JP4182396B2 - 芳香族アルデヒドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はベンジルエーテル化合物を酸化して対応する芳香族アルデヒド化合物を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ベンジルアルコール化合物を酸化することにより対応する芳香族アルデヒド化合物を製造する方法として、種々の酸化反応、例えばクロム酸による酸化、活性二酸化マンガンによる酸化、スワン酸化に代表されるジメチルスルホキシドによる酸化、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ,フリーラジカル(TEMPO)などのオキソアンモニウム塩化合物による酸化、ルテニウムなどの遷移金属触媒による酸化が知られていた。〔日本化学会編、実験化学講座、有機合成III−アルデヒド・ケトン・キノン−、第4版、丸善(株)、1991、21巻、1−20頁〕。しかし、クロム酸や活性二酸化マンガンによる酸化では、反応終了後、残留する有害な金属化合物を処理する必要がある。ジメチルスルホキシドによる酸化では、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、酸塩化物などの活性化剤が当量以上必要である。オキソアンモニウム塩化合物による酸化、遷移金属触媒による酸化では高価な触媒を用いる必要がある。
【0003】
また、触媒量のタングステン酸ナトリウム存在下、過酸化水素水を用いた酸化も知られている〔テトラへドロンレター(Tetrahedron Lett.),39巻,7549頁(1998)〕。しかし、ニトロ基などの置換基を持つ化合物に関しては反応性が良くないという点が解決されぬままであった。
【0004】
さらに、アセトニトリル−水混合溶媒中、1.5当量の塩化アンモニウム存在下、1当量の臭素酸ナトリウムを用いる方法も知られている[ジャーナル オブケミカルリサーチ(ズ)〔J.Chem.Research(s)〕,100頁(1998)]。しかし、化学量論的に3倍量の酸化剤を用いること、さらに1当量分の臭化ナトリウムを廃棄物として処理しなければならないことは、工業的実施において望ましくない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の持つ欠点を解決した、新しい、ベンジルエーテル化合物を酸化して対応する芳香族アルデヒド化合物を製造する方法が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような状況に鑑み、本発明者がベンジルエーテル化合物を酸化して対応する芳香族アルデヒド化合物を製造する方法について鋭意研究を重ねた結果、意外にも、酸触媒存在下、化学量論量程度の少量の(場合によっては化学量論量に満たない少量)の臭素酸化物と反応させることにより、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明は、下記〔1〕乃至〔11〕項に記載の発明を提供する事により前記課題を解決したものである。
【0009】
〔1〕一般式(1)
【0010】
【化4】
【0011】
(式中、Rはアルキル基を示し、nは1〜6の整数を示し、R’は同一または相異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基、カルボキシル基又はその金属塩、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、シアノ基、ホルミル基、アルキルカルボニル基又は置換基を有しても良いフェニル基を示す。)
【0012】
で表されるベンジル化合物と、一般式(2)
【0013】
【化5】
【0014】
(式中、Mは水素原子又は金属原子を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【0015】
で表される臭素酸化物とを、酸触媒存在下で反応させる事を特徴とする、一般式(3)
【0016】
【化6】
【0017】
(式中、R’、nは前記と同じ意味を示す。)
【0018】
で表される芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0019】
〔2〕一般式(1)で表されるベンジル化合物が、R’が全て水素原子であるか又はR’のうち少なくとも一つが電子吸引性基であるものである、〔1〕記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0020】
〔3〕一般式(1)で表されるベンジル化合物が、R’が全て水素原子であるか又はR’のうち少なくとも一つが、ニトロ基、クロロ基、ヒドロキシメチル基のいずれかであるものである、〔1〕記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0021】
〔4〕一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸、臭素酸塩もしくは亜臭素酸塩である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0022】
〔5〕一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸塩である〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0023】
〔6〕酸触媒が、有機カルボン酸である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0024】
〔7〕酸触媒が酢酸である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0025】
〔8〕一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸塩もしくは亜臭素酸塩であり、酸触媒が、有機カルボン酸である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0026】
〔9〕一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸塩であり、酸触媒が、有機カルボン酸である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0027】
〔10〕一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸塩もしくは亜臭素酸塩であり、酸触媒が、酢酸である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0028】
〔11〕一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸塩であり、酸触媒が、酢酸である、〔1〕乃至〔3〕の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
本発明方法は、一般式(1)で表されるベンジル化合物と、一般式(2)で表される臭素酸化物とを、酸触媒存在下で反応させる事を特徴とする、一般式(3)で表される芳香族アルデヒド化合物の製造方法である。
【0031】
まず、本発明方法の原料として用いる、一般式(1)で表されるベンジル化合物(以下、単に「原料ベンジル体」と記載することがある。)について説明する。
【0032】
一般式(1)中のRは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基を示す。
【0033】
また、一般式(1)中のR’は、同一または相異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子;例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、炭素数1乃至6(以下、炭素数については、例えば炭素数が1乃至6である場合には、これを「C1〜C6」の様に略記する。)の直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ヒドロキシアルキル基;例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基又はその金属塩;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等の、ハロゲン原子;ニトロ基;アミノ基;例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、直鎖又は分岐モノ又はジ(C1〜C6アルキル)アミノ基;例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニルアミノ基;シアノ基;ホルミル基;例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基;フェニル基(該フェニル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ヒドロキシアルキル基;例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基又はその金属塩;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;ニトロ基;アミノ基;例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、直鎖又は分岐のモノ又はジ(C1〜C6アルキル)アミノ基;例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキルカルボニルアミノ基;シアノ基;ホルミル基;例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基等の置換基を有していても良い。)を示す。反応性等の観点からは、好ましくは水素原子;或いは、C1〜C6ヒドロキシアルキル基、(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基、C1〜C6ハロアルキル基、カルボキシル基又はその金属塩、(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、(C1〜C6アルキル)カルボニルアミノ基、シアノ基、ホルミル基、(C1〜C6アルキル)カルボニル基等の電子吸引性基を挙げられ、中でも水素原子、C1〜C6ヒドロキシアルキル基、C1〜C6ハロアルキル基、カルボキシル基又はその金属塩、(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、(C1〜C6アルキル)カルボニル基を良いものとして挙げることができ、特には水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1〜C6ヒドロキシアルキル基を良いものとして挙げることができ、具体的には、水素原子やニトロ基、クロロ、ヒドロキシメチル基等である場合に好結果を示す場合が多い。
【0034】
一般式(1)中のnは1乃至6の整数を示す。本発明方法には、原料の入手性や反応性の点からは、nは1乃至3のものの使用が好ましい。
【0035】
当反応に使用できる一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)としては、具体的には例えば、メトキシメチルベンゼン、o−メトキシメチルトルエン、m−メトキシメチルトルエン、p−メトキシメチルトルエン、o−メトキシメチルフェノール、m−メトキシメチルフェノール、p−メトキシメチルフェノール、o−メトキシメトキシメチルベンゼン、m−メトキシメトキシメチルベンゼン、p−メトキシメトキシメチルベンゼン、o−キシリレングリコールモノメチルエーテル、m−キシリレングリコールモノメチルエーテル、p−キシリレングリコールモノメチルエーテル、o−キシリレングリコールジメチルエーテル、m−キシリレングリコールジメチルエーテル、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、o−メトキシメチル−フルオロメチルベンゼン、m−メトキシメチル−フルオロメチルベンゼン、p−メトキシメチル−フルオロメチルベンゼン、o−メトキシメチル安息香酸、m−メトキシメチル安息香酸、p−メトキシメチル安息香酸、o−メトキシメチル安息香酸メチル、m−メトキシメチル安息香酸メチル、p−メトキシメチル安息香酸メチル、o−クロロベンジルメチルエーテル、m−クロロベンジルメチルエーテル、p−クロロベンジルメチルエーテル、o−ニトロベンジルメチルエーテル、m−ニトロベンジルメチルエーテル、p−ニトロベンジルメチルエーテル、o−メトキシメチルアニリン、m−メトキシメチルアニリン、p−メトキシメチルアニリン、N−メチル−o−メトキシメチルアニリン、N−メチル−m−メトキシメチルアニリン、N−メチル−p−メトキシメチルアニリン、o−メトキシメチルアセトアニリド、m−メトキシメチルアセトアニリド、p−メトキシメチルアセトアニリド、o−シアノベンジルメチルエーテル、m−シアノベンジルメチルエーテル、p−シアノベンジルメチルエーテル、o−メトキシメチルベンズアルデヒド、m−メトキシメチルベンズアルデヒド、p−メトキシメチルベンズアルデヒド、o−メトキシメチルアセトフェノン、m−メトキシメチルアセトフェノン、p−メトキシメチルアセトフェノン、2−メトキシメチルビフェニル、3−メトキシメチルビフェニル、4−メトキシメチルビフェニル、4,4’−ジメトキシメチルビフェニル等を挙げることができる。
【0036】
一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)は公知の化合物であるか、あるいは、例えば、対応する塩化ベンジル化合物を、適当な有機溶媒中、ナトリウムアルコキシド等の金属アルコキシドと反応させる方法などにより製造することができる化合物である。
【0037】
続いて、一般式(2)で表される臭素酸化物について説明する。
【0038】
一般式(2)中のMは水素原子;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属およびマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属等の金属原子を示す。
【0039】
また、一般式(2)中のmは1〜3の整数を示す。
【0040】
従って、当反応に使用できる一般式(2)で表される臭素酸化物としては、具体的には例えば、臭素酸;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸カルシウム等の臭素酸金属塩に代表される臭素酸塩;亜臭素酸;亜臭素酸ナトリウム、亜臭素酸カリウム等の亜臭素酸金属塩に代表される亜臭素酸塩;次亜臭素酸;次亜臭素酸塩等を挙げることができ、これらは水和物として用いることも可能である。入手性や取り扱いの簡便さ、反応性等の観点からは、臭素酸、臭素酸塩、亜臭素酸塩の使用が好ましく、臭素酸塩の使用が特に好ましい。
【0041】
これらの一般式(2)で表される臭素酸化物は公知化合物である。
【0042】
当反応における、一般式(2)で表される臭素酸化物の使用モル比は、一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)に対して如何なるモル比でも反応が進行するが、一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)1モルに対して、一般式(2)で表される臭素酸化物が、一般式(2)中のmが3の場合では、通常0.3〜0.5モル、好ましくは0.33〜0.4モルの範囲を、一般式(1)中のmが2の場合では、通常0.45〜0.75モル、好ましくは0.5〜0.6モルの範囲を、一般式(1)中のmが1の場合では、通常0.9〜1.5モル、好ましくは1.0〜1.2モルの範囲を例示できる。
【0043】
但し、一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)が、複数の基−CH2OR(アルコキシメチル基)を有し(即ち、原料ベンジル体が、一般式(1)中のnが2〜6である化合物や、基−CH2ORが置換しているフェニル基をR’として有する化合物である場合、或いはこの両方が同時に成り立つ様な化合物である場合を意味する。)、その全ての基−CH2ORをホルミル基に変換したい場合には、上記臭素酸化物の使用モル比に、その置換基の総数を乗じたモル比の臭素酸化物を用いる必要がある。
【0044】
また、原料ベンジル体が、前記のように複数の基−CH2ORを持つような場合において、一般式(2)で表される臭素酸化物の使用モル比を制御することにより、複数の基−CH2ORの一部のみをホルミル基に変換することもできる。
【0045】
当反応は酸触媒を用いて行う。当反応に用いうる酸触媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フルオロ酢酸、乳酸、アミノ酸等のカルボン酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等有機スルホン酸に代表される有機酸;塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素−テトラヒドロフラン錯体(BF3−THF錯体)、ポリリン酸等のルイス酸;その他、固体酸等を例示することができるが、好ましくは、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸を用いて行うのがよい。
【0046】
当反応における酸触媒の使用量は、反応が充分に進行する量であれば何れでも良いが、一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)1モルに対して0.01〜100モル、好ましくは0.05〜10モルの範囲を例示できる。しかし、使用量はこの例示範囲に限定されることなく、後記する溶媒をかねて大過剰量を使用することもできる。
【0047】
当反応は、無溶媒でも充分行うことができるが、溶媒を用いて行うこともできる。当反応に用いうる溶媒としては、反応を阻害しないしないものであれば良く、例えば、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸;水;トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)、プロピレンカーボネート等の非プロトン性極性溶媒類;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ−テル系溶媒類;ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。好ましくは酸化剤の溶解性、反応性の観点から酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸もしくは水を用いるのが良く、カルボン酸を溶媒として用いるとこれが酸触媒を兼ねるので特に好ましい。溶媒は単独で、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることができる。
【0048】
溶媒量としては、反応系の攪拌が充分にできる量であれば良いが、一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)1モルに対して通常0.05〜10l、好ましくは0.5〜2lの範囲であれば良い。溶媒の極性を余り低くしすぎることは、酸化剤の溶解度が減少するために反応が進みにくくなる場合があるので望ましくない。
【0049】
当反応の反応温度は、0℃〜使用する溶媒の還流温度、の範囲を例示できるが、好ましくは20℃〜100℃の範囲が良い。
【0050】
当反応を、高い温度条件下で実施すると、反応スケールにもよるが、反応の急激な進行に伴って激しい発熱が生じる場合があるため、注意深く低めの温度条件を設定したり、原料ベンジル体を滴下することにより反応系に加える等の手法を採用することが有利な場合がある。
【0051】
当反応の反応時間は特に制限されないが、副生物抑制の観点等から、好ましくは1時間〜30時間がよい。
【0052】
当反応では、反応の進行に伴って系内で生ずる臭化物イオン(Br−)と、臭素酸化物が一部反応する事によって、臭素が少量発生する場合があるが、この臭素は、系内で生成した目的の芳香族アルデヒド化合物と反応して、対応するカルボン酸にまで酸化を進める様な副反応を引き起こす可能性があるため、好ましくは、臭素がなるべく発生しないように穏やかな反応条件を設定し、反応させるのが好ましい。
【0053】
反応終了後、目的とする芳香族アルデヒド化合物は、反応混合物を蒸留、場合によっては必要に応じ精留する方法や、或いは場合によっては固体として生成した目的物を濾過し、必要に応じ再結晶する方法等の、慣用の方法で取り出すことができる。
【0054】
当反応によれば、生成物の酸化段階がカルボン酸化合物まで進む過剰な酸化反応が少なく、高選択的に一般式(3)で表される芳香族アルデヒド化合物が生成する。得られる一般式(3)で表される芳香族アルデヒド化合物は、医農薬等の中間原料として有用な化合物である。
【0055】
【発明の効果】
本発明方法により、芳香族アルデヒド化合物の新規な工業的製造法が提供される。本発明方法によれば、原料として、入手容易な一般式(1)で表されるベンジル化合物(原料ベンジル体)を用いることが可能で、高価な触媒もしくは遷移金属を用いることなく、目的とする芳香族アルデヒド化合物を高選択的に、しかも簡便な操作で製造できる。更に、本発明方法では触媒もしくは遷移金属に由来する有害な廃棄物も出ないので廃棄物処理が容易で環境にも優しく、工業的な利用価値が高い。
【0056】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明化合物の製造方法を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
実施例1(〔1〕項記載の発明):o−ニトロベンズアルデヒドの製造
マグネチックスターラー、還流冷却器を備えた15mlの試験管型反応器に、o−ニトロベンジルメチルエーテル0.67g(4mmol)、臭素酸ナトリウム0.2g(1.35mmol)、酢酸2ml(34.8mmol)を加え、90℃で1.5時間攪拌した。この時の反応液中の成分はガスクロマトグラフィーの面積比で、目的のo−ニトロベンズアルデヒド53.6%生成していた。また、原料のo−ニトロベンジルメチルエーテルが38.6%残存していた。
【0066】
実施例2(〔1〕項記載の発明):p−クロロベンズアルデヒドの製造
マグネチックスターラー、還流冷却器を備えた15mlの試験管型反応器に、p−クロロベンジルメチルエーテル0.63g(4mmol)、臭素酸ナトリウム0.2g(1.35mmol)、酢酸2ml(34.8mmol)を加え、90℃で1.5時間攪拌した。この時の反応液中の成分は、ガスクロマトグラフィーの面積比で、目的のp−クロロベンズアルデヒド91.0%生成していた。
【0067】
実施例3(〔1〕項記載の発明):4,4’−ビスホルミルビフェニルの製造
マグネチックスターラー、還流冷却器を備えた15mlの試験管型反応器に、ビスメトキシメチルビフェニル0.53g(2mmol)、臭素酸ナトリウム0.2g(1.35mmol)、酢酸2ml(34.8mmol)を加え、90℃で1.5時間攪拌した。この時の反応液中の成分は、ガスクロマトグラフィーの面積比で、4,4’−ビスホルミルビフェニル93.3%生成していた。原料のビスメトキシメチルビフェニル6.7%残存していた。
【0068】
実施例4(〔1〕項記載の発明):o−フタルアルデヒドの製造
マグネチックスターラー、還流冷却器を備えた15mlの試験管型反応器に、o−キシリレングリコールジエチルエーテル0.39g(2mmol)、臭素酸ナトリウム0.2g(1.35mmol)、酢酸2ml(34.8mmol)を加え、90℃で1.5時間攪拌した。この時の反応液中の成分は、ガスクロマトグラフィーの面積比で、目的のo−フタルアルデヒド32.0%、中間段階の生成物(原料1分子中に2つ存するエトキシメチル基の内1つのみがホルミル基に変換された化合物)であるo−エトキシメチルベンズアルデヒド30.1%が生成していた。
【0072】
実施例5(〔1〕項記載の発明):p−クロロベンズアルデヒドの製造
マグネチックスターラー、還流冷却器、温度計を備えた100mlの四口フラスコに、p−クロロベンジルメチルエーテル31.3g(200mmol)、臭素酸ナトリウム10.0g(67mmol)、酢酸40ml(696mmol)を加え、75℃で8時間攪拌した。反応の進行に伴って少量の臭素が生成し、反応液は80℃まで上昇した。反応終了後には臭素は完全に消失した。反応液を、減圧下、酢酸を28ml回収した後、室温まで冷却し、水100mlを加え、氷浴下pHが11以上となるまで24%水酸化ナトリウム水溶液を液温が上がらないように少しずつ加えた。酢酸エチル100mlで二回抽出し、酢酸エチル相を飽和食塩水で洗浄した。酢酸エチル相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去し、29.0gの固体を得た。この固体中の成分は、ガスクロマトグラフィーの面積比で、目的のp−クロロベンズアルデヒドが89.2%生成していた。
Claims (5)
- 一般式(1)
で表されるベンジル化合物と、一般式(2)
で表される臭素酸化物とを、酸触媒存在下で反応させる事を特徴とする、一般式(3)
で表される芳香族アルデヒド化合物の製造方法。 - 一般式(1)で表されるベンジル化合物が、R’が全て水素原子であるか又はR’のうち少なくとも一つが電子吸引性基であるものである、請求項1記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
- 一般式(1)で表されるベンジル化合物が、R’が全て水素原子であるか又はR’のうち少なくとも一つが、ニトロ基、クロロ基、ヒドロキシメチル基のいずれかであるものである、請求項1記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
- 一般式(2)で表される臭素酸化物が、臭素酸、臭素酸塩もしくは亜臭素酸塩である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
- 酸触媒が、有機カルボン酸である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の芳香族アルデヒド化合物の製造方法。
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