JP2004165502A - 窒化物系化合物半導体結晶成長方法 - Google Patents

窒化物系化合物半導体結晶成長方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Si基板上に成長した窒化物半導体結晶薄膜にかかる歪みを緩和し、基板の反りをなくす窒化物系化合物半導体結晶成長方法を得る。
【解決手段】Si基板上にIII−V族窒化物半導体薄膜結晶を成長するに際し、Si基板表面にSiO薄膜を事前に形成し、さらにその上にAlN薄膜を堆積させた後、高温アニールを加え、その薄膜上に必要な窒化物半導体薄膜を成長することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Si基板上に良質なIII−V族窒化物半導体薄膜結晶を成長する方法に関するものであり、従来品よりも安価、且つ大口径な窒化物半導体デバイス用エピタキシャルウェハを供給する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
GaN、AlN、InN、およびこれらの混晶を最適な構造で積層成長させたIII−V族窒化物結晶エピタキシャルウェハは、青色LEDやLDの半導体デバイス用結晶として市場に出回っている。近年、紫外LEDや高耐圧電子デバイスなども開発されつつあり、ますます需要は高くなるものと予想される。
【0003】
窒化物結晶のバルクというものは、最近になりようやくGaN基板が開発されたばかりであり、これまでは半導体デバイス用エピタキシャルウェハの基板としてはサファイアや炭化シリコン(SiC)が用いられていた。サファイア基板やSiC基板の特性として、格子定数と熱膨張係数は窒化物結晶と異なるものの、結晶の対称性が似通っていること、研磨により平坦な表面が実現できること、窒化物結晶成長に必要な高温下でも安定なことが挙げられる。
【0004】
しかし、サファイア基板、SiC基板、GaN基板に共通して言えることは、Si基板に比べて大口径化が技術的に難しく、高価であり、さらには硬いためチップの製造が難しいことである。そのため近年になり、Si基板上に窒化物半導体薄膜結晶を成長し、デバイスを作製する研究報告が増えてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
Si基板上の窒化物半導体薄膜結晶の成長に関しては、1000℃以上でAlN薄膜もしくはAlGaN薄膜を成長して、その上に最適な温度でGaN薄膜を成長することにより、表面が平坦で比較的低転位な薄膜結晶が実現することが報告されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−93834号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の成長方法には次のような課題がある。
【0008】
Si基板上に成長した窒化物薄膜の表面状態・転位密度は、まだサファイア基板上やSiC基板上に成長した薄膜には及ばない。また薄膜に発生するクラックも問題であるが、これは膜厚を薄く設計することである程度の抑止は可能である。
【0009】
しかし一番大きな問題は、薄膜を成長した後のSi基板の反りである。これはSi基板と窒化物結晶の格子定数および熱膨張係数の違いに起因する。以下の表にそれぞれの基板結晶およびGaN、AlNの物性値を記述する。
【0010】
【表1】
Figure 2004165502
【0011】
表1に示すように、各結晶基板に対するGaN格子定数差の絶対値はSiC、Si、サファイアの順に大きくなっていく。一方、熱膨張係数に関してはサファイア、SiC、Siの順に差が大きくなっていき、特にGaNの熱膨張係数はSiの2倍以上もあることがわかる。これらが技術的に大きな障壁となっており、良質な結晶を得ることは非常に困難となっている。
【0012】
また格子定数の違いによる歪みはウェハの反りやクラックの原因になるだけでなく、表面ラフネス・欠陥密度の増加の原因の一つにもなっている。そのため歪みを緩和することはこれらの問題点を改善することにもつながる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、Si基板上に成長した窒化物半導体結晶薄膜にかかる歪みを緩和し、基板の反りをなくす窒化物系化合物半導体結晶成長方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0015】
請求項1の発明に係る窒化物系化合物半導体結晶成長方法は、Si基板上にIII−V族窒化物半導体薄膜結晶を成長するに際し、Si基板表面にSiO薄膜を事前に形成し、さらにその上にAlN薄膜を堆積させた後、高温アニールを加え、その薄膜上に必要な窒化物半導体薄膜を成長することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の成長方法において、SiO薄膜を0.5〜20.0nmの厚さで形成することを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の成長方法において、上記AlN薄膜を10〜200nmの厚さで堆積させることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3記載の成長方法において、上記高温アニールとして、基板に1200℃以上の温度を与えることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の成長方法において、AlN薄膜を堆積させた後で高温アニールを加える代わりに、AlN薄膜の堆積を1200℃以上の温度で行うことを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4又は5記載の成長方法において、AlN薄膜の代わりに、GaNを組成0〜80%の割合で添加した、AlGaN混晶薄膜を用いることを特徴とする。
【0021】
<発明の要点>
本発明の要点は、Si基板の上にSiO層を形成し、さらにその上にAlN薄膜を堆積させた後、高温アニールを加えることにより歪みを緩和することである。
【0022】
SiOはアモルファス状になることによって、結晶に掛かっている歪みを吸収することが可能である。またAlNは濡れ性の高い結晶であり、SiO上でも堆積は可能である。しかしSi上ほど強固な結合は持たないため、熱を加えることによりAlN/SiO界面で容易に歪みを緩和させることができる。さらにAlNは共有結合の強い結晶であるため、1200℃以上の高い温度でもN原子脱離による表面荒れは起こらない。
【0023】
本発明はこれらの特性を組み合わせることにより、薄膜に掛かる歪みを緩和して成長中の基板の反り・クラック発生・表面荒れ・欠陥の増加を抑止し、さらには成長後の降温時においてAlN/SiO界面における緩和により基板反りを抑止するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0025】
次のような従来例と実施例を試作した。すなわち、単純にSi基板上にAlN薄膜成長をしてその上にGaN薄膜成長をしたエピタキシャルウェハ1(従来例)と、熱酸化を行ったSi基板上にAlN薄膜成長をして、1250℃の熱処理を施した後にGaN薄膜を成長したエピタキシャルウェハ2(実施例)を製造し、両者の表面状態・基板の反りを比較した。Si基板は(111)面JUSTの2インチウェハを用いた。
【0026】
エピタキシャルウェハ1(実施例)の試作は次のように行った。RCA洗浄により基板の表面処理を行った後、ドライ熱酸化により基板表面に5nmのSiO膜を形成した。この基板をMOCVD薄膜結晶成長装置に設置し、水素雰囲気の減圧下で1100℃まで加熱した後、温度を変えずにAlN薄膜を50nm成長した。このときの原料は水素希釈したトリメチルアルミニウム(TMA)とアンモニア(NH)を用いた。次にアンモニア雰囲気中で基板温度を1250℃まで上げて30分間熱処理(高温アニール)を行った後、温度を1050℃まで下げてGaN薄膜を700nm成長した。このときの原料は水素希釈したトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア(NH)を用いた。MOCVD炉内での成長シーケンスを図1に示す。
【0027】
エピタキシャルウェハ2(従来例)の試作は次のように行った。RCA洗浄で基板の表面処理を行った後、MOCVD薄膜結晶成長装置に設置し、水素雰囲気の減圧下で1100℃まで加熱した。次に温度を変えずにAlN薄膜を50nm成長した。このときの原料は水素希釈したトリメチルアルミニウム(TMA)とアンモニア(NH)を用いた。その後、温度を1050℃まで下げてGaN薄膜を500nm成長した。このときの原料は水素希釈したトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア(NH)を用いた。MOCVD炉内での成長シーケンスを図2に示す。
【0028】
このエピタキシャルウェハ1とエピタキシャルウェハ2の原子間力顕微鏡(AFM)画像を、図3と図4にそれぞれ示す。両者のGaN表面を比較すると、共にクラックフリーであり、表面ラフネスもほとんど違いのないことがわかる。
【0029】
次にX線測定にてエピタキシャルウェハの反りを調べた。図5に、X線測定にてエピタキシャルウェハの反りを調べる概念図を示す。試料上のP点においてブラッグの反射条件を満足していたものが、試料をΔωだけ回転させると、今度はQ点でブラッグの反射条件を満足する。つまり、反りのある試料結晶があった場合に、この試料をΔωだけ回転させて、回転前における回折X線の検出位置Pと、回転後における回折X線の検出位置Qとを確認すれば、その試料結晶の反りの曲率半径Rを知ることができる。図では、角度θにおいて回折X線が検出されており、両位置の差として、ウェハ反り量はR(1−cosθ)で求められる。
【0030】
ここでは、ウェハ中心点と中心からオリエンテーションフラット(OF)側に20mmシフトした点のSi(111)面反射のロッキングピーク位置(回折X線強度曲線の回折ピーク)を比較した。図6に、本実施例でGaN膜をエピタキシャル成長したSi基板の、中心と中心からOF側に20mmシフトした点のSi(111)面からのX線回折ピークを、また図7に従来技術でGaN膜をエピタキシャル成長したSi基板の、中心と中心からOF側に20mmシフトした点のSi(111)面からのX線回折ピークを示す。
【0031】
ウェハ中心部とシフトした点のピーク位置が近いほど反りが少ないことになり、また図5に示すように2点のωの差がウェハの曲率角度θとなる。エピタキシャルウェハ1とエピタキシャルウェハ2の結果は図6と図7にそれぞれ示した通りである。すなわち、従来技術の場合はΔω=0.388degで、反り量は67.6μmに相当し比較的大きいが、本実施例の場合は、Δω=0.169degで、反り量は29.4μmに相当し、小さくなっている。この結果より両方のウェハとも反りは完全にはなくなっていないが、本実施例のエピタキシャルウェハ2(図6)の方が明らかに反りが少ないことがわかった。
【0032】
以上の結果より、窒化物薄膜とSi基板の間にSiO膜を入れて高温でアニールすることにより、従来報告されてきた技術よりもさらに反りが低減されることがわかった。
【0033】
ここで最適条件について吟味するに、SiO膜の膜厚は歪みを緩和できる充分な厚さが必要であるが、厚すぎると配向性を失い、上に成長する窒化物薄膜結晶自体の配向性もなくなってしまう。結論からいうと、SiO薄膜の膜厚は0.5〜20.0nmの厚さで形成することが好ましい。この膜厚範囲は実験で試行錯誤的に求めた値である。
【0034】
またSiOが軟化すると歪みは格段に緩和され易いため、歪み緩和のためのアニール温度は1200℃以上とするのがよい。それ以外の成長時および熱アニール時の温度・圧力・ガス流量・原料濃度は、使用する装置により異なるため、試行錯誤をしておさえなくてはならない。
【0035】
さらにSiO薄膜上に形成する材料としてAlNを採択しているが、これは、濡れ性の高い結晶であり、SiO上でも堆積は可能であり、しかも熱を加えることによりAlN/SiO界面で容易に歪みを緩和させることができる、さらに1200℃以上の高い温度でもN原子脱離による表面荒れは起こらない、といった理由によるものであり、AlN薄膜の厚さとしては10〜200nmの厚さがあればよい。
【0036】
上記実施例では、SiO膜を熱酸化にて形成したが、SiO膜はCVDによる堆積でも適用可能であり、熱酸化よりも配向性の良好な膜が形成される可能性がある。
【0037】
また窒化物薄膜はMOCVDで成長したが、途中で搬出してアニールが可能なら、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)で成長した方が、基板の反りはより抑えられると思われる。
【0038】
さらに上記実施例では、AlN薄膜を堆積させた後で高温アニール処理を行っているが、この代わりに、AlN薄膜の堆積を1200℃以上の温度で行っても、同様の効果を得ることができる。
【0039】
また上記実施例では、SiO薄膜上に形成する材料としてAlNを選択したが、AlN薄膜の代わりに、GaNを組成0〜80%の割合で添加したAlGaN混晶薄膜を用いることもできる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、Si基板上にIII−V族窒化物半導体薄膜結晶を成長するに際し、Si基板表面にSiO薄膜を事前に形成し、さらにその上にAlN薄膜を堆積させた後、高温アニールを加え、その薄膜上に必要な窒化物半導体薄膜を成長するので、Si基板上の窒化物半導体薄膜を成長しても基板の反りが少なく、表面平坦性も良好なエピタキシャルウェハが実現できる。また、サファイア基板やSiC基板を用いるエピタキシャルウェハよりも、大口径化や低コスト化を容易に実現することができ、既存品よりもはるかに低価格な窒化物半導体デバイスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化物系化合物半導体結晶成長方法に係るMOCVD炉内での成長シーケンスを示す図である。
【図2】従来技術の成長方法に係るMOCVD炉内での成長シーケンスを示す図である。
【図3】本発明により成長したSi基板上のGaNエピタキシャルウェハ表面のAFM画像を示す図面代用写真である。
【図4】従来技術により成長したSi基板上のGaNエピタキシャルウェハ表面のAFM画像を示す図面代用写真である。
【図5】X線反射角からウェハの曲率を求める簡略図である。
【図6】本発明でGaNエピタキシャル層を成長したSi基板の、中心点と中心からOF側に20mmシフトした点のX線回折ピークを示す図である。
【図7】従来技術でGaNエピタキシャル層を成長したSi基板の、中心点と中心からOF側に20mmシフトした点のX線回折ピークを示す図である。

Claims (6)

  1. Si基板上にIII−V族窒化物半導体薄膜結晶を成長するに際し、
    Si基板表面にSiO薄膜を事前に形成し、さらにその上にAlN薄膜を堆積させた後、高温アニールを加え、その薄膜上に必要な窒化物半導体薄膜を成長することを特徴とする窒化物系化合物半導体結晶成長方法。
  2. 請求項1記載の窒化物系化合物半導体結晶成長方法において、
    SiO薄膜を0.5〜20.0nmの厚さで形成することを特徴とする窒化物系化合物半導体結晶成長方法。
  3. 請求項1又は2記載の窒化物系化合物半導体結晶成長方法において、
    上記AlN薄膜を10〜200nmの厚さで堆積させることを特徴とする窒化物系化合物半導体結晶成長方法。
  4. 請求項3記載の窒化物系化合物半導体結晶成長方法において、
    上記高温アニールとして、基板に1200℃以上の温度を与えることを特徴とする窒化物系化合物半導体結晶成長方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の窒化物系化合物半導体結晶成長方法において、
    AlN薄膜を堆積させた後で高温アニールを加える代わりに、AlN薄膜の堆積を1200℃以上の温度で行うことを特徴とする窒化物系化合物半導体結晶成長方法。
  6. 請求項4又は5記載の窒化物系化合物半導体結晶成長方法において、
    AlN薄膜の代わりに、GaNを組成0〜80%の割合で添加した、AlGaN混晶薄膜を用いることを特徴とする窒化物系化合物半導体結晶成長方法。
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