JP2004167304A - 液状体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】不活性ガス等の雰囲気中で液状体の吐出を行うに際して、高度かつ高効率に雰囲気を置換することができ、かつ水分の低下により生じる静電気を効率よく除去することができる液状体吐出装置を提供する。
【解決手段】基板を保持する基板保持部と、該基板上に液状体を吐出する吐出ヘッドとを備えた吐出装置本体30が、チャンバー11内に収容されてなる液状体吐出装置において、前記チャンバー11内壁の周縁部に、イオン風を送風可能なイオン発生手段51〜54が設けられた構成とする。
【選択図】 図1
【解決手段】基板を保持する基板保持部と、該基板上に液状体を吐出する吐出ヘッドとを備えた吐出装置本体30が、チャンバー11内に収容されてなる液状体吐出装置において、前記チャンバー11内壁の周縁部に、イオン風を送風可能なイオン発生手段51〜54が設けられた構成とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状体吐出装置に関し、特に、特定雰囲気下で液状体を吐出する用途にも好適に用いることができる液状体吐出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液状体材料を吐出する吐出ヘッドを備えた吐出装置として、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタが知られている。
インクジェットプリンタに備えられるインクジェットヘッドは、通常、液状体を貯留するキャビティと、該キャビティに連通するノズルと、前記キャビティ内に貯留された液状体を前記ノズルより吐出させるための吐出手段とを有して構成されている。また、このような吐出ヘッドには液状体を貯留する液状体タンクが接続されており、これから吐出ヘッドに液状体が供給されるようになっている。
【0003】
また、前記のインクジェットヘッドは、近年では吐出ヘッドとして、民生用のインクジェットプリンタだけでなく工業用の吐出装置、すなわち各種デバイスの構成要素を形成するための装置としても使用されるようになってきている。例えば、液晶装置などにおけるカラーフィルタ、有機EL装置における発光層や正孔注入層、さらには各種デバイスの金属配線、マイクロレンズなどについても、その形成のために吐出ヘッドが用いられるようになってきている。
【0004】
ここで、上記吐出装置を有機EL装置の製造に適用する場合には、その有機層を形成する際に、形成された膜の吸湿、有機材料の変質を考慮して不活性ガス中で前記吐出工程を行うことが好ましいとされている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
また、前記インクジェットヘッドを液晶装置などのカラーフィルタの製造に用いた場合、特に基板がガラス製であることから帯電し易く、したがってこの帯電した領域にカラーフィルタ材料を吐出した際、吐出した液滴が所望の位置と異なる方向に着弾されてしまう、いわゆる飛行曲がりが生じることがある。
そこで、このような飛行曲がりを抑え、液滴の着弾位置ずれを防止したカラーフィルタの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図5は、不活性ガス雰囲気中で液状体の吐出を行うことができる液状体吐出装置の概略構成図である。この図に示す液状体吐出装置100は、ガス置換機能を備えたチャンバー111と、このチャンバー111内部に収容された吐出装置本体130とをその基本構成としており、チャンバー111の一方の側壁に吸気口112が設けられ、この側壁と対向する側の側壁に排気口114が設けられている。また、吐出装置本体130は、平板状のベース131を有しており、このベース131上に配置される基板(図示略)上に吐出ヘッド(図示略)から液状体を吐出して着弾させるようになっている。そして、チャンバー111内のガス置換を行うには、排気口114から排気しながら吸気口112から所定のガスを導入し、必要に応じてガスの供給を連続的に行いながら液状体の吐出を行うものとされている。また吐出装置本体130の上側方にイオナイザ150が設けられて基板に対してイオン風を送るようになっている。
【特許文献1】
特開2002−56980号公報
【特許文献2】
特開平11−281810号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5に示す液状体吐出装置100においてガス置換を行う場合には、チャンバー111内部の雰囲気を、最初の大気状態から酸素濃度や水分濃度が所定以下のレベルとなるまでガス置換を行う必要があるが、複雑な構造で、場合によっては大型の吐出装置本体130がチャンバー111内部に配置されているため、装置本体130の陰やチャンバー111の角部分115でガスが滞留し、チャンバー111内の酸素や水分の濃度を必要なレベルにまで到達できない、あるいは到達までの時間が非常に掛かるという問題点があった。
【0008】
また、上記装置を用いて不活性ガス雰囲気中で液状体の吐出を行う場合には、水分濃度が低いために各部に静電気が発生し易くなり、この帯電を除去することも必要になる。
先のカラーフィルタの製造方法では、単に基板そのものの帯電を防止することを目的としており、図5に示す構成でもイオナイザ150により基板の電荷の除去は可能である。しかしこの構成は、あくまで基板がガラスなどの電荷が解放され難いものであることによる。カラーフィルタ製造以外の各種のデバイスの製造プロセスでは、基板そのもの以外の要素、例えば、インクを基板に対して吐出するための装置部品や、インクそのものが帯電する場合があり、特に、インクの帯電はヘッドから吐出される液滴の飛行曲がりを生じさせるのみならず、インクジェットヘッド(吐出ヘッド)の駆動素子や基板上に既設された電気回路等の破壊の原因となるおそれがある。
しかして、このような基板そのもの以外の要素に対しては、これの帯電を防止する技術が提供されていないのが現状である。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、不活性ガス等の雰囲気中で液状体の吐出を行うに際して、高度かつ高効率に雰囲気を置換することができ、かつ水分の低下により生じる静電気を効率よく除去することができる液状体吐出装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の液状体吐出装置は、上記課題を解決するために、基板を保持する基板保持部と、該基板上に液状体を吐出する吐出ヘッドとを備え、少なくとも前記吐出ヘッドが、ガス置換機能を備えたチャンバー内に収容されてなる液状体吐出装置において、前記チャンバー内壁の周縁部に、イオン風を送風可能なイオン発生手段が設けられたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、チャンバー内のガス置換を行う際に、ガスが滞留しやすい内壁周縁部(すなわちチャンバー内部の角部)にイオン発生手段を設けることで、このイオン発生手段から送られるイオン風によりこの内壁周縁部近傍のガスを攪拌することができる。従って、チャンバー内部のガスが置換されやすくなり、チャンバー内の酸素や水分の濃度を低減することが容易になる。また、イオン発生手段により送られるイオン風が当たった部分の電荷が除去されるので、水分濃度が低下して静電気が発生しやすくなっているチャンバー内部での帯電を効果的に防止することができ、処理される基板上に既設の素子や、液状体吐出装置の吐出ヘッド等の素子を静電気から保護することができる。
本発明による上記の効果を得るためには、少なくとも吐出ヘッドと、この吐出ヘッドから吐出される液状体が着弾される基板とが前記チャンバー内に配置されていればよい。
【0011】
本発明の液状体吐出装置は、前記イオン発生手段が、前記チャンバー内壁の複数の周縁部に配設されており、前記イオン発生手段からチャンバー内部に送られるイオン風により気流を形成可能とされたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、イオン風により気流を形成することができるので、この気流を制御することで、例えば基板上に着弾した液状体から蒸発したガス成分等が所定方向に流れるように制御することができ、ガス成分の凝固等による装置や基板の不具合が生じにくい液状体吐出装置とすることができる。
【0012】
本発明の液状体吐出装置は、前記チャンバーに吸気口と排気口とが設けられており、前記イオン発生手段から送られるイオン風により形成される気流が、前記吸気口から排気口に向かう方向とされたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、ガス置換等の際に吸気口から排気口に向かって形成される気流に沿ってイオン発生手段からのイオン風を流すようにするので、チャンバー内に置換前のガスが滞留しにくくなり、さらに効率よくガスの置換を行うことができる。
【0013】
本発明の液状体吐出装置は、前記チャンバー内壁の周縁部に設けられた全てのイオン発生手段が、前記排気口に向かってイオン風を送るように配設されたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、吸気口から排気口に向かって形成される気流を乱すことなく、イオン風を気流に乗せて送ることができ、内壁周縁部のガスをイオン風により押し出し、気流に乗せてチャンバー外へ排出することができる。
【0014】
本発明の液状体吐出装置は、前記基板保持部に保持された基板に対してイオン風を送るイオン発生手段を備えたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、先の構成によるガス置換の効率化、及び各部の帯電の防止という効果に加え、さらに効率よく基板上の電荷を除去することができ、基板上に既設されたアクティブ素子等や、基板に近接して動作する吐出ヘッドが基板の帯電により静電破壊されるのを効果的に防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の液状体吐出装置の一実施形態における全体構成を示す図であり、この図に示す液状体吐出装置10は、吐出装置本体30と、この吐出装置本体30を内部に収容したチャンバー11とを備えて構成されている。前記チャンバー11は、その側壁に設けられた吸気口12と、前記側壁と対向する側壁に設けられた排気口14とを備えており、吸気口12から所定のガスを導入し、同時に排気口14から排気を行うことで内部の空間のガス置換を行えるようになっている。また、チャンバー11内の各部にイオン発生手段50〜54が設けられている。
【0016】
図2は、図1に示す吐出装置本体30の斜視構成図である。この吐出装置本体30は、図2に示すように、ベース31、基板移動手段32、ヘッド移動手段33、吐出ヘッド34、液状体タンク35、イオン発生手段50等を有して構成されたもので、吐出ヘッド34より基板Sに対して液状体を吐出するものである。なお、本実施形態の吐出装置34では、前記基板Sとして易帯電性の構成要素が設けられたものも好適に用いることができ、また前記液状体として易帯電性の材料を用いることもできる。さらには、本実施形態では、基板Sの形状や寸法等に特に限定はなく、図示した平板状のもの以外を用いたとしても本発明の技術範囲を逸脱するものではない。
【0017】
ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
基板移動手段32は、本発明における基板保持部、すなわち基板Sを保持するための基板保持部として機能するもので、Y軸方向に沿ってガイドレール36を有したものである。このような構成のもとに、基板移動手段32は例えばリニアモータにより、スライダ37をガイドレール36に沿って移動させるようになっている。スライダ37には、θ軸用のモータが備えられている。このモータは、例えばダイレクトドライブモータからなるものであり、これのロータはテーブル39に固定されている。このような構成のもとに、モータに通電するとロータおよびテーブル39は、θ方向に沿って回転し、テーブル39をインデックス(回転割り出し)するようになっている。
【0018】
テーブル39は、基板Sを位置決めし、保持するものである。すなわち、このテーブル39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをテーブル39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、テーブル39の位置決めピンにより、テーブル39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。また、テーブル39には、吐出ヘッド34がインクを捨打ちあるいは試し打ちするためのフラッシング領域が設けられることもある。このフラッシング領域は、通常、基板Sの側方側に設けられる。
【0019】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に吐出ヘッド34を保持させるスライダ42を移動可能に保持したものである。スライダ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0020】
吐出ヘッド34には、揺動位置決め手段としてのモータ43、44、45、46が接続されている。そして、モータ43を作動させると、吐出ヘッド34はZ軸に沿って上下動し、Z軸上での位置決めが可能になっている。なお、このZ軸は、前記のX軸、Y軸に対しそれぞれに直交する方向(上下方向)である。また、モータ44を作動させると、吐出ヘッド34は図1中のβ方向に沿って揺動し、位置決め可能になり、モータ45を作動させると、吐出ヘッド34はγ方向に揺動し、位置決め可能になり、モータ46を作動させると、吐出ヘッド34はα方向に揺動し、位置決め可能になる。
【0021】
このように吐出ヘッド34は、スライダ42上において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能となり、かつ、α、β、γに沿って揺動し、位置決め可能となっている。したがって、吐出ヘッド34のインク吐出面を、テーブル39側の基板Sに対する位置あるいは姿勢を、正確に制御することができるようになっている。
ここで、吐出ヘッド2は、図3(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15…とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15…とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0022】
各キャビティ15とリザーバ16の内部とは液状体で満たされるようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15に液状体を供給する供給口として機能するようになっている。また、ノズルプレート12には、キャビティ15から液状体を噴射するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。一方、振動板13には、リザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液状体タンク35が供給チューブ24(図2参照)を介して接続されている。
【0023】
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図3(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21、21間に挟持され、通電により外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたもので、本発明における液状体の吐出手段として機能するものである。
【0024】
このような構成のもとに圧電素子20が接合された振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内に液状体が充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当する液状体が、リザーバ16から流路17を介して流入する。
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル18から液状体の液滴22が吐出される。
【0025】
なお、吐出ヘッドの吐出手段としては、前記の圧電素子(ピエゾ素子)20を用いた電気機械変換体以外でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザーなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
【0026】
液状体タンク35は、図2に示したように吐出ヘッド34の近傍に配置されたもので、吐出によって形成する構成要素の液状材料(液状体)を貯留したものである。この液状体タンク35には、その内部、あるいはその外側にヒータ(図示せず)が設けられていてもよい。このヒータは、貯留している液状体を加熱するためのもので、特に液状体が高粘性のものの場合などに、加熱することで粘度を低くし、液状体タンク35から吐出ヘッド34への液状体の流入を容易にできるようにするものである。
【0027】
本実施形態の液状体吐出装置10には、図1に示すように、イオン発生手段50〜54が設けられている。これらのイオン発生手段50〜54は、イオン風を発生させるもの、例えばイオナイザーやイオン送風機によって構成することができる。ここで、イオン風とは、放電針先端でコロナ放電により生じたイオンに、空気やN2を吹き付けてイオンの流れとしたものである。なお、本発明におけるイオン発生手段50〜54では、上記の放電針を多数備えることで、十分な量のイオンを送ることができるように構成されている。
【0028】
イオン発生手段50は、吐出装置本体30のテーブル39側方側にY軸方向に延びて配設されており、テーブル39上の基板Sに対してイオン風を送るようになっている。また、イオン発生手段51〜54は、図1に示すように、チャンバー11の内壁周縁部(側面視において角部)にそれぞれ配設されており、吸気口12が設けられた側壁周縁部に設けられたイオン発生手段51,54は、吸気口12が設けられた側壁と対向する側壁(排気口14)に向かってイオン風を送るようになっている。また、排気口14が設けられた側壁周縁部に設けられたイオン発生手段52,53も排気口14に向かってイオン風を送るようになっている。
【0029】
上記イオン発生手段51〜54によれば、図5に示したように、ガス置換時にガスの滞留が生じやすいチャンバー11の側壁周縁部に配設され、前記排気口14に向かってイオン風を送るようになっているので、前記チャンバー11の側壁周縁部におけるガスの滞留を効果的に防止することができ、またイオン発生手段から送られるイオン風によりチャンバー内面や吐出装置本体30の各構成部材の帯電を効果的に防止することができる。従って、チャンバー11のガス置換時にあっては、初期ガスの滞留を防止しつつガスの置換を行うことで酸素や水分の濃度を高速に所定レベルに到達させることができ、吐出装置本体30を動作させる際には、各部の帯電が効果的に防止されることで、吐出装置本体30の動作を信頼性の高いものすることができる。
【0030】
また、テーブル39の側方側に設けられたイオン発生手段50によれば、基板Sへのイオン風の供給が行われるので、特に基板Sの帯電を効果的に防止することができ、基板S上にアクティブ素子等が既設されている場合にはそれらの素子の静電破壊を防止でき、また、基板S近傍で作動する吐出ヘッド34の素子の静電破壊も防止することができる。また、易帯電性の液状体を用いて基板S上の構成要素が形成されている場合にも、その構成要素を帯電され難くすることができる。したがって、易帯電性の液状体によって形成される構成要素、例えば金属配線が帯電するのも効果的に防止することができ、従って、この構成要素(金属配線)の帯電に起因して吐出ヘッド34が破壊されてしまうなどの不都合が生じることもない。
【0031】
上記のイオン発生手段50〜54については、前記各部材に対して十分均等にイオン風を吹き付けることができるよう、これを移動させる移動手段に取り付けておき、この移動手段の動作により任意の方向に沿って移動させるようにしてもよく、スイング動作等により、イオン風を送る方向を連続的に変化させるようにしてもよい。
また、チャンバー11の内壁又はその近傍に設けられる先のイオン発生手段51〜54の送風方向は、図示した位置に限定されず、チャンバー11の角部におけるガスの滞留を防止するように適切にイオン風を送ることができるならば、その位置を移動しても構わない。従って、本発明に係る液状体吐出装置10では、図示した位置以外にもチャンバー11内の複数の位置にイオン発生手段を設けることができる。
【0032】
また、イオン発生手段50〜54のイオン風による除電は、吐出装置本体30や基板Sに対して非接触であることから、吐出装置本体30の動作や基板Sのハンドリングに支障を来すことがなく、極めて好ましい除電方法となる。また、イオン風を送る(吹き付ける)ことによる電荷の中和は、ガス置換時のみならず、吐出装置本体30の動作中にも行うようにするのが好ましい。
【0033】
なお、前記実施形態では、基板Sに設けられる易帯電性の構成要素としてTFTなどのアクティブ素子を、また易帯電性の材料からなる液状体として金属コロイド材料などの金属配線材料を例示したが、本発明はこれらに限定されることなく、易帯電性の構成要素、あるいは易帯電性の材料からなる液状体として他の種々のものも適用することができる。具体的には、易帯電性の構成要素としては、前記した金属配線や各種のメモリ素子、有機EL素子、有機TFT素子などを挙げることができ、易帯電性の材料からなる液状体としては、導電性微粒子を分散させてなる液状体や、導電性の樹脂材料、例えば導電性カラーフィルタ材料などを挙げることができる。また、本発明は、前記構成要素や液状体として、易帯電性のものを用いた場合に大きな効果を得ることができるが、それ以外の構成要素や液状体に用いても良いのは勿論である。
【0034】
次に、本発明の液状体吐出装置の適用例として、有機EL装置の製造例について説明する。
図4は、前記吐出装置により一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図であり、まずこの有機EL装置の概略構成を説明する。
図4に示すようにこの有機EL装置本体301は、基板311、回路素子部321、画素電極331、バンク部341、発光素子351、陰極361(対向電極)、および封止基板371から構成された有機EL素子本体302に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部321は、TFT等からなるアクティブ素子が基板311上に形成され、複数の画素電極331が回路素子部321上に整列して構成されたものである。そして、各画素電極331間にはバンク部341が格子状に形成されており、バンク部341により生じた凹部開口344に、発光素子351が形成されている。陰極361は、バンク部341および発光素子351の上部全面に形成され、陰極361の上には封止用基板371が積層されている。
【0035】
有機EL素子を含む有機EL装置本体301の製造プロセスは、バンク部341を形成するバンク部形成工程と、発光素子351を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子351を形成する発光素子形成工程と、陰極361を形成する対向電極形成工程と、封止用基板371を陰極361上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0036】
発光素子形成工程は、凹部開口344、すなわち画素電極331上に正孔注入層352および発光層353を形成することにより発光素子351を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層352を形成するための第1組成物(液状体)を各画素電極331上に吐出する第1吐出工程と、吐出された第1組成物を乾燥させて正孔注入層352を形成する第1乾燥工程とを有し、発光層形成工程は、発光層353を形成するための第2組成物(液状体)を正孔注入層352の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された第2組成物を乾燥させて発光層353を形成する第2乾燥工程とを有している。
【0037】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の吐出装置本体30を用いるとともに、不活性ガス(アルゴンガスや窒素ガス等)雰囲気中で前記各吐出工程を行うようにしている。
この有機EL装置本体301の製造において、各構成要素形成のための吐出に先立ち、チャンバー11内のガスを不活性ガスと置換する作業を行う。その際、図1に示すイオン発生手段51〜54からチャンバー内部に向けてイオン風を送りながらガスの置換を行うことで、チャンバー11の角部や吐出装置本体の陰に置換前のガスが滞留するのを効果的に防止することができるので、酸素や水分の濃度が高速に所定のレベルにまで到達し、前記吐出工程開始までの時間を短縮でき、製造を効率化することができる。また、イオン発生手段51〜54により送られるイオン風により吐出装置本体30の帯電が防止され、信頼性の高い動作が可能になる。
さらに、図2に示すように基板Sに向けてイオン風を供給するイオン発生手段50を設けるならば、基板S上に既設の素子や吐出ヘッド34の素子が静電破壊されるのをより効果的に防止することができる。従って、本発明の液状体吐出装置を用いて有機EL装置本体301を製造するならば、その生産性を向上し、かつその信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の液状体吐出装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の吐出装置本体の斜視構成図である。
【図3】図3は、吐出ヘッドの概略構成図である。
【図4】図4は、有機EL装置の側断面図である。
【図5】図5は、ガス置換機能を備えた液状体吐出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
10…液状体吐出装置、11…チャンバー、12…吸気口、14…排気口、30…吐出装置本体、32…基板保持部(基体保持部)、34…吐出ヘッド、50〜54…イオン発生手段、S…基板(基体)
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状体吐出装置に関し、特に、特定雰囲気下で液状体を吐出する用途にも好適に用いることができる液状体吐出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液状体材料を吐出する吐出ヘッドを備えた吐出装置として、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタが知られている。
インクジェットプリンタに備えられるインクジェットヘッドは、通常、液状体を貯留するキャビティと、該キャビティに連通するノズルと、前記キャビティ内に貯留された液状体を前記ノズルより吐出させるための吐出手段とを有して構成されている。また、このような吐出ヘッドには液状体を貯留する液状体タンクが接続されており、これから吐出ヘッドに液状体が供給されるようになっている。
【0003】
また、前記のインクジェットヘッドは、近年では吐出ヘッドとして、民生用のインクジェットプリンタだけでなく工業用の吐出装置、すなわち各種デバイスの構成要素を形成するための装置としても使用されるようになってきている。例えば、液晶装置などにおけるカラーフィルタ、有機EL装置における発光層や正孔注入層、さらには各種デバイスの金属配線、マイクロレンズなどについても、その形成のために吐出ヘッドが用いられるようになってきている。
【0004】
ここで、上記吐出装置を有機EL装置の製造に適用する場合には、その有機層を形成する際に、形成された膜の吸湿、有機材料の変質を考慮して不活性ガス中で前記吐出工程を行うことが好ましいとされている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
また、前記インクジェットヘッドを液晶装置などのカラーフィルタの製造に用いた場合、特に基板がガラス製であることから帯電し易く、したがってこの帯電した領域にカラーフィルタ材料を吐出した際、吐出した液滴が所望の位置と異なる方向に着弾されてしまう、いわゆる飛行曲がりが生じることがある。
そこで、このような飛行曲がりを抑え、液滴の着弾位置ずれを防止したカラーフィルタの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図5は、不活性ガス雰囲気中で液状体の吐出を行うことができる液状体吐出装置の概略構成図である。この図に示す液状体吐出装置100は、ガス置換機能を備えたチャンバー111と、このチャンバー111内部に収容された吐出装置本体130とをその基本構成としており、チャンバー111の一方の側壁に吸気口112が設けられ、この側壁と対向する側の側壁に排気口114が設けられている。また、吐出装置本体130は、平板状のベース131を有しており、このベース131上に配置される基板(図示略)上に吐出ヘッド(図示略)から液状体を吐出して着弾させるようになっている。そして、チャンバー111内のガス置換を行うには、排気口114から排気しながら吸気口112から所定のガスを導入し、必要に応じてガスの供給を連続的に行いながら液状体の吐出を行うものとされている。また吐出装置本体130の上側方にイオナイザ150が設けられて基板に対してイオン風を送るようになっている。
【特許文献1】
特開2002−56980号公報
【特許文献2】
特開平11−281810号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5に示す液状体吐出装置100においてガス置換を行う場合には、チャンバー111内部の雰囲気を、最初の大気状態から酸素濃度や水分濃度が所定以下のレベルとなるまでガス置換を行う必要があるが、複雑な構造で、場合によっては大型の吐出装置本体130がチャンバー111内部に配置されているため、装置本体130の陰やチャンバー111の角部分115でガスが滞留し、チャンバー111内の酸素や水分の濃度を必要なレベルにまで到達できない、あるいは到達までの時間が非常に掛かるという問題点があった。
【0008】
また、上記装置を用いて不活性ガス雰囲気中で液状体の吐出を行う場合には、水分濃度が低いために各部に静電気が発生し易くなり、この帯電を除去することも必要になる。
先のカラーフィルタの製造方法では、単に基板そのものの帯電を防止することを目的としており、図5に示す構成でもイオナイザ150により基板の電荷の除去は可能である。しかしこの構成は、あくまで基板がガラスなどの電荷が解放され難いものであることによる。カラーフィルタ製造以外の各種のデバイスの製造プロセスでは、基板そのもの以外の要素、例えば、インクを基板に対して吐出するための装置部品や、インクそのものが帯電する場合があり、特に、インクの帯電はヘッドから吐出される液滴の飛行曲がりを生じさせるのみならず、インクジェットヘッド(吐出ヘッド)の駆動素子や基板上に既設された電気回路等の破壊の原因となるおそれがある。
しかして、このような基板そのもの以外の要素に対しては、これの帯電を防止する技術が提供されていないのが現状である。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、不活性ガス等の雰囲気中で液状体の吐出を行うに際して、高度かつ高効率に雰囲気を置換することができ、かつ水分の低下により生じる静電気を効率よく除去することができる液状体吐出装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の液状体吐出装置は、上記課題を解決するために、基板を保持する基板保持部と、該基板上に液状体を吐出する吐出ヘッドとを備え、少なくとも前記吐出ヘッドが、ガス置換機能を備えたチャンバー内に収容されてなる液状体吐出装置において、前記チャンバー内壁の周縁部に、イオン風を送風可能なイオン発生手段が設けられたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、チャンバー内のガス置換を行う際に、ガスが滞留しやすい内壁周縁部(すなわちチャンバー内部の角部)にイオン発生手段を設けることで、このイオン発生手段から送られるイオン風によりこの内壁周縁部近傍のガスを攪拌することができる。従って、チャンバー内部のガスが置換されやすくなり、チャンバー内の酸素や水分の濃度を低減することが容易になる。また、イオン発生手段により送られるイオン風が当たった部分の電荷が除去されるので、水分濃度が低下して静電気が発生しやすくなっているチャンバー内部での帯電を効果的に防止することができ、処理される基板上に既設の素子や、液状体吐出装置の吐出ヘッド等の素子を静電気から保護することができる。
本発明による上記の効果を得るためには、少なくとも吐出ヘッドと、この吐出ヘッドから吐出される液状体が着弾される基板とが前記チャンバー内に配置されていればよい。
【0011】
本発明の液状体吐出装置は、前記イオン発生手段が、前記チャンバー内壁の複数の周縁部に配設されており、前記イオン発生手段からチャンバー内部に送られるイオン風により気流を形成可能とされたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、イオン風により気流を形成することができるので、この気流を制御することで、例えば基板上に着弾した液状体から蒸発したガス成分等が所定方向に流れるように制御することができ、ガス成分の凝固等による装置や基板の不具合が生じにくい液状体吐出装置とすることができる。
【0012】
本発明の液状体吐出装置は、前記チャンバーに吸気口と排気口とが設けられており、前記イオン発生手段から送られるイオン風により形成される気流が、前記吸気口から排気口に向かう方向とされたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、ガス置換等の際に吸気口から排気口に向かって形成される気流に沿ってイオン発生手段からのイオン風を流すようにするので、チャンバー内に置換前のガスが滞留しにくくなり、さらに効率よくガスの置換を行うことができる。
【0013】
本発明の液状体吐出装置は、前記チャンバー内壁の周縁部に設けられた全てのイオン発生手段が、前記排気口に向かってイオン風を送るように配設されたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、吸気口から排気口に向かって形成される気流を乱すことなく、イオン風を気流に乗せて送ることができ、内壁周縁部のガスをイオン風により押し出し、気流に乗せてチャンバー外へ排出することができる。
【0014】
本発明の液状体吐出装置は、前記基板保持部に保持された基板に対してイオン風を送るイオン発生手段を備えたことを特徴とする。
上記構成の液状体吐出装置によれば、先の構成によるガス置換の効率化、及び各部の帯電の防止という効果に加え、さらに効率よく基板上の電荷を除去することができ、基板上に既設されたアクティブ素子等や、基板に近接して動作する吐出ヘッドが基板の帯電により静電破壊されるのを効果的に防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の液状体吐出装置の一実施形態における全体構成を示す図であり、この図に示す液状体吐出装置10は、吐出装置本体30と、この吐出装置本体30を内部に収容したチャンバー11とを備えて構成されている。前記チャンバー11は、その側壁に設けられた吸気口12と、前記側壁と対向する側壁に設けられた排気口14とを備えており、吸気口12から所定のガスを導入し、同時に排気口14から排気を行うことで内部の空間のガス置換を行えるようになっている。また、チャンバー11内の各部にイオン発生手段50〜54が設けられている。
【0016】
図2は、図1に示す吐出装置本体30の斜視構成図である。この吐出装置本体30は、図2に示すように、ベース31、基板移動手段32、ヘッド移動手段33、吐出ヘッド34、液状体タンク35、イオン発生手段50等を有して構成されたもので、吐出ヘッド34より基板Sに対して液状体を吐出するものである。なお、本実施形態の吐出装置34では、前記基板Sとして易帯電性の構成要素が設けられたものも好適に用いることができ、また前記液状体として易帯電性の材料を用いることもできる。さらには、本実施形態では、基板Sの形状や寸法等に特に限定はなく、図示した平板状のもの以外を用いたとしても本発明の技術範囲を逸脱するものではない。
【0017】
ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
基板移動手段32は、本発明における基板保持部、すなわち基板Sを保持するための基板保持部として機能するもので、Y軸方向に沿ってガイドレール36を有したものである。このような構成のもとに、基板移動手段32は例えばリニアモータにより、スライダ37をガイドレール36に沿って移動させるようになっている。スライダ37には、θ軸用のモータが備えられている。このモータは、例えばダイレクトドライブモータからなるものであり、これのロータはテーブル39に固定されている。このような構成のもとに、モータに通電するとロータおよびテーブル39は、θ方向に沿って回転し、テーブル39をインデックス(回転割り出し)するようになっている。
【0018】
テーブル39は、基板Sを位置決めし、保持するものである。すなわち、このテーブル39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをテーブル39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、テーブル39の位置決めピンにより、テーブル39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。また、テーブル39には、吐出ヘッド34がインクを捨打ちあるいは試し打ちするためのフラッシング領域が設けられることもある。このフラッシング領域は、通常、基板Sの側方側に設けられる。
【0019】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に吐出ヘッド34を保持させるスライダ42を移動可能に保持したものである。スライダ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0020】
吐出ヘッド34には、揺動位置決め手段としてのモータ43、44、45、46が接続されている。そして、モータ43を作動させると、吐出ヘッド34はZ軸に沿って上下動し、Z軸上での位置決めが可能になっている。なお、このZ軸は、前記のX軸、Y軸に対しそれぞれに直交する方向(上下方向)である。また、モータ44を作動させると、吐出ヘッド34は図1中のβ方向に沿って揺動し、位置決め可能になり、モータ45を作動させると、吐出ヘッド34はγ方向に揺動し、位置決め可能になり、モータ46を作動させると、吐出ヘッド34はα方向に揺動し、位置決め可能になる。
【0021】
このように吐出ヘッド34は、スライダ42上において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能となり、かつ、α、β、γに沿って揺動し、位置決め可能となっている。したがって、吐出ヘッド34のインク吐出面を、テーブル39側の基板Sに対する位置あるいは姿勢を、正確に制御することができるようになっている。
ここで、吐出ヘッド2は、図3(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15…とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15…とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0022】
各キャビティ15とリザーバ16の内部とは液状体で満たされるようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15に液状体を供給する供給口として機能するようになっている。また、ノズルプレート12には、キャビティ15から液状体を噴射するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。一方、振動板13には、リザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液状体タンク35が供給チューブ24(図2参照)を介して接続されている。
【0023】
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図3(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21、21間に挟持され、通電により外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたもので、本発明における液状体の吐出手段として機能するものである。
【0024】
このような構成のもとに圧電素子20が接合された振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内に液状体が充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当する液状体が、リザーバ16から流路17を介して流入する。
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル18から液状体の液滴22が吐出される。
【0025】
なお、吐出ヘッドの吐出手段としては、前記の圧電素子(ピエゾ素子)20を用いた電気機械変換体以外でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザーなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
【0026】
液状体タンク35は、図2に示したように吐出ヘッド34の近傍に配置されたもので、吐出によって形成する構成要素の液状材料(液状体)を貯留したものである。この液状体タンク35には、その内部、あるいはその外側にヒータ(図示せず)が設けられていてもよい。このヒータは、貯留している液状体を加熱するためのもので、特に液状体が高粘性のものの場合などに、加熱することで粘度を低くし、液状体タンク35から吐出ヘッド34への液状体の流入を容易にできるようにするものである。
【0027】
本実施形態の液状体吐出装置10には、図1に示すように、イオン発生手段50〜54が設けられている。これらのイオン発生手段50〜54は、イオン風を発生させるもの、例えばイオナイザーやイオン送風機によって構成することができる。ここで、イオン風とは、放電針先端でコロナ放電により生じたイオンに、空気やN2を吹き付けてイオンの流れとしたものである。なお、本発明におけるイオン発生手段50〜54では、上記の放電針を多数備えることで、十分な量のイオンを送ることができるように構成されている。
【0028】
イオン発生手段50は、吐出装置本体30のテーブル39側方側にY軸方向に延びて配設されており、テーブル39上の基板Sに対してイオン風を送るようになっている。また、イオン発生手段51〜54は、図1に示すように、チャンバー11の内壁周縁部(側面視において角部)にそれぞれ配設されており、吸気口12が設けられた側壁周縁部に設けられたイオン発生手段51,54は、吸気口12が設けられた側壁と対向する側壁(排気口14)に向かってイオン風を送るようになっている。また、排気口14が設けられた側壁周縁部に設けられたイオン発生手段52,53も排気口14に向かってイオン風を送るようになっている。
【0029】
上記イオン発生手段51〜54によれば、図5に示したように、ガス置換時にガスの滞留が生じやすいチャンバー11の側壁周縁部に配設され、前記排気口14に向かってイオン風を送るようになっているので、前記チャンバー11の側壁周縁部におけるガスの滞留を効果的に防止することができ、またイオン発生手段から送られるイオン風によりチャンバー内面や吐出装置本体30の各構成部材の帯電を効果的に防止することができる。従って、チャンバー11のガス置換時にあっては、初期ガスの滞留を防止しつつガスの置換を行うことで酸素や水分の濃度を高速に所定レベルに到達させることができ、吐出装置本体30を動作させる際には、各部の帯電が効果的に防止されることで、吐出装置本体30の動作を信頼性の高いものすることができる。
【0030】
また、テーブル39の側方側に設けられたイオン発生手段50によれば、基板Sへのイオン風の供給が行われるので、特に基板Sの帯電を効果的に防止することができ、基板S上にアクティブ素子等が既設されている場合にはそれらの素子の静電破壊を防止でき、また、基板S近傍で作動する吐出ヘッド34の素子の静電破壊も防止することができる。また、易帯電性の液状体を用いて基板S上の構成要素が形成されている場合にも、その構成要素を帯電され難くすることができる。したがって、易帯電性の液状体によって形成される構成要素、例えば金属配線が帯電するのも効果的に防止することができ、従って、この構成要素(金属配線)の帯電に起因して吐出ヘッド34が破壊されてしまうなどの不都合が生じることもない。
【0031】
上記のイオン発生手段50〜54については、前記各部材に対して十分均等にイオン風を吹き付けることができるよう、これを移動させる移動手段に取り付けておき、この移動手段の動作により任意の方向に沿って移動させるようにしてもよく、スイング動作等により、イオン風を送る方向を連続的に変化させるようにしてもよい。
また、チャンバー11の内壁又はその近傍に設けられる先のイオン発生手段51〜54の送風方向は、図示した位置に限定されず、チャンバー11の角部におけるガスの滞留を防止するように適切にイオン風を送ることができるならば、その位置を移動しても構わない。従って、本発明に係る液状体吐出装置10では、図示した位置以外にもチャンバー11内の複数の位置にイオン発生手段を設けることができる。
【0032】
また、イオン発生手段50〜54のイオン風による除電は、吐出装置本体30や基板Sに対して非接触であることから、吐出装置本体30の動作や基板Sのハンドリングに支障を来すことがなく、極めて好ましい除電方法となる。また、イオン風を送る(吹き付ける)ことによる電荷の中和は、ガス置換時のみならず、吐出装置本体30の動作中にも行うようにするのが好ましい。
【0033】
なお、前記実施形態では、基板Sに設けられる易帯電性の構成要素としてTFTなどのアクティブ素子を、また易帯電性の材料からなる液状体として金属コロイド材料などの金属配線材料を例示したが、本発明はこれらに限定されることなく、易帯電性の構成要素、あるいは易帯電性の材料からなる液状体として他の種々のものも適用することができる。具体的には、易帯電性の構成要素としては、前記した金属配線や各種のメモリ素子、有機EL素子、有機TFT素子などを挙げることができ、易帯電性の材料からなる液状体としては、導電性微粒子を分散させてなる液状体や、導電性の樹脂材料、例えば導電性カラーフィルタ材料などを挙げることができる。また、本発明は、前記構成要素や液状体として、易帯電性のものを用いた場合に大きな効果を得ることができるが、それ以外の構成要素や液状体に用いても良いのは勿論である。
【0034】
次に、本発明の液状体吐出装置の適用例として、有機EL装置の製造例について説明する。
図4は、前記吐出装置により一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図であり、まずこの有機EL装置の概略構成を説明する。
図4に示すようにこの有機EL装置本体301は、基板311、回路素子部321、画素電極331、バンク部341、発光素子351、陰極361(対向電極)、および封止基板371から構成された有機EL素子本体302に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部321は、TFT等からなるアクティブ素子が基板311上に形成され、複数の画素電極331が回路素子部321上に整列して構成されたものである。そして、各画素電極331間にはバンク部341が格子状に形成されており、バンク部341により生じた凹部開口344に、発光素子351が形成されている。陰極361は、バンク部341および発光素子351の上部全面に形成され、陰極361の上には封止用基板371が積層されている。
【0035】
有機EL素子を含む有機EL装置本体301の製造プロセスは、バンク部341を形成するバンク部形成工程と、発光素子351を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子351を形成する発光素子形成工程と、陰極361を形成する対向電極形成工程と、封止用基板371を陰極361上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0036】
発光素子形成工程は、凹部開口344、すなわち画素電極331上に正孔注入層352および発光層353を形成することにより発光素子351を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層352を形成するための第1組成物(液状体)を各画素電極331上に吐出する第1吐出工程と、吐出された第1組成物を乾燥させて正孔注入層352を形成する第1乾燥工程とを有し、発光層形成工程は、発光層353を形成するための第2組成物(液状体)を正孔注入層352の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された第2組成物を乾燥させて発光層353を形成する第2乾燥工程とを有している。
【0037】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の吐出装置本体30を用いるとともに、不活性ガス(アルゴンガスや窒素ガス等)雰囲気中で前記各吐出工程を行うようにしている。
この有機EL装置本体301の製造において、各構成要素形成のための吐出に先立ち、チャンバー11内のガスを不活性ガスと置換する作業を行う。その際、図1に示すイオン発生手段51〜54からチャンバー内部に向けてイオン風を送りながらガスの置換を行うことで、チャンバー11の角部や吐出装置本体の陰に置換前のガスが滞留するのを効果的に防止することができるので、酸素や水分の濃度が高速に所定のレベルにまで到達し、前記吐出工程開始までの時間を短縮でき、製造を効率化することができる。また、イオン発生手段51〜54により送られるイオン風により吐出装置本体30の帯電が防止され、信頼性の高い動作が可能になる。
さらに、図2に示すように基板Sに向けてイオン風を供給するイオン発生手段50を設けるならば、基板S上に既設の素子や吐出ヘッド34の素子が静電破壊されるのをより効果的に防止することができる。従って、本発明の液状体吐出装置を用いて有機EL装置本体301を製造するならば、その生産性を向上し、かつその信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の液状体吐出装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の吐出装置本体の斜視構成図である。
【図3】図3は、吐出ヘッドの概略構成図である。
【図4】図4は、有機EL装置の側断面図である。
【図5】図5は、ガス置換機能を備えた液状体吐出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
10…液状体吐出装置、11…チャンバー、12…吸気口、14…排気口、30…吐出装置本体、32…基板保持部(基体保持部)、34…吐出ヘッド、50〜54…イオン発生手段、S…基板(基体)
Claims (5)
- 基板を保持する基板保持部と、該基板上に液状体を吐出する吐出ヘッドとを備え、少なくとも前記吐出ヘッドが、ガス置換機能を備えたチャンバー内に収容されてなる液状体吐出装置において、
前記チャンバー内壁の周縁部に、イオン風を送風可能なイオン発生手段が設けられたことを特徴とする液状体吐出装置。 - 前記イオン発生手段が、前記チャンバー内壁の複数の周縁部に配設されており、
前記イオン発生手段からチャンバー内部に送られるイオン風により気流を形成可能とされたことを特徴とする請求項1記載の液状体吐出装置。 - 前記チャンバーに吸気口と排気口とが設けられており、
前記イオン発生手段から送られるイオン風により形成される気流が、前記吸気口から排気口に向かう方向とされたことを特徴とする請求項2記載の液状体吐出装置。 - 前記チャンバー内壁の周縁部に設けられた全てのイオン発生手段が、前記排気口に向かってイオン風を送るように配設されたことを特徴とする請求項3記載の液状体吐出装置。
- 前記基板保持部に保持された基板に対してイオン風を送るイオン発生手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の液状体吐出装置。
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