JP2004154942A - ポリエチレンシートおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空成形、圧空成形が可能であり、食品、医療等の分野で使用される容器に好適なポリエチレンシートおよびこのようなシートを低コストで、生産性よく製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)を含む最外層1,1と、これらの間に密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)を含む内層2とを有するインフレーション成形法によるシートであって、最外層の合計の厚さが内層の厚さ1に対して1〜20であり、厚さ0.4mm〜5mmであるポリエチレンシート;およびインフレーション成形法にて高密度ポリエチレン(A)からなる最外層とエチレン系重合体(B)からなる最内層とを有する中空状のチューブを成形し、これをニップロールで挟み潰すポリエチレンシートの製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空成形、圧空成形が可能なポリエチレンシートおよびその製造方法に関し、特に、乳等省令に適合し、食品、医療等の分野で使用される容器に好適なポリエチレンシートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
牛乳、乳製品等の食品、医薬品の容器としては、樹脂中の添加剤、低分子量物等が内容物(被接触物)に移行せず、内容物の臭気や味覚への影響がないクリーンな容器が要望されている。クリーンな容器の材料としては、添加剤無添加にすることによって乳等省令等に適合することができるポリエチレンが注目されている。
【0003】
しかしながら、ポリエチレンは結晶性が高いため、ポリエチレンシートは成形のために加熱すると急激に軟化して垂れ下がってしまう。このようにポリエチレンシートは耐ドローダウン性が悪いため、ポリエチレンシートからは、真空成形法や圧空成形法による成形が難しく、特にカップ状等の薄肉容器の成形は困難であった。このため、真空成形や圧空成形に用いられるシートには、一般にポリスチレンやポリプロピレンが使用されていた。
【0004】
また、従来のTダイ法によるシート成形では、樹脂を広く流れさせる必要があるため、成形温度を220〜230℃の高温に設定しないと成形が難しく、ポリエチレンの熱劣化を防ぐための酸化防止剤や触媒に起因するハロゲンを除くハロゲン中和剤等の添加剤を配合せざるを得なかった。そのため、ポリエチレンシートの食品、医療等の分野への使用が制限されているのが現状である。
【0005】
真空成形、圧空成形可能で、添加剤無添加が可能なポリエチレンシートとしては、高密度ポリエチレンと特定の線状低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物を、空冷インフレーション法により成形した単層シートが、特開2001−226496号公報(特許文献1)に提案されている。
【0006】
しかしながら、このような単層シートにおいては、真空成形を安定して行うためには樹脂組成物を高密度にする必要がある一方、空冷インフレーション法により成形された中空状のチューブを挟み潰したり、複数枚のシートを接合して厚手のシートとするためには樹脂組成物を低密度にして接着性を上げる必要があり、真空成形性と接着性とのバランスをとることが難しかった。また、単層シートは、腰が弱く(剛性が低く)、真空成形や圧空成形によるカップ状の容器等の成形体には不向きであるという問題もあった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−226496号公報(第4−14頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、耐ドローダウン性が良好で、真空成形、圧空成形が可能であり、樹脂の熱劣化が少なく、添加剤無添加が可能な厚手のポリエチレンシート、およびこのようなシートを低コストで、生産性よく製造することができる製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、乳等省令に適合し、食品、医療等の分野で使用される容器に好適なポリエチレンシートおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のポリエチレンシートは、密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)を含む最外層と、2つの最外層の間に、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)を含む内層とを有するインフレーション成形法によるシートであって、内層以外の厚さが、内層の厚さ1に対して1〜20の範囲であり、全体の厚さが0.4mm〜5mmであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のポリエチレンシートは、前記最外層と内層との間に、高分子量ポリエチレンからなる層を有することを特徴とするものである。
また、本発明のポリエチレンシートは、前記最外層と内層との間に、接着性樹脂からなる層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層および接着性樹脂からなる層をこの順序で有することを特徴とするものである。
また、本発明の成形体は、本発明のポリエチレンシートを真空成形法、圧空成形法または真空・圧空成形法で成形してなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のポリエチレンシートの製造方法は、空冷インフレーション成形法によって、密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)からなる最外層と、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)からなる最内層とを有する中空状のチューブを成形し、このチューブをニップロールで挟み潰すことを特徴とする。
また、本発明のポリエチレンシートの製造方法においては、ブローアップ比1.2〜6の範囲で空冷インフレーション成形を行うことが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における高密度ポリエチレン(A)としては、その密度が0.935g/cm 以上のものであれば各種のものを利用することができる。具体的には、エチレンのみからなるホモポリマー、エチレンと他のモノマー(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン)とからなる共重合体、あるいはエチレンと2種以上のモノマーからなる多元共重合体などを例示することができる。
【0013】
高密度ポリエチレン(A)の密度が0.935g/cm 未満では、得られるポリエチレンシートの腰の強さ、滑りやすさなどが損なわれる。高密度ポリエチレン(A)の密度は、好ましくは0.940g/cm 以上である。
また、高密度ポリエチレン(A)のメルトフローレート(以下MFRと記す)は、0.01〜5g/10分が好ましく、0.05〜30g/10分がより好ましく、0.1〜10g/10分が最も好ましい。MFR(190℃)が0.01g/10分未満では、押出成形性が悪くなる傾向にあり、50g/10分を超えると、インフレーション成形時の樹脂の引き上げに問題を生じることがある。
【0014】
また、高密度ポリエチレン(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30の範囲である。Mw/Mnが3未満では、インフレーション成形が困難となる傾向にあり、Mw/Mnが50を超えると、低分子量成分の表面ブリードが問題となることがある。
ここで、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0015】
高密度ポリエチレン(A)の製造に用いられる触媒としては、フィリップス触媒、チーグラー触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
高密度ポリエチレン(A)は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低・中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm G、好ましくは常圧〜20kg/cm Gであり、高圧法の場合は通常1500kg/cm G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度であり、高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度である。また、重合方法は、一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0016】
本発明におけるエチレン系重合体(B)は、密度0.940g/cm 未満の低密度のエチレン系重合体である。このようなエチレン系重合体としては、例えば、低圧法低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレンコポリマーなどが挙げられる。
【0017】
ここで、低圧法低密度ポリエチレンとは、チーグラー触媒、メタロセン触媒の存在下、低圧法でエチレンとα−オレフィンを共重合させて得られるエチレン共重合体である。
また、高圧法低密度ポリエチレンとは、高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレンである。
【0018】
低圧法低密度ポリエチレンのα−オレフィンとは、炭素数が3〜20、好ましくは3〜12のものであり、具体的には、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲である。
【0019】
エチレン系重合体(B)の密度は、0.940g/cm 未満、好ましくは0.86g/cm 以上0.940g/cm 未満の範囲である。密度が0.940g/cm 以上では、空冷インフレーションにより成形された中空状のチューブを挟み潰す際の接着性が不十分となる。
【0020】
また、エチレン系重合体(B)のMFRは、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.03〜30g/10分、特に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では、成形加工性が劣る傾向にあり、MFRが50g/10分を超えると、引裂強度、耐衝撃性が劣る傾向にある。
【0021】
また、エチレン系重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2.0〜3.0、さらに好ましくは2.5〜3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣る傾向にあり、Mw/Mnが4.5を超えると、引裂強度、耐衝撃性が劣る傾向にある。
【0022】
以上のようなエチレン系重合体(B)の中でも、メタロセン触媒の存在下にエチレンを単独重合、またはエチレンとα−オレフィンを共重合させて得られるエチレン(共)重合体が本発明では好適に用いられる。メタロセン触媒は、塩素含有量が少なく、触媒に起因するハロゲンを除くハロゲン中和剤の添加量を抑えることができる。
さらに、エチレン系重合体(B)は、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下にエチレンを単独重合、またはエチレンとα−オレフィンを共重合させて得られる直鎖状のエチレン(共)重合体であることが望ましい。このような直鎖状のエチレン(共)重合体は、分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、ヒートシール性、耐熱ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
【0023】
本発明におけるエチレン系重合体(B)は、特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で製造することが望ましい。
a1:一般式Me (OR 4−p−q−r で表される化合物(式中Me はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R およびR はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me (OR z−m−n で表される化合物(式中Me は周期律表第I〜III 族元素、R およびR はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X はハロゲン原子または水素原子(ただし、X が水素原子の場合はMe は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0024】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me (OR 4−p−q−r で表される化合物の式中、Me はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R およびR はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。pおよびqはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0025】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR) 化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等があげられる。
【0026】
上記触媒成分a2の一般式Me (OR z−m−n で表される化合物の式中Me は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R およびR はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素 などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X が水素原子の場合はMe はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0027】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0028】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0029】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0030】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
SiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0031】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0032】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0033】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0034】
ホウ素化合物としては、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム(トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム(ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0035】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−V、SiO−MgO、SiO−Cr等が挙げられる。これらの中でもSiOおよびAlからなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0037】
エチレン系重合体(B)は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm G、好ましくは常圧〜20kg/cm Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度であり、高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度である。また、重合方法は、一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0038】
エチレン系重合体(B)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンを含まない触媒を使用して製造することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない(ND:2ppm以下)ものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン(共)重合体を用いることにより、従来のようなハロゲン中和剤を使用する必要がなくなり、化学的安定性、衛生性が優れ、特に食品の分野において好適に活用されるポリエチレンシートを提供することができる。
【0039】
本発明においては、高密度ポリエチレン(A)やエチレン系重合体(B)に酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、有機系あるいは無機系顔料、造核剤、架橋剤などの公知の添加剤が配合されていてもよいが、これらの添加剤がない、もしくは、高密度ポリエチレン(A)やエチレン系重合体(B)に添加剤が配合されたとしても、配合された添加剤が実質的に内容物等の被接触物に移行しない添加剤であることが望ましい。
本発明においては、外部に溶出してしまうような添加剤、例えば、内容物が液体の場合は、該液体に溶出されてしまうような添加剤、臭気が移行してしまう添加剤、あるいは時間とともにシート表面に偏在するような添加剤が、高密度ポリエチレン(A)やエチレン系重合体(B)に含まれていないことにより、クリーンなポリエチレンシート、容器等の成形体を提供することが可能となる。
【0040】
本発明における、実質的に被接触物(内容物)に移行しない添加剤とは、有機あるいは無機フィラーのような充填剤であって、被接触物を変質させず、かつ本発明のポリエチレンシートの特性を本質的に阻害しない範囲で添加が可能な添加剤である。なお、乳等省令ではステアリン酸カルシウムの添加は認められているので、ステアリン酸カルシウムも被接触物(内容物)に移行しない添加剤と同様に扱うことができる。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カリオン、アルミナ、水酸化アルミニウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ、ガラスフレーク、ゼオライト、珪藻土、パーライト、パーミキュライト、シラスバルーン、ガラスマイクロフェアー、フライアッシュ、ガラスビーズなどが挙げられる。
有機フィラーとしては、ポリメチルメタクリレート架橋物、ポリエチレンテレフタレート架橋物、フェノール樹脂その他の合成樹脂の粉末および微小ビーズ、木粉、パルプ粉等が挙げられる。
【0041】
本発明のポリエチレンシートは、例えば、図1に示すように、高密度ポリエチレン(A)からなる最外層1,1と、2つの最外層1,1の間に、互いにブロッキングまたは部分融着したエチレン系重合体(B)からなる内層2,2とを有する4層構造のものである。
また、本発明のポリエチレンシートの他の例としては、図2に示すように、高密度ポリエチレン(A)からなる最外層1,1と、2つの最外層1,1の間に、2つのエチレン系重合体(B)からなる層が互いに融着して一体化したエチレン系重合体(B)からなる内層2とを有する3層構造ものが挙げられる。
【0042】
また、最外層と内層との間に、その他の層を介在させてもよい。例えば、高密度ポリエチレン(A)からなる最外層(略号HD)とエチレン系樹脂(B)からなる内層(略号LLD)との間に、バランスフィルムグレードのような高分子量の高密度ポリエチレンからなる層(略号バランスフィルムグレード)を設け、6層構造(HD/バランスフィルムグレード/LLD/LLD/バランスフィルムグレード/HD)または5層構造(HD/バランスフィルムグレード/LLD/バランスフィルムグレード/HD)としてもよい。高分子量の高密度ポリエチレンは、溶融張力が高いため、ドローダウンしにくく、真空・圧空成形性に優れるものの、酸化防止剤が添加されているので、これを最外層に使用すると、ポリエチレンシートを食品用に使用することが難しくなる。したがって、高分子量の高密度ポリエチレンよりも外側に、添加剤無添加の高密度ポリエチレンからなる層を設けることが好ましい。ここで、高分子量ポリエチレンとは、メルトフローレートが0.1g/10分以下、好ましくは0.05g/10分以下のものである。メルトフローレートが0.1g/10分を超えると、高分子量ポリエチレンの特徴である高溶融張力が得にくい。
また、高分子量の高密度ポリエチレンのかわりに、両面から接着性樹脂からなる層で挟まれた、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)からなる層を設けることもできる。この場合、シート全体としては、10層構造(HD/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/LLD/LLD/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/HD)または9層構造(HD/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/LLD/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/HD)となり、酸素不透過性に優れたシートを提供することができる。ここで、接着性樹脂としては、例えば、ポリエチレンを無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリエチレンなどが挙げられる。
【0043】
本発明のポリエチレンシートの厚さは、0.4mm〜5mmである。厚さが0.4mm未満では、腰がなく、容器として不適当であり、厚さが5mmを超えると、インフレーション成形が困難となる。
また、本発明のポリエチレンシートにおける内層の厚さと内層以外の厚さとの比は、内層の厚さ1に対して、内層以外の厚さが1〜20の範囲である。内層の厚さ1に対して内層以外の厚さが1未満では、腰がなく、容器として不適当であり、内層の厚さ1に対して内層以外の厚さが20を超えると、内層による接着力が弱くなる。
【0044】
本発明のポリエチレンシートの弾性率は、好ましくは450〜1200MPa、より好ましくは500〜1200MPaの範囲である。弾性率が450MPa未満では、シートの熱成形時や容器としての剛性が不十分となる傾向にある。
弾性率が1200MPaを超えると、第二次成形することが難しいことがある。
ここで、弾性率は、ASTM D882に準拠して測定された値である。
【0045】
本発明のポリエチレンシートは、インフレーション成形法で製造されるものである。すなわち、本発明のポリエチレンシートの製造は、空冷法インフレーションフィルム製造装置で実行可能であり、例えば、高密度ポリエチレン(A)およびエチレン系重合体(B)を、融点以上〜200℃の温度、好ましくは融点以上〜180℃、ブローアップ比1.2〜6で押出機よりサーキュラーダイを通して共押出し、形成された中空状のチューブを空冷式エアーリングより吹き出す空気に接触させて冷却し、ニップロールで挟み潰して最内層同士をブロッキングまたは一部融着させて内層とする方法;各材料をサーキュラーダイを通して共押出して形成された中空状のチューブを空冷式エアーリングより吹き出す空気に接触させて冷却し、最内層のエチレン系重合体(B)の融点よりも高い温度の状態でニップロールで挟み潰し、最内層同士を接着、一体化してシートの内層とする方法;各材料をサーキュラーダイを通して共押出して形成された中空状のチューブを空冷式エアーリングより吹き出す空気に接触させて冷却し、固化させた後、加熱したニップロールで挟み潰し、最内層同士を接着、一体化してシートの内層とする方法によって行われる。このような方法により従来、困難であった空冷インフレーション法による厚手のポリエチレンシートの成形が可能となる。
【0046】
本発明のポリエチレンシートの製造方法においては、中空状のチューブの最内層がエチレン系重合体(B)からなる層とされ、最外層が高密度ポリエチレン(A)からなる層とされる。中空状のチューブの最内層をエチレン系重合体(B)からなる層とすることで、中空状のチューブ挟み潰す際に、最内層が接着層の役割を果たす。また、中空状のチューブの最外層を高密度ポリエチレン(A)とすることで、中空状のチューブ挟み潰す際に、ニップロールにシートがくっついてしまうことがない。
【0047】
空冷インフレーション成形におけるブローアップ比は、1.2〜6の範囲が好ましい。ブローアップ比を高くすることにより、得られるポリエチレンシートに収縮応力が生じ、真空成形、圧空成形の加熱時における垂れ下がり(ドローダウン)が小さくなる。従来の厚手のシートは、キャスティング(Tダイ法)で製造されていたため、加熱時に垂れ下がりやすかったが、本発明における、空冷インフレーション成形法によるシートは、加熱時における垂れ下がりが小さく、真空成形、圧空成形に好適である。耐ドローダウン性を考慮すると、ブローアップ比は、3〜6の範囲がより好ましい。
【0048】
このように空冷インフレーション成形法によってポリエチレンシートを製造することによって、▲1▼Tダイ法で得られたポリエチレンシートのように、加熱時に垂れ下がったり、成形時に皺ができたりしないので、真空成形、圧空成形が可能となる、▲2▼低温成形が可能であり、樹脂の熱劣化が少ない、▲3▼低温成形が可能であり、添加剤フリーで成形でき、内容物に悪影響を与えない容器を得ることができる、▲4▼シートの幅に合わせてブローアップ比を調節し、サイズ合わせのための耳のスリットを不要にでき、Tダイ法に比べ生産性が非常によい、▲5▼耳ロスがなく、経済性に優れる(低コストである)という利点が得られる。
【0049】
本発明の成形体としては、本発明のポリエチレンシートを真空成形または圧空成形してなる容器、ボトル、トレー、カップ等が挙げられる。
本発明の成形体の主要用途である容器は、食品、飲料、洗剤、薬剤、医療用輸液、化粧品、入浴剤などに用いられる。
【0050】
以上説明した本発明のポリエチレンシートにあっては、密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)からなる最外層と、2つの最外層の間に、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)からなる内層とを有するするインフレーション成形法によるシートであるので、耐ドローダウン性に優れる。そして、耐ドローダウン性に優れることから、真空成形、圧空成形によって成形品を成形しても、成形品に皺、偏肉、穴あきなどの不良が発生しにくい。
また、耐ドローダウン性に優れる上に、内層以外の厚さが、内層の厚さ1に対して1〜20の範囲であり、シートの厚さが0.4mm〜5mmであるので、このようなポリエチレンシートは、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形に好適である。
【0051】
また、本発明のポリエチレンシートは、空冷インフレーション法により得られるシートであるので、低温で成形できる。低温でポリエチレンシートの成形を行えば、熱による樹脂の熱劣化が起きにくく、酸化防止剤を添加する必要がなくなる利点を有する。また、低温で成形されることにより、樹脂のブロッキングも少なくなるので、アンチブロッキング剤なども添加する必要がない。また、ハロゲンを含まない触媒を用いて高密度ポリエチレン(A)やエチレン系重合体(B)を製造すれば、ハロゲン中和剤(酸吸収剤)を添加する必要がない。
このように、本発明のポリエチレンシートは、添加剤無添加が可能となっており、そして、このようなポリエチレンシートから得られる成形体は、内容物(被接触物)に添加剤が移行せず、クリーンな成形体となる。そして、樹脂の熱劣化による内容物の臭気や味覚への影響、および添加剤の以降による内容物の臭気や味覚への影響がないので、本発明のポリエチレンシートは、食品、医療等の分野において使用される容器に好適である。
【0052】
また、本発明のポリエチレンシートの製造方法は、空冷インフレーション成形法によって、高密度ポリエチレン(A)からなる最外層と、エチレン系重合体(B)からなる最内層とを有する中空状のチューブを成形し、このチューブをニップロールで挟み潰す方法であるので、耐ドローダウン性が良好で、真空成形、圧空成形が可能であり、樹脂の熱劣化が少なく、添加剤無添加が可能な厚手のポリエチレンシートを、低コストで、生産性よく製造することができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0054】
本実施例における物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムは東ソーのGMHHR−H(S)を使用した。
[ハロゲン濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下については、実質的に含まないものとし、ND(non−detect)とした。
【0055】
<空冷インフレーション成形時の評価>
[内面のブロッキング性]
シートから幅50mmのサンプルを切り出し、サンプルの両面の中央部に幅20mmのセロハンテープを貼り付け、手でセロハンテープを引き剥がして状態を観察し、1シートについて5点評価した。
◎:全く剥がれない。
○:剥がれないが、界面がめくれて白化する。
△:一部サンプルに剥がれが認められる。
×:相当に剥離。
[インフレ成形性]
空冷インフレーション成形時の成形性を、以下の基準で評価した。
◎:非常に安定して成形が可能である。
○:樹脂を安定的に引き上げることができ、フロストが揺らがずに成形が可能である。
△:フロストが揺らぐが、一応成形ができる。
×:樹脂を安定的に引き上げることができず成形ができない。
【0056】
<ポリエチレンシートの評価>
[弾性率]
ASTM D882に準拠した。
[透明性(ヘイズ)]
ASTM D1003に準拠した。
【0057】
[熱成形性]
熱成形性の評価として、耐ドローダウン性と真空成形性の評価を行った。
1)耐ドローダウン性
内寸30cm角のステンレス製字具にポリエチレンシートをクランプし、固定した。あらかじめ210℃に加熱し、この温度を保持したオーブンに、ポリエチレンシートを水平に字具ごと挿入した。ポリエチレンシートが溶融とともに不定形に変化した後、ポリエチレンシートの分子配向および溶融張力により、張戻った時刻(T1)からポリエチレンシート中央部が加熱溶融により垂れ下がり、ポリエチレンシート下部表面が字具の水平線より15mm垂れ下がった時刻(T2)までを測定し、耐ドローダウン性の指標としてT2−T1(sec)を求めた。この値が大きいほど、熱成形時の垂れ下がりが少なく、成形が容易となる。
【0058】
2)真空成形性
(株)浅野研究所製、形式FLX−02を用い、下記条件にてプリン容器形状(開口部直径64mm、底部直径50mm、深さ52mm)の真空成形を行った。成形品の外観により、皺の有無、偏肉の善し悪し、穴あきの発生といった真空成形性の評価を実施した。
(成形条件)
プラグアシスト:有り(アシスト率43%)、
上ヒーター温度:450℃、
下ヒーター温度:450℃、
加熱時間:15秒、
上テーブル遅れ:1秒、
上テーブル時間:10秒、
下テーブル遅れ:0.8秒、
下テーブル時間:10秒、
金型温度:60℃、
真空遅れ:3秒、
冷却時間:10秒、
離型時間:1.7秒。
【0059】
[臭気および衛生性]
ポリエチレンシートを成形した容器に蒸留水500mlを充填し、40℃オーブン中にて72時間保存したのち室温まで冷却し、内容液を20mlを磁器製の器に移し、浮遊物の有無と臭気および味覚について官能試験を実施した。
◎:良い。
○:比較的良い。
△:やや不良。
×:不良。
【0060】
[総合評価]
◎:シートについての特性を満たし、かつクリーン性に優れる。
○:成形性や得られたポリエチレンシートについての特性、例えば、均一性(ムラがなく)、剛性(弾性率等)などについて実用上問題がない。
△:ポリエチレンシートとしてシート化が可能であるが、シート特性(弾性率等)が不十分である。
×:ポリエチレンシートを成形できない。
【0061】
実施例および比較例に用いた各樹脂は以下の通りである。
<(A)高密度ポリエチレン>
HD−1:フィリップス触媒により製造、密度=0.957g/cm 、MFR=0.3g/10分、Mw/Mn=7.1、添加剤(酸化防止剤、中和剤)なし。
HD−2:チーグラー触媒、2段重合により製造、密度=0.950g/cm 、MFR=0.04g/10分、Mw/Mn=3.0、添加剤(酸化防止剤、中和剤)あり。
HD−3:チーグラー触媒により製造、密度=0.956g/cm 、MFR=0.7g/10分、Mw/Mn=4.5、添加剤(酸化防止剤、中和剤)あり。
HD−4:フィリップス触媒により製造、密度=0.948g/cm 、MFR=0.2g/10分、Mw/Mn=7.5、添加剤(酸化防止剤、中和剤)なし。
HD−5:チーグラー触媒により製造、密度=0.948g/cm 、MFR=7.0g/10分、Mw/Mn=5.2、添加剤(酸化防止剤、中和剤)あり。
【0062】
<(B)エチレン系重合体>
[エチレン・ヘキセン−1共重合体(LL−1〜3)]
(固体触媒の調製)
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml,テトラエトキシジルコニウム(Zr(OEt) )22gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度2.5mmol/ml)を3200ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(グレース社製、#952、表面積300m /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒を得た。
【0063】
(気相重合)
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(LL−1、LL−2、LL−3)を得た。その物性を表1に示した。
【0064】
[一般のメタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(LL−4)]窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、さらにビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=500)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を6kg/cm に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(LL−4)を製造した。その物性を表1に示した。
【0065】
[市販の線状低密度ポリエチレン(LL−5)]
物性を表1に示した。
[高圧ラジカル法による低密度ポリエチレン]
LD:密度=0.920g/cm 、MFR=1.0g/10分、添加剤(酸化防止剤、中和剤)なし。
【0066】
【表1】
Figure 2004154942
【0067】
[成形機]
2種2層共押出成形機(押出機−1:65mmφ押出機、L/D=30、モーター40kW。押出機−2:55mmφ押出機、L/D=28、モーター30kW。ダイ:2種2層ダイ、150mmφ。エアーリング:多重吹出リップ方式。)
[成形条件]
シリンダー温度:160〜190℃、ブローアップ比(BUR):1.2〜4.0。
【0068】
[実施例1〜8、比較例1〜6]
表1に示す高密度ポリエチレン(A)を上記2種2層共押出機の外層から、表1に示すエチレン系重合体(B)を2種2層共押出機の内層から押出し、先に示した成形条件下で空冷インフレーション法により、表1に示すポリエチレンシートを成形した。さらに、ポリエチレンシートをヒートシールして内容量500mlの袋を製造した。
得られたポリエチレンシートについて評価を行った。結果を表2および表3に示す。
【0069】
【表2】
Figure 2004154942
【0070】
【表3】
Figure 2004154942
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリエチレンシートは、密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)を含む最外層と、2つの最外層の間に、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)を含む内層とを有するインフレーション成形法によるシートであって、内層以外の厚さが、内層の厚さ1に対して1〜20の範囲であり、全体の厚さが0.4mm〜5mmであるので、耐ドローダウン性が良好で、真空成形、圧空成形が可能であり、樹脂の熱劣化が少なく、添加剤無添加が可能であり、食品、医療等の分野で使用される容器に好適である。
【0072】
また、本発明の成形体は、本発明のポリエチレンシートを真空成形法、圧空成形法または真空・圧空成形で成形してなるものであるので、食品、医療等の分野で使用される容器に好適である。
また、本発明のポリエチレンシートの製造方法は、空冷インフレーション成形法によって、密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)からなる最外層と、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)からなる最内層とを有する中空状のチューブを成形し、このチューブをニップロールで挟み潰す方法であるので、耐ドローダウン性が良好で、真空成形、圧空成形が可能であり、樹脂の熱劣化が少なく、添加剤無添加が可能な厚手のポリエチレンシートを低コストで、生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエチレンシートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のポリエチレンシートの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 最外層
2 内層

Claims (6)

  1. 密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)を含む最外層と、2つの最外層の間に、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)を含む内層とを有するインフレーション成形法によるシートであって、内層以外の厚さが、内層の厚さ1に対して1〜20の範囲であり、全体の厚さが0.4mm〜5mmであることを特徴とするポリエチレンシート。
  2. 前記最外層と内層との間に、高分子量ポリエチレンからなる層を有することを特徴とする請求項1記載のポリエチレンシート。
  3. 前記最外層と内層との間に、接着性樹脂からなる層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層および接着性樹脂からなる層をこの順序で有することを特徴とする請求項1記載のポリエチレンシート。
  4. 請求項1ないし3いずれか一項に記載のポリエチレンシートを真空成形法、圧空成形法または真空・圧空成形法で成形してなることを特徴とする成形体。
  5. 空冷インフレーション成形法によって、密度0.935g/cm 以上の高密度ポリエチレン(A)からなる最外層と、密度0.940g/cm 未満のエチレン系重合体(B)からなる最内層とを有する中空状のチューブを成形し、このチューブをニップロールで挟み潰すことを特徴とするポリエチレンシートの製造方法。
  6. ブローアップ比1.2〜6の範囲で空冷インフレーション成形を行うことを特徴とする請求項5記載のポリエチレンシートの製造方法。
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