JP2004176770A - ローラフォロア - Google Patents

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Abstract

【課題】ローラフォロア1において、製造コストを低減したうえで、形状精度を高める。
【解決手段】ローラフォロア1を、一対の側壁21,22に架設される支軸3の外周に内輪41付きの深溝型玉軸受4を取り付けた構成とする。一対の側壁21,22および内輪41を表面が熱硬化処理された鋼材とし、一対の側壁21,22にそれぞれ同径の貫通孔23,24を同軸に設ける。一方側壁21の貫通孔23から他方側壁22の貫通孔24へ向けて、熱硬化処理していない生の鋼材からなるとともに全長にわたって均等な外径を有する支軸3を圧入嵌合させる。この支軸3の圧入方向先端側の端面に対して打刻かしめを施すことにより、一対の側壁21,22の貫通孔23,24に対して支軸3の両端を軸方向と周方向に固定させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ローラフォロアに関する。
【0002】
【従来の技術】
ローラフォロアは、例えば自動車などのエンジン動弁機構やその他の各種のカム機構などに用いられている。
【0003】
ローラフォロアの構造としては、胴体に備える一対の側壁間に支軸が架け渡され、この支軸の外周に複数の針状ころを介してローラが回転自在に支持されている。
【0004】
前記一対の側壁にはそれぞれ同径の貫通孔が同軸に設けられており、この一対の側壁の各貫通孔に対して、全長にわたって均等な外径を有する支軸の両端をすきまばめし、各貫通孔と支軸の両端との間の隙間をろう付けして埋めるようにしている(特許文献1参照)。
【0005】
この他、支軸について、その一端側のみを大径とした段付き形状にしたうえで、一方側壁に大径孔を、また、他方側壁に小径孔を設けている。そして、段付き形状の支軸の取り付けは、当該支軸の小径部分を一方の側壁の大径孔から挿入して、前記支軸の小径部分を他方の側壁の小径孔に対して、また、前記支軸の大径部分を前記他方の側壁の大径孔に対してそれぞれ圧入させるようにしている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
実開平7−8507号公報
【特許文献2】
実用新案登録2584333号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に示す先行技術では、一対の側壁の各貫通孔に対して支軸の両端をがたを持つ状態で嵌めておき、各貫通孔と支軸とを芯合わせした状態でろう付けするので、この芯合わせ作業が困難で、作業効率が悪いだけでなく、一対の側壁に対する支軸の取り付け基準位置を高精度に設定しにくいので、製品の形状精度が低下しやすいことが指摘される。
【0008】
上記特許文献2に示す先行技術では、上記特許文献1に示す先行技術に関する不具合を解消できるものの、段付き形状の支軸を製作することや、一対の側壁に対して異径の孔を設けることに手間がかかるとともに、組立時に支軸の取り付け方向が限定されることが指摘される。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のローラフォロアは、平行に対向する一対の側壁と、前記一対の側壁間に架設される支軸と、この支軸において前記一対の側壁間の領域に外装される転がり軸受とを含む。前記転がり軸受は、前記支軸の外周面に対して圧入により嵌合される内輪と、この内輪に対し所定の対向空間を介して同心状に外装される外輪と、この外輪と前記内輪との間に介装される複数の転動体とを有している。前記一対の側壁および前記内輪は、熱硬化処理された鋼材とされていて、前記一対の側壁にそれぞれ同径の貫通孔が同軸に設けられている。前記支軸は、熱硬化処理されていない生の鋼材からなるとともに、取り付け前状態において全長にわたって均等な外径とされたものであり、この支軸が、前記一方側壁の貫通孔から他方側壁の貫通孔へ向けて圧入嵌合されるとともに、この支軸の圧入方向先端側の端面に対して打刻かしめが施されることにより、前記一対の側壁の貫通孔に対して支軸の両端が軸方向と周方向に固定されている。
【0010】
この場合、ローラフォロアに内輪付きの転がり軸受を用いて、支軸の外周面を転がり軸受の転動体の軌道面としないようにしたうえで、支軸の一端を圧入により一方側壁の貫通孔に対して固定するとともに、支軸の他端を打刻かしめにより他方側壁の貫通孔に対して固定する構造を採用することの相乗作用により、次のような効果が得られる。
【0011】
まず、支軸について、熱硬化処理しない生の鋼材とするとともに、従来例のような段付き形状としない単純な外形形状とすることができる。これにより、支軸を安価に製作できる。また、上記特許文献1に示す先行技術や支軸の両端を打刻かしめする場合に比べて、一対の側壁に対する支軸の取り付け基準位置を高精度に設定しやすくなるとともに、一対の側壁に対する支軸の取り付け強度を十分なものにできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1から図5に本発明の一実施形態を示している。図例のローラフォロア1は、胴体2と、支軸3と、転がり軸受としての深溝型玉軸受4とを備えている。
【0013】
胴体2は、平行に対向する一対の側壁21,22を有しており、各側壁21,22の長手方向中間には、それぞれ同径の貫通孔23,24が同軸に設けられている。この貫通孔23,24の外側開口には、テーパ状の面取り23a,24aが設けられている。
【0014】
支軸3は、一対の側壁21,22の間に架設されている。
【0015】
深溝型玉軸受4は、支軸3において一対の側壁21,22間の領域に外装されるもので、内輪41と、外輪42と、複数の転動体としての玉43と、波型保持器44とを有している。内輪41は、支軸3に対して圧入により外嵌装着され、外輪42が回転自在とされる。つまり、外輪42をローラフォロア1のローラとして用いている。
【0016】
そして、上記胴体2、内輪41、外輪42、玉43は、熱硬化処理した鋼材とされ、また、支軸3は、熱硬化処理していない生の鋼材とされている。具体的に、胴体2は、例えばJIS規格SCM415やJIS規格SPCなどとされる。内・外輪41,42および玉43は、例えばJIS規格SUJ2などとされる。さらに、支軸3は、例えばJIS規格S45C、S55Cや、JIS規格SUJ2などとされる。また、胴体2、内輪41、外輪42、玉43に対する熱硬化処理は、浸炭処理が挙げられる。
【0017】
ここで、上記ローラフォロア1の組立手順を説明する。
【0018】
まず、図3に示すように、熱硬化処理していない生の鋼材からなるとともに全長にわたって均等な外径を有する支軸3を、第1側壁21の貫通孔23から内輪41を介して第2側壁22の貫通孔24へ向けて圧入嵌合する。
【0019】
この圧入過程の最終段階では、図4に示すように、支軸3の圧入方向先端側を第2側壁22の貫通孔24の外側開口から飛び出させることにより、内輪41を第2側壁22の内側面に対して押し付けて、内輪41と第1側壁21の内側面との間にのみ隙間h1を設ける状態にする。
【0020】
続いて、図5に示すように、支軸3を圧入方向と逆向きに所定量押し戻して、内輪41と第1側壁21の内側面との間と、内輪41と第2側壁22の内側面との間に隙間h2,h3を設ける。この隙間h2,h3は、それぞれ上記隙間h1の1/2に設定される。この隙間h2,h3を所定の基準値に設定するように、一対の側壁21,22間の間隔や内・外輪41,42の軸方向寸法などを規定している。
【0021】
ところで、上記圧入過程では、支軸3を一対の側壁21,22や内輪41よりも軟質にしているから、まず、支軸3の圧入方向先端側が、第1側壁21の貫通孔23を通過する過程で外径が所定量だけ小さくなるように塑性変形してしまい、続いて内輪41の内周を通過する過程でさらに外径が所定量だけ小さくなるよう塑性変形してしまう。
【0022】
そのため、取り付け後の支軸3の外径寸法は、僅かであるものの三段になってしまう。つまり、支軸3において、第1側壁21の貫通孔23に嵌合される領域(圧入方向手前側に相当)の外径r1と、内輪41に嵌合される領域の外径r2と、第2側壁22の貫通孔24に嵌合される領域(圧入方向先端側)の外径r3との関係は、r1>r2>r3になる。この支軸3において上記三つの領域の外径寸法差は、μm単位と微小であることを考慮し、図1には、支軸3の外径を三段にした形状で記載していない。
【0023】
このようなことから、支軸3の圧入方向手前側は第1側壁21の貫通孔23に対して「しまりばめ」となって軸方向および周方向に固定されるものの、支軸3の圧入方向先端側は第2側壁22の貫通孔24に対して「すきまばめ」となっているので、そのままでは、支軸3の圧入方向先端側が軸方向と周方向に固定されずに、がたつくことになる。
【0024】
そこで、上述したようにして支軸3を取り付けた後、支軸3において圧入方向先端側の端面に対して打刻かしめを施す。この打刻かしめとは、図5に示すように、支軸3の圧入方向先端側の端面に対してポンチなどの加工具6の刃を打ち込むことによって、支軸3の圧入方向先端側の端面に平面的に見てほぼO字形の溝31を刻み込むと同時に、支軸3の圧入方向先端側の外周を径方向外向きに盛り上げるように塑性変形させる。この盛り上がった部分32は、第2側壁22の貫通孔24における外側開口に設けてあるテーパ状の面取り24aに対して押し付けられるとともに、当該盛り上がった部分32の裾野が第2側壁22の貫通孔24の内周面において外側開口寄りに対して押し付けられるので、支軸3が第2側壁22の貫通孔24に対しても軸方向および周方向に固定されることになる。
【0025】
上記組立過程において、深溝型玉軸受4を内輪41付きにしているので、支軸3の外周面に複数のころを直接配置してローラを外嵌装着するような従来例において必須だったころの脱落防止具が不要になる。しかも、内輪41付きの深溝型玉軸受4を用いていれば、深溝型玉軸受4の内部に設けられるラジアル隙間によって、外輪42の若干の傾きを許容することができるので、外輪42に対して当接される部材とのミスアライメントを吸収できる。
【0026】
以上説明したように、ローラフォロア1に内輪41付きの深溝型玉軸受4を用いるとともに、上記支軸3の一端を第1側壁21の貫通孔23に対して圧入により固定したうえで、支軸3の他端を打刻かしめにより第2側壁22の貫通孔24に対して固定する構造を採用していることの相乗作用でもって、次のような効果が得られる。
【0027】
まず、ころ支軸3の外周面を深溝型玉軸受4の玉43の軌道面としていないので、支軸3は単に内輪41に圧入により固定するだけで済む。これにより、支軸3を熱硬化処理しない生の鋼材とすることができるとともに、支軸3を従来例のような段付き形状としない単純な外形形状とすることができるので、支軸3を安価に製作できて、ローラフォロア1のローコスト化に貢献できる。また、上記特許文献1に示す先行技術や支軸3の両端を打刻かしめする場合に比べて、一対の側壁21,22に対する支軸3の取り付け基準位置を高精度に設定しやすくなるとともに、一対の側壁21,22に対する支軸3の取り付け強度を十分なものにできるので、製品の形状精度を高めることができるなど、品質、信頼性の向上に貢献できる。
【0028】
次に、図6に、本発明の他の実施形態に係るローラフォロアを示す。ここでのローラフォロア1は、2つの深溝型玉軸受4A,4Bを用いている点が図1に示した実施形態と異なる。また、上記実施形態に示したローラフォロア1において、深溝型玉軸受4,4A,4Bを、他の形式の転がり軸受、例えば円筒ころ軸受、針状ころ軸受などに置き換えることも可能である。
【0029】
ところで、上述したローラフォロア1は、例えば図7や図8に示すように、自動車などのエンジン動弁機構のロッカーアーム10,20に用いることができる。もちろん、これらのロッカーアーム10,20以外のロッカーアームや、その他のいろいろな機構にも上記ローラフォロア1を用いることができる。
【0030】
図7に示すロッカーアーム10は、センタピボットタイプと呼ばれるものであり、胴体2の長手方向一端に上記ローラフォロア1が設けられ、長手方向中間にロッカシャフト71が貫通され、さらに長手方向他端にアジャストスクリュー11が螺合装着される。上記アジャストスクリュー11に、前記シリンダヘッドに設置される動弁機構のバルブ72のステムエンドが当接される。動作は、カム73の回転に伴いロッカシャフト71が支点となって胴体2が傾動されて、アジャストスクリュー11が上下方向に反復変位させられることで、バルブ72を開閉動作させる。
【0031】
図8に示すロッカーアーム20は、エンドピボッドタイプと呼ばれるものであり、胴体2の長手方向中間に上記ローラフォロア1が設けられ、長手方向一端にバルブ嵌入部21が、さらに長手方向他端に上向き半球形のピボット部22がそれぞれ設けられる。このピボット部22は、図示しないシリンダヘッドに設置されるラッシュアジャスタ74の上端に係合される。動作は、カム73の回転に伴いピボット部22が支点となって胴体2が傾動されて、バルブ嵌入部21が上下方向に反復変位させられることで、バルブ72を開閉動作させる。
【0032】
これらのロッカーアーム10,20を設置する自動車エンジンでは、環境保護の観点から特定の添加物を減らした低粘度タイプのエンジンオイルを用いる傾向であるうえに、ロッカーアーム10,20の周辺にエンジンオイルが少ないなど、ローラフォロア1の潤滑条件が厳しくなっているけれども、上述したようにローラフォロア1の動作が円滑になることに伴い、ロッカーアーム10,20の寿命向上に貢献できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明では、次のような効果が得られる。まず、支軸について熱硬化処理しない生の鋼材とするとともに外径を全長にわたって均等とした単純な外形にできるので、支軸を安価に製作できて、ローラフォロアのローコスト化に貢献できる。また、上記特許文献1に示す先行技術や支軸の両端を打刻かしめする場合に比べて、一対の側壁に対する支軸の取り付け基準位置を高精度に設定しやすくなるとともに、一対の側壁に対する支軸の取り付け強度を十分なものにできるので、製品の形状精度を高めることができるなど、品質、信頼性の向上に貢献できる。したがって、本発明では、安価で信頼性の高いローラフォロアを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るローラフォロアを示す断面図
【図2】図1のローラフォロアの側面図
【図3】図1のローラフォロアの組み込み工程での初期段階を示す図
【図4】図3の状態から支軸を所定位置まで押し込んだ状態を示す図
【図5】図4の状態から支軸を圧入方向と逆向きに押し戻してすきま調整した状態を示す図
【図6】本発明の他の実施形態に係るローラフォロアを示す断面図
【図7】本発明に係るローラフォロアの使用用途の一例を示す側面図
【図8】本発明に係るローラフォロアの使用用途の一例を示す側面図
【符号の説明】
1 ローラフォロア
2 胴体
21 胴体の第1側壁
22 胴体の第2側壁
23 第1側壁の貫通孔
24 第2側壁の貫通孔
3 支軸
4 深溝型玉軸受
41 深溝型玉軸受の内輪
42 深溝型玉軸受の外輪
43 深溝型玉軸受の玉

Claims (1)

  1. 平行に対向する一対の側壁と、前記一対の側壁間に架設される支軸と、この支軸において前記一対の側壁間の領域に外装される転がり軸受とを含み、
    前記転がり軸受は、前記支軸の外周面に対して圧入により嵌合される内輪と、この内輪に対し所定の対向空間を介して同心状に外装される外輪と、この外輪と前記内輪との間に介装される複数の転動体とを有し、
    前記一対の側壁および前記内輪は、熱硬化処理された鋼材とされていて、前記一対の側壁にそれぞれ同径の貫通孔が同軸に設けられており、
    前記支軸は、熱硬化処理されていない生の鋼材からなるとともに、取り付け前状態において全長にわたって均等な外径とされたものであり、この支軸が、前記一方側壁の貫通孔から他方側壁の貫通孔へ向けて圧入嵌合されるとともに、この支軸の圧入方向先端側の端面に対して打刻かしめが施されることにより、前記一対の側壁の貫通孔に対して支軸の両端が軸方向と周方向に固定されている、ローラフォロア。
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