JP2004168663A - 硫黄化合物の酸化方法および脱硫油の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】危険な試薬を使用せず穏和な条件下で実施することができる酸化硫黄化合物製造方法および脱硫油製造方法を提供する。
【解決手段】硫黄化合物に遷移金属触媒、犠牲剤、酸素および溶媒を共存させて酸化し、酸化硫黄化合物を製造する。犠牲剤はアルデヒドが好ましく、溶媒は、例えば芳香族炭化水素溶媒が好ましい。脱硫油製造目的の場合は、石油中に含まれる硫黄化合物を前記の方法で酸化した後、生じたスルホンやスルホキシドを吸着、蒸留、抽出等の方法で分離して脱硫する。このときは石油自体が溶媒の役割を果たすため、溶媒は必要ない。本発明の酸化脱硫法は、過酸化水素等の危険な試薬を必要とせず、反応速度も速いためその工業的価値は多大である。
【選択図】 なし
【解決手段】硫黄化合物に遷移金属触媒、犠牲剤、酸素および溶媒を共存させて酸化し、酸化硫黄化合物を製造する。犠牲剤はアルデヒドが好ましく、溶媒は、例えば芳香族炭化水素溶媒が好ましい。脱硫油製造目的の場合は、石油中に含まれる硫黄化合物を前記の方法で酸化した後、生じたスルホンやスルホキシドを吸着、蒸留、抽出等の方法で分離して脱硫する。このときは石油自体が溶媒の役割を果たすため、溶媒は必要ない。本発明の酸化脱硫法は、過酸化水素等の危険な試薬を必要とせず、反応速度も速いためその工業的価値は多大である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫黄化合物の酸化方法および脱硫油の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中から天然に産出したままの石油(原油)は、一般に、有機化合物の形態で硫黄を含んでいる。この硫黄は、石油製品の臭気や色相安定性等に関する問題を引き起こす場合があり、また、燃焼により二酸化硫黄や三酸化硫黄等の有毒ガスを発生し環境に悪影響を及ぼすことがある。そのため、石油精製においては前記硫黄を除去すること(「脱硫」という)が重要である場合が多い。特に、軽油等の燃料油では、環境保護の観点から前記硫黄の含有量が法により厳しく規制されており、前記硫黄を効率よく除去すること(以下「深度脱硫」と言うことがある)が非常に重要である。
【0003】
近年、石油系燃料油中の硫黄量に関する規制はますます厳しくなる傾向にある。例えば、我が国において、法規制により定められた軽油中の総硫黄量(軽油の全質量中に占める硫黄元素質量の割合で表した硫黄元素含有率)は、1976年以降は0.5質量%(5000質量ppm)以下であったが、1992年に0.2質量%(2000質量ppm)以下、1997年に0.05質量%(500質量ppm)以下となった。そして、2004年末までに0.005質量%(50質量ppm)以下まで厳しくなることがすでに決定されている。このため、近い将来、現在よりもさらに効率の良い深度脱硫が必要となる。
【0004】
現在、石油、例えば燃料油の脱硫に一般に用いられている方法は、いわゆる水素化脱硫法である。この方法は、石油中に含まれる前記硫黄を水素添加により硫化水素へと変換して除去する方法であり、Ni−Mo/Al2O3、Co−Mo/Al2O3等のモリブデン系触媒やコバルト系触媒の存在下、高温高圧で水素添加を行なう。
【0005】
水素化脱硫法には、前記の通り、水素添加の際に高温高圧を必要とする難点がある。必要な温度および圧力は石油の種類により異なるが、非常に厳しい条件、例えば100〜200気圧で350℃程度の条件が必要である。さらに、それでも若干の硫黄が変換されずに残留するため、脱硫率に限界がある。水素化脱硫法により現在の総硫黄量規制値である500質量ppm以下はクリアできるが、次代の規制値である50質量ppm以下をクリアするためには様々な難点がある。例えば、硫黄の変換率を向上させ脱硫率をより高めるために単位時間当たり処理する石油の量を減少させると、生産効率が低下する。また、水素添加時の温度をさらに上昇させる方法も考えられるが、触媒の著しい短寿命化や水素ガス消費量の増大等によるコスト上昇を伴うし、石油の分解により脱硫油(精製油)の着色等を引き起こすおそれがある。
【0006】
このような水素化脱硫法の難点を解決する方法として、現在よりもさらに高性能な触媒を使用する方法が考えられる。しかし、前記の難点をすべて解決しつつ50質量ppm以下の規制値をクリアできる触媒はいまだ開発されていない。そのため、水素化脱硫法に代わる脱硫方法として、例えば、バイオ脱硫法、過酸化水素による酸化脱硫法(例えば特許文献1および2参照)、光酸素酸化脱硫法(例えば特許文献3および4参照)等の開発が検討されている。
【0007】
バイオ脱硫法は、微生物または微生物から抽出した酵素を用いて石油中の前記硫黄を水溶性物質に変換し、その後石油から分離する方法である。この方法は、高価な試薬や危険な試薬を必要とせず、かつ、環境に対して有害な物質を放出しないという利点がある。しかし、反応速度が遅く、かつスケールアップが困難なので、工業レベルで使用するためには解決すべき問題が多く、実用化までには時間がかかることが予想される。
【0008】
このため、近い将来に実用化できそうな方法として酸化脱硫法が注目を集めている。この方法は、石油中の含硫黄有機化合物を酸化し、その後石油から分離除去する脱硫方法である。前記含硫黄有機化合物は、酸化して、例えばスルホキシド、スルホン等の形態に変換することにより、沸点や極性が増大するため、吸着、蒸留、抽出等の方法で石油から分離することが容易となる。酸化法によれば、水素添加と異なり、石油中に含まれるほぼ全ての硫黄を変換することができるため、前記分離操作次第で非常に高い脱硫率を達成することができる。特に、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン等の硫黄原子まわりの立体障害が大きい硫黄化合物は水素添加では変換されにくいが、酸化法によれば容易にスルホン等に変換することができる。さらに、酸化脱硫法には、高価な水素を必要とせず、反応条件が穏和であるという利点もある。
【0009】
しかし、酸化脱硫法も、実用化するにはいまだ問題点がある。例えば、過酸化水素による酸化脱硫法では、石油を触媒の存在下または無触媒で過酸化水素と接触させて酸化するが、過酸化水素を大量に使用し、また使用のために貯蔵する必要があるため、コストおよび安全性の問題がある。また、過酸化水素が石油と混合しにくいという問題があるので、反応を効率よく行なうために極性有機溶媒の添加が必要な場合があり、さらなるコスト増や操作の煩雑化の原因となる。
【0010】
また、光酸素酸化脱硫法では、紫外光または可視光照射下、光増感剤と石油を混合し、酸素を吹き込んで前記硫黄化合物を酸化する。この方法は過酸化水素を使用しないため安全性が高いが、やはり反応を効率よく行なうために極性溶媒の添加が必要である。さらに、反応速度がそれほど速くないこと、光増感剤が高価であること、および光照射装置の問題等により、大スケールで反応を行なうことは難しい。
【0011】
なお、含硫黄有機化合物を酸化する方法は上記以外にも種々存在するが(例えば、特許文献1および5参照)、それらを酸化脱硫法に応用して実用化するためにはやはり解決すべき課題がある。例えば、特許文献5には、ジベンゾチオフェンをアルデヒドと混合し、分子状酸素含有ガスにより共酸化してスルホンを製造する方法が記載されている。しかし、この反応は無溶媒で100〜150℃という厳しい条件を必要とするため、石油中の含硫黄有機化合物を酸化するためにはさらに高温高圧が必要であり、石油脱硫にそのまま使用することは難しい。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−286869号公報
【0013】
【特許文献2】
米国特許第6368495号明細書
【0014】
【特許文献3】
特開2000−096068号公報
【0015】
【特許文献4】
特開2001−151748号公報
【0016】
【特許文献5】
特開昭52−081008号公報
以上の通り、工業レベルで実用化できる酸化脱硫法の早急な開発が求められている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、危険な試薬を使用せず穏和な条件下で実施することができる硫黄化合物の酸化方法および脱硫油の製造方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明における硫黄化合物の酸化方法は、前記硫黄化合物を、遷移金属触媒および前記硫黄化合物と共に酸化される化合物(犠牲剤)の存在下、酸素によって酸化し、酸化硫黄化合物に変換する方法である。なお、本発明では、「酸化硫黄化合物」とは、酸化された硫黄原子を含む化合物、例えばスルホキシド、スルホン等をいう。また、酸化反応の際、反応物と共に酸化される化合物を、一般に「犠牲剤」または「共酸化剤」と呼ぶことがあり、本発明では、これらの用語は、前記硫黄化合物と共に酸化される物質を意味する。
【0019】
本発明の酸化硫黄化合物の製造方法は、前記硫黄化合物の酸化方法を用いた製造方法である。また、本発明の脱硫油の製造方法は、硫黄化合物を含む油を準備し、前記硫黄化合物酸化方法を用いて前記油中の硫黄化合物を酸化硫黄化合物に変換する工程と、前記油から前記酸化硫黄化合物を除去する工程とを含む。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本発明における硫黄化合物の酸化方法と、それを用いた酸化硫黄化合物の製造方法および脱硫油の製造方法とは、従来法と比較すると、高温高圧を必要とせず、穏和な条件で実施することが可能である。また、過酸化水素等の危険な試薬を必要としない。このような理由により、本発明は、前記のような酸化脱硫法の問題点を解決し、簡便かつ低コストで十分実用に適した脱硫油製造方法を提供することができる。
【0022】
本発明の硫黄化合物酸化方法においては、本発明の目的を達成できる限りにおいて前記以外の物質を適宜共存させても良い。例えば、酸化硫黄化合物製造目的の場合は、前記硫黄化合物および前記犠牲剤を均一に溶解させ反応をスムーズに進行させるため、適切な溶媒を添加することが好ましい。また、酸素は純粋な酸素ガスに限定されず、酸素と窒素の混合ガスや空気等を使用することができる。特に、コスト低減の観点から空気を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の硫黄化合物酸化方法において、前記酸化硫黄化合物がスルホニル化合物を含むことが好ましい。また、前記硫黄化合物がスルフィドを含み、前記酸化硫黄化合物がスルホンを含むことがより好ましい。
【0024】
なお、本発明では、「スルフィド」とは、二個の炭素原子との間に共有結合を有しそれ以外の原子との間に共有結合を有しない硫黄原子を含む化合物、すなわち下記一般式(2)で表される化合物である。また、「スルホン」とは、二個の炭素原子との間に共有結合を有するスルホニル基を含む化合物、すなわち下記一般式(3)で表される化合物である。そして、「スルホキシド」とは、二個の炭素原子との間に共有結合を有するスルフィニル基を含む化合物、すなわち下記一般式(4)で表される化合物である。ただし、式(2)〜(4)中、R2およびR3は、硫黄原子に隣接する原子が炭素である以外は特に限定されず、アルキル基、芳香族基等どのような官能基でも良く、直鎖状でも分枝状でも環状でも、飽和でも不飽和でも良く、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良い。また、R2とR3とが共有結合により一体となっていても良い。
【0025】
【化2】
【0026】
前記硫黄化合物は、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン(ジフェニレンスルフィド)、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、2,3−ベンゾチオフェン、硫化ジフェニル、硫化メチルフェニル(チオアニソール)、および1,2−ベンゾジフェニレンスルフィドからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。これら化合物の構造式を下記式(5)〜(10)に示す。
【0027】
【化3】
【0028】
これらは、石油中に含まれる含硫黄有機化合物の中で特に含有量が多い物質であり、中でも2,3,4,5−ジベンゾチオフェンの含有量が多い。なお、本発明では、「石油」とは、原油およびその加工品の総称である。
【0029】
前記犠牲剤は特に限定されないが、非極性溶媒に可溶であれば、反応の際に極性溶媒を加える必要がなく好ましい。特に、脱硫油製造目的の場合、前記硫黄を含む油自体が溶媒の役割を果たすため他の溶媒を添加する必要がなく、さらに簡便かつ低コストな製造方法が実現できる。前記犠牲剤は、アルデヒドを含むことが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物のうち少なくとも一種類を含むことがより好ましい。
【0030】
【化4】
【0031】
ただし、式中、R1は、水素または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基である。
【0032】
前記炭化水素基は、任意にフェニル置換された炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝状鎖式炭化水素基、または任意に炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝状鎖式炭化水素基で置換されたフェニル基であることがさらに好ましく、前記鎖式炭化水素基がアルキル基であることが特に好ましい。
【0033】
前記アルデヒドは、具体的には、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、へプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、およびベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。なお、ここでは、鎖状炭化水素基は直鎖状でも分枝状でも良く、例えば「ブチルアルデヒド」と言う場合はノルマルブチルアルデヒドおよび2−メチルプロピオンアルデヒドの両方を含む主旨である。
【0034】
その他使用可能な犠牲剤としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトンが考えられる。なお、前記犠牲剤の使用量は特に限定されず、反応効率とコストとのバランスを考慮して適宜選択すれば良いが、例えば、前記硫黄化合物に対し300〜400mol%である。
【0035】
本発明の硫黄化合物酸化方法に使用する遷移金属触媒は、一般に酸化触媒として用いられているものを使用することができる。前記遷移金属触媒は、例えば、第4周期元素の化合物を少なくとも一種類含むことが反応効率の観点から好ましく、前記第4周期元素は、コバルト、マンガン、ニッケル、銅および鉄からなる群から選択される少なくとも一種類であることがより好ましい。また、前記第4周期元素化合物は、カルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトナト錯体および硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一種類であることがより好ましい。ここで、前記カルボン酸塩が、酢酸塩およびナフテン酸塩のうち少なくとも一種類であり、前記ハロゲン化物が、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される少なくとも一種類であることが特に好ましい。
【0036】
前記遷移金属触媒は、具体的には、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、アセチルアセトナトコバルト、硝酸コバルト、酢酸マンガン、塩化マンガン、アセチルアセトナトマンガン、硝酸マンガン、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、塩化銅、および塩化鉄からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。
【0037】
なお、前記遷移金属錯体の使用量は特に限定されず、反応効率とコストとのバランスを考慮して適宜選択すれば良いが、例えば、前記硫黄化合物に対し1〜10mol%、好ましくは1〜5mol%である。
【0038】
下記スキーム1に、本発明の硫黄化合物酸化方法において起こる酸化反応の一例を示す。スキーム1では、硫黄化合物は2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、犠牲剤はノルマルオクチルアルデヒド(オクタナール)、生成する酸化硫黄化合物は9,9−ジオキソ−9−チアフルオレンである。犠牲剤としてアルデヒドを用いた場合、アルデヒドはいったん酸化されて過酸となり、それが硫黄化合物に酸素を与えて酸化し、スキーム1のようにカルボン酸に変化すると考えられる。
【0039】
【化5】
【0040】
本発明の硫黄化合物酸化方法において、反応温度は特に限定されないが、例えば5〜150℃である。反応温度は、反応スケールや反応物質の濃度等の条件を考慮して適宜選択することが好ましい。
【0041】
本発明の酸化硫黄化合物製造方法において、反応温度は特に限定されないが、例えば5〜100℃、好ましくは30〜60℃、特に好ましくは40℃である。室温で反応を行なっても良いが、必要に応じ加熱すると反応が速く進行する。反応時の発熱量が大きすぎるようであれば、逆に冷却して適温を保持しても良い。反応溶媒も、前記硫黄化合物および前記犠牲剤を溶解しやすく反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素を使用することができる。これらの溶媒は単独で使用しても良いし、二種類以上混合して使用しても良い。
【0042】
本発明の脱硫油製造方法において、反応温度は特に限定されないが、例えば5〜150℃、好ましくは5〜100℃、より好ましくは30〜60℃、特に好ましくは40℃である。前記と同様、必要に応じ加熱するか、または逆に冷却して適温を保持することが好ましい。
【0043】
本発明の脱硫油製造方法において、前記硫黄化合物を含む油は特に限定されないが、例えば、原油、重油、ガソリン、軽油、および灯油からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。
【0044】
前記脱硫油は、例えば、重油、ガソリン、軽油、および灯油からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。また、前記脱硫油の用途は特に限定されないが、例えば、燃料油として使用することが好ましい。
【0045】
なお、本発明の脱硫油製造方法に用いる反応物質等は、ハロゲン、窒素、硫黄等の元素を含まないことが、脱硫油がこれら元素で汚染されるおそれがないため好ましい。しかし、例えばハロゲン化遷移金属錯体により仮に脱硫油がハロゲン汚染されても、酸化硫黄化合物を除去する段階でハロゲンも同時に除去されるため通常は問題ない。
【0046】
本発明の脱硫油は、前記本発明の脱硫油製造方法により製造されることで、低い総硫黄量を達成できる。なお、本発明で「総硫黄量」とは、油の全質量中に占める硫黄元素質量の割合で表した硫黄元素含有率である。前記総硫黄量は、全体の50質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下である。前記総硫黄量の下限は特に限定されないが、通常は0を超える値であり、0であっても良い。
【0047】
次に、本発明を使用した脱硫油製造工程の例について図を用いて説明する。
【0048】
図1に、前記脱硫油製造工程を実施するための装置の一例を示す。ただし、この装置およびこれを用いた脱硫油製造工程は本発明の一実施形態に過ぎず、本発明はこれに限定されない。図示の通り、この装置は、反応塔1、吸着塔2、再生塔3、気体分離装置4および酸化硫黄処理システム5を主要構成要素とする。反応塔1はその上部に未精製油導入口(図示せず)を備えている。さらに、反応塔1および再生塔3はそれぞれの下部に気体導入口(図示せず)を、吸着塔2はその下部に脱硫油排出口(図示せず)をそれぞれ備えている。また、反応塔1の内部には触媒床6が設置されている。好ましく使用できる触媒は前記の通りである。吸着塔2および再生塔3の内部は吸着剤7で充填されている。吸着剤7は特に限定されず、公知の吸着剤、例えばシリカゲルやアルミナ等を使用することができる。そして、反応塔1下部と吸着塔2上部、吸着塔2下部と再生塔3下部、再生塔3上部と吸着塔2上部、再生塔3上部と気体分離装置4および気体分離装置4と酸化硫黄処理システム5は、それぞれパイプ(図示せず)で連結されており、それらのパイプを通じて物質の移動が可能である。物質の移動は、ポンプや弁等の通常用いられる手段(図示せず)を適宜備え付けて行なう。
【0049】
次に、この装置を用いた脱硫油製造工程について説明する。すなわち、まず、反応塔1に未精製油(例えば軽油)8を導入する。未精製油8は、反応塔1内部導入前に予備加熱すると、反応塔2内部での反応がスムーズに進行し好ましい。一方、反応塔1下部の気体導入口から、酸素(または空気)とアルデヒド(例えばホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒド)の混合気体9を導入する。反応塔1の内部で未精製油8と混合気体9とが混合され、触媒床6においてアルデヒドが酸化されて過酸となり、この過酸が硫黄化合物を酸化して酸化硫黄化合物およびカルボン酸を生じる。このとき、適度な反応効率を得るために反応塔1を加熱しても良いが、自然発生する反応熱で十分な場合は加熱しなくても良く、必要であれば逆に冷却しても良い。この酸化反応により、酸化硫黄化合物(例えばスルホン、スルホキシド等)およびカルボン酸(前記アルデヒドが酸化されたもの)を含む酸化処理済油が得られる。そして、得られた酸化処理済油10を、反応塔1下部のパイプを通じて吸着塔2内に導入すると、前記酸化硫黄化合物およびカルボン酸が吸着剤7に吸着され、目的の脱硫油11が吸着塔2下部の脱硫油排出口から排出される。この脱硫油は、総硫黄量が例えば40質量ppm未満となっていることが好ましい。
【0050】
前記酸化硫黄化合物およびそれを吸着した吸着剤は、以下のように処理する。すなわち、まず、使用済吸着剤12を、吸着塔2下部のパイプを通じて再生塔3内に導入する。一方、再生塔3下部の気体導入口を通じて、酸素(または空気)13を再生塔3内に導入する。そして、再生塔3を加熱すると、吸着剤に吸着された前記酸化硫黄化合物等の吸着物質が燃焼し、吸着剤が再生される。この燃焼熱を未精製油8の予備加熱に利用するとエネルギー効率が良く好ましい。再生済吸着剤14は、再生塔3上部のパイプを通じて吸着塔2内に導入し、再び脱硫油製造に利用する。
【0051】
一方、燃焼により生じた混合気体15は、他のパイプを通じて気体分離装置4内に導入する。混合気体15は、燃焼により生じた酸化硫黄(主として二酸化硫黄)、水蒸気、二酸化炭素、および残存酸素等を含んでいる。そして、気体分離装置4により酸化硫黄16を分離し、これをパイプを通じて酸化硫黄処理システム5内に導入して処理する。酸化硫黄の処理方法は特に限定されないが、例えば硫酸の原料等として有効活用することができる。
【0052】
以上のようにして本発明の脱硫油製造方法を実施することができるが、これは本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいてあらゆる変更が可能である。例えば、反応塔を複数設け、酸化処理済油を繰り返し反応塔内部で酸化処理することにより、脱硫率をさらに高めても良い。また、酸化硫黄化合物(スルホン、スルホキシド等)やカルボン酸に利用価値がある場合は、燃焼させず、回収して利用しても良い。酸化硫黄化合物は、例えば、溶媒抽出により吸着剤から分離して精製することができる。カルボン酸については、反応塔の内部温度が前記カルボン酸の沸点以上、例えば150℃程度に設定されている場合は、反応塔上部から回収することも可能である。反応塔の内部温度がそれより低温に設定されている場合は、反応塔下部にカルボン酸回収システムを適宜設置し、前記カルボン酸を別途回収しても良い。また、燃焼後の混合気体から酸化硫黄を単離して利用する必要がなければ、前記混合気体を直接石灰(CaCO3)等に吸着させて処分しても良い。さらに、上記工程ではアルデヒドを酸素または空気との混合気体として導入したが、沸点の高いアルデヒド(例えば、オクタナール等)を使用する場合は、例えば、未精製油を反応塔に導入する直前で混合することが便利である。
【0053】
なお、水素化脱硫法と併用する方法についても説明する。ただし、本発明は特に水素化脱硫法と併用する必要はなく、この方法は、例えば既存の水素化脱硫装置を有効活用するための例示に過ぎない。水素化脱硫法により予備脱硫し、さらに本発明の方法により脱硫することで高い脱硫率を達成できるが、前記の通り、本発明の硫黄化合物酸化方法で繰り返し酸化処理することによっても高い脱硫率を達成できる。
【0054】
図2に、前記水素化脱硫法との併用方法を実施するための装置を示す。図示の通り、この装置は、前記図1の装置に加えて水素化脱硫装置17を備え、また、酸化硫黄処理システム5に代えて硫黄回収炉18を備えている。水素化脱硫装置17は未精製油導入口(図示せず)を、硫黄回収炉18は硫黄排出口(図示せず)をそれぞれ備えている。反応塔1は、未精製油導入口を備える代わりに水素化脱硫装置1とパイプ(図示せず)で連結されており、また、水素化脱硫装置17と硫黄回収炉18もパイプ(図示せず)で連結されている。それ以外は図1の装置と同様である。
【0055】
次に、この装置を用いた脱硫油製造工程について説明する。すなわち、まず、水素化脱硫装置17に未精製油(例えば軽油)8を導入し、予備脱硫する。ここで脱硫された油(予備脱硫油)は総硫黄量が500質量ppm未満となっている。次に、得られた予備脱硫油19と硫化水素20を、パイプを通じてそれぞれ反応塔1および硫黄回収炉18内部に導入する。予備脱硫油19は、反応塔1内部導入前に予備加熱すると、反応塔1内部での反応がスムーズに進行し好ましい。そして、予備脱硫油19を前記と同様に処理して、脱硫油11と酸化硫黄16とを得る。酸化硫黄16は、パイプを通じて硫黄回収炉18内に導入する。さらに、硫黄回収炉18内で酸化硫黄16と硫化水素20とを反応させ、得られた硫黄単体21を硫黄排出口から排出して回収する。
【0056】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0057】
以下の実施例1〜36に示すようにして、スルフィドを対応するスルホンに変換した。反応溶液は15〜30分毎にガスクロマトグラフ(GC)で分析し、基質(スルフィド)の消費率(基質転化率)を求めた。前記基質転化率を求めるに際しては、あらかじめ内部標準物質と基質の面積比−質量比の検量線を作成しておき、それとガスクロマトグラフの分析結果とを対応させて求めた。なお、ガスクロマトグラフ分析に際しては、島津製作所株式会社製GC−14B型ガスクロマトグラフ(商品名)という機器を用いた。
【0058】
(実施例1)
ベンゼン(10ml)、酢酸コバルト(0.05mmol、9.0mg)、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン(1mmol、184mg)、ノルマルオクチルアルデヒド(4mmol、512mg)およびノルマルウンデカン(100mg、GC分析用の内部標準物質)を100mlフラスコに入れて混合した。なお、ここで試薬をフラスコ中に加える順序については、どのような順序でもよい。次に、このフラスコに磁気攪拌子を投入し、還流冷却管および酸素で満たした風船を取り付け、反応系内部を酸素で置換した。そして、この反応器を40℃の油浴にひたし、マグネチックスターラを用いて15分間攪拌すると、スルホン(9,9−ジオキソ−9−チアフルオレン)が白色の沈殿として生成した。反応開始後15分の時点で反応溶液の一部(0.5ml程度)を抜き出し、ガスクロマトグラフで分析したところ、投入したジベンゾチオフェンの99%以上が消費されていることが確認された。なお、反応終了後、反応溶液にヘキサンを加え氷冷した後、前記白色沈殿を濾過により単離したところ、スルホンがほぼ定量的に得られた(収率94mol%)。
【0059】
(実施例2〜29)
酢酸コバルトに代えて同モル量の塩化コバルトを用いる以外は実施例1と同様にして反応を行なったところ(実施例2)、実施例1と同様の結果が得られた(スルホン収率95mol%)。さらに、基質(チオフェン誘導体)、触媒、犠牲剤(アルデヒド)、反応温度および反応時間を適宜変化させる以外は実施例1と同様にしてスルホンを合成した(実施例3〜29)。なお、基質は、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、2,3−ベンゾチオフェン、硫化ジフェニル、または硫化メチルフェニル(チオアニソール)、を使用し、触媒は、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、アセチルアセトナトコバルト、酢酸マンガン、アセチルアセトナトマンガン、酢酸ニッケル、塩化銅または塩化鉄を使用し、アルデヒドは、ノルマルオクチルアルデヒド(オクタナール)、ノルマルヘキシルアルデヒド(ヘキサナール)またはノルマルデシルアルデヒド(デカナール)を使用し、反応温度は40〜60℃、反応時間は15〜165分間とした。
【0060】
実施例1〜29の反応条件および基質転化率をまとめて下記表1および2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1および2から分かる通り、実施例1〜29では、溶媒としてベンゼンのみを用い、常圧で40〜60℃という穏和な条件で高い基質転化率が得られた。この結果は、この方法が酸化硫黄化合物製造方法として優れており、さらに脱硫油製造方法への応用にも適していることを示す。
【0064】
(実施例30〜36)
次に、本法の工業上実用適性をさらに試験するため、酸素の代わりに空気を用いて同様の反応を行なった。すなわち、酸素で満たした風船を付ける代わりに空気を流量20mL/分の速度で流す以外は実施例1〜29と同様にして反応を行なった(実施例30〜35)。なお、実施例30〜35における反応温度は30〜60℃、反応時間は45〜75分であった。結果を表3にまとめて示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3から分かる通り、酸素の代わりに空気を用いても大部分の基質をスルホンに変換することができ、条件を最適化することで99%以上という非常に高い基質転化率が得られた。酸素に代えて空気を使用できることは大幅なコスト低減につながるため、特に工業的スケールでの脱硫油製造方法に適する。なお、実施例30〜35における反応前基質濃度は、約4000質量ppmの総硫黄量に相当する。
【0067】
さらに、基質濃度を低くし、触媒およびアルデヒドの使用量をそれに合わせて減らす以外は上記実施例35と同様にして反応を行なった。すなわち、基質(2,3,4,5−ジベンゾチオフェン)の使用量をちょうど総硫黄量500質量ppm相当とし、触媒(塩化コバルト)を基質に対し5mol%用い、オクタナールを基質に対し400mol%用いる以外は実施例35と同様にして反応を行なった(実施例36)。その結果、3.5時間後(210分後)に、99%以上のジベンゾチオフェンが消費されていることを確認した。このことは、ある程度脱硫された油を本発明の方法により繰り返し処理することで極めて高い脱硫率を達成し得ることを意味する。前記の通り、従来の水素化脱硫法によれば石油を総硫黄量500質量ppm以下にまで脱硫することができるが、本発明の方法によればそれよりもはるかに低い総硫黄量を達成できることが分かった。しかも、実施例1〜36の反応は、常圧で30〜60℃という極めて穏和な条件で実施可能であった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、危険な試薬を使用せず穏和な条件下で実施することができる酸化硫黄化合物製造方法および脱硫油製造方法を提供することができる。本発明の方法によれば、従来の水素化脱硫法と比較して高い脱硫率を実現することができる。また、本発明は反応に高温高圧を必要とせず、水素化脱硫法と比較してはるかに穏和な条件で実施することが可能である。さらに、本発明は、これまでの酸化脱硫法と異なり、過酸化水素等の危険な試薬を必要とせず、しかも反応速度が速い。また、石油に極性溶媒を加えず、低コストかつ簡便な脱硫を行なうこともできる。そして、反応用気体として空気を使用すればさらに低コスト化が可能であり、その工業的価値は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における脱硫油製造装置および脱硫油製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】本発明における脱硫油製造装置および脱硫油製造工程の別の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 反応塔
2 吸着塔
3 再生塔
4 気体分離装置
5 酸化硫黄処理システム
6 触媒床
7 吸着剤
8 未精製油
9 混合気体
10 酸化処理済油
11 脱硫油
12 使用済吸着剤
13 酸素または空気
14 再生済吸着剤
15 混合気体
16 酸化硫黄
17 水素化脱硫装置
18 硫黄回収炉
19 予備脱硫油
20 硫化水素
21 硫黄単体
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫黄化合物の酸化方法および脱硫油の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中から天然に産出したままの石油(原油)は、一般に、有機化合物の形態で硫黄を含んでいる。この硫黄は、石油製品の臭気や色相安定性等に関する問題を引き起こす場合があり、また、燃焼により二酸化硫黄や三酸化硫黄等の有毒ガスを発生し環境に悪影響を及ぼすことがある。そのため、石油精製においては前記硫黄を除去すること(「脱硫」という)が重要である場合が多い。特に、軽油等の燃料油では、環境保護の観点から前記硫黄の含有量が法により厳しく規制されており、前記硫黄を効率よく除去すること(以下「深度脱硫」と言うことがある)が非常に重要である。
【0003】
近年、石油系燃料油中の硫黄量に関する規制はますます厳しくなる傾向にある。例えば、我が国において、法規制により定められた軽油中の総硫黄量(軽油の全質量中に占める硫黄元素質量の割合で表した硫黄元素含有率)は、1976年以降は0.5質量%(5000質量ppm)以下であったが、1992年に0.2質量%(2000質量ppm)以下、1997年に0.05質量%(500質量ppm)以下となった。そして、2004年末までに0.005質量%(50質量ppm)以下まで厳しくなることがすでに決定されている。このため、近い将来、現在よりもさらに効率の良い深度脱硫が必要となる。
【0004】
現在、石油、例えば燃料油の脱硫に一般に用いられている方法は、いわゆる水素化脱硫法である。この方法は、石油中に含まれる前記硫黄を水素添加により硫化水素へと変換して除去する方法であり、Ni−Mo/Al2O3、Co−Mo/Al2O3等のモリブデン系触媒やコバルト系触媒の存在下、高温高圧で水素添加を行なう。
【0005】
水素化脱硫法には、前記の通り、水素添加の際に高温高圧を必要とする難点がある。必要な温度および圧力は石油の種類により異なるが、非常に厳しい条件、例えば100〜200気圧で350℃程度の条件が必要である。さらに、それでも若干の硫黄が変換されずに残留するため、脱硫率に限界がある。水素化脱硫法により現在の総硫黄量規制値である500質量ppm以下はクリアできるが、次代の規制値である50質量ppm以下をクリアするためには様々な難点がある。例えば、硫黄の変換率を向上させ脱硫率をより高めるために単位時間当たり処理する石油の量を減少させると、生産効率が低下する。また、水素添加時の温度をさらに上昇させる方法も考えられるが、触媒の著しい短寿命化や水素ガス消費量の増大等によるコスト上昇を伴うし、石油の分解により脱硫油(精製油)の着色等を引き起こすおそれがある。
【0006】
このような水素化脱硫法の難点を解決する方法として、現在よりもさらに高性能な触媒を使用する方法が考えられる。しかし、前記の難点をすべて解決しつつ50質量ppm以下の規制値をクリアできる触媒はいまだ開発されていない。そのため、水素化脱硫法に代わる脱硫方法として、例えば、バイオ脱硫法、過酸化水素による酸化脱硫法(例えば特許文献1および2参照)、光酸素酸化脱硫法(例えば特許文献3および4参照)等の開発が検討されている。
【0007】
バイオ脱硫法は、微生物または微生物から抽出した酵素を用いて石油中の前記硫黄を水溶性物質に変換し、その後石油から分離する方法である。この方法は、高価な試薬や危険な試薬を必要とせず、かつ、環境に対して有害な物質を放出しないという利点がある。しかし、反応速度が遅く、かつスケールアップが困難なので、工業レベルで使用するためには解決すべき問題が多く、実用化までには時間がかかることが予想される。
【0008】
このため、近い将来に実用化できそうな方法として酸化脱硫法が注目を集めている。この方法は、石油中の含硫黄有機化合物を酸化し、その後石油から分離除去する脱硫方法である。前記含硫黄有機化合物は、酸化して、例えばスルホキシド、スルホン等の形態に変換することにより、沸点や極性が増大するため、吸着、蒸留、抽出等の方法で石油から分離することが容易となる。酸化法によれば、水素添加と異なり、石油中に含まれるほぼ全ての硫黄を変換することができるため、前記分離操作次第で非常に高い脱硫率を達成することができる。特に、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン等の硫黄原子まわりの立体障害が大きい硫黄化合物は水素添加では変換されにくいが、酸化法によれば容易にスルホン等に変換することができる。さらに、酸化脱硫法には、高価な水素を必要とせず、反応条件が穏和であるという利点もある。
【0009】
しかし、酸化脱硫法も、実用化するにはいまだ問題点がある。例えば、過酸化水素による酸化脱硫法では、石油を触媒の存在下または無触媒で過酸化水素と接触させて酸化するが、過酸化水素を大量に使用し、また使用のために貯蔵する必要があるため、コストおよび安全性の問題がある。また、過酸化水素が石油と混合しにくいという問題があるので、反応を効率よく行なうために極性有機溶媒の添加が必要な場合があり、さらなるコスト増や操作の煩雑化の原因となる。
【0010】
また、光酸素酸化脱硫法では、紫外光または可視光照射下、光増感剤と石油を混合し、酸素を吹き込んで前記硫黄化合物を酸化する。この方法は過酸化水素を使用しないため安全性が高いが、やはり反応を効率よく行なうために極性溶媒の添加が必要である。さらに、反応速度がそれほど速くないこと、光増感剤が高価であること、および光照射装置の問題等により、大スケールで反応を行なうことは難しい。
【0011】
なお、含硫黄有機化合物を酸化する方法は上記以外にも種々存在するが(例えば、特許文献1および5参照)、それらを酸化脱硫法に応用して実用化するためにはやはり解決すべき課題がある。例えば、特許文献5には、ジベンゾチオフェンをアルデヒドと混合し、分子状酸素含有ガスにより共酸化してスルホンを製造する方法が記載されている。しかし、この反応は無溶媒で100〜150℃という厳しい条件を必要とするため、石油中の含硫黄有機化合物を酸化するためにはさらに高温高圧が必要であり、石油脱硫にそのまま使用することは難しい。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−286869号公報
【0013】
【特許文献2】
米国特許第6368495号明細書
【0014】
【特許文献3】
特開2000−096068号公報
【0015】
【特許文献4】
特開2001−151748号公報
【0016】
【特許文献5】
特開昭52−081008号公報
以上の通り、工業レベルで実用化できる酸化脱硫法の早急な開発が求められている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、危険な試薬を使用せず穏和な条件下で実施することができる硫黄化合物の酸化方法および脱硫油の製造方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明における硫黄化合物の酸化方法は、前記硫黄化合物を、遷移金属触媒および前記硫黄化合物と共に酸化される化合物(犠牲剤)の存在下、酸素によって酸化し、酸化硫黄化合物に変換する方法である。なお、本発明では、「酸化硫黄化合物」とは、酸化された硫黄原子を含む化合物、例えばスルホキシド、スルホン等をいう。また、酸化反応の際、反応物と共に酸化される化合物を、一般に「犠牲剤」または「共酸化剤」と呼ぶことがあり、本発明では、これらの用語は、前記硫黄化合物と共に酸化される物質を意味する。
【0019】
本発明の酸化硫黄化合物の製造方法は、前記硫黄化合物の酸化方法を用いた製造方法である。また、本発明の脱硫油の製造方法は、硫黄化合物を含む油を準備し、前記硫黄化合物酸化方法を用いて前記油中の硫黄化合物を酸化硫黄化合物に変換する工程と、前記油から前記酸化硫黄化合物を除去する工程とを含む。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本発明における硫黄化合物の酸化方法と、それを用いた酸化硫黄化合物の製造方法および脱硫油の製造方法とは、従来法と比較すると、高温高圧を必要とせず、穏和な条件で実施することが可能である。また、過酸化水素等の危険な試薬を必要としない。このような理由により、本発明は、前記のような酸化脱硫法の問題点を解決し、簡便かつ低コストで十分実用に適した脱硫油製造方法を提供することができる。
【0022】
本発明の硫黄化合物酸化方法においては、本発明の目的を達成できる限りにおいて前記以外の物質を適宜共存させても良い。例えば、酸化硫黄化合物製造目的の場合は、前記硫黄化合物および前記犠牲剤を均一に溶解させ反応をスムーズに進行させるため、適切な溶媒を添加することが好ましい。また、酸素は純粋な酸素ガスに限定されず、酸素と窒素の混合ガスや空気等を使用することができる。特に、コスト低減の観点から空気を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の硫黄化合物酸化方法において、前記酸化硫黄化合物がスルホニル化合物を含むことが好ましい。また、前記硫黄化合物がスルフィドを含み、前記酸化硫黄化合物がスルホンを含むことがより好ましい。
【0024】
なお、本発明では、「スルフィド」とは、二個の炭素原子との間に共有結合を有しそれ以外の原子との間に共有結合を有しない硫黄原子を含む化合物、すなわち下記一般式(2)で表される化合物である。また、「スルホン」とは、二個の炭素原子との間に共有結合を有するスルホニル基を含む化合物、すなわち下記一般式(3)で表される化合物である。そして、「スルホキシド」とは、二個の炭素原子との間に共有結合を有するスルフィニル基を含む化合物、すなわち下記一般式(4)で表される化合物である。ただし、式(2)〜(4)中、R2およびR3は、硫黄原子に隣接する原子が炭素である以外は特に限定されず、アルキル基、芳香族基等どのような官能基でも良く、直鎖状でも分枝状でも環状でも、飽和でも不飽和でも良く、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良い。また、R2とR3とが共有結合により一体となっていても良い。
【0025】
【化2】
【0026】
前記硫黄化合物は、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン(ジフェニレンスルフィド)、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、2,3−ベンゾチオフェン、硫化ジフェニル、硫化メチルフェニル(チオアニソール)、および1,2−ベンゾジフェニレンスルフィドからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。これら化合物の構造式を下記式(5)〜(10)に示す。
【0027】
【化3】
【0028】
これらは、石油中に含まれる含硫黄有機化合物の中で特に含有量が多い物質であり、中でも2,3,4,5−ジベンゾチオフェンの含有量が多い。なお、本発明では、「石油」とは、原油およびその加工品の総称である。
【0029】
前記犠牲剤は特に限定されないが、非極性溶媒に可溶であれば、反応の際に極性溶媒を加える必要がなく好ましい。特に、脱硫油製造目的の場合、前記硫黄を含む油自体が溶媒の役割を果たすため他の溶媒を添加する必要がなく、さらに簡便かつ低コストな製造方法が実現できる。前記犠牲剤は、アルデヒドを含むことが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物のうち少なくとも一種類を含むことがより好ましい。
【0030】
【化4】
【0031】
ただし、式中、R1は、水素または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基である。
【0032】
前記炭化水素基は、任意にフェニル置換された炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝状鎖式炭化水素基、または任意に炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝状鎖式炭化水素基で置換されたフェニル基であることがさらに好ましく、前記鎖式炭化水素基がアルキル基であることが特に好ましい。
【0033】
前記アルデヒドは、具体的には、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、へプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、およびベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。なお、ここでは、鎖状炭化水素基は直鎖状でも分枝状でも良く、例えば「ブチルアルデヒド」と言う場合はノルマルブチルアルデヒドおよび2−メチルプロピオンアルデヒドの両方を含む主旨である。
【0034】
その他使用可能な犠牲剤としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトンが考えられる。なお、前記犠牲剤の使用量は特に限定されず、反応効率とコストとのバランスを考慮して適宜選択すれば良いが、例えば、前記硫黄化合物に対し300〜400mol%である。
【0035】
本発明の硫黄化合物酸化方法に使用する遷移金属触媒は、一般に酸化触媒として用いられているものを使用することができる。前記遷移金属触媒は、例えば、第4周期元素の化合物を少なくとも一種類含むことが反応効率の観点から好ましく、前記第4周期元素は、コバルト、マンガン、ニッケル、銅および鉄からなる群から選択される少なくとも一種類であることがより好ましい。また、前記第4周期元素化合物は、カルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトナト錯体および硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一種類であることがより好ましい。ここで、前記カルボン酸塩が、酢酸塩およびナフテン酸塩のうち少なくとも一種類であり、前記ハロゲン化物が、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される少なくとも一種類であることが特に好ましい。
【0036】
前記遷移金属触媒は、具体的には、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、アセチルアセトナトコバルト、硝酸コバルト、酢酸マンガン、塩化マンガン、アセチルアセトナトマンガン、硝酸マンガン、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、塩化銅、および塩化鉄からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。
【0037】
なお、前記遷移金属錯体の使用量は特に限定されず、反応効率とコストとのバランスを考慮して適宜選択すれば良いが、例えば、前記硫黄化合物に対し1〜10mol%、好ましくは1〜5mol%である。
【0038】
下記スキーム1に、本発明の硫黄化合物酸化方法において起こる酸化反応の一例を示す。スキーム1では、硫黄化合物は2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、犠牲剤はノルマルオクチルアルデヒド(オクタナール)、生成する酸化硫黄化合物は9,9−ジオキソ−9−チアフルオレンである。犠牲剤としてアルデヒドを用いた場合、アルデヒドはいったん酸化されて過酸となり、それが硫黄化合物に酸素を与えて酸化し、スキーム1のようにカルボン酸に変化すると考えられる。
【0039】
【化5】
【0040】
本発明の硫黄化合物酸化方法において、反応温度は特に限定されないが、例えば5〜150℃である。反応温度は、反応スケールや反応物質の濃度等の条件を考慮して適宜選択することが好ましい。
【0041】
本発明の酸化硫黄化合物製造方法において、反応温度は特に限定されないが、例えば5〜100℃、好ましくは30〜60℃、特に好ましくは40℃である。室温で反応を行なっても良いが、必要に応じ加熱すると反応が速く進行する。反応時の発熱量が大きすぎるようであれば、逆に冷却して適温を保持しても良い。反応溶媒も、前記硫黄化合物および前記犠牲剤を溶解しやすく反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素を使用することができる。これらの溶媒は単独で使用しても良いし、二種類以上混合して使用しても良い。
【0042】
本発明の脱硫油製造方法において、反応温度は特に限定されないが、例えば5〜150℃、好ましくは5〜100℃、より好ましくは30〜60℃、特に好ましくは40℃である。前記と同様、必要に応じ加熱するか、または逆に冷却して適温を保持することが好ましい。
【0043】
本発明の脱硫油製造方法において、前記硫黄化合物を含む油は特に限定されないが、例えば、原油、重油、ガソリン、軽油、および灯油からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。
【0044】
前記脱硫油は、例えば、重油、ガソリン、軽油、および灯油からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。また、前記脱硫油の用途は特に限定されないが、例えば、燃料油として使用することが好ましい。
【0045】
なお、本発明の脱硫油製造方法に用いる反応物質等は、ハロゲン、窒素、硫黄等の元素を含まないことが、脱硫油がこれら元素で汚染されるおそれがないため好ましい。しかし、例えばハロゲン化遷移金属錯体により仮に脱硫油がハロゲン汚染されても、酸化硫黄化合物を除去する段階でハロゲンも同時に除去されるため通常は問題ない。
【0046】
本発明の脱硫油は、前記本発明の脱硫油製造方法により製造されることで、低い総硫黄量を達成できる。なお、本発明で「総硫黄量」とは、油の全質量中に占める硫黄元素質量の割合で表した硫黄元素含有率である。前記総硫黄量は、全体の50質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下である。前記総硫黄量の下限は特に限定されないが、通常は0を超える値であり、0であっても良い。
【0047】
次に、本発明を使用した脱硫油製造工程の例について図を用いて説明する。
【0048】
図1に、前記脱硫油製造工程を実施するための装置の一例を示す。ただし、この装置およびこれを用いた脱硫油製造工程は本発明の一実施形態に過ぎず、本発明はこれに限定されない。図示の通り、この装置は、反応塔1、吸着塔2、再生塔3、気体分離装置4および酸化硫黄処理システム5を主要構成要素とする。反応塔1はその上部に未精製油導入口(図示せず)を備えている。さらに、反応塔1および再生塔3はそれぞれの下部に気体導入口(図示せず)を、吸着塔2はその下部に脱硫油排出口(図示せず)をそれぞれ備えている。また、反応塔1の内部には触媒床6が設置されている。好ましく使用できる触媒は前記の通りである。吸着塔2および再生塔3の内部は吸着剤7で充填されている。吸着剤7は特に限定されず、公知の吸着剤、例えばシリカゲルやアルミナ等を使用することができる。そして、反応塔1下部と吸着塔2上部、吸着塔2下部と再生塔3下部、再生塔3上部と吸着塔2上部、再生塔3上部と気体分離装置4および気体分離装置4と酸化硫黄処理システム5は、それぞれパイプ(図示せず)で連結されており、それらのパイプを通じて物質の移動が可能である。物質の移動は、ポンプや弁等の通常用いられる手段(図示せず)を適宜備え付けて行なう。
【0049】
次に、この装置を用いた脱硫油製造工程について説明する。すなわち、まず、反応塔1に未精製油(例えば軽油)8を導入する。未精製油8は、反応塔1内部導入前に予備加熱すると、反応塔2内部での反応がスムーズに進行し好ましい。一方、反応塔1下部の気体導入口から、酸素(または空気)とアルデヒド(例えばホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒド)の混合気体9を導入する。反応塔1の内部で未精製油8と混合気体9とが混合され、触媒床6においてアルデヒドが酸化されて過酸となり、この過酸が硫黄化合物を酸化して酸化硫黄化合物およびカルボン酸を生じる。このとき、適度な反応効率を得るために反応塔1を加熱しても良いが、自然発生する反応熱で十分な場合は加熱しなくても良く、必要であれば逆に冷却しても良い。この酸化反応により、酸化硫黄化合物(例えばスルホン、スルホキシド等)およびカルボン酸(前記アルデヒドが酸化されたもの)を含む酸化処理済油が得られる。そして、得られた酸化処理済油10を、反応塔1下部のパイプを通じて吸着塔2内に導入すると、前記酸化硫黄化合物およびカルボン酸が吸着剤7に吸着され、目的の脱硫油11が吸着塔2下部の脱硫油排出口から排出される。この脱硫油は、総硫黄量が例えば40質量ppm未満となっていることが好ましい。
【0050】
前記酸化硫黄化合物およびそれを吸着した吸着剤は、以下のように処理する。すなわち、まず、使用済吸着剤12を、吸着塔2下部のパイプを通じて再生塔3内に導入する。一方、再生塔3下部の気体導入口を通じて、酸素(または空気)13を再生塔3内に導入する。そして、再生塔3を加熱すると、吸着剤に吸着された前記酸化硫黄化合物等の吸着物質が燃焼し、吸着剤が再生される。この燃焼熱を未精製油8の予備加熱に利用するとエネルギー効率が良く好ましい。再生済吸着剤14は、再生塔3上部のパイプを通じて吸着塔2内に導入し、再び脱硫油製造に利用する。
【0051】
一方、燃焼により生じた混合気体15は、他のパイプを通じて気体分離装置4内に導入する。混合気体15は、燃焼により生じた酸化硫黄(主として二酸化硫黄)、水蒸気、二酸化炭素、および残存酸素等を含んでいる。そして、気体分離装置4により酸化硫黄16を分離し、これをパイプを通じて酸化硫黄処理システム5内に導入して処理する。酸化硫黄の処理方法は特に限定されないが、例えば硫酸の原料等として有効活用することができる。
【0052】
以上のようにして本発明の脱硫油製造方法を実施することができるが、これは本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいてあらゆる変更が可能である。例えば、反応塔を複数設け、酸化処理済油を繰り返し反応塔内部で酸化処理することにより、脱硫率をさらに高めても良い。また、酸化硫黄化合物(スルホン、スルホキシド等)やカルボン酸に利用価値がある場合は、燃焼させず、回収して利用しても良い。酸化硫黄化合物は、例えば、溶媒抽出により吸着剤から分離して精製することができる。カルボン酸については、反応塔の内部温度が前記カルボン酸の沸点以上、例えば150℃程度に設定されている場合は、反応塔上部から回収することも可能である。反応塔の内部温度がそれより低温に設定されている場合は、反応塔下部にカルボン酸回収システムを適宜設置し、前記カルボン酸を別途回収しても良い。また、燃焼後の混合気体から酸化硫黄を単離して利用する必要がなければ、前記混合気体を直接石灰(CaCO3)等に吸着させて処分しても良い。さらに、上記工程ではアルデヒドを酸素または空気との混合気体として導入したが、沸点の高いアルデヒド(例えば、オクタナール等)を使用する場合は、例えば、未精製油を反応塔に導入する直前で混合することが便利である。
【0053】
なお、水素化脱硫法と併用する方法についても説明する。ただし、本発明は特に水素化脱硫法と併用する必要はなく、この方法は、例えば既存の水素化脱硫装置を有効活用するための例示に過ぎない。水素化脱硫法により予備脱硫し、さらに本発明の方法により脱硫することで高い脱硫率を達成できるが、前記の通り、本発明の硫黄化合物酸化方法で繰り返し酸化処理することによっても高い脱硫率を達成できる。
【0054】
図2に、前記水素化脱硫法との併用方法を実施するための装置を示す。図示の通り、この装置は、前記図1の装置に加えて水素化脱硫装置17を備え、また、酸化硫黄処理システム5に代えて硫黄回収炉18を備えている。水素化脱硫装置17は未精製油導入口(図示せず)を、硫黄回収炉18は硫黄排出口(図示せず)をそれぞれ備えている。反応塔1は、未精製油導入口を備える代わりに水素化脱硫装置1とパイプ(図示せず)で連結されており、また、水素化脱硫装置17と硫黄回収炉18もパイプ(図示せず)で連結されている。それ以外は図1の装置と同様である。
【0055】
次に、この装置を用いた脱硫油製造工程について説明する。すなわち、まず、水素化脱硫装置17に未精製油(例えば軽油)8を導入し、予備脱硫する。ここで脱硫された油(予備脱硫油)は総硫黄量が500質量ppm未満となっている。次に、得られた予備脱硫油19と硫化水素20を、パイプを通じてそれぞれ反応塔1および硫黄回収炉18内部に導入する。予備脱硫油19は、反応塔1内部導入前に予備加熱すると、反応塔1内部での反応がスムーズに進行し好ましい。そして、予備脱硫油19を前記と同様に処理して、脱硫油11と酸化硫黄16とを得る。酸化硫黄16は、パイプを通じて硫黄回収炉18内に導入する。さらに、硫黄回収炉18内で酸化硫黄16と硫化水素20とを反応させ、得られた硫黄単体21を硫黄排出口から排出して回収する。
【0056】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0057】
以下の実施例1〜36に示すようにして、スルフィドを対応するスルホンに変換した。反応溶液は15〜30分毎にガスクロマトグラフ(GC)で分析し、基質(スルフィド)の消費率(基質転化率)を求めた。前記基質転化率を求めるに際しては、あらかじめ内部標準物質と基質の面積比−質量比の検量線を作成しておき、それとガスクロマトグラフの分析結果とを対応させて求めた。なお、ガスクロマトグラフ分析に際しては、島津製作所株式会社製GC−14B型ガスクロマトグラフ(商品名)という機器を用いた。
【0058】
(実施例1)
ベンゼン(10ml)、酢酸コバルト(0.05mmol、9.0mg)、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン(1mmol、184mg)、ノルマルオクチルアルデヒド(4mmol、512mg)およびノルマルウンデカン(100mg、GC分析用の内部標準物質)を100mlフラスコに入れて混合した。なお、ここで試薬をフラスコ中に加える順序については、どのような順序でもよい。次に、このフラスコに磁気攪拌子を投入し、還流冷却管および酸素で満たした風船を取り付け、反応系内部を酸素で置換した。そして、この反応器を40℃の油浴にひたし、マグネチックスターラを用いて15分間攪拌すると、スルホン(9,9−ジオキソ−9−チアフルオレン)が白色の沈殿として生成した。反応開始後15分の時点で反応溶液の一部(0.5ml程度)を抜き出し、ガスクロマトグラフで分析したところ、投入したジベンゾチオフェンの99%以上が消費されていることが確認された。なお、反応終了後、反応溶液にヘキサンを加え氷冷した後、前記白色沈殿を濾過により単離したところ、スルホンがほぼ定量的に得られた(収率94mol%)。
【0059】
(実施例2〜29)
酢酸コバルトに代えて同モル量の塩化コバルトを用いる以外は実施例1と同様にして反応を行なったところ(実施例2)、実施例1と同様の結果が得られた(スルホン収率95mol%)。さらに、基質(チオフェン誘導体)、触媒、犠牲剤(アルデヒド)、反応温度および反応時間を適宜変化させる以外は実施例1と同様にしてスルホンを合成した(実施例3〜29)。なお、基質は、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、2,3−ベンゾチオフェン、硫化ジフェニル、または硫化メチルフェニル(チオアニソール)、を使用し、触媒は、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、アセチルアセトナトコバルト、酢酸マンガン、アセチルアセトナトマンガン、酢酸ニッケル、塩化銅または塩化鉄を使用し、アルデヒドは、ノルマルオクチルアルデヒド(オクタナール)、ノルマルヘキシルアルデヒド(ヘキサナール)またはノルマルデシルアルデヒド(デカナール)を使用し、反応温度は40〜60℃、反応時間は15〜165分間とした。
【0060】
実施例1〜29の反応条件および基質転化率をまとめて下記表1および2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1および2から分かる通り、実施例1〜29では、溶媒としてベンゼンのみを用い、常圧で40〜60℃という穏和な条件で高い基質転化率が得られた。この結果は、この方法が酸化硫黄化合物製造方法として優れており、さらに脱硫油製造方法への応用にも適していることを示す。
【0064】
(実施例30〜36)
次に、本法の工業上実用適性をさらに試験するため、酸素の代わりに空気を用いて同様の反応を行なった。すなわち、酸素で満たした風船を付ける代わりに空気を流量20mL/分の速度で流す以外は実施例1〜29と同様にして反応を行なった(実施例30〜35)。なお、実施例30〜35における反応温度は30〜60℃、反応時間は45〜75分であった。結果を表3にまとめて示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3から分かる通り、酸素の代わりに空気を用いても大部分の基質をスルホンに変換することができ、条件を最適化することで99%以上という非常に高い基質転化率が得られた。酸素に代えて空気を使用できることは大幅なコスト低減につながるため、特に工業的スケールでの脱硫油製造方法に適する。なお、実施例30〜35における反応前基質濃度は、約4000質量ppmの総硫黄量に相当する。
【0067】
さらに、基質濃度を低くし、触媒およびアルデヒドの使用量をそれに合わせて減らす以外は上記実施例35と同様にして反応を行なった。すなわち、基質(2,3,4,5−ジベンゾチオフェン)の使用量をちょうど総硫黄量500質量ppm相当とし、触媒(塩化コバルト)を基質に対し5mol%用い、オクタナールを基質に対し400mol%用いる以外は実施例35と同様にして反応を行なった(実施例36)。その結果、3.5時間後(210分後)に、99%以上のジベンゾチオフェンが消費されていることを確認した。このことは、ある程度脱硫された油を本発明の方法により繰り返し処理することで極めて高い脱硫率を達成し得ることを意味する。前記の通り、従来の水素化脱硫法によれば石油を総硫黄量500質量ppm以下にまで脱硫することができるが、本発明の方法によればそれよりもはるかに低い総硫黄量を達成できることが分かった。しかも、実施例1〜36の反応は、常圧で30〜60℃という極めて穏和な条件で実施可能であった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、危険な試薬を使用せず穏和な条件下で実施することができる酸化硫黄化合物製造方法および脱硫油製造方法を提供することができる。本発明の方法によれば、従来の水素化脱硫法と比較して高い脱硫率を実現することができる。また、本発明は反応に高温高圧を必要とせず、水素化脱硫法と比較してはるかに穏和な条件で実施することが可能である。さらに、本発明は、これまでの酸化脱硫法と異なり、過酸化水素等の危険な試薬を必要とせず、しかも反応速度が速い。また、石油に極性溶媒を加えず、低コストかつ簡便な脱硫を行なうこともできる。そして、反応用気体として空気を使用すればさらに低コスト化が可能であり、その工業的価値は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における脱硫油製造装置および脱硫油製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】本発明における脱硫油製造装置および脱硫油製造工程の別の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 反応塔
2 吸着塔
3 再生塔
4 気体分離装置
5 酸化硫黄処理システム
6 触媒床
7 吸着剤
8 未精製油
9 混合気体
10 酸化処理済油
11 脱硫油
12 使用済吸着剤
13 酸素または空気
14 再生済吸着剤
15 混合気体
16 酸化硫黄
17 水素化脱硫装置
18 硫黄回収炉
19 予備脱硫油
20 硫化水素
21 硫黄単体
Claims (23)
- 硫黄化合物の酸化方法であって、前記硫黄化合物を、遷移金属触媒および前記硫黄化合物と共に酸化される化合物(犠牲剤)の存在下、酸素によって酸化し、酸化硫黄化合物に変換する方法。
- 前記酸化硫黄化合物がスルホニル化合物を含む請求項1に記載の方法。
- 前記硫黄化合物がスルフィドを含み、前記酸化硫黄化合物がスルホンを含む請求項1または2に記載の方法。
- 前記硫黄化合物が、2,3,4,5−ジベンゾチオフェン(ジフェニレンスルフィド)、4,6−ジメチル−2,3,4,5−ジベンゾチオフェン、2,3−ベンゾチオフェン、硫化ジフェニル、硫化メチルフェニル(チオアニソール)、および1,2−ベンゾジフェニレンスルフィドからなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記犠牲剤がアルデヒドを含む請求項1から4のいずれかに記載の方法。
- 前記炭化水素基が、任意にフェニル置換された炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝状鎖式炭化水素基、または任意に炭素数1〜12の直鎖状もしくは分枝状鎖式炭化水素基で置換されたフェニル基である請求項6に記載の方法。
- 前記鎖式炭化水素基がアルキル基である請求項7に記載の方法。
- 前記アルデヒドが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、へプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、およびベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項5に記載の方法。
- 前記遷移金属触媒が、第4周期元素の化合物を少なくとも一種類含む請求項1から9のいずれかに記載の方法。
- 前記第4周期元素が、コバルト、マンガン、ニッケル、銅および鉄からなる群から選択される少なくとも一種類である請求項10に記載の方法。
- 前記第4周期元素化合物が、カルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトナト錯体および硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一種類である請求項10または11に記載の方法。
- 前記カルボン酸塩が、酢酸塩およびナフテン酸塩のうち少なくとも一種類であり、前記ハロゲン化物が、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される少なくとも一種類である請求項12に記載の方法。
- 前記遷移金属触媒が、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、アセチルアセトナトコバルト、硝酸コバルト、酢酸マンガン、塩化マンガン、アセチルアセトナトマンガン、硝酸マンガン、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、塩化銅、および塩化鉄からなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項1から9のいずれかに記載の方法。
- 反応温度が5〜150℃の範囲である請求項1から14のいずれかに記載の方法。
- 請求項1から15のいずれかに記載の方法を用いた酸化硫黄化合物の製造方法。
- 硫黄化合物を含む油を準備し、請求項1から15のいずれかに記載の方法を用いて前記油中の硫黄化合物を酸化硫黄化合物に変換する工程と、前記油から前記酸化硫黄化合物を除去する工程とを含む脱硫油の製造方法。
- 前記硫黄化合物を含む油が、原油、重油、ガソリン、軽油、および灯油からなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項17に記載の脱硫油の製造方法。
- 前記脱硫油が、重油、ガソリン、軽油、および灯油からなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項17または18に記載の脱硫油の製造方法。
- 前記脱硫油が燃料油である請求項17から19のいずれかに記載の脱硫油の製造方法。
- 請求項1から20のいずれかに記載の方法に使用する遷移金属触媒。
- 請求項17から20のいずれかに記載の脱硫油製造方法により製造される脱硫油。
- 総硫黄量が全体の50質量ppm以下である請求項22に記載の脱硫油。
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