JP2004175715A - メチオニンの晶析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の含水率と体積平均粒子径を有するメチオニンの結晶を、安定して得ることができるメチオニンの晶析方法を提供する。
【解決手段】メチオニン、下記化合物(a)及び(b)の金属塩等を含む水溶液に炭酸ガスを供給するメチオニンの晶析方法であって、前記水溶液中のメチオニン、化合物(a)及び(b)の濃度を測定し、化合物(a)及び(b)の共存メチオニンに対する重量百分率B及びC(%)を求める工程と、A、B、Cを、式(1):W=K×(A)α×(B)β×(C)γ×(D)δ(式中、Wはメチオニン結晶の含水率(重量%)を、Dは体積平均粒径(μm)を、α、β、γ、δ及びKは定数を表す。)に代入して相関式を得る工程と、得られた相関式を満たすWとDとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液中におけるメチオニン、化合物(a)及び(b)の濃度を調整する工程とを有するメチオニンの晶析方法。
【化1】
【選択図】 なし。
【解決手段】メチオニン、下記化合物(a)及び(b)の金属塩等を含む水溶液に炭酸ガスを供給するメチオニンの晶析方法であって、前記水溶液中のメチオニン、化合物(a)及び(b)の濃度を測定し、化合物(a)及び(b)の共存メチオニンに対する重量百分率B及びC(%)を求める工程と、A、B、Cを、式(1):W=K×(A)α×(B)β×(C)γ×(D)δ(式中、Wはメチオニン結晶の含水率(重量%)を、Dは体積平均粒径(μm)を、α、β、γ、δ及びKは定数を表す。)に代入して相関式を得る工程と、得られた相関式を満たすWとDとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液中におけるメチオニン、化合物(a)及び(b)の濃度を調整する工程とを有するメチオニンの晶析方法。
【化1】
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、メチオニンの金属塩及びメチオニンの二量体等を含む水溶液から、所望の含水率及び体積平均粒径を有するメチオニンの結晶を、安定して効率よく取得することができるメチオニンの晶析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、メチオニンの製造方法として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するメチオニンの製造方法が知られている。
【0003】
この製造方法において、晶析して得られるメチオニン結晶の物性は、晶析したメチオニンを固液分離する工程の操業効率、及びメチオニン結晶の品質を管理する上で重要である。例えば、メチオニン結晶の含水率は乾燥プロセスへのエネルギー負荷を、粒子径(体積平均粒径)はハンドリング性及び固液分離性を左右する因子である。また、嵩密度が低く、含水率が高いメチオニンの結晶は、固液分離し、洗浄した後においても、結晶内部に母液を含んでいる。そのため、メチオニンの結晶中に含まれる母液由来の無機塩及び不純物であるメチオニン多量体等が製品であるメチオニンに混入し、品質上問題となる。
【0004】
従来、晶析するメチオニンの結晶の物性を制御する方法として、メチオニンのカリウム塩を含む水溶液にメチオニンの種晶を添加して、メチオニンを晶析する方法が知られている(特許文献1)。また、メチオニンの結晶の嵩密度を制御する方法として、半回分晶析操作により時間の経過とともにメチオニンの結晶の嵩密度を増加させる方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−072656号公報
【特許文献2】
特開平11−158140号公報
【0006】
【課題を解決するための手段】
しかしながら、これらの方法においても、晶析するメチオニンの結晶の物性を完全に制御することは困難であり、所望の物性を有するメチオニンの結晶が安定して得られない場合があった。
【0007】
本発明は、かかる実情に基づいてなされたものであり、所望の含水率と体積平均粒子径とを有するメチオニンの結晶を、安定して得ることができるメチオニンの晶析方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液から、所望の物性を有するメチオニン結晶を取得する方法について鋭意検討した。その結果、晶析して得られるメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率及び体積平均粒径と、前記反応液に含まれるメチオニン及び反応副生成物(メチオニンの多量体)の濃度との間に一定の関係があるという知見を得た。そして、この知見に基づいて、晶析して得られるメチオニン結晶の含水率と体積平均粒子径を制御することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、メチオニン、式(a)
【0010】
【化3】
【0011】
で表される化合物、式(b)
【0012】
【化4】
【0013】
で表される化合物及び/又はこれらの金属塩を含む水溶液に、炭酸ガスを供給するメチオニンの晶析方法であって、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記式(a)で表される化合物の濃度(重量%)、及び前記式(b)で表される化合物の濃度(重量%)をそれぞれ測定し、前記式(a)で表される化合物の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)及び前記式(b)で表される化合物の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)を求める工程と、得られた前記A、B及びCの値を、式(1)
【0014】
【数2】
【0015】
(式中、Wは晶析して得られるメチオニン結晶のウェットベースでの含水率(重量%)を表し、Dは晶析して得られるメチオニン結晶の体積平均粒径(μm)を表し、α、β、γ、δ及びKはそれぞれ定数を表す。)に代入して相関式を得る工程と、得られた相関式を満たすメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整する工程とを有するメチオニンの晶析方法が提供される。
【0016】
本発明の晶析方法は、前記B(%)とC(%)の合計が10(%)以下となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整するものであるのが好ましい。
【0017】
本発明の晶析方法は、前記水溶液に凝集剤を添加することにより、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整するものであるのがより好ましい。
【0018】
本発明の晶析方法は、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記式(a)で表される化合物の濃度(重量%)及び前記式(b)で表される化合物の濃度(重量%)の測定を一定時間毎に行なうことにより、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整するものであるのがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明の晶析方法においては、前記水溶液が、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液に、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液であるのが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のメチオニンの晶析方法について、詳細に説明する。
(1)水溶液
本発明に用いる水溶液は、少なくとも、メチオニン、前記式(a)で表される化合物(以下、「化合物(a)」という。)、前記式(b)で表される化合物(以下、「化合物(b)」という。)及び/又はこれらの金属塩を含むものであれば特に限定されない。
【0021】
前記金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
【0022】
前記水溶液に含まれる化合物(a)及び化合物(b)は、メチオニン分子が2分子以上関与して生成したと考えられる化合物である。本発明に用いる水溶液には、化合物(a)と化合物(b)がそれぞれ単独で、あるいは両化合物が同時に含まれていてよい。また、メチオニンの分解物、メチオニンの3量体以上のメチオニンの多量体等の他の化合物がさらに含まれていてもよい。
【0023】
本発明においては、前記水溶液として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを金属水酸化物,金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用い、公知の方法で加水分解して得られる水溶液であるのが好ましい。
【0024】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインは、公知の方法で製造することができる。例えば、3−メチルプロピオンアルデヒド、青酸、アンモニア及び炭酸ガスを反応させて製造することができる。この反応は、通常、約0〜0.3MPaの加圧条件下、反応温度約70〜110℃で行なうことができる。また、アンモニア及び炭酸ガスの代わりに炭酸水素アンモニウムを用いることもできる。
【0025】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解反応に用いる金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられる。また、金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
加水分解は、通常、約0.4〜1.0MPaの加圧条件下、反応温度約140〜200℃、反応時間約10〜120分で行なうことができる。加水分解反応は、連続式、セミバッチ式、バッチ式のいずれでも行なうことができる。また、加水分解時に発生するアンモニア及び炭酸ガスを回収して、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの製造に再利用することができる。
【0027】
(2)メチオニンの晶析方法
本発明の晶析方法は、前記水溶液に炭酸ガスを加圧下に供給する公知の方法により、メチオニンを中和晶析するものである。
メチオニンの晶析方法としては、例えば、前記水溶液の一部を攪拌槽に仕込み、内容物を攪拌しながら、所定温度で炭酸ガスの気泡を分散、吸収、中和してメチオニンの種結晶を析出させ(スラリー状となる)、ここへ、前記水溶液と炭酸ガスとを同時に供給して、メチオニンを晶析する方法(半回分式)、撹拌槽へ連続的に水溶液と炭酸ガスとを供給して、メチオニンを中和晶析させながら、連続的にメチオニンの結晶を含むスラリーを抜き出す方法(連続式)、特開平11−158140号に記載の回分式とセミ連続式を合わせもつ方法等が挙げられる。
【0028】
本発明の晶析方法は、少なくともメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)及び/又はこれらの金属塩を含む水溶液に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するに際し、
▲1▼ 前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記化合物(a)の濃度(重量%)及び化合物(b)の濃度(重量%)をそれぞれ測定し、前記化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)を求める工程(測定工程)、
▲2▼ 得られた前記A、B及びCの値を、前記式(1)に代入して相関式を得る工程(算出工程)、
▲3▼ 得られた相関式を満たすメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液のメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)の濃度を調整する工程(調整工程)、を有することを特徴とする。
【0029】
▲1▼測定工程
先ず、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、化合物(a)の濃度(重量%)及び化合物(b)の濃度(重量%)を測定し、化合物(a)の共存メオニンに対する重量百分率B(%)及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率(C%)を求める。
メチオニン金属塩及びメチオニン多量体の濃度を測定する方法としては特に限定されず、公知の測定方法を採用することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーによる方法、アミノ酸分析計を用いる方法等が挙げられる。
【0030】
ここで、メチオニンの濃度Aは、メチオニンの金属塩を中和して得られるメチオニンとメチオニンとを合計したメチオニンの水溶液中の濃度(重量%)である。また、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)は、化合物(a)の金属塩を中和して得られる化合物(a)と化合物(a)とを合計した化合物(a)の水溶液中の濃度から求められる値であり、化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)は、化合物(b)の金属塩を中和して得られる化合物(b)と化合物(b)とを合計した化合物(b)の水溶液中の濃度から求められる値である。
【0031】
▲2▼算出工程
次に、得られた前記A、B及びCの値を、下記式(1)に代入して、相関式を算出する。
【0032】
【数3】
【0033】
式(1)中、Wは晶析して得られるメチオニン結晶のウェットベースでの含水率(重量%)を表し、Dは晶析して得られるメチオニン結晶の体積平均粒径(μm)を表し、α、β、γ、δ及びKはそれぞれ定数を表す。
【0034】
上記式(1)は半経験的に得られる式であり、メチオニン結晶のウェットベースでの含水率W及びメチオニンの結晶の体積平均粒径Dと、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率Cとの間には、上記式(1)で表される相関関係があることを前提としている。
【0035】
相関式を得るには、具体的には次のように行なう。
ある液組成を有する水溶液に炭酸ガスを供給し、メチオニンを中和晶析して、メチオニンの結晶を得る。この操作を水溶液の組成を変化させながら数回から数十回繰り返し、各操作毎に、水溶液に含まれるメチオニンの濃度A、化合物(a)の濃度、化合物(b)の濃度、得られたメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率(重量%)及び体積平均粒径(μm)をそれぞれ測定し、化合物(a)及び(b)のメチオニンに対する重量百分率B,C(%)を求める。
【0036】
ここで、メチオニンの結晶のウェットベースでの含水率(重量%)は、例えば、卓上式乾燥減量測定器で測定することができる。
また、体積平均粒径(μm)は、例えば、レーザー式粒度測定装置で測定することができる。
【0037】
次に、得られたA、B、C、D及びWを前記式(1)に代入して、(重)回帰分析法により、α、β、γ、δ及びKの値を算出する。(重)回帰分析法による計算は、例えば、計算プログラムを搭載したパーソナルコンピュータを使用して行なうことができる。
【0038】
計算して得られるα、β、γ、δ及びKは定数であり、メチオニンの晶析条件が同じであれば一定値となる。晶析条件は水溶液からメチオニンを中和晶析するときの条件であり、例えば、添加する凝集剤の種類が異なれば、異なる晶析方法となり、α、β、γ、δ及びKの値は異なるものとなる。従って、メチオニンを中和晶析する操作を繰り返し行って、A、B、C、D及びWを測定する場合には、水溶液へ添加する凝集剤の種類等の晶析条件は同一とする必要がある。
【0039】
次いで、得られたα、β、γ、δ及びKを前記式(1)に代入することにより、メチオニンの含水率Wと体積平均粒径Dとの関係式(相関式)を得ることができる。
【0040】
▲3▼調整工程
調整工程は、このようにして得られる相関式を満足するメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物濃度の調整を行なうものである。
【0041】
メチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wは、結晶の空隙に含まれる水分量を示す因子である。母液中には、不純物〔化合物(a)及び/又は化合物(b)等〕が溶解しているため、含水率が高い結晶には不純物が取り込まれやすい。また、メチオニン結晶の含水率は、一般的に体積平均粒径が大きいほど小さくなる傾向がある。従って、体積平均粒径を大きくした方が含水率の低いメチオニン結晶となる。
【0042】
一方、メチオニンの体積平均粒径があまりに大きくなると、メチオニン粉体輸送で詰まりが生じやすくなる。従って、メチオニンを連続的に大量生産する場合等においては、所定範囲内の含水率と体積平均粒径をもつメチオニンの結晶を安定して得ることが重要である。
【0043】
従って、メチオニン結晶の含水率Wと体積平均粒径Dをどのような範囲に設定するかは、晶析したメチオニンの固液分離工程、乾燥工程及び輸送工程などの操業効率、メチオニンの結晶の純度等の観点から決定される。
【0044】
メチオニン結晶の含水率及び体積平均粒径は、晶析条件によっても異なるが、例えば、凝集剤としてグルテンを添加した場合、メチオニンの結晶の含水率は、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは14〜28重量%、体積平均粒径は、好ましくは300〜700μm、より好ましくは340〜660μmの範囲である。また、ポリビニルアルコールを添加した場合には、メチオニンの結晶の含水率は、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%、体積平均粒径は、好ましくは400〜600μm、より好ましくは430〜590μmの範囲である。所定の晶析条件の下で、含水率及び体積平均粒径がこのような範囲にあるメチオニンの結晶は、嵩密度が高く、高純度で、取り扱いが容易なものとなる。
【0045】
得られるメチオニン結晶の含水率及び体積平均粒径を上記範囲内になるようにするためには、具体的には次の(ア)や(イ)に示すようにして行なうことができる。以下、メチオニンを晶析する水溶液として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液に、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液の場合を例にとって説明する。
【0046】
(ア)前記水溶液における化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)の合計(B+C)が10(%)以下、好ましくは8(%)以下、より好ましくは6.5(%)以下とする。
このような水溶液を用いることにより、結晶形及び嵩密度が改善されたメチオニンの結晶を安定して得ることができる。すなわち、水溶液中における化合物(a)及び化合物(b)の含有量をできるだけ少なくするのが好ましい。
【0047】
化合物(a)及び化合物(b)の含有量を少なくする方法としては、例えば、(i)5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解の反応温度を高くする、(ii)加水分解の反応時間を長くする、(iii)5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解に用いる金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩の5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するモル比を高くする、(iv)5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインと金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩の濃度を高くする、及び(v)(i)〜(iv)の方法を組み合わせる、等の方法が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、上記(v)の方法が特に好ましい。より具体的には、前記加水分解の反応条件を、反応温度を150〜200℃、好ましくは160〜200℃、反応時間を0.2〜8時間、好ましくは1〜5時間、用いる金属水酸化物等のモル比(当量比)を2.0〜6.0、好ましくは2.5〜3.0、用いる金属水酸化物等の濃度を、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対して5〜20重量%、好ましくは10〜17重量%とする。
【0049】
また、化合物(a)及び化合物(b)は、水溶液中で加熱することによりメチオニンを再生するため、加水分解後の反応液を更に加熱処理して得られる水溶液を用いるのが、メチオニンの収率向上、化合物(a)及び(b)の量を低減させる観点から好ましい。
【0050】
また、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを加水分解して得られる水溶液から晶析したメチオニンを固液分離して得られる母液には、メチオニンの一部と炭酸水素塩等が含まれているので、この母液を前記加水分解工程に再使用する場合がある。この母液には、化合物(a)及び化合物(b)等のメチオニン多量体を多く含むため、回収再利用を繰り返すうちに、加水分解に用いる水溶液に含まれるメチオニンの多量体の含有量が多くなる。従って、母液を回収再利用する工程を含むメチオニンの製造方法においては、蓄積したメチオニン多量体等の副生成物や着色成分を排出するための排出工程を設けることにより、加水分解に用いる水溶液に含まれる化合物(a)及び(b)の含有量を低減するのが好ましい。
【0051】
(イ)メチオニンの晶析を行なう際に、水溶液に凝集剤を添加する。
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを加水分解して得られる反応液に凝集剤を添加して得られる水溶液を使用するのが好ましい。このような水溶液を使用することにより、粒状又は厚板状のメチオニンの結晶を得ることができる。用いる凝集剤としては、例えば、グルテン、ポリビニルアルコール、セルロース類等が挙げられる。凝集剤の添加量は、水溶液中のメチオニン(金属塩を中和して精製されるものを含む)に対して、0.05〜0.6重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0052】
また、本発明においては、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、化合物(a)の濃度(重量%)及び化合物(b)の濃度(重量%)の測定を一定時間毎に行なうのが好ましい。メチオニンを工業的生産規模で連続的に生産する場合、一定時間毎にメチオニンを晶析する水溶液中のメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)の濃度を測定し、前記式(1)で表される式から相関式を求め、所望の含水率及び体積平均粒子径(以下、これらのまとめて「物性」ということがある。)を有するメチオニンの結晶が得られることを予め確認することができる。
【0053】
得られる相関式から、所望の物性を有するメチオニンの結晶が得られないことが予想される場合には、前記水溶液に含まれるメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)の濃度調整を行なう。これにより、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定的に得ることができる。
【0054】
また、メチオニンを工業的生産規模で連続生産する場合には、所望の含水率及び体積平均粒径を有するメチオニン結晶が得られるように、予め操作マニュアルを作成するのが一般的である。所望の物性を有するメチオニン結晶が得られないことが予想される場合には、メチオニンの晶析工程前の工程が操作マニュアル通りに操業されていないことも予想されるので、各工程が操作マニュアル通りに操業されていることを確認することにより、トラブルの発生を未然に防止することができる。
【0055】
析出したメチオニンの結晶を含む水溶液を固液分離する方法は特に制限されない。固液分離方法としては、例えば、ヌッチェを使用して濾別する方法、遠心分離装置を使用する方法等が挙げられる。分離したメチオニンの結晶は乾燥工程等を経て、製品として出荷される。このようにして得られるメチオニンは、D−メチオニンとL−メチオニンのラセミ化合物であり、例えば、反芻動物の飼料添加物として有用である。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、メチオニンの晶析は以下のようにして行なった。
(1)水溶液
グルテン(メチオニンに対し0.3重量%添加)、メチオニンのカリウム塩及び不純物(化合物(a)及び(b))を含む水溶液(1)を用いた。なお、水溶液(1)中のメチオニンの濃度A1、化合物(a)のメチオニンに対する重量百分率B1、及び化合物(b)のメチオニンに対する重量百分率C1は、水溶液の一定量をサンプリングし、pH調整した処理液を、液体クロマトグラフィーにより分析して求めた。測定・算出結果を第1表に示す。
【0057】
(2)撹拌槽
調圧弁、バッフル、撹拌軸の下段、中段に6枚傾斜ディスクタービン翼、上段に2枚パドル翼及び循環ラインを備え、容量が1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を使用した。
【0058】
(3)メチオニンの晶析
前記水溶液(1)150リットルを撹拌槽に仕込み、撹拌槽内の雰囲気を炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)とし、水溶液(1)の温度をジャケット冷却により15℃に設定した。下段の翼で撹拌しながら、温度15℃で、炭酸ガスを30kg/hで3分間供給してメチオニンの種晶を析出させて、スラリーを得た。このスラリーに、温度15℃、撹拌下、水溶液(1)を1152kg/h及び炭酸ガスを30kg/hで90分間供給した。さらに撹拌、冷却しながら、炭酸ガスを45kg/hで40分間供給した(スラリーのpHは7.6になった)。次いで、得られたスラリーを10℃に冷却して、遠心分離機で固液分離した。固液分離して得られたメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率と体積平均粒径を測定した。含水率は、卓上式乾燥減量測定器により行なった。体積平均粒径としてレーザー式粒度分布測定装置により測定した50%積算値を用いた。
測定結果を第1表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
得られたメチオニン結晶のウェットベースでの含水率W1(重量%)の計算値は、水溶液(1)中のメチオニン濃度A1(重量%)、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B1(%)、化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C1(%)及び体積平均粒径D1(μm)と、下記式(2)で示される相関関係があることが分かった。
【0061】
【数4】
【0062】
また、得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値の相関関係を図1に示す。図1から、計算値と実測値との間には良好な相関関係が見られた。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、メチオニンの晶析は以下のようにして行なった。
(1)水溶液
グルテン(DL−メチオニンに対し0.3重量%添加)、メチオニンのカリウム塩及び不純物(化合物(a)及び(b))を含む水溶液(2)を用いた。なお、水溶液(1)中のメチオニンの濃度A2、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B2、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C2は、水溶液の一定量をサンプリングし、塩酸で中和して得られた処理液を、液体クロマトグラフィーにより分析して求めた。測定結果を第2表に示す。
【0064】
(2)撹拌槽
バッフル、撹拌軸の下段、中段に6枚傾斜ディスクタービン翼、上段に2枚パドル翼及び循環ラインを備えた1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を用いた。
【0065】
(3)メチオニンの晶析
炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)とし、水100リットルを加えて循環、撹拌した後、水溶液(2)を90リットル仕込み、下段の翼で撹拌しジャケット冷却して、水溶液(2)を15℃に設定した。水溶液(2)に、炭酸ガスを下段の撹拌翼付近に30kg/hで3分間供給して、水溶液(2)のpH7.6として、メチオニンの種晶を析出させて、スラリーを得た。
【0066】
次いで、得られたスラリーに、温度15℃で撹拌しながら、水溶液(2)に1152kg/h、炭酸ガスを30kg/hで90分間供給した。さらに撹拌、冷却しながら、このスラリーに炭酸ガスを45kg/hで40分間供給した(得られたスラリーのpHは7.6となった)。
【0067】
全容を10℃に冷却して、遠心分離機を使用して固液分離した。得られたメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率(W2)と体積平均粒径(D2)を測定した。測定結果を第2表に示す。なお、中和晶析に用いたメチオニンの濃度は、結晶化しないとして、撹拌槽に全量供給した時点のメチオニンとした。
【0068】
【表2】
【0069】
また、得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値の相関関係を図2に示す。図2から、計算値と実測値との間には良好な相関関係が見られた。
【0070】
(実施例3)
実施例3では、メチオニンの晶析は以下のようにして行なった。
(1)水溶液
ポリビニルアルコール(メチオニンに対し0.3重量%添加)、メチオニンのカリウム塩、及び不純物(化合物(a)及び(b))を含む水溶液(3)を用いた。なお、水溶液(3)中のメチオニンの濃度A3、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B3、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C3は、水溶液の一定量をサンプリングし、塩酸で中和して得られた処理液を、液体クロマトグラフィーにより分析して求めた。測定結果を第3表に示す。なお、中和晶析に用いたメチオニンの濃度は、結晶化しないとして、撹拌槽に全量供給した時点のメチオニンとした。
【0071】
(2)撹拌槽
調圧弁、バッフル、撹拌軸の下段、中段に6枚傾斜ディスクタービン翼、上段に2枚パドル翼及び循環ラインを備えた容量が1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を使用した。
【0072】
(3)メチオニンの晶析
上記撹拌槽に、炭酸ガスを炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)とし、水100リットルを加えて循環、撹拌した後、水溶液(3)450リットルを仕込んだ。下段の翼で撹拌しながら、水溶液の温度を15℃に設定し、炭酸ガスを下段の撹拌翼付近に30kg/hで3分間供給した。水溶液のpHは7.6となり、メチオニンの種晶が析出し、スラリーが得られた。次いで、スラリーの温度を15℃に維持し撹拌しながら、水溶液(3)を1152kg/h、炭酸ガスを30kg/hで90分間供給した。さらに撹拌、冷却しながら、炭酸ガスを45kg/hで40分間供給した(スラリーのpHは7.6となった)。
【0073】
全容を10℃に冷却して、遠心分離機で固液分離して得られたメチオニンの結晶の含水率(W3)と体積平均粒径(D3)とをそれぞれ測定した。測定結果を第3表に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
得られたメチオニン結晶のウェットベースでの含水率W3(重量%)の計算値は、水溶液(1)中のメチオニン濃度A3(重量%)、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B3(%)、化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C3(%)及び体積平均粒径D3(μm)と、下記式(3)で示される相関関係があることが分かった。
【0076】
【数5】
【0077】
また、得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を図3に示す。図3から、計算値と実測値との間には良好な相関関係が見られた。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の含水率と体積平均粒径とを有するメチオニンの結晶を安定して得ることができるメチオニンの晶析方法が提供される。特に本発明の製造方法によれば、工業的生産規模でメチオニンを連続生産する場合に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を示す図である。図中、縦軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の計算値であり、横軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の実測値である。
【図2】図2は、実施例2で得られたメチオニンの結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を示す図である。図中、縦軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の計算値であり、横軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の実測値である。
【図3】図3は、実施例3で得られたメチオニンの結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を示す図である。図中、縦軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の計算値であり、横軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の実測値である。
【産業上の利用分野】
本発明は、メチオニンの金属塩及びメチオニンの二量体等を含む水溶液から、所望の含水率及び体積平均粒径を有するメチオニンの結晶を、安定して効率よく取得することができるメチオニンの晶析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、メチオニンの製造方法として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するメチオニンの製造方法が知られている。
【0003】
この製造方法において、晶析して得られるメチオニン結晶の物性は、晶析したメチオニンを固液分離する工程の操業効率、及びメチオニン結晶の品質を管理する上で重要である。例えば、メチオニン結晶の含水率は乾燥プロセスへのエネルギー負荷を、粒子径(体積平均粒径)はハンドリング性及び固液分離性を左右する因子である。また、嵩密度が低く、含水率が高いメチオニンの結晶は、固液分離し、洗浄した後においても、結晶内部に母液を含んでいる。そのため、メチオニンの結晶中に含まれる母液由来の無機塩及び不純物であるメチオニン多量体等が製品であるメチオニンに混入し、品質上問題となる。
【0004】
従来、晶析するメチオニンの結晶の物性を制御する方法として、メチオニンのカリウム塩を含む水溶液にメチオニンの種晶を添加して、メチオニンを晶析する方法が知られている(特許文献1)。また、メチオニンの結晶の嵩密度を制御する方法として、半回分晶析操作により時間の経過とともにメチオニンの結晶の嵩密度を増加させる方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−072656号公報
【特許文献2】
特開平11−158140号公報
【0006】
【課題を解決するための手段】
しかしながら、これらの方法においても、晶析するメチオニンの結晶の物性を完全に制御することは困難であり、所望の物性を有するメチオニンの結晶が安定して得られない場合があった。
【0007】
本発明は、かかる実情に基づいてなされたものであり、所望の含水率と体積平均粒子径とを有するメチオニンの結晶を、安定して得ることができるメチオニンの晶析方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液から、所望の物性を有するメチオニン結晶を取得する方法について鋭意検討した。その結果、晶析して得られるメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率及び体積平均粒径と、前記反応液に含まれるメチオニン及び反応副生成物(メチオニンの多量体)の濃度との間に一定の関係があるという知見を得た。そして、この知見に基づいて、晶析して得られるメチオニン結晶の含水率と体積平均粒子径を制御することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、メチオニン、式(a)
【0010】
【化3】
【0011】
で表される化合物、式(b)
【0012】
【化4】
【0013】
で表される化合物及び/又はこれらの金属塩を含む水溶液に、炭酸ガスを供給するメチオニンの晶析方法であって、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記式(a)で表される化合物の濃度(重量%)、及び前記式(b)で表される化合物の濃度(重量%)をそれぞれ測定し、前記式(a)で表される化合物の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)及び前記式(b)で表される化合物の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)を求める工程と、得られた前記A、B及びCの値を、式(1)
【0014】
【数2】
【0015】
(式中、Wは晶析して得られるメチオニン結晶のウェットベースでの含水率(重量%)を表し、Dは晶析して得られるメチオニン結晶の体積平均粒径(μm)を表し、α、β、γ、δ及びKはそれぞれ定数を表す。)に代入して相関式を得る工程と、得られた相関式を満たすメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整する工程とを有するメチオニンの晶析方法が提供される。
【0016】
本発明の晶析方法は、前記B(%)とC(%)の合計が10(%)以下となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整するものであるのが好ましい。
【0017】
本発明の晶析方法は、前記水溶液に凝集剤を添加することにより、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整するものであるのがより好ましい。
【0018】
本発明の晶析方法は、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記式(a)で表される化合物の濃度(重量%)及び前記式(b)で表される化合物の濃度(重量%)の測定を一定時間毎に行なうことにより、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整するものであるのがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明の晶析方法においては、前記水溶液が、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液に、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液であるのが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のメチオニンの晶析方法について、詳細に説明する。
(1)水溶液
本発明に用いる水溶液は、少なくとも、メチオニン、前記式(a)で表される化合物(以下、「化合物(a)」という。)、前記式(b)で表される化合物(以下、「化合物(b)」という。)及び/又はこれらの金属塩を含むものであれば特に限定されない。
【0021】
前記金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
【0022】
前記水溶液に含まれる化合物(a)及び化合物(b)は、メチオニン分子が2分子以上関与して生成したと考えられる化合物である。本発明に用いる水溶液には、化合物(a)と化合物(b)がそれぞれ単独で、あるいは両化合物が同時に含まれていてよい。また、メチオニンの分解物、メチオニンの3量体以上のメチオニンの多量体等の他の化合物がさらに含まれていてもよい。
【0023】
本発明においては、前記水溶液として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを金属水酸化物,金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用い、公知の方法で加水分解して得られる水溶液であるのが好ましい。
【0024】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインは、公知の方法で製造することができる。例えば、3−メチルプロピオンアルデヒド、青酸、アンモニア及び炭酸ガスを反応させて製造することができる。この反応は、通常、約0〜0.3MPaの加圧条件下、反応温度約70〜110℃で行なうことができる。また、アンモニア及び炭酸ガスの代わりに炭酸水素アンモニウムを用いることもできる。
【0025】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解反応に用いる金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられる。また、金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
加水分解は、通常、約0.4〜1.0MPaの加圧条件下、反応温度約140〜200℃、反応時間約10〜120分で行なうことができる。加水分解反応は、連続式、セミバッチ式、バッチ式のいずれでも行なうことができる。また、加水分解時に発生するアンモニア及び炭酸ガスを回収して、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの製造に再利用することができる。
【0027】
(2)メチオニンの晶析方法
本発明の晶析方法は、前記水溶液に炭酸ガスを加圧下に供給する公知の方法により、メチオニンを中和晶析するものである。
メチオニンの晶析方法としては、例えば、前記水溶液の一部を攪拌槽に仕込み、内容物を攪拌しながら、所定温度で炭酸ガスの気泡を分散、吸収、中和してメチオニンの種結晶を析出させ(スラリー状となる)、ここへ、前記水溶液と炭酸ガスとを同時に供給して、メチオニンを晶析する方法(半回分式)、撹拌槽へ連続的に水溶液と炭酸ガスとを供給して、メチオニンを中和晶析させながら、連続的にメチオニンの結晶を含むスラリーを抜き出す方法(連続式)、特開平11−158140号に記載の回分式とセミ連続式を合わせもつ方法等が挙げられる。
【0028】
本発明の晶析方法は、少なくともメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)及び/又はこれらの金属塩を含む水溶液に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するに際し、
▲1▼ 前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記化合物(a)の濃度(重量%)及び化合物(b)の濃度(重量%)をそれぞれ測定し、前記化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)を求める工程(測定工程)、
▲2▼ 得られた前記A、B及びCの値を、前記式(1)に代入して相関式を得る工程(算出工程)、
▲3▼ 得られた相関式を満たすメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液のメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)の濃度を調整する工程(調整工程)、を有することを特徴とする。
【0029】
▲1▼測定工程
先ず、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、化合物(a)の濃度(重量%)及び化合物(b)の濃度(重量%)を測定し、化合物(a)の共存メオニンに対する重量百分率B(%)及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率(C%)を求める。
メチオニン金属塩及びメチオニン多量体の濃度を測定する方法としては特に限定されず、公知の測定方法を採用することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーによる方法、アミノ酸分析計を用いる方法等が挙げられる。
【0030】
ここで、メチオニンの濃度Aは、メチオニンの金属塩を中和して得られるメチオニンとメチオニンとを合計したメチオニンの水溶液中の濃度(重量%)である。また、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)は、化合物(a)の金属塩を中和して得られる化合物(a)と化合物(a)とを合計した化合物(a)の水溶液中の濃度から求められる値であり、化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)は、化合物(b)の金属塩を中和して得られる化合物(b)と化合物(b)とを合計した化合物(b)の水溶液中の濃度から求められる値である。
【0031】
▲2▼算出工程
次に、得られた前記A、B及びCの値を、下記式(1)に代入して、相関式を算出する。
【0032】
【数3】
【0033】
式(1)中、Wは晶析して得られるメチオニン結晶のウェットベースでの含水率(重量%)を表し、Dは晶析して得られるメチオニン結晶の体積平均粒径(μm)を表し、α、β、γ、δ及びKはそれぞれ定数を表す。
【0034】
上記式(1)は半経験的に得られる式であり、メチオニン結晶のウェットベースでの含水率W及びメチオニンの結晶の体積平均粒径Dと、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率Cとの間には、上記式(1)で表される相関関係があることを前提としている。
【0035】
相関式を得るには、具体的には次のように行なう。
ある液組成を有する水溶液に炭酸ガスを供給し、メチオニンを中和晶析して、メチオニンの結晶を得る。この操作を水溶液の組成を変化させながら数回から数十回繰り返し、各操作毎に、水溶液に含まれるメチオニンの濃度A、化合物(a)の濃度、化合物(b)の濃度、得られたメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率(重量%)及び体積平均粒径(μm)をそれぞれ測定し、化合物(a)及び(b)のメチオニンに対する重量百分率B,C(%)を求める。
【0036】
ここで、メチオニンの結晶のウェットベースでの含水率(重量%)は、例えば、卓上式乾燥減量測定器で測定することができる。
また、体積平均粒径(μm)は、例えば、レーザー式粒度測定装置で測定することができる。
【0037】
次に、得られたA、B、C、D及びWを前記式(1)に代入して、(重)回帰分析法により、α、β、γ、δ及びKの値を算出する。(重)回帰分析法による計算は、例えば、計算プログラムを搭載したパーソナルコンピュータを使用して行なうことができる。
【0038】
計算して得られるα、β、γ、δ及びKは定数であり、メチオニンの晶析条件が同じであれば一定値となる。晶析条件は水溶液からメチオニンを中和晶析するときの条件であり、例えば、添加する凝集剤の種類が異なれば、異なる晶析方法となり、α、β、γ、δ及びKの値は異なるものとなる。従って、メチオニンを中和晶析する操作を繰り返し行って、A、B、C、D及びWを測定する場合には、水溶液へ添加する凝集剤の種類等の晶析条件は同一とする必要がある。
【0039】
次いで、得られたα、β、γ、δ及びKを前記式(1)に代入することにより、メチオニンの含水率Wと体積平均粒径Dとの関係式(相関式)を得ることができる。
【0040】
▲3▼調整工程
調整工程は、このようにして得られる相関式を満足するメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物濃度の調整を行なうものである。
【0041】
メチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wは、結晶の空隙に含まれる水分量を示す因子である。母液中には、不純物〔化合物(a)及び/又は化合物(b)等〕が溶解しているため、含水率が高い結晶には不純物が取り込まれやすい。また、メチオニン結晶の含水率は、一般的に体積平均粒径が大きいほど小さくなる傾向がある。従って、体積平均粒径を大きくした方が含水率の低いメチオニン結晶となる。
【0042】
一方、メチオニンの体積平均粒径があまりに大きくなると、メチオニン粉体輸送で詰まりが生じやすくなる。従って、メチオニンを連続的に大量生産する場合等においては、所定範囲内の含水率と体積平均粒径をもつメチオニンの結晶を安定して得ることが重要である。
【0043】
従って、メチオニン結晶の含水率Wと体積平均粒径Dをどのような範囲に設定するかは、晶析したメチオニンの固液分離工程、乾燥工程及び輸送工程などの操業効率、メチオニンの結晶の純度等の観点から決定される。
【0044】
メチオニン結晶の含水率及び体積平均粒径は、晶析条件によっても異なるが、例えば、凝集剤としてグルテンを添加した場合、メチオニンの結晶の含水率は、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは14〜28重量%、体積平均粒径は、好ましくは300〜700μm、より好ましくは340〜660μmの範囲である。また、ポリビニルアルコールを添加した場合には、メチオニンの結晶の含水率は、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%、体積平均粒径は、好ましくは400〜600μm、より好ましくは430〜590μmの範囲である。所定の晶析条件の下で、含水率及び体積平均粒径がこのような範囲にあるメチオニンの結晶は、嵩密度が高く、高純度で、取り扱いが容易なものとなる。
【0045】
得られるメチオニン結晶の含水率及び体積平均粒径を上記範囲内になるようにするためには、具体的には次の(ア)や(イ)に示すようにして行なうことができる。以下、メチオニンを晶析する水溶液として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液に、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液の場合を例にとって説明する。
【0046】
(ア)前記水溶液における化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B(%)、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C(%)の合計(B+C)が10(%)以下、好ましくは8(%)以下、より好ましくは6.5(%)以下とする。
このような水溶液を用いることにより、結晶形及び嵩密度が改善されたメチオニンの結晶を安定して得ることができる。すなわち、水溶液中における化合物(a)及び化合物(b)の含有量をできるだけ少なくするのが好ましい。
【0047】
化合物(a)及び化合物(b)の含有量を少なくする方法としては、例えば、(i)5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解の反応温度を高くする、(ii)加水分解の反応時間を長くする、(iii)5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解に用いる金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩の5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するモル比を高くする、(iv)5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインと金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩の濃度を高くする、及び(v)(i)〜(iv)の方法を組み合わせる、等の方法が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、上記(v)の方法が特に好ましい。より具体的には、前記加水分解の反応条件を、反応温度を150〜200℃、好ましくは160〜200℃、反応時間を0.2〜8時間、好ましくは1〜5時間、用いる金属水酸化物等のモル比(当量比)を2.0〜6.0、好ましくは2.5〜3.0、用いる金属水酸化物等の濃度を、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対して5〜20重量%、好ましくは10〜17重量%とする。
【0049】
また、化合物(a)及び化合物(b)は、水溶液中で加熱することによりメチオニンを再生するため、加水分解後の反応液を更に加熱処理して得られる水溶液を用いるのが、メチオニンの収率向上、化合物(a)及び(b)の量を低減させる観点から好ましい。
【0050】
また、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを加水分解して得られる水溶液から晶析したメチオニンを固液分離して得られる母液には、メチオニンの一部と炭酸水素塩等が含まれているので、この母液を前記加水分解工程に再使用する場合がある。この母液には、化合物(a)及び化合物(b)等のメチオニン多量体を多く含むため、回収再利用を繰り返すうちに、加水分解に用いる水溶液に含まれるメチオニンの多量体の含有量が多くなる。従って、母液を回収再利用する工程を含むメチオニンの製造方法においては、蓄積したメチオニン多量体等の副生成物や着色成分を排出するための排出工程を設けることにより、加水分解に用いる水溶液に含まれる化合物(a)及び(b)の含有量を低減するのが好ましい。
【0051】
(イ)メチオニンの晶析を行なう際に、水溶液に凝集剤を添加する。
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを加水分解して得られる反応液に凝集剤を添加して得られる水溶液を使用するのが好ましい。このような水溶液を使用することにより、粒状又は厚板状のメチオニンの結晶を得ることができる。用いる凝集剤としては、例えば、グルテン、ポリビニルアルコール、セルロース類等が挙げられる。凝集剤の添加量は、水溶液中のメチオニン(金属塩を中和して精製されるものを含む)に対して、0.05〜0.6重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0052】
また、本発明においては、前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、化合物(a)の濃度(重量%)及び化合物(b)の濃度(重量%)の測定を一定時間毎に行なうのが好ましい。メチオニンを工業的生産規模で連続的に生産する場合、一定時間毎にメチオニンを晶析する水溶液中のメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)の濃度を測定し、前記式(1)で表される式から相関式を求め、所望の含水率及び体積平均粒子径(以下、これらのまとめて「物性」ということがある。)を有するメチオニンの結晶が得られることを予め確認することができる。
【0053】
得られる相関式から、所望の物性を有するメチオニンの結晶が得られないことが予想される場合には、前記水溶液に含まれるメチオニン、化合物(a)及び化合物(b)の濃度調整を行なう。これにより、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定的に得ることができる。
【0054】
また、メチオニンを工業的生産規模で連続生産する場合には、所望の含水率及び体積平均粒径を有するメチオニン結晶が得られるように、予め操作マニュアルを作成するのが一般的である。所望の物性を有するメチオニン結晶が得られないことが予想される場合には、メチオニンの晶析工程前の工程が操作マニュアル通りに操業されていないことも予想されるので、各工程が操作マニュアル通りに操業されていることを確認することにより、トラブルの発生を未然に防止することができる。
【0055】
析出したメチオニンの結晶を含む水溶液を固液分離する方法は特に制限されない。固液分離方法としては、例えば、ヌッチェを使用して濾別する方法、遠心分離装置を使用する方法等が挙げられる。分離したメチオニンの結晶は乾燥工程等を経て、製品として出荷される。このようにして得られるメチオニンは、D−メチオニンとL−メチオニンのラセミ化合物であり、例えば、反芻動物の飼料添加物として有用である。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、メチオニンの晶析は以下のようにして行なった。
(1)水溶液
グルテン(メチオニンに対し0.3重量%添加)、メチオニンのカリウム塩及び不純物(化合物(a)及び(b))を含む水溶液(1)を用いた。なお、水溶液(1)中のメチオニンの濃度A1、化合物(a)のメチオニンに対する重量百分率B1、及び化合物(b)のメチオニンに対する重量百分率C1は、水溶液の一定量をサンプリングし、pH調整した処理液を、液体クロマトグラフィーにより分析して求めた。測定・算出結果を第1表に示す。
【0057】
(2)撹拌槽
調圧弁、バッフル、撹拌軸の下段、中段に6枚傾斜ディスクタービン翼、上段に2枚パドル翼及び循環ラインを備え、容量が1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を使用した。
【0058】
(3)メチオニンの晶析
前記水溶液(1)150リットルを撹拌槽に仕込み、撹拌槽内の雰囲気を炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)とし、水溶液(1)の温度をジャケット冷却により15℃に設定した。下段の翼で撹拌しながら、温度15℃で、炭酸ガスを30kg/hで3分間供給してメチオニンの種晶を析出させて、スラリーを得た。このスラリーに、温度15℃、撹拌下、水溶液(1)を1152kg/h及び炭酸ガスを30kg/hで90分間供給した。さらに撹拌、冷却しながら、炭酸ガスを45kg/hで40分間供給した(スラリーのpHは7.6になった)。次いで、得られたスラリーを10℃に冷却して、遠心分離機で固液分離した。固液分離して得られたメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率と体積平均粒径を測定した。含水率は、卓上式乾燥減量測定器により行なった。体積平均粒径としてレーザー式粒度分布測定装置により測定した50%積算値を用いた。
測定結果を第1表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
得られたメチオニン結晶のウェットベースでの含水率W1(重量%)の計算値は、水溶液(1)中のメチオニン濃度A1(重量%)、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B1(%)、化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C1(%)及び体積平均粒径D1(μm)と、下記式(2)で示される相関関係があることが分かった。
【0061】
【数4】
【0062】
また、得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値の相関関係を図1に示す。図1から、計算値と実測値との間には良好な相関関係が見られた。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、メチオニンの晶析は以下のようにして行なった。
(1)水溶液
グルテン(DL−メチオニンに対し0.3重量%添加)、メチオニンのカリウム塩及び不純物(化合物(a)及び(b))を含む水溶液(2)を用いた。なお、水溶液(1)中のメチオニンの濃度A2、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B2、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C2は、水溶液の一定量をサンプリングし、塩酸で中和して得られた処理液を、液体クロマトグラフィーにより分析して求めた。測定結果を第2表に示す。
【0064】
(2)撹拌槽
バッフル、撹拌軸の下段、中段に6枚傾斜ディスクタービン翼、上段に2枚パドル翼及び循環ラインを備えた1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を用いた。
【0065】
(3)メチオニンの晶析
炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)とし、水100リットルを加えて循環、撹拌した後、水溶液(2)を90リットル仕込み、下段の翼で撹拌しジャケット冷却して、水溶液(2)を15℃に設定した。水溶液(2)に、炭酸ガスを下段の撹拌翼付近に30kg/hで3分間供給して、水溶液(2)のpH7.6として、メチオニンの種晶を析出させて、スラリーを得た。
【0066】
次いで、得られたスラリーに、温度15℃で撹拌しながら、水溶液(2)に1152kg/h、炭酸ガスを30kg/hで90分間供給した。さらに撹拌、冷却しながら、このスラリーに炭酸ガスを45kg/hで40分間供給した(得られたスラリーのpHは7.6となった)。
【0067】
全容を10℃に冷却して、遠心分離機を使用して固液分離した。得られたメチオニンの結晶のウェットベースでの含水率(W2)と体積平均粒径(D2)を測定した。測定結果を第2表に示す。なお、中和晶析に用いたメチオニンの濃度は、結晶化しないとして、撹拌槽に全量供給した時点のメチオニンとした。
【0068】
【表2】
【0069】
また、得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値の相関関係を図2に示す。図2から、計算値と実測値との間には良好な相関関係が見られた。
【0070】
(実施例3)
実施例3では、メチオニンの晶析は以下のようにして行なった。
(1)水溶液
ポリビニルアルコール(メチオニンに対し0.3重量%添加)、メチオニンのカリウム塩、及び不純物(化合物(a)及び(b))を含む水溶液(3)を用いた。なお、水溶液(3)中のメチオニンの濃度A3、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B3、及び化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C3は、水溶液の一定量をサンプリングし、塩酸で中和して得られた処理液を、液体クロマトグラフィーにより分析して求めた。測定結果を第3表に示す。なお、中和晶析に用いたメチオニンの濃度は、結晶化しないとして、撹拌槽に全量供給した時点のメチオニンとした。
【0071】
(2)撹拌槽
調圧弁、バッフル、撹拌軸の下段、中段に6枚傾斜ディスクタービン翼、上段に2枚パドル翼及び循環ラインを備えた容量が1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を使用した。
【0072】
(3)メチオニンの晶析
上記撹拌槽に、炭酸ガスを炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)とし、水100リットルを加えて循環、撹拌した後、水溶液(3)450リットルを仕込んだ。下段の翼で撹拌しながら、水溶液の温度を15℃に設定し、炭酸ガスを下段の撹拌翼付近に30kg/hで3分間供給した。水溶液のpHは7.6となり、メチオニンの種晶が析出し、スラリーが得られた。次いで、スラリーの温度を15℃に維持し撹拌しながら、水溶液(3)を1152kg/h、炭酸ガスを30kg/hで90分間供給した。さらに撹拌、冷却しながら、炭酸ガスを45kg/hで40分間供給した(スラリーのpHは7.6となった)。
【0073】
全容を10℃に冷却して、遠心分離機で固液分離して得られたメチオニンの結晶の含水率(W3)と体積平均粒径(D3)とをそれぞれ測定した。測定結果を第3表に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
得られたメチオニン結晶のウェットベースでの含水率W3(重量%)の計算値は、水溶液(1)中のメチオニン濃度A3(重量%)、化合物(a)の共存メチオニンに対する重量百分率B3(%)、化合物(b)の共存メチオニンに対する重量百分率C3(%)及び体積平均粒径D3(μm)と、下記式(3)で示される相関関係があることが分かった。
【0076】
【数5】
【0077】
また、得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を図3に示す。図3から、計算値と実測値との間には良好な相関関係が見られた。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の含水率と体積平均粒径とを有するメチオニンの結晶を安定して得ることができるメチオニンの晶析方法が提供される。特に本発明の製造方法によれば、工業的生産規模でメチオニンを連続生産する場合に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られたメチオニン結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を示す図である。図中、縦軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の計算値であり、横軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の実測値である。
【図2】図2は、実施例2で得られたメチオニンの結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を示す図である。図中、縦軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の計算値であり、横軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の実測値である。
【図3】図3は、実施例3で得られたメチオニンの結晶の含水率の実測値と計算値との相関関係を示す図である。図中、縦軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の計算値であり、横軸はメチオニンの結晶の含水率(重量%)の実測値である。
Claims (5)
- メチオニン、式(a)
得られた前記A、B及びCの値を、式(1)
得られた相関式を満たすメチオニン結晶のウェットベースでの含水率Wと、メチオニンの結晶の体積平均粒径Dとが、それぞれ所定範囲内となるように、前記水溶液中におけるメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整する工程とを有するメチオニンの晶析方法。 - 前記B(%)とC(%)との合計が10(%)以下となるように、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整することを特徴とする請求項1に記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記水溶液に凝集剤を添加することにより、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記水溶液に含まれるメチオニンの濃度A(重量%)、前記式(a)で表される化合物の濃度(重量%)及び前記式(b)で表される化合物の濃度(重量%)の測定を一定時間毎に行なうことにより、前記水溶液のメチオニン、前記式(a)で表される化合物及び前記式(b)で表される化合物の濃度を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記水溶液が、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のメチオニンの晶析方法。
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