JP2004161085A - 高速鉄道車両の車体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】先頭部分2を、運転室4を含む後側部分7とそれの前側に位置する前側部分8によって構成し、この前側部分を可動部分とする。その前側部分8を、車体前後方向において移動させ、後側部分の前側に位置して車体前後方向長さを長くする高速走行状態又はその高速走行状態より後方に位置して車体前後方向長さを短くする低速走行状態とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高速走行する新幹線等の高速鉄道車両の車体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、新幹線などの高速の鉄道車両がトンネルに突入する場合には、その先頭車両によって、トンネル内の限られた空間に存在する空気を押し込むように、前記空気が圧縮される。この圧縮された空気は圧縮波となって、トンネル内をほぼ音速に等しい速度で前方へ伝播される。この圧縮波がトンネルの出口に到達したときには出口で反射されるが、それの一部はパルス状の圧力波となってトンネル出口から外部へ放射される。このパルス状の圧力波を、微気圧波(トンネル微気圧波)という。この微気圧波(パルス状の圧力波)が外部へ放射されることにより、トンネルの出口付近では爆発音とともに微振動等が生じ、周辺の環境に影響を及ぼす場合がある。
【0003】
そのため、高速性能が要求される鉄道車両では、先頭車両の車体先頭部の形状に、いわゆる高速走行時の走行抵抗を減少させるだけでなく、前述したところのトンネルに突入した際に生じる微気圧波を低減させることができる形状とすることが必要とされる。
【0004】
高速車両におけるトンネル微気圧波は、速度の3乗に従い増大するので、高速で走行する車両ほど大きくなることが知られている。また、客室空間を含む一般部分に至るまで横断面積が変化する先頭形状はそれの長さが長いほど、微気圧波が低減されることも知られている。
【0005】
そこで、出願人は、鉄道車両がトンネル内に突入する場合に、トンネルと車両によって発生する微気圧波を分散させて低減するための鉄道先頭車両の車体を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。具体的には、車体の先端部分をやや後方に傾斜させて上方に立ち上げることにより第1段目の横断面積増加領域を形成した後、横断面積をほぼ一定に保ってほぼ水平に後方に延設する。その後、再びやや後方に傾斜させて上方に立ち上げることにより第2段目の横断面積増加領域を形成し、前記第1段目の横断面積/前記第2段目の横断面積の面積比が0.6以上で、前記第1段目と第2段目の横断面積増加領域の間隔を15m以上にしたものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−321640号公報(第2頁〜第4頁、図1〜図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成にすると、微気圧波の低減に効果があるとしても、そのために第1段目と第2段目の横断面積増加領域の間隔を15m以上にする必要があり、先頭車両の先頭部分の長さが極端に長くなり、車両限界に抵触するおそれが生ずる。また、先頭部分の長さが長くなると、車両の長さは一定であるので、客室長さが短くなり、乗車定員が減少する。
【0008】
このように、先頭車両の先頭部分の長さは、客室長さの確保と、走行時の車両限界によって決定される(すなわち、長い客室長さを確保し、車両限界に抵触しないようにする)。その一方、絶対的な車両の長さは、線路(軌道)の曲率、分岐部の線路条件などの車両限界に抵触しないという条件で決定される。線路条件の厳しい箇所は車両基地の引き込み線部等にあり、本線の高速走行時にはそのような線路条件の厳しい箇所はない。
【0009】
そこで、発明者らは、車両の先端部分の車体前後方向長さを変更できれば、高速走行時には先頭部分の車体前後方向長さを長くして、微気圧波の低減効果を得ることができる一方、車両限界に抵触するおそれがある低速走行時には先頭部分の車体前後方向長さを短くして、線路条件の厳しい箇所にも対応できるということに着想し、本発明をなすに至ったものである。しかも、このようにすれば、先頭部分の車体前後方向長さを長くすることが客室長さに影響を与えないので、乗車定員を確保することもできる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、横断面積が変化する先頭部分の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分に連続する高速鉄道車両の車体であって、先頭部分は、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置する前側部分とにより構成され、後側部分によって前側部分が車体前後方向に移動可能に支持され、後側部分の内部に、前側部分を格納する格納空間部が形成されていることを特徴とする。ここで、格納空間部は、前側部分の一部(例えば後部)のみ格納できる場合と、全部格納できる場合の両方を含む。
【0011】
このようにすれば、前側部分を車体前後方向において移動(進退)させ、前側部分(の一部又は全部)を後側部分内より突出させたり格納したりすることによって、先頭部分(前側部分と後側部分とにより構成される)の車体前後方向長さを変更することができる。これにより、例えば、高速走行時と低速走行時とで、先頭部分(微気圧波の低減効果に影響がある部分)の車体前後方向長さを簡単に変更することができる。
【0012】
よって、車両基地の引き込み線部等の、線路条件の厳しい部位を走行する低速走行時には、前側部分を後方に移動させることにより先頭部分の車体前後方向長さを短くすることができるので、他部との緩衝が回避される。よって、従来のように、最も曲率の高い線路に基づいて先頭部分の形状・長さを設計、決定する必要がなくなる。一方、本線を走行する高速走行時には、前側部分を前方に移動させることにより先頭部分の車体前後方向長さを長くすることができるので、微気圧波の低減効果が得られる。この場合、前側部分を車体前後方向において移動させるだけであるので、客室を含む一般部分の長さに何ら影響を与えず、客室長さを短くする必要がない。よって、客室長さを短くすることないので、乗車定員を多く確保できると共に、先頭部分(微気圧波の低減効果に影響がある部分)の長さを確保することができる。
【0013】
また、後側部分の内部に、前側部分を格納する格納空間部が形成されているので、前側部分を後方に移動させるだけで後側部分(格納空間部)内に格納させて、先頭部分の車体前後方向長さを短くすることができる。
【0014】
このように、前側部分を後方に移動させて後側部分内に格納させ、先頭部分の車体前後方向長さを短くできるので、高速先頭車両同士を連結して併結する場合には、車体前後方向長さを短くした状態で連結することにより、そのまま(車体前後方向長さが長い状態のまま)連結するよりも、併結部での断面積分布の変化率を緩やかにすることができる。よって、先頭車両の併結部で断面積の急激な変化、空気の流れの乱れ、バラストの飛び石などの問題が発生することもなくなる。
【0015】
また、先頭部分は、前側部分が、複数の部材を車両前後方向において相対的に移動可能に連結することにより伸縮可能に構成されているようにしてもよい。この場合、複数の部材が重なり合った状態で短くなり、その重なりをなくすことで長くすることができる。
【0016】
このようにすれば、先頭部分の車体前後方向長さを段階的に変更することができ、また、前側部分を収縮状態で収納することができるので、コンパクトに格納できるようになる。特に、トンネルには緩衝工が設けられるので、その種類に応じて先頭部分の車体前後方向長さを変更することで、最適な微気圧波低減性能を得ることが可能となる。
【0017】
本発明は、前側部分を車体前後方向において進退させるものに限らず、前側部分を移動させることで、先頭部分の車体前後方向長さを変更することができるものであればよく、先頭部分が、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置する前側部分とにより構成されるものであって、たとえば、後側部分に前側部分が回転可能に結合され、前側部分は、後側部分の前側に位置する第1の状態と、後側部分の上側に位置する第2の状態とを選択的にとり得る構成とすることも可能である。
【0018】
このようにすれば、前側部分が後側部分の前側に位置する第1の状態で、前側部分の先端を上方に持ち上げるように回転することにより前側部分を後側部分の上側に移動させ、第2の状態とすることができる。一方、前側部分が後側部分の上側に位置する第2の状態で、前側部分の先端を上方に持ち上げるように回転することにより前側部分を後側部分の前側に移動させ、第1の状態とすることができる。このように、前側部分を後側部分に対し回転することで、前側部分と後側部分とにより構成される先頭部分の車体前後方向長さを長くしたり短くしたりして、変更することができる。
【0019】
また、本発明は、先頭部分が、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置し弾性変形により車体前後方向長さを変更可能である前側部分とにより構成されているものも含まれる。
【0020】
このようにすれば、前側部分を弾性変形させることで、先頭部分の車体前後方向長さを変更することができる。
【0021】
このようにするには、例えば、前側部分は、最先端に位置する先端部材と、この先端部材と後側部分との間に設けられ弾性変形により車体前後方向において伸縮する変形可能部材とで構成され、後側部分によって先端部材が車体前後方向に移動可能に支持され、先端部材を車体前後方向に移動させることにより、前記変形可能部材を弾性変形させるようにすればよい。この場合、例えば高速走行時においては、微気圧波の低減効果に適する横断面積変化をするように、変形可能部材を内側からバックアップして、弾性変形を抑制して所定の形態を確実に保持するようにすることが望ましい。
【0022】
要するに、本発明は、横断面積が変化する先頭部分の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分に連続する高速鉄道車両の車体であって、先頭部分が、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置する前側部分とにより構成され、後側部分に対する前側部分の位置又は前側部分の形態が、高速走行時(先頭部分の車体前後方向長さが長い)と低速走行時(先頭部分の車体前後方向長さが短い)とで変更可能に構成されているものを含む。
【0023】
このようにすれば、高速走行時には、後側部分に対する前側部分の位置又は前側部分の形態を、微気圧波の低減に効果があるように変更される一方、低速走行時には、線路条件の厳しい部位を走行する場合であっても、他部との緩衝を回避するように変更される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、先頭部分の一部(前側部分)を機械的に移動させ、その一部の位置を変更可能とするものである。
【0025】
図1(a)は本発明に係る第1の実施の形態である鉄道先頭車両の先頭部分を示す側面図、図1(b)は平面図である。
【0026】
図1(a)(b)に示すように、鉄道先頭車両の車体1は、横断面積が変化する先頭部分2の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分3の先端に連続する構成とされている。先頭部分2の中間部位であって後方寄りには運転室4が形成され、一般部分3には、多数の座席が配設される客室空間5が形成されている。6は運転室4の運転席である。
【0027】
先頭部分2は、運転室4を含む後側部分7と、それの前側に位置する前側部分8とによって構成され、その前側部分8が後側部分7に対し車体前後方向に進退する可動部分となっている。すなわち、前側部分8が、後側部分7によって車体前後方向に移動可能に支持されている。
【0028】
よって、その前側部分8を車体前後方向に移動させることで、先頭部分2(前側部分8及び後側部分9よりなる)の車体前後方向長さが変更される。すなわち、前側部分8を移動させることにより、後側部分7の前側に位置して車体前後方向長さが長くなる高速走行状態(図1(a)(b)の破線参照)又はその高速走行状態より後方に位置させ車体前後方向長さが短くなる低速走行状態(図1(a)(b)の実線参照)をとり得る。これにより、先頭部分2全体の車体前後方向長さが変更されることになる。ここで、高速鉄道車両としては、前側部分8が、高速走行状態の位置にあるのが基準(これが通常の車両の形態である)で、低速走行状態では、前側部分8を、その基準となる高速走行状態の位置以外に位置させて(この実施の形態では後退させている)車体前後方向長さを短くすることになる。
【0029】
先頭部分2の後側部分7は、前側部分8を格納する格納空間部(すなわち低速走行状態のときに前側部分8が位置することができる空間部)を前側内部に有するように構成されている。また、後側部分7の先端開口の周囲には、気密性を確保するために前側部分8との間に、前側部分8の進退動を損なわないようにシール手段が施されている。
【0030】
そして、前側部分8の位置を高速走行時と低速走行時とで変更する車体長さ変更手段11(左右両側に設けられるが、右側のみ図示)は、前側部分8を後側部分7に支持するための支持アーム12を有し、支持アーム12を車体前後方向に移動させることで前側部分8を、低速走行状態と高速走行状態との間で進退させるものである。このように、車体前後方向において支持アーム12を直線的に移動させることで前側部分8を進退させ、低速走行状態では、前側部分8が後側部分7の格納空間部内に位置することになる。なお、前側部分8のうち後側部分7の格納空間部内に格納される部分は一様な横断面積で、後側部分7の先端開口を通じてスムーズに格納あるいは突出されるようになっている。
【0031】
車体長さ変更手段11についてより詳細に説明すると、支持アーム12は、側はり13の上側に複数の下側支持ローラ14Aを介して進退可能に支持されると共に、2つのメカニカルホルダー15,16にて進退可能に保持されている。なお、支持アーム12の上側には複数の上側支持ローラ14B(下側支持ローラ14Aに対応して配置されている)が回転可能に接触し、支持アーム12を上下の支持ローラ14A,14Bで挟持した状態で支持し、上下方向に振れない構成とされている。支持アーム12には、そのアーム長手方向に沿ってラック17が設けられており、前側のメカニカルホルダー15の前側において進退動作用ピニオン18がラック17に噛み合っている。これにより、ロータリ・アクチュエータ19によってピニオン18を回転させることで、ラック17とピニオン18との噛み合いの関係で支持アーム12が進退される。この支持アーム12の進退により前側部分8も進退し、前側部分8が低速走行状態と高速走行状態との間を移動する。また、支持アーム12の後退を規制するメカニカルストッパ20が設けられ、低速走行状態とするための後退時に支持アーム12が必要以上に後退しないように構成されている。
【0032】
このようにすれば、高速走行時には先頭部分2の長さが長くなる高速走行状態とすることで、微気圧波の低減効果が得られる。一方、先頭部分2の長さが短くなる低速走行状態とすることで、線路条件の厳しい箇所にも対応できる。よって、先頭部分2において車体前後方向長さを変更するので、先頭部分2の車体前後方向長さを長くするために一般部分3の車体前後方向長さを短くする必要がなくなり、乗車定員も確保することができる。
【0033】
なお、支持アーム12は、実際には左右のバランスとを保つためと運転室4との干渉を回避するために左右両側に設けているが、図面においては、右側に設けたものについて図示している(以下同様)。
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、先頭部分の一部(前側部分)を機械的に伸縮可能とし、その一部の形態を変更可能としたものである。
【0034】
図2(a)(b)に示すように、後側部分7の前側に位置する前側部分8Aは、先端になるほど径が小さくなる複数の筒状の部材8Aa,8Ab,8Acを車両前後方向において相対的に移動可能に連結することで車体前後方向長さが変更可能に(車体前後方向において伸縮可能に)構成されている。この前側部分8Aは、高速走行時に7は、車体前後方向長さがそれらの部材8Aa,8Ab,8Acの長さの和にほぼ等しい長さとなる。一方、低速走行時には、それらの部材8Aa,8Ab,8Acは互いに同軸状に重なり合い前側部分8としては車体前後方向長さが短くなって、コンパクトな状態(収縮状態)で後側部分7の格納空間部に収納される。
【0035】
なお、各部材8Aa,8Ab,8Ac間は、具体的には図示していないが、互いに外れないように、かつ各部材8Aa,8Ab,8Acのストローク量を一定範囲に規制するために係止部が設けられている。
【0036】
その複数の部材8Aa,8Ab,8Acのうち最も先端側に位置する部材8Aaに、車体長さ変更手段11の支持アーム12の先端が連結されている。なお、前側部分8Aの形態を高速走行時と低速走行時とで変更する車体長さ変更手段11は、第1の実施の形態と同様である。
【0037】
このようにすれば、支持アーム12の進退量に応じて、前側部分8Aを構成する部材8Aa,8Ab,8Acが相対的に移動し(すなわち前側部分8Aとしてみれば伸縮し)、前側部分8Aを移動させることができる。この前側部分8Aの移動(伸縮)により、先頭部分2の車体前後方向長さが段階的に変化する。
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、先頭部分の一部(前側部分)を、後側部分に回転可能に結合し、その一部野市を変更可能としえたものである。
【0038】
図3(a)(b)に示すように、前側部分8Bの後側上部が後側部分7の前側上部に対し回転可能に結合され、これによって前側部分8Bが後側部分7に対して回転可能である先頭部分2Bが構成されている。この回転により、前側部分は、後側部分の前側に位置する第1の状態(通常の車両の状態)と、後側部分の上側に位置する第2の状態(図3(a)(b)参照)とを選択的にとり得る。この第1の状態が高速走行状態に、第2の状態が低速走行状態にそれぞれ対応する。
【0039】
このように前側部分8Bを回転可能に結合するために、前側部分8Bと後側部分7との間にリンク機構21が設けられている。このリンク機構21は、上下方向に延びるエアシリンダ22に一端部が回転可能に連結されたS字形状の第1のリンク部材21aと、このリンク部材21aの他端部に一端部が回転可能に連結され他端部が前側部分8Bに回転可能に連結されている第2のリンク部材21bとを有する。また、第1のリンク部材21aの回転軸21cは、後側部分7の前端部に設けられた上下方向のガイドレール23にスライド可能に係合している。
【0040】
図3(a)(b)は低速走行状態を示すが、その状態において、エアシリンダ22を伸長動作させることによって、第1のリンク部材21aが時計方向に回転する。これにより第2のリンク部材21bが前側部分8Bを引っ張り、前側部分8を回転しつつ回転軸21cがガイドレールに沿って下方に変位する。最終的に前側部分8Bが後側部分7の前側に位置することになる。
【0041】
低速走行状態とするには、前述した場合とは逆に、エアシリンダ22を逆に動作させることで、前側部分8Bが回転して後側部分7の上側に載ることになる。この状態では、前側部分8Bが後側部分7の上側に位置し、エアシリンダ22がロックされ、それら両部分8B,7が一体になっている(図3(a)参照)。
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、先頭部分の一部(前側部分)を、部分的に蛇腹変形するようにし、その一部の形態を変更可能に構成したものである。
【0042】
図4(a)(b)に示すように、先頭部分2Cは、運転室4を含む後側部分7と、それよりも前側に位置し弾性変形により車体前後方向長さを変更可能である前側部分8Cとによって構成されている。そして前側部分8Cを、車体長さ変更手段11Aによって、車体前後方向長さを長くする高速走行状態とその高速走行状態よりも車体前後方向長さを短くする低速走行状態との間で弾性変形させ、車体前後方向長さを変化させるように構成されている。
【0043】
前側部分8Cは、最先端に位置し支持アーム12が連結される先端半球形状の先端部材8Caと、この先端部材8Caと後側部分7との間に設けられ弾性変形のよる伸縮により車体前後方向長さが変化する変形可能部材8Cbとで構成される。そして、支持アーム12を進退させて先端部材8Caの位置を車体前後方向に移動させることにより、前記変形可能部材8Cbを弾性変形させるようになっている。
【0044】
また、変形可能部材8Cbは、弾性材(例えばゴム)製の外皮部材で、具体的に図示していないが、内側に弾性袋(例えばゴム袋)製の形態保持部材が設けられる二重構造となっている。そして、高速走行時に形態保持部材に圧力空気を高圧空気源11Aaより供給することで、変更可能部材8Ca(外皮部材)を内側からバックアップして、微気圧波の低減に必要な形態(断面積分布)が、高速走行状態において保持されるようになっている。なお、この実施の形態では、高圧空気源11Aaが、第1の実施の形態に記載の機構のほか、車体長さ変更手段11Aの構成要素の1つになる。
【0045】
このようにすれば、高速走行時には、支持アーム12を前進させることにより、先端部材8Caを前方に移動させ、前側部分8Cの車体前後方向長さを長くすることができる。それから、高圧空気源11Aaから前記内側の形態保持部材に圧力空気を供給し、前側部分8Cの形態を保持させる。形態保持部材に圧力空気を供給することで、変更可能部材8Ca(外皮部材)が内側からバックアップされ、微気圧波の低減に有効な、車体前後方向長さが長い先頭部分(前側部分8C)の形態が保持される。
【0046】
上述したほか、本発明に係る高速鉄道車両の車体は、次のように構成することも可能である。
(1)高速走行時に、先頭車両の先頭部分だけでなく、編成の後尾車両の後尾部分も、先頭車両と同様の構造とし、微気圧波の低減効果に最適の形態となるように、後尾部分の車体前後方向長さを変更するように構成することも可能である。(2)前側部分の車体前後方向長さを変更して、高速走行状態あるいは低速走行状態に対応する車体前後方向長さとなるようにしているが、複数の状態(複数の車体前後方向長さ)をとりうるようにして、走行状態等の各種条件に応じて、車体前後方向長さを複数段階にあるいは連続的に変更できるようにすることも可能である。
【0047】
【発明の効果】
この発明は、以上に説明したように実施され、以下に述べるような効果を奏する。
【0048】
本発明は、後側部分に対する前側部分の位置又は前側部分の形態を変更可能に構成し、先頭部分の車体前後方向長さを変更可能としているので、車両基地の引き込み線部等の線路条件が厳しい箇所では、先頭部分の長さを短くして、他部との緩衝を回避する一方、高速走行時には、先頭部分の長さを長くすることで、微気圧波の低減効果を得ることが可能となる。
【0049】
よって、
(1)従来のように、最も曲率の高い線路で先頭形状の長さを設計、決定する必要がなくなる。
(2)先頭部分(微気圧波の低減効果を得る部分)の長さを確保することが一般部分に影響を与えないので、客室長さを短くする必要がなく、乗車定員を多く確保できる。
(3)高速車両を連結して併結する場合には、車体前後方向長さを短くした状態で連結することにより、そのまま連結するよりも、併結部での断面積分布の変化率を緩やかにし、高速走行に適する車体形状になるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態である鉄道先頭車両の先頭部分を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態である鉄道先頭車両の先頭部分を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明に係る第3の実施の形態である鉄道先頭車両の先頭部分を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図4】本発明に係る第4の実施の形態である鉄道先頭車両の先頭部分を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1 鉄道先頭車両の車体
2,2A,2B,2C 先頭部分
3 一般部分
4 運転室
5 客室空間
7 後側部分
8 前側部分
8A,8B,8C 前側部分
8Aa,8Ab,8Ac 部材
8Ca 先端部材
8Cb 変形可能部材
11,11A 車体長さ変更手段
11Aa 高圧空気源
12 支持アーム
21 リンク機構
21c 回転軸
Claims (6)
- 横断面積が変化する先頭部分の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分に連続する高速鉄道車両の車体であって、
先頭部分は、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置する前側部分とにより構成され、
後側部分によって前側部分が車体前後方向に移動可能に支持され、後側部分の内部に、前側部分を格納する格納空間部が形成されていることを特徴とする高速鉄道車両の車体。 - 前側部分が、複数の部材を車両前後方向において相対的に移動可能に連結することにより伸縮可能に構成されている請求項1記載の高速鉄道車両の車体。
- 横断面積が変化する先頭部分の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分に連続する高速鉄道車両の車体であって、
先頭部分は、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置する前側部分とにより構成され、
後側部分に前側部分が回転可能に結合され、
前側部分は、後側部分の前側に位置する第1の状態と、後側部分の上側に位置する第2の状態とを選択的にとり得ることを特徴とする高速鉄道車両の車体。 - 横断面積が変化する運転室を含む先頭部分の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分に連続する高速鉄道車両の車体であって、
先頭部分が、運転室を含む後側部分と、それより前側に位置し弾性変形により車体前後方向長さを変更可能である前側部分とにより構成されていることを特徴とする高速鉄道車両の車体。 - 前側部分は、最先端に位置する先端部材と、この先端部材と後側部分との間に設けられ弾性変形により車体前後方向において伸縮する変形可能部材とで支持され、
後側部分によって先端部材が車体前後方向に移動可能に構成され、先端部材を車体前後方向に移動させることにより、前記変形可能部材を弾性変形させる請求項4記載の高速鉄道車両の車体。 - 横断面積が変化する先頭部分の後尾が、横断面積がほぼ一様である一般部分に連続する高速鉄道車両の車体であって、
先頭部分が、運転室を含む後側部分と、先端を構成する前側部分とにより構成され、
後側部分に対する前側部分の位置又は前側部分の形態が、高速走行時と低速走行時とで変更可能に構成されていることを特徴とする高速鉄道車両の車体。
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