JP2004176586A - 流体噴射装置およびその製造方法 - Google Patents

流体噴射装置およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属からなるハウジングと樹脂からなる樹脂カバーとの間をシールし、ハウジングと樹脂カバーとの境界部への流体の侵入を防止する流体噴射装置を提供する。
【解決手段】金属からなる第一ハウジング80の収容部85には容器部材90が設置されている。第一ハウジング80と容器部材90とが形成する充填部にはポッティング樹脂95が充填されている。ポッティング樹脂95は第一ハウジング80と密着し、第一ハウジング80と樹脂カバー41との間をシールしている。また、容器部材90を形成する樹脂は樹脂カバー41を形成する樹脂よりも融点が低いため、第一ハウジング80に容器部材90を設置した後、樹脂カバー41を成形する際に、容器部材90を形成する樹脂は樹脂カバー41を形成する樹脂により溶融する。その結果、容器部材90は樹脂カバー41と溶着し、流体の侵入を防止する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関(以下、内燃機関を「エンジン」という。)の吸気系、燃焼室または排気系に燃料を噴射する流体噴射装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンには、燃料を噴射する流体噴射装置が搭載されている。流体噴射装置としては、例えばエンジンを運転するために吸気系または燃焼室へ燃料を噴射するもの、または排気を浄化するために排気系に燃料を噴射するものがある。
例えば、エンジンの排気系に燃料を噴射する排気浄化用の流体噴射装置の場合、排気管を流れる排気に還元剤としての燃料を噴射する。これにより、排ガス中に含まれる例えばNOxなどは触媒において還元され、無害化される(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平06−026328号公報
【0004】
このような排気浄化用あるいはエンジンに燃料を噴射する流体噴射装置は、図9に示すように金属から形成されるハウジング101と樹脂から形成される樹脂カバー102とを有している。金属からなるハウジング101は、樹脂からなる樹脂カバー102によって覆われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハウジング101と樹脂カバー102とは材質が異なるため、ハウジング101と樹脂カバー102とは完全な密着状態とはならず、ハウジング101と樹脂カバー102との間にはわずかな隙間が形成される。例えば、排気浄化用の流体噴射装置100の場合、流体噴射装置100の電気コネクタ103側はヘッドカバー110の外部に露出して設置される。これに対し、ハウジング101と樹脂カバー102との境界部は、ヘッドカバー110の内部すなわちエンジンヘッド111との間に形成されるカム室112に位置する。そのため、カム室112に飛散するエンジンオイルは、ハウジング101と樹脂カバー102との間に形成される隙間に侵入する。侵入したエンジンオイルは、ハウジング101と樹脂カバー102との境界部に沿ってヘッドカバー110の外部に露出する電気コネクタ103および燃料コネクタ105まで流れる。その結果、カム室112からヘッドカバー110の外部にエンジンオイルが漏れ出すことがある。
また、電気コネクタ103および燃料コネクタ105はヘッドカバー110の外部に露出しているため、上記とは逆に電気コネクタ103から侵入した水などの流体はハウジング101と樹脂カバー102と境界部に沿ってカム室112に流入するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、金属からなるハウジングと樹脂からなる樹脂カバーとの間をシールし、ハウジングと樹脂カバーとの境界部への流体の侵入を防止する流体噴射装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、工程の増大を招くことなく、金属からなるハウジングと樹脂からなる樹脂カバーとの間のシール性が高い流体噴射装置の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の流体噴射装置によると、ハウジングと樹脂カバーとの境界部には充填部材が充填されている。充填部材はハウジングおよび樹脂カバーと密着し、ハウジングと樹脂カバーとの間に形成される隙間をシールする。したがって、金属と樹脂との境界部であるハウジングと樹脂カバーとの境界部への流体の侵入を防止することができる。
【0008】
本発明の請求項2記載の流体噴射装置によると、容器部材をさらに備えている。容器部材は、ハウジングとの間に充填部材が充填される充填部を形成する。充填部材として例えば樹脂を用いる場合、流動性のある樹脂を充填部に充填した後、その樹脂が硬化することにより、充填部材はハウジングと密着する。容器部材を備えることにより、流動性のある充填部材の流出を防止し、充填部材を所定の充填部に充填することができる。
【0009】
本発明の請求項3記載の流体噴射装置によると、容器部材は樹脂カバーよりも融点が樹脂から形成されている。そのため、容器部材をインサート物として樹脂カバーを成形する場合、容器部材は溶融する。これにより、樹脂カバーの成形時において、溶融した容器部材と樹脂カバーとは溶着する。その結果、容器部材と樹脂カバーとの間は密着し、ハウジングと樹脂カバーとの境界部に連通する経路が閉塞される。したがって、充填部材とハウジングとの間だけでなく、他の部分でも流体が侵入する経路を閉塞することができる。
【0010】
本発明の請求項4記載の流体噴射装置によると、容器部材は内側リングおよび外側リングを有する二重のリング状に形成されている。そのため、充填部材を所定の充填部に充填することができる。
本発明の請求項5記載の流体噴射装置によると、外側リングのハウジング側の端部は内側リングよりもハウジング側に位置している。外側リングおよび内側リングの端部が軸方向にずれることにより、外側リングの内周側には大きな空間が形成される。したがって、充填部材を容易に充填することができる。
【0011】
本発明の請求項6記載の流体噴射装置によると、内側リングおよび外側リングは径方向へ突出する突出部を有している。突出部は樹脂カバーの成形時における第一樹脂と接触することにより溶融する。そのため、容器部材と樹脂カバーとを容易に溶着することができる。
【0012】
本発明の請求項7記載の流体噴射装置によると、突出部は、内側リングから径方向内側へ突出し、外側リングから径方向外側へ突出している。そのため、容器部材と樹脂カバーとは内周側および外周側において溶着する。これにより、ハウジングと樹脂カバーとの境界部に連通する異なる経路がそれぞれ閉塞される。したがって、流体の侵入を防止することができる。
本発明の請求項8記載の流体噴射装置によると、ハウジングは収容部を有している。収容部の外周壁は容器部材の外側リングの外壁と当接する。これにより、ハウジングに対する容器部材の位置決めを容易にすることができる。また、収容部の外周壁と容器部材の外側リングの外壁とが当接することにより、外側リングの外周部からの充填部材の漏れを防止することができる。
【0013】
本発明の請求項9記載の流体噴射装置の製造方法によると、融点の低い樹脂からなる容器部材をインサートして融点の高い樹脂からなる樹脂カバーを成形する。これにより、樹脂カバーの成形時において、容器部材を形成する樹脂は溶融し、容器部材と樹脂カバーとは溶着する。また、樹脂カバーの成形と同時に樹脂カバーと容器部材との間が溶着されるため、工程の増加を招くことがない。したがって、容器部材と樹脂カバーとを確実に密着させ、シール性を高めることができる。
本発明の請求項10記載の流体噴射装置の製造方法によると、容器部材は樹脂カバーの成形時において溶融する突出部を有している。突出部が溶融することにより、容器部材と樹脂カバーとを確実に溶着することができる。
【0014】
本発明の請求項11記載の流体噴射装置の製造方法によると、突出部は樹脂カバーの成形時における樹脂の充填方向に対し概ね垂直に形成されている。そのため、突出部は、樹脂カバーの成形時における樹脂の流入によって容易に溶融する。これにより、容器部材と樹脂カバーとは確実に溶着し、シール性を向上することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す一実施例を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、本発明の流体噴射装置をディーゼルエンジンの排気浄化システムに用いられる還元剤添加装置に適用したものである。図2に示すように、排気浄化システム1は、主に流体噴射装置10、NOx触媒2および燃料供給装置3から構成されている。本実施例による流体噴射装置10は、4気筒のディーゼルエンジン5からの排気に還元剤である燃料を噴射する。
【0016】
流体噴射装置10は、ディーゼルエンジン5の排気系を構成する排気管6に搭載され、排気管6を流れる排気に燃料を噴射する燃料噴射装置である。流体噴射装置10は、排気管6のNOx触媒2の入口側に設置されている。なお、図示しない過給機を備えるディーゼルエンジンの場合、流体噴射装置10は排気管6の途中に設置される過給機の入口側または出口側のいずれかに設置してもよい。
排気系は、前述の排気管6と排気管6からディーゼルエンジン5の各気筒51に分岐している排気マニホールド61とから構成されている。排気管6には、排気の流れの方向に流体噴射装置10およびNOx触媒2が順に設置されている。
【0017】
流体噴射装置10は、ECU7からの指令により燃料の噴射を断続する。ECU7には、ディーゼルエンジン5に設置されている各種のセンサから、吸気流量、吸気圧、ディーゼルエンジン5の回転数およびアクセル開度などの各種の情報が入力される。ECU7は、入力された情報からディーゼルエンジン5の各気筒51に噴射される燃料の噴射量を制御するとともに、排気に燃料を噴射する流体噴射装置10を制御する。ECU7ではディーゼルエンジン5の回転数およびアクセル開度などに相関するNOx排出量が算出され、算出したNOxの排出量に基づいてECU7は流体噴射装置10から噴射される燃料の噴射量および噴射時期を設定する。そして、ECU7は、設定された燃料の噴射量および噴射時期に基づいて流体噴射装置10を制御する。
NOx触媒2には、例えばPtやPdなどの貴金属系の活性成分がセラミックスあるいは金属酸化物などの担体に担持された触媒が使用される。NOx触媒2は、例えばモノリスタイプまたはペレットタイプに成形されている。
【0018】
燃料供給装置3は、図示しない燃料タンクおよび給送ポンプ、ならびに給送管8を有している。燃料供給装置3は燃料タンクに蓄えられている燃料を流体噴射装置10へ供給する。燃料タンクに蓄えられている燃料は給送ポンプにより給送管8を経由して流体噴射装置10へ供給される。燃料タンクに蓄えられている燃料は、燃料としてディーゼルエンジン5に供給されるとともに、炭化水素系の還元剤として流体噴射装置10に供給される。
【0019】
流体噴射装置10は、図1に示すように排気管6を形成しているエンジンヘッド62ならびにエンジンヘッド62との間にカム室63を形成するヘッドカバー64を貫いて設置されている。流体噴射装置10は、開閉弁20、駆動手段30、保持搭載部40およびノズル部70から構成されている。
【0020】
開閉弁20は弁部材21および弁ボディ22を有し、ノズル部70からの燃料の噴射を断続する。弁部材21には外壁に当接部が形成されており、当接部は弁ボディ22の内壁に形成されている弁座部と当接可能である。当接部が弁座部から離座することにより燃料の流れが開放され、当接部が弁座部に着座することにより燃料の流れが閉塞される。
【0021】
駆動手段30は、コイル31、固定コア32、可動コア33、ステータ34およびスプリング35などを有し、弁部材21を軸方向へ往復駆動する。コイル31は、スプール36に巻回され、固定コア32とステータ34との間に設置されている。コイル31は、通電されることにより磁界を発生する。コイル31には配線部37が接続されており、配線部37の反コイル側の端部は電気コネクタ11のターミナル12に接続されている。コイル31は、配線部37を経由してECU7と電気的に接続されており、ECU7から電力が供給される。
【0022】
固定コア32およびステータ34は、磁性材料から形成されている。固定コア32のノズル部70側の端部には可動コア33が設置されており、可動コア33には弁部材21が例えば溶接などにより接続されている。一体の可動コア33および弁部材21は、パイプ部材13の内周側に軸方向へ移動可能に収容されている。パイプ部材13は、非磁性部131を挟んで磁性部132および磁性部133を有しており、内周側に固定コア32が圧入されている。固定コア32は筒状に形成されており、固定コア32の内周側にはアジャスティングパイプ14が圧入されている。アジャスティングパイプ14はスプリング35と当接している。スプリング35の反アジャスティングパイプ側の端部は可動コア33に当接している。スプリング35は固定コア32および弁部材21を当接部が弁座部へ着座する方向へ付勢する。固定コア32に対するアジャスティングパイプ14の圧入量を調整することにより、スプリング35の付勢力が調整される。
【0023】
燃料供給装置3から給送された燃料は燃料コネクタ15から流体噴射装置10へ流入する。燃料コネクタ15から流入した燃料は、パイプ部材13の内側、アジャスティングパイプ14の内側、固定コア32の内側、可動コア33の内側および弁部材21の内側を経由してノズル部70へ供給される。コイル31、ステータ34およびパイプ部材13の外周側には、コイル31、ステータ34およびパイプ部材13などを被覆するモールド樹脂16が形成されている。開閉弁20ならびにモールド樹脂16により被覆された駆動手段30は、一体の作動部を構成している。
【0024】
ECU7からコイル31へ電力が供給されると、コイル31には磁界が発生し、コイル31の周囲に設置されている磁性部133、ステータ34、磁性部132、可動コア33および固定コア32には磁気回路が形成される。これにより、固定コア32と可動コア33との間には磁気吸引力が発生し、可動コア33はスプリング35の付勢力に抗して固定コア32方向へ吸引される。そのため、弁部材21は図1の上方へ移動し、当接部は弁座部から離座する。可動コア33が固定コア32に当接することにより、弁部材21の図1の上方への移動は制限される。コイル31への電力の供給が停止されると、固定コア32と可動コア33との間の磁気吸引力は消滅し、スプリング35の付勢力により可動コア33と一体の弁部材21は図1の下方へ移動する。これにより、当接部は弁座部に着座し、燃料の流れが閉塞される。
【0025】
保持搭載部40は、ハウジングおよび樹脂カバー41とを備えている。ハウジングは、それぞれ別体に構成されている第一ハウジング80、第二ハウジング42および第三ハウジング43を有している。各ハウジングは筒状に形成されており、内部に開閉弁20および駆動手段30から構成される作動部が収容されている。第一ハウジング80と第二ハウジング42ならびに第二ハウジング42と第三ハウジング43は、それぞれ例えばねじ止めあるいは溶接などにより接続されている。第一ハウジング80には、燃料が導入される導入部80aが形成されている。導入部80aは給送管8に接続され、燃料供給装置3から給送管8を経由して燃料が供給される。第一ハウジング80は、軸方向の途中に二重環部81を有している。二重環部81の反第二ハウジング側には、樹脂カバー41が隣接して形成されている。樹脂カバー41はディーゼルエンジン5のヘッドカバー64に保持される。樹脂カバー41とヘッドカバー64との間には、カム室63とヘッドカバー64の外部との間をシールするためのオイルシール65が設置されている。
【0026】
第三ハウジング43はディーゼルエンジン5のエンジンヘッド62に保持される。第三ハウジング43の第二ハウジング42と反対側の端部にはノズル部70が接続されている。ノズル部70はノズルボディ71を有している。ノズルボディ71はリテーニングナット72によるねじ止めによって第三ハウジング43に固定されている。
【0027】
ノズルボディ71は、排気管6の中心軸方向へ伸びて形成されている。ノズルボディ71には、噴孔73、ならびに噴孔73と開閉弁20の燃料出口側とを連通する連通路74が形成されている。噴孔73は、排気の流れの下流側に向けて形成されている。開閉弁20の弁ボディ22に形成されている弁座部と弁部材21に形成されている当接部との間を通過した燃料は、連通路74を経由して噴孔73から排気管6を流れる排気に噴射される。ノズルボディ71の外側には、ノズルカバー75が装着されている。ノズルカバー75は、ノズルボディ71の外壁ならびに噴孔73の近傍に排気に含まれる不燃成分が付着するのを防止する。
【0028】
次に、第一ハウジング80と樹脂カバー41との境界部分について説明する。第一ハウジング80には、二重環部81が形成されている。第一ハウジング80は二重環部81において内筒部82および外筒部83を有しており、内筒部82の内周側に作動部が収容されている。内筒部82と外筒部83との間は第二ハウジング42側へ窪んでおり、内筒部82の外壁と外筒部83の内壁とは内底面84により接続されている。これら、内筒部82の外壁、外筒部83の内壁および内底面84により凹状の収容部85が形成されている。収容部85には、容器部材90が収容されている。
【0029】
容器部材90は、樹脂カバー41を形成する樹脂よりも軟化点および融点が低い樹脂から形成されている。例えば、樹脂カバー41を形成する樹脂は6,6−ナイロンからなり、容器部材90を形成する樹脂は6−ナイロンからなる。容器部材90は、内側リング91および外側リング92を有する二重の環状に形成されている。図3に示すように、内側リング91と外側リング92とはほぼ同心円状に形成され、内側リング91と外側リング92とはリブ93により接続されている。なお、容器部材90の形状は、設置される収容部85の形状などに応じて任意に変更可能である。本実施例の場合、内側リング91は、配線部37との干渉を避けるため、一部に平坦部91aを有している。図4に示すように、内側リング91と外側リング92とは軸方向にずれて形成されており、外側リング92の第一ハウジング80側の端部すなわち下端部92bは内側リング91の下端部91bよりも第一ハウジング80側に位置している。
【0030】
内側リング91および外側リング92には、図3および図4に示すようにそれぞれ径方向に突出する突出部911、921が形成されている。内側リング91に形成されている突出部911は、内側リング91から径方向内側へ突出して形成されている。外側リング92に形成されている突出部921は、外側リング92から径方向外側へ突出して形成されている。突出部911、921は、内側リング91および外側リング92の周方向へ連続して形成されている。また、突出部911、921は、内側リング91および外側リング92から軸方向に対し概ね垂直な方向に突出して形成されている。
【0031】
内側リング91の内周側には第一ハウジング80の内筒部82が挿入され、外側リング92の外周側には樹脂カバー41が形成される。外側リング92の外径は、第一ハウジング80の外筒部83の内径と概ね同一に形成されている。そのため、図5および図6に示すように外側リング92の外周壁は第一ハウジング80に形成されている外筒部83の内壁すなわち収容部85の外周壁と当接している。これにより、容器部材90は第一ハウジング80の収容部85に位置決めされる。
【0032】
収容部85に容器部材を設置したとき、図6(A)に示すように第一ハウジング80と容器部材90との間すなわち内筒部82の外壁と内底面84と外側リング92の内周壁との間には、充填部94が形成される。充填部94には、図6(B)に示すように例えばエポキシ樹脂などからなる充填部材としてのポッティング樹脂95が充填される。充填部94に充填されたポッティング樹脂95が硬化することにより、ポッティング樹脂95と第一ハウジング80の内底面84とは密着する。
【0033】
次に、上記構成の流体噴射装置10における樹脂カバー41の成形について説明する。
第一ハウジング80の内筒部82の内周側には開閉弁20および駆動手段30からなる作動部が挿入される。このとき、駆動手段30の配線部37は図6(A)に示すように第一ハウジング80を貫いている。第一ハウジング80に作動部が挿入された後、第一ハウジング80の収容部85に容器部材90を設置する。容器部材90の外側リング92と第一ハウジング80の外筒部83とが当接することにより、容器部材90は第一ハウジング80に対し位置決めされる。また、容器部材90の内側リング91の平坦部91aと外側リング92との間に配線部37が挿入される。
【0034】
第一ハウジング80に容器部材90が設置されると、図6(B)に示すように充填部94にポッティング樹脂95が充填される。ポッティング樹脂95は、溶融し流動性を有する状態で充填部94に充填される。このとき、容器部材90の外側リング92はポッティング樹脂95の流動を規制し、充填されるポッティング樹脂95を所定の充填部94に留める。ポッティング樹脂95の充填が完了すると、ポッティング樹脂95は硬化される。
【0035】
ポッティング樹脂95が硬化すると、樹脂カバー41が形成される。樹脂カバー41は、第一ハウジング80に設置された容器部材90をインサート物として成形される。容器部材90が設置されポッティング樹脂95が充填されている第一ハウジングは、成形型9に挿入される。樹脂カバー41を形成する樹脂は、溶融され流動性を有した状態で成形型9の反第一ハウジング側すなわち図6(B)の上方から容器部材90の軸に沿って矢印の方向へ成形型9の内部に流し込まれる。成形型9の内部に樹脂を流し込むことにより、樹脂は容器部材90の周囲に流入する。
【0036】
上述のように、樹脂カバー41となる樹脂の融点は容器部材90となる樹脂の融点よりも高いため、容器部材90の周囲に樹脂カバー41となる樹脂が流入することにより、容器部材90は軟化し溶融する。特に、内側リング91および外側リング92の突出部911、921は、容器部材90の軸から概ね垂直に突出し、かつ容積が小さいため、容器部材90の軸に沿って流入する樹脂によって容易に溶融する。これにより、溶融した突出部911、912は流し込まれた樹脂と溶け合う。その結果、樹脂カバー41が硬化することにより、突出部911、912と樹脂カバー41とは溶着される。
以上の手順により樹脂カバー41が形成されるとともに、第一ハウジング80と樹脂カバー41との間はシールされる。
【0037】
本発明の一実施例による流体噴射装置10では、第一ハウジング80と樹脂カバー41との境界部分にポッティング樹脂95を充填している。ポッティング樹脂95は第一ハウジング80と密着する。そのため、第一ハウジング80と樹脂カバー41との境界部から侵入したカム室63のエンジンオイルは、第一ハウジング80とポッティング樹脂95との密着部分においてシールされる。これにより、侵入したエンジンオイルが第一ハウジング80と樹脂カバー41との境界部に沿って電気コネクタ11および燃料コネクタ15へ流れ、カム室63の外部に流出することが防止される。したがって、樹脂からなる樹脂カバー41と金属からなる第一ハウジング80との境界部を確実にシールすることができる。
【0038】
本発明の一実施例では、容器部材90は樹脂カバー41と溶着する。そのため、第一ハウジング80と樹脂カバー41との境界部から侵入し容器部材90の外側リング92の外壁に沿って流れるエンジンオイルは、外側リング92の突起部921と樹脂カバー41との溶着部分においてシールされる。これにより、カム室63から第一ハウジング80と樹脂カバー41との間に侵入したエンジンオイルが配線部37と樹脂カバー41との境界部に沿って電気コネクタ11へ流れることが防止される。したがって、ディーゼルエンジン5の外部へのエンジンオイルの飛散を防止することができる。一方、電気コネクタ11から第一ハウジング80と樹脂カバー41との境界部に沿って流入する水分は、内側リング91の突起部911と樹脂カバー41との溶着部分においてシールされる。これにより、電気コネクタ11の周辺から侵入した水分が配線部37の近傍に流入することが防止される。したがって、配線部37の腐食、あるいは接触不良などを防止することができる。
【0039】
本発明の一実施例では、容器部材90は内側リング91および外側リング92からなる二重環状に形成され、外側リング92は内側リング91よりも第一ハウジング80側に位置している。これにより、充填部94を形成する外側リング92の内周側の空間が拡大する。したがって、充填部94へのポッティング樹脂95の充填を容易にすることができる。
【0040】
また、本発明の一実施例では、容器部材90と樹脂カバー41とが溶着することにより第一ハウジング80と樹脂カバー41との間へのエンジンオイルおよび水分の侵入を防止している。容器部材90を形成する第二樹脂の融点を樹脂カバー41を形成する第一樹脂の融点よりも低く設定することにより、樹脂カバー41の成形と同時に容器部材90と樹脂カバー41との溶着を実施することができる。したがって、工数の増大ならびに製造工程の複雑化を招くことなく、第一ハウジング80と樹脂カバー41との間を確実にシールすることができる。
【0041】
さらに、本発明の一実施例では、容器部材90の内側リング91および外側リング92に形成されている突起部911、921は、それぞれ内側リング91および外側リング92から容器部材90の軸に対し概ね垂直に形成されている。そのため、突起部911、921は容器部材90の軸方向に沿って流し込まれる第一樹脂によって容易に溶融する。したがって、容器部材90と樹脂カバー41とを確実に溶着させることができる。
【0042】
(変形例)
次に、本発明の一実施例による流体噴射装置10の容器部材の変形例について説明する。
図7および図8に示すように、容器部材90の内側リング91と外側リング92との位置関係は変更することができる。
【0043】
図7に示す容器部材90の場合、内側リング91の上端部91cすなわち反第一ハウジング側の端部は外側リング92の上端部92cと概ね同一の位置にある。これにより、外側リング92の軸方向の全長が拡大する。そのため、内側リング91と外側リング92とを接続するリブ93は、大型化され、強度が大きくなる。その結果、内側リング91の変形が防止される。したがって、樹脂カバー41を形成する第一樹脂が充填される際に内側リング91が径方向へ変形することを防止できる。
【0044】
図8に示す容器部材90の場合、外側リング92の周方向における少なくとも一部は上端部92cが内側リング91の上端部91cと概ね同一の位置にある。そのため、図7に示す容器部材90と同様にリブ93を大型化し強度を大きくすることができる。したがって、第一樹脂の充填時における内側リング91の変形を防止することができる。
【0045】
以上、説明した本発明の一実施例では、流体噴射装置をディーゼルエンジンの排気浄化システムに適用する例について説明した。しかし、本発明の流体噴射装置は、排気浄化システムに限らず、燃料の吸気系または燃焼室に燃料を噴射する流体噴射装置に適用することもできる。また、樹脂カバーおよび容器部材の材質および形状は適宜変更可能である。さらに、容器部材に形成されている突起部は軸方向の一か所に形成する例について説明したが、軸方向に二か所以上形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による流体噴射装置を示す断面図であって、流体噴射装置をエンジンヘッドに搭載した状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による流体噴射装置を適用した排気浄化システムを示す模式図である。
【図3】本発明の一実施例による流体噴射装置の容器部材を示す概略図であって、反第一ハウジング側から見た図である。
【図4】図3のVI−VI線で切断した断面図である。
【図5】本発明の一実施例による流体噴射装置を示す断面図であって、樹脂カバーと第一ハウジングとの境界部の近傍を拡大した図である。
【図6】本発明の一実施例による流体噴射装置において、(A)は第一ハウジングに容器部材を収容した状態、(B)はポッティング樹脂を充填した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施例による流体噴射装置の容器部材の変形例を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施例による流体噴射装置の容器部材の変形例を示す概略図である。
【図9】従来の流体噴射装置を示す断面図である。
【符号の説明】
10 流体噴射装置
41 樹脂カバー
80 第一ハウジング(ハウジング)
85 収容部
90 容器部材
91 内側リング
92 外側リング
94 充填部
95 ポッティング樹脂(充填部材)
911、921 突出部

Claims (11)

  1. 金属からなるハウジングと、
    前記ハウジングと隣接する樹脂カバーと、
    前記ハウジングと前記樹脂カバーとの境界部に充填され、前記ハウジングおよび前記樹脂カバーと密着する充填部材と、
    を備えることを特徴とする流体噴射装置。
  2. 前記ハウジングとともに前記充填部材が充填される充填部を形成し、前記充填部材の流動を制限する容器部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
  3. 前記容器部材は、前記樹脂カバーよりも融点が低い樹脂からなることを特徴とする請求項2記載の流体噴射装置。
  4. 前記容器部材は、環状の内側リングならびに前記内側リングの外周側に接続される外側リングを有することを特徴とする請求項2または3記載の流体噴射装置。
  5. 前記外側リングの前記ハウジング側の端部は、前記内側リングよりも前記ハウジング側に位置することを特徴とする請求項4記載の流体噴射装置。
  6. 前記内側リングおよび前記外側リングは、径方向に突出する突出部を有することを特徴とする請求項4または5記載の流体噴射装置。
  7. 前記突出部は、前記内側リングから径方向内側に突出し、前記外側リングから径方向外側に突出していることを特徴とする請求項6記載の流体噴射装置。
  8. 前記ハウジングは前記樹脂カバー側の端部に前記容器部材を収容可能な収容部を有し、前記収容部の外周壁は前記容器部材の前記外側リングの外壁と当接していることを特徴とする請求項4から7のいずれか一項記載の流体噴射装置。
  9. 金属からなるハウジングと、前記ハウジングに隣接する樹脂カバーとを備える流体噴射装置の製造方法であって、
    前記ハウジングに、前記樹脂カバーよりも融点が低い樹脂からなる容器部材を設置する段階と、
    前記容器部材をインサートして前記樹脂カバーとなる樹脂を充填し、前記容器部材を溶融させ、前記容器部材と前記樹脂カバーとを溶着する段階と、
    を含むことを特徴とする流体噴射装置の製造方法。
  10. 前記容器部材は、前記容器部材と前記樹脂カバーとを溶着する段階において溶融される突出部を有することを特徴とする請求項9記載の流体噴射装置の製造方法。
  11. 前記突出部は、前記容器部材から前記樹脂カバーの成形時における樹脂の充填方向に対し概ね垂直に突出して形成されていることを特徴とする請求項9または10記載の流体噴射装置。
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