JP2004161879A - カーボンブラックの製造装置及び製造方法 - Google Patents

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Masanobu Maeda
真伸 前田
Ryusuke Harada
竜介 原田
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Abstract

【課題】オイルファーネス法により高い生成収率で、効率良くカーボンブラックを生産するための工業的に有利なカーボンブラックの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】炉頭部に燃料と酸素含有ガスを供給して燃焼させる燃焼域、引き続き高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を導入する原料導入域、原料炭化水素を熱分解させるカーボンブラック生成反応域、生成ガスを急冷する反応停止域とを連設した発生炉と、カーボンブラック含有ガスからカーボンブラックを分離する分離捕集装置と、から構成された製造装置において、分離捕集装置にカーボンブラック含有ガス量より大きな風量の吸引、排気能力を有する排気装置を設置してなることを特徴とするカーボンブラックの製造装置。及び、この製造装置により、分離捕集装置を介して発生炉内を減圧下に保持した状態でカーボンブラックを発生することを特徴とするカーボンブラックの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オイルファーネス法により高い生成収率で、効率良くカーボンブラックを生産するための工業的に有利なカーボンブラックの製造装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オイルファーネス法によるカーボンブラックの基本的な製造技術は、耐火煉瓦で内張りした円筒状の燃焼域、反応域、及び、反応停止域を同軸的に連設した発生炉を用いて、燃焼域で燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを生成させ、燃焼ガス流を引き続く反応域に導いて高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を導入して原料炭化水素の不完全燃焼及び熱分解反応により炭化水素をカーボンブラックに転化させ、次いで反応停止域においてカーボンブラック含有ガス流を急冷して反応を終結させ、最終的にカーボンブラックを分離捕集装置で回収するプロセスからなっている。
【0003】
上記のプロセスにおいて、原料炭化水素がカーボンブラックに転化する過程は極めて複雑であって未だ詳細には解明されていないが、一般には高温燃焼ガス流中に導入された原料炭化水素が多環芳香族炭化水素あるいはアセチレンを経由して微細な液滴に凝縮し、この液滴が脱水素反応しながら衝突と合体を繰り返して核を形成したのち次第に成長して粒子凝集体を形成するものと考えられている。したがって、燃焼ガス流の温度を高温化すれば、原料炭化水素の気化、熱分解反応が促進され、原料導入量の増加による生産性の向上も期待できるほか、核形成の速度が高まるなどの利点がもたらされる。また、原料炭化水素がカーボンブラックに転化する際のガス流の攪乱度が大きいほど気化が促進されるので、カーボンブラックの生産性向上には有利である。
【0004】
本出願人は、上記の観点から、高い生成収率で効率良くカーボンブラックを生産する方法として、炉頭部の燃焼域と、原料導入域、反応域、反応停止域とを同軸上に連設した円筒状の反応炉を用い、燃焼域で燃料を燃焼して高温燃焼ガスを生成させる燃焼工程と、原料導入域で高温燃焼ガス流に直角方向から原料炭化水素を導入する原料導入工程と、引き続く反応域で原料炭化水素の熱分解反応によりカーボンブラックに転化させる反応工程と、反応停止域で反応生成ガス流を急冷して反応を終結させる反応停止工程と、からなるカーボンブラック生成プロセスにおいて、原料導入工程における原料炭化水素の導入が原料導入域の出口手前20〜600mmの位置から酸素により霧化導入され、また、反応域の内径が原料導入域の内径より小さい炉構造であることを特徴とするカーボンブラックの製造方法(特許文献1)を開発した。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−355662号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、カーボンブラックの生成収率の向上について更に研究を進めた結果、燃焼ガス流温度の高温化とは別異の観点から導入された原料炭化水素が気化し易い雰囲気を形成することが生成収率向上につながることを確認した。
【0007】
本発明は、この知見に基づいて開発されたもので、その目的はオイルファーネス法により高い生成収率で、効率良くカーボンブラックを生産するための工業的に有利なカーボンブラックの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明により提供されるカーボンブラックの製造装置は、炉頭部に燃料と酸素含有ガスを供給して燃焼させる燃焼域、引き続き高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を導入する原料導入域、原料炭化水素を熱分解させるカーボンブラック生成反応域、生成ガスを急冷する反応停止域とを連設した発生炉と、カーボンブラック含有ガスからカーボンブラックを分離する分離捕集装置と、から構成された製造装置において、分離捕集装置にカーボンブラック含有ガス量より大きな風量の吸引、排気能力を有する排気装置を設置してなることを構成上の特徴とする。
【0009】
また、本発明により提供されるカーボンブラックの製造方法は、上記のカーボンブラックの製造装置により、分離捕集装置を介して発生炉内を減圧下に保持した状態でカーボンブラックを発生することを構成上の特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のカーボンブラックの製造装置を模式的に例示した略図で、1は発生炉、10は分離捕集装置である。発生炉1は炉頭部に燃焼域2、その下流に原料炭化水素を導入する原料導入域3、原料炭化水素を熱分解させるカーボンブラック生成反応域4、引き続く反応停止域5が同軸上に連設され、耐火煉瓦で内張りした円筒型構造に構築されている。なお、各部位の大きさとしては、燃焼域2の直径に対し原料導入域3は狭径に、生成反応域4や反応停止域5は原料導入域3よりやや拡径に設計される。
【0011】
発生炉1は、炉頭部に接線方向から空気などの酸素含有ガスを導入するための酸素含有ガス導入ダクト6と、炉軸方向に燃料を供給する燃料バーナ7が装着され、燃焼域2が形成されている。燃焼域2の下流には原料導入域3が連設され、燃焼域2で燃焼により生成した高温燃焼ガス流に対して直角方向に、原料炭化水素を導入する原料導入ノズル8が装着されている。原料導入域3の下流には原料炭化水素を熱分解させるカーボンブラック生成反応域4、及びカーボンブラック生成ガスを急冷して熱分解反応を停止させるための急冷用水噴射ノズル9を装着した反応停止域5が連設されている。
【0012】
発生炉1で生成したカーボンブラック含有ガスは、発生炉1を流出後、例えば例示のバッグフィルター11及び排気装置12からなるカーボンブラック分離捕集装置10に送入され、カーボンブラックが分離捕集される。
【0013】
本発明のカーボンブラック製造装置は、発生炉1と分離捕集装置10とから構成されたカーボンブラック製造装置において、分離捕集装置10に発生炉1を流出するカーボンブラック含有ガス量より大きな風量の吸引、排気能力を有する排気装置12を設置してなるものである。
【0014】
すなわち、分離捕集装置10の排気装置12の吸引、排気能力を、バッグフィルター11による圧損及びカーボンブラック含有ガス量の風量より大きな吸引、排気能力に設定することにより、排気装置12の吸引、排気により、バッグフィルター11を介して発生炉1内の燃焼域2、原料導入域3、カーボンブラック生成反応域4、反応停止域5を1気圧(atm) 以下の減圧下に保持することが可能となる。
【0015】
このようにして、発生炉1内を1気圧以下の減圧下に保持することにより、原料導入域5において高温の燃焼ガス流中に導入された原料炭化水素は速やかに気化し、より完全にガス化された状態でカーボンブラック生成反応域4に流入するので熱分解反応を促進することができる。その結果、カーボンブラック生成効率が向上し、粒子径の微細なカーボンブラックの生成が容易となる。すなわち、同一粒子径(同一比表面積)のカーボンブラックを製造する場合には、カーボンブラックの生成収率の向上が図られ、更にカーボンブラック生成能率の向上を図ることもでき、高い生成収率で、効率良くカーボンブラックを製造することが可能となる。なお、好ましくは、発生炉内は0.9〜0.7気圧程度に減圧保持される。
【0016】
なお、上記の説明において示した図1の発生炉1は、単なる例示であって、本発明における発生炉の形態は特に制限されるものではなく、オイルファーネス法によるカーボンブラックの製造に適用される種々の形態の発生炉が適用可能である。
【0017】
また、本発明で用いられる燃料及び原料炭化水素には特に制限はなく、カーボンブラックの製造に通常使用される燃料及び原料炭化水素が用いられる。例えば燃料としては、メタン、天然ガスや石油系、石炭系の気体状または液体状の燃料が、原料炭化水素としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素単体やクレオソート油、エチレンボトム油など石炭系や石油系の原料油が適用される。
【0018】
このように、本発明は発生炉内を1気圧以下の減圧下に保持した状態でカーボンブラックを発生するものであるから、高温燃焼ガス流中に導入された原料炭化水素は急速に気化し、完全にガス化された状態で熱分解される。その結果、カーボンブラックの生成効率が向上し、高い生成収率で、効率良くカーボンブラックを製造することが可能となる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0020】
図1に例示したカーボンブラックの製造装置を用いて、カーボンブラックを製造した。燃料には液化石油ガスを使用し、燃焼用の酸素含有ガスには空気に酸素を添加した酸素富加空気を使用した。また、原料炭化水素にはトルエンを使用した。
【0021】
カーボンブラックの発生は、排気装置12の吸引、排気量を調節して発生炉1内の圧力を0.8気圧、及び1気圧に保持し、発生炉1に供給する燃料(液化石油ガス)を6.6g/min.、空気を59.9l/min.、酸素を4.2l/min.の割合に固定して、導入する原料炭化水素(トルエン)の供給量を変えて窒素吸着比表面積の異なるカーボンブラックを製造した。
【0022】
製造したカーボンブラックの生成収率を下記式により算出し、製造条件及び窒素吸着比表面積とともに表1に示した。また、窒素吸着比表面積と生成収率の関係を図2に示した。
生成収率(%)=〔(生成したカーボンブラックの重量)/(トルエンの重量+液化石油ガスの重量)〕×100
【0023】
【表1】
Figure 2004161879
【0024】
表1及び図2の結果から、発生炉内の圧力を0.8気圧の減圧下に保持した状態でカーボンブラックを発生した実施例1〜3の生成収率は、圧力が1.0気圧の状態でカーボンブラックを発生した比較例1〜3の生成収率に比べて、高位にあることが認められる。すなわち、カーボンブラックの生成収率は、窒素吸着比表面積の増大に伴い低下するが、図2の結果から同一水準の窒素吸着比表面積に対応するカーボンブラック生成収率は、比較例に比べて実施例は明らかに高位にあることが分かる。
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明のカーボンブラックの製造装置及び製造方法によれば、カーボンブラックを生成したカーボンブラック含有ガスからカーボンブラックを分離する分離捕集装置に、カーボンブラック含有ガス量より大きな風量の吸引、排気能力を有する排気装置を設置して、この排気装置により分離捕集装置を介して発生炉内を1気圧以下の減圧下に保持した状態でカーボンブラックを発生することにより、高温の燃焼ガス流中に導入した原料炭化水素の気化が促進され、原料炭化水素はより完全にガス化した状態でカーボンブラック生成反応域に流入するので、熱分解反応が速やかに進行してカーボンブラックに転化する。
【0026】
その結果、カーボンブラックの生成効率が向上し、また粒子径の微細なカーボンブラックの生成が容易となる。したがって、同一粒子径(同一比表面積)のカーボンブラックを製造する場合には、カーボンブラックの生成収率の向上が図られ、更にカーボンブラック生成能率の向上を図ることもでき、高い生成収率で、効率良くカーボンブラックを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーボンブラックの製造装置を例示した模式図である。
【図2】実施例と比較例におけるカーボンブラックの窒素吸着比表面積と生成収率の関係グラフである。
【符号の説明】
1 発生炉
2 燃焼域
3 原料導入域
4 カーボンブラック生成反応域
5 反応停止域
6 酸素含有ガス導入ダクト
7 燃料バーナ
8 原料導入ノズル
9 急冷用水噴射ノズル
10 カーボンブラック分離捕集装置
11 バッグフィルター
12 排気装置

Claims (2)

  1. 炉頭部に燃料と酸素含有ガスを供給して燃焼させる燃焼域、引き続き高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を導入する原料導入域、原料炭化水素を熱分解させるカーボンブラック生成反応域、生成ガスを急冷する反応停止域とを連設した発生炉と、カーボンブラック含有ガスからカーボンブラックを分離する分離捕集装置と、から構成された製造装置において、分離捕集装置にカーボンブラック含有ガス量より大きな風量の吸引、排気能力を有する排気装置を設置してなることを特徴とするカーボンブラックの製造装置。
  2. 請求項1記載のカーボンブラックの製造装置により、分離捕集装置を介して発生炉内を減圧下に保持した状態でカーボンブラックを発生することを特徴とするカーボンブラックの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20200065691A (ko) * 2018-11-30 2020-06-09 오씨아이 주식회사 카본 블랙 비드 제조 장치

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