JP2004155810A - 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004155810A JP2004155810A JP2002320089A JP2002320089A JP2004155810A JP 2004155810 A JP2004155810 A JP 2004155810A JP 2002320089 A JP2002320089 A JP 2002320089A JP 2002320089 A JP2002320089 A JP 2002320089A JP 2004155810 A JP2004155810 A JP 2004155810A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer
- vinyl polymer
- resin composition
- proton
- pseudo
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
【課題】複屈折率が極めて低く、相分離の無い擬似架橋型樹脂組成物およびその製造方法を得ると共に、反りの発生を防止した高品質の成形品及び光学用部品を得る。
【解決手段】分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとが含まれると共に、ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとは、プロトン供与性原子団とプロトン受容性原子団との間の分子間水素結合により擬似的に架橋され、かつ、ビニル系重合体A又はビニル系重合体Bの少なくとも一方は、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された重合体であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとが含まれると共に、ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとは、プロトン供与性原子団とプロトン受容性原子団との間の分子間水素結合により擬似的に架橋され、かつ、ビニル系重合体A又はビニル系重合体Bの少なくとも一方は、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された重合体であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CD、MD、DVD等の高密度光ディスクのレーザー光読み取り用レンズ、液晶プロジェクター用レンズ、レーザービームプリンタ用レンズ、レーザービームプリンタ用レンズ等の光学用部品に適用可能な擬似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電製品、カメラ、携帯電話、OA機器、電子機器などの部品、CDやDVDなどの光学用部品として各種の高分子材料が使用されている。
【0003】
代表的な高分子材料として、例えば、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、液晶性ポリマ、ポリイミド樹脂、ポリマーアロイ材、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0004】
アクリル樹脂またはスチレン系樹脂は、透明性が高く、ゴム状物からガラス状ポリマまで多様な特徴を有するポリマを比較的容易に製造することができ、変性が容易である等の特性を有し、さらに比較的安価であるが、強度、耐熱性と靱性の両立向上に大きな課題が残されている。アクリル樹脂全般に共通して靭性が不足していることが課題となっているが、例えば、アクリル樹脂中にゴム粒子を添加して靭性の不足を解決する方法が幾つか報告されている(特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、アクリル樹脂中にゴム粒子を添加して靭性を改善できるものの、樹脂から薄膜フィルムを形成すると樹脂を折り曲げた時に白化現象が生じてしまい、良好な折り曲げ加工性を得ることができない。このため、現在、室温以上のガラス転移点を有し、靱性および折り曲げ加工性が優れたアクリル樹脂は見出されておらず、薄膜フィルムの形成は困難であった。
【0005】
また、芳香族ポリアミド樹脂として、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが最も代表的な樹脂として挙げられる。ポリパラフェニレンテレフタルアミドは、特に、高融点、高結晶性かつ難燃性であり、剛直な分子構造であるため高い機械的強度および低い線膨張係数等を有する。しかし、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド樹脂は、有機溶媒に難溶であり、溶媒として濃硫酸等の無機の強酸を用いる必要があった。濃硫酸等の濃厚溶液から紡糸された繊維は高い強度と弾性率を示すことが知られており、工業的に実施されるに至っているがフィルムへの応用例は少ない。例えば、膨潤状態で延伸してフィルムとして形成できる技術が開示されているが(特許文献3参照)、本方法では製造工程が極めて煩雑となり、生産性が低下し、製品価格が上昇してしまうという問題があった。有機溶媒への溶解性を向上させる方法としては、芳香核にハロゲン基を導入した単位または屈曲性の高い単位を共重合して有機溶媒への溶解性を向上させる方法が知られている(特許文献4参照)。しかし、モノマーが高価であるため製品価格が高騰すること、耐熱性や難燃性の高さを損なうことが懸念される上に、ハロゲン原子の金属腐食性が問題となっていた。
【0006】
液晶性ポリマは、溶融状態において液晶状態を呈するため、配向方向における弾性率および強度が高く、低い線膨張係数を有するが、配向方向と直角方向における弾性率、強度および線膨張係数などの性能が著しく低い。また、液晶ポリマは、射出成形により成形品を得た場合に発生するウエルドと呼ばれる溶融樹脂の合流部分の強度が著しく低下し、また、成形品表面が層状に剥離してしまう等の欠点が挙げられているが、現在この問題点を解決する方法は知られていなかった。
【0007】
ポリイミド樹脂は、極めて高い耐熱性と強靱性とを有し、フィルム性能が良好であるため工業的に極めて有用な材料である。ポリイミドをフィルム状に加工するために、一般的には、ポリイミド溶液を塗工した後に高温加熱してイミド環を形成している。イミド環を形成すると高い耐熱性や強靭性を得ることができるが、一旦、イミド環を形成すると溶媒に対する溶解性が著しく低下してしまい、ポリイミドをリサイクルする際には極めて重大な欠点となっていた。そこで、溶媒に対する溶解性および耐熱性の両特性を兼ね備えた材料の開発が要求されており、例えば、芳香核にアルキル等の置換基を導入した単位を共重合して有機溶媒への溶解性を向上させる方法が知られている。しかし、この方法ではガラス転移温度が320℃以上となる材料は得られず、また、モノマーが高価であるため製品価格が高騰してしまうという問題があった。
【0008】
ポリマーアロイ材は、異種の高分子材料を混合して新たな性能の発現を目的とした材料であり、相溶化剤を用いて親和性の異なる高分子を混合して製造される。本方法は、相溶化剤により表面エネルギーを減少させることを狙った技術であるため海島構造を形成する分散状態を制御することはできるが、完全に相溶化することはできず、現在のところ、異種高分子を完全相溶化したという報告もなされていない。また、相溶化剤は比較的高価であるため、製品価格が高騰し、ポリマーアロイ材を長期間に亘って使用した場合には、相溶化剤が表面にブリードアウトして汚染の原因となり、また、ポリマーアロイ材の分散状態が変化してしまうという問題があった。
【0009】
熱硬化性樹脂は、一般に不溶不融の硬化物であるため、耐溶剤性又は高温下での強度保持率等の耐久性が非常に優れている。しかし、架橋反応が共有結合により形成され再加工することができず、近年のリサイクル性を向上させる点において致命的な欠点となっている。リサイクル可能な熱硬化性樹脂に最も近いものとして、アイオノマー樹脂が挙げられる。アイオノマー樹脂は、イオン結合を形成して擬似的架橋点を形成するものであり、例えば、側鎖にカルボキシル基を有するポリマに、酸化マグネシウム又は水酸化カルシウム等の金属酸化物又は金属水酸化物を添加して、金属とカルボキシル基との間にイオン結合を形成するものである。このような方法では、ある程度の耐熱性および強靱性の向上は認められるものの、金属化合物とカルボキシル基の結合力が弱く、また、金属化合物の樹脂に対する溶解性が低く、金属化合物を少量しか添加できない等の理由により、大幅な特性向上は認められなかった。
【0010】
そこで、1種又は2種以上の合成高分子を混合して分子間に水素結合を形成して擬似的な架橋構造を持たせて、従来の材料では実現できなかった新たな特性を導入した樹脂組成物が開発されている(特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】
特公昭58−167605号公報
【特許文献2】
特開平3−52910号公報
【特許文献3】
特開平4−6738号公報
【特許文献4】
特公昭56−45421号公報
【特許文献5】
特開2000−273319号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した樹脂組成物は、分子間に水素結合を形成することにより新たな特性を樹脂組成物に導入することが可能であったが、一方において、樹脂組成物に相分離が生じてしまうという問題を有していた。
【0013】
具体的には、1種又は2種以上の合成高分子を混合する前に合成高分子をそれぞれ製造するが、製造時の重合方法が相違すると、同一の組成の材料を使用した場合であっても均一な合成高分子を得ることができず、不均一な合成高分子を混合すると樹脂組成物に相分離が生じていた。
【0014】
また、上述の相分離した樹脂組成物からフィルムなどに成形すると、フィルムに反りが発生してしまい、高い寸法精度が要求されるDVD用の表面保護フィルムとして適用するには問題があった。
【0015】
さらに、近年、DVD用の表面保護フィルムの光学用部品として、ビスフェノールAと塩化カルボニルまたはジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリエステルの一種であるポリカーボネートが使用されている。ポリカーボネートは、透明性、靭性および耐熱性が優れており、耐衝撃性や電気絶縁性を有するだけでなく、溶媒への溶解性が高いことからリサイクル可能である等の利点を有するが、ポリカーボネートから成形されるフィルムは複屈折率が高く、良好な光学特性を得ることができなかった。このため低複屈折率の新たな材料の開発が求められている。
【0016】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、複屈折率が極めて低く、相分離の無い擬似架橋型樹脂組成物およびその製造方法を得ることを目的とすると共に、反りの発生を防止した高品質の成形品及び光学用部品を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決すべく種々研究し、使用するビニル系重合体を工夫した結果、ビニル系重合体を合成する際に単量体を一括して添加するのではなく、単量体を連続又は分割して添加すると均一なビニル系重合体を作製できることが判明した。そして、均一なビニル系重合体を使用して樹脂組成物を製造すると、樹脂組成物の相分離を無くし、本樹脂組成物からフィルムなどの成形品を作製すると、成形品の反り発生を防止できることを見出し本発明の完成に至ったものである。
【0018】
また、本発明は、均一なビニル系重合体を使用してフィルム等の成形品における反り発生を防止したが、本発明を完成させる前提として、特性の異なる2種以上のビニル系重合体を混合し、ビニル系重合体の相互間に擬似的な架橋構造を形成させた擬似架橋型樹脂組成物を使用したものである。なお、擬似的な架橋構造という表現を使用したが、これは、本発明の樹脂組成物の架橋構造が、熱分解温度以下の熱や溶剤等により切断されるものであり、温度を下げるか、あるいは溶剤を除去すると架橋構造が再形成されるためである。本樹脂組成物によれば、1種のビニル系重合体では得られない複数の特性を持たせた疑似架橋型樹脂組成物を得ることができる。例えば、2種のビニル系重合体を混合する場合に、耐熱性が良好であり正複屈折である一方のビニル系重合体と、柔軟性を有し負複屈折である他方のビニル系重合体と、を使用して、両者のビニル系重合体を混合して擬似架橋を形成する。擬似架橋の形成により、耐熱性及び柔軟性の特性を両立し、かつ、正負複屈折を相殺させてゼロ複屈折化し、相反する特性を持たせた樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
すなわち、本発明は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとが含まれると共に、前記ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとは、前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間の分子間水素結合により擬似的に架橋され、かつ、前記ビニル系重合体A又はビニル系重合体Bの少なくとも一方は、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された重合体であることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、ビニル系重合体としてビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された均一なビニル系重合体を使用することにより、樹脂組成物の相分離を防止でき、複屈折率の低い樹脂組成物を得ることができる。なお、本発明において、いずれか一方のビニル系重合体として単量体を連続添加又は分割添加して作製された均一なビニル系重合体を使用することにより、本発明の効果を得ることができる。
【0021】
なお、ここで、分子内に含むとは側鎖と末端基の一方又は双方に含むことを意味し、重合体とは、単独重合体と共重合体との両方を含むことを意味する。また、ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bは、一方又は双方が2種以上であっても良い。
【0022】
また、本発明の擬似架橋型樹脂組成物には、後述する混合物をさらに混合して擬似架橋型樹脂組成物としたものであっても良い。
【0023】
上記発明において、プロトン供与性原子団は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基、チオフェノール性メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、カルボニル基、スルホニル基、チオカルボニル基、ホスホリル基、シアノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましい。
【0024】
さらに、上記発明において、プロトン供与性原子団は、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましい。
【0025】
上記発明において、前記ビニル系重合体Aまたは前記ビニル系重合体Bのうちいずれか一方のガラス転移温度が室温(25℃)以下であり、他方のガラス転移温度が室温(25℃)以上であることを特徴とする。本発明によれば、ガラス転移温度の相異する高分子を少なくとも2種類混合することにより、混合後の共重合体に柔軟性を付与して加工性を改善したものである。
【0026】
また、上記発明において、前記ビニル系重合体Aまたは前記ビニル系重合体Bのうち少なくとも一方は、アクリル酸系重合体であることを特徴とする。なお、アクリル酸系重合体としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0027】
本発明は、上記のいずれかに記載された擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品であり、成形品はフィルムであることを特徴とする。本発明によれば、優れた耐熱性、機械強度及び光特性等を有するだけでなく、反りの発生を防止したフィルムやその他の成形品を得ることができる。
【0028】
また、本発明は、上記成形品を用いた光学用部品であり、光学部品が、DVD用表面保護フィルムであることを特徴とする。本発明によれば、光学特性が良好である高品質の光学用部品を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明の擬似架橋型樹脂組成物の製造方法は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを有機溶媒中で混合する際に、少なくともいずれか一方のビニル系重合体としてビニル系単量体を連続添加又は分割添加することにより作製されたビニル系重合体を使用して、前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間に分子間水素結合を擬似的に架橋したことを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、ビニル系単量体を分割または連続により複数回に亘って添加することにより、均一な重合体を得ることができ、その結果、均一なビニル系重合体を混合すると相分離の無い擬似架橋型樹脂組成物を得られる。なお、本発明において、ビニル系単量体を分割して添加するとしたが、2回、3回、それ以上の回数でビニル系単量体を添加しても良く、あるいは、ビニル系単量体を連続して添加しても良い。なお、ビニル系単量体Aまたはビニル系単量体Bとしては、前述した種類のビニル系単量体を使用することができる。
【0031】
また、上記発明において、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのうちいずれか一方のガラス転移温度を室温(25℃)以下とし、他方のガラス転移温度を室温(25℃)以上としたことを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、ガラス転移温度の相異するビニル系重合体を混合したため、混合後に得られた擬似架橋型樹脂組成物に柔軟性を付与でき、加工性を改善することができる。
【0033】
上記発明において、前記ビニル系重合体Aおよびビニル系重合体Bのうち少なくとも一方に、アクリル酸系重合体を使用したことを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の疑似架橋型樹脂組成物、擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法について、具体的に説明する。
【0035】
擬似架橋型樹脂組成物は、基本的に、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを混合して作製される。ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bのうち少なくともいずれかのビニル系重合体として、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された均一なビニル系重合体を使用した。
【0036】
分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aを作製するためのビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイロキシプロピルアクリレート、ビニル安息香酸、安息香酸ビニル及びその誘導体等が挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。本成分と他のビニル系重合体と共重合する場合には、共重合比率は溶解性の点から本成分を好ましくは2mol%、更に5mol%以上共重合することが好ましい。
【0037】
また、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bを作製するための単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジエチルアクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド、N−ジエチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン及びその誘導体等が挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに限定されるものではない。本成分と他のビニル重合体とを共重合する場合、先ほどと同様に共重合比率は溶解性の点から、本成分を好ましくは2mol%、更に好ましくは5mol%以上共重合すると良い。
【0038】
また、上述した分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのどちらか一方のガラス転移温度を室温(25℃)以下とし、他方のガラス転移温度を室温(25℃)以上として、混合後の樹脂組成物に耐熱性及び柔軟性を付与することができる。ガラス転移温度の範囲が、上記温度条件から外れた場合には、室温にて柔軟性を付与できず、熱変形が生じてしまうという問題が生じるため、一方のガラス転移温度を室温(25℃)以上、他方を室温(25℃)以下の範囲とした。また、より好ましくはビニル系重合体の一方が+10℃以下、他方が+50℃以上であり、さらに好ましくはビニル系重合体の一方が0℃以下、他方が+100℃以上の範囲である。
【0039】
上述したガラス転移温度の条件を満たすために、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのそれぞれに対して、後述する他のビニル系重合体を共重合することができる。使用できる単量体としては、得られる重合体の透明性を損なわない物であれば特に限定されず、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル等のメタクリル酸エステル類、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロルスチレン、α−ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸アクリル酸スズ、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸バリウム、メタクリル酸鉛、メタクリル酸スズ、メタクリル酸亜鉛等の(メタ)アクリル酸金属塩、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、 N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等が挙げられる。また、これらは一種又は二種以上によって使用しても良い。
【0040】
また、上記二種類のビニル系重合体を混合する方法として、例えば、溶融混練法、ワニスブレンド法等が挙げられるが、混合方法は、特に限定されるものではない。
【0041】
また、非複屈折性の光学用樹脂組成物を製造するための重合方法として、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の既存の方法を使用することができる。
【0042】
さらに、単量体の分割添加回数は、2回から連続的な滴下の範囲内で行うことが好ましく、2回、5回または連続的な滴下により行うことが好ましい。これによりポリマ混合後の相分離を防止でき、フィルムの反り発生を防ぐことができる。
【0043】
重合を行う際には重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。重合開始剤は、単量体の総量に対して0.01〜10質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0044】
また、分子量調整剤として、例えば、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。例示した分子量調整剤の中でも、特に、α−メチルスチレンダイマーを使用することが好ましい。なお、これらは一種又は二種以上によって使用しても良い。
【0045】
重合方法として熱重合を使用する場合には、重合温度を0〜200℃の間で適宜選択することができ、より好ましい重合温度の範囲は50〜120℃である。
【0046】
得られた高分子は、その分子量について特に限定するものではないが、強度及び成形性の点からポリスチレン換算して質量平均分子量を10000〜1000000の範囲とすることが好ましい。
【0047】
本発明の樹脂は、その使用にあたって、劣化防止、熱的安定性、成形性及び加工性などの観点から、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの抗酸化剤、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩などの離型剤、その他滑剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重金属不活性化剤などを添加して使用してもよい。
【0048】
そして、得られた高分子体から、溶融混練法や溶媒キャスト法にて有機溶媒を揮発させてフィルムを成形することができる。溶媒キャストの条件は特に限定されないが、例えば、空気中や不活性ガス中にて80〜160℃の温度として処理する。またこれらの条件を用いて予備乾燥を行った後、フィルムを剥がし、160〜350℃の高温で乾燥して乾燥時間を短縮することも可能である。
【0049】
このようにして得られたフィルムは強靱かつ柔軟性を有すると共に、優れた機械特性を備え、形状を維持することが容易である。また特にガラスやアルミ、銅などの金属に対する密着性が高いため、フィルムを作成する際には、キャスト基板を選択すると良い。具体的には、ステンレス、PETフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等を選択できるが、高分子体の密着性が低ければ良くこれらに限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
さらに具体的に、実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例2を挙げて説明する。なお、実施例1〜実施例3は、ポリマAの合成時に単量体を分割添加又は連続添加して作製される均一なポリマAを使用し、実施例4〜実施例6は、ポリマBの合成時に単量体を分割添加又は連続添加して合成される均一なポリマBを使用し、実施例7は、ポリマA及びポリマBの両者共均一なポリマを使用した。
【0051】
実施例1
まず、以下のポリマAおよびポリマBの2種類の高分子溶液を各々作製した。
【0052】
(ポリマA) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてトルエン1252gを投入し、アクリル酸ブチル(BA,和光純薬(株)製)1035g、アクリル酸(AA,和光純薬(株)製)23gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉し、60℃まで昇温した。さらに、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド(LPO,日本油脂製)3.1g、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート(PBO,日本油脂製)1.1g、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー0.03gをトルエン40gに溶解して、室温にて約10分間窒素ガスを通して溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度にて約3時間後に室温で窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換したアクリル酸(AA,和光純薬(株)製)23gを添加した。この時の重合率は50%であった。その後、同温度で約5時間保持した後、90℃まで昇温して、同温度で約2時間保持して高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0053】
(ポリマB) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1500gを投入し、メタクリル酸メチル(MMA,旭化成(株)製)750g、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル(TCDMA,日立化成(株)製)190g、アクリル酸ブチル(BA)30g、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)30gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉して、60℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN,和光純薬(株))3.0g、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル(ACHN,和光純薬(株))1.0gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加し、同温度にて約18時間保持した。その後、90℃まで昇温して同温度にて約4時間保持した後、高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0054】
作製した上記ポリマAワニスとポリマBワニスとを1:9の固形分の比率により混合し、混合溶液をガラス板上に塗布した後、溶媒を加熱乾燥して厚さが約50μmのフィルムを作製し、評価用試料とした。
【0055】
実施例2
本実施例では、ポリマAの合成時に、アクリル酸(AA)の後添加回数を5回とした。その他は、実施例1と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0056】
実施例3
本実施例では、ポリマAの合成時に、アクリル酸(AA)の後添加を連続的に行った。その他は、実施例1と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0057】
実施例4
本実施例では、以下のポリマA及びポリマBの2種類の高分子溶液を各々作製した。
【0058】
(ポリマA) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてトルエン1222gを投入し、アクリル酸ブチル(BA,和光純薬(株)製)965g、アクリル酸(AA,和光純薬(株)製)35gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉し、60℃まで昇温した。さらに、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド(LPO,日本油脂製)3g、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート(PBO,日本油脂製)1g、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー0.005gをトルエン40gに溶解して、室温にて約10分間窒素ガスを通して溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度にて約8時間保持した。その後、90℃まで昇温して同温度で約2時間保持して高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0059】
(ポリマB) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1500gを投入し、メタクリル酸メチル(MMA,旭化成(株)製)750g、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル(TCDMA,日立化成(株)製)190g、アクリル酸ブチル(BA)30g、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)15gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉して、60℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN,和光純薬(株))3.0g、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル(ACHN,和光純薬(株))1.0gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度にて約7時間後に室温で窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素置換した2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)15gを添加した。この時の重合率は50%であった。その後、同温度にて約11時間保持した後、90℃まで昇温して同温度にて約4時間保持した後、高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0060】
作製した上記ポリマAワニスとポリマBワニスとを1:9の固形分の比率により混合し、混合溶液をガラス板上に塗布した後、溶媒を加熱乾燥して厚さが約50μmのフィルムを作製した。
【0061】
実施例5
本実施例では、ポリマBの合成時に、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)の後添加回数を5回とした。その他は、実施例4と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0062】
実施例6
本実施例では、ポリマBの合成時に、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)の後添加を連続的に行った。その他は、実施例4と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0063】
実施例7
本実施例では、実施例1の方法で作製されたポリマA、実施例4の方法で作製されたポリマBを使用し、ポリマAワニスとポリマBワニスとを1:9の固形分の比率により混合し、混合溶液をガラス板上に塗布した後、溶媒を加熱乾燥して厚さ約50μmのフィルムを作製した。
【0064】
比較例1
本比較例では、ポリマAの合成時に、アクリル酸(AA)を一括添加してポリマAを合成した。その他は、実施例1と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0065】
比較例2
本比較例では、ビスフェノールAと塩化カルボニルまたはジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリカーボネートから成るフィルムを作製した。
【0066】
上記実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例2により作製された各フィルムについて、以下に示す測定方法により評価を行った。
【0067】
[分子量分布]
分子量分布はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて、ポリスチレン換算により測定した。測定には、日立化成(株)社製のカラムであるGL−A100M、検出器はShodex社製SE−61(RI)を使用した。
【0068】
[ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)]
測定機として理学電機(株)製のDSC8230を用いて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。なお、測定条件は、10℃/minの昇温速度条件とした。
【0069】
[折り曲げ加工性]
フィルムを折り曲げた際に、フィルムに発生する亀裂の有無および白化現象の程度を目視にて観察した。評価方法は、フィルムを目視観察して亀裂が発生せず、また、白化現象が生じなかった場合に○とし、亀裂や白化現象が僅かに生じた場合に△とし、亀裂や白化現象が明らかに生じた場合に×とした。
【0070】
[相分離状態の観察]
ポリマを混合した場合の相分離状態の評価は、目視により透明性を観察して行った。評価方法は、目視観察により透明であった場合に相分離が観察されなかったものとして、その評価を○とし、僅かに白濁した場合に相分離が多少観察されたものとして、その評価を△とし、さらに、白濁であった場合に相分離が観察されたものとして、その評価を×とした。
【0071】
[全光線透過率]
フィルムの全光線透過率は、JASCO社製V−570の分光光度計を用いて測定したものであり、測定条件は、室温で波長400〜800nmの領域とした。
【0072】
[複屈折率]
複屈折率は、島津製作所(株)製エリプソメータAEP−100の測定器を用いて測定した。
【0073】
[反り状態の観察]
恒温恒湿槽を用い、80℃・85%RHの条件下で、100h放置したフィルムの反り状態を観察した。評価方法は、フィルムに反りが観察されなかった場合にその評価を○とし、反りが観察された場合にその評価×とした。
【0074】
上記測定方法により評価した結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
表1に示すように、実施例1から実施例7までは、ポリマAの合成時あるいはポリマBの合成時に、アクリル酸(AA)等の単量体の全量を一括に添加したものではなく、単量体を2回、5回あるいは複数回に亘って添加したため、均一なポリマを得ることができ、その結果、ポリマ混合後に相分離が無く、フィルムの反り発生を防止することができた。これに対し、比較例1は、単量体を一括添加してポリマAを作製したため、ポリマAを混合した後に相分離が観察され、フィルムに反りが観察された。また、比較例2は、ポリカーボネートを使用してフィルムを作製したため、複屈折率が高い値であったが、実施例1〜実施例7はいずれも複屈折率が低い値であった。
【0076】
本実施形態によれば、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製される均一なビニル系重合体を使用することにより、複屈折率が極めて低く光学特性が良好であり、かつ、樹脂組成物の相分離を無くし、樹脂組成物から成形される成形品のそり発生を防止することができる。その結果、本擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品を適用することにより、高品質の光学用部品を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態の実施例では示さなかったが、混合する一方の材料として、連続添加又は分割添加して作製される均一なビニル系重合体を使用した場合には、他方の材料としてビニル系単量体を使用した場合であっても、上述の効果を得ることができる。
【0078】
なお、本実施形態に示した擬似架橋型樹脂組成物は、DVD用の表面保護フィルム、DVDディスク用基板、DVD用ディスク用オーバーコートフィルム、CD用ピックアップレンズ、FAX用レンズ等の光学用部品として適用されることはもちろんであるが、これらの用途に限定されず、光学用部品以外の他の部品としても適用することが可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の疑似架橋型樹脂組成物によれば、複屈折率が極めて低く光学特性が良好であり、相分離の無い樹脂組成物とし、本樹脂組成物から成形される成形品のそり発生を防止して高品質の光学用部品を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、CD、MD、DVD等の高密度光ディスクのレーザー光読み取り用レンズ、液晶プロジェクター用レンズ、レーザービームプリンタ用レンズ、レーザービームプリンタ用レンズ等の光学用部品に適用可能な擬似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電製品、カメラ、携帯電話、OA機器、電子機器などの部品、CDやDVDなどの光学用部品として各種の高分子材料が使用されている。
【0003】
代表的な高分子材料として、例えば、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、液晶性ポリマ、ポリイミド樹脂、ポリマーアロイ材、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0004】
アクリル樹脂またはスチレン系樹脂は、透明性が高く、ゴム状物からガラス状ポリマまで多様な特徴を有するポリマを比較的容易に製造することができ、変性が容易である等の特性を有し、さらに比較的安価であるが、強度、耐熱性と靱性の両立向上に大きな課題が残されている。アクリル樹脂全般に共通して靭性が不足していることが課題となっているが、例えば、アクリル樹脂中にゴム粒子を添加して靭性の不足を解決する方法が幾つか報告されている(特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、アクリル樹脂中にゴム粒子を添加して靭性を改善できるものの、樹脂から薄膜フィルムを形成すると樹脂を折り曲げた時に白化現象が生じてしまい、良好な折り曲げ加工性を得ることができない。このため、現在、室温以上のガラス転移点を有し、靱性および折り曲げ加工性が優れたアクリル樹脂は見出されておらず、薄膜フィルムの形成は困難であった。
【0005】
また、芳香族ポリアミド樹脂として、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが最も代表的な樹脂として挙げられる。ポリパラフェニレンテレフタルアミドは、特に、高融点、高結晶性かつ難燃性であり、剛直な分子構造であるため高い機械的強度および低い線膨張係数等を有する。しかし、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド樹脂は、有機溶媒に難溶であり、溶媒として濃硫酸等の無機の強酸を用いる必要があった。濃硫酸等の濃厚溶液から紡糸された繊維は高い強度と弾性率を示すことが知られており、工業的に実施されるに至っているがフィルムへの応用例は少ない。例えば、膨潤状態で延伸してフィルムとして形成できる技術が開示されているが(特許文献3参照)、本方法では製造工程が極めて煩雑となり、生産性が低下し、製品価格が上昇してしまうという問題があった。有機溶媒への溶解性を向上させる方法としては、芳香核にハロゲン基を導入した単位または屈曲性の高い単位を共重合して有機溶媒への溶解性を向上させる方法が知られている(特許文献4参照)。しかし、モノマーが高価であるため製品価格が高騰すること、耐熱性や難燃性の高さを損なうことが懸念される上に、ハロゲン原子の金属腐食性が問題となっていた。
【0006】
液晶性ポリマは、溶融状態において液晶状態を呈するため、配向方向における弾性率および強度が高く、低い線膨張係数を有するが、配向方向と直角方向における弾性率、強度および線膨張係数などの性能が著しく低い。また、液晶ポリマは、射出成形により成形品を得た場合に発生するウエルドと呼ばれる溶融樹脂の合流部分の強度が著しく低下し、また、成形品表面が層状に剥離してしまう等の欠点が挙げられているが、現在この問題点を解決する方法は知られていなかった。
【0007】
ポリイミド樹脂は、極めて高い耐熱性と強靱性とを有し、フィルム性能が良好であるため工業的に極めて有用な材料である。ポリイミドをフィルム状に加工するために、一般的には、ポリイミド溶液を塗工した後に高温加熱してイミド環を形成している。イミド環を形成すると高い耐熱性や強靭性を得ることができるが、一旦、イミド環を形成すると溶媒に対する溶解性が著しく低下してしまい、ポリイミドをリサイクルする際には極めて重大な欠点となっていた。そこで、溶媒に対する溶解性および耐熱性の両特性を兼ね備えた材料の開発が要求されており、例えば、芳香核にアルキル等の置換基を導入した単位を共重合して有機溶媒への溶解性を向上させる方法が知られている。しかし、この方法ではガラス転移温度が320℃以上となる材料は得られず、また、モノマーが高価であるため製品価格が高騰してしまうという問題があった。
【0008】
ポリマーアロイ材は、異種の高分子材料を混合して新たな性能の発現を目的とした材料であり、相溶化剤を用いて親和性の異なる高分子を混合して製造される。本方法は、相溶化剤により表面エネルギーを減少させることを狙った技術であるため海島構造を形成する分散状態を制御することはできるが、完全に相溶化することはできず、現在のところ、異種高分子を完全相溶化したという報告もなされていない。また、相溶化剤は比較的高価であるため、製品価格が高騰し、ポリマーアロイ材を長期間に亘って使用した場合には、相溶化剤が表面にブリードアウトして汚染の原因となり、また、ポリマーアロイ材の分散状態が変化してしまうという問題があった。
【0009】
熱硬化性樹脂は、一般に不溶不融の硬化物であるため、耐溶剤性又は高温下での強度保持率等の耐久性が非常に優れている。しかし、架橋反応が共有結合により形成され再加工することができず、近年のリサイクル性を向上させる点において致命的な欠点となっている。リサイクル可能な熱硬化性樹脂に最も近いものとして、アイオノマー樹脂が挙げられる。アイオノマー樹脂は、イオン結合を形成して擬似的架橋点を形成するものであり、例えば、側鎖にカルボキシル基を有するポリマに、酸化マグネシウム又は水酸化カルシウム等の金属酸化物又は金属水酸化物を添加して、金属とカルボキシル基との間にイオン結合を形成するものである。このような方法では、ある程度の耐熱性および強靱性の向上は認められるものの、金属化合物とカルボキシル基の結合力が弱く、また、金属化合物の樹脂に対する溶解性が低く、金属化合物を少量しか添加できない等の理由により、大幅な特性向上は認められなかった。
【0010】
そこで、1種又は2種以上の合成高分子を混合して分子間に水素結合を形成して擬似的な架橋構造を持たせて、従来の材料では実現できなかった新たな特性を導入した樹脂組成物が開発されている(特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】
特公昭58−167605号公報
【特許文献2】
特開平3−52910号公報
【特許文献3】
特開平4−6738号公報
【特許文献4】
特公昭56−45421号公報
【特許文献5】
特開2000−273319号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した樹脂組成物は、分子間に水素結合を形成することにより新たな特性を樹脂組成物に導入することが可能であったが、一方において、樹脂組成物に相分離が生じてしまうという問題を有していた。
【0013】
具体的には、1種又は2種以上の合成高分子を混合する前に合成高分子をそれぞれ製造するが、製造時の重合方法が相違すると、同一の組成の材料を使用した場合であっても均一な合成高分子を得ることができず、不均一な合成高分子を混合すると樹脂組成物に相分離が生じていた。
【0014】
また、上述の相分離した樹脂組成物からフィルムなどに成形すると、フィルムに反りが発生してしまい、高い寸法精度が要求されるDVD用の表面保護フィルムとして適用するには問題があった。
【0015】
さらに、近年、DVD用の表面保護フィルムの光学用部品として、ビスフェノールAと塩化カルボニルまたはジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリエステルの一種であるポリカーボネートが使用されている。ポリカーボネートは、透明性、靭性および耐熱性が優れており、耐衝撃性や電気絶縁性を有するだけでなく、溶媒への溶解性が高いことからリサイクル可能である等の利点を有するが、ポリカーボネートから成形されるフィルムは複屈折率が高く、良好な光学特性を得ることができなかった。このため低複屈折率の新たな材料の開発が求められている。
【0016】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、複屈折率が極めて低く、相分離の無い擬似架橋型樹脂組成物およびその製造方法を得ることを目的とすると共に、反りの発生を防止した高品質の成形品及び光学用部品を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決すべく種々研究し、使用するビニル系重合体を工夫した結果、ビニル系重合体を合成する際に単量体を一括して添加するのではなく、単量体を連続又は分割して添加すると均一なビニル系重合体を作製できることが判明した。そして、均一なビニル系重合体を使用して樹脂組成物を製造すると、樹脂組成物の相分離を無くし、本樹脂組成物からフィルムなどの成形品を作製すると、成形品の反り発生を防止できることを見出し本発明の完成に至ったものである。
【0018】
また、本発明は、均一なビニル系重合体を使用してフィルム等の成形品における反り発生を防止したが、本発明を完成させる前提として、特性の異なる2種以上のビニル系重合体を混合し、ビニル系重合体の相互間に擬似的な架橋構造を形成させた擬似架橋型樹脂組成物を使用したものである。なお、擬似的な架橋構造という表現を使用したが、これは、本発明の樹脂組成物の架橋構造が、熱分解温度以下の熱や溶剤等により切断されるものであり、温度を下げるか、あるいは溶剤を除去すると架橋構造が再形成されるためである。本樹脂組成物によれば、1種のビニル系重合体では得られない複数の特性を持たせた疑似架橋型樹脂組成物を得ることができる。例えば、2種のビニル系重合体を混合する場合に、耐熱性が良好であり正複屈折である一方のビニル系重合体と、柔軟性を有し負複屈折である他方のビニル系重合体と、を使用して、両者のビニル系重合体を混合して擬似架橋を形成する。擬似架橋の形成により、耐熱性及び柔軟性の特性を両立し、かつ、正負複屈折を相殺させてゼロ複屈折化し、相反する特性を持たせた樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
すなわち、本発明は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとが含まれると共に、前記ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとは、前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間の分子間水素結合により擬似的に架橋され、かつ、前記ビニル系重合体A又はビニル系重合体Bの少なくとも一方は、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された重合体であることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、ビニル系重合体としてビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された均一なビニル系重合体を使用することにより、樹脂組成物の相分離を防止でき、複屈折率の低い樹脂組成物を得ることができる。なお、本発明において、いずれか一方のビニル系重合体として単量体を連続添加又は分割添加して作製された均一なビニル系重合体を使用することにより、本発明の効果を得ることができる。
【0021】
なお、ここで、分子内に含むとは側鎖と末端基の一方又は双方に含むことを意味し、重合体とは、単独重合体と共重合体との両方を含むことを意味する。また、ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bは、一方又は双方が2種以上であっても良い。
【0022】
また、本発明の擬似架橋型樹脂組成物には、後述する混合物をさらに混合して擬似架橋型樹脂組成物としたものであっても良い。
【0023】
上記発明において、プロトン供与性原子団は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基、チオフェノール性メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、カルボニル基、スルホニル基、チオカルボニル基、ホスホリル基、シアノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましい。
【0024】
さらに、上記発明において、プロトン供与性原子団は、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選ばれたものとすることが好ましい。
【0025】
上記発明において、前記ビニル系重合体Aまたは前記ビニル系重合体Bのうちいずれか一方のガラス転移温度が室温(25℃)以下であり、他方のガラス転移温度が室温(25℃)以上であることを特徴とする。本発明によれば、ガラス転移温度の相異する高分子を少なくとも2種類混合することにより、混合後の共重合体に柔軟性を付与して加工性を改善したものである。
【0026】
また、上記発明において、前記ビニル系重合体Aまたは前記ビニル系重合体Bのうち少なくとも一方は、アクリル酸系重合体であることを特徴とする。なお、アクリル酸系重合体としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0027】
本発明は、上記のいずれかに記載された擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品であり、成形品はフィルムであることを特徴とする。本発明によれば、優れた耐熱性、機械強度及び光特性等を有するだけでなく、反りの発生を防止したフィルムやその他の成形品を得ることができる。
【0028】
また、本発明は、上記成形品を用いた光学用部品であり、光学部品が、DVD用表面保護フィルムであることを特徴とする。本発明によれば、光学特性が良好である高品質の光学用部品を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明の擬似架橋型樹脂組成物の製造方法は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを有機溶媒中で混合する際に、少なくともいずれか一方のビニル系重合体としてビニル系単量体を連続添加又は分割添加することにより作製されたビニル系重合体を使用して、前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間に分子間水素結合を擬似的に架橋したことを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、ビニル系単量体を分割または連続により複数回に亘って添加することにより、均一な重合体を得ることができ、その結果、均一なビニル系重合体を混合すると相分離の無い擬似架橋型樹脂組成物を得られる。なお、本発明において、ビニル系単量体を分割して添加するとしたが、2回、3回、それ以上の回数でビニル系単量体を添加しても良く、あるいは、ビニル系単量体を連続して添加しても良い。なお、ビニル系単量体Aまたはビニル系単量体Bとしては、前述した種類のビニル系単量体を使用することができる。
【0031】
また、上記発明において、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのうちいずれか一方のガラス転移温度を室温(25℃)以下とし、他方のガラス転移温度を室温(25℃)以上としたことを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、ガラス転移温度の相異するビニル系重合体を混合したため、混合後に得られた擬似架橋型樹脂組成物に柔軟性を付与でき、加工性を改善することができる。
【0033】
上記発明において、前記ビニル系重合体Aおよびビニル系重合体Bのうち少なくとも一方に、アクリル酸系重合体を使用したことを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の疑似架橋型樹脂組成物、擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法について、具体的に説明する。
【0035】
擬似架橋型樹脂組成物は、基本的に、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを混合して作製される。ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bのうち少なくともいずれかのビニル系重合体として、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された均一なビニル系重合体を使用した。
【0036】
分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aを作製するためのビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイロキシプロピルアクリレート、ビニル安息香酸、安息香酸ビニル及びその誘導体等が挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。本成分と他のビニル系重合体と共重合する場合には、共重合比率は溶解性の点から本成分を好ましくは2mol%、更に5mol%以上共重合することが好ましい。
【0037】
また、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bを作製するための単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジエチルアクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド、N−ジエチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン及びその誘導体等が挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに限定されるものではない。本成分と他のビニル重合体とを共重合する場合、先ほどと同様に共重合比率は溶解性の点から、本成分を好ましくは2mol%、更に好ましくは5mol%以上共重合すると良い。
【0038】
また、上述した分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのどちらか一方のガラス転移温度を室温(25℃)以下とし、他方のガラス転移温度を室温(25℃)以上として、混合後の樹脂組成物に耐熱性及び柔軟性を付与することができる。ガラス転移温度の範囲が、上記温度条件から外れた場合には、室温にて柔軟性を付与できず、熱変形が生じてしまうという問題が生じるため、一方のガラス転移温度を室温(25℃)以上、他方を室温(25℃)以下の範囲とした。また、より好ましくはビニル系重合体の一方が+10℃以下、他方が+50℃以上であり、さらに好ましくはビニル系重合体の一方が0℃以下、他方が+100℃以上の範囲である。
【0039】
上述したガラス転移温度の条件を満たすために、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのそれぞれに対して、後述する他のビニル系重合体を共重合することができる。使用できる単量体としては、得られる重合体の透明性を損なわない物であれば特に限定されず、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル等のメタクリル酸エステル類、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロルスチレン、α−ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸アクリル酸スズ、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸バリウム、メタクリル酸鉛、メタクリル酸スズ、メタクリル酸亜鉛等の(メタ)アクリル酸金属塩、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、 N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等が挙げられる。また、これらは一種又は二種以上によって使用しても良い。
【0040】
また、上記二種類のビニル系重合体を混合する方法として、例えば、溶融混練法、ワニスブレンド法等が挙げられるが、混合方法は、特に限定されるものではない。
【0041】
また、非複屈折性の光学用樹脂組成物を製造するための重合方法として、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の既存の方法を使用することができる。
【0042】
さらに、単量体の分割添加回数は、2回から連続的な滴下の範囲内で行うことが好ましく、2回、5回または連続的な滴下により行うことが好ましい。これによりポリマ混合後の相分離を防止でき、フィルムの反り発生を防ぐことができる。
【0043】
重合を行う際には重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。重合開始剤は、単量体の総量に対して0.01〜10質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0044】
また、分子量調整剤として、例えば、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。例示した分子量調整剤の中でも、特に、α−メチルスチレンダイマーを使用することが好ましい。なお、これらは一種又は二種以上によって使用しても良い。
【0045】
重合方法として熱重合を使用する場合には、重合温度を0〜200℃の間で適宜選択することができ、より好ましい重合温度の範囲は50〜120℃である。
【0046】
得られた高分子は、その分子量について特に限定するものではないが、強度及び成形性の点からポリスチレン換算して質量平均分子量を10000〜1000000の範囲とすることが好ましい。
【0047】
本発明の樹脂は、その使用にあたって、劣化防止、熱的安定性、成形性及び加工性などの観点から、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの抗酸化剤、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩などの離型剤、その他滑剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重金属不活性化剤などを添加して使用してもよい。
【0048】
そして、得られた高分子体から、溶融混練法や溶媒キャスト法にて有機溶媒を揮発させてフィルムを成形することができる。溶媒キャストの条件は特に限定されないが、例えば、空気中や不活性ガス中にて80〜160℃の温度として処理する。またこれらの条件を用いて予備乾燥を行った後、フィルムを剥がし、160〜350℃の高温で乾燥して乾燥時間を短縮することも可能である。
【0049】
このようにして得られたフィルムは強靱かつ柔軟性を有すると共に、優れた機械特性を備え、形状を維持することが容易である。また特にガラスやアルミ、銅などの金属に対する密着性が高いため、フィルムを作成する際には、キャスト基板を選択すると良い。具体的には、ステンレス、PETフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等を選択できるが、高分子体の密着性が低ければ良くこれらに限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
さらに具体的に、実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例2を挙げて説明する。なお、実施例1〜実施例3は、ポリマAの合成時に単量体を分割添加又は連続添加して作製される均一なポリマAを使用し、実施例4〜実施例6は、ポリマBの合成時に単量体を分割添加又は連続添加して合成される均一なポリマBを使用し、実施例7は、ポリマA及びポリマBの両者共均一なポリマを使用した。
【0051】
実施例1
まず、以下のポリマAおよびポリマBの2種類の高分子溶液を各々作製した。
【0052】
(ポリマA) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてトルエン1252gを投入し、アクリル酸ブチル(BA,和光純薬(株)製)1035g、アクリル酸(AA,和光純薬(株)製)23gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉し、60℃まで昇温した。さらに、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド(LPO,日本油脂製)3.1g、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート(PBO,日本油脂製)1.1g、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー0.03gをトルエン40gに溶解して、室温にて約10分間窒素ガスを通して溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度にて約3時間後に室温で窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換したアクリル酸(AA,和光純薬(株)製)23gを添加した。この時の重合率は50%であった。その後、同温度で約5時間保持した後、90℃まで昇温して、同温度で約2時間保持して高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0053】
(ポリマB) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1500gを投入し、メタクリル酸メチル(MMA,旭化成(株)製)750g、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル(TCDMA,日立化成(株)製)190g、アクリル酸ブチル(BA)30g、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)30gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉して、60℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN,和光純薬(株))3.0g、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル(ACHN,和光純薬(株))1.0gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加し、同温度にて約18時間保持した。その後、90℃まで昇温して同温度にて約4時間保持した後、高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0054】
作製した上記ポリマAワニスとポリマBワニスとを1:9の固形分の比率により混合し、混合溶液をガラス板上に塗布した後、溶媒を加熱乾燥して厚さが約50μmのフィルムを作製し、評価用試料とした。
【0055】
実施例2
本実施例では、ポリマAの合成時に、アクリル酸(AA)の後添加回数を5回とした。その他は、実施例1と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0056】
実施例3
本実施例では、ポリマAの合成時に、アクリル酸(AA)の後添加を連続的に行った。その他は、実施例1と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0057】
実施例4
本実施例では、以下のポリマA及びポリマBの2種類の高分子溶液を各々作製した。
【0058】
(ポリマA) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてトルエン1222gを投入し、アクリル酸ブチル(BA,和光純薬(株)製)965g、アクリル酸(AA,和光純薬(株)製)35gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉し、60℃まで昇温した。さらに、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド(LPO,日本油脂製)3g、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート(PBO,日本油脂製)1g、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー0.005gをトルエン40gに溶解して、室温にて約10分間窒素ガスを通して溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度にて約8時間保持した。その後、90℃まで昇温して同温度で約2時間保持して高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0059】
(ポリマB) 耐圧2.3kg/cm2Gの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1500gを投入し、メタクリル酸メチル(MMA,旭化成(株)製)750g、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル(TCDMA,日立化成(株)製)190g、アクリル酸ブチル(BA)30g、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)15gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、オートクレーブ内を加圧・密閉して、60℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN,和光純薬(株))3.0g、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル(ACHN,和光純薬(株))1.0gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度にて約7時間後に室温で窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素置換した2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)15gを添加した。この時の重合率は50%であった。その後、同温度にて約11時間保持した後、90℃まで昇温して同温度にて約4時間保持した後、高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0060】
作製した上記ポリマAワニスとポリマBワニスとを1:9の固形分の比率により混合し、混合溶液をガラス板上に塗布した後、溶媒を加熱乾燥して厚さが約50μmのフィルムを作製した。
【0061】
実施例5
本実施例では、ポリマBの合成時に、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)の後添加回数を5回とした。その他は、実施例4と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0062】
実施例6
本実施例では、ポリマBの合成時に、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87,日立化成(株)製)の後添加を連続的に行った。その他は、実施例4と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0063】
実施例7
本実施例では、実施例1の方法で作製されたポリマA、実施例4の方法で作製されたポリマBを使用し、ポリマAワニスとポリマBワニスとを1:9の固形分の比率により混合し、混合溶液をガラス板上に塗布した後、溶媒を加熱乾燥して厚さ約50μmのフィルムを作製した。
【0064】
比較例1
本比較例では、ポリマAの合成時に、アクリル酸(AA)を一括添加してポリマAを合成した。その他は、実施例1と同様の手順を用いてフィルムを作製した。
【0065】
比較例2
本比較例では、ビスフェノールAと塩化カルボニルまたはジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリカーボネートから成るフィルムを作製した。
【0066】
上記実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例2により作製された各フィルムについて、以下に示す測定方法により評価を行った。
【0067】
[分子量分布]
分子量分布はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて、ポリスチレン換算により測定した。測定には、日立化成(株)社製のカラムであるGL−A100M、検出器はShodex社製SE−61(RI)を使用した。
【0068】
[ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)]
測定機として理学電機(株)製のDSC8230を用いて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。なお、測定条件は、10℃/minの昇温速度条件とした。
【0069】
[折り曲げ加工性]
フィルムを折り曲げた際に、フィルムに発生する亀裂の有無および白化現象の程度を目視にて観察した。評価方法は、フィルムを目視観察して亀裂が発生せず、また、白化現象が生じなかった場合に○とし、亀裂や白化現象が僅かに生じた場合に△とし、亀裂や白化現象が明らかに生じた場合に×とした。
【0070】
[相分離状態の観察]
ポリマを混合した場合の相分離状態の評価は、目視により透明性を観察して行った。評価方法は、目視観察により透明であった場合に相分離が観察されなかったものとして、その評価を○とし、僅かに白濁した場合に相分離が多少観察されたものとして、その評価を△とし、さらに、白濁であった場合に相分離が観察されたものとして、その評価を×とした。
【0071】
[全光線透過率]
フィルムの全光線透過率は、JASCO社製V−570の分光光度計を用いて測定したものであり、測定条件は、室温で波長400〜800nmの領域とした。
【0072】
[複屈折率]
複屈折率は、島津製作所(株)製エリプソメータAEP−100の測定器を用いて測定した。
【0073】
[反り状態の観察]
恒温恒湿槽を用い、80℃・85%RHの条件下で、100h放置したフィルムの反り状態を観察した。評価方法は、フィルムに反りが観察されなかった場合にその評価を○とし、反りが観察された場合にその評価×とした。
【0074】
上記測定方法により評価した結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
表1に示すように、実施例1から実施例7までは、ポリマAの合成時あるいはポリマBの合成時に、アクリル酸(AA)等の単量体の全量を一括に添加したものではなく、単量体を2回、5回あるいは複数回に亘って添加したため、均一なポリマを得ることができ、その結果、ポリマ混合後に相分離が無く、フィルムの反り発生を防止することができた。これに対し、比較例1は、単量体を一括添加してポリマAを作製したため、ポリマAを混合した後に相分離が観察され、フィルムに反りが観察された。また、比較例2は、ポリカーボネートを使用してフィルムを作製したため、複屈折率が高い値であったが、実施例1〜実施例7はいずれも複屈折率が低い値であった。
【0076】
本実施形態によれば、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製される均一なビニル系重合体を使用することにより、複屈折率が極めて低く光学特性が良好であり、かつ、樹脂組成物の相分離を無くし、樹脂組成物から成形される成形品のそり発生を防止することができる。その結果、本擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品を適用することにより、高品質の光学用部品を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態の実施例では示さなかったが、混合する一方の材料として、連続添加又は分割添加して作製される均一なビニル系重合体を使用した場合には、他方の材料としてビニル系単量体を使用した場合であっても、上述の効果を得ることができる。
【0078】
なお、本実施形態に示した擬似架橋型樹脂組成物は、DVD用の表面保護フィルム、DVDディスク用基板、DVD用ディスク用オーバーコートフィルム、CD用ピックアップレンズ、FAX用レンズ等の光学用部品として適用されることはもちろんであるが、これらの用途に限定されず、光学用部品以外の他の部品としても適用することが可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の疑似架橋型樹脂組成物によれば、複屈折率が極めて低く光学特性が良好であり、相分離の無い樹脂組成物とし、本樹脂組成物から成形される成形品のそり発生を防止して高品質の光学用部品を得ることができる。
Claims (10)
- 分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとが含まれると共に、前記ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとは、前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間の分子間水素結合により擬似的に架橋され、かつ、前記ビニル系重合体A又はビニル系重合体Bの少なくとも一方は、ビニル系単量体を連続添加又は分割添加して作製された重合体であることを特徴とする擬似架橋型樹脂組成物。
- 前記ビニル系重合体Aまたは前記ビニル系重合体Bのうちいずれか一方のガラス転移温度が室温以下であり、他方のガラス転移温度が室温以上であることを特徴とする請求項1記載の擬似架橋型樹脂組成物。
- 前記ビニル系重合体Aまたは前記ビニル系重合体Bのうち少なくとも一方は、アクリル酸系重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の擬似架橋型樹脂組成物。
- 請求項1から3までのいずれかに記載された擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品。
- 前記成形品は、フィルムであることを特徴とする請求項4記載の成形品。
- 請求項4記載の成形品を用いた光学用部品。
- 光学部品が、DVD用表面保護フィルムである請求項6記載の光学用部品。
- 分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを有機溶媒中で混合する際に、少なくともいずれか一方のビニル系重合体としてビニル系単量体を連続添加又は分割添加することにより作製されたビニル系重合体を使用して、前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間に分子間水素結合を擬似的に架橋したことを特徴とする擬似架橋型樹脂組成物の製造方法。
- 分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのうちいずれか一方のガラス転移温度を室温以下とし、他方のガラス転移温度を室温以上としたことを特徴とする請求項8記載の擬似架橋型樹脂組成物の製造方法。
- 前記ビニル系重合体Aおよびビニル系重合体Bのうち少なくとも一方に、アクリル酸系重合体を使用したことを特徴とする請求項8又は9記載の擬似架橋型樹脂組成物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002320089A JP2004155810A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002320089A JP2004155810A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004155810A true JP2004155810A (ja) | 2004-06-03 |
Family
ID=32801117
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002320089A Pending JP2004155810A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004155810A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8652926B1 (en) | 2012-07-26 | 2014-02-18 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming capacitors |
US8946043B2 (en) | 2011-12-21 | 2015-02-03 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming capacitors |
US9076757B2 (en) | 2010-08-11 | 2015-07-07 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming a plurality of capacitors |
US9076680B2 (en) | 2011-10-18 | 2015-07-07 | Micron Technology, Inc. | Integrated circuitry, methods of forming capacitors, and methods of forming integrated circuitry comprising an array of capacitors and circuitry peripheral to the array |
US9224798B2 (en) | 2008-01-08 | 2015-12-29 | Micron Technology, Inc. | Capacitor forming methods |
JP2016014158A (ja) * | 2015-10-23 | 2016-01-28 | 日立化成株式会社 | 樹脂組成物の製造方法 |
JP2017149994A (ja) * | 2017-06-09 | 2017-08-31 | 日立化成株式会社 | 樹脂組成物の製造方法 |
JP2018053216A (ja) * | 2016-09-30 | 2018-04-05 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-11-01 JP JP2002320089A patent/JP2004155810A/ja active Pending
Cited By (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9224798B2 (en) | 2008-01-08 | 2015-12-29 | Micron Technology, Inc. | Capacitor forming methods |
US9076757B2 (en) | 2010-08-11 | 2015-07-07 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming a plurality of capacitors |
US9076680B2 (en) | 2011-10-18 | 2015-07-07 | Micron Technology, Inc. | Integrated circuitry, methods of forming capacitors, and methods of forming integrated circuitry comprising an array of capacitors and circuitry peripheral to the array |
US8946043B2 (en) | 2011-12-21 | 2015-02-03 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming capacitors |
US8652926B1 (en) | 2012-07-26 | 2014-02-18 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming capacitors |
US9196673B2 (en) | 2012-07-26 | 2015-11-24 | Micron Technology, Inc. | Methods of forming capacitors |
JP2016014158A (ja) * | 2015-10-23 | 2016-01-28 | 日立化成株式会社 | 樹脂組成物の製造方法 |
JP2018053216A (ja) * | 2016-09-30 | 2018-04-05 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂及びその製造方法 |
JP2021107563A (ja) * | 2016-09-30 | 2021-07-29 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂及びその製造方法 |
JP7197968B2 (ja) | 2016-09-30 | 2022-12-28 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂 |
JP7234291B2 (ja) | 2016-09-30 | 2023-03-07 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂及びその製造方法 |
JP2017149994A (ja) * | 2017-06-09 | 2017-08-31 | 日立化成株式会社 | 樹脂組成物の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US9920148B2 (en) | Vehicle part cover including methacrylic-based resin | |
JP6202805B2 (ja) | メタクリル系樹脂を含むフィルム | |
JP5763335B2 (ja) | 射出成形体、射出成形体を成形するために用いる溶融成形用メタクリル系樹脂の製造方法、射出成形用メタクリル系樹脂組成物 | |
JP2004155810A (ja) | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 | |
US8647739B2 (en) | Transparent flat article made of nanostructured acrylic materials | |
WO2006025360A1 (ja) | 光学用共重合体及びそれからなる成形体 | |
JP2018104721A (ja) | メタクリル系樹脂の製造方法、メタクリル系樹脂、及び成形体 | |
JP2007154072A (ja) | 光学用共重合体及びそれからなる成形体 | |
JP4083959B2 (ja) | 樹脂組成物、これから得られる成形体、シート又はフィルムおよび光学用レンズ | |
CN106661304B (zh) | 热板非接触熔接用甲基丙烯酸系树脂组合物、成型体及其制造方法 | |
JP2004035853A (ja) | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 | |
JP4812221B2 (ja) | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 | |
JP4273747B2 (ja) | 疑似架橋型樹脂組成物、当該擬似架橋型樹脂組成物から成形された成形品、光学用部品及び擬似架橋型樹脂組成物の製造方法 | |
JP2006117942A (ja) | 疑似架橋型樹脂組成物、これから得られる成形材、シート又はフィルムおよび光学用部品 | |
JP6326530B2 (ja) | メタクリル系樹脂を含むフィルム | |
JP3891177B2 (ja) | 疑似架橋型樹脂組成物、これから得られる成形材、シート又はフィルム及び光学用部品 | |
JPH0643461B2 (ja) | 光学用樹脂組成物の製造法 | |
JP2000264928A (ja) | 光学用共重合体、光学用共重合体の製造方法、及び光学用部品 | |
JPS61204251A (ja) | 光学的性質の優れたスチレン系樹脂組成物 | |
JP2005314541A (ja) | 光学用樹脂組成物、その製造法、およびこれを用いた光学用素子 | |
JP2004204018A (ja) | 光学用樹脂組成物及びこれを用いた光学用素子 | |
JP2005219335A (ja) | 光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体及び光学部品 | |
JP2006233122A (ja) | 光学素子用樹脂及びこれを用いた光学素子 | |
JP6711613B2 (ja) | 重合体および該重合体を含んでなる樹脂組成物 | |
JP2000178317A (ja) | 重合体の製造方法 |