JP2004161692A - ヒドラゾジカルボンアミドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドラゾジカルボンアミドの簡便で効率の良い製造方法に関する。ヒドラゾジカルボンアミドは、工業用および食品用発泡剤であるアゾジカルボンアミドの合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック工業の発展に伴い、それらの発泡体の需要が大きく拡大してきた。プラスチックは、発泡させることにより、用途に応じて、軽量性、断熱性、強靱性、通気性等に優れた成形体へと変換させることができる。
【0003】
プラスチックの発泡方法は、化学発泡、物理発泡等、用途に応じて様々の方法が開発されているが、有機もしくは無機化合物を熱分解させ、発生した分解ガスのガス圧により発泡させる方法が一般的である。
【0004】
中でも、アゾジカルボンアミドは、安定的に高発泡倍率の発泡体を形成することが可能な有機系発泡剤として、様々な場面で多量に使用されている。
【0005】
一方、ヒドラゾジカルボンアミドは、発泡剤であるアゾジカルボンアミドの合成中間体として有用な化合物であり、すでに様々な製造方法が工業化されている。
【0006】
例えば、出発原料であるヒドラジンヒドラートと尿素を加熱反応し、ヒドラゾジカルボンアミドを製造する方法(ヒドラジン法)(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)、尿素を酸化的にクロロ尿素とし、ホフマン転位、水付加を伴う脱炭酸によりヒドラジンに変換した後に、単離することなく尿素と反応させてヒドラゾジカルボンアミドに変換する方法(尿素法)が、すでに工業化されている。
【0007】
また、尿素を酸化的にクロロ尿素とし、ホフマン転位、アンモニア付加により、セミカルバジドに変換する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。セミカルバジドは、ヒドラゾジカルボンアミドの合成中間体であり、単離することなく尿素と反応させてヒドラゾジカルボンアミドに変換することができる(セミカルバジド法)(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
しかし、これらの方法は、様々な問題を抱えている。
【0009】
例えば、ヒドラジン法は、ヒドラジンを2モルの尿素と反応させてヒドラゾジカルボンアミドを製造するが、その際に2モルのアンモニアを発生する。これらは塩酸や硫酸で中和した後に、アンモニウム塩として排出されてきたが、中和剤の使用がコストアップにつながり不経済であるとともに、環境に対して大きな負荷がかかる。
【0010】
また、尿素法は、ヒドラジン法と同様のアンモニウム塩問題だけでなく、合成中間体であるヒドラジンを製造する際に多量の炭酸ナトリウムを発生する。さらに、1モルのヒドラゾジカルボンアミドを3モルの尿素から合成するため、原料費のコストアップにつながる。
【0011】
従って、これらの方法は、経済的な問題だけでなく、環境問題が強く叫ばれる現在、優良な方法とはいえない。
【0012】
一方、セミカルバジド法は、上記の無機塩発生の問題を解決できるだけでなく、1モルのヒドラゾジカルボンアミドを2モルの尿素から製造できるため、非常に効率の良い方法である。しかしながら、高圧下でアンモニアの付加を行い、またセミカルバジドからヒドラゾジカルボンアミドへの変換時に発生したアンモニアを回収再使用する方式を取るため、他の方法に比べて設備費が大きく増大して、結果的に製品のコストアップにつながるという問題を抱えている。
【0013】
【特許文献1】
特開昭51−11719号公報
【0014】
【特許文献2】
米国特許第2692281号明細書
【0015】
【特許文献3】
特許第2952712号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ヒドラゾジカルボンアミドを、簡便で効率よく、低コストで製造することができる方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドラゾジカルボンアミドの簡便で効率の良い製造方法を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、下記に示すとおりのヒドラゾジカルボンアミドの製造方法を提供するものである。
項1. 一般式(1);
【0019】
【化2】
【0020】
[式中、Xはハロゲンを示し、Mはアルカリ金属を示す。]で表されるハロビウレット化合物とアンモニアとを反応させることを特徴とするヒドラゾジカルボンアミドの製造方法。
項2. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物とアンモニアとを、0〜150℃で反応させる項1に記載の方法。
項3. アンモニアの使用量が、一般式(1)で表されるハロビウレット化合物1モルに対して1.0〜20モルである項1または2に記載の方法。
項4. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸アルカリ金属とを反応させて得られる項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸t−ブチルとを反応させた後に水酸化アルカリ金属を反応させて得られる項1〜3のいずれかに記載の方法。
項6. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸とを反応させた後に水酸化アルカリ金属を反応させて得られる項1〜3のいずれかに記載の方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0022】
本発明のヒドラゾジカルボンアミド新規製造方法の反応ルートは、次式の通りである。(式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを示し、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。)
【0023】
【化3】
【0024】
すなわち、ビウレット(2)を出発原料として反応させて、ハロビウレット化合物(1)を合成中間体として得て、これに加熱下にアンモニアを付加反応させることにより、ヒドラゾジカルボンアミド(5)を得ることができる。
【0025】
本発明の合成中間体として有用なハロビウレット化合物は、一般式(1);
【0026】
【化4】
【0027】
で表されるハロビウレットアルカリ金属塩である。式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを示す。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。
【0028】
このハロビウレット化合物としては、具体的には、クロロビウレットのナトリウム塩、クロロビウレットのリチウム塩、クロロビウレットのカリウム塩等のクロロビウレットアルカリ金属塩類、ブロモビウレットのナトリウム塩、ブロモビウレットのリチウム塩、ブロモビウレットのカリウム塩等のブロモビウレットアルカリ金属塩類、ヨードビウレットのナトリウム塩、ヨードビウレットのリチウム塩、ヨードビウレットのカリウム塩等のヨードビウレットアルカリ金属塩類等が挙げられる。
【0029】
なお、上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物に関しては、上記反応ルート中の一般式(3)で表される互変異性体が考えられる。
【0030】
[ハロビウレット化合物の製造方法]
上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物の製造方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、式(2);
【0031】
【化5】
【0032】
で表されるビウレットを出発原料とし、公知の方法でハロゲン化することによって製造することができる。
【0033】
この出発原料であるビウレットの製造方法は、特に限定されるわけではないが、例えば英国特許第1324277号明細書に記載のように、尿素から製造できる。すなわち、例えば、窒素気流下、溶媒中で、尿素の融点以上の温度(135℃以上)、好ましくは150℃〜180℃で、5〜10時間、尿素を加熱することにより、高収率でビウレットを得ることができる。ここで使用される溶媒としては、尿素の融点以上の沸点を有する溶媒、特にエチレングリコール系溶媒が好ましい。また、反応濃度は特に限定されるわけではないが、反応時に原料である尿素が溶解していることが好ましく、使用される溶媒に対する尿素の溶解度に応じて適宜選択される。
【0034】
このようにして得られたビウレットを水に懸濁させたスラリーに、予めハロゲンと水酸化アルカリ金属水溶液を用いて調製した当量の次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩水溶液を滴下することにより、上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物であるハロビウレットアルカリ金属塩の均一水溶液が定量的に得られる。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、塩素、臭素が好ましい。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸または次亜ヨウ素酸のナトリウム、リチウムまたはカリウム塩が挙げられ、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸カリウムが好ましい。
【0035】
この反応は、−5℃〜20℃の範囲で行うことが好ましく、0℃〜5℃の範囲で行うことがより好ましい。反応温度が−5℃未満では、反応混合物がシャーベット状になるために反応が困難となるおそれがあり、20℃を超えると目的生成物が分解するために収率が低下するおそれがある。
【0036】
反応濃度は特に限定されるわけではないが、60重量%以下の濃度範囲で反応させることが好ましい。反応濃度が60重量%を超えるとスラリーの滑らかな撹拌が困難となり、次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩水溶液の滴下時に、局所的に反応温度が上昇するため、目的生成物の分解による収率低下を招くおそれがある。
【0037】
次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩の調製時に使用される水酸化アルカリ金属の量は、通常は化学量論量であれば良いが、続いて行われるハロビウレット化合物の熱転位反応の収率を向上させる目的からは、化学量論量以上の範囲で使用することが好ましく、ビウレット1モルに対して2.001〜2.5モルの範囲で使用することが好ましい。水酸化アルカリ金属の使用量が2.001モル未満の場合には、次工程の熱転位反応が効率よく進行せずに副反応が生ずるため、結果的に得られるヒドラゾジカルボンアミドの収率が大きく低下するおそれがある。また、水酸化アルカリ金属を2.5モルを超えて使用すると、目的物であるハロビウレット化合物の分解反応が促進される。
【0038】
なお、水酸化アルカリ金属の使用量を上記範囲とするために、ビウレットに当量の次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩水溶液を滴下する前に、所定量の水酸化アルカリ金属を添加していてもよい。
【0039】
また、有機溶媒中でビウレットと当量の次亜ハロゲン酸t−ブチルとを反応させた後に、溶媒を留去して単離させたハロビウレットを当量以上の水酸化アルカリ金属水溶液に溶解させることによっても、ハロビウレットアルカリ金属塩の水溶液が得られる。次亜ハロゲン酸t−ブチルとしては、次亜塩素酸t−ブチル、次亜臭素酸t−ブチル、次亜ヨウ素酸t−ブチル等が挙げられ、次亜塩素酸t−ブチルが好ましい。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0040】
この反応で使用する有機溶媒は、反応に影響を及ぼさない有機溶媒であれば特に限定されることはないが、後処理の溶媒留去の容易さや、目的物のハロビウレットの溶解度を考慮すると、メタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0041】
この反応は、0℃〜30℃の範囲で行うことが好ましく、5℃〜25℃の範囲で行うことがより好ましい。反応温度が30℃を超えると、目的生成物が分解するために収率が低下するおそれがある。また、0℃未満では、反応が進行しない。
【0042】
反応濃度は特に限定されるわけではないが、60重量%以下の濃度範囲で反応させることが好ましい。溶媒に対するビウレットの溶解性が低いために、ビウレットのスラリーに次亜ハロゲン酸t−ブチルを滴下することにより反応が行われ、反応が進行するとともに目的生成物が溶媒に溶解して均一になるという反応形態をとる。従って、反応濃度が60重量%を超えるとスラリーの滑らかな撹拌が困難となり、次亜ハロゲン酸t−ブチルの滴下時に、局所的に反応温度が上昇するため、目的生成物の分解による収率低下を招くおそれがある。
【0043】
反応で得られたハロビウレットを溶解させる水酸化アルカリ金属水溶液中の水酸化アルカリ金属の量は、通常は化学量論量であれば良いが、次工程のハロビウレット化合物(ハロビウレットアルカリ金属塩)の熱転位反応の収率を向上させる目的からは、化学量論量以上であるのが好ましく、ハロビウレット1モルに対して1.001〜1.5モルの範囲であるのが好ましい。水酸化アルカリ金属の量が1.001モル未満の場合には、次工程の熱転位反応が効率よく進行せず、結果的に得られるヒドラゾジカルボンアミドの収率が大きく低下するおそれがある。また、水酸化アルカリ金属の量が1.5モルを超えると、前駆体であるハロビウレットが分解反応を引き起こす。
【0044】
なお、水酸化アルカリ金属水溶液にハロビウレットの単離生成物を添加し、ハロビウレットアルカリ金属塩とする際、目的生成物の分解を抑制する目的から、ハロビウレットの単離生成物を10℃以下で添加するのが好ましく、0℃〜5℃で添加するのがより好ましい。
【0045】
また、水に懸濁させたビウレットと当量の次亜ハロゲン酸とを反応させた後に、当量以上の水酸化アルカリ金属水溶液と反応させることによっても、ハロビウレットアルカリ金属塩の水溶液が得られる。次亜ハロゲン酸としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等が挙げられ、次亜塩素酸、次亜臭素酸が好ましい。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0046】
この反応は、−5℃〜20℃の範囲で行うことが好ましく、0℃〜5℃の範囲で行うことがより好ましい。反応温度が−5℃未満では、反応混合物がシャーベット状になるために反応が困難となるおそれがあり、20℃を超えると目的生成物が分解するために収率が低下するおそれがある。
【0047】
反応濃度は特に限定されるわけではないが、60重量%以下の濃度範囲で反応させることが好ましい。反応濃度が60重量%を超えるとスラリーの滑らかな撹拌が困難となり、次亜ハロゲン酸水溶液の滴下時に、局所的に反応温度が上昇するため、目的生成物の分解による収率低下を招くおそれがある。
【0048】
ビウレットと次亜ハロゲン酸との反応により得られたハロビウレットと反応させる水酸化アルカリ金属水溶液中の水酸化アルカリ金属の量は、通常は化学量論量であれば良いが、次工程のハロビウレット化合物(ハロビウレットアルカリ金属塩)の熱転位反応の収率を向上させる目的からは、化学量論量以上であるのが好ましく、ハロビウレット1モルに対して1.001〜1.5モルの範囲であるのが好ましい。水酸化アルカリ金属の量が1.001モル未満の場合には、次工程の熱転位反応が効率よく進行せず、結果的に得られるヒドラゾジカルボンアミドの収率が大きく低下するおそれがある。また、水酸化アルカリ金属の量が1.5モルを超えると、ハロビウレットの分解反応が促進されると同時に、本発明で得られたヒドラゾジカルボンアミドを用いてアゾジカルボンアミドを製造する際に、中和処理を行う必要があるため、不経済である。
【0049】
なお、上記ハロビウレット化合物の製造において原料として使用するビウレットは、公知の方法に従って製造し、単離精製したものを使用しても良いし、また、ビウレットの合成反応で得られた反応生成物を、単離精製することなくそのまま使用しても良い。
【0050】
[ヒドラゾジカルボンアミドの製造方法]
上記の方法で得られた上記一般式(1)のハロビウレット化合物は、0〜150℃でホフマン転位反応を起こし、イソシアナート誘導体(4)へと変化する。このイソシアナート誘導体は不安定であり、単離することが困難であるが、アンモニアの存在下でハロビウレット化合物(1)をホフマン転位反応させると、該反応で得られるイソシアナート誘導体(4)へのアンモニアの付加反応が同時に進行し、ワンポットで、目的物であるヒドラゾジカルボンアミド(5)を高収率で得ることができる(上記反応ルート参照)。
【0051】
この反応の温度範囲は、0〜150℃が好ましい。また、本発明が常圧下でハロビウレットアルカリ金属塩水溶液とアンモニアとを反応させることを特徴とすることや、反応収率を向上させること等を考慮すると、5〜90℃がより好ましい。また、低温条件では反応完結までに時間がかかることや、臭気問題、安全性、省エネルギー等を考慮すると、工業化に際しては、10〜50℃が特に好ましい。
【0052】
この反応で使用するアンモニアの量は、上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物1モルに対して1.0〜20モルの範囲であるのが好ましく、1.5〜15モルの範囲であるのがより好ましい。アンモニア量がハロビウレット化合物1モルに対して1.0モル未満の場合は、目的生成物であるヒドラゾジカルボンアミドの収率が低下するおそれがあり、20モルを超える場合は、特に反応収率に影響することはないが、不経済である。
【0053】
アンモニアの使用形態は特に限定されず、液体アンモニアでもアンモニア水でも使用可能であるが、取り扱いの容易さや経済性を考慮すると、アンモニア水を使用することが好ましい。
【0054】
このアンモニア付加反応は、アンモニア水を用いて、常圧下で、無触媒で進行し、効率よく目的物であるヒドラゾジカルボンアミドを得ることが可能であるが、加圧下で、より高温で反応させたり、または触媒を用いて反応をより促進させることも可能である。
【0055】
触媒反応を行う際に使用される触媒は、上記反応を促進させる触媒であれば特に限定されるわけではないが、具体的には、亜鉛のもしくはカドミウムの塩化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、アンミン錯体、またはエチレンジアミン錯体が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。この触媒は、反応の際に、ハロビウレット化合物1モルに対して0.1〜0.5モルの範囲で使用することができる。触媒量が、ハロビウレット化合物1モルに対して0.1モル未満では触媒を使用する効果が得られないおそれがあり、0.5モルを超えると反応に悪影響を及ぼさないものの不経済である。
【0056】
なお、反応終了後、目的生成物であるヒドラゾジカルボンアミドは、白色結晶として析出するため、容易に濾別することが可能である。
【0057】
得られたヒドラゾジカルボンアミドは、単離精製して公知の酸化方法、例えば塩素酸化により、容易にアゾジカルボンアミドへと変換することも可能であるし、また、単離することなくそのまま酸化して、アゾジカルボンアミドへと変換することも可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、アゾジカルボンアミドの有用な前駆体であるヒドラゾジカルボンアミドを、極めて低コストで効率よく製造することができる。また、アンモニアの使用量も大きく低減できる等の利点があり、設備費を大きく低減できる。さらに、従来法と比較して、アンモニウム塩や無機塩等の排出量を大きく低減できるため、環境への負荷も大きく低減できる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は実施例によって、制限を受けるものではない。
【0060】
なお、同定ならびに分析に使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の条件は、下記の通りであった。
【0061】
<HPLC条件>
検出装置のUV:205nm
流量:0.5ml/min
カラム:Union UK−C18(4.6I.D.×150mm)/インタクト株式会社製
カラム温度:27.7℃
移動相:Na2HPO4/KH2PO4(18mmol/9mmol) 水/メタノール=96/4
サンプル量:5μl
上記条件において、クロロビウレットナトリウム塩の保持時間は5.95分、クロロビウレットの保持時間は5.72分、ブロモビウレットの保持時間は9.33分、ビウレットの保持時間は4.87分、ヒドラゾジカルボンアミドの保持時間は3.67分であった。
【0062】
実施例1
[クロロビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する100mlの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)、水50mlおよび水酸化ナトリウム0.3g(0.0075mol)を加え、氷浴を用いて撹拌しながら0〜2℃に冷却した。次に、予め氷冷した14%次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.25g(0.15mol)を、混合物中に30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液よりサンプルを採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:98.9%)。
【0063】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記反応混合物に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、16.1gの粗結晶を得た。
【0064】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.0%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は91.1%であった。
【0065】
融点:275.1℃
IR(KBr法):3390cm−1(ν−CONH2),3205cm−1(ν−CONH−),1672cm−1(ν−CO−)。
【0066】
実施例2
実施例1と同様の方法で調製したクロロビウレットナトリウム塩水溶液および予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)をオートクレーブ中に封入し、オイルバスを用いて80℃に加熱した。10分加熱後、室温まで冷却し、析出した白色結晶を濾別した。110℃で24時間乾燥して、16.0gの粗結晶を得た。
【0067】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.2%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は90.7%であった。
【0068】
実施例3
[クロロビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する100mlの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)、水30mlおよび水酸化ナトリウム0.3g(0.0075mol)を加え、氷浴を用いて撹拌しながら0〜2℃に冷却した。次に、予め氷冷した14%次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.25g(0.15mol)を、混合物中に30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:98.0%)。
【0069】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記反応混合物に、液体アンモニア5.1g(0.3mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、16.2gの粗結晶を得た。
【0070】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.0%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は92.4%であった。
【0071】
実施例4
[クロロビウレットカリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する100mlの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)およびメタノール50mlを加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却した。次に、予め調製した次亜塩素酸t−ブチル16.3g(0.15mol)を、混合物中に30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、20℃で1時間撹拌し、溶媒を室温下で減圧留去すると、クロロビウレットとビウレットとの混合物が26.0gの白色結晶として得られた。高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:85.5%)。
【0072】
次に、この結晶を、予め水酸化カリウム8.67g(0.155mol)を水50mlに溶解して調製し、0℃に冷却した水酸化カリウム水溶液に徐々に添加し、クロロビウレットカリウム塩水溶液を調製した。
【0073】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記クロロビウレットカリウム塩水溶液に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、21.2gの粗結晶を得た。
【0074】
高速液体クロマトグラフィーを用いて、得られた結晶の純度を測定したところ、64.4%であり、クロロビウレットからの収率は90.2%であった。
【0075】
実施例5
[ブロモビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する500mlの四つ口フラスコに、臭素24.0g(0.15mol)および水200mlを加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却した。次に、硝酸銀30.4g(0.18mol)を徐々に添加し、次亜臭素酸水溶液を調製した。
【0076】
温度計および撹拌機を有する1Lの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)および水40mlを加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却し、上記の次亜臭素酸水溶液を滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:95.2%)。
【0077】
次に、この反応液に、予め調製して氷冷した10%水酸化ナトリウム水溶液60g(0.15mol)を滴下し、ブロモビウレットナトリウム塩水溶液を調製した。なお、混合時に混合物の温度が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。
【0078】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記ブロモビウレットナトリウム塩水溶液に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、4.3gの粗結晶を得た。
【0079】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.1%であり、ブロモビウレットからの収率は24.1%であった。
【0080】
実施例6
[クロロビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する300mlの四つ口フラスコに、尿素9g(0.15mol)および水30mlを添加し、オイルバスを用いて内温が90℃になるように調整した。次に、pH5付近に調整しながら40%希硫酸18.4g(0.075mol)を滴下した(120時間)。次に、水酸化ナトリウム4.0g(0.10mol)を加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却した。この混合物中に、予め氷冷した14%次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.25g(0.15mol)を30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が0〜2℃に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、クロロビウレットナトリウム塩の収率を算出した(尿素からの収率:28.6%)。
【0081】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記反応混合物に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、4.6gの粗結晶を得た。
【0082】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.0%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は89.1%であった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドラゾジカルボンアミドの簡便で効率の良い製造方法に関する。ヒドラゾジカルボンアミドは、工業用および食品用発泡剤であるアゾジカルボンアミドの合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック工業の発展に伴い、それらの発泡体の需要が大きく拡大してきた。プラスチックは、発泡させることにより、用途に応じて、軽量性、断熱性、強靱性、通気性等に優れた成形体へと変換させることができる。
【0003】
プラスチックの発泡方法は、化学発泡、物理発泡等、用途に応じて様々の方法が開発されているが、有機もしくは無機化合物を熱分解させ、発生した分解ガスのガス圧により発泡させる方法が一般的である。
【0004】
中でも、アゾジカルボンアミドは、安定的に高発泡倍率の発泡体を形成することが可能な有機系発泡剤として、様々な場面で多量に使用されている。
【0005】
一方、ヒドラゾジカルボンアミドは、発泡剤であるアゾジカルボンアミドの合成中間体として有用な化合物であり、すでに様々な製造方法が工業化されている。
【0006】
例えば、出発原料であるヒドラジンヒドラートと尿素を加熱反応し、ヒドラゾジカルボンアミドを製造する方法(ヒドラジン法)(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)、尿素を酸化的にクロロ尿素とし、ホフマン転位、水付加を伴う脱炭酸によりヒドラジンに変換した後に、単離することなく尿素と反応させてヒドラゾジカルボンアミドに変換する方法(尿素法)が、すでに工業化されている。
【0007】
また、尿素を酸化的にクロロ尿素とし、ホフマン転位、アンモニア付加により、セミカルバジドに変換する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。セミカルバジドは、ヒドラゾジカルボンアミドの合成中間体であり、単離することなく尿素と反応させてヒドラゾジカルボンアミドに変換することができる(セミカルバジド法)(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
しかし、これらの方法は、様々な問題を抱えている。
【0009】
例えば、ヒドラジン法は、ヒドラジンを2モルの尿素と反応させてヒドラゾジカルボンアミドを製造するが、その際に2モルのアンモニアを発生する。これらは塩酸や硫酸で中和した後に、アンモニウム塩として排出されてきたが、中和剤の使用がコストアップにつながり不経済であるとともに、環境に対して大きな負荷がかかる。
【0010】
また、尿素法は、ヒドラジン法と同様のアンモニウム塩問題だけでなく、合成中間体であるヒドラジンを製造する際に多量の炭酸ナトリウムを発生する。さらに、1モルのヒドラゾジカルボンアミドを3モルの尿素から合成するため、原料費のコストアップにつながる。
【0011】
従って、これらの方法は、経済的な問題だけでなく、環境問題が強く叫ばれる現在、優良な方法とはいえない。
【0012】
一方、セミカルバジド法は、上記の無機塩発生の問題を解決できるだけでなく、1モルのヒドラゾジカルボンアミドを2モルの尿素から製造できるため、非常に効率の良い方法である。しかしながら、高圧下でアンモニアの付加を行い、またセミカルバジドからヒドラゾジカルボンアミドへの変換時に発生したアンモニアを回収再使用する方式を取るため、他の方法に比べて設備費が大きく増大して、結果的に製品のコストアップにつながるという問題を抱えている。
【0013】
【特許文献1】
特開昭51−11719号公報
【0014】
【特許文献2】
米国特許第2692281号明細書
【0015】
【特許文献3】
特許第2952712号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ヒドラゾジカルボンアミドを、簡便で効率よく、低コストで製造することができる方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドラゾジカルボンアミドの簡便で効率の良い製造方法を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、下記に示すとおりのヒドラゾジカルボンアミドの製造方法を提供するものである。
項1. 一般式(1);
【0019】
【化2】
【0020】
[式中、Xはハロゲンを示し、Mはアルカリ金属を示す。]で表されるハロビウレット化合物とアンモニアとを反応させることを特徴とするヒドラゾジカルボンアミドの製造方法。
項2. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物とアンモニアとを、0〜150℃で反応させる項1に記載の方法。
項3. アンモニアの使用量が、一般式(1)で表されるハロビウレット化合物1モルに対して1.0〜20モルである項1または2に記載の方法。
項4. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸アルカリ金属とを反応させて得られる項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸t−ブチルとを反応させた後に水酸化アルカリ金属を反応させて得られる項1〜3のいずれかに記載の方法。
項6. 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸とを反応させた後に水酸化アルカリ金属を反応させて得られる項1〜3のいずれかに記載の方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0022】
本発明のヒドラゾジカルボンアミド新規製造方法の反応ルートは、次式の通りである。(式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを示し、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。)
【0023】
【化3】
【0024】
すなわち、ビウレット(2)を出発原料として反応させて、ハロビウレット化合物(1)を合成中間体として得て、これに加熱下にアンモニアを付加反応させることにより、ヒドラゾジカルボンアミド(5)を得ることができる。
【0025】
本発明の合成中間体として有用なハロビウレット化合物は、一般式(1);
【0026】
【化4】
【0027】
で表されるハロビウレットアルカリ金属塩である。式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを示す。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。
【0028】
このハロビウレット化合物としては、具体的には、クロロビウレットのナトリウム塩、クロロビウレットのリチウム塩、クロロビウレットのカリウム塩等のクロロビウレットアルカリ金属塩類、ブロモビウレットのナトリウム塩、ブロモビウレットのリチウム塩、ブロモビウレットのカリウム塩等のブロモビウレットアルカリ金属塩類、ヨードビウレットのナトリウム塩、ヨードビウレットのリチウム塩、ヨードビウレットのカリウム塩等のヨードビウレットアルカリ金属塩類等が挙げられる。
【0029】
なお、上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物に関しては、上記反応ルート中の一般式(3)で表される互変異性体が考えられる。
【0030】
[ハロビウレット化合物の製造方法]
上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物の製造方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、式(2);
【0031】
【化5】
【0032】
で表されるビウレットを出発原料とし、公知の方法でハロゲン化することによって製造することができる。
【0033】
この出発原料であるビウレットの製造方法は、特に限定されるわけではないが、例えば英国特許第1324277号明細書に記載のように、尿素から製造できる。すなわち、例えば、窒素気流下、溶媒中で、尿素の融点以上の温度(135℃以上)、好ましくは150℃〜180℃で、5〜10時間、尿素を加熱することにより、高収率でビウレットを得ることができる。ここで使用される溶媒としては、尿素の融点以上の沸点を有する溶媒、特にエチレングリコール系溶媒が好ましい。また、反応濃度は特に限定されるわけではないが、反応時に原料である尿素が溶解していることが好ましく、使用される溶媒に対する尿素の溶解度に応じて適宜選択される。
【0034】
このようにして得られたビウレットを水に懸濁させたスラリーに、予めハロゲンと水酸化アルカリ金属水溶液を用いて調製した当量の次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩水溶液を滴下することにより、上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物であるハロビウレットアルカリ金属塩の均一水溶液が定量的に得られる。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、塩素、臭素が好ましい。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸または次亜ヨウ素酸のナトリウム、リチウムまたはカリウム塩が挙げられ、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸カリウムが好ましい。
【0035】
この反応は、−5℃〜20℃の範囲で行うことが好ましく、0℃〜5℃の範囲で行うことがより好ましい。反応温度が−5℃未満では、反応混合物がシャーベット状になるために反応が困難となるおそれがあり、20℃を超えると目的生成物が分解するために収率が低下するおそれがある。
【0036】
反応濃度は特に限定されるわけではないが、60重量%以下の濃度範囲で反応させることが好ましい。反応濃度が60重量%を超えるとスラリーの滑らかな撹拌が困難となり、次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩水溶液の滴下時に、局所的に反応温度が上昇するため、目的生成物の分解による収率低下を招くおそれがある。
【0037】
次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩の調製時に使用される水酸化アルカリ金属の量は、通常は化学量論量であれば良いが、続いて行われるハロビウレット化合物の熱転位反応の収率を向上させる目的からは、化学量論量以上の範囲で使用することが好ましく、ビウレット1モルに対して2.001〜2.5モルの範囲で使用することが好ましい。水酸化アルカリ金属の使用量が2.001モル未満の場合には、次工程の熱転位反応が効率よく進行せずに副反応が生ずるため、結果的に得られるヒドラゾジカルボンアミドの収率が大きく低下するおそれがある。また、水酸化アルカリ金属を2.5モルを超えて使用すると、目的物であるハロビウレット化合物の分解反応が促進される。
【0038】
なお、水酸化アルカリ金属の使用量を上記範囲とするために、ビウレットに当量の次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩水溶液を滴下する前に、所定量の水酸化アルカリ金属を添加していてもよい。
【0039】
また、有機溶媒中でビウレットと当量の次亜ハロゲン酸t−ブチルとを反応させた後に、溶媒を留去して単離させたハロビウレットを当量以上の水酸化アルカリ金属水溶液に溶解させることによっても、ハロビウレットアルカリ金属塩の水溶液が得られる。次亜ハロゲン酸t−ブチルとしては、次亜塩素酸t−ブチル、次亜臭素酸t−ブチル、次亜ヨウ素酸t−ブチル等が挙げられ、次亜塩素酸t−ブチルが好ましい。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0040】
この反応で使用する有機溶媒は、反応に影響を及ぼさない有機溶媒であれば特に限定されることはないが、後処理の溶媒留去の容易さや、目的物のハロビウレットの溶解度を考慮すると、メタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0041】
この反応は、0℃〜30℃の範囲で行うことが好ましく、5℃〜25℃の範囲で行うことがより好ましい。反応温度が30℃を超えると、目的生成物が分解するために収率が低下するおそれがある。また、0℃未満では、反応が進行しない。
【0042】
反応濃度は特に限定されるわけではないが、60重量%以下の濃度範囲で反応させることが好ましい。溶媒に対するビウレットの溶解性が低いために、ビウレットのスラリーに次亜ハロゲン酸t−ブチルを滴下することにより反応が行われ、反応が進行するとともに目的生成物が溶媒に溶解して均一になるという反応形態をとる。従って、反応濃度が60重量%を超えるとスラリーの滑らかな撹拌が困難となり、次亜ハロゲン酸t−ブチルの滴下時に、局所的に反応温度が上昇するため、目的生成物の分解による収率低下を招くおそれがある。
【0043】
反応で得られたハロビウレットを溶解させる水酸化アルカリ金属水溶液中の水酸化アルカリ金属の量は、通常は化学量論量であれば良いが、次工程のハロビウレット化合物(ハロビウレットアルカリ金属塩)の熱転位反応の収率を向上させる目的からは、化学量論量以上であるのが好ましく、ハロビウレット1モルに対して1.001〜1.5モルの範囲であるのが好ましい。水酸化アルカリ金属の量が1.001モル未満の場合には、次工程の熱転位反応が効率よく進行せず、結果的に得られるヒドラゾジカルボンアミドの収率が大きく低下するおそれがある。また、水酸化アルカリ金属の量が1.5モルを超えると、前駆体であるハロビウレットが分解反応を引き起こす。
【0044】
なお、水酸化アルカリ金属水溶液にハロビウレットの単離生成物を添加し、ハロビウレットアルカリ金属塩とする際、目的生成物の分解を抑制する目的から、ハロビウレットの単離生成物を10℃以下で添加するのが好ましく、0℃〜5℃で添加するのがより好ましい。
【0045】
また、水に懸濁させたビウレットと当量の次亜ハロゲン酸とを反応させた後に、当量以上の水酸化アルカリ金属水溶液と反応させることによっても、ハロビウレットアルカリ金属塩の水溶液が得られる。次亜ハロゲン酸としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等が挙げられ、次亜塩素酸、次亜臭素酸が好ましい。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0046】
この反応は、−5℃〜20℃の範囲で行うことが好ましく、0℃〜5℃の範囲で行うことがより好ましい。反応温度が−5℃未満では、反応混合物がシャーベット状になるために反応が困難となるおそれがあり、20℃を超えると目的生成物が分解するために収率が低下するおそれがある。
【0047】
反応濃度は特に限定されるわけではないが、60重量%以下の濃度範囲で反応させることが好ましい。反応濃度が60重量%を超えるとスラリーの滑らかな撹拌が困難となり、次亜ハロゲン酸水溶液の滴下時に、局所的に反応温度が上昇するため、目的生成物の分解による収率低下を招くおそれがある。
【0048】
ビウレットと次亜ハロゲン酸との反応により得られたハロビウレットと反応させる水酸化アルカリ金属水溶液中の水酸化アルカリ金属の量は、通常は化学量論量であれば良いが、次工程のハロビウレット化合物(ハロビウレットアルカリ金属塩)の熱転位反応の収率を向上させる目的からは、化学量論量以上であるのが好ましく、ハロビウレット1モルに対して1.001〜1.5モルの範囲であるのが好ましい。水酸化アルカリ金属の量が1.001モル未満の場合には、次工程の熱転位反応が効率よく進行せず、結果的に得られるヒドラゾジカルボンアミドの収率が大きく低下するおそれがある。また、水酸化アルカリ金属の量が1.5モルを超えると、ハロビウレットの分解反応が促進されると同時に、本発明で得られたヒドラゾジカルボンアミドを用いてアゾジカルボンアミドを製造する際に、中和処理を行う必要があるため、不経済である。
【0049】
なお、上記ハロビウレット化合物の製造において原料として使用するビウレットは、公知の方法に従って製造し、単離精製したものを使用しても良いし、また、ビウレットの合成反応で得られた反応生成物を、単離精製することなくそのまま使用しても良い。
【0050】
[ヒドラゾジカルボンアミドの製造方法]
上記の方法で得られた上記一般式(1)のハロビウレット化合物は、0〜150℃でホフマン転位反応を起こし、イソシアナート誘導体(4)へと変化する。このイソシアナート誘導体は不安定であり、単離することが困難であるが、アンモニアの存在下でハロビウレット化合物(1)をホフマン転位反応させると、該反応で得られるイソシアナート誘導体(4)へのアンモニアの付加反応が同時に進行し、ワンポットで、目的物であるヒドラゾジカルボンアミド(5)を高収率で得ることができる(上記反応ルート参照)。
【0051】
この反応の温度範囲は、0〜150℃が好ましい。また、本発明が常圧下でハロビウレットアルカリ金属塩水溶液とアンモニアとを反応させることを特徴とすることや、反応収率を向上させること等を考慮すると、5〜90℃がより好ましい。また、低温条件では反応完結までに時間がかかることや、臭気問題、安全性、省エネルギー等を考慮すると、工業化に際しては、10〜50℃が特に好ましい。
【0052】
この反応で使用するアンモニアの量は、上記一般式(1)で表されるハロビウレット化合物1モルに対して1.0〜20モルの範囲であるのが好ましく、1.5〜15モルの範囲であるのがより好ましい。アンモニア量がハロビウレット化合物1モルに対して1.0モル未満の場合は、目的生成物であるヒドラゾジカルボンアミドの収率が低下するおそれがあり、20モルを超える場合は、特に反応収率に影響することはないが、不経済である。
【0053】
アンモニアの使用形態は特に限定されず、液体アンモニアでもアンモニア水でも使用可能であるが、取り扱いの容易さや経済性を考慮すると、アンモニア水を使用することが好ましい。
【0054】
このアンモニア付加反応は、アンモニア水を用いて、常圧下で、無触媒で進行し、効率よく目的物であるヒドラゾジカルボンアミドを得ることが可能であるが、加圧下で、より高温で反応させたり、または触媒を用いて反応をより促進させることも可能である。
【0055】
触媒反応を行う際に使用される触媒は、上記反応を促進させる触媒であれば特に限定されるわけではないが、具体的には、亜鉛のもしくはカドミウムの塩化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、アンミン錯体、またはエチレンジアミン錯体が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。この触媒は、反応の際に、ハロビウレット化合物1モルに対して0.1〜0.5モルの範囲で使用することができる。触媒量が、ハロビウレット化合物1モルに対して0.1モル未満では触媒を使用する効果が得られないおそれがあり、0.5モルを超えると反応に悪影響を及ぼさないものの不経済である。
【0056】
なお、反応終了後、目的生成物であるヒドラゾジカルボンアミドは、白色結晶として析出するため、容易に濾別することが可能である。
【0057】
得られたヒドラゾジカルボンアミドは、単離精製して公知の酸化方法、例えば塩素酸化により、容易にアゾジカルボンアミドへと変換することも可能であるし、また、単離することなくそのまま酸化して、アゾジカルボンアミドへと変換することも可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、アゾジカルボンアミドの有用な前駆体であるヒドラゾジカルボンアミドを、極めて低コストで効率よく製造することができる。また、アンモニアの使用量も大きく低減できる等の利点があり、設備費を大きく低減できる。さらに、従来法と比較して、アンモニウム塩や無機塩等の排出量を大きく低減できるため、環境への負荷も大きく低減できる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は実施例によって、制限を受けるものではない。
【0060】
なお、同定ならびに分析に使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の条件は、下記の通りであった。
【0061】
<HPLC条件>
検出装置のUV:205nm
流量:0.5ml/min
カラム:Union UK−C18(4.6I.D.×150mm)/インタクト株式会社製
カラム温度:27.7℃
移動相:Na2HPO4/KH2PO4(18mmol/9mmol) 水/メタノール=96/4
サンプル量:5μl
上記条件において、クロロビウレットナトリウム塩の保持時間は5.95分、クロロビウレットの保持時間は5.72分、ブロモビウレットの保持時間は9.33分、ビウレットの保持時間は4.87分、ヒドラゾジカルボンアミドの保持時間は3.67分であった。
【0062】
実施例1
[クロロビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する100mlの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)、水50mlおよび水酸化ナトリウム0.3g(0.0075mol)を加え、氷浴を用いて撹拌しながら0〜2℃に冷却した。次に、予め氷冷した14%次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.25g(0.15mol)を、混合物中に30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液よりサンプルを採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:98.9%)。
【0063】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記反応混合物に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、16.1gの粗結晶を得た。
【0064】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.0%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は91.1%であった。
【0065】
融点:275.1℃
IR(KBr法):3390cm−1(ν−CONH2),3205cm−1(ν−CONH−),1672cm−1(ν−CO−)。
【0066】
実施例2
実施例1と同様の方法で調製したクロロビウレットナトリウム塩水溶液および予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)をオートクレーブ中に封入し、オイルバスを用いて80℃に加熱した。10分加熱後、室温まで冷却し、析出した白色結晶を濾別した。110℃で24時間乾燥して、16.0gの粗結晶を得た。
【0067】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.2%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は90.7%であった。
【0068】
実施例3
[クロロビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する100mlの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)、水30mlおよび水酸化ナトリウム0.3g(0.0075mol)を加え、氷浴を用いて撹拌しながら0〜2℃に冷却した。次に、予め氷冷した14%次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.25g(0.15mol)を、混合物中に30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:98.0%)。
【0069】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記反応混合物に、液体アンモニア5.1g(0.3mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、16.2gの粗結晶を得た。
【0070】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.0%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は92.4%であった。
【0071】
実施例4
[クロロビウレットカリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する100mlの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)およびメタノール50mlを加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却した。次に、予め調製した次亜塩素酸t−ブチル16.3g(0.15mol)を、混合物中に30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、20℃で1時間撹拌し、溶媒を室温下で減圧留去すると、クロロビウレットとビウレットとの混合物が26.0gの白色結晶として得られた。高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:85.5%)。
【0072】
次に、この結晶を、予め水酸化カリウム8.67g(0.155mol)を水50mlに溶解して調製し、0℃に冷却した水酸化カリウム水溶液に徐々に添加し、クロロビウレットカリウム塩水溶液を調製した。
【0073】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記クロロビウレットカリウム塩水溶液に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、21.2gの粗結晶を得た。
【0074】
高速液体クロマトグラフィーを用いて、得られた結晶の純度を測定したところ、64.4%であり、クロロビウレットからの収率は90.2%であった。
【0075】
実施例5
[ブロモビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する500mlの四つ口フラスコに、臭素24.0g(0.15mol)および水200mlを加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却した。次に、硝酸銀30.4g(0.18mol)を徐々に添加し、次亜臭素酸水溶液を調製した。
【0076】
温度計および撹拌機を有する1Lの四つ口フラスコに、ビウレット15.8g(0.15mol)および水40mlを加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却し、上記の次亜臭素酸水溶液を滴下した。その際、フラスコの内温が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、収率を算出した(収率:95.2%)。
【0077】
次に、この反応液に、予め調製して氷冷した10%水酸化ナトリウム水溶液60g(0.15mol)を滴下し、ブロモビウレットナトリウム塩水溶液を調製した。なお、混合時に混合物の温度が5℃以下に保たれるように、滴下速度を調整した。
【0078】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記ブロモビウレットナトリウム塩水溶液に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、4.3gの粗結晶を得た。
【0079】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.1%であり、ブロモビウレットからの収率は24.1%であった。
【0080】
実施例6
[クロロビウレットナトリウム塩水溶液の調製]
温度計および撹拌機を有する300mlの四つ口フラスコに、尿素9g(0.15mol)および水30mlを添加し、オイルバスを用いて内温が90℃になるように調整した。次に、pH5付近に調整しながら40%希硫酸18.4g(0.075mol)を滴下した(120時間)。次に、水酸化ナトリウム4.0g(0.10mol)を加え、氷浴を用いて撹拌しながら5℃以下に冷却した。この混合物中に、予め氷冷した14%次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.25g(0.15mol)を30分かけて滴下した。その際、フラスコの内温が0〜2℃に保たれるように、滴下速度を調整した。滴下終了後、均一溶液となった反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、クロロビウレットナトリウム塩の収率を算出した(尿素からの収率:28.6%)。
【0081】
[ヒドラゾジカルボンアミドへの変換]
上記反応混合物に、予め氷冷した25%アンモニア水27.25g(0.4mol)を添加し、湯浴を用いて25℃に昇温した。3時間撹拌後、析出した白色結晶を濾別し、110℃で24時間乾燥して、4.6gの粗結晶を得た。
【0082】
得られた結晶は、IRスペクトルにおいて標品と完全に一致していることより、ヒドラゾジカルボンアミドであると確認された。また、高速液体クロマトグラフィーを用いて純度を測定したところ、99.0%であり、クロロビウレットナトリウム塩からの収率は89.1%であった。
Claims (6)
- 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物とアンモニアとを、0〜150℃で反応させる請求項1に記載の方法。
- アンモニアの使用量が、一般式(1)で表されるハロビウレット化合物1モルに対して1.0〜20モルである請求項1または2に記載の方法。
- 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸アルカリ金属とを反応させて得られる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸t−ブチルとを反応させた後に水酸化アルカリ金属を反応させて得られる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 一般式(1)で表されるハロビウレット化合物が、ビウレットと次亜ハロゲン酸とを反応させた後に水酸化アルカリ金属を反応させて得られる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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JP2002330600A JP2004161692A (ja) | 2002-11-14 | 2002-11-14 | ヒドラゾジカルボンアミドの製造方法 |
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-
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