JP2004167792A - 積層板の製造方法及びこの方法により製造された積層板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリビニルアルコールとイソシアネート化合物を含む接着剤を木質板の片面又は両面に塗布し、この接着剤を塗布した木質板に別の木質板を重ね合せて加圧することにより積層板を製造する方法において、上記接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておくことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の木質板をホルムアルデヒドを含まない接着剤を用いて接着する積層板の製造方法及びこの方法により製造された積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の積層板製造用接着剤には、ユリア系樹脂接着剤、メラミン系樹脂接着剤、フェノール系樹脂接着剤等のホルムアルデヒドを含む熱硬化性樹脂接着剤が使用されている。これらの接着剤は安価でかつ接着性にも優れている反面、積層板の製造中に毒性のあるホルムアルデヒドが大気中に放散して作業環境を悪化させるばかりでなく、製品化された後でも積層板内部の接着剤層に残存するホルムアルデヒド及び接着層が加水分解することによりホルムアルデヒドが長期に亘って放出する欠点があった。また積層板は家具材料や住宅の内装材として密閉された建物内において、放出したホルムアルデヒドが使用者の皮膚や粘膜に接触しやすい状態で使用されるため、ホルムアルデヒドを含まない接着剤が求められていた。
【0003】
上記ホルムアルデヒド含有の接着剤の欠点を解消するために、本出願人はホルムアルデヒドを含まない水性の接着剤を提案した(例えば、特許文献1参照)。この接着剤は、ポリビニルアルコール及び/又は水性のエマルジョンと充填剤とクルードMDI(例えば、ポリメリックMDI)を含む接着剤であり、ホルムアルデヒドを使用せず、木材などに含まれる水酸基を有する成分とイソシアネート基が反応して優れた接着性能を示す。またこの接着剤は充填剤を含むことから粘度が向上し、木質板の表面に塗布すると、充填剤が木質板の粗い表面に充填される。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−121021号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示される接着剤は、木質板の表面に塗布したときに、充填剤により粘度が向上したとしても、木質板の表面粗さが比較的大きいときには、充填剤による接着剤の浸透防止効果は不十分であって、接着剤成分が塗布後、過度に木質板に浸透して、木質板の表面に均一な接着剤層を形成せず、いわゆる欠膠状態になり易い。この状態で木質板同士を接着すると、接着不良となるおそれがある。このため、木質板の表面粗さの程度に応じて、接着剤の塗布量を調整したり、或いは接着剤に充填剤を混合し粘度を上げることにより、木質板に塗布したときの接着剤の木質板への浸透を防止する方法が試みられている。別の解決策として、塗布後すぐに重ね合わせた木質板を圧締している。
【0006】
しかし接着剤の塗布量を多くすると、接着剤が接着面で滲み出やすく接着コストが高まる。また充填剤の含有量を増やして所望の粘度まで高めた接着剤は、その木質板への浸透防止がある程度図られるが、塗布作業性が悪いばかりか、最終接着強度が低下する問題がある。塗布後の迅速な圧締はやはり作業性を悪化させる。
また脂分を多く含む木質板に対しては、溶媒である水が木質板に浸透せず仮接着性が悪く、長時分の圧締を必要とする。更に積層板の防腐性及び防虫性を高めるために、従来接着剤に防腐・防虫剤を予め添加していたが、この方法では接着剤が木質板全体に浸透しないためその効果は低い。
【0007】
本発明の目的は、ポリビニルアルコールとイソシアネート化合物を含む接着剤を木質板に塗布する際に、接着剤の塗布作業性が良く、表面が粗い木質板に対しても、また脂分を多く含む木質板に対しても、木質板同士を良好に接着し得る積層板の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、木質板の表面粗さ又は脂分の程度に拘わらず、接着剤の一定の塗布量で所望の接着強度が得られる積層板の製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、木質板同士の接着強度が高く、防腐・防虫性のある積層板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ポリビニルアルコールとイソシアネート化合物を含む接着剤を木質板の片面又は両面に塗布し、前記接着剤を塗布した木質板に別の木質板を重ね合せて加圧することにより積層板を製造する方法において、上記接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておくことを特徴とする。
接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておき、この木質板に上記接着剤を塗布すると、この接着剤の成分であるポリビニルアルコールと木質板の塗布面にプレコーティングされたほう素化合物が接触し化学結合する。この化学結合により塗布面における接着剤の粘度が上昇し、塗布した接着剤が木質板に浸透せずに均一な接着剤層として塗布面に残留する。この状態で別の木質板を重ね合せて加圧すれば、木質板同士が高い強度で接着する。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、接着剤が更に水性エマルジョン又は充填剤のいずれか一方又は双方を含む製造方法である。水性エマルジョン又は充填剤のいずれか一方又は双方を含むことにより、接着剤の接着性能がより向上する。特に充填剤を含むことにより、接着剤を塗布し硬化した後で、充填剤が木質板の表面の微細な空隙を充填し、積層板に耐水性、耐候性、耐久性、耐衝撃性を付与する。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ほう素化合物がほう酸又は四ほう酸ナトリウムのいずれか一方又は双方である製造方法である。ほう素化合物は、ほう酸又は四ほう酸ナトリウムをそれぞれ単独でも、或いは組合せたものでもよい。これらのほう素化合物は低価格である点、また低濃度でもその効果を発揮する点で好適である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、プレコーティングがブラシコーティング、ディップコーティング、スプレイコーティング、ローラコーティング又はカーテンフローコーティングである製造方法である。積層板の製造規模に応じて、いずれかコーティングが選ばれる。
請求項5に係る発明は、請求項2に係る発明であって、接着剤がポリビニルアルコールを1〜10重量%、イソシアネート化合物を8〜40重量%、水性エマルジョンを15〜50重量%、充填剤を10〜30重量%含む製造方法である。所定の接着強度を得るために、接着成分の配合割合が決められる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1又は5に係る発明であって、ほう素化合物の水溶液がほう素化合物を0.1〜6.0重量%含む製造方法である。プレコーティング用水溶液中のほう素化合物は、木質板の塗布面でポリビニルアルコールと化学結合するため、接着剤中のポリビニルアルコールの含有量に依存する。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれか1項に記載の方法で製造された積層板である。上記方法で製造された積層板は接着強度が高い。またプレコーティングされたほう素化合物は木質板内部に浸透するので、得られた積層板はほう素化合物の保有する防腐及び防虫性を発揮する効果がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の接着剤は、接着成分として、ポリビニルアルコール及びイソシアネート化合物を含む。また接着剤は更に水性エマルジョン又は充填剤のいずれか一方又は双方を含んでもよい。接着剤の残部は溶媒であって、主として水である。
ポリビニルアルコールは主として重合度と鹸化度により規定される水溶性高分子である。本発明に用いられるポリビニルアルコールに適する重合度は、500〜3000、好ましくは1000〜2500、更に好ましくは1200〜1800である。重合度が上記下限値未満では接着強度が低くなり、また上記上限値を越えると接着剤の粘度が高くなり過ぎて使用が難しくなる。また本発明のポリビニルアルコールに適する鹸化度は、82〜99モル%、好ましくは85〜97モル%である。鹸化度が上記下限未満では接着剤が泡立って使いにくく、かつ耐水性も低下し易い。また上記上限値を越えると水溶液の安定性が悪く使いにくくなる。接着剤中のポリビニルアルコールの配合割合は、上記重合度と鹸化度の範囲内で1〜10重量%、好ましくは4〜8重量%である。
【0015】
イソシアネート化合物としては、ポリメリックMDI単独で十分であるが、水素化MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの分子中にイソシアネート基を2個以上含むイソシアネート化合物を併用してもよい。接着剤中のイソシアネート化合物の配合割合は、8〜40重量%、好ましくは10〜20重量%である。上記下限値未満では接着強度が低くなり、また上記上限値を越えると、接着剤を製造してから、接着剤として使用可能な時間(可使用時間)が短くなり、作業性が悪くなる。
【0016】
水性エマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、各種ポリアクリル酸エステルエマルジョン、クロロプレンゴムラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン等の有機高分子エマルジョンである。これらの中でスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックス、各種ポリアクリル酸エステルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン等はより好ましい水性エマルジョンである。これらの水性エマルジョンにカルボキシル変性、イミノ変性、アミノ変性、一級アルコール変性等の官能基変性をした水性エマルジョンは更に好ましい。接着剤中の水性エマルジョンの配合割合は、15〜50重量%、好ましくは20〜30重量%である。上記下限値未満では接着強度が低くなり、また上記上限値を越えると接着剤が高価になる。
【0017】
充填剤としては、ア)クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、イ)カオリン、タルクなどのケイ酸塩、ウ)硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどのカルシウム化合物、エ)アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、鉄などの金属酸化物又は水酸化物、オ)カーボン、ガラス、マイカなどの無機物の粉末又は繊維状物、カ)樹木の粉末、ヤシ殻粉、モミガラ、キ)玉蜀黍、高りゃんなどの茎の粉末、ク)クルミ、モモなどの種子穀粉、ケ)小麦粉、米粉、イモデンプン、脱脂大豆粉、血粉、カゼインなどのタンパク質やデンプン質が例示される。特に上記ケ)の充填剤は増量剤的な性質をも有する。本発明の充填剤は、自然の含水率であれば、予め加熱乾燥したり、脱水処理したりする必要はない。また充填剤は一種類のものを配合することも、複数種類のものを混合することもできる。粒径の異なる充填剤を混合することは、充填剤の沈降防止に有効である。上記充填剤の中で炭酸カルシウムは安価で比較的容易に入手でき、硬度が低いため、好ましい。接着剤中の充填剤の配合割合は、10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。上記下限値未満では接着強度が低くなり、また上記上限値を越えると接着剤の粘度が高くなり過ぎて使用が難しくなる。
【0018】
本発明の被着材である木質板は、木質の板状物であって、厚さ0.5〜4.0mm程度の単板である。また本発明の積層板は、3枚以上(奇数枚)の木質板の繊維方向を互いに直交させて接着した板材料(合板)のみならず、複数枚の木質板を繊維方向を互いに直交させずに接着した板材料を含む。
本発明の上記接着剤を用いて、積層板を製造するには、積層板にするための複数の木質板、或いは3枚以上の奇数枚の木質板を用意し、表層の木質板となる以外の他の木質板のそれぞれの両面又は片面に上記接着剤を塗布する。次いで表層の木質板と接着剤付きの木質板とをそれぞれ繊維方向が交互に直角方向になるように重ねて、或いは繊維方向に拘わらず重ねて、室温で圧締することにより、各木質板を相互に接着する。
【0019】
本発明の特徴ある点は、接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておくことである。ほう素化合物の水溶液は、ほう素化合物を0.1〜6.0重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%含む。プレコーティング用水溶液中のほう素化合物は、木質板の塗布面でポリビニルアルコールと化学結合するため、接着剤中のポリビニルアルコールの含有量に依存する。水溶液中のほう素化合物の含有割合が上記下限値未満では、接着剤が木質板に容易に浸透し、所望の接着強度が得られない。また上記上限値を越えると木質板表面上にほう素化合物が析出し過剰となる。
ほう素化合物としては、ほう素元素を含有するものならば何でもよいが、ほう化物、ほう酸塩が選ばれ、特にほう酸又は四ほう酸ナトリウムのいずれか一方又は双方であることが好ましい。ほう素化合物は、粉末でもその効果は発揮するが、水溶液にした方が取り扱いが容易である。
【0020】
プレコーティングの方法としては、各種コーティング方法を採用することができる。例示すればブラシコーティング、ディップコーティング、スプレイコーティング、ローラコーティング又はカーテンフローコーティングである。はけ塗りであるブラシコーティングは特別な設備を要せず簡便で少量製造に適する。ディップコーティング、スプレイコーティング、ローラコーティングは量産に適し、特にディップコーティング又はスプレイコーティングはほう素化合物の水溶液が木質板内部に十分に浸透し、得られた積層板にほう素化合物の保有する防腐及び防虫性をより効果的に付与する。原木丸太から剥いた単板(木質板)に対して、ディップコーティング処理又はスプレイコーティング処理を施し、この単板をドライヤー中で乾燥することで、現行の積層板製造のラインに組み入れることができる。また原木丸太から剥いた単板(木質板)を乾燥した後、ディップコーティング又はスプレイコーティングでほう素化合物の水溶液を塗布することもできる。上記いずれのプレコーティングをするにしても、接着効果に重要な要因である木質板の含水率を一定にしておくために、プレコーティングした後、接着剤を塗布する前に、4〜12%の所定の含水率に木質板を自然乾燥又は加熱乾燥しておくことが好ましい。
【0021】
次に、本発明による作用を説明する。
接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておき、この木質板に上記接着剤を塗布すると、この接着剤の成分であるポリビニルアルコールと木質板の塗布面にプレコーティングされたほう素化合物が接触し化学結合する。この化学結合により塗布面における接着剤の粘度が上昇し、その結果ウエットタックが強くなり、塗布した接着剤が木質板に浸透せずに均一な接着剤層として塗布面に残留する。この状態で別の木質板を重ね合せて加圧すれば、木質板同士が高い強度で接着する。また本発明の接着剤はその粘度が高くなく塗布作業性を損なわず、しかも木質板の表面粗さの程度に拘わらず接着剤の一定の塗布量で所望の接着強度が得られる。プレコーティングされたほう素化合物は木質板内部に浸透するので、得られた積層板はほう素化合物の保有する防腐及び防虫性を発揮する効果がある。
従って本発明は、表面が粗く、接着剤成分が浸透しやすい木質板でも、予めほう素化合物をコーティングしておくことにより、積層板を作業性良く製造でき、この製造方法により高い接着強度を有する積層板が得られる。
【0022】
更に、従来の接着剤では、脂分を多く含む木質板に塗布する場合には、溶媒である水が木質板に浸透せず、ポリビニルアルコール、水性エマルジョンによる造膜が遅くなり、その結果、仮接着性が悪くなり長時分の圧締が必要であったが、本発明の接着剤では、上記作用で、脂分を多く含む木質板に対しても接着剤を塗布した後の仮接着性が向上し、圧締時間の短縮が可能となる。従って、本発明は、表面粗さが大きな木質板でも、脂分を多く含む木質板でも、ほう素化合物の水溶液のプレコーティングにより、作業性と接着力に優れた積層板の製造方法が可能になる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
ポリビニルアルコールの12%水溶液(重合度1700,鹸化度88モル%)70重量部と、充填剤としての炭酸カルシウム30重量部と、ポリメリックMDI(日本ポリウレタン製、商品名MR−200)60重量部とを製糊ミキサーに入れ撹拌して均一に混合し、接着剤を調製した。この接着剤は、接着剤を100重量%とするときに、ポリビニルアルコールを5重量%と炭酸カルシウムを19重量%とポリメリックMDIを38重量%含む。
一方、ほう酸及び四ほう酸ナトリウムがそれぞれ1重量%溶解したほう素化合物の2%水溶液を用意した。また表面が粗い厚さ3.0mmのカポール単板(木質板)を3枚用意した。表面層及び裏面層の単板となる以外の他の1枚の単板の両面に、上記2%水溶液を10g/(30cm×30cm)の割合になるようにスプレイコーティング法により塗布し、この単板の含水率が10%になるように乾燥した。
【0024】
次いで、上記プレコーティングした単板の両面に、上記接着剤を35g/(30cm×30cm)の割合になるように塗布した。引き続いて、表面層の単板と接着剤付きの単板と裏面層の単板を、それぞれ繊維方向が交互に直角になるように重ねて20分間放置堆積した後、室温25℃で1平方センチ当たり117.6Nの圧力を加えて30分間圧締した。その後、125℃に加温した熱プレスで、1平方センチ当たり98Nの圧力を加えて3分間圧締し、合板を製造した。
【0025】
<実施例2>
ポリビニルアルコールの15%水溶液(重合度1100,鹸化度88モル%)50重量部と、スチレンブタジエン共重合ラテックス(旭化成株式会社製、商品名DL−612)80重量部と、充填剤としての炭酸カルシウム40重量部と、ポリメリックMDI(日本ポリウレタン製、商品名MR−200)20重量部とを製糊ミキサーに入れ撹拌して均一に混合し、水を加え、接着剤を調製した。この接着剤は、接着剤を100重量%とするときに、ポリビニルアルコールを4重量%とスチレンブタジエン共重合ラテックスを42重量%と炭酸カルシウムを21重量%とポリメリックMDIを11重量%含む。
一方、ほう酸及び四ほう酸ナトリウムがそれぞれ0.5重量%溶解したほう素化合物の1%水溶液を用意した。また脂分の多い厚さ2.3mmの北洋カラマツ材単板(木質板)を3枚用意した。表面層及び裏面層の単板となる以外の他の1枚の単板の両面に、上記1%水溶液を6g/(30cm×30cm)の割合になるようにブラシコーティング法により塗布し、この単板の含水率が12%になるように乾燥した。
【0026】
次いで、上記プレコーティングした単板の両面に、上記接着剤を38g/(30cm×30cm)の割合になるように塗布した。引き続いて、表面層の単板と接着剤付きの単板と裏面層の単板を、それぞれ繊維方向が交互に直角になるように重ねて20分間放置堆積した後、室温25℃で1平方センチ当たり117.6Nの圧力を加えて20分間圧締した。その後、120℃に加温した熱プレスで、1平方センチ当たり78.4Nの圧力を加えて1分間圧締し、合板を製造した。
【0027】
<比較例1>
実施例1と同一の接着剤及び実施例1と同一の単板3枚を用意した。単板にほう素化合物の水溶液によるプレコーティングをすることなく、実施例1と同様な条件で合板を製造した。
【0028】
<比較例2>
実施例2と同一の接着剤及び実施例2と同一の単板3枚を用意した。単板にほう素化合物の水溶液によるプレコーティングをすることなく、実施例2と同様な条件で合板を製造した。
【0029】
<比較例3>
ポリビニルアルコールの12%水溶液(重合度1700,鹸化度88モル%)40重量部と、ポリビニルアルコールを保護コロイドとして重合したエチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン(クラレ製、商品名OM4200)60重量部と、充填剤としての炭酸カルシウム30重量部と、ポリメリックMDI(日本ポリウレタン製、商品名MR−200)15重量部とを製糊ミキサーに入れ、撹拌して均一に混合した。その後この混合物にほう酸及び四ほう酸ナトリウムがそれぞれ1重量%溶解したほう素化合物の2%水溶液を0.5重量部添加して混合し、更に水を加え接着剤を調製した。この接着剤は、接着剤を100重量%とするときに、ポリビニルアルコールを3重量%とエチレン酢酸ビニル共重合エマルジョンを41重量%と炭酸カルシウムを21重量%とポリメリックMDI10重量%とほう素化合物を0.0001重量%含む。
実施例1と同一の単板3枚を用意した。単板にほう素化合物の水溶液によるプレコーティングをすることなく、実施例1と同様な条件で合板を製造した。
【0030】
<比較試験1及び評価>
実施例1,2及び比較例1〜3で得られた各合板の接着性能を、JAS普通合板規格に規定する煮沸繰返し試験によりそれぞれ調べた。この煮沸繰返し試験では、試験片を煮沸水中に4時間浸潰した後、60℃の温度で20時間乾燥し、更に沸騰水中に4時間浸潰し、これを室温の水中にさめるまで浸潰し、濡れたままの状態で接着強度を測定する。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2の合板は、接着剤の塗布量が比較的少ないにも拘わらず、適合基準である68.6×104Paを超える優れた接着強度を示した。また実施例2の合板は平均木部破断率90%であった。これに対して、比較例1〜3の合板は、それぞれ適合基準以下の接着強度であった。平均木部破断率に関しては比較例2の合板は10%、比較例3の合板は0%であった。比較例1〜3の合板の接着層を観察したところ単板中に接着剤が過度に浸透した明らかな欠膠状態による接着不良個所があった。またほう素化合物の2%水溶液を0.5重量部添加混合した比較例3の接着剤は、その粘度が急上昇し適正な塗布量での塗布が困難であった。
【0033】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び比較例1で製造した合板を用い、以下に示す木材腐朽菌に対する抵抗性試験を実施した。
試料を切断した後、PD培地をシャーレに固め、試料が直接培地に触れぬようにスライドガラスを台として培地に置き、供試菌(オオウズラタケ、Coriolellus palustris)を培地上に接種し蓋をして密閉し、28±1℃の恒温器にて8週間培養した。
その結果を表2に示す。表2において、「−」は試験片上に腐朽菌の発生がないことを意味し、「+++」は試験片上に2/3以上の腐朽菌が発生していることを意味する。表2から明らかなように、比較例1による合板に腐朽菌が大量に発生したのに対して、実施例1による合板には腐朽菌の発生は全くなく、実施例1による合板は防腐性に優れていることが判った。
【0034】
【表2】
【0035】
<比較試験3及び評価>
実施例1及び比較例1で製造した合板を用い、(社)日本木材保存協会規格第8号「木材防虫剤の防虫効力試験方法(2)」により防虫試験を実施した。この防虫試験では、供試合板の各端面を幅約20mm切り落とした後、心板の繊維方向に80mm、これと直交方向に40mmの合板片を作成する。この合板片を3枚平に積み重ね、四隅に釘を打ち込んでブロックをつくり、各ブロックの中央にブロックを完全に貫通する直径24mmの穴をあける。試験体の一方の穴にろ紙をでんぷんのりで貼りつけ、この面を下にして開放部に内径35mm、高さ40mmのガラスリングをおき、供試虫1組を入れ、リングの上に試験体の長さの方向に合せてスライドガラスをのせゴムバンドで全体を固定し、25〜27℃、関係湿度70〜75%で飼育する。飼育開始後90日を経過したら軟X線装置により次世代幼虫の有無を調査し、無処理試験体から成虫の脱出がほぼ完了するまで観察を継続する。観察を終了した後、処理試験体を破砕して生存虫数(生存幼虫数及び生存成虫数と脱出成虫数の合計)を確認し、次式によって平均発生虫数を求める。
【0036】
平均発生虫数(頭)=生存虫数の合計/3(試験体の数)
その結果を表3に示す。表3から明らかなように、比較例1による合板に虫が14頭発生したのに対して、実施例1による合板には虫が全く発生せず、実施例1による合板は防虫性に優れていることが判った。
【0037】
【表3】
【0038】
<実施例3>
カポールの原木丸太をロータリーレースで、3.5mm厚さの単板を剥き、約940mm幅に切断し、長さ1840mm、幅940mmの単板を5枚用意した。その後その単板を1%ほう酸水溶液中に約3秒間浸漬してディップコーティングした。ほう酸水溶液から単板を引上げ、ドライヤーで200℃の温度下、10分間乾燥し、室温になるまで放置した。この単板の含水率は8%であった。
【0039】
次に、表面層になる単板1枚には接着剤を塗布しなかった。残りの4枚の単板の片面には、実施例1と同一の接着剤をロールスプレッダにて1.96Paの割合でローラコーティングした。それぞれの繊維方向が平行になるように5枚の単板を重ねて20分間放置した後、室温25℃で1平方センチ当たり117.6Paの圧力を加えて20分間圧締した。その後、120℃に加温した熱プレスで、1平方センチ当たり78.4Paの圧力を加えて3分間圧締し、積層板を製造した。
【0040】
<比較例4>
実施例1と同一の接着剤及び実施例3と同一の単板5枚を用意した。単板にはほう素化合物の水溶液によるプレコーティングをすることなく、実施例3と同様な条件で積層板を製造した。
【0041】
<比較試験4及び評価>
実施例3及び比較例4で得られた各積層板の接着性能を、単板積層材規格に規定する浸漬剥離試験によりそれぞれ調べた。この浸漬剥離試験では、1片が75mmの正方形状のものを試験片とする。試験片を70℃の温水中に2時間浸潰した後、60℃の恒温乾燥機に入れ、試験片の含水率が8%以下となるまで乾燥する。適合基準は、試験片の同一接着層における剥離した部分の長さが、それぞれの長さの1/3以下である。その結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ポリビニルアルコールとイソシアネート化合物を含む接着剤を木質板に塗布する際に、接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておき、この木質板に上記接着剤を塗布すると、この接着剤の成分であるポリビニルアルコールと木質板の塗布面にプレコーティングされたほう素化合物が接触し化学結合する。この化学結合により塗布面における接着剤の粘度が上昇し、その結果ウエットタックが強くなり、塗布した接着剤が木質板に浸透せずに均一な接着剤層として塗布面に残留する。この状態で別の木質板を重ね合せて加圧すれば、表面が粗い木質板に対しても、また脂分を多く含む木質板に対しても、木質板同士が高い強度で接着する優れた効果を奏する。
また本発明の接着剤はその粘度が高くなく塗布作業性を損なわず、しかも木質板の表面粗さ又は脂分の程度に拘わらず接着剤の一定の塗布量で所望の接着強度が得られる。プレコーティングされたほう素化合物は木質板内部に浸透するので、得られた積層板はほう素化合物の保有する防腐及び防虫性を発揮する効果がある。
Claims (7)
- ポリビニルアルコールとイソシアネート化合物を含む接着剤を木質板の片面又は両面に塗布し、前記接着剤を塗布した木質板に別の木質板を重ね合せて加圧することにより積層板を製造する方法において、
前記接着剤を塗布する木質板の塗布面にほう素化合物の水溶液をプレコーティングしておくことを特徴とする積層板の製造方法。 - 接着剤が更に水性エマルジョン又は充填剤のいずれか一方又は双方を含む請求項1記載の製造方法。
- ほう素化合物がほう酸又は四ほう酸ナトリウムのいずれか一方又は双方である請求項1記載の製造方法。
- プレコーティングがブラシコーティング、ディップコーティング、スプレイコーティング、ローラコーティング又はカーテンフローコーティングである請求項1記載の製造方法。
- 接着剤がポリビニルアルコールを1〜10重量%、イソシアネート化合物を8〜40重量%、水性エマルジョンを15〜50重量%、充填剤を10〜30重量%含む請求項2記載の製造方法。
- ほう素化合物の水溶液がほう素化合物を0.1〜6.0重量%含む請求項1又は5記載の製造方法。
- 請求項1ないし6いずれか1項に記載の方法で製造された積層板。
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-
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