JP2005219335A - 光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体及び光学部品 - Google Patents

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Tetsuo Yamanaka
哲郎 山中
Kenji Kanamaru
健二 金丸
Koichi Saito
晃一 斉藤
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Abstract

【課題】 疑似架橋型樹脂組成物は単体の溶液粘度と比べ、かなりの高粘度になってしまうため塗工等によりフィルムを得る場合、塗工むらや筋などが発生してしまう、一方、溶液濃度を低くした場合は、膜厚に比べかなり厚めに塗布した後に乾燥する必要があり、いずれも平滑なフィルムを得ることが困難である問題を解決し、表面平滑性に優れ、強度及び離型性を向上させた光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体及び光学部品を提供する。
【解決手段】 光透過層と当該光透過層が積層されると共に使用時に剥離除去される基材層とを少なくとも有する光学部品用積層フィルムであって、当該光透過層は分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を主成分とするものであり、かつ、当該光透過層は前記重合体をアルコール類を含む溶媒で溶解した重合体溶液を基材層上に積層して形成されたものである光学部品用積層フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光ディスク、DVD、有機EL、フレキシブルディスプレイ又は電子ペーパー等の光学用部品の部材として適用可能な光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体及び光学部品に関する。
家電製品、カメラ、携帯電話、OA機器及び電子機器等の部品、CDやDVD等の光学用部品として各種の高分子材料が使用されている。
代表的な高分子材料として、例えば、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、液晶性ポリマ、ポリイミド樹脂、ポリマーアロイ材、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂またはスチレン系樹脂は、透明性が高く、ゴム状物からガラス状ポリマまで多様な特徴を有するポリマを比較的容易に製造することができ、変性が容易である等の特性を有し、比較的安価であるが、フィルム形状にするには強度、耐熱性と靱性の両立向上に大きな課題を残している。靱性の不足はアクリル樹脂全般に共通した課題であり、靭性の不足を解決する方法は幾つか報告されており、例えば、樹脂中にゴム粒子を添加することが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、これらの方法では、樹脂から薄膜フィルムを形成すると樹脂を折り曲げた時に白化現象が発生してしまい、良好な折り曲げ加工性を得られない。このため、現在、室温以上のガラス転移点を有し、かつ、靱性及び折り曲げ加工性が優れたアクリル樹脂は見出されておらず、薄膜フィルムを形成することが困難であった。
また、芳香族ポリアミド樹脂として、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが最も代表的な樹脂として挙げられる。ポリパラフェニレンテレフタルアミドは、特に、高融点、結晶性が高く、難燃性、剛直な分子構造であるため、優れた機械的強度を有しており、低い線膨張係数等を有する。しかし、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド樹脂は、有機溶媒に難溶であり、溶媒として濃硫酸等の無機の強酸を用いる必要があった。濃硫酸等の濃厚溶液から紡糸された繊維は高い強度と弾性率を示すことが知られており、工業的に実施されるに至っているがフィルムへの応用例は少ない。例えば、膨潤状態で延伸してフィルムとして成形できる技術が開示されているが(特許文献3参照)、本方法では製造工程が極めて煩雑であり、生産性が低下し、製品価格が上昇してしまうという問題を有していた。有機溶媒への溶解性を向上させる方法としては、芳香核にハロゲン基を導入した単位または屈曲性の高い単位を共重合して有機溶媒への溶解性を向上させる方法が知られている(特許文献4参照)。しかし、モノマーが高価であるため製品価格が高くなり、耐熱性や難燃性を損なうことが懸念される上に、ハロゲン原子の金属腐食性が問題となっている。
ポリイミド樹脂は、極めて高い耐熱性と強靱性とを有し、フィルム性能が優れているため工業的に極めて有用な材料である。ポリイミドをフィルム状に加工するため、一般的にはポリイミド溶液を塗工した後、高温加熱してイミド環を形成している。イミド環を形成すると優れた耐熱性及び強靭性を得られるが、一旦イミド環を形成すると溶媒に対する溶解性が著しく低下し、ポリイミドをリサイクルする際には極めて重大な欠点となっていた。そこで、溶媒に対する溶解性および耐熱性の両特性を兼ね備えた材料の開発が要求されており、例えば、芳香核にアルキル等の置換基を導入した単位を共重合して有機溶媒への溶解性を向上させる方法が知られている。しかし、本方法ではガラス転移温度が320℃以上となる材料は得られず、また、モノマーが高価であり製品価格が高騰してしまうという問題があった。
ポリマーアロイ材は、異種の高分子材料を混合することにより新たな性能の発現を目的とするものであるが、相溶化剤を用いることにより親和性の異なる高分子を混合することが行われてきた。この方法では、相溶化剤により表面エネルギーを減少させることを狙った技術であるため海島構造を形成する分散状態を制御することはできるが、完全に相溶化することはできない。異種高分子を完全相溶化した報告は現在のところない。また、相溶化剤は比較的高価であるため、製品価格が高くなることと、ポリマーアロイ材を長期に亘り使用した場合には、相溶化剤が表面へブリードアウトしてしまう等により汚染の原因となり、また、ポリマーアロイ材の分散状態が変化してしまう等の問題点を有していた。
熱硬化性樹脂に関しては、一般に不溶不融の硬化物であるために、耐溶剤性又は高温下での強度保持率等の耐久性に非常に優れる特徴を有する。しかし、架橋反応が共有結合により形成されているため、再加工できないという欠点があり、この欠点は、近年のリサイクル性の確保に関して致命的となっていた。リサイクル可能な熱硬化性樹脂に最も近いものとしては、アイオノマー樹脂を挙げることができる。アイオノマー樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有するポリマに、酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウム等の金属酸化物又は金属水酸化物を添加したものであり、金属とカルボキシル基との間にイオン結合を形成し、疑似的架橋点を形成したものである。本方法によれば、ある程度の耐熱性及び強靱性の向上は認められるものの、金属化合物とカルボキシル基の結合力が弱いこと、及び金属化合物の樹脂に対する溶解性が低く少量しか添加できない等の理由により、大幅な特性向上は認められない。
そこで、1種又は2種以上の合成高分子を混合して分子間に水素結合を形成することにより擬似的な架橋構造を持たせて、従来の材料では実現できなかった新たな特性を導入した樹脂組成物が開発されている(特許文献5参照)。さらに、ガラス転移温度が低い重合体としてプロトン供与性原子団である水酸基を含んだアクリル重合体(ビニル系重合体A)と、ガラス転移温度が高い重合体としてプロトン受容性原子団であるアミン基を含んだアクリル重合体(ビニル系重合体B)をブレンドし、分子間に水素結合を形成して擬似的な架橋構造を持たせた疑似架橋型樹脂組成物からフィルムを形成することにより、新たな特性を導入し、耐熱性及び靱性の相反する特性を両立したフィルムを得られることが報告されている(特許文献6参照)。
特公昭58−167605号公報 特開平3−52910号公報 特開平4−6738号公報 特公昭56−45421号公報 特開2000−273319号公報 特開2002−38036号公報
近年、CDやDVD等は大容量化しており、DVD用表面保護フィルム等の光学部材は高記録密度化が進んでいる。高記録高密度化に伴いフィルム表面に数μm程度の凹凸が生じると、読み取り時にエラーが発生して記録情報の正確な読み取りが困難となるため、表面平滑性が良好であるフィルムが要求されている。光学部品として適用されるフィルムは、例えば、基材となる原反PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にフィルムの形成材料を塗布した後、乾燥して作製される。そして、表面平滑性が良好なフィルムを得るためには、出来るだけ高濃度の樹脂溶液を均一に基材上に塗布し乾燥することが好ましい。
しかしながら、上記疑似架橋型樹脂組成物は、ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bをブレンドし、分子間に水素結合を形成して擬似的な架橋構造を取っているため、見かけの分子量がかなり増大するため、溶液にしたときの粘度が、それぞれ単体の溶液粘度と比べ、かなりの高粘度になってしまう。このため塗工等によりフィルムを得る場合、樹脂溶液供給には通常のモノポンプ等では供給できないため、ギアポンプ等を用いなくては成らず結果として、塗工むらや筋などが発生してしまい平滑なフィルムを得ることが出来なくなる。また、上記の問題を解決するためには、溶液濃度をかなり低くすることで解決することは出来るが、所望の膜厚に比べかなり厚めに塗布した後に乾燥する必要があるため、最終的に表面平滑性が良好なフィルムを得ることは難しいという問題を有していた。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、樹脂に特定の官能基を導入して、新たな性能の発現と特に相反する特性を両立すると共に、作業性を向上させた光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体及び光学部品を得ることを目的とする。
上記目的を達成すべく本発明者らは種々研究した結果、光透過層を形成するフィルムを溶解する溶媒に着目し、フィルムを得る前の樹脂溶液中の溶媒の一部に極性溶媒としてアルコール類を用いることで、見かけ上の溶液粘度を低減させることができ、表面平滑性の良好なフィルムを得ることが出来ることを見出し、本発明を完成させたものである。
請求項1に記載の発明は、光透過層と当該光透過層が積層されると共に使用時に剥離除去される基材層とを少なくとも有する光学部品用積層フィルムであって、当該光透過層は分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を主成分とするものであり、かつ、当該光透過層は前記重合体をアルコール類を含む溶媒で溶解した重合体溶液を基材層上に積層して形成されたものである光学部品用積層フィルムである。
請求項2に記載の発明は、分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含む重合体Bとをブレンドすることにより得られるものである請求項1に記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項3に記載の発明は、アルコールが、沸点140℃以下のアルコールである請求項1又は請求項2に記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項4に記載の発明は、アルコールが、メタノール又はエタノールである請求項3に記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項5に記載の発明は、光透過層の405nmにおける光透過率が87%以上であり、複屈折が20nm以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項6に記載の発明は、光透過層の膜厚が20〜250μmであり、膜厚精度が±2.0μm以内である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項7に記載の発明は、基材層の膜厚が20〜250μmであり、膜厚精度が±1.0μm以内、表面平滑性が20nm以下である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項8に記載の発明は、光学部品用積層フィルムを光ディスクの光透過層用に用いる請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項9に記載の発明は、重合体は、ガラス転移温度がそれぞれ異なる重合体Aと重合体Bとを混合したものである請求項2に記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項10に記載の発明は、重合体A又は重合体Bのいずれか一方のガラス転移温度が25℃以上である請求項9に記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項11に記載の発明は、重合体Aは、分子内にカルボキシル基、水酸基及びフェノール性水酸基の中から選択される1種以上の官能基を有するものであり、重合体Bは、分子内に窒素原子を有するものである請求項2に記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項12に記載の発明は、基材層は、本質的にポリエステル樹脂から成る請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムである。
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムを、ロール形状に巻き取り形成されたことを特徴とするフィルム巻層体である。
請求項14に記載の発明は、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムの基材層から剥離された光透過層を貼付して形成されたことを特徴とする光学部品である。
請求項15に記載の発明は、光ディスクであることを特徴とする請求項14に記載の光学部品である。
本発明の光学部品用積層フィルム及びフィルム巻層体によれば、強度及び離型性が良好な光学部品用積層フィルムを得ることができ、本光学部品用積層フィルムを使用した光ディスク等の光学部品とすることにより、光学部品の高密度化及び高精度化を図り高品質化することができる。この結果、記録容量の大容量化を実現することができ、映像情報や動画情報等をより多く記録、再生することができる。
また、本発明の光学部品用フィルムは、表面平滑性を維持してフィルムをロール形状に巻き取りフィルム巻層体に形成可能であるため、作業性の効率向上を図ることができる。
本発明は、光透過層と当該光透過層が積層されると共に使用時に剥離除去される基材層とを少なくとも有する光学部品用積層フィルムであって、当該光透過層は分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を主成分とするものであり、かつ、当該光透過層は前記重合体をアルコール類を含む溶媒で溶解した重合体溶液を基材層上に積層して形成されたものである光学部品用積層フィルムである。
上記発明において用いる極性溶媒としてのアルコール類は、樹脂の溶解を阻害させなければ特に種類、量は問わない。具体的な例として、メタノール、エタノール、プロパノール類、ブタノール類、アミルアルコール類などが挙げられ、中でもメタノール、エタノールが見かけの溶液粘度を低減させることや、沸点が低いため乾燥後のフィルム中に残存しにくい点などから特に好ましい。希釈量は樹脂が析出しない限り特に制限はないが、好ましくは全量中の0.1〜40重量%、更に好ましくは0.5〜30重量%の間で希釈するのがよい。アルコール類は、沸点が140℃以下のアルコールであることが乾燥後のフィルム中に残存しにくい点から好ましい。
本発明の光学部品用積層フィルムに用いる光透過層は、分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を主成分とするものであり、分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体は、好ましくは、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含む重合体Bとをブレンドすることにより得られる。
重合体Aと重合体Bをブレンドすることで分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を溶媒に溶解し溶液を作製したとき、その溶液に極性溶媒を加えることで、重合体を溶解するときに用いた溶媒で希釈したときよりも溶液粘度が低下した重合体溶液が得られる。本発明によれば、アルコール類を含む溶媒を調整することにより、溶液粘度を低減でき、その溶液を塗布乾燥することで表面平滑性が良好なフィルムを得ることができる。
また、本発明において、重合体は、ガラス転移温度がそれぞれ異なる重合体Aと重合体Bとを混合したものであると好ましい。本発明によれば、ガラス転移温度が各々異なる重合体を混合したため、混合後の(共)重合体に柔軟性を付与することができる。なお、重合体A又は重合体Bのいずれか一方のガラス転移温度が25℃以上であると好ましい。ガラス転移温度は、いずれか一方の重合体のガラス転移温度を室温(25℃)以上とし、他方の重合体のガラス転移温度を室温(25℃)未満とすることが好ましい。
前述のように、重合体Aは、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体であり、重合体Bは、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含む重合体Bであり、プロトン供与性原子団とプロトン受容性原子団との間の分子間水素結合による擬似的な架橋が形成されており、かつ、重合体A又は重合体Bのいずれか一方のガラス転移温度が25℃以上であると好ましい。本発明において、光透過層は、特性の異なる2種以上の重合体を混合し、分子内の相互間に擬似的な架橋構造を形成した重合体から形成したものであり、擬似的な架橋構造という表現を使用したが、これは、本発明の重合体の架橋構造が、熱分解温度以下の熱や溶剤等により切断され、温度を下げるか、或いは溶剤を除去すると架橋構造が再形成されるためである。また、分子間水素結合による擬似的な架橋と規定したが、水素結合に限定されるものではなく、疎水性相互結合やその他の結合による擬似的な架橋をも含むものである。上記の重合体を使用してフィルムを形成することにより、1種の重合体からフィルムとした場合には得ることができない複数の特性を待たせることが可能となる。例えば、2種の重合体を混合する場合に、耐熱性が良好であり正複屈折である一方の重合体と、柔軟性を有し負複屈折である他方の重合体とを使用して、両者の重合体を混合して擬似架橋を形成する。擬似架橋を形成することにより、耐熱性及び柔軟性の特性を両立すると共に、正負複屈折を相殺しゼロ複屈折化して低複屈折とし、フィルムに相反する特性を持たせたものである。
上記発明において、プロトン供与性原子団及びプロトン受容性原子団の具体例を以下に例示する。
プロトン供与性原子団を含む重合体Aのプロトン供与性原子団は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基、チオフェノール性メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基などの官能基を含む群から選択された物とすることが好ましく、また、プロトン受容性原子団を含む重合体Bのプロトン受容性原子団は、カルボニル基、スルホニル基、ホスホリル基、シアノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選択された物とすることが好ましい。
また、さらに好ましくは、プロトン供与性原子団は、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基などの官能基を含む群から選択された物とすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの分子内に窒素原子を有する官能基を含む群から選択された重合体とすることが好ましい。
また、本発明の光学部品用積層フィルムは、相反する特性を有すると共にガラス転移温度がそれぞれ異なる重合体Aと重合体Bとを少なくとも混合して得られるものであり、重合体A及び重合体Bのうち、いずれか一方のガラス転移温度が25℃以上である重合体から本質的に形成される光透過層と、当該光透過層に積層されると共に使用時に剥離除去される基材層と、を少なくとも有する。より具体的には、重合体のどちらか一方のガラス転移温度を室温(25℃)以上とし、かつ、高分子量化して作製された重合体とすることが好ましい。
なお、本発明においては、重合体Aと重合体Bとの混合比率を規定していないが、ガラス転移温度が室温以下の重合体と室温以上の重合体の重量混合比率を20:80〜60:40の範囲とすると良く、より好ましい混合比率は30:70〜55:45である。
本発明によれば、2種以上の重合体を混合して、相反する特性を導入できるだけでなく、混合後の(共)重合体の強度及び離型性を付与することができる。
さらに、上記発明において、重合体Aは、分子内にカルボキシル基、水酸基及びフェノール性水酸基の中から選択される1種以上の官能基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物を重合させて得られた重合体であり、重合体Bは、分子内に窒素原子を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られた重合体であることが好ましい。
また、上記発明において、重合体はアクリル系樹脂であることが好ましく、基材層は本質的にポリエステル樹脂から成ることが好ましい。
また、本発明の光学部品用積層フィルムは、上記光学部品用積層フィルムの光透過層を光ディスクの光透過層用とすることが好ましい。この場合、光透過層であるフィルムを張り付ける面は、基材層と接していた面を記録層が形成されている光ディスク側に張り合わせることが、記録層との平坦性を保ち、読み取り誤差を少なくすることができる。
さらに、本発明は、上記光学部品用積層フィルムを、例えば円筒形状の芯材の外周面に巻き取り、ロール状に形成されたフィルム巻層体である。本発明によれば、フィルムである光透過層を基材層である原反から剥がすこと無く巻き取ることが可能であるため、表面平滑性が損なわれることが無い。
また、本発明の光学部品は、上記光学部品用積層フィルムの基材層から剥離された光透過層を貼付して形成されたことを特徴とするものであり、光学部品は光ディスクであることが好ましい。
また、上記発明において、光透過層の405nmにおける光透過率が87%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。複屈折は20nm以下であることが好ましく、記録層の読み取り精度を良好とするため、より好ましくは複屈折が10nm以下であり、5nm以下とすることがさらに好ましく、特に20GBを超えるような高密度DVDの場合には、2nm以下とすることが特に好ましい。
また、上記発明において、光透過層の膜厚が、20〜250μmであることが好ましく、より好ましくは22〜200μm、さらに好ましくは25〜150μmの範囲であり、膜厚精度は±2.0μm以内であることが好ましい。一方、基材層の膜厚は20〜250μmであることが好ましく、より好ましくは25〜200μm、さらに好ましくは25〜150μmの範囲であり、膜厚精度は±1.0μm以内であることが好ましい。なお、膜厚の測定は、レーザーフォーカス変位計(株式会社キーエンス製、LT−8010)を用いて、任意の大きさ(例えば1cm2〜10000cm2の面内)について、全体から適切に(例えば25〜1000点)測定点を選択して測定し、その平均値を膜厚とすることができる。さらに、基材層の表面平滑性が20nm以下であることが好ましく、より好ましくは15nm以下である。上述した条件を満たす基材層として、例えば、光透過層との塗工面を離型処理しない原反を使用して、表面平滑性の良好なフィルムを得ることができる。表面平滑性は、キャスト法によって得たフィルムの平滑性を測定した。アトミックフォースマイクロスコピー(セイコーインスツルメンツ株式会社製 Nanopics 1000)を用い、表面の凹凸を測定した。
以下、本発明の光学部品用積層フィルムから基材層を剥離した光透過層を適用して光ディスクを構成した例として、20GBを超える大容量の高密度DVDを挙げて説明する。
高密度DVDは、支持基盤上に記録層を備え、記録層上に接着層を介して光透過層が形成される。
DVDは、405nmの短波長レーザー光を光透過層側から照射し、光透過層を介して記録層の信号情報を再生及び記録するものであるが、高密度DVDは、光透過層を薄肉化して本発明の光学部品用積層フィルムを適用したものである。
DVDの構成材料は、光透過層として、本発明の光学部品用積層フィルムから基材層を剥離した光透過層用のフィルムを使用すること以外、特に制限は無く、支持基盤及び記録層は、従来と同様の材料を適用することができる。光透過層の構成材料については後述するが、例えば、支持基盤は、ポリカーボネート等のプラスチック基板から構成され、接着層は、透明性を損なわない限り特に材料は制限されず、例えば、紫外線硬化型樹脂、感圧型粘着フィルム等を適用することができる。
支持基盤の厚さは、0.4〜1.2mmの範囲とし、記録層及び接着層の厚さは、30〜250μmの範囲とし、より好ましい記録層及び接着層の厚さは30〜150μmである。
なお、上述した支持基盤、記録層、接着層、光透過層の各層の積層方法としては、いかなる方法を使用しても良い。
本発明の光学部品用積層フィルムは、基本的に、光透過層と、この光透過層に積層された基材層と、を備えており、基材層は使用時に光透過層から剥離除去される。光透過層は分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を主成分とするものであり、本発明における光透過層を形成する重合体として、膜厚20μm〜250μmのフィルムを作製したとき、膜厚精度が±2.0μm以内、405nmにおける光透過率が87%以上、複屈折が20nm以下の条件を満たす物であれば特に制限はない。光透過層の膜厚精度が±2.0μmを超え、あるいは複屈折が20nmを超えた場合には、光透過層を通過するレーザー光が正しい位置に当たらず、読み取りエラーが生じる等の不都合が発生し、405nmの光透過率が87%未満になると、レーザー光が吸収あるいは散乱され、レーザー光が弱くなり読み取りエラーが生じる恐れがあるため、上記の範囲内の樹脂を選択することが好ましい。
さらに、分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種以上のプロトン受容性原子団を含む重合体Bと、アルコール類を含む溶媒中で混合して作製した擬似架橋型樹脂組成物であり、プロトン供与性原子団とプロトン受容性原子団との間の分子間水素結合により疑似的に架橋される。
分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aを作製するための単量体としては、例えば、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイロキシプロピルアクリレート、ビニル安息香酸、安息香酸ビニル及びその誘導体などが挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。本成分と他の単量体とを共重合する場合、共重合比率は溶解性の点から、本成分を好ましくは2mol%、更に好ましくは5mol%以上共重合することが好ましい。
また、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含む重合体Bを作製するための単量体としては、例えば、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチルアクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ(メタ)アクリレート類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、N−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)−メタクリルアミド、N−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)−アクリルアミド、N−(1’,2’,2’,6’,6’−ペンタメチル−4−ピペリジル)−メタクリルアミド、N−(1’,2’,2’,6’,6’−ペンタメチル−4−ピペリジル)−アクリルアミドなどがあげられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。本成分と他の単量体とを共重合する場合、前述と同様に共重合比率は溶解性の点から、本成分を好ましくは1mol%、更に好ましくは2mol%以上共重合することが好ましい。
本発明は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種以上のプロトン受容性原子団を含む重合体Bのうちの、どちらか一方のガラス転移温度を室温(25℃)未満とし、かつ、もう一方のガラス転移温度を室温(25℃)以上にすることにより、得られた重合体に耐熱性及び柔軟性を付与することができる。上記温度条件から外れた場合には、室温において柔軟性を付与することができず、また、熱変形してしまうという問題が生じてしまい、ガラス転移温度は前記の条件を満たす範囲であれば特に問題はないが、好ましくは一方が+10℃未満、もう一方が+50℃以上、さらに好ましくは一方が0℃未満、もう一方が+100℃以上であることが好ましい。
上述したガラス転移温度条件を満たすために、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種以上のプロトン受容性原子団を含む重合体Bと、のそれぞれに対して後述する他の単量体とを共重合することができる。使用できる単量体としては、得られる重合体の透明性を損なわない物であれば特に限定されず、その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル等のメタクリル酸エステル類、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロルスチレン、α−ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸アクリル酸スズ、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸バリウム、メタクリル酸鉛、メタクリル酸スズ、メタクリル酸亜鉛等の(メタ)アクリル酸金属塩、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、 N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等が挙げられる。また、これらは1種又は2種以上で使用しても良い。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。
本発明により得られた重合体(高分子体)の分子量について、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種以上のプロトン受容性原子団を含む重合体Bとのうち、ガラス転移温度が25℃未満の重合体に関しては、特に限定するものではないが、強度及び成形性の点から重量平均分子量(ポリスチレン換算)を10,000〜1000,000の範囲とすることが好ましい。一方、ガラス転移温度が25℃以上の重合体に関しては、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を70,000以上とすることが好ましく、75,000〜1000,000の範囲とすることがより好ましい。重合体の重合平均分子量が70,000未満になると、得られるフィルムの強度が低下し、離型性が悪くなるからであり、重合体の重合平均分子量が1000,000を超えると、フィルム塗工前の樹脂溶液の粘度が高くなりすぎてしまい、取り扱いが困難になるためである。
また、本発明において、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種以上のプロトン受容性原子団を含む重合体Bと、を混合する方法は、溶融混練法、ワニスブレンド法などがあり、特に混合する方法は問わない。
さらに、光ディスク等の光学用部品の一つである光透過層を形成する樹脂組成物を製造するための重合方法としては、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の既存の方法を使用することができる。
重合を行う際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。重合開始剤は、単量体の総量に対して0.01〜10重量%の範囲で添加することが好ましい。
また、分子量調整剤として、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を必要に応じて添加することもできる。
熱重合をする場合には、重合温度を0℃〜200℃の間で適宜選択すると良く、特に、50℃〜120℃の範囲とすることが好ましい。
さらに、本発明で用いる重合体には、その使用にあたって、劣化防止、熱的安定性、成形性及び加工性などの観点から、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの抗酸化剤、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩などの離型剤、その他滑剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重金属不活性化剤などを添加して使用しても良い。
本発明では、上記の重合体から、溶媒キャスト法により有機溶媒を揮発させてフィルムを得ることができる。キャストの条件は特に限定されるものではないが、例えば、空気中や不活性ガス中において50〜160℃の温度範囲で行うことが可能である。また、これらの条件を用いて予備乾燥した後、フィルムを剥がし、160〜350℃の高温で乾燥することにより乾燥時間を短縮することが可能である。
また、フィルムを形成する際、キャスト基板の選択が重要である。具体的には塗工面を離型処理しない基材層を使用し、基材層の厚さを20〜250μm、膜厚精度を±1.0μm以内、表面平滑性を20nm以下の基材層に塗工することが好ましい。塗工面に離型処理を施した基材層を使用すると、得られるフィルムの表面があれる可能性があり好ましくない。また、基材層の厚さが20μm未満になると、塗工時にたわみが生じて面精度が出ない可能性があり、逆に基材層の厚さが250μmを超えると、経済性及びロール巻き取り性が悪化して、好ましくないからである。また、得られるフィルムの表面平滑性を維持するためにも、基材層の膜厚精度を±1.0μm以内、表面平滑性を20nm以下とすることが好ましい。
本発明の光学部品用積層フィルムの製造方法としては、特に制限はないが、アルコール類を含む有機溶媒を揮発させてフィルムを得る方法が、表面平滑性の良好なフィルムを得られるため好ましい。キャストの条件は特に限定されないが、例えば、空気中や不活性ガス中において50℃〜160℃の温度下において行うことが可能である。
本発明において得られるフィルムは、基材層上に光透過層が形成された2層積層フィルムであり、2層積層フィルムをロール形状に巻き取ることができる。
光学部品用積層フィルムの基材層を構成する材料として、ポリエステル樹脂である原反PETを使用した。また、光透過層の構成材料として、以下に示す方法により製造された熱可塑性樹脂を使用した。
[実施例1]
本実施例では、ポリマ全体に対して分子量1万以下のポリマの占める量を4.2重量%とし、熱可塑性樹脂として、重合体A及び重合体Bの混合物を使用した。
(重合体A)
耐圧2.3kg/cmGの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1374gを投入し、アクリル酸ブチル(BA、和光純薬工業株式会社製)1038g、アクリル酸(AA、和光純薬工業株式会社製)88gを秤取した。その後、室温(25℃)にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換し、オートクレーブ内を加圧・密閉にして、60℃まで昇温した後、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド(LPO、日本油脂株式会社製)3.1g、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート(PBO、日本油脂株式会社製)1.1g、α−メチルスチレンダイマー(AMSD、五井化成株式会社製)0.03gをアセトン40gに溶解し、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、同温度を約14時間保持した。さらに90℃まで昇温して、同温度で約6時間保持した後、高分子溶液を得た。このときの重合率は98%以上であり、重量平均分子量は250,000、溶液粘度は6600mPa・s(25℃)であった。
(重合体B)
耐圧2.3kg/cmGの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1375gを投入し、メタクリル酸メチル(MMA、和光純薬工業株式会社製)843g、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル(TCDMA、日立化成工業株式会社製)214g、アクリル酸ブチル(BA)34g、2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87、日立化成工業株式会社製)34gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換し、オートクレーブ内を加圧・密閉にして、60℃まで昇温した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、和光純薬工業株式会社製)3.0g、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル(ACHN、和光純薬工業株式会社製)1.0gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。さらに、同温度を約18時間保持し、90℃まで昇温した後、同温度で約6時間保持し、高分子溶液を得た。重合体Bの重合率は98%以上であり、重量平均分子量は75,000、溶液粘度は38,000mPa・sであった。
得られた重合体Aワニスと重合体Bワニスとを4:6の固形分の重量比率で混合したところ急激に粘度が上昇しゲル化状態になるため、溶液濃度が38重量%になるようにメタノールで希釈した。そのときの溶液粘度は5600mPa・sであった。その溶液を株式会社ヒラノテクシード製コンマコータヘッドの塗工機を用い、原反PET(コスモシャインA−4100、東洋紡績株式会社製)に3m/min速度で塗工し、連続して50℃の乾燥炉を3分、140℃の乾燥路を3分通して評価用フィルムを作製した。
[実施例2]
本実施例では、希釈溶剤をエタノールに変えた以外は、実施例1と同様の手順を用いた。希釈後の溶液粘度は10600mPa・sであった。
[実施例3]
本実施例では、希釈溶剤をn−ブタノールに変えた以外は、実施例1と同様の手順を用いた。希釈後の溶液粘度は17800mPa・sであった。
[実施例4]
本実施例では、希釈溶剤をメタノール/メチルエチルケトン=80/20の重量割合に変えた以外は、実施例1と同様の手順を用いた。希釈後の溶液粘度は6500mPa・sであった。
[比較例1]
本比較例では、希釈溶剤をアセトンに変えた以外は、実施例1と同様の手順を用いた。希釈後の溶液粘度は26400mPa・sであった。
[比較例2]
本比較例では、希釈溶剤をトルエンに変えた以外は、実施例1と同様の手順を用いた。希釈後の溶液粘度は32800mPa・sであった。
[比較例3]
本比較例では、希釈溶剤をメチルエチルケトンに変えた以外は、実施例1と同様の手順を用いた。希釈後の溶液粘度は37100mPa・sであった。
上記実施例1〜4、比較例1〜3の方法により製造された各評価用フィルムについて、以下に示す測定法により特性を評価した。
[ガラス転移温度(Tg)]
DVAで測定した。測定装置として、株式会社ユービーエム製レオスペクトラーDVE−V4を使用した。測定条件は、昇温速度3.0℃/min、周波数10.0hzとして引張り弾性率を測定し、得られたデータのうちtanδのピークトップをガラス転移温度(Tg)とした。
[膜厚(μm)、膜厚誤差(μm)]
フィルムの膜厚は、レーザーフォーカス変位計(株式会社キーエンス製、LT−8100)を使用し、サイズ12cm×12cmの正方形フィルムについて測定した。
正方形フィルムの4つの辺を、それぞれ直線A、直線B、直線C、直線Dとし、直線Aに対向する辺を直線Cとし、直線Bに対向する辺を直線Dとした。直線Aから直線Cに向かって3cmの間隔を空けた3本の平行直線を各々直線A1、直線A2、直線A3とし、これら3本の平行直線(直線A1、直線A2、直線A3)と、直線Aと、直線Cとの合計5本について、以下の手順により直線上の各点におけるフィルムの膜厚を測定した。まず、直線Aの一端部から正方形内側の1cmの点を基準点とし、基準点から直線Aの他端部に向かい1mmの間隔を空けた各点について、他端部から正方形内側1cmの点までの長さ10cmに亘る合計101個の各点についてフィルムの膜厚を測定した。次に、直線Aと同様の方法を用いて、直線A1、直線A2、直線A3及び直線Cについての各点の膜厚を測定し、5本の直線について合計505個の各点の膜厚を測定した。さらに、前述した直線Aから直線Cまでの各直線と同様に、直線Bから直線Dに向かう5本の直線(直線B、直線B1、直線B2、直線B3、直線D)の合計505個の各点について膜厚を測定した。最後に、前述した方法により測定された正方形フィルム内の総計1010個についての膜厚の平均値をフィルムの膜厚とした。
また、膜厚の最大値から平均膜厚を差し引いた値、及び平均膜厚から膜厚の最小値を差し引いた値を各々算出し、算出した値のうち大きい値を膜厚誤差とした。
膜厚精度は、±膜厚誤差とした。
[折り曲げ加工性]
フィルムを折り曲げた際の亀裂の有無及び白化現象の程度を目視により観察した。亀裂及び白化現象が観察されなかったときにその評価を○とし、観察されたときにその評価を×とした。
[光透過率]
フィルムの光透過率は、分光光度計を用い、室温(25℃)で波長405nmの領域において測定した。なお、測定器はJASCO社製V−570を用いた。
[色相(イエローネスインデックス)]
フィルムの色相(黄色度)は、イエローネスインデックスについて、色差計(日本電色工業株式会社製COH−300A)を用いて測定した。
[複屈折(nm)]
複屈折の測定は、厚さ50μmのフィルムについて、株式会社島津製作所製エリプソメータAEP−100を用いて測定した。
上記測定法により各評価用フィルムの特性を評価した結果を纏めて表1、2に示した。
Figure 2005219335
Figure 2005219335
本発明のアルコール類を含む溶媒で溶解した重合体溶液を基材層上に積層して形成された光学部品用積層フィルムは、溶液粘度が低く、成形が容易であると共に、膜厚誤差が小さく厚み精度に優れ、柔軟であるので折曲げ加工性に優れ、光線透過率が高く、ヘイズが低い。また、複屈折が小さい。これに対し、アルコール類を含まない溶媒で溶解した重合体溶液を用いて作製した光学部品用積層フィルムは、溶液粘度が高く、特に膜厚誤差が大きく厚み精度が悪い。
従って、本実施形態によれば、2種以上の重合体を混合することにより、1種の重合体では得られない新たな特性を得られるだけでなく、フィルム強度および離型性が良好な光学部品用積層フィルムを得ることができ、その結果、本光学部品用積層フィルムを光ディスク等の光学部品に適用することにより、光学部品の高密度化及び高精度化を図ることができる。この結果、映像情報や動画情報等の発展に伴い光ディスク等に要求される記録容量の大容量化を実現することができる。
また、本発明の光学部品用フィルムは、表面平滑性を維持してフィルムをロール形状に巻き取りフィルム巻層体に形成可能であるため、作業性の効率向上を図ることができる。
なお、本実施形態において、本発明の光学部品用積層フィルムの具体的な用途として大容量化したDVDを例として挙げたが、光学部品はこれに限定されるものではなく、DVD用の他に、液晶タッチパネル用基材フィルム、フレキシブルディスプレイ用基材フィルム、液晶パネル用位相差フィルム等としても使用することができる。




Claims (15)

  1. 光透過層と当該光透過層が積層されると共に使用時に剥離除去される基材層とを少なくとも有する光学部品用積層フィルムであって、当該光透過層は分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体を主成分とするものであり、かつ、当該光透過層は前記重合体をアルコール類を含む溶媒で溶解した重合体溶液を基材層上に積層して形成されたものである光学部品用積層フィルム。
  2. 分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された重合体は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含む重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含む重合体Bとをブレンドすることにより得られるものである請求項1に記載の光学部品用積層フィルム。
  3. アルコールが、沸点140℃以下のアルコールである請求項1又は請求項2に記載の光学部品用積層フィルム。
  4. アルコールが、メタノール又はエタノールである請求項3に記載の光学部品用積層フィルム。
  5. 光透過層の405nmにおける光透過率が87%以上であり、複屈折が20nm以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
  6. 光透過層の膜厚が20〜250μmであり、膜厚精度が±2.0μm以内である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
  7. 基材層の膜厚が20〜250μmであり、膜厚精度が±1.0μm以内、表面平滑性が20nm以下である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
  8. 光学部品用積層フィルムを光ディスクの光透過層用に用いる請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
  9. 重合体は、ガラス転移温度がそれぞれ異なる重合体Aと重合体Bとを混合したものである請求項2に記載の光学部品用積層フィルム。
  10. 重合体A又は重合体Bのいずれか一方のガラス転移温度が25℃以上である請求項9に記載の光学部品用積層フィルム。
  11. 重合体Aは、分子内にカルボキシル基、水酸基及びフェノール性水酸基の中から選択される1種以上の官能基を有するものであり、重合体Bは、分子内に窒素原子を有するものである請求項2に記載の光学部品用積層フィルム。
  12. 基材層は、本質的にポリエステル樹脂から成る請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
  13. 請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムを、ロール形状に巻き取り形成されたことを特徴とするフィルム巻層体。
  14. 請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムの基材層から剥離された光透過層を貼付して形成されたことを特徴とする光学部品。
  15. 光ディスクであることを特徴とする請求項14に記載の光学部品。
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