JP2004160773A - セラミックグリーンシートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リサイクルに適した離型フィルムを用いて、平面性と剥離性の良好なセラミックグリーンシートを提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層を積層した離型フィルムをキャリアシートとして用い、離型層面上にセラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層を積層した離型フィルムをキャリアシートとして用い、離型層面上にセラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックコンデンサーやセラミック基板の製造に好ましく用いられるセラミックグリーンシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムの表面に、硬化型シリコーン樹脂膜などの離型層を形成した離型フィルムは、セラミックコンデンサー、セラミック基板、ドライフィルムレジストなどの電子部品製造の工程で利用されるフィルムとして、あるいは、偏光板、ラベル離型紙などの粘着離型紙として大量に使用されている(特許文献1,2,3参照。)。
【0003】
特に近年、携帯電話や携帯用パソコンに代表される移動体通信機器、携帯情報端末機器などの大量普及に伴い、これらの電子機器に使用される多層セラミック基板、積層セラミックコンデンサーなどを製造する工程において、セラミックグリーンシート製造用のキャリアシートとして、離型フィルムの消費量が大きく増加してきている。このキャリアシートは、セラミックスラリーを塗布し乾燥させる際に支持板として機能するものである。
【0004】
しかし、上記キャリアシートの使用後のものは殆ど再利用されておらず、廃棄されるか、再利用されるとしても、せいぜい燃料として利用される程度であり、省資源、環境保護の観点から好ましくなかった。
【0005】
その理由は、セラミックグリーンシートを作製してキャリアシートから剥離した後は、キャリアシート(離型フィルム)上にはセラミック残渣が残存するのだが、この状態で離型フィルムを溶融して、新たにフィルムを製膜して再利用しようとした場合、溶融押出し時の濾過工程で、離型フィルム表面に残存したセラミックによってフィルターが目詰まりを起こし、正常な製膜ができなくなるからである。また、仮に、残存するセラミックを機械的に掻き取るなどの手段で強制的に除去できたとしても、基材フィルム上に形成された離型層の成分が、溶融ポリマー中に混入し、押し出し時に異臭が発生したり、ポリマーの溶融粘度が低下して製膜時の破れの原因となったり、あるいは製膜できたとしても得られたフィルムが着色したりして品質の劣化が避けられない。
【0006】
このような背景の中で、本発明者らは、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層が形成されてなる離型フィルムをキャリアシートとして用い、使用後の離型フィルムを易溶解性樹脂が溶解可能な溶媒中で洗浄して、基材フィルム表面の離型層およびセラミック残渣などの不純物を分離除去し、クリーンな基材フィルムのみを回収するという技術を見出し、開示した(特許文献4参照。)。
【0007】
ところが、上記の技術により得られたセラミックグリーンシートは、しわやひび割れ、ピンホールが発生するという問題のあることがわかった。このような欠点は、セラミックグリーンシートを積層、焼成、加工して得られる製品の特性を著しく低下させてしまう。
【0008】
上記のような欠点は、セラミックグリーンシートの平面性や剥離性が悪いためと考えられ、従来のセラミックグリーンシートの製造方法においても、セラミックグリーンシートの平面性や剥離性を改良する方法として多くの技術開示がされているが、上記の問題を完全に解決するには必ずしも十分な方法とはいえなかった(特許文献5〜11参照。)。
【0009】
例えばセラミックグリーンシートの乾燥工程においては、スラリー中の溶媒をいかに均一に蒸発させるかが重要であり、そのために、スラリー中の溶媒の種類や配合割合を調整したり、乾燥方法や乾燥条件などのいろいろな工夫がされてきた。例えばセラミックスラリーを塗布してから常温で30分以上風乾した後、熱風乾燥器に移行して高温で乾燥させる方法が好ましく採用されていた(特許文献12参照。)。しかしながら、これらを最適化しても、まだ不十分であった。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−192510号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献2】
特開2002−154181号公報(第2頁)
【0012】
【特許文献3】
特開2002−137336号公報(第2頁)
【0013】
【特許文献4】
特開2002−210883号公報(第4頁)
【0014】
【特許文献5】
特開平5−031771号公報(第2頁)
【0015】
【特許文献6】
特開平5−206594号公報(第2頁)
【0016】
【特許文献7】
特開平5−237819号公報(第2頁)
【0017】
【特許文献8】
特開平5−301205号公報(第2頁)
【0018】
【特許文献9】
特開平5−329816号公報(第2頁)
【0019】
【特許文献10】
特開平7−164417号公報(第2頁)
【0020】
【特許文献11】
特開平8−310871号公報(第2頁)
【0021】
【特許文献12】
特許第3276261号公報(第6頁)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、リサイクルに適した離型フィルムを用いて、平面性と剥離性の良好なセラミックグリーンシートを提供せんとするものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。
【0024】
すなわち、本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層を積層した離型フィルムをキャリアシートとして用い、離型層面上にセラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明において、キャリアシートとして用いる離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層が積層されてなるものである。かかる層構成とすることにより、使用後の離型フィルムを、易溶解性樹脂層を形成する樹脂(以下、単に易溶解性樹脂とも呼ぶ。)は溶解可能であり基材フィルムを形成する樹脂(以下、単に基材フィルム樹脂とも呼ぶ。)は溶解しない溶媒で洗浄することにより、易溶解性樹脂を溶媒中に溶解させるとともに離型層と該離型層に付着した残渣物等を分離除去することが可能となり、クリーンな基材フィルム(あるいは基材フィルム樹脂)のみを回収することができ、すなわち、極めて純度の高い再生が可能となる。
【0026】
基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアセテートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、セロハンなどを用いることができるが、中でも、耐熱性、強度の点で、ポリエステルフィルムが好ましく、特に、再生後の品質安定性に優れるポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0027】
基材フィルムの厚さは、強度、剛性等の点から10〜200μmが好ましく用いられる。
【0028】
易溶解性樹脂としては、回収時の環境への負荷等を考慮すると、水溶性または水分散性樹脂であるのが好ましい。中でも、水溶性または水分散性の、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、でんぷん類のうちの少なくとも1種を主たる成分とするものが好ましい。
【0029】
上記水溶性樹脂としては、その分子構造中に親水性の官能基を含むものが好ましく、中でも水酸基、エーテル基、アミド基、カルボキシル基、リン酸エステル基、スルホン酸基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびアンモニウム塩基から選ばれた少なくとも1種を含むものがより好ましく、特に水酸基、カルボキシル基、スルホン酸塩基およびカルボン酸塩基から選ばれた少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0030】
具体的な水溶性樹脂としては、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、デキストラン、レバン、にかわ、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ビスコース、メチル・セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、強度、耐熱性、耐有機溶剤性等の点で、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉類が好ましい。
【0031】
ポリビニルアルコールとしては、鹸化度70〜99モル%、粘度平均重合度300〜10000が好ましく、鹸化度75〜90モル%、粘度平均重合度300〜2500がより好ましい。具体的には、(株)クラレ製“ポバール”PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−CSA、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217E、PVA−217EE、PVA−220E、PVA−403、PVA−405、PVA−420、PVA−420H、L−8、L−9、L−10、PVA−505、PVA−617、PVA−613、PVA−706等、日本合成化学工業(株)製“ゴーセノール”NH−26、NH−20、NH−18、N−300、NM−14、NM−11、NL−05、AH−26、AH−22、AH−17、A−300、C−500、P−610、AL−06GH−23、GH−20、GH−17、GM−14、GM−14L、GL−05、GL−03、KH−20、KH−17、KM−11、KL−05、KP−08、KP−06、NK−05、“ゴーセラン”F−78、L−0301、L−0302、L−3266等が好ましく使用される。
【0032】
また、ポリビニルアルコールは共重合体であってもよく、その場合、ビニルアルコール単位が60モル%以上である共重合ポリビニルアルコールが好ましく使用される。
【0033】
ポリビニルピロリドンとしては、分子量10万〜500万のものが好ましく、分子量30万〜100万のものがより好ましい。具体的には、(株)日本触媒製PX−K30P、PX−K90P等が好ましく用いられる。
【0034】
澱粉類の具体例としては、日澱化学(株)製“パイオスターチLT”、“パイオスターチKY”、“パイオスターチK−5”、“ペノンJE−66”、“ペノンPKW”、“ZP−8”、“ペトロサイズL−2B”等が好ましく使用される。
【0035】
また、水溶性樹脂としては他に、スルホン酸塩基を含む化合物およびカルボン酸塩基を含む化合物から選ばれた少なくとも1種を構成成分とするポリエステル樹脂が好ましく用いられ、より好ましくは、スルホン酸塩基を含む化合物およびカルボン酸塩基を含む化合物から選ばれた少なくとも1種を、1〜50モル%共重合されてなるポリエステル樹脂が用いられる。かかるポリエステル樹脂は、他の水溶性ポリマーと混合して用いることもできる。
【0036】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを用いることができる。
【0038】
離型フィルムにおける易溶解性樹脂層の厚さは、回収工程での水その他の溶媒等への溶解のし易さの点から、0.01〜10μmであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜2μmである。
【0039】
離型層を形成する材料としては、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするもの、あるいはウレタン樹脂やエポキシ樹脂等とのグラフト重合等による変性シリコーン樹脂等が挙げられる。中でも、セラミックグリーンシートとの離型性の点で、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするものが、より好ましく用いられる。
【0040】
硬化型シリコーン樹脂としては、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等を用いることができる。具体的には、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のLTC750A、LTC300B、SD7223、SD7226、SD7229、SRX−210等、東芝シリコーン社製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721等、信越化学工業社製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256等が好ましく使用される。
【0041】
離型層の塗工量は、離型安定性の点から0.01〜10g/m2の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜5g/m2である。
【0042】
本発明では、上記のような離型フィルムをキャリアシートとして用い、その離型層面上に、セラミックスラリーを塗布して乾燥し、スラリー中の溶媒を除去して所望の厚さのセラミックグリーンシートを作製する。
【0043】
セラミックスラリーを塗布する方法としては、形成するセラミックグリーンシートの厚さに応じて、ブレードコーター、ダイコーター、ナイフコーター、キャストコーターリバースロールコーター、スクリーン印刷法などを採用することができる。
【0044】
セラミック原料としては、特に限定されるものではなく、各種誘電体材料が使用できる。例えば、チタン、アルミ、バリウム、鉛、ジルコニウム、珪素、イットリウム等の金属からなる酸化物、チタン酸バリウム、Pb(Mg1/3,Nb2/3)O3、Pb(Sm1/2,Nb1/2)O3、Pb(Zn1/3,Nb2/3)O3、PbThO3、PbZrO3などを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
セラミックスラリーに用いるバインダーとしては、ポリウレタン樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどの水性高分子などを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
セラミックスラリーに用いる溶剤としては、トルエン、エタノール、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、γ−ブチルラクトンなどを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、セラミックスラリー中には、必要に応じて可塑剤、分散剤、帯電防止剤、界面活性剤などを添加してもよい。
【0047】
本発明では、セラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することが重要である。塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間は、好ましくは3分以内であり、より好ましくは1分以内である。
【0048】
セラミックスラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間が5分を越えると、得られたグリーンシートの平面性や剥離性が低下する。そのメカニズムとしては、スラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間が長くなると、スラリー中のセラミック粒子が沈降したり、表面部分の溶媒が気化したりして、スラリーの厚さ方向で溶媒濃度が変化するのではないかと考える。そのため、乾燥工程に移行しても溶媒を安定的かつ均一に蒸発できにくくなり、結果として、グリーンシートの内部にボイドが残存したり、グリーンシートの表面にしわ、すじ、ふくれ、へこみ、ひび割れ等が生じたりして、平面性が低下すると推測する。また、支持体フィルムの表面には、硬化型シリコーン樹脂などの離型層が設けられているが、離型層自体にもミクロな塗布むら、厚さむら、未硬化部分が存在すると考えており、乾燥工程に移行するまでの時間が長くなると、それらがスラリー中の溶媒に浸食されやすくなり、結果として、支持体フィルムの離型性が低下してグリーンシートの剥離性が低下するものと推測する。
【0049】
また、セラミックスラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間は、1秒以上とするのが好ましい。1秒以上とすることで、高温での乾燥下に入る前に塗布後のスラリーの形態が安定し、乾燥後のグリーンシートの厚みむらを抑えることができる。
【0050】
セラミックスラリーを塗布したあとの乾燥工程における乾燥手段の熱源としては、熱風、電熱、マイクロ波、赤外線、遠赤外線などを単独でまたは併用して用いることができる。
【0051】
乾燥工程における乾燥温度は、セラミックスラリーに用いる溶媒の種類、スラリー濃度、スラリーの塗布厚さなどに応じて適宜選択すると良いが、その温度は50〜150℃とするのが好ましい。乾燥温度を50℃以上とすることで、スラリー中に溶媒が残存せず、焼成工程でセラミック中にボイドが発生するのをふせぐことができる。また、乾燥温度を150℃以下とすることで、溶媒の急激な揮発によるグリーンシートの表面におけるふくれやへこみの発生を抑えることができる。また、乾燥ゾーンを複数にして、各乾燥ゾーン毎に温度を変えてもよい。また、乾燥時間は、上記要因の他に、製造ライン速度、乾燥ゾーンの長さなどにも依存するが、30秒〜数時間とするのが好ましい。
【0052】
本発明により製造するセラミックグリーンシートを、例えば積層セラミックコンデンサー製造に用いる場合には、従来のセラミックコンデンサー製造の場合と同様の方法で製造することができる。すなわち、離型フィルム上に作製されたセラミックグリーンシートの上に、必要に応じて導電ペースト等で内部電極をスクリーン印刷し、所望の形状に型抜きする。次いで、内部電極が印刷さたセラミックグリーンシート層を離型フィルムから剥離し、剥離されたセラミックグリーンシートは、吸引ヘッド等の手段を用いて吸引しつつ必要枚数を積層し、プレス機等で熱圧着して、セラミック積層体を作製する。こうして得られた積層体を、内部電極が端面に露出するようにしてチップ状に切断し、これを焼成炉に入れて、所定の加熱条件で焼成する。焼成工程を経て焼結した積層体は、内部電極が露出した端面に導電ペースト等を塗布して外部電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサーとなる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法を実施例により詳細に説明する。なお、評価は次のようにして行った。
【0054】
(1)セラミックグリーンシートの平面性
得られたセラミックグリーンシートを幅方向に15cm×巻き取り方向に25cmの大きさに裁断し、その表面を平らな台の上に置き、蛍光灯下で目視により、以下の基準に従い判定し、○および△を合格とした。
○:うねり、しわ、ひび割れが全くなく、平面性が良好なもの。
△:ひび割れ、しわはないが、うねりがあるもの。
×:しわ、ひび割れがあるもの。
【0055】
(2)剥離性
得られたセラミックグリーンシートを幅方向に5cm×巻き取り方向に10cmの大きさに裁断し、離型フィルムから剥離したときの状態から、以下の基準で判定し、○および△を合格とした。
○:スムースに剥離ができ、離型フィルム表面にセラミック残渣が付着していないもの。
△:スムースに剥離できたが、離型フィルム表面に点状のセラミック残渣が付着したもの。
×:剥離不良で、グリーンシートが破れたもの。
【0056】
[実施例1]
(離型フィルムの作製)
基材フィルムとして、通常の二軸延伸製膜法で製造した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
【0057】
該フィルムの片面に、ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業(株)“ゴーセノール”KH−17)の5重量%水溶液を、リバースキスコーターで、乾燥後の塗布量で0.2g/m2となるようにコーテングし、トンネルオーブン中で120℃で乾燥して、水溶性樹脂からなる易溶解性樹脂層を形成した。
【0058】
次いで、該易溶解性樹脂層の上から、硬化型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)LTC−300Bを100重量部に対して、同社硬化剤SRX−212を1重量部添加。)の5重量%トルエン溶液をリバースキスコーターで、乾燥後の塗布量で0.15g/m2となるようにコーティングし、トンネルオーブン中で140℃で加熱して離型層を形成した。
かくして離型フィルムを作製し、巻き取った。
【0059】
(セラミックグリーンシートの作製)
上記の離型フィルムをキャリアシートとして用い、その離型層面上に、下記組成からなるセラミックスラリーを、ブレードコーターで均一に塗布した。
【0060】
(セラミックスラリー組成)
セラミック粉体(チタン酸バリウム) 100部
バインダー(ポリビニルブチラール) 10部
可塑剤(フタル酸ジオクチル) 5部
溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=1/1) 100部。
【0061】
セラミックスラリーを塗布した後、キャリアシートの移動速度1m/分で、コーターから乾燥機入口までの移動区間距離50cmを移動して(すなわちセラミックスラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間(以下、単に「移行時間」とも呼ぶ。)は30秒で)乾燥機内に導き、90℃で10分間乾燥して、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを、離型フィルム上に作製した。
【0062】
得られたセラミックグリーンシートは、平面性、剥離性ともに○であった。
【0063】
[実施例2〜5、比較例1,2]
実施例1において、コーターから乾燥機入口までの移動区間距離と、キャリアシートの移動速度を変更したことにより移行時間を変更した以外は、実施例1と同条件で離型フィルム上にセラミックグリーンシートを作製した。移行時間と評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、離型フィルム上にセラミックスラリーを塗布してから乾燥工程へ移行するまでの時間が5分以内である実施例1〜5のグリーンシートは、平面性と剥離性がともに合格であった。これに対して、セラミックスラリーを塗布してから乾燥工程へ移行するまでの時間が5分を越えた比較例1は剥離性が低下し、また、比較例2は平面性、剥離性ともに低下した。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、リサイクルに適した離型フィルム用いても、平面性と剥離性の良好なセラミックグリーンシートを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックコンデンサーやセラミック基板の製造に好ましく用いられるセラミックグリーンシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムの表面に、硬化型シリコーン樹脂膜などの離型層を形成した離型フィルムは、セラミックコンデンサー、セラミック基板、ドライフィルムレジストなどの電子部品製造の工程で利用されるフィルムとして、あるいは、偏光板、ラベル離型紙などの粘着離型紙として大量に使用されている(特許文献1,2,3参照。)。
【0003】
特に近年、携帯電話や携帯用パソコンに代表される移動体通信機器、携帯情報端末機器などの大量普及に伴い、これらの電子機器に使用される多層セラミック基板、積層セラミックコンデンサーなどを製造する工程において、セラミックグリーンシート製造用のキャリアシートとして、離型フィルムの消費量が大きく増加してきている。このキャリアシートは、セラミックスラリーを塗布し乾燥させる際に支持板として機能するものである。
【0004】
しかし、上記キャリアシートの使用後のものは殆ど再利用されておらず、廃棄されるか、再利用されるとしても、せいぜい燃料として利用される程度であり、省資源、環境保護の観点から好ましくなかった。
【0005】
その理由は、セラミックグリーンシートを作製してキャリアシートから剥離した後は、キャリアシート(離型フィルム)上にはセラミック残渣が残存するのだが、この状態で離型フィルムを溶融して、新たにフィルムを製膜して再利用しようとした場合、溶融押出し時の濾過工程で、離型フィルム表面に残存したセラミックによってフィルターが目詰まりを起こし、正常な製膜ができなくなるからである。また、仮に、残存するセラミックを機械的に掻き取るなどの手段で強制的に除去できたとしても、基材フィルム上に形成された離型層の成分が、溶融ポリマー中に混入し、押し出し時に異臭が発生したり、ポリマーの溶融粘度が低下して製膜時の破れの原因となったり、あるいは製膜できたとしても得られたフィルムが着色したりして品質の劣化が避けられない。
【0006】
このような背景の中で、本発明者らは、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層が形成されてなる離型フィルムをキャリアシートとして用い、使用後の離型フィルムを易溶解性樹脂が溶解可能な溶媒中で洗浄して、基材フィルム表面の離型層およびセラミック残渣などの不純物を分離除去し、クリーンな基材フィルムのみを回収するという技術を見出し、開示した(特許文献4参照。)。
【0007】
ところが、上記の技術により得られたセラミックグリーンシートは、しわやひび割れ、ピンホールが発生するという問題のあることがわかった。このような欠点は、セラミックグリーンシートを積層、焼成、加工して得られる製品の特性を著しく低下させてしまう。
【0008】
上記のような欠点は、セラミックグリーンシートの平面性や剥離性が悪いためと考えられ、従来のセラミックグリーンシートの製造方法においても、セラミックグリーンシートの平面性や剥離性を改良する方法として多くの技術開示がされているが、上記の問題を完全に解決するには必ずしも十分な方法とはいえなかった(特許文献5〜11参照。)。
【0009】
例えばセラミックグリーンシートの乾燥工程においては、スラリー中の溶媒をいかに均一に蒸発させるかが重要であり、そのために、スラリー中の溶媒の種類や配合割合を調整したり、乾燥方法や乾燥条件などのいろいろな工夫がされてきた。例えばセラミックスラリーを塗布してから常温で30分以上風乾した後、熱風乾燥器に移行して高温で乾燥させる方法が好ましく採用されていた(特許文献12参照。)。しかしながら、これらを最適化しても、まだ不十分であった。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−192510号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献2】
特開2002−154181号公報(第2頁)
【0012】
【特許文献3】
特開2002−137336号公報(第2頁)
【0013】
【特許文献4】
特開2002−210883号公報(第4頁)
【0014】
【特許文献5】
特開平5−031771号公報(第2頁)
【0015】
【特許文献6】
特開平5−206594号公報(第2頁)
【0016】
【特許文献7】
特開平5−237819号公報(第2頁)
【0017】
【特許文献8】
特開平5−301205号公報(第2頁)
【0018】
【特許文献9】
特開平5−329816号公報(第2頁)
【0019】
【特許文献10】
特開平7−164417号公報(第2頁)
【0020】
【特許文献11】
特開平8−310871号公報(第2頁)
【0021】
【特許文献12】
特許第3276261号公報(第6頁)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、リサイクルに適した離型フィルムを用いて、平面性と剥離性の良好なセラミックグリーンシートを提供せんとするものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。
【0024】
すなわち、本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層を積層した離型フィルムをキャリアシートとして用い、離型層面上にセラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明において、キャリアシートとして用いる離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層が積層されてなるものである。かかる層構成とすることにより、使用後の離型フィルムを、易溶解性樹脂層を形成する樹脂(以下、単に易溶解性樹脂とも呼ぶ。)は溶解可能であり基材フィルムを形成する樹脂(以下、単に基材フィルム樹脂とも呼ぶ。)は溶解しない溶媒で洗浄することにより、易溶解性樹脂を溶媒中に溶解させるとともに離型層と該離型層に付着した残渣物等を分離除去することが可能となり、クリーンな基材フィルム(あるいは基材フィルム樹脂)のみを回収することができ、すなわち、極めて純度の高い再生が可能となる。
【0026】
基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアセテートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、セロハンなどを用いることができるが、中でも、耐熱性、強度の点で、ポリエステルフィルムが好ましく、特に、再生後の品質安定性に優れるポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0027】
基材フィルムの厚さは、強度、剛性等の点から10〜200μmが好ましく用いられる。
【0028】
易溶解性樹脂としては、回収時の環境への負荷等を考慮すると、水溶性または水分散性樹脂であるのが好ましい。中でも、水溶性または水分散性の、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、でんぷん類のうちの少なくとも1種を主たる成分とするものが好ましい。
【0029】
上記水溶性樹脂としては、その分子構造中に親水性の官能基を含むものが好ましく、中でも水酸基、エーテル基、アミド基、カルボキシル基、リン酸エステル基、スルホン酸基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびアンモニウム塩基から選ばれた少なくとも1種を含むものがより好ましく、特に水酸基、カルボキシル基、スルホン酸塩基およびカルボン酸塩基から選ばれた少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0030】
具体的な水溶性樹脂としては、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、デキストラン、レバン、にかわ、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ビスコース、メチル・セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、強度、耐熱性、耐有機溶剤性等の点で、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉類が好ましい。
【0031】
ポリビニルアルコールとしては、鹸化度70〜99モル%、粘度平均重合度300〜10000が好ましく、鹸化度75〜90モル%、粘度平均重合度300〜2500がより好ましい。具体的には、(株)クラレ製“ポバール”PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−CSA、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217E、PVA−217EE、PVA−220E、PVA−403、PVA−405、PVA−420、PVA−420H、L−8、L−9、L−10、PVA−505、PVA−617、PVA−613、PVA−706等、日本合成化学工業(株)製“ゴーセノール”NH−26、NH−20、NH−18、N−300、NM−14、NM−11、NL−05、AH−26、AH−22、AH−17、A−300、C−500、P−610、AL−06GH−23、GH−20、GH−17、GM−14、GM−14L、GL−05、GL−03、KH−20、KH−17、KM−11、KL−05、KP−08、KP−06、NK−05、“ゴーセラン”F−78、L−0301、L−0302、L−3266等が好ましく使用される。
【0032】
また、ポリビニルアルコールは共重合体であってもよく、その場合、ビニルアルコール単位が60モル%以上である共重合ポリビニルアルコールが好ましく使用される。
【0033】
ポリビニルピロリドンとしては、分子量10万〜500万のものが好ましく、分子量30万〜100万のものがより好ましい。具体的には、(株)日本触媒製PX−K30P、PX−K90P等が好ましく用いられる。
【0034】
澱粉類の具体例としては、日澱化学(株)製“パイオスターチLT”、“パイオスターチKY”、“パイオスターチK−5”、“ペノンJE−66”、“ペノンPKW”、“ZP−8”、“ペトロサイズL−2B”等が好ましく使用される。
【0035】
また、水溶性樹脂としては他に、スルホン酸塩基を含む化合物およびカルボン酸塩基を含む化合物から選ばれた少なくとも1種を構成成分とするポリエステル樹脂が好ましく用いられ、より好ましくは、スルホン酸塩基を含む化合物およびカルボン酸塩基を含む化合物から選ばれた少なくとも1種を、1〜50モル%共重合されてなるポリエステル樹脂が用いられる。かかるポリエステル樹脂は、他の水溶性ポリマーと混合して用いることもできる。
【0036】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを用いることができる。
【0038】
離型フィルムにおける易溶解性樹脂層の厚さは、回収工程での水その他の溶媒等への溶解のし易さの点から、0.01〜10μmであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜2μmである。
【0039】
離型層を形成する材料としては、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするもの、あるいはウレタン樹脂やエポキシ樹脂等とのグラフト重合等による変性シリコーン樹脂等が挙げられる。中でも、セラミックグリーンシートとの離型性の点で、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするものが、より好ましく用いられる。
【0040】
硬化型シリコーン樹脂としては、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等を用いることができる。具体的には、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のLTC750A、LTC300B、SD7223、SD7226、SD7229、SRX−210等、東芝シリコーン社製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721等、信越化学工業社製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256等が好ましく使用される。
【0041】
離型層の塗工量は、離型安定性の点から0.01〜10g/m2の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜5g/m2である。
【0042】
本発明では、上記のような離型フィルムをキャリアシートとして用い、その離型層面上に、セラミックスラリーを塗布して乾燥し、スラリー中の溶媒を除去して所望の厚さのセラミックグリーンシートを作製する。
【0043】
セラミックスラリーを塗布する方法としては、形成するセラミックグリーンシートの厚さに応じて、ブレードコーター、ダイコーター、ナイフコーター、キャストコーターリバースロールコーター、スクリーン印刷法などを採用することができる。
【0044】
セラミック原料としては、特に限定されるものではなく、各種誘電体材料が使用できる。例えば、チタン、アルミ、バリウム、鉛、ジルコニウム、珪素、イットリウム等の金属からなる酸化物、チタン酸バリウム、Pb(Mg1/3,Nb2/3)O3、Pb(Sm1/2,Nb1/2)O3、Pb(Zn1/3,Nb2/3)O3、PbThO3、PbZrO3などを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
セラミックスラリーに用いるバインダーとしては、ポリウレタン樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどの水性高分子などを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
セラミックスラリーに用いる溶剤としては、トルエン、エタノール、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、γ−ブチルラクトンなどを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、セラミックスラリー中には、必要に応じて可塑剤、分散剤、帯電防止剤、界面活性剤などを添加してもよい。
【0047】
本発明では、セラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することが重要である。塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間は、好ましくは3分以内であり、より好ましくは1分以内である。
【0048】
セラミックスラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間が5分を越えると、得られたグリーンシートの平面性や剥離性が低下する。そのメカニズムとしては、スラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間が長くなると、スラリー中のセラミック粒子が沈降したり、表面部分の溶媒が気化したりして、スラリーの厚さ方向で溶媒濃度が変化するのではないかと考える。そのため、乾燥工程に移行しても溶媒を安定的かつ均一に蒸発できにくくなり、結果として、グリーンシートの内部にボイドが残存したり、グリーンシートの表面にしわ、すじ、ふくれ、へこみ、ひび割れ等が生じたりして、平面性が低下すると推測する。また、支持体フィルムの表面には、硬化型シリコーン樹脂などの離型層が設けられているが、離型層自体にもミクロな塗布むら、厚さむら、未硬化部分が存在すると考えており、乾燥工程に移行するまでの時間が長くなると、それらがスラリー中の溶媒に浸食されやすくなり、結果として、支持体フィルムの離型性が低下してグリーンシートの剥離性が低下するものと推測する。
【0049】
また、セラミックスラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間は、1秒以上とするのが好ましい。1秒以上とすることで、高温での乾燥下に入る前に塗布後のスラリーの形態が安定し、乾燥後のグリーンシートの厚みむらを抑えることができる。
【0050】
セラミックスラリーを塗布したあとの乾燥工程における乾燥手段の熱源としては、熱風、電熱、マイクロ波、赤外線、遠赤外線などを単独でまたは併用して用いることができる。
【0051】
乾燥工程における乾燥温度は、セラミックスラリーに用いる溶媒の種類、スラリー濃度、スラリーの塗布厚さなどに応じて適宜選択すると良いが、その温度は50〜150℃とするのが好ましい。乾燥温度を50℃以上とすることで、スラリー中に溶媒が残存せず、焼成工程でセラミック中にボイドが発生するのをふせぐことができる。また、乾燥温度を150℃以下とすることで、溶媒の急激な揮発によるグリーンシートの表面におけるふくれやへこみの発生を抑えることができる。また、乾燥ゾーンを複数にして、各乾燥ゾーン毎に温度を変えてもよい。また、乾燥時間は、上記要因の他に、製造ライン速度、乾燥ゾーンの長さなどにも依存するが、30秒〜数時間とするのが好ましい。
【0052】
本発明により製造するセラミックグリーンシートを、例えば積層セラミックコンデンサー製造に用いる場合には、従来のセラミックコンデンサー製造の場合と同様の方法で製造することができる。すなわち、離型フィルム上に作製されたセラミックグリーンシートの上に、必要に応じて導電ペースト等で内部電極をスクリーン印刷し、所望の形状に型抜きする。次いで、内部電極が印刷さたセラミックグリーンシート層を離型フィルムから剥離し、剥離されたセラミックグリーンシートは、吸引ヘッド等の手段を用いて吸引しつつ必要枚数を積層し、プレス機等で熱圧着して、セラミック積層体を作製する。こうして得られた積層体を、内部電極が端面に露出するようにしてチップ状に切断し、これを焼成炉に入れて、所定の加熱条件で焼成する。焼成工程を経て焼結した積層体は、内部電極が露出した端面に導電ペースト等を塗布して外部電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサーとなる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法を実施例により詳細に説明する。なお、評価は次のようにして行った。
【0054】
(1)セラミックグリーンシートの平面性
得られたセラミックグリーンシートを幅方向に15cm×巻き取り方向に25cmの大きさに裁断し、その表面を平らな台の上に置き、蛍光灯下で目視により、以下の基準に従い判定し、○および△を合格とした。
○:うねり、しわ、ひび割れが全くなく、平面性が良好なもの。
△:ひび割れ、しわはないが、うねりがあるもの。
×:しわ、ひび割れがあるもの。
【0055】
(2)剥離性
得られたセラミックグリーンシートを幅方向に5cm×巻き取り方向に10cmの大きさに裁断し、離型フィルムから剥離したときの状態から、以下の基準で判定し、○および△を合格とした。
○:スムースに剥離ができ、離型フィルム表面にセラミック残渣が付着していないもの。
△:スムースに剥離できたが、離型フィルム表面に点状のセラミック残渣が付着したもの。
×:剥離不良で、グリーンシートが破れたもの。
【0056】
[実施例1]
(離型フィルムの作製)
基材フィルムとして、通常の二軸延伸製膜法で製造した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
【0057】
該フィルムの片面に、ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業(株)“ゴーセノール”KH−17)の5重量%水溶液を、リバースキスコーターで、乾燥後の塗布量で0.2g/m2となるようにコーテングし、トンネルオーブン中で120℃で乾燥して、水溶性樹脂からなる易溶解性樹脂層を形成した。
【0058】
次いで、該易溶解性樹脂層の上から、硬化型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)LTC−300Bを100重量部に対して、同社硬化剤SRX−212を1重量部添加。)の5重量%トルエン溶液をリバースキスコーターで、乾燥後の塗布量で0.15g/m2となるようにコーティングし、トンネルオーブン中で140℃で加熱して離型層を形成した。
かくして離型フィルムを作製し、巻き取った。
【0059】
(セラミックグリーンシートの作製)
上記の離型フィルムをキャリアシートとして用い、その離型層面上に、下記組成からなるセラミックスラリーを、ブレードコーターで均一に塗布した。
【0060】
(セラミックスラリー組成)
セラミック粉体(チタン酸バリウム) 100部
バインダー(ポリビニルブチラール) 10部
可塑剤(フタル酸ジオクチル) 5部
溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=1/1) 100部。
【0061】
セラミックスラリーを塗布した後、キャリアシートの移動速度1m/分で、コーターから乾燥機入口までの移動区間距離50cmを移動して(すなわちセラミックスラリーを塗布してから乾燥工程に移行するまでの時間(以下、単に「移行時間」とも呼ぶ。)は30秒で)乾燥機内に導き、90℃で10分間乾燥して、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを、離型フィルム上に作製した。
【0062】
得られたセラミックグリーンシートは、平面性、剥離性ともに○であった。
【0063】
[実施例2〜5、比較例1,2]
実施例1において、コーターから乾燥機入口までの移動区間距離と、キャリアシートの移動速度を変更したことにより移行時間を変更した以外は、実施例1と同条件で離型フィルム上にセラミックグリーンシートを作製した。移行時間と評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、離型フィルム上にセラミックスラリーを塗布してから乾燥工程へ移行するまでの時間が5分以内である実施例1〜5のグリーンシートは、平面性と剥離性がともに合格であった。これに対して、セラミックスラリーを塗布してから乾燥工程へ移行するまでの時間が5分を越えた比較例1は剥離性が低下し、また、比較例2は平面性、剥離性ともに低下した。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、リサイクルに適した離型フィルム用いても、平面性と剥離性の良好なセラミックグリーンシートを提供することができる。
Claims (6)
- 基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離型層を積層した離型フィルムをキャリアシートとして用い、離型層面上にセラミックスラリーを塗布してから5分以内に乾燥工程に移行することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
- 乾燥工程における乾燥温度が、50〜150℃であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
- 基材フィルムが、ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
- 易溶解性樹脂層が、水溶性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
- 離型層が、硬化型シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
- セラミックグリーンシートが、セラミックコンデンサーまたはセラミック基板の製造用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
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