JP2004160561A - マイクロドリル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溝形成部1とシャンク部2とからなる基材表面に被覆層4を有するマイクロドリルである。溝形成部1は、被覆層を有するコーティング領域と、被覆が施されていない無コーティング領域とを具える。無コーティング領域は、溝形成部1とシャンク部2の境界3から溝形成部1側に向かって少なくとも0.1mm以上の領域Bを具える。折損が生じ易い溝形成部1とシャンク部2の境界3付近を無コーティング領域とすることで、耐折損性の向上を図る。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溝形成部とシャンク部とからなる基材表面に被覆層を有するマイクロドリルに関するものである。特に、優れた耐摩耗性と耐折損性とを兼ね備えた微細穴開け加工に最適なマイクロドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント基板などの穴開けに用いられる極小径ドリル(以下、マイクロドリルという)に代表される電子機器類の微細加工用工具や、マイクロマシン製作の際に用いられる部品加工用工具など、微細加工用途の工具の必要性が高まってきている。
【0003】
これらの工具を用いた微細加工方法としては、レーザ加工や電解加工といった被削材に対して工具を非接触で行う加工方法と、切削加工、超音波加工、ワイヤ放電加工といった被削材に対して工具を直接接触させて、塑性変形を起こす加工方法とがある。
【0004】
後者の加工方法において、超微細加工に用いられる工具の工具材料として、従来、超硬合金やサーメットが一般的に知られている。超硬合金やサーメットは、タングステンカーバイト(WC)や炭化チタン(TiC)に代表される高硬度の硬質相と、この硬質相を結合するコバルト(Co)やニッケル(Ni)などの鉄系金属からなる結合相とから構成される。
【0005】
上記従来の超硬合金やサーメットを材料に用いた工具に対し、合金の靭性を高めるための開発と同時に、昨今、被削材の難削化が進んだことや加工能率を高めるために加工条件が過酷となったことで工具の耐摩耗性の改善が求められている。また、加工穴精度(位置精度や穴の平滑性など)の改善についても求められている。このような要求に対し、従来、図6に示すようにマイクロドリルの基材表面にTiやZrの炭化物、窒化物、炭窒化物などの化合物からなる被覆層を形成する技術がある。被覆層は、図6に示すようにマイクロドリルの溝形成部、シャンク部の一部(通常、駆動装置に装着されるチャック部を除いた部分)に形成される。また、マイクロドリルの基材表面にダイヤモンドからなる被覆層を形成する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−275812号公報(第1−4図参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記被覆層を有する従来のマイクロドリルでは、以下のような問題点があり、市場のニーズに対応すべく、改善が求められている。
▲1▼ 被覆層の硬度不足により、被覆層が使用初期に大きく摩耗して工具寿命を延長できない。
▲2▼ 基材との密着強度不足により、使用初期に被覆層が剥離することで、基材が大きく摩耗して工具寿命を延長できない。
▲3▼ 被覆層を形成したことで、切りくずや切り粉と工具との切削抵抗が高くなり加工品質が劣化する。
▲4▼ 被覆層を形成したことで、切り欠き効果によりマイクロドリルの強度が落ちて使用初期に折損する。
【0008】
特に、特許文献1記載のマイクロドリルは、切り粉排出性をよくするために先端部のみダイヤモンド膜を被覆している。この構成により、先端部は、耐摩耗性が確保されるが、工具全体として耐摩耗性を向上することが難しい。また、先端部をコーティングすることで穴の位置精度を高めることが難しい。更に、先端部のみコーティングすることで、先端部のみ強度が高められて、折損が生じ易い。
【0009】
一方、加工穴の位置精度を高めるには、工具の基材材料を高硬度にすることが最も効果的な対策であるが、逆に高硬度とすることで強度が不足して、使用初期に折損することが多い。
【0010】
そこで、本発明の主目的は、高い靭性と耐摩耗性とを維持しながら優れた耐折損性を具え、加工穴精度を向上させることが可能なマイクロドリルを提供することにある。
【0011】
また、本発明の別の目的は、更に、切りくずや切り粉の排出性を向上させることが可能なマイクロドリルを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材表面に被覆層を有する領域と被覆層を有しない領域とを設け、特に、被覆層を有しない領域に溝形成部とシャンク部との境界付近を具えることで上記の目的を達成する。
【0013】
即ち、本発明は、溝形成部とシャンク部とからなる基材表面に被覆層を有するマイクロドリルである。そして、前記溝形成部は、被覆層を有するコーティング領域と、被覆が施されていない無コーティング領域とを具え、前記無コーティング領域は、溝形成部とシャンク部の境界から溝形成部側に向かって少なくとも0.1mm以上の領域を具える。
【0014】
本発明者らが種々検討した結果、以下の知見を得て、本発明を規定するものである。即ち、刃部(溝形成部)の少なくとも一部、特に、具体的には、溝形成部の全表面積の1/5以上の領域に被覆層を形成すると、耐摩耗性を高めると同時に、刃部の剛性を高めて加工穴精度を向上させることができる。特に、溝形成部の中間部の少なくとも一部に被覆層を形成すると、穴の位置精度を高めることができる。一方、折損が生じ易いのは基材の一部、具体的には、溝形成部とシャンク部の境界付近であると考えられる。ここで、基材表面の全面に亘って被覆層を形成すると、硬質の被覆層により首振り動作(上記境界付近を軸として溝形成部が振り動く動作)が行いにくいことで、被覆層が剥離する際に基材をも損傷する、即ち折損する恐れがある。従って、被覆層の形成による耐折損性の低下を防止するには、上記境界付近には被覆層を形成しないことが好適である。これらの知見に基づき、上記構成を具える本発明は、優れた耐摩耗性及び加工穴精度が得られるだけでなく、耐折損性をも向上させることができる。
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1)は、マイクロドリルの模式図である。本発明において溝形成部とは、先端から刃溝部(フルート部)が形成されている部位までの領域で、通常、ボディと呼ばれるシャンク部以外の領域である。シャンク部とは、ドリルが取り付けられる駆動装置に装着される領域で、マイクロドリルでは、図1のように段付きのものが一般的である。
【0016】
図2は、溝形成部とシャンク部の境界付近(図1において破線円A内に示す領域)の拡大図である。本発明において無コーティング領域は、溝形成部とシャンク部の境界付近、具体的には境界から溝形成部側に向かって0.1mm以上の領域とする。即ち、本発明マイクロドリルは、図2に示すように溝形成部1とシャンク部2の境界3から溝形成部側に向かって一定の範囲内、具体的には少なくとも0.1mm以内の領域Bは、被覆層4(図2において斜線部)が施されていない。耐折損性の向上を図るには、領域Bの幅が0.1mm以上必要であり、0.1mm未満では、その効果が得られ難い。
【0017】
図3は、溝形成部とシャンク部の境界付近(図1において破線円A内に示す領域)の拡大図であり、シャンク部側の境界付近も被覆層が施されていない状態を示す。溝形成部側だけでなく、シャンク部側の境界付近も被覆層が施されていないことが望ましい。即ち、シャンク部も被覆層を有するコーティング領域と、被覆が施されていない無コーティング領域とを具え、溝形成部とシャンク部の境界からシャンク部側に向かって0.1mm以上の領域を無コーティング領域とすることが好ましい。具体的には、図3に示すように溝形成部1とシャンク部2の境界3から溝形成部1側及びシャンク部2側のそれぞれに向かって一定の範囲内、より具体的には、それぞれ少なくとも0.1mm以内の領域C(溝形成部1側の被覆層4末端からシャンク部2側の被覆層4末端までの0.2mm以内の領域)は、被覆層4(図3において斜線部)が施されていない。領域Cの幅が0.2mm未満では、耐折損性の更なる向上の効果が得られ難いため、境界からシャンク部側に向かって0.1mm以上の領域も無コーティング領域とする。
【0018】
本発明において規定する無コーティング領域以外の領域は、コーティング領域としてもよい。但し、刃部の強度及び耐摩耗性を高め、優れた穴加工精度を得るためには、溝形成部の少なくとも一部、好ましくは、溝形成部の全表面積の1/5以上の領域、更に好ましくは、1/3以上の領域を、コーティング領域とすることが適する。特に、被覆層は、溝形成部の中間部の少なくとも一部に形成することが好ましい。シャンク部のチャック部は、駆動装置への装着性を考慮すると被覆層を設けない方が好ましく、無コーティング領域とする方がよい。
【0019】
溝形成部の先端部側に被覆層を形成する場合、加工穴の品質の低下が危惧される使用環境も考えられる。このとき、先端部近傍、具体的には、先端からマージン部に亘る領域に被覆層を施さないことが好ましく、更に、マージン部に加えて、マージン部からシャンク部に向かって5mm以下の領域も被覆層を施さないことが好適である。即ち、溝形成部の無コーティング領域には、先端からマージン部に亘る領域や、このマージン部からシャンク部側に向かって5mm以下の領域を含むことが好ましい。図4に先端部側を無コーティング領域とした例を示す。図4は、本発明マイクロドリルの一例を示し、先端部分の拡大図であって、(A)は正面図、(B)は側面図である。図4に示すように、先端部5近傍、具体的には、先端7からマージン部6に亘る領域D、または領域Dに加えてマージン部6から一定の範囲内、具体的には5mm以下の領域Eに被覆層4(図4において斜線部)を施していない。マージン部に加えてマージン部付近の領域にも被覆層を施さないことで、加工穴の品質や切りくず、切り粉の排出性を更に改善することが期待できる。マージン部からシャンク部に向かって5mm以下と規定するのは、それ以上被覆層を施さない部位を設けると、耐摩耗性の向上や加工穴位置精度の改善の効果が認められにくいからである。なお、マージン部とは、逃げ面上の逃げ角が付いていない部分(マージン)が形成されている部位である。また、先端部とは、切れ刃、逃げ面、すくい面及びチゼルエッジによって構成される部分で、実際の切削作用をする部分である。
【0020】
上記において耐摩耗性をより向上させるためには、先端部の各部位(逃げ面やすくい面など)に被覆層を設けた方が好ましい場合もある。このとき、適宜適切な部位に被覆層を設けてもよい。
【0021】
一方、溝形成部に具える刃溝部に被覆層を形成することで、切りくずや切り粉の排出性の低下などが危惧される使用環境も考えられる。このとき、溝形成部の刃溝部も、無コーティング領域とすることが望ましい。或いは、後述する非晶質カーボン層を被覆層の代わりに設けてもよい。刃溝部に非晶質カーボン層を設ける場合、刃溝部を無コーティング領域とした場合と比較して、切りくずや切り粉の排出性をより向上させることができる。そのため、刃溝部のみに非晶質カーボン層を設けてもよいが、上記無コーティング領域とした先端部近傍においても、被覆層の代わりに非晶質カーボン層を設けてもよい。なお、刃溝部とは、マイクロドリルの基材表面に設けられた切りくずや切り粉を排出するための溝部であり、一般的なマイクロドリルには、通常設けられる部位である。
【0022】
本発明マイクロドリルの基材は、硬度及び靭性、被削材との反応性の面を考慮して、超硬合金またはサーメットのいずれかであることが好ましい。超硬合金としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0023】
▲1▼炭化タングステン(WC):70〜99重量%と、1種以上の鉄系金属からなる結合相:1〜30重量%と、不可避的不純物とからなるもの。
▲2▼WC:60〜98.99重量%と、クロム(Cr)、Crの炭化物、バナジウム(V)及びVの炭化物から選ばれる少なくとも1種:0.01〜10重量%、1種以上の鉄系金属からなる結合相:1〜30重量%と、不可避的不純物とからなるもの。
▲3▼WC:40〜98.89重量%と、Cr、Crの炭化物、バナジウム(V)及びVの炭化物から選ばれる少なくとも1種:0.01〜10重量%と、周期律表IVa族、Va族、VIa族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体相:0.1〜58.99重量%と、1種以上の鉄系金属からなる結合相:1〜30重量%と、不可避的不純物とからなるもの。
▲4▼WC:40〜98.9重量%と、周期律表IVa族、Va族、VIa族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体相:0.1〜50重量%と、1種以上の鉄系金属からなる結合相:1〜30重量%と、不可避的不純物とからなるもの。
【0024】
サーメットとしては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
▲5▼周期律表IVa族、Va族、VIa族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体相:70〜99重量%と、1種以上の鉄系金属からなる結合相:1〜30重量%と、不可避的不純物とからなるもの。
▲6▼周期律表IVa族、Va族、VIa族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体相:60〜95重量%と、Cr、Crの炭化物、バナジウム(V)及びVの炭化物から選ばれる少なくとも1種:0.01〜10重量%と、1種以上の鉄系金属からなる結合相:1〜30重量%と、不可避的不純物とからなるもの。
【0025】
上記の超硬合金及びサーメットの組成範囲は、一般的に工業的に製造されている範囲を記述したものである。この範囲を逸脱しても本発明の効果を得ることができる。また、超硬合金やサーメット以外で、鉄系金属を結合相とした硬質材料を基材に用いてもよい。
【0026】
本発明において被覆層は、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族、IIIb族、IVb族から選ばれる1種以上の金属、これら金属からなる合金、及び前記金属または合金と炭素、窒素、酸素、硼素から選ばれる1種以上の化合物から選択される1種以上からなるものが望ましい。被覆方法は、公知の化学蒸着法、物理蒸着法が適用できる。具体的には、熱フィラメントCVD法、プラズマCVD法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの公知の方法を適用するとよい。
【0027】
このような被覆は、単層でも複数層でもよい。また、被覆層の厚さは、0.01μm以上20.0μm以下が好ましい。0.01μm未満であると、加工穴開けの位置精度の向上や耐摩耗性の向上の効果が得られにくいからである。一方、被覆層の厚さが20.0μmを超えても、大きな効果の改善が認められず、工業的に望ましくないからである。
【0028】
ここで、スローアウェイチップなどの場合は、表面に上記のような被覆層を形成しても、基材サイズに対して被覆層の厚さが非常に薄いため、切り欠き効果(被覆層の一部に設けられた切り欠きに応力が集中して、切り欠き部分に亀裂が入り、この亀裂が基材にまで伝播して基材に割れなどが生じる現象)が低下する効果が得られるが、それ以外にチップの物理的特性が変化しない。これに対し、マイクロドリルは、基材サイズが小さいために、表面に硬質層を被覆することで刃部の剛性が高まり、穴開き精度を高めることができる。また、基材よりも高硬度で脆性体である硬質層を基材表面に被覆した場合、穴開き精度の向上が図れる反面、高硬度な被覆層は亀裂の伝播を増長するため、切り欠き効果により基材の耐折損性が低下する。しかし、本発明は、折損を生じ易い溝形成部とシャンク部の境界付近に被覆層を設けないことで、マイクロドリルの耐折損性の劣化を抑制することができる。
【0029】
溝形成部やシャンク部に無コーティング領域とコーティング領域とを設ける方法には、一例として以下の方法がある。例えば、被覆層を施したくない部位にW、Moなどの金属やSi、石英などを用いて何らかのマスクを施す方法や、全体に被覆層を形成後、研磨処理などによって無コーティング領域の被覆層を除去するなどの方法が挙げられる。これらの方法を含めたいずれの方法を適用しても、本発明の効果が失われることはない。
【0030】
このようなマイクロドリルの被覆層表面に、更に、非晶質カーボン層を具えてもよい。非晶質カーボンは、硬質炭素、ダイヤモンドライクカーボン、DLC、a−C:H、i−カーボンと呼ばれるもので、この膜を形成すると、切りくずや切り粉の排出性を大幅に高めることができる。この原因は、切りくずや切り粉と非晶質カーボン層との摩擦抵抗が小さいためと考えられる。また、高硬質である非晶質カーボン層を具えることで、耐摩耗性の更なる向上を図ることもできる。非晶質カーボン層の厚さは、0.01μm以上3.0μm以下が好ましい。0.01μm未満では、耐摩耗性の向上の効果が低く、3.0μmを超えると、耐摩耗性の大きな改善が認められないだけでなく、経済的でないからである。また、非晶質カーボン層を形成後、この表面を平滑化するなどの後処理をしても、本発明の効果は失われない。非晶質カーボン層の形成は、いかなる方法を用いてもよく、例えば、RFプラズマCVD法、イオンビーム蒸着法、イオンビームスパッタ法、スパッタ法、DCプラズマCVD法、イオンプレーティング法などの公知の方法を適用してもよい。
【0031】
上記のように耐摩耗性だけでなく、耐欠損性にも優れる本発明マイクロドリルは、特に、プリント基板加工用のマイクドリルやルータとして用いることが好適である。また、アルミニウムチタン、マグネシウム、銅及びその合金などの非鉄材に使用することも可能である。更に、使用条件によっては、非鉄材だけでなく、ステンレス鋼などの鋼や、鋳物などの加工にも用いることができる。加えて、本発明マイクロドリルは、その使用用途を主に微細加工としているが、これ以外の用途、例えば、直径5mm以上の通常のドリルなどに適用した場合などでも、十分適用可能である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
表1に示す材料と不可避的不純物とからなる粉末を用いて以下の条件でマイクロドリル基材を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
(マイクロドリル基材の製造)
材料粉末(表1に示す数値はいずれも重量%)を10Hr湿式混合した後、1,000kg/cm2の圧力にてプレス成形し、真空中で4.0℃/minの昇温速度で表1に示す焼結温度まで昇温し、真空中でその温度を60分間保持してから、同じく真空中で冷却を行った。得られた合金をダイヤモンド砥石によりドリル直径(図1参照):0.25mmのマイクロドリル基材を製造した。
【0035】
得られたマイクロドリル基材において表2、表3に示す部位に公知の真空アーク放電によるイオンプレーティング法により被覆層を形成したマイクロドリルを各10本準備した。表4にマイクロドリル基材に対する被覆状態を模式的に示す。非晶質カーボン(DLC)層は、公知の炭化水素系ガスを原料としたプラズマCVD法により形成した。なお、被覆層及びDLC層の形成は、これらを施さない部位に予めマスキングを施してから行った。なお、試料No.1−1〜1−8の溝形成部における被覆層の面積割合は、いずれの試料も、溝形成部の全面積に対して1/5以上である。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
得られた各10本のマイクロドリルを以下の条件で10,000穴の穴開け加工を行い、穴開け精度と折損の有無を調べてみた。穴開け精度は、設定される穴開け位置と実際に開けた穴の中心間の距離を求め、10本の平均値をノンコートのドリルと比較した。ノンコートドリルは、試料No.1−1〜1−18のそれぞれに用いた基材のみのものでコーティングを施していない試料とし、それぞれ10本用意して、試料No.1−1〜1−18と同様の条件で穴開け加工し、上記中心間の距離の平均値を求めて比較した。
【0040】
(穴開け加工条件)
被削材:リジット基板(厚み0.4mm) 材質:FR−4
ドリルの回転速度:150,000r.p.m
送り:20μm/rev.
【0041】
その結果、溝形成部とシャンク部の境界付近に被覆を施していない試料No.1−1〜1−18は、別途準備した被覆層を設けていない各ノンコートドリルと比較して穴開け精度がそれぞれ10〜15%も高かった。
【0042】
また、試料No.1−1〜1−18は、10本とも折損しなかったのに対し、試料No.2−1〜2−11は、いずれも穴開け途中で5〜10本折損が生じた。被覆層を設けていない各ノンコート試料は、いずれも穴開け途中で5〜10本の折損が生じた。
【0043】
一方、溝形成部とシャンク部の境界付近に被覆を施していないが、その範囲が境界を中心に溝形成部側及びシャンク部側に向かって0.095mm(合計範囲0.19mm)であった試料No.2−12も試料No.2−1〜2−11と同様に穴開け精度が試料No.1−1〜1−18よりも悪く、穴開け途中で6本折損が生じた。
【0044】
他方、境界から溝形成部側に向かって0.5mm以内の領域(図2において領域B)を被覆していない試料No.1−1〜1−11と、上記領域に加えて境界からシャンク部側に向かって0.5mm以内の領域も被覆していない試料No.1−12(図3において領域Cに被覆層なし)とを比較すると、試料No.1−12の方が折損しにくく、耐折損性に優れることがわかった。
【0045】
先端からマージン部に亘る領域に被覆層を施していない試料No.1−1〜1−11と、同領域に被覆層を施している試料No.1−13、14とを比較すると、試料No.1−1〜1−11の方が、穴開け精度が高いことがわかった。更に、この領域だけでなく、マージン部からシャンク部側に向かって0.5mm以内の領域にも被覆層を施していない試料No.1−18は、穴開け精度がより高いことがわかった。
【0046】
溝形成部において、刃溝部に被覆層を施している試料No.1−1〜1−11と、刃溝部に被覆層を施していない試料No.1−15とを比較すると、試料No.1−15の方が切りくずや切り粉の排出性がよいことが確認された。更に、刃溝部にDLC膜を形成した試料No.1−16は、切りくずなどの排出性がより優れていた。また、試料No.1−7の被覆層表面の全面にDLC膜を形成した試料No.1−17は、試料No.1−7と比較して切りくずなどの排出性がよいことがわかった。
【0047】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明マイクロドリルによれば、優れた靭性と耐摩耗性とを維持しながら溝形成部とシャンク部の境界付近に被覆層を設けないことで折損が生じにくく、かつ加工穴精度を向上することができるという優れた効果を奏し得る。特に、本発明マイクロドリルは、先端からマージン部に亘る領域や、更にマージン部からシャンク部側に向かう一定の領域にも被覆層を設けないことで、穴開け精度をより向上させることができる。また、本発明マイクロドリルは、被覆層表面に更に非晶質カーボン層を形成することで、切りくずや切り粉の排出性を向上させることが可能である。加えて、刃溝部に被覆層を設けないか、被覆層の代わりに非晶質カーボン層を形成することでも、切りくずなどの排出性を向上させることができる。従って、本発明マイクロドリルは、従来ではなし得なかった長期に亘り、良好な寸法精度で穴開け加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロドリルの模式図である。
【図2】図1において破線円A部分の拡大図である。
【図3】図1において破線円A部分の拡大図であり、シャンク部側の境界付近も被覆層が施されていない状態を示す。
【図4】マイクロドリルの一例であって、先端部分の拡大図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図5】図1において破線円A部分の拡大図であり、シャンク部側の境界付近も被覆層が施されている状態を示す。
【図6】被覆層を有する従来のマイクロドリルの模式図である。
【符号の説明】
1 溝形成部 2 シャンク部 3 境界 4 被覆層 5 先端部
6 マージン部 7 先端 8 刃溝部
Claims (12)
- 溝形成部とシャンク部とからなる基材表面に被覆層を有するマイクロドリルであって、
前記溝形成部は、前記被覆層を有するコーティング領域と、被覆が施されていない無コーティング領域とを具え、
前記無コーティング領域は、溝形成部とシャンク部の境界から溝形成部側に向かって0.1mm以上の領域を具えることを特徴とするマイクロドリル。 - コーティング領域は、溝形成部の中間部であることを特徴とする請求項1記載のマイクロドリル。
- 更に、シャンク部も被覆層を有するコーティング領域と、被覆が施されていない無コーティング領域とを具え、
前記無コーティング領域は、溝形成部とシャンク部の境界からシャンク部側に向かって0.1mm以上の領域を具えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロドリル。 - 溝形成部の無コーティング領域は、先端からマージン部に亘る領域を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロドリル。
- 更に、溝形成部の無コーティング領域は、マージン部からシャンク部側に向かって5mm以下の領域を含むことを特徴とする請求項4に記載のマイクロドリル。
- 更に、溝形成部の無コーティング領域は、刃溝部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロドリル。
- 前記被覆層は、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族、IIIb族、IVb族から選ばれる1種以上の金属、これら金属からなる合金、及び前記金属または合金と炭素、窒素、酸素、硼素から選ばれる1種以上との化合物からなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロドリル。
- 基材は、超硬合金またはサーメットのいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロドリル。
- 被覆層の厚さは、0.01μm以上20.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜8に記載のマイクロドリル。
- マイクロドリルの被覆層表面に非晶質カーボン層を具えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロドリル。
- 溝形成部に具える刃溝部の表面にのみ非晶質カーボン層を具えることを特徴とする請求項6に記載のマイクロドリル。
- 非晶質カーボン層の厚さは、0.01μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項10又は11に記載のマイクロドリル。
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