JP2004162998A - 車両用冷凍装置、およびその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧縮機1から吐出される気相状態の冷媒を、コンデンサ2や膨張弁3A,3Bを介さず、定圧膨張弁11によって保温庫の庫内温度飽和圧力以下に減圧させたうえでエバポレータ4A,4Bに導入する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保冷だけでなく保温も行える冷凍車用の冷凍装置、およびその制御方法に関し、保温状態にある庫内を迅速に、かつ効率よく加熱する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
保冷だけでなく保温も行える冷凍車において、保温のための加熱を行う方式には次の2つが挙げられる。
(1)温水加熱方式
車両用エンジンの冷却水(とはいえその温度は90℃前後になる)を庫内に導入し、放熱させることにより庫内を加熱する(例えば、下記の特許文献1)。
(2)ホットガス冷媒加熱方式
圧縮機から吐出される冷媒(高温高圧の気相状態)を直接エバポレータに導入し、エバポレータにおいて放熱させることにより庫内を加熱する。
【0003】
【特許文献1】特開平10−160321(段落[0016]、図4)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の2つの加熱方式には次のような問題点が指摘されている。
まず、(1)の温水加熱方式においては、冷却水を庫内に導入するための配管を別途施工する必要があり、車両に対する冷凍装置の架装が複雑になる。
(2)のホットガス冷媒加熱方式においては、エバポレータにおいて放熱(庫内の空気に冷却)された冷媒がエバポレータ出口で気液二相状態となってしまうため、圧縮機に液相状態の冷媒を吸い込んで壊さないように、液冷媒をアキュムレータに留めておく必要がある。こうすると、冷凍サイクルを形成する系内にて実質的に機能する冷媒量が減少して性能が低下してしまう。さらに、アキュムレータ内に液冷媒が溜まり過ぎると液戻りや油(潤滑油)希釈といった現象を起こして不具合を生じさせる可能性もある。また、加熱運転から冷却運転に移行する際、液冷媒をアキュムレータからコンデンサ/レシーバに移動させる必要があり、過渡期のロスが大きい点も見逃せない。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、保温状態にある庫内を迅速に、かつ効率よく加熱することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成の車両用冷凍装置およびその制御方法を採用する。
すなわち本発明に係る請求項1記載の車両用冷凍装置は、圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、減圧手段によって保温庫の庫内温度飽和圧力以下に減圧させたうえでエバポレータに導入することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の車両用冷凍装置は、請求項1記載の車両用冷凍装置において、圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、コンデンサおよび膨張弁をバイパスしてエバポレータに導入するバイパス路と、該バイパス路を流通する前記冷媒を保温庫の庫内温度飽和圧力以下に減圧させる減圧手段と、前記バイパス路を開閉して前記冷媒の流通を断続する開閉手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、気相状態の冷媒を、保温庫の庫内温度飽和圧力以下まで減圧させたうえでエバポレータに導入すると、導入された冷媒がエバポレータ内で凝縮を伴わなわずに放熱する。これにより、従来の温水冷却方式のように冷却水を庫内に導入するための配管を別途施工しなくても加熱運転が可能になる。また、冷凍サイクルを実現する系内は過熱ガスの単相状態となり、従来のホットガス冷媒加熱方式のように液冷媒をアキュムレータに留めておく必要がなくなって実質的に機能する冷媒量が十分に確保される。さらに、アキュムレータ内に液冷媒を溜めないので、液戻りや油希釈といった現象も起こらなくなる。また、加熱運転から冷却運転に移行する際も、アキュムレータ内の冷媒量が少ないので、過渡期のロスが小さくて済む。
【0009】
請求項3記載の車両用冷凍装置は、請求項2記載の車両用冷凍装置において、前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒が所定の圧力よりも高い場合、該気相状態の冷媒の一部を前記コンデンサに導入する高圧制御手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
上記のごとく冷媒をエバポレータ内で凝縮を伴わずに放熱させると、冷凍サイクルを実現する系内は過熱ガスの単相状態となるため、圧縮機の吐出圧力は系内を循環する冷媒量に決定される。しかしながら、アキュムレータやレシーバに保持される冷媒量が変化すれば、圧縮機の吐出圧力、すなわち高圧側の冷媒圧力もこれに伴って変化してしまう。そこで本発明においては、圧縮機から吐出される気相状態の冷媒の一部をコンデンサに導入することにより、高圧側の冷媒圧力が所定の圧力に保たれる。
【0011】
請求項4記載の車両用冷凍装置は、請求項2または3記載の車両用冷凍装置において、前記エバポレータにて放熱して低温低圧の気相状態となった冷媒が所定の圧力よりも低い場合、レシーバに保持された気相状態の冷媒の一部を前記冷媒に加える冷媒導出低圧制御手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
例えば外気温が非常に低くなると、コンデンサやレシーバに冷媒が溜まり込み、系内を循環する冷媒量が不足する場合があり、圧縮機に吸入されるべき冷媒の圧力、すなわち低圧側の冷媒圧力もこれに伴って低下してしまう。そこで本発明においては、レシーバに保持された気相状態の冷媒の一部を系内の冷媒に加えることにより、低圧側の冷媒圧力が所定の圧力に保たれる。
【0013】
請求項5記載の車両用冷凍装置は、請求項4記載の車両用冷凍装置において、前記エバポレータにて放熱して低温低圧の気相状態となった冷媒が所定の圧力よりも低い場合、レシーバに保持された液相状態の冷媒の一部を前記冷媒に加えるべく前記圧縮機から吐出される冷媒をレシーバに導入する冷媒導入低圧制御手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明においては、レシーバに保持された液相状態の冷媒の一部を冷媒に加えるべく圧縮機から吐出される冷媒をレシーバに導入することにより、低圧側の冷媒圧力が所定の圧力に保たれる。
【0015】
請求項6記載の車両用冷凍装置は、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる2つのエバポレータを備える車両用冷凍装置であって、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、前記コンデンサおよび膨張弁を介さず、減圧手段によって保冷庫の庫内温度飽和圧力以下まで減圧させたうえで一方のエバポレータに導入することで一方の保冷庫を加熱する加熱運転と、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を前記冷凍サイクルに乗せて他方のエバポレータに導入することで他方の保冷庫を冷却する冷却運転とを可能とし、
前記加熱運転または冷却運転を交互に行う制御部を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の車両用冷凍装置の制御方法は、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる2つのエバポレータを備える車両用冷凍装置の制御方法であって、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、前記コンデンサおよび膨張弁を介さず、減圧手段によって保冷庫の庫内温度飽和圧力以下まで減圧させたうえで一方のエバポレータに導入することで一方の保冷庫を加熱する加熱運転と、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を前記冷凍サイクルに乗せて他方のエバポレータに導入することで他方の保冷庫を冷却する冷却運転とを可能とし、
前記加熱運転または冷却運転を交互に行うことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、上記のような加熱運転と通常の冷却運転とを交互に行うことにより、1室加熱、1室冷却の運転が迅速、かつ効率よく行えるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る実施形態を図1ないし図12に示して説明する。
図1には2つの保冷庫(ただし、保冷だけでなく保温も行える)を有する冷凍車に搭載される車両用冷凍装置の概要を示す。同図において、符号1は圧縮機、2はコンデンサ、3A,3Bは膨張弁、4A,4Bはエバポレータ、5はアキュムレータ、6はレシーバである。各機器は図中に太実線で示す冷媒配管L1を介して接続されて冷凍サイクルを実現する系統を構成している。さらに、図中の符号7は制御部、8は入力部、9は記憶部である。
【0019】
2つのエバポレータ4A,4Bは、膨張弁3A,3Bとともに前記系統に並列に接続されている。並列に分岐して膨張弁3A、エバポレータ4Aを配置された一方の配管にはエバポレータ4Aへの冷媒の導入を断続する開閉弁10Aが設けられ、膨張弁3B、エバポレータ4Bを配置された一方の配管にはエバポレータ4Bへの冷媒の導入を断続する開閉弁10Bが設けられている。エバポレータ4Aは2つの保冷庫の一方(以下ではここを前室Aと呼ぶ)に配置され、エバポレータ4Bは2つの保冷庫の他方(以下ではここを後室Bと呼ぶ)に配置されている。
【0020】
主要な冷媒配管L1には、圧縮機1から吐出された冷媒をコンデンサ2、レシーバ6および膨張弁3A,3Bをバイパスしてエバポレータ4A,4Bに導入するバイパス配管(バイパス路;図中に細実線で示す)L2が接続されている。また、バイパス配管L2の先端は2つに分岐しており、その一方がエバポレータ4Aの入口側に接続され、他方がエバポレータ4Bの入口側に接続されている。そして、エバポレータ4Aの入口側に接続された一方のバイパス配管には、エバポレータ4Aへの冷媒の導入を断続する開閉弁(開閉手段)10Cが設けられ、エバポレータ4Bの入口側に接続された他方のバイパス配管には、エバポレータ4Bへの冷媒の導入を断続する開閉弁(開閉手段)10Dが設けられている。
【0021】
バイパス配管L2には、気相状態の冷媒を所定の圧力(低圧;PLset、過熱状態に置かれる保冷庫の庫内温度飽和圧力以下で設定した圧力であり、特定の一の値をとるものに限られず、冷媒循環量に応じて許容される設定低圧に幅を持たせても良い)以下まで減圧させる定圧膨張弁(減圧手段)11が設けられている。また、バイパス配管L2には、定圧膨張弁11をバイパスするバイパス配管L3が設けられている。バイパス配管L3には、同管の管路を断続する開閉弁12が設けられている。
【0022】
冷媒配管L1の高圧側(圧縮機1とコンデンサ2との間)には、圧縮機1の吐出圧力が所定の圧力(高圧;PHset、上記PLsetよりも高い)以上になったら開く吐出圧力調整弁(高圧制御手段)13が設けられている。
【0023】
レシーバ6と冷媒配管L1との間には、レシーバ6の内部に保持された冷媒のうちの液相成分を冷媒配管L1の低圧側(エバポレータ4A,4Bと圧縮機1との間)に供給する液戻し配管L4が接続されている。液戻し配管L4には、同管中の液相冷媒の流通を断続する開閉弁14が設けられている(液戻し配管L4と開閉弁14とが、レシーバ6内に残留する冷媒の圧力を用いて低圧側である冷媒配管L1側を昇圧する冷媒導出低圧制御手段をなす)。
【0024】
また、上述した冷媒導出低圧制御手段で昇圧が不十分である場合に備え、さらなる低圧制御手段を設ける。具体的には、図1に示したように、レシーバ6とバイパス配管L2との間に、レシーバ6に高圧圧力の吐出冷媒を導入し、レシーバ6内に残留する冷媒を冷媒配管L1側に導出するためのガス戻し配管L5が接続されている。ガス戻し配管L5には、同管中の気相冷媒の流通を断続する開閉弁15が設けられている(ガス戻し配管L5と開閉弁15とが、上記の冷媒導出低圧制御手段との組み合わせによってレシーバ6に吐出冷媒を導入し、低圧側である冷媒配管L1側を昇圧する冷媒導入低圧制御手段をなす)。
【0025】
圧縮機1とコンデンサ2との間、コンデンサ2とレシーバ6との間、およびエバポレータ4A,4Bの出口側の冷媒配管L1には、冷媒の流れを一方向に規制する逆止弁16がそれぞれ設置されている。また、前室A、後室Bには、それぞれ室温センサ17A,17Bが設置され、冷媒配管L1の低圧側には、圧力センサ18が設置されている。
【0026】
制御部7は、開閉弁10A〜10D,12,14,15、室温センサ17A,17B、圧力センサ18とそれぞれ図中に破線で示す信号配線で接続されており、室温センサ17A,17B、圧力センサ18の計測結果および前室A、後室Bそれぞれの設定温度に基づいて開閉弁10A〜10D,12,14,15の駆動を制御する。入力部8は、前室A、後室Bそれぞれの設定温度や、各室の1回当たりの加熱/冷却期間(エバポレータへの冷媒導入期間)等の情報を入力するのに使われる。記憶部9は、室温センサ17A,17B、圧力センサ18の計測結果および前室A、後室Bそれぞれの設定温度、その他の情報を記憶しておくようになっている。
【0027】
図1のように構成された車両用冷凍装置の作動の仕方を、[1.前室、後室とも冷却運転モード]、[2.前室、後室とも加熱運転モード]、[3.前室冷却、後室加熱運転モード]、[4.前室加熱、後室冷却運転モード]、[5.デフロスト運転モード]、[6.前室油戻し運転モード]、[7.後室油戻し運転モード]の各モードごとに説明する。
[1.前室、後室とも冷却運転モード]が選択されると、次の3つのモードが選択的に実行される。
[▲1▼前室、後室並行冷却モード]
このモードが選択されると、開閉弁10C,10D,12,14,15が閉じられ、開閉弁10A,10Bが開かれる。圧縮機1で圧縮された冷媒は高温高圧の気相状態となり、PHset以上で吐出圧力調整弁13が開いてコンデンサ2に流入する。コンデンサ2に流入した冷媒は、屋外の空気に熱を与え、自らは凝縮して高温高圧の液冷媒となる。凝縮、液化した冷媒は、レシーバ6、開閉弁10A,10Bを流通し、膨張弁3A,3Bを流通する過程で断熱膨張し、低温低圧の液冷媒となってエバポレータ4A,4Bに並行して流入する。エバポレータ4A,4Bに流入した冷媒は、前室A、後室B内の空気を冷却し、自らは蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発、気化した冷媒はアキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0028】
[▲2▼前室のみ冷却(後室は温度管理停止)モード]
このモードが選択されると、開閉弁10B,10C,10D,12,14,15が閉じられ、開閉弁10Aのみが開かれる。圧縮機1で圧縮された冷媒は高温高圧の気相状態となり、PHset以上で吐出圧力調整弁13が開いてコンデンサ2に流入する。コンデンサ2に流入した冷媒は、屋外の空気に熱を与え、自らは凝縮して高温高圧の液冷媒となる。凝縮、液化した冷媒は、レシーバ6、開閉弁10Aを流通し、膨張弁3Aを流通する過程で断熱膨張し、低温低圧の液冷媒となってエバポレータ4Aに流入する。エバポレータ4Aに流入した冷媒は、前室A内の空気を冷却し、自らは蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発、気化した冷媒はアキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0029】
[▲3▼後室のみ冷却(前室は温度管理停止)モード]
このモードが選択されると、開閉弁10A,10C,10D,12,14,15が閉じられ、開閉弁10Bのみが開かれる。圧縮機1で圧縮された冷媒は高温高圧の気相状態となり、PHset以上で吐出圧力調整弁13が開いてコンデンサ2に流入する。コンデンサ2に流入した冷媒は、屋外の空気に熱を与え、自らは凝縮して高温高圧の液冷媒となる。凝縮、液化した冷媒は、レシーバ6、開閉弁10Bを流通し、膨張弁3Bを流通する過程で断熱膨張し、低温低圧の液冷媒となってエバポレータ4Bに流入する。エバポレータ4Bに流入した冷媒は、後室B内の空気を冷却し、自らは蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発、気化した冷媒はアキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0030】
[2.前室、後室とも加熱運転モード]が選択されると、次の3つのモードが選択的に実行される。
[▲4▼前室、後室並行加熱モード]
このモードが選択されると、開閉弁10A,10B,12,14,15が閉じられ、開閉弁10C,10Dが開かれる。ただし、詳細は後述するが、開閉弁14,15は、初期状態が閉であっても、必要に応じて開閉制御される。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧の気相状態となり、その圧力がPHsetよりも小さい限りはコンデンサ2には流入せず、バイパス配管L2を流通し、定圧膨張弁11にてPLsetまで気相状態を保ちつつ減圧される。減圧された冷媒は、開閉弁10C,10Dを流通し、エバポレータ4A,4Bに並行して導入される。エバポレータ4A,4Bでは、導入された気相状態の冷媒が凝縮を伴わないで放熱し、前室A、後室B内の空気を加熱する。放熱した冷媒は低温低圧の気相状態となり、アキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0031】
[▲5▼前室のみ加熱(後室は温度管理停止)モード]
このモードが選択されると、開閉弁10A,10B,10D,12,14,15が閉じられ、開閉弁10Cのみが開かれる(開閉弁14,15の制御の詳細は後述する)。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧の気相状態となり、その圧力がPHsetよりも小さい限りはコンデンサ2には流入せず、バイパス配管L2を流通し、定圧膨張弁11にてPLsetまで気相状態を保ちつつ減圧される。減圧された冷媒は、開閉弁10Cを流通し、エバポレータ4Aに導入される。エバポレータ4Aでは、導入された気相状態の冷媒が凝縮を伴わないで放熱し、前室A内の空気を加熱する。放熱した冷媒は低温低圧の気相状態となり、アキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0032】
[▲6▼後室のみ加熱(前室は温度管理停止)モード]
このモードが選択されると、開閉弁10A,10B,10C,12,14,15が閉じられ、開閉弁10Dのみが開かれる(開閉弁14,15の制御の詳細は後述する)。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧の気相状態となり、その圧力がPHsetよりも小さい限りはコンデンサ2には流入せず、バイパス配管L2を流通し、定圧膨張弁11にてPLsetまで気相状態を保ちつつ減圧される。減圧された冷媒は、開閉弁10Dを流通し、エバポレータ4Bに導入される。エバポレータ4Bでは、導入された気相状態の冷媒が凝縮を伴わないで放熱し、後室B内の空気を加熱する。放熱した冷媒は低温低圧の気相状態となり、アキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0033】
以下では、上記の[2.前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を、図2ないし図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、開閉弁10A〜10D,12,14,15はいずれも制御の当初において閉じているものとする。
前段階として、制御部7は、記憶部9に格納された各種設定値を参照しつつ、前室A、後室B双方の加熱運転モードの可否判断を行う。なお、制御部7は、入力部8を介して受け付けた各種設定値を記憶部9の所定の領域に格納する処理を任意のタイミングで行っているものとする。具体的な判断シーケンスは以下の通りである。
まず、制御部7は、室温センサ17A,17Bによって前室A、後室Bの庫内温度Ft,Rtをそれぞれ計測する(ステップ101)。次に、制御部7は、庫内温度Ftがあらかじめ設定された前室Aの目標温度(設定温度)Fsetよりも低く、かつ庫内温度Rtがあらかじめ設定された後室Bの目標温度(設定温度)Rsetよりも低いか否かを判別する(ステップ102)。
【0034】
制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも低く、かつ庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁10C,10Dを開いて[▲4▼前室、後室並行加熱モード]に移行し(ステップ103)、それ以外の場合には、[前室、後室とも加熱運転モード]の終了、または[1室加熱、1室冷却モード]への移行を選択する(ステップ104)。
【0035】
[▲4▼前室、後室並行加熱モード]に移行すると、制御部7は、低圧側における圧力低下が生じないようにしながら加熱運転を実行する。具体的には、圧力センサ18によって低圧側の圧力PLを計測し(ステップ105)、続いて低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ106)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、循環冷媒量が十分確保されているとして(PLsetに許容幅を持たせている場合であっても、少なくとも許容される範囲内にあるとして)後述するステップ116に移行し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、循環冷媒量が不足している状態であるとして、開閉弁14を開いてレシーバ6の内部に保持された液相状態の冷媒の一部を冷媒配管L1の低圧側に供給する(ステップ107)。
【0036】
次に、制御部7は、[▲4▼前室、後室並行加熱モード]の開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ108)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら低圧側圧力PLを計測し(ステップ109)、続いて低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ110)。このように、所定時間間隔を設定して判断するのは、レシーバ6と冷媒配管L1との差圧を利用して冷媒を導出するため、冷媒供給に時間がかかるからである。
そして、残留冷媒導出低圧制御手段を機能させた状態で、制御部7はその効果を判定し、それに応じたステップへと移行する。具体的には、低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14を閉じたうえで(ステップ111)、前述したステップ105に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、レシーバ6の差圧ではレシーバ6に残留する冷媒の供給が行えないとして、開閉弁15を開いて吐出冷媒をレシーバ6側に導入し、レシーバ6の内部に保持された気相状態の冷媒の一部をバイパス配管L2に供給する(ステップ112)。
【0037】
次に、制御部7は、吐出冷媒導入低圧制御手段を機能させた状態で、その効果を判定すべく低圧側圧力PLを計測し(ステップ113)、続いて低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ114)。制御部7は、低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、そのまま吐出冷媒導入低圧制御手段を機能させるべく、前述したステップ113に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが設定圧力PLsetよりも低くない、すなわち、圧力低下状態から回復したと判断した場合には、開閉弁14,15を閉じてレシーバ6から冷媒配管L1への液相冷媒の供給を断つ(ステップ115)。
【0038】
次に、制御部7は、庫内温度Rtを計測し(ステップ116)、続いて庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いか否かを判別する(ステップ117)。制御部7は、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いと判断した場合には、後述する図4に示したステップ120に移行し、前室のみの加熱運転を行い、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高くないと判断した場合には、二室加熱制御を継続するか否かを判別すべく、庫内温度Ftを計測し(ステップ118)、続いて庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いか否かを判別する(ステップ119)。制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高くないと判断した場合には、前述したステップ105に戻って二室加熱運転を継続し、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いと判断した場合には、後述する図6に示したステップ136に移行し、後室のみの加熱運転を行う。
【0039】
以下、一室のみの加熱モードにおける制御について説明する。
制御部7は、ステップ117において庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いと判断した場合には、開閉弁10Dを閉じて[▲5▼前室のみ加熱モード]に移行する(ステップ120)。このモードに移行すると、制御部7は、まず、低圧側の圧力PLを計測し(ステップ121)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ122)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、後述するステップ132に移行し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁14を開いてレシーバ6の内部に保持された液相状態の冷媒の一部を冷媒配管L1の低圧側に供給する(ステップ123)。
【0040】
次に、制御部7は、[▲5▼前室のみ加熱モード]の開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ124)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら低圧側圧力PLを計測し(ステップ125)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ126)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14を閉じたうえで(ステップ127)、前述したステップ121に戻って上記の処理を繰り返し、吸入圧力PLsetが低圧側圧力PLよりも低いと判断した場合には、開閉弁15を開いて吐出冷媒をレシーバ6側に導入し、レシーバ6の内部に保持された気相状態の冷媒の一部をバイパス配管L2に供給する(ステップ128)。
【0041】
次に、制御部7は、低圧側圧力PLを計測し(ステップ129)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ130)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、前述したステップ129に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14,15を閉じてレシーバ6から冷媒配管L1への液相冷媒の供給を断つ(ステップ131)。
【0042】
次に、制御部7は、庫内温度Rtを計測し(ステップ132)、続いて庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いか否かを判別する(ステップ133)。制御部7は、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高くないと判断した場合には、前述したステップ105に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いと判断した場合には、庫内温度Ftを計測し(ステップ134)、続いて庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いか否かを判別する(ステップ135)。制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高くないと判断した場合には、前述したステップ120に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いと判断した場合には、後述するステップ152に移行する。
【0043】
制御部7は、ステップ119において庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いと判断した場合には、開閉弁10Cを閉じて[▲6▼後室のみ加熱モード]に移行する(ステップ136)。このモードに移行すると、制御部7は、まず、低圧側の圧力PLを計測し(ステップ137)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ138)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、後述するステップ148に移行し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁14を開いてレシーバ6の内部に保持された液相状態の冷媒の一部を冷媒配管L1の低圧側に供給する(ステップ139)。
【0044】
次に、制御部7は、[▲6▼後室のみ加熱モード]の開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ140)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら低圧側圧力PLを計測し(ステップ141)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ142)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14を閉じたうえで(ステップ143)、前述したステップ137に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁15を開いて吐出冷媒をレシーバ6側に導入し、レシーバ6の内部に保持された気相状態の冷媒の一部をバイパス配管L2に供給する(ステップ144)。
【0045】
次に、制御部7は、低圧側圧力PLを計測し(ステップ145)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ146)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、前述したステップ145に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14,15を閉じてレシーバ6から冷媒配管L1への液相冷媒の供給を断つ(ステップ147)。
【0046】
次に、制御部7は、庫内温度Ftを計測し(ステップ148)、続いて庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いか否かを判別する(ステップ149)。制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高くないと判断した場合には、前述したステップ105に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いと判断した場合には、庫内温度Rtを計測し(ステップ150)、続いて庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いか否かを判別する(ステップ151)。制御部7は、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高くないと判断した場合には、前述したステップ136に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いと判断した場合には、圧縮機1を停止し(ステップ152)、[前室、後室とも加熱運転モード]を終了する。
【0047】
[3.前室冷却、後室加熱運転モード]が選択されると、前述した[▲2▼前室のみ冷却(後室は温度管理停止)モード]と、同じく前述した[▲6▼後室のみ加熱(前室は温度管理停止)モード]とが交互に実行される。
以下では、上記の[3.前室冷却、後室加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を、図8ないし図12に示すフローチャートを参照して説明する。なお、開閉弁10A〜10D,12,14,15はいずれも制御当初において閉じているものとする。
前段階として、制御部7は、記憶部9に格納された各種設定値を参照しつつ、前室Aの冷却運転モード、および後室Bの加熱運転モードの可否判断を行う。なお、制御部7は、入力部8を介して受け付けた各種設定値を記憶部9の所定の領域に格納する処理を任意のタイミングで行っているものとする。具体的な判断シーケンスは以下の通りである。
まず、制御部7は、室温センサ17A,17Bによって前室A、庫内温度Ft,Rtをそれぞれ計測する(ステップ201)。次に、制御部7は、庫内温度Ftがあらかじめ設定された目標温度(設定温度)Fsetよりも高く、かつ庫内温度Rtがあらかじめ設定された目標温度(設定温度)Rsetよりも低いか否かを判別する(ステップ202)。
【0048】
制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高く、かつ庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁10Aを開いて[▲2▼前室のみ冷却(後室は温度管理停止)モード]に移行し(ステップ203)、それ以外の場合には、[前室冷却、後室加熱運転モード]の終了、[前室、後室とも冷却運転モード]または[1室加熱、1室冷却モード]への移行を選択する(ステップ204)。
【0049】
[▲2▼前室のみ冷却モード]に移行すると、制御部7は、同モードの開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ205)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら庫内温度Ftを計測し(ステップ206)、続いて庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いか否かを判別する(ステップ207)。制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高くないと判断した場合には、後述するステップ223に移行し、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いと判断した場合には、開閉弁10Aを閉じるとともに開閉弁10Dを開いて[▲6▼後室のみ加熱(前室は温度管理停止)モード]に移行する(ステップ208)。
【0050】
[▲6▼後室のみ加熱モード]に移行すると、制御部7は、庫内温度Rtを計測し(ステップ209)、続いて庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いか否かを判別する(ステップ210)。制御部7は、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高くないと判断した場合には、後述するステップ239に移行し、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高いと判断した場合には、[▲2▼前室のみ冷却モード]の開始から例えば2分が経過したか否かを判別する(ステップ211)。制御部7は、2分が経過していなければ前述したステップ203に戻って上記の処理を繰り返し、2分が経過したら低圧側圧力PLを計測し(ステップ212)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ213)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、前述したステップ209に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁14を開いてレシーバ6の内部に保持された液相状態の冷媒の一部を冷媒配管L1の低圧側に供給する(ステップ214)。
【0051】
次に、制御部7は、[▲6▼後室のみ加熱モード]の開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ215)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら低圧側圧力PLを計測し(ステップ216)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ217)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14を閉じたうえで(ステップ218)、前述したステップ209に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁15を開いて吐出冷媒をレシーバ6側に導入し、レシーバ6の内部に保持された気相状態の冷媒の一部をバイパス配管L2に供給する(ステップ219)。
【0052】
次に、制御部7は、低圧側圧力PLを計測し(ステップ220)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ221)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、前述したステップ220に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14,15を閉じてレシーバ6から冷媒配管L1への液相冷媒の供給を断ち(ステップ222)、前述したステップ209に戻って上記の処理を繰り返す。
【0053】
制御部7は、ステップ207において庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高くないと判断した場合には、開閉弁10Aを閉じるとともに開閉弁10Dを開いて[▲6▼後室のみ加熱モード]に移行する(ステップ223)。このモードに移行すると、制御部7は、まず、庫内温度Rtを計測し(ステップ224)、続いて庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低いか否かを判別する(ステップ225)。制御部7は、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低くないと判断した場合には、後述するステップ245に移行し、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低いと判断した場合には、庫内温度Ftを計測し(ステップ226)、続いて庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも低いか否かを判別する(ステップ227)。制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも低くないと判断した場合には、前述したステップ203に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも低いと判断した場合には、低圧側圧力PLを計測し(ステップ228)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ229)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも小さくないと判断した場合には、前述したステップ224に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁14を開いてレシーバ6の内部に保持された液相状態の冷媒の一部を冷媒配管L1の低圧側に供給する(ステップ230)。
【0054】
次に、制御部7は、[▲6▼後室のみ加熱モード]の開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ231)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら低圧側圧力PLを計測し(ステップ232)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ233)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くない場合には、開閉弁14を閉じたうえで(ステップ234)、前述したステップ224に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、開閉弁15を開いて吐出冷媒をレシーバ6側に導入し、レシーバ6の内部に保持された気相状態の冷媒の一部をバイパス配管L2に供給する(ステップ235)。
【0055】
次に、制御部7は、低圧側圧力PLを計測し(ステップ236)、続いて低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いか否かを判別する(ステップ237)。制御部7は、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低いと判断した場合には、前述したステップ236に戻って上記の処理を繰り返し、低圧側圧力PLが吸入圧力PLsetよりも低くないと判断した場合には、開閉弁14,15を閉じてレシーバ6から冷媒配管L1への液相冷媒の供給を断ち(ステップ238)、前述したステップ224に戻って上記の処理を繰り返す。
【0056】
制御部7は、ステップ210において庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも高くないと判断した場合には、開閉弁10Dを閉じるとともに開閉弁10Aを開いて[▲2▼前室のみ冷却モード]に移行する(ステップ239)。このモードに移行すると、制御部7は、まず、同モードの開始から例えば30秒が経過したか否かを判別する(ステップ240)。制御部7は、30秒が経過していないうちは現在の状態を継続し、30秒が経過したら庫内温度Rtを計測し(ステップ241)、続いて庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低いか否かを判別する(ステップ242)。制御部7は、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低いと判断した場合には、前述したステップ203に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Rtが設定温度Rsetよりも低くないと判断した場合には、庫内温度Ftを計測し(ステップ243)、続いて庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いか否かを判別する(ステップ244)。制御部7は、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高いと判断した場合には、前述したステップ239に戻って上記の処理を繰り返し、庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高くないと判断した場合には、圧縮機1を停止し(ステップ245)、[前室冷却、後室加熱運転モード]を終了する。
【0057】
[4.前室加熱、後室冷却運転モード]が選択されると、前述した[▲5▼前室のみ加熱(後室は温度管理停止)モード]と、同じく前述した[▲3▼後室のみ冷却(前室は温度管理停止)モード]とが交互に実行される。
【0058】
[5.デフロスト運転モード]が選択されると、前述した[▲4▼前室、後室並行加熱モード]が実行される。ただし、前室A、後室Bとも、庫内の空気を循環させるエバポレータファン(図示略)は停止させておき、各室に設置したデフロスト終了を判断するセンサ(エバポレータコイルの表面温度等を計測する)が目標温度に達した時点で開閉弁10C,10Dを閉じる。
【0059】
[6.前室油戻し運転モード]が選択されると、開閉弁10A,10B,10D,14,15が閉じられ、開閉弁10C,12が開かれる。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧の気相状態となり、その圧力が開閉弁12を開かれたことでPHsetよりも小さくなり、コンデンサ2には流入せずにバイパス配管L2を流通する。バイパス配管L2に流入した冷媒は、定圧膨張弁11もバイパスして開閉弁10Cを流通し、エバポレータ4Aに導入される。エバポレータ4Aに導入された気相状態の冷媒は、内部に溜まり込んだ油をエバポレータ4Aから排出し、アキュムレータ5に導入する。アキュムレータ5において気液分離された気相状態の冷媒は圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0060】
[7.後室油戻し運転モード]が選択されると、開閉弁10A,10B,10C,14,15が閉じられ、開閉弁10B,10D,12が開かれる。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧の気相状態となり、コンデンサ2には流入せずにバイパス配管L2を流通する。バイパス配管L2に流入した冷媒は、定圧膨張弁11もバイパスして開閉弁10Dを流通し、エバポレータ4Bに導入される。エバポレータ4Bに導入された気相状態の冷媒は、内部に溜まり込んだ油をエバポレータ4Bから排出し、アキュムレータ5に導入する。アキュムレータ5において気液分離された気相状態の冷媒は圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0061】
上記のように構成された車両用冷凍装置においては、圧縮機1から吐出された高温高圧の気相冷媒を、加熱状態に置かれる前室Aや後室Bの庫内温度飽和圧力以下まで減圧させたうえで、コンデンサ2や膨張弁3A,3Bを介さずに直接エバポレータ4A,4Bに導入すると、導入された冷媒がエバポレータ内で凝縮を伴わなわずに放熱する。これにより、従来の温水冷却方式のように冷却水を庫内に導入するための配管を別途施工しなくても加熱運転が可能になり、車両に対する冷凍装置の架装を簡素化することができる。
【0062】
また、冷凍サイクルを実現する系内は過熱ガスの単相状態となり、従来のホットガス冷媒加熱方式のように液冷媒をアキュムレータに留めておく必要がなくなって実質的に機能する冷媒量が十分に確保されるので、性能低下が起こらない。さらに、アキュムレータ内に液冷媒を溜めないので、液戻りや油希釈といった現象も起こらなくなる。また、加熱運転から冷却運転に移行する際も、コンデンサ・レシーバに大部分の冷媒をホールドするので、過渡期のロスが小さくて済み、迅速な移行が可能となる。
【0063】
上記の車両用冷凍装置においては、吐出圧力調整弁13を設けたことにより、高圧側の冷媒圧力が所定の圧力(高圧;PHset)に保たれるので、高圧側の冷媒の状態を安定させて効率の良い加熱を実現することができる。
【0064】
また、第1の低圧制御手段をなす液戻し配管L4および開閉弁14と、第2の低圧制御手段をなすガス戻し配管L5および開閉弁15とを設けたことにより、低圧側の冷媒圧力が所定の圧力(低圧;PLset)に保たれるので、低圧側の冷媒の状態を安定させて効率の良い加熱を実現することができる。
【0065】
上記の車両用冷凍装置においては、前室A、後室Bのいずれか一方が目標とする設定温度に加熱、または冷却されるまで、過熱ガスの単相状態を保った加熱運転と通常の冷却運転とを交互に行うことにより、1室加熱、1室冷却の運転を迅速、かつ効率よく行うことができる。
【0066】
なお、本実施形態において使用した前室Aの設定温度Fset、後室Bの設定温度Rset、第1の低圧制御手段を先行して機能させる時間(本実施形態では30秒)といった値は入力部8を通じて適宜変更が可能であり、様々な要求に応じて設定を変更し、快適な運転を実現できることはいうまでもない。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の温水冷却方式のように冷却水を庫内に導入するための配管を別途施工しなくても加熱運転が可能になり、車両に対する冷凍装置の架装を簡素化することができる。また、冷凍サイクルを実現する系内は過熱ガスの単相状態となり、従来のホットガス冷媒加熱方式のように液冷媒をアキュムレータに留めておく必要がなくなって実質的に機能する冷媒量が十分に確保されるので、性能低下が起こらない。さらに、アキュムレータ内に液冷媒を溜めないので、液戻りや油希釈といった現象も起こらなくなる。また、加熱運転から冷却運転に移行する際も、コンデンサ・レシーバに大部分の冷媒をホールドするので、過渡期のロスが小さくて済み、迅速な移行が可能となる。
【0068】
本発明によれば、圧縮機から吐出される気相状態の冷媒の一部をコンデンサに逃がして減圧することにより、高圧側の冷媒圧力が所定の圧力(高圧)に保たれるので、高圧側の冷媒の状態を安定させて効率の良い加熱を実現することができる。
【0069】
本発明によれば、レシーバに保持された気相状態の冷媒の一部を系内の冷媒に加えて昇圧すること、または同じくレシーバに保持された液相状態の冷媒の一部を系内の冷媒に加えて昇圧することにより、低圧側の冷媒圧力が所定の圧力(低圧)に保たれるので、低圧側の冷媒の状態を安定させて効率の良い加熱を実現することができる。
【0070】
本発明によれば、上記のように過熱ガスの単相状態を保った加熱運転と通常の冷却運転とを交互に行うことにより、1室加熱、1室冷却の運転を迅速、かつ効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、2つの保冷庫を有する車両用冷凍装置の概要を示す図である。
【図2】図1の車両用冷凍装置において[前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図4】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室、後室とも加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】図1の車両用冷凍装置において[前室冷却、後室加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室冷却、後室加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図10】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室冷却、後室加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室冷却、後室加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】同じく、図1の車両用冷凍装置において[前室冷却、後室加熱運転モード]が選択された場合に実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 圧縮機
2 コンデンサ
3A,3B 膨張弁
4A,4B エバポレータ
5 アキュムレータ
6 レシーバ
7 制御部
8 入力部
9 記憶部
10A,10B 開閉弁
10C,10D 開閉弁(開閉手段)
11 定圧膨張弁(減圧手段)
13 吐出圧力調整弁(高圧制御手段)
14 開閉弁
15 開閉弁
17A,17B 室温センサ
18 圧力センサ
L1 冷媒配管
L2 バイパス配管(バイパス路)
L4 液戻し配管
L5 ガス戻し配管
Claims (7)
- 圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、減圧手段によって保温庫の庫内温度飽和圧力以下に減圧させたうえでエバポレータに導入することを特徴とする車両用冷凍装置。
- 圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、コンデンサおよび膨張弁をバイパスしてエバポレータに導入するバイパス路と、該バイパス路を流通する前記冷媒を保温庫の庫内温度飽和圧力以下に減圧させる減圧手段と、前記バイパス路を開閉して前記冷媒の流通を断続する開閉手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の車両用冷凍装置。
- 前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒が所定の圧力よりも高い場合、該気相状態の冷媒の一部を前記コンデンサに導入する高圧制御手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の車両用冷凍装置。
- 前記エバポレータにて放熱して低温低圧の気相状態となった冷媒が所定の圧力よりも低い場合、レシーバに保持された気相状態の冷媒の一部を前記冷媒に加える冷媒導出低圧制御手段を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の車両用冷凍装置。
- 前記エバポレータにて放熱して低温低圧の気相状態となった冷媒が所定の圧力よりも低い場合、レシーバに保持された液相状態の冷媒の一部を前記冷媒に加えるべく前記圧縮機から吐出される冷媒をレシーバに導入する冷媒導入低圧制御手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の車両用冷凍装置。
- 圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる2つのエバポレータを備える車両用冷凍装置であって、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、前記コンデンサおよび膨張弁を介さず、減圧手段によって保冷庫の庫内温度飽和圧力以下まで減圧させたうえで一方のエバポレータに導入することで一方の保冷庫を加熱する加熱運転と、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を前記冷凍サイクルに乗せて他方のエバポレータに導入することで他方の保冷庫を冷却する冷却運転とを可能とし、
前記加熱運転または冷却運転を交互に行う制御部を備えることを特徴とする車両用冷凍装置。 - 圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる2つのエバポレータを備える車両用冷凍装置の制御方法であって、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を、前記コンデンサおよび膨張弁を介さず、減圧手段によって保冷庫の庫内温度飽和圧力以下まで減圧させたうえで一方のエバポレータに導入することで一方の保冷庫を加熱する加熱運転と、
前記圧縮機から吐出される気相状態の冷媒を前記冷凍サイクルに乗せて他方のエバポレータに導入することで他方の保冷庫を冷却する冷却運転とを可能とし、
前記加熱運転または冷却運転を交互に行うことを特徴とする車両用冷凍装置の制御方法。
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