JP2004172308A - 電子回路配線基板及び電子回路配線方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】信号源と負荷回路とを結ぶ信号伝送用の導電路と信号帰還用の導電路の配置を工夫して当該基板からの電磁波の放射を防止できるようにする。
【解決手段】中間層に信号帰還用の第1の導電路11を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部13を有する回路配線基板と、この回路配線基板の一方の面に配置された信号源14と、回路配線基板の他方の面に配置された負荷回路15と、信号源14から開口部13を通って負荷回路15に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路12とを備え、開口部13の位置は信号源14から開口部13に至る部分の第1及び第2の導電路11,12で構成される第1のループ面積と、開口部13から負荷回路15に至る部分の第1及び第2の導電路11,12で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【選択図】 図1
【解決手段】中間層に信号帰還用の第1の導電路11を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部13を有する回路配線基板と、この回路配線基板の一方の面に配置された信号源14と、回路配線基板の他方の面に配置された負荷回路15と、信号源14から開口部13を通って負荷回路15に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路12とを備え、開口部13の位置は信号源14から開口部13に至る部分の第1及び第2の導電路11,12で構成される第1のループ面積と、開口部13から負荷回路15に至る部分の第1及び第2の導電路11,12で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適な電子回路配線基板及び電子回路配線方法に関するものである。
【0002】
詳しくは、プリント配線基板等の回路配線基板の一方の面に配置された信号源から、この基板の所定位置の開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の導電路を備え、この信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように導電用の開口部の位置を決定して、信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺できるようにすると共に、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようにしたものである。
【0003】
【従来の技術】
近年、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置において、信号源や負荷回路を実装したプリント配線基板が使用されている。この種のプリント配線基板に設けられる信号線路は、通常、信号源から負荷回路までの信号線路パターンがグラウンド層または電源層の片側に形成され、かつ、配線パターンが一信号に付き1本である場合が多い。
【0004】
例えば、信号源から負荷回路までの信号線路パターンがグラウンド層または電源層の隣の層にマイクロストリップラインと呼ばれる配線構造を採用した信号線路や、同一層に構成され、信号線路パターンの両側にグラウンドパターンを併設したコプレナーと呼ばれる配線構造を採用した信号線路もある。また、信号線路に隣接する上下層にグラウンドパターンを配置したストリップライン配線構造も採用される場合が多い。
【0005】
これらの信号線路によれば、グラウンド層または電源層等の信号線路パターンから電磁波が発生し遠方に伝達してしまう電磁波不要輻射の問題が生じている。この問題を解決するため、現状では以下のような対策が取られている。
【0006】
▲1▼ プリント配線基板で信号線路を構成する配線パターンの長さを可及的に短くする。
▲2▼ 信号源の電圧及び信号線路に流れる電流の値を小さくする。
▲3▼ プリント配線基板に電磁シールドを施す。
▲4▼ 信号線路パターンの近傍に電波吸収体を配置する。
▲5▼ 本来の信号線路に近接して位相を反転させた信号を伝送する信号線路を設ける(特許文献1に記載の電子回路)。
▲6▼ 本来の信号線路と長さが等しい他の信号線路を当該信号線路を跨いだ反対側に設ける(特許文献2に記載の電子回路配線基板)。
▲7▼ 信号源の高周波成分を減衰させる(俗な表現で言うと波形をなまらせる)。
▲8▼ 信号線の伝送路及びその帰還路をツイストペア信号線路類似のパターン構成にする(特許文献3に記載のプリント回路基板及び、その基板上の導電性トレースからの無線周波妨害放射を減少させる方法)。
【0007】
図41Aは従来例に係るコプレナー構造の電子回路配線基板10の構成例を示す上面図である。図41Bはその断面の構成例を示すA11−A21矢視断面図である。図41Aに示すコプレナー構造の電子回路配線基板10は、インピーダンスコントロールが可能で、高速信号の伝送に優れるものである。電子回路配線基板10は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、この部品実装面、つまり、図41Bに示す基板本体40上には信号源14及び負荷回路15が配置されている。
【0008】
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号伝送用の信号線路パターン2が配線され、この負荷回路15から信号源14へ至る部品実装面には信号帰還用のグランドパターン1が各々配線される。この信号線路パターン2に沿うように、コプレナーパターン3が配置(形成)されている。コプレナーパターン3は信号線路パターン2の対地アドミタンスを均等に分布させることができるので、当該信号線路パターン32の特性インピーダンスが安定する。
【0009】
【特許文献1】
実開平5−57939号公報
【特許文献2】
特開2000−261112号
【特許文献3】
特願2001−273503号
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来例に係る回路配線基板によれば、次のような問題がある。
▲1▼ 信号線路を構成する配線パターンの長さを可及的に短くする対策は、設計者にとって多大な負担となる。また、電子部品の配置によっては、配線パターンを短くできない場合もある。
▲2▼ 信号源の電圧、電流の値を小さくする対策は信号対雑音比を小さくしてしまう。感度低下につながる。
▲3▼ プリント配線基板に電磁シールドを施す対策は、コストアップにつながる。また、機器の小型化の妨げになる。
▲4▼ 電波吸収体を信号線路パターンの近傍に配置する対策は、技術的に難しく、コストアップにつながる。また、電磁波吸収効果が不安定で、ばらつきがある。電子機器の小型化の妨げになる。この電磁波吸収体を使用する場合は、該吸収体が配置される位置、方向、吸収体の大きさ、吸収体材料の特性変化等により電磁波の吸収レベルが変動して不安定要因になる。
▲5▼ 本来の信号線路に近接して位相を反転させた信号を伝送する信号線路を設ける対策は、回路配線基板面積の有効利用率の低下をまねく。また、能動部品を使用した電子回路が必要になるため、技術的に難しく、コストアップにつながる。電子機器の小型化の妨げになる。
【0011】
▲6▼ 信号線路と反対方向に当該信号線路と長さが等しい他の信号線路を設ける対策は、回路配線基板面積の有効利用率の低下をまねく。また、回路配線基板が著しく大きくなるため、製品の小型化が難しくなる。技術的に難しく、コストアップにつながる。
▲7▼ 信号源の高周波成分を減衰させる対策は、次段以降の電子回路の動作を不安定にする原因となる。
▲8▼ 信号線の伝送路及びその帰還路をツイストペア信号線路類似のパターン構成にする対策は、バイアホールの設置数が著しく多くなり、コストが上昇する。
また、当該信号線路周囲のプリントパターンや電子部品等の影響で信号線路の特性インピーダンスが不安定になる。
【0012】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、信号源と負荷回路とを結ぶ信号伝送用の導電路と信号帰還用の導電路の配置を工夫して当該基板からの電磁波の放射を防止できるようにした電子回路配線基板及び電子回路配線方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題は、中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板と、この回路配線基板の一方の面に配置された信号源と、回路配線基板の他方の面に配置された負荷回路と、信号源から開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路とを備え、開口部の位置は信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とする電子回路配線基板によって解決される。
【0014】
本発明に係る第1の電子回路配線基板によれば、中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板の一方の面に信号源が配置され、この回路配線基板の他方の面には負荷回路が配置されている。この第1の導電路には、例えば、ベタグラウンド層又はベタ電源層が使用される。また、ループ間距離は例えば、信号源から負荷回路へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、回路配線基板の厚さの2倍以上になるように設定される。
【0015】
この信号源から開口部を通って負荷回路に至る部分には信号伝送用の第2の導電路が配線される。開口部の位置は信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0016】
従って、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0017】
本発明に係る第1の電子回路配線方法は、回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する方法であって、回路配線基板の中間層に信号帰還用の第1の導電路を形成すると共に、回路配線基板における信号源と負荷回路との間の所定位置に開口部を形成し、信号源から開口部を通って負荷回路に至る信号伝送用の第2の導電路を形成するに当たって、この信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る第1の電子回路配線方法によれば、回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合に、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0019】
本発明に係る第2の電子回路配線基板は、部品実装面を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板と、この回路配線基板の部品実装面に配置された信号源と、この信号源から所定距離を置いて部品実装面に配置された負荷回路と、信号源から負荷回路へ至る部品実装面に配線された信号伝送用の第1の導電路と、信号源と負荷回路とを開口部を通じて接続する信号帰還用の第2の導電路とを備え、第2の導電路は第1の導電路と並行するように配置され、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に配線され、開口部の位置は信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る第2の電子回路配線基板によれば、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板の部品実装面には信号源が配置されると共に、この信号源から所定距離を置いて負荷回路が配置されている。信号帰還用の第2の導電路は信号伝送用の第1の導電路と並行するように配置されている。しかも、この第2の導電路が信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に配線される。この開口部の位置は、信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0021】
従って、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0022】
本発明に係る第2の電子回路配線方法は、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する方法であって、回路配線基板の部品実装面に信号伝送用の第1の導電路を形成すると共に、当該回路配線基板における信号源と負荷回路との間の所定位置に2個単位に導電用の開口部を形成し、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成すると共に、当該第2の導電路を第1の導電路と並行するように形成するに当たって、信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る第2の電子回路配線方法によれば、予め決定された特定位置の開口部を使用して、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成するようになされる。
【0024】
従って、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合であって、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明に係る電子回路配線基板及び電子回路配線方法の一実施の形態について、図面を参照しながら説明をする。
(1)第1の実施形態
図1は本発明に係る第1の実施形態としての電子回路配線基板100の構成例を示す斜視図である。
この実施形態では回路配線基板の一方の面に配置された信号源から、この基板の所定位置の開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の導電路を備える。この信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように導電用の開口部の位置を決定する。
【0026】
そして、信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺できるようにすると共に、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようにしたものである。
【0027】
図1に示す電子回路配線基板100は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。電子回路配線基板100は中間層に信号帰還用の第1の導電路11を有している。この第1の導電路11はベタグランド層又はベタ電源層から構成される。
【0028】
この第1の導電路11は所定の厚みを有した銅箔から構成される。図1において第1の導電路11の表裏の絶縁物の記載を省略している。この第1の導電路11の所定位置には導電用の開口部(以下バイアホールという)13を有している。この第1の導電路11の一方の面には信号源14が配置され、この第1の導電路11の他方の面には負荷回路15が配置されている。信号源14と負荷回路15との間には信号伝送用の第2の導電路の一例となる信号線路パターン12が配線される。第1の導電路11の表側(上側)の信号源14から、裏側(下側)の負荷回路15へ高周波信号を伝送するためである。
【0029】
図2は電子回路配線基板100の断面の構成例を示す図である。図2に示す電子回路配線基板100の中間層には第1の導電路の一例となるベタグランド層11Aが設けられ、このベタグランド層11Aを通って高周波の帰還電流が流れる。中間層はベタグランド層11Aの代わりにベタの電源層であってもよい。要は、負荷回路15からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けられ(準備され)ていればよい。図中、tは電子回路配線基板100の厚みを示している。
【0030】
図2において、信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には信号線路パターン(プリントパターン)12が配線される。信号線路パターン12は銅箔又は被覆電線等から構成される。この信号源14からの高周波信号は、基板本体20の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通って基板本体20の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り負荷回路15に至る。バイアホール13は表裏を貫通する開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0031】
このバイアホール13の位置は信号源14から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループのループ面積(以下で単にループ面積ともいう)と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の第1及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該基板本体20の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0032】
図3は電子回路配線基板100の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
この実施形態では図3の実線で示す高周波電流は、信号源14から電子回路配線基板100の表側の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通って電子回路配線基板100の裏側に抜ける。そこからさらに電子回路配線基板100の裏側の信号線路パターン12を通って負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は、ベタグランド層11Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると断面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。この8字回路からの電磁波放射は、ループ1から放射される電磁波とループ2から放射される電磁波が遠方の受信アンテナまたは電子機器において相互に干渉する効果として考えることができる。
【0033】
この例では、図3に示す電子回路配線基板100の表側で発生する電磁波の大きさと、当該基板100の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは電子回路配線基板100の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積Sに比例するためである。このループ面積Sは断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。つまり、ループLp1のループ面積はS1であり、ループLp2のループ面積はS2であり、電磁波を相殺するパターンの場合、2つのループLp1、Lp2の関係はS1=S2である。
【0034】
また、図3に示す信号源14からバイアホール13を経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、電子回路配線基板100の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板100からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0035】
つまり、信号源14からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明をする。
【0036】
図4は電子回路配線基板100における相殺効果確認時の電磁波測定例を示す概念図である。図4において、電子回路配線基板100から放射される電磁波は、受信用のアンテナ付きの電磁波測定装置400によって測定される。
【0037】
図4に示す電子回路配線基板100によれば、ループLp1を流れる電流の方向と、ループLp2を流れる電流の方向とが反対向きになっている。このため、ループLp1とループLp2から発生する磁束の方向も反対向きになる。この例で、ループLp1を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の表から裏へ向かっている(○に×印で示す)。ループLp2を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の裏面から表面に向かっている(○に・印で示す)。
【0038】
従って、当該電子回路配線基板100のループLp1とループLp2から発生する電磁波の位相が反対になるため、遠方に置かれた電磁波測定装置400のアンテナ401に誘起する起電圧または起電流は、大きさが等しく極性が反対になり、互いに打ち消し合って零になる。または著しく減衰する。因みに相殺状態で放射された2つの電磁波がアンテナ401または他の電子機器に到達する間に反射、吸収、屈折、回折を複雑に繰り返しても、電磁波の伝達経路はほとんど同じであるため、アンテナ401またはその電子機器に誘起する電圧または電流の大きさが等しく位相が反転していることに変りが無く確実に相殺が起こる。
【0039】
このように遠方に置かれたアンテナ401に誘起する起電圧または起電流が零、または著しく減衰することは、遠方に置かれた携帯電話機等の電子機器に生じる起電圧または起電流が零、または著しく減衰することと等価である。この電磁波を相殺する配線パターン構成は、この配線パターンの外部から到来する電磁波(ノイズ源)により誘起される起電圧または起電流に対して相殺する効果もある。従って、基板本体40、特に開口部の位置が本発明方式に従って構成されている限り、本発明方式の電子回路配線基板100を収納する筐体、その基板付近の配線等による影響を受けないで安定した相殺効果を得ることができる。
【0040】
図5は電子回路配線基板100における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。図5に示す電子回路配線基板100は絶縁物を省略している。図5において、携帯電話機や、高周波発生装置等を送信用のアンテナ付きのノイズ発生装置500としたとき、このノイズ発生装置500のアンテナ501から放射される電磁波は、通常の電子回路配線基板100に対して何らかの影響を与える。しかし、本発明方式の電子回路配線基板100によれば、図4に示した電磁波の放射に関して、送信用のアンテナ501と受信用のアンテナ401との条件を逆にした場合であっても、空間減衰特性が変わらない。この電子回路配線基板100では外部からの電磁波による妨害を相殺するためである。
【0041】
図5でノイズ発生装置500のアンテナ501から到来する電磁波によりループLp1に誘起する起電圧または起電流は、ループLp2に誘起する起電圧または起電流と大きさが等しく極性が反転している。このため、ループLp1に誘起する起電圧または起電流とループLp2に誘起する起電圧または起電流とが相殺する。これにより、微小信号源14からの伝送信号をノイズの影響を受けることなく負荷回路15へ伝達することができる(EMS効果;電磁妨害排除能力)。
【0042】
図6は電磁波相殺パターンに係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。図6に示すe1はループLp1に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。e2はループLp2に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。これらのループLp1、Lp2を受信アンテナとしたとき、各々のループLp1、Lp2の面積をS(S1=S2)とし、ループの巻数をnとし、透磁率をμとし、ループ面に垂直な磁界成分をHnとすると、e1やe2等は、(1)式、すなわち、
e1=−jωμnSHn[V]
e2=−jωμnSHn[V] ・・・・・(1)
で与えられる。vは図5に示した信号源14による微小信号電圧である。これらの外来ノイズ源は信号源14に直列に接続された回路構成の場合と等価になる。
このループLp1に発生する電圧e1等とループLp2に発生する電圧e2等が相殺される(EMS効果)。
【0043】
この結果、負荷回路15に現れるのは微小信号電圧vのみとなり、外来ノイズの影響を排除することができる。この効果は外来ノイズが連続の電磁波でなく、例えば、電源遮断時に生じるパルス電磁波や雷放電、静電気放電(ESD)等の不連続な電磁波であっても同様にして得られる。この例では、ループ間距離Lが外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下、かつ、基板本体20の厚さの2倍以上になるように設定されて成る。
【0044】
ここでループ間距離Lが波長λの1/4以下の場合であって、ループLp1から発生する電磁波による電圧をe1(t)とし、ループLp2から発生する電磁波による電圧をe2(t)としたとき、従来方式では、e1(t)+e2(t)が「1」に近づき、電圧の相殺効果が得られない。本発明方式では、e1(t)+e2(t)が「0」に近づく。よって、当該電子回路配線基板100に到来する波長λの電磁波を相殺できるようになる。
【0045】
続いて、本発明に係る第1の実施形態にとしての電子回路配線方法について、電磁波相殺機能付きの電子回路配線基板100の形成方法について説明をする。
図7及び図8は電子回路配線基板100の形成例(その1、2)を各々示す工程図である。
【0046】
この実施形態では基板埋め込み技術を応用して、電子回路配線基板100の一方の面に信号源14を埋め込み配置し、当該電子回路配線基板100の他方の面に負荷回路15を埋め込み配置して電子回路間を配線する場合を例に挙げる。
【0047】
もちろん、これに限られることはなく、電子回路配線基板100の一方の面に信号源14を配置し、当該電子回路配線基板100の他方の面に負荷回路15を配置して電子回路間を配線するようにしてもよい。前者は後者に比べて基板の薄型が図られ、高密度実装が可能になる。この例では前者について、両面銅箔基板本体20と片面プリント基板21とを張り合わせて電子回路配線基板100を形成する場合を想定する。
【0048】
これらを形成条件にして、図7Aにおいて、両面銅箔を有した基板本体20を準備する。基板本体20は絶縁基板20Cの一方の面に銅箔20Aを有し、かつ、他方の面に銅箔20Bを有している。好ましくは、ベタグランド層11Aに使用する側の銅箔20Aが信号源14を配置する側よりも厚く形成されたものを使用するとよい。中間層となるベタグランド層11Aは信号帰還のみならず電源帰路に使用するためである。
【0049】
次に、信号源14を配置する側の、図7Bに示す銅箔20Bをパターニングして余分な銅箔を除去し前半部分の信号線路パターン12を形成する。この部分の信号線路パターン12は予め決定された開口部(バイアホール)13の形成予定位置まで延在される。この開口部13の形成予定位置は、予めシミュレーション等によって決定される。この開口部13を形成するに当たってのシミュレーション処理では、この信号源14から当該開口部13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、バイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該基板本体20の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるようにバイアホールの位置が決定される。
【0050】
次に、図7Cに示すように基板本体20における信号源14と負荷回路15との間の所定位置に、この例では上述のシュミレーション等により予め求めた形成予定位置にバイアホール用の開口部13を形成する。このとき、信号源14を埋め込み配置するための穴部16を形成する。穴部16は信号源14を埋め込む部分の絶縁物20Cを除去し、ベタグランド層11Aとなる銅箔20Aが露出するようにして形成する。信号源14には高周波信号発生用のICチップ等を想定している。
【0051】
その後、図8Aに示すようにベタグランド層11A(中間層)となる側の開口部13の周囲の銅箔20Aを除去する。そして、銅箔20Aを除去した部分に図示しない他の絶縁物20Dを詰め込む。信号線路パターン12とベタグランド層11Aとが短絡しないようにするためである。この開口部13に絶縁物20Dを詰め込んだ後に上部を平坦化する。そして、負荷回路15を配置するための片面銅箔プリント基板21を準備する。プリント基板21は絶縁基板21Cの一方の面に銅箔21Aを有している。
【0052】
そして、図8Bにおいて、基板本体20と片面銅箔プリント基板21とを貼り付ける。例えば、ベタグランド層11A(中間層)となる銅箔20Aと、片面銅箔プリント基板21の絶縁基板21Cの他方の面(銅箔21Aの非形成面)とを対峙するように、両基板20,21を接着剤を使用して熱厚着する。
【0053】
その後、図8Cに示すようにバイアホール13となる両基板20,21を貫通する開口部13を形成する。このとき、負荷回路15を埋め込み配置するための穴部17を形成する。負荷回路15には高周波変調用のICチップ等を想定している。穴部17は負荷回路15を埋め込む部分の絶縁物21Cを除去し、ベタグランド層11Aとなる銅箔20Aが露出するようにして形成する。これ以降の工程は、例えば、片面銅箔プリント基板21において、負荷回路15を配置する側の銅箔21Aをパターニングして余分な銅箔21Aを除去し後半部分の信号線路パターン12を形成する。
【0054】
そして、開口部13内に図示しない導電性の部材、例えば、銅メッキ又は半田を施す。その後、穴部16に信号源14を埋め込み、穴部17に負荷回路15を各々埋め込み配置して固定する。信号源14や、負荷回路15等とベタグランド層11Aの固定は半田等により接合する。その後、信号源14及び負荷回路15の各々の端子電極を各々の信号線路パターン12に接続する。これにより、図2に示したような信号源14及び負荷回路15が基板本体20に埋め込まれ、しかも、この信号源14からバイアホール13を通って、電子回路配線基板100の表面から裏面に通じて負荷回路15に至る信号線路パターン12を形成することができる。
【0055】
このように、本発明に係る第1の実施形態としての電子回路配線基板及び電子回路配線方法によれば、中間層に信号帰還用のベタグランド層11Aを有し、かつ、所定位置に導電用のバイアホール13を有する電子回路配線基板100の一方の面に信号源14が配置され、この電子回路配線基板100の他方の面には負荷回路15が配置されている。また、ループ間距離Lは例えば、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、基板本体20の厚さtの2倍以上になるように設定される。
【0056】
この信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には信号線路パターン12が配線される。バイアホール13の位置は信号源14からバイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該電子回路配線基板100の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0057】
従って、信号源14からバイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループにより発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、当該電子回路配線基板100からの電磁波の放射を防止できる。
【0058】
[第1の実施例]
図9は本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板101の断面の構成例を示す概念図である。
この実施例では8字ループで電磁波を相殺するパターンを構成する場合に限定されることはなく、プリント配線基板101の表側のループLp1とループLp3の面積の和と、プリント配線基板101の裏側のループLp2の面積が等しくなるようにしてもよい。
【0059】
図9に示すプリント配線基板101はプリント配線基板を構成し、この基板101によれば、ベタグランド層11Aの一方の面(上側;表側)に信号源14及び負荷回路15が共に配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には偶数個のバイアホール(開口部)13A,13B・・・が設けられる。
【0060】
この例では2個のバイアホール13A,13Bが設けられる。信号源14から最初のバイアホール13Aに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp1が構成される。最初のバイアホール13Aから次のバイアホール13Bに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp3が構成される。このバイアホール13Bから負荷回路15に至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp2が構成される。
【0061】
ここでループLP1のループ面積をS1とし、ループLP2のループ面積をS2とし、ループLP3のループ面積をS3とすると、S3はS1+S2なる関係に信号線路パターン12が形成される。このような信号線路パターン12のループ配置であっても、プリント配線基板101の表側のループと基板の裏側のループから放射される電磁波の位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。
【0062】
[第2の実施例]
図10は本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板102の断面の構成例を示す概念図である。
この実施例ではベタグランド層11Aの一方の面(上側;表側)に信号源14を配置し、他方の面(下側;裏側)に負荷回路15が各々配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には奇数個のバイアホール(開口部)13A,B・・・が設けられる。
【0063】
図10に示すプリント配線基板102の例で、3個のバイアホール13A,13B,13Cが設けられる。信号源14から第1バイアホール13Aに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp1が構成される。第1バイアホール13Aから第2バイアホール13Bに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp2が構成される。この第2バイアホール13Bから第3バイアホール13Cに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp3が構成される。第3バイアホール13Cから負荷回路15に至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp4が構成される。
【0064】
この例ではプリント配線基板102の表側のループのループ面積とそれと隣り会う裏側のループの面積が夫々等しくなるように構成されている。ここでループLP1のループ面積をS1とし、ループLP2のループ面積をS2とし、ループLP3のループ面積をS3とし、ループLP4のループ面積をS4とすると、プリント配線基板102の表側のループLp1のループ面積S1とそれと隣り会う裏側のループLp2の面積S2が等しくなるように構成され、プリント配線基板102の表側のループLp3のループ面積S3とそれと隣り会う裏側のループLp4の面積S4が等しくなるように構成されている。
【0065】
このような信号線路パターン12のループ配置であっても、プリント配線基板102の表側のループと基板の裏側のループから放射される電磁波の位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。ループの設置数は4個に限られることはなく、多数のループで信号線路パターン12を構成してもよい。
【0066】
この例では、電磁波を相殺する関係にあるループ間距離Lが伝送信号の波長λの1/4を超えると、ループLp1から発生する電磁波の位相と、ループLp2から発生する電磁波の位相の差が270°(3π/2)を超えるため、相殺の効果が無くなり、次第に同相に転じて強め合うことになる。
【0067】
また、ループ間距離Lがグラウンドパターン間の厚みt(距離)の2倍未満になるとループ面積の精度を製造過程で管理することが技術的に困難になるため、ループ間距離Lはグラウンドパターン間の厚みtの2倍以上が望ましい。電磁波を相殺すべき伝送信号の波長λとグラウンドパターン間の厚みからループ間距離Lが定まることによる。
【0068】
従って、本発明方式ではループ間距離Lが伝送信号の波長λの1/4以下において効果を有することになる。また、電磁波を相殺する関係にあるループ間距離Lが電磁波を相殺する伝送信号の波長λの1/4より長くなる場合は、図10で説明した第2の実施例のように、ループ間距離Lが伝送信号の波長λの1/4より短くなるように多数のループで電磁波相殺パターンを構成するようにしてもよい。なお、基板本体40の絶縁層を構成する誘電体の誘電率により電磁波の伝播速度が減少するため、信号の波長または外来妨害電磁波の波長が短縮する。従って、この短縮の割合に応じてループ間距離Lを短縮しなければならない。
【0069】
次に、電磁波相殺パターンによって相殺可能な電磁波の周波数限界について図11を参照しながら説明する。
図11はループ間距離Lと電磁波相殺上限周波数との関係例を示す図表である。この図表は、電磁波を相殺すべき伝送信号の波長λからループ間距離Lを算出したものである。▲1▼条件は、ループ間距離Lに関して基板の比誘電率εrが「1」で、波長短縮率が「1」で伝送信号の1/4波長の場合である。▲2▼はループ間距離Lに関して基板の比誘電率εrが4.8で、波長短縮率が1/√εr=0.456で伝送信号の1/4波長の場合である。▲3▼はループ間距離Lに関して基板の実効比誘電率εeffが3.8で、波長短縮率が1/√εeff=0.513で伝送信号の1/4波長の場合である。
【0070】
この図表において、例えば、電磁波相殺上限周波数が750MHzの場合であって、▲1▼条件の場合には、伝送信号の1/4波長が10.00cmである。これに対して、▲2▼条件の場合には、伝送信号の1/4波長が4.56cmであり、▲3▼条件の場合には、伝送信号の1/4波長が5.13cmである。
【0071】
なお、図11に示す図表によれば、1GHz以下の周波数の電磁波を相殺するため、ループ間距離Lは▲2▼条件の下で3.5cmで足りることが確認された。これを▲3▼条件の場合で求めると、当該プリント配線基板の実効比誘電率が3.8であり、波長短縮率が0.513であり、1GHzの波長λの1/4が7.5cmであることから、波長短縮率を7.5cmに乗じると3.85cmになる。
【0072】
[第3の実施例]
図12は本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板103の構成例を示す斜視図である。
この実施例では第1の導電路がベタグランド層11A及び電源層11Bで構成する場合である。ベタグランド層11A及び電源層11Bは所定の厚みを有した銅箔から構成される。図11においてベタグランド層11A及び電源層11Bの表裏の絶縁物と、ベタグランド層11A及び電源層11B間の絶縁物との記載を省略している。このベタグランド層11A及び電源層11Bの所定位置にはバイアホール(導電用の開口部)13を有している。
【0073】
このベタグランド層11Aの一方の面には信号源14が配置され、このプリント配線基板103の電源層11Bの一方の面には負荷回路15が配置されている。この信号源14と負荷回路15との間は信号伝送用の第2の導電路の一例となる信号線路パターン12によって配線される。プリント配線基板103の表側(上側)の信号源14から、裏側(下側)の負荷回路15に高周波信号を伝送するためである。
【0074】
図13はプリント配線基板103の断面の構成例を示す図である。図13に示すプリント配線基板103の中間層にはベタグランド層11A及び電源層11Bが設けられている。このベタグランド層11Aを通って高周波の帰還電流が流れ、電源層11Bを通じて信号源14及び負荷回路15に電源が供給される。ベタグランド層11Aは電源の帰路となっている。要は、負荷回路15からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けて(準備されて)あればよい。図中、tはプリント配線基板103の厚みを示している。
【0075】
図13において、信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には信号線路パターン12が配線される。信号線路パターン12(プリントパターン)は銅箔又は被覆電線等から構成される。この信号源14からの高周波信号は、プリント配線基板103の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通ってプリント配線基板10の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り負荷回路15に至る。バイアホール13はベタグランド層11A、電源層11B及びこれらの層間絶縁膜を貫通して形成された開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0076】
このバイアホール13の位置は信号源14から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の電源層11B及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該プリント配線基板103の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0077】
図14はプリント配線基板103の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施形態では図14の実線で示す高周波電流は、信号源14からプリント配線基板103の表側の信号線路パターン12を通り、ベタグランド層11A及び電源層11Bに設けられたバイアホール13を通ってプリント配線基板103の裏側に抜ける。そこからさらにプリント配線基板103の裏側の信号線路パターン12を通って負荷回路15に至る。
【0078】
負荷回路15からの波線で示す帰還電流は、電源層11Bを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0079】
この例では、図14に示すプリント配線基板103の表側で発生する電磁波の大きさと、基板の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これはプリント配線基板103の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するからである。このループ面積は断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。
【0080】
また、図14に示す信号源14からバイアホール13を経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、プリント配線基板103の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該プリント配線基板103からの電磁波の放射を防止できるようになる。つまり、信号源14からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。
【0081】
[第4の実施例]
図15A及びBは本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板104の構成例を示す上面図及びそのX1−X2矢視断面図である。
この実施例では図15Aに示す信号線路パターン(第1の導電路)12がベタグランド層11Aの開口部13を原点にして配線角度θを有して配線されるものである。配線角度θは例えば、5°以上であって、355°以下としている。この角度範囲を超えると、電磁波相殺効果が低減するためである。因みに第1の実施形態で説明した電子回路配線基板100は配線角度θが180°の場合である。
【0082】
図15Bにおいて、信号源14は例えば、ベタグランド層11Aの絶縁膜20C上に設けられ、負荷回路15はベタグランド層11A下の絶縁膜21C上設けられている。信号源14とベタグランド層11Aとは例えば、接続プラグ18Aによって電気的に接続されている。負荷回路15とベタグランド層11Aとは同様にして接続プラグ18Bによって電気的に接続されている。
【0083】
図15Bに示すプリント配線基板104の中間層にはベタグランド層11Aが設けられている。このベタグランド層11A及び接続プラグ18A,18Bを通って高周波の帰還電流が流れる。要は、負荷回路15からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けて(準備されて)あればよい。図中、tはプリント配線基板104の厚みを示している。
【0084】
この例で信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には図15Aに示したように配線角度θを持って信号線路パターン12が配線される。信号線路パターン12(プリントパターン)は銅箔又は被覆電線等から構成される。この信号源14からの高周波信号は、プリント配線基板104の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通ってプリント配線基板104の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り負荷回路15に至る。バイアホール13はベタグランド層11A及び絶縁膜20C,21Cを貫通して形成された開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0085】
このバイアホール13の位置は信号源14から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18B及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該プリント配線基板10の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0086】
この場合も、図示しない高周波電流は、信号源14からプリント配線基板104の表側の信号線路パターン12を通り、ベタグランド層11Aに設けられたバイアホール13を通ってプリント配線基板104の裏側に抜ける。そこからさらにプリント配線基板104の裏側の信号線路パターン12を通って負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は、接続プラグ18B、ベタグランド層11A及び接続プラグ18Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0087】
この例でも、プリント配線基板104の表側で発生する電磁波の大きさと、基板の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これはプリント配線基板104の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するからである。このループ面積は断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。
【0088】
また、図15Bに示す信号源14からバイアホール13を経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、プリント配線基板103の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。ループ間距離Lはループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間の離隔距離を測定して得たものである。
【0089】
このようにすると、当該プリント配線基板103からの電磁波の放射を防止できるようになる。つまり、信号源14からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺することができる。
【0090】
図16A及びBは高周波回路配線基板105の構成例を示す上面図及びそのX11−X21矢視断面図である。
この実施例では図14Aにしたプリント配線基板104を応用した高周波回路配線基板105が提供される。図16Aに示す高周波回路配線基板105の一方の面には、信号源の一例となる動作周波数百MHz〜数GHz程度の送信回路用半導体集積回路装置(以下単にICという)14’、この他にPLL回路用のIC22や、高周波増幅用のIC23、変調回路用のIC24等が実装される。この基板105の他方の面には、負荷回路の一例となる受信回路用IC15’が実装される。この例で、信号線路パターン(第1の導電路)12がベタグランド層11Aの開口部13を原点にして、例えば、配線角度θ=100°を有して配線されるものである。
【0091】
図16Bに示す高周波回路配線基板105はベタグランド層11Aを絶縁物20C及び21Cで挟んだ3層構造の基板本体20から構成される。この基板105において、送信回路用IC14’は例えば、ベタグランド層11Aの絶縁膜20C上に設けられ、受信回路用IC15’はベタグランド層11A下の絶縁膜21C上に設けられている。送信回路用IC14’とベタグランド層11Aとは例えば、接続プラグ18Aによって電気的に接続されている。受信回路用IC15’とベタグランド層11Aとは同様にして接続プラグ18Bによって電気的に接続されている。
【0092】
図16Bに示す高周波回路配線基板105の中間層にはベタグランド層11Aが設けられている。このベタグランド層11A及び接続プラグ18A,18Bを通って高周波の帰還電流が流れる。要は、受信回路用IC15’からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けて(準備されて)あればよい。図中、tは高周波回路配線基板105の厚みを示している。
【0093】
この例で送信回路用IC14’の出力ピンからバイアホール13を通って受信回路用IC15’の入力ピンに至る部分には図15Aに示したように配線角度θ=100°を持って信号線路パターン12が配線される。信号線路パターン12は高周波回路配線基板105上でICC22及びIC23を避けるように配線される。
【0094】
この信号線路パターン12(プリントパターン)は銅箔又は被覆電線等から構成される。この送信回路用IC14’からの高周波信号は、高周波回路配線基板105の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通って高周波回路配線基板105の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り受信回路用IC15’に至る。バイアホール13はベタグランド層11A及び絶縁膜20C,21Cを貫通して形成された開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0095】
このバイアホール13の位置は送信回路用IC14’から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から受信回路用IC15’に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18B及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該プリント配線基板10の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0096】
この場合も、図示しない高周波電流は、送信回路用IC14’から高周波回路配線基板105の表側の信号線路パターン12を通り、ベタグランド層11Aに設けられたバイアホール13を通って高周波回路配線基板105の裏側に抜ける。そこからさらに高周波回路配線基板105の裏側の信号線路パターン12を通って受信回路用IC15’に至る。受信回路用IC15’からの帰還電流は、接続プラグ18B、ベタグランド層11A及び接続プラグ18Aを通って送信回路用IC14’に帰還する。この電流の経路をたどると8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0097】
この例でも、高周波回路配線基板105の表側で発生する電磁波の大きさと、基板の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは高周波回路配線基板105の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するからである。このループ面積は断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。
【0098】
また、図16Bに示す送信回路用IC14’からバイアホール13を経て受信回路用IC15’に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、送信回路用IC14’から受信回路用IC15’へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、プリント配線基板103の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。ループ間距離Lはループが始まる位置(送信回路用IC14’の位置)とループが終わる位置(受信回路用IC15’の位置)の間の離隔距離を測定して得たものである。
【0099】
このようにすると、当該プリント配線基板103からの電磁波の放射を防止できるようになる。つまり、送信回路用IC14’からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から受信回路用IC15’に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺することができる。
【0100】
図17A及びBは送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の配置例及び、ループ間距離Lの測定例を示す概念図である。図17Aに示す送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の第1の配置例によれば、バイアホール(開口部)13を原点としたとき、送信回路用IC14’を基準にして配線角度を鋭角(5°<θa<90°>に設定し、この送信回路用IC14’に対して鋭角θaを成す位置に受信回路用IC15’を配置した場合である。この場合のループ間距離Lは、ループが始まる位置(送信回路用IC14’の位置)とループが終わる位置(受信回路用IC15’の位置)の間の離隔距離L1を測定して得たものとなる。
【0101】
また、図17Bに示す送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の第2の配置例によれば、バイアホール(開口部)13を原点としたとき、送信回路用IC14’を基準にして配線角度を鈍角(90°<θb<355°)に設定し、この送信回路用IC14’に対して鈍角θbを成す位置に受信回路用IC15’を配置した場合である。この場合のループ間距離Lは、ループが始まる位置(送信回路用IC14’の位置)とループが終わる位置(受信回路用IC15’の位置)の間の離隔距離L2を測定して得たものとなる。
【0102】
続いて、本発明に係る実施例としてのプリント配線基板106の形成方法について説明をする。図18及び図19はプリント配線基板106の形成例(その1、2)を示す工程図である。
【0103】
この実施例では表面実装技術を応用して、プリント配線基板106の一方の面に送信回路用IC14’を実装し、当該プリント配線基板106の他方の面に受信回路用IC15’を実装して電子回路間を配線する場合を例に挙げる。
【0104】
これを形成条件にして、図18Aにおいて、両面銅箔を有した基板本体20を準備する。基板本体20は絶縁基板20Cの一方の面に銅箔20Aを有し、かつ、他方の面に銅箔20Bを有している。好ましくは、ベタグランド層11Aに使用する側の銅箔20Aが送信回路用IC14’を配置する側よりも厚く形成されたものを使用するとよい。中間層となるベタグランド層11Aは信号帰還のみならず電源帰路に使用するためである。
【0105】
その後、図18Bに示すベタグランド層11A(中間層)となる側の所定の部位の銅箔20Aを除去する。この部位はバイアホールとなる開口部13が貫通する部分であり、その周囲の銅箔20Aを除去することで絶縁距離を長くなる(稼ぐ)ようになされる。
【0106】
この開口部13の形成予定位置は、予めシミュレーション等によって決定される。この開口部13を形成するに当たってのシミュレーション処理では、この送信回路用IC14’から当該開口部13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、バイアホール13から受信回路用IC15’に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該基板本体20の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるようにバイアホールの位置が決定される。
【0107】
この例では、銅箔20Aを除去した部分に他の絶縁物20Dを詰め込む。信号線路パターン12とベタグランド層11Aとが短絡しないようにするためである。この部位に絶縁物20Dを詰め込んだ後に上部を平坦化する。そして、受信回路用IC15’を配置するための図17Cに示すような片面銅箔プリント基板21を準備する。プリント基板21は絶縁基板21Cの一方の面に銅箔21Aを有している。
【0108】
この例では、基板本体20と片面銅箔プリント基板21とを貼り付ける。例えば、ベタグランド層11A(中間層)となる銅箔20Aと、片面銅箔プリント基板21の絶縁基板21Cの他方の面(銅箔21Aの非形成面)とを対峙するように、両基板20,21を接着剤を使用して熱厚着する。
【0109】
こうして接着された基板本体20の一方の面、つまり、送信回路用IC14’を実装する側の、図19Aに示す銅箔20Bをパターニングして余分な銅箔を除去し前半部分の信号線路パターン12を形成する。このとき、送信回路用IC14’をマウントする部分の下方の銅箔も除去し、又はその部分を絶縁する。信号線路パターン12は予め決定されたバイアホール用の開口部13を形成する予定位置まで延在される。
【0110】
また、基板本体20の他方の面、つまり、受信回路用IC15’を実装する側の銅箔21Aをパターニングして余分な銅箔を除去し後半部分の信号線路パターン12を形成する。このとき、バイアホール用の開口部13を形成する予定位置から受信回路用IC15’を実装する部分に至る銅箔21Aが残される。なお、受信回路用IC15’をマウントする部分の銅箔21Aも除去し、又は、又はその部分を絶縁する。
【0111】
そして、図19Bに示すように基板本体20における送信回路用IC14’と受信回路用IC15’との間の所定位置に、この例では上述のシュミレーション等により予め求めた形成予定位置にバイアホール用の開口部13を形成(開口)する。開口部13はレーザ加工装置又は所定のドリル刃を装着した加工装置等を用いて行う。これにより、バイアホールとなる位置に基板本体20を貫通する開口部13を形成することができる。このとき、送信回路用IC14’とベタグランド層11Aとを接続するための開口部131や、受信回路用IC15’とベタグランド層11Aとを接続するための開口部132を同時に形成する。
【0112】
その後、図19Cに示すようにバイアホールとなる開口部13内に、導電性の部材、例えば、銅メッキ又は半田を施す。その後、基板本体20の一方の面に送信回路用IC14’を実装し、他方の面に受信回路用IC15’を各々実装する。もちろん、送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’の各々の端子電極を各々の信号線路パターン12に接続する。これらのIC14’、15’は半田付け法等により接続し固定する。
【0113】
このような表面実装法によって、送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’が基板本体20に実装され、しかも、この送信回路用IC14’からバイアホール13を通って、基板本体20の表面から裏面に通じて受信回路用IC15’に至る信号線路パターン12を有したプリント配線基板106を形成することができる。
【0114】
[電磁波相殺シミュレーション]
図20A及びBは上述した第1の実施形態に係る電磁波相殺シミュレーションモデル例を示すイメージ図である。
図20Aにおける電磁波相殺シミュレーションモデル例によれば、横方向の長さLxが150mm、縦方向の長さLyが100mmの大きさのベタグランド層11Aを準備した。ベタグランド層11Aは導電板であって、その厚みは便宜上0mmである。このベタグランド層11Aの中央部にはバイアホールとなる開口部13が設けられる。開口部13の大きさは縦の長さが0.5mm、横の長さが10mm程度である。
【0115】
このベタグランド層11Aの開口部13を基準してその左右側には所定距離x1,x2を置いて信号源14及び負荷回路15が配置される。距離x1は45mm,距離x2も45mm程度である。信号源14及び負荷回路15の高さhは各々1mm程度である。信号源14には周波数10MHz〜3GHzの1V正弦波を発生する1[V]信号源が使用され、負荷回路15には50Ωのインピーダンス(抵抗)が使用される。
【0116】
この信号源14及び負荷回路15とは図20Bに示す開口部13を介在し、ベタグランド層11Aの表裏の信号伝送用の信号線路パターン12で接続される。信号線路パターン12の幅は0.1mm程度で、その厚さは0mmである。また、負荷回路15からの帰路は、当該負荷回路15から信号源14へ信号帰還用のベタグランド層11Aで接続される。
【0117】
図21A及びBは電磁波相殺シミュレーション比較モデル例を示すイメージ図である。図21Aにおける電磁波相殺シミュレーション比較モデル例によれば、横方向の長さLxが150mm、縦方向の長さLyが100mmの大きさのベタグランド層11Aを準備した。ベタグランド層11Aは導電板であって、その厚みは便宜上0mmである。このベタグランド層11Aの左右側には所定距離Lを置いて信号源14及び負荷回路15が配置される。信号源14及び負荷回路15の高さhは各々1mm程度である。信号源14には上述した1[V]信号源が使用され、負荷回路15には50Ωのインピーダンス(抵抗)が使用される。
【0118】
この信号源14及び負荷回路15とは、図21Bに示すベタグランド層11A上で信号伝送用の信号線路パターン12により接続される。信号線路パターン12の幅は0.1mm程度で、その厚さは0mmである。また、負荷回路15からの帰路は、当該負荷回路15から信号源14へ信号帰還用のベタグランド層11Aで接続される。
【0119】
図22は電磁波相殺シミュレーション測定時の構成例を示すイメージ図である。図22に示す電磁波相殺シミュレーション測定時の構成例によれば、無限の大きさの導電面60にターンテーブル50及び受信アンテナ用のポール402を配置する。ターンテーブル50は導電面60から高さ、例えば、0.8m位置にテーブル51を有している。このテーブル51には、電子回路配線基板100等の供試モデルを載置して回転するようになされる。テーブル51は例えば、0〜360°を5°間隔で回転するようになされる。
【0120】
このテーブル51から例えば、3m程度離隔した位置にはポール402が配置され、このポール402には受信用のアンテナ401が可動自在に取付けられる。アンテナ402には水平垂直偏波を受信可能なものが使用される。アンテナ401の上下方向の移動範囲は、下限1mから上限4mである。10cm間隔で移動自在になされている。モーメント法により電磁波相殺シミュレーションを行うためである。
【0121】
(2)第2の実施形態
図23Aは本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線基板200の構成例を示す上面図である。図23Bはその断面の構成例を示すY1−Y2矢視断面図である。
【0122】
この実施形態では、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置する場合であって、この信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように、これらの開口部の位置を決定して、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺できるようにすると共に、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようにしたものである。
【0123】
図23Aに示す電子回路配線基板200は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。電子回路配線基板200は回路配線基板を構成する基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図23Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。
【0124】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を置いて同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には第1の導電路の一例となる信号伝送用の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、第1及び第2開口部の一例となるバイアホール33A及び33Bを通じて第2の導電路の一例となる信号帰還用のグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図23Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0125】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0126】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成される第1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0127】
図24Aは電子回路配線基板200における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施形態では図24Aの実線で示す高周波電流は、信号源14から電子回路配線基板200の表側の信号線路パターン32を通って、負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は電子回路配線基板200の表側のグランドパターン31Cからバイアホール33Bを通って電子回路配線基板200の裏側に抜ける。そこからさらに電子回路配線基板200の裏側のグランドパターン312を通ってバイアホール33Aに至る。更にバイアホール33Aから電子回路配線基板200の表側のグランドパターン31Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると平面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0128】
この例では、図24Aに示す電子回路配線基板200の部品実装面左側で発生する電磁波の大きさと、当基板200の部品実装面右側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは電子回路配線基板200のバイアホールの左右で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するためである。
【0129】
また、図24Aに示す信号源14からバイアホール33A,33Bを経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、電子回路配線基板200の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板200からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0130】
つまり、信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Bで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明した通りである。
【0131】
図24Bにおいて、電子回路配線基板200から放射される電磁波は、受信用のアンテナ付きの電磁波測定装置400によって測定される。
図24Bに示す電子回路配線基板200によれば、ループLp1を流れる電流の方向と、ループLp2を流れる電流の方向とが反対向きになっている。このため、ループLp1とループLp2から発生する磁束の方向も反対向きになる。この例で、ループLp1を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の裏から表へ向かっている(○に・印で示す)。ループLp2を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の表面から裏面に向かっている(○に×印で示す)。
【0132】
従って、当該電子回路配線基板200のループLp1とループLp2から発生する電磁波の位相が反対になるため、遠方に置かれた電磁波測定装置400のアンテナ401に誘起する起電圧または起電流は、大きさが等しく極性が反対になり、互いに打ち消し合って零になる。この電磁波を相殺する配線パターン構成は、この配線パターンの外部から到来する電磁波(ノイズ源)により誘起される起電圧または起電流に対して相殺する効果もある。
【0133】
続いて、本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線方法について説明をする。この実施形態では図23に示したように、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を配置して電子回路間を配線する場合あって、基板本体40の部品実装面に信号伝送用の信号線路パターン32を形成する。信号線路パターン32は例えば、片面銅箔をパターニングして形成する。また、当該基板本体40における信号源14と負荷回路15との間の所定位置に2個単位に導電用の開口部を形成する。
【0134】
また、信号源14から図23に示したようなバイアホール(第1開口部)33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール(第2開口部)33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分にグランドパターン31A,31Cを形成すると共に、当該グランドパターン31A,31Cを信号線路パターン32と並行するように形成する。
【0135】
これに当たって、信号源14から第1開口部に至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループ面積とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされる。
【0136】
このようにして、本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線基板200及び電子回路配線方法によれば、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有する基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されると共に、この信号源14から所定距離を置いて負荷回路15が配置されている。
信号線路パターン32はグランドパターン31Aと並行するように配置されている。
【0137】
しかも、この信号線路パターン32が信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、グランドパターン31Aを交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0138】
このバイアホール33A,33Bの位置は、信号源14から当該バイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0139】
従って、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であっても、当該電子回路配線基板200からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0140】
[第1の実施例]
図25Aは本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板201の構成例を示す上面図である。図25Bはその断面の構成例を示すY12−Y22矢視断面図である。
【0141】
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターン32と、グランドパターン31A、31B及び31Cとの位置が入れ替わって構成されるものである。つまり、図25Aに示すプリント配線基板201は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板201は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図25Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。
【0142】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を置いて同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から受信回路用のIC15’へ至る部品実装面には第2の導電路の一例となる信号帰還用の直線状のグランドパターン31が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、第1及び第2開口部の一例となるバイアホール33A及び33Bを通じて第2の導電路の一例となる信号伝送用の信号線路パターン32A,32B,32Cにより接続されて構成されている。信号線路パターン32Bは図25Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0143】
この基板本体40の表面における信号線路パターン32A及び32Cはグランドパターン31と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面で信号線路パターン32Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、グランドパターン31を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0144】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32A及び32Bとグランドパターン31とで構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32C及び32Bとグランドパターン31とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0145】
図26はプリント配線基板201における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施例では図26の実線で示す高周波電流は、当該プリント配線基板201の表側の信号線路パターン32Aからバイアホール33Aを通って当該基板201の裏側に抜ける。そこからさらに当該基板201の裏側の信号線路パターン32Bを通ってバイアホール33Bに至る。
【0146】
更にバイアホール33Bから当該基板201の表側の信号線路パターン32Cを通って負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は当該IC15’からプリント配線基板201の表側のグランドパターン31を通って、信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると平面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0147】
この例では、図26に示すプリント配線基板201の部品実装面左側で発生する電磁波の大きさと、当基板201の部品実装面右側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは当該基板201のバイアホール33A,33Bの左右で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するためである。
【0148】
また、図26に示す信号源14からバイアホール33A,33Bを経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から当該IC15’へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、基板本体40の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該プリント配線基板201からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0149】
つまり、信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32A及びグランドパターン31で構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32C及びグランドパターン31で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明した通りである。
【0150】
[第2の実施例]
図27は本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板202の構成例を示す上面図である。
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターン32がバイアホール33A,33Bを基準にしてループ間で配線角度θを有して配置されるものである。つまり、図27に示すプリント配線基板202は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。
【0151】
プリント配線基板202は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
【0152】
配線角度θは信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。この配線角度θは5°<θ<355°の範囲であれば電磁波相殺効果が得られる。配線角度θ=180°で信号源14と負荷回路15とが直線上に並ぶ関係を有している。
【0153】
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図27に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0154】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0155】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び31Bと信号線路パターン32とで構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び31Bと信号線路パターン32とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0156】
従って、図27に示した配線角度θを有する場合であっても、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0157】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、配線角度θを有する場合であっても、当該プリント配線基板202からの電磁波の放射を防止できるようになる。他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0158】
[第3の実施例]
図28は本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板203の構成例を示す上面図である。
この実施例では、信号源14から負荷回路15へ至る部分であって、2個単位の導電用のバイアホール33A,33Bが基板本体40上の信号線路パターン32を挟んで2組以上設けられる。この信号線路パターン32はバイアホール33A,33B、33C,33D、33E,33F等を通して信号線路パターン32の左右交互に配置される。しかも、信号源14から負荷回路15に至る部分でバイアホール33A,33B等によって仕切られるグランドパターン31A,31C,31E,31G及び信号線路パターン32で構成されるループ面積が当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0159】
つまり、図28に示すプリント配線基板203は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板203は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個を単位として3組有している。
【0160】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、複数の配線角度θ1,θ2,θ3を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。配線角度θ1は信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ第1の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第1の線分からバイアホール33Cとバイアホール33Dと結ぶ第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。
【0161】
配線角度θ2はこの第1の線分から第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第2の線分からバイアホール33Eとバイアホール33Fと結ぶ第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。配線角度θ3はこの第2の線分から第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第3の線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。
【0162】
このような信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が曲線を描くようにして配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A〜33Fを通じてグランドパターン31A〜31Gにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図28に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0163】
同様にして、グランドパターン31Dは基板本体40の裏面でバイアホール33Cとバイアホール33Dとを接続するようになされる。グランドパターン31Fは基板本体40の裏面でバイアホール33Eとバイアホール33Fとを接続するようになされる。
【0164】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31Aは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Cに至る。
【0165】
このグランドパターン31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Cを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Dによって、バイアホール33Cとバイアホール33Dとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Dを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Eに至る。
【0166】
このグランドパターン31Eは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Eを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Fによって、バイアホール33Eとバイアホール33Fとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Fを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Gに至り更に負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0167】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及びグランドパターン31Dの一部と信号線路パターン32とで構成される第2のループのループ面積S2と、残りのグランドパターン31Dとバイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及びグランドパターン31Fの一部と信号線路パターン32とで構成される第3のループ面積S3と、残りのグランドパターン31Fとバイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Gと信号線路パターン32とで構成される第4のループのループ面積S4とが当該基板本体40の部品実装面で、例えば、S1=S2=S3=S4等のように夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A〜33Fの位置が決定されて成るものである。
【0168】
従って、図28に示した複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループにより発生する電磁波と、バイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。
【0169】
また、バイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及び信号線路パターン32で構成される第3のループにより発生する電磁波と、バイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31G及び信号線路パターン32で構成される第4のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。
【0170】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、当該プリント配線基板203からの電磁波の放射を防止できるようになる。第2の実施例に比べて他の電子部品を大きく迂回するような用途に利用できる。
【0171】
[第4の実施例]
図29は本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板204の構成例を示す上面図である。
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターンやグランドパターンが上向き及び下向き円弧状に配置されて構成されるものである。つまり、図29に示すプリント配線基板204は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板204は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。
【0172】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には上向き及び下向き円弧状の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A’,31B’,31C’により接続されて構成されている。グランドパターン31B’は図29に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0173】
この基板本体40の表面における上向き円弧状のグランドパターン31A’は上向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置され、このバイアホール33Aとバイアホール33Bとを結ぶ線分から反転する、下向き円弧状のグランドパターン31C’は下向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置される。そして、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0174】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び31B’と信号線路パターン32’とで構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び31Bと信号線路パターン32とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0175】
従って、図29に示した信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31Cが円弧状を有する場合であっても、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び信号線路パターン32’で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C’及び信号線路パターン32’で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0176】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31Cを円弧状に配置する場合であっても、当該プリント配線基板204からの電磁波の放射を防止できるようになる。この電磁波相殺パターンは第2及び第3の実施例と同様にして他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0177】
(3)第3の実施形態
図30Aは本発明に係る第3の実施形態としての電子部品回路基板300の構成例を示す上面図である。図30Bはその断面の構成例を示すZ1−Z2矢視断面図である。
【0178】
この実施形態では部品実装面のグランドパターン31Aには、バイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように延長された補助導電路が配置されて構成されるものである。つまり、インピーダンスコントロールが可能なコプレナー構造の特徴を生かしながら、かつ、信号線路パターンから放射される電磁波を相殺する効果を付加したものである。
【0179】
図30Aに示す電子回路配線基板300は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。電子回路配線基板300は回路配線基板を構成する基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図30Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。
【0180】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を置いて同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号伝送用の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とはバイアホール33A及び33Bを通じて信号帰還用のグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図27Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0181】
この例ではグランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0182】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは、第1の実施形態と同様にして信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0183】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0184】
図31Aは電子回路配線基板300における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施形態では図31Aの実線で示す高周波電流は、信号源14から電子回路配線基板300の表側の信号線路パターン32を通って、負荷回路15に至る。このとき、信号線路パターン32に沿って平行に配置された延長用のグランドパターン34A及び34Bによって対地アドミタンスを均等に分布させることができるので、当該信号線路パターン32の特性インピーダンスを安定化することができる(コプレナー型の配線基板の機能)。
【0185】
負荷回路15からの帰還電流は第2の実施形態と同様にして、電子回路配線基板300の表側のグランドパターン31Cからバイアホール33Bを通って電子回路配線基板300の裏側に抜ける。そこからさらに電子回路配線基板300の裏側のグランドパターン31Bを通ってバイアホール33Aに至る。更にバイアホール33Aから電子回路配線基板300の表側のグランドパターン31Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると平面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、第1のループLp1からの放射と第2のループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0186】
この例では延長用のグランドパターン34A及び34Bを設ける場合であっても、図31Aに示す電子回路配線基板300の部品実装面左側で発生する電磁波の大きさと、当基板300の部品実装面右側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは延長用のグランドパターン34A及び34Bの有無に係わらず、電子回路配線基板300のバイアホール33A,33Bの左右で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するためである。
【0187】
また、図31Aに示す信号源14からバイアホール33A,33Bを経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、延長用のグランドパターン34A及び34Bを設ける場合であっても、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、電子回路配線基板300の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板300からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0188】
つまり、信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Bで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明した通りである。
【0189】
図31Bは延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300における電磁波相殺効果の測定例を示す概念図である。図31Bにおいて、電子回路配線基板300から放射される電磁波は、受信用のアンテナ付きの電磁波測定装置400によって測定される。
【0190】
図31Bに示す電子回路配線基板300によれば、延長用のグランドパターン34A及び34Bを設けた場合であっても、ループLp1を流れる電流の方向と、ループLp2を流れる電流の方向とが反対向きになっている。このため、ループLp1とループLp2から発生する磁束の方向も反対向きになる。この例で、ループLp1を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の裏から表へ向かっている(○に・印で示す)。ループLp2を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の表面から裏面に向かっている(○に×印で示す)。
【0191】
従って、当該電子回路配線基板300のループLp1とループLp2から発生する電磁波の位相が反対になるため、遠方に置かれた電磁波測定装置400のアンテナ401に誘起する起電圧または起電流は、大きさが等しく極性が反対になり、互いに打ち消し合って零になる。または著しく減衰する。このように遠方に置かれたアンテナ401に誘起する起電圧または起電流が零、または著しく減衰することは、遠方に置かれた携帯電話機等の電子機器に生じる起電圧または起電流が零、または著しく減衰することと等価である。この電磁波を相殺する配線パターン構成は、この配線パターンの外部から到来する電磁波(ノイズ源)により誘起される起電圧または起電流に対して相殺する効果もある。
【0192】
図32は延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。図32に示す電子回路配線基板300は基板本体を省略している。
【0193】
この例でも、ループ間距離Lが外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下になるように設定されて成る。このようにすると、当該電子部品回路基板300に到来する波長λの電磁波を相殺することができる。
【0194】
図32において、携帯電話機や、高周波発生装置等を送信用のアンテナ付きのノイズ発生装置500としたとき、このノイズ発生装置500のアンテナ501から放射される電磁波は、通常の電子回路配線基板300に対して何らかの影響を与える。しかし、本発明方式の電子回路配線基板300によれば、図32に示した電磁波の放射に関して、送信用のアンテナ501と図31Bに示した受信用のアンテナ401とを条件を逆にした場合であっても、空間減衰特性が変わらない。この電子回路配線基板300では外部からの電磁波による妨害を相殺するためである。
【0195】
つまり、図32に示すノイズ発生装置500のアンテナ501から到来する電磁波によりループLp1に誘起する起電圧または起電流は、ループLp2に誘起する起電圧または起電流と大きさが等しく極性が反転している。このため、ループLp1に誘起する起電圧または起電流とループLp2に誘起する起電圧または起電流とが相殺する。これにより、微小信号源14からの伝送信号をノイズの影響を受けることなく負荷回路15へ伝達することができる(EMS効果;電磁妨害排除能力)。
【0196】
図33は延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300に係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。図33に示すe1はループLp1に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。e2はループLp2に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。vは図5に示した信号源14による微小信号電圧である。これらの外来ノイズ源は信号源14に直列に接続された回路構成の場合と等価になる。このループLp1に発生する電圧e1等とループLp2に発生する電圧e2等が相殺される(EMS効果)。
【0197】
この結果、負荷回路15に現れるのは微小信号電圧vのみとなり、外来ノイズの影響を排除することができる。この効果は外来ノイズが連続の電磁波でなく、例えば、電源遮断時に生じるパルス電磁波や雷放電、静電気放電(ESD)等の不連続な電磁波であっても同様にして得られる。この例では、ループ間距離Lが外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下、かつ、基板本体40の厚さの2倍以上になるように設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板300に到来する波長λの電磁波を相殺することができる。
【0198】
このようにして、本発明に係る第3の実施形態としての電子回路配線基板300によれば、グランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置され、かつ、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されて構成されるものである。
【0199】
従って、延長用のグランドパターン34A及び34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であっても、当該電子回路配線基板300からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0200】
[第1の実施例]
図34は本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板301の構成例を示す上面図である。
この実施例では信号線路パターン32の特性インピーダンスを安定させるために、延長用のグラウンドパターンを所定のバイアホールに接続し、コプレナー型の配線基板に類似した構造を採っている。また、電磁波を相殺するパターン(以下電磁波相殺パターンともいう)を8字ループで構成するばかりでなく、図34に示すように、信号線路パターン32の左側上部の第1のループLp1の面積S1と、右側上部の第2のループLp2の面積S2の和と、信号線路パターン32の中央下部の第3のループLp3の面積S3が等しく(S3=S1+S2)なるように電磁波相殺パターンを構成するようにしたものである。
【0201】
図34に示すプリント配線基板301はプリント配線基板を構成し、この基板301によれば、基板本体40の一方の面(上側;表側)に信号源14及び負荷回路15が共に配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には4個(偶数)個のバイアホール33A,33B、33C,33Dが設けられる。バイアホール33A及び33Bは基板本体40の他方の面(下側;裏面)でグランドパターン31Bにより接続されている。同様にして、バイアホール33C及び33Dは基板本体40の裏面でグランドパターン31Dにより接続されている。
【0202】
この例ではグランドパターン31Eにはバイアホール33Dから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。更に、グランドパターン31Cにはバイアホール33Cから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Cが配置されている。
【0203】
この例では、信号源14から最初のバイアホール33Aに至るグランドパターン31Aと、グランドパターン31Bの一部と、信号線路パターン32とによって第1のループLp1が構成される。ループLp1のループ面積はS1である。また、残りのグランドパターン31Bと、バイアホール33Bから次のバイアホール33Cに至るグランドパターン31Cと、グランドパターン31Dの一部と、信号線路パターン32とによって第2のループLp2が構成される。ループLp2のループ面積はS2である。更に、残りのグランドパターン31Dと、バイアホール33Dから負荷回路15に至るグランドパターン31Eと信号線路パターン32とによって第3のループLp3が構成される。ループLp3のループ面積はS3である。
【0204】
この例で、信号線路パターン32の左側上部のループLp1のループ面積S1と、右側上部のループLp2のループ面積S2の和と、信号線路パターン32の中央下部のループLp3のループ面積S3が等しく(S3=S1+S2)なるようにバイアホール33Aから33Dの位置が決定される。
【0205】
従って、延長用のグランドパターン34A及び34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、信号線路パターン32の左側のループLp1と右側のループLp2で発生する電磁波の大きさが同じで位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。
【0206】
[第2の実施例]
図35は本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板302の構成例を示す上面図である。
この実施例では信号線路パターン32の特性インピーダンスを安定させるために、延長用のグラウンドパターンをバイアホールに接続し、コプレナー型の配線基板に類似した構造を採っている。また、電磁波相殺パターンを8字ループで構成するばかりでなく、図35に示すように、信号線路パターン32の左側のループLp1とそれと隣り会う右側のループLp2の面積S1,S2が夫々等しくなるように構成し、更に、隣り会う右側の2つのループLp3、Lp4の面積S3,S4が夫々等しくなるように構成してもよい。
【0207】
図35に示すプリント配線基板302はプリント配線基板を構成し、この基板302によれば、基板本体40の一方の面(上側;表側)に信号源14及び負荷回路15が共に配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には6個(偶数)個のバイアホール33A,33B,33C,33D,33E,33Fが設けられる。バイアホール33A及び33Bは基板本体40の他方の面(下側;裏面)でグランドパターン31Bにより接続されている。同様にして、バイアホール33C及び33Dは基板本体40の裏面でグランドパターン31Dにより接続され、バイアホール33E及び33Fは基板本体40の裏面でグランドパターン31Fにより接続されている。
【0208】
この例ではグランドパターン31Eにはバイアホール33Dから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。更に、グランドパターン31Eにはバイアホール33Eから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Cが配置されている。また、グランドパターン31Gにはバイアホール33Fから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Dが配置されている。
【0209】
この例では、信号源14から最初のバイアホール33Aに至るグランドパターン31Aと、グランドパターン31Bの一部と、信号線路パターン32とによって第1のループLp1が構成される。ループLp1のループ面積はS1である。また、残りのグランドパターン31Bと、バイアホール33Bから次のバイアホール33Cに至るグランドパターン31Cと、グランドパターン31Dの一部と、信号線路パターン32とによって第2のループLp2が構成される。ループLp2のループ面積はS2である。
【0210】
更に、残りのグランドパターン31Dと、バイアホール33Dから次のバイアホール33Eに至るグランドパターン31Eと、グランドパターン31Fの一部と信号線路パターン32とによって第3のループLp3が構成される。ループLp3のループ面積はS3である。また、残りのグランドパターン31Fと、バイアホール33Dから負荷回路15に至るグランドパターン31Eと、信号線路パターン32とによって第4のループLp4が構成される。ループLp4のループ面積はS4である。
【0211】
この例で、信号線路パターン32の左側のループLp1とそれと隣り会う右側のループLp2の面積S1,S2が夫々等しくなるようにバイアホール33A、33B、33C,33Dの位置が決定され、更に、隣り会う右側の2つのループLp3、Lp4の面積S3,S4が夫々等しくなるようにバイアホール33E、33Fの位置が決定されるものである。
【0212】
従って、延長用のグランドパターン34A〜34Dによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、信号線路パターン32の左側のループLp1と右側のループLp2で発生する電磁波の大きさが同じで位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。同様にして、信号線路パターン32の更に右側のループLp3とその右側のループLp4で発生する電磁波の大きさが同じで位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。なお、ループの設置数は4個に限られることはなく、多数のループで信号線路パターン12を構成してもよい。
【0213】
[第3の実施例]
図36は本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板303の構成例を示す上面図である。
この実施例では第2の実施形態で説明した信号線路パターン32がバイアホール33A,33Bを基準にしてループ間で配線角度θを有して配置される電磁波相殺パターンに延長用のグランドパターンが接続されるものである。つまり、電磁波を相殺する関係にある2対のループが直線状にない場合である。第1のループLp1と第2のループLp2が直線上に位置していないが、2対のループ面積S1,S2が同じで、ループ電流の方向が反対で大きさが等しくなる場合は相殺の効果が生じる。
【0214】
図36に示すプリント配線基板303は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板303は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
【0215】
配線角度θは信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。この配線角度θは5°<θ<355°の範囲であれば電磁波相殺効果が得られる。配線角度θ=180°で信号源14と負荷回路15とが直線上に並ぶ関係を有している。
【0216】
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図36に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0217】
この例ではグランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0218】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0219】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0220】
従って、図36に示した配線角度θを有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A〜34Dによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0221】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、配線角度θを有する場合であっても、当該プリント配線基板303からの電磁波の放射を防止できるようになる。他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0222】
[第4の実施例]
図37は本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板304の構成例を示す上面図である。
この実施例では電磁波相殺パターンに延長用のグランドパターンが接続され、信号源14から負荷回路15へ至る部分であって、2個単位の導電用のバイアホール33A,33Bが基板本体40上の信号線路パターン32を挟んで2組以上設けられ、この信号線路パターン32はバイアホール33A,33B、33C,33D、33E,33F等を通して信号線路パターン32の左右交互に配置される。
【0223】
そして、信号源14から負荷回路15に至る部分でバイアホール33A,33B等によって仕切られるグランドパターン31A,31C,31E,31G及び信号線路パターン32で構成されるループ面積が当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。つまり、第1のループLp1〜第4のループLp4が直線上に位置していないが、相殺の関係にある2対のループLp1、Lp2と、ループLp3、Lp4は夫々面積が同一で、ループ電流の方向が反対、かつ大きさが等しくなる場合は、相殺効果が生じる。
【0224】
図37に示すプリント配線基板304は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板304は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個を単位として3組有している。
【0225】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、複数の配線角度θ1,θ2,θ3を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。配線角度θ1は信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ第1の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第1の線分からバイアホール33Cとバイアホール33Dと結ぶ第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。
【0226】
配線角度θ2はこの第1の線分から第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第2の線分からバイアホール33Eとバイアホール33Fと結ぶ第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。配線角度θ3はこの第2の線分から第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第3の線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。配線角度θ1,θ2,θ3の各々は5°から355°の間がよい。
【0227】
このような信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が曲線を描くようにして配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A〜33Fを通じてグランドパターン31A〜31Gにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図37に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0228】
同様にして、グランドパターン31Dは基板本体40の裏面でバイアホール33Cとバイアホール33Dとを接続するようになされる。グランドパターン31Fは基板本体40の裏面でバイアホール33Eとバイアホール33Fとを接続するようになされる。
【0229】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31Aは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Cに至る。
【0230】
このグランドパターン31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Cを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Dによって、バイアホール33Cとバイアホール33Dとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Dを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Eに至る。
【0231】
このグランドパターン31Eは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Eを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Fによって、バイアホール33Eとバイアホール33Fとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Fを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Gに至り更に負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0232】
この例ではグランドパターン31Eにはバイアホール33Dから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。更に、グランドパターン31Eにはバイアホール33Eから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Cが配置されている。また、グランドパターン31Gにはバイアホール33Fから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Dが配置されている。
【0233】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及びグランドパターン31Dの一部と信号線路パターン32とで構成される第2のループのループ面積S2と、残りのグランドパターン31Dとバイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及びグランドパターン31Fの一部と信号線路パターン32とで構成される第3のループ面積S3と、残りのグランドパターン31Fとバイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Gと信号線路パターン32とで構成される第4のループのループ面積S4とが当該基板本体40の部品実装面で、例えば、S1=S2=S3=S4等のように夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A〜33Fの位置が決定されて成るものである。
【0234】
従って、図37に示した複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A〜34Dによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成されるループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成されるループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0235】
また、バイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及び信号線路パターン32で構成されるループLp3により発生する電磁波と、バイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31G及び信号線路パターン32で構成されるループLp4により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0236】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、当該プリント配線基板304からの電磁波の放射を防止できるようになる。第3の実施例に比べて他の電子部品を大きく迂回するような用途に利用できる。
【0237】
[第5の実施例]
図38は本発明に係る第5の実施例としてのプリント配線基板305の構成例を示す上面図である。
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターンやグランドパターンが上向き及び下向き円弧状に配置される電磁波相殺パターンに対して、延長用のグランドパターンが接続されて構成されるものである。つまり、2対のループLp1、Lp2を構成する電磁波相殺パターン(プリントパターン)が直線状に無い場合である。
【0238】
この電磁波相殺パターンが直線状にない場合であっても、2対のループLp1、Lp2を構成する電磁波相殺パターンの中心に対して、2対のループLp1、Lp2が点対称の関係にあれば相殺の効果が生じる。もっとも、隣接するループの面積は夫々等しくなくてはならない。また、隣り会う2つのループが点対称の関係になくても、夫々のループLp1、Lp2の面積が等しく、各ループLp1、Lp2の配線角度θが5°〜355°の間にあれば相殺効果が生じる。
【0239】
図38に示すプリント配線基板305は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板305は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。
【0240】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には上向き及び下向き円弧状の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A’,31B’,31C’により接続されて構成されている。グランドパターン31B’は図38に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0241】
この基板本体40の表面における上向き円弧状のグランドパターン31A’は上向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置され、このバイアホール33Aとバイアホール33Bとを結ぶ線分から反転する、下向き円弧状のグランドパターン31C’は下向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置される。そして、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0242】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及びグランドパターン31B’の一部と信号線路パターン32’とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31B’とバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C’と信号線路パターン32’とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0243】
従って、図38に示した信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31C’が円弧状を有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A’,34D’によるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び信号線路パターン32’で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C’及び信号線路パターン32’で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0244】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31Cを円弧状に配置する場合であっても、当該プリント配線基板305からの電磁波の放射を防止できるようになる。第2〜第4の実施例と同様にして他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0245】
[第6の実施例]
図39Aは本発明に係る第6の実施例としての高周波回路配線基板306の構成例を示す上面図である。図39Bはその断面の構成例を示すZ11−Z21矢視断面図である。
【0246】
図39Aに示す高周波回路配線基板306はプリント配線基板303を応用したものであり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。
【0247】
高周波回路配線基板306は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図40Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。この基板本体40の部品実装面には信号源の一例となる送信回路用IC14’が配置されている。この送信回路用IC14’から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路の一例となる受信回路用IC15’が配置されている。
【0248】
配線角度θは送信回路用IC14’からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この線分から受信回路用IC15’に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。この配線角度θは5°<θ<355°の範囲であれば電磁波相殺効果が得られる。
配線角度θ=180°で送信回路用IC14’と受信回路用IC15’とが直線上に並ぶ関係を有している。
【0249】
この送信回路用IC14’から受信回路用IC15’へ至る部品実装面には信号線路パターン32が配線される。この送信回路用IC14’と受信回路用IC15’とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図40Aに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0250】
この例ではグランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0251】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、送信回路用IC14’からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り受信回路用IC15’へ至る部分に配線される。
【0252】
この例で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0253】
この例では送信回路用IC14’からの高周波信号はインピーダンスコントロールされた、コプレナー構造類似の信号線路パターン32で受信回路用IC15’に伝送される。一方、受信回路用IC15’からの帰還電流はグラウンドパターン31C,31B,31Aを通って送信回路用IC14’に戻る。この一連の信号の流れが一筆書きの8字ループを構成する。
【0254】
従って、図40Aに示した配線角度θを有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A、34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。または著しく減衰する。
【0255】
これにより、基板本体40の部品実装面に送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’を共に配置する場合であって、配線角度θを有する場合であっても、当該高周波回路配線基板306からの電磁波の放射を防止できるようになる。
他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0256】
[第7の実施例]
図40Aは本発明に係る第7の実施例としての高周波回路配線基板307の構成例を示す上面図である。図40Bはその断面の構成例を示すZ12−Z22矢視断面図である。
この実施例では第6の実施例で説明した高周波回路配線基板306に比べて、例えば、送信回路用IC14’のグランド(GND)ピンの位置が信号ピンから離れて配置されている場合である。こうした場合、信号線路パターン32とグラウンドパターン31A’で構成されるループ面積が第6の実施例に比べて大きくなってしまうので、この面積の増加に対応する分の面積を隣接するループでも確保するようにしたものである。
【0257】
図40Aに示す高周波回路配線基板307はプリント配線基板303を応用したものであり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。
【0258】
高周波回路配線基板307は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図40Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。この基板本体40の部品実装面には信号源の一例となる送信回路用IC14’が配置されている。この送信回路用IC14’から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路の一例となる受信回路用IC15’が配置されている。
【0259】
この送信回路用IC14’から受信回路用IC15’へ至る部品実装面には第6の実施例と同様にして信号線路パターン32が配線される。この送信回路用IC14’と受信回路用IC15’とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A’,31B,31C’により接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図24Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0260】
このグランドパターン31A’は送信回路用IC14’のグランドピンに接続されている。このグランドパターン31A’は第6の実施例のグランドパターン31Aに比べて迂回パターンαを含むものである。また、グランドパターン31C’は受信回路用IC15’のグランドピンに接続されている。このグランドパターン31C’は第6の実施例のグランドパターン31Cに比べて迂回パターンαを含むものである。
【0261】
この例ではグランドパターン31A’にはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31C’にはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0262】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A’及び31C’は信号線路パターン32と並行するように配置され、送信回路用IC14’からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り受信回路用IC15’へ至る部分に配線される。
【0263】
この例で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分の迂回パターンαを含むグランドパターン31A’及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分の迂回パターンαを含むグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0264】
この例では送信回路用IC14’からの高周波信号はインピーダンスコントロールされた、コプレナー構造類似の信号線路パターン32で受信回路用IC15’に伝送される。一方、受信回路用IC15’からの帰還電流はグラウンドパターン31C’,31B,31A’を通って送信回路用IC14’に戻る。この一連の信号の流れが一筆書きの8字ループを構成する。
【0265】
従って、図40Aに示した迂回パターンαや配線角度θ等を有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A、34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分のグランドパターン31C’及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。または著しく減衰する。
【0266】
これにより、基板本体40の部品実装面に送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’を共に配置する場合であって、送信回路用IC14’のグランド(GND)ピンが信号ピンから離れた位置に配置される場合であっても、当該高周波回路配線基板307からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0267】
上述した各実施例では片面銅箔又は両面銅箔基板を適用して電磁波相殺パターンを構成する場合について説明したが、これに限られることはなく、多層基板を使用して電子回路配線基板を構成する場合も本発明を充分応用することができる。
【0268】
また、本発明によれば、上述した他に以下のような効果が得られる。
▲1▼ 本発明を実施するに当たり、特別な部品を使用しないので部品コストがかからない。
▲2▼ 基板本体40のパターン面積使用効率が従来方式のように片面に配線回路パターンを構成する場合と比較してとほとんど変わらない。
▲3▼ もちろん、本発明に係る電子回路配線基板に関して従来方式のような電波吸収体を併用することができる。
▲4▼ 本発明に係る電子回路配線方法によれば、高周波信号を伝送するプリント配線基板を内装するあらゆる電子機器であって、その信号線路パターンを含む基板本体40からの電磁波放射を減少させる必要がある電子機器に応用することができる。
【0269】
▲5▼ また、本発明に係る電子回路配線方法によれば、半導体集積回路内部の回路配線において、高周波信号を伝送する配線パターンからの電磁波放射を減少させる必要がある半導体集積回路装置に応用することができる。
▲6▼ 微小信号線路パターンを有する電子回路配線基板において、信号線路外(基板外)からの電磁波による誘導電圧や誘導電流を排除する必要がある場合に応用できる。
▲7▼ また、微小信号線路パターンを有する半導体集積回路内部の回路配線において、信号線路外(集積回路外)からの電磁波による誘導電圧や誘導電流を排除する必要がある場合に応用できる。
【0270】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る第1の電子回路配線基板によれば、中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板の一方の面に配置された信号源から、この基板の開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路を備え、この開口部の位置は信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0271】
この構成によって、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できる。
【0272】
本発明に係る第1の電子回路配線方法によれば、回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合であって、回路配線基板の中間層に信号帰還用の第1の導電路を形成すると共に、この回路配線基板における信号源と負荷回路との間の所定位置に開口部を形成し、この信号源から開口部を通って負荷回路に至る信号伝送用の第2の導電路を形成するに当り、この信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされる。
【0273】
この構成によって、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できる。
【0274】
本発明に係る第2の電子回路配線基板によれば、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板を備え、この部品実装面には信号源が配置されると共に、この信号源から所定距離を置いて負荷回路が配置され、信号帰還用の第2の導電路は信号伝送用の第1の導電路と並行するように配置されている。しかも、この第2の導電路が信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に配線され、この開口部の位置は、信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0275】
この構成によって、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0276】
本発明に係る第2の電子回路配線方法によれば、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合に、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成すると共に、当該第2の導電路を第1の導電路と並行するように形成するに当たって、この信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされる。
【0277】
この構成によって、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0278】
この発明は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施形態としての電子回路配線基板100の構成例を示す斜視図である。
【図2】電子回路配線基板100の断面の構成例を示す図である。
【図3】電子回路配線基板100の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
【図4】電子回路配線基板100における相殺効果確認時の電磁波測定例を示す概念図である。
【図5】電子回路配線基板100における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。
【図6】電磁波相殺パターンに係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。
【図7】A〜Cは電子回路配線基板100の形成例(その1)を示す工程図である。
【図8】A〜Cは電子回路配線基板100の形成例(その2)を示す工程図である。
【図9】本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板101の断面の構成例を示す概念図である。
【図10】本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板102の断面の構成例を示す概念図である。
【図11】ループ間距離Lと電磁波相殺上限周波数との関係例を示す表図である。
【図12】本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板103の構成例を示す斜視図である。
【図13】プリント配線基板103の断面の構成例を示す図である。
【図14】プリント配線基板103の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
【図15】A及びBは本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板104の構成例を示す上面図及びそのX1−X2矢視断面図である。
【図16】A及びBは高周波回路配線基板105の構成例を示す上面図及びそのX11−X21矢視断面図である。
【図17】A及びBは送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の配置例及び、ループ間距離Lの測定例を示す概念図である。
【図18】A〜Cはプリント配線基板106の形成例(その1)を示す工程図である。
【図19】A〜Cはプリント配線基板106の形成例(その2)を示す工程図である。
【図20】A及びBは上述した第1の実施形態に係る電磁波相殺シミュレーションモデル例を示すイメージ図である。
【図21】A及びBは電磁波相殺シミュレーション比較モデル例を示すイメージ図である。
【図22】電磁波相殺シミュレーション時の電磁波測定例を示すイメージ図である。
【図23】Aは本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線基板200の構成例を示す上面図及び、Bはその断面の構成例を示すY1−Y2矢視断面図である。
【図24】Aは電子回路配線基板200における電磁波相殺機能例を示すイメージ図、Bは電磁波相殺効果の測定例を示す概念図である。
【図25】Aは本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板201の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すY12−Y22矢視断面図である。
【図26】プリント配線基板201における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
【図27】本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板202の構成例を示す上面図である。
【図28】本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板203の構成例を示す上面図である。
【図29】本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板204の構成例を示す上面図である。
【図30】Aは本発明に係る第3の実施形態としての電子部品回路基板300の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すZ1−Z2矢視断面図である。
【図31】Aは電子回路配線基板300における電磁波相殺機能例を示すイメージ図、Bは電磁波相殺効果の測定例を示す概念図である。
【図32】延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。
【図33】延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300に係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。
【図34】本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板301の構成例を示す上面図である。
【図35】本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板302の構成例を示す上面図である。
【図36】本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板303の構成例を示す上面図である。
【図37】本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板304の構成例を示す上面図である。
【図38】本発明に係る第5の実施例としてのプリント配線基板305の構成例を示す上面図である。
【図39】Aは本発明に係る第6の実施例としての高周波回路配線基板306の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すZ11−Z21矢視断面図である。
【図40】Aは本発明に係る第7の実施例としての高周波回路配線基板307の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すZ12−Z22矢視断面図である。
【図41】Aは従来例に係るコプレナー構造の電子回路配線基板10の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すA11−A21矢視断面図である。
【符号の説明】
11・・・第1の導電路、11A・・・ベタグランド層(第1の導電路)、12・・・第2の導電路(信号線路パターン)、13・・・バイアホール(開口部)、14・・・信号源、15・・・負荷回路、14’・・・送信回路用IC(信号源)、15’・・・受信回路用IC(負荷回路)、20,40・・・基板本体、31・・・第2の導電路、31A〜31G・・・グランドパターン、32・・・第1の導電路(信号線路パターン)、33A〜33F・・・バイアホール(開口部)、34A〜34D・・・延長用のグランドパターン(補助導電路)、100,200,300・・・電子回路配線基板、101〜104,201〜204,301〜305・・・プリント配線基板、105,306,307・・・高周波回路配線基板
【発明の属する技術分野】
本発明は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適な電子回路配線基板及び電子回路配線方法に関するものである。
【0002】
詳しくは、プリント配線基板等の回路配線基板の一方の面に配置された信号源から、この基板の所定位置の開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の導電路を備え、この信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように導電用の開口部の位置を決定して、信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺できるようにすると共に、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようにしたものである。
【0003】
【従来の技術】
近年、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置において、信号源や負荷回路を実装したプリント配線基板が使用されている。この種のプリント配線基板に設けられる信号線路は、通常、信号源から負荷回路までの信号線路パターンがグラウンド層または電源層の片側に形成され、かつ、配線パターンが一信号に付き1本である場合が多い。
【0004】
例えば、信号源から負荷回路までの信号線路パターンがグラウンド層または電源層の隣の層にマイクロストリップラインと呼ばれる配線構造を採用した信号線路や、同一層に構成され、信号線路パターンの両側にグラウンドパターンを併設したコプレナーと呼ばれる配線構造を採用した信号線路もある。また、信号線路に隣接する上下層にグラウンドパターンを配置したストリップライン配線構造も採用される場合が多い。
【0005】
これらの信号線路によれば、グラウンド層または電源層等の信号線路パターンから電磁波が発生し遠方に伝達してしまう電磁波不要輻射の問題が生じている。この問題を解決するため、現状では以下のような対策が取られている。
【0006】
▲1▼ プリント配線基板で信号線路を構成する配線パターンの長さを可及的に短くする。
▲2▼ 信号源の電圧及び信号線路に流れる電流の値を小さくする。
▲3▼ プリント配線基板に電磁シールドを施す。
▲4▼ 信号線路パターンの近傍に電波吸収体を配置する。
▲5▼ 本来の信号線路に近接して位相を反転させた信号を伝送する信号線路を設ける(特許文献1に記載の電子回路)。
▲6▼ 本来の信号線路と長さが等しい他の信号線路を当該信号線路を跨いだ反対側に設ける(特許文献2に記載の電子回路配線基板)。
▲7▼ 信号源の高周波成分を減衰させる(俗な表現で言うと波形をなまらせる)。
▲8▼ 信号線の伝送路及びその帰還路をツイストペア信号線路類似のパターン構成にする(特許文献3に記載のプリント回路基板及び、その基板上の導電性トレースからの無線周波妨害放射を減少させる方法)。
【0007】
図41Aは従来例に係るコプレナー構造の電子回路配線基板10の構成例を示す上面図である。図41Bはその断面の構成例を示すA11−A21矢視断面図である。図41Aに示すコプレナー構造の電子回路配線基板10は、インピーダンスコントロールが可能で、高速信号の伝送に優れるものである。電子回路配線基板10は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、この部品実装面、つまり、図41Bに示す基板本体40上には信号源14及び負荷回路15が配置されている。
【0008】
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号伝送用の信号線路パターン2が配線され、この負荷回路15から信号源14へ至る部品実装面には信号帰還用のグランドパターン1が各々配線される。この信号線路パターン2に沿うように、コプレナーパターン3が配置(形成)されている。コプレナーパターン3は信号線路パターン2の対地アドミタンスを均等に分布させることができるので、当該信号線路パターン32の特性インピーダンスが安定する。
【0009】
【特許文献1】
実開平5−57939号公報
【特許文献2】
特開2000−261112号
【特許文献3】
特願2001−273503号
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来例に係る回路配線基板によれば、次のような問題がある。
▲1▼ 信号線路を構成する配線パターンの長さを可及的に短くする対策は、設計者にとって多大な負担となる。また、電子部品の配置によっては、配線パターンを短くできない場合もある。
▲2▼ 信号源の電圧、電流の値を小さくする対策は信号対雑音比を小さくしてしまう。感度低下につながる。
▲3▼ プリント配線基板に電磁シールドを施す対策は、コストアップにつながる。また、機器の小型化の妨げになる。
▲4▼ 電波吸収体を信号線路パターンの近傍に配置する対策は、技術的に難しく、コストアップにつながる。また、電磁波吸収効果が不安定で、ばらつきがある。電子機器の小型化の妨げになる。この電磁波吸収体を使用する場合は、該吸収体が配置される位置、方向、吸収体の大きさ、吸収体材料の特性変化等により電磁波の吸収レベルが変動して不安定要因になる。
▲5▼ 本来の信号線路に近接して位相を反転させた信号を伝送する信号線路を設ける対策は、回路配線基板面積の有効利用率の低下をまねく。また、能動部品を使用した電子回路が必要になるため、技術的に難しく、コストアップにつながる。電子機器の小型化の妨げになる。
【0011】
▲6▼ 信号線路と反対方向に当該信号線路と長さが等しい他の信号線路を設ける対策は、回路配線基板面積の有効利用率の低下をまねく。また、回路配線基板が著しく大きくなるため、製品の小型化が難しくなる。技術的に難しく、コストアップにつながる。
▲7▼ 信号源の高周波成分を減衰させる対策は、次段以降の電子回路の動作を不安定にする原因となる。
▲8▼ 信号線の伝送路及びその帰還路をツイストペア信号線路類似のパターン構成にする対策は、バイアホールの設置数が著しく多くなり、コストが上昇する。
また、当該信号線路周囲のプリントパターンや電子部品等の影響で信号線路の特性インピーダンスが不安定になる。
【0012】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、信号源と負荷回路とを結ぶ信号伝送用の導電路と信号帰還用の導電路の配置を工夫して当該基板からの電磁波の放射を防止できるようにした電子回路配線基板及び電子回路配線方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題は、中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板と、この回路配線基板の一方の面に配置された信号源と、回路配線基板の他方の面に配置された負荷回路と、信号源から開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路とを備え、開口部の位置は信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とする電子回路配線基板によって解決される。
【0014】
本発明に係る第1の電子回路配線基板によれば、中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板の一方の面に信号源が配置され、この回路配線基板の他方の面には負荷回路が配置されている。この第1の導電路には、例えば、ベタグラウンド層又はベタ電源層が使用される。また、ループ間距離は例えば、信号源から負荷回路へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、回路配線基板の厚さの2倍以上になるように設定される。
【0015】
この信号源から開口部を通って負荷回路に至る部分には信号伝送用の第2の導電路が配線される。開口部の位置は信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0016】
従って、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0017】
本発明に係る第1の電子回路配線方法は、回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する方法であって、回路配線基板の中間層に信号帰還用の第1の導電路を形成すると共に、回路配線基板における信号源と負荷回路との間の所定位置に開口部を形成し、信号源から開口部を通って負荷回路に至る信号伝送用の第2の導電路を形成するに当たって、この信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る第1の電子回路配線方法によれば、回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合に、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0019】
本発明に係る第2の電子回路配線基板は、部品実装面を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板と、この回路配線基板の部品実装面に配置された信号源と、この信号源から所定距離を置いて部品実装面に配置された負荷回路と、信号源から負荷回路へ至る部品実装面に配線された信号伝送用の第1の導電路と、信号源と負荷回路とを開口部を通じて接続する信号帰還用の第2の導電路とを備え、第2の導電路は第1の導電路と並行するように配置され、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に配線され、開口部の位置は信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る第2の電子回路配線基板によれば、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板の部品実装面には信号源が配置されると共に、この信号源から所定距離を置いて負荷回路が配置されている。信号帰還用の第2の導電路は信号伝送用の第1の導電路と並行するように配置されている。しかも、この第2の導電路が信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に配線される。この開口部の位置は、信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0021】
従って、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0022】
本発明に係る第2の電子回路配線方法は、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する方法であって、回路配線基板の部品実装面に信号伝送用の第1の導電路を形成すると共に、当該回路配線基板における信号源と負荷回路との間の所定位置に2個単位に導電用の開口部を形成し、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成すると共に、当該第2の導電路を第1の導電路と並行するように形成するに当たって、信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る第2の電子回路配線方法によれば、予め決定された特定位置の開口部を使用して、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成するようになされる。
【0024】
従って、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合であって、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明に係る電子回路配線基板及び電子回路配線方法の一実施の形態について、図面を参照しながら説明をする。
(1)第1の実施形態
図1は本発明に係る第1の実施形態としての電子回路配線基板100の構成例を示す斜視図である。
この実施形態では回路配線基板の一方の面に配置された信号源から、この基板の所定位置の開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の導電路を備える。この信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように導電用の開口部の位置を決定する。
【0026】
そして、信号源から開口部に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の信号伝送用及び信号帰路用の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺できるようにすると共に、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できるようにしたものである。
【0027】
図1に示す電子回路配線基板100は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。電子回路配線基板100は中間層に信号帰還用の第1の導電路11を有している。この第1の導電路11はベタグランド層又はベタ電源層から構成される。
【0028】
この第1の導電路11は所定の厚みを有した銅箔から構成される。図1において第1の導電路11の表裏の絶縁物の記載を省略している。この第1の導電路11の所定位置には導電用の開口部(以下バイアホールという)13を有している。この第1の導電路11の一方の面には信号源14が配置され、この第1の導電路11の他方の面には負荷回路15が配置されている。信号源14と負荷回路15との間には信号伝送用の第2の導電路の一例となる信号線路パターン12が配線される。第1の導電路11の表側(上側)の信号源14から、裏側(下側)の負荷回路15へ高周波信号を伝送するためである。
【0029】
図2は電子回路配線基板100の断面の構成例を示す図である。図2に示す電子回路配線基板100の中間層には第1の導電路の一例となるベタグランド層11Aが設けられ、このベタグランド層11Aを通って高周波の帰還電流が流れる。中間層はベタグランド層11Aの代わりにベタの電源層であってもよい。要は、負荷回路15からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けられ(準備され)ていればよい。図中、tは電子回路配線基板100の厚みを示している。
【0030】
図2において、信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には信号線路パターン(プリントパターン)12が配線される。信号線路パターン12は銅箔又は被覆電線等から構成される。この信号源14からの高周波信号は、基板本体20の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通って基板本体20の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り負荷回路15に至る。バイアホール13は表裏を貫通する開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0031】
このバイアホール13の位置は信号源14から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループのループ面積(以下で単にループ面積ともいう)と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の第1及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該基板本体20の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0032】
図3は電子回路配線基板100の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
この実施形態では図3の実線で示す高周波電流は、信号源14から電子回路配線基板100の表側の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通って電子回路配線基板100の裏側に抜ける。そこからさらに電子回路配線基板100の裏側の信号線路パターン12を通って負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は、ベタグランド層11Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると断面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。この8字回路からの電磁波放射は、ループ1から放射される電磁波とループ2から放射される電磁波が遠方の受信アンテナまたは電子機器において相互に干渉する効果として考えることができる。
【0033】
この例では、図3に示す電子回路配線基板100の表側で発生する電磁波の大きさと、当該基板100の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは電子回路配線基板100の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積Sに比例するためである。このループ面積Sは断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。つまり、ループLp1のループ面積はS1であり、ループLp2のループ面積はS2であり、電磁波を相殺するパターンの場合、2つのループLp1、Lp2の関係はS1=S2である。
【0034】
また、図3に示す信号源14からバイアホール13を経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、電子回路配線基板100の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板100からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0035】
つまり、信号源14からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明をする。
【0036】
図4は電子回路配線基板100における相殺効果確認時の電磁波測定例を示す概念図である。図4において、電子回路配線基板100から放射される電磁波は、受信用のアンテナ付きの電磁波測定装置400によって測定される。
【0037】
図4に示す電子回路配線基板100によれば、ループLp1を流れる電流の方向と、ループLp2を流れる電流の方向とが反対向きになっている。このため、ループLp1とループLp2から発生する磁束の方向も反対向きになる。この例で、ループLp1を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の表から裏へ向かっている(○に×印で示す)。ループLp2を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の裏面から表面に向かっている(○に・印で示す)。
【0038】
従って、当該電子回路配線基板100のループLp1とループLp2から発生する電磁波の位相が反対になるため、遠方に置かれた電磁波測定装置400のアンテナ401に誘起する起電圧または起電流は、大きさが等しく極性が反対になり、互いに打ち消し合って零になる。または著しく減衰する。因みに相殺状態で放射された2つの電磁波がアンテナ401または他の電子機器に到達する間に反射、吸収、屈折、回折を複雑に繰り返しても、電磁波の伝達経路はほとんど同じであるため、アンテナ401またはその電子機器に誘起する電圧または電流の大きさが等しく位相が反転していることに変りが無く確実に相殺が起こる。
【0039】
このように遠方に置かれたアンテナ401に誘起する起電圧または起電流が零、または著しく減衰することは、遠方に置かれた携帯電話機等の電子機器に生じる起電圧または起電流が零、または著しく減衰することと等価である。この電磁波を相殺する配線パターン構成は、この配線パターンの外部から到来する電磁波(ノイズ源)により誘起される起電圧または起電流に対して相殺する効果もある。従って、基板本体40、特に開口部の位置が本発明方式に従って構成されている限り、本発明方式の電子回路配線基板100を収納する筐体、その基板付近の配線等による影響を受けないで安定した相殺効果を得ることができる。
【0040】
図5は電子回路配線基板100における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。図5に示す電子回路配線基板100は絶縁物を省略している。図5において、携帯電話機や、高周波発生装置等を送信用のアンテナ付きのノイズ発生装置500としたとき、このノイズ発生装置500のアンテナ501から放射される電磁波は、通常の電子回路配線基板100に対して何らかの影響を与える。しかし、本発明方式の電子回路配線基板100によれば、図4に示した電磁波の放射に関して、送信用のアンテナ501と受信用のアンテナ401との条件を逆にした場合であっても、空間減衰特性が変わらない。この電子回路配線基板100では外部からの電磁波による妨害を相殺するためである。
【0041】
図5でノイズ発生装置500のアンテナ501から到来する電磁波によりループLp1に誘起する起電圧または起電流は、ループLp2に誘起する起電圧または起電流と大きさが等しく極性が反転している。このため、ループLp1に誘起する起電圧または起電流とループLp2に誘起する起電圧または起電流とが相殺する。これにより、微小信号源14からの伝送信号をノイズの影響を受けることなく負荷回路15へ伝達することができる(EMS効果;電磁妨害排除能力)。
【0042】
図6は電磁波相殺パターンに係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。図6に示すe1はループLp1に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。e2はループLp2に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。これらのループLp1、Lp2を受信アンテナとしたとき、各々のループLp1、Lp2の面積をS(S1=S2)とし、ループの巻数をnとし、透磁率をμとし、ループ面に垂直な磁界成分をHnとすると、e1やe2等は、(1)式、すなわち、
e1=−jωμnSHn[V]
e2=−jωμnSHn[V] ・・・・・(1)
で与えられる。vは図5に示した信号源14による微小信号電圧である。これらの外来ノイズ源は信号源14に直列に接続された回路構成の場合と等価になる。
このループLp1に発生する電圧e1等とループLp2に発生する電圧e2等が相殺される(EMS効果)。
【0043】
この結果、負荷回路15に現れるのは微小信号電圧vのみとなり、外来ノイズの影響を排除することができる。この効果は外来ノイズが連続の電磁波でなく、例えば、電源遮断時に生じるパルス電磁波や雷放電、静電気放電(ESD)等の不連続な電磁波であっても同様にして得られる。この例では、ループ間距離Lが外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下、かつ、基板本体20の厚さの2倍以上になるように設定されて成る。
【0044】
ここでループ間距離Lが波長λの1/4以下の場合であって、ループLp1から発生する電磁波による電圧をe1(t)とし、ループLp2から発生する電磁波による電圧をe2(t)としたとき、従来方式では、e1(t)+e2(t)が「1」に近づき、電圧の相殺効果が得られない。本発明方式では、e1(t)+e2(t)が「0」に近づく。よって、当該電子回路配線基板100に到来する波長λの電磁波を相殺できるようになる。
【0045】
続いて、本発明に係る第1の実施形態にとしての電子回路配線方法について、電磁波相殺機能付きの電子回路配線基板100の形成方法について説明をする。
図7及び図8は電子回路配線基板100の形成例(その1、2)を各々示す工程図である。
【0046】
この実施形態では基板埋め込み技術を応用して、電子回路配線基板100の一方の面に信号源14を埋め込み配置し、当該電子回路配線基板100の他方の面に負荷回路15を埋め込み配置して電子回路間を配線する場合を例に挙げる。
【0047】
もちろん、これに限られることはなく、電子回路配線基板100の一方の面に信号源14を配置し、当該電子回路配線基板100の他方の面に負荷回路15を配置して電子回路間を配線するようにしてもよい。前者は後者に比べて基板の薄型が図られ、高密度実装が可能になる。この例では前者について、両面銅箔基板本体20と片面プリント基板21とを張り合わせて電子回路配線基板100を形成する場合を想定する。
【0048】
これらを形成条件にして、図7Aにおいて、両面銅箔を有した基板本体20を準備する。基板本体20は絶縁基板20Cの一方の面に銅箔20Aを有し、かつ、他方の面に銅箔20Bを有している。好ましくは、ベタグランド層11Aに使用する側の銅箔20Aが信号源14を配置する側よりも厚く形成されたものを使用するとよい。中間層となるベタグランド層11Aは信号帰還のみならず電源帰路に使用するためである。
【0049】
次に、信号源14を配置する側の、図7Bに示す銅箔20Bをパターニングして余分な銅箔を除去し前半部分の信号線路パターン12を形成する。この部分の信号線路パターン12は予め決定された開口部(バイアホール)13の形成予定位置まで延在される。この開口部13の形成予定位置は、予めシミュレーション等によって決定される。この開口部13を形成するに当たってのシミュレーション処理では、この信号源14から当該開口部13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、バイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該基板本体20の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるようにバイアホールの位置が決定される。
【0050】
次に、図7Cに示すように基板本体20における信号源14と負荷回路15との間の所定位置に、この例では上述のシュミレーション等により予め求めた形成予定位置にバイアホール用の開口部13を形成する。このとき、信号源14を埋め込み配置するための穴部16を形成する。穴部16は信号源14を埋め込む部分の絶縁物20Cを除去し、ベタグランド層11Aとなる銅箔20Aが露出するようにして形成する。信号源14には高周波信号発生用のICチップ等を想定している。
【0051】
その後、図8Aに示すようにベタグランド層11A(中間層)となる側の開口部13の周囲の銅箔20Aを除去する。そして、銅箔20Aを除去した部分に図示しない他の絶縁物20Dを詰め込む。信号線路パターン12とベタグランド層11Aとが短絡しないようにするためである。この開口部13に絶縁物20Dを詰め込んだ後に上部を平坦化する。そして、負荷回路15を配置するための片面銅箔プリント基板21を準備する。プリント基板21は絶縁基板21Cの一方の面に銅箔21Aを有している。
【0052】
そして、図8Bにおいて、基板本体20と片面銅箔プリント基板21とを貼り付ける。例えば、ベタグランド層11A(中間層)となる銅箔20Aと、片面銅箔プリント基板21の絶縁基板21Cの他方の面(銅箔21Aの非形成面)とを対峙するように、両基板20,21を接着剤を使用して熱厚着する。
【0053】
その後、図8Cに示すようにバイアホール13となる両基板20,21を貫通する開口部13を形成する。このとき、負荷回路15を埋め込み配置するための穴部17を形成する。負荷回路15には高周波変調用のICチップ等を想定している。穴部17は負荷回路15を埋め込む部分の絶縁物21Cを除去し、ベタグランド層11Aとなる銅箔20Aが露出するようにして形成する。これ以降の工程は、例えば、片面銅箔プリント基板21において、負荷回路15を配置する側の銅箔21Aをパターニングして余分な銅箔21Aを除去し後半部分の信号線路パターン12を形成する。
【0054】
そして、開口部13内に図示しない導電性の部材、例えば、銅メッキ又は半田を施す。その後、穴部16に信号源14を埋め込み、穴部17に負荷回路15を各々埋め込み配置して固定する。信号源14や、負荷回路15等とベタグランド層11Aの固定は半田等により接合する。その後、信号源14及び負荷回路15の各々の端子電極を各々の信号線路パターン12に接続する。これにより、図2に示したような信号源14及び負荷回路15が基板本体20に埋め込まれ、しかも、この信号源14からバイアホール13を通って、電子回路配線基板100の表面から裏面に通じて負荷回路15に至る信号線路パターン12を形成することができる。
【0055】
このように、本発明に係る第1の実施形態としての電子回路配線基板及び電子回路配線方法によれば、中間層に信号帰還用のベタグランド層11Aを有し、かつ、所定位置に導電用のバイアホール13を有する電子回路配線基板100の一方の面に信号源14が配置され、この電子回路配線基板100の他方の面には負荷回路15が配置されている。また、ループ間距離Lは例えば、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、基板本体20の厚さtの2倍以上になるように設定される。
【0056】
この信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には信号線路パターン12が配線される。バイアホール13の位置は信号源14からバイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該電子回路配線基板100の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0057】
従って、信号源14からバイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループにより発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、当該電子回路配線基板100からの電磁波の放射を防止できる。
【0058】
[第1の実施例]
図9は本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板101の断面の構成例を示す概念図である。
この実施例では8字ループで電磁波を相殺するパターンを構成する場合に限定されることはなく、プリント配線基板101の表側のループLp1とループLp3の面積の和と、プリント配線基板101の裏側のループLp2の面積が等しくなるようにしてもよい。
【0059】
図9に示すプリント配線基板101はプリント配線基板を構成し、この基板101によれば、ベタグランド層11Aの一方の面(上側;表側)に信号源14及び負荷回路15が共に配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には偶数個のバイアホール(開口部)13A,13B・・・が設けられる。
【0060】
この例では2個のバイアホール13A,13Bが設けられる。信号源14から最初のバイアホール13Aに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp1が構成される。最初のバイアホール13Aから次のバイアホール13Bに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp3が構成される。このバイアホール13Bから負荷回路15に至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp2が構成される。
【0061】
ここでループLP1のループ面積をS1とし、ループLP2のループ面積をS2とし、ループLP3のループ面積をS3とすると、S3はS1+S2なる関係に信号線路パターン12が形成される。このような信号線路パターン12のループ配置であっても、プリント配線基板101の表側のループと基板の裏側のループから放射される電磁波の位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。
【0062】
[第2の実施例]
図10は本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板102の断面の構成例を示す概念図である。
この実施例ではベタグランド層11Aの一方の面(上側;表側)に信号源14を配置し、他方の面(下側;裏側)に負荷回路15が各々配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には奇数個のバイアホール(開口部)13A,B・・・が設けられる。
【0063】
図10に示すプリント配線基板102の例で、3個のバイアホール13A,13B,13Cが設けられる。信号源14から第1バイアホール13Aに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp1が構成される。第1バイアホール13Aから第2バイアホール13Bに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp2が構成される。この第2バイアホール13Bから第3バイアホール13Cに至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp3が構成される。第3バイアホール13Cから負荷回路15に至る信号線路パターン12とベタグランド層11AとによってループLp4が構成される。
【0064】
この例ではプリント配線基板102の表側のループのループ面積とそれと隣り会う裏側のループの面積が夫々等しくなるように構成されている。ここでループLP1のループ面積をS1とし、ループLP2のループ面積をS2とし、ループLP3のループ面積をS3とし、ループLP4のループ面積をS4とすると、プリント配線基板102の表側のループLp1のループ面積S1とそれと隣り会う裏側のループLp2の面積S2が等しくなるように構成され、プリント配線基板102の表側のループLp3のループ面積S3とそれと隣り会う裏側のループLp4の面積S4が等しくなるように構成されている。
【0065】
このような信号線路パターン12のループ配置であっても、プリント配線基板102の表側のループと基板の裏側のループから放射される電磁波の位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。ループの設置数は4個に限られることはなく、多数のループで信号線路パターン12を構成してもよい。
【0066】
この例では、電磁波を相殺する関係にあるループ間距離Lが伝送信号の波長λの1/4を超えると、ループLp1から発生する電磁波の位相と、ループLp2から発生する電磁波の位相の差が270°(3π/2)を超えるため、相殺の効果が無くなり、次第に同相に転じて強め合うことになる。
【0067】
また、ループ間距離Lがグラウンドパターン間の厚みt(距離)の2倍未満になるとループ面積の精度を製造過程で管理することが技術的に困難になるため、ループ間距離Lはグラウンドパターン間の厚みtの2倍以上が望ましい。電磁波を相殺すべき伝送信号の波長λとグラウンドパターン間の厚みからループ間距離Lが定まることによる。
【0068】
従って、本発明方式ではループ間距離Lが伝送信号の波長λの1/4以下において効果を有することになる。また、電磁波を相殺する関係にあるループ間距離Lが電磁波を相殺する伝送信号の波長λの1/4より長くなる場合は、図10で説明した第2の実施例のように、ループ間距離Lが伝送信号の波長λの1/4より短くなるように多数のループで電磁波相殺パターンを構成するようにしてもよい。なお、基板本体40の絶縁層を構成する誘電体の誘電率により電磁波の伝播速度が減少するため、信号の波長または外来妨害電磁波の波長が短縮する。従って、この短縮の割合に応じてループ間距離Lを短縮しなければならない。
【0069】
次に、電磁波相殺パターンによって相殺可能な電磁波の周波数限界について図11を参照しながら説明する。
図11はループ間距離Lと電磁波相殺上限周波数との関係例を示す図表である。この図表は、電磁波を相殺すべき伝送信号の波長λからループ間距離Lを算出したものである。▲1▼条件は、ループ間距離Lに関して基板の比誘電率εrが「1」で、波長短縮率が「1」で伝送信号の1/4波長の場合である。▲2▼はループ間距離Lに関して基板の比誘電率εrが4.8で、波長短縮率が1/√εr=0.456で伝送信号の1/4波長の場合である。▲3▼はループ間距離Lに関して基板の実効比誘電率εeffが3.8で、波長短縮率が1/√εeff=0.513で伝送信号の1/4波長の場合である。
【0070】
この図表において、例えば、電磁波相殺上限周波数が750MHzの場合であって、▲1▼条件の場合には、伝送信号の1/4波長が10.00cmである。これに対して、▲2▼条件の場合には、伝送信号の1/4波長が4.56cmであり、▲3▼条件の場合には、伝送信号の1/4波長が5.13cmである。
【0071】
なお、図11に示す図表によれば、1GHz以下の周波数の電磁波を相殺するため、ループ間距離Lは▲2▼条件の下で3.5cmで足りることが確認された。これを▲3▼条件の場合で求めると、当該プリント配線基板の実効比誘電率が3.8であり、波長短縮率が0.513であり、1GHzの波長λの1/4が7.5cmであることから、波長短縮率を7.5cmに乗じると3.85cmになる。
【0072】
[第3の実施例]
図12は本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板103の構成例を示す斜視図である。
この実施例では第1の導電路がベタグランド層11A及び電源層11Bで構成する場合である。ベタグランド層11A及び電源層11Bは所定の厚みを有した銅箔から構成される。図11においてベタグランド層11A及び電源層11Bの表裏の絶縁物と、ベタグランド層11A及び電源層11B間の絶縁物との記載を省略している。このベタグランド層11A及び電源層11Bの所定位置にはバイアホール(導電用の開口部)13を有している。
【0073】
このベタグランド層11Aの一方の面には信号源14が配置され、このプリント配線基板103の電源層11Bの一方の面には負荷回路15が配置されている。この信号源14と負荷回路15との間は信号伝送用の第2の導電路の一例となる信号線路パターン12によって配線される。プリント配線基板103の表側(上側)の信号源14から、裏側(下側)の負荷回路15に高周波信号を伝送するためである。
【0074】
図13はプリント配線基板103の断面の構成例を示す図である。図13に示すプリント配線基板103の中間層にはベタグランド層11A及び電源層11Bが設けられている。このベタグランド層11Aを通って高周波の帰還電流が流れ、電源層11Bを通じて信号源14及び負荷回路15に電源が供給される。ベタグランド層11Aは電源の帰路となっている。要は、負荷回路15からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けて(準備されて)あればよい。図中、tはプリント配線基板103の厚みを示している。
【0075】
図13において、信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には信号線路パターン12が配線される。信号線路パターン12(プリントパターン)は銅箔又は被覆電線等から構成される。この信号源14からの高周波信号は、プリント配線基板103の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通ってプリント配線基板10の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り負荷回路15に至る。バイアホール13はベタグランド層11A、電源層11B及びこれらの層間絶縁膜を貫通して形成された開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0076】
このバイアホール13の位置は信号源14から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の電源層11B及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該プリント配線基板103の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0077】
図14はプリント配線基板103の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施形態では図14の実線で示す高周波電流は、信号源14からプリント配線基板103の表側の信号線路パターン12を通り、ベタグランド層11A及び電源層11Bに設けられたバイアホール13を通ってプリント配線基板103の裏側に抜ける。そこからさらにプリント配線基板103の裏側の信号線路パターン12を通って負荷回路15に至る。
【0078】
負荷回路15からの波線で示す帰還電流は、電源層11Bを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0079】
この例では、図14に示すプリント配線基板103の表側で発生する電磁波の大きさと、基板の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これはプリント配線基板103の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するからである。このループ面積は断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。
【0080】
また、図14に示す信号源14からバイアホール13を経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、プリント配線基板103の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該プリント配線基板103からの電磁波の放射を防止できるようになる。つまり、信号源14からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。
【0081】
[第4の実施例]
図15A及びBは本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板104の構成例を示す上面図及びそのX1−X2矢視断面図である。
この実施例では図15Aに示す信号線路パターン(第1の導電路)12がベタグランド層11Aの開口部13を原点にして配線角度θを有して配線されるものである。配線角度θは例えば、5°以上であって、355°以下としている。この角度範囲を超えると、電磁波相殺効果が低減するためである。因みに第1の実施形態で説明した電子回路配線基板100は配線角度θが180°の場合である。
【0082】
図15Bにおいて、信号源14は例えば、ベタグランド層11Aの絶縁膜20C上に設けられ、負荷回路15はベタグランド層11A下の絶縁膜21C上設けられている。信号源14とベタグランド層11Aとは例えば、接続プラグ18Aによって電気的に接続されている。負荷回路15とベタグランド層11Aとは同様にして接続プラグ18Bによって電気的に接続されている。
【0083】
図15Bに示すプリント配線基板104の中間層にはベタグランド層11Aが設けられている。このベタグランド層11A及び接続プラグ18A,18Bを通って高周波の帰還電流が流れる。要は、負荷回路15からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けて(準備されて)あればよい。図中、tはプリント配線基板104の厚みを示している。
【0084】
この例で信号源14からバイアホール13を通って負荷回路15に至る部分には図15Aに示したように配線角度θを持って信号線路パターン12が配線される。信号線路パターン12(プリントパターン)は銅箔又は被覆電線等から構成される。この信号源14からの高周波信号は、プリント配線基板104の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通ってプリント配線基板104の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り負荷回路15に至る。バイアホール13はベタグランド層11A及び絶縁膜20C,21Cを貫通して形成された開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0085】
このバイアホール13の位置は信号源14から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18B及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該プリント配線基板10の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0086】
この場合も、図示しない高周波電流は、信号源14からプリント配線基板104の表側の信号線路パターン12を通り、ベタグランド層11Aに設けられたバイアホール13を通ってプリント配線基板104の裏側に抜ける。そこからさらにプリント配線基板104の裏側の信号線路パターン12を通って負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は、接続プラグ18B、ベタグランド層11A及び接続プラグ18Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0087】
この例でも、プリント配線基板104の表側で発生する電磁波の大きさと、基板の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これはプリント配線基板104の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するからである。このループ面積は断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。
【0088】
また、図15Bに示す信号源14からバイアホール13を経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、プリント配線基板103の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。ループ間距離Lはループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間の離隔距離を測定して得たものである。
【0089】
このようにすると、当該プリント配線基板103からの電磁波の放射を防止できるようになる。つまり、信号源14からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から負荷回路15に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺することができる。
【0090】
図16A及びBは高周波回路配線基板105の構成例を示す上面図及びそのX11−X21矢視断面図である。
この実施例では図14Aにしたプリント配線基板104を応用した高周波回路配線基板105が提供される。図16Aに示す高周波回路配線基板105の一方の面には、信号源の一例となる動作周波数百MHz〜数GHz程度の送信回路用半導体集積回路装置(以下単にICという)14’、この他にPLL回路用のIC22や、高周波増幅用のIC23、変調回路用のIC24等が実装される。この基板105の他方の面には、負荷回路の一例となる受信回路用IC15’が実装される。この例で、信号線路パターン(第1の導電路)12がベタグランド層11Aの開口部13を原点にして、例えば、配線角度θ=100°を有して配線されるものである。
【0091】
図16Bに示す高周波回路配線基板105はベタグランド層11Aを絶縁物20C及び21Cで挟んだ3層構造の基板本体20から構成される。この基板105において、送信回路用IC14’は例えば、ベタグランド層11Aの絶縁膜20C上に設けられ、受信回路用IC15’はベタグランド層11A下の絶縁膜21C上に設けられている。送信回路用IC14’とベタグランド層11Aとは例えば、接続プラグ18Aによって電気的に接続されている。受信回路用IC15’とベタグランド層11Aとは同様にして接続プラグ18Bによって電気的に接続されている。
【0092】
図16Bに示す高周波回路配線基板105の中間層にはベタグランド層11Aが設けられている。このベタグランド層11A及び接続プラグ18A,18Bを通って高周波の帰還電流が流れる。要は、受信回路用IC15’からの帰還電流が中断せずに、信号線路パターン12に平行して流れるための導電パターンが設けて(準備されて)あればよい。図中、tは高周波回路配線基板105の厚みを示している。
【0093】
この例で送信回路用IC14’の出力ピンからバイアホール13を通って受信回路用IC15’の入力ピンに至る部分には図15Aに示したように配線角度θ=100°を持って信号線路パターン12が配線される。信号線路パターン12は高周波回路配線基板105上でICC22及びIC23を避けるように配線される。
【0094】
この信号線路パターン12(プリントパターン)は銅箔又は被覆電線等から構成される。この送信回路用IC14’からの高周波信号は、高周波回路配線基板105の表側(上側)の信号線路パターン12を通り、バイアホール13を通って高周波回路配線基板105の裏側(下側)に抜け、この裏側の信号線路パターン12を通り受信回路用IC15’に至る。バイアホール13はベタグランド層11A及び絶縁膜20C,21Cを貫通して形成された開口部に銅、半田等の導電部材がメッキ又は埋め込まれて形成される。
【0095】
このバイアホール13の位置は送信回路用IC14’から当該バイアホール13に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、このバイアホール13から受信回路用IC15’に至る部分のベタグランド層11A、接続プラグ18B及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該プリント配線基板10の断面で夫々等しくなるように決定されて成る。
【0096】
この場合も、図示しない高周波電流は、送信回路用IC14’から高周波回路配線基板105の表側の信号線路パターン12を通り、ベタグランド層11Aに設けられたバイアホール13を通って高周波回路配線基板105の裏側に抜ける。そこからさらに高周波回路配線基板105の裏側の信号線路パターン12を通って受信回路用IC15’に至る。受信回路用IC15’からの帰還電流は、接続プラグ18B、ベタグランド層11A及び接続プラグ18Aを通って送信回路用IC14’に帰還する。この電流の経路をたどると8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0097】
この例でも、高周波回路配線基板105の表側で発生する電磁波の大きさと、基板の裏側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは高周波回路配線基板105の表裏で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するからである。このループ面積は断面で夫々等しくなる条件に加えて表裏両面で夫々等しくなるように構成してもよい。
【0098】
また、図16Bに示す送信回路用IC14’からバイアホール13を経て受信回路用IC15’に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、送信回路用IC14’から受信回路用IC15’へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、プリント配線基板103の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。ループ間距離Lはループが始まる位置(送信回路用IC14’の位置)とループが終わる位置(受信回路用IC15’の位置)の間の離隔距離を測定して得たものである。
【0099】
このようにすると、当該プリント配線基板103からの電磁波の放射を防止できるようになる。つまり、送信回路用IC14’からバイアホール13に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール13から受信回路用IC15’に至る部分の信号線路パターン12及びベタグランド層11Aで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺することができる。
【0100】
図17A及びBは送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の配置例及び、ループ間距離Lの測定例を示す概念図である。図17Aに示す送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の第1の配置例によれば、バイアホール(開口部)13を原点としたとき、送信回路用IC14’を基準にして配線角度を鋭角(5°<θa<90°>に設定し、この送信回路用IC14’に対して鋭角θaを成す位置に受信回路用IC15’を配置した場合である。この場合のループ間距離Lは、ループが始まる位置(送信回路用IC14’の位置)とループが終わる位置(受信回路用IC15’の位置)の間の離隔距離L1を測定して得たものとなる。
【0101】
また、図17Bに示す送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の第2の配置例によれば、バイアホール(開口部)13を原点としたとき、送信回路用IC14’を基準にして配線角度を鈍角(90°<θb<355°)に設定し、この送信回路用IC14’に対して鈍角θbを成す位置に受信回路用IC15’を配置した場合である。この場合のループ間距離Lは、ループが始まる位置(送信回路用IC14’の位置)とループが終わる位置(受信回路用IC15’の位置)の間の離隔距離L2を測定して得たものとなる。
【0102】
続いて、本発明に係る実施例としてのプリント配線基板106の形成方法について説明をする。図18及び図19はプリント配線基板106の形成例(その1、2)を示す工程図である。
【0103】
この実施例では表面実装技術を応用して、プリント配線基板106の一方の面に送信回路用IC14’を実装し、当該プリント配線基板106の他方の面に受信回路用IC15’を実装して電子回路間を配線する場合を例に挙げる。
【0104】
これを形成条件にして、図18Aにおいて、両面銅箔を有した基板本体20を準備する。基板本体20は絶縁基板20Cの一方の面に銅箔20Aを有し、かつ、他方の面に銅箔20Bを有している。好ましくは、ベタグランド層11Aに使用する側の銅箔20Aが送信回路用IC14’を配置する側よりも厚く形成されたものを使用するとよい。中間層となるベタグランド層11Aは信号帰還のみならず電源帰路に使用するためである。
【0105】
その後、図18Bに示すベタグランド層11A(中間層)となる側の所定の部位の銅箔20Aを除去する。この部位はバイアホールとなる開口部13が貫通する部分であり、その周囲の銅箔20Aを除去することで絶縁距離を長くなる(稼ぐ)ようになされる。
【0106】
この開口部13の形成予定位置は、予めシミュレーション等によって決定される。この開口部13を形成するに当たってのシミュレーション処理では、この送信回路用IC14’から当該開口部13に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第1のループ面積と、バイアホール13から受信回路用IC15’に至る部分のベタグランド層11A及び信号線路パターン12で構成される第2のループ面積とが当該基板本体20の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるようにバイアホールの位置が決定される。
【0107】
この例では、銅箔20Aを除去した部分に他の絶縁物20Dを詰め込む。信号線路パターン12とベタグランド層11Aとが短絡しないようにするためである。この部位に絶縁物20Dを詰め込んだ後に上部を平坦化する。そして、受信回路用IC15’を配置するための図17Cに示すような片面銅箔プリント基板21を準備する。プリント基板21は絶縁基板21Cの一方の面に銅箔21Aを有している。
【0108】
この例では、基板本体20と片面銅箔プリント基板21とを貼り付ける。例えば、ベタグランド層11A(中間層)となる銅箔20Aと、片面銅箔プリント基板21の絶縁基板21Cの他方の面(銅箔21Aの非形成面)とを対峙するように、両基板20,21を接着剤を使用して熱厚着する。
【0109】
こうして接着された基板本体20の一方の面、つまり、送信回路用IC14’を実装する側の、図19Aに示す銅箔20Bをパターニングして余分な銅箔を除去し前半部分の信号線路パターン12を形成する。このとき、送信回路用IC14’をマウントする部分の下方の銅箔も除去し、又はその部分を絶縁する。信号線路パターン12は予め決定されたバイアホール用の開口部13を形成する予定位置まで延在される。
【0110】
また、基板本体20の他方の面、つまり、受信回路用IC15’を実装する側の銅箔21Aをパターニングして余分な銅箔を除去し後半部分の信号線路パターン12を形成する。このとき、バイアホール用の開口部13を形成する予定位置から受信回路用IC15’を実装する部分に至る銅箔21Aが残される。なお、受信回路用IC15’をマウントする部分の銅箔21Aも除去し、又は、又はその部分を絶縁する。
【0111】
そして、図19Bに示すように基板本体20における送信回路用IC14’と受信回路用IC15’との間の所定位置に、この例では上述のシュミレーション等により予め求めた形成予定位置にバイアホール用の開口部13を形成(開口)する。開口部13はレーザ加工装置又は所定のドリル刃を装着した加工装置等を用いて行う。これにより、バイアホールとなる位置に基板本体20を貫通する開口部13を形成することができる。このとき、送信回路用IC14’とベタグランド層11Aとを接続するための開口部131や、受信回路用IC15’とベタグランド層11Aとを接続するための開口部132を同時に形成する。
【0112】
その後、図19Cに示すようにバイアホールとなる開口部13内に、導電性の部材、例えば、銅メッキ又は半田を施す。その後、基板本体20の一方の面に送信回路用IC14’を実装し、他方の面に受信回路用IC15’を各々実装する。もちろん、送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’の各々の端子電極を各々の信号線路パターン12に接続する。これらのIC14’、15’は半田付け法等により接続し固定する。
【0113】
このような表面実装法によって、送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’が基板本体20に実装され、しかも、この送信回路用IC14’からバイアホール13を通って、基板本体20の表面から裏面に通じて受信回路用IC15’に至る信号線路パターン12を有したプリント配線基板106を形成することができる。
【0114】
[電磁波相殺シミュレーション]
図20A及びBは上述した第1の実施形態に係る電磁波相殺シミュレーションモデル例を示すイメージ図である。
図20Aにおける電磁波相殺シミュレーションモデル例によれば、横方向の長さLxが150mm、縦方向の長さLyが100mmの大きさのベタグランド層11Aを準備した。ベタグランド層11Aは導電板であって、その厚みは便宜上0mmである。このベタグランド層11Aの中央部にはバイアホールとなる開口部13が設けられる。開口部13の大きさは縦の長さが0.5mm、横の長さが10mm程度である。
【0115】
このベタグランド層11Aの開口部13を基準してその左右側には所定距離x1,x2を置いて信号源14及び負荷回路15が配置される。距離x1は45mm,距離x2も45mm程度である。信号源14及び負荷回路15の高さhは各々1mm程度である。信号源14には周波数10MHz〜3GHzの1V正弦波を発生する1[V]信号源が使用され、負荷回路15には50Ωのインピーダンス(抵抗)が使用される。
【0116】
この信号源14及び負荷回路15とは図20Bに示す開口部13を介在し、ベタグランド層11Aの表裏の信号伝送用の信号線路パターン12で接続される。信号線路パターン12の幅は0.1mm程度で、その厚さは0mmである。また、負荷回路15からの帰路は、当該負荷回路15から信号源14へ信号帰還用のベタグランド層11Aで接続される。
【0117】
図21A及びBは電磁波相殺シミュレーション比較モデル例を示すイメージ図である。図21Aにおける電磁波相殺シミュレーション比較モデル例によれば、横方向の長さLxが150mm、縦方向の長さLyが100mmの大きさのベタグランド層11Aを準備した。ベタグランド層11Aは導電板であって、その厚みは便宜上0mmである。このベタグランド層11Aの左右側には所定距離Lを置いて信号源14及び負荷回路15が配置される。信号源14及び負荷回路15の高さhは各々1mm程度である。信号源14には上述した1[V]信号源が使用され、負荷回路15には50Ωのインピーダンス(抵抗)が使用される。
【0118】
この信号源14及び負荷回路15とは、図21Bに示すベタグランド層11A上で信号伝送用の信号線路パターン12により接続される。信号線路パターン12の幅は0.1mm程度で、その厚さは0mmである。また、負荷回路15からの帰路は、当該負荷回路15から信号源14へ信号帰還用のベタグランド層11Aで接続される。
【0119】
図22は電磁波相殺シミュレーション測定時の構成例を示すイメージ図である。図22に示す電磁波相殺シミュレーション測定時の構成例によれば、無限の大きさの導電面60にターンテーブル50及び受信アンテナ用のポール402を配置する。ターンテーブル50は導電面60から高さ、例えば、0.8m位置にテーブル51を有している。このテーブル51には、電子回路配線基板100等の供試モデルを載置して回転するようになされる。テーブル51は例えば、0〜360°を5°間隔で回転するようになされる。
【0120】
このテーブル51から例えば、3m程度離隔した位置にはポール402が配置され、このポール402には受信用のアンテナ401が可動自在に取付けられる。アンテナ402には水平垂直偏波を受信可能なものが使用される。アンテナ401の上下方向の移動範囲は、下限1mから上限4mである。10cm間隔で移動自在になされている。モーメント法により電磁波相殺シミュレーションを行うためである。
【0121】
(2)第2の実施形態
図23Aは本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線基板200の構成例を示す上面図である。図23Bはその断面の構成例を示すY1−Y2矢視断面図である。
【0122】
この実施形態では、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置する場合であって、この信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように、これらの開口部の位置を決定して、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺できるようにすると共に、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようにしたものである。
【0123】
図23Aに示す電子回路配線基板200は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。電子回路配線基板200は回路配線基板を構成する基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図23Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。
【0124】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を置いて同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には第1の導電路の一例となる信号伝送用の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、第1及び第2開口部の一例となるバイアホール33A及び33Bを通じて第2の導電路の一例となる信号帰還用のグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図23Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0125】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0126】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成される第1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0127】
図24Aは電子回路配線基板200における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施形態では図24Aの実線で示す高周波電流は、信号源14から電子回路配線基板200の表側の信号線路パターン32を通って、負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は電子回路配線基板200の表側のグランドパターン31Cからバイアホール33Bを通って電子回路配線基板200の裏側に抜ける。そこからさらに電子回路配線基板200の裏側のグランドパターン312を通ってバイアホール33Aに至る。更にバイアホール33Aから電子回路配線基板200の表側のグランドパターン31Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると平面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0128】
この例では、図24Aに示す電子回路配線基板200の部品実装面左側で発生する電磁波の大きさと、当基板200の部品実装面右側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは電子回路配線基板200のバイアホールの左右で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するためである。
【0129】
また、図24Aに示す信号源14からバイアホール33A,33Bを経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、電子回路配線基板200の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板200からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0130】
つまり、信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Bで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明した通りである。
【0131】
図24Bにおいて、電子回路配線基板200から放射される電磁波は、受信用のアンテナ付きの電磁波測定装置400によって測定される。
図24Bに示す電子回路配線基板200によれば、ループLp1を流れる電流の方向と、ループLp2を流れる電流の方向とが反対向きになっている。このため、ループLp1とループLp2から発生する磁束の方向も反対向きになる。この例で、ループLp1を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の裏から表へ向かっている(○に・印で示す)。ループLp2を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の表面から裏面に向かっている(○に×印で示す)。
【0132】
従って、当該電子回路配線基板200のループLp1とループLp2から発生する電磁波の位相が反対になるため、遠方に置かれた電磁波測定装置400のアンテナ401に誘起する起電圧または起電流は、大きさが等しく極性が反対になり、互いに打ち消し合って零になる。この電磁波を相殺する配線パターン構成は、この配線パターンの外部から到来する電磁波(ノイズ源)により誘起される起電圧または起電流に対して相殺する効果もある。
【0133】
続いて、本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線方法について説明をする。この実施形態では図23に示したように、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を配置して電子回路間を配線する場合あって、基板本体40の部品実装面に信号伝送用の信号線路パターン32を形成する。信号線路パターン32は例えば、片面銅箔をパターニングして形成する。また、当該基板本体40における信号源14と負荷回路15との間の所定位置に2個単位に導電用の開口部を形成する。
【0134】
また、信号源14から図23に示したようなバイアホール(第1開口部)33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール(第2開口部)33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分にグランドパターン31A,31Cを形成すると共に、当該グランドパターン31A,31Cを信号線路パターン32と並行するように形成する。
【0135】
これに当たって、信号源14から第1開口部に至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループ面積とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされる。
【0136】
このようにして、本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線基板200及び電子回路配線方法によれば、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有する基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されると共に、この信号源14から所定距離を置いて負荷回路15が配置されている。
信号線路パターン32はグランドパターン31Aと並行するように配置されている。
【0137】
しかも、この信号線路パターン32が信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、グランドパターン31Aを交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0138】
このバイアホール33A,33Bの位置は、信号源14から当該バイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0139】
従って、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であっても、当該電子回路配線基板200からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0140】
[第1の実施例]
図25Aは本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板201の構成例を示す上面図である。図25Bはその断面の構成例を示すY12−Y22矢視断面図である。
【0141】
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターン32と、グランドパターン31A、31B及び31Cとの位置が入れ替わって構成されるものである。つまり、図25Aに示すプリント配線基板201は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板201は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図25Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。
【0142】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を置いて同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から受信回路用のIC15’へ至る部品実装面には第2の導電路の一例となる信号帰還用の直線状のグランドパターン31が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、第1及び第2開口部の一例となるバイアホール33A及び33Bを通じて第2の導電路の一例となる信号伝送用の信号線路パターン32A,32B,32Cにより接続されて構成されている。信号線路パターン32Bは図25Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0143】
この基板本体40の表面における信号線路パターン32A及び32Cはグランドパターン31と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面で信号線路パターン32Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、グランドパターン31を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0144】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32A及び32Bとグランドパターン31とで構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32C及び32Bとグランドパターン31とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0145】
図26はプリント配線基板201における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施例では図26の実線で示す高周波電流は、当該プリント配線基板201の表側の信号線路パターン32Aからバイアホール33Aを通って当該基板201の裏側に抜ける。そこからさらに当該基板201の裏側の信号線路パターン32Bを通ってバイアホール33Bに至る。
【0146】
更にバイアホール33Bから当該基板201の表側の信号線路パターン32Cを通って負荷回路15に至る。負荷回路15からの帰還電流は当該IC15’からプリント配線基板201の表側のグランドパターン31を通って、信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると平面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、ループLp1からの放射とループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0147】
この例では、図26に示すプリント配線基板201の部品実装面左側で発生する電磁波の大きさと、当基板201の部品実装面右側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは当該基板201のバイアホール33A,33Bの左右で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するためである。
【0148】
また、図26に示す信号源14からバイアホール33A,33Bを経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、信号源14から当該IC15’へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、基板本体40の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該プリント配線基板201からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0149】
つまり、信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32A及びグランドパターン31で構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32C及びグランドパターン31で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明した通りである。
【0150】
[第2の実施例]
図27は本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板202の構成例を示す上面図である。
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターン32がバイアホール33A,33Bを基準にしてループ間で配線角度θを有して配置されるものである。つまり、図27に示すプリント配線基板202は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。
【0151】
プリント配線基板202は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
【0152】
配線角度θは信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。この配線角度θは5°<θ<355°の範囲であれば電磁波相殺効果が得られる。配線角度θ=180°で信号源14と負荷回路15とが直線上に並ぶ関係を有している。
【0153】
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図27に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0154】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0155】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び31Bと信号線路パターン32とで構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び31Bと信号線路パターン32とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0156】
従って、図27に示した配線角度θを有する場合であっても、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0157】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、配線角度θを有する場合であっても、当該プリント配線基板202からの電磁波の放射を防止できるようになる。他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0158】
[第3の実施例]
図28は本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板203の構成例を示す上面図である。
この実施例では、信号源14から負荷回路15へ至る部分であって、2個単位の導電用のバイアホール33A,33Bが基板本体40上の信号線路パターン32を挟んで2組以上設けられる。この信号線路パターン32はバイアホール33A,33B、33C,33D、33E,33F等を通して信号線路パターン32の左右交互に配置される。しかも、信号源14から負荷回路15に至る部分でバイアホール33A,33B等によって仕切られるグランドパターン31A,31C,31E,31G及び信号線路パターン32で構成されるループ面積が当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0159】
つまり、図28に示すプリント配線基板203は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板203は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個を単位として3組有している。
【0160】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、複数の配線角度θ1,θ2,θ3を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。配線角度θ1は信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ第1の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第1の線分からバイアホール33Cとバイアホール33Dと結ぶ第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。
【0161】
配線角度θ2はこの第1の線分から第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第2の線分からバイアホール33Eとバイアホール33Fと結ぶ第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。配線角度θ3はこの第2の線分から第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第3の線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。
【0162】
このような信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が曲線を描くようにして配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A〜33Fを通じてグランドパターン31A〜31Gにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図28に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0163】
同様にして、グランドパターン31Dは基板本体40の裏面でバイアホール33Cとバイアホール33Dとを接続するようになされる。グランドパターン31Fは基板本体40の裏面でバイアホール33Eとバイアホール33Fとを接続するようになされる。
【0164】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31Aは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Cに至る。
【0165】
このグランドパターン31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Cを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Dによって、バイアホール33Cとバイアホール33Dとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Dを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Eに至る。
【0166】
このグランドパターン31Eは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Eを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Fによって、バイアホール33Eとバイアホール33Fとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Fを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Gに至り更に負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0167】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及びグランドパターン31Dの一部と信号線路パターン32とで構成される第2のループのループ面積S2と、残りのグランドパターン31Dとバイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及びグランドパターン31Fの一部と信号線路パターン32とで構成される第3のループ面積S3と、残りのグランドパターン31Fとバイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Gと信号線路パターン32とで構成される第4のループのループ面積S4とが当該基板本体40の部品実装面で、例えば、S1=S2=S3=S4等のように夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A〜33Fの位置が決定されて成るものである。
【0168】
従って、図28に示した複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループにより発生する電磁波と、バイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。
【0169】
また、バイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及び信号線路パターン32で構成される第3のループにより発生する電磁波と、バイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31G及び信号線路パターン32で構成される第4のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。
【0170】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、当該プリント配線基板203からの電磁波の放射を防止できるようになる。第2の実施例に比べて他の電子部品を大きく迂回するような用途に利用できる。
【0171】
[第4の実施例]
図29は本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板204の構成例を示す上面図である。
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターンやグランドパターンが上向き及び下向き円弧状に配置されて構成されるものである。つまり、図29に示すプリント配線基板204は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板204は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。
【0172】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には上向き及び下向き円弧状の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A’,31B’,31C’により接続されて構成されている。グランドパターン31B’は図29に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0173】
この基板本体40の表面における上向き円弧状のグランドパターン31A’は上向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置され、このバイアホール33Aとバイアホール33Bとを結ぶ線分から反転する、下向き円弧状のグランドパターン31C’は下向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置される。そして、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0174】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び31B’と信号線路パターン32’とで構成される第1のループ面積S1と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び31Bと信号線路パターン32とで構成される第2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0175】
従って、図29に示した信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31Cが円弧状を有する場合であっても、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び信号線路パターン32’で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C’及び信号線路パターン32’で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0176】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31Cを円弧状に配置する場合であっても、当該プリント配線基板204からの電磁波の放射を防止できるようになる。この電磁波相殺パターンは第2及び第3の実施例と同様にして他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0177】
(3)第3の実施形態
図30Aは本発明に係る第3の実施形態としての電子部品回路基板300の構成例を示す上面図である。図30Bはその断面の構成例を示すZ1−Z2矢視断面図である。
【0178】
この実施形態では部品実装面のグランドパターン31Aには、バイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように延長された補助導電路が配置されて構成されるものである。つまり、インピーダンスコントロールが可能なコプレナー構造の特徴を生かしながら、かつ、信号線路パターンから放射される電磁波を相殺する効果を付加したものである。
【0179】
図30Aに示す電子回路配線基板300は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。電子回路配線基板300は回路配線基板を構成する基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図30Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。
【0180】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を置いて同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号伝送用の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とはバイアホール33A及び33Bを通じて信号帰還用のグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図27Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0181】
この例ではグランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0182】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは、第1の実施形態と同様にして信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0183】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0184】
図31Aは電子回路配線基板300における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。この実施形態では図31Aの実線で示す高周波電流は、信号源14から電子回路配線基板300の表側の信号線路パターン32を通って、負荷回路15に至る。このとき、信号線路パターン32に沿って平行に配置された延長用のグランドパターン34A及び34Bによって対地アドミタンスを均等に分布させることができるので、当該信号線路パターン32の特性インピーダンスを安定化することができる(コプレナー型の配線基板の機能)。
【0185】
負荷回路15からの帰還電流は第2の実施形態と同様にして、電子回路配線基板300の表側のグランドパターン31Cからバイアホール33Bを通って電子回路配線基板300の裏側に抜ける。そこからさらに電子回路配線基板300の裏側のグランドパターン31Bを通ってバイアホール33Aに至る。更にバイアホール33Aから電子回路配線基板300の表側のグランドパターン31Aを通って信号源14に帰還する。この電流の経路をたどると平面で8字回路を構成する。この8字回路からの電磁波は、第1のループLp1からの放射と第2のループLp2からの放射とが合成された放射パターンとなる。
【0186】
この例では延長用のグランドパターン34A及び34Bを設ける場合であっても、図31Aに示す電子回路配線基板300の部品実装面左側で発生する電磁波の大きさと、当基板300の部品実装面右側で発生する電磁波の大きさとを等しくするようになされている。これは延長用のグランドパターン34A及び34Bの有無に係わらず、電子回路配線基板300のバイアホール33A,33Bの左右で発生する電磁波の大きさは、ループ電流が等しければ、ループ面積に比例するためである。
【0187】
また、図31Aに示す信号源14からバイアホール33A,33Bを経て負荷回路15に至る部分の長さをループ間距離Lとしたとき、延長用のグランドパターン34A及び34Bを設ける場合であっても、信号源14から負荷回路15へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、電子回路配線基板300の厚さtの2倍以上になるようにループ間距離Lが設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板300からの電磁波の放射を再現性良く防止できるようになる。
【0188】
つまり、信号源14からバイアホール33Aに至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Aで構成される第1のループLP1により発生する電磁波と、このバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分の信号線路パターン32及びグランドパターン31Bで構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを高精度に相殺するためである。なお、ループ間距離Lは信号源14から負荷回路15を見た方向(ループ間の配線角度)にかかわらず、ループが始まる位置(信号源14の位置)とループが終わる位置(負荷回路15の位置)の間を測定して得たものである。このループ間距離Lの測定方法については図17で説明した通りである。
【0189】
図31Bは延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300における電磁波相殺効果の測定例を示す概念図である。図31Bにおいて、電子回路配線基板300から放射される電磁波は、受信用のアンテナ付きの電磁波測定装置400によって測定される。
【0190】
図31Bに示す電子回路配線基板300によれば、延長用のグランドパターン34A及び34Bを設けた場合であっても、ループLp1を流れる電流の方向と、ループLp2を流れる電流の方向とが反対向きになっている。このため、ループLp1とループLp2から発生する磁束の方向も反対向きになる。この例で、ループLp1を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の裏から表へ向かっている(○に・印で示す)。ループLp2を流れる電流により発生する磁束の向きは紙面の表面から裏面に向かっている(○に×印で示す)。
【0191】
従って、当該電子回路配線基板300のループLp1とループLp2から発生する電磁波の位相が反対になるため、遠方に置かれた電磁波測定装置400のアンテナ401に誘起する起電圧または起電流は、大きさが等しく極性が反対になり、互いに打ち消し合って零になる。または著しく減衰する。このように遠方に置かれたアンテナ401に誘起する起電圧または起電流が零、または著しく減衰することは、遠方に置かれた携帯電話機等の電子機器に生じる起電圧または起電流が零、または著しく減衰することと等価である。この電磁波を相殺する配線パターン構成は、この配線パターンの外部から到来する電磁波(ノイズ源)により誘起される起電圧または起電流に対して相殺する効果もある。
【0192】
図32は延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。図32に示す電子回路配線基板300は基板本体を省略している。
【0193】
この例でも、ループ間距離Lが外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下になるように設定されて成る。このようにすると、当該電子部品回路基板300に到来する波長λの電磁波を相殺することができる。
【0194】
図32において、携帯電話機や、高周波発生装置等を送信用のアンテナ付きのノイズ発生装置500としたとき、このノイズ発生装置500のアンテナ501から放射される電磁波は、通常の電子回路配線基板300に対して何らかの影響を与える。しかし、本発明方式の電子回路配線基板300によれば、図32に示した電磁波の放射に関して、送信用のアンテナ501と図31Bに示した受信用のアンテナ401とを条件を逆にした場合であっても、空間減衰特性が変わらない。この電子回路配線基板300では外部からの電磁波による妨害を相殺するためである。
【0195】
つまり、図32に示すノイズ発生装置500のアンテナ501から到来する電磁波によりループLp1に誘起する起電圧または起電流は、ループLp2に誘起する起電圧または起電流と大きさが等しく極性が反転している。このため、ループLp1に誘起する起電圧または起電流とループLp2に誘起する起電圧または起電流とが相殺する。これにより、微小信号源14からの伝送信号をノイズの影響を受けることなく負荷回路15へ伝達することができる(EMS効果;電磁妨害排除能力)。
【0196】
図33は延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300に係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。図33に示すe1はループLp1に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。e2はループLp2に発生する外来ノイズ源による電圧または電流である。vは図5に示した信号源14による微小信号電圧である。これらの外来ノイズ源は信号源14に直列に接続された回路構成の場合と等価になる。このループLp1に発生する電圧e1等とループLp2に発生する電圧e2等が相殺される(EMS効果)。
【0197】
この結果、負荷回路15に現れるのは微小信号電圧vのみとなり、外来ノイズの影響を排除することができる。この効果は外来ノイズが連続の電磁波でなく、例えば、電源遮断時に生じるパルス電磁波や雷放電、静電気放電(ESD)等の不連続な電磁波であっても同様にして得られる。この例では、ループ間距離Lが外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下、かつ、基板本体40の厚さの2倍以上になるように設定されて成る。このようにすると、当該電子回路配線基板300に到来する波長λの電磁波を相殺することができる。
【0198】
このようにして、本発明に係る第3の実施形態としての電子回路配線基板300によれば、グランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置され、かつ、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されて構成されるものである。
【0199】
従って、延長用のグランドパターン34A及び34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であっても、当該電子回路配線基板300からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0200】
[第1の実施例]
図34は本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板301の構成例を示す上面図である。
この実施例では信号線路パターン32の特性インピーダンスを安定させるために、延長用のグラウンドパターンを所定のバイアホールに接続し、コプレナー型の配線基板に類似した構造を採っている。また、電磁波を相殺するパターン(以下電磁波相殺パターンともいう)を8字ループで構成するばかりでなく、図34に示すように、信号線路パターン32の左側上部の第1のループLp1の面積S1と、右側上部の第2のループLp2の面積S2の和と、信号線路パターン32の中央下部の第3のループLp3の面積S3が等しく(S3=S1+S2)なるように電磁波相殺パターンを構成するようにしたものである。
【0201】
図34に示すプリント配線基板301はプリント配線基板を構成し、この基板301によれば、基板本体40の一方の面(上側;表側)に信号源14及び負荷回路15が共に配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には4個(偶数)個のバイアホール33A,33B、33C,33Dが設けられる。バイアホール33A及び33Bは基板本体40の他方の面(下側;裏面)でグランドパターン31Bにより接続されている。同様にして、バイアホール33C及び33Dは基板本体40の裏面でグランドパターン31Dにより接続されている。
【0202】
この例ではグランドパターン31Eにはバイアホール33Dから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。更に、グランドパターン31Cにはバイアホール33Cから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Cが配置されている。
【0203】
この例では、信号源14から最初のバイアホール33Aに至るグランドパターン31Aと、グランドパターン31Bの一部と、信号線路パターン32とによって第1のループLp1が構成される。ループLp1のループ面積はS1である。また、残りのグランドパターン31Bと、バイアホール33Bから次のバイアホール33Cに至るグランドパターン31Cと、グランドパターン31Dの一部と、信号線路パターン32とによって第2のループLp2が構成される。ループLp2のループ面積はS2である。更に、残りのグランドパターン31Dと、バイアホール33Dから負荷回路15に至るグランドパターン31Eと信号線路パターン32とによって第3のループLp3が構成される。ループLp3のループ面積はS3である。
【0204】
この例で、信号線路パターン32の左側上部のループLp1のループ面積S1と、右側上部のループLp2のループ面積S2の和と、信号線路パターン32の中央下部のループLp3のループ面積S3が等しく(S3=S1+S2)なるようにバイアホール33Aから33Dの位置が決定される。
【0205】
従って、延長用のグランドパターン34A及び34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、信号線路パターン32の左側のループLp1と右側のループLp2で発生する電磁波の大きさが同じで位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。
【0206】
[第2の実施例]
図35は本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板302の構成例を示す上面図である。
この実施例では信号線路パターン32の特性インピーダンスを安定させるために、延長用のグラウンドパターンをバイアホールに接続し、コプレナー型の配線基板に類似した構造を採っている。また、電磁波相殺パターンを8字ループで構成するばかりでなく、図35に示すように、信号線路パターン32の左側のループLp1とそれと隣り会う右側のループLp2の面積S1,S2が夫々等しくなるように構成し、更に、隣り会う右側の2つのループLp3、Lp4の面積S3,S4が夫々等しくなるように構成してもよい。
【0207】
図35に示すプリント配線基板302はプリント配線基板を構成し、この基板302によれば、基板本体40の一方の面(上側;表側)に信号源14及び負荷回路15が共に配置されている。この信号源14及び負荷回路15との間には6個(偶数)個のバイアホール33A,33B,33C,33D,33E,33Fが設けられる。バイアホール33A及び33Bは基板本体40の他方の面(下側;裏面)でグランドパターン31Bにより接続されている。同様にして、バイアホール33C及び33Dは基板本体40の裏面でグランドパターン31Dにより接続され、バイアホール33E及び33Fは基板本体40の裏面でグランドパターン31Fにより接続されている。
【0208】
この例ではグランドパターン31Eにはバイアホール33Dから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。更に、グランドパターン31Eにはバイアホール33Eから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Cが配置されている。また、グランドパターン31Gにはバイアホール33Fから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Dが配置されている。
【0209】
この例では、信号源14から最初のバイアホール33Aに至るグランドパターン31Aと、グランドパターン31Bの一部と、信号線路パターン32とによって第1のループLp1が構成される。ループLp1のループ面積はS1である。また、残りのグランドパターン31Bと、バイアホール33Bから次のバイアホール33Cに至るグランドパターン31Cと、グランドパターン31Dの一部と、信号線路パターン32とによって第2のループLp2が構成される。ループLp2のループ面積はS2である。
【0210】
更に、残りのグランドパターン31Dと、バイアホール33Dから次のバイアホール33Eに至るグランドパターン31Eと、グランドパターン31Fの一部と信号線路パターン32とによって第3のループLp3が構成される。ループLp3のループ面積はS3である。また、残りのグランドパターン31Fと、バイアホール33Dから負荷回路15に至るグランドパターン31Eと、信号線路パターン32とによって第4のループLp4が構成される。ループLp4のループ面積はS4である。
【0211】
この例で、信号線路パターン32の左側のループLp1とそれと隣り会う右側のループLp2の面積S1,S2が夫々等しくなるようにバイアホール33A、33B、33C,33Dの位置が決定され、更に、隣り会う右側の2つのループLp3、Lp4の面積S3,S4が夫々等しくなるようにバイアホール33E、33Fの位置が決定されるものである。
【0212】
従って、延長用のグランドパターン34A〜34Dによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、信号線路パターン32の左側のループLp1と右側のループLp2で発生する電磁波の大きさが同じで位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。同様にして、信号線路パターン32の更に右側のループLp3とその右側のループLp4で発生する電磁波の大きさが同じで位相が反転するため、電磁波相殺の効果を得ることができる。なお、ループの設置数は4個に限られることはなく、多数のループで信号線路パターン12を構成してもよい。
【0213】
[第3の実施例]
図36は本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板303の構成例を示す上面図である。
この実施例では第2の実施形態で説明した信号線路パターン32がバイアホール33A,33Bを基準にしてループ間で配線角度θを有して配置される電磁波相殺パターンに延長用のグランドパターンが接続されるものである。つまり、電磁波を相殺する関係にある2対のループが直線状にない場合である。第1のループLp1と第2のループLp2が直線上に位置していないが、2対のループ面積S1,S2が同じで、ループ電流の方向が反対で大きさが等しくなる場合は相殺の効果が生じる。
【0214】
図36に示すプリント配線基板303は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板303は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
【0215】
配線角度θは信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。この配線角度θは5°<θ<355°の範囲であれば電磁波相殺効果が得られる。配線角度θ=180°で信号源14と負荷回路15とが直線上に並ぶ関係を有している。
【0216】
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図36に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0217】
この例ではグランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0218】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0219】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0220】
従って、図36に示した配線角度θを有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A〜34Dによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0221】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、配線角度θを有する場合であっても、当該プリント配線基板303からの電磁波の放射を防止できるようになる。他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0222】
[第4の実施例]
図37は本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板304の構成例を示す上面図である。
この実施例では電磁波相殺パターンに延長用のグランドパターンが接続され、信号源14から負荷回路15へ至る部分であって、2個単位の導電用のバイアホール33A,33Bが基板本体40上の信号線路パターン32を挟んで2組以上設けられ、この信号線路パターン32はバイアホール33A,33B、33C,33D、33E,33F等を通して信号線路パターン32の左右交互に配置される。
【0223】
そして、信号源14から負荷回路15に至る部分でバイアホール33A,33B等によって仕切られるグランドパターン31A,31C,31E,31G及び信号線路パターン32で構成されるループ面積が当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。つまり、第1のループLp1〜第4のループLp4が直線上に位置していないが、相殺の関係にある2対のループLp1、Lp2と、ループLp3、Lp4は夫々面積が同一で、ループ電流の方向が反対、かつ大きさが等しくなる場合は、相殺効果が生じる。
【0224】
図37に示すプリント配線基板304は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板304は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個を単位として3組有している。
【0225】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離及び、複数の配線角度θ1,θ2,θ3を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。配線角度θ1は信号源14からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ第1の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第1の線分からバイアホール33Cとバイアホール33Dと結ぶ第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。
【0226】
配線角度θ2はこの第1の線分から第2の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第2の線分からバイアホール33Eとバイアホール33Fと結ぶ第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。配線角度θ3はこの第2の線分から第3の線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この第3の線分から負荷回路15に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。配線角度θ1,θ2,θ3の各々は5°から355°の間がよい。
【0227】
このような信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には信号線路パターン32が曲線を描くようにして配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A〜33Fを通じてグランドパターン31A〜31Gにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図37に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0228】
同様にして、グランドパターン31Dは基板本体40の裏面でバイアホール33Cとバイアホール33Dとを接続するようになされる。グランドパターン31Fは基板本体40の裏面でバイアホール33Eとバイアホール33Fとを接続するようになされる。
【0229】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31Aは信号線路パターン32と並行するように配置され、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Cに至る。
【0230】
このグランドパターン31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Cを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Dによって、バイアホール33Cとバイアホール33Dとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Dを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Eに至る。
【0231】
このグランドパターン31Eは信号線路パターン32と並行するように配置され、バイアホール33Eを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Fによって、バイアホール33Eとバイアホール33Fとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Fを通じて当該部品実装面に戻り、グランドパターン31Gに至り更に負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0232】
この例ではグランドパターン31Eにはバイアホール33Dから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Aが配置されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。更に、グランドパターン31Eにはバイアホール33Eから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Cが配置されている。また、グランドパターン31Gにはバイアホール33Fから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Dが配置されている。
【0233】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及びグランドパターン31Dの一部と信号線路パターン32とで構成される第2のループのループ面積S2と、残りのグランドパターン31Dとバイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及びグランドパターン31Fの一部と信号線路パターン32とで構成される第3のループ面積S3と、残りのグランドパターン31Fとバイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31Gと信号線路パターン32とで構成される第4のループのループ面積S4とが当該基板本体40の部品実装面で、例えば、S1=S2=S3=S4等のように夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A〜33Fの位置が決定されて成るものである。
【0234】
従って、図37に示した複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A〜34Dによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成されるループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bからバイアホール33Cに至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成されるループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0235】
また、バイアホール33Dからバイアホール33Eに至る部分のグランドパターン31E及び信号線路パターン32で構成されるループLp3により発生する電磁波と、バイアホール33Fから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31G及び信号線路パターン32で構成されるループLp4により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0236】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、複数の配線角度θ1、θ2及びθ3を有する場合であっても、当該プリント配線基板304からの電磁波の放射を防止できるようになる。第3の実施例に比べて他の電子部品を大きく迂回するような用途に利用できる。
【0237】
[第5の実施例]
図38は本発明に係る第5の実施例としてのプリント配線基板305の構成例を示す上面図である。
この実施例では第1の実施形態で説明した信号線路パターンやグランドパターンが上向き及び下向き円弧状に配置される電磁波相殺パターンに対して、延長用のグランドパターンが接続されて構成されるものである。つまり、2対のループLp1、Lp2を構成する電磁波相殺パターン(プリントパターン)が直線状に無い場合である。
【0238】
この電磁波相殺パターンが直線状にない場合であっても、2対のループLp1、Lp2を構成する電磁波相殺パターンの中心に対して、2対のループLp1、Lp2が点対称の関係にあれば相殺の効果が生じる。もっとも、隣接するループの面積は夫々等しくなくてはならない。また、隣り会う2つのループが点対称の関係になくても、夫々のループLp1、Lp2の面積が等しく、各ループLp1、Lp2の配線角度θが5°〜355°の間にあれば相殺効果が生じる。
【0239】
図38に示すプリント配線基板305は電子回路配線基板の一例であり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。プリント配線基板305は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図示しないが厚みtの絶縁基板から構成される(図25B参照)。
【0240】
この基板本体40の部品実装面には信号源14が配置されている。この信号源14から所定距離を持って同じ部品実装面には負荷回路15が配置されている。
この信号源14から負荷回路15へ至る部品実装面には上向き及び下向き円弧状の信号線路パターン32が配線される。この信号源14と負荷回路15とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A’,31B’,31C’により接続されて構成されている。グランドパターン31B’は図38に示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0241】
この基板本体40の表面における上向き円弧状のグランドパターン31A’は上向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置され、このバイアホール33Aとバイアホール33Bとを結ぶ線分から反転する、下向き円弧状のグランドパターン31C’は下向き円弧状の信号線路パターン32’と並行するように配置される。そして、信号源14からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り負荷回路15へ至る部分に配線される。
【0242】
この例で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及びグランドパターン31B’の一部と信号線路パターン32’とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31B’とバイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C’と信号線路パターン32’とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0243】
従って、図38に示した信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31C’が円弧状を有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A’,34D’によるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で信号源14からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び信号線路パターン32’で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから負荷回路15に至る部分のグランドパターン31C’及び信号線路パターン32’で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。
【0244】
これにより、基板本体40の部品実装面に信号源14及び負荷回路15を共に配置する場合であって、信号線路パターン32’やグランドパターン31A’、31Cを円弧状に配置する場合であっても、当該プリント配線基板305からの電磁波の放射を防止できるようになる。第2〜第4の実施例と同様にして他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0245】
[第6の実施例]
図39Aは本発明に係る第6の実施例としての高周波回路配線基板306の構成例を示す上面図である。図39Bはその断面の構成例を示すZ11−Z21矢視断面図である。
【0246】
図39Aに示す高周波回路配線基板306はプリント配線基板303を応用したものであり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。
【0247】
高周波回路配線基板306は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図40Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。この基板本体40の部品実装面には信号源の一例となる送信回路用IC14’が配置されている。この送信回路用IC14’から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路の一例となる受信回路用IC15’が配置されている。
【0248】
配線角度θは送信回路用IC14’からバイアホール33Aとバイアホール33Bと結ぶ線分に至る直線状の信号線路パターン32と、この線分から受信回路用IC15’に至る直線状の信号線路パターン32との間の成す角度である。この配線角度θは5°<θ<355°の範囲であれば電磁波相殺効果が得られる。
配線角度θ=180°で送信回路用IC14’と受信回路用IC15’とが直線上に並ぶ関係を有している。
【0249】
この送信回路用IC14’から受信回路用IC15’へ至る部品実装面には信号線路パターン32が配線される。この送信回路用IC14’と受信回路用IC15’とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A,31B,31Cにより接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図40Aに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0250】
この例ではグランドパターン31Aにはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31Cにはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0251】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A及び31Cは信号線路パターン32と並行するように配置され、送信回路用IC14’からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り受信回路用IC15’へ至る部分に配線される。
【0252】
この例で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分のグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0253】
この例では送信回路用IC14’からの高周波信号はインピーダンスコントロールされた、コプレナー構造類似の信号線路パターン32で受信回路用IC15’に伝送される。一方、受信回路用IC15’からの帰還電流はグラウンドパターン31C,31B,31Aを通って送信回路用IC14’に戻る。この一連の信号の流れが一筆書きの8字ループを構成する。
【0254】
従って、図40Aに示した配線角度θを有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A、34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分のグランドパターン31C及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。または著しく減衰する。
【0255】
これにより、基板本体40の部品実装面に送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’を共に配置する場合であって、配線角度θを有する場合であっても、当該高周波回路配線基板306からの電磁波の放射を防止できるようになる。
他の電子部品を迂回するような用途に利用できる。
【0256】
[第7の実施例]
図40Aは本発明に係る第7の実施例としての高周波回路配線基板307の構成例を示す上面図である。図40Bはその断面の構成例を示すZ12−Z22矢視断面図である。
この実施例では第6の実施例で説明した高周波回路配線基板306に比べて、例えば、送信回路用IC14’のグランド(GND)ピンの位置が信号ピンから離れて配置されている場合である。こうした場合、信号線路パターン32とグラウンドパターン31A’で構成されるループ面積が第6の実施例に比べて大きくなってしまうので、この面積の増加に対応する分の面積を隣接するループでも確保するようにしたものである。
【0257】
図40Aに示す高周波回路配線基板307はプリント配線基板303を応用したものであり、使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して好適である。
【0258】
高周波回路配線基板307は基板本体40を有している。基板本体40は部品実装面を有しており、所定位置に導電用のバイアホール33A,33Bを2個単位に有している。この例で基板本体40は図40Bに示すように厚みtの絶縁基板から構成される。この基板本体40の部品実装面には信号源の一例となる送信回路用IC14’が配置されている。この送信回路用IC14’から所定距離及び、配線角度θを持って同じ部品実装面には負荷回路の一例となる受信回路用IC15’が配置されている。
【0259】
この送信回路用IC14’から受信回路用IC15’へ至る部品実装面には第6の実施例と同様にして信号線路パターン32が配線される。この送信回路用IC14’と受信回路用IC15’とは、バイアホール33A及び33Bを通じてグランドパターン31A’,31B,31C’により接続されて構成されている。グランドパターン31Bは図24Bに示すように基板本体40の裏面でバイアホール33Aとバイアホール33Bとを接続するようになされる。
【0260】
このグランドパターン31A’は送信回路用IC14’のグランドピンに接続されている。このグランドパターン31A’は第6の実施例のグランドパターン31Aに比べて迂回パターンαを含むものである。また、グランドパターン31C’は受信回路用IC15’のグランドピンに接続されている。このグランドパターン31C’は第6の実施例のグランドパターン31Cに比べて迂回パターンαを含むものである。
【0261】
この例ではグランドパターン31A’にはバイアホール33Aから連続して信号線路パターン32に沿うように、補助導電路の一例となる延長用のグランドパターン34Aが配置(形成)されている。コプレナー型に類似した構造とするためである。同様にして、グランドパターン31C’にはバイアホール33Bから連続して信号線路パターン32に沿うように、延長用のグランドパターン34Bが配置されている。
【0262】
この基板本体40の表面におけるグランドパターン31A’及び31C’は信号線路パターン32と並行するように配置され、送信回路用IC14’からバイアホール33Aを通じて当該部品実装面の反対側に至り、基板本体40の裏面でグランドパターン31Bによって、バイアホール33Aとバイアホール33Bとが接続され、かつ、信号線路パターン32を交差するようにバイアホール33Bを通じて当該部品実装面に戻り受信回路用IC15’へ至る部分に配線される。
【0263】
この例で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分の迂回パターンαを含むグランドパターン31A’及びグランドパターン31Bの一部と信号線路パターン32とで構成されるループLp1のループ面積S1と、残りのグランドパターン31Bとバイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分の迂回パターンαを含むグランドパターン31Cと信号線路パターン32とで構成されるループLp2のループ面積S2とが当該基板本体40の部品実装面で夫々等しくなるように、各々のバイアホール33A,33Bの位置が決定されて成るものである。
【0264】
この例では送信回路用IC14’からの高周波信号はインピーダンスコントロールされた、コプレナー構造類似の信号線路パターン32で受信回路用IC15’に伝送される。一方、受信回路用IC15’からの帰還電流はグラウンドパターン31C’,31B,31A’を通って送信回路用IC14’に戻る。この一連の信号の流れが一筆書きの8字ループを構成する。
【0265】
従って、図40Aに示した迂回パターンαや配線角度θ等を有する場合であっても、延長用のグランドパターン34A、34Bによるコプレナー型の配線基板の機能に加えて、基板本体40の部品実装面で送信回路用IC14’からバイアホール33Aに至る部分のグランドパターン31A’及び信号線路パターン32で構成される第1のループLp1により発生する電磁波と、バイアホール33Bから受信回路用IC15’に至る部分のグランドパターン31C’及び信号線路パターン32で構成される第2のループLp2により発生する電磁波とを相殺することができる。または著しく減衰する。
【0266】
これにより、基板本体40の部品実装面に送信回路用IC14’及び受信回路用IC15’を共に配置する場合であって、送信回路用IC14’のグランド(GND)ピンが信号ピンから離れた位置に配置される場合であっても、当該高周波回路配線基板307からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0267】
上述した各実施例では片面銅箔又は両面銅箔基板を適用して電磁波相殺パターンを構成する場合について説明したが、これに限られることはなく、多層基板を使用して電子回路配線基板を構成する場合も本発明を充分応用することができる。
【0268】
また、本発明によれば、上述した他に以下のような効果が得られる。
▲1▼ 本発明を実施するに当たり、特別な部品を使用しないので部品コストがかからない。
▲2▼ 基板本体40のパターン面積使用効率が従来方式のように片面に配線回路パターンを構成する場合と比較してとほとんど変わらない。
▲3▼ もちろん、本発明に係る電子回路配線基板に関して従来方式のような電波吸収体を併用することができる。
▲4▼ 本発明に係る電子回路配線方法によれば、高周波信号を伝送するプリント配線基板を内装するあらゆる電子機器であって、その信号線路パターンを含む基板本体40からの電磁波放射を減少させる必要がある電子機器に応用することができる。
【0269】
▲5▼ また、本発明に係る電子回路配線方法によれば、半導体集積回路内部の回路配線において、高周波信号を伝送する配線パターンからの電磁波放射を減少させる必要がある半導体集積回路装置に応用することができる。
▲6▼ 微小信号線路パターンを有する電子回路配線基板において、信号線路外(基板外)からの電磁波による誘導電圧や誘導電流を排除する必要がある場合に応用できる。
▲7▼ また、微小信号線路パターンを有する半導体集積回路内部の回路配線において、信号線路外(集積回路外)からの電磁波による誘導電圧や誘導電流を排除する必要がある場合に応用できる。
【0270】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る第1の電子回路配線基板によれば、中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板の一方の面に配置された信号源から、この基板の開口部を通って負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路を備え、この開口部の位置は信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0271】
この構成によって、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できる。
【0272】
本発明に係る第1の電子回路配線方法によれば、回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合であって、回路配線基板の中間層に信号帰還用の第1の導電路を形成すると共に、この回路配線基板における信号源と負荷回路との間の所定位置に開口部を形成し、この信号源から開口部を通って負荷回路に至る信号伝送用の第2の導電路を形成するに当り、この信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされる。
【0273】
この構成によって、信号源から開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、この開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、当該電子回路配線基板からの電磁波の放射を防止できる。
【0274】
本発明に係る第2の電子回路配線基板によれば、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板を備え、この部品実装面には信号源が配置されると共に、この信号源から所定距離を置いて負荷回路が配置され、信号帰還用の第2の導電路は信号伝送用の第1の導電路と並行するように配置されている。しかも、この第2の導電路が信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に配線され、この開口部の位置は、信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成るものである。
【0275】
この構成によって、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0276】
本発明に係る第2の電子回路配線方法によれば、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する場合に、信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、第1の導電路を交差するように第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成すると共に、当該第2の導電路を第1の導電路と並行するように形成するに当たって、この信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように開口部の位置を決定するようになされる。
【0277】
この構成によって、回路配線基板の部品実装面で信号源から第1開口部に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第1のループにより発生する電磁波と、第2開口部から負荷回路に至る部分の第1及び第2の導電路で構成される第2のループにより発生する電磁波とを相殺することができる。従って、回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を共に配置する場合であっても、当該電子回路基板からの電磁波の放射を防止できるようになる。
【0278】
この発明は使用周波数が高いクロック信号、高周波電流を取り扱う携帯電話機や、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施形態としての電子回路配線基板100の構成例を示す斜視図である。
【図2】電子回路配線基板100の断面の構成例を示す図である。
【図3】電子回路配線基板100の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
【図4】電子回路配線基板100における相殺効果確認時の電磁波測定例を示す概念図である。
【図5】電子回路配線基板100における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。
【図6】電磁波相殺パターンに係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。
【図7】A〜Cは電子回路配線基板100の形成例(その1)を示す工程図である。
【図8】A〜Cは電子回路配線基板100の形成例(その2)を示す工程図である。
【図9】本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板101の断面の構成例を示す概念図である。
【図10】本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板102の断面の構成例を示す概念図である。
【図11】ループ間距離Lと電磁波相殺上限周波数との関係例を示す表図である。
【図12】本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板103の構成例を示す斜視図である。
【図13】プリント配線基板103の断面の構成例を示す図である。
【図14】プリント配線基板103の電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
【図15】A及びBは本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板104の構成例を示す上面図及びそのX1−X2矢視断面図である。
【図16】A及びBは高周波回路配線基板105の構成例を示す上面図及びそのX11−X21矢視断面図である。
【図17】A及びBは送信回路用IC14’に対する受信回路用IC15’の配置例及び、ループ間距離Lの測定例を示す概念図である。
【図18】A〜Cはプリント配線基板106の形成例(その1)を示す工程図である。
【図19】A〜Cはプリント配線基板106の形成例(その2)を示す工程図である。
【図20】A及びBは上述した第1の実施形態に係る電磁波相殺シミュレーションモデル例を示すイメージ図である。
【図21】A及びBは電磁波相殺シミュレーション比較モデル例を示すイメージ図である。
【図22】電磁波相殺シミュレーション時の電磁波測定例を示すイメージ図である。
【図23】Aは本発明に係る第2の実施形態としての電子回路配線基板200の構成例を示す上面図及び、Bはその断面の構成例を示すY1−Y2矢視断面図である。
【図24】Aは電子回路配線基板200における電磁波相殺機能例を示すイメージ図、Bは電磁波相殺効果の測定例を示す概念図である。
【図25】Aは本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板201の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すY12−Y22矢視断面図である。
【図26】プリント配線基板201における電磁波相殺機能例を示すイメージ図である。
【図27】本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板202の構成例を示す上面図である。
【図28】本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板203の構成例を示す上面図である。
【図29】本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板204の構成例を示す上面図である。
【図30】Aは本発明に係る第3の実施形態としての電子部品回路基板300の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すZ1−Z2矢視断面図である。
【図31】Aは電子回路配線基板300における電磁波相殺機能例を示すイメージ図、Bは電磁波相殺効果の測定例を示す概念図である。
【図32】延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300における外来ノイズの相殺機能例を示すイメージ図である。
【図33】延長用のグランドパターン付きの電子回路配線基板300に係る外来ノイズ相殺時の等価回路例を示す図である。
【図34】本発明に係る第1の実施例としてのプリント配線基板301の構成例を示す上面図である。
【図35】本発明に係る第2の実施例としてのプリント配線基板302の構成例を示す上面図である。
【図36】本発明に係る第3の実施例としてのプリント配線基板303の構成例を示す上面図である。
【図37】本発明に係る第4の実施例としてのプリント配線基板304の構成例を示す上面図である。
【図38】本発明に係る第5の実施例としてのプリント配線基板305の構成例を示す上面図である。
【図39】Aは本発明に係る第6の実施例としての高周波回路配線基板306の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すZ11−Z21矢視断面図である。
【図40】Aは本発明に係る第7の実施例としての高周波回路配線基板307の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すZ12−Z22矢視断面図である。
【図41】Aは従来例に係るコプレナー構造の電子回路配線基板10の構成例を示す上面図、Bはその断面の構成例を示すA11−A21矢視断面図である。
【符号の説明】
11・・・第1の導電路、11A・・・ベタグランド層(第1の導電路)、12・・・第2の導電路(信号線路パターン)、13・・・バイアホール(開口部)、14・・・信号源、15・・・負荷回路、14’・・・送信回路用IC(信号源)、15’・・・受信回路用IC(負荷回路)、20,40・・・基板本体、31・・・第2の導電路、31A〜31G・・・グランドパターン、32・・・第1の導電路(信号線路パターン)、33A〜33F・・・バイアホール(開口部)、34A〜34D・・・延長用のグランドパターン(補助導電路)、100,200,300・・・電子回路配線基板、101〜104,201〜204,301〜305・・・プリント配線基板、105,306,307・・・高周波回路配線基板
Claims (18)
- 中間層に信号帰還用の第1の導電路を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を有する回路配線基板と、
前記回路配線基板の一方の面に配置された信号源と、
前記回路配線基板の他方の面に配置された負荷回路と、
前記信号源から前記開口部を通って前記負荷回路に至る部分に配線された信号伝送用の第2の導電路とを備え、
前記開口部の位置は、
前記信号源から前記開口部に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、前記開口部から前記負荷回路に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とする電子回路配線基板。 - 前記第1の導電路には、
前記ベタグラウンド層又はベタ電源層が使用されて成ることを特徴とする請求項1に記載の電子回路配線基板。 - 前記信号源から前記開口部を経て前記負荷回路に至る部分の長さをループ間距離としたとき、
前記信号源から負荷回路へ伝送される信号の波長λの1/4以下、かつ、前記回路配線基板の厚さの2倍以上になるように前記ループ間距離が設定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の電子回路配線基板。 - 前記ループ間距離が外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下、かつ、前記回路配線基板の厚さの2倍以上になるように設定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の電子回路配線基板。
- 回路配線基板の一方の面に信号源を配置し、当該回路配線基板の他方の面に負荷回路を配置して電子回路間を配線する方法であって、
前記回路配線基板の中間層に信号帰還用の第1の導電路を形成すると共に、前記回路配線基板における前記信号源と負荷回路との間の所定位置に開口部を形成し、
前記信号源から前記開口部を通って前記負荷回路に至る信号伝送用の第2の導電路を形成するに当たって、
前記信号源から前記開口部に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、前記開口部から前記負荷回路に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の断面又は及び表裏両面で夫々等しくなるように前記開口部の位置を決定するようにしたことを特徴とする電子回路配線方法。 - 前記第1の導電路には、
前記ベタグラウンド層又はベタ電源層を使用することを特徴とする請求項5に記載の電子回路配線方法。 - 前記信号源から前記開口部を経て前記負荷回路に至る部分の長さをループ間距離としたとき、
前記信号源から負荷回路へ伝送される伝送信号の波長λの1/4以下、かつ、前記回路配線基板の厚さの2倍以上になるように前記ループ間距離を設定することを特徴とする請求項5に記載の電子回路配線方法。 - 前記ループ間距離を外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下、かつ、前記回路配線基板の厚さの2倍以上になるように設定することを特徴とする請求項5に記載の電子回路配線方法。
- 部品実装面を有し、かつ、所定位置に導電用の開口部を2個単位に有する回路配線基板と、
前記回路配線基板の部品実装面に配置された信号源と、
前記信号源から所定距離を置いて前記部品実装面に配置された負荷回路と、
前記信号源から前記負荷回路へ至る前記部品実装面に配線された信号伝送用の第1の導電路と、
前記信号源と前記負荷回路とを前記開口部を通じて接続する信号帰還用の第2の導電路とを備え、
前記第2の導電路は、
前記第1の導電路と並行するように配置され、
前記信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、前記第1の導電路を交差するように前記第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り前記負荷回路へ至る部分に配線され、
前記開口部の位置は、
前記信号源から前記第1開口部に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、前記第2開口部から前記負荷回路に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とする電子回路配線基板。 - 前記信号源から前記負荷回路へ至る部分であって、2個単位の導電用の前記開口部が前記回路配線基板の第1の導電路を挟んで2組以上設けられ、
前記第2の導電路は、
前記開口部を通して前記第1の導電路の左右交互に配置され、かつ、前記信号源から負荷回路に至る部分で前記開口部によって仕切られる前記第1及び第2の導電路で構成されるループ面積が当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように決定されて成ることを特徴とする請求項9に記載の電子回路配線基板。 - 前記部品実装面の第2の導電路には、
前記開口部から連続して第1の導電路に沿うように延長された補助導電路が配置されて成ることを特徴とする請求項9に記載の電子回路配線基板。 - 前記信号源から各々の前記開口部を経て前記負荷回路に至る部分の長さをループ間距離としたとき、
前記信号源から負荷回路へ伝送される伝送信号の波長λの1/4以下になるように前記ループ間距離が設定されて成ることを特徴とする請求項9に記載の電子回路配線基板。 - 前記ループ間距離が外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下になるように設定されて成ることを特徴とする請求項9に記載の電子回路配線基板。
- 回路配線基板の部品実装面に信号源及び負荷回路を配置して電子回路間を配線する方法であって、
前記回路配線基板の部品実装面に信号伝送用の第1の導電路を形成すると共に、当該回路配線基板における前記信号源と負荷回路との間の所定位置に2個単位に導電用の開口部を形成し、
前記信号源から第1開口部を通じて当該部品実装面の反対側に至り、かつ、前記第1の導電路を交差するように前記第2開口部を通じて当該部品実装面に戻り前記負荷回路へ至る部分に第2の導電路を形成すると共に、当該第2の導電路を前記第1の導電路と並行するように形成するに当たって、
前記信号源から前記第1開口部に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第1のループ面積と、前記第2開口部から前記負荷回路に至る部分の前記第1及び第2の導電路で構成される第2のループ面積とが当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように前記開口部の位置を決定するようになされることを特徴とする電子回路配線方法。 - 前記信号源から前記負荷回路へ至る部分であって、2個単位の導電用の前記開口部を前記回路配線基板の第1の導電路を挟んで2組以上を形成し、
前記開口部を通して前記第1の導電路の左右交互に前記第2の導電路を形成すると共に、前記信号源から負荷回路に至る部分で前記開口部によって仕切られる前記第1及び第2の導電路で構成されるループ面積を当該回路配線基板の部品実装面で夫々等しくなるように前記開口部の位置を決定するようにしたことを特徴とする請求項14に記載の電子回路配線方法。 - 前記部品実装面の第2の導電路に連続して前記開口部から第1の導電路に沿って延長するように補助導電路を形成することを特徴とする請求項14に記載の電子回路配線方法。
- 前記信号源から各々の前記開口部を経て前記負荷回路に至る部分の長さをループ間距離としたとき、
前記信号源から負荷回路へ伝送される伝送信号の波長λの1/4以下になるように前記ループ間距離を設定することを特徴とする請求項14に記載の電子回路配線方法。 - 前記ループ間距離を外来電磁波の使用周波数から求めた波長λの1/4以下になるように設定することを特徴とする請求項14に記載の電子回路配線方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002335688A JP2004172308A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 電子回路配線基板及び電子回路配線方法 |
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JP2002335688A Pending JP2004172308A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 電子回路配線基板及び電子回路配線方法 |
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Cited By (4)
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---|---|---|---|---|
JP2012520652A (ja) * | 2010-05-12 | 2012-09-06 | メディアテック インコーポレーテッド | 信号ライン遷移素子を備えた回路装置 |
JP2013135203A (ja) * | 2011-12-27 | 2013-07-08 | Ibiden Co Ltd | 配線板及びその製造方法 |
JP2014225640A (ja) * | 2013-04-15 | 2014-12-04 | キヤノン株式会社 | プリント配線板及びプリント回路板 |
WO2021065147A1 (ja) * | 2019-09-30 | 2021-04-08 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 電動工具 |
-
2002
- 2002-11-19 JP JP2002335688A patent/JP2004172308A/ja active Pending
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