JP2004163753A - 光導波路型半導体デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体基板1上に、少なくとも光を吸収する機能を有するコア層3とクラッド層2とからなる光導波路を形成し、光入射端面から入射した光が光導波路を伝搬するでコア層に吸収されることにより光電流が生成される光導波路型半導体光デバイスである。
そして、生成された光電流に起因するジュール熱による熱破壊を避けるために、ジュール熱を半導体基板に逃がすように、コア層における光の伝搬方向に平行する両側面及び半導体基板の上面に接する熱伝導用半導体部15を設けるとともに、この熱伝導用半導体部の記光の伝搬方向に直交する幅Wを光の伝搬方向に向かって狭くしていく。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入射した光を吸収する機能を有した半導体デバイスに係わり、特に、光入射端面から入射した光を光導波路に伝搬させて、この伝搬過程でこの光を吸収させる光導波路型半導体デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
光入射端面から入射した光を光導波路に伝搬させて、この伝搬過程でこの光を吸収させる一般的な光導波路型半導体デバイスの一例としてのハイメサ型半導体光変調器の構成を図7の斜視図を用いて説明する。
【0003】
n+−InP基板1上に、n−InP下部クラッド層2が形成され、このn−InP下部クラッド層2上にi−MQWコア層3、p−InP上部クラッド層4、p+−InGaAsコンタクト層5が形成されている。このp+−InGaAsコンタクト層5の上面にp電極6が取付けられ、n+−InP基板1の下面にn電極7が取付けられている。さらに、側面にポリイミド8が形成されている。p電極6はこのポリイミド8の上面とp+−InGaAsコンタクト層5の上面とを共通に覆うが、p電極6のうち電気信号を入出力するためのボンディングワイヤ9が接続されている部分をボンディングパッド部10と称する。
【0004】
ここで、i−MQWコア層3について説明する。i−MQWコア層3とは、バンドギャップエネルギーが異なるi−InGaAsPバリアを複数組み合わせて構成した多重量子井戸(InGaAsP−InGaAsP Multiple Quantum Well:InGaAsP−InGaAsP MQW)コア層を示す。なお、この多重量子井戸層はノンドープ層なので、i−MQWコア層と記載する。
【0005】
このような構成のハイメサ型半導体光変調器においては、ボンディングパッド部10とn+−InP基板1との間の電気的キャパシタンスを減らすために、ボンディングパッド部10の下には比誘電率が小さなポリイミド8を使用している。
【0006】
また、p−InP上部クラッド層4、i−MQW層コア3及びn−InP下部クラッド層2は光を導波する光導波路を構成している。ここで、i−MQWコア層3は、その屈折率がp−InP上部クラッド層4とn−InP下部クラッド層2よりも高く、光を導波する中心的な役割を有している。なお、光導波路を構成しているリッジ部の幅と長さは各々2μm及び200μm程度である。
【0007】
次に、このハイメサ型半導体光変調器の動作を説明する。
p電極6とn電極7との間に電界が印加されていない(無バイアス)時と、逆バイアスの電界を印加した時との光の吸収係数を測定した結果を図8に示す。図中横軸は光の波長である。さらに、このハイメサ型半導体光変調器を動作させる波長を動作波長として示した。
【0008】
図8から理解できるように、電界が印加されていない場合には、ハイメサ型半導体光変調器を動作させる動作波長においては光の吸収係数は充分小さく、ハイメサ型半導体光変調器において光が入射する端面(以下、光入射端面と略す)に入射した光は、反対側の光が出射する端面(以下、光出射端面と略す)から出射される。
【0009】
一方、p電極6とn電極7との間に逆バイアスの電界を印加すると、光の吸収スペクトラムは長波長側に移動するため、ハイメサ型半導体光変調器の動作波長では光の吸収係数が大きくなり、光が吸収される。こうして、p電極6とn電極7との間の逆バイアス電圧をオン(ON)あるいはオフ(OFF)することにより、出射される光もOFFあるいはONされ、p電極6とn電極7との間に印加された電気信号を光信号へと変換することができる。
【0010】
このハイメサ型半導体光変調器において、入射した光を吸収する機能を有するi−MQWコア層3はその両側を比誘電率εrが小さな空気(εr=1)で囲まれており、かつボンディングパッド部10を下方から支持する部材として、比誘電率εrが小さなポリイミド8(εr=1〜4)を使用しているので、その電気的キャパシタンスCは小さい。したがって、電気的キャパシタンスCと負荷抵抗Rから制限される、いわゆるCR時定数制限による光変調器としての変調周波数限界(=1/πRC)は、i−MQWコア層3の両側面側(左右)を全て半導体で埋込んだ埋込み構造のものより高く、このハイメサ型半導体光変調器は高速光変調に適していると言える。
【0011】
図9(a)は逆バイアス印加時における光吸収に伴い生じる電流に起因して発生して、放熱されずに残留する熱の光変調器の長手方向における分布を示す。さらに、図9(b)は逆バイアス印加時における光吸収に伴い生じる電流に起因して発生して、放熱されずに残留する熱の光変調器の光入射端面近傍におけるi−MQWコア層3の中心からの幅方向における分布を示す。
【0012】
まず長手方向について考察する。長手方向、つまり光の伝搬方向において、光は、i−MQW層コア層3、p−InP上部クラッド層4、及びn−InP下部クラッド層2からなる光導波路を伝播する期間にその光強度Pが
P=P0・exp(―αz) …(1)
のように、指数関数の式に従ってi−MQWコア層3により吸収される。ここで、P0は光入射端面における入射光の光強度、αはi−MQWコア層3の吸収係数、zは光入射端面からの距離である。指数関数は変数に対して急速に減衰する関数であるから、入射した光は光入射端面から短い距離の間にほとんど吸収され、電流IP(これを光電流と呼ぶ)に変換される。したがって、この光電流IPに起因して発生するジュール熱における放熱されずに残留する熱の長手方法の分布も図9(a)に示すように指数関数の式に従って変化する。
【0013】
次に、幅方向(基板表面に水平方向でかつ光の伝搬方向に直交する方向)について考察する。断面構造がハイメサ構造であるのでi−MQWコア層3を含むリッジ部の両側面は空気に接している。空気の熱伝導率は半導体に比べて数桁小さいため、発生した熱はi−MQWコア層3を含むリッジ部の外部へはほとんど伝わらない。
【0014】
したがって、長手方向には光入射端面からの短い距離内に、ハイメサのリッジ部に熱が溜まることになる。特に、高いパワーの光が入射すると印加電圧Vと発生する光電流IPの積で表されるジュール熱PJ(=V・IP)の一部はn−InP下部クラッド層2を通してn+−InP基板1に逃がされるが、ジュール熱PJ(=V・IP)の大半はn+−InP基板1に充分には伝えることができず、ハイメサのリッジ部に溜まる。そのため、リッジ部がこの高いジュール熱PJのために壊れてしまう。実験的にはこのハイメサ型半導体光変調器へ入射可能な光の最大光強度は10mW程度が限界であった。
【0015】
このような不都合を解消するために、図10に示す構造を有したpn埋込型半導体光変調器が実用化されている。図7に示すハイメサ型半導体光変調器と同一部分には同一符号が付してある。
【0016】
このpn埋込型半導体光変調器においては、図示するように、入射した光を吸収するi−MQWコア層3及びn−InP下部クラッド層2の幅方向の両側をp−InP埋込み層11、及びn−InP埋込み層12で埋込み、i−MQWコア層3及びn−InP埋込み層12の各上面をp−InPオーバークラッド層13により埋込んでいる。なお、p−InPオーバークラッド層13上にp+−InGaAsコンタクト層14が形成されている。そして、このp+−InGaAsコンタクト層14の上側にp電極6が形成されている。
【0017】
このような構成のpn埋込型半導体光変調器の特徴を説明する。
図7に示したハイメサ型半導体光変調器においては、入射した光がi−MQWコア層3により吸収され、光電流IPが生成された結果発生したジュール熱は、リッジ部の幅方向の両側が熱伝導率が極めて低い空気であるため、逃げることができずにリッジ部に溜まり、結果的に素子破壊に至った。
【0018】
これに対して、図10に示すpn型半導体光変調器においては、入射した光がi−MQWコア層3で吸収された結果発生したジュール熱を、n−InP下部クラッド層2を経由してn+−InP基板1に逃がす他、p−InPオーバークラッド層13、n−InP埋込み層12、p−InP埋込み層11を通じてn+−InP基板1に逃がしている。
【0019】
この図10に示す構造は通常の半導体レーザの製造において広く使用されており、広く普及されている。
【0020】
図11(a)は図10に示すpn埋込型半導体光変調器において、逆バイアス印加時における光吸収に伴い生じる電流に起因して発生する熱のうち放熱されずに残留する熱の光変調器の長手方向における分布を示す。さらに、図11(b)は逆バイアス印加時における光吸収に伴い生じる電流に起因して発生する熱のうち放熱されずに残留する熱の光変調器の光入射端面近傍におけるi−MQWコア層3中心(メサ中心)からの幅方向における分布を示す。
【0021】
一般に半導体は熱伝導率が高いのでi−MQWコア層3の上下左右を囲んでいるp−InPオーバークラッド層13、n−InP埋込み層12、p−InP埋込み層11などの半導体を通して、発生したジュール熱は急速にn+−InP基板1に伝えられる。その結果、図11(b)に示すように、図7に示すハイメサ型半導体光変調器に比較して、i−MQWコア層3を中心とした残留する熱の分布のピーク値が低くなっていることが理解できる。このため、図10に示すpn埋込型半導体光変調器は耐光入力特性の優れた構造と言える。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10に示すpn埋込型半導体光変調器においてもまだ解消すべき次のような課題があった。
【0023】
すなわち、p型半導体であるp−InPオーバークラッド層13やp−InP埋込み層11と、n型半導体であるn−InP埋込み層12やn+−InP基板1との各界面にそれぞれpn接合面が存在する。そして、この各pn接合面の面積が広くなり、大きなキャパシタンス(電気的キャパシタンス)が発生する。その結果、CR時定数制限による光変調器としての変調周波数限界(=1/πRC)が低く、高速光変調動作が困難であるという問題があった。
【0024】
なお、p型、n型の半導体の代わりにFeドープの半絶縁性InP材料を用いて、i−MQWコア層3の両側を埋込んだ後、この埋込んだ半絶縁性InP材料の一部に穴を開け、その穴に比誘電率が低いポリイミドを充填し、このポリイミドの上面にp電極6のボンディングパッド部10を形成することが考えられる。
【0025】
しかし、FeドープInPのような半絶縁性InP材料を用いる埋込み装置と埋込み技術など、多額の設備投資と長い開発期間を必要とする。さらにp−InP上部クラッド層4に含まれるZnとFeドープの半絶縁性InP材料のFeとが相互拡散することにより、pn接合面積が広がり、大きなキャパシタンス(電気的キャパシタンス)を生じ、やはり高速光変調動作が困難となる。
【0026】
以上のように、従来のハイメサ型半導体光変調器においては、高いパワーの光が入射すると、逆バイアス電圧印加時にi−MQWコア層3において生じた電流に起因するジュール熱がハイメサのリッジ部に溜まり、リッジ部が熱破壊される。そして、これを回避するためにi−MQWコア層3をpn接合半導体により埋込むとキャパシタンスが大きくなり、高速動作が困難になるという問題があった。
【0027】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光入射端面から入射して光導波路を伝搬する光がコア層で吸収されることに起因して発生するジュール熱を、半導体としての高速性能を低下させることなく、効率的に半導体基板に逃がすことができ、半導体としての高速性能を維持した状態で、入射する光の最大光強度を上昇でき、出射光の光強度を上昇できる光導波路型半導体デバイスを提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は、半導体基板上に、少なくとも光を吸収する機能を有するコア層とクラッド層とからなる光導波路を形成し、光入射端面から入射した光が光導波路を伝搬する過程でコア層に吸収されることにより光電流が生成される光導波路型半導体光デバイスに適用される。
【0029】
そして、上記課題を解消するために、本発明の光導波路型半導体光デバイスにおいては、生成された光電流に起因するジュール熱による熱破壊を避けるために、ジュール熱を半導体基板に逃がすように、コア層における光の伝搬方向に平行する両側面及び半導体基板の上面に接する熱伝導用半導体部を設けるとともに、この熱伝導用半導体部の光の伝搬方向に直交する幅を光の伝搬方向に向かって狭くしていっている。
【0030】
前述したように、光入射端面から入射した光が光導波路を伝搬する過程でコア層に吸収されることにより光電流が生成されることに起因するジュール熱は、光入射端面近傍が最も大きく、光の伝搬距離が長くなるに伴って小さくなる。
【0031】
したがって、光が吸収されることにより生じた光電流が大きな領域では、幅の広い熱伝導用半導体部を設けることにより発生した大きなジュール熱を半導体基板に効率的に逃がす。一方、光電流が少なくなる光入射端面から遠い領域では、発生するジュール熱が小さいので、このジュール熱を半導体基板に逃がす熱伝導用半導体部の幅を狭くして、熱伝導用半導体部を設けたことに起因するキャパシタンス(電気的キャパシタンス)の増加を抑制している。
【0032】
よって、光の伝搬方向に沿って熱伝導用半導体部の面積を必要最小限とすることができるので、キャパシタンスを無為に大きくすることがなく、ジュール熱による素子破壊を避けるとともに高速光変調が可能となる。
【0033】
さらに、広く生産されている半導体レーザの結晶成長装置とその技術を用いることができるので、新たな設備投資を必要とせず、容易に光導波路型半導体デバイスを生産することが可能となる。
【0034】
また、別の発明は、上記光導波路型半導体光デバイスにおける熱伝導用半導体部の幅を曲線形状と直線形状と階段形状との少なくとも一つの形状に従って狭くしている。
【0035】
さらに、別の発明は、上記光導波路型半導体光デバイスにおける熱伝導用半導体部を、p型、n型、ノンドープ型、半絶縁性型の少なくとも一つの型の半導体材料で形成している。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る光導波路型半導体デバイスとしての半導体光変調器の概略構成を示す斜視図であり、図2は同第1実施形態の半導体光変調器の上面図である。図7、図10に示す従来のハイメサ型半導体光変調器及びpn埋込型半導体光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0037】
n+−InP基板1上に、n−InP下部クラッド層2が形成され、このn−InP下部クラッド層2上にi−MQWコア層3が形成されている。n−InP下部クラッド層2とi−MQWコア層3との幅方向の各側面とn+−InP基板1の上面との間にp−InP埋込み層11及びn−InP埋込み層12が形成されている。
【0038】
このp−InP埋込み層11及びn−InP埋込み層12は熱伝導用半導体部15を構成する。この実施形態においては、n−InP下部クラッド層2とi−MQWコア層3とで、光入射端面から入射した光を伝搬し、伝搬する過程でこの光をi−MQWコア層3で吸収する光導波路を構成する。
【0039】
i−MQWコア層3及びn−InP埋込み層12の上面にp−InPオーバークラッド層13が形成され、このp−InPオーバークラッド層13上にp+−InGaAsコンタクト層14が形成されている。なお、p−InP埋込み層11、n−InP埋込み層12及びp−InPオーバークラッド層13は電流ブロック層の機能をも有する。
【0040】
そして、p+−InGaAsコンタクト層14の上側にp電極6が取付られている。n+−InP基板1の下面にn電極7が取付けられている。さらに、側面にポリイミド8が形成されている。p電極6はこのポリイミド8の上面とp+−InGaAsコンタクト層14の上面とを共通に覆うが、p電極6のうちのボンディングパッド部10に電気信号を入出力するためのボンディングワイヤ9が接続されている。
【0041】
図2の上面図にも示すように、熱伝導用半導体部15、及びp−InPオーバークラッド層13とp+−InGaAsコンタクト層14とp電極6とにおけるこの熱伝導用半導体部15の上方に位置する部分の光の伝搬方向に直交する方向の幅Wを、光の伝搬方向に向かって指数関数的に狭くしている。具体的には、光入射端面での幅W=Bをポリイミド8近傍位置(z=約30μm)で0(W=0)まで低下させている。実施形態においては、光入射端面での幅W=Bは約10μmであり、i−MQWコア層3の固定幅A=2μmの約5倍に設定されている。
【0042】
次に、このように構成された第1実施形態の光導波路型半導体デバイスとしてのハイメサ型半導体光変調器の動作を説明する。
【0043】
図7に示した従来のハイメサ型半導体光変調器においては、図9(a)を用いて説明したように、ハイメサ型半導体光変調器における光入射端面付近では発生して放熱されずに残留する熱が高くなる。しかし、この第1実施形態の半導体光変調器においては、発生したジュール熱をn−InP下部クラッド層2を経由してn+−InP基板1に逃がす他、p−InP埋込み層11とn−InP埋込み層12からなる熱伝導用半導体部15、p−InPオーバークラッド層13、p+−InGaAsコンタクト層14を介して、発生したジュール熱を効率良くn+−InP基板1に逃がしている。
【0044】
図2に示した上面図からも理解できるように、光入射端面付近では熱伝導用半導体部15の幅Wは広いので発生したジュール熱を効率良くn+−InP基板1に伝えることができる。したがって、光入射端面近傍における残留する熱(ジュール熱)のi−MQWコア層3を含むリッジ部の幅方向分布は、耐光入力特性の優れた図10の従来のpn埋込型半導体光変調器における図11(b)の幅方向分布とほぼ同等であり、第1の実施形態の光導波路型半導体デバイスも耐光入力特性について優れている。したがって、入射する光の最大光強度を上昇でき、出射光の光強度を上昇できる。
【0045】
光が光入射端面に入射後、外部から電圧が印加された半導体光変調器内において吸収されて発生するジュール熱の半導体光変調器の長手方向、つまり光の伝搬方向における分布は式(1)に示したように指数関数的に表される。つまり、光入射端面付近においてジュール熱の発生量は大きく、光が伝搬するにつれてジュール熱の発生が指数関数的に急速に少なくなる。
【0046】
熱伝導用半導体部15の光変調器の長手方向の各位置における幅Wは発生するジュール熱の大きさに従って決定すればよいので、熱伝導用半導体部15の幅Wを指数関数的に狭くすることによって、長手方向の各位置にて発生するジュール熱を効率的にn+−InP基板1に逃がすことができる。
【0047】
したがって、熱伝導用半導体部15の面積を必要最小限に抑制できるので、熱伝導用半導体部15の存在に起因するキャパシタンスを最小限にとどめることが可能となる。その結果、CR時定数制限による光変調器としての変調周波数限界(=1/πRC)を高くでき、半導体光変調器としての高速光変調動作が可能となる。
このように、半導体としての高速性能を維持した状態で、入射する光の最大光強度を上昇でき、出射光の光強度を上昇できる。
【0048】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係る光導波路型半導体デバイスとしての半導体光変調器の概略構成を示す斜視図であり、図4は同第2実施形態の半導体光変調器の上面図である。図1、図2に示す第1実施形態の半導体光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0049】
この第2実施形態の半導体光変調器においては、図4に示すように、熱伝導用半導体部15の幅Wを半導体光変調器の光の伝搬方向(長手方向)に向かって直線的に低下させている。
【0050】
このように構成された第2実施形態の半導体光変調器においても、前述した第1実施形態の半導体光変調器とほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
【0051】
なお、この第2実施形態においては、熱伝導用半導体部15の幅Wを半導体光変調器の光の伝搬方向(長手方向)に向かって直線的に低下させたが、図12に示すように階段形状に従って低下させることも可能である。この場合、階段形状の段数は任意に設定できる。
【0052】
さらに、熱伝導用半導体部15の幅Wを半導体光変調器の光の伝搬方向(長手方向)に向かって、円弧形状に従って低下させたり、放物線的に低下させたり、2乗曲線や3乗曲線などあらゆる曲線に従って低下させたり、直線と曲線の組合せに従って低下させてもよいことは言うまでもない。
【0053】
(第3実施形態)
図5は本発明の第3実施形態に係る半導体デバイスを示す斜視図であり、図6(a)は同第3実施形態の半導体デバイスの上面図であり、図6(b)は同第3実施形態の半導体デバイスの断面図である。図1、図2に示す第1実施形態の半導体光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0054】
この第3実施形態の半導体デバイスは、第1実施形態の半導体光変調器16と分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD)17とを集積したものである。
【0055】
分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD)17は、n+−InP基板1とn電極7とをハイメサ型半導体光変調器16とで共用している。そして、分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD)17においては、例えばInGaAsP等の発光する材料を活性層18として用いる。なお、フォトルミネッセンス波長(以下、PL波長と略記する)としては、活性層18のPL波長を1.55μmとすると、i−MQWコア層3のPL波長は1.47μm程度となる。分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD)17におけるp+−InGaAsコンタクト層14の上側に形成されたp電極19にこの分布帰還型半導体レーザ14に電流を流すためのボンディングワイヤ20が取付けられている。
【0056】
分布帰還型半導体レーザ17において、p電極19とn電極7との間に順方向の電圧を印加すると、活性層18で光が生起されて、半導体光変調器16側の端面から出射される。この分布帰還型半導体レーザ17から出射された光は半導体光変調器16の光入射端面から入射光として、この半導体光変調器16へ入射される。
【0057】
この場合、順方向に電圧が印加される分布帰還型半導体レーザ17と逆方向に電圧が印加される半導体光変調器16とを電気的に分離する必要があるので、分布帰還型半導体レーザ17と半導体光変調器16との間に電気的分離部21が形成されている。具体的には、図6(b)の断面図に示すように、p電極6、p電極19、p+−InGaAsコンタクト層14、p−InPオーバークラッド層13の一部をエッチング除去することによって、電気的分離部21を形成している。
【0058】
分布帰還型半導体レーザ17と半導体光変調器16とにおけるn−InP下部クラッド層2相互間、及びi−MQW3と活性層18との間は、バットジョイント手法で接している。
【0059】
このような構成の第3実施形態の半導体デバイスにおいても、上述した第1、2の実施形態の半導体光変調器とほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
【0060】
さらに、この第3実施形態の半導体デバイスにおいては、半導体レーザと光変調器を1つの半導体デバイスに組込んでいるので、この半導体デバイスを用いて任意波形の光信号を簡単に作成できる。
【0061】
以上説明したように、第1、第2、第3の各実施形態においては、熱伝導用半導体部15の幅Wを光の伝搬方向に向かって狭くしていくことによって、半導体としての高速性能を維持した状態で、入射する光の最大光強度を上昇でき、出射光の光強度を上昇できる。
【0062】
さらに、各実施形態においては、熱伝導用半導体部15の幅Wを光の伝搬方向に向かって狭くしていくことによって、i−MQWコア層3を含む光導波路を伝搬する光を同光導波路に幅方向に閉じ込める効率が、図10に示した従来のpn埋込型半導体光変調器に比較して改善されているので、逆バイアス電圧印加時における光の消光特性も優れていると言える。
【0063】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
各実施形態において、半導体基板としてn+−InP材料を採用したが、半導体基板として、p+−InP基板や半絶縁性1nP基板など、種々の半導体基板を採用可能なことは勿論である。
【0064】
さらに、光を吸収するコア層の材料としてi−InGaAsP―InGaAsP MQW層を採用したが、i−InGaAs/InGaAsP MQW層、i−InGaAs/InP MQW層、i−InGaAlAs/InAlAs MQW層などその他の多重量子井戸でもよいし、i−InGaAs層やi−InGaAlAs層などのバルク材料でも良い。また、波長は1.55μm帯のみならず、いかなる波長であってもよい。
【0065】
また、FeドープInPのような半絶縁性InPを用いた埋込み装置と埋込み技術は必要ないとしたが、もちろん用いても良いし、発生したジュール熱を半導体基板に逃がすことができれば、熱伝導用半導体部としてノンドープInPなど、これら以外の材料を用いてもよいことは言うまでもない。
【0066】
また、各第1、第2、第3の各実施形態の半導体光変調器においては、図2、図4、図6及び図12に示すように、熱伝導用半導体部15の幅Wをポリイミド8近傍で0まで低下させた。したがって、光が出射する光出射端面近傍においてはi−MQWコア層3の側面が露出している。
【0067】
なお、熱伝導用半導体部15の幅Wが0でない長さは任意でよく、また、0にしなくてもよい。すなわち、熱伝導用半導体部15の幅Wを、光入射端面から光が出射する反対側の光出射端面に至る光導波路の全区間に亘って低下させることも可能である。この場合、i−MQWコア層3で発生した熱は、このi−MQWコア層3の長手方向の全区間に亘って熱伝導用半導体15を介してn+−InP基板1に逃される。
【0068】
さらに、本発明の各実施形態においては、光導波路型半導体デバイスとして半導体光変調器を説明した。しかし、本発明の光導波路型半導体デバイスは発熱した熱を分散させる構成及び機能を有するものであるから、本発明の光導波路型半導体デバイスを、光を吸収し電流に変換した結果、熱を発生する半導体受光器のようなその他の半導体デバイスにも適用可能である。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光導波路型半導体デバイスにおいては、コア層における光の伝搬方向に平行する両側面及び半導体基板の上面に接する熱伝導用半導体部を設けるとともに、この熱伝導用半導体部の光の伝搬方向に直交する幅を光の伝搬方向に向かって狭くしていっている。
【0070】
したがって、光入射端面から入射して光導波路を伝搬する光がコア層で吸収されることに起因して発生するジュール熱を、半導体としての高速性能を低下させることなく、効率的に半導体基板に逃がすことができ、半導体としての高速性能を維持した状態で、入射する光の最大光強度を上昇でき、出射光の光強度を上昇できる。
【0071】
さらに、広く生産されている半導体レーザの結晶成長装置とその技術を用いることができるので、新たな設備投資を必要とせず、容易に光導波路型半導体デバイスを生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光導波路型半導体デバイスとしての半導体光変調器の概略構成を示す斜視図
【図2】同第1実施形態の半導体光変調器の上面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る光導波路型半導体デバイスとしての半導体光変調器の概略構成を示す斜視図
【図4】同第2実施形態の半導体光変調器の上面図
【図5】本発明の第3実施形態に係る半導体デバイスを示す斜視図
【図6】同第3実施形態の半導体デバイスの上面及び断面を示す図
【図7】従来のハイメサ型半導体光変調器の概略構成を示す斜視図
【図8】同従来のハイメサ型半導体光変調器における光の吸収特性を示す図
【図9】同従来のハイメサ型半導体光変調器における熱特性を示す図
【図10】別の従来のpn埋込型半導体光変調器の概略構成を示す斜視図
【図11】同別の従来のpn埋込型半導体光変調器における熱特性を示す図
【図12】本発明の第2実施形態の半導体光変調器における変形例の上面図
【符号の説明】
1…n+−InP基板
2…n−InP下部クラッド層
3…i−MQWコア層
4…p−InP上部クラッド層
5、14…p+−InGaAsコンタクト層
6、19…p電極
7…n電極
8…ポリイミド
9、20…ボンディングワイヤ
10…ボンディングパッド部
11…p−InP埋込み層
12…n−InP埋込み層
13…p−InPオーバークラッド層
15…熱伝導用半導体部
16…半導体光変調器
17…分布帰還型半導体レーザ
18…活性層
21…電気的分離溝
Claims (3)
- 半導体基板上に、少なくとも光を吸収する機能を有するコア層とクラッド層とからなる光導波路を形成し、光入射端面から入射した光が前記光導波路を伝搬する過程で前記コア層に吸収されることにより光電流が生成される光導波路型半導体光デバイスにおいて、
前記生成された光電流に起因するジュール熱による熱破壊を避けるために、前記ジュール熱を前記半導体基板に逃がすように、前記コア層における前記光の伝搬方向に平行する両側面及び前記半導体基板の上面に接する熱伝導用半導体部を設けるとともに、この熱伝導用半導体部の前記光の伝搬方向に直交する幅を前記光の伝搬方向に向かって狭くしていくことを特徴とする光導波路型半導体デバイス。 - 前記熱伝導用半導体部の幅を曲線形状と直線形状と階段形状との少なくとも一つの形状に従って狭くしていくことを特徴とする請求項1記載の光導波路型半導体デバイス。
- 前記熱伝導用半導体部は、p型、n型、ノンドープ型、半絶縁性型の少なくとも一つの型の半導体材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の光導波路型半導体デバイス。
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