JP2004156446A - スクロール式流体機械 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持され、かつシール部が劣化するのを防ぐことができるスクロール式流体機械を提供する。
【解決手段】冷却および潤滑用の油液を溜める油槽3となるケーシング1と、ケーシング1に設けられた固定スクロール6と、ケーシング1内で電動モータ7の回転軸10に旋回可能に設けられ、固定スクロール6との間に複数の圧縮室16を画成する旋回スクロール14と、油槽3内の油液4を旋回スクロール14の背面側に供給する油液供給手段19とを備え、油液4が合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含む。
【選択図】 図1
【解決手段】冷却および潤滑用の油液を溜める油槽3となるケーシング1と、ケーシング1に設けられた固定スクロール6と、ケーシング1内で電動モータ7の回転軸10に旋回可能に設けられ、固定スクロール6との間に複数の圧縮室16を画成する旋回スクロール14と、油槽3内の油液4を旋回スクロール14の背面側に供給する油液供給手段19とを備え、油液4が合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気圧縮機、真空ポンプ等に好適に用いられるスクロール式流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スクロール式流体機械は、電動モータを内蔵するケーシングと、該ケーシングに設けられた固定スクロールと、前記ケーシング内で電動モータの回転軸に旋回可能に設けられ該固定スクロールとの間に圧縮室を画成する旋回スクロールとを備えたものが知られている。
この種のスクロール式流体機械としては、特許文献1に記載されたものがある。
このスクロール式流体機械は、旋回スクロールの背面側(圧縮室側に対し反対側)に潤滑用の油液を供給できるようになっており、圧縮室に油液が混入しないように構成されている。すなわち、このスクロール式流体機械では、駆動部に油液を供給でき、かつ油液が圧縮室に供給されない方式、いわゆる半給油式の構造が採用されている。
また、特許文献2には、潤滑油を使用する冷凍機が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−336488号公報
【特許文献2】
特開平10−176689号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、往復動圧縮機等では、鉱油などの潤滑油が用いられている。この種の装置では、駆動部だけでなく圧縮室にも潤滑油が供給されるため、潤滑油が微少量ずつ圧縮空気とともに吐出されることから、新しい潤滑油が適宜補給される。これに対し、上記半給油式のスクロール式流体機械では、油液が圧縮室に供給されないため油液の補給の必要がない分、長時間同じ油液が保持されるため、油液が酸化などにより劣化しやすい問題がある。
また、上記半給油式のスクロール式流体機械では、油液が供給される箇所(旋回スクロールなど)が圧縮運転により高温となりやすいため、油液が劣化しやすい問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、長期間、高温で使用しても良好な潤滑性能および冷却性能を維持することができるスクロール式流体機械を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のスクロール式流体機械は、冷却および潤滑用の油液を溜める油槽となるケーシングと、該ケーシングに設けられた固定スクロールと、前記ケーシング内で前記電動モータの回転軸に旋回可能に設けられ、該固定スクロールとの間に圧縮室を画成する旋回スクロールと、前記油槽内の油液を旋回スクロールの背面側に供給する油液供給手段とを備え、前記油液が、合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含むことを特徴とする。
前記合成油は、前記飽和炭化水素を含むため耐熱性や酸化安定性に優れていることから、油液の耐久性を向上させることができる。
従って、長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持される。
さらに、前記合成油は樹脂材料への悪影響がそれほど大きくないため、シール部が劣化するのを防ぐことができ、油液が吐出空気に混入するのを確実に防ぐことができる。
【0006】
前記油液は、前記合成油を20質量%以上含むことが好ましい。合成油の含有率をこの範囲とすることによって、油液の耐久性を高めることができる。
前記油液の粘度は、100℃において6〜8mm2/sであることが好ましい。
粘度を前記範囲とすることによって、貧潤滑条件下においても十分な厚さの油膜を形成し、優れた潤滑性能を得ることができる。また、油液の流れ抵抗を小さくし、狭い部分にも浸透しやすくすることができる。
前記油液に不純物として含まれる硫黄分の含有率は、0.05質量%以下であることが好ましい。硫黄分の含有率をこの範囲とすることによって、油液の酸化劣化を防ぐことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1はスクロール式空気圧縮機の外枠を形成する有底筒状のケーシングで、該ケーシング1は、軸線が水平状態となるように横置きに配置されている。このケーシング1は、モータケース2と、後述の油槽3およびスラスト受け5によって構成され、モータケース2内には後述の電動モータ7が内蔵されている。
なお、図1は、図2中の矢示II−II方向からみた縦断面図である。
【0008】
また、モータケース2は、図2に示すように、前,後方向(水平方向)に延び、前端側に環状の底部2Aが一体形成された筒部2Bと、該筒部2Bの後端側に設けられ、この筒部2Bを施蓋する環状の蓋部2Cとによって構成され、前記底部2Aの外縁側には径方向外側にフランジ部2Dが突設されている。
【0009】
さらに、モータケース2の筒部2B外周側には、周方向に離間して前,後方向に延びる複数の放熱フィン2E,2E,…が設けられ、該各放熱フィン2Eは、後述する電動モータ7の固定子8等からモータケース2に伝わる熱を外気または上側ダクト26内へと効率よく放熱するものである。
【0010】
3はモータケース2の下部側に位置してケーシングに設けられた油槽で、該油槽3は、モータケース2の筒部2B後端から下方に延びた後板3Aと、該後板3Aの下端から前方へとケーシング1の長さ方向(軸方向)に延びた底板3Bと、該底板3Bとモータケース2の筒部2Bとの間に位置して後板3Aの左,右両端から前方に延びた左,右の側板3C(一方のみ図示)と、後述するスラスト受け5の一部等とによって有底の箱体として形成され、その内部には油液4が溜められている。
【0011】
5はケーシング1のモータケース2前端側に設けられた環状のスラスト受けで、該スラスト受け5は、モータケース2のフランジ部2D、油槽3の底板3B前端に一体に取付けられている。そして、スラスト受け5の内周側には、前側に向けて環状凹部5Aが形成され、該環状凹部5A内には、後述する旋回スクロール14の鏡板14Aが配設されている。そして、スラスト受け5の環状凹部5Aには、前記鏡板14Aと摺接する環状の摺接面5Bが形成され、該摺接面5Bは、旋回スクロール14に作用するスラスト荷重を鏡板14Aとの間で受承する構成となっている。
【0012】
6はケーシング1のスラスト受け5前側に設けられた固定スクロールで、該固定スクロール6は、略円板状に形成され中心が後述する回転軸10の軸線と一致するように配設された鏡板6Aと、該鏡板6Aの表面に立設された渦巻状のラップ部6Bと、前記鏡板6Aの外周側からラップ部6Bを取囲むように軸方向に突出した筒部6Cと、該筒部6Cの外周側から径方向外側に突出し、スラスト受け5に衝合して取付けられたフランジ部6Dとから構成されている。
【0013】
また、固定スクロール6の鏡板6A背面側には、例えば上,下方向に平行に延びる放熱フィン6E,6E,6F,6Fが設けられ、これらの放熱フィン6E,6Fは、後述の圧縮室16から鏡板6Aに伝わる圧縮熱をスクロール側ダクト28内に効率よく放熱するものである。
【0014】
7はケーシング1のモータケース2に設けられた電動モータで、該電動モータ7は、モータケース2の筒部2B内周側に固定して設けられた固定子8と、該固定子8の内周側に回転可能に配置された回転子9と、後述の回転軸10とによって構成され、前記回転子9は回転軸10の外周側に固定して取付けられている。電動モータ7は、外部からの給電によって回転子9が固定子8に対して回転することにより、回転軸10を駆動するものである。
【0015】
10は電動モータ7の回転軸で、該回転軸10は、基端側(後端側)がモータケース2の底部2Aに軸受11を介して支持され、先端側(前端側)は蓋部2Cに軸受12を介して支持されている。そして、この回転軸10の先端側は、モータケース2の底部2Aから突出してクランク10Aとなり、該クランク10Aは、その軸線が回転軸10の軸線に対して一定寸法だけ偏心している。また、回転軸10にはバランスウェイト13が設けられ、このバランスウェイト13は、旋回スクロール14に対して回転軸10の回転バランスをとるものである。
【0016】
14はケーシング1内で電動モータ7の回転軸10に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール14は、円板状に形成された鏡板14Aと、該鏡板14Aの表面側から軸方向に立設された渦巻状のラップ部14Bとによって大略構成されている。また、旋回スクロール14の鏡板14Aには、その背面側(圧縮室16側に対し反対側)の中央にボス部14Cが突設され、該ボス部14Cは旋回軸受15によって回転軸10のクランク10Aに回転可能に取付けられている。そして、鏡板14Aは、その前面側が固定スクロール6のフランジ部6Dに摺接すると共に、背面側はスラスト受け5に摺接する摺接面14Dとなっている。
【0017】
旋回スクロール14は、固定スクロール6のラップ部6Bに対し例えば180度だけずらして重なり合うように配設され、両者のラップ部6B,14B間には、複数の圧縮室16,16,…が画成される。そして、スクロール式空気圧縮機の運転時には、固定スクロール6の外周側に設けた吸込口(図示せず)から外周側の圧縮室16内に空気を吸込みつつ、この空気を旋回スクロール14が旋回運動する間に各圧縮室16内で順次圧縮し、最後に中心側の圧縮室16から固定スクロール6の中心に設けた吐出開口17、吐出パイプ30を介して外部に圧縮空気を吐出する。
【0018】
18はスラスト受け5と旋回スクロール14との間に摺動可能に設けられたオルダムリングで、該オルダムリング18は、旋回スクロール14が旋回運動するときに、旋回スクロール14の背面側で互いに直交する2軸方向に摺動し、この旋回スクロール14の自転を防止するものである。
【0019】
19は油槽3内の油液4を旋回スクロール14の鏡板14A背面側に供給する油液供給機構で、該油液供給機構19は、油槽3内に位置してケーシング1に設けられた給油ポンプ20と、スラスト受け5の内部に設けられ、一端側が該給油ポンプ20に連通し他端側がスラスト受け5の摺接面5Bに開口した第1の給油通路21と、旋回スクロール14の鏡板14Aに設けられ、一端側が摺接面14Dに開口して該給油通路21と連通し他端側がボス部14C内に開口した第2の給油通路22とによって構成されている。
【0020】
油液4としては、合成油を含有するものが用いられる。合成油としては、直鎖あるいは有枝鎖状(分枝鎖状)の飽和炭化水素を含むものが用いられる。
油液4は、上記合成油を20質量%以上含むことが好ましい。合成油の含有率をこの範囲とすることによって、油液4の耐久性を高めることができる。この含有率がこの範囲未満であると、油液4が劣化しやすくなる。
【0021】
油液4中の基油としては、上記合成油を含むものが用いられる。この基油は、上記合成油を鉱油に添加したものであってもよい。
油液4中の基油の含有率は、80質量%以上とするのが好ましい。この含有率がこの範囲未満であると、油液4が劣化しやすくなる。
【0022】
油液4には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、その他の成分、例えば耐摩耗剤、摩耗低減剤、油性向上剤、金属清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤、腐食防止剤などを添加することができる。
【0023】
油液4の粘度(好ましくは動粘度)は、100℃において6〜8mm2/sであることが望ましい。油液4の粘度は、40℃において30〜40mm2/sであることが望ましい。
粘度を上記範囲下限値以上とすることによって、貧潤滑条件下においても十分な厚さの油膜を形成し、優れた潤滑性能を得ることができる。
粘度を上記範囲上限値以下とすることによって、油液4の流れ抵抗を小さくし、狭い部分にも浸透しやすくすることができる。
【0024】
油液4には、カルボキシル基を有する化合物を添加することができる。カルボキシル基含有化合物の使用によって、潤滑性能を向上させることができる。
なお、カルボキシル基含有化合物は、水分により劣化しやすいが、本実施形態のスクロール式流体機械では、ケーシング1と旋回スクロール14によって区画された略密閉領域内に油液4が留まるため、外気中の水分によるカルボキシル基含有化合物の劣化が起こりにくい。
【0025】
油液4に不純物として含まれる硫黄分の含有率は、0.05質量%以下であることが好ましい。
硫黄分の含有率をこの範囲とすることによって、油液4の酸化劣化を防ぐことができる。これは、酸化劣化を促す作用がある硫黄分の含有率を少なくすることによって、油液4の酸化安定性を高めることができるためである。
【0026】
油液供給機構19は、外部の駆動源(図示せず)によって給油ポンプ20を駆動することにより、油槽3内の油液4を吸込んで給油通路21に吐出する構成となっている。このため、油液4は、給油通路21からスラスト受け5と旋回スクロール14との摺接面5B,14D間に供給され、該摺接面5B,14Dを冷却、潤滑すると共に、給油通路22を通じて旋回軸受15およびオルダムリング18等に供給され、これらを冷却、潤滑した後に油槽3内に戻される。
このスクロール式流体機械は、旋回スクロール14の背面側(圧縮室16側に対し反対側)に油液が供給されるようになっており、ケーシング1と旋回スクロール14によって区画された略密閉領域内に油液4が留まることになる。このスクロール式流体機械は、この構造によって、圧縮室16に油液が混入しないようになっている。
【0027】
23はケーシング1の外部に位置して回転軸10の基端側(後端側)に設けられた冷却ファンを示し、該冷却ファン23は、回転軸10と一体に回転することにより冷却風を発生させ、この冷却風を後述のファン側ダクト24から上側ダクト26、下側ダクト27およびスクロール側ダクト28に向けて送風するものである。
【0028】
24は冷却ファン23を外側から覆うように設けられたファン側ダクトで、該ファン側ダクト24は、上面部24A、下面部24B、後面部24Cおよび左,右の側面部24D,24Eによって冷却ファン23を外側から取囲む箱形状のカバーとして形成されている。また、ファン側ダクト24の後面部24Cには冷却風の流入口25が設けられ、該流入口25は、冷却ファン23の回転によりファン側ダクト24内に外気を冷却風として流入させるものである。
【0029】
26はケーシング1の上側に設けられた上側ダクトで、該上側ダクト26は、上面部26A、前面部26Bおよび左,右の側面部26C,26Dにより、ケーシング1(モータケース2、スラスト受け5)の外周側および固定スクロール6の外周側を前,後方向(軸方向)に沿って延びる細長の箱体(枠体)として形成ている。また、上側ダクト26は、その基端側となる後端側26Eがファン側ダクト24に接続され、先端側となる前端側26Fはスクロール側ダクト28に接続されている。
上側ダクト26は、冷却ファン23からの冷却風をモータケース2の外周側、スラスト受け5の外周側等に導き、モータケース2、電動モータ7、スラスト受け5等を外側から冷却するものである。
【0030】
27はケーシング1の下側に設けられた下側ダクトで、該下側ダクト27は、下面部27A、前面部27Bおよび左,右の側面部27C,27Dにより、油槽3の外周側、スラスト受け5の外周側を前,後方向(軸方向)に沿って延びる細長の箱体(枠体)として形成されている。また、下側ダクト27は、その基端側となる後端側27Eがファン側ダクト24に接続され、先端側となる前端側27Fは、スクロール側ダクト28に接続されている。
下側ダクト27は、冷却ファン23からの冷却風を油槽3の外周側、スラスト受け5の外周側等に導き、これらの油槽3、スラスト受け5を外側から冷却するものである。
【0031】
28は固定スクロール6の背面側に設けられたスクロール側ダクトで、該スクロール側ダクト28は、前面部28Aおよび左,右の側面部28B,28Cにより、固定スクロール6の背面側を上,下方向に細長く延びる枠体として形成され、その上,下両端はそれぞれ上側ダクト26の前端側26F,下側ダクト27の前端側27Fに接続されている。そして、このスクロール側ダクト28は、上側ダクト26からの冷却風と下側ダクト27からの冷却風を固定スクロール6の鏡板6A背面側に導き、この固定スクロール6を背面側から冷却するものである。
【0032】
29はスクロール側ダクト28の前面部28Aに穿設された冷却風の流出口で、該流出口29は、固定スクロール6の鏡板6A中央部に設けられた吐出開口17とほぼ対応する位置に開口した円形穴として形成されている。そして、この流出口29は、上側ダクト26からスクロール側ダクト28へと流れる冷却風と下側ダクト27からスクロール側ダクト28へと流れる冷却風を一緒に外部へと流出させるものである。
【0033】
30は基端側が吐出開口17に接続された吐出パイプで、該吐出パイプ30は、先端側が流出口29を介してスクロール側ダクト28を貫通し、外部に突出している。そして、吐出パイプ30は、吐出開口17と共に吐出口を構成し、圧縮室16内の圧縮空気を外部に吐出して空気タンク(図示せず)等に貯留するものである。
【0034】
31は、固定スクロール6の筒部6C開口端側に設けられたフェイスシール(シール部)であり、フェイスシール31は、合成樹脂などの樹脂材料からなり、固定スクロール6と旋回スクロール14との間に配置されている。フェイスシール31は、圧縮室16から圧縮空気が外部に漏洩するのを防止すると共に、圧縮室16内に油液4が浸入するのを阻止するものである。
【0035】
次に、本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機の圧縮動作について説明する。
電動モータ7により回転軸10を回転させると、旋回スクロール14は回転軸10を中心として一定の旋回半径をもった円運動(旋回運動)を行い、固定スクロール6のラップ部6Bと旋回スクロール14のラップ部14Bとの間に画成された圧縮室16,16,…が連続的に縮小する。これにより、固定スクロール6の吸込口から吸込んだ外気を各圧縮室16で順次圧縮しつつ、この圧縮空気を固定スクロール6の吐出開口17から吐出パイプ30等を介して外部の空気タンク等に貯留させる。
【0036】
この圧縮運転時には外部からの駆動源によって油液供給機構19の給油ポンプ20を作動することにより、油槽3内の油液4を吸込んで給油通路21に吐出する。これにより油液4は給油通路21からスラスト受け5と旋回スクロール14との摺接面5B,14D間に供給され、該摺接面5B,14Dを冷却、潤滑すると共に、給油通路22を通じて旋回軸受15およびオルダムリング18等に供給され、これらを冷却、潤滑した後に油槽3内に戻される。
【0037】
冷却ファン23が回転軸10と一体に回転することにより、図2に示すように、冷却風は流入口25からファン側ダクト24を通じて矢示A方向へと上側ダクト26内を流れ、この間に電動モータ7等を外側から冷却する。また、この冷却ファン23からの冷却風は、ファン側ダクト24から下側ダクト27内へと図2中に示す矢示B方向にも流れ、この間に油槽3等を外側から冷却する。
上側ダクト26内の冷却風と下側ダクト27内の冷却風は、それぞれ図2中に示す矢示C,D方向へとスクロール側ダクト28内を流れ、この間に固定スクロール6の背面側を冷却すると共に、これらの冷却風は吐出パイプ30側の位置で合流し、流出口29を通じて外部に流出される。
【0038】
本実施形態のスクロール式流体機械では、上記飽和炭化水素を含む合成油を含有する油液4を用いる。
この合成油は、上記飽和炭化水素を含むため耐熱性や酸化安定性に優れていることから、油液4の耐久性を向上させることができる。これは、上記飽和炭化水素が、不飽和炭化水素などに比べて酸化による劣化が起こりにくいためである。
従って、長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持される。また、油液4の交換頻度を低くし、メンテナンスに要する手間を省くことができる。
また、油液4の使用温度を高くしても性能劣化が起こらないため、スクロール式流体機械の冷却構造を簡略化することができる。
さらに、上記合成油は樹脂材料への悪影響がそれほど大きくないため、フェイスシール31などのシール部が劣化するのを防ぐことができ、油液4が吐出空気に混入するのを確実に防ぐことができる。
【0039】
【実施例】
次に、具体例を挙げて本発明の作用効果を明確にする。
以下に示す実施例および比較例では、次に示す方法で性能評価を行った。
(1)耐熱性試験
(a)酸化安定度
JIS K2514に準拠したRBOT試験により、酸化安定性を評価した。
(b)粘度変化
JIS K2514に準拠したISOT試験により、粘度の変化率を評価した。この試験では、試料を165.5℃で48時間加熱し、試験前後の粘度を測定し、その変化率を算出した。
(c)全酸価変化
JIS K 2514に準拠したISOT試験により、全酸価の変化を評価した。この試験では、試料を165.5℃で48時間加熱し、試験前後の全酸価を測定した。
【0040】
(2)耐液性試験
JIS K6301に準拠した耐液性試験により、樹脂材料に対する影響を評価した。この試験では、フッ素ゴム(キーパー製09816材)からなる試験片を試料に100℃で72時間浸漬させ、試験片の機械特性などを調べた。
【0041】
(3)耐久性試験
試料を、図1に示す構成のスクロール式流体機械に油液4として使用し、試料の全酸価が更油基準値(試験開始時の全酸価に0.5mgkOHを加えた値)に達するまでの時間を測定した。試験の際の試料温度は、90℃(平均温度)および100℃(平均温度)とした。
【0042】
(実施例)
飽和炭化水素からなる基油を含む油剤を調製した。基油の含有率は80〜95質量%とした。
この試料を上記各試験に供した。耐熱性試験の結果を表1に示す。耐液性試験の結果を表2に示す。耐久性試験の結果を表3に示す。
【0043】
(比較例)
鉱油からなる基油を含む油剤を調製した。基油の含有率は80〜95質量%とした。
この試料を上記各試験に供した。耐熱性試験の結果を表1に示す。耐液性試験の結果を表2に示す。耐久性試験の結果を表3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1より、合成油を含む油液(実施例)は、酸化安定度が高く、高温条件においても酸化劣化しにくいことがわかる。
また、実施例では粘度の変化率が低く、貧潤滑条件下でも優れた潤滑性能を発揮できることがわかる。
さらに、全酸価変化の測定結果より、実施例は耐酸化性に優れていることがわかる。
表2より、実施例では、比較例に比べ、樹脂材料への悪影響はそれほど大きくないことがわかる。このことから、実施例には、樹脂材料を著しく劣化させる作用がないことがわかる。
表3より、実施例の油剤は、優れた耐久性を示すことが確認された。特に、高温(100℃)において耐久性が高いことがわかった。
【0048】
【発明の効果】
本発明のスクロール式流体機械では、油液が合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含む。
上記合成油は、上記飽和炭化水素を含むため耐熱性や酸化安定性に優れていることから、油液の耐久性を向上させることができる。
従って、長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持される。さらに、上記合成油は樹脂材料への悪影響がそれほど大きくないため、シール部が劣化するのを防ぐことができ、油液が吐出空気に混入するのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクロール式流体機械の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すスクロール式流体機械を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
3 油槽
4 油液
6 固定スクロール
7 電動モータ
10 回転軸
14 旋回スクロール
16 圧縮室
19 油液供給機構(油液供給手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気圧縮機、真空ポンプ等に好適に用いられるスクロール式流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スクロール式流体機械は、電動モータを内蔵するケーシングと、該ケーシングに設けられた固定スクロールと、前記ケーシング内で電動モータの回転軸に旋回可能に設けられ該固定スクロールとの間に圧縮室を画成する旋回スクロールとを備えたものが知られている。
この種のスクロール式流体機械としては、特許文献1に記載されたものがある。
このスクロール式流体機械は、旋回スクロールの背面側(圧縮室側に対し反対側)に潤滑用の油液を供給できるようになっており、圧縮室に油液が混入しないように構成されている。すなわち、このスクロール式流体機械では、駆動部に油液を供給でき、かつ油液が圧縮室に供給されない方式、いわゆる半給油式の構造が採用されている。
また、特許文献2には、潤滑油を使用する冷凍機が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−336488号公報
【特許文献2】
特開平10−176689号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、往復動圧縮機等では、鉱油などの潤滑油が用いられている。この種の装置では、駆動部だけでなく圧縮室にも潤滑油が供給されるため、潤滑油が微少量ずつ圧縮空気とともに吐出されることから、新しい潤滑油が適宜補給される。これに対し、上記半給油式のスクロール式流体機械では、油液が圧縮室に供給されないため油液の補給の必要がない分、長時間同じ油液が保持されるため、油液が酸化などにより劣化しやすい問題がある。
また、上記半給油式のスクロール式流体機械では、油液が供給される箇所(旋回スクロールなど)が圧縮運転により高温となりやすいため、油液が劣化しやすい問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、長期間、高温で使用しても良好な潤滑性能および冷却性能を維持することができるスクロール式流体機械を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のスクロール式流体機械は、冷却および潤滑用の油液を溜める油槽となるケーシングと、該ケーシングに設けられた固定スクロールと、前記ケーシング内で前記電動モータの回転軸に旋回可能に設けられ、該固定スクロールとの間に圧縮室を画成する旋回スクロールと、前記油槽内の油液を旋回スクロールの背面側に供給する油液供給手段とを備え、前記油液が、合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含むことを特徴とする。
前記合成油は、前記飽和炭化水素を含むため耐熱性や酸化安定性に優れていることから、油液の耐久性を向上させることができる。
従って、長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持される。
さらに、前記合成油は樹脂材料への悪影響がそれほど大きくないため、シール部が劣化するのを防ぐことができ、油液が吐出空気に混入するのを確実に防ぐことができる。
【0006】
前記油液は、前記合成油を20質量%以上含むことが好ましい。合成油の含有率をこの範囲とすることによって、油液の耐久性を高めることができる。
前記油液の粘度は、100℃において6〜8mm2/sであることが好ましい。
粘度を前記範囲とすることによって、貧潤滑条件下においても十分な厚さの油膜を形成し、優れた潤滑性能を得ることができる。また、油液の流れ抵抗を小さくし、狭い部分にも浸透しやすくすることができる。
前記油液に不純物として含まれる硫黄分の含有率は、0.05質量%以下であることが好ましい。硫黄分の含有率をこの範囲とすることによって、油液の酸化劣化を防ぐことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1はスクロール式空気圧縮機の外枠を形成する有底筒状のケーシングで、該ケーシング1は、軸線が水平状態となるように横置きに配置されている。このケーシング1は、モータケース2と、後述の油槽3およびスラスト受け5によって構成され、モータケース2内には後述の電動モータ7が内蔵されている。
なお、図1は、図2中の矢示II−II方向からみた縦断面図である。
【0008】
また、モータケース2は、図2に示すように、前,後方向(水平方向)に延び、前端側に環状の底部2Aが一体形成された筒部2Bと、該筒部2Bの後端側に設けられ、この筒部2Bを施蓋する環状の蓋部2Cとによって構成され、前記底部2Aの外縁側には径方向外側にフランジ部2Dが突設されている。
【0009】
さらに、モータケース2の筒部2B外周側には、周方向に離間して前,後方向に延びる複数の放熱フィン2E,2E,…が設けられ、該各放熱フィン2Eは、後述する電動モータ7の固定子8等からモータケース2に伝わる熱を外気または上側ダクト26内へと効率よく放熱するものである。
【0010】
3はモータケース2の下部側に位置してケーシングに設けられた油槽で、該油槽3は、モータケース2の筒部2B後端から下方に延びた後板3Aと、該後板3Aの下端から前方へとケーシング1の長さ方向(軸方向)に延びた底板3Bと、該底板3Bとモータケース2の筒部2Bとの間に位置して後板3Aの左,右両端から前方に延びた左,右の側板3C(一方のみ図示)と、後述するスラスト受け5の一部等とによって有底の箱体として形成され、その内部には油液4が溜められている。
【0011】
5はケーシング1のモータケース2前端側に設けられた環状のスラスト受けで、該スラスト受け5は、モータケース2のフランジ部2D、油槽3の底板3B前端に一体に取付けられている。そして、スラスト受け5の内周側には、前側に向けて環状凹部5Aが形成され、該環状凹部5A内には、後述する旋回スクロール14の鏡板14Aが配設されている。そして、スラスト受け5の環状凹部5Aには、前記鏡板14Aと摺接する環状の摺接面5Bが形成され、該摺接面5Bは、旋回スクロール14に作用するスラスト荷重を鏡板14Aとの間で受承する構成となっている。
【0012】
6はケーシング1のスラスト受け5前側に設けられた固定スクロールで、該固定スクロール6は、略円板状に形成され中心が後述する回転軸10の軸線と一致するように配設された鏡板6Aと、該鏡板6Aの表面に立設された渦巻状のラップ部6Bと、前記鏡板6Aの外周側からラップ部6Bを取囲むように軸方向に突出した筒部6Cと、該筒部6Cの外周側から径方向外側に突出し、スラスト受け5に衝合して取付けられたフランジ部6Dとから構成されている。
【0013】
また、固定スクロール6の鏡板6A背面側には、例えば上,下方向に平行に延びる放熱フィン6E,6E,6F,6Fが設けられ、これらの放熱フィン6E,6Fは、後述の圧縮室16から鏡板6Aに伝わる圧縮熱をスクロール側ダクト28内に効率よく放熱するものである。
【0014】
7はケーシング1のモータケース2に設けられた電動モータで、該電動モータ7は、モータケース2の筒部2B内周側に固定して設けられた固定子8と、該固定子8の内周側に回転可能に配置された回転子9と、後述の回転軸10とによって構成され、前記回転子9は回転軸10の外周側に固定して取付けられている。電動モータ7は、外部からの給電によって回転子9が固定子8に対して回転することにより、回転軸10を駆動するものである。
【0015】
10は電動モータ7の回転軸で、該回転軸10は、基端側(後端側)がモータケース2の底部2Aに軸受11を介して支持され、先端側(前端側)は蓋部2Cに軸受12を介して支持されている。そして、この回転軸10の先端側は、モータケース2の底部2Aから突出してクランク10Aとなり、該クランク10Aは、その軸線が回転軸10の軸線に対して一定寸法だけ偏心している。また、回転軸10にはバランスウェイト13が設けられ、このバランスウェイト13は、旋回スクロール14に対して回転軸10の回転バランスをとるものである。
【0016】
14はケーシング1内で電動モータ7の回転軸10に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール14は、円板状に形成された鏡板14Aと、該鏡板14Aの表面側から軸方向に立設された渦巻状のラップ部14Bとによって大略構成されている。また、旋回スクロール14の鏡板14Aには、その背面側(圧縮室16側に対し反対側)の中央にボス部14Cが突設され、該ボス部14Cは旋回軸受15によって回転軸10のクランク10Aに回転可能に取付けられている。そして、鏡板14Aは、その前面側が固定スクロール6のフランジ部6Dに摺接すると共に、背面側はスラスト受け5に摺接する摺接面14Dとなっている。
【0017】
旋回スクロール14は、固定スクロール6のラップ部6Bに対し例えば180度だけずらして重なり合うように配設され、両者のラップ部6B,14B間には、複数の圧縮室16,16,…が画成される。そして、スクロール式空気圧縮機の運転時には、固定スクロール6の外周側に設けた吸込口(図示せず)から外周側の圧縮室16内に空気を吸込みつつ、この空気を旋回スクロール14が旋回運動する間に各圧縮室16内で順次圧縮し、最後に中心側の圧縮室16から固定スクロール6の中心に設けた吐出開口17、吐出パイプ30を介して外部に圧縮空気を吐出する。
【0018】
18はスラスト受け5と旋回スクロール14との間に摺動可能に設けられたオルダムリングで、該オルダムリング18は、旋回スクロール14が旋回運動するときに、旋回スクロール14の背面側で互いに直交する2軸方向に摺動し、この旋回スクロール14の自転を防止するものである。
【0019】
19は油槽3内の油液4を旋回スクロール14の鏡板14A背面側に供給する油液供給機構で、該油液供給機構19は、油槽3内に位置してケーシング1に設けられた給油ポンプ20と、スラスト受け5の内部に設けられ、一端側が該給油ポンプ20に連通し他端側がスラスト受け5の摺接面5Bに開口した第1の給油通路21と、旋回スクロール14の鏡板14Aに設けられ、一端側が摺接面14Dに開口して該給油通路21と連通し他端側がボス部14C内に開口した第2の給油通路22とによって構成されている。
【0020】
油液4としては、合成油を含有するものが用いられる。合成油としては、直鎖あるいは有枝鎖状(分枝鎖状)の飽和炭化水素を含むものが用いられる。
油液4は、上記合成油を20質量%以上含むことが好ましい。合成油の含有率をこの範囲とすることによって、油液4の耐久性を高めることができる。この含有率がこの範囲未満であると、油液4が劣化しやすくなる。
【0021】
油液4中の基油としては、上記合成油を含むものが用いられる。この基油は、上記合成油を鉱油に添加したものであってもよい。
油液4中の基油の含有率は、80質量%以上とするのが好ましい。この含有率がこの範囲未満であると、油液4が劣化しやすくなる。
【0022】
油液4には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、その他の成分、例えば耐摩耗剤、摩耗低減剤、油性向上剤、金属清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤、腐食防止剤などを添加することができる。
【0023】
油液4の粘度(好ましくは動粘度)は、100℃において6〜8mm2/sであることが望ましい。油液4の粘度は、40℃において30〜40mm2/sであることが望ましい。
粘度を上記範囲下限値以上とすることによって、貧潤滑条件下においても十分な厚さの油膜を形成し、優れた潤滑性能を得ることができる。
粘度を上記範囲上限値以下とすることによって、油液4の流れ抵抗を小さくし、狭い部分にも浸透しやすくすることができる。
【0024】
油液4には、カルボキシル基を有する化合物を添加することができる。カルボキシル基含有化合物の使用によって、潤滑性能を向上させることができる。
なお、カルボキシル基含有化合物は、水分により劣化しやすいが、本実施形態のスクロール式流体機械では、ケーシング1と旋回スクロール14によって区画された略密閉領域内に油液4が留まるため、外気中の水分によるカルボキシル基含有化合物の劣化が起こりにくい。
【0025】
油液4に不純物として含まれる硫黄分の含有率は、0.05質量%以下であることが好ましい。
硫黄分の含有率をこの範囲とすることによって、油液4の酸化劣化を防ぐことができる。これは、酸化劣化を促す作用がある硫黄分の含有率を少なくすることによって、油液4の酸化安定性を高めることができるためである。
【0026】
油液供給機構19は、外部の駆動源(図示せず)によって給油ポンプ20を駆動することにより、油槽3内の油液4を吸込んで給油通路21に吐出する構成となっている。このため、油液4は、給油通路21からスラスト受け5と旋回スクロール14との摺接面5B,14D間に供給され、該摺接面5B,14Dを冷却、潤滑すると共に、給油通路22を通じて旋回軸受15およびオルダムリング18等に供給され、これらを冷却、潤滑した後に油槽3内に戻される。
このスクロール式流体機械は、旋回スクロール14の背面側(圧縮室16側に対し反対側)に油液が供給されるようになっており、ケーシング1と旋回スクロール14によって区画された略密閉領域内に油液4が留まることになる。このスクロール式流体機械は、この構造によって、圧縮室16に油液が混入しないようになっている。
【0027】
23はケーシング1の外部に位置して回転軸10の基端側(後端側)に設けられた冷却ファンを示し、該冷却ファン23は、回転軸10と一体に回転することにより冷却風を発生させ、この冷却風を後述のファン側ダクト24から上側ダクト26、下側ダクト27およびスクロール側ダクト28に向けて送風するものである。
【0028】
24は冷却ファン23を外側から覆うように設けられたファン側ダクトで、該ファン側ダクト24は、上面部24A、下面部24B、後面部24Cおよび左,右の側面部24D,24Eによって冷却ファン23を外側から取囲む箱形状のカバーとして形成されている。また、ファン側ダクト24の後面部24Cには冷却風の流入口25が設けられ、該流入口25は、冷却ファン23の回転によりファン側ダクト24内に外気を冷却風として流入させるものである。
【0029】
26はケーシング1の上側に設けられた上側ダクトで、該上側ダクト26は、上面部26A、前面部26Bおよび左,右の側面部26C,26Dにより、ケーシング1(モータケース2、スラスト受け5)の外周側および固定スクロール6の外周側を前,後方向(軸方向)に沿って延びる細長の箱体(枠体)として形成ている。また、上側ダクト26は、その基端側となる後端側26Eがファン側ダクト24に接続され、先端側となる前端側26Fはスクロール側ダクト28に接続されている。
上側ダクト26は、冷却ファン23からの冷却風をモータケース2の外周側、スラスト受け5の外周側等に導き、モータケース2、電動モータ7、スラスト受け5等を外側から冷却するものである。
【0030】
27はケーシング1の下側に設けられた下側ダクトで、該下側ダクト27は、下面部27A、前面部27Bおよび左,右の側面部27C,27Dにより、油槽3の外周側、スラスト受け5の外周側を前,後方向(軸方向)に沿って延びる細長の箱体(枠体)として形成されている。また、下側ダクト27は、その基端側となる後端側27Eがファン側ダクト24に接続され、先端側となる前端側27Fは、スクロール側ダクト28に接続されている。
下側ダクト27は、冷却ファン23からの冷却風を油槽3の外周側、スラスト受け5の外周側等に導き、これらの油槽3、スラスト受け5を外側から冷却するものである。
【0031】
28は固定スクロール6の背面側に設けられたスクロール側ダクトで、該スクロール側ダクト28は、前面部28Aおよび左,右の側面部28B,28Cにより、固定スクロール6の背面側を上,下方向に細長く延びる枠体として形成され、その上,下両端はそれぞれ上側ダクト26の前端側26F,下側ダクト27の前端側27Fに接続されている。そして、このスクロール側ダクト28は、上側ダクト26からの冷却風と下側ダクト27からの冷却風を固定スクロール6の鏡板6A背面側に導き、この固定スクロール6を背面側から冷却するものである。
【0032】
29はスクロール側ダクト28の前面部28Aに穿設された冷却風の流出口で、該流出口29は、固定スクロール6の鏡板6A中央部に設けられた吐出開口17とほぼ対応する位置に開口した円形穴として形成されている。そして、この流出口29は、上側ダクト26からスクロール側ダクト28へと流れる冷却風と下側ダクト27からスクロール側ダクト28へと流れる冷却風を一緒に外部へと流出させるものである。
【0033】
30は基端側が吐出開口17に接続された吐出パイプで、該吐出パイプ30は、先端側が流出口29を介してスクロール側ダクト28を貫通し、外部に突出している。そして、吐出パイプ30は、吐出開口17と共に吐出口を構成し、圧縮室16内の圧縮空気を外部に吐出して空気タンク(図示せず)等に貯留するものである。
【0034】
31は、固定スクロール6の筒部6C開口端側に設けられたフェイスシール(シール部)であり、フェイスシール31は、合成樹脂などの樹脂材料からなり、固定スクロール6と旋回スクロール14との間に配置されている。フェイスシール31は、圧縮室16から圧縮空気が外部に漏洩するのを防止すると共に、圧縮室16内に油液4が浸入するのを阻止するものである。
【0035】
次に、本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機の圧縮動作について説明する。
電動モータ7により回転軸10を回転させると、旋回スクロール14は回転軸10を中心として一定の旋回半径をもった円運動(旋回運動)を行い、固定スクロール6のラップ部6Bと旋回スクロール14のラップ部14Bとの間に画成された圧縮室16,16,…が連続的に縮小する。これにより、固定スクロール6の吸込口から吸込んだ外気を各圧縮室16で順次圧縮しつつ、この圧縮空気を固定スクロール6の吐出開口17から吐出パイプ30等を介して外部の空気タンク等に貯留させる。
【0036】
この圧縮運転時には外部からの駆動源によって油液供給機構19の給油ポンプ20を作動することにより、油槽3内の油液4を吸込んで給油通路21に吐出する。これにより油液4は給油通路21からスラスト受け5と旋回スクロール14との摺接面5B,14D間に供給され、該摺接面5B,14Dを冷却、潤滑すると共に、給油通路22を通じて旋回軸受15およびオルダムリング18等に供給され、これらを冷却、潤滑した後に油槽3内に戻される。
【0037】
冷却ファン23が回転軸10と一体に回転することにより、図2に示すように、冷却風は流入口25からファン側ダクト24を通じて矢示A方向へと上側ダクト26内を流れ、この間に電動モータ7等を外側から冷却する。また、この冷却ファン23からの冷却風は、ファン側ダクト24から下側ダクト27内へと図2中に示す矢示B方向にも流れ、この間に油槽3等を外側から冷却する。
上側ダクト26内の冷却風と下側ダクト27内の冷却風は、それぞれ図2中に示す矢示C,D方向へとスクロール側ダクト28内を流れ、この間に固定スクロール6の背面側を冷却すると共に、これらの冷却風は吐出パイプ30側の位置で合流し、流出口29を通じて外部に流出される。
【0038】
本実施形態のスクロール式流体機械では、上記飽和炭化水素を含む合成油を含有する油液4を用いる。
この合成油は、上記飽和炭化水素を含むため耐熱性や酸化安定性に優れていることから、油液4の耐久性を向上させることができる。これは、上記飽和炭化水素が、不飽和炭化水素などに比べて酸化による劣化が起こりにくいためである。
従って、長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持される。また、油液4の交換頻度を低くし、メンテナンスに要する手間を省くことができる。
また、油液4の使用温度を高くしても性能劣化が起こらないため、スクロール式流体機械の冷却構造を簡略化することができる。
さらに、上記合成油は樹脂材料への悪影響がそれほど大きくないため、フェイスシール31などのシール部が劣化するのを防ぐことができ、油液4が吐出空気に混入するのを確実に防ぐことができる。
【0039】
【実施例】
次に、具体例を挙げて本発明の作用効果を明確にする。
以下に示す実施例および比較例では、次に示す方法で性能評価を行った。
(1)耐熱性試験
(a)酸化安定度
JIS K2514に準拠したRBOT試験により、酸化安定性を評価した。
(b)粘度変化
JIS K2514に準拠したISOT試験により、粘度の変化率を評価した。この試験では、試料を165.5℃で48時間加熱し、試験前後の粘度を測定し、その変化率を算出した。
(c)全酸価変化
JIS K 2514に準拠したISOT試験により、全酸価の変化を評価した。この試験では、試料を165.5℃で48時間加熱し、試験前後の全酸価を測定した。
【0040】
(2)耐液性試験
JIS K6301に準拠した耐液性試験により、樹脂材料に対する影響を評価した。この試験では、フッ素ゴム(キーパー製09816材)からなる試験片を試料に100℃で72時間浸漬させ、試験片の機械特性などを調べた。
【0041】
(3)耐久性試験
試料を、図1に示す構成のスクロール式流体機械に油液4として使用し、試料の全酸価が更油基準値(試験開始時の全酸価に0.5mgkOHを加えた値)に達するまでの時間を測定した。試験の際の試料温度は、90℃(平均温度)および100℃(平均温度)とした。
【0042】
(実施例)
飽和炭化水素からなる基油を含む油剤を調製した。基油の含有率は80〜95質量%とした。
この試料を上記各試験に供した。耐熱性試験の結果を表1に示す。耐液性試験の結果を表2に示す。耐久性試験の結果を表3に示す。
【0043】
(比較例)
鉱油からなる基油を含む油剤を調製した。基油の含有率は80〜95質量%とした。
この試料を上記各試験に供した。耐熱性試験の結果を表1に示す。耐液性試験の結果を表2に示す。耐久性試験の結果を表3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1より、合成油を含む油液(実施例)は、酸化安定度が高く、高温条件においても酸化劣化しにくいことがわかる。
また、実施例では粘度の変化率が低く、貧潤滑条件下でも優れた潤滑性能を発揮できることがわかる。
さらに、全酸価変化の測定結果より、実施例は耐酸化性に優れていることがわかる。
表2より、実施例では、比較例に比べ、樹脂材料への悪影響はそれほど大きくないことがわかる。このことから、実施例には、樹脂材料を著しく劣化させる作用がないことがわかる。
表3より、実施例の油剤は、優れた耐久性を示すことが確認された。特に、高温(100℃)において耐久性が高いことがわかった。
【0048】
【発明の効果】
本発明のスクロール式流体機械では、油液が合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含む。
上記合成油は、上記飽和炭化水素を含むため耐熱性や酸化安定性に優れていることから、油液の耐久性を向上させることができる。
従って、長期間、高温で使用しても良好な潤滑および冷却性能が維持される。さらに、上記合成油は樹脂材料への悪影響がそれほど大きくないため、シール部が劣化するのを防ぐことができ、油液が吐出空気に混入するのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクロール式流体機械の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すスクロール式流体機械を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
3 油槽
4 油液
6 固定スクロール
7 電動モータ
10 回転軸
14 旋回スクロール
16 圧縮室
19 油液供給機構(油液供給手段)
Claims (4)
- 冷却および潤滑用の油液を溜める油槽となるケーシングと、
該ケーシングに設けられた固定スクロールと、
前記ケーシング内で前記電動モータの回転軸に旋回可能に設けられ、該固定スクロールとの間に圧縮室を画成する旋回スクロールと、
前記油槽内の油液を旋回スクロールの背面側に供給する油液供給手段とを備えたスクロール式流体機械において、
前記油液は、合成油を含有し、該合成油が、直鎖あるいは有枝鎖状の飽和炭化水素を含むことを特徴とするスクロール式流体機械。 - 前記油液が、前記合成油を20質量%以上含むことを特徴とする請求項1記載のスクロール式流体機械。
- 前記油液の粘度が、100℃において6〜8mm2/sであることを特徴とする請求項1記載のスクロール式流体機械。
- 前記油液に不純物として含まれる硫黄分の含有率が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のスクロール式流体機械。
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-
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20041129 |
|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060110 |