JP2004155653A - ダイヤモンドの研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 基板の材質、そり量、面積、厚み等の基板の状態に実質的に影響を受けることなく、非接触で鏡面仕上げ研磨を行なうことが可能なダイヤモンドの研磨方法を提供する。
【解決手段】 ダイヤモンドの表面に、該ダイヤモンドと異なる材料を含む液状の塗布剤を滴下し硬化させて、ダイヤモンド上に表面が球面状の被膜を形成した後、ドライエッチングにより、被膜とダイヤモンドとの双方をエッチングし得る条件下で、被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、球面状のダイヤモンド表面を得る。
【選択図】 図2
【解決手段】 ダイヤモンドの表面に、該ダイヤモンドと異なる材料を含む液状の塗布剤を滴下し硬化させて、ダイヤモンド上に表面が球面状の被膜を形成した後、ドライエッチングにより、被膜とダイヤモンドとの双方をエッチングし得る条件下で、被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、球面状のダイヤモンド表面を得る。
【選択図】 図2
Description
本発明は単結晶ダイヤモンドや多結晶ダイヤモンドの研磨方法に関し、特に、切削工具、耐磨工具、表面弾性波素子、半導体素子、大面積ヒートシンクレンズ等に応用可能なダイヤモンド基板表面を与えることが可能なダイヤモンドの研磨方法に関する。
ダイヤモンドは、赤外領域の一部を除いて赤外〜紫外域の広い波長領域にわたって光の透過性に優れるのみならず、優れた耐圧性を有し、且つ物質中で最も硬いという優れた特性を有している。したがって、ダイヤモンドは、傷がつかない光学用の材料として最適の物質である。
また、ダイヤモンドは物質中で最も高いヤング率を有し、表面弾性波が励起されれば非常に高速で伝播するという性質を有している。したがって、ダイヤモンドは、移動体通信等に用いられる高周波帯域通過フィルタ用材料として注目され、研究が進みつつある。
更に、ダイヤモンドは、物質中で最も大きい熱伝導率を有するため、半導体レーザやIC等のデバイスのヒートシンクとしての利用も検討されてきている。
また更に、ダイヤモンドは、高温下、放射線下などの苛酷な環境下でも安定に動作するデバイスの材料として、また高出力の動作にも耐え得るデバイスの材料としても、その応用が注目されている。
ダイヤモンドが高温下でも動作可能な理由として、バンドギャップが5.5eVと大きいことが挙げられる。これは、半導体のキャリアが制御されなくなる温度範囲(真性領域)が1400℃以下には存在しないことを示している。
人工的にダイヤモンドを合成する方法としては、従来より超高圧合成法が用いられて来たが、最近では、気相合成法を用いても、ダイヤモンド結晶が合成されるようになって来た。これにより、ダイヤモンドの光学材料、半導体材料等への応用が更に期待されている。
近年、表面弾性波素子、半導体素子や、種々のデバイスのヒートシンク等にダイヤモンドが用いられる場合には、従来より遥かに大面積で且つ超微細加工可能な表面の鏡面性、平坦性を有するダイヤモンドが要求されるようになってきた。
しかしながら、超高圧合成法または気相合成法で得られた人工ダイヤモンドの表面には、通常、約1000μm前後のかなり大きな凹凸が存在しているため、このような場合には人工ダイヤモンドの表面を研磨して平坦化する必要がある。
しかしながら、上述したように、ダイヤモンドは物質中で最も硬い材質であるため、これを研磨し平坦化することは必ずしも容易ではない。
従来より、ダイヤモンド表面の研磨には、主に機械加工による方法が用いられていた。
このような機械的加工による方法としては、例えば、凹凸を有するダイヤモンドの表面を研削機等の物理的な手段で粗削りした後、ダイヤモンド砥粒を用いて研磨し、更に高温で高速摩擦により凹凸部のダイヤモンド成分を溶解させてダイヤモンド表面を平坦化するスカイフ研磨が挙げられる。
しかしながら、従来の研磨法では、比較的良好な鏡面を得ることが可能ではあるものの、直接接触に基づく研磨であったため、その研磨能力が基板の材質、そり量、面積、厚み等の基板の状態に大きく左右されるという欠点があった。
また、このような機械的研磨において所望の平滑度を得るためには、研磨板の砥粒の粒径をコントロールすることが必要であったが、該粒自身もダイヤモンドであるため、その粒径コントロールは困難であった。
例えば、薄膜シリコン基板上に成膜したダイヤモンド膜の場合、大面積のものほど「そり」が顕著となり、そり量が数十μmにも及ぶ場合がある。この場合、接触研磨によって機械的な圧力が基板にかかると、基板割れが生じてしまう虞がある。このように機械研磨においては、研磨装置および研磨板の大きさ、研磨できるダイヤモンド基板の厚み等に限界があるため、機械研磨可能なダイヤモンド膜はサイズの小さな基板上に形成したものに限られる。したがって、大面積基板上に形成したダイヤモンド膜の機械研磨は、極めて困難であった。
一方、特開平2−26900号公報に開示されるように、研磨材として鉄等の金属を用い、ダイヤモンドと反応した層を除去する方法があるが、接触研磨装置を用いることには変わりないため、上述したような接触研磨における問題は依然として未解決である。
これに対して、特開昭64−68484号公報に開示されるように、非接触でイオンビーム等を照射してダイヤモンドの平滑化を行なう方法がある。
しかしながら、この方法では鏡面性は改善されるものの、上述の接触研磨に比べてその平滑性は著しく劣っており、この方法で平滑化したダイヤモンド膜を微細加工等に適用することは不可能であった。
また、特開昭64−62484号公報では、上記方法の延長として、ダイヤモンド膜上に、CVD(化学的気相成長)法によりダイヤモンドと類似の物質であるアモルファスカーボン膜を形成して、エッチバック(一旦形成した平坦なアモルファスカーボン膜側からダイヤモンドをエッチング)する方法が提示されている。しかしながら、この方法により得られるダイヤモンド表面の凹凸は大きく、充分な平坦化は困難であるため、この方法により得られたダイヤモンド膜を微細加工に適用することは、極めて困難である。更に、この方法ではアモルファスカーボン膜(比較的厚い)の形成に長時間を要するため、この方法は製造コストの点から好ましくない。
上述したように、従来の技術においては、ダイヤモンド砥石やダイヤモンド砥粒を用い、ダイヤモンドを平坦化する方法が主に用いられていた。また、Appl. Phys. Lett.,63(1993), 622に示されるように、セリウムやランタン等の金属を用い、ダイヤモンドからこれらの金属への炭素原子の拡散的転移(diffusional transfer)を利用して、ダイヤモンド膜表面を平坦化する方法が知られている。しかしながら、これらの方法による平坦化では長い処理時間が必要であるか、あるいは表面の凹凸がサブミクロン以下となるように平滑化することが困難であった。
単結晶ダイヤモンドないし多結晶ダイヤモンドを電子デバイスの構成材料に適用しようとする場合、該ダイヤモンド上に微細配線等を形成する観点から、ダイヤモンド表面の平坦度は、通常は配線長の10分の1程度あるいはそれ以下であることが極めて好ましい。本発明者の検討によれば、Appl. Phys. Lett.,63(1993), 622の方法を用いた場合、数十μm単位の平坦度しか得られない。また、LSI設計製作技術(森末 道忠著、電気書院発行、1987年)p370には、PSG(phospho-silicate glass)上に形成したレジスト層をエッチングするに際し、エッチングガスたるCF4 にO2 を添加するとレジストのエッチング速度が増大し、H2 を添加するとレジストのエッチング速度が減少することを利用して、レジストとPSGとのエッチング速度を同じとした条件下でこれらを同時にエッチングして平坦なPSG膜を残す方法が開示されている。このような半導体プロセス中のエッチング法による平坦化プロセスにおいては、犠牲層(この場合はPSG)と平坦化すべき膜とのドライエッチング速度を、ガス組成を変えるだけで簡単に同一にすることが可能であった。
しかしながら、この方法をダイヤモンド膜の平坦化に適用しようとした場合、ダイヤモンドと犠牲層のドライエッチング速度を同一にすることは困難であり、たとえ同一の速度が得られたとしても、該エッチング速度は極めて遅くならざるを得ない。したがって、ダイヤモンド膜の平坦化には、かなり長い処理時間が必要となるという欠点があった。
一般に、ダイヤモンドにおいても、その表面の凹凸が可能な限り小さいことが、該表面に安定的に微細配線パターン等を形成可能な点から好ましい。
したがって本発明の目的は、上述した従来の問題点を解消するダイヤモンド研磨方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、その上に微細配線等を安定的に形成可能なダイヤモンド表面を短時間で与えるダイヤモンドの研磨方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、基板の材質、そり量、面積、厚み等の基板の状態に実質的に影響を受けることなく、非接触で鏡面仕上げ研磨を行なうことが可能なダイヤモンドの研磨方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、その上に微細加工を施すことが可能なダイヤモンド膜を低コストで得ることができるダイヤモンドの研磨方法を提供することにある。
本発明によれば、ダイヤモンドの表面に、該ダイヤモンドと異なる材料を含む液状の塗布剤を滴下し硬化させて、ダイヤモンド上に表面が球面状の被膜を形成した後;ドライエッチングにより、前記被膜とダイヤモンドとの双方をエッチングし得る条件下で、前記被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、球面状のダイヤモンド表面を得ることを特徴とするダイヤモンドの研磨方法が提供される。
本発明によれば、乾式法によりダイヤモンド表面を平坦化させるに際し、該ダイヤモンド表面凸部の減削速度を、該ダイヤモンド表面の凹部の減削速度より相対的に大きくすることを特徴とするダイヤモンドの平坦化法が提供される。
本発明によれば、更に、ダイヤモンドの表面に、該ダイヤモンドと異なる材料からなる平坦な被膜を形成した後;ドライエッチングにより、前記ダイヤモンドと被膜との双方をエッチングし得る条件下で、前記被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、該ダイヤモンドの表面を平滑化することを特徴とするダイヤモンドの平坦化法が提供される。
本発明によれば、更に、ダイヤモンドの表面に、該ダイヤモンドと異なる材料からなる平坦な被膜を形成する第1の工程と、被膜を介して、ダイヤモンドにイオン注入を行なう第2の工程と、被膜を除去するとともに、イオン注入により変質したダイヤモンド部分を、ダイヤモンドから除去する第3の工程とを備えることを特徴とするダイヤモンドの平坦化法が提供される。
このようなダイヤモンドの平坦化法においては、ダイヤモンド表面の平滑性を高めるために、必要に応じて、上述した第1ないし第3の工程を繰返し行なってもよい。
本発明によれば、ダイヤモンドの表面に該ダイヤモンドと異なる材料を含む液状の塗布剤を滴下し硬化させて、ダイヤモンド上に表面が球面状の被膜を形成した後;ドライエッチングにより、前記被膜とダイヤモンドとの双方をエッチングし得る条件下で、前記被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、球面状のダイヤモンド表面を得ることを特徴とするダイヤモンドの研磨方法が提供される。
本発明によれば、ダイヤモンドの表面に該ダイヤモンドと異なる材料からなる平坦な被膜を形成した後;ドライエッチングにより、前記ダイヤモンドと被膜との双方をエッチングし得る条件下で、前記被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、該ダイヤモンドの表面を平滑化するダイヤモンドの平坦化法が提供される。
このような平坦化法を用いれば、従来のスカイフ研磨等の機械研磨とは異なり、非接触で表面を平坦化することができるため、基板の材質、そり量、面積、厚み等の基板の状態に実質的に制限を受けることなく、種々のダイヤモンド表面に良好に鏡面仕上げ研磨ないし平坦化することが可能になる。
上記したダイヤモンドの平坦化法または研磨方法においては、大型のドライエッチング装置を用いることによって、より大面積のダイヤモンドの平坦化ないし研磨に充分に対応することができる。
このようなダイヤモンドの平坦化法または研磨方法によれば、極めて平滑性に優れたダイヤモンド表面が得られるため、従来の機械研磨によって得られるダイヤモンド表面上には不可能であったレベルの超微細加工を、該ダイヤモンド表面上に施すことが可能となる。更には、本発明によれば、従来の機械研磨に比べて研磨工程が大幅に簡略化されるため、効率的なコスト低減が可能となり、工業的にも充分利点のある平坦化法ないし研磨法を提供することができる。
また、上記したダイヤモンドの研磨方法を用いれば、ダイヤモンド以外の材料では得ることができなかった波長域、すなわち紫外線域(波長225nm以下程度)まで光を透過でき、しかも熱伝導率が高い、高信頼性のダイヤモンドレンズを得ることが可能となる。特に、本発明の研磨方法は、マイクロレンズ形成に好適に適用することができる。
更に、本発明の他の態様によれば、ダイヤモンドの表面に該ダイヤモンドと異なる材料からなる被膜を形成して、該被膜を平坦化する第1の工程と;前記被膜を介して、前記ダイヤモンドにイオン注入を行なう第2の工程と;前記被膜を除去するとともに、前記イオン注入により変質したダイヤモンド部分を、前記ダイヤモンドから除去する第3の工程とを備えるダイヤモンドの平坦化法が提供される。
このようなダイヤモンドの平坦化法は、50Å以下のより厳しい平坦度が要求される電子光学部品(特に、高出力の半導体レーザ等に使用可能なLSI用等の放熱基板)の製作に好適に応用することができる。
更に、本発明の他の態様によれば、乾式法によりダイヤモンド表面を平坦化させるに際し、該ダイヤモンド表面凸部の減削速度を、該ダイヤモンド表面の凹部の減削速度より相対的に大きくするダイヤモンドの平坦化法が提供される。
このようなダイヤモンド平坦化法によれば、多結晶又は単結晶ダイヤモンドからなり、平滑な表面を有する電子デバイス用の基板を提供することが可能となる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
(ダイヤモンド)
(ダイヤモンド)
本発明に使用可能なダイヤモンドの種類は、特に制限されない。より具体的には例えば、本発明の平坦化法ないし研磨法は、天然のダイヤモンド、高圧合成法によって人工的に製造されたバルク単結晶からなるダイヤモンド、又は気相合成法によって人工的に基板等の上に形成された薄膜多結晶または薄膜単結晶からなるダイヤモンド等の種々のダイヤモンドの表面を平坦化ないし研磨するために適用することが可能である。
(被膜)
(被膜)
ダイヤモンド表面を平坦化するために、該ダイヤモンド表面に形成すべき被膜(ないし犠牲層)は、ダイヤモンドと異なる種々の材料を用いて形成することが可能であり、また、このような被膜は、種々の方法によって形成可能である。より具体的には例えば、ダイヤモンドと異なる材料を含む液状の塗布剤をダイヤモンド表面の凹凸を埋めるように塗布し、(溶媒蒸発等により)固化させる方法;あるいはゾルーゲル法に従いダイヤモンド表面にゾル状態のコーティング材料を塗布した後、ゲル状態に転換させて固化させ平坦な表面を形成する方法;等によって比較的容易に被膜を形成して平坦化を行なう(平坦な被膜を形成する)ことができる。
液状材料を用いて上記被膜を形成する際には、適量の液状材料を平坦化すべきダイヤモンドの表面に滴下し、スピナ等を用いてスピンコート(回転塗布)により行なうことが好ましい。
被膜の形成に使用すべき材料(ダイヤモンドと異なる材料)としては、ダイヤモンド表面へのコーティングにより、該ダイヤモンド表面に比較的安定で且つ凹凸のない表面を形成可能なものが好ましく用いられる。より具体的には例えば、このような材料としては、珪素(Si)、硼素(B)等を含む有機材料を主成分とするもの、あるいは珪素(Si)、硼素(B)等を含む無機材料を主成分とするものが挙げられる。
Si、B等を含む無機材料を主成分とする被膜形成用材料としては、無機珪素化合物、無機硼素化合物等を挙げることができる。例えば、ゾルーゲル法に従って無機珪素化合物または無機硼素化合物等からなる被膜を形成する場合には、ダイヤモンドの表面に、SiO2 系、B2 O3 系等のゾルをスピナ等を用いてスピンコート(回転塗布)した後、加熱等によってゾルを転換させてゲル層を形成することができる。例えば、半導体プロセスで用いられるSiO2 系塗布液などが簡便に使用可能である。
有機材料を主成分とする被膜形成用材料としては、半導体デバイス製造プロセス等に使用される比較的安価なポリイミド材料が簡便に使用可能であるが、これには限定されず、その他の有機ポリマ等を用いることができる。
Si、B等を含む有機材料を主成分とする材料としては、水溶性コロイド系、ポリけい皮酸系、環化ゴム系、キノンジアザイド系等の液状フォトレジストが好適に使用可能である。
(ドライエッチング)
(ドライエッチング)
本発明においては、ドライエッチング法として、反応性イオンエッチング(RIE)を用いることが最も好ましいが、他にプラズマエッチング、イオンビームエッチング等を用いることも可能である。いずれのエッチングを用いた場合にも、ほぼ同等の平滑化効果を得ることができる。
ドライエッチングに用いるガスとしては、Ar、He、CF4 、CHF3 、SF6 、BCl3 、CHCl3 等の通常のエッチングガスを単独であるいは混合して用いることが可能である。必要に応じて、これらのガスに少量のO2 、N2 O、N2 等を混合したガス系を用いてもよい。
本発明において、ドライエッチングにより、被膜とダイヤモンドの双方をエッチングし得る条件は、基本的には、ドライエッチングの際の被膜とダイヤモンドとのエッチング選択比をより小さく抑えることで実現される。本発明においては、被膜とダイヤモンドとのエッチング選択比が1:2から2:1までの範囲を採ることが好ましく、さらに、被膜とダイヤモンドとのエッチング選択比がほぼ1:1であること(すなわち、0.8:1から1:0.8の範囲、更には0.9:1から1:0.9の範囲のエッチング選択比)が最も好ましい。
たとえば、ArにO2 を混合したガス系において、ドライエッチングを行なう場合、Arに対するO2 の添加量の割合を0〜10%とすることで、被膜とダイヤモンドとのエッチング選択比をほぼ1:1に調節することができる。
(イオン注入)
(イオン注入)
本発明におけるイオン注入は、通常のイオン注入技術に従って実施することができる。
イオン注入に用いる元素には制限はなく、あらゆる元素を適宜選択して用いることができる。この際に用いるイオンは、ダイヤモンドの結晶状態を破壊し変質させるのに十分な質量を有し、且つダイヤモンド中に深く導入される程度の大きさを有する元素であることが好ましい。より具体的には例えば、Ar、Ne、He、Al、Xe、Cu等が好ましく使用可能である。
本発明においては、イオン注入時に、必要に応じて、注入イオンに対するダイヤモンドの阻止断面積(E)と注入イオンに対する被膜の阻止断面積(F)とがほぼ一致(好ましくは、阻止断面積の比(F/E)が0.1〜10、更には0.9〜1.1)するように被膜を形成させてもよい。より具体的には、上記のあることが好ましい。
ここに、「阻止断面積」は、注入イオンが被膜およびダイヤモンド中を通過する際に物質との相互作用によって失う損失エネルギーを、単位体積当りの原子数または分子数で除した商として規定される。このように、注入イオンに対するダイヤモンドの阻止断面積と注入イオンに対する被膜の阻止断面積をほぼ一致させた場合、ダイヤモンドおよび被膜に導入される注入イオンの飛程距離を、再現性よく等しくすることが可能となる。
注入イオンに対する被膜の阻止断面積の調整は、例えば、被膜を形成するために用いる材料に、適量の金属元素を添加して均一に混合することによって比較的容易に行うことができる。
このような目的で添加する金属元素としては、例えば、Mg、Al、Ti、W、Mo、Au、Pt等を好適に用いることができる。また、金属元素の添加量は、被膜を構成する材料、注入イオンの種類、添加する金属元素の種類に基づくコンピュータ・シミュレーションにより求めることが可能である。
(被膜の除去)
(被膜の除去)
被膜の除去に際しては、被膜を構成する材料に応じた化学的または物理的エッチング、あるいは剥離剤、HF(フッ酸)等による化学的処理を適宜選択して用いることができる。
(ダイヤモンド変質部分の除去)
(ダイヤモンド変質部分の除去)
ダイヤモンドが変質した部分の除去は、ドライエッチングまたは化学的なウェットエッチングのいずれのエッチングも用いることができる。いずれのエッチングを用いても、ほぼ同等の効果を得ることができる。
ドライエッチングとしては、水素、酸素、またはハロゲンガス等の気体放電を利用したプラズマエッチングを好ましく用いることができる。またウェットエッチングとしては、クロム酸処理を用いたエッチング等を好ましく用いることができる。
(平坦化ないし研磨の程度)
(平坦化ないし研磨の程度)
本発明の平坦化ないし研磨法において、得られたダイヤモンド表面の平滑度は、例えば、RMax 又はRa (JIS B 0601に基づく)に基づいて規定することが可能である。より具体的には例えば、平坦化ないし研磨前のダイヤモンド表面のRMax をA(μm)とし、平坦化ないし研磨後の該ダイヤモンド表面のRMax をB(μm)とした場合、本発明においては、B/Aの比は、通常1/3以下であることが好ましく、1/5以下(特に1/10以下)であることが更に好ましい。
(ダイヤモンドの研磨方法)
(ダイヤモンドの研磨方法)
本発明のダイヤモンド研磨方法の一態様について、その作用機構を図1に基づいて説明する。
このダイヤモンドの研磨方法では、まず図1(a)に示すように、所定の基板1(例えば、シリコン基板)上に合成されたダイヤモンド膜2を用意する。通常、ダイヤモンド2表面全体には凹凸が存在している。このようなダイヤモンド2の表面に、該ダイヤモンドとは異なる材料からなる平坦な被膜を形成する。
これにより、図1(b)に示すように、基板1上のダイヤモンド2表面全体に存在する凹凸が被膜3によって埋没されるとともに、ダイヤモンド2の表面の凹凸の程度に実質的に影響を受けずに、平坦な表面を有する被膜3が形成される。
次いで、所定のガス雰囲気において被膜3とダイヤモンド2の双方をエッチングし得る条件下(例えば、被膜とダイヤモンドのエッチング選択比が、上述したようにほぼ1:1になる条件下)で、ドライエッチングにより、実質的に平坦な表面を有する被膜3の表面からエッチングを行なう。
これにより、平坦性を高く保持したまま、まず被膜3が、さらに被膜3およびダイヤモンド2表面の凹凸が(例えば、同時に)基板1上から除去され、ダイヤモンド2の表面が平滑化される。
この結果、図1(c)に示すように、最終的に被膜3およびダイヤモンド2表面全体に存在した凹凸の大部分が除去され、平坦で且つ鏡面仕上げされたダイヤモンド表面4を得ることができる。
本発明のダイヤモンド研磨方法の他の態様を図2に基づいて説明する。
まず、図2(a)に示すように、ダイヤモンド10からなる基板を用意する。ダイヤモンド10からなる基板の表面には、通常、凹凸が存在している。このようなダイヤモンド10からなる基板表面全体に、ダイヤモンドとは異なる材料からなる液状の塗布剤を滴下し硬化させて、表面が球面状の被膜11を形成する。
これにより、ダイヤモンド10からなる基板表面に存在する凹凸が被膜11によって埋没されるとともに、ダイヤモンド10からなる基板の表面の凹凸の程度に実質的に影響を受けることなく、滑らかな表面を有する被膜11が形成される。
次に、所定のガス雰囲気において、被膜11とダイヤモンド10の双方がエッチングし得る条件下(例えば、被膜11とダイヤモンド10のエッチング選択比がほぼ1:1になる条件下)で、ドライエッチングにより、被膜11の球面状の表面の側からエッチングを行なう。
これにより、まず被膜11が、さらに被膜11およびダイヤモンド10からなる基板の表面の凹凸が(例えば、同時に)ダイヤモンド10からなる基板上から除去され、球面状に研磨されたダイヤモンド表面を得ることができる。
その結果、図2(b)に示すように、最終的に表面が球面状に研磨されたダイヤモンドレンズ12を得ることができる。
このような方法と同様にして、図4(a)に示すようにダイヤモンド10からなる基板の背面も研磨すれば、図4(b)に示すように、両面が球面状に研磨されたダイヤモンドレンズ14を得ることも可能である。
本発明のダイヤモンドの平坦化法の一態様について、その作用機構を図5に基づいて説明する。
このような平坦化法の態様においては、図5(a)に示すように、ダイヤモンド20の表面25に、ダイヤモンドと異なる材料からなる、平坦な表面を有する被膜30を形成する。
これにより、図5(b)に示すように、ダイヤモンド20の表面25に存在する凹凸が被膜30により埋没され、平坦な被膜表面35が得られる。ここに、被膜30は、ダイヤモンド20の表面25に残存する凹凸に実質的に関係なく平坦に形成可能であるため、被膜30の膜厚はダイヤモンド20の領域ごとに異なっている。
次に、図5(c)に示すように、平坦な表面35を有する被膜30を介して、ダイヤモンド20に(被膜30の側から)イオン注入を行なう。これにより、注入イオン40が被膜30を通過した後、ダイヤモンド20の全面に、実質的に均一に導入される。
このとき、図6(d)に示すように、被膜30の膜厚が大きい領域100では、注入イオン40はダイヤモンド20内に浅く導入されるが、一方被膜30の膜厚が小さい領域105では、注入イオン40がダイヤモンド20中に深く導入される。
図6(e)に示すように、注入イオン40が導入された部分のダイヤモンドは、イオン衝撃によって結晶構造が破壊されて変性ないし変質し、例えば、非晶質化またはグラファイト化する。
次に、ダイヤモンド20の表面25から被膜30をすべて除去するとともに、イオン注入によりダイヤモンドが変質した部分45を除去する。これにより、図6(f)に示すように、ダイヤモンド20の表面25に存在した比較的大きな凹凸の大部分が、ダイヤモンドが変質した部分45として除去され、平滑な表面26が露出する。
このような平坦化の態様において、1回の平坦化処理では、ダイヤモンド20の表面26において所望の平坦度が得られない場合には、上述した平担化処理をさらに1回以上繰返して行なうことで、残存する小さな凹凸を更に平坦化することが可能であり、より平滑な表面を有するダイヤモンドを得ることができる。
また、このようなダイヤモンドの平坦化の態様に従って、図7(a)に示すように、ダイヤモンド20の表面25に、微量の金属元素の添加により注入イオンに対するダイヤモンドの阻止断面積と注入イオンに対する被膜の阻止断面積とがほぼ一致するように、被膜31を形成して平坦な表面を有する被膜31を得てもよい。
これにより、図7(b)示すように、ダイヤモンド20の表面25に存在する凹凸が被膜31により埋没され、平坦な被膜表面36が得られる。
次に、図7(c)に示すように、平坦化された表面36を有する被膜31を介して、ダイヤモンド20にイオン注入を行なう。これにより、注入イオン40が被膜31を通過した後、ダイヤモンド20の全面に実質的に均一に導入される。
このとき、図8(d)に示すように、注入イオンに対するダイヤモンドの阻止断面積および注入イオンに対する被膜の阻止断面積がほぼ一致しているので、注入イオン40が被膜表面36から同じ深さでダイヤモンドのすべての領域に効率よく導入される。
これにより、図8(e)に示すように、注入イオンが被膜表面36から同じ深さで導入された部分のダイヤモンドは、イオン衝撃によって結晶構造が破壊されて変質し、例えば非晶質化またはグラファイト化する。
次に、ダイヤモンド20の表面からコーティング31をすべて除去するとともに、イオン注入によりダイヤモンドが変質した部分45を除去する。
これにより、図8(f)に示すように、ダイヤモンド20の表面25に存在した比較的大きな凹凸の大部分が、ダイヤモンドが変質した部分45として除去されるため、1回の平坦化処理により、非常に平坦な表面27を有するダイヤモンドを得ることができる。
図9に基づき、本発明の平坦化法の他の態様を説明する(図9中の数値は、ダイヤモンド表面凹部の深さの一例を示す)。この態様においては、乾式法によりダイヤモンド表面を平坦化させるに際し、該ダイヤモンド表面凸部の減削速度を、該ダイヤモンド表面の凹部の減削速度より相対的に大きくしているため、平坦化されたダイヤモンド表面を短時間で得ることができる。換言すれば、この態様においては、(異なる材料のエッチング速度を同一とするのではなく、むしろ)ダイヤモンド表面の凸部と凹部とに対する減削速度に積極的に差をつけることにより、比較的短時間で平滑なダイヤモンド表面を得ることを可能としている。
すなわちこの態様においては、ダイヤモンド表面の凸部を相対的に早く削り、該表面の凹部を相対的に遅く削っているため、(換言すれば、削りたい部分を優先的に減削しているため)極めて平坦な表面(例えば、表面のRmax が0.5μm以下程度)でも比較的短時間で得ることが可能である。より具体的には例えば、ダイヤモンド表面の凸部と凹部にサブμm単位で研磨スピードもしくはドライエッチングスピードの差を相対的に付けることにより、凹凸の大きさ(Rmax )を例えば0.5μm以下程度にすることができる。
本実施態様において、ダイヤモンド表面凸部の減削速度(エッチング速度又は研磨速度)および該ダイヤモンド表面凹部の減削速度は、例えば、Chenらの方法(Appl. Phys. Lett.,63(5),622(1993))により測定可能である。ダイヤモンド表面凸部の減削速度をC(Å/分)とし、該ダイヤモンド表面凹部の減削速度をD(Å/分)とした場合、本実施態様においては、C/Dの比は、通常1.5以上、更には3.0以上であることが好ましい。
ダイヤモンドは、Appl. Phys. Lett.,63(5),622(1993)の公知例に知られるように、金属と反応させてカーバイド層が生成すると脆くなる。一方、ボロン等のダイヤモンドに圧縮歪みを入れる性質を有する物質をダイヤモンドに入れると堅くなることが知られている。本実施態様においては、ダイヤモンドのこれらの性質の1つ以上を利用して、ダイヤモンド表面を平坦化する。
本実施態様において、乾式法としては、接触(ないし機械的)研磨法および/又はドライエッチング法のいずれも使用可能であるが、平坦化すべき基板表面の「そり」等の影響を受けにくい点からは、ドライエッチング法を用いることが好ましい。
犠牲層としては、スピンオングラス(SOG)又はテトラエトキシシラン(TEOS)に基づく膜を用いることが好ましい。ここに、SOGとは、シリコンガラスを溶媒に溶解ないし分散させた液状ガラスをいう。SOGは、通常、200〜350℃程度の熱処理で固体化させることが可能である。犠牲層の厚さは、0.1〜10.0μm程度であることが好ましい。
本実施態様においては、上記犠牲層を均一にエッチングしてダイヤモンド表面の凸部を露出させた後、露出した該凸部に不純物を付着させ、必要に応じてアニールすることが好ましい。これにより、該不純物と凸部とを反応させて、所定の厚さを有する反応層を、平滑化すべきダイヤモンド表面に形成することができる。このような反応層(凸部)は、変質ないし変性したダイヤモンドからなるため、該凸部はエッチング又は接触研磨により、容易に除去可能である。
上記不純物としては、例えば、鉄、ニッケル、マンガン、セリウム、又はランタンから選ばれた金属が好ましく用いられる。前記不純物を導入するに際しては、イオン注入、蒸着等のドライプロセスを用いてもよく、またウエットプロセスを用いてもよい。
上記アニールは、例えば、真空中において500〜2000℃の温度で、1〜30分間行うことが好ましい。このようなアニールに基づきダイヤモンド表面凸部と不純物とを反応させることにより、ダイヤモンド表面に厚さ0.1〜1μm程度の反応層を形成可能である。
本実施態様においては、必要に応じて、前記ダイヤモンド表面の凹部に圧縮歪みを与えて、該凹部の減削速度を低減させてもよい。この場合、例えば、前記犠牲層として所定量の不純物を含む犠牲層を用いて、ダイヤモンド表面の凸部を露出させてアニールした後、ダイヤモンド表面の凹部に該不純物を混入させることが好ましい。このような不純物としては、例えば、ボロンが好ましく用いられる。
以下、図9に基づき、この態様を具体的に説明する。
図9(a)に示すように、犠牲層形成用材料としてスピンオングラスなどの有機SiO2 を用いて、ダイヤモンド51の表面に犠牲層52を形成し、ダイヤモンド表面を一旦平坦化させる。この際、ダイヤモンド表面の凹部にボロンを混入させる場合には、ボロンを多量に含んだ膜(犠牲層)を形成すればよい。
次に、図9(b)に示すように、プラズマエッチング装置等を用いて、スピンオングラス52をエッチバック(エッチングにより減削)させ、ダイヤモンド51の表面のダイヤ凸部を露出させる。これにより、ダイヤモンド51の表面の凸部のみに、所望の不純物を反応させることが可能となる。
次に、図9(c)に示すように、このように凸部を露出させた表面全体に、遷移金属等からなる、ダイヤモンドと反応する不純物53を、例えば蒸着等により塗布する。この際に用いる遷移金属としては、鉄(Fe)が好ましく用いられるが、その他にも、Ti、Ni、Mo、Ce等の遷移金属が使用可能である。
次に、図9(d)に示すように、ダイヤモンドと不純物の反応を促進させるため、必要に応じて、真空又は不活性ガスの雰囲気中でアニールを行う。アニール温度は、不純物によって反応温度が変化するため、最適な温度は不純物の種類によって決定される。これにより、凸部においてダイヤモンドと該不純物が反応し、スピンオングラスの部分は未反応となる。
また、このアニールの際に、ランプアニール炉を用いた場合には、反応部分の深さ方向の大きさを(例えば、約0.1μmから約1μmの間で)コントロールすることが可能となる。これにより、ダイヤモンド51の極く表面の部分にだけ反応部分を形成させることが可能となる。
上記のように不純物53を反応させたダイヤモンド51の表面に、ドライエッチングまたは接触研磨を施すことにより、不純物53と反応した凸部は早く(凹Bより大きい減削速度で)減削され、図9(e)に示したように、平坦な表面を持つ単結晶又は多結晶ダイヤモンドが得られる。
上記不純物の導入はイオン注入装置を用いて行うことも可能である。この場合には、SiO2 膜の部分がマスクとして機能するため、ダイヤモンド51の表面凹部には該不純物は注入されない。このようにイオン注入を用いる場合にも、不純物とダイヤモンドとを更に反応させるために、必要に応じてアニールしてもよい。
ボロンをダイヤモンド表面の凹部に導入する場合、ボロンは不純物として%オーダまで容易に混入可能である。また、ダイヤモンドの破壊は脆性破壊となる。本発明者の知見によれば、この場合、多量に不純物が混入した状態では転位が進まないと考えられる。従って、上述の平坦化のための犠牲層に多量のボロンを含有させ、平坦化した後アニールすることで、凹部に選択的にボロンを混入させることが可能となる。これにより、凸部と凹部の減削速度をコントロールすることが可能となり、短時間のエッチングないし研磨で平坦な表面を得ることができる。
以下、本発明に基づいて実施例を更に具体的に説明する。
実施例1
3インチ角シリコン基板上に成膜した、厚さ10μmの多結晶ダイヤモンドを基板として用いた。表面の粗さを調べたところ、平均表面粗さRa は2000Å(200nm)であった。
3インチ角シリコン基板上に成膜した、厚さ10μmの多結晶ダイヤモンドを基板として用いた。表面の粗さを調べたところ、平均表面粗さRa は2000Å(200nm)であった。
この基板上に、無機珪素化合物を主成分とするコーティング剤(X−Si− (OH)n )(東京応化社製OCD)を2000rpmでスピンコートし、その後400°Cで30分間ベークして、コーティング層を形成した。得られたコーティング層の厚みは6000Åであった。
この基板をドライエッチング装置中に配置し、Arガス(100%)を用いてエッチングした。エッチング速度はいずれも250Å/分で、コーティング層とダイヤモンドとのエッチング選択比は1:1であった。40分間のエッチングにより、コーティング層およびダイヤモンド表面の凹凸をエッチンして、平均表面粗さRaが100Åの鏡面ダイヤモンドを得た。
このようにして得られたダイヤモンド基板を用い、基板上に紫外線縮小投影露光機を用いてレジストによる微細パターンを形成したところ、0.5μmのパターニングが得られた。
実施例2
実施例2
3インチ角シリコン基板上に成膜した厚さ10μmの多結晶ダイヤモンドを基板として用いた。表面の粗さを調べたところ、平均表面粗さRa は2000Åであった。
この基板上に、無機珪素化合物を主成分とするコーティング剤(X−Si(OH)n)(東京応化社製OCD)を2000rpmでスピンコートし、その後400°Cで30分間ベークして、コーティング層を形成した。得られたコーティング層の厚みは6000Åであった。
この基板をドライエッチング装置中に配置し、Ar(95%)+O2 (5%)ガス系を用いてドライエッチングした。エッチング速度はダイヤモンドが280Å/分で、コーティング層が250Å/分であり、コーティング層とダイヤモンドとのエッチング選択比は1:0.9であった。40分間のエッチングにより、コーティング層およびダイヤモンド層の凹凸をエッチングすることで、平均表面粗さRa が120Åの鏡面ダイヤモンドを得た。
このようにして得られたダイヤモンド基板を用い、基板上に紫外線縮小投影露光機を用いてレジストによる微細パターンを形成したところ、0.5μmのパターニングが得られた。
実施例3
実施例3
3インチ角シリコン基板上に成膜した厚さ10μmの多結晶ダイヤモンドを基板として用いた。表面の粗さを調べたところ、平均表面粗さRa は2000Åであった。
この基板上に、有機珪素化合物を主成分とするポリイミドを5000rpmでスピンコートし、その後400°Cで30分間ベークして、コーティング層を形成した。得られたコーティング層の厚みは6000Åであった。
この基板をドライエッチング装置中に配置し、CF4 ガスを用いてドライエッチングした。エッチング速度はダイヤモンドが200Å/分で、ポリイミドからなるコーティング層が250Å/分で、コーティング層とダイヤモンドとのエッチング選択比は1:1.25であった。50分間のエッチングによって、コーティング層およびダイヤモンド層の凹凸をエッチングすることで、平均表面粗さがRa が120Åの鏡面ダイヤモンドを得た。
このようにして得られたダイヤモンド基板を用い、基板上に紫外線縮小投影露光機を用いてレジストによる微細パターンを形成したところ、0.5μmのパターニングが得られた。
実施例4
実施例4
図2(a)に示すように、5mm角ダイヤモンド10(平均表面粗さRa =2000Å)上に、無機珪素化合物を主成分とするコーティング剤(X−Si−(OH)n )(東京応化社製)を滴下し、その後400°Cで30分間ベークして、ドーム状のコーティング層11を形成した。得られたコーティング層11の最大厚みは6000Åであった。
このダイヤモンド10をエッチング装置内に配置し、Ar(95%)+O2 (5%)の混合ガスを用いてドライエッチングを行った。エッチング速度はいずれも250Å/分で、コーティング層とダイヤモンドとのエッチング選択比は1:1であった。40分間のエッチングにより、コーティング層11およびダイヤモンド10の表面の一部をエッチングすることで、図2(b)に示すような、平均表面粗さRa が100Åの片面球面状ダイヤモンドレンズ12を得た。
実施例5
実施例5
図3(a)に示すように、5mm角ダイヤモンド10(平均表面粗さRa =2000Å)上に、無機珪素化合物を主成分とするコーティング剤(X−Si−(OH)n )を複数並べて滴下し、その後400°Cで30分間ベークして、複数のドーム状のコーティング層11を形成した。得られたコーティング層11の最大厚みは1500Åであった。
このダイヤモンド10をエッチング装置内に配置し、Ar(95%)+O2 (5%)の混合ガスを用いてドライエッチングを行った。エッチング速度はいずれも250Å/分で、コーティング層とダイヤモンドとのエッチング選択比は1:1であった。10分間のエッチングにより、コーティング層11およびダイヤモンドレンズ10の表面の一部をエッチングすることで、図3(b)に示すような、平均表面粗さRa が100Åの片面球面状ダイヤモンドレンズ13を得た。
実施例6
実施例6
実施例4で得られた片面球面状ダイヤモンドレンズ12の裏面に、無機珪素化合物を主成分とするコーティング剤(X−Si−(OH)n )を滴下し、その後400°Cで30分間ベークして、ドーム状のコーティング層11を形成した。得られたコーティング層11の最大厚みは6000Åであった。
この基板をエッチング装置内に配置し、Ar(95%)+O2 (5%)の混合ガスを用いてドライエッチングを行なった。エッチング速度はいずれも250Å/分で、コーティング層とダイヤモンドとのエッチング選択比は1:1であった。40分間のエッチングにより、コーティング層11およびダイヤモンドレンズ12の裏面の一部をエッチングし、図4(b)に示すような、平均表面粗さRa が100Åの両面球面状ダイヤモンドレンズ14を得た。
実施例7
実施例7
まず、下記のようなダイヤモンドからなる3種類の基板を用意した(STEP1)。
(1) 超高圧合成法で合成された単結晶ダイヤモンドを#200(80〜100μmの砥粒)のダイヤモンドの粉末で研磨したもの
(2) 超高圧合成法で合成された単結晶ダイヤモンドをスカイフ研磨したもの
(3) 気相合成法でSi基板上に形成した多結晶ダイヤモンド
まず、上記(1)〜(3)の各基板の表面粗さを表面粗さ計(例えば、DEKTAK製)を用いて測定し、その結果を下記表1(STEP1)に示した。
次に、各基板表面に環化ゴム系フォトレジスト剤(商品名:OMR、東京応化社製)を適量滴下し、スピナーにより回転塗布を行なった。大気中、温度110℃、30分間加熱し、上記フォトレジスト剤を乾燥させて、膜厚1μm程度のレジスト膜を形成した(STEP2)。このようにして得られた各レジスト膜における表面粗さを表面粗さ計を用いて測定し、その結果を表1(STEP2)に示した。
次に、イオン注入装置を用いて、上記(1)〜(3)の各基板上に形成されたレジスト膜表面から、Arイオンを加速電圧50keV、500keV、1MeV、2MeVでドーズ量にして1015cm-2でイオン注入した。これにより、各基板表面に残存する凹凸にArイオンが注入され、その部分が非晶質化またはグラファイト化した。イオン注入後、レジスト膜を剥離剤により各基板上からすべて除去した。
次に、基板温度を800℃に設定し、非晶質化またはグラファイト化した部分を水素を含むガスのプラズマ中に晒して、非晶質化またはグラファイト化した部分を各基板表面から除去してダイヤモンド表面の平坦化を行なった(STEP3)。得られた各基板の表面粗さを表面粗さ計を用いて測定した。測定結果を下記表1(STEP3)に併せて示す。
上記表1に示したように、上述のような平坦化処理を施すことにより、上記 (1)〜(3)のすべてのダイヤモンド基板の表面粗さを非常に小さくすることができた。すなわち、本発明の平坦化処理による平坦化効果が大きいことが確認された。
実施例8
実施例8
実施例7において1回の平坦化処理が施された(1)〜(3)の各基板を用意した(STEP4)。したがって、下記表2(STEP4)に示した各基板の表面粗さは、表1(STEP3)に示した各基板の表面粗さと等しいものとして、以下の処理を行った。
次に、実施例7と同様に、各基板上にレジスト膜を形成した(STEP5)。得られた各レジスト膜における表面粗さを測定した。得られた結果を下記表2 (STEP5)に示す。
次に、イオン注入装置を用いて、上記(1)〜(3)の各基板上に形成されたレジスト膜表面から、Arイオンを加速電圧50keV、500keV、1MeV、2MeVでドーズ量にして1015cm-2でイオン注入した。
イオン注入後、実施例7と同様に、レジスト膜を各基板上からすべて除去し、イオン注入により非晶質化またはグラファイト化した部分を、水素を含むガスのプラズマ中に晒して、各基板表面から除去し、ダイヤモンド表面の平坦化を行なった(STEP6)。得られた各基板の表面粗さを測定した。得られた結果を下記表2(STEP6)に併せて示す。
上記表2に示したように、上述したような平坦化処理を2回繰返して行なうことにより、1回の平坦化処理を行なった場合に比べて、各基板の表面粗さを更に小さくすることができることが判明した。
特に、本実施例においては、基板表面に2000Åの表面粗さを有していた多結晶ダイヤモンドからなる基板に、2回の平坦化処理を行なうことにより、表面粗さを10分の1程度まで平坦化できることが示された。すなわち、平坦化の効果が非常に大きいことが確認された。
実施例9
実施例9
実施例7と同様に、上記(1)〜(3)の各基板を用意し(STEP1)、次いで各基板上にレジスト膜を形成した(STEP2)。したがって、表3(STEP1)に示した各基板の表面粗さは、表1(STEP1)に示した各基板の表面粗さと等しく、また表3(STEP2)に示した各基板のレジスト膜における表面粗さは、表1(STEP2)に示した各基板のレジスト膜における表面粗さと等しいものとして、以下の処理を行った。
次に、イオン注入装置を用いて、(1)〜(3)の各基板上に形成されたレジスト膜表面から、Arイオンを加速電圧50keV、500keV、1MeV、2MeVでドーズ量にして1015cm-2でイオン注入した。イオン注入後、レジスト膜を各基板上からすべて除去し、各基板の表面を露出させた。
本実施例では、イオン注入によりダイヤモンドが非晶質化またはグラファイト化した部分を各基板表面から除去する際に、プラズマエッチングを使用せず、クロム酸によるウェットエッチングを行なった。
上記ウェットエッチングにより、基板表面から非晶質化またはグラファイト化した部分を除去し、ダイヤモンド表面の平坦化を行なった(STEP3)。得られた各基板の表面粗さを測定した。得られた結果を下記表3(STEP3)に併わせて示す。
表3に示したように、クロム酸によるウェットエッチングを用いて平坦化処理を行なった場合においても、イオン注入によりダイヤモンドが非晶質化またはグラファイト化した部分を基板表面から効率よく除去することができ、各基板の表面粗さを非常に小さくすることができることが確認された。
実施例10
実施例10
気相合成法でSi基板上に形成された多結晶ダイヤモンドからなる基板のみを用いて、実施例7と同様の平坦化処理を行なった。本実施例では、注入イオンに対する金属元素添加による平坦化処理の効果を調べるため、Al、W、Mo、Fe、Auがそれぞれ1020cm-3添加され、均一に混合されたフォトレジスト剤(商品名:OMR、東京応化社製)を使用した。
実施例7と同様に、各基板上に各金属元素が添加されたレジスト剤または無添加のレジスト剤を、各々スピナーで回転塗布し、レジスト膜を形成した(STEP2)。このようにして、得られたレジスト膜表面における表面粗さを測定し、すべて100Å以下となるようにした。
次に、イオン注入装置を用いて、各基板上に形成されたレジスト膜表面から、Arイオンを加速電圧50keV、500keV、1MeV、2MeVでドーズ量にして1015cm-2でイオン注入を行なった。イオン注入後、レジスト膜を各基板上から除去し、イオン注入により非晶質化またはグラファイト化した部分を、水素を含むガスのプラズマ中に晒して、各基板表面から除去しダイヤモンド表面の平坦化を行なった(STEP3)。得られた各基板表面粗さを測定し、その結果を下記表4(STEP3)に併せて示した。
上記表4に示したように、金属元素が添加されたレジスト剤を用いることにより、金属元素を一切添加しないレジスト剤を用いた場合に比べて、更に基板表面粗さを小さくできることが確認された。本発明者の知見によれば、レジスト膜内に金属元素が均一に添加されることで、イオン注入するArイオンに対するレジスト膜の阻止断面積と、ダイヤモンドからなる各基板の阻止断面積とがほぼ一致するためであると推定される。
実施例11
実施例11
実施例10と同様に、気相合成法でSi基板上に形成された多結晶ダイヤモンドからなる基板を用いて、実施例7と同様の平坦化処理を行なった。
ただし本実施例では、基板上にレジスト膜を形成する代わりに、ゾルーゲル法により基板上にSiO2 膜を形成した。
また、本実施例では、金属元素添加による平坦化の効果を調べるため、Al、W、Mo、Fe、Auがそれぞれ1020cm-3添加され均一に混合されたゲルを使用した。
まず、各基板上に、金属元素が添加されたSiO系ゾルまたは金属元素無添加のSiO系ゾルを各々スピナーで回転塗布した。ゾルーゲル法に従い、加熱を施すことで、基板上のSiO系ゾルを固化させてSiO2 からなるゲル層を形成した(STEP2)。このようにして得られたSiO2 層表面における表面粗さを測定し、すべて100Å以下になるようにした。
次に、イオン注入装置を用いて、各基板上に形成されたSiO2 層表面から、Arイオンを加速電圧50keV、500keV、1MeV、2MeVでドーズ量にして1015cm-2でイオン注入した。イオン注入後、SiO2 層をHF処理により基板上からすべて除去し、各基板の表面を露出させた。その後、ダイヤモンドが非晶質化またはグラファイト化した部分を、水素を含むガスのプラズマ中に晒して、各基板表面から除去し、平坦化を行なった(STEP3)。得られた各基板の表面粗さを測定し、その結果を下記表5(STEP3)に併せて示した。
上記表5に示したように、基板上にゾルーゲル法に従ってSiO2 層を形成して平坦化処理を行なった場合にも、基板の表面粗さを非常に小さくすることができることが確認された。また、種々の金属元素が添加されたゾル剤を用いることで、基板の表面粗さをより小さくすることができることが確認された。本発明者の知見によれば、これはSiO2 層の阻止断面積とダイヤモンドからなる基板の阻止断面積がほぼ一致するためであると推定される。
上述した、実施例10および実施例11で得られた結果に基づき、注入イオンの種や注入条件により、レジスト剤に添加する金属元素の種およびその添加量を適切に設定することで、1回の平坦化処理を施すだけでも、所望の平坦度を有する基板を実現できることが判明した。
実施例12
実施例12
実施例10と同様に、気相合成法でSi基板上に形成された多結晶ダイヤモンドからなる基板のみを用いて、実施例7と同様の平坦化処理を行なった。
ただし、本実施例では、Ar、Ne、He、Al、Xe、Cuイオンを用いてイオン注入した。
実施例7と同様に、各基板上にレジスト剤を各々スピナーで回転塗布し、レジスト膜を形成した(STEP2)。このようにして得られたレジスト膜表面における表面粗さを測定し、すべて100Å以下になるようにした。 次に、イオン注入装置を用いて、各基板上に形成されたレジスト膜表面からAr、Ne、He、Al、Xe、Cuの各イオンを、それぞれ加速電圧50keV、500keV、1MeV、2MeVでドーズ量にして1015cm-2でイオン注入を行なった。イオン注入後、レジスト膜を各基板上から除去し、イオン注入によりダイヤモンドが非晶質化またはグラファイト化した部分を、水素を含むガスのプラズマ中に晒して、各基板表面から除去し平坦化を行なった(STEP3)。得られた各基板の表面粗さを測定し、その結果を下記表6(STEP3)に併せて示した。
上記表6に示したように、使用したすべての種類のイオンで、基板の表面粗さを大幅に小さくすることができ、平坦化の効果が確認された。
実施例13
実施例13
図9(a)に示すように、(100)面の単結晶ダイヤモンド基板51上に、4000回転(rpm)のスピードで、スピンオングラス52を0.7μm塗布した。次いで、上記スピンオングラス52を焼結させるため、N2 雰囲気中350℃20分間アニールした。
更に、図9(b)に示すように、リアクティブエッチング装置を使い、フロンガス(CF4 )50sccm、13.56MHzのRFパワー300Wの条件で10分間、上記により焼結したスピンオングラス(SiO2 )をエッチングした。これにより、0.4μmスピンオングラスをエッチバックして、ダイヤモンド表面の凸部を露出させた。
図9(c)に示すように、このように露出させた凸部に、電子ビーム蒸着装置を用いて、鉄(Fe)を0.2μm蒸着した。
次いで図9(d)に示すように、アルゴンガス雰囲気中、1500℃、10秒のランプアニールを行って、上記鉄とダイヤモンド凸部とを反応させた。
更に、リアクライブイオンエッチング装置を用い、アルゴン(Ar)80sccm、酸素(O2 )20sccm、13.56MHzのRFパワー300Wの条件で60分間エッチングし、反応部分の約0.3μm程度を除去した。この条件では、ダイヤモンドの鉄との反応部分(凸部)では、未反応部分(凹部)に比べ、10倍エッチング速度が速かった。更に、SiO2 を除去して、図9(e)に示すような平滑なダイヤモンド表面を得た。このようにして得たダイヤモンド表面の平滑度を測定したところ、Rmax で0.1μm以下であった。
1…基板、2,10,20,51…ダイヤモンド、3,11,30…被膜、4,20,25…ダイヤモンド表面、12,14…ダイヤモンドレンズ、35,36…被膜表面、40…注入イオン、45…ダイヤモンド変質部分、51…ダイヤモンド基板、52…犠牲層、100…被膜の膜厚が大きい領域、105…被膜の膜厚が小さい領域。
Claims (1)
- ダイヤモンドの表面に、該ダイヤモンドと異なる材料を含む液状の塗布剤を滴下し硬化させて、ダイヤモンド上に表面が球面状の被膜を形成した後、
ドライエッチングにより、前記被膜とダイヤモンドとの双方をエッチングし得る条件下で、前記被膜およびダイヤモンド表面の凹凸を除去して、球面状のダイヤモンド表面を得ることを特徴とするダイヤモンドの研磨方法。
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Cited By (2)
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-
2004
- 2004-01-13 JP JP2004005987A patent/JP2004155653A/ja active Pending
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