JP4013787B2 - 水圧転写用フィルム及び水圧転写体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種成形品などの被転写体の表面に硬化性樹脂形成層を水圧転写できる水圧転写用フィルムおよび該水圧転写用フィルムを用いて製造される硬化樹脂層を有する水圧転写体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水圧転写法は意匠性に富む装飾層を複雑な三次元形状の成形品に付与できる方法であるが、水圧転写後にさらに水圧転写した装飾層に硬化性樹脂を保護層としてスプレー塗装する必要がある。このため、水圧転写法による成形品の製造は、製造工程が煩雑であると共に水圧転写設備の他に塗装設備も必要であることからコスト高であり、水圧転写法で製造される水圧転写品は高級品に限られていた。
【0003】
この煩雑さとコスト高を解消するために、水圧転写法によって硬化性樹脂形成層を被転写体に転写する試みがなされている。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂形成層を有する水圧転写用フィルムを用いて、該硬化性樹脂形成層を被転写体に水圧転写した後に硬化させる技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】
特開昭64−22378号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の水圧転写用フィルムを用いて製造した転写体は、表面硬度は要求性能を満たすものの、可撓性が十分ではなく、表面加工した際に、ワレ等が生じる問題があり、表面硬度と高い可撓性を満たす水圧転写フィルムが求められていた。
本発明の課題は、活性エネルギー線硬化性樹脂形成層を被転写体に水圧転写することができ、その硬化性樹脂形成層が水圧転写後に活性エネルギー線の照射により硬化することができる可撓性と表面硬度とを共に有する硬化樹脂層を形成することができる水圧転写用フィルムを提供することにある。
更に本発明の水圧転写用フィルムを用いて、優れた可撓性と表面硬度とを共に有する硬化樹脂層で表面被覆された被転写体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水圧転写用フィルムに設ける硬化性樹脂形成層の構成材料の全部又は一部として、一般式(1)
【化2】
(式中、R1は炭素数6以上30以下を有するアルキル基またはアルケニル基であり、そしてこれらの基中に存在する1個または2個以上のCH2基は、それぞれ相互に独立して、O原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−により置き換えられていてもよく、R2はHまたはCH3、R3はHまたはCH3、aは3以上20未満の数を示す。)で表されるアクリレート(1)(以下、アクリレート(1)と略す場合がある。)と、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上12以下有し、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が1,000以下であるアクリレート(2)(以下、アクリレート(2)と略す場合がある。)とを含む水圧転写用フィルムを使用することにより、優れた可撓性と表面硬度を有する硬化樹脂層で表面被覆された被転写体を製造できるとの知見を見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な転写層とからなり、前記転写層が活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂形成層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂形成層が、一般式(1)
【化3】
(式中、R1は炭素数6以上30以下を有するアルキル基またはアルケニル基であり、そしてこれらの基中に存在する1個または2個以上のCH2基は、それぞれ相互に独立して、O原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−により置き換えられていてもよく、R2はHまたはCH3、R3はHまたはCH3、aは3以上20未満の数を示す。)で表されるアクリレート(1)と、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上12以下有し、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が1,000以下であるアクリレート(2)とを含むことを特徴とする水圧転写用フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記水圧転写用フィルムを用いて、被転写体の表面に前記硬化性樹脂形成層を水圧転写した後、該硬化性樹脂形成層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させた硬化樹脂層を有する水圧転写体を提供する。本発明では、硬化性樹脂形成層とは、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化することにより硬化樹脂層を形成する層であって、硬化前の状態である層を意味する。また、硬化樹脂層は、硬化性樹脂形成層を硬化させることにより得られた層を意味する。
【0008】
【発明の実施の形態】
[水圧転写用フィルムの支持体フィルム]
本発明の水圧転写用フィルムに用いる水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムは、水で溶解もしくは膨潤可能な樹脂からなるフィルムである。水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム(以下、支持体フィルムと略す)としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のフィルムが使用できる。なかでも一般に水圧転写用フィルムとして用いられているPVAフィルムが水に溶解し易く、入手が容易で、硬化性樹脂形成層の印刷にも適しており、特に好ましい。また、用いる支持体フィルムの厚みは10〜200μm程度が好ましい。
【0009】
[水圧転写用フィルムの転写層]
水圧転写用フィルムの転写層は、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂形成層(以下、硬化性樹脂形成層と略す)を有する。転写層は該硬化性樹脂形成層上に設けた印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる装飾層(以下、装飾層と略す)を有していても良い。
【0010】
装飾層を有する際は、水圧転写体の装飾層の意匠性を良く発現できることから、硬化性樹脂形成層は透明であることが好ましい。但し、水圧転写体の要求特性によるが、基本的に得られる水圧転写体の装飾層の色や柄が透けて見えれば良く、硬化性樹脂形成層は完全に透明であることを要せず、透明から半透明なものまでを含む。
本発明でいう活性エネルギー線とは紫外線と電子線であり、特に紫外線硬化性樹脂が好適である。紫外線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0011】
[転写層の硬化性樹脂形成層]
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂形成層は、
1)有機溶剤に溶解可能であり、
2)活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能であり、
3)得られた硬化樹脂が十分な表面硬度を有し、
4)得られた硬化樹脂が優れた可撓性を有する。
このためには、一般式(1)において、R1は炭素数6以上30以下を有するアルキル基またはアルケニル基であり、そしてこれらの基中に存在する1個または2個以上のCH2基は、それぞれ相互に独立して、O原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−により置き換えられていてもよく、直鎖状に限定されるものではなく分岐であってもよい。R3はHが好ましく、aは3以上18未満の数であることが好ましい。
一般式(1)で表されるアクリレート(1)の数平均分子量は、水圧転写体の硬化樹脂層が優れた可撓性と表面硬度を有するためには、200〜5,000であることが好ましく、より好ましくは300〜3,000である。一般式(1)で表されるアクリレートの数平均分子量が200未満となると可撓性が不足となり、5,000を超えると架橋密度が低くなるため、表面硬度が低下する傾向がある。
【0012】
一般式(1)で表されるアクリレート(1)の化学構造は、(メタ)アクリロイル基部分と長鎖ポリエーテル部分と長鎖炭化水素基部分の3つの部分に分けることができる。(メタ)アクリロイル基部分は活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で反応する硬化性を発現する部分であり、長鎖ポリエーテル部分は硬化性樹脂形成層中では不規則な折り畳み構造を有し、外部からの変形力に応じて折り畳み構造を解消することにより硬化後の樹脂層の可撓性を発現する部分である。また、長鎖炭化水素基部分は硬化性樹脂形成層中では前述の長鎖ポリエーテル部分を覆い隠すように位置し、外部からの変形力に応じて前述の長鎖ポリエーテル部分が折り畳み構造を解消する時の露払いの役割を果たすとともに、耐水性にやや劣る傾向があるポリエーテル部分を保護する役割も果たしていると考えられる。
【0013】
一般式(1)で表されるアクリレート(1)は市販品でもよく、具体的には日本油脂株式会社製「50AOEP−800B」や同「75ATEP−800B」同「ALE−800」、新中村化学株式会社製NKエコノマー「AL−8G」や同「ML−12G」等が例示される。
【0014】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂形成層に用いる、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上12以下有し、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が1,000以下であるアクリレート(2)は、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が1,000を越えると架橋密度が低下し、得られる硬化塗膜の表面硬度が不足する。
【0015】
アクリレート(2)は一般に塗料用樹脂として使用されるアクリレートを問題なく使用することができる。具体例を挙げれば、ウレタン(メタ)アクリレートポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエーテル((メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびエポキシ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0016】
ウレタンアクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート、多価アルコール及びポリイソシアネートとのウレタン化反応によって作られる。
水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸またはメタクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;
ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和モノマーとのモノエーテル;
無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物とエチレングリコール等のグリコール類とのモノエステル化物またはジエステル化合物;
ヒドロキシエチルビニルエーテルの如きヒドロキシアルキルビニルエーテル類;α,β−不飽和カルボン酸とα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;
アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸のような一塩基酸との付加物;
上記の水酸基含有モノマーとラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等)との付加物等が挙げられ、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが特に好ましい。
【0017】
ウレタンアクリレートの製造に用いられる多価アルコールとしては、塗料用樹脂に用いられるポリオールであれば特に制限なく用いることができる。これらは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレンなどが挙げられるが、これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0018】
ポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネート基を3つ(3価)以上有する化合物であればよく、1分子中にイソシアネート基を3つ(3価)以上有する化合物を用いることができる。
【0019】
3価以上のポリイソシアネートの具体例としては、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサンなどの脂肪族トリイソシアネート;
1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトナフタレンなどの芳香族トリイソシアネート;
ジイソシアネート類を環化三量化して得られる、いわゆるイソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネート類が挙げられる。
【0020】
さらに3価以上のポリイソシアネートの具体例としては、2価以上のポリイソシアネートの2量体もしくは3量体、これらの3価以上のポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等とをイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られる付加物;ポリイソシアネート類と水とを反応せしめて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0021】
また、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートもしくは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如きイソシアネート基を有するビニルモノマーの単独重合体、またはこれらのイソシアネート基含有ビニルモノマーをこれらと共重合可能な(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニルモノマー類などと共重合せしめて得られる、イソシアネート基含有ビニル系共重合体と前記水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートも用いることができる。
【0022】
ウレタンアクリレートを製造する際に用いる多価アルコール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの配合比に特に制限はないが、多価アルコールおよび水酸基含有(メタ)アクリレート中の水酸基1当量当たりポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5〜2.0当量の範囲が好ましい。
【0023】
硬化性樹脂形成層が一般式(1)で表されるアクリレート(1)とアクリレート(2)とを含み、得られる硬化樹脂層がより優れた可撓性とより優れた表面硬度を発現するためには、硬化性樹脂形成層に含まれるアクリレート(1)とアクレレート(2)との質量比(1)/(2)は、0.1〜0.6の範囲内にあることが好ましい。(1)/(2)の質量比が0.1未満では硬化性樹脂形成層の表面硬度は十分なものの可撓性が不足する傾向にあり、逆に(1)/(2)の質量比が0.6を超えると硬化性樹脂形成層の可撓性は十分なものの、表面硬度が不足しがちになる傾向がある。 (1)/(2)の質量比が0.1〜0.6の範囲のときに、表面硬度と可撓性とが更に優れたものとなる。更に最も好ましい (1)/(2)の質量比は0.1〜0.3である。この際、アクリレート(2)としては、ウレタンアクリレートを使用することが好ましい。この比率はアクリレート(1)及びアクリレート(2)と相溶するTgが35℃〜200℃の非重合性の熱可塑性樹脂を含む組成物を同時に使用することにより、更に広い範囲で好ましい上記効果を得ることができる。その際はアクリレート(1)とアクレレート(2)との質量比(1)/(2)は0.1〜0.8の範囲で、より好ましい上記効果を得ることが出来る。
【0024】
また得られる硬化樹脂層の光沢をより高めるためには、硬化性樹脂組成物にジアリル化合物を含むことが好ましい。このジアリル化合物としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジアリル酢酸、マレイン酸ジアリル、ジアリルカルビノール、ジアリルエーテル、ジアリルクロロシラン等が挙げられるが、安定性や入手しやすさから、アクリル酸アリルやメタクリル酸アリルが好ましい。
【0025】
また、アクリレート(1)とアクリレート(2)を含有する硬化性樹脂形成層用の硬化性組成物の粘度が高い場合には、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するアクリレートを併用して硬化性組成物の粘度を下げることもできる。この用途に用いられるアクリレートとしては、2−ヒドロキシアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートなどの単官能アクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコール−EO付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物トリアクリレート、テトラメチロールメタントテトラアクリレートなどのアクリレートが挙げられる。
【0026】
硬化性樹脂形成層には、必要に応じて慣用の光重合開始剤や光増感剤が含まれて良い。光重合開始剤の代表的なものとしては、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンの如きアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントンの如きチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。
【0027】
光重合開始剤の使用量は、用いる活性エネルギー線硬化性組成物に対して、通常、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルの如きアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
【0028】
硬化性樹脂形成層に用いられる熱硬化性組成物としては、例えば、水酸基やアミノ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてイソシアネート;
水酸基やカルボキシル基を有する主剤樹脂と硬化剤としてN−メチロール化またはN−アルコキシメチル化メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂;
エポキシ基や水酸基を有する主剤樹脂と硬化剤として無水フタル酸の如き酸無水物;
カルボキシル基や炭素−炭素二重結合、ニトリル基、エポキシ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてフェノール樹脂;
カルボキシル基やアミノ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてエポキシ基含有化合物などを用いることができる。
【0029】
これらの熱硬化性組成物は常温でも保存中に徐々に硬化反応が進行するものが多い。保存期間中に硬化反応が進むと、有機溶剤による転写層の活性化が十分行われず転写不良を起こす原因となる。このため、熱硬化性組成物の中でも主剤として高分子量のポリオール、硬化剤としてブロックイソシアネートを用いる系が好ましい。ブロックイソシアネートはイソシアネート基を慣用のブロック剤で保護したものを用いることができ、これら慣用のブロック剤は、フェノール、クレゾール、芳香族第2級アミン、第3級アルコール、ラクタム、オキシムなどが挙げられる。ブロックイソシアネートは装飾層や被転写体の耐熱性に合わせてブロック基の脱離温度が好適なものを選べば良い。
【0030】
高分子量のポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ポリエステルポリオール、ポリエチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、特にアクリルポリオールが好ましく、なかでも、質量平均分子量が3,000〜10万のアクリルポリオールがより好ましく、1万〜7万のアクリルポリオールが最も好ましい。
【0031】
アクリルポリオールは、水酸基を有する重合性不飽和単量体類と、該水酸基を有する重合性不飽和単量体類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体類とを常法により共重合させることにより製造される。得られるアクリルポリオールの水酸基価は、好ましくは20〜150、その質量平均分子量は、好ましくは3000〜20000である。
【0032】
水酸基を有する重合性不飽和単量体類としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートの如き(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の如き多価カルボン酸類のジヒドロキシアルキルエステル類;またはヒドロキシアルキルビニルエーテル類などである。
【0033】
水酸基を有する重合性不飽和単量体類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体類としては、メチルメタアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートもしくはシクロヘキシル(メタ)アクリレートの如きアルキル(メタ)アクリレート類;
【0034】
あるいは、メトキシエチル(メタ)アクリレートなどに代表されるようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレートもしくはジブチルイタコネートの如きマレイン酸、フマル酸ないしはイタコン酸などによって代表されるジカルボン酸類と1価アルコール類とのジエステル類;
【0035】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の如き不飽和モノ−またはジ−カルボン酸類または上述したような酸無水物の種々のカルボキシル基含有単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルの如きエポキシ基含有単量体類;
スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー類などである。
【0036】
また、アクリルポリオールとして、市販品、例えば、「アクリディックA−800、A801、A−801−P」(大日本インキ化学工業株式会社製)などを用いることもできる。
【0037】
熱硬化性組成物も印刷性または塗工性が必要であることから、硬化前の樹脂硬化性組成物の分子量は、質量平均分子量1000〜10万が好ましく、さらに好ましくは3,000〜3万である。
【0038】
本発明のアクリレート(1)とアクリレート(2)とを含む硬化性組成物とこれらに相溶する非重合性の熱可塑性樹脂とを併せて用いることは、硬化性樹脂形成層の粘着性低減とガラス転移温度(Tg)の向上および硬化性樹脂形成層の凝集破壊強度の向上に極めて効果的である。但し、硬化性樹脂形成層に含まれる熱可塑性樹脂の量が多いと硬化性組成物の硬化反応を阻害するため、硬化性樹脂形成層の全量に対して100質量部に対して熱可塑性樹脂は70質量部を超えない範囲で添加することが好ましい。
【0039】
非重合性の熱可塑性樹脂は被配合系と相溶できるものであり、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなどが挙げられる。なかでも、透明性、耐溶剤性および耐擦傷性に優れるポリメチルメタクリレートを主成分としたポリ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0040】
また、熱可塑性樹脂の分子量とTgは塗膜形成能に大きな影響を与える。硬化性組成物の流動性を抑制し、かつ硬化性樹脂形成層の有機溶剤による活性化を容易にするために、熱可塑性樹脂の質量平均分子量は好ましくは3,000〜40万、より好ましくは1万〜20万であり、Tgは好ましくは35℃〜200℃、より好ましくは35℃〜150℃である。Tgが35℃付近の比較的低いTgを有する熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂の質量平均分子量は10万以上であることが好ましい。
【0041】
[装飾層]
転写層として前記硬化性樹脂形成層の上に形成されてもよい装飾層は、印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる。装飾層の形成に用いる印刷インキまたは塗料は、剥離性フィルムに印刷または塗工が可能な印刷インキまたは塗料であり、有機溶剤によって活性化されることにより、被転写体に転写層を転写する際に十分な可撓性が得られることが好ましく、特にグラビア印刷インキが好ましい。また絵柄のない着色層を塗工によって形成することもできる。
【0042】
印刷インキまたは塗料に用いるワニス用樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0043】
装飾層中の着色剤は、顔料が好ましく、無機系顔料、有機系顔料のいずれも使用が可能である。また、金属切削粒子のペーストや蒸着金属膜から得られる金属細片を顔料として含んだ金属光沢インキの使用も可能である。これらの金属としては、アルミニウム、金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロームおよびステンレス等が好ましく用いられる。これらの金属細片は、分散性、酸化防止やインキ層の強度向上のためにエポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース誘導体で表面処理されていても良い。
【0044】
装飾層の形成方法は、グラビア印刷の他にオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などを用いることができる。装飾層の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、更に好ましくは1〜7μmである。
【0045】
なお、意匠性、展延性を阻害しない限り、硬化性樹脂形成層及び装飾層中に慣用の消泡剤、沈降防止剤、顔料分散剤、流動性改質剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などの慣用の各種添加剤を加えても構わない。
【0046】
[水圧転写用フィルムの層構造とその作成方法]
支持体フィルム上に設けられる転写層の乾燥膜厚は、硬化性樹脂形成層の乾燥膜厚が、保護層として十分な表面特性を示し、かつ硬化性樹脂の乾燥性や水圧転写時の活性化が良好であるためには、3〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは、5〜70μmである。また、印刷インキ被膜または塗膜からなる装飾層の乾燥膜厚は、良好な装飾性と水圧転写時の活性化が可能であるためには、0.5〜15μmであることが好ましく、より好ましくは1〜7μmである。
【0047】
水圧転写用フィルムの装飾層および硬化性樹脂形成層の塗工方法は、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーターおよびコンマコーターを用いることが出来る。装飾層には、なかでもグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷等が好ましい。
【0048】
支持体フィルム上に設けられた硬化性樹脂形成層の上に装飾層を塗工する場合には硬化性樹脂形成層が粘着性のないタックフリー状態となっている必要があるが、硬化性樹脂形成層の樹脂組成によっては通常の乾燥工程のみではタックフリー状態が得られない場合がある。その場合には、硬化性樹脂形成層に該硬化性樹脂形成層の完全硬化に必要な活性エネルギー線の照射量より低い活性エネルギー線量を照射して、硬化性樹脂形成層を予備硬化もしくは半硬化させることにより、タックフリー状態とすることが好ましい。
【0049】
また、硬化性樹脂形成層から装飾層へ樹脂成分のブリードアウトがある場合には、装飾層の乾燥が十分でないので、硬化性樹脂形成層と装飾層からなる転写層の上に前記転写層との界面で剥離可能な剥離性フィルムを設けてもよい。剥離性フィルムとして、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの素材からなるフィルムを用いることができ、その厚みは20μm〜250μmであるものが好ましい。
【0050】
本発明の水圧転写用フィルムは、ロールとして巻き取って、遮光紙で覆い、倉庫等の暗所に保管すれば硬化反応が不用意に進行することはなく、かつ有機溶媒により硬化性樹脂形成層または硬化性樹脂形成層と装飾層とが活性化されて水圧転写可能なものであり、積極的に紫外線や太陽光に曝さない限り十分な貯蔵安定性と流通性とを有するものである。
【0051】
[水圧転写体の製造方法]
次に、本発明の水圧転写用フィルムを用いて製造される硬化樹脂層を有する水圧転写体について説明する。
本発明の水圧転写用フィルムは、従来の水圧転写用フィルムの水圧転写方法と同様な方法での使用が可能であり、概略は以下に示す通りである。
【0052】
(1)本発明の水圧転写用フィルムを水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムを下にし、転写層を上にして水槽中の水に浮かべ、前記支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
(2)水圧転写用フィルムの転写層に有機溶媒を塗布または噴霧することにより、硬化性樹脂形成層または装飾層と硬化性樹脂形成層とからなる転写層を活性化させる。なお、転写層の有機溶媒による活性化は水圧転写用フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
(3)前記水圧転写用フィルムの装飾層面または硬化性樹脂形成層面に被転写体を押しつけながら、前記被転写体と前記水圧転写用フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を前記被転写体に密着させて被転写体へ転写する。
(4)水から出した水圧転写体を乾燥させ、乾燥した水圧転写体の硬化性樹脂形成層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種により硬化させ硬化樹脂層を有する水圧転写体を得る。
【0053】
水圧転写における水槽の水は、転写層を転写する際に水圧転写用フィルムの硬化性樹脂形成層もしくは硬化性樹脂形成層と装飾層とを被転写体の三次元曲面に密着させる水圧媒体として働く他、支持体フィルムを膨潤または溶解させるものであり、具体的には、水道水、蒸留水、イオン交換水などの水で良い。
【0054】
硬化性樹脂形成層または硬化性樹脂形成層と装飾層とからなる転写層は、水圧転写される前に散布される有機溶剤で活性化され、十分に可溶化もしくは柔軟化されることが必要である。ここで言う活性化とは、転写層に有機溶剤を塗布または散布することにより、転写層を構成する樹脂を完全には溶解せずに可溶化させ、水圧転写に際して親水性の支持体フィルムから疎水性の転写層の剥離を容易にすると共に、転写層に可撓性を付与することにより転写層の被転写体の三次元曲面への追従性と密着性を向上させることを意味する。この活性化は、転写層を水圧転写用フィルムから被転写体へ転写する際に、これらの転写層が柔軟化され、被転写体の三次元曲面へ十分に追従できる程度に行われれば良い。
【0055】
転写層の活性化に用いる有機溶剤は、水圧転写工程が終了するまで蒸発しないことが重要である。本発明の硬化性樹脂形成層を有する水圧転写用フィルムの活性化に用いる有機溶剤は、従来の水圧転写法に用いるものと同様なものを用いることができる。具体的には、トルエン、キシレン、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールアセテート、カルビトール、カルビトールアセテート、セロソルブアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ソルフィットアセテートなど及びそれらの混合物が挙げられる。
【0056】
被転写体に転写層を転写後、水圧転写体上に残った支持体フィルムは、水で溶解させるか、洗浄により剥離する。洗浄、溶解方法は、従来の水圧転写方法と同様に、水流、好ましくはウォータージェットで支持体フィルムを溶解、剥離させる。
【0057】
被転写体は、その表面に硬化性樹脂形成層や装飾層が十分密着することが好ましく必要に応じて被転写体表面にプライマー層を設ける。プライマー層を形成する樹脂は、プライマー層として慣用の樹脂を特に制限なく用いることができ、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。また、転写密着性の良好なABS樹脂やSBSゴムなどからなる被転写体にはプライマー処理は不要である。被転写体の材質は、必要に応じて防水加工を施すことにより水中に沈めても形状が崩れない防水性があれば、金属、プラスチック、木材、パルプモールド、ガラス等のいずれであっても良く特に限定されない。
【0058】
本発明の硬化樹脂層を有する水圧転写体は、水圧転写により転写され活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種により硬化された硬化樹脂層を有する水圧転写体であって、前記硬化樹脂層がアクリレート(1)とアクリレート(2)を含有する硬化性組成物の硬化物からなる水圧転写体であり、被転写体への転写層の優れた密着性と装飾層の模様再現性を有し、かつ優れた可撓性と優れた表面硬度を有する硬化樹脂層を有する。
【0059】
本発明が適用できる水圧転写体の具体例としては、テレビ、ビデオ、エアコン、ラジオカセット、携帯電話、冷蔵庫等の家庭電化製品;パーソナルコンピューター、ファックスやプリンター等のOA機器;ファンヒーターやカメラなどの家庭製品のハウジング部分;テーブル、タンス、柱などの家具部材;バスタブ、システムキッチン、扉、窓枠などの建築部材;電卓、電子手帳などの雑貨;自動車内装パネル、自動車やオートバイの外板、ホイールキャップ、スキーキャリヤ、自動車用キャリアバッグなどの車内外装品;ゴルフクラブ、スキー板、スノーボード、ヘルメット、ゴーグルなどのスポーツ用品;広告用立体像、看板、モニュメントなどが挙げられ、曲面を有しかつ意匠性を必要とする水圧転写体に特に有用に用いられ、極めて広い分野で使用可能である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0061】
<格子柄フィルムP1の製造>
東洋紡社製の厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムと略す)上に下記組成の印刷インキG1をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷して、格子柄印刷フィルムP1を製造した。
<印刷インキG1組成、黒、黄、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(黒、黄、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0062】
<抽象柄フィルムP2の製造>
東洋紡社製の厚さ50μmの延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPと略す)上に下記組成の印刷インキG2をグラビア印刷にて厚さ4μmの抽象柄を印刷して、抽象柄印刷フィルムP2を製造した。
【0063】
<印刷インキG2組成、黒、茶、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(黒、茶、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0064】
<水圧転写後の成形品の試験方法>
実施例及び比較例で得た水圧転写したサンプルを以下の試験で評価した。
【0065】
(模様再現性)
3次元立体成形物での模様再現性について、模様再現面積率により以下のように目視評価した。
○:模様再現面積率95%以上 (模様再現性良好)
△:模様再現面積率80%〜95%未満(模様再現性やや不良)
×:模様再現面積率80%未満(模様再現性不良)
【0066】
(密着性)
下記のプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、碁盤目テープ法(JIS K5400) に準じてインキ密着性を評価(10点満点)した。
【0067】
<プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板>
大日本インキ化学工業株式会社製ベッコライト57−206−40(末端に水酸基を有する直鎖状ポリエステル樹脂、数平均分子量10000)を固形分換算で45部、チタン白50部、シクロヘキサノン/イソホローン/キシロール=30/50/20の混合溶剤20部を混合し、ビーズミル練肉し、練肉終了後、硬化剤としてキシレンジイソシアネート(XDI)を5部、ジブチル錫ジラウレート(TK−1)を0.5部加えて得られた上塗り塗料をクロメート処理溶融亜鉛メッキ鋼板(メッキ付着量60g/m2)に乾燥膜厚として40μmになるようバーコ一夕一にて塗布し、最高到達板温235℃にて焼き付け、プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板を得た。
【0068】
(鉛筆硬度)
JIS-K5401「塗膜用鉛筆引き掻き試験機」を用いて塗膜硬度を測定した。芯の長さは3mm塗膜綿との角度45度、荷重1kg、引き掻き速度0.5mm/分、引き掻き長さ3mm、使用鉛筆は三菱ユニとした。
【0069】
(表面光沢)
60度鏡面光沢度(JIS K5400)を測定した。
【0070】
(耐擦傷性)
密着性試験で用いたプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、ラビング試験機(荷重800g)により、乾拭き100回後の表面光沢保持率を評価した。
【0071】
(耐洗剤性)
密着性試験で用いたプライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、住居用洗剤原液(花王株式会社、商品名マジックリン)を含ませた脱脂綿を用いてラビング試験(荷重800g、往復100回)を実施し、試験後の表面光沢保持率を測定した。
【0072】
(熱水処理後の密着性)
水圧転写したサンプルを熱水(水温98℃)中で30分間加熱処理し、次いで塗膜にカッターで1×1mmの碁盤目を100個つくり、その部分に粘着テープを貼った後、この粘着テープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を目視により観察して、次に示す3段階にて評価した。
【0073】
○:剥離が全く認められなかった。
△:全体の1〜30%が剥離した。
×:全体の31〜100%が剥離した。
【0074】
(熱水処理後の光沢保持率)
水圧転写したサンプルを熱水(水温98℃)中で30分間の熱処理し、次いで光沢計で60度グロスを測定して熱水処理前後での光沢保持率を算出した。
【0075】
(可撓性)
水圧転写したサンプルのエリクセン値(定距離法、JIS-K5400)を実施し、鋼球5mm押し出し後の表面状態を観察・評価した。
○:割れ・はがれがない。
×:割れ・はがれがある。
【0076】
(実施例1)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性組成物C1をコンマコーターにより塗工し、30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工した後、次いで60℃で2分間乾燥し、更に完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して、予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂形成層と東洋紡製PPフィルムとを加熱ラミネート(ロール温度:60℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF1を作成した。
【0077】
<硬化性組成物C1の調製>
一般式(1)で表される化合物で、R1−:CH2=CH(CH2)9−、R2:H、R3:H、a:8.7である化合物(P)
【化4】
を20部と、平均6官能ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトール2モルとヘキサメチレンジイソシアネート7モルとヒドロキシエチルメタクリレート6モルを60℃で反応して得られたウレタンアクリレート、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量140)70部とイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1.5部とトルエン/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/4)とで固形分50%とした。
【0078】
得られた水圧転写用フィルムF1からPPフィルムを剥離し、30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からプライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物(石油ファンヒーターハウジング)を押し当て、予備硬化させた硬化性樹脂形成層を転写した。転写後、成形物を水洗し、110℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、10m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂形成層を完全硬化させ、光沢のある硬化皮膜を有する成形品を得た。
【0079】
(実施例2)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性樹脂組成物C2をコンマコーターにより30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工した後、次いで60℃で2分間乾燥し、更に完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂形成層の上に下記の処方の印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF2を作成した。
【0080】
<硬化性組成物C2の調製>
一般式(1)で表される化合物で、R1−:C4H9−CH(C2H5)−(CH2)21−、R2:CH3、R3:H、a:7.3である化合物(Q)
【化5】
を20部と、平均6官能ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトール2モルとヘキサメチレンジイソシアネート7モルとヒドロキシエチルメタクリレート6モルを60℃で反応して得られたウレタンアクリレート、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量140)70部とイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1.5部とトルエン/酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/2/3)とで固形分50%とした。
【0081】
<印刷インキG3組成、赤、黄、白>
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):20質量部、顔料(赤、黄、白):10質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):60質量部、およびワックス等添加剤:10質量部。
【0082】
得られた水圧転写用フィルムF2を30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からプライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物(石油ファンヒーターハウジング)を押し当て、予備硬化させた硬化性樹脂形成層と装飾層とを同時に転写した。転写後、成形物を水洗し、120℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、10m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂形成層を完全硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。
【0083】
(実施例3)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムを用い、その表面に下記組成の硬化性組成物C3をコンマコーターにより30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工し、次いで60℃で2分間乾燥し、塗工フィルムを得た。この塗工フィルムと予め準備しておいた格子柄印刷フィルムP1とを加熱ラミネート(ロール温度:60℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF3を作成した。
【0084】
<硬化性組成物C3の組成>
一般式(1)で表される化合物で、R1−:C4H9−CH(C2H5)−(CH2)21−、R2:CH3、R3:H、a:7.3である化合物(Q)
【化6】
を20部と、平均6官能ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトール2モルとヘキサメチレンジイソシアネート7モルとヒドロキシエチルメタクリレート6モルを60℃で反応して得られたウレタンアクリレート、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量140)70部と、パラロイドA−11(ロームアンドハース社製アクリル樹脂、Tg=100℃、数平均分子量105,000)40部と、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.5部と酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0085】
得られた水圧転写用フィルムF3を実施例1と同様に処理して、プライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物に硬化性樹脂形成層と装飾層とを同時に転写し、UV照射して硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。
【0086】
(実施例4)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性組成物C4をコンマコーターにより塗工し、33g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工し、次いで60℃で2分間乾燥し、塗工フィルムを得た。この塗工フィルムと予め準備しておいた抽象柄印刷フィルムP2と加熱ラミネート(ロール温度:60℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF4を作成した。
【0087】
<硬化性組成物C4の組成>
一般式(1)で表される化合物で、R1−:CH2=CH(CH2)9−、R2:H、R3:H、a:8.7である化合物(P)
【化7】
を10部と、荒川化学社製ビームセット575(平均6官能ポリウレタンアクリレート、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量160)60部と、パラロイドB−72(ロームアンドハース社製アクリル樹脂、Tg=40℃、数平均分子量105,000)40部、メタクリル酸アリル3部、イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1部、イルガキュア809(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.5部と、酢酸エチルとトルエンの混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0088】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を水圧転写用フィルムF4に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例1と同様に処理して、プライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物に転写層を転写し、UV照射して硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。
【0089】
(実施例5)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性組成物C5をコンマコーターにより塗工し、30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工し、次いで60℃で2分間乾燥し、塗工フィルムを得た。この塗工フィルムと予め準備しておいた格子柄印刷フィルムP1を、加熱ラミネート(ロール温度:60℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF5を作成した。
【0090】
<硬化性組成物C5の組成>
一般式(1)で表される化合物で、R1−:CH2=CH(CH2)9−、R2:H、R3:CH3、a:12.8である化合物(R)
【化8】
を20部とDPC−1200(日本化薬株式会社製、平均5官能ウレタンアクリレート、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量240)70部と、パラロイドA−11(ロームアンドハース社製アクリル樹脂、Tg=100℃、数平均分子量105,000)40部と、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.5部と酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0091】
得られた剥離紙付き水圧転写用フィルムF5からPPフィルムを剥離した後、30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、実施例1と同じ活性剤35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からABS製成形物(自動車内装部品)を押し当て、硬化性樹脂形成層と装飾層とを同時に転写した。転写後、成形物を水洗し、80℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、10m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂形成層を完全硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。
【0092】
(実施例6)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性組成物C6をコンマコーターにより塗工し、30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工し、次いで60℃で2分間乾燥し、塗工フィルムを得た。この塗工フィルムと予め準備しておいた格子柄印刷フィルムP1とを加熱ラミネート(ロール温度:60℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF6を作成した。
【0093】
<硬化性組成物C6の組成>
化合物(P)を13部、化合物(R)を5部、M−8060(東亞合成株式会社製ポリエステルアクリレート、平均3.1官能、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量900)60部、パラロイドB−72(ロームアンドハース社製アクリル樹脂、Tg=40℃、数平均分子量105,000)28部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.3部と酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0094】
実施例5における水圧転写用フィルムF5を水圧転写用フィルムF6に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例5と同様に処理して、ABS製成形物に硬化性樹脂形成層と装飾層を同時に転写し、UV照射して硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。。
【0095】
(実施例7)
厚さ35μmのPVAフィルムの表面に下記の硬化性組成物C7をコンマコーターにより塗工し、30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を形成した後、加熱炉(80℃)を通して乾燥ならびに予備硬化させた。次に下記の処方の印刷インキG4をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF7を作成した。
【0096】
<硬化性樹脂組成物C7の組成>
化合物P:20部、3官能ウレタンアクリレート(トルイレンジイソシアネートをEO変性トリメチロールプロパンに対して1分子あたり3個反応させたポリイソシアネートに、ヒドロキシエチルメタクリレートを1分子あたり3個エステル化させた化合物、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量650)70部と、パラロイドA−11(ロームアンドハース社製アクリル樹脂、Tg=100℃、数平均分子量105,000)40部と、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.5部と酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0097】
得られた水圧転写用フィルムF7を、30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、実施例1と同じ活性剤35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からプライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物(石油ファンヒーターハウジング)を押し当て、硬化性樹脂形成層と装飾層とを同時に転写した。転写後、成形物を水洗し、120℃で15分乾燥した。次にUV照射装置(出力240W/cm、10m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂形成層を完全硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。
【0098】
(実施例8)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性組成物C8をコンマコーターにより塗工し、30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工し、次いで60℃で2分間乾燥し、塗工フィルムを得た。この塗工フィルムと予め準備しておいた抽象柄印刷フィルムP2とを加熱ラミネート(ロール温度:60℃)し、気温30℃、湿度50%の環境下で96時間エージングした剥離紙付き水圧転写用フィルムF8を作成した。
【0099】
<硬化性組成物C8の組成>
化合物Pを20部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40部と、アクリルポリオール(ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルフマレート及びスチレンをモル比20:30:20:10:10:10で共重合させた数平均分子量17,000)50部と、このアクリルポリオールの水酸基価に対して1.1倍当量のイソシアネート価のヘキサメチレンジイソシアネートフェノール付加物とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のフェノール付加物との混合物10部と、と、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.5部とをトルエンと酢酸エチル(1/1)の混合溶媒に溶解して固形分率45%とした。
【0100】
得られた水圧転写用フィルムF8を、30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、実施例1と同じ活性剤35g/m2をフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からプライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物(石油ファンヒーターハウジング)を押し当て、硬化性樹脂形成層と装飾層とを同時に転写した。転写後、成形物を水洗し、120℃で60分乾燥ならびに加熱硬化した。次にUV照射装置(出力240W/cm、10m/分のコンベア速度)に2回サンプルを通すことにより、硬化性樹脂形成層を完全硬化させ、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体を得た。
【0101】
(比較例1)
実施例1における硬化性組成物C1を下記の硬化性組成物C51に変更した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂形成層を塗工した後、完全硬化に必要な紫外線照射量の1%以下の紫外線を照射して予備硬化させた。予備硬化させた硬化性樹脂形成層と東洋紡製PPフィルムとを実施例1と同様に加熱ラミネートし、96時間エージングして剥離紙付き水圧転写用フィルムF51を作成した。
【0102】
<硬化性組成物C51の組成>
化合物(Q)を70部とイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1.5部と酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0103】
実施例1における水圧転写用フィルムF1を水圧転写用フィルムF51に変えた以外は実施例1と同様に処理して水圧転写品を得た。
【0104】
(比較例2)
実施例3における硬化性組成物C3を下記の硬化性組成物C52に変更した以外は、実施例3と同様にして、硬化性樹脂形成層を塗工し、塗工フィルムを得た。この塗工フィルムと予め準備しておいた抽象柄印刷フィルムP2とを実施例3と同様に加熱ラミネートし、次いで96時間エージングして剥離紙付き水圧転写用フィルムF52を作成した。
【0105】
<硬化性組成物C52の組成>
平均6官能ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトール2モルとヘキサメチレンジイソシアネート7モルとヒドロキシエチルメタクリレート6モルを60℃で反応して得られたウレタンアクリレート、(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量140)70部と、パラロイドA−11(ロームアンドハース社製アクリル樹脂、Tg=100℃、数平均分子量105,000)40部と、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.5部と酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0106】
実施例3における水圧転写用フィルムF3を水圧転写用フィルムF52に、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例3と同様に処理して、プライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物に硬化性樹形成脂と装飾層とを同時に転写し、UV照射して硬化させて、水圧転写品を得た。
【0107】
(比較例3)
厚さ35μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に下記組成の硬化性組成物C53をコンマコーターにより塗工し、30g(固形分)/m2の硬化性樹脂形成層を塗工した。これを60℃で2分間乾燥した後、次に実施例2で用いた印刷インキG3をグラビア印刷にて4g(固形分)/m2の厚みで柄模様及びベタを3版で印刷し、水圧転写用フィルムF53を作成した。
【0108】
<硬化性組成物C53の組成>
アクリルポリオール(ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びスチレンをモル比20:30:15:15:20で共重合させた数平均分子量22,000)81部と、アクリルポリオールの水酸基価に対して1.1倍当量のイソシアネート価のヘキサメチレンジイソシアネートフェノール付加物とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のフェノール付加物との混合物19部と、酢酸エチル/トルエン混合溶剤(混合比1/1)とで固形分50%とした。
【0109】
実施例2における水圧転写用フィルムF2を、水圧転写用フィルムF53に変え、また活性剤をキシレン30g/m2に変えた以外は、実施例2と同様に処理して、プライマー処理済みの亜鉛メッキ鋼板製成形物に硬化性樹脂形成層と装飾層を同時に転写し、加熱して硬化させ、水圧転写品を得た。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
一般式(1)で表されるアクリレート(1)のみを重合性成分とする硬化性樹脂形成層を有する水圧転写用フィルムを用いて作成した比較例1の水圧転写体は、可撓性は優れるものの、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性などの表面硬度特性に劣った。また、一般式(1)で表されるアクリレート(1)を含有しない硬化性樹脂形成層を有する比較例2および3は、表面硬度特性は十分なものの、可撓性が不十分であった。
【0114】
これに対して、実施例1〜8に示すように、一般式(1)で表されるアクリレート(1)と1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上12以下有し、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が1,000以下のアクリレート(2)を含む硬化性樹脂形成層を有する本発明の水圧転写用フィルムを用いて製造した水圧転写体の硬化樹脂層は優れた模様再現性や密着性に加え、F以上の鉛筆硬度、耐擦傷性、耐洗剤性および耐熱水性に加えて優れた可撓性も有する。
【0115】
【発明の効果】
本発明の水圧転写用フィルムの硬化性樹脂形成層は、一般式(1)で表されるアクリレート(1)と1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上12以下有し、かつ(メタ)アクリロイル基1個あたりの数平均分子量が1,000以下のアクリレート(2)を含むため、その硬化性樹脂形成層は、被転写体に水圧転写された後に活性エネルギー線の照射により硬化して、優れた硬度、耐擦傷性および耐洗剤性に加えて優れた可撓性を有する硬化樹脂層を形成できる。
本発明の水圧転写体は、上記の水圧転写用フィルムを用いて製造されるものであるため、被転写体の表面に優れた硬度、耐擦傷性、耐洗剤性及び可撓性を有する硬化樹脂層を有する。従って、本発明の水圧転写体は家電製品など硬度、耐擦傷性、耐洗剤性等の諸性質が要求される製品の材料として有用に利用することができる。
Claims (4)
- 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な転写層とからなり、前記転写層が活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂形成層からなる水圧転写用フィルムであって、前記硬化性樹脂形成層が、一般式(1)
- 前記硬化性樹脂形成層が、前記アクリレート(1)及び前記アクリレート(2)と相溶する、ガラス転移温度が35℃〜200℃の非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性組成物からなることを特徴とする水圧転写用フィルム。
- 前記硬化性樹脂形成層上に印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる装飾層を有する請求項1または2記載の水圧転写用フィルム。
- 請求項1〜3記載の水圧転写用フィルムを用いて、被転写体の表面に前記硬化性樹脂形成層を水圧転写した後、該硬化性樹脂形成層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させた硬化樹脂層を有する水圧転写体。
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