JP2004164876A - 金属被膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温焼成によって、導電性が高く、かつ密着性の高い被膜の形成が可能な金属被膜形成方法の提供。
【解決手段】有機分散媒に、粒子径が200nm以下の還元可能な金属酸化物を分散させた分散体を基板に塗布した後、非酸化性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする金属被膜形成方法。
【選択図】 選択図なし。
【解決手段】有機分散媒に、粒子径が200nm以下の還元可能な金属酸化物を分散させた分散体を基板に塗布した後、非酸化性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする金属被膜形成方法。
【選択図】 選択図なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性を有する金属被膜の製造方法に係り、詳しくは、金属酸化物の分散液を基材上に塗布することにより、例えば、電極、配線、回路等の導電性被膜を容易に作成できる金属被膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属被膜の製造方法には、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、金属ペースト法等がある。真空蒸着法、スパッタ法及びCVD法は、いずれも高価な真空装置を必要とするという問題がある。また、いずれも成膜速度が遅く、比較的薄い金属膜を得るのには適してきるが、厚い金属膜を得るには長時間を要するという問題がある。
【0003】
メッキ法は、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があり、したがって、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は、溶液中での反応を利用するものであり、大量の廃液が副生し、廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題がある。
金属ペースト法は、金属フィラーを分散させた溶液を基材上に塗布して焼成する方法であって、真空装置等の特別な装置を必要とせず、プロセスが簡易であるという利点を有するが、金属フィラーを溶融するには、通常、1000℃以上の高温を要する。したがって、基材としては、セラミック基材等の耐熱性を有するものに限られる。また、基材が熱で損傷したり、加熱により生じた残留応力により基材が損傷を受けやすいという問題もある。
【0004】
一方、金属フィラーの粒径を低減することによって、金属ペーストの焼成温度を低減するという技術は公知である。例えば、特許文献1には、粒径100nm以下の金属微粒子を分散した分散液を用いて金属被膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、ここで必要となる100nm以下の金属粒子の製造は、低圧雰囲気で揮発した金属蒸気を急速冷却する方法であるために、大量生産が難しく、そのため金属フィラーのコストが非常に高くなるという問題を有している。
【0005】
金属酸化物フィラーを分散させた金属酸化物ペーストを用いて金属被膜を形成するという方法も知られている。特許文献2には、結晶性高分子を含み、粒径300nm以下の金属酸化物を分散させた金属酸化物ペーストを加熱し、結晶性高分子を分解させて金属被膜を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、300nm以下の金属酸化物を結晶性高分子中にあらかじめ分散させる必要があり、非常な手間を必要とするのに加えて、結晶性高分子を分解するのに400℃〜900℃の高温を必要とする。したがって、使用可能な基材は、その温度以上の耐熱性を必要とするため、基材が制限されるという問題がある。
【0006】
以上のように、金属又は金属酸化物フィラーを分散させた分散液を基材上に塗布後、焼成して金属被膜を得る方法は、プロセスコストの安い方法ではあるが、フィラーが非常に高価であるか、焼成温度が高いという問題があって、実用化されていないのが現状である。特に、民生分野で用いられる樹脂基材上へ金属被膜形成方法として適用するのは難しいというのが現状である。
【0007】
【特許文献1】
特許第2561537号明細書
【特許文献2】
特開平5−98195号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、安価に、かつ、低温焼成によって、基材の上に導電性が高く、かつ、密着性の高い被膜の形成が可能な金属被膜製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 有機分散媒に、粒子径が200nm以下の還元可能な金属酸化物を分散させた分散体を基板に塗布した後、不活性性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする金属被膜の製造方法。
(2) 不活性雰囲気中での焼成を100℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする(1)に記載の金属被膜の製造方法。
(3) 還元性雰囲気中での焼成を80℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の金属被膜の製造方法。
【0010】
(4) 有機分散媒が炭素数10以下のポリオールであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の金属被膜の製造方法。
(5) 分散体がポリエーテル高分子を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の金属被膜の製造方法。
(6) ポリエーテル高分子が、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれた少なくとも一種であって、その数平均分子量が250〜1000の範囲にあることを特徴とする(5)に記載の金属被膜の製造方法。
(7) 金属酸化物が、酸化第一銅、酸化第二銅及び酸化銀から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の金属被膜の製造方法。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される有機分散媒としては、アルコール、エステル、ケトン、炭化水素、フノール、窒素化合物等が挙げられるが、粒子径が200nm以下の金属酸化物を均一に分散可能なものが好ましく、特に好ましいのは炭素数が10以下のポリオール溶媒である。ポリオールは、分子中に2個以上の水酸基を有し、室温において溶液である化合物である。このような化合物として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等が挙げられる。これらのポリオール溶媒は単独で用いてもよいし、複数のポリオール溶媒を混合して用いてもよい。
【0012】
ポリエーテル高分子を分散液に添加すると、金属酸化物から還元によって得られる金属粒子間の緻密性が向上するので好ましい。これらのポリエーテル高分子の数平均分子量は、好ましくは250〜1000である。数平均分子量が大きすぎると、有機分散媒への分散性が低下する場合があり、小さすぎると、焼成して得られる金属被膜の緻密性が低下する場合がある。
本発明に使用されるポリエーテル高分子は、骨格中にエーテル結合を有する高分子であって、一部が他の官能基によって置換されていてもよいが、用いる有機分散媒に均一に分散することが好ましい。溶媒への分散性の観点から、非結晶性のポリエーテル高分子が好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。中でも、工業的に入手が可能なポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられる粒子径が200nm以下の金属酸化物は、還元可能なものであり、中でも、容易に還元が可能な酸化銅及び酸化銀が好ましい。酸化銅としては、酸化第一銅及び酸化第二銅が挙げられる。酸化銀としては、酸化第一銀、酸化第二銀及び酸化第三銀が挙げられ、粒子の安定性から、酸化第一銀がより好ましい。
本発明に用いられる金属酸化物は、粒子径が200nm以下である必要があり、好ましくは100nm以下である。ここで粒子径とは、1次粒子の粒径を指し、電子顕微鏡等を用いて測定できる。金属酸化物の粒子径が200nmを越えると、還元処理によって得られる金属粒子間の融着が充分でないために、金属薄膜の緻密化・低抵抗化に寄与し難く、また、微細配線の形成が困難になる。
【0014】
これらの金属酸化物は、市販品又は公知の合成方法を用いて合成されたものを用いることができる。例えば、粒子径が200nm以下である酸化第一銅の合成方法として、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
金属酸化物を有機分散媒に分散させる方法としては、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等を挙げることができる。通常は、これらの分散手段の複数を組み合わせて分散を行う。これらの分散処理は室温で行っても、溶媒の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。
【0015】
有機分散媒中に分散させる金属酸化物の割合は、好ましくは5質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下である。200nm以下の粒子径を有する還元可能な金属酸化物を、用いる有機分散媒中で合成することによって、分散処理を省略することも可能である。
本発明によると、上記の金属酸化物分散液を基材の上に塗布して焼成することによって、金属被膜が基材上に形成される。基材としては、焼成によって焼失・劣化しない耐熱性のものが好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム等の金属、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂、ガラス等が好適に用いられる。また、接着性を向上させるために、これらの基材は親水化処理等の表面処理を施した後に金属酸化物分散液の塗布を行うことも可能であり、例えば、ポリイミドフィルムの場合であれば、同フィルムをアルカリ水溶液で表面疎化する等の処理が挙げられる。
【0016】
金属酸化物分散液の基板上への塗布方法は、ペーストを基板に塗布する場合に用いられる一般的な塗布方法が用いられ、例えば、スクリーン印刷方法、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法等が挙げられる。
本発明では、分散体が塗布された基板を不活性性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする。不活性雰囲気とは、例えば、アルゴン、窒素などの不活性ガスで満たされた不活性雰囲気を指す。不活性雰囲気中での焼成温度は、好ましくは100℃以上400℃以下の温度である。
【0017】
不活性雰囲気中で焼成された基板を、次いで、還元性雰囲気中で、金属酸化物を金属に還元するのに充分な温度で焼成することによって金属被膜を得る。焼成温度は、好ましくは80℃以上400℃以下、より好ましくは100℃以上400℃以下である。焼成温度が80℃未満では、実用的な時間内に金属酸化物を還元することができない場合がある。焼成によって金属酸化物を還元すると同時に、分散媒を揮発させるためには、分散媒の沸点以上の焼成温度が好ましい。例えば、沸点が197℃であるエチレングリコールを用いる場合には、例えば、200℃の焼成温度を用いることにより、分散媒の揮発と同時に金属被膜が形成する。焼成温度が400℃を越えると、樹脂基板上に金属配線を形成することが難しくなる場合がある。
【0018】
還元性雰囲気は、焼成炉中に、水素、一酸化炭素等の還元性ガスを充填した密閉系とするか、焼成炉を流通系にしてこれらのガスを流すことによって得られる。これらの還元性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン等、他の不活性ガスで希釈して用いてもよい。
焼成時間は、還元雰囲気における還元性ガスの濃度、焼成温度、並びに焼成すべき分散体の形状及び大きさによって影響を受ける。酸化銅をフィラーとして用いた場合、塗膜がミクロンメートルオーダーの薄膜であって、水素ガスを薄めずに還元ガスとして用い、200℃〜300℃程度の焼成温度を設定した場合には、1〜2時間である。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
本発明において、銅酸化物粒子の粒径は、日立製作所製走査型電子顕微鏡(S−4700)を用いて表面を観察して測定する。得られた金属被膜の体積抵抗率は、低抵抗率計ロレスタ−GP(三菱化学株式会社製)を用いて求める。
【0020】
【実施例1】
ガラス製の三口フラスコ内で、酢酸銅(和光純薬工業製)2.7gと精製水0.9gとをジエチレングリコール90mlに加え、オイルバス中で190℃で2時間加熱し、酸化第一銅粒子を得た。室温まで冷却後、日立工機株式会社製の遠心分離機で生成物を遠心沈降させた。上澄み液を同量のジエチレングリコールで入れ替えた後、超音波分散機で酸化第一銅粒子をジエチレングリコールに再分散させ、次に、遠心分離機で同分散液から粒径100nm以下の酸化第一銅微粒子を上澄み液中に遠心分取した。
分取した上澄み液に、ポリエチレングリコール(数平均分子量400、和光純薬工業製)を0.1g加えた後、ジエチレングリコールを減圧蒸留して、酸化第一銅が分散液全重量に対し50質量%になるまで濃縮した。この分散液を、1cm×5cmの面積で、厚み30μmになるようにスライドガラス上に塗布した。
【0021】
上記スライドガラスをホットプレート上に置き、ホットプレート全体に窒素ガスをフローさせながら、室温から250℃までホットプレート温度を上昇させ、250℃で1時間焼成した。冷却後、上記スライドガラスを焼成炉に移しかえ、焼成炉を真空ポンプで充分排気したのち、炉中に水素ガスをフローさせ、300℃で1時間還元焼成し、膜厚が5μmの銅被膜を得た。
得られた銅薄膜は、きれいな光沢を示していた。銅薄膜の体積低効値は3×10−6Ωcmであり、低い値であった。銅薄膜にスコッチテープを貼って剥がしたが、ほとんど剥がれは無く、ガラス基材との接着性がよいことが確認された。
【0022】
【比較例1】
実施例1と同様にしてスライドガラス上に塗工した酸化第一銅分散液塗膜を、窒素雰囲気で焼成する工程を省き、直接、水素雰囲気で還元焼成した。得られた銅薄膜の体積低効値は4×10−6Ωcmであり、低い値であった。銅薄膜にスコッチテープを貼って剥がした所、テープ接触面の銅箔がすべてはがれ、接着性が悪いことが判明した。
【0023】
【発明の効果】
本発明の製造方法により安価な金属酸化物を原料に用いて、低温において、導電性が高く、基材との密着性の高い金属被膜を形成することが可能である。得られた金属被膜は金属配線材料、導電材料等の用途に好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性を有する金属被膜の製造方法に係り、詳しくは、金属酸化物の分散液を基材上に塗布することにより、例えば、電極、配線、回路等の導電性被膜を容易に作成できる金属被膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属被膜の製造方法には、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、金属ペースト法等がある。真空蒸着法、スパッタ法及びCVD法は、いずれも高価な真空装置を必要とするという問題がある。また、いずれも成膜速度が遅く、比較的薄い金属膜を得るのには適してきるが、厚い金属膜を得るには長時間を要するという問題がある。
【0003】
メッキ法は、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があり、したがって、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は、溶液中での反応を利用するものであり、大量の廃液が副生し、廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題がある。
金属ペースト法は、金属フィラーを分散させた溶液を基材上に塗布して焼成する方法であって、真空装置等の特別な装置を必要とせず、プロセスが簡易であるという利点を有するが、金属フィラーを溶融するには、通常、1000℃以上の高温を要する。したがって、基材としては、セラミック基材等の耐熱性を有するものに限られる。また、基材が熱で損傷したり、加熱により生じた残留応力により基材が損傷を受けやすいという問題もある。
【0004】
一方、金属フィラーの粒径を低減することによって、金属ペーストの焼成温度を低減するという技術は公知である。例えば、特許文献1には、粒径100nm以下の金属微粒子を分散した分散液を用いて金属被膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、ここで必要となる100nm以下の金属粒子の製造は、低圧雰囲気で揮発した金属蒸気を急速冷却する方法であるために、大量生産が難しく、そのため金属フィラーのコストが非常に高くなるという問題を有している。
【0005】
金属酸化物フィラーを分散させた金属酸化物ペーストを用いて金属被膜を形成するという方法も知られている。特許文献2には、結晶性高分子を含み、粒径300nm以下の金属酸化物を分散させた金属酸化物ペーストを加熱し、結晶性高分子を分解させて金属被膜を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、300nm以下の金属酸化物を結晶性高分子中にあらかじめ分散させる必要があり、非常な手間を必要とするのに加えて、結晶性高分子を分解するのに400℃〜900℃の高温を必要とする。したがって、使用可能な基材は、その温度以上の耐熱性を必要とするため、基材が制限されるという問題がある。
【0006】
以上のように、金属又は金属酸化物フィラーを分散させた分散液を基材上に塗布後、焼成して金属被膜を得る方法は、プロセスコストの安い方法ではあるが、フィラーが非常に高価であるか、焼成温度が高いという問題があって、実用化されていないのが現状である。特に、民生分野で用いられる樹脂基材上へ金属被膜形成方法として適用するのは難しいというのが現状である。
【0007】
【特許文献1】
特許第2561537号明細書
【特許文献2】
特開平5−98195号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、安価に、かつ、低温焼成によって、基材の上に導電性が高く、かつ、密着性の高い被膜の形成が可能な金属被膜製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 有機分散媒に、粒子径が200nm以下の還元可能な金属酸化物を分散させた分散体を基板に塗布した後、不活性性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする金属被膜の製造方法。
(2) 不活性雰囲気中での焼成を100℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする(1)に記載の金属被膜の製造方法。
(3) 還元性雰囲気中での焼成を80℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の金属被膜の製造方法。
【0010】
(4) 有機分散媒が炭素数10以下のポリオールであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の金属被膜の製造方法。
(5) 分散体がポリエーテル高分子を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の金属被膜の製造方法。
(6) ポリエーテル高分子が、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれた少なくとも一種であって、その数平均分子量が250〜1000の範囲にあることを特徴とする(5)に記載の金属被膜の製造方法。
(7) 金属酸化物が、酸化第一銅、酸化第二銅及び酸化銀から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の金属被膜の製造方法。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される有機分散媒としては、アルコール、エステル、ケトン、炭化水素、フノール、窒素化合物等が挙げられるが、粒子径が200nm以下の金属酸化物を均一に分散可能なものが好ましく、特に好ましいのは炭素数が10以下のポリオール溶媒である。ポリオールは、分子中に2個以上の水酸基を有し、室温において溶液である化合物である。このような化合物として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等が挙げられる。これらのポリオール溶媒は単独で用いてもよいし、複数のポリオール溶媒を混合して用いてもよい。
【0012】
ポリエーテル高分子を分散液に添加すると、金属酸化物から還元によって得られる金属粒子間の緻密性が向上するので好ましい。これらのポリエーテル高分子の数平均分子量は、好ましくは250〜1000である。数平均分子量が大きすぎると、有機分散媒への分散性が低下する場合があり、小さすぎると、焼成して得られる金属被膜の緻密性が低下する場合がある。
本発明に使用されるポリエーテル高分子は、骨格中にエーテル結合を有する高分子であって、一部が他の官能基によって置換されていてもよいが、用いる有機分散媒に均一に分散することが好ましい。溶媒への分散性の観点から、非結晶性のポリエーテル高分子が好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。中でも、工業的に入手が可能なポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられる粒子径が200nm以下の金属酸化物は、還元可能なものであり、中でも、容易に還元が可能な酸化銅及び酸化銀が好ましい。酸化銅としては、酸化第一銅及び酸化第二銅が挙げられる。酸化銀としては、酸化第一銀、酸化第二銀及び酸化第三銀が挙げられ、粒子の安定性から、酸化第一銀がより好ましい。
本発明に用いられる金属酸化物は、粒子径が200nm以下である必要があり、好ましくは100nm以下である。ここで粒子径とは、1次粒子の粒径を指し、電子顕微鏡等を用いて測定できる。金属酸化物の粒子径が200nmを越えると、還元処理によって得られる金属粒子間の融着が充分でないために、金属薄膜の緻密化・低抵抗化に寄与し難く、また、微細配線の形成が困難になる。
【0014】
これらの金属酸化物は、市販品又は公知の合成方法を用いて合成されたものを用いることができる。例えば、粒子径が200nm以下である酸化第一銅の合成方法として、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
金属酸化物を有機分散媒に分散させる方法としては、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等を挙げることができる。通常は、これらの分散手段の複数を組み合わせて分散を行う。これらの分散処理は室温で行っても、溶媒の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。
【0015】
有機分散媒中に分散させる金属酸化物の割合は、好ましくは5質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下である。200nm以下の粒子径を有する還元可能な金属酸化物を、用いる有機分散媒中で合成することによって、分散処理を省略することも可能である。
本発明によると、上記の金属酸化物分散液を基材の上に塗布して焼成することによって、金属被膜が基材上に形成される。基材としては、焼成によって焼失・劣化しない耐熱性のものが好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム等の金属、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂、ガラス等が好適に用いられる。また、接着性を向上させるために、これらの基材は親水化処理等の表面処理を施した後に金属酸化物分散液の塗布を行うことも可能であり、例えば、ポリイミドフィルムの場合であれば、同フィルムをアルカリ水溶液で表面疎化する等の処理が挙げられる。
【0016】
金属酸化物分散液の基板上への塗布方法は、ペーストを基板に塗布する場合に用いられる一般的な塗布方法が用いられ、例えば、スクリーン印刷方法、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法等が挙げられる。
本発明では、分散体が塗布された基板を不活性性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする。不活性雰囲気とは、例えば、アルゴン、窒素などの不活性ガスで満たされた不活性雰囲気を指す。不活性雰囲気中での焼成温度は、好ましくは100℃以上400℃以下の温度である。
【0017】
不活性雰囲気中で焼成された基板を、次いで、還元性雰囲気中で、金属酸化物を金属に還元するのに充分な温度で焼成することによって金属被膜を得る。焼成温度は、好ましくは80℃以上400℃以下、より好ましくは100℃以上400℃以下である。焼成温度が80℃未満では、実用的な時間内に金属酸化物を還元することができない場合がある。焼成によって金属酸化物を還元すると同時に、分散媒を揮発させるためには、分散媒の沸点以上の焼成温度が好ましい。例えば、沸点が197℃であるエチレングリコールを用いる場合には、例えば、200℃の焼成温度を用いることにより、分散媒の揮発と同時に金属被膜が形成する。焼成温度が400℃を越えると、樹脂基板上に金属配線を形成することが難しくなる場合がある。
【0018】
還元性雰囲気は、焼成炉中に、水素、一酸化炭素等の還元性ガスを充填した密閉系とするか、焼成炉を流通系にしてこれらのガスを流すことによって得られる。これらの還元性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン等、他の不活性ガスで希釈して用いてもよい。
焼成時間は、還元雰囲気における還元性ガスの濃度、焼成温度、並びに焼成すべき分散体の形状及び大きさによって影響を受ける。酸化銅をフィラーとして用いた場合、塗膜がミクロンメートルオーダーの薄膜であって、水素ガスを薄めずに還元ガスとして用い、200℃〜300℃程度の焼成温度を設定した場合には、1〜2時間である。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
本発明において、銅酸化物粒子の粒径は、日立製作所製走査型電子顕微鏡(S−4700)を用いて表面を観察して測定する。得られた金属被膜の体積抵抗率は、低抵抗率計ロレスタ−GP(三菱化学株式会社製)を用いて求める。
【0020】
【実施例1】
ガラス製の三口フラスコ内で、酢酸銅(和光純薬工業製)2.7gと精製水0.9gとをジエチレングリコール90mlに加え、オイルバス中で190℃で2時間加熱し、酸化第一銅粒子を得た。室温まで冷却後、日立工機株式会社製の遠心分離機で生成物を遠心沈降させた。上澄み液を同量のジエチレングリコールで入れ替えた後、超音波分散機で酸化第一銅粒子をジエチレングリコールに再分散させ、次に、遠心分離機で同分散液から粒径100nm以下の酸化第一銅微粒子を上澄み液中に遠心分取した。
分取した上澄み液に、ポリエチレングリコール(数平均分子量400、和光純薬工業製)を0.1g加えた後、ジエチレングリコールを減圧蒸留して、酸化第一銅が分散液全重量に対し50質量%になるまで濃縮した。この分散液を、1cm×5cmの面積で、厚み30μmになるようにスライドガラス上に塗布した。
【0021】
上記スライドガラスをホットプレート上に置き、ホットプレート全体に窒素ガスをフローさせながら、室温から250℃までホットプレート温度を上昇させ、250℃で1時間焼成した。冷却後、上記スライドガラスを焼成炉に移しかえ、焼成炉を真空ポンプで充分排気したのち、炉中に水素ガスをフローさせ、300℃で1時間還元焼成し、膜厚が5μmの銅被膜を得た。
得られた銅薄膜は、きれいな光沢を示していた。銅薄膜の体積低効値は3×10−6Ωcmであり、低い値であった。銅薄膜にスコッチテープを貼って剥がしたが、ほとんど剥がれは無く、ガラス基材との接着性がよいことが確認された。
【0022】
【比較例1】
実施例1と同様にしてスライドガラス上に塗工した酸化第一銅分散液塗膜を、窒素雰囲気で焼成する工程を省き、直接、水素雰囲気で還元焼成した。得られた銅薄膜の体積低効値は4×10−6Ωcmであり、低い値であった。銅薄膜にスコッチテープを貼って剥がした所、テープ接触面の銅箔がすべてはがれ、接着性が悪いことが判明した。
【0023】
【発明の効果】
本発明の製造方法により安価な金属酸化物を原料に用いて、低温において、導電性が高く、基材との密着性の高い金属被膜を形成することが可能である。得られた金属被膜は金属配線材料、導電材料等の用途に好適に用いられる。
Claims (7)
- 有機分散媒に、粒子径が200nm以下の還元可能な金属酸化物を分散させた分散体を基板に塗布した後、不活性性雰囲気中で焼成したのち、還元性雰囲気中において焼成することを特徴とする金属被膜の製造方法。
- 不活性雰囲気中での焼成を100℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1記載の金属被膜の製造方法。
- 還元性雰囲気中での焼成を80℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1または2記載の金属被膜の製造方法。
- 有機分散媒が炭素数10以下のポリオールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属被膜の製造方法。
- 分散体がポリエーテル高分子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属被膜の製造方法。
- ポリエーテル高分子が、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれた少なくとも一種であって、その数平均分子量が250〜1000の範囲にあることを特徴とする請求項5記載の金属被膜の製造方法。
- 金属酸化物が、酸化第一銅、酸化第二銅及び酸化銀から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属被膜の製造方法。
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KR101748112B1 (ko) | 2014-06-16 | 2017-06-15 | 가부시키가이샤 마테리알 콘셉토 | 구리 페이스트의 소성 방법 |
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- 2002-11-11 JP JP2002326252A patent/JP2004164876A/ja not_active Withdrawn
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