JP2004173555A - Rna−プロタミン複合体、その製造方法およびそれを含む健康食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酵母由来のRNAと白子由来のプロタミンとから、これらの両者の活性が消失することなく複合形成されてなるRNA−プロタミン複合体、ならびに酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理して得られたスラリーに塩類を添加しさらに酸性にした後プロタミンを加えることにより、RNA−プロタミン複合体を得る、該複合体の製造方法である。得られたRNA−プロタミン複合体は水難溶性のため、ろ過等により容易に分離でき、その後特別な加工をせずに健康食品の材料としてそのまま、利用することができる。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、RNAとプロタミンとからなるRNA−プロタミン複合体、該RNA−プロタミン複合体の製造方法、ならびに該RNA−プロタミン複合体を含む健康食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酵母より抽出された核酸、特にRNAや、魚類の精巣等から得られるプロタミンは、ガン予防や若返り効果が期待できる材料として、近年注目を浴びている。そしてこれらは、健康食品の他、化粧品や医薬品等の材料として、様々な分野で使用されている。その場合、これらはそれぞれ単独で用いられる場合もあるが、より効能を高める観点から、これら両者の併用も試みられている。RNAと、プロタミンとを含む健康食品等は、一般に原料となる精製酵母RNAと精製プロタミンとを別々に製造し、製造されたそれらを所定の配合比で混合することにより製造されている。即ち、上記の健康食品等の製造にあっては、RNAとプロタミンの各々独立した製造及び精製過程を経る必要があり、製造工程数が多く、生産費を上げる要因の一つとなっていた。
また、従来酵母からRNAを単離し、それを最終用途となる健康食品等に材料として提供するため、酵母から抽出されるRNAはできるだけ精製されていることが必要であった。
【0003】
通常、酵母には、RNAが2〜4重量%含まれており、これを利用するためのRNAの抽出精製作業は一般に、食塩水溶液を用いて行い(例えば、特許文献1)、その後、抽出溶液の食塩分を除く工程を経て行われている。しかし、この食塩分の除去には複雑な工程が必要であり、多大なコストがかかるため、従来の酵母RNA製品には、完全に塩分除去されない10重量%以上のかなりの塩分を含む製品として製造されているものも知られている。このような製品を健康食品等の原料として使用する場合には、脱塩等の前処理を要することもある。
【0004】
また、他にも酵母からのRNA抽出法として、酸やアルカリ、ドデシル硫酸ソーダ(SDS)等の界面活性剤や、フェノール等の抽出剤を使用する方法、その他リゾチームを使用する生化学的方法、超音波、ガラスビーズ、ボールミル、高圧噴射衝撃、等を使用する方法が知られている。例えば特許文献2には、酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理することにより得られた酵母スラリーに塩類を添加し、さらにアルカリ性(pH9〜9.5)で90℃〜110℃で15ないし60分加熱抽出し、それをpH2以下の硫酸酸性下で沈殿させ分離することによる高純度のリボ核酸を製造する方法が開示されている。
上述のような酵母からのRNA抽出方法では、脱塩や抽出後、さらなるRNA精製が必要となる。また、使用する抽出剤には食品製造に適しない抽出剤も多い。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−135274号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】
特開平10−117794号公報(第2〜4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情の下なされたもので、RNAとプロタミンの双方の性能特性を満足に発揮するものであって、かつ、これらの混合物を用いた場合と比較してより経済的に、しかも高品質に製造されうるところの新規RNA−プロタミン複合体を提供することを課題とするものである。また、本発明はかかる新規RNA−プロタミン複合体を利用した従来に無い健康食品の提供をも課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは酵母RNAと魚類の白子由来のプロタミンに関し、様々な研究を重ねていたところ、酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理して得られたスラリーに塩類を添加しプロタミンと共存させた酸性懸濁液中で、酵母RNAとプロタミンとが水難溶性の新規な複合体を形成することを見出した。そこで本発明者らはこの知見に基づいて鋭意検討し、酵母由来のRNAと魚類の白子由来のプロタミンの作用を併せ持つことが期待できる、RNA−プロタミン複合体であって、健康食品等のための材料として利用可能な本発明を完成させた。
従って、本発明は特に酵母由来のRNAとプロタミンとから、これら両者の活性が消失することなく複合形成されてなるRNA−プロタミン複合体、ならびに酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理して得られたスラリーに塩類を添加し、それに酸を加えて酸性にした懸濁液に、プロタミンを加えることにより、RNA−プロタミン複合体を得る、RNA−プロタミン複合体の製造方法に関する。また、本発明は酵母RNA抽出物の酸性溶液にプロタミンを加えることによる、RNA−プロタミン複合体の製造方法にも関する。
前述のように健康食品の材料として、酵母由来のRNAと白子由来のプロタミンとを配合したものは既に知られているが、本発明のようなRNA−プロタミン複合体は知られていない。
【0008】
本発明における酵母は食品として利用できる種類のものであれば、特に制限されることはないが、代表的にはビール酵母、パン酵母、乳酵母として知られるSaccharomyces 属やKluyveromyces属の他、場合によってPichia属、Hansenula属およびCandida属等の酵母等も挙げられる。特にビール酵母(Saccharomyces cervisiae)が好ましい。
本発明における複合体のRNA源としては、酵母菌体を直接破砕処理して得られたスラリーに塩類を添加することにより得た懸濁液やそれから菌体を除去したRNA抽出物を使用することもできるが、市販の酵母RNAエキスを使用でき、乾燥粉末では水に溶解したものを同様に利用することができる。さらに、都合の良いことには例えば、塩化ナトリウムを約10〜15重量%で使用することによって得られた高濃度の塩分を含む酵母由来のRNA抽出物を原料として使用しても、得られた本発明の複合体中の元素分析によるClの検出はほとんどみられず、塩分濃度は非常に低いことが見いだされた。即ち、本発明は一般的に使用されている塩化ナトリウムを用いたRNA抽出法により得られた、塩分濃度は高いが、核酸RNAの含有率の高い抽出物を材料に使用しても塩化ナトリウム含有量が低濃度のRNA−プロタミン複合体を得ることができる。
なお、酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理して得られたスラリー等に添加する塩類は、上述のような塩化ナトリウムの他、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等がある。
【0009】
また、本発明で使用するプロタミンは、魚類、例えばサケ、マス、ニシン、タラ等の精巣由来のものが使用されるが、入手容易性や、コスト等を考慮すると、特にサケとニシンの白子由来のものが好ましい。
【0010】
なお、本発明のRNA−プロタミン複合体は、ポリアニオン性天然高分子であるRNAに対し、ポリカチオン性高分子であるプロタミンを加えることにより形成されるものと考えられる。
従って、本発明のRNAと複合体を形成するプロタミンはポリカチオン性高分子であるが、本発明に関連して、RNAとの複合体はプロタミン以外にも他のポリカチオン性の天然高分子または合成高分子が使用できる。これらの例としては、キトサン等の天然多糖及びその誘導体、リシンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸を多く含むタンパク質、例えばコラーゲン、その変性誘導タンパク質即ち、ゼラチン等また、ポリエチレンアミンなどの合成高分子も使用できる。
【0011】
RNA−プロタミン複合体形成は、酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理して得られたスラリーに塩類を添加したもの、または市販等の酵母RNA抽出物と、プロタミンとを水性媒体中で懸濁溶解し、反応を促進するために酸を添加して、pH1〜6.5、好ましくはpH3〜4の酸性条件下で行う。pHが1より低い場合には、RNAの加水分解が起こるために好ましくなく、また、pH6.5以上では反応促進効果が無くなる。これらのpH調整のための酸は塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸などが適当である。
また、反応温度は10〜90℃が適当であり、室温でも十分進行可能である。
上記条件下で、反応を20〜30分ないし4〜5時間おこなうことにより目的の複合体が得られる。
【0012】
本発明のRNA−プロタミン複合体は、形成後は水洗のみでさらなる脱塩等の工程を必要とすることなく、健康食品等にそのまま利用できる。本発明のRNA−プロタミン複合体は水難溶性で、水溶液中で沈殿するのでろ過、遠心分離等により、容易に溶液から分離できる。分離後、乾燥し、粉末状、顆粒状、固形状または懸濁溶液状の健康食品や他の可能な用途、例えば化粧品等の材料として使用することができ、RNAとプロタミンの両方の効力が期待できる健康食品用の材料とすることができる。
従って、本発明はさらに上記RNA−プロタミン複合体を含む健康食品にも関する。これらは例えば、錠剤、タブレット、機能性食品、各種飲料等の原料として使用できる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を限定することを目的としない実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
固形分15%ビール酵母懸濁水溶液を高圧噴射衝撃式ホモジナイザーを用いて、1000kgf/cm2の圧力で1回破砕処理した。この酵母懸濁液150mlに水50〜200mlおよび食塩5〜20g加え十分に混合した後、100℃のオートクレーブに1時間かけ、室温まで水冷して懸濁スラリーを得た。これとは別にプロタミン(和光純薬製 サケ由来)1gを100mlの水に溶解し24時間振とうさせて1重量%プロタミン水溶液を調製した。室温下、前記懸濁スラリー20mlに、酢酸(和光純薬製)を滴下してpHを約3に調整後、前記1重量%プロタミン水溶液6mlを滴下した。得られた混合液を室温で4時間振とうさせた。得られたサンプルを3000rpmで30分遠心分離した後、沈殿物を10mlの蒸留水で3回洗浄し、40℃で真空乾燥させた。
約0.09g(例えば、食塩20g使用の場合)の黄色い固体が得られたが、この複合体にはそのまま実際の食品に使用しても支障のない程度の塩分が含まれるにすぎなかった。
また、この複合体の赤外分光分析(装置:HORIBA FT−210、(株)堀場製作所製、条件:KBr法)を行ったところ、下記、図1のビール酵母由来のRNAが示した波数1535cm−1、1473cm−1、1235cm−1、1050cm−1の位置と同じ位置にピークがみられることから、この沈殿物はビール酵母由来のRNAの特徴を示すことが判る。
【0014】
実施例2
ビール酵母より抽出したRNA〔商品名:酵母RNA、北京燕京中科生物技術有限公司製、中国、北京、塩化ナトリウム12重量%含有、赤外分光スペクトル(装置:HORIBA FT−210、(株)堀場製作所製、条件:KBr法)を図1に示す。)〕0.5gを99.5mlの水に溶かし24時間振とうさせて(ラボシェーカー、井内盛栄堂(株)製を使用)、0.5重量%RNA水溶液を調製した。同様にプロタミン(和光純薬製 サケ由来サルシン)1gを100mlの水に溶解し24時間振とうさせて1重量%プロタミン水溶液を調製した。室温下、前記0.5重量%RNA水溶液10mlに酢酸(和光純薬製)0.5mlを滴下した後、前記1重量%プロタミン水溶液6mlを滴下した。得られた混合液を室温で4時間振とうさせた。得られたサンプルを3000rpmで30分遠心分離した後、沈殿物を2mlの蒸留水で洗浄し、40℃で真空乾燥させた。
0.0932gの黄色い固体が得られ、塩素の元素分析(フラスコ燃焼法)では塩素は検出されなかった。従って、この複合体には実質的に塩化ナトリウムが含まれないと考えることができる。
さらに、この複合体の赤外分光分析(装置:HORIBA FT−210、(株)堀場製作所製、条件:KBr法)を行ったところ、図2に示すスペクトルが得られ、図1のビール酵母由来のRNAが示した波数1535cm−1、1473cm−1、1235cm−1、1050cm−1の位置と同じ位置にピークがみられることから、この沈殿物はビール酵母由来のRNAの特徴を示すことが判る。
【0015】
実施例3:
より高濃度の酵母RNA抽出物を使用するRNA−プロタミン複合体の製造を以下のように行った。
ビール酵母より抽出したRNA(商品名:酵母RNA、北京燕京中科生物技術有限公司製、中国、北京、塩化ナトリウム12重量%含有)4.0gを20.0mlになるよう水に溶解し、48時間振とうし、RNA水溶液を得た。水溶液中の不溶物を吸引ろ過により除去し、茶色の溶液を得た。この溶液はpH2.0であったため、酢酸を加えずに、該溶液に直接プロタミン(日生バイオ (株)製、プロザーブLotNo.020712)の10重量%水溶液5mlを攪拌しながら滴下した。20分攪拌した後、混合系中でガム状で、粘性を持つ沈殿物塊が得られた。この沈殿物を真空下で50℃にて乾燥させ、実施例1と同様の条件で塩素についての元素分析を行った。
塩素の元素分析をした結果は0.8重量%であり、これは即ち塩化ナトリウムとして約1.3重量%の極めて低い塩分濃度に相当する。
得られた、より多量の塩分を包含している20重量%の高濃度RNA抽出物を材料としたRNA−プロタミン複合体であっても、その塩分含量は極めて低いことが示された。
【0016】
【発明の効果】
本発明では、従来、健康食品等において精製酵母RNAと精製プロタミンをそれぞれ加える場合に比べ、2つの機能を併せ持つRNA−プロタミン複合体を精製酵母RNAの製造過程で高純度で製造することができるので健康食品等の製造工程数をより少なくすることができる。また、本発明のRNA−プロタミン複合体は、酸性下で酵母懸濁液に直接プロタミンを加えるという簡素な方法で形成でき、しかも水難溶性のため分離が容易である。さらに例え、従来から知られた塩化ナトリウムにより抽出された酵母RNA抽出物を使用しても、本発明の方法により得られたRNA−プロタミン複合体は殆ど塩分を含まないので、そのまま脱塩処理を要せずに、健康食品用の材料として利用できる。
従って本発明により、健康食品をより経済的に、効率良く提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で使用した酵母由来のRNAの赤外分光スペクトルを示す。
【図2】実施例2で得られた酵母由来のRNA−プロタミン複合体の赤外分光スペクトルを示す。
Claims (6)
- RNAとプロタミンとから、これら両者の活性が消失することなく複合形成されてなるRNA−プロタミン複合体。
- RNAがビール酵母、パン酵母または乳酵母由来のものである請求項1記載のRNA−プロタミン複合体。
- プロタミンが魚類の白子由来のプロタミンである請求項1または2記載のRNA−プロタミン複合体。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のRNA−プロタミン複合体を含む健康食品。
- 酵母菌体を含有する懸濁液を破砕処理して得られたスラリーに塩類を添加し、さらに酸性にした後、プロタミンを加えることにより、RNA−プロタミン複合体を得る、請求項1記載のRNA−プロタミン複合体の製造方法。
- 酵母RNA抽出物の酸性溶液にプロタミンを加えることにより、RNA−プロタミン複合体を得る、請求項1記載のRNA−プロタミン複合体の製造方法。
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