JP2004168897A - 高導電性樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で形状の自由度の高い導電性樹脂成形品であって、耐腐食性に優れ、しかも導電性も十分に高い高導電性樹脂成形品を提供する。
【解決手段】(A)エチレン系重合体0.1〜40重量%と、(B)(A)成分が島状に分散し得る、(A)成分以外の熱可塑性樹脂99〜60重量%とよりなる樹脂成分100重量部と、(C)カーボンブラック0.1〜50重量部と、(D)炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛60〜400重量部とを含む導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる高導電性樹脂成形品。
【選択図】 図2
【解決手段】(A)エチレン系重合体0.1〜40重量%と、(B)(A)成分が島状に分散し得る、(A)成分以外の熱可塑性樹脂99〜60重量%とよりなる樹脂成分100重量部と、(C)カーボンブラック0.1〜50重量部と、(D)炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛60〜400重量部とを含む導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる高導電性樹脂成形品。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高導電性樹脂成形品に係り、特に、情報電子、自動車、建築分野などの電気接点部品、電磁波シールド部品、電極部品、とりわけ蓄電池用接点部品や、燃料電池用のセパレータなど、腐食性の雰囲気下で使用する用途に好適な、耐腐食性に優れた高導電性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池の一つである固体高分子型燃料電池(高分子電解質燃料電池)は、電解質に高分子イオン交換膜を用いた燃料電池であり、出力密度が高く小型軽量化に有利である;電解質が固体であることから逸失がない;差圧に強く加圧制御が容易である;構造が簡単で電解質が腐食性でないため耐久性の面で有利である;動作温度が低いので部品材質選択や起動停止特性の面で有利であるなどの優れた特長を有し、従来は主として宇宙開発用、軍用といった特殊な用途に適用されていたが、近年は、その環境保全性を重視した自動車用途への適用が積極的に行われている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、例えば図1(b)に示す如く、両板面に複数本の溝1A,1Bを並設した2枚の電極支持板1,1を、図1(a)に示す如く、溝1A,1Bの形成面が対向するように向かい合わせ、この支持板1,1間に電解質膜2を介して電極、即ち空気極3と燃料極4とを設けた構造を、単一セルとしている。前記のセルを直列に複数重ね合わせて使用する場合、電極支持板は「セパレータ」と呼ばれる。
【0004】
固体高分子型燃料電池では、燃料極4側の支持板1の溝1Bを経て燃料極4に水素を、また、空気極3側の支持板1の溝1Aを経て空気極3に酸素をそれぞれ供給すると、電解質膜2の中を水素イオンがH+の形で移動することにより、以下のような反応が起こり、電力を取り出すことができる。
【0005】
燃料極(アノード):H2→2H++2e−
空気極(カソード):1/2O2+2H++2e−→H2O
【0006】
従来、固体高分子型燃料電池の電解質膜としては、イオン交換膜やパーフロロカーボンスルホン酸膜などが用いられている。また、電極(空気極,燃料極)としては、カーボンメッシュに白金を担持させたものが用いられている。そして、電極支持板は、これらの電極及び電解質膜を支持すると同時に、電極で発生した電子を取り出すものであるが、一般に、カーボン又はグラファイトの焼結体が用いられている。
【0007】
このような燃料電池セパレータや電磁波シールド部品、及び各種の電気接点部材などの導電性部品には、高い導電性が要求される。特に、燃料電池セパレータ用途においては、酸性高温の腐食環境下にさらされることから、このような腐食に起因する導電性の低下の問題のない、耐腐食性に優れた高導電性材料が望まれる。
【0008】
そこで、従来、熱可塑性樹脂に炭素繊維やカーボンブラック、金属繊維などの導電性フィラーを添加した導電性熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られた成形品を、燃料電池セパレータ等の高度の導電性が要求される部品として適用すべく、炭素繊維やカーボンブラック等の導電性フィラーを高濃度に充填することにより、導電性を高めることが検討されている。このような導電性熱可塑性樹脂組成物によれば、安価で形状の自由度が高く、しかも、耐食性に優れた導電性樹脂成形品を得ることができる。
【0009】
この場合、導電性フィラーの添加量を増加させるに従って得られる成形品の導電性は向上するものの、反面、流動性が著しく低下して成形が困難となるだけでなく、添加量の増加に伴い導電性は次第に飽和し、それ以上添加量を増加させても、導電性が殆ど向上しない領域に到達する。
【0010】
このため、導電性樹脂成形品では、かかる流動性の低下と、導電性向上の限界により、燃料電池セパレータなどの高度の導電性が要求される用途には、必ずしも満足な導電性が得られていないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、安価で形状の自由度の高い導電性樹脂成形品であって、耐腐食性に優れ、成形可能な範囲の導電性フィラーの添加量で十分に高い高導電性を付与し得る高導電性樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の高導電性樹脂成形品は、
(A) エチレン系重合体0.1〜40重量%と、
(B) 上記(A)成分が島状に分散し得る、(A)成分以外の熱可塑性樹脂99.9〜60重量%とからなる樹脂成分100重量部と、
(C) カーボンブラック0.1〜50重量部と、
(D) 炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛60〜400重量部と
を含む導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0013】
前述の如く、熱可塑性樹脂に高導電性を付与するために繊維状又は鱗片状導電性フィラーを添加することは従来より知られている。この場合、導電性フィラーの添加量を増加させることによって、得られる成形品の導電性を高めることができるが、導電性フィラーを高充填すると、導電性の向上(抵抗値の低下)は飽和する傾向があり、かかる高充填領域では、導電性フィラーの添加量を増大させても導電性の向上効果が少ない。特に溶融した樹脂を流動させて成形した成形品(例えば、射出成形品)においては、導電性フィラーが流動によって配向するために、導電性フィラー同士の接触が不十分となり、飽和する導電性レベルは低く(抵抗値レベルは高く)なりやすい。そして、導電性を高めるために導電性フィラーを過度に高充填すると、流動性を著しく損ない、成形が不可能となる。
【0014】
導電性を高めるために、このような導電性フィラーと共に、更にカーボンブラックを配合し、図2(a)に示す如く、導電性フィラー11,11同士を、カーボンブラック12などで繋ぐことによって、ある程度の導電性の改善が可能であるが、カーボンブラックを添加することは、導電性熱可塑性樹脂組成物の極端な粘度の増加を引き起こすために、成形性とのバランスを確保する点においては、限界がある。
【0015】
本発明においては、エチレン系重合体を熱可塑性樹脂のマトリックス中に島状に分散させ、図2(b)に示す如く、エチレン系重合体((A)成分)の分散相13中にカーボンブラック12を分散させる。即ち、エチレン系重合体は基本的にカーボンブラックとの相溶性が良好であることから、熱可塑性樹脂中に島状に分散したエチレン系重合体の分散相13中にカーボンブラック12が優先的かつ選択的に分散する傾向があり、カーボンブラック12が内部に分散した高導電性の島状分散相13を形成する。導電性フィラー11,11間をこの高導電性の分散相13で繋ぐことにより、効率良く導電性を向上させることができる。
【0016】
なお、カーボンブラック12がエチレン系重合体の分散相13中に選択的に分散するとは、添加したカーボンブラック12の大部分がエチレン系重合体の分散相中に存在すること、即ち、エチレン系重合体中に主として存在することである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の高導電性樹脂成形品の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明で用いる成形原料としての導電性熱可塑性樹脂組成物の配合成分について説明する。
【0019】
<(A)成分:エチレン系重合体>
エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、α−オレフィン含有量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下のものを用いることができる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、オクタデセン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、ビニルシクロヘキサン、スチレン等が挙げられる。
【0020】
また、エチレン系重合体としては、グリシジル基、カルボン酸、シラノール基等の極性基で変性されたエチレン系重合体、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−グラフト−ポリメチルメタクリレート、エチレン−グリシジルメタクリレート−グラフト−ポリスチレン等のグリシジル変性エチレン系重合体を用いても良い。
【0021】
これらのエチレン系重合体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0022】
本発明の高導電性樹脂成形品が燃料電池用セパレータ部品である場合、これらの燃料電池用セパレータ部品のなかでも、特に密度0.950以上の高密度ポリエチレンが、ガスバリア性に優れる点で望ましい。
【0023】
このような(A)エチレン系重合体の添加量は、後述の(B)成分の熱可塑性樹脂との合計に対して0.1〜40重量%、望ましくは1〜20重量%である。(A)成分及び(B)成分からなる樹脂成分中の(A)エチレン系重合体の割合がこの範囲より少ないと、エチレン系重合体を配合したことによる導電性の改善効果が得られず、多いと耐熱性を損なうこととなる。
【0024】
<(B)成分:熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、(A)成分のエチレン系重合体以外で(A)成分が島状に分散し得る熱可塑性樹脂であれば良く、非結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、変性ポリオキシメチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、脂環式ポリオレフィンなどが挙げられる。また、結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。またその他に、液晶性ポリエステルなどの液晶樹脂を使用することもできる。これらは使用する目的に応じて機械的強度、成形性等の特性から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
【0025】
本発明の高導電性樹脂成形品を、燃料電池用セパレータとして使用する場合には、耐水性、耐酸性、耐熱性が要求されるため、結晶性樹脂、又は液晶性ポリエステル、特にポリフェニレンサルファイドが性能のバランスに優れる点で望ましい。
【0026】
また、本発明の高導電性樹脂成形品を電磁波シールド部品として使用する場合は、寸法精度やそりの点で、ポリカーボネート、ABS樹脂等の非結晶性熱可塑性樹脂が望ましい。
【0027】
<(C)成分:カーボンブラック>
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等を用いることができ、これらの1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。上記の中でもDBP吸油量が100ml/100g以上、好ましくは100〜400ml/100g以上のものが導電性に優れる点で望ましい。なお、DBP吸油量とは、カーボンブラック100g当りに包含されるジブチルフタレートの量(ml)を表す。
【0028】
カーボンブラックの添加量は、(A)成分と(B)成分との樹脂成分合計100重量部に対して0.1〜50重量部、望ましくは3〜30重量部、更に望ましくは5〜25重量部である。カーボンブラックの配合量がこの範囲より少ないと、カーボンブラックを配合したことによる導電性の向上効果が十分でなく、この範囲よりも多いと、流動性を損なうこととなる。
【0029】
<(D)成分:炭素繊維及び/又は鱗片状黒船>
炭素繊維としては、ポリアクリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油精製時の残渣であるピッチを原料とするピッチ系炭素繊維のいずれも使用できる。
【0030】
本発明で使用される炭素繊維の径については特に制限は無いが、通常平均繊維径1〜30μmであり、好ましくは3〜20μmであり、更に好ましくは5〜15μmである。
【0031】
本発明で使用される炭素繊維の長さには特に制限は無い。長い方が機械特性、導電性にとっては有利に作用するが、成形時の流動性の点では短い方が有利である。要求される導電性及び成形性との兼ね合いから適宜選択すれば良い。
【0032】
通常、押出機による混練や射出成形等の成形工程によって、繊維は破損する。このため、成形品中の炭素繊維の繊維長及び繊維径としては、少なくとも20点以上測定した平均繊維長(L)と繊維径(d)の比(アスペクト比:L/d)が5〜10000の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは10〜3000である。L/dが上記範囲であると、得られる成形品の機械物性、導電性に優れる一方、成形時の流動性にも優れ、繊維同士が絡み合いにくく、分散が良好となる。
【0033】
また、鱗片状黒鉛としては、天然鱗片状黒鉛、又は石油コークスやピッチコークスを主原料として鱗片状に製造された人造黒鉛を使用することができる。
【0034】
鱗片状黒鉛の粒子径は、少なくとも20個の粒子の、平面方向に測定した平均値が、0.5〜200μmの範囲であることが望ましい。また、成形品中において、樹脂の流動方向に沿った長さ(L)と厚み(t)としては、少なくとも20点測定した長さ(L)と厚み(t)の比(アスペクト比;L/t)が、5〜10000、特に10〜3000であることが望ましい。
【0035】
これらの(D)成分の中でも特に、アスペクト比が大きく高い導電性が得られる点で炭素繊維を用いることが望ましい。
【0036】
炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の添加量は、(A)成分と(B)成分との樹脂成分100重量部に対して、60〜400重量部、望ましくは70〜200重量部、更に望ましくは80〜200重量部である。炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の配合量がこの範囲より少ないと、導電性を損なうだけでなく、炭素繊維同士(又は黒鉛同士、又は炭素繊維と黒鉛)間の距離が大きすぎて、カーボンブラックが分散したポリエチレン系重合体の分散相で繋がりにくくなり、本発明による改善効果が得られない。配合量がこの範囲よりも多いと流動性を損なうこととなる。
【0037】
(D)成分としての炭素繊維及び鱗片状黒鉛には、(A)成分のエチレン系重合体や、(B)成分の熱可塑性樹脂との分散性や接着性を向上させるための界面活性剤として、各種の表面処理剤や分散剤による処理を施しても良い。このような処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などのカップリング剤や、非極性セグメントと極性セグメントのブロック又はグラフト共重合体などを使用することができる。このような処理を施すことにより、特に、(B)成分だけでなく、(A)成分との接着性をも向上させることによって、導電性の(A)成分分散相が、(C)成分同士を繋ぐ効果が大きくなり、その結果、得られる成形品の導電性が向上する。
【0038】
<添加成分>
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の任意の添加成分を配合することができる。
【0039】
例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ほう酸アルミニウム繊維等の無機繊維状強化材、アラミド繊維、ポリイミド繊維、フッ素樹脂繊維等の有機繊維状強化材、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン等の無機充填材、フッ素樹脂パウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤を挙げることができる。
【0040】
更に上記成分以外の導電性充填材を添加しても良く、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの粒子状フィラーや、平均繊維径1μm未満の微細炭素繊維などのカーボン系フィラーなどを添加することができる。
【0041】
また、平均粒子径が10μm以上100μm以下の粒子状炭素フィラーを、(A)成分と(B)成分との樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部添加すると、導電性を更に向上させることができる。このような粒子状炭素フィラーとしては、メソフェーズピッチより製造されるメソカーボン小球体や、塊状の天然黒鉛や人造黒鉛を使用することができる。
【0042】
次に本発明の高導電性樹脂成形品の製造方法を説明する。
【0043】
<製造方法>
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂の加工方法で製造することができる。例えば(A),(B),(C)成分及び(D)成分と更に必要に応じて配合される添加成分の全てを予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押し出し機、二軸混練押し出し機、ニーダーなどで溶融混練することによって製造することができる。
【0044】
また、本発明の高導電性樹脂成形品は、このような導電性熱可塑性樹脂組成物を各種の溶融成形法を用いて成形することにより製造することができる。成形法としては、具体的には圧縮成形、押し出し成形、真空成形、ブロー成形、射出成形などを挙げることができる。これらの成形法の中でも、特に射出成形法、真空成形法において、顕著な効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、予め(A)成分の一部に高濃度の(C)成分を添加したマスターバッチを製造し、その後このマスターバッチを(B)成分で希釈しても良い。
【0046】
次に、このようにして製造される本発明の高導電性樹脂成形品の導電性成分の分散及び配向状態と導電性について説明する。
【0047】
<カーボンブラックの選択的分散>
本発明の高導電性樹脂成形品では、(C)成分のカーボンブラックが(A)成分のエチレン系重合体の分散相中に主として分散している。
【0048】
この分散の状態は、エチレン系重合体とカーボンブラックの添加量比や製造条件等によっても異なるが、高導電性樹脂成形品に含まれるカーボンブラックのうち、(A)成分の分散相中に含まれるカーボンブラックの割合が多いほど、本発明による導電性の向上効果が大きくなる。
【0049】
この選択的分散の度合いを大きくするために、本発明において、前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計を100重量%としたとき、(A)成分/(C)成分の重量比(重量%比)が0.2以上5以下であることが好ましい。
【0050】
<導電性成分の配向状態>
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物の射出成形品においては、その表面付近において、図3に示す如く、導電性フィラー11である(D)成分の炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛が流動方向に沿って配向した配向層10Aが形成され、この導電性フィラー11の配向層10Aが、得られる成形品の導電性低下の原因となる。即ち、導電性フィラー11が配向せずランダムに散在している内層10Bにおいては、導電性フィラー11同士の接触ないし絡み合いで良好な導電性が得られるが、導電性フィラー11が配向した表面層10Aでは、互いの接触を確保することができず、導電性が低下する。
【0051】
本発明では、図2(b)に示す如く、導電性フィラー11間を、内部にカーボンブラック12が分散したエチレン系重合体の導電性の分散相13で繋ぐことによって、導電性を改善するが、この導電性フィラー11の配向層10Aにおいて、配向方向と直交する方向の導電性フィラー11,11間の距離が大きいと、導電性の分散相で導電性フィラー11,11同士を繋ぐことが困難になり、十分な導電性の改善効果が得られない。ただし、この間隔が小さくなるように導電性フィラー11の炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛を多量配合することは流動性の著しい低下をひき起こす。
【0052】
従って、本発明において、流動性の低下をひき起こすことなく、カーボンブラックが分散したエチレン系重合体の分散相により炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の導電性フィラー11,11同士を効果的に連結して良好な導電性を得るために、この成形品の配向層10Aにおける、導電性フィラー11、即ち炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛同士の平均距離(間隔の平均値)は0.1〜50μm、特に0.5〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0053】
なお、この平均距離は、図3に示すような成形品の破断面における、表面付近の配向層(通常、表面から5〜500μm程度の範囲)10Aを顕微鏡にて観察して、炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛同士の間隔d1,d2,d3,d4……を少なくとも20点以上測定した際の平均値である。この配向層10Aとは、成形品を流動方向に沿って、破断した破断面の顕微鏡観察において、炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の成形品表面に対する角度を20本測定した平均値が20°未満である領域とする。
【0054】
<成形品の導電性>
本発明においては、上述のように、導電性フィラーである炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛同士の間を、カーボンブラックが分散したエチレン系重合体の分散相で繋ぐことによって、導電性に優れた成形品を得ることができる。
【0055】
本発明の高導電性樹脂成形品を燃料電池セパレータなどに使用する場合、特に体積抵抗率が1×101Ω・cm以下の高度な導電性とする必要があるが、本発明は、このように高度な導電性が要求される範囲、特に体積抵抗率が1×101Ω・cm以下の領域において優れた効果を得ることができる。
【0056】
【実施例】
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0057】
なお、以下の参考例、実施例及び比較例で用いた原料成分は下記の通りである。
【0058】
PPS:ポリフェニレンサルファイド樹脂 大日本インキ(株)社製 商品名「トープレンH1G」(溶融粘度(300℃) 100poise)
HDPE:高密度ポリエチレン 日本ポリケム(株)製 商品名「HY430」(密度0.954)
EPR:エチレン−プロピレン共重合体 日本合成ゴム(株)製 商品名「EP−912P」(プロピレン含有量22重量%)
カーボンブラック:ケッチェンブラックインターナショナル社製 商品名「ケッチェンブラック EC」(DBP吸油量 360ml/100g)
炭素繊維:PAN系炭素繊維 東邦レーヨン社製 商品名「HTA−C6−SRS」(平均繊維直径7.2μm,平均繊維長6mm(いずれも、光学顕微鏡にて、20点測定値の平均値),エポキシ系界面活性剤処理品)
黒鉛:鱗片状黒鉛 日本黒鉛社製 商品名「CB−100」(平均粒子径57μm(光学顕微鏡にて150点測定値の平均値))
【0059】
参考例1
後述の実施例2において、炭素繊維を配合しなかったこと以外は同様にして導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造し、これを透過型電子顕微鏡にて観察した。その結果、高密度ポリエチレンはポリフェニレンサルファイド樹脂のマトリックス中に、0.7〜5μmの範囲の径で島状の分散相を形成し、かつカーボンブラックは、実質的に高密度ポリエチレンの分散相中に存在していることが確認された。
【0060】
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に示す配合で混合し、2軸押出機(池貝鉄鋼社製「PCM45」、L/D=32(L;スクリュー長、D;スクリュー径))を用いて溶融混練して、導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例6では、予め高密度ポリエチレンにカーボンブラックを20重量%添加したマスターバッチをつくり、これを使用して導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0061】
得られた各導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、75TON射出成型機にて、成形温度330℃、金型表面温度180℃の条件で、図4に示す抵抗値測定用シートサンプル20を成形した。
【0062】
このシートサンプルについて、以下の測定を行った。
【0063】
(1) 体積抵抗値の測定
図4(a)に示すように、サンプル20のa、bの2カ所に、10mm×10mmの範囲で銀を真空蒸着して電極を形成した。同位置の裏側にも同様に、電極を施した。
【0064】
ダイヤインスツルメント社製ロレスタSP(BSPプローブ 4探針)を使用して、図4(b)に示す如く、a、b部それぞれの表裏の電極間の抵抗値を測定し、次式より体積抵抗値を算出し、結果を表1に示した。
【0065】
体積抵抗率(Ω・cm)
=(電極面積(1cm2)/サンプル厚み(3mm))×測定値(Ω)
【0066】
(2) 炭素繊維、及び鱗片状黒鉛の繊維径、粒径及びアスペクト比
成形品を流動方向に沿って破断し、その破断面を電子顕微鏡にて観察して、炭素繊維については繊維径と繊維長を20点測定し、鱗片状黒鉛については、流動方向の長さと、直角方向の厚みを150点測定し、それぞれアスペクト比の平均値を求めた。
【0067】
その結果、全ての実施例及び比較例の成形品において、アスペクト比の平均値は、
炭素繊維 11以上
鱗片状黒鉛 27以上
であることを確認した。
【0068】
なお、ここで、アスペクト比(長さ/径比)については、破断面に露出した炭素繊維の一部が樹脂に隠れてしまうため、正確な繊維長を測定することができないが、少なくとも本発明の望ましい範囲内であることを確認した。
【0069】
(3) 炭素繊維間距離及び鱗片状黒鉛間距離
成形品を流動方向に沿って破断し、破断面を研磨した後、光学顕微鏡にて観察した。図3に示す如く、表面から50〜400μmの深さの範囲で、配向層の存在が確認されたので、その深さの範囲内にて、表面の境界が、視野に対して水平になるようにして、写真を撮影した。
【0070】
次に、得られた画像において、任意の位置に、表面に対して垂直な300μm分の直線Lを引き、直線上の炭素繊維、又は鱗片状黒鉛の間隔を全て測定した。直線は、任意の位置に2本引き、全ての測定値(30〜120点)を平均して、平均距離を求めた。この結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
カーボンブラックと炭素繊維をそれぞれ同配合とした実施例1,2,5と比較例1の結果を対比することにより、(A)成分のエチレン系重合体の配合により、導電性を高めることができることがわかる。同様に、カーボンブラックと鱗片状黒鉛をそれぞれ同配合とした実施例7と比較例4とを対比することにより、(A)成分のエチレン系重合体の配合により、導電性を高めることができることがわかる。
【0073】
比較例2では、カーボンブラックを多量に配合したことにより、流動性が損なわれ充填不可となったが、(A)成分のエチレン系重合体を配合した実施例3では、カーボンブラックがエチレン系重合体中に良好な相溶性で分散することにより、流動性の低下が防止される。
【0074】
また、比較例3では、炭素繊維を多量に配合したことにより、流動性が損なわれ充填不可となったが、(A)成分のエチレン系重合体を配合した実施例4では流動性の低下が防止される。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の高導電性樹脂成形品によれば、安価で形状の自由度の高い導電性樹脂成形品であって、耐腐食性に優れ、しかも導電性も十分に高い高導電性成形品が提供される。
【0076】
本発明の高導電性成形品は、情報電子、自動車、建築分野などの電気接点部品、電磁波シールド部品、電極部品、蓄電池用接点部品や、燃料電池セパレータなどの、腐食性の雰囲気下で使用する用途に工業的に極めて有用であり、特に燃料電池セパレータや電磁波シールド部品、とりわけ固体高分子型燃料電池セパレータとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は固体高分子型燃料電池の構造を示す模式的な断面図であって、図1(b)は電極支持板(セパレータ)を示す斜視図である。
【図2】マトリックス中の導電性フィラー等の分散状態を示す模式図であり、図2(a)は従来品、図2(b)は本発明品をそれぞれ示す。
【図3】導電性フィラーの配向層の状態を示す模式図である。
【図4】図4(a)は実施例及び比較例における体積抵抗値の測定位置を示す抵抗値測定用シートサンプルの平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 電極支持板
1A,1B 溝
2 電解質膜
3 空気極
4 燃料極
10A 表面層(配向層)
10B 内層
11 導電性フィラー
12 カーボンブラック
13 (A)成分の分散相
【発明の属する技術分野】
本発明は高導電性樹脂成形品に係り、特に、情報電子、自動車、建築分野などの電気接点部品、電磁波シールド部品、電極部品、とりわけ蓄電池用接点部品や、燃料電池用のセパレータなど、腐食性の雰囲気下で使用する用途に好適な、耐腐食性に優れた高導電性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池の一つである固体高分子型燃料電池(高分子電解質燃料電池)は、電解質に高分子イオン交換膜を用いた燃料電池であり、出力密度が高く小型軽量化に有利である;電解質が固体であることから逸失がない;差圧に強く加圧制御が容易である;構造が簡単で電解質が腐食性でないため耐久性の面で有利である;動作温度が低いので部品材質選択や起動停止特性の面で有利であるなどの優れた特長を有し、従来は主として宇宙開発用、軍用といった特殊な用途に適用されていたが、近年は、その環境保全性を重視した自動車用途への適用が積極的に行われている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、例えば図1(b)に示す如く、両板面に複数本の溝1A,1Bを並設した2枚の電極支持板1,1を、図1(a)に示す如く、溝1A,1Bの形成面が対向するように向かい合わせ、この支持板1,1間に電解質膜2を介して電極、即ち空気極3と燃料極4とを設けた構造を、単一セルとしている。前記のセルを直列に複数重ね合わせて使用する場合、電極支持板は「セパレータ」と呼ばれる。
【0004】
固体高分子型燃料電池では、燃料極4側の支持板1の溝1Bを経て燃料極4に水素を、また、空気極3側の支持板1の溝1Aを経て空気極3に酸素をそれぞれ供給すると、電解質膜2の中を水素イオンがH+の形で移動することにより、以下のような反応が起こり、電力を取り出すことができる。
【0005】
燃料極(アノード):H2→2H++2e−
空気極(カソード):1/2O2+2H++2e−→H2O
【0006】
従来、固体高分子型燃料電池の電解質膜としては、イオン交換膜やパーフロロカーボンスルホン酸膜などが用いられている。また、電極(空気極,燃料極)としては、カーボンメッシュに白金を担持させたものが用いられている。そして、電極支持板は、これらの電極及び電解質膜を支持すると同時に、電極で発生した電子を取り出すものであるが、一般に、カーボン又はグラファイトの焼結体が用いられている。
【0007】
このような燃料電池セパレータや電磁波シールド部品、及び各種の電気接点部材などの導電性部品には、高い導電性が要求される。特に、燃料電池セパレータ用途においては、酸性高温の腐食環境下にさらされることから、このような腐食に起因する導電性の低下の問題のない、耐腐食性に優れた高導電性材料が望まれる。
【0008】
そこで、従来、熱可塑性樹脂に炭素繊維やカーボンブラック、金属繊維などの導電性フィラーを添加した導電性熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られた成形品を、燃料電池セパレータ等の高度の導電性が要求される部品として適用すべく、炭素繊維やカーボンブラック等の導電性フィラーを高濃度に充填することにより、導電性を高めることが検討されている。このような導電性熱可塑性樹脂組成物によれば、安価で形状の自由度が高く、しかも、耐食性に優れた導電性樹脂成形品を得ることができる。
【0009】
この場合、導電性フィラーの添加量を増加させるに従って得られる成形品の導電性は向上するものの、反面、流動性が著しく低下して成形が困難となるだけでなく、添加量の増加に伴い導電性は次第に飽和し、それ以上添加量を増加させても、導電性が殆ど向上しない領域に到達する。
【0010】
このため、導電性樹脂成形品では、かかる流動性の低下と、導電性向上の限界により、燃料電池セパレータなどの高度の導電性が要求される用途には、必ずしも満足な導電性が得られていないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、安価で形状の自由度の高い導電性樹脂成形品であって、耐腐食性に優れ、成形可能な範囲の導電性フィラーの添加量で十分に高い高導電性を付与し得る高導電性樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の高導電性樹脂成形品は、
(A) エチレン系重合体0.1〜40重量%と、
(B) 上記(A)成分が島状に分散し得る、(A)成分以外の熱可塑性樹脂99.9〜60重量%とからなる樹脂成分100重量部と、
(C) カーボンブラック0.1〜50重量部と、
(D) 炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛60〜400重量部と
を含む導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0013】
前述の如く、熱可塑性樹脂に高導電性を付与するために繊維状又は鱗片状導電性フィラーを添加することは従来より知られている。この場合、導電性フィラーの添加量を増加させることによって、得られる成形品の導電性を高めることができるが、導電性フィラーを高充填すると、導電性の向上(抵抗値の低下)は飽和する傾向があり、かかる高充填領域では、導電性フィラーの添加量を増大させても導電性の向上効果が少ない。特に溶融した樹脂を流動させて成形した成形品(例えば、射出成形品)においては、導電性フィラーが流動によって配向するために、導電性フィラー同士の接触が不十分となり、飽和する導電性レベルは低く(抵抗値レベルは高く)なりやすい。そして、導電性を高めるために導電性フィラーを過度に高充填すると、流動性を著しく損ない、成形が不可能となる。
【0014】
導電性を高めるために、このような導電性フィラーと共に、更にカーボンブラックを配合し、図2(a)に示す如く、導電性フィラー11,11同士を、カーボンブラック12などで繋ぐことによって、ある程度の導電性の改善が可能であるが、カーボンブラックを添加することは、導電性熱可塑性樹脂組成物の極端な粘度の増加を引き起こすために、成形性とのバランスを確保する点においては、限界がある。
【0015】
本発明においては、エチレン系重合体を熱可塑性樹脂のマトリックス中に島状に分散させ、図2(b)に示す如く、エチレン系重合体((A)成分)の分散相13中にカーボンブラック12を分散させる。即ち、エチレン系重合体は基本的にカーボンブラックとの相溶性が良好であることから、熱可塑性樹脂中に島状に分散したエチレン系重合体の分散相13中にカーボンブラック12が優先的かつ選択的に分散する傾向があり、カーボンブラック12が内部に分散した高導電性の島状分散相13を形成する。導電性フィラー11,11間をこの高導電性の分散相13で繋ぐことにより、効率良く導電性を向上させることができる。
【0016】
なお、カーボンブラック12がエチレン系重合体の分散相13中に選択的に分散するとは、添加したカーボンブラック12の大部分がエチレン系重合体の分散相中に存在すること、即ち、エチレン系重合体中に主として存在することである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の高導電性樹脂成形品の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明で用いる成形原料としての導電性熱可塑性樹脂組成物の配合成分について説明する。
【0019】
<(A)成分:エチレン系重合体>
エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、α−オレフィン含有量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下のものを用いることができる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、オクタデセン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、ビニルシクロヘキサン、スチレン等が挙げられる。
【0020】
また、エチレン系重合体としては、グリシジル基、カルボン酸、シラノール基等の極性基で変性されたエチレン系重合体、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−グラフト−ポリメチルメタクリレート、エチレン−グリシジルメタクリレート−グラフト−ポリスチレン等のグリシジル変性エチレン系重合体を用いても良い。
【0021】
これらのエチレン系重合体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0022】
本発明の高導電性樹脂成形品が燃料電池用セパレータ部品である場合、これらの燃料電池用セパレータ部品のなかでも、特に密度0.950以上の高密度ポリエチレンが、ガスバリア性に優れる点で望ましい。
【0023】
このような(A)エチレン系重合体の添加量は、後述の(B)成分の熱可塑性樹脂との合計に対して0.1〜40重量%、望ましくは1〜20重量%である。(A)成分及び(B)成分からなる樹脂成分中の(A)エチレン系重合体の割合がこの範囲より少ないと、エチレン系重合体を配合したことによる導電性の改善効果が得られず、多いと耐熱性を損なうこととなる。
【0024】
<(B)成分:熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、(A)成分のエチレン系重合体以外で(A)成分が島状に分散し得る熱可塑性樹脂であれば良く、非結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、変性ポリオキシメチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、脂環式ポリオレフィンなどが挙げられる。また、結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。またその他に、液晶性ポリエステルなどの液晶樹脂を使用することもできる。これらは使用する目的に応じて機械的強度、成形性等の特性から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
【0025】
本発明の高導電性樹脂成形品を、燃料電池用セパレータとして使用する場合には、耐水性、耐酸性、耐熱性が要求されるため、結晶性樹脂、又は液晶性ポリエステル、特にポリフェニレンサルファイドが性能のバランスに優れる点で望ましい。
【0026】
また、本発明の高導電性樹脂成形品を電磁波シールド部品として使用する場合は、寸法精度やそりの点で、ポリカーボネート、ABS樹脂等の非結晶性熱可塑性樹脂が望ましい。
【0027】
<(C)成分:カーボンブラック>
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等を用いることができ、これらの1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。上記の中でもDBP吸油量が100ml/100g以上、好ましくは100〜400ml/100g以上のものが導電性に優れる点で望ましい。なお、DBP吸油量とは、カーボンブラック100g当りに包含されるジブチルフタレートの量(ml)を表す。
【0028】
カーボンブラックの添加量は、(A)成分と(B)成分との樹脂成分合計100重量部に対して0.1〜50重量部、望ましくは3〜30重量部、更に望ましくは5〜25重量部である。カーボンブラックの配合量がこの範囲より少ないと、カーボンブラックを配合したことによる導電性の向上効果が十分でなく、この範囲よりも多いと、流動性を損なうこととなる。
【0029】
<(D)成分:炭素繊維及び/又は鱗片状黒船>
炭素繊維としては、ポリアクリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油精製時の残渣であるピッチを原料とするピッチ系炭素繊維のいずれも使用できる。
【0030】
本発明で使用される炭素繊維の径については特に制限は無いが、通常平均繊維径1〜30μmであり、好ましくは3〜20μmであり、更に好ましくは5〜15μmである。
【0031】
本発明で使用される炭素繊維の長さには特に制限は無い。長い方が機械特性、導電性にとっては有利に作用するが、成形時の流動性の点では短い方が有利である。要求される導電性及び成形性との兼ね合いから適宜選択すれば良い。
【0032】
通常、押出機による混練や射出成形等の成形工程によって、繊維は破損する。このため、成形品中の炭素繊維の繊維長及び繊維径としては、少なくとも20点以上測定した平均繊維長(L)と繊維径(d)の比(アスペクト比:L/d)が5〜10000の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは10〜3000である。L/dが上記範囲であると、得られる成形品の機械物性、導電性に優れる一方、成形時の流動性にも優れ、繊維同士が絡み合いにくく、分散が良好となる。
【0033】
また、鱗片状黒鉛としては、天然鱗片状黒鉛、又は石油コークスやピッチコークスを主原料として鱗片状に製造された人造黒鉛を使用することができる。
【0034】
鱗片状黒鉛の粒子径は、少なくとも20個の粒子の、平面方向に測定した平均値が、0.5〜200μmの範囲であることが望ましい。また、成形品中において、樹脂の流動方向に沿った長さ(L)と厚み(t)としては、少なくとも20点測定した長さ(L)と厚み(t)の比(アスペクト比;L/t)が、5〜10000、特に10〜3000であることが望ましい。
【0035】
これらの(D)成分の中でも特に、アスペクト比が大きく高い導電性が得られる点で炭素繊維を用いることが望ましい。
【0036】
炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の添加量は、(A)成分と(B)成分との樹脂成分100重量部に対して、60〜400重量部、望ましくは70〜200重量部、更に望ましくは80〜200重量部である。炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の配合量がこの範囲より少ないと、導電性を損なうだけでなく、炭素繊維同士(又は黒鉛同士、又は炭素繊維と黒鉛)間の距離が大きすぎて、カーボンブラックが分散したポリエチレン系重合体の分散相で繋がりにくくなり、本発明による改善効果が得られない。配合量がこの範囲よりも多いと流動性を損なうこととなる。
【0037】
(D)成分としての炭素繊維及び鱗片状黒鉛には、(A)成分のエチレン系重合体や、(B)成分の熱可塑性樹脂との分散性や接着性を向上させるための界面活性剤として、各種の表面処理剤や分散剤による処理を施しても良い。このような処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などのカップリング剤や、非極性セグメントと極性セグメントのブロック又はグラフト共重合体などを使用することができる。このような処理を施すことにより、特に、(B)成分だけでなく、(A)成分との接着性をも向上させることによって、導電性の(A)成分分散相が、(C)成分同士を繋ぐ効果が大きくなり、その結果、得られる成形品の導電性が向上する。
【0038】
<添加成分>
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の任意の添加成分を配合することができる。
【0039】
例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ほう酸アルミニウム繊維等の無機繊維状強化材、アラミド繊維、ポリイミド繊維、フッ素樹脂繊維等の有機繊維状強化材、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン等の無機充填材、フッ素樹脂パウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤を挙げることができる。
【0040】
更に上記成分以外の導電性充填材を添加しても良く、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの粒子状フィラーや、平均繊維径1μm未満の微細炭素繊維などのカーボン系フィラーなどを添加することができる。
【0041】
また、平均粒子径が10μm以上100μm以下の粒子状炭素フィラーを、(A)成分と(B)成分との樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部添加すると、導電性を更に向上させることができる。このような粒子状炭素フィラーとしては、メソフェーズピッチより製造されるメソカーボン小球体や、塊状の天然黒鉛や人造黒鉛を使用することができる。
【0042】
次に本発明の高導電性樹脂成形品の製造方法を説明する。
【0043】
<製造方法>
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂の加工方法で製造することができる。例えば(A),(B),(C)成分及び(D)成分と更に必要に応じて配合される添加成分の全てを予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押し出し機、二軸混練押し出し機、ニーダーなどで溶融混練することによって製造することができる。
【0044】
また、本発明の高導電性樹脂成形品は、このような導電性熱可塑性樹脂組成物を各種の溶融成形法を用いて成形することにより製造することができる。成形法としては、具体的には圧縮成形、押し出し成形、真空成形、ブロー成形、射出成形などを挙げることができる。これらの成形法の中でも、特に射出成形法、真空成形法において、顕著な効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、予め(A)成分の一部に高濃度の(C)成分を添加したマスターバッチを製造し、その後このマスターバッチを(B)成分で希釈しても良い。
【0046】
次に、このようにして製造される本発明の高導電性樹脂成形品の導電性成分の分散及び配向状態と導電性について説明する。
【0047】
<カーボンブラックの選択的分散>
本発明の高導電性樹脂成形品では、(C)成分のカーボンブラックが(A)成分のエチレン系重合体の分散相中に主として分散している。
【0048】
この分散の状態は、エチレン系重合体とカーボンブラックの添加量比や製造条件等によっても異なるが、高導電性樹脂成形品に含まれるカーボンブラックのうち、(A)成分の分散相中に含まれるカーボンブラックの割合が多いほど、本発明による導電性の向上効果が大きくなる。
【0049】
この選択的分散の度合いを大きくするために、本発明において、前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計を100重量%としたとき、(A)成分/(C)成分の重量比(重量%比)が0.2以上5以下であることが好ましい。
【0050】
<導電性成分の配向状態>
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物の射出成形品においては、その表面付近において、図3に示す如く、導電性フィラー11である(D)成分の炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛が流動方向に沿って配向した配向層10Aが形成され、この導電性フィラー11の配向層10Aが、得られる成形品の導電性低下の原因となる。即ち、導電性フィラー11が配向せずランダムに散在している内層10Bにおいては、導電性フィラー11同士の接触ないし絡み合いで良好な導電性が得られるが、導電性フィラー11が配向した表面層10Aでは、互いの接触を確保することができず、導電性が低下する。
【0051】
本発明では、図2(b)に示す如く、導電性フィラー11間を、内部にカーボンブラック12が分散したエチレン系重合体の導電性の分散相13で繋ぐことによって、導電性を改善するが、この導電性フィラー11の配向層10Aにおいて、配向方向と直交する方向の導電性フィラー11,11間の距離が大きいと、導電性の分散相で導電性フィラー11,11同士を繋ぐことが困難になり、十分な導電性の改善効果が得られない。ただし、この間隔が小さくなるように導電性フィラー11の炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛を多量配合することは流動性の著しい低下をひき起こす。
【0052】
従って、本発明において、流動性の低下をひき起こすことなく、カーボンブラックが分散したエチレン系重合体の分散相により炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の導電性フィラー11,11同士を効果的に連結して良好な導電性を得るために、この成形品の配向層10Aにおける、導電性フィラー11、即ち炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛同士の平均距離(間隔の平均値)は0.1〜50μm、特に0.5〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0053】
なお、この平均距離は、図3に示すような成形品の破断面における、表面付近の配向層(通常、表面から5〜500μm程度の範囲)10Aを顕微鏡にて観察して、炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛同士の間隔d1,d2,d3,d4……を少なくとも20点以上測定した際の平均値である。この配向層10Aとは、成形品を流動方向に沿って、破断した破断面の顕微鏡観察において、炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛の成形品表面に対する角度を20本測定した平均値が20°未満である領域とする。
【0054】
<成形品の導電性>
本発明においては、上述のように、導電性フィラーである炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛同士の間を、カーボンブラックが分散したエチレン系重合体の分散相で繋ぐことによって、導電性に優れた成形品を得ることができる。
【0055】
本発明の高導電性樹脂成形品を燃料電池セパレータなどに使用する場合、特に体積抵抗率が1×101Ω・cm以下の高度な導電性とする必要があるが、本発明は、このように高度な導電性が要求される範囲、特に体積抵抗率が1×101Ω・cm以下の領域において優れた効果を得ることができる。
【0056】
【実施例】
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0057】
なお、以下の参考例、実施例及び比較例で用いた原料成分は下記の通りである。
【0058】
PPS:ポリフェニレンサルファイド樹脂 大日本インキ(株)社製 商品名「トープレンH1G」(溶融粘度(300℃) 100poise)
HDPE:高密度ポリエチレン 日本ポリケム(株)製 商品名「HY430」(密度0.954)
EPR:エチレン−プロピレン共重合体 日本合成ゴム(株)製 商品名「EP−912P」(プロピレン含有量22重量%)
カーボンブラック:ケッチェンブラックインターナショナル社製 商品名「ケッチェンブラック EC」(DBP吸油量 360ml/100g)
炭素繊維:PAN系炭素繊維 東邦レーヨン社製 商品名「HTA−C6−SRS」(平均繊維直径7.2μm,平均繊維長6mm(いずれも、光学顕微鏡にて、20点測定値の平均値),エポキシ系界面活性剤処理品)
黒鉛:鱗片状黒鉛 日本黒鉛社製 商品名「CB−100」(平均粒子径57μm(光学顕微鏡にて150点測定値の平均値))
【0059】
参考例1
後述の実施例2において、炭素繊維を配合しなかったこと以外は同様にして導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造し、これを透過型電子顕微鏡にて観察した。その結果、高密度ポリエチレンはポリフェニレンサルファイド樹脂のマトリックス中に、0.7〜5μmの範囲の径で島状の分散相を形成し、かつカーボンブラックは、実質的に高密度ポリエチレンの分散相中に存在していることが確認された。
【0060】
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に示す配合で混合し、2軸押出機(池貝鉄鋼社製「PCM45」、L/D=32(L;スクリュー長、D;スクリュー径))を用いて溶融混練して、導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例6では、予め高密度ポリエチレンにカーボンブラックを20重量%添加したマスターバッチをつくり、これを使用して導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0061】
得られた各導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、75TON射出成型機にて、成形温度330℃、金型表面温度180℃の条件で、図4に示す抵抗値測定用シートサンプル20を成形した。
【0062】
このシートサンプルについて、以下の測定を行った。
【0063】
(1) 体積抵抗値の測定
図4(a)に示すように、サンプル20のa、bの2カ所に、10mm×10mmの範囲で銀を真空蒸着して電極を形成した。同位置の裏側にも同様に、電極を施した。
【0064】
ダイヤインスツルメント社製ロレスタSP(BSPプローブ 4探針)を使用して、図4(b)に示す如く、a、b部それぞれの表裏の電極間の抵抗値を測定し、次式より体積抵抗値を算出し、結果を表1に示した。
【0065】
体積抵抗率(Ω・cm)
=(電極面積(1cm2)/サンプル厚み(3mm))×測定値(Ω)
【0066】
(2) 炭素繊維、及び鱗片状黒鉛の繊維径、粒径及びアスペクト比
成形品を流動方向に沿って破断し、その破断面を電子顕微鏡にて観察して、炭素繊維については繊維径と繊維長を20点測定し、鱗片状黒鉛については、流動方向の長さと、直角方向の厚みを150点測定し、それぞれアスペクト比の平均値を求めた。
【0067】
その結果、全ての実施例及び比較例の成形品において、アスペクト比の平均値は、
炭素繊維 11以上
鱗片状黒鉛 27以上
であることを確認した。
【0068】
なお、ここで、アスペクト比(長さ/径比)については、破断面に露出した炭素繊維の一部が樹脂に隠れてしまうため、正確な繊維長を測定することができないが、少なくとも本発明の望ましい範囲内であることを確認した。
【0069】
(3) 炭素繊維間距離及び鱗片状黒鉛間距離
成形品を流動方向に沿って破断し、破断面を研磨した後、光学顕微鏡にて観察した。図3に示す如く、表面から50〜400μmの深さの範囲で、配向層の存在が確認されたので、その深さの範囲内にて、表面の境界が、視野に対して水平になるようにして、写真を撮影した。
【0070】
次に、得られた画像において、任意の位置に、表面に対して垂直な300μm分の直線Lを引き、直線上の炭素繊維、又は鱗片状黒鉛の間隔を全て測定した。直線は、任意の位置に2本引き、全ての測定値(30〜120点)を平均して、平均距離を求めた。この結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
カーボンブラックと炭素繊維をそれぞれ同配合とした実施例1,2,5と比較例1の結果を対比することにより、(A)成分のエチレン系重合体の配合により、導電性を高めることができることがわかる。同様に、カーボンブラックと鱗片状黒鉛をそれぞれ同配合とした実施例7と比較例4とを対比することにより、(A)成分のエチレン系重合体の配合により、導電性を高めることができることがわかる。
【0073】
比較例2では、カーボンブラックを多量に配合したことにより、流動性が損なわれ充填不可となったが、(A)成分のエチレン系重合体を配合した実施例3では、カーボンブラックがエチレン系重合体中に良好な相溶性で分散することにより、流動性の低下が防止される。
【0074】
また、比較例3では、炭素繊維を多量に配合したことにより、流動性が損なわれ充填不可となったが、(A)成分のエチレン系重合体を配合した実施例4では流動性の低下が防止される。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の高導電性樹脂成形品によれば、安価で形状の自由度の高い導電性樹脂成形品であって、耐腐食性に優れ、しかも導電性も十分に高い高導電性成形品が提供される。
【0076】
本発明の高導電性成形品は、情報電子、自動車、建築分野などの電気接点部品、電磁波シールド部品、電極部品、蓄電池用接点部品や、燃料電池セパレータなどの、腐食性の雰囲気下で使用する用途に工業的に極めて有用であり、特に燃料電池セパレータや電磁波シールド部品、とりわけ固体高分子型燃料電池セパレータとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は固体高分子型燃料電池の構造を示す模式的な断面図であって、図1(b)は電極支持板(セパレータ)を示す斜視図である。
【図2】マトリックス中の導電性フィラー等の分散状態を示す模式図であり、図2(a)は従来品、図2(b)は本発明品をそれぞれ示す。
【図3】導電性フィラーの配向層の状態を示す模式図である。
【図4】図4(a)は実施例及び比較例における体積抵抗値の測定位置を示す抵抗値測定用シートサンプルの平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 電極支持板
1A,1B 溝
2 電解質膜
3 空気極
4 燃料極
10A 表面層(配向層)
10B 内層
11 導電性フィラー
12 カーボンブラック
13 (A)成分の分散相
Claims (6)
- (A) エチレン系重合体0.1〜40重量%と、
(B) 上記(A)成分が島状に分散し得る、(A)成分以外の熱可塑性樹脂99.9〜60重量%とからなる樹脂成分100重量部と、
(C) カーボンブラック0.1〜50重量部と、
(D) 炭素繊維及び/又は鱗片状黒鉛60〜400重量部と
を含む導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする高導電性樹脂成形品。 - 請求項1において、(B)成分がポリフェニレンサルファイド樹脂であることを特徴とする高導電性樹脂成形品。
- 請求項1又は2において、(C)成分が主として(A)成分中に分散していることを特徴とする高導電性樹脂成形品。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、体積抵抗率が1×101Ω・cm以下であることを特徴とする高導電性樹脂成形品。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、(D)成分が配向した配向層を有し、この配向層における配向方向と直交する方向の(D)成分同士の間隔の平均値が0.1〜50μmであることを特徴とする高導電性樹脂成形品。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、燃料電池用セパレータ部品であることを特徴とする高導電性樹脂成形品。
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