JP2004160932A - 水圧転写用フィルム及び硬化樹脂層を有する水圧転写体 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層を成形品に転写できる水圧転写用フィルム及び優れた耐擦傷性の硬化樹脂層を有する水圧転写体を提供する。
【解決手段】水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とから成り、前記転写層が活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含むことを特徴とする水圧転写用フィルム及びシリコーン変性アクリレートを含む硬化性樹脂の硬化物からなる硬化樹脂層を有する水圧転写体。
【選択図】 なし
【解決手段】水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とから成り、前記転写層が活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含むことを特徴とする水圧転写用フィルム及びシリコーン変性アクリレートを含む硬化性樹脂の硬化物からなる硬化樹脂層を有する水圧転写体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種成形品などの被転写体の表面に硬化性樹脂層を水圧転写できる水圧転写用フィルムおよび該水圧転写用フィルムを用いて製造される硬化樹脂層を有する水圧転写体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水圧転写法は意匠性に富む装飾層を複雑な三次元形状の成形品に付与できる方法であるが、水圧転写後にさらに水圧転写した装飾層に硬化性樹脂を保護層としてスプレー塗装する必要がある。このため、水圧転写法による成形品の製造は、製造工程が煩雑であると共に水圧転写設備の他に塗装設備も必要であることからコスト高であり、水圧転写法で製造される水圧転写品は高級品に限られていた。
【0003】
この煩雑さとコスト高を解消するために、水圧転写法によって硬化性樹脂層を被転写体に転写する試みがなされている。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂層を有する水圧転写用フィルムを用いて、該硬化性樹脂層を被転写体に水圧転写した後に硬化させる技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このような従来の水圧転写用フィルムは、充分な耐擦傷性を有する硬化樹脂層を形成できないために、家電製品など高度な耐擦傷性の要求される製品に応用出来ない問題があった。
【特許文献1】
特開昭64−22378号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、活性エネルギー線硬化性樹脂層を被転写体に水圧転写することができ、その硬化性樹脂層が水圧転写後に活性エネルギー線の照射により硬化して優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層を形成し得る水圧転写用フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の水圧転写用フィルムを用いて、優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層で表面被覆された被転写体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水圧転写用フィルムに設ける硬化性樹脂層の構成材料の全部又は一部としてシリコーン変性アクリレートを使用することにより、優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層で表面被覆された被転写体を製造できるとの知見を見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とから成り、前記転写層が活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含むことを特徴とする水圧転写用フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記水圧転写用フィルムを用いて、被転写体の表面に前記硬化性樹脂層を水圧転写した後、転写された前記硬化性樹脂層を活性エネルギー線の照射により硬化させて硬化樹脂層としたことを特徴とする水圧転写体を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
[水圧転写用フィルムの支持体フィルム]
本発明の水圧転写用フィルムに用いる水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムは、水で溶解もしくは膨潤可能な樹脂からなるフィルムである。
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルム(以下、支持体フィルムと略す)としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のフィルムが使用できる。なかでも一般に水圧転写用フィルムとして用いられているPVAフィルムが水に溶解し易く、入手が容易で、硬化性樹脂層の印刷にも適しており、特に好ましい。また、用いる支持体フィルムの厚みは10〜200μm程度が好ましい。
【0009】
[水圧転写用フィルムの転写層]
水圧転写用フィルムの転写層は透明で活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層(以下、硬化性樹脂層と略す)を有する。転写層は該硬化性樹脂層と共に該硬化性樹脂層上に設けた印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る装飾層(以下、装飾層と略す)を有していても良い。
【0010】
得られる水圧転写体の装飾層の意匠性を良く発現できることから、硬化性樹脂層は透明であることが好ましい。但し、水圧転写体の要求特性によるが、基本的に得られる水圧転写体の装飾層の色や柄が透けて見えれば良く、硬化性樹脂層は完全に透明であることを要せず、透明から半透明なものまでを含む。
ここでいう活性エネルギー線とは紫外線と電子線であり、特に紫外線硬化性樹脂が好適である。紫外線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0011】
[転写層の硬化性樹脂層]
本発明の水圧転写用フィルムの転写層を構成する硬化性樹脂層は、必須成分としてシリコーン変性アクリレートを含む。水圧転写後に硬化させた硬化樹脂層が優れた耐擦傷性を有するためには、硬化性樹脂層に用いるシリコーン変性アクリレートは、1分子中に3以上12以下の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレートが好ましく、5以上10以下の(メタ)アクリロイル基を含有するシリコーン変性アクリレートがより好ましい。シリコーン変性アクリレートの数平均分子量は、水圧転写体の硬化樹脂層が優れた耐擦傷性を有するためには、200〜10,000であることが好ましく、より好ましくは300〜7,000である。また、シリコーン変性アクリレートの(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量は70〜1,000であることが好ましく、70〜800であることがより好ましい。
【0012】
シリコーン変性アクリレートとしては、シリコーン変性エステルアクリレートまたはシリコーン変性ウレタンアクリレートが好ましく用いられる。
シリコーン変性エステルアクリレートとは、カルボキシ基含有化合物とポリシロキサン骨格を有する多価アルコールとを脱水縮合させるか、ポリシロキサン骨格を有するカルボキシ基含有化合物と多価アルコールとを脱水縮合させて得られる1分子中に2以上の水酸基を有するシリコーン変性オリゴエステルに(メタ)アクリル酸をエステル結合させて得られるアクリレートであり、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3〜12、好ましくは5〜10有するものが好ましく、数平均分子量200以上10,000以下のものが好ましい。また、粘度調整などの目的で、カルボキシ基含有化合物とポリシロキサン骨格を有する多価アルコールとを脱水縮合させる場合に、慣用の多価アルコールを少量共存させても良い。
また、同じ目的でポリシロキサン骨格を有するカルボキシ基含有化合物と多価アルコールとを脱水縮合させる場合に慣用のカルボキシ基含有化合物を少量共存させても良い。
【0013】
カルボキシ基含有化合物としては、公知慣用の各種のカルボン酸、またはそれらの酸無水物、及びそれらカルボン酸化合物と低級アルキルアルコールのエステル化物が使用できる。これらの化合物の代表的な具体例として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、アジピン酸、こはく酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、ピロメリット酸、またはこれらの酸無水物、またはエステル化合物、更にγ−ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−アルキルカプロラクトンなどの環状エステルラクトン類などが挙げられる。
【0014】
ポリシロキサン骨格を有するカルボキシ基含有化合物としては、ポリシロキサン鎖の末端あるいは側鎖に−R−COOH基(−R−はアルキレン基、−COOHはカルボキシ基を表す)を有するカルボキシ変性ポリシロキサン(以下、カルボキシ基含有ポリシロキサンと称する)を有する化合物が挙げられ、信越化学工業株式会社製の商品名X−22−162CやX−22−3701Eなどを使用することができる。
【0015】
シリコーン変性エステルアクリレートの製造に用いる多価アルコールとしては、慣用の多価アルコールが使用でき、そのうちの代表的な例を挙げれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメチロール、水添ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノ−ルAなどが挙げられる。なかでもジペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0016】
ポリシロキサン骨格を有する多価アルコールとしては、ポリシロキサン鎖の末端に−ROH基(−Rはアルキレン基、OHは水酸基を表す)を有するカルビノール変性ポリジアルキルシロキサンや、ポリシロキサン鎖の末端に−C(R1OH)2R2(R1はアルキレン基、R2はアルキル基、OHは水酸基を表す)を有する変性ポリジアルキルシロキサンなどの末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサン(以下、ヒドロキシ基含有ポリジアルキルシロキサンと称する)があり、信越化学工業株式会社製の商品名KF−6001やX−22−176DXなどを使用することができる。
【0017】
シリコーン変性ウレタンアクリレートは、(a)ポリイソシアネート、(b)ポリシロキサン骨格を有する多価アルコール、及び(c)水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて得られるものである。その反応に際しては、上記(b)と(c)の合計の水酸基(OH)と、(a)のイソシアネート基(NCO)との当量比(OH/NCO)が0.9/1〜1/0.9、好ましくは1/1となるように反応させればよい。
【0018】
上記の反応では、例えば、ジブチル錫ラウレートやジブチル錫アセテート等の触媒を使用してもよく、通常行われるウレタン化反応の条件で製造することができる。また、必要に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の溶媒を用いても差し支えない。
【0019】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層に用いる硬化性樹脂は、前述のシリコーン変性アクリレートのみであっても良いが、一般に塗料用樹脂として使用される(メタ)アクリレートと共に硬化性樹脂組成物として用いられる。これらの(メタ)アクリレートは、一般に塗料用樹脂として使用されるものであれば問題なく使用することができ、具体例を挙げれば、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレートおよびエポキシ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0020】
また得られる硬化樹脂層の光沢をより高めるためには、硬化性樹脂組成物にジアリル化合物を含むことが好ましい。このジアリル化合物としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジアリル酢酸、マレイン酸ジアリル、ジアリルカルビノール、ジアリルエーテル、ジアリルクロロシラン等が挙げられるが、安定性や手しやすさから、アクリル酸アリルやメタクリル酸アリルが好ましい。
【0021】
また、シリコーン変性アクリレートは粘度が高いものが多いので、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するアクリレートを併用して樹脂組成物の粘度を下げることもできる。この用途に用いられるアクリレートとしては、2−ヒドロキシアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートなどの単官能アクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコール−EO付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、テトラメチロールメタントテトラアクリレートなどのアクリレートが挙げられる。
【0022】
水圧転写体の硬化樹脂層の耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性を十分なものとするためには、水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層中に含まれる硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレートの含有量は10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜90質量%である。
【0023】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層は、硬化性樹脂としてシリコーン変性アクリレートを含むものであるが、ウレタンアクリレートを併せて含有させることにより、得られる水圧転写体の硬化樹脂層に優れた耐擦傷性に加えて可撓性を付与することができる。
【0024】
硬化樹脂層が優れた可撓性を発現するためには、用いるウレタンアクリレートは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜6有し、数平均分子量が2,000〜30,000、好ましくは5,000〜20,000であり、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が500〜15,000、好ましくは600〜10,000のものである。ウレタンアクリレートは、数平均分子量が2,000未満であると十分な可撓性が得にくく、また数平均分子量が30,000を越えると粘度が高くなり、取扱いが困難となる。
【0025】
ウレタンアクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート、多価アルコール及びポリイソシアネートとのウレタン化反応によって作られる。
水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸またはメタクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;
ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和モノマーとのモノエーテル;
無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物とエチレングリコール等のグリコール類とのモノエステル化物またはジエステル化合物;
ヒドロキシエチルビニルエーテルの如きヒドロキシアルキルビニルエーテル類;α,β−不飽和カルボン酸とα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;
アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸のような一塩基酸との付加物;
上記の水酸基含有モノマーとラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等)との付加物等が挙げられ、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが特に好ましい。
【0026】
ウレタンアクリレートの製造に用いられる多価アルコールとしては、塗料用樹脂に用いられるポリオールであれば特に制限なく用いることができる。これらは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレンなどが挙げられるが、これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0027】
ポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネート基を2つ(2価)以上有する化合物であればよく、ジイソシアネートや1分子中にイソシアネート基を3つ(3価)以上有する化合物を用いることができる。
ジイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;
水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類;
トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0028】
3価以上のポリイソシアネートの具体例としては、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサンなどの脂肪族トリイソシアネート;
1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトナフタレンなどの芳香族トリイソシアネート;
ジイソシアネート類を環化三量化せしめて得られる、いわゆるイソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネート類が挙げられる。
【0029】
さらに3価以上のポリイソシアネートの具体例は、2価以上のポリイソシアネートの2量体もしくは3量体;
これらの2価または3価以上のポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等とをイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られる付加物;
ポリイソシアネート類と水とを反応せしめて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0030】
また、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートもしくは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如きイソシアネート基を有するビニルモノマーの単独重合体、またはこれらのイソシアネート基含有ビニルモノマーをこれらと共重合可能な(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニルモノマー類などと共重合せしめて得られる、イソシアネート基含有ビニル系共重合体と前記水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートも用いることができる。
【0031】
ウレタンアクリレートを製造する際に用いる多価アルコール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの配合比に特に制限はないが、多価アルコールおよび水酸基含有(メタ)アクリレート中の水酸基1当量当たりポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5〜2.0当量の範囲が好ましい。
【0032】
硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含み、得られる硬化樹脂層が優れた耐擦傷性と可撓性を発現するためには、硬化性樹脂層に含まれるシリコーン変性アクリレート(A)とウレタンアクリレート(B)の質量比(A)/(B)は、0.18〜0.6の範囲内にあることが好ましい。(A)/(B)の質量比が0.18未満では硬化性樹脂層の可撓性は十分なものの、耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性が不足しがちになるし、逆に(A)/(B)の質量比が0.6を超えると、硬化性樹脂層の耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性は十分なものの可撓性が不足する傾向にあり、(A)/(B)の質量比が0.18〜0.6の範囲のときに、耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性と可撓性とのバランスが特に優れたものとなる。
【0033】
硬化性樹脂層には、必要に応じて慣用の光重合開始剤や光増感剤が含まれて良い。光重合開始剤の代表的なものとしては、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンの如きアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントンの如きチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。
【0034】
光重合開始剤の使用量は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に対して、通常、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルの如きアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
【0035】
また、硬化性樹脂層には、非重合性の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。非重合性の熱可塑性樹脂を活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることは硬化性樹脂層の粘着性低減とガラス転移温度(Tg)の向上に極めて効果的である。但し、硬化性樹脂層に含ませる熱可塑性樹脂の量が多いと硬化性樹脂の硬化反応を阻害するので、硬化性樹脂層の全樹脂量100質量部に対して熱可塑性樹脂は70質量部を超えない範囲で添加することが好ましい。
【0036】
非重合性の熱可塑性樹脂は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に相溶できるものであり、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなどが挙げられる。なかでも、透明性、耐溶剤性および耐擦傷性に優れるポリメチルメタクリレートを主成分としたポリ(メタ)アクリレートが好ましく、質量平均分子量3万〜30万のポリメチルメタクリレートが特に好ましく用いられる。
【0037】
[転写層の装飾層]
転写層として前記硬化性樹脂層の上に形成されてもよい装飾層は、印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る。装飾層の形成に用いる印刷インキまたは塗料は、剥離性フィルムに印刷または塗工が可能な印刷インキまたは塗料であり、有機溶剤によって活性化されることにより、被転写体に転写層を転写する際に十分な可撓性が得られることが好ましく、特にグラビア印刷インキが好ましい。また絵柄のない着色層を塗工によって形成することもできる。
【0038】
印刷インキまたは塗料に用いるワニス用樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0039】
装飾層中の着色剤は、顔料が好ましく、無機系顔料、有機系顔料のいずれも使用が可能である。また、金属切削粒子のペーストや蒸着金属膜から得られる金属細片を顔料として含んだ金属光沢インキの使用も可能である。これらの金属としては、アルミニウム、金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロームおよびステンレス等が好ましく用いられる。これらの金属細片は、分散性、酸化防止やインキ層の強度向上のためにエポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース誘導体で表面処理されていても良い。
【0040】
装飾層の形成方法は、グラビア印刷の他にオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などを用いることができる。装飾層の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、更に好ましくは1〜7μmである。
【0041】
なお、意匠性、展延性を阻害しない限り、硬化性樹脂層及び装飾層中に慣用の消泡剤、沈降防止剤、顔料分散剤、流動性改質剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などの慣用の各種添加剤を加えても構わない。
【0042】
[水圧転写用フィルムの層構造とその作成方法]
支持体フィルム上に設けられる転写層の乾燥膜厚は、硬化性樹脂層の乾燥膜厚が、保護層として十分な表面特性を示し、かつ硬化性樹脂の乾燥性や水圧転写時の活性化が良好であるためには、3〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは、5〜70μmである。また、印刷インキ被膜または塗膜からなる装飾層の乾燥膜厚は、良好な装飾性と水圧転写時の活性化が可能であるためには、0.5〜15μmであることが好ましく、より好ましくは1〜7μmである。
【0043】
水圧転写用フィルムの装飾層および硬化性樹脂層の塗工方法は、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーターおよびコンマコーターを用いることが出来る。装飾層には、なかでもグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷等が好ましい。
【0044】
支持体フィルム上に設けられた硬化性樹脂層の上に装飾層を塗工する場合には硬化性樹脂層が粘着性のないタックフリー状態となっている必要があるが、硬化性樹脂層の樹脂組成によっては通常の乾燥工程のみではタックフリー状態が得られない場合がある。その場合には、硬化性樹脂層に該硬化性樹脂層の完全硬化に必要な活性エネルギー線の照射量より低い活性エネルギー線量を照射して、硬化性樹脂層を予備硬化もしくは半硬化させることにより、タックフリー状態とすることが好ましい。
【0045】
また、硬化性樹脂層から装飾層へ樹脂成分のブリードアウトがある場合には、装飾層の乾燥が十分でないので、硬化性樹脂層と装飾層からなる転写層の上に前記転写層との界面で剥離可能な剥離性フィルムを設けてもよい。剥離性フィルムとして、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの素材からなるフィルムを用いることができ、その厚みは20μm〜250μmであるものが好ましい。
【0046】
本発明の水圧転写用フィルムは、ロールとして巻き取って、遮光紙で覆い、倉庫等の暗所に保管すれば硬化反応が不用意に進行することはなく、かつ有機溶媒により硬化性樹脂層または硬化性樹脂層と装飾層とが活性化されて水圧転写可能なものであり、積極的に紫外線や太陽光に曝さない限り十分な貯蔵安定性と流通性とを有するものである。
【0047】
[水圧転写体の製造方法]
次に、本発明の水圧転写用フィルムを用いて製造される硬化樹脂層を有する水圧転写体について説明する。
本発明の水圧転写用フィルムは、従来の水圧転写用フィルムの水圧転写方法と同様な方法での使用が可能であり、概略は以下に示す通りである。
【0048】
(1)本発明の水圧転写用フィルムを水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムを下にし、転写層を上にして水槽中の水に浮かべ、前記支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
(2)水圧転写用フィルムの転写層に有機溶媒を塗布または噴霧することにより、硬化性樹脂層または装飾層と硬化性樹脂層とから成る転写層を活性化させる。
なお、転写層の有機溶媒による活性化は水圧転写用フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
(3)前記水圧転写用フィルムの装飾層面または硬化性樹脂層面に被転写体を押しつけながら、前記被転写体と前記水圧転写用フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を前記被転写体に密着させて被転写体へ転写する。
(4)水から出した水圧転写体を乾燥させ、乾燥した水圧転写体の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射により硬化させ硬化樹脂層を有する水圧転写体を得る。
【0049】
水圧転写における水槽の水は、転写層を転写する際に水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層もしくは硬化性樹脂層と装飾層とを被転写体の三次元曲面に密着させる水圧媒体として働く他、支持体フィルムを膨潤または溶解させるものであり、具体的には、水道水、蒸留水、イオン交換水などの水で良い。
【0050】
硬化性樹脂層または硬化性樹脂層と装飾層とから成る転写層は、水圧転写される前に散布される有機溶剤で活性化され、十分に可溶化もしくは柔軟化されることが必要である。ここで言う活性化とは、転写層に有機溶剤を塗布または散布することにより、転写層を構成する樹脂を完全には溶解せずに可溶化させ、水圧転写に際して親水性の支持体フィルムから疎水性の転写層の剥離を容易にすると共に、転写層に可撓性を付与することにより転写層の被転写体の三次元曲面への追従性と密着性を向上させることを意味する。この活性化は、転写層を水圧転写用フィルムから被転写体へ転写する際に、これらの転写層が柔軟化され、被転写体の三次元曲面へ十分に追従できる程度に行われれば良い。
【0051】
転写層の活性化に用いる有機溶剤は、水圧転写工程が終了するまで蒸発しないことが重要である。本発明の硬化性樹脂層を有する水圧転写用フィルムの活性化に用いる有機溶剤は、従来の水圧転写法に用いるものと同様なものを用いることができる。
【0052】
被転写体に転写層を転写後、水圧転写体上に残った支持体フィルムは、水で溶解させるか、洗浄により剥離する。洗浄、溶解方法は、従来の水圧転写方法と同様に、水流、好ましくはウォータージェットで支持体フィルムを溶解、剥離させる。
【0053】
被転写体は、その表面に硬化性樹脂層や装飾層が十分密着することが好ましく必要に応じて被転写体表面にプライマー層を設ける。プライマー層を形成する樹脂は、プライマー層として慣用の樹脂を特に制限なく用いることができ、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。また、転写密着性の良好なABS樹脂やSBSゴムなどからなる被転写体にはプライマー処理は不要である。被転写体の材質は、必要に応じて防水加工を施すことにより水中に沈めても形状が崩れない防水性があれば、金属、プラスチック、木材、パルプモールド、ガラス等のいずれであっても良く特に限定されない。
【0054】
本発明の硬化樹脂層を有する水圧転写体は、水圧転写により転写され活性エネルギー線照射により硬化された硬化樹脂層を有する水圧転写体であって、前記硬化樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含む硬化性樹脂の硬化物からなる水圧転写体であり、優れた被転写体への転写層の密着性と装飾層の模様再現性を有し、かつH以上の鉛筆硬度、優れた耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性のある硬化樹脂層を有する。さらに、硬化樹脂層がシリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含む場合は、得られる水圧転写体は、上記の優れた特性に加えて硬化樹脂層が優れた可撓性も有し、クラックが発生しにくい利点を有する。
【0055】
本発明が適用できる水圧転写体の具体例としては、テレビ、ビデオ、エアコン、ラジオカセット、携帯電話、冷蔵庫等の家庭電化製品;パーソナルコンピューター、ファックスやプリンター等のOA機器;ファンヒーターやカメラなどの家庭製品のハウジング部分;テーブル、タンス、柱などの家具部材;バスタブ、システムキッチン、扉、窓枠などの建築部材;電卓、電子手帳などの雑貨;自動車内装パネル、自動車やオートバイの外板、ホイールキャップ、スキーキャリヤ、自動車用キャリアバッグなどの車内外装品;ゴルフクラブ、スキー板、スノーボード、ヘルメット、ゴーグルなどのスポーツ用品;広告用立体像、看板、モニュメントなどが挙げられ、曲面を有しかつ意匠性を必要とする水圧転写体に特に有用に用いられ、極めて広い分野で使用可能である。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0057】
(合成例1)シリコーン変性アクリレート(a−1)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、ジペンタエリスリトール234部、信越化学工業株式会社製KF−6001(ヒドロキシ基含有ポリジアルキルシロキサン)を30部、ε−カプロラクトン912部を仕込み、170℃にて開環反応を行った。次にアクリル酸432部を仕込んで、140℃で4時間反応を行い、6個のアクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレート(a−1)を得た。酸価は0.2で数平均分子量は約1,800であった。
【0058】
(合成例2)シリコーン変性アクリレート(a−2)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、ペンタエリスリトール282部と、信越化学工業株式会社製X−22−162C(カルボキシ基含有ポリシロキサン)30部、無水コハク酸100部を仕込み、170℃で5時間脱水縮合を行った後、イプシロンカプロラクトン684部を仕込み、170℃にて開環反応を5時間行った。次にアクリル酸432部を仕込んで、140℃で4時間反応を行い、6個のアクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレート(a−2)を得た。酸価は0.2で数平均分子量は約1,900であった。
【0059】
(合成例3)ウレタンアクリレート(b−1の中間体b−1M)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート222部を仕込み、65℃まで昇温した。次にヒドロキシエチルアクリレ−ト116部を2時間かけて滴下反応させた。滴下終了後、75℃まで昇温させて、5時間反応させ、中間体(b−1M)を得た。このときの残存NCO%は、12.4%であった。
【0060】
(合成例4)ウレタンアクリレート(b−1)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル5019部、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量500、水酸基価224.4 KOH−mg/g)3037.5部と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール666.7部を仕込んで、均一に溶解した。これを65℃まで昇温してから、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート2810部を仕込み、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は、0.05%であった。次に、合成例3で得たb−1Mを1014部仕込んで70℃で8時間反応を行った。IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約7200、不揮発分60%の2官能のウレタンアクリレート(b−1)の溶液を得た。
【0061】
(合成例5)ウレタンアクリレート(b−2)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル4800部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート2882部を仕込み、65℃まで昇温した。次にポリ1,6ヘキサンカ−ボネ−トジオール(数平均分子量600、水酸基価187KOH−mg/g)3600部と、1,6−ヘキサンジオール472部を仕込んで、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は0.72%であった。次にヒドロキシエチルアクリレート235gを仕込み、更に同温度にて3時間反応を行い、IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約7200、不揮発分61%の2官能のウレタンアクリレート(b−2)の溶液を得た。
【0062】
(合成例6)ウレタンアクリレート(b−3)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル5500部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート3144部を仕込み、65℃まで昇温した。次に3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量1000、水酸基価112.2KOH−mg/g)4000部と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール826部を仕込んで、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は、0.63%であった。次にヒドロキシブチルアクリレート260部を仕込み、更に同温度にて3時間反応を行い、IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約8300、不揮発分60%の2官能のウレタンアクリレート(b−3)の溶液を得た。
【0063】
(合成例7)ウレタンアクリレート(c−1)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート222部を仕込み、65℃まで昇温した。次にヒドロキシエチルアクリレート232部を、2時間で滴下し、更に同温度にて3時間反応を行った。IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、2官能のウレタンアクリレート(c−1)を得た。
【0064】
(合成例8)ウレタンアクリレート(c−2)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル962部とイソホロンジイソシアネート444部を仕込み、65℃まで昇温した。次に、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量1000、水酸基価112.2KOH−mg/g)1000部を仕込んで、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は3.50%であった。次にヒドロキシエチルアクリレート232部を仕込み、更に同温度にて3時間反応を行い、IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約1700、不揮発分60%の2官能のウレタンアクリレート(c−2)の溶液を得た。
【0065】
(合成例9)ウレタンアクリレート(c−3)
ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びスチレンをモル比20:30:15:15:20で共重合させたアクリルポリオール(a)(質量平均分子量25,000)81部に対して、アクリルポリオールの水酸基価に対して1.1倍当量のイソシアネート価のヘキサメチレンジイソシアネートフェノール付加物とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のフェノール付加物との混合物19部をトルエンと酢酸エチル(1/1)の混合溶媒に溶解して、不揮発分35%のウレタンアクリレート(c−3)の溶液を得た。
【0066】
<水圧転写後の成形品の試験方法>
実施例及び比較例で得た水圧転写したサンプルを以下の試験で評価した。
【0067】
(模様再現性)
3次元立体成形物での模様再現性について、模様再現面積率により以下のように目視評価した。
○:模様再現面積率95%以上 (模様再現性良好)
△:模様再現面積率80%〜95%未満(模様再現性やや不良)
×:模様再現面積率80%未満(模様再現性不良)
【0068】
(密着性)
下記のプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、碁盤目テープ法(JIS K5400) に準じてインキ密着性を評価(10点満点)した。
【0069】
<プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板>
大日本インキ化学工業株式会社製ベッコライト57−206−40(末端に水酸基を有する直鎖状ポリエステル樹脂、数平均分子量10000)を固形分換算で45部、チタン白50部、シクロヘキサノン/イソホローン/キシロール=30/50/20の混合溶剤20部を混合し、ビーズミル練肉し、練肉終了後、硬化剤としてキシレンジイソシアネート(XDI)を5部、ジブチル錫ジラウレート(TK−1)を0.5部加えて得られた上塗り塗料をクロメート処理溶融亜鉛メッキ鋼板(メッキ付着量60g/m2)に乾燥膜厚として40μmになるようバーコ一夕一にて塗布し、最高到達板温235℃にて焼き付け、プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板を得た。
【0070】
(鉛筆硬度)
JIS−K5401「塗膜用鉛筆引き掻き試験機」を用いて塗膜硬度を測定した。芯の長さは3mm塗膜綿との角度45度、荷重1kg、引き掻き速度0.5mm/分、引き掻き長さ3mm、使用鉛筆は三菱ユニとした。
【0071】
(表面光沢)
60度鏡面光沢度(JIS K5400)を測定した。
【0072】
(耐擦傷性)
密着性試験で用いたプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、ラビング試験機(荷重800g)により、乾拭き100回後の表面光沢保持率を評価した。
【0073】
(耐洗剤性)
密着性試験で用いたプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、住居用洗剤原液(花王株式会社、商品名マジックリン)を含ませた脱脂綿を用いてラビング試験(荷重800g、往復100回)を実施し、試験後の表面光沢保持率を測定した。
【0074】
(熱水処理後の密着性)
水圧転写したサンプルを熱水(水温98℃)中で30分間加熱処理し、次いで塗膜にカッターで1×1mmの碁盤目を100個つくり、その部分に粘着テープを貼った後、この粘着テープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を目視により観察して、次に示す3段階にて評価した。
【0075】
○:剥離が全く認められなかった。
△:全体の1〜30%が剥離した。
×:全体の31〜100%が剥離した。
【0076】
(熱水処理後の光沢保持率)
水圧転写したサンプルを熱水(水温98℃)中で30分間の熱処理し、次いで光沢計で60度グロスを測定して熱水処理前後での光沢保持率を算出した。
【0077】
(可撓性)
水圧転写したサンプルの一端を固定し、他端に1kgの荷重を2分間かけて、サンプルを撓ませ、撓みを解除した直後にクラックの発生有無を評価した。
○:クラックが生じない。
△:倍率10倍のルーペにて確認できるクラックが生じた。
×:目で確認できるクラックが生じた。
【0078】
(実施例1)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムを用い、その表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C1をコンマコーターにより40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に下記の処方の印刷インキG1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF1を作成した。
【0079】
<硬化性樹脂組成物C1の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):80部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
【0080】
<印刷インキG1組成、黒、黄、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(黒、黄、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0081】
得られた水圧転写用フィルムAを30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からABS製成形物(自動車内装パネル)を押し当て、予備硬化させた硬化性樹脂層を転写した。転写後、成形物を水洗し、90℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、11m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂層を完全硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0082】
(実施例2)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C2をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して、予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に実施例1と下記の処方の印刷インキG2をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF2を作成した。
【0083】
<硬化性樹脂組成物C2の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):20部、ウレタンアクリレート(b−1):70部、イルガキュア184:1部、および酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部。
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=20÷(70×0.60)=0.48
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=20÷[20+(70×0.60)]×100=32%
【0084】
<印刷インキG2組成、黒、茶、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(黒、茶、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0085】
得られた水圧転写用フィルムF2を30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からABS製成形物(自動車内装パネル)を押し当て、予備硬化させた硬化性樹脂層を転写した。転写後、成形物を水洗し、90℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、11m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂層を完全硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0086】
(実施例3)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に、下記組成の硬化性樹脂組成物C3をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に下記の処方の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF3を作成した。
【0087】
<硬化性樹脂組成物C3の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):20部、ウレタンアクリレート(b−2):82部、1,6−ヘキサンジアクリレート:5部、イルガキュア184:1部、および酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):14部。
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=20/(82×0.61)=0.4
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=20/[20+(82×0.61)+5]×100=27%
【0088】
<印刷インキG3の組成(赤、青)>
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部、顔料(赤、青):10部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60部、ワックス等添加剤:10部
【0089】
得られた水圧転写用フィルムF3を実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0090】
(実施例4)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C4をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例1で用いた印刷インキG1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF4を作成した。
【0091】
<硬化性樹脂組成物C4の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):31部、ウレタンアクリレート(b−3):98部、メタクリル酸アリル:3部、イルガキュア184:0.5部、イルガキュア907:0.5部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部、
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=31/(98×0.60)=0.53
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=31/[31+(98×0.60)+3]×100=33%
【0092】
実施例1における水圧転写用フィルムF1をPPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF4に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0093】
(実施例5)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C5をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に下記の処方の印刷インキG5をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF5を作成した。
【0094】
<硬化性樹脂組成物C5の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):18部、ウレタンアクリレート(b−3):98部、メタクリル酸アリル:3部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=18/(98×0.60)=0.31
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=18/[18+(98×0.60)+3]×100=23%
【0095】
<印刷インキG5の組成(赤、青)>
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部、顔料(赤、青):10部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60部、およびワックス等添加剤:10部
【0096】
得られた剥離紙付き水圧転写用フィルムF5からPPフィルムを剥離した後、30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、実施例1と同じ活性剤35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からプライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物(石油ファンヒーターハウジング)を押し当て、転写層を該亜鉛メッキ鋼板製成形物に転写した。転写後、成形物を水洗し、110℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、11m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂層を完全硬化させ、光沢のある柄付き硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0097】
(実施例6)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C6をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF6を作成した。
【0098】
<硬化性樹脂組成物C6の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):11部、ウレタンアクリレート(b−2):98部、メタクリル酸アリル:3部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
(A)/(B)の比=11/(98×0.61)=0.18
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=11/[11+(98×0.61)+3]×100=15%
【0099】
(実施例7)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C7をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF7を作成した。
【0100】
<硬化性樹脂組成物C7の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):18部、東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート M−7100:98部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=18/(18+98)×100=16%
【0101】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を、PPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF7に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0102】
(実施例8)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C7をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF8を作成した。
【0103】
<硬化性樹脂組成物C8の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):88部、東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート M−7100:18部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=88/(88+18)×100=83%
【0104】
実施例1における水圧転写用フィルムF1をPPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF8に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0105】
(比較例1)
実施例1における硬化性樹脂組成物C1を下記の硬化性樹脂組成物C9に変更した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に実施例1と同様に印刷インキG1を印刷し、水圧転写用フィルムF9を作成した。
【0106】
<硬化性樹脂組成物C9の組成>
ウレタンアクリレート(c−2):80部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
【0107】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を水圧転写用フィルムF9に変えた以外は実施例1と同様に処理して成形品を得た。
【0108】
(比較例2)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C10をコンマコーターにより塗工し、29g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に実施例1で用いた印刷インキC1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF10を作成した。
【0109】
<硬化性樹脂組成物C10の組成>
ウレタンアクリレート(c−3):80部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
【0110】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を予備硬化させた水圧転写用フィルムF10に、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、プライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させて、成形品を得た。
【0111】
(比較例3)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C11をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF11を作成した。
【0112】
<硬化性樹脂組成物C11の組成>
東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート M−7100:40部、イルガキュア184:1部、および酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):59部。
【0113】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を、PPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF11に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
ウレタンアクリレートのみからなる硬化性樹脂層を有する水圧転写用フィルムを用いて作成した比較例1と2の水圧転写体は可撓性は優れるものの、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性などの表面特性に劣る。また、ポリエステルアクリレートからなる硬化性樹脂層を有する比較例3も耐擦傷性や耐洗剤性などの表面特性が十分でなかった。
【0118】
これに対して、実施例1〜8に示すように、シリコーン変性アクリレートを含む硬化性樹脂層を有する本発明の水圧転写用フィルムを用いて製造した水圧転写体の硬化樹脂層は優れた模様再現性や密着性に加え、2H以上の鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性を有する。また、中でも硬化性樹脂層にシリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含む実施例2〜6の水圧転写体の硬化樹脂層は、前記の2H以上の鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性に加えて優れた可撓性を有する。
【0119】
【発明の効果】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層はシリコーン変性アクリレートを含むため、その硬化性樹脂層は、被転写体に水圧転写された後に活性エネルギー線の照射により硬化して優れた硬度、耐擦傷性および耐洗剤性を有する硬化樹脂層を形成できる。
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層は、シリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含むため、優れた硬度、耐擦傷性および耐洗剤性に加えて優れた可撓性を有する硬化樹脂層を形成できる。
本発明の水圧転写体は、上記の水圧転写用フィルムを用いて製造されるものであるため、被転写体の表面に優れた硬度、耐擦傷性、耐洗剤性及び可撓性を有する硬化樹脂層を有する。従って、本発明の水圧転写体は家電製品など硬度、耐擦傷性、耐洗剤性等の諸性質が要求される製品の材料として利用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は各種成形品などの被転写体の表面に硬化性樹脂層を水圧転写できる水圧転写用フィルムおよび該水圧転写用フィルムを用いて製造される硬化樹脂層を有する水圧転写体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水圧転写法は意匠性に富む装飾層を複雑な三次元形状の成形品に付与できる方法であるが、水圧転写後にさらに水圧転写した装飾層に硬化性樹脂を保護層としてスプレー塗装する必要がある。このため、水圧転写法による成形品の製造は、製造工程が煩雑であると共に水圧転写設備の他に塗装設備も必要であることからコスト高であり、水圧転写法で製造される水圧転写品は高級品に限られていた。
【0003】
この煩雑さとコスト高を解消するために、水圧転写法によって硬化性樹脂層を被転写体に転写する試みがなされている。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂層を有する水圧転写用フィルムを用いて、該硬化性樹脂層を被転写体に水圧転写した後に硬化させる技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このような従来の水圧転写用フィルムは、充分な耐擦傷性を有する硬化樹脂層を形成できないために、家電製品など高度な耐擦傷性の要求される製品に応用出来ない問題があった。
【特許文献1】
特開昭64−22378号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、活性エネルギー線硬化性樹脂層を被転写体に水圧転写することができ、その硬化性樹脂層が水圧転写後に活性エネルギー線の照射により硬化して優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層を形成し得る水圧転写用フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の水圧転写用フィルムを用いて、優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層で表面被覆された被転写体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水圧転写用フィルムに設ける硬化性樹脂層の構成材料の全部又は一部としてシリコーン変性アクリレートを使用することにより、優れた耐擦傷性を有する硬化樹脂層で表面被覆された被転写体を製造できるとの知見を見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とから成り、前記転写層が活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含むことを特徴とする水圧転写用フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記水圧転写用フィルムを用いて、被転写体の表面に前記硬化性樹脂層を水圧転写した後、転写された前記硬化性樹脂層を活性エネルギー線の照射により硬化させて硬化樹脂層としたことを特徴とする水圧転写体を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
[水圧転写用フィルムの支持体フィルム]
本発明の水圧転写用フィルムに用いる水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムは、水で溶解もしくは膨潤可能な樹脂からなるフィルムである。
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルム(以下、支持体フィルムと略す)としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のフィルムが使用できる。なかでも一般に水圧転写用フィルムとして用いられているPVAフィルムが水に溶解し易く、入手が容易で、硬化性樹脂層の印刷にも適しており、特に好ましい。また、用いる支持体フィルムの厚みは10〜200μm程度が好ましい。
【0009】
[水圧転写用フィルムの転写層]
水圧転写用フィルムの転写層は透明で活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層(以下、硬化性樹脂層と略す)を有する。転写層は該硬化性樹脂層と共に該硬化性樹脂層上に設けた印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る装飾層(以下、装飾層と略す)を有していても良い。
【0010】
得られる水圧転写体の装飾層の意匠性を良く発現できることから、硬化性樹脂層は透明であることが好ましい。但し、水圧転写体の要求特性によるが、基本的に得られる水圧転写体の装飾層の色や柄が透けて見えれば良く、硬化性樹脂層は完全に透明であることを要せず、透明から半透明なものまでを含む。
ここでいう活性エネルギー線とは紫外線と電子線であり、特に紫外線硬化性樹脂が好適である。紫外線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0011】
[転写層の硬化性樹脂層]
本発明の水圧転写用フィルムの転写層を構成する硬化性樹脂層は、必須成分としてシリコーン変性アクリレートを含む。水圧転写後に硬化させた硬化樹脂層が優れた耐擦傷性を有するためには、硬化性樹脂層に用いるシリコーン変性アクリレートは、1分子中に3以上12以下の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレートが好ましく、5以上10以下の(メタ)アクリロイル基を含有するシリコーン変性アクリレートがより好ましい。シリコーン変性アクリレートの数平均分子量は、水圧転写体の硬化樹脂層が優れた耐擦傷性を有するためには、200〜10,000であることが好ましく、より好ましくは300〜7,000である。また、シリコーン変性アクリレートの(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量は70〜1,000であることが好ましく、70〜800であることがより好ましい。
【0012】
シリコーン変性アクリレートとしては、シリコーン変性エステルアクリレートまたはシリコーン変性ウレタンアクリレートが好ましく用いられる。
シリコーン変性エステルアクリレートとは、カルボキシ基含有化合物とポリシロキサン骨格を有する多価アルコールとを脱水縮合させるか、ポリシロキサン骨格を有するカルボキシ基含有化合物と多価アルコールとを脱水縮合させて得られる1分子中に2以上の水酸基を有するシリコーン変性オリゴエステルに(メタ)アクリル酸をエステル結合させて得られるアクリレートであり、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3〜12、好ましくは5〜10有するものが好ましく、数平均分子量200以上10,000以下のものが好ましい。また、粘度調整などの目的で、カルボキシ基含有化合物とポリシロキサン骨格を有する多価アルコールとを脱水縮合させる場合に、慣用の多価アルコールを少量共存させても良い。
また、同じ目的でポリシロキサン骨格を有するカルボキシ基含有化合物と多価アルコールとを脱水縮合させる場合に慣用のカルボキシ基含有化合物を少量共存させても良い。
【0013】
カルボキシ基含有化合物としては、公知慣用の各種のカルボン酸、またはそれらの酸無水物、及びそれらカルボン酸化合物と低級アルキルアルコールのエステル化物が使用できる。これらの化合物の代表的な具体例として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、アジピン酸、こはく酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、ピロメリット酸、またはこれらの酸無水物、またはエステル化合物、更にγ−ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−アルキルカプロラクトンなどの環状エステルラクトン類などが挙げられる。
【0014】
ポリシロキサン骨格を有するカルボキシ基含有化合物としては、ポリシロキサン鎖の末端あるいは側鎖に−R−COOH基(−R−はアルキレン基、−COOHはカルボキシ基を表す)を有するカルボキシ変性ポリシロキサン(以下、カルボキシ基含有ポリシロキサンと称する)を有する化合物が挙げられ、信越化学工業株式会社製の商品名X−22−162CやX−22−3701Eなどを使用することができる。
【0015】
シリコーン変性エステルアクリレートの製造に用いる多価アルコールとしては、慣用の多価アルコールが使用でき、そのうちの代表的な例を挙げれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメチロール、水添ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノ−ルAなどが挙げられる。なかでもジペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0016】
ポリシロキサン骨格を有する多価アルコールとしては、ポリシロキサン鎖の末端に−ROH基(−Rはアルキレン基、OHは水酸基を表す)を有するカルビノール変性ポリジアルキルシロキサンや、ポリシロキサン鎖の末端に−C(R1OH)2R2(R1はアルキレン基、R2はアルキル基、OHは水酸基を表す)を有する変性ポリジアルキルシロキサンなどの末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサン(以下、ヒドロキシ基含有ポリジアルキルシロキサンと称する)があり、信越化学工業株式会社製の商品名KF−6001やX−22−176DXなどを使用することができる。
【0017】
シリコーン変性ウレタンアクリレートは、(a)ポリイソシアネート、(b)ポリシロキサン骨格を有する多価アルコール、及び(c)水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて得られるものである。その反応に際しては、上記(b)と(c)の合計の水酸基(OH)と、(a)のイソシアネート基(NCO)との当量比(OH/NCO)が0.9/1〜1/0.9、好ましくは1/1となるように反応させればよい。
【0018】
上記の反応では、例えば、ジブチル錫ラウレートやジブチル錫アセテート等の触媒を使用してもよく、通常行われるウレタン化反応の条件で製造することができる。また、必要に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の溶媒を用いても差し支えない。
【0019】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層に用いる硬化性樹脂は、前述のシリコーン変性アクリレートのみであっても良いが、一般に塗料用樹脂として使用される(メタ)アクリレートと共に硬化性樹脂組成物として用いられる。これらの(メタ)アクリレートは、一般に塗料用樹脂として使用されるものであれば問題なく使用することができ、具体例を挙げれば、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレートおよびエポキシ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0020】
また得られる硬化樹脂層の光沢をより高めるためには、硬化性樹脂組成物にジアリル化合物を含むことが好ましい。このジアリル化合物としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジアリル酢酸、マレイン酸ジアリル、ジアリルカルビノール、ジアリルエーテル、ジアリルクロロシラン等が挙げられるが、安定性や手しやすさから、アクリル酸アリルやメタクリル酸アリルが好ましい。
【0021】
また、シリコーン変性アクリレートは粘度が高いものが多いので、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するアクリレートを併用して樹脂組成物の粘度を下げることもできる。この用途に用いられるアクリレートとしては、2−ヒドロキシアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートなどの単官能アクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコール−EO付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、テトラメチロールメタントテトラアクリレートなどのアクリレートが挙げられる。
【0022】
水圧転写体の硬化樹脂層の耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性を十分なものとするためには、水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層中に含まれる硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレートの含有量は10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜90質量%である。
【0023】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層は、硬化性樹脂としてシリコーン変性アクリレートを含むものであるが、ウレタンアクリレートを併せて含有させることにより、得られる水圧転写体の硬化樹脂層に優れた耐擦傷性に加えて可撓性を付与することができる。
【0024】
硬化樹脂層が優れた可撓性を発現するためには、用いるウレタンアクリレートは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜6有し、数平均分子量が2,000〜30,000、好ましくは5,000〜20,000であり、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が500〜15,000、好ましくは600〜10,000のものである。ウレタンアクリレートは、数平均分子量が2,000未満であると十分な可撓性が得にくく、また数平均分子量が30,000を越えると粘度が高くなり、取扱いが困難となる。
【0025】
ウレタンアクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート、多価アルコール及びポリイソシアネートとのウレタン化反応によって作られる。
水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸またはメタクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;
ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和モノマーとのモノエーテル;
無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物とエチレングリコール等のグリコール類とのモノエステル化物またはジエステル化合物;
ヒドロキシエチルビニルエーテルの如きヒドロキシアルキルビニルエーテル類;α,β−不飽和カルボン酸とα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;
アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸のような一塩基酸との付加物;
上記の水酸基含有モノマーとラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等)との付加物等が挙げられ、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが特に好ましい。
【0026】
ウレタンアクリレートの製造に用いられる多価アルコールとしては、塗料用樹脂に用いられるポリオールであれば特に制限なく用いることができる。これらは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレンなどが挙げられるが、これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0027】
ポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネート基を2つ(2価)以上有する化合物であればよく、ジイソシアネートや1分子中にイソシアネート基を3つ(3価)以上有する化合物を用いることができる。
ジイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;
水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類;
トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0028】
3価以上のポリイソシアネートの具体例としては、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサンなどの脂肪族トリイソシアネート;
1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトナフタレンなどの芳香族トリイソシアネート;
ジイソシアネート類を環化三量化せしめて得られる、いわゆるイソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネート類が挙げられる。
【0029】
さらに3価以上のポリイソシアネートの具体例は、2価以上のポリイソシアネートの2量体もしくは3量体;
これらの2価または3価以上のポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等とをイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られる付加物;
ポリイソシアネート類と水とを反応せしめて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0030】
また、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートもしくは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如きイソシアネート基を有するビニルモノマーの単独重合体、またはこれらのイソシアネート基含有ビニルモノマーをこれらと共重合可能な(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニルモノマー類などと共重合せしめて得られる、イソシアネート基含有ビニル系共重合体と前記水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートも用いることができる。
【0031】
ウレタンアクリレートを製造する際に用いる多価アルコール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの配合比に特に制限はないが、多価アルコールおよび水酸基含有(メタ)アクリレート中の水酸基1当量当たりポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5〜2.0当量の範囲が好ましい。
【0032】
硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含み、得られる硬化樹脂層が優れた耐擦傷性と可撓性を発現するためには、硬化性樹脂層に含まれるシリコーン変性アクリレート(A)とウレタンアクリレート(B)の質量比(A)/(B)は、0.18〜0.6の範囲内にあることが好ましい。(A)/(B)の質量比が0.18未満では硬化性樹脂層の可撓性は十分なものの、耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性が不足しがちになるし、逆に(A)/(B)の質量比が0.6を超えると、硬化性樹脂層の耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性は十分なものの可撓性が不足する傾向にあり、(A)/(B)の質量比が0.18〜0.6の範囲のときに、耐擦傷性や耐薬品性などの表面特性と可撓性とのバランスが特に優れたものとなる。
【0033】
硬化性樹脂層には、必要に応じて慣用の光重合開始剤や光増感剤が含まれて良い。光重合開始剤の代表的なものとしては、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンの如きアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントンの如きチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。
【0034】
光重合開始剤の使用量は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に対して、通常、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルの如きアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
【0035】
また、硬化性樹脂層には、非重合性の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。非重合性の熱可塑性樹脂を活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることは硬化性樹脂層の粘着性低減とガラス転移温度(Tg)の向上に極めて効果的である。但し、硬化性樹脂層に含ませる熱可塑性樹脂の量が多いと硬化性樹脂の硬化反応を阻害するので、硬化性樹脂層の全樹脂量100質量部に対して熱可塑性樹脂は70質量部を超えない範囲で添加することが好ましい。
【0036】
非重合性の熱可塑性樹脂は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に相溶できるものであり、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなどが挙げられる。なかでも、透明性、耐溶剤性および耐擦傷性に優れるポリメチルメタクリレートを主成分としたポリ(メタ)アクリレートが好ましく、質量平均分子量3万〜30万のポリメチルメタクリレートが特に好ましく用いられる。
【0037】
[転写層の装飾層]
転写層として前記硬化性樹脂層の上に形成されてもよい装飾層は、印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る。装飾層の形成に用いる印刷インキまたは塗料は、剥離性フィルムに印刷または塗工が可能な印刷インキまたは塗料であり、有機溶剤によって活性化されることにより、被転写体に転写層を転写する際に十分な可撓性が得られることが好ましく、特にグラビア印刷インキが好ましい。また絵柄のない着色層を塗工によって形成することもできる。
【0038】
印刷インキまたは塗料に用いるワニス用樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0039】
装飾層中の着色剤は、顔料が好ましく、無機系顔料、有機系顔料のいずれも使用が可能である。また、金属切削粒子のペーストや蒸着金属膜から得られる金属細片を顔料として含んだ金属光沢インキの使用も可能である。これらの金属としては、アルミニウム、金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロームおよびステンレス等が好ましく用いられる。これらの金属細片は、分散性、酸化防止やインキ層の強度向上のためにエポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース誘導体で表面処理されていても良い。
【0040】
装飾層の形成方法は、グラビア印刷の他にオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などを用いることができる。装飾層の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、更に好ましくは1〜7μmである。
【0041】
なお、意匠性、展延性を阻害しない限り、硬化性樹脂層及び装飾層中に慣用の消泡剤、沈降防止剤、顔料分散剤、流動性改質剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などの慣用の各種添加剤を加えても構わない。
【0042】
[水圧転写用フィルムの層構造とその作成方法]
支持体フィルム上に設けられる転写層の乾燥膜厚は、硬化性樹脂層の乾燥膜厚が、保護層として十分な表面特性を示し、かつ硬化性樹脂の乾燥性や水圧転写時の活性化が良好であるためには、3〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは、5〜70μmである。また、印刷インキ被膜または塗膜からなる装飾層の乾燥膜厚は、良好な装飾性と水圧転写時の活性化が可能であるためには、0.5〜15μmであることが好ましく、より好ましくは1〜7μmである。
【0043】
水圧転写用フィルムの装飾層および硬化性樹脂層の塗工方法は、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーターおよびコンマコーターを用いることが出来る。装飾層には、なかでもグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷等が好ましい。
【0044】
支持体フィルム上に設けられた硬化性樹脂層の上に装飾層を塗工する場合には硬化性樹脂層が粘着性のないタックフリー状態となっている必要があるが、硬化性樹脂層の樹脂組成によっては通常の乾燥工程のみではタックフリー状態が得られない場合がある。その場合には、硬化性樹脂層に該硬化性樹脂層の完全硬化に必要な活性エネルギー線の照射量より低い活性エネルギー線量を照射して、硬化性樹脂層を予備硬化もしくは半硬化させることにより、タックフリー状態とすることが好ましい。
【0045】
また、硬化性樹脂層から装飾層へ樹脂成分のブリードアウトがある場合には、装飾層の乾燥が十分でないので、硬化性樹脂層と装飾層からなる転写層の上に前記転写層との界面で剥離可能な剥離性フィルムを設けてもよい。剥離性フィルムとして、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの素材からなるフィルムを用いることができ、その厚みは20μm〜250μmであるものが好ましい。
【0046】
本発明の水圧転写用フィルムは、ロールとして巻き取って、遮光紙で覆い、倉庫等の暗所に保管すれば硬化反応が不用意に進行することはなく、かつ有機溶媒により硬化性樹脂層または硬化性樹脂層と装飾層とが活性化されて水圧転写可能なものであり、積極的に紫外線や太陽光に曝さない限り十分な貯蔵安定性と流通性とを有するものである。
【0047】
[水圧転写体の製造方法]
次に、本発明の水圧転写用フィルムを用いて製造される硬化樹脂層を有する水圧転写体について説明する。
本発明の水圧転写用フィルムは、従来の水圧転写用フィルムの水圧転写方法と同様な方法での使用が可能であり、概略は以下に示す通りである。
【0048】
(1)本発明の水圧転写用フィルムを水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムを下にし、転写層を上にして水槽中の水に浮かべ、前記支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
(2)水圧転写用フィルムの転写層に有機溶媒を塗布または噴霧することにより、硬化性樹脂層または装飾層と硬化性樹脂層とから成る転写層を活性化させる。
なお、転写層の有機溶媒による活性化は水圧転写用フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
(3)前記水圧転写用フィルムの装飾層面または硬化性樹脂層面に被転写体を押しつけながら、前記被転写体と前記水圧転写用フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を前記被転写体に密着させて被転写体へ転写する。
(4)水から出した水圧転写体を乾燥させ、乾燥した水圧転写体の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射により硬化させ硬化樹脂層を有する水圧転写体を得る。
【0049】
水圧転写における水槽の水は、転写層を転写する際に水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層もしくは硬化性樹脂層と装飾層とを被転写体の三次元曲面に密着させる水圧媒体として働く他、支持体フィルムを膨潤または溶解させるものであり、具体的には、水道水、蒸留水、イオン交換水などの水で良い。
【0050】
硬化性樹脂層または硬化性樹脂層と装飾層とから成る転写層は、水圧転写される前に散布される有機溶剤で活性化され、十分に可溶化もしくは柔軟化されることが必要である。ここで言う活性化とは、転写層に有機溶剤を塗布または散布することにより、転写層を構成する樹脂を完全には溶解せずに可溶化させ、水圧転写に際して親水性の支持体フィルムから疎水性の転写層の剥離を容易にすると共に、転写層に可撓性を付与することにより転写層の被転写体の三次元曲面への追従性と密着性を向上させることを意味する。この活性化は、転写層を水圧転写用フィルムから被転写体へ転写する際に、これらの転写層が柔軟化され、被転写体の三次元曲面へ十分に追従できる程度に行われれば良い。
【0051】
転写層の活性化に用いる有機溶剤は、水圧転写工程が終了するまで蒸発しないことが重要である。本発明の硬化性樹脂層を有する水圧転写用フィルムの活性化に用いる有機溶剤は、従来の水圧転写法に用いるものと同様なものを用いることができる。
【0052】
被転写体に転写層を転写後、水圧転写体上に残った支持体フィルムは、水で溶解させるか、洗浄により剥離する。洗浄、溶解方法は、従来の水圧転写方法と同様に、水流、好ましくはウォータージェットで支持体フィルムを溶解、剥離させる。
【0053】
被転写体は、その表面に硬化性樹脂層や装飾層が十分密着することが好ましく必要に応じて被転写体表面にプライマー層を設ける。プライマー層を形成する樹脂は、プライマー層として慣用の樹脂を特に制限なく用いることができ、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。また、転写密着性の良好なABS樹脂やSBSゴムなどからなる被転写体にはプライマー処理は不要である。被転写体の材質は、必要に応じて防水加工を施すことにより水中に沈めても形状が崩れない防水性があれば、金属、プラスチック、木材、パルプモールド、ガラス等のいずれであっても良く特に限定されない。
【0054】
本発明の硬化樹脂層を有する水圧転写体は、水圧転写により転写され活性エネルギー線照射により硬化された硬化樹脂層を有する水圧転写体であって、前記硬化樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含む硬化性樹脂の硬化物からなる水圧転写体であり、優れた被転写体への転写層の密着性と装飾層の模様再現性を有し、かつH以上の鉛筆硬度、優れた耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性のある硬化樹脂層を有する。さらに、硬化樹脂層がシリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含む場合は、得られる水圧転写体は、上記の優れた特性に加えて硬化樹脂層が優れた可撓性も有し、クラックが発生しにくい利点を有する。
【0055】
本発明が適用できる水圧転写体の具体例としては、テレビ、ビデオ、エアコン、ラジオカセット、携帯電話、冷蔵庫等の家庭電化製品;パーソナルコンピューター、ファックスやプリンター等のOA機器;ファンヒーターやカメラなどの家庭製品のハウジング部分;テーブル、タンス、柱などの家具部材;バスタブ、システムキッチン、扉、窓枠などの建築部材;電卓、電子手帳などの雑貨;自動車内装パネル、自動車やオートバイの外板、ホイールキャップ、スキーキャリヤ、自動車用キャリアバッグなどの車内外装品;ゴルフクラブ、スキー板、スノーボード、ヘルメット、ゴーグルなどのスポーツ用品;広告用立体像、看板、モニュメントなどが挙げられ、曲面を有しかつ意匠性を必要とする水圧転写体に特に有用に用いられ、極めて広い分野で使用可能である。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0057】
(合成例1)シリコーン変性アクリレート(a−1)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、ジペンタエリスリトール234部、信越化学工業株式会社製KF−6001(ヒドロキシ基含有ポリジアルキルシロキサン)を30部、ε−カプロラクトン912部を仕込み、170℃にて開環反応を行った。次にアクリル酸432部を仕込んで、140℃で4時間反応を行い、6個のアクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレート(a−1)を得た。酸価は0.2で数平均分子量は約1,800であった。
【0058】
(合成例2)シリコーン変性アクリレート(a−2)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、ペンタエリスリトール282部と、信越化学工業株式会社製X−22−162C(カルボキシ基含有ポリシロキサン)30部、無水コハク酸100部を仕込み、170℃で5時間脱水縮合を行った後、イプシロンカプロラクトン684部を仕込み、170℃にて開環反応を5時間行った。次にアクリル酸432部を仕込んで、140℃で4時間反応を行い、6個のアクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレート(a−2)を得た。酸価は0.2で数平均分子量は約1,900であった。
【0059】
(合成例3)ウレタンアクリレート(b−1の中間体b−1M)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート222部を仕込み、65℃まで昇温した。次にヒドロキシエチルアクリレ−ト116部を2時間かけて滴下反応させた。滴下終了後、75℃まで昇温させて、5時間反応させ、中間体(b−1M)を得た。このときの残存NCO%は、12.4%であった。
【0060】
(合成例4)ウレタンアクリレート(b−1)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル5019部、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量500、水酸基価224.4 KOH−mg/g)3037.5部と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール666.7部を仕込んで、均一に溶解した。これを65℃まで昇温してから、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート2810部を仕込み、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は、0.05%であった。次に、合成例3で得たb−1Mを1014部仕込んで70℃で8時間反応を行った。IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約7200、不揮発分60%の2官能のウレタンアクリレート(b−1)の溶液を得た。
【0061】
(合成例5)ウレタンアクリレート(b−2)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル4800部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート2882部を仕込み、65℃まで昇温した。次にポリ1,6ヘキサンカ−ボネ−トジオール(数平均分子量600、水酸基価187KOH−mg/g)3600部と、1,6−ヘキサンジオール472部を仕込んで、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は0.72%であった。次にヒドロキシエチルアクリレート235gを仕込み、更に同温度にて3時間反応を行い、IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約7200、不揮発分61%の2官能のウレタンアクリレート(b−2)の溶液を得た。
【0062】
(合成例6)ウレタンアクリレート(b−3)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル5500部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート3144部を仕込み、65℃まで昇温した。次に3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量1000、水酸基価112.2KOH−mg/g)4000部と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール826部を仕込んで、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は、0.63%であった。次にヒドロキシブチルアクリレート260部を仕込み、更に同温度にて3時間反応を行い、IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約8300、不揮発分60%の2官能のウレタンアクリレート(b−3)の溶液を得た。
【0063】
(合成例7)ウレタンアクリレート(c−1)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート222部を仕込み、65℃まで昇温した。次にヒドロキシエチルアクリレート232部を、2時間で滴下し、更に同温度にて3時間反応を行った。IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、2官能のウレタンアクリレート(c−1)を得た。
【0064】
(合成例8)ウレタンアクリレート(c−2)
温度計、攪拌器およびコンデンサ−を備えたフラスコに、酢酸エチル962部とイソホロンジイソシアネート444部を仕込み、65℃まで昇温した。次に、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量1000、水酸基価112.2KOH−mg/g)1000部を仕込んで、65℃で5時間反応を行った。このときのイソシアネート価は3.50%であった。次にヒドロキシエチルアクリレート232部を仕込み、更に同温度にて3時間反応を行い、IRスペクトルにより、残存するイソシアネート基が存在していないことを確認し、数平均分子量約1700、不揮発分60%の2官能のウレタンアクリレート(c−2)の溶液を得た。
【0065】
(合成例9)ウレタンアクリレート(c−3)
ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びスチレンをモル比20:30:15:15:20で共重合させたアクリルポリオール(a)(質量平均分子量25,000)81部に対して、アクリルポリオールの水酸基価に対して1.1倍当量のイソシアネート価のヘキサメチレンジイソシアネートフェノール付加物とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のフェノール付加物との混合物19部をトルエンと酢酸エチル(1/1)の混合溶媒に溶解して、不揮発分35%のウレタンアクリレート(c−3)の溶液を得た。
【0066】
<水圧転写後の成形品の試験方法>
実施例及び比較例で得た水圧転写したサンプルを以下の試験で評価した。
【0067】
(模様再現性)
3次元立体成形物での模様再現性について、模様再現面積率により以下のように目視評価した。
○:模様再現面積率95%以上 (模様再現性良好)
△:模様再現面積率80%〜95%未満(模様再現性やや不良)
×:模様再現面積率80%未満(模様再現性不良)
【0068】
(密着性)
下記のプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、碁盤目テープ法(JIS K5400) に準じてインキ密着性を評価(10点満点)した。
【0069】
<プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板>
大日本インキ化学工業株式会社製ベッコライト57−206−40(末端に水酸基を有する直鎖状ポリエステル樹脂、数平均分子量10000)を固形分換算で45部、チタン白50部、シクロヘキサノン/イソホローン/キシロール=30/50/20の混合溶剤20部を混合し、ビーズミル練肉し、練肉終了後、硬化剤としてキシレンジイソシアネート(XDI)を5部、ジブチル錫ジラウレート(TK−1)を0.5部加えて得られた上塗り塗料をクロメート処理溶融亜鉛メッキ鋼板(メッキ付着量60g/m2)に乾燥膜厚として40μmになるようバーコ一夕一にて塗布し、最高到達板温235℃にて焼き付け、プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板を得た。
【0070】
(鉛筆硬度)
JIS−K5401「塗膜用鉛筆引き掻き試験機」を用いて塗膜硬度を測定した。芯の長さは3mm塗膜綿との角度45度、荷重1kg、引き掻き速度0.5mm/分、引き掻き長さ3mm、使用鉛筆は三菱ユニとした。
【0071】
(表面光沢)
60度鏡面光沢度(JIS K5400)を測定した。
【0072】
(耐擦傷性)
密着性試験で用いたプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、ラビング試験機(荷重800g)により、乾拭き100回後の表面光沢保持率を評価した。
【0073】
(耐洗剤性)
密着性試験で用いたプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、住居用洗剤原液(花王株式会社、商品名マジックリン)を含ませた脱脂綿を用いてラビング試験(荷重800g、往復100回)を実施し、試験後の表面光沢保持率を測定した。
【0074】
(熱水処理後の密着性)
水圧転写したサンプルを熱水(水温98℃)中で30分間加熱処理し、次いで塗膜にカッターで1×1mmの碁盤目を100個つくり、その部分に粘着テープを貼った後、この粘着テープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を目視により観察して、次に示す3段階にて評価した。
【0075】
○:剥離が全く認められなかった。
△:全体の1〜30%が剥離した。
×:全体の31〜100%が剥離した。
【0076】
(熱水処理後の光沢保持率)
水圧転写したサンプルを熱水(水温98℃)中で30分間の熱処理し、次いで光沢計で60度グロスを測定して熱水処理前後での光沢保持率を算出した。
【0077】
(可撓性)
水圧転写したサンプルの一端を固定し、他端に1kgの荷重を2分間かけて、サンプルを撓ませ、撓みを解除した直後にクラックの発生有無を評価した。
○:クラックが生じない。
△:倍率10倍のルーペにて確認できるクラックが生じた。
×:目で確認できるクラックが生じた。
【0078】
(実施例1)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムを用い、その表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C1をコンマコーターにより40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に下記の処方の印刷インキG1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF1を作成した。
【0079】
<硬化性樹脂組成物C1の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):80部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
【0080】
<印刷インキG1組成、黒、黄、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(黒、黄、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0081】
得られた水圧転写用フィルムAを30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からABS製成形物(自動車内装パネル)を押し当て、予備硬化させた硬化性樹脂層を転写した。転写後、成形物を水洗し、90℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、11m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂層を完全硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0082】
(実施例2)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C2をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して、予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に実施例1と下記の処方の印刷インキG2をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF2を作成した。
【0083】
<硬化性樹脂組成物C2の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):20部、ウレタンアクリレート(b−1):70部、イルガキュア184:1部、および酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部。
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=20÷(70×0.60)=0.48
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=20÷[20+(70×0.60)]×100=32%
【0084】
<印刷インキG2組成、黒、茶、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(黒、茶、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0085】
得られた水圧転写用フィルムF2を30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からABS製成形物(自動車内装パネル)を押し当て、予備硬化させた硬化性樹脂層を転写した。転写後、成形物を水洗し、90℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、11m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂層を完全硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0086】
(実施例3)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に、下記組成の硬化性樹脂組成物C3をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に下記の処方の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF3を作成した。
【0087】
<硬化性樹脂組成物C3の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):20部、ウレタンアクリレート(b−2):82部、1,6−ヘキサンジアクリレート:5部、イルガキュア184:1部、および酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):14部。
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=20/(82×0.61)=0.4
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=20/[20+(82×0.61)+5]×100=27%
【0088】
<印刷インキG3の組成(赤、青)>
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部、顔料(赤、青):10部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60部、ワックス等添加剤:10部
【0089】
得られた水圧転写用フィルムF3を実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0090】
(実施例4)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C4をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例1で用いた印刷インキG1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF4を作成した。
【0091】
<硬化性樹脂組成物C4の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):31部、ウレタンアクリレート(b−3):98部、メタクリル酸アリル:3部、イルガキュア184:0.5部、イルガキュア907:0.5部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部、
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=31/(98×0.60)=0.53
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=31/[31+(98×0.60)+3]×100=33%
【0092】
実施例1における水圧転写用フィルムF1をPPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF4に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0093】
(実施例5)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C5をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に下記の処方の印刷インキG5をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF5を作成した。
【0094】
<硬化性樹脂組成物C5の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):18部、ウレタンアクリレート(b−3):98部、メタクリル酸アリル:3部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
シリコーン変性アクリレート/ウレタンアクリレートの比=(A)/(B)の比=18/(98×0.60)=0.31
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=18/[18+(98×0.60)+3]×100=23%
【0095】
<印刷インキG5の組成(赤、青)>
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部、顔料(赤、青):10部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60部、およびワックス等添加剤:10部
【0096】
得られた剥離紙付き水圧転写用フィルムF5からPPフィルムを剥離した後、30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、実施例1と同じ活性剤35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からプライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物(石油ファンヒーターハウジング)を押し当て、転写層を該亜鉛メッキ鋼板製成形物に転写した。転写後、成形物を水洗し、110℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、11m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂層を完全硬化させ、光沢のある柄付き硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0097】
(実施例6)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C6をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF6を作成した。
【0098】
<硬化性樹脂組成物C6の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−1):11部、ウレタンアクリレート(b−2):98部、メタクリル酸アリル:3部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
(A)/(B)の比=11/(98×0.61)=0.18
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=11/[11+(98×0.61)+3]×100=15%
【0099】
(実施例7)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C7をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF7を作成した。
【0100】
<硬化性樹脂組成物C7の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):18部、東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート M−7100:98部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=18/(18+98)×100=16%
【0101】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を、PPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF7に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0102】
(実施例8)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C7をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF8を作成した。
【0103】
<硬化性樹脂組成物C8の組成>
シリコーン変性アクリレート(a−2):88部、東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート M−7100:18部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
硬化性樹脂中のシリコーン変性アクリレート含有量(%)=88/(88+18)×100=83%
【0104】
実施例1における水圧転写用フィルムF1をPPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF8に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0105】
(比較例1)
実施例1における硬化性樹脂組成物C1を下記の硬化性樹脂組成物C9に変更した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に実施例1と同様に印刷インキG1を印刷し、水圧転写用フィルムF9を作成した。
【0106】
<硬化性樹脂組成物C9の組成>
ウレタンアクリレート(c−2):80部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
【0107】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を水圧転写用フィルムF9に変えた以外は実施例1と同様に処理して成形品を得た。
【0108】
(比較例2)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C10をコンマコーターにより塗工し、29g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂層の上に実施例1で用いた印刷インキC1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF10を作成した。
【0109】
<硬化性樹脂組成物C10の組成>
ウレタンアクリレート(c−3):80部、イルガキュア184:1部、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):19部
【0110】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を予備硬化させた水圧転写用フィルムF10に、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、プライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させて、成形品を得た。
【0111】
(比較例3)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C11をコンマコーターにより塗工し、40g(固形分)/m2の硬化性樹脂層を塗工した。予め準備しておいたPPフィルム上に実施例3の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷したものを、先の塗工フィルムと加熱ラミネート(ロール温度:40℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF11を作成した。
【0112】
<硬化性樹脂組成物C11の組成>
東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート M−7100:40部、イルガキュア184:1部、および酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1):59部。
【0113】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を、PPフィルムを剥離した水圧転写用フィルムF11に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂層を転写し、UV照射して硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
ウレタンアクリレートのみからなる硬化性樹脂層を有する水圧転写用フィルムを用いて作成した比較例1と2の水圧転写体は可撓性は優れるものの、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性などの表面特性に劣る。また、ポリエステルアクリレートからなる硬化性樹脂層を有する比較例3も耐擦傷性や耐洗剤性などの表面特性が十分でなかった。
【0118】
これに対して、実施例1〜8に示すように、シリコーン変性アクリレートを含む硬化性樹脂層を有する本発明の水圧転写用フィルムを用いて製造した水圧転写体の硬化樹脂層は優れた模様再現性や密着性に加え、2H以上の鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性を有する。また、中でも硬化性樹脂層にシリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含む実施例2〜6の水圧転写体の硬化樹脂層は、前記の2H以上の鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性に加えて優れた可撓性を有する。
【0119】
【発明の効果】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層はシリコーン変性アクリレートを含むため、その硬化性樹脂層は、被転写体に水圧転写された後に活性エネルギー線の照射により硬化して優れた硬度、耐擦傷性および耐洗剤性を有する硬化樹脂層を形成できる。
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層は、シリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含むため、優れた硬度、耐擦傷性および耐洗剤性に加えて優れた可撓性を有する硬化樹脂層を形成できる。
本発明の水圧転写体は、上記の水圧転写用フィルムを用いて製造されるものであるため、被転写体の表面に優れた硬度、耐擦傷性、耐洗剤性及び可撓性を有する硬化樹脂層を有する。従って、本発明の水圧転写体は家電製品など硬度、耐擦傷性、耐洗剤性等の諸性質が要求される製品の材料として利用することができる。
Claims (5)
- 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とから成り、前記転写層が活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂層がシリコーン変性アクリレートを含むことを特徴とする水圧転写用フィルム。
- 前記転写層が前記支持体フィルム上に設けた活性エネルギー線照射で硬化可能な硬化性樹脂層と該硬化性樹脂層上に設けた印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る装飾層から成る請求項1に記載の水圧転写用フィルム。
- 前記硬化性樹脂層中のシリコーン変性アクリレートが、1分子中に3以上12以下の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン変性アクリレートである請求項1に記載の水圧転写用フィルム。
- 前記硬化性樹脂層が、シリコーン変性アクリレートとウレタンアクリレートを含む樹脂組成物からなる請求項1に記載の水圧転写用フィルム。
- 請求項1に記載の水圧転写用フィルムを用いて、被転写体の表面に前記硬化性樹脂層を水圧転写した後、転写された前記硬化性樹脂層を活性エネルギー線の照射により硬化させたことを特徴とする硬化樹脂層を有する水圧転写体。
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2002
- 2002-11-15 JP JP2002332028A patent/JP2004160932A/ja active Pending
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