JP2004160784A - 転写装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置構成を簡便にし、感光性記録媒体に入射されるR、G、B各単色の色純度を向上させ、色再現性が優れ、高品位の画質を有するプリントを得ることができる転写装置を提供する。
【解決手段】転写装置はバックライトユニット1と、略平行光生成用の多孔板2と、デジタル記録された画像を表示する液晶表ディスプレイ素子3と、感光フィルム4が収納されているフィルムパック5と、バックライトユニット1、多孔板2、液晶表ディスプレイ素子3およびフィルムパック5を内包する本体ケース6とを有する。液晶表ディスプレイ素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間に、ディスプレイ素子3のR、G、およびBの各色のカラーフィルタの分光透過率曲線が相互に重なる境界領域の光を選択吸収する吸収フィルタ40が設けられている。これにより、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【選択図】図1
【解決手段】転写装置はバックライトユニット1と、略平行光生成用の多孔板2と、デジタル記録された画像を表示する液晶表ディスプレイ素子3と、感光フィルム4が収納されているフィルムパック5と、バックライトユニット1、多孔板2、液晶表ディスプレイ素子3およびフィルムパック5を内包する本体ケース6とを有する。液晶表ディスプレイ素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間に、ディスプレイ素子3のR、G、およびBの各色のカラーフィルタの分光透過率曲線が相互に重なる境界領域の光を選択吸収する吸収フィルタ40が設けられている。これにより、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタルスチルカメラ(DSC)、ビデオカメラまたはパソコン(パーソナルコンピュータ)等によりデジタル記録された画像を液晶表示デバイスで構成される透過型の画像表示装置に表示し、表示された画像を用いて、光により発色するインスタント写真フィルム等の感光性記録媒体に転写(画像形成)する転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタル記録された画像を記録媒体に転写もしくは印写、または記録する方法として、点状印字ヘッドを有するインクジェット方式、レーザ記録方式または感熱記録方式等の種々の方式が知られている。
上記インクジェット方式等の印字方式は、印字に時間がかかり、インクが詰まり易く、精密な印字を行うと印字した紙がインクにより湿ってしまうなどの問題点がある。また、レーザ記録方式はレンズなどの高価な光学部品が必要であるため、機器のコストが嵩むという問題点がある。また、レーザ記録方式または感熱記録方式は消費電力が大きく、携帯には不向きであるという問題点がある。
このように、上記記録方式による転写装置においては、一般的なことであるが、特に、インクジェット方式では精密な印字にすればするほど、駆動機構および制御機構が複雑になり、装置も大型かつ高価なものになる。さらに、印刷にも時間がかかってしまうという問題点があった。
【0003】
これに対して、液晶表示装置を用いて表示画像をインスタントフィルム等の感光性記録媒体に形成することにより、装置構造を簡略化し、コストを低減した転写装置が提案されている(特許文献1および特許文献2)。
特許文献1に開示された電子プリンタ(転写装置)は液晶ディスプレイの表示画面を光感応性媒体にコピーして写真品質のハードコピーを生成することができるものである。
【0004】
一方、特許文献2に開示された印写装置は、レンズなどの高価な光学部品を用いたり、適当な長さの焦点距離を確保することを不要として、従来の転写装置に比べ、より一層の小型軽量化、低消費電力化および低コスト化を可能にするというものである。図13(a)は特許文献2に開示された印写装置を示す側面図、図13(b)は図13(a)のD部拡大図である。図13(a)に示すように、透過型の液晶ディスプレイ(以下、LCDという)300の表示面に感光フィルム400を密着させ、LCD300の感光フィルム400のある側とは反対側に設けた光源(バックライト100)を点灯する。すなわち、蛍光灯101を点灯してバックライト100を点灯することにより、このLCD300に表示される画像を感光フィルム400に印写するものである。図13(b)に示すように、LCD300においては、表示面側の偏光板301、ガラス基板302、液晶層303、ガラス基板304およびバックライト100側の偏光板305までの合計厚さが2.8mmである。
【0005】
図14は特許文献2の他の実施形態の印写装置を示す斜視図である。特許文献2の他の実施形態においては、図14に示すように、バックライト100とLCD300との間に格子200を設けることにより、バックライト100からの光の拡散を抑制するようにしている。すなわち、バックライト100からの光を平行光に近づけている。さらに、格子200とLCD300との間に矩形状の中空の筒からなるスペーサ201を設けることにより、格子200の枠組の形の像(枠組による影)が感光フィルム400に写り込むのを防止して、光学部品を設けたり適当な長さの焦点距離を確保したりすることなしに、感光フィルム400上に形成される画像の鮮明度を実用上問題のない程度まで向上させたものが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、図13(b)に示すように、LCD300の合計厚さが2.8mmであり、ドットサイズが0.5mmで表示されたLCD300の画面を感光フィルム400に印写する印写装置の例が示されている。LCD300から発した光の拡散を防ぐために、厚さが10mmで、貫通孔の大きさが5mm角である格子200を配し、この格子200とLCD300との間に長さが20mmのスペーサ201を配置し、さらにLCD300と感光フィルム400とを密着させて、画像のボケ(不鮮明化)を防止して、印写することが示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−309829号公報
【特許文献2】
特開平11−242298号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された転写装置は、液晶ディスプレイの表示画面を光感応性媒体にコピーするために、液晶ディスプレイの表示画面と光感応性媒体との間に、ロッドレンズアレイなどの光学部品を用いるものであり、光学部材が高価であるという問題点がある。また、液晶ディスプレイと光感応性媒体との間に所定の間隔(総共役長)が必要であり、装置の小型化にも限界がある。特許文献1においては、例えば、総共役長が15.1mm必要である。
【0009】
また、特許文献2に開示された印写装置は、LCD300と感光フィルム400とを密着させて印写することにより、画像を得ているが、例えば、いくつかの色が混じってしまい、中々正確な色を再現することができず、感光フィルムに転写された画像の画質が劣化するという問題点がある。これは、以下に示す理由によるものである。
【0010】
すなわち、まず通常カラーLCDは、人が見て、美しく、明るくあるようにという目的のため、カラーLCDに使用される赤(以下、Rという)、緑(以下、Gという)、および青(以下、Bという)の各色のカラーフィルタは、透過率が高く、かつ透過波長領域が広く作られている。
図15は、縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとって、R、G、およびBの各色のカラーフィルタの分光透過率曲線を示すグラフである。図15に示す各色のカラーフィルタの分光透過率曲線R、B、Gは、LCDのカラーフィルタの一例を示すものである。
例えば、図15に示すように、LCDの各色のカラーフィルタは、いずれの各色のカラーフィルタとも透過波長領域が広く作られているため、波長が600nm付近では、R光とG光の透過領域が重なっており、また、波長が500nm付近では、B光とG光の透過領域が重なっており、それぞれの重なった領域では各両方の色の光が透過してしまう。
【0011】
また、LCDのバックライト光源として用いられる冷陰極管も、光量を多くするため、なるべく発光領域の幅の広い蛍光物質が使われている。さらに、人の目に明るく見えるようにするため、G光を強くしてあるのが一般的である。
図16は、縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのバックライト光源の分光強度分布を示すグラフである。図16に示す光源の分光強度曲線は、いわゆる三波長型の冷陰極管のスペクトル波形である。図16に示す光源は、波長が550nm付近のG光に最も大きなピークを有している。
【0012】
また、画像が転写される感光フィルムも、それぞれR光、G光およびB光により発色する範囲は、R光、G光およびB光それぞれの光の波長でかなりのピークを有してはいるが、R光とG光とで発色する境界、およびG光とB光とで発色する境界において重なりを有している。
例えば、感光フィルムの例として、富士写真フイルム社製インスタントフィルム「チェキ」の分光感度分布を図17に示す。
図17は、縦軸に感度をとり、横軸に波長をとって、感光フィルムのR光、G光、およびB光における分光感度特性を示すグラフである。
図17に示すように、「チェキ」の場合でも、R光とG光との境界570〜600nm、及びG光とB光の境界480〜510nmにおいて、わずかではあるが重なっている。
従って、この境界領域(混色領域)の波長の光は、R光とG光とで発色する境界(混色領域)においては、感光フィルムでは、RとGとの両方が発色し、またG光とB光とで発色する境界(混色領域)においては、GとBとの両方が発色してしまう。その結果、得られた画像において、混色が生じてしまい画質が劣化する。
【0013】
上述の如く、光源がR光、G光およびB光の全ての光を含んでいる場合について説明したが、LCDに表示される色がR、G、およびBであり、各単色により感光フィルムが露光される場合にも、他の色が混じることを、以下、Gの場合を例にとって説明する。
LCDは、Gのみを表示する。それには、LCDのGのカラーフィルタのみのドットで光が透過でき、R及びBのカラーフィルタのドットは、光が透過しないようにする。
このように、LCDにGのみを表示した状態で、図16に示したような分光強度分布を有する三波長型冷陰極管を必要な時間点灯させる。なお、このとき、三波長型冷陰極管からは、発光できるすべての波長の光が出ている。
この光は、LCDのGのカラーフィルタを透過して、感光フィルムに達する。従って、感光フィルムに到達できる光は、LCDのGのカラーフィルタの光の波長に対して、Gのカラーフィルタの透過率を乗じたものとなる。
【0014】
図18は、縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのGのカラーフィルタを透過した光の分光強度特性を示すグラフである。
図18に示すように、Gのカラーフィルタ透過後の光の強度分布は、440〜480nm位まで、だらだらとしたB領域の透過光があり、さらに、490nm付近に小さい山(ピーク)の透過光がある。また、Rの方向(長波長側)では、580nm付近に山、さらに、610nm付近に小さい山の透過光がある。このうち、特に、490nmの透過光は、フィルムのB領域の光が出ていることになる。
【0015】
その結果、光源として図16に示すような分光強度特性を有する光源を用いてLCDにGの色を表示させて、感光フィルムを露光しても、感光フィルムには、殆どGの色に近い色ではあるが、青(B)の色も少し混じった色となってしまう。このように、特許文献1および2に示す従来の転写装置においては、どうしても混色が生じ、適正な色の画像を得ることができず、画質が低下するという問題点がある。このため、単に、LCDに表示された画像を転写するのみでなく、色の再現性を向上させて、高画質な画像を得ることが望まれている。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、装置構成を簡便にし、感光性記録媒体に入射されるR、G、B各単色の色純度を向上させ、色再現性が優れ、高品位の画質を有するプリントを得ることができる転写装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、光源と、液晶層をその両側から基板で挟持する構造の透過型の画像表示装置と、感光性記録媒体とを、前記画像表示装置の画像表示面と前記感光性記録媒体の記録面とを対向させて前記光源の光の進行方向に沿って直列に配置し、前記透過型の画像表示装置から通過した表示画像を前記感光性記録媒体の前記記録面に転写する転写装置であって、前記透過型の画像表示装置には、赤、緑、および青のカラーフィルタが設けられており、さらに前記各カラーフィルタの分光透過率曲線が互いに重なる領域の波長域の光を選択吸収する吸収フィルタが設けられていることを特徴とする転写装置を提供するものである。
【0018】
このような本発明の転写装置においては、前記吸収フィルタは、前記光源と前記画像表示装置との間に設けられていることが好ましい。また、この場合、前記吸収フィルタは、例えば、ダイクロイックミラーであることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る転写装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る転写装置を示す模式的側断面図であり、図2は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の要部を示す模式的断面図である。なお、図2において、フィルムケース51は省略している。
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態の転写装置は、光源となるバックライトユニット1と、略平行光生成用の多孔板2と、デジタル記録された画像を表示する液晶表示素子(以下、LCD素子という)3と、取り付け取り外し自在なフィルムケース51に感光性記録媒体である感光フィルム4を収納しているフィルムパック5と、LCD素子3のバックライトユニット1、多孔板2、LCD素子3およびフィルムパック5を内包する本体ケース6とから構成される。なお、LCD素子3は本発明における画像表示装置に対応するものである。フィルムケース51は感光フィルム4の長手方向の一方の側面に取出口53が設けられている。また、フィルムケース51のLCD素子3と対向する面に開口部54が形成されている。
【0021】
ここで、多孔板2と、LCD素子3と、感光フィルム4とは、バックライトユニット1からの光の進行方向に沿って直列に配置されており、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとが対向して配置されている。LCD素子3とフィルムケース51とはその周縁部が密着している。
フィルムケース51の開口部54には、後述する吸収フィルタ40が設けられている。すなわち、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間に吸収フィルタ40が配置される。
【0022】
光源となるバックライトユニット1は、LCD素子3の背後からその全面に均一な光を照射するためのもので、LCD素子3の表示画面と略同一の光射出面(発光面)を持つ面状光源である。バックライトユニット1は冷陰極管等の棒状ランプ7から射出された光を所定方向に導入する導光板10を有し、導光板10に導入された光を略直交する方向に反射させる反射板11が導光板10の裏面に設けられている。反射板11で反射された光を均一化する拡散板12が導光板10の表面に設けられている。
【0023】
本実施形態に用いられるバックライトユニット1は、特に限定されるものではなく、棒状ランプ7が発光する光を、導光板、反射シート、拡散シートおよびプリズムシートなどからなるバックライトアセンブリを用いて均一に拡散させるようにした面状光源であればよく、従来公知のLCD用バックライトユニットを用いることができる。
また、本実施形態に用いられるバックライトユニット1は、所要の光強度の光を射出できる面状光源であれば、LEDアレイ光源、有機ELパネルまたは無機ELパネル等を用いる光源なども利用可能である。
【0024】
多孔板2は、必要に応じて、バックライトユニット1とLCD素子3との間に配置されて、バックライトユニット1からの光を略平行光(平行光を含む)にし、LCD素子3に入射する光をなるべく平行にするための略平行光生成素子であって、所定厚さの矩形板に所定のサイズの貫通孔21を所定ピッチで多数設けたものである。
図3(a)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の一部を拡大して示す正面図、(b)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第1の変形例を示す正面図、(c)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第2の変形例を示す正面図である。図3(a)に示すように、本実施形態においては、正三角形の頂点の位置が中心となるようにして貫通孔21が複数形成されている。各貫通孔21は縁部間の距離が0.1mmである。
【0025】
なお、本実施形態において用いられる略平行光生成素子としては、同様の機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、図3(b)に示す4角形格子21a、図3(c)に示す6角形格子21b等を用いてもよい。しかし、製作が容易な点も考慮して、図3(a)に示すような多孔板とすることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態においては、多孔板2とLCD素子3との間隔は、好ましくは、0.05mm〜10mmとし、より好ましくは0.1mm〜5mmとすることが良い。これは、多孔板2に代表される略平行光生成素子の貫通孔21のパターンが拡散光による「影」の形で現われるのを防止するためのものである。なお、ここで設定している上記間隔は、上述の「影」を防止するとともに、転写画像の鮮明度が低下しない条件である。
【0027】
ここで、多孔板2の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば所定の厚さを有するアルミニウム板等の金属板、樹脂板またはカーボン材料板等を用いることができる。なお、多孔板2の厚さも、特に限定されるものではなく、要求される転写画像の鮮明度に応じて、または、LCD素子3の表示画面または感光フィルム4の感光面4aの大きさに合わせて、適宜選択すれば良い。また、多孔板2の製作方法としては、多孔シートを積層する方法または樹脂によるモールド(成形)方法などが実用的であるが、加工が可能であれば、特に限定されるものではなく、機械的に孔加工する方法等を含め、どのような加工法を用いても良い。
【0028】
また、多孔板2に設ける複数の貫通孔21の配列形状および配列ピッチは、貫通孔21が均一に配置されるものであれば、どのようなものでも良い。例えば、貫通孔21の配列形状は、碁盤目状または千鳥状(最密状)であって良く、好ましくは千鳥状が良い。また、貫通孔21の配列ピッチは、なるべく細かい方が良く、貫通孔21と貫通孔21との間(貫通孔21の縁部間の距離)は、0.05〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3mmが良い。
【0029】
また、多孔板2に設ける貫通孔21の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円筒形、楕円筒形または多角筒形などにすることができる。すなわち、貫通孔21の平面形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形または多角形等にすることができるが、製作を容易にするために、円形または多角形とすることが好ましい。また、貫通孔21は、多孔板2の厚さ方向には、平行な貫通孔であることが好ましいが、略平行であると見なせるものであれば良い。
また、貫通孔21のサイズも、特に限定されるものではないが、多孔板2の貫通孔21の直径(円の場合)または相当直径(楕円または多角形等の場合)は、5mm以下とすることが好ましく、この多孔板2の厚さが貫通孔2の直径または相当直径の3倍以上であることが好ましい。なお、上述の相当直径とは、「4×面積/総辺長(または全周長)」で表わされる長さのことである。多孔板2の貫通孔21の直径または相当直径を5mm以下とし、この多孔板2の厚さが貫通孔21の直径または相当直径の3倍以上とするのは、これらの条件が、多孔板2によって平行光を得るために有効な条件であるからである。特に、多孔板2の厚さが貫通孔21の直径または相当直径に対して5倍以上、さらに好ましくは7倍〜25倍とするのがよい。
【0030】
また、貫通孔21の内面を含めて、多孔板2の全表面に対して反射防止膜を設けることが好ましい。反射防止膜としては、その反射率が所定値以下であれば、特に限定されるものではないが、例えば、黒色メッキ膜、黒色化処理膜または黒色塗装被膜などを挙げることができる。本発明においては、反射率は、2%以下であることが好ましい。これは、反射率が2%以下であれば、バックライトユニット1から入射した、平行光以外の散乱光を効率良く吸収でき、バックライトユニット1から略平行光(平行光を含む)のみを効率良く射出させて、LCD素子3に入射させることができるからである。なお、反射率は、例えば、(株)島津製作所製MPC3100型分光反射率測定機を用い、波長550nmで測定することができる。
【0031】
LCD素子3は、デジタル記録された画像を表示するための透過型の画像表示装置であって、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラまたはパーソナルコンピュータなどのデジタル画像データ供給部に接続され、供給されるデジタル画像データに応じて表示画像を透過像として表示するものである。なお、LCD素子3に接続されているデジタルカメラ等のデジタル画像データ供給部では、予め用意されている画像の内から、任意の画像を選択して供給できるように構成されている。なお、LCD素子3に供給されるデジタル画像データとしては、上述の場合の他、スキャナ等によって透過原稿または反射原稿から読み取られたものであっても良い。また、LCD素子3は、透過像として画像を表示できれば、どのようなものでも良く、デジタル画像データではなくても、通常のビデオカメラで撮影された画像のアナログ画像データに基いて画像を表示するものであっても良い。
【0032】
なお、このLCD素子3と、多孔板2との間には、所定の間隙を設けているが、この間隙は、上述したように、好ましくは0.05mm〜10mmであり、より好ましくは0.1mm〜5mmである。しかし、任意の寸法に調整可能に構成されていることが好ましい。
【0033】
図4は本実施形態の転写装置に使用される透過型の液晶表示素子(LCD素子)3の構造を示す断面図である。LCD素子3は、図4に示すように、感光フィルム4の側から多孔板2側(バックライトユニット1側)に向かって、フィルム状偏光板(以下、偏光フィルムともいう)31と、ガラス基板32と、電極33と、液晶層34と、電極35と、ガラス基板36と、フィルム状偏光板37とを積層し、液晶層34をその両側からガラス基板32、36および偏光板31、37で挟持する構造を有するものである。ガラス基板32と電極33との間にはR、GおよびBの各色のカラーフィルタ38R、38G、38B、およびブラックマトリックス39が設けられている。周知のように、この他、配向膜(図示せず)等を有しているのはいうまでもない。ここで、例えば、TFT型LCDの場合、電極33は、共通電極であり、電極35は、表示電極およびゲート電極等である。なお、ガラス基板32および36の代りに樹脂基板等を用いてもよい。
【0034】
また、図4に示すように、LCD素子3の構造は、後述する感光フィルム4の側の偏光フィルム31およびガラス基板32の合計厚さを除いて、画像表示が可能であれば、従来公知の液晶表示モードを持ち、従来公知の駆動方式のLCD素子を用いることができる。例えば液晶表示モードとしては、TNモード、STNモード、CSHモード、FLCおよびOCBモードなどの偏光板を用いる液晶表示モードを挙げることができる。駆動方式としては、TFT型およびダイオード型などのアクティブマトリックス駆動方式の他、XYのストライプ電極からなるダイレクトマトリックス駆動方式等を挙げることもできる。
【0035】
また、LCD素子3のサイズは、特に限定されるものではなく、どのようなサイズでも良く、感光フィルムのサイズに合わせて適宜選択すれば良い。また、LCD素子3のRGB各画素のドットサイズも、特に限定されるものではないが、より鮮明な高画質の写真画像を得るためには、各画素の少なくとも短辺側の大きさは、0.2mm以下であることが好ましい。これは、各画素の少なくとも短辺側の大きさが0.2mm以下では、より鮮明な転写画像を得ることができるからである。
【0036】
なお、LCD素子3の画素数または画素密度も、特に限定されるものではないが、高精細・高鮮明度の高画質画像を転写して得るためには、近年市販されているRGB各画素のドットサイズが小さい高精細画面を持つLCDを用いることが好ましい。このようなLCDとしては、例えば、UXGA(10.4インチ、1200×1600画素)またはXGA(6.3および4インチ、1024×768画素)などのTFT型LCDを挙げることができる。
【0037】
本実施形態に用いられるLCD素子3においては、少なくとも、感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtは、できるだけ薄いことが良く、1.0mm以下が好ましい。さらに好ましくは0.8mm以下、さらにより好ましくは0.6mm以下とすることが良い。
【0038】
なお、より一層好ましくは、バックライトユニット1(多孔板2)側の基板36と偏光フィルム37とを合わせた合計厚さは、薄い方が良く、1.0mm以下が好ましい。さらに好ましくは0.8mm以下であり、さらにより好ましくは0.6mm以下とすることが良い。また、合計厚さの下限値も、特に限定されるものではないが、例えばガラス基板32では、それ自体の厚さを薄くするのは0.5mm程度が限界と考えられることから、0.5mm以上としても良い。なお、この合計厚さは、これらに限定されることはなく、上記条件を実現するための構成として、ガラス基板の代りに、樹脂基板の使用を考慮することも有効であり、これにより0.5mm程度の合計厚さの下限値をさらに小さくすることができる。
【0039】
以下、本実施形態において、感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtを1.0mm以下とする理由について説明する。
この合計厚さの条件は、バックライトユニット1からLCD素子3までの区間での光の拡散を抑えることに相当する。LCD素子3と感光フィルム4とを、厳密には、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを非接触状態にしても、より鮮明な転写画像を得られるという結果に通じるものである。
すなわち、本発明に係る転写装置においては、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを、所定の間隔だけ離間させて、非接触状態にしている。この非接触状態にするという条件は、簡単な構成で、実用性を挙げ、実際に取り扱い易い転写装置とするためには必要な条件である。しかし、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間での光の拡散を助長し、鮮明な転写画像を得るという点からはむしろマイナス要因である。このため、本発明においては、後述するように、上記非接触状態によるマイナス分(光の拡散の増大分)を、LCD素子3のカラーフィルタの分光透過率曲線が重なる境界領域S1 、S2 の光を選択吸収する吸収フィルタ40を設けて、LCD素子から射出される光の色純度を上げることにより、補い、更に画質を向上させる。さらに、上述の合計厚さの条件、および多孔板2の厚さの貫通孔21の直径または相当直径との比を3倍以上とすることによるプラス分(光の拡散の抑制分)でカバーする。
【0040】
ところで、上述したように、図13(a)および(b)に示す特許文献2に開示された従来の印写装置においては、厚さが約2.8mmのLCD300が用いられている。図13(b)に示すように、LCD300は、2枚の偏光板301、305、2枚の基板302、304およびこれらに挟まれる液晶層303から構成されている。特許文献2には開示されていないが、一般に、液晶層そのものの厚さは0.005mm程度(カラーTFT液晶ディスプレイ:p207、共立出版発行参照)とされているため、片側の基板301(305)と偏光板302(304)とを合わせた厚さは、1.3mm〜1.4mm程度と考えられる。
ここで、光の拡散度合いは距離に比例するため、上述の厚さ1.3mm〜1.4mmが1/2になれば、拡散度合いも1/2になり、従来技術の項で述べた「片側について、約0.09mm拡大される」という値もその1/2、つまり0.04mm〜0.05mm程度に減少すると推察される。しかしながら、この程度の拡散度合いでは、従来技術の項で述べたように、最新のUXGAまたはXGAなどのような微細なドットサイズを有するLCDにおいて、隣接するドットの重なり合いが生じる。
【0041】
すなわち、拡散度合いを0.04mm〜0.05mm程度に減少させただけでは、ドットの重なり合いが生じ、これに起因する色の滲みが発生して、不鮮明な画像しか得ることができない。しかし、本願発明者らは特開2002−196426号公報に記載したように、LCD素子3の片側の少なくとも感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた厚みを1.0mm以下とすることにより、UXGAまたはXGAなどのような微細なドットサイズを有するLCD素子においても、ドットの重なり合いに起因する色の滲みが解消して、鮮明な転写画像が得られることを知見している。さらに、上述したように、カラーフィルタの分光透過率曲線が重なる境界領域S1 、S2 の光を選択吸収する吸収フィルタ40を設けることにより、混色を防止する。このため、露光焼付に必要な色の光の成分だけを感光フィルム4に入射させることができる。これらのことから、LCD素子3と感光フィルム4との間隔が等しいものに比べて、UXGAまたはXGAなどのような微細なドットサイズを有するLCD素子3においても、色の滲みがさらに一層解消されて鮮明な転写画像が得られる。
【0042】
本実施形態においては、感光フィルム4の感光面4aが、所定の間隙を隔てて、LCD素子3の画像表示面3aに配置されるように構成されている。複数枚の感光フィルム4が、フィルムケース51に収納されている。本実施形態においては、フィルムケース51は、本体ケース6内に取り付けられ、1セット(パック)の複数枚の感光フィルム4を装填するものであっても、取り付け取り外し自在なフィルムケース51に複数枚の感光フィルム4を収納しているフィルムパック5をそのまま本体ケース6に装填するものであっても良い。しかし、フィルムケース51ごとフィルムパック5、すなわち、複数枚の感光フィルム4を収納しているフィルムケース51自体を装填できるように構成しておくことが好ましい。
【0043】
感光フィルム4は、本発明の感光性記録媒体として用いられるものである。本発明の感光性記録媒体としては、LCD素子3の透過表示画像の露光焼付により、可視ポジ画像を形成できるものであればどのようなものでも良く、特に限定されるものではないが、例えば、いわゆるインスタント写真フィルムが好ましい。このような感光性記録媒体として用いられる感光フィルム4としては、モノシートタイプのインスタント写真用フィルム「インスタックスミニ」または「インスタックス」(共に富士写真フイルム(株)製)を挙げることができる。
このようなインスタント写真フィルムは、フィルムケースに所定数のフィルムをしたいわゆるフィルムパックとして市販されている。
従って、本発明においては、感光フィルム4の感光面4aとLCD素子3の画像表示面3aとの間隙が、後述する条件を満足するように配置できれば、図1に示すように、フィルムパック5をそのまま本体ケース6に装填することもできる。
【0044】
また、本実施形態においては、フィルムパック5を使用する場合には、例えば、感光フィルム4の画像形成領域よりもフィルムケース51の開口部54の開口領域を大きくする。もちろん、LCD素子3の外形で規定される領域はLCD素子3の画像表示領域よりも大きい。本実施形態においては、LCD素子の画像表示領域は感光フィルム4の画像形成領域と同じであることが好ましい。この場合、各部のサイズの大小関係は、感光フィルム4の画像形成領域よりもフィルムケース51の開口部54の開口領域の方が大きい。通常、LCD素子3の外形で規定される領域がフィルムケース51の開口部54の開口領域よりも大きい。しかし、フィルムケース51の開口部54の開口領域がLCD素子3の外形で規定される領域よりも大きいことが非常に好ましい。
【0045】
図5は本実施形態の転写装置に使用されるフィルムパック5の一例の構造を示す斜視図である。図5に示すような構造を有するフィルムパック5には、そのフィルムケース51の一端部に感光フィルム4を、フィルムパック5(のフィルムケース51)から取り出すためのクロー部材(爪)が進入可能な切り欠き52が設けられている。露光の終了した感光フィルム4は、上記クロー部材によりフィルムパック5のフィルムケース51の取出口53から取り出され、搬送機構(図示せず)により、処理工程に送られる。
なお、本実施形態における処理工程とは、上記感光フィルム4の一端に予め設けられている処理液(現像液)チューブ(図示せず)を押し破って、現像液を感光フィルム4内全面に均一に行きわたらせることであり、感光フィルム4のフィルムパック5からの取り出し・搬送と実質的に同時に行われるものである。処理工程を経た感光フィルム4は、本体ケース6の取出口62(図1参照)から装置外部に送り出される。
【0046】
周知のように、この種のインスタント写真用フィルムは、上述の処理工程を経た後、数十秒ほどで完全な画像を形成し、観賞に供することが可能になる。従って、本発明の転写装置では、上述の処理工程を施すまでが、必要とされる機能となる。1枚の感光フィルム(フィルムシート)が送り出された後には、次の感光フィルムが現われ、次の露光(転写)が可能な準備状態が実現される。
なお、上述した、このフィルムパックの取り扱い方法については、先に本出願人の出願に係る特開平4−194832号公報に開示されたインスタント写真用フィルムを用いるインスタントカメラを参照することができる。
【0047】
ところで、本発明の転写装置においては、前述したように、実際に取り扱い易い装置とするために必要な条件から、LCD素子3と感光フィルム4とを非接触状態で、厳密には、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを非接触状態で、所定の間隔だけ離間させるようにしている。本発明に係る転写装置においては、図2に示すように、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間の離間間隔は、0.01mm〜3mmであることが好ましく、より好ましくは0.1mm〜3mmであることが良い。
【0048】
これは、上述したように、鮮明な転写画像を得るという点からはむしろマイナス要因ではあるが、実際に取り扱い易い装置とするためには必要な条件である。これによるマイナス分は、LCD素子3の感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtを規制することによって光拡散の抑制というプラス要因でカバーできるからである。さらに、多孔板2の貫通孔21の直径または相当直径に対する比を3倍以上とすることによる光拡散の抑制というプラスの要因でもカバーできる。
【0049】
本実施形態の転写装置においては、LCD素子3に表示された画像のサイズは、感光フィルム4に転写される画像のサイズと実質的に同一とすることが好ましい。これは、本実施形態においては、レンズ系を用いた拡大または縮小を行うことなく、直接転写方式とすることで、装置の小型化および軽量化などを実現することができるからである。
【0050】
本体ケース6は、上述の本実施形態の各構成要素、すなわちバックライトユニット1、多孔板2、LCD素子3、フィルムパック5(またはフィルムケース51)をおよび露光済みフィルムの送り出し兼処理液展開ローラ対61等を内部に収納するケースである。本体ケース6においては、露光済みフィルムの送り出し兼処理液展開ローラ対61は、装填されたフィルムパック5(またはフィルムケース51)の露光済フィルムの取出口53に臨む位置に取り付けられている。また、本体ケース6には、このローラ対61を臨む位置に、露光済みの感光フィルム4の本体ケース6からの取出口62が開口されている。また、本体ケース6には、露光済みフィルムパック5の裏側の開口から挿入されて、感光フィルム4をフィルムケース51の前縁に、すなわち、LCD素子3側に付勢するためのバックアップ用押圧ピン63が設けられている。
【0051】
なお、図示はしていないが、本実施形態の転写装置はローラ対61を駆動するための駆動源(モータ)、またはこれを駆動したりバックライトユニット1の棒状光源7を点灯するための電源、これらを制御するための電装品、LCD素子3に画像を表示させるためにデジタル画像データ供給部からデジタル画像データを受信しLCD表示用画像データに変換するデータ処理装置、および制御装置などを有しているのはもちろんである。
【0052】
以下、本発明の特徴である吸収フィルタ40について説明する。吸収フィルタ40は、図15に示す分光透過率曲線Bと分光透過率曲線Gとが重なる境界領域S1 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S1 の波長域の光の光量を少なくするものであり、さらに、分光透過率曲線Gと分光透過率曲線Rとが重なる境界領域S2 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S2 の波長域の光の光量を少なくするものである。
【0053】
なお、吸収フィルタ40を第1および第2の吸収カラーフィルタからなるものとすることもできる。この場合、例えば、第1の吸収カラーフィルタは、境界領域S1 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S1 の波長域の光の光量を少なくするものである。また、例えば、第2の吸収カラーフィルタは、境界領域S2 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S2 の波長域の光の光量を少なくするものである。
【0054】
これにより、棒状ランプ7から射出される光の成分のうち、カラーフィルタに入射すると混色が生じる波長領域の光が吸収されて、この波長領域の光の光量が少なくなる。これにより、LCD素子3の表示画像における3原色の混色が低減し、感光フィルム4に入射する3原色の色純度が高くなり、色再現性を向上させることができる。従って、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0055】
次に、吸収フィルタの効果について説明する。本実施形態の吸収フィルタは、上述の如く、LCD素子のカラーフィルタにおいて、青と緑の混色が生じる境界領域S1 、および緑と赤の混色が生じる境界領域S2 の波長域の光を選択吸収して光強度を低下させるものである。
この場合、図15に示す境界領域S1 の波長領域の光を選択吸収する吸収フィルタの効果について説明する。
図6は、縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、棒状ランプ(光源)の分光強度分布を示すとともに、本実施形態の吸収フィルタの効果を説明するグラフである。なお、図6に示す分光強度分布曲線Aは、吸収フィルタを透過させる前の棒状ランプ7(光源)の分光強度分布を示すものである。また、分光強度分布曲線Fは、この分光強度分布曲線Aで表される棒状ランプ7の光が吸収フィルタ40を透過した後の分光強度分布を示すものである。
【0056】
吸収フィルタ40は、図15に示す境界領域S1 の波長領域の光を選択吸収するものであり、これにより、図6に示すように、分光強度分布曲線Aにおいて、波長が450nm〜500nmの範囲で存在するピークが、分光強度分布曲線Fではなくなっている。このように、吸収フィルタ40を用いることにより、棒状ランプ7における分光強度分布曲線Aで存在したLCD素子3において混色を発生させる境界領域S1 における光強度を低下させることができる。
この吸収フィルタ40を透過した光をLCD素子3に入射させ、LCD素子3をG表示させる。この場合、境界領域S1 における光の光強度が低いので、緑の中に青が混色されることが防止される。
吸収フィルタによる混色の抑制効果を調べるために、LCD素子3に表示された緑におけるR、GおよびBの各色の濃度を測定した。この結果を下記表1に示す。下記表1に示す数値は、濃度であり、値が小さい方が明るいことを示す。
【0057】
【表1】
【0058】
また、本発明においては、吸収フィルタとして、ダイクロイックミラーを用いることもできる。
図7は、縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとり蒸着層数を変えた場合のダイクロイックミラーの分光透過特性を示すグラフである。図7に示す分光透過特性を有するダイクロイックミラーは、青と緑との混色領域である境界領域S1 の光を選択吸収するものである。図7に示すように、蒸着層数を変えることにより、境界領域S1 における透過率を変化させることができる。この場合、例えば、蒸着層は5層であり、この蒸着層数を増やすことにより、透過率を下げることができる。
本実施形態の転写装置においては、吸収フィルタ40として、カラーフィルタに変えて、図7に示すダイクロイックミラーを用いることにより、境界領域S1 の光の光強度を低下させることができるので、青および緑の混色が軽減される。このため、青および緑の色純度が高くなり、色再現性が向上する。図7に示すダイクロイックミラーに加えて、境界領域S2 についても、この境界領域S2 の光を選択吸収する分光透過特性を有するダイクロイックミラーを用いることにより、緑および赤の混色が軽減されて、緑および赤の色純度が向上し、LCD素子3の画像表示面3aにおける色再現性が向上する。これにより、ダイクロイックミラーを用いた転写装置においても、3原色の色純度が向上し、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0059】
また、吸収フィルタ40により選択吸収する波長領域は、感光材料の分光感度特性にも依存する。このため、感光材料の分光感度特性に合わせて吸収フィルタ40の選択吸収する波長領域を調整する必要がある。図17に示す感光フィルムにおいて、B光およびG光の分光感度曲線が重なる波長域は、460〜510nmであり、R光およびG光の分光感度曲線が重なる波長域は、570〜600nmである。この場合、吸収フィルタ40は、460〜510nmおよび570〜600nmの波長域の光を選択吸収する必要がある。
【0060】
本実施形態においては、LCD素子3にデジタル画像データ供給部から供給された画像を表示する。次いで棒状ランプ7を点灯して多孔板2を経て略平行光をLCD素子3の画像表示面3aに垂直に入射させる。そして、LCD素子3に表示された画像が感光フィルム4に露光焼付けされる。これにより、感光フィルム4に転写画像が形成される。
【0061】
本実施形態の転写装置においては、LCD素子3の各色のカラーフィルタ38R、38G、38Bの分光透過率曲線が重なる境界領域の光を選択吸収する吸収フィルタ40を設けることにより、LCD素子3から射出される3原色の混色を低下させることができ、3原色の色純度が高くなり、感光フィルム4における色再現性を向上させる。これにより、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は本発明の第2の実施形態に係る転写装置を示す模式的断面図である。なお、本実施形態においては、図1乃至7に示す第1の実施形態と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
本実施形態は、第1の実施形態の転写装置と比較して、吸収フィルタ40の設ける位置が異なり、すなわち、吸収フィルタ40が拡散板12と多孔板2との間に設けられている点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態の転写装置と同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施形態においても、吸収フィルタ40は、第1の実施形態に示すように、境界領域S1 、S2 における光を選択吸収するものであり、本実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このため、感光フィルム4の感光面4aに入射する各色の光の混色が抑制されて、各色の色純度が向上する。従って、高品位の画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
なお、本実施形態において、吸収フィルタ40には、上述の第1の実施形態において示す特性を有するもの(図6および図7参照)を使用する。
【0064】
なお、本発明において、転写装置の構成は、上述の第1および第2の実施形態に示すものに、特に限定されるものではない。例えば、以下に説明する構成の転写装置とすることもできる。
次に、本発明の第1の実施形態の第1の変形例について説明する。図9は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。本変形例においては、図1乃至7に示す第1の実施形態と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0065】
本変形例は、第1の実施形態の転写装置と比較して、多孔板20がLCD素子3の画像表示領域全面に設けられておらず、多孔板20は貫通孔22が1列形成されたものである。多孔板20の下方に線状光源7aが設けられ、多孔板20と線状光源7aとが一体化されて線状略平行光生成ユニット1aとされている。この多孔板20には、その移動する方向A前後に多孔板20の貫通孔22以外からの光を遮光するための遮光膜9a、9bが設けられている。この遮光膜9a、9bは、多孔板20が移動できるように、例えば、方向A前後に伸縮自在な蛇腹状の膜で構成されている。また、線状光源7aからの多孔板20の入射面(下面)に吸収フィルタ40が設けられている。さらに、多孔板20を貫通孔22の配列方向と直交する方向Aに移動させる移動手段8が本体ケース6内の下方に設けられている点が異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。本変形例における多孔板20は、移動手段8によって、LCD素子3の一辺に沿って移動させられるものであり、このとき、遮光膜9a、9bは、多孔板20の移動に伴って方向A前後に伸縮する。
【0066】
本変形例においても、吸収フィルタ40は、上述の第1の実施形態と同様のものを用いる。このため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。なお、本変形例においても、3原色の混色が抑制され、色純度が高い光で画像を感光フィルム4に転写することができるので、高品位の画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0067】
図9に示す転写装置において、線状略平行光生成ユニット1aは、上述の如く棒状ランプ(例えば、直管冷陰極管)からなる線状光源7aと、線状光化手段としての柱状の多孔板20とを結合して一体化したユニットとしたもので、線状光源7aからの光を線状の実質的な平行光として透過型のLCD素子3に直角に入射させる機能を有するものである。線状略平行光生成ユニット1aは、この線状略平行光生成ユニット1aと透過型LCD素子3との相対的な移動方向(透過型LCD素子3の表示画面の走査方向)に直交する方向(長手方向)に幅を有する線状光を射出させるものである。
【0068】
多孔板20を移動させるための移動手段8は、ケース本体6内におけるローラ対61側に配置されたモータ8aと、モータ8aに取り付けれる第1のプーリ8cと、第1のプーリ8cに、多孔板20の移動方向に対向して配置される第2のプーリ8dと、これらの第1のプーリ8cと第2のプーリ8dに張架される無端ベルト8bとを有する。この無端ベルト8bに多孔板20の長手方向の端部が取り付けられる。なお、移動手段8としては、無端ベルト8bおよびこれを張架する第1のプーリ8cと第2のプーリ8dとからなるセットを、多孔板20の長手方向の両端側にそれぞれ取り付け、両無端ベルト8b(一端側のみ図示)を同期させて連続駆動することが好ましい。本変形例の転写装置においては、移動手段8による線状略平行光生成ユニット1aの移動により、線状略平行光生成ユニット1aからの線状の光を順次LCD素子3に照射して、LCD素子3上に表示されている画像を走査露光により感光フィルム4を露光する。これにより、略平行光の拡散角度が多少大きくても感光フィルム4にLCD素子3に表示されている画像と略同じ大きさで画像を転写することができる。
【0069】
図10(a)は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板を示す斜視図、(b)は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の他例を示す模式的断面図である。本変形例に用いられる多孔板20は、線状略平行光生成ユニット1aとLCD素子3との間に配置されて線状略平行光生成ユニット1aからの光を実質的に線状の平行光にし、LCD素子3に入射する光をなるべく平行にし、LCD素子3に垂直に入射させるための線状光化手段である。図10(a)に示すように、所定厚さの矩形板に所定のサイズの貫通孔22を1列所定ピッチで多数設けたものである。なお、貫通孔22は複数列設けてもよい。
【0070】
なお、本発明において、線状光化手段とは、光源からの光を線状の実質的な平行光として透過型画像表示装置に直角に入射させる機能を有するものであり、この線状光化手段の移動方向(透過型LCD画面の走査方向)に直交する方向(長手方向)に所定長さを有する線状光を射出するものである。
ここで、この線状光化手段としては、上述の機能を有するものであれば、どのようなものでも良いが、製作が容易な点も考慮して、図10(a)に示すように長手方向に沿って少なくとも1列に配列された多数の貫通孔22を有し、所定厚さを持ち幅が狭く細長い(狭幅細長の)、いわゆる「柱状の多孔板」とすることが好ましい。
【0071】
本変形例において用いられる線状光化手段としては、上述した柱状の多孔板20に限定されず、図10(b)に示すような多孔板20aを用いることもできる。図10(b)に示す多孔板20aは、1列に配置された貫通孔22の上に連続する凹み22aを設けて、この凹み22aにロッドレンズ23をセットしたものである。この多孔板20aにおいては、ロッドレンズ23の役目により、多孔板20aの貫通孔22から出射する光を、より平行光化することができる。
【0072】
また、本変形例においては、多孔板20とLCD素子3との間隔を、好ましくは、0.05mm〜10mmとし、より好ましくは0.1mm〜5mmとすることが良いが、任意の寸法に調整可能に構成されていることが好ましい。これは、柱状の多孔板20に代表される線状光化手段の貫通孔22のパターンが拡散光による「影」の形で現われるのを防止するためのものである。なお、本変形例において設定している上記間隔は、上述の「影」は防止できるが、転写画像の鮮明度は低下させない条件である。
【0073】
また、多孔板20の材質としては、第1の実施形態と同じものを使用することができる。さらに、多孔板20に設ける貫通孔22の形状も、第1の実施形態と同じものにすることができる。
【0074】
図11(a)乃至(d)は第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の貫通孔の配置を示す正面図であって、(a)は貫通孔が3列形成されているものであり、(b)は貫通孔が1列形成されているものであり、(c)は貫通孔が4列形成されているものであり、(d)は貫通孔が2列形成されているものである。また、複数の貫通孔22を2列以上に配列するときの貫通孔の列の数および配列形状は、特に限定されるものではない。例えば、配列形状は、碁盤目状、千鳥状(最密状)であることが好ましく、より好ましくは千鳥状が良い。また、配列数は、例えば、1列乃至数列であってもよいが、複数列のうち、特に千鳥状に配列する場合には、偶数列が良い。この理由は、図11(a)に示すように、3列、すなわち奇数列配列の貫通孔22を持つ多孔板20の場合、α行およびγ行では第1および3列の2個の貫通孔22からの光がLCD素子3を照明するので明るい。しかし、β行およびδ行では第2列の1個の貫通孔22からの光しかLCD素子3を照明しないので暗い。このため、β行およびδ行では暗いスジができる。
【0075】
また、多孔板20に設ける複数の貫通孔22の配列ピッチp(図10(a)参照)は、貫通孔22が均一に配置され、LCD素子3の表示画像を鮮明に感光フィルム4に転写できれば、どのようなピッチでも良く、貫通孔22のサイズなどに応じて適宜設定すれば良い。例えば、配列ピッチpは、なるべく細かい方が良い。
【0076】
なお、本変形例においては、貫通孔22と貫通孔22との間隔dは、特に限定されるものではないが、配列ピッチpおよび貫通孔22のサイズより重要である。その理由は、この貫通孔22間の間隔dを大きくすると、上述の貫通孔22のパターンが拡散光による「影」を消すために、多孔板20とLCD素子3との間の距離を離す必要が出てくるからである。従って、この貫通孔22間の間隔dは、例えば、長手方向(配列方向)における間隔yに換算して、1mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5mm以下で、さらに好ましくは、0.2mm以下であることが良い。なお、貫通孔22間の間隔dの下限値は、特に限定されるものではない。しかし、製作上の容易性を考慮すると、間隔dの下限値は、0.05mm程度以上であることが好ましい。
【0077】
なお、長手方向における間隔に換算した貫通孔22間の間隔dとは、図11(b)に示すように多孔板20における貫通孔22の配列が1列である場合、または図11(c)に示すように複数列(図示例では4列)でも最密状である場合には、最も近接する貫通孔22間の間隔dのことであり、図11(d)に示すように複数列(図示例では2列)でも千鳥状である場合には、長手方向に直交する方向から投影した時に最も近接する貫通孔22間の長手方向の間隔yのことである。なお、図11(d)に示すような千鳥状である場合の長手方向と直交する方向の間隔xは、上記間隔yよりも自由度が大きく、例えば、2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下であることが良い。このように、本変形例の転写装置に用いられる多孔板20においては、上記間隔xおよびyを同じ位にする必要がなく、例えば、y=0.2mmであっても、x=0.5mmまたは1mmとしても良いので、製作上の制限が緩和され、製作が容易となるという重要な特徴を有する。
【0078】
この多孔板20の厚さt1 (図10(a)参照)は、前述した第1の実施形態と同様、貫通孔22の直径または相当直径の3倍以上であることが好ましい、より好ましくは5倍以上、さらにより好ましくは7倍以上であることが好ましい。
【0079】
また、多孔板20の全表面のうち、少なくとも貫通孔22の内面を低反射率面で構成することが好ましく、より好ましくは、多孔板20の全表面を低反射率面で構成することが良い。ここで、低反射率面とは、例えば、黒色化された面または粗面化された面等のように、入射する光の反射率を低下させている面のことをいう。黒色化面を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、多孔板20を構成する素材自体が黒色のものを用いる方法、または表面の黒色化処理する方法が挙げられる。なお、黒色素材としては、例えば、カーボンブラック粉末を1%以上(好ましくは3%以上)含有する材料またはカーボン粉末を固めた材料などが挙げられる。黒色化処理の例としては、例えば、塗装または化学的処理(メッキ、酸化または電解など) が挙げられる。一方、粗面化処理に関しても、特に限定されるものではないが、例えば、穴を加工する際に同時に粗面化する方法、サンドブラストなどの機械的処理方法またはエッチングなどの化学的処理による方法等の後加工により粗面化する方法などを任意に用いることが可能である。この場合、粗面化の程度としては、例えば、中心線平均粗さで1μm〜20μm程度が有効な範囲である。
【0080】
なお、本変形例においては、多孔板20の少なくとも貫通孔22の内面の反射率は、より好ましくは、多孔板20の全表面を構成する低反射率面の反射率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下が良い。これは、反射率が2%以下であれば、線状光源7aから入射した、平行光以外の散乱光を効率良く吸収でき、線状光源7aから略平行光(平行光を含む)のみを効率良く射出させて、LCD素子3に入射させることができるからである。なお、反射率は、例えば、(株)島津製作所製MPC3100型分光反射率測定機を用い、波長550nmで測定することができる。
【0081】
また、移動手段8による多孔板20の移動速度は、光源である線状光源7aの明るさ、多孔板20の貫通孔22の大きさ(直径または相当直径)またはピッチなどにより異なるが、毎秒数mm〜数百mm程度にすることが好ましい。
なお、本変形例に用いられる移動手段8は、上述のように多孔板20の長手方向の端部を無端ベルト8bに取り付け、この無端ベルト8bを駆動するという方式のみに限定されるものではなく、トラベリングナットに多孔板20を固定し、トラベリングナットと螺合するドライブスクリュを駆動する方式、またはワイヤの一端に多孔板20を固定し、ワイヤを巻き取る方式など、従来公知の移動方法であれば、どのような方法を用いても良い。
【0082】
さらに、本発明においては、多孔板の代りに、帯状のスリット光を得ることができるスリットを持つスリット板を用いることもできる。しかし、スリットは、その長手方向の光の散乱を多孔板ほど低減できないので、スリット板よりも図10(a)に示す多孔板20および図10(b)に示す多孔板20aの方が好ましい。しかし、光源からの光の拡散成分が少ない場合、または鮮明度に対する要求が高くない場合には、スリット板を用いても良い。
【0083】
また、本変形例の転写装置においても、上述したように、実際に取り扱い易い装置とするために必要な条件から、LCD素子3と感光フィルム4とを非接触状態で、厳密には、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを非接触状態で、所定の間隔だけ離間させる。本変形例では、鮮明な転写画像を得るという点おいて、これによって生じる光拡散の増大というマイナス要因を、多孔板20の貫通孔22の直径または相当直径に対する比を3倍以上とすることによる光拡散の抑制、加えて、LCD素子3の感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtを規制することによる光拡散の抑制というプラス要因でカバーすることができる。これにより、LCD素子3と感光フィルム4とを所定の間隔だけ離間させても、鮮明な転写画像を得ることができる。
【0084】
ここで、本変形例においては、固定されている透過型のLCD素子3に対して、線状略平行光生成ユニット1a側が移動するものである。なお、本変形例においては、これに限定されるものではなく、固定されている線状略平行光生成ユニット1aに対して、感光フィルム4と一体化されたLCD素子3側が移動するものとしてもよい。この場合、感光フィルム4の2枚分のスペースが必要となるので、装置構成をコンパクトにできる線状略平行光生成ユニット1a側が移動する方が好ましい。
【0085】
また、線状略平行光生成ユニット1aに用いられる線状光源7aは、冷陰極線管等の棒状ランプと、拡散フィルムまたはリフレクタ等の反射板などを有し、棒状ランプからの光を拡散フィルムまたは反射板などを用いて均一に拡散させるようにしたものであるが、本変形例はこれに限定されず、帯状の光が得られれば、どのようなものでも良く、例えば、棒状の光源、細長い有機ELパネルまたは無機ELパネル等を組み合せて所定長の光源等とスリット板とを用いて帯状のスリット光とするものであっても良い。また、LED等を列状に配置して列状の点状光を得るものであっても良い。後者の場合には、LEDと多孔板20の貫通孔22との位置を合わせることが好ましい。
【0086】
次に、本発明の第1の実施形態の第2の変形例について説明する。図12は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。なお、本変形例においては、図9乃至図11に示す第1の実施形態の第1の変形例と同一構成物には、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
本変形例は、第1の変形例の転写装置と比較して、線状略平行光生成ユニット1aが移動する方向Aと貫通孔22の軸方向とが平行になるように、線状略平行光生成ユニット1aが配置されており、多孔板20の出射側の端面にミラー24が、多孔板20からの出射光をLCD素子3に入射させるように、方向Aに対して45°の角度で配置されている点が異なり、それ以外の構成は第1の変形例と同様であるので、その詳細な説明は省略する。なお、本変形例においても、吸収フィルタ40は、上述の第1の実施形態と同様のものを用いる。
【0087】
図12に示す本変形例の転写装置においても、図9に示す第1の変形例の転写装置と同様に、移動手段8による線状略平行光生成ユニット1aの移動により、線状略平行光生成ユニット1aからの線状の光を順次LCD素子3に照射して、LCD素子3上に表示されている画像を走査露光により照明する。この場合、吸収フィルタ40が設けられているので、第1の実施形態と同様に、混色が少ない、高品位な仕上りプリントを得ることができる。
また、本変形例は、線状略平行光生成ユニット1aの配置方向を変え、ミラー24を設けることにより、多孔板20の感光フィルム4の積層方向における厚さを薄くすることができるので、光源のサイズが小さくなり、第1の変形例の転写装置をさらに小型化することができる。
【0088】
なお、本変形例においては、線状略平行光生成ユニット1aに用いられる線状光化手段には、図10(a)および(b)に示す多孔板20および20aを用いることができるのはもちろん、図9乃至図11に示す第1の変形例の転写装置に適用できるものは、全て適用可能である。
【0089】
上述の第1および第2の実施形態ならびに第1の実施形態の第1および第2の変形例においては、略平行光生成素子として多孔板を使用したが、これに限定されるものではなく、例えばセルフォックレンズなどを使用しても良い。また、上述の第1および第2の実施形態ならびに第1の実施形態の第1および第2の変形例においても、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを密着させてもよく、このとき、密着させない場合に比べて、より鮮明度が高い転写画像を得ることができる。
【0090】
また、上述の第1および第2の実施形態ならびに第1の実施形態の第1および第2の変形例においては、吸収フィルタをバックライトユニット、線状略平行光生成ユニット、またはLCD素子に設ける構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、線状光源または棒状光源と感光フィルムとの間のいずれかの場所に混色が生じる領域の光を選択吸収する吸収フィルタを設ければよい。これにより、混色が抑制され、色再現性に優れた高品位の画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0091】
なお、上記実施形態およびその変形例は本発明の一例を示したものであり、本発明はこれに限定されるべきものではないことはいうまでもない。例えば、光源としてのバックライト、または画像表示手段としてのLCD素子など、本発明の要旨を変更しない可能な範囲内で公知のものに変更することができ、公知の種々の機能のものを用いることができることは明らかである。
【0092】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、例えばLCD素子である画像表示装置の赤、青および緑の各カラーフィルタの分光透過率曲線が相互に重なる領域における光を選択吸収する吸収フィルタを設けることにより、感光性記録媒体に入射する3原色の混色が防止されるので、3原色の色純度が高くなり、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
また、本発明においては、簡単な構成で、真に小型軽量化、低消費電力化および低コスト化を可能にする転写装置を実現することが可能である。
【0093】
さらに、本発明によれば、高い画素密度の高精細画面を持つ液晶ディスプレイの使用を可能として、より鮮明度の高い高精細な転写画像まで、混色が少ない転写画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る転写装置を示す模式的側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る転写装置の要部を示す模式的断面図である。
【図3】(a)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の一部を拡大して示す正面図、(b)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第1の変形例を示す正面図、(c)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第2の変形例を示す正面図である。
【図4】本実施形態の転写装置に使用される透過型の液晶表示素子の構造を示す断面図である。
【図5】本実施形態の転写装置に使用されるフィルムパック5の一例の構造を示す斜視図である。
【図6】縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、棒状ランプ(光源)の分光強度分布を示すとともに、本実施形態の吸収フィルタの効果を説明するグラフである。
【図7】縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとり蒸着層数を変えた場合のダイクロイックミラーの分光透過特性を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る転写装置を示す模式的側断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。
【図10】(a)は本発明の第1の実施形態の転写装置の第1の変形例に使用される多孔板を示す斜視図、(b)は本発明の第1の実施形態の転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の他例を示す模式的断面図である。
【図11】(a)乃至(d)は第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の貫通孔の配置を示す正面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。
【図13】(a)は特許文献2に開示された印写装置を示す側面図、(b)は図13(a)のD部拡大図である。
【図14】特許文献2の他の実施形態の印写装置を示す斜視図である。
【図15】縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとって、R、G、およびBの各色のカラーフィルタの分光透過率曲線を示すグラフである。
【図16】縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのバックライト光源の分光強度分布を示すグラフである。
【図17】縦軸に感度をとり、横軸に波長をとって、感光フィルムのR光、G光、およびB光における分光感度特性を示すグラフである。
【図18】縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのGのカラーフィルタを透過した光の分光強度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 バックライトユニット
2、20 多孔板
21、22 貫通孔
3 液晶表ディスプレイ素子(LCD素子)
31、37 偏光板
32、36 基板
33、35 電極
34 液晶層
4 感光フィルム(インスタント写真用フィルム)
5 フィルムパック
51 フィルムケース
52 切り欠き
53 露光済みフィルムの取出口
54 開口部
6 本体ケース
61 露光済みフィルムの送り出し兼処理液展開ローラ対
62 取出口
24 ミラー
R、B、G 分光透過率曲線
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタルスチルカメラ(DSC)、ビデオカメラまたはパソコン(パーソナルコンピュータ)等によりデジタル記録された画像を液晶表示デバイスで構成される透過型の画像表示装置に表示し、表示された画像を用いて、光により発色するインスタント写真フィルム等の感光性記録媒体に転写(画像形成)する転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタル記録された画像を記録媒体に転写もしくは印写、または記録する方法として、点状印字ヘッドを有するインクジェット方式、レーザ記録方式または感熱記録方式等の種々の方式が知られている。
上記インクジェット方式等の印字方式は、印字に時間がかかり、インクが詰まり易く、精密な印字を行うと印字した紙がインクにより湿ってしまうなどの問題点がある。また、レーザ記録方式はレンズなどの高価な光学部品が必要であるため、機器のコストが嵩むという問題点がある。また、レーザ記録方式または感熱記録方式は消費電力が大きく、携帯には不向きであるという問題点がある。
このように、上記記録方式による転写装置においては、一般的なことであるが、特に、インクジェット方式では精密な印字にすればするほど、駆動機構および制御機構が複雑になり、装置も大型かつ高価なものになる。さらに、印刷にも時間がかかってしまうという問題点があった。
【0003】
これに対して、液晶表示装置を用いて表示画像をインスタントフィルム等の感光性記録媒体に形成することにより、装置構造を簡略化し、コストを低減した転写装置が提案されている(特許文献1および特許文献2)。
特許文献1に開示された電子プリンタ(転写装置)は液晶ディスプレイの表示画面を光感応性媒体にコピーして写真品質のハードコピーを生成することができるものである。
【0004】
一方、特許文献2に開示された印写装置は、レンズなどの高価な光学部品を用いたり、適当な長さの焦点距離を確保することを不要として、従来の転写装置に比べ、より一層の小型軽量化、低消費電力化および低コスト化を可能にするというものである。図13(a)は特許文献2に開示された印写装置を示す側面図、図13(b)は図13(a)のD部拡大図である。図13(a)に示すように、透過型の液晶ディスプレイ(以下、LCDという)300の表示面に感光フィルム400を密着させ、LCD300の感光フィルム400のある側とは反対側に設けた光源(バックライト100)を点灯する。すなわち、蛍光灯101を点灯してバックライト100を点灯することにより、このLCD300に表示される画像を感光フィルム400に印写するものである。図13(b)に示すように、LCD300においては、表示面側の偏光板301、ガラス基板302、液晶層303、ガラス基板304およびバックライト100側の偏光板305までの合計厚さが2.8mmである。
【0005】
図14は特許文献2の他の実施形態の印写装置を示す斜視図である。特許文献2の他の実施形態においては、図14に示すように、バックライト100とLCD300との間に格子200を設けることにより、バックライト100からの光の拡散を抑制するようにしている。すなわち、バックライト100からの光を平行光に近づけている。さらに、格子200とLCD300との間に矩形状の中空の筒からなるスペーサ201を設けることにより、格子200の枠組の形の像(枠組による影)が感光フィルム400に写り込むのを防止して、光学部品を設けたり適当な長さの焦点距離を確保したりすることなしに、感光フィルム400上に形成される画像の鮮明度を実用上問題のない程度まで向上させたものが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、図13(b)に示すように、LCD300の合計厚さが2.8mmであり、ドットサイズが0.5mmで表示されたLCD300の画面を感光フィルム400に印写する印写装置の例が示されている。LCD300から発した光の拡散を防ぐために、厚さが10mmで、貫通孔の大きさが5mm角である格子200を配し、この格子200とLCD300との間に長さが20mmのスペーサ201を配置し、さらにLCD300と感光フィルム400とを密着させて、画像のボケ(不鮮明化)を防止して、印写することが示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−309829号公報
【特許文献2】
特開平11−242298号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された転写装置は、液晶ディスプレイの表示画面を光感応性媒体にコピーするために、液晶ディスプレイの表示画面と光感応性媒体との間に、ロッドレンズアレイなどの光学部品を用いるものであり、光学部材が高価であるという問題点がある。また、液晶ディスプレイと光感応性媒体との間に所定の間隔(総共役長)が必要であり、装置の小型化にも限界がある。特許文献1においては、例えば、総共役長が15.1mm必要である。
【0009】
また、特許文献2に開示された印写装置は、LCD300と感光フィルム400とを密着させて印写することにより、画像を得ているが、例えば、いくつかの色が混じってしまい、中々正確な色を再現することができず、感光フィルムに転写された画像の画質が劣化するという問題点がある。これは、以下に示す理由によるものである。
【0010】
すなわち、まず通常カラーLCDは、人が見て、美しく、明るくあるようにという目的のため、カラーLCDに使用される赤(以下、Rという)、緑(以下、Gという)、および青(以下、Bという)の各色のカラーフィルタは、透過率が高く、かつ透過波長領域が広く作られている。
図15は、縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとって、R、G、およびBの各色のカラーフィルタの分光透過率曲線を示すグラフである。図15に示す各色のカラーフィルタの分光透過率曲線R、B、Gは、LCDのカラーフィルタの一例を示すものである。
例えば、図15に示すように、LCDの各色のカラーフィルタは、いずれの各色のカラーフィルタとも透過波長領域が広く作られているため、波長が600nm付近では、R光とG光の透過領域が重なっており、また、波長が500nm付近では、B光とG光の透過領域が重なっており、それぞれの重なった領域では各両方の色の光が透過してしまう。
【0011】
また、LCDのバックライト光源として用いられる冷陰極管も、光量を多くするため、なるべく発光領域の幅の広い蛍光物質が使われている。さらに、人の目に明るく見えるようにするため、G光を強くしてあるのが一般的である。
図16は、縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのバックライト光源の分光強度分布を示すグラフである。図16に示す光源の分光強度曲線は、いわゆる三波長型の冷陰極管のスペクトル波形である。図16に示す光源は、波長が550nm付近のG光に最も大きなピークを有している。
【0012】
また、画像が転写される感光フィルムも、それぞれR光、G光およびB光により発色する範囲は、R光、G光およびB光それぞれの光の波長でかなりのピークを有してはいるが、R光とG光とで発色する境界、およびG光とB光とで発色する境界において重なりを有している。
例えば、感光フィルムの例として、富士写真フイルム社製インスタントフィルム「チェキ」の分光感度分布を図17に示す。
図17は、縦軸に感度をとり、横軸に波長をとって、感光フィルムのR光、G光、およびB光における分光感度特性を示すグラフである。
図17に示すように、「チェキ」の場合でも、R光とG光との境界570〜600nm、及びG光とB光の境界480〜510nmにおいて、わずかではあるが重なっている。
従って、この境界領域(混色領域)の波長の光は、R光とG光とで発色する境界(混色領域)においては、感光フィルムでは、RとGとの両方が発色し、またG光とB光とで発色する境界(混色領域)においては、GとBとの両方が発色してしまう。その結果、得られた画像において、混色が生じてしまい画質が劣化する。
【0013】
上述の如く、光源がR光、G光およびB光の全ての光を含んでいる場合について説明したが、LCDに表示される色がR、G、およびBであり、各単色により感光フィルムが露光される場合にも、他の色が混じることを、以下、Gの場合を例にとって説明する。
LCDは、Gのみを表示する。それには、LCDのGのカラーフィルタのみのドットで光が透過でき、R及びBのカラーフィルタのドットは、光が透過しないようにする。
このように、LCDにGのみを表示した状態で、図16に示したような分光強度分布を有する三波長型冷陰極管を必要な時間点灯させる。なお、このとき、三波長型冷陰極管からは、発光できるすべての波長の光が出ている。
この光は、LCDのGのカラーフィルタを透過して、感光フィルムに達する。従って、感光フィルムに到達できる光は、LCDのGのカラーフィルタの光の波長に対して、Gのカラーフィルタの透過率を乗じたものとなる。
【0014】
図18は、縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのGのカラーフィルタを透過した光の分光強度特性を示すグラフである。
図18に示すように、Gのカラーフィルタ透過後の光の強度分布は、440〜480nm位まで、だらだらとしたB領域の透過光があり、さらに、490nm付近に小さい山(ピーク)の透過光がある。また、Rの方向(長波長側)では、580nm付近に山、さらに、610nm付近に小さい山の透過光がある。このうち、特に、490nmの透過光は、フィルムのB領域の光が出ていることになる。
【0015】
その結果、光源として図16に示すような分光強度特性を有する光源を用いてLCDにGの色を表示させて、感光フィルムを露光しても、感光フィルムには、殆どGの色に近い色ではあるが、青(B)の色も少し混じった色となってしまう。このように、特許文献1および2に示す従来の転写装置においては、どうしても混色が生じ、適正な色の画像を得ることができず、画質が低下するという問題点がある。このため、単に、LCDに表示された画像を転写するのみでなく、色の再現性を向上させて、高画質な画像を得ることが望まれている。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、装置構成を簡便にし、感光性記録媒体に入射されるR、G、B各単色の色純度を向上させ、色再現性が優れ、高品位の画質を有するプリントを得ることができる転写装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、光源と、液晶層をその両側から基板で挟持する構造の透過型の画像表示装置と、感光性記録媒体とを、前記画像表示装置の画像表示面と前記感光性記録媒体の記録面とを対向させて前記光源の光の進行方向に沿って直列に配置し、前記透過型の画像表示装置から通過した表示画像を前記感光性記録媒体の前記記録面に転写する転写装置であって、前記透過型の画像表示装置には、赤、緑、および青のカラーフィルタが設けられており、さらに前記各カラーフィルタの分光透過率曲線が互いに重なる領域の波長域の光を選択吸収する吸収フィルタが設けられていることを特徴とする転写装置を提供するものである。
【0018】
このような本発明の転写装置においては、前記吸収フィルタは、前記光源と前記画像表示装置との間に設けられていることが好ましい。また、この場合、前記吸収フィルタは、例えば、ダイクロイックミラーであることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る転写装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る転写装置を示す模式的側断面図であり、図2は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の要部を示す模式的断面図である。なお、図2において、フィルムケース51は省略している。
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態の転写装置は、光源となるバックライトユニット1と、略平行光生成用の多孔板2と、デジタル記録された画像を表示する液晶表示素子(以下、LCD素子という)3と、取り付け取り外し自在なフィルムケース51に感光性記録媒体である感光フィルム4を収納しているフィルムパック5と、LCD素子3のバックライトユニット1、多孔板2、LCD素子3およびフィルムパック5を内包する本体ケース6とから構成される。なお、LCD素子3は本発明における画像表示装置に対応するものである。フィルムケース51は感光フィルム4の長手方向の一方の側面に取出口53が設けられている。また、フィルムケース51のLCD素子3と対向する面に開口部54が形成されている。
【0021】
ここで、多孔板2と、LCD素子3と、感光フィルム4とは、バックライトユニット1からの光の進行方向に沿って直列に配置されており、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとが対向して配置されている。LCD素子3とフィルムケース51とはその周縁部が密着している。
フィルムケース51の開口部54には、後述する吸収フィルタ40が設けられている。すなわち、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間に吸収フィルタ40が配置される。
【0022】
光源となるバックライトユニット1は、LCD素子3の背後からその全面に均一な光を照射するためのもので、LCD素子3の表示画面と略同一の光射出面(発光面)を持つ面状光源である。バックライトユニット1は冷陰極管等の棒状ランプ7から射出された光を所定方向に導入する導光板10を有し、導光板10に導入された光を略直交する方向に反射させる反射板11が導光板10の裏面に設けられている。反射板11で反射された光を均一化する拡散板12が導光板10の表面に設けられている。
【0023】
本実施形態に用いられるバックライトユニット1は、特に限定されるものではなく、棒状ランプ7が発光する光を、導光板、反射シート、拡散シートおよびプリズムシートなどからなるバックライトアセンブリを用いて均一に拡散させるようにした面状光源であればよく、従来公知のLCD用バックライトユニットを用いることができる。
また、本実施形態に用いられるバックライトユニット1は、所要の光強度の光を射出できる面状光源であれば、LEDアレイ光源、有機ELパネルまたは無機ELパネル等を用いる光源なども利用可能である。
【0024】
多孔板2は、必要に応じて、バックライトユニット1とLCD素子3との間に配置されて、バックライトユニット1からの光を略平行光(平行光を含む)にし、LCD素子3に入射する光をなるべく平行にするための略平行光生成素子であって、所定厚さの矩形板に所定のサイズの貫通孔21を所定ピッチで多数設けたものである。
図3(a)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の一部を拡大して示す正面図、(b)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第1の変形例を示す正面図、(c)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第2の変形例を示す正面図である。図3(a)に示すように、本実施形態においては、正三角形の頂点の位置が中心となるようにして貫通孔21が複数形成されている。各貫通孔21は縁部間の距離が0.1mmである。
【0025】
なお、本実施形態において用いられる略平行光生成素子としては、同様の機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、図3(b)に示す4角形格子21a、図3(c)に示す6角形格子21b等を用いてもよい。しかし、製作が容易な点も考慮して、図3(a)に示すような多孔板とすることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態においては、多孔板2とLCD素子3との間隔は、好ましくは、0.05mm〜10mmとし、より好ましくは0.1mm〜5mmとすることが良い。これは、多孔板2に代表される略平行光生成素子の貫通孔21のパターンが拡散光による「影」の形で現われるのを防止するためのものである。なお、ここで設定している上記間隔は、上述の「影」を防止するとともに、転写画像の鮮明度が低下しない条件である。
【0027】
ここで、多孔板2の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば所定の厚さを有するアルミニウム板等の金属板、樹脂板またはカーボン材料板等を用いることができる。なお、多孔板2の厚さも、特に限定されるものではなく、要求される転写画像の鮮明度に応じて、または、LCD素子3の表示画面または感光フィルム4の感光面4aの大きさに合わせて、適宜選択すれば良い。また、多孔板2の製作方法としては、多孔シートを積層する方法または樹脂によるモールド(成形)方法などが実用的であるが、加工が可能であれば、特に限定されるものではなく、機械的に孔加工する方法等を含め、どのような加工法を用いても良い。
【0028】
また、多孔板2に設ける複数の貫通孔21の配列形状および配列ピッチは、貫通孔21が均一に配置されるものであれば、どのようなものでも良い。例えば、貫通孔21の配列形状は、碁盤目状または千鳥状(最密状)であって良く、好ましくは千鳥状が良い。また、貫通孔21の配列ピッチは、なるべく細かい方が良く、貫通孔21と貫通孔21との間(貫通孔21の縁部間の距離)は、0.05〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3mmが良い。
【0029】
また、多孔板2に設ける貫通孔21の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円筒形、楕円筒形または多角筒形などにすることができる。すなわち、貫通孔21の平面形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形または多角形等にすることができるが、製作を容易にするために、円形または多角形とすることが好ましい。また、貫通孔21は、多孔板2の厚さ方向には、平行な貫通孔であることが好ましいが、略平行であると見なせるものであれば良い。
また、貫通孔21のサイズも、特に限定されるものではないが、多孔板2の貫通孔21の直径(円の場合)または相当直径(楕円または多角形等の場合)は、5mm以下とすることが好ましく、この多孔板2の厚さが貫通孔2の直径または相当直径の3倍以上であることが好ましい。なお、上述の相当直径とは、「4×面積/総辺長(または全周長)」で表わされる長さのことである。多孔板2の貫通孔21の直径または相当直径を5mm以下とし、この多孔板2の厚さが貫通孔21の直径または相当直径の3倍以上とするのは、これらの条件が、多孔板2によって平行光を得るために有効な条件であるからである。特に、多孔板2の厚さが貫通孔21の直径または相当直径に対して5倍以上、さらに好ましくは7倍〜25倍とするのがよい。
【0030】
また、貫通孔21の内面を含めて、多孔板2の全表面に対して反射防止膜を設けることが好ましい。反射防止膜としては、その反射率が所定値以下であれば、特に限定されるものではないが、例えば、黒色メッキ膜、黒色化処理膜または黒色塗装被膜などを挙げることができる。本発明においては、反射率は、2%以下であることが好ましい。これは、反射率が2%以下であれば、バックライトユニット1から入射した、平行光以外の散乱光を効率良く吸収でき、バックライトユニット1から略平行光(平行光を含む)のみを効率良く射出させて、LCD素子3に入射させることができるからである。なお、反射率は、例えば、(株)島津製作所製MPC3100型分光反射率測定機を用い、波長550nmで測定することができる。
【0031】
LCD素子3は、デジタル記録された画像を表示するための透過型の画像表示装置であって、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラまたはパーソナルコンピュータなどのデジタル画像データ供給部に接続され、供給されるデジタル画像データに応じて表示画像を透過像として表示するものである。なお、LCD素子3に接続されているデジタルカメラ等のデジタル画像データ供給部では、予め用意されている画像の内から、任意の画像を選択して供給できるように構成されている。なお、LCD素子3に供給されるデジタル画像データとしては、上述の場合の他、スキャナ等によって透過原稿または反射原稿から読み取られたものであっても良い。また、LCD素子3は、透過像として画像を表示できれば、どのようなものでも良く、デジタル画像データではなくても、通常のビデオカメラで撮影された画像のアナログ画像データに基いて画像を表示するものであっても良い。
【0032】
なお、このLCD素子3と、多孔板2との間には、所定の間隙を設けているが、この間隙は、上述したように、好ましくは0.05mm〜10mmであり、より好ましくは0.1mm〜5mmである。しかし、任意の寸法に調整可能に構成されていることが好ましい。
【0033】
図4は本実施形態の転写装置に使用される透過型の液晶表示素子(LCD素子)3の構造を示す断面図である。LCD素子3は、図4に示すように、感光フィルム4の側から多孔板2側(バックライトユニット1側)に向かって、フィルム状偏光板(以下、偏光フィルムともいう)31と、ガラス基板32と、電極33と、液晶層34と、電極35と、ガラス基板36と、フィルム状偏光板37とを積層し、液晶層34をその両側からガラス基板32、36および偏光板31、37で挟持する構造を有するものである。ガラス基板32と電極33との間にはR、GおよびBの各色のカラーフィルタ38R、38G、38B、およびブラックマトリックス39が設けられている。周知のように、この他、配向膜(図示せず)等を有しているのはいうまでもない。ここで、例えば、TFT型LCDの場合、電極33は、共通電極であり、電極35は、表示電極およびゲート電極等である。なお、ガラス基板32および36の代りに樹脂基板等を用いてもよい。
【0034】
また、図4に示すように、LCD素子3の構造は、後述する感光フィルム4の側の偏光フィルム31およびガラス基板32の合計厚さを除いて、画像表示が可能であれば、従来公知の液晶表示モードを持ち、従来公知の駆動方式のLCD素子を用いることができる。例えば液晶表示モードとしては、TNモード、STNモード、CSHモード、FLCおよびOCBモードなどの偏光板を用いる液晶表示モードを挙げることができる。駆動方式としては、TFT型およびダイオード型などのアクティブマトリックス駆動方式の他、XYのストライプ電極からなるダイレクトマトリックス駆動方式等を挙げることもできる。
【0035】
また、LCD素子3のサイズは、特に限定されるものではなく、どのようなサイズでも良く、感光フィルムのサイズに合わせて適宜選択すれば良い。また、LCD素子3のRGB各画素のドットサイズも、特に限定されるものではないが、より鮮明な高画質の写真画像を得るためには、各画素の少なくとも短辺側の大きさは、0.2mm以下であることが好ましい。これは、各画素の少なくとも短辺側の大きさが0.2mm以下では、より鮮明な転写画像を得ることができるからである。
【0036】
なお、LCD素子3の画素数または画素密度も、特に限定されるものではないが、高精細・高鮮明度の高画質画像を転写して得るためには、近年市販されているRGB各画素のドットサイズが小さい高精細画面を持つLCDを用いることが好ましい。このようなLCDとしては、例えば、UXGA(10.4インチ、1200×1600画素)またはXGA(6.3および4インチ、1024×768画素)などのTFT型LCDを挙げることができる。
【0037】
本実施形態に用いられるLCD素子3においては、少なくとも、感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtは、できるだけ薄いことが良く、1.0mm以下が好ましい。さらに好ましくは0.8mm以下、さらにより好ましくは0.6mm以下とすることが良い。
【0038】
なお、より一層好ましくは、バックライトユニット1(多孔板2)側の基板36と偏光フィルム37とを合わせた合計厚さは、薄い方が良く、1.0mm以下が好ましい。さらに好ましくは0.8mm以下であり、さらにより好ましくは0.6mm以下とすることが良い。また、合計厚さの下限値も、特に限定されるものではないが、例えばガラス基板32では、それ自体の厚さを薄くするのは0.5mm程度が限界と考えられることから、0.5mm以上としても良い。なお、この合計厚さは、これらに限定されることはなく、上記条件を実現するための構成として、ガラス基板の代りに、樹脂基板の使用を考慮することも有効であり、これにより0.5mm程度の合計厚さの下限値をさらに小さくすることができる。
【0039】
以下、本実施形態において、感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtを1.0mm以下とする理由について説明する。
この合計厚さの条件は、バックライトユニット1からLCD素子3までの区間での光の拡散を抑えることに相当する。LCD素子3と感光フィルム4とを、厳密には、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを非接触状態にしても、より鮮明な転写画像を得られるという結果に通じるものである。
すなわち、本発明に係る転写装置においては、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを、所定の間隔だけ離間させて、非接触状態にしている。この非接触状態にするという条件は、簡単な構成で、実用性を挙げ、実際に取り扱い易い転写装置とするためには必要な条件である。しかし、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間での光の拡散を助長し、鮮明な転写画像を得るという点からはむしろマイナス要因である。このため、本発明においては、後述するように、上記非接触状態によるマイナス分(光の拡散の増大分)を、LCD素子3のカラーフィルタの分光透過率曲線が重なる境界領域S1 、S2 の光を選択吸収する吸収フィルタ40を設けて、LCD素子から射出される光の色純度を上げることにより、補い、更に画質を向上させる。さらに、上述の合計厚さの条件、および多孔板2の厚さの貫通孔21の直径または相当直径との比を3倍以上とすることによるプラス分(光の拡散の抑制分)でカバーする。
【0040】
ところで、上述したように、図13(a)および(b)に示す特許文献2に開示された従来の印写装置においては、厚さが約2.8mmのLCD300が用いられている。図13(b)に示すように、LCD300は、2枚の偏光板301、305、2枚の基板302、304およびこれらに挟まれる液晶層303から構成されている。特許文献2には開示されていないが、一般に、液晶層そのものの厚さは0.005mm程度(カラーTFT液晶ディスプレイ:p207、共立出版発行参照)とされているため、片側の基板301(305)と偏光板302(304)とを合わせた厚さは、1.3mm〜1.4mm程度と考えられる。
ここで、光の拡散度合いは距離に比例するため、上述の厚さ1.3mm〜1.4mmが1/2になれば、拡散度合いも1/2になり、従来技術の項で述べた「片側について、約0.09mm拡大される」という値もその1/2、つまり0.04mm〜0.05mm程度に減少すると推察される。しかしながら、この程度の拡散度合いでは、従来技術の項で述べたように、最新のUXGAまたはXGAなどのような微細なドットサイズを有するLCDにおいて、隣接するドットの重なり合いが生じる。
【0041】
すなわち、拡散度合いを0.04mm〜0.05mm程度に減少させただけでは、ドットの重なり合いが生じ、これに起因する色の滲みが発生して、不鮮明な画像しか得ることができない。しかし、本願発明者らは特開2002−196426号公報に記載したように、LCD素子3の片側の少なくとも感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた厚みを1.0mm以下とすることにより、UXGAまたはXGAなどのような微細なドットサイズを有するLCD素子においても、ドットの重なり合いに起因する色の滲みが解消して、鮮明な転写画像が得られることを知見している。さらに、上述したように、カラーフィルタの分光透過率曲線が重なる境界領域S1 、S2 の光を選択吸収する吸収フィルタ40を設けることにより、混色を防止する。このため、露光焼付に必要な色の光の成分だけを感光フィルム4に入射させることができる。これらのことから、LCD素子3と感光フィルム4との間隔が等しいものに比べて、UXGAまたはXGAなどのような微細なドットサイズを有するLCD素子3においても、色の滲みがさらに一層解消されて鮮明な転写画像が得られる。
【0042】
本実施形態においては、感光フィルム4の感光面4aが、所定の間隙を隔てて、LCD素子3の画像表示面3aに配置されるように構成されている。複数枚の感光フィルム4が、フィルムケース51に収納されている。本実施形態においては、フィルムケース51は、本体ケース6内に取り付けられ、1セット(パック)の複数枚の感光フィルム4を装填するものであっても、取り付け取り外し自在なフィルムケース51に複数枚の感光フィルム4を収納しているフィルムパック5をそのまま本体ケース6に装填するものであっても良い。しかし、フィルムケース51ごとフィルムパック5、すなわち、複数枚の感光フィルム4を収納しているフィルムケース51自体を装填できるように構成しておくことが好ましい。
【0043】
感光フィルム4は、本発明の感光性記録媒体として用いられるものである。本発明の感光性記録媒体としては、LCD素子3の透過表示画像の露光焼付により、可視ポジ画像を形成できるものであればどのようなものでも良く、特に限定されるものではないが、例えば、いわゆるインスタント写真フィルムが好ましい。このような感光性記録媒体として用いられる感光フィルム4としては、モノシートタイプのインスタント写真用フィルム「インスタックスミニ」または「インスタックス」(共に富士写真フイルム(株)製)を挙げることができる。
このようなインスタント写真フィルムは、フィルムケースに所定数のフィルムをしたいわゆるフィルムパックとして市販されている。
従って、本発明においては、感光フィルム4の感光面4aとLCD素子3の画像表示面3aとの間隙が、後述する条件を満足するように配置できれば、図1に示すように、フィルムパック5をそのまま本体ケース6に装填することもできる。
【0044】
また、本実施形態においては、フィルムパック5を使用する場合には、例えば、感光フィルム4の画像形成領域よりもフィルムケース51の開口部54の開口領域を大きくする。もちろん、LCD素子3の外形で規定される領域はLCD素子3の画像表示領域よりも大きい。本実施形態においては、LCD素子の画像表示領域は感光フィルム4の画像形成領域と同じであることが好ましい。この場合、各部のサイズの大小関係は、感光フィルム4の画像形成領域よりもフィルムケース51の開口部54の開口領域の方が大きい。通常、LCD素子3の外形で規定される領域がフィルムケース51の開口部54の開口領域よりも大きい。しかし、フィルムケース51の開口部54の開口領域がLCD素子3の外形で規定される領域よりも大きいことが非常に好ましい。
【0045】
図5は本実施形態の転写装置に使用されるフィルムパック5の一例の構造を示す斜視図である。図5に示すような構造を有するフィルムパック5には、そのフィルムケース51の一端部に感光フィルム4を、フィルムパック5(のフィルムケース51)から取り出すためのクロー部材(爪)が進入可能な切り欠き52が設けられている。露光の終了した感光フィルム4は、上記クロー部材によりフィルムパック5のフィルムケース51の取出口53から取り出され、搬送機構(図示せず)により、処理工程に送られる。
なお、本実施形態における処理工程とは、上記感光フィルム4の一端に予め設けられている処理液(現像液)チューブ(図示せず)を押し破って、現像液を感光フィルム4内全面に均一に行きわたらせることであり、感光フィルム4のフィルムパック5からの取り出し・搬送と実質的に同時に行われるものである。処理工程を経た感光フィルム4は、本体ケース6の取出口62(図1参照)から装置外部に送り出される。
【0046】
周知のように、この種のインスタント写真用フィルムは、上述の処理工程を経た後、数十秒ほどで完全な画像を形成し、観賞に供することが可能になる。従って、本発明の転写装置では、上述の処理工程を施すまでが、必要とされる機能となる。1枚の感光フィルム(フィルムシート)が送り出された後には、次の感光フィルムが現われ、次の露光(転写)が可能な準備状態が実現される。
なお、上述した、このフィルムパックの取り扱い方法については、先に本出願人の出願に係る特開平4−194832号公報に開示されたインスタント写真用フィルムを用いるインスタントカメラを参照することができる。
【0047】
ところで、本発明の転写装置においては、前述したように、実際に取り扱い易い装置とするために必要な条件から、LCD素子3と感光フィルム4とを非接触状態で、厳密には、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを非接触状態で、所定の間隔だけ離間させるようにしている。本発明に係る転写装置においては、図2に示すように、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとの間の離間間隔は、0.01mm〜3mmであることが好ましく、より好ましくは0.1mm〜3mmであることが良い。
【0048】
これは、上述したように、鮮明な転写画像を得るという点からはむしろマイナス要因ではあるが、実際に取り扱い易い装置とするためには必要な条件である。これによるマイナス分は、LCD素子3の感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtを規制することによって光拡散の抑制というプラス要因でカバーできるからである。さらに、多孔板2の貫通孔21の直径または相当直径に対する比を3倍以上とすることによる光拡散の抑制というプラスの要因でもカバーできる。
【0049】
本実施形態の転写装置においては、LCD素子3に表示された画像のサイズは、感光フィルム4に転写される画像のサイズと実質的に同一とすることが好ましい。これは、本実施形態においては、レンズ系を用いた拡大または縮小を行うことなく、直接転写方式とすることで、装置の小型化および軽量化などを実現することができるからである。
【0050】
本体ケース6は、上述の本実施形態の各構成要素、すなわちバックライトユニット1、多孔板2、LCD素子3、フィルムパック5(またはフィルムケース51)をおよび露光済みフィルムの送り出し兼処理液展開ローラ対61等を内部に収納するケースである。本体ケース6においては、露光済みフィルムの送り出し兼処理液展開ローラ対61は、装填されたフィルムパック5(またはフィルムケース51)の露光済フィルムの取出口53に臨む位置に取り付けられている。また、本体ケース6には、このローラ対61を臨む位置に、露光済みの感光フィルム4の本体ケース6からの取出口62が開口されている。また、本体ケース6には、露光済みフィルムパック5の裏側の開口から挿入されて、感光フィルム4をフィルムケース51の前縁に、すなわち、LCD素子3側に付勢するためのバックアップ用押圧ピン63が設けられている。
【0051】
なお、図示はしていないが、本実施形態の転写装置はローラ対61を駆動するための駆動源(モータ)、またはこれを駆動したりバックライトユニット1の棒状光源7を点灯するための電源、これらを制御するための電装品、LCD素子3に画像を表示させるためにデジタル画像データ供給部からデジタル画像データを受信しLCD表示用画像データに変換するデータ処理装置、および制御装置などを有しているのはもちろんである。
【0052】
以下、本発明の特徴である吸収フィルタ40について説明する。吸収フィルタ40は、図15に示す分光透過率曲線Bと分光透過率曲線Gとが重なる境界領域S1 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S1 の波長域の光の光量を少なくするものであり、さらに、分光透過率曲線Gと分光透過率曲線Rとが重なる境界領域S2 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S2 の波長域の光の光量を少なくするものである。
【0053】
なお、吸収フィルタ40を第1および第2の吸収カラーフィルタからなるものとすることもできる。この場合、例えば、第1の吸収カラーフィルタは、境界領域S1 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S1 の波長域の光の光量を少なくするものである。また、例えば、第2の吸収カラーフィルタは、境界領域S2 の波長域の光を選択吸収して、感光フィルム4に入射する境界領域S2 の波長域の光の光量を少なくするものである。
【0054】
これにより、棒状ランプ7から射出される光の成分のうち、カラーフィルタに入射すると混色が生じる波長領域の光が吸収されて、この波長領域の光の光量が少なくなる。これにより、LCD素子3の表示画像における3原色の混色が低減し、感光フィルム4に入射する3原色の色純度が高くなり、色再現性を向上させることができる。従って、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0055】
次に、吸収フィルタの効果について説明する。本実施形態の吸収フィルタは、上述の如く、LCD素子のカラーフィルタにおいて、青と緑の混色が生じる境界領域S1 、および緑と赤の混色が生じる境界領域S2 の波長域の光を選択吸収して光強度を低下させるものである。
この場合、図15に示す境界領域S1 の波長領域の光を選択吸収する吸収フィルタの効果について説明する。
図6は、縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、棒状ランプ(光源)の分光強度分布を示すとともに、本実施形態の吸収フィルタの効果を説明するグラフである。なお、図6に示す分光強度分布曲線Aは、吸収フィルタを透過させる前の棒状ランプ7(光源)の分光強度分布を示すものである。また、分光強度分布曲線Fは、この分光強度分布曲線Aで表される棒状ランプ7の光が吸収フィルタ40を透過した後の分光強度分布を示すものである。
【0056】
吸収フィルタ40は、図15に示す境界領域S1 の波長領域の光を選択吸収するものであり、これにより、図6に示すように、分光強度分布曲線Aにおいて、波長が450nm〜500nmの範囲で存在するピークが、分光強度分布曲線Fではなくなっている。このように、吸収フィルタ40を用いることにより、棒状ランプ7における分光強度分布曲線Aで存在したLCD素子3において混色を発生させる境界領域S1 における光強度を低下させることができる。
この吸収フィルタ40を透過した光をLCD素子3に入射させ、LCD素子3をG表示させる。この場合、境界領域S1 における光の光強度が低いので、緑の中に青が混色されることが防止される。
吸収フィルタによる混色の抑制効果を調べるために、LCD素子3に表示された緑におけるR、GおよびBの各色の濃度を測定した。この結果を下記表1に示す。下記表1に示す数値は、濃度であり、値が小さい方が明るいことを示す。
【0057】
【表1】
【0058】
また、本発明においては、吸収フィルタとして、ダイクロイックミラーを用いることもできる。
図7は、縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとり蒸着層数を変えた場合のダイクロイックミラーの分光透過特性を示すグラフである。図7に示す分光透過特性を有するダイクロイックミラーは、青と緑との混色領域である境界領域S1 の光を選択吸収するものである。図7に示すように、蒸着層数を変えることにより、境界領域S1 における透過率を変化させることができる。この場合、例えば、蒸着層は5層であり、この蒸着層数を増やすことにより、透過率を下げることができる。
本実施形態の転写装置においては、吸収フィルタ40として、カラーフィルタに変えて、図7に示すダイクロイックミラーを用いることにより、境界領域S1 の光の光強度を低下させることができるので、青および緑の混色が軽減される。このため、青および緑の色純度が高くなり、色再現性が向上する。図7に示すダイクロイックミラーに加えて、境界領域S2 についても、この境界領域S2 の光を選択吸収する分光透過特性を有するダイクロイックミラーを用いることにより、緑および赤の混色が軽減されて、緑および赤の色純度が向上し、LCD素子3の画像表示面3aにおける色再現性が向上する。これにより、ダイクロイックミラーを用いた転写装置においても、3原色の色純度が向上し、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0059】
また、吸収フィルタ40により選択吸収する波長領域は、感光材料の分光感度特性にも依存する。このため、感光材料の分光感度特性に合わせて吸収フィルタ40の選択吸収する波長領域を調整する必要がある。図17に示す感光フィルムにおいて、B光およびG光の分光感度曲線が重なる波長域は、460〜510nmであり、R光およびG光の分光感度曲線が重なる波長域は、570〜600nmである。この場合、吸収フィルタ40は、460〜510nmおよび570〜600nmの波長域の光を選択吸収する必要がある。
【0060】
本実施形態においては、LCD素子3にデジタル画像データ供給部から供給された画像を表示する。次いで棒状ランプ7を点灯して多孔板2を経て略平行光をLCD素子3の画像表示面3aに垂直に入射させる。そして、LCD素子3に表示された画像が感光フィルム4に露光焼付けされる。これにより、感光フィルム4に転写画像が形成される。
【0061】
本実施形態の転写装置においては、LCD素子3の各色のカラーフィルタ38R、38G、38Bの分光透過率曲線が重なる境界領域の光を選択吸収する吸収フィルタ40を設けることにより、LCD素子3から射出される3原色の混色を低下させることができ、3原色の色純度が高くなり、感光フィルム4における色再現性を向上させる。これにより、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は本発明の第2の実施形態に係る転写装置を示す模式的断面図である。なお、本実施形態においては、図1乃至7に示す第1の実施形態と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
本実施形態は、第1の実施形態の転写装置と比較して、吸収フィルタ40の設ける位置が異なり、すなわち、吸収フィルタ40が拡散板12と多孔板2との間に設けられている点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態の転写装置と同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施形態においても、吸収フィルタ40は、第1の実施形態に示すように、境界領域S1 、S2 における光を選択吸収するものであり、本実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このため、感光フィルム4の感光面4aに入射する各色の光の混色が抑制されて、各色の色純度が向上する。従って、高品位の画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
なお、本実施形態において、吸収フィルタ40には、上述の第1の実施形態において示す特性を有するもの(図6および図7参照)を使用する。
【0064】
なお、本発明において、転写装置の構成は、上述の第1および第2の実施形態に示すものに、特に限定されるものではない。例えば、以下に説明する構成の転写装置とすることもできる。
次に、本発明の第1の実施形態の第1の変形例について説明する。図9は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。本変形例においては、図1乃至7に示す第1の実施形態と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0065】
本変形例は、第1の実施形態の転写装置と比較して、多孔板20がLCD素子3の画像表示領域全面に設けられておらず、多孔板20は貫通孔22が1列形成されたものである。多孔板20の下方に線状光源7aが設けられ、多孔板20と線状光源7aとが一体化されて線状略平行光生成ユニット1aとされている。この多孔板20には、その移動する方向A前後に多孔板20の貫通孔22以外からの光を遮光するための遮光膜9a、9bが設けられている。この遮光膜9a、9bは、多孔板20が移動できるように、例えば、方向A前後に伸縮自在な蛇腹状の膜で構成されている。また、線状光源7aからの多孔板20の入射面(下面)に吸収フィルタ40が設けられている。さらに、多孔板20を貫通孔22の配列方向と直交する方向Aに移動させる移動手段8が本体ケース6内の下方に設けられている点が異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。本変形例における多孔板20は、移動手段8によって、LCD素子3の一辺に沿って移動させられるものであり、このとき、遮光膜9a、9bは、多孔板20の移動に伴って方向A前後に伸縮する。
【0066】
本変形例においても、吸収フィルタ40は、上述の第1の実施形態と同様のものを用いる。このため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。なお、本変形例においても、3原色の混色が抑制され、色純度が高い光で画像を感光フィルム4に転写することができるので、高品位の画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0067】
図9に示す転写装置において、線状略平行光生成ユニット1aは、上述の如く棒状ランプ(例えば、直管冷陰極管)からなる線状光源7aと、線状光化手段としての柱状の多孔板20とを結合して一体化したユニットとしたもので、線状光源7aからの光を線状の実質的な平行光として透過型のLCD素子3に直角に入射させる機能を有するものである。線状略平行光生成ユニット1aは、この線状略平行光生成ユニット1aと透過型LCD素子3との相対的な移動方向(透過型LCD素子3の表示画面の走査方向)に直交する方向(長手方向)に幅を有する線状光を射出させるものである。
【0068】
多孔板20を移動させるための移動手段8は、ケース本体6内におけるローラ対61側に配置されたモータ8aと、モータ8aに取り付けれる第1のプーリ8cと、第1のプーリ8cに、多孔板20の移動方向に対向して配置される第2のプーリ8dと、これらの第1のプーリ8cと第2のプーリ8dに張架される無端ベルト8bとを有する。この無端ベルト8bに多孔板20の長手方向の端部が取り付けられる。なお、移動手段8としては、無端ベルト8bおよびこれを張架する第1のプーリ8cと第2のプーリ8dとからなるセットを、多孔板20の長手方向の両端側にそれぞれ取り付け、両無端ベルト8b(一端側のみ図示)を同期させて連続駆動することが好ましい。本変形例の転写装置においては、移動手段8による線状略平行光生成ユニット1aの移動により、線状略平行光生成ユニット1aからの線状の光を順次LCD素子3に照射して、LCD素子3上に表示されている画像を走査露光により感光フィルム4を露光する。これにより、略平行光の拡散角度が多少大きくても感光フィルム4にLCD素子3に表示されている画像と略同じ大きさで画像を転写することができる。
【0069】
図10(a)は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板を示す斜視図、(b)は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の他例を示す模式的断面図である。本変形例に用いられる多孔板20は、線状略平行光生成ユニット1aとLCD素子3との間に配置されて線状略平行光生成ユニット1aからの光を実質的に線状の平行光にし、LCD素子3に入射する光をなるべく平行にし、LCD素子3に垂直に入射させるための線状光化手段である。図10(a)に示すように、所定厚さの矩形板に所定のサイズの貫通孔22を1列所定ピッチで多数設けたものである。なお、貫通孔22は複数列設けてもよい。
【0070】
なお、本発明において、線状光化手段とは、光源からの光を線状の実質的な平行光として透過型画像表示装置に直角に入射させる機能を有するものであり、この線状光化手段の移動方向(透過型LCD画面の走査方向)に直交する方向(長手方向)に所定長さを有する線状光を射出するものである。
ここで、この線状光化手段としては、上述の機能を有するものであれば、どのようなものでも良いが、製作が容易な点も考慮して、図10(a)に示すように長手方向に沿って少なくとも1列に配列された多数の貫通孔22を有し、所定厚さを持ち幅が狭く細長い(狭幅細長の)、いわゆる「柱状の多孔板」とすることが好ましい。
【0071】
本変形例において用いられる線状光化手段としては、上述した柱状の多孔板20に限定されず、図10(b)に示すような多孔板20aを用いることもできる。図10(b)に示す多孔板20aは、1列に配置された貫通孔22の上に連続する凹み22aを設けて、この凹み22aにロッドレンズ23をセットしたものである。この多孔板20aにおいては、ロッドレンズ23の役目により、多孔板20aの貫通孔22から出射する光を、より平行光化することができる。
【0072】
また、本変形例においては、多孔板20とLCD素子3との間隔を、好ましくは、0.05mm〜10mmとし、より好ましくは0.1mm〜5mmとすることが良いが、任意の寸法に調整可能に構成されていることが好ましい。これは、柱状の多孔板20に代表される線状光化手段の貫通孔22のパターンが拡散光による「影」の形で現われるのを防止するためのものである。なお、本変形例において設定している上記間隔は、上述の「影」は防止できるが、転写画像の鮮明度は低下させない条件である。
【0073】
また、多孔板20の材質としては、第1の実施形態と同じものを使用することができる。さらに、多孔板20に設ける貫通孔22の形状も、第1の実施形態と同じものにすることができる。
【0074】
図11(a)乃至(d)は第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の貫通孔の配置を示す正面図であって、(a)は貫通孔が3列形成されているものであり、(b)は貫通孔が1列形成されているものであり、(c)は貫通孔が4列形成されているものであり、(d)は貫通孔が2列形成されているものである。また、複数の貫通孔22を2列以上に配列するときの貫通孔の列の数および配列形状は、特に限定されるものではない。例えば、配列形状は、碁盤目状、千鳥状(最密状)であることが好ましく、より好ましくは千鳥状が良い。また、配列数は、例えば、1列乃至数列であってもよいが、複数列のうち、特に千鳥状に配列する場合には、偶数列が良い。この理由は、図11(a)に示すように、3列、すなわち奇数列配列の貫通孔22を持つ多孔板20の場合、α行およびγ行では第1および3列の2個の貫通孔22からの光がLCD素子3を照明するので明るい。しかし、β行およびδ行では第2列の1個の貫通孔22からの光しかLCD素子3を照明しないので暗い。このため、β行およびδ行では暗いスジができる。
【0075】
また、多孔板20に設ける複数の貫通孔22の配列ピッチp(図10(a)参照)は、貫通孔22が均一に配置され、LCD素子3の表示画像を鮮明に感光フィルム4に転写できれば、どのようなピッチでも良く、貫通孔22のサイズなどに応じて適宜設定すれば良い。例えば、配列ピッチpは、なるべく細かい方が良い。
【0076】
なお、本変形例においては、貫通孔22と貫通孔22との間隔dは、特に限定されるものではないが、配列ピッチpおよび貫通孔22のサイズより重要である。その理由は、この貫通孔22間の間隔dを大きくすると、上述の貫通孔22のパターンが拡散光による「影」を消すために、多孔板20とLCD素子3との間の距離を離す必要が出てくるからである。従って、この貫通孔22間の間隔dは、例えば、長手方向(配列方向)における間隔yに換算して、1mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5mm以下で、さらに好ましくは、0.2mm以下であることが良い。なお、貫通孔22間の間隔dの下限値は、特に限定されるものではない。しかし、製作上の容易性を考慮すると、間隔dの下限値は、0.05mm程度以上であることが好ましい。
【0077】
なお、長手方向における間隔に換算した貫通孔22間の間隔dとは、図11(b)に示すように多孔板20における貫通孔22の配列が1列である場合、または図11(c)に示すように複数列(図示例では4列)でも最密状である場合には、最も近接する貫通孔22間の間隔dのことであり、図11(d)に示すように複数列(図示例では2列)でも千鳥状である場合には、長手方向に直交する方向から投影した時に最も近接する貫通孔22間の長手方向の間隔yのことである。なお、図11(d)に示すような千鳥状である場合の長手方向と直交する方向の間隔xは、上記間隔yよりも自由度が大きく、例えば、2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下であることが良い。このように、本変形例の転写装置に用いられる多孔板20においては、上記間隔xおよびyを同じ位にする必要がなく、例えば、y=0.2mmであっても、x=0.5mmまたは1mmとしても良いので、製作上の制限が緩和され、製作が容易となるという重要な特徴を有する。
【0078】
この多孔板20の厚さt1 (図10(a)参照)は、前述した第1の実施形態と同様、貫通孔22の直径または相当直径の3倍以上であることが好ましい、より好ましくは5倍以上、さらにより好ましくは7倍以上であることが好ましい。
【0079】
また、多孔板20の全表面のうち、少なくとも貫通孔22の内面を低反射率面で構成することが好ましく、より好ましくは、多孔板20の全表面を低反射率面で構成することが良い。ここで、低反射率面とは、例えば、黒色化された面または粗面化された面等のように、入射する光の反射率を低下させている面のことをいう。黒色化面を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、多孔板20を構成する素材自体が黒色のものを用いる方法、または表面の黒色化処理する方法が挙げられる。なお、黒色素材としては、例えば、カーボンブラック粉末を1%以上(好ましくは3%以上)含有する材料またはカーボン粉末を固めた材料などが挙げられる。黒色化処理の例としては、例えば、塗装または化学的処理(メッキ、酸化または電解など) が挙げられる。一方、粗面化処理に関しても、特に限定されるものではないが、例えば、穴を加工する際に同時に粗面化する方法、サンドブラストなどの機械的処理方法またはエッチングなどの化学的処理による方法等の後加工により粗面化する方法などを任意に用いることが可能である。この場合、粗面化の程度としては、例えば、中心線平均粗さで1μm〜20μm程度が有効な範囲である。
【0080】
なお、本変形例においては、多孔板20の少なくとも貫通孔22の内面の反射率は、より好ましくは、多孔板20の全表面を構成する低反射率面の反射率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下が良い。これは、反射率が2%以下であれば、線状光源7aから入射した、平行光以外の散乱光を効率良く吸収でき、線状光源7aから略平行光(平行光を含む)のみを効率良く射出させて、LCD素子3に入射させることができるからである。なお、反射率は、例えば、(株)島津製作所製MPC3100型分光反射率測定機を用い、波長550nmで測定することができる。
【0081】
また、移動手段8による多孔板20の移動速度は、光源である線状光源7aの明るさ、多孔板20の貫通孔22の大きさ(直径または相当直径)またはピッチなどにより異なるが、毎秒数mm〜数百mm程度にすることが好ましい。
なお、本変形例に用いられる移動手段8は、上述のように多孔板20の長手方向の端部を無端ベルト8bに取り付け、この無端ベルト8bを駆動するという方式のみに限定されるものではなく、トラベリングナットに多孔板20を固定し、トラベリングナットと螺合するドライブスクリュを駆動する方式、またはワイヤの一端に多孔板20を固定し、ワイヤを巻き取る方式など、従来公知の移動方法であれば、どのような方法を用いても良い。
【0082】
さらに、本発明においては、多孔板の代りに、帯状のスリット光を得ることができるスリットを持つスリット板を用いることもできる。しかし、スリットは、その長手方向の光の散乱を多孔板ほど低減できないので、スリット板よりも図10(a)に示す多孔板20および図10(b)に示す多孔板20aの方が好ましい。しかし、光源からの光の拡散成分が少ない場合、または鮮明度に対する要求が高くない場合には、スリット板を用いても良い。
【0083】
また、本変形例の転写装置においても、上述したように、実際に取り扱い易い装置とするために必要な条件から、LCD素子3と感光フィルム4とを非接触状態で、厳密には、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを非接触状態で、所定の間隔だけ離間させる。本変形例では、鮮明な転写画像を得るという点おいて、これによって生じる光拡散の増大というマイナス要因を、多孔板20の貫通孔22の直径または相当直径に対する比を3倍以上とすることによる光拡散の抑制、加えて、LCD素子3の感光フィルム4側の基板32と偏光フィルム31とを合わせた合計厚さtを規制することによる光拡散の抑制というプラス要因でカバーすることができる。これにより、LCD素子3と感光フィルム4とを所定の間隔だけ離間させても、鮮明な転写画像を得ることができる。
【0084】
ここで、本変形例においては、固定されている透過型のLCD素子3に対して、線状略平行光生成ユニット1a側が移動するものである。なお、本変形例においては、これに限定されるものではなく、固定されている線状略平行光生成ユニット1aに対して、感光フィルム4と一体化されたLCD素子3側が移動するものとしてもよい。この場合、感光フィルム4の2枚分のスペースが必要となるので、装置構成をコンパクトにできる線状略平行光生成ユニット1a側が移動する方が好ましい。
【0085】
また、線状略平行光生成ユニット1aに用いられる線状光源7aは、冷陰極線管等の棒状ランプと、拡散フィルムまたはリフレクタ等の反射板などを有し、棒状ランプからの光を拡散フィルムまたは反射板などを用いて均一に拡散させるようにしたものであるが、本変形例はこれに限定されず、帯状の光が得られれば、どのようなものでも良く、例えば、棒状の光源、細長い有機ELパネルまたは無機ELパネル等を組み合せて所定長の光源等とスリット板とを用いて帯状のスリット光とするものであっても良い。また、LED等を列状に配置して列状の点状光を得るものであっても良い。後者の場合には、LEDと多孔板20の貫通孔22との位置を合わせることが好ましい。
【0086】
次に、本発明の第1の実施形態の第2の変形例について説明する。図12は本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。なお、本変形例においては、図9乃至図11に示す第1の実施形態の第1の変形例と同一構成物には、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
本変形例は、第1の変形例の転写装置と比較して、線状略平行光生成ユニット1aが移動する方向Aと貫通孔22の軸方向とが平行になるように、線状略平行光生成ユニット1aが配置されており、多孔板20の出射側の端面にミラー24が、多孔板20からの出射光をLCD素子3に入射させるように、方向Aに対して45°の角度で配置されている点が異なり、それ以外の構成は第1の変形例と同様であるので、その詳細な説明は省略する。なお、本変形例においても、吸収フィルタ40は、上述の第1の実施形態と同様のものを用いる。
【0087】
図12に示す本変形例の転写装置においても、図9に示す第1の変形例の転写装置と同様に、移動手段8による線状略平行光生成ユニット1aの移動により、線状略平行光生成ユニット1aからの線状の光を順次LCD素子3に照射して、LCD素子3上に表示されている画像を走査露光により照明する。この場合、吸収フィルタ40が設けられているので、第1の実施形態と同様に、混色が少ない、高品位な仕上りプリントを得ることができる。
また、本変形例は、線状略平行光生成ユニット1aの配置方向を変え、ミラー24を設けることにより、多孔板20の感光フィルム4の積層方向における厚さを薄くすることができるので、光源のサイズが小さくなり、第1の変形例の転写装置をさらに小型化することができる。
【0088】
なお、本変形例においては、線状略平行光生成ユニット1aに用いられる線状光化手段には、図10(a)および(b)に示す多孔板20および20aを用いることができるのはもちろん、図9乃至図11に示す第1の変形例の転写装置に適用できるものは、全て適用可能である。
【0089】
上述の第1および第2の実施形態ならびに第1の実施形態の第1および第2の変形例においては、略平行光生成素子として多孔板を使用したが、これに限定されるものではなく、例えばセルフォックレンズなどを使用しても良い。また、上述の第1および第2の実施形態ならびに第1の実施形態の第1および第2の変形例においても、LCD素子3の画像表示面3aと感光フィルム4の感光面4aとを密着させてもよく、このとき、密着させない場合に比べて、より鮮明度が高い転写画像を得ることができる。
【0090】
また、上述の第1および第2の実施形態ならびに第1の実施形態の第1および第2の変形例においては、吸収フィルタをバックライトユニット、線状略平行光生成ユニット、またはLCD素子に設ける構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、線状光源または棒状光源と感光フィルムとの間のいずれかの場所に混色が生じる領域の光を選択吸収する吸収フィルタを設ければよい。これにより、混色が抑制され、色再現性に優れた高品位の画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
【0091】
なお、上記実施形態およびその変形例は本発明の一例を示したものであり、本発明はこれに限定されるべきものではないことはいうまでもない。例えば、光源としてのバックライト、または画像表示手段としてのLCD素子など、本発明の要旨を変更しない可能な範囲内で公知のものに変更することができ、公知の種々の機能のものを用いることができることは明らかである。
【0092】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、例えばLCD素子である画像表示装置の赤、青および緑の各カラーフィルタの分光透過率曲線が相互に重なる領域における光を選択吸収する吸収フィルタを設けることにより、感光性記録媒体に入射する3原色の混色が防止されるので、3原色の色純度が高くなり、高品位な画質を有する仕上りプリントを得ることができる。
また、本発明においては、簡単な構成で、真に小型軽量化、低消費電力化および低コスト化を可能にする転写装置を実現することが可能である。
【0093】
さらに、本発明によれば、高い画素密度の高精細画面を持つ液晶ディスプレイの使用を可能として、より鮮明度の高い高精細な転写画像まで、混色が少ない転写画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る転写装置を示す模式的側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る転写装置の要部を示す模式的断面図である。
【図3】(a)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の一部を拡大して示す正面図、(b)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第1の変形例を示す正面図、(c)は本実施形態の転写装置に使用される多孔板の第2の変形例を示す正面図である。
【図4】本実施形態の転写装置に使用される透過型の液晶表示素子の構造を示す断面図である。
【図5】本実施形態の転写装置に使用されるフィルムパック5の一例の構造を示す斜視図である。
【図6】縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、棒状ランプ(光源)の分光強度分布を示すとともに、本実施形態の吸収フィルタの効果を説明するグラフである。
【図7】縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとり蒸着層数を変えた場合のダイクロイックミラーの分光透過特性を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る転写装置を示す模式的側断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。
【図10】(a)は本発明の第1の実施形態の転写装置の第1の変形例に使用される多孔板を示す斜視図、(b)は本発明の第1の実施形態の転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の他例を示す模式的断面図である。
【図11】(a)乃至(d)は第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例に使用される多孔板の貫通孔の配置を示す正面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る転写装置の第1の変形例を示す模式的断面図である。
【図13】(a)は特許文献2に開示された印写装置を示す側面図、(b)は図13(a)のD部拡大図である。
【図14】特許文献2の他の実施形態の印写装置を示す斜視図である。
【図15】縦軸に透過率をとり、横軸に波長をとって、R、G、およびBの各色のカラーフィルタの分光透過率曲線を示すグラフである。
【図16】縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのバックライト光源の分光強度分布を示すグラフである。
【図17】縦軸に感度をとり、横軸に波長をとって、感光フィルムのR光、G光、およびB光における分光感度特性を示すグラフである。
【図18】縦軸に光強度をとり、横軸に波長をとって、LCDのGのカラーフィルタを透過した光の分光強度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 バックライトユニット
2、20 多孔板
21、22 貫通孔
3 液晶表ディスプレイ素子(LCD素子)
31、37 偏光板
32、36 基板
33、35 電極
34 液晶層
4 感光フィルム(インスタント写真用フィルム)
5 フィルムパック
51 フィルムケース
52 切り欠き
53 露光済みフィルムの取出口
54 開口部
6 本体ケース
61 露光済みフィルムの送り出し兼処理液展開ローラ対
62 取出口
24 ミラー
R、B、G 分光透過率曲線
Claims (1)
- 光源と、液晶層をその両側から基板で挟持する構造の透過型の画像表示装置と、感光性記録媒体とを、前記画像表示装置の画像表示面と前記感光性記録媒体の記録面とを対向させて前記光源の光の進行方向に沿って直列に配置し、前記透過型の画像表示装置から通過した表示画像を前記感光性記録媒体の前記記録面に転写する転写装置であって、
前記透過型の画像表示装置には、赤、緑、および青のカラーフィルタが設けられており、さらに前記各カラーフィルタの分光透過率曲線が互いに重なる領域の波長域の光を選択吸収する吸収フィルタが設けられていることを特徴とする転写装置。
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JP2009187901A (ja) * | 2008-02-08 | 2009-08-20 | Seiko Instruments Inc | 意匠板、意匠板の製造方法、及び、表示装置 |
JPWO2019059176A1 (ja) * | 2017-09-21 | 2020-11-05 | 富士フイルム株式会社 | 画像露光装置、および画像露光方法 |
-
2002
- 2002-11-12 JP JP2002328198A patent/JP2004160784A/ja not_active Withdrawn
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