(例えば蛍光物質)を付着させることが好ましいが、これに限定されず、配列の途中に標識を導入することも可能である。そのような方法としては、例えば、核酸の場合H−ホスホネート法などが挙げられる。そのような技術を用いると、リン酸部位であれば、どのような場所でも蛍光物質を導入することができる。
【0135】
検出核酸に対して、図1では5’側に蛍光物質を結合しているが、検出核酸のどの部位に蛍光物質を結合させても良い。標識化合物として、図1では蛍光物質を使用しているが、金属微粒子、酸化還元性化合物、ホストゲスト反応を行う化合物など標識を行うことができるものならば特に限定しない。従って、上記標識は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される物質を含む、生体物質構築物を包含する。
【0136】
1つの好ましい実施形態では、上記検出生体物質は、蛍光物質を含む。蛍光物質の検出は、当該分野において周知であり、慣用される装置を用いることによって容易に行うことができるからである。そのような技術は、例えば、その他に利用可能な検出器としては、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene TipScanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型))などが挙げられるがそれに限定されない。そのような技術を記載する文献としては、例えば、Mark Schena編加藤郁之進監訳「DNAマイクロアレイ」第二章 TaKaRaが挙げられるがそれに限定されない。
【0137】
1つの実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である。従って、この実施形態において、プローブ生体物質と検出生体物質とは、少なくとも一部、例えば、少なくとも10ヌクレオチド長連続して相補性を有する。より好ましくは、これら両方の生体物質は、少なくとも15ヌクレオチド長連続して、より好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも25ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも30ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは40ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは50ヌクレオチド長連続して相補性を有する。ある実施形態では、一方の生体物質の全部が他方の生体物質の一部と完全に相補的であってもよい。あるいは、両方の生体物質が全部完全に相補的であってもよい。
【0138】
1つの実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係に基づいていてもよい。好ましくは、そのようなレセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係としては、例えば、メタンフェタミン−モノクローナル抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。このような例は、これら2つの物質(プローブ生体物質および検出生体物質)が安定な条件で、リンカーとして選ばれる部分を構成する物質が少なくとも1つの分解する条件が存在する限り、どのような例を選択してもよい。好ましくは、リンカーが分解する条件のうちの少なくとも1つにおいて、プローブ生体物質と検出生体物質とが少なくとも部分的に相互作用すべきである。検出デバイスを作製する際に1工程で分解および相互作用の2工程が完了するからである。
【0139】
別の局面において、本発明は、上記本発明の生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイスを提供する。このような生体物質検出デバイスは、その後にリンカーが分解する(好ましくは、プローブ生体物質および検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である)条件下に曝すことにより、標的を検出および定量することができる生体物質検出デバイスとして完成させることができる。従って、このようなデバイスは、生体物質検出デバイスの前駆装置ということができる。本発明において、このような前駆装置は、直ちに上記分解条件に曝すことにより検出デバイスの完成品とすることもできるが、そのまま出荷して、ユーザーが使用直前に完成品とすることもできる。プローブ生体物質と検出生体物質とを含む相互作用物の安定性を高めるために、例えば、プローブ生体物質として核酸、検出生体物質として核酸を用いた場合、形成した相補的二重鎖が保存中に誘拐し、検出核酸がチップからはがれてしまう可能性がある。これを防ぐ方法としてこのような前駆装置を用いることも考えられる。特に、検出生体物質の鎖長が短い場合には、この方が有利である。
【0140】
好ましい実施形態において、上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップ、クロマトグラフィー基材などであり得る。より好ましくは、上記生体物質検出デバイスは、核酸チップである。
【0141】
別の局面において、本発明は、生体物質検出デバイスを提供する。このデバイスは、A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;およびB)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含する生体物質構築物が配置された支持体を含む。ここで、上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する。一部相互作用する部分が重複することによって、検出生体物質と、標的生体物質とは競合的にプローブ生体物質と反応することができるからである。このことにより、本発明の検出デバイスにおいて、競合する標的生体物質が少なくとも一部検出生体物質と置き換わる。本発明において、標的生体物質と、検出生体物質とは互いに識別可能であることが好ましい。ここで、識別可能とは、物理的、化学的、生化学的、生物学的などの手段で2つの物質が識別可能であることを意味する。従って、質量(例えば、分子の長さ)によって識別することもできる。ある実施形態では、検出生体物質が標識化合物により標識されることが好ましい。標識化合物の存在不存在およびその量の増減により、標的生体物質の同定および定量を行うことができるからである。
【0142】
好ましい実施形態において、上記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである。チップを使用することにより、分析を自動化することが容易になる。そのような分析の自動化は、当該分野において周知でありそのような自動化は例えば、Mark Schena編加藤郁之進監訳「DNAマイクロアレイ」第二章 TaKaRaに記載されている。
【0143】
ある実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、各々独立して、核酸またはその誘導体、ポリペプチドまたはその誘導体などであり得る。双方とも核酸またはその誘導体およびポリペプチドまたはその誘導体であってもよい。また、双方が異なるカテゴリー(例えば、プローブ生体物質は核酸であり、検出生体物質はタンパク質)であってもよい。異なるカテゴリーの場合、標的生体物質との競合反応の選択肢が双方が同じ場合に比べて異なり得る。このように、物質のカテゴリーの選択は、目的とする検出・定量に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0144】
より好ましくは、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質はDNAである。DNAを選択することにより、DNAチップの解析に関連する技術をそのまま適用することができる。
【0145】
本発明の検出デバイスは、さらに標識を含んでいてもよい。標識を含むことにより、検出・定量が容易になるからである。この標識は、上記検出生体物質に含まれることが好ましい。このような構成は、例えば、生体物質が核酸である場合、図1に示されるように、標的核酸(G)を加え、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度以上でプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度以下に昇温すると、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度がプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度よりも十分低ければ、プローブ核酸(F)と標的核酸(G)が二重鎖を形成する。プローブ核酸(F)と標的核酸(D)とが形成する二重鎖の融解温度以下に冷却すると、標的核酸がハイブリダイゼーションしていないプローブ核酸(F)と検出核酸(D)がハイブリダイゼーションするが、ハイブリダイゼーションする相手のない検出核酸(D)は溶液中に溶解する。ここで洗浄を行う(図1(C))。図1(B)の状態で核酸チップから読みとった検出核酸からの信号量から、図1(C)の状態で読みとった核酸チップ上の検出核酸からの信号量を差し引くと、標的核酸の検出および定量が可能となる。
【0146】
上記標識としては、例えば、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される物質が挙げられるがそれらに限定されない。当業者は、標識の種類によりその検出手段を適切に選択することができる。例えば、蛍光物質の場合は、上述したように高橋豊三著「DNAプローブの開発技術」第5章 CMC出版を参照することができる。包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子の場合にも、例えば、W.Fritzsche(2001)Reviews in Molecular Biotechnology 82:37−46;C.A.Mirkin et al.(1996)Nature 382:607−609などを参照することができる。
【0147】
好ましくは、標識は蛍光物質であり得る。蛍光物質は、容易に検出することができるからであり、放射性同位体などと異なり、身体への有害な影響が少ないとされているからである。しかし、状況に応じて、放射性同位体を標識として用いてもよい。そのような標識の選択は当業者は状況に応じて行うことができる。
【0148】
別の実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、核酸であり、上記相互作用は、核酸配列の相補性である。従って、この実施形態において、プローブ生体物質と検出生体物質とは、少なくとも一部、例えば、少なくとも10ヌクレオチド長連続して相補性を有する。より好ましくは、これら両方の生体物質は、少なくとも15ヌクレオチド長連続して、より好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも25ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは、少なくとも30ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは40ヌクレオチド長連続して、さらにより好ましくは50ヌクレオチド長連続して相補性を有する。
【0149】
ある実施形態では、一方の生体物質の全部が他方の生体物質の一部と完全に相補的であってもよい。あるいは、両方の生体物質が全部完全に相補的であってもよい。
【0150】
1つの実施形態において、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質は、タンパク質であり、上記相互作用は、レセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係に基づいていてもよい。好ましくは、そのようなレセプター−リガンド関係、抗原抗体反応に基づく関係、基質−酵素の関係としては、例えば、メタンフェタミン−モノクローナル抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。このような例は、これら2つの物質(プローブ生体物質および検出生体物質)が分析する条件において解離することができる関係であれば、どのようなものでもよい。1つの実施形態において、標的生体物質のほうが、検出生体物質よりも、より強くプローブ生体物質と相互作用することが好ましい。このことにより、標的生体物質が微量であってもより高感度に検出することができるからである。
【0151】
別の局面において、本発明は、生体物質検出デバイスを製造する方法を提供する。この方法は、A)本発明の生体物質構築物を支持体に配置する工程;およびB)上記支持体を、上記リンカーが分解可能な条件下に供する工程、を包含する。このような分解可能な条件は、好ましくは、プローブ生体物質および検出生体物質の両方が安定である条件である。上記分解可能な条件がプローブ生体物質および検出生体物質の少なくとも一方が不安定な条件である場合、生体物質を保護する機構を施してもよい。そのような機構としては、例えば、核酸分解酵素に対して耐性を有する修飾型オリゴヌクレオチド(例えば、リン酸結合部位を修飾したホスホロチオエート型核酸、メチルホスホネート型核酸、ホスホロアミデート型核酸(Oligodexynucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression. J.Cohen ed. CRC Press(1989)を参照のこと)を用いることができる。さらに、生体物質を保護するために生体物質の一部または全体に対して相互作用をする物質(例えば、生体物質が核酸の場合、相補的な核酸)を用いて二重鎖を形成させ、安定性を増すことができる。さらに、生体物質に構造を持たせる(すなわち、一本鎖または二本鎖以外の構造例えば、ループ構造、三重鎖、四重鎖などの分解酵素が認識して分解しない構造を持たせる)ことによって、核酸分解酵素が認識しないようにすることにより安定性を増すことができる。例えば、生体物質が核酸である場合、ループ構造、三重鎖、四重鎖などの構造を形成させることで安定性を増すことができる。分解した後、好ましくは、生体物質構築物中のプローブ生体物質と検出生体物質とが特異的に相互作用する工程を行うことによって、より効率的に本発明の検出デバイスを製造することができる。通常はそのような2つの生体物質は、リンカーの分解する条件下では、効率的に相互作用しないからである。しかし、リンカーの分解する条件によっては、このような2つの生体物質が十分に特異的に相互作用しており、そのような場合は、上記工程は特に必要ではない。また、必要に応じて、リンカーの分解物などを洗浄する工程を行ってもよい。そのような洗浄条件は当該分野において周知であり、当業者は、例えば、通常の分子生物学でのアッセイにおいて使用される洗浄条件を適宜適合させることによって適切な洗浄条件を選択することができる。
【0152】
好ましい実施形態では、本発明は、生体物質チップを製造する方法を提供する。このようなチップに用いられる基板は、当該分野において周知のものが使用され得る。基板または任意の形状の支持体に対して、本発明の生体物質構築物を配置する。配置の方法は当該分野に周知の技術を用いることができ、このような方法は、例えば、林崎良英監修、岡崎康司編集「必ずデータが出るDNAマイクロアレイ実践マニュアル」羊土社 p41−56(2000)に記載されている。この生体物質構築物は、基板または支持体に対して共有結合または非共有結合により結合させ固定化することができる。このような共有結合または非共有結合による結合および固定化の方法は、当該分野において周知であり、例えば、君塚房夫、加藤郁之進著「蛋白質 核酸 酵素」vol.43−13「DNAチップ技術とその応用」共立出版p2004−p2011(1998)に記載されている。この固定化の際の条件において、生体物質構築物が分解しないことが好ましいが、完全に分解しない条件であるか、分解を抑える機構を使用する場合は、生体物質構築物が分解する条件であってもよい。
【0153】
次に、基板または支持体に生体物質構築物が固定化された後、この基板または支持体をリンカーを分解または切断する条件に曝す。そのような条件としては、例えば、リンカーにRNAが用いられ、他の生体物質としてRNA分解酵素に耐性の物質(例えば、DNA)が用いられる場合は、RNA分解酵素が用いられ得る。また、リンカーにRNAが用いられ、他の生体物質としてアルカリ条件下で安定である物質(例えば、DNA)を用いる場合は、アルカリ条件が用いられる。そのようなアルカリ条件としては、例えば、pH7〜14が挙げられ、特に、pH8〜11が好ましい。そのようなアルカリ条件を与える物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、希水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水が好ましい。
【0154】
別の好ましい実施形態では、上記プローブ生体物質、上記検出生体物質および上記リンカーは、DNAであり、上記リンカーは、上記プローブ生体物質にも上記検出生体物質にもない制限酵素部位を有する。このようにリンカーに特異的な制限酵素部位を有する場合、その制限酵素部位を特異的に切断する制限酵素による処理を行うことにより、本発明の検出デバイスを簡便に製造することができる。
【0155】
リンカーを分解または切断した後、検出核酸は通常生体物質構築物すなわちプローブ核酸からは分離される。リンカーを分解または切断する条件が溶液中で行われる場合は、そのような検出核酸は、その溶液中に溶解した状態にある。その後、好ましくは、このチップをプローブ核酸と検出核酸とがハイブリダイズする条件下に置くことにより、二重鎖が形成される。そのようなハイブリダイズする条件としては、プローブ核酸と検出核酸とが形成する二重鎖の融解温度以下に保つことが挙げられるがそれに限定されない。リンカーが分解または切断する条件において、すでにハイブリダイズしているような条件では、新たに二重鎖を形成させる工程を行う必要はない。その後、必要に応じて、分解した核酸や分解に使用した酵素やアルカリなどを除去するために洗浄してもよい。これにより、核酸チップである生体物質検出チップを完成させることができる。そのようなチップは、好ましくは、プローブ生体物質と検出生体物質とが形成する相互作用構造物の構造が安定に保たれる条件にあることが有利である。例えば、プローブ生体物質および検出生体物質がともに核酸である場合、両者の間で相補的相互作用により形成した二重鎖の少なくとも融解温度以下で保存することが好ましい。
【0156】
生体物質検出デバイスがクロマトグラフィー基材の場合もまた、当該分野において周知の樹脂調製方法を応用してデバイスを作製することができる。そのような方法は、例えば、山崎誠、石井信一、岩井浩一編「アフィニティークロマトグラフィー」講談社サイエンティフィック(1975)に記載されている。具体的には例えば、以下のように作製する。生体物質検出デバイスが核酸である場合を例として説明する。金メッキした粒径数μmの微粒子に、チオール基を導入したオリゴヌクレオチド誘導体を結合させ、標識を行った検出核酸をそのオリゴヌクレオチド誘導体に相補的二重鎖形成により二重鎖を形成させ、この微粒子をクロマトグラフィー用カラムに充填する。ここに、未標識の標的核酸を加えることで、プローブ核酸にハイブリダイズさせるとともに検出核酸をクロマトグラフィー用カラムから溶出させ、その核酸を検出する。このとき、標識化合物を何種類か混合しておけば、その種類および量比から標的核酸の種類が判明する。
【0157】
好ましくは、本発明の検出デバイスを製造する方法において、検出デバイスまたは生体構築物質には標識がさらに含まれていてもよい。そのような標識は、当該分野において生体物質を標識することができることが公知であるようなものであれば、どのようなものでも使用することができ、例えば、同位体、スピン、親和力、色素、ビオチン法、化学発光法、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子などが含まれるがそれらに限定されない。好ましくは、標識として蛍光物質が使用される。標識を使用する場合、使用される標識は本発明の検出デバイス製造方法において用いられる分解可能な条件下で分解しないかまたは上記リンカーよりも分解の程度が少ないことが好ましい。より好ましくは、標識は、上記分解条件において分解しないか、または分解しないように保護され得る。そのような化学置換基を保護する方法は当該分野において周知であり、当業者であれば適切な技術を用いて保護することができる。
【0158】
1つの局面において、本発明は、サンプル中の標的生体物質を検出または定量を行う方法を提供する。この方法は、A)生体物質検出デバイスを提供する工程;B)上記サンプルを、上記標的生体物質と上記プローブ生体物質とが複合体を形成する条件下で上記生体物質検出デバイスに曝す工程;ならびにC)上記標的生体物質と上記プローブ生体物質との複合体の量を測定し、上記複合体の量と、上記プローブ生体物質および上記検出生体物質の合計量との相違から上記標的生体物質の存在または量を同定する工程、を包含する。ここで、上記生体物質検出デバイスは、A−1)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;およびA−2)上記プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含する、生体物質構築物が配置された支持体を含む。この生体物質検出デバイスにおいて、上記検出生体物質と上記標的生体物質とは識別可能であり、上記生体検出物質と、上記目的とする標的とは、上記プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複することが特徴である。一部相互作用する部分が重複することによって、検出生体物質と、標的生体物質とは競合的にプローブ生体物質と反応することができる。このことにより、本発明の検出デバイスにおいて、競合する標的生体物質が少なくとも一部検出生体物質と置き換わる。置き換わることにより、標的生体物質の検出が可能となる。識別可能とは、物理的、化学的、生化学的、生物学的などの手段で2つの物質が識別可能であることを意味する。従って、質量(例えば、分子の長さ)によって識別することもできる。
【0159】
ある実施形態では、検出生体物質が標識化合物により標識されることが好ましい。標識化合物の存在不存在およびその量の増減により、標的生体物質の同定および定量を行うことができる。そのような同定または定量は、上記複合体の量と上記合計量との相違は上記標識の存在または量の増減から算出される。そのような同定または定量は、手動で行ってもよいが、自動化することもできる。同定または定量において、あらかじめサンプルとの接触前の情報を入手することが好ましい。生体物質検出デバイスにおける反応前の信号強度は、通常は計算によりまたは予めの測定によりバックグラウンドとして知ることができるが、反応条件によっては、そのようなバックグラウンド値を知ることが不可能であるか、変動することがある。そのような場合は、検出反応の直前にバックグラウンド値を測定することが好ましい。そのような測定は、一つ一つ行うことも可能であるが、スキャナを用いて一度にスキャンすることも可能である。そのようなスキャナは当該分野において周知であり、例えば、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型))が挙げられるがそれらに限定されない。そのようなスキャナなどで読み取ったデータは、反応の前後を比較することにより、反応による変化を評価することができる。そのような評価は、手動で行ってもよいが、好ましくは、自動化し、コンピュータを用いて行うことができる。そのようなデータ処理は、当業者であでば当該分野において周知の技術を適宜組み合わせて行うことができる。
【0160】
ある好ましい実施形態において、検出生体物質と、標的生体物質とは、異なる生体物質(例えば、核酸および核酸誘導体)を含む。その結果、2つの生体物質が異なり、反応の前後の特定のパラメータ(例えば、質量、信号など)を測定するだけで同定および定量を行うことができる。
【0161】
本発明の生体物質検出方法において、生体物質検出デバイスはチップであることが好ましい。生体物質チップは、例えば、DNAチップであり得、チップ解析技術に関連する周知および公知の技術を利用することができる。そのような技術は、本明細書において他の場所において示した文献にも記載されている。
【0162】
別の実施形態において、生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材であり得る。クロマトグラフィー基材を用いることにより、クロマトグラフィー技術に関連する周知および公知の技術を利用することができる。そのような技術は、本明細書において他の場所において示した文献にも記載されている。
【0163】
本発明の検出デバイスはまた、再利用するように構築することができる。そのような構築方法としては、リンカーおよび検出生体物質を複数使用することが挙げられる。例えば、二つの核酸、すなわち検出生体物質とリンカーとの組み合わせを1回以上繰り返すことでプローブ核酸に対して回数倍の量の検出核酸を調製することもできる。コストおよびプローブ生体物質に対して標的生体物質を完全に相互作用させる必要性から、この繰り返しは2回以上行い、プローブ生体物質に対して等倍以上の濃度の検出生体物質を用いることで生体物質検出デバイスを製造することが望ましい。また、核酸の場合、プローブ生体物質と、検出生体物質あるいは標的生体物質の形成する二重鎖の融解温度の高い方の二重鎖の融解温度以上に昇温し、プローブ生体物質以外の化合物を洗い流すことによって、一度使用した検出デバイスを再利用することができる。ここで、基板または支持体上に固定化されたプローブ生体物質に対して複数倍量検出生体物質を製造しておき、最初に製造するのに必要となった検出生体物質の残りを用いて、再利用用の検出デバイスの製造を行うことができる。
【0164】
従来の核酸チップを用いて標的核酸を検出する際には、細胞から取りだす等の方法で得た標的核酸に蛍光物質等の標識化合物を結合させることが一般的に行われているが、この標識過程は非常に多くのステップから構成されており、この事が原因で非常に多くの問題が生じていたが、本発明の手法を用いると標的生体物質に対して標識化合物を結合させる必要がないので、これらの問題点の多くを解決できた。
【0165】
本発明のように、標的生体物質を標識せずに検出および/または定量を行うことにより、標的生体物質を標識するためには多数の工程が回避される。そのような標識工程では、それらの工程から混入するヌクレアーゼ等の分解酵素やピペッティング操作や遠心分離、フィルター処理などによる標的生体物質の機械的切断、昇温、冷却などによる標的核酸の分解などの可能性が著しく低下する。特に、標的核酸として最も一般的に使用されているRNAの場合には、RNAの安定性の低さから、本発明の効果は非常に大きくなる。さらに、これらの分解による標的生体物質の濃度の低下や容器などへの吸着も全くなくなり、また、標的生体物質を蛍光物質などの標識化合物で標識する場合には、完全に標識化合物で標的生体物質を標識することは困難なので、これらのことが原因で起こる定量性の低下も防げる。また、標的生体物質の標識を全く行う必要がないので、これらの操作に作業者の熟練を必要とせず、標識操作に必要な時間が短縮でき、より早く結果を得ることができるハイスループットに対応した核酸チップである。
【0166】
また、標識操作に必要な、遠心機やインキュベータなどの装置も必要とせず、標識操作に必要な種々の高価な試薬も必要とせず、従来の核酸チップを用いた遺伝子の検出およびび定量法と比較してコストを大幅に下げることができる。
【0167】
また、プローブ生体物質と検出生体物質とを同時に合成しているので、プローブ生体物質と検出生体物質とを個別に合成するよりもコストを大幅に下げることができる。プローブ生体物質に対して、検出生体物質を大量に合成することができるので、検出生体物質を保存しておくことが出来、一度使用した生体物質検出デバイスから検出生体物質および標的生体物質を昇温などにより取り除いた後に、保存しておいた検出生体物質をプローブ生体物質に対して、相互作用させることで、生体物質検出デバイスの再利用も可能となる。
【0168】
プローブ生体物質と検出生体物質とが二重鎖を形成している状態で出荷することができるので、これまでのように一本鎖の状態での出荷時に問題となるプローブ生体物質と基板との相互作用を避けることができる。これにより、検出感度が顕著に上昇した。
【0169】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解されるべきである。
【0170】
【実施例】
(実施例1:生体物質構築物の構築および基板上への固定)
本発明での核酸チップの製造法およびその検出法について、すべての部分ををDNAとした場合を実施例1として記載する。このような例は、図1に示したとおりである。
【0171】
5’側から蛍光物質を結合した検出核酸(D)、核酸切断部位(E)、プローブ核酸(F)の順番に配列したキメラ核酸を核酸自動合成機で合成し、固体基板上にこのキメラ核酸を固定化した(図1(A))。以下に具体的な手順を示す。
【0172】
ミリジェン社製核酸自動合成機を用いて、DNA合成用のアミダイト試薬(アデニン、チミン、シトシン、グアノシンの4,4’−ジメトキシトリチル−シアノエチルホスホロアミデートモノマーを用いて、DMTr−d(TAGATACGAATCAGTCGAATG)−3’−CPGを合成した。次に、RNA合成用のアミダイト試薬のボトルをXボトルに取り付け、5’−r(UUUUU)−3’を引き続き合成した。続いて、DNA合成用のアミダイト試薬を用いて、5’−d(ATTCGATCTA)−3’を合成した。最後に、1−ジメトキシトリチルオキシ−2−(N−チオウレア(ジ−O−ピバロイル−フルオレセイン)−4−アミノブチル)−プロピル−3−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト(桑名貿易株式会社、東京都)を合成したオリゴマーに結合させた。合成したオリゴマーを含むCPG担体をアンモニア処理し、真空下アンモニアを除去した。これをSeppak(日本ウォーダズ株式会社、東京都)を用いて精製した。オリゴマーに結合しているジメトキシトリチル基を核酸自動合成機に付属のデブロック剤に用いて除去した。溶媒を除去後、オリゴマーをトリエチルアミン−酢酸緩衝液に溶解し、Seppakを用いて精製し、目的とするオリゴマー、5’−d(ATCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCGAATG)−3’を得た。このほかに、9種類のキメラ核酸を合成した(例えば、5’−d(TGCATACTA)−r(UUUUU)−d(TATCAGGATCCGAGTATAGA)−3’)。
【0173】
市販のポリ−L−リジンコーティングスライドガラスに対して、上記合成したキメラ核酸水溶液をスタンピング装置を用いてスタンプした。
【0174】
作製したスライドガラスを水蒸気を用いて再水和し、UV光を照射することによって架橋を行った。
【0175】
無水コハク酸、1−メチル−2−ピロリドンから調製されたブロッキング溶液に作製したスライドグラスを沈め、20分間浸透させた後、超純水、エタノールを用いて洗浄後、乾燥させた。
【0176】
(実施例2:生体物質検出チップの調製)
実施例1において調製し、基板に固定化した検出チップの前駆装置に対して、核酸分解酵素(制限酵素)で核酸切断部位(E)を切断もしくは分解し、溶液中に検出核酸(D)を溶解させた。プローブ核酸(F)と検出核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度以下に反応系を保ち、プローブ核酸(F)と検出核酸(D)とがハイブリダイゼーションにより二重鎖を形成させた(図1(B))。分解した核酸や分解に使用した酵素やアルカリなどを除去するために洗浄した。これにより、核酸チップである生体物質検出チップが完成した。以下に具体的な手順を示す。
【0177】
実施例1で作製した核酸固定化スライドガラスを50mM水酸化ナトリウム水溶液中に沈めた。20分後、反応系を5℃に保ち、プローブ核酸と検出核酸とが二重鎖を形成するまで3時間放置した。スライドガラスを取り出し、超純水を用いて洗浄し、生体物質検出チップを作製した。保存は、冷蔵庫中で行った。
【0178】
(実施例3:生体物質検出チップを用いた生体物質の検出および定量)
次に、実施例2で製造した生体物質検出チップを用いて、生体物質を検出および定量した。標的核酸(G)を加え、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度以上でプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度以下に昇温すると、プローブ核酸(F)と標的核酸(D)が形成する二重鎖の融解温度がプローブ核酸(F)と標的核酸(G)が形成する二重鎖の融解温度よりも十分低ければ、プローブ核酸(F)と標的核酸(G)が二重鎖を形成する。プローブ核酸(F)と標的核酸(D)とが形成する二重鎖の融解温度以下に冷却すると、標的核酸がハイブリダイゼーションしていないプローブ核酸(F)と検出核酸(D)がハイブリダイゼーションするが、ハイブリダイゼーションする相手のない検出核酸(D)は溶液中に溶解する。ここで洗浄を行う(図1(C))。図1(B)の状態で核酸チップから読みとった検出核酸からの信号量から、図1(C)の状態で読みとった核酸チップ上の検出核酸からの信号量を差し引くことにより、標的核酸の検出および定量した。以下に具体的な手順を示す。
【0179】
蛍光スキャナーを用いて、実施例2で作製した生体物質検出チップを読み取り、各スポットごとの蛍光を定量化しておいた。
【0180】
蛍光物質などを標識していない標的核酸5’−d(CATTCGACTGATTCGATCTA)−3’および実施例2で作製した生体物質検出チップに固定化した核酸に対して相補性を全く示さない20量体オリゴデオキシリボヌクレオチドを核酸自動合成機を用いて合成した。
【0181】
ハイブリカセットに実施例2で作製した生体物質検出チップをセットし、その上に上記の標的核酸を塗布したハイブリスリップを載せた。乾燥防止のためにスライドガラスの端にSSC(sodium citrate)緩衝溶液を滴下しさらにハイブリカセットの両端の溝に超純水を加えた。ハイブリッドカセットのふたをして、65℃のヒートブロックに移し、12時間反応させた。
【0182】
ハイブリダイゼーション後、生体物質検出チップを1℃の超純水で洗浄し乾燥後、蛍光スキャナーで各スポットごとの蛍光を定量化した。
【0183】
ハイブリダイゼーション前の蛍光の定量値とハイブリダイゼーション後の蛍光の定量値を差し引いた結果、標的核酸に相補的なスポットの傾向強度は減少したが、それ以外のスポットは、ハイブリダイゼーション前後でほとんど変化がなかった。蛍光強度から計算した標的核酸のハイブリダイゼーション量は95%であった。また、他の種類の配列を有するキメラ核酸を用いた場合でも、同様の結果が得られた。従って、本発明は、構築物中に含まれる具体的な配列にかかわらずどのようなものでも実施することができる。
【0184】
(実施例4:標識の位置を変動させた例)
検出核酸に対して、図1では5’側に蛍光物質を結合しているが、検出核酸のどの部位に蛍光物質を結合させても良い。従ってこの実施例において、別の部位に蛍光物質を結合させた例を実証する。以下に具体的な手順を示す。
【0185】
実施例1に示した方法を用いてDMTr−5’d(GATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCGAAT)−3’を合成した。次に、合成機のXボトルに取り付けた1−ジメトキシトリチルオキシ−2−(N−チオウレア(ジ−O−ピバロイル−フルオレセイン)−4−アミノブチル)−プロピル−3−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイトを反応させ、最後にDMTr−d(ATC)をこの後に合成した。
【0186】
脱保護および精製は、実施例1と同様の手法で行った。
【0187】
スライドガラスへの固定化および検出核酸の生成および蛍光スキャナーを用いた定量には、実施例1〜3に示した方法と同様の方法を用いた。
【0188】
この場合もまた、ハイブリダイゼーション前の蛍光の定量値とハイブリダイゼーション後の蛍光の定量値を差し引いた結果、標的核酸に相補的なスポットの傾向強度は減少したが、それ以外のスポットは、ハイブリダイゼーション前後でほとんど変化がなかった。蛍光強度から計算した標的核酸のハイブリダイゼーション量は95%であった。
【0189】
(実施例5:金ナノ微粒子を用いた例)
標識化合物として、図1では蛍光物質を使用しているが、金属微粒子、酸化還元性化合物、ホストゲスト反応を行う化合物など標識を行うことができるものならば特に限定しない。従って、この実施例では、金ナノ微粒子を利用する系を用いた。以下に具体的な手順を示す。
【0190】
0.00025MのHAuCl4、0.00025Mのクエン酸を20mLの水溶液中で攪拌する。氷で冷やした0.1M NaBH4を加えると直ちに赤色となり、粒径4nmの金ナノ微粒子が生成した。
【0191】
実施例1で示した方法で核酸自動合成機を用いて、DMTr−5’−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCAGAATG)−3’を合成した。核酸自動合成機のXボトルに、1−O−ジメトキシトリチル−ヘキシル−ジスルフィド,1’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]ホスホロアミダイトを入れ、引き続いて合成した。実施例1に示した方法で、脱保護および精製を行い、末端のチオール基はジチオスレイトールで脱保護することで、5’末端にチオール基を有するキメラ核酸を合成した。
【0192】
金ナノ微粒子と、チオール基を有するキメラ核酸との結合は、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)中で金ナノ微粒子とキメラ核酸とをインキュベートすることによって結合させた。
【0193】
(実施例6:核酸チップの再利用)
図1では、検出核酸(D)の3’側に核酸切断部位(E)をつなげているが、この二つの核酸、すなわち(D)と(E)との組み合わせを1回以上繰り返すことでプローブ核酸(F)に対して回数倍の量の検出核酸を調製することもできる。コストおよびプローブ核酸(F)に対して標的DNA(D)を完全にハイブリダイズさせる必要性から、この繰り返しは2回以上行い、プローブ核酸に対して等倍以上の濃度の検出核酸を用いることで核酸チップを製造することが望ましい。また、プローブ核酸と、検出核酸あるいは標的核酸の形成する二重鎖の融解温度の高い方の二重鎖の融解温度以上に昇温し、プローブ核酸以外の化合物を洗い流すことによって、一度使用した核酸チップを再利用することができる。ここで、基板上に固定化されたプローブ核酸に対して複数倍量検出核酸を製造しておき、最初に製造するのに必要となった検出核酸の残りを用いて、再利用用の核酸チップの製造を行うことができる。以下に具体的な手順を示す。
【0194】
実施例1で示した方法で核酸自動合成機を用いて、DMTr−5’−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCGAATG)−3’を合成した。
【0195】
実施例1および2でこのキメラオリゴデオキシヌクレオチドをガラス基板上に固定化し、アルカリ処理を行い、ハイブリダイゼーション後、洗浄溶液を回収し、エタノール沈澱を行って検出核酸を回収した。
【0196】
製作した生体物質検出チップを使用した後、70℃の超純水中に2時間沈め、生体物質検出チップから標的核酸を除去した。室温下、超純水で洗浄し、乾燥後、回収した検出核酸を善良生体物質検出チップ上に再塗布した。2℃の超順水中にこれを再度沈め、未反応の検出核酸を除去した。ここで再生した生体物質検出チップを再使用するかできるか実施例3に従って検査したところ、再使用することができることが確認された。
【0197】
(実施例7:プローブ核酸における検出核酸との相補的領域の位置の変更)
核酸切断部位(E)の3’側には、プローブ核酸(F)を結合する。図1では、プローブ核酸の5’側に検出核酸と相補的な領域を設けているが、この領域はプローブ核酸の配列の中であればよく、特に限定しない。本発明では、配列の真ん中あたりに相補的な領域を有する例でも実施することができる
(実施例8:プローブ核酸における標的核酸との相補的領域の位置の変更)
標的核酸(G)と相補的な領域は、図1では、5’側に設けているが、この領域はプローブ核酸の領域内であればよく特に限定しない。また、検出核酸(D)とプローブ核酸(F)との配列は、完全に相補的であることが望ましいが、一部相補的でなくてもかまわない。さらに、プローブ核酸(F)と標的核酸(G)との配列も、完全に相補的であることが望ましいが、一部相補的でなくてもかまわない。本発明では、真ん中あたりに相補的領域を有する、一部相補的でない例であっても実施することができる。
【0198】
(実施例9:核酸の方向の変更)
図1では、検出核酸(D)の3’側に核酸切断部位(E)を配置し、その3’側にプローブ核酸(F)を配置しているが、プローブ核酸(F)の3’側に核酸切断部位(E)、その3’側に検出核酸(D)を配置してもかまわない。本発明では、そのような配置でも実施することができる。
【0199】
(実施例10:検出デバイスの別の製造方法)
プローブ核酸(F)、核酸切断部位(E)、標識化合物を結合させていない検出核酸(D)を合成後、基板に固定化し、標識化合物を検出核酸に結合させてもかまわない。こうすることで、標識化合物を付けるコストが低下する。この実施例では、後から標識する方法を実証する。以下に具体的な手順を示す。
【0200】
実施例1と同様の手法で、5’−d(ATTCGATCTA)−r(UUUUU)−d(TAGATCGAATCAGTCAGAATG)−SH−3’を合成した。ただし、CPG担体は、1−O−ジメトキシトリチル−プロピル−ジスルフィド、1’−スクシニル−1caa−CPGを用いた。また、ジチオスレイトール脱保護を行うことで、3’末端にチオール基を導入した。
【0201】
金メッキしたスライドガラス上に、50mMリン酸緩衝液中に溶解させた上記チオール化キメラ核酸をスポットした。このスライドガラスを乾燥させた後、窒素ガスで充填したグローブボックス上で入れた。乾燥アセトニトリル中に溶解させた1−ジメトキシトリチルオキシ−2−(N−チオウレア(ジ−O−ピバロイル−フルオレセイン)−4−アミノブチル)−プロピル−3−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイトをこのスライドガラス上に塗布し、乾燥アセトニトリルで二度洗浄することで、生体物質検出チップを製造した。
【0202】
この生体物質検出チップを分析に使用したところ、このチップもまた、上記実施例の他の装置と同様にサンプル中の生体物質を標識することなく、効率よく分析に使用することができることが実証された。
【0203】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0204】
【発明の効果】
本発明により、検出の標的となるサンプル中の生体物質を標識することなく、簡便に分析することができる。
【0205】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態を示す例示である。
【図2】本発明のデバイスの製造工程および使用工程を示す1実施形態の例示である。
【図3】本発明の自動化分析の1実施形態の例示である。
Claims (39)
- 生体物質構築物であって、
A)目的とする標的に対して相互作用する、プローブ生体物質;
B)該プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質;および
C)該プローブ生体物質および該検出生体物質の両方が安定な少なくとも一つの条件下で分解可能である、リンカー、
を包含し、
該リンカーは、該プローブ生体物質と該検出生体物質とを連結し、
該生体検出物質と、該目的とする標的とは、該プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、生体物質構築物。 - 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、核酸またはその誘導体である、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、ポリペプチドまたはその誘導体である、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質はDNAであり、前記リンカーはRNAである、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記プローブ生体物質、前記検出生体物質および前記リンカーは、DNAであり、該リンカーは、該プローブ生体物質にも該検出生体物質にもない制限酵素部位を有する、請求項1に記載の生体物質構築物。
- さらに標識を含む、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記検出生体物質は、標識を含む、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記検出生体物質は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される標識を含む、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記検出生体物質は、蛍光物質を含む、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、核酸であり、前記相互作用は、核酸配列の相補性である、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、タンパク質であり、前記相互作用は、レセプター−リガンド関係に基づく、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、タンパク質であり、前記相互作用は、抗原抗体反応に基づく、請求項1に記載の生体物質構築物。
- 請求項1に記載の生体物質構築物が配置された支持体を含む、生体物質検出デバイス。
- 前記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、請求項13に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記生体物質検出デバイスは、核酸チップである、請求項13に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、請求項13に記載の生体物質検出デバイス。
- 支持体を含む生体物質検出デバイスであって、
該支持体には、生体物質構築物が配置され、
該生体物質構築物は、
A)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;および
B)該プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、を包含し、
該生体検出物質と、該目的とする標的とは、該プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、
生体物質検出デバイス。 - 前記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、核酸またはその誘導体である、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、ポリペプチドまたはその誘導体である、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質はDNAを含む、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- さらに標識を含む、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記検出生体物質は、標識を含む、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記検出生体物質は、蛍光物質、包接化合物、酸化還元物質および金属微粒子からなる群より選択される標識を含む、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記検出生体物質は、蛍光物質を含む、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、核酸であり、前記相互作用は、核酸配列の相補性である、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、タンパク質であり、前記相互作用は、レセプター−リガンド関係に基づく、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質は、タンパク質であり、前記相互作用は、抗原抗体反応に基づく、請求項17に記載の生体物質検出デバイス。
- 生体物質検出デバイスを製造する方法であって、
A)請求項1に記載の生体物質構築物を支持体に配置する工程;および
B)該支持体を、前記リンカーが分解可能な条件下に供する工程、
を包含する、方法。 - 前記生体物質検出デバイスは生体物質チップである、請求項29に記載の方法。
- 前記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、請求項29に記載の方法。
- 前記プローブ生体物質および前記検出生体物質はDNAであり、前記リンカーはRNAであり、前記分解可能な条件は、RNA分解酵素またはアルカリによる処理である、請求項29に記載の方法。
- 前記プローブ生体物質、前記検出生体物質および前記リンカーは、DNAであり、該リンカーは、該プローブ生体物質にも該検出生体物質にもない制限酵素部位を有する、請求項29に記載の方法。
- 前記生体構築物質はさらに標識を含み、該標識は前記分解可能な条件下で分解しないかまたは前記リンカーよりも分解の程度が少ない、請求項29に記載の方法。
- サンプル中の標的生体物質を検出または定量を行う方法であって、
A)生体物質検出デバイスを提供する工程であって、該生体物質検出デバイスは、
A−1)目的とする標的に対して相互作用するプローブ生体物質;および
A−2)該プローブ生体物質の少なくとも一部と特異的に相互作用する、検出生体物質、
を包含する、生体物質構築物が配置された支持体を含み、
該検出生体物質と該標的生体物質とは識別可能であり、
該生体検出物質と、該目的とする標的とは、該プローブ生体物質において相互作用する部分が少なくとも一部重複する、工程;
B)該サンプルを、該標的生体物質と該プローブ生体物質とが複合体を形成する条件下で該生体物質検出デバイスに曝す工程;ならびに
C)該標的生体物質と該プローブ生体物質との複合体の量を測定し、該複合体の量と、該プローブ生体物質および該検出生体物質の合計量との相違から該標的生体物質の存在または量を同定する工程、
を包含する、方法。 - 前記検出生体物質は標識を含み、前記複合体の量と前記合計量との相違は該標識の存在または量の増減から算出される、請求項35に記載の方法。
- 前記検出生体物質と前記標的生体物質とは、異なる生体物質を含む、請求項35に記載の方法。
- 前記生体物質検出デバイスは、生体物質チップである、請求項35に記載の方法。
- 前記生体物質検出デバイスは、クロマトグラフィー基材である、請求項35に記載の方法。
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JPWO2006059727A1 (ja) * | 2004-12-03 | 2008-06-05 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | タンパク質アレイ用検出および解析システム |
WO2019011125A1 (zh) * | 2017-07-11 | 2019-01-17 | 深圳市伯劳特生物制品有限公司 | 一种用于酶联免疫试剂盒的组合物以及幽门螺旋杆菌抗体谱检测试剂盒及其制备方法 |
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2002
- 2002-11-26 JP JP2002343040A patent/JP2004177236A/ja active Pending
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