JP2004162151A - チタン酸化物溶解用組成物及びそれを用いた溶解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】半導体製造工程またはLCDモジュール製造工程で発生する不純物としてのチタン酸化物を安全な条件で溶解することが可能な組成物を提供する。
【解決手段】炭酸アンモニウム、過酸化水素及び水を含んでなる溶液であって、そのpHが7.5〜9.5の範囲であるチタン酸化物溶解用組成物であり、炭酸アンモニウムとしては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いればよく、更にエーテルアルコール、炭酸エステル等の水溶性有機溶媒を添加してもよい。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はチタン酸化物を溶解するための組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
チタン酸化物、特に二酸化チタンは水に難溶な化合物であり、チタン金属表面を皮膜として覆っているものである。また、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程で不純物として生成したり、シリカ、アルミナ、セリアなどの金属酸化物に不純物として含まれている。チタン金属の表面処理、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程で不純物除去、シリカ、アルミナ、セリアなどの金属酸化物の不純物除去の際には、水に難溶なチタン酸化物を除去するため、特別な方法で行う必要がある。
【0003】
最も一般的な方法は、酸性下で過酸化水素を使用する方法である。過酸化水素によりチタン酸化物は水に可溶になる。しかし、この方法ではチタン酸化物の溶解性は低く、加熱が必要であった。過酸化水素のような分解性のものを加熱するのは危険であり、工業的に有意義な方法とは言えない。
【0004】
また、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程では、塩基性下でヒドロキシルアミンを使用するのが一般的である。ヒドロキシルアミンを使用した場合も、チタン酸化物は水に可溶となる。しかし、ヒドロキシルアミンは非常に不安定な化合物であり、爆発の危険があり、工業的にチタン酸化物を溶解するのには問題があった。
【0005】
そこで、ヒドロキシルアミンのような危険な物質を使用せず、安全な条件でチタン酸化物を溶解する組成物の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、ヒドロキシルアミンのような危険な物質を使用せず、安全な条件でチタン酸化物を溶解する組成物の開発が望まれていた。そのため本発明の目的は、安全にチタン酸化物を溶解する組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、チタン酸化物溶解用組成物について鋭意検討した結果、炭酸アンモニウム、過酸化水素及び水を含んでなる溶液であって、そのpHを7.5〜9.5の範囲に調整することにより、チタン酸化物を室温でも容易に溶解できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、炭酸アンモニウム、過酸化水素及び水を含んでなる溶液であって、そのpHが7.5〜9.5の範囲であるチタン酸化物溶解用組成物である。
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明のチタン酸化物溶解用組成物は、炭酸アンモニウム、過酸化水素及び水を含んでなる溶液である。
【0011】
本発明の組成物において、炭酸アンモニウム塩とは、アンモニアと炭酸の塩を示す。炭酸アンモニウムは、通常、炭酸アンモニウム((NHCO・HO)、炭酸水素アンモニウム(NHHCO)、カルバミン酸アンモニウム(NHCONH)の2種以上の混合物または複塩として流通しているが、これらの混合物又は複塩を使用しても一向に差し支えない。
【0012】
本発明の組成物において、使用する過酸化水素の形態に制限はない。過酸化水素単独で使用しても良いし、過酸化水素水などの溶液なども使用できる。
【0013】
本発明の組成物において、使用する水の形態にも制限はない。水単独で使用しても良いし、他の有機溶媒などとの混合液、塩、酸、塩基などを加えた水溶液としても使用できる。
【0014】
本発明の組成物において、水溶液のpHは、7.5〜9.5の範囲にする必要がある。7.5未満だとチタン酸化物の溶解性が低下し、9.5を超えると、過酸化水素の安定性が低下する。
【0015】
本発明の組成物において、水溶液のpHを7.5〜9.5の範囲に調整するには、酸又は塩基を加えることにより可能であるが、組成物中の炭酸量とアンモニア量との比を変えるのが最も簡便であり、具体的には、炭酸とアンモニアの含有比が異なる炭酸アンモニウムを使用すればよい。組成物中の炭酸を増やすとpHは低下し、組成物中のアンモニアを増やすとpHは高くなる。pH7.5〜9.5の範囲にするには、モル比で、炭酸/アンモニア=1〜0.5の範囲にすることで達成できる。
【0016】
本発明の組成物において、炭酸アンモニウム、過酸化水素および水の比は、用途、使用条件、炭酸塩の種類により大きく変動するため限定することは困難であるが、例えば、チタン酸化物溶解用組成物の総重量を基準に、炭酸塩の含量が0.01〜40重量%、過酸化水素の含量が10ppm〜35重量%、水の含量が25〜99.9重量%が好ましく、炭酸塩の含量が0.1〜30重量%、過酸化水素の含量が100ppm〜31重量%、水の含量が39〜99.9重量%がさらに好ましい。
【0017】
炭酸が0.01重量%未満であると、チタン酸化物の溶解が実用的でないほど遅くなることがあり、40重量%を越えると炭酸が水溶液に溶解し難くなり、実用的ではなくなることがある。過酸化水素については、10ppm未満であるとチタン酸化物の溶解が実用的でないほど遅くなる場合があり、35重量%を越える過酸化水素は危険性が高く、一般に市場に流通していないため工業的ではない。水については、25重量%未満だと、炭酸が水溶液に溶解し難くなり、99.9重量%を超えるとチタン酸化物の溶解が実用的でないほど遅くなる場合がある。
【0018】
本発明の組成物に、更に水溶性有機溶媒を添加することもできる。本発明の組成物に添加できる水溶性有機溶媒に特に制限はないが、例えば、アルコール、エーテル、エステル、アミド、スルホキシド、アミンオキシドなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。これらの水溶性有機溶媒の中でも、エーテルアルコール、炭酸エステルが過酸化水素の分解が少ないため好ましい。
【0019】
本発明の組成物に添加できるエーテルアルコールを例示すると、ブトキシプロパノール、ブトキシエタノール、プロポキシプロパノール、プロポキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシエタノール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルメーテル等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。
【0020】
また、本発明の組成物に添加できる炭酸エステルを例示すると、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。
【0021】
本発明の組成物に添加できる水溶性有機溶媒の含量は、チタン酸化物溶解用組成物の総重量を基準に0.1〜70重量%が好ましく、1〜50重量%がさらに好ましい。水溶性有機溶媒を添加すると、過酸化水素の安定性が増し、さらにチタン酸化物以外の材料に対するダメージが小さくなる。水溶性有機溶媒の含量が1重量%未満であると、水溶性有機溶媒を添加した効果は小さく、70重量%を超えると、チタン酸化物の溶解速度が工業的でないほど小さくなることがある。
【0022】
本発明の組成物を使用してチタン酸化物を溶解する温度は0〜100℃であり、好ましくは10〜90℃である。0℃未満では、チタン酸化物の溶解速度が現実的でないほど遅く、100℃を越える温度では炭酸が水に溶解せず、チタン酸化物の溶解性能が低下する。
【0023】
本発明の組成物は、チタン酸化物を溶解処理する様々な分野で使用できる。このような分野を例示すると、チタン金属の表面処理、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程で不純物除去、シリカ、アルミナ、セリアなどの金属酸化物の不純物除去などが挙げられる。チタン金属の表面には薄くチタン酸化物が皮膜として覆っており、安定化されている。そのため金属表面を処理するには、このチタン酸化物皮膜を溶解する必要がある。この時、本発明の組成物を使用できる。また半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程において、チタンは重要な元素であるが、副生成物としてチタン酸化物が半導体ウエハやLCDモジュールに析出し、半導体、LCD歩留の低下の原因となっている。従来、このチタン酸化物を除去するのにヒドロキシルアミンが使用されてきたが、本発明の組成物は、このヒドロキシルアミンの方法の代わりに使用できる。さらに、シリカ、アルミナ、セリアなどの金属酸化物は、半導体材料として多く使用されており、高純度が要求されている。これらの金属酸化物中に不純物として存在するチタン酸化物の除去にも本発明の組成物は有効である。
【0024】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1〜5、比較例1、2
表1記載の濃度の組成物の水溶液を調製した。水溶液のpHは、炭酸量とアンモニア量の比を変えて調整した。なお表1では炭酸アンモニウムの重量%を炭酸の重量%とアンモニアの重量%の合計で示し、表1の組成の残部は水である。
【0026】
この組成物に、室温でチタン金属箔を室温で10分浸漬した結果を表1に示した。なお、チタン酸化物の溶解性については、チタン金属箔の表面チタン酸化物が溶解し、変色したものを○、変色が明確でなかったものを×で表記した。
【0027】
また、この組成物を室温で保存し、過酸化水素濃度の変化を測定した。その減少率から、過酸化水素濃度が半分に低下する日数を計算し、半減期として表1に記した。
【0028】
【表1】
Figure 2004162151
【発明の効果】
本発明の組成物によれば、常温で安全にチタン酸化物を溶解することができ、さらに調製した組成物を、その溶解能を低下させることなく、長期間保存することが可能となったものであり、その工業的価値は高い。

Claims (5)

  1. 炭酸アンモニウム、過酸化水素及び水を含んでなる溶液であって、そのpHが7.5〜9.5の範囲であるチタン酸化物溶解用組成物。
  2. 炭酸アンモニウムが、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムから成る群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載のチタン酸化物溶解用組成物。
  3. 請求項1又は請求項2記載のチタン酸化物溶解用組成物を使用して、チタン金属表面皮膜のチタン酸化物を溶解する方法。
  4. 請求項1又は請求項2記載のチタン酸化物溶解用組成物を使用して、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程で生成する不純物であるチタン酸化物を溶解する方法。
  5. 請求項1又は請求項2記載のチタン酸化物溶解用組成物を使用して、シリカ、アルミナ、セリアに含まれる不純物であるチタン酸化物を溶解する方法。
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