JP2004154741A - パターン形成装置および形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】PDP,CRTなどのディスプレイパネルの製造において、パネル面にたとえば蛍光体、電極層などのスクリーンストライブをスクリーン印刷方式と同等あるいはそれ以上の生産タクトで形成する。
【解決手段】パターンを形成する有効表示領域と、この有効表示領域の外周部にパターンを形成しない非有効表示領域を有するディスプレイパネルにおいて、流量可変式のディスペンサーを用いることにより、吐出ノズルがディスプレイパネルの非有効表示領域を走行するときは、ペーストの吐出をすみやかに遮断する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体,液晶,表面実装,或いはPDP,液晶,有機EL,CRTなどのディスプレイパネルの生産工程で必要とされる微少流量のパターン形成装置および形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、ディスプレイパネルに蛍光体材料によるスクリーンストライブを形成する場合を例に挙げ、従来技術の課題について説明する。
【0003】
カラー表示を行なうプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」と称す)では、前面板/背面面にRGB各色で発光する蛍光体材料から成る蛍光体層を有する。この蛍光体層は、前面板/背面面に平行線状に形成された隔壁と隔壁の間(すなわちアドレス電極上)に、RGB各色の蛍光体材料を充填したストライブを3組形成し、そのストライブの3組を平行に隣接して多数配列した構造となっている。この蛍光体層は、スクリーン印刷方式、フォトリソグラフィ方式等によって形成される。
【0004】
画面が大型化した場合、従来スクリーン印刷方式では、スクリーン印刷版を精度よく位置合わせすることが難しく、蛍光体材料を充填しようとすると隔壁の頂上部分にまで材料が載ってしまい、それを除去するために研磨工程を導入するなどの方策が必要であった。また、スキージ圧力の違いによって、蛍光体材料の充填量が変化し、その圧力調整は極めて微妙であり作業者の熟練度に依存する部分が多い。そのため前面板/背面面の前面にわたって一定の充填量を得ることは容易ではない。
【0005】
また、感光性の蛍光体材料を使用してフォトリソグラフィ方式によって蛍光体層を形成することもできるが、露光と現像の工程が必要となり、スクリーン印刷方式と比べて工程数が多くなるため、製造コストが高くつくという課題があった。
【0006】
カラーブラウン管パネルの蛍光体スクリーンストライブは、露光台による写真現像方式で普通製造される。この方式では、カラー三原色のまず一色に係る蛍光体をパネル全面に塗布する。
【0007】
この塗布方法として、たとえばパネル内面に蛍光体液を注入後、パネル本体を回転させ蛍光体液に遠心力を与えて蛍光体材料をパネル全面に均一化する、所謂「振りきり工法」を用いる。
【0008】
蛍光体が全面に塗布された上記パネルとマスクを合体し、露光台でこのカラー蛍光体のストライブ位置のみを露光させ、現像の化学処理を施して露光域を残置し、残部マスク被覆域を除去する。次ぎにカラー三原色の他の各色蛍光体について同様にマスク露光、現像の写真蝕刻工程を繰り返す。従って、写真蝕刻工程を三度繰り返すことになる。
【0009】
蛍光体スクリーンストライブを形成する方法として、他に静電塗装方式も適用される。この方式は原理的には写真現像方式と同様であるが、ストライブカラー蛍光体を帯電材を使用し、ドライコーティングによって塗布する点で相違する。
【0010】
上記両方式でブラウン管パネルの蛍光体スクリーンストライブを形成する場合、何れの方式の場合でも数多くの複雑な工程を経ねばならないため、大規模の製造装置を必要とする。したがって多量生産に適するが、多品種少量生産に対しては効率が悪いという欠点があった。
【0011】
スクリーンストライブを形成するための課題、すなわち、PDPにおけるスクリーン印刷方式、およびカラーブラウン管パネルにおける「振りきり工法→写真現像方式」に係る前述した課題を解決するために、ディスペンサーを用いた直接描画方式(ダイレクトパターニング)が既に提案されている。
【0012】
図24は、特開平10−27543号公報に開示されているもので、PDPを対象とした蛍光体層形成装置および形成方法を示すものである。
【0013】
図24において、450は基板、451はこの基板を載置する載置台、452はペースト状の蛍光体を吐出するディスペンサー、453はディスペンサーの吐出ノズルである。この吐出ノズルと載置台を相対的に移動させる搬送部を構成するために、載置台451の両側には、一対のY軸方向搬送装置454a,454bが設けられている。また、X軸方向搬送装置455が、前記Y軸方向搬送装置によってY軸方向に移動可能に搭載されている。更に、Z軸方向搬送装置456が、X軸方向搬送装置455によってX軸方向に移動可能に搭載されている。
【0014】
上記提案によれば、従来のスクリーンマスクを用いることなく、基板仕様を数値設定するだけで基板上を移動するノズル453から蛍光体が吐出されリブ間の溝に塗布されるので、任意のサイズの基板に対して蛍光体層を精度よく形成することができると共に、基板の仕様変更に容易に対応できる、としている。
【0015】
カラーブラウン管パネルを対象とした蛍光体層形成装置についても、同様な提案が既に特公昭57−21223号公報で開示されている。この提案によれば、製造工程および製造ラインとも規模を拡大させる必要がなく、単体の装置でスクリーニングすることを可能にし、また多品種少量生産のブラウン管に対して量産効果を上げて製造させ、さらに単体でスクリーニングするため自動化ラインを小規模なマシンで稼動させる利点がある、としている。
【0016】
【特許文献1】
特開平10−27543号公報
【特許文献2】
特公昭57−21223号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ディスペンサーを用いてパネル面に蛍光体スクリーンストライブを形成する場合でも、スクリーン印刷方式と同等の生産タクトが要望される。しかし、塗布装置に配置できるディスペンサーの本数には制約があり、千本〜数千本のスクリーンストライブをできるだけ短時間で描くためには、パネルとノズル間の相対速度を十分に大きくとる必要がある。そのためには、ディスペンサー、或いはパネルが搭載された搬送台を高精度かつ高速で往復動作させる必要がある。
【0018】
ここで、パネル面は蛍光体層を形成する「有効表示領域」(図22の360a)と、この有効表示領域の外周部に蛍光体層を形成しない「非有効表示領域」(図22の360b)を有するものとする。
【0019】
また、ディスペンサーは搬送台に搭載されているものとし、吐出ノズル一個の挙動に注目する。パネル面の「有効表示領域」(図22の360a)を、連続塗布しながら高速で走行したノズルは、パネルの端面に接近すると減速区間を経て速度を落とし、「非有効表示領域」(図22の360b)に入る。この非有効表示領域でUターン後、助走区間を経て再び有効表示領域を定常走行する。
【0020】
すなわち、ノズルとパネル間の相対速度は、Uターン区間の前後で大きく変化する。このとき、ディスペンサーは次のような機能を有することが望ましい。
【0021】
▲1▼ノズルとパネル間の相対速度に合わせて、流量を可変できる。
【0022】
▲2▼パネルの端面のUターン区間(「非有効表示領域」を走行する区間)では、吐出量が完全に遮断できる。
【0023】
▲3▼上記Uターン区間を経て、塗布開始時の塗布線の始点部には「細り」,「切れ」などが発生しない。同様に、塗布終了時の塗布線の終点部には、「太り」,「溜まり」などが発生しない。
【0024】
上記▲1▼が実現できない場合、例えば、ノズルとパネル間の相対速度が定常走行の場合と比べて小さくなったにもかかわらず、吐出量を低減できなければ蛍光塗布線の線幅と厚みは所定のスペックを越えてしまうことになる。
【0025】
生産タクトを上げる程、立上がり・立下り時間を短く、かつ相対速度の変化率を大きくとらねばならない。すなわち、ディスペンサーにはより一層高い流量制御のレスポンスが要求される。
【0026】
上記▲2▼の必要性は次のようである。ノズルがパネルの端面のUターン区間(「非有効表示領域」)を走行するとき、ノズルとパネル間の相対速度はゼロ及びその前後の極めて低速状態となる。
【0027】
もし、この区間でノズルから材料の流出があれば、僅かな流量でも複数本のストライブが重なるため、材料がパネル上に堆積することになる。その結果、堆積した材料が吐出ノズルの先端に附着する。この状態で再び塗布を開始した場合、吐出ノズルの先端に附着した流体塊が不連続にパネル面に散逸し、描画線の精度を著しく損ねるなどのトラブルが発生した。すなわち、パネルの端面のUターン区間では、ディスペンサーは吐出量を完全に遮断できることが好ましい。
【0028】
上記▲3▼は、ディスペンサー方式が従来方式、たとえばスクリーン印刷方式と同等、或いはそれ以上の品質を確保するための必須条件である。
【0029】
以上要約すれば、ディスペンサーを用いて、パネル面に蛍光体スクリーンストライブを高生産効率で形成するためには、ディスペンサーには流体遮断・開放が随意にできる機能を有すると共に、高い流量制御の応答性と高い流量精度を持つのが望ましい。しかしディスペンサー方式の先行例である、特開平10−27543号公報,特公昭57−21223号公報などには、この点の詳細な記載は見当たらない。
【0030】
さて、ディスペンサー(液体吐出装置)は従来から様々な分野で用いられているが、近年の電子部品の小形化・高記録密度化のニーズにともない、微少量の流体材料を高精度でかつ安定して供給制御する技術が要請される様になっている。従来、液体吐出装置として、図23に示す様なエアー方式によるディスペンサーが広く用いられており、例えば「自動化技術′93.25巻7号」等にその技術が紹介されている。
【0031】
この方式によるディスペンサーは、定圧源から供給される定量の空気を容器(シリンダ)600内にパルス的に印加させ、シリンダ601内の圧力の上昇分に対応する一定量の液体をノズル602から吐出させるものである。
【0032】
このエアーの方式のディスペンサーは次のような問題点があった。
【0033】
(1) 吐出圧脈動による吐出量のばらつき
(2) 水頭差による吐出量のばらつき
(3) 液体の粘度変化による吐出量変化
上記(1)の現象は、タクトが短く吐出時間が短い程顕著に表れる。そのため、エアーパルスの高さを均一化するための安定化回路を施すなどの工夫がなされている。
【0034】
上記(2)は、シリンダ内の空隙部601の容積が液体残量Hによって異なるため、一定量の高圧エアーを供給した場合、空隙部601内の圧力変化の度合が、上記Hによって大きく変化してしまうというのがその理由である。液体残量が低下すれば、塗布量が例えば最大値と比べて50〜60%程度減少してしまうという問題点があった。そのために、吐出毎に液体残量Hを検知し、吐出量が均一になる様にパルスの時間幅を調整する等の方策がなされている。
【0035】
上記(3)は、例えば多量の溶剤を含んだ材料が時間とともに粘度が変化した場合に発生する。そのための対策として、時間軸に対する粘度変化の傾向をあらかじめコンピュータにプログラミングしておき、粘度変化の影響を補正する様に例えばパルス幅を調節するなどの方策がなされていた。
【0036】
上記課題に対するいずれの方策も、コンピュータを含む制御系が繁雑化し、また不規則な環境条件(温度など)の変化に対する対応は困難であり、抜本的な解決案にはならなかった。
【0037】
エアー方式の上記課題に加えて、この方式のディスペンサーは応答性が悪いという欠点があった。この欠点は、シリンダ600に封じ込められた空気の圧縮性と、エアーを狭い隙間に通過させる際のノズル抵抗によるものである。すなわち、エアー方式の場合、シリンダの容積:Cとノズル抵抗:Rで決まる流体回路の時定数:T=RCが大きく、入力パルスを印加後、吐出開始に例えば0.07〜0.1秒程度の時間遅れを見込まねばならない。
【0038】
上記エアー方式の欠点を解消するために、吐出ノズルの入口部にニードルバルブを設けて、このニードルバルブを構成する細径のスプールを軸方向に高速で移動させることにより、吐出口を開閉させるディスペンサーが実用化されている。しかしこの場合、流体の遮断時、相対移動する部材間の隙間はゼロとなり、数ミクロン〜数十ミクロンの平均粒径の粉体は機械的に圧搾作用を受け破壊される。その結果発生する様々な不具合のため、本発明の対象となる蛍光体等の塗布への適用は困難な場合が多い。
【0039】
以上の理由から、従来ディスペンサーの構造、或いは適用方法をそのまま導入しても、パネル面に蛍光体スクリーンストライブを高生産効率で形成するための条件を満足させるのは困難であった。
【0040】
以上、ディスプレイパネルに蛍光体材料によるスクリーンストライブを形成する場合を例に挙げ、従来技術の課題について説明した。蛍光体スクリーンストライブ以外の材料、例えば電極材料などによるパターン形成の場合、表面実装における回路形成などの場合でも課題は同様である。
【0041】
本発明者らは、既に特願2001−385804号明細書において、ディスペンサーに高速吐出遮断、高速吐出開放、流量制御の機能を与えることにより、ディスプレイパネル面に蛍光体、電極材などの薄膜パターンを高生産効率で形成するための条件、
▲1▼ステージの加減速に合わせて、高い応答性で流量を可変できる。
【0042】
▲2▼ノズル先端が塗布領域から非塗布領域へ、或いは、その逆に移行する際の流体の高速遮断・高速開放が随意にできる。
などを満足する発明を提案している。本発明は上記提案で提示したディスペンサー構造を対象として、更に、詳細な理論解析を行った結果、塗布量を一層均一化,安定化させる条件を見出したものである。
【0043】
【課題を解決するための手段】
本発明のパターン形成方法は、流体補給手段によりシリンダとピストンで形成される流体輸送室に流体を供給すると共に、前記ピストンと前記シリンダの間に相対的な軸方向運動を与える軸方向駆動手段により塗布開始時には前記流体輸送室の空間を減少させ、塗布遮断時には前記空間を増大させることにより所定の基板位置に有限幅のパターンを連続塗布形成するパターン形成方法および形成装置において、前記流体輸送手段の流体内部抵抗をR、前記ピストンの吐出側端面とその対向面間で形成される隙間の半径方向流路の流体抵抗をRとしたとき、R>Rとなるように構成されることを特徴とする。
【0044】
また、本発明のパターン形成装置は、隙間方向に相対移動する2面と、この2面間に吸入口を経て流体を供給する流体補給手段と、前記相対移動面のいずれかに設けられた吐出口より構成され、前記相対移動面間の隙間を吐出開始時には減少させ、かつ吐出終了時には増大させて連続描画をおこなうパターン形成方法において、前記相対移動面の隙間をh、このhの時間微分をv、前記相対移動面の外周部の平均半径をr、前記吐出口開口部の平均半径をr、流体の粘性係数をμ、前記流体補給手段の流体内部抵抗をR、PS0を供給源圧力として、第1次スクイーズ圧力Psqu1、第2次スクイーズ圧力Psqu2
【0045】
【数3】
Figure 2004154741
【0046】
として定義し、前記隙間hの時間微分が最大値をもつときの第1次スクイーズ圧力Psqu1=Psqu10、第2次スクイーズ圧力Psqu2=Psqu20としたとき、塗布終了時にはPS0+Psqu10+Psqu20<0としたことを特徴とする。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を次の順序で説明する。
【0048】
[1]ディスペンサーの基本構造と始終端の制御方法の一例
[2]本発明の流量遮断原理について
[3]具体的な実施の形態
[4]その他の適用例 … マルチヘッドの場合
まず、上記[1]から説明する。
【0049】
図1は本発明の第1の実施例を示すモデル図である。図1において、1はピストン、2はこのピストンを収納するハウジングである。ピストン1は固定側であるハウジング2に対して回転可能及び軸方向に移動可能に収納されている。ピストン1は軸方向駆動手段(矢印3)と回転伝達手段(矢印4)により駆動される。
【0050】
5はピストン1とハウジング2の相対移動面に形成されたねじ溝(黒く塗りつぶした部分)、6は流体の吸入口、7は下部プレートである。8はピストン1の端面、9はその固定側対向面、10は固定側対向面9の中央部に形成された吐出ノズル、11は固定側対向面9に形成された吐出ノズル10の開口部である。
【0051】
ピストン端面8と固定側対向面9が隙間方向に相対移動する2面となる。12はピストン1とハウジング2の間に供給された塗布流体である。13はピストン端面の外周部であり、このピストン端面の外周部13内に流体補給手段であるねじ溝ポンプにより流体が供給される。14はピストン端面8とその対向面9間の間隙部である。15はこの間隙部14の中央に位置しており、吐出ノズルの上流側と称す。また、ピストン1とハウジング2で形成され、流体が充填された空間を流体輸送室16とする。軸方向駆動手段3(具体構造は図示せず)は、ピストン1とハウジング2の間に設けられており、両部材1,2間の軸方向相対位置に変化を与える。この軸方向駆動手段3によって、ピストン端面8とその対向面9間の隙間hを変化させることができる。
【0052】
さて本実施形態では、超磁歪素子で駆動されるピストンが回転と同時に高速の直線運動ができることを利用して、次の方法で塗布線の始終端に係る課題の解決を図った。
【0053】
▲1▼塗布開始時には、ピストンを急速に降下させると同時にモータの回転を開始する。
【0054】
▲2▼塗布終了時には、ピストンを上昇させると同時にモータの回転を停止する。
【0055】
図2は、軸方向駆動手段によって駆動されるピストンの変位曲線、図3はモータの回転数を、N=0rpmからN=200rpmまで立ち上げたときに発生するねじ溝のポンピング圧力Pを示す。図4はピストンを上昇・下降させることによって発生する、スクーズ圧力Pの解析結果を示す。図6は、上記ねじ溝のポンピング圧力Pとスクーズ圧力Pを合成した圧力P(=P+P)である。圧力は何れも吐出ノズル上流側(図1の15)における値である。
【0056】
(1)塗布開始時
塗布開始前の状態では、モータの回転は停止しており、ピストンはその対向面との間隙:h=160μm(図2)の状態にある。t=0.02秒でピストンが間隙:h=160→150μmへ急降下を開始すると、吐出ノズルの上流側圧力:P(図1の箇所15の圧力)は急上昇する。その理由は、後述する(式1)のReynolds方程式がdh/dt<0のとき発生するスクイーズ作用によるものである。スクイーズ作用は、粘性流体を用いた流体軸受の動圧効果の一種である。このスクイーズ効果による急峻なピーク圧力(オーバーシュート)の発生により、吐出ノズル先端での表面張力に打ち勝つ大きな運動エネルギが流体に与えられるために、ノズル先端に流体塊を作ることなく塗布を開始できる。始点における塗布線をスムーズに描かせるためオーバーシュート圧力は、ピストンのストロークが大きい程、立ち上がり時間が短い程大きい。すなわち、吐出ノズル先端の流体の表面張力に打ち勝ちと共に、始点での塗布線の「太り」にならない範囲で、このオーバーシュート圧力の大きさを設定すればよい。
【0057】
(2)定常走行時
0.03<t<0.07秒の間は、ピストンはその対向面との間隙:h=150μmの状態を保ちながら、ねじ溝の回転によるポンピング圧力Pによる定量吐出により、連続線が塗布される。ピストンとその対向面の間にも流体抵抗があるが、間隙:h=150μmの流体抵抗は十分に小さいために、必要流量を吐出させることができた。この区間では、隙間hが変化しないためにスクイーズ圧力の発生はない。
【0058】
(3)塗布終了時
t=0.07秒で、モータの減速と同時に、ピストンが間隙:h=150→160μmへ上昇を開始すると、吐出ノズルの上流側圧力Pは、図5で示すように、一時的に急降下する。大きなマイナス圧力となっているのは、Reynolds方程式が流体の圧縮性を考慮していないからである。実際は気泡などの発生により流体圧力はP<−0.1MPa(ゲージ圧)にはならない。
【0059】
この急峻な負圧発生によって、吐出ノズルからの流体が遮断されるだけでなく、ノズル先端の流体塊をノズル内部に若干量吸引させるサックバックの効果が得られる。スクイーズ圧力による負圧発生後は、モータの回転は停止しているため、ねじ溝のポンピング圧力による吐出はない。したがって、ノズルが非有効表示領域(Uターン区間)を通過している間、ノズル内部の流体のメニスカスは、ノズル先端で流体塊を作ることなく同一の位置を保ち続ける。そのため、前述した流体塊のボタ落ちなどのトラブルは回避できる。
【0060】
[2]本発明の流量遮断原理について
上記塗布線の始終端の制御方法は、出願済の特願2001−385804号明細書で開示している内容であるが、本発明の実施形態では、上記明細書に記載された発明に比べて、ポンプの構成条件が次のように異なっている。
【0061】
▲1▼ 定常塗布時におけるピストン端面の最小隙間:h=hminとしたとき、
minの設定値は十分に大きく、例えば、hmin>50μmである。
【0062】
▲2▼ ねじ溝ポンプは定量化設計がなされており、その内部抵抗Rは十分に大きい。
【0063】
塗布終了時、流量遮断のために隙間hを増大させると、粘性流体の第1次スクイーズ効果、及び本提案で新たに見出された第2次スクイーズ効果によって、ピストン端面8とその対向面9間の間隙部に大きな負圧が発生する。
【0064】
本実施形態は、この第2次スクイーズ効果を利用すれば、ピストン端面間の隙間hを十分に大きく保ったままでも、流体を高速で遮断・開放させることができるという点を利用し、塗布流量の一層の安定化を図ったものである。
【0065】
(1)基礎式の導出
さて、前回の提案と異なる本発明の原理と効果を明らかにするために、スクイーズポンプ(仮称)の基礎式を導出する。対向して配置された平面間の狭い隙間に粘性流体が介在し、かつその隙間の間隔が時間と共に変化する場合の流体圧力は、スクイーズ作用(Squeeze action)の項を持つ次の極座標におけるReynolds方程式を解くことにより得られる。
【0066】
【数4】
Figure 2004154741
【0067】
(式1)において、pは圧力、μは流体の粘性係数、hは対向面間の隙間、rは半径方向位置、tは時間である。また、右辺が、隙間hが変化するときに発生するスクイーズアクション効果をもたらす項である。図6に、スクイーズポンプ部の寸法関係を示す。h=dh/dt として、(式1)の両辺を積分する。圧力と流量の境界条件から未定定数C,Cを求める詳細な手順は省略するが、半径方向位置rの圧力は、
【0068】
【数5】
Figure 2004154741
【0069】
但し、
【0070】
【数6】
Figure 2004154741
【0071】
式3)において、Rはねじ溝ポンプの内部抵抗、PS0は供給源圧力であり、ねじ溝ポンプ(流体補給手段)の最大発生圧力Pmaxと、材料をねじ溝に供給するためのエアーによる補助圧力Psupの和(PS0=Psup+Pmax)である。
【0072】
吐出ノズルの開口部:r=r(図1の15)において、P=A+BQとする。吐出ノズルの流体抵抗をRとすれば、吐出ノズルを通過する流量はQ=P/Rである。流れの連続性からQ=Qであり、吐出ノズルの開口部の圧力Pが次のように求まる。A,Bは(式2)におけるr=rのときのA,Bの値である。
【0073】
【数7】
Figure 2004154741
【0074】
上式において、Rは吐出ノズル抵抗、Rはピストン端面とその対抗面間のスラスト流体抵抗である。ここで、第1次スクイーズ圧力Psqu1、第2次スクイーズ圧力Psqu2を次のように定義する。
【0075】
【数8】
Figure 2004154741
【0076】
第1次スクイーズ圧力Psqu1は、ピストン端面とその相対移動面間の隙間を急峻に変化させることにより、ピストン端面間に発生する公知のスクイーズ効果によるもので、隙間hが狭い程、大きな圧力が発生する。
【0077】
第2次スクイーズ圧力Psqu2を発生させる方法、及びこの作用を連続塗布の吐出遮断及び吐出開放に応用する方法は本発明が見出したもので、その原理は次のようである。ピストン端面とその相対移動面間の隙間を急峻に変化させることにより、ピストンの端面と流体供給源の間に流量変動が発生する。この流量変動は上記隙間を変化させた場合の容積変化に相当する。例えば、ピストン上昇により容積が増加した場合、ねじ溝ポンプの供給できる最大流量が容積変化以下ならば、ピストン端面に負圧が発生する。
【0078】
(式4)、(式5)から、吐出ノズルの開口部の圧力Pは、
【0079】
【数9】
Figure 2004154741
【0080】
流量Qは吐出ノズル抵抗をRとすれば、Q=P/Rである。
吐出ノズルのノズル半径をr、ノズル長さをlとおくと、吐出ノズル抵抗は、
【0081】
【数10】
Figure 2004154741
【0082】
また、Rは前述したように、吐出ノズル上流側(図1の15)とピストン外周部(図1のポンプ室端部13)の間のスラスト流体抵抗である。Rは、前述したように、ピストン端面の外周部13と供給源側(吸入口)の間の流路の流体抵抗(ねじ溝ポンプの場合は内部抵抗)である。
【0083】
【数11】
Figure 2004154741
【0084】
(2)流体遮断・開放時の圧力特性
以下、吐出ノズル上流側(図1の15)の圧力を求める計算を、[i]流体補給手段の内部抵抗Rは無視できる程小さい場合、[ii]本発明に相当し、流体補給手段に内部抵抗Rを有する場合、の2ケースに分けて行なう。
【0085】
図7は、上記[i][ii]の計算を行なう上で共通のピストンの変位曲線であり、振幅Δh=10μmは一定で、最小隙間hminを各種変えた場合を示す。表1に解析条件を示す。
【0086】
[i]流体補給手段の内部抵抗Rは無視できる程小さい場合
この場合、(式5)においてPsqu2→0であり、圧力発生源は第1次スクイーズ圧力Psqu1だけである。流体補給手段にねじ溝式のようなポンプを用いず、エアー圧で材料を供給する場合と等価である。ねじ溝ポンプを用いた場合でも、その内部抵抗が小さければ等価になる。
【0087】
圧力発生源と負荷抵抗の関係を電気回路モデルで表すと、図8のようになる。図8において、Pmaxは流体補給手段(ねじ溝式)の最大発生圧力、Rは吐出ノズルの固定抵抗、Rはスラスト端面の半径方向の可変流体抵抗であり、隙間hの大きさで変わる。図9は、図7のピストン変位曲線を与えたときの吐出ノズル開口部の圧力Pを求めたものである。吐出開放時0.02<t<0.03秒の区間で、スクイーズ効果による正のピーク圧が発生し、吐出遮断時0.07<t<0.08秒の区間で、逆スクイーズ効果による負のピーク圧が発生する。
【0088】
0<t<0.02秒の区間をA,0.03<t<0.07秒の区間をB,t>0.08秒の区間をCとする。区間Bの圧力が区間A,Cと比べて低下するのは、区間Bではスラスト抵抗Rが増加するからである。
【0089】
隙間hの最小値hminが増大すると、▲1▼区間A,B,Cの圧力が上昇する、▲2▼スクイーズ圧力の振幅が低下する。上記▲1▼▲2▼の理由により、最小隙間hmin>30μmとなると、吐出遮断時0.07<t<0.08秒の区間で、負のピーク圧の最小値はPmin<0にはならない。すなわち最小隙間hmin>30μmとなると、吐出遮断はできない。
【0090】
[ii]流体補給手段に十分に大きな内部抵抗Rを有する場合(本発明)
この場合、流体補給手段に例えばねじ溝ポンプを用いて、かつ、ねじ溝ポンプの内部抵抗Rを十分に大きくした場合に相当する。図10は等価電気回路モデルである。
【0091】
図11は、図10のピストンの変位曲線を与えたときの吐出ノズル上流側の圧力Pを求めたものである。上記[i]場合と比べて、区間A,B,Cの圧力は大きく変化しない。吐出開放時0.02<t<0.03秒の区間で、スクイーズ効果による正のピーク圧が発生し、吐出遮断時0.07<t<0.08秒の区間で、逆スクイーズ効果による負のピーク圧が発生する点は、上記[i]場合と同様である。
【0092】
しかし、最小隙間を大きくすると、直感的な予想に反して、上記[i]場合と逆に、ピーク圧の絶対値Pimaxは増大するという驚くべき結果が得られる。この理由を図10の等価電気回路モデルを用いて説明すると、次のようである。
【0093】
最小隙間hminが増大すると、第1次スクイーズ圧力Psqu1→0となるが、同時にピストン端面とその対向面のスラスト流体抵抗R→0となるため、分圧比(=R/(R+R+R)が増大する。Psqu1→0となる影響よりも、上記分圧比が増大する影響の方が大きい場合は、hminが大きくなると圧力Pの振幅は増大する。但し、本実施形態では最小隙間hmin=50μmに近づくと圧力上昇の度合いは低下していく。
【0094】
(2)遮断性能評価
さて、塗布開始時の始点については、吐出ノズル先端の流体の表面張力に打ち勝ちと共に、始点での塗布線の「太り」にならない範囲で、オーバーシュート圧力(正のスクイーズ圧力のピーク値)の大きさを設定すればよい。そのためには、ピストン変位曲線の立ち上がり区間の長さ(図7ではΔt=0.02秒に設定)を調節すればよい。Δtを短くすれば、オーバーシュート圧力は高くなり、Δtを長くすれば、オーバーシュート圧力は低くなり圧力波形は鈍化する。
【0095】
塗布開始時の終点については、通常はできるだけ切れ味よく遮断できる方がよい。この切れ味の良さ、すなわち、ディスペンサーの遮断性能を評価するために、遮断時(吐出流量Q<0)における吐出遮断時の総逆流量Qを求める。
【0096】
【数12】
Figure 2004154741
【0097】
積分範囲のtとtは、吐出流量Q<0となる開始時と終了時の時間である。前述したように、遮断時の実際の圧力は絶対圧0気圧以下にはならないため、(式9)から得られる値は実際の逆流量ではない。しかし、様々な条件下での「遮断性能」を相対比較する上で上式は有用である。
【0098】
図12は、ピストン端面の最小隙間hminに対する吐出遮断時の総逆流量Qを(式9)を用いて求めたものである。以下、ポンプの内部抵抗R=0の場合と、R=0.05の場合について注目する。
【0099】
ポンプの内部抵抗R=0の場合、最小隙間hminが大きくなると、総逆流量Qは低下していく。最小隙間hmin>30μmとなると、逆流は発生せず完全な吐出遮断はできない。
【0100】
内部抵抗R=0.05の場合、最小隙間hminが大きくなると、総逆流量Qは増大していくが、hmin=hx1(≒40μm)近傍を超えると、総逆流量Qはhminに依存せず一定値を保つようになる。
【0101】
ここでhx1を次のように定義する。総逆流量Qが隙間の影響を強く受ける前記隙間の最小値の設定範囲を0<hmin<hx1、総逆流量Qが前記隙間の変化に対して鈍感なhminの設定範囲をhmin>hx1とする。hx1は0<hmin<hx1の領域におけるhminに対する曲線Qの包絡線と、hmin→∞におけるQ=Qseの交点である。
【0102】
以下、完全な吐出遮断ができる条件について補足する。
【0103】
最小隙間hminが0<hmin<hx1の領域、或いは、hmin≒hx1近傍にある場合は、(式4)における圧力Pが、吐出遮断時(隙間hの時間微分が最大値をとるとき)に負になれば良い。すなわち、前記隙間hの時間微分が最大値をもつときの第1次スクイーズ圧力Psqu1=Psqu10、第2次スクイーズ圧力Psqu2=Psqu20としたとき、PS0+Psqu10+Psqu20<0となれば良い。
【0104】
最小隙間hminがhmin≫hx1の領域にある場合は、(式4)において、h→∞とすると、第1次スクイーズ圧力Psqu1→0,R→0となるため次式が得られる。但し、Ps0≒Pmax,R=Pmax/Qmaxとする。
【0105】
【数13】
Figure 2004154741
【0106】
(式9)の第2項は、ピストン端面8とその対向面9で形成されるピストン端面部14の幾何学的な容積変化分に相当する。吐出遮断時において、時間微分の最大値をVmax、流体補給手段の最大流量をQmaxとしたとき、
【0107】
【数14】
Figure 2004154741
【0108】
が満たされれば、圧力Pは負圧になるため、吐出は遮断される。
【0109】
図12のグラフにおいて、内部抵抗Rが小さくなると、総逆流量の収束値Q→Qseの大きさは低下していく。しかし、いずれの条件下でも、最小隙間hmin>hx1の領域では総逆流量Qはhminに依存せず一定値を保つ点は変わりない。すなわち、最小隙間hmin>hx1に設定すれば、内部抵抗Rの大きさにかかわらず、遮断性能が隙間の影響を受けず、後述するように定常時の流量も隙間の変動を受けないという点で、本発明の特徴を活かすことができる。
【0110】
図13はピストン端面の最小隙間hminに対する吐出時の吐出ノズル上流側圧力Pを求めたものである。hx2を同様に次のように定義する。圧力Pが隙間の影響を強く受ける前記隙間の最小値の設定範囲を0<hmin<hx2,圧力Pが前記隙間の変化に対して鈍感なhminの設定範囲をhmin>hx2とする。hx2は0<hmin<hx2の領域におけるhminに対する曲線Pの包絡線と、hmin→∞におけるP=Pieの交点である。
【0111】
最小隙間hminが大きくなると、圧力Pは増大していくが、hmin=hx2(≒40μm)近傍を超えると、圧力Pはhminに依存せず一定値を保つようになる。つまり、h>hx2に設定すれば、部材の熱膨張、部品の加工精度と組み立て精度のばらつきなどにより、ピストン端面位置が多少増減しても、圧力P(すなわち吐出流量Q=P/R)は不変である。hx2値は(式4)を用いて解析的に求めてもよいが、ピストン位置を変えて流量を実測して求めてもよい。このとき、Qne=Pie/Rである。
【0112】
図12と図13のグラフを比較すればわかるように、hx1≒hx2であり、hx2が求まれば、hx1の大きさを推定することができる。
【0113】
図14はピストン吐出側端面の流体抵抗Rと最小隙間hminの関係を求めたものである。最小隙間hminが増大すると、流体抵抗Rは大幅に低下する。隙間に対するRの特性は、第一のスクイーズ圧力のみを利用する遮断性能(ポンプの内部抵抗R=0の場合)とほぼ同一の傾向を示す。
【0114】
すなわち、ポンプの内部抵抗Rがピストン吐出側端面の流体抵抗Rよりも十分大きくなる最小隙間hminの領域が、本実施例のヘッドの駆動条件である。
【0115】
以上、総逆流量Q、吐出ノズル上流側圧力P(或いは流量Q)、スラスト流体抵抗Rをピストン端面の最小隙間hminとの関係で整理した。この最小隙間hminを用いる代わりに、例えば、ピストン変位の最大値、平均値、振幅の中心値等を代表値hとして用いてもよい。
【0116】
【表1】
Figure 2004154741
【0117】
[3] 具体的な実施の形態
以下、本発明をPDPの蛍光体層形成方法および形成装置に適用した実施形態について、図15の概略斜視図を用いて説明する。
【0118】
図15において、350はパネルを載置するための載置台である。載置台350の両側を挟んで一対のY軸方向搬送装置351,352が設けられている。また、X軸方向搬送装置353が、Y−Y’方向に移動可能に、前記Y軸方向搬送装置上に搭載されている。更に、Z軸方向搬送装置354が、矢印X−X’方向に移動可能に、前記X軸方向搬送装置上に搭載されている。Z軸方向搬送装置354には、ディスペンサー355を離脱可能に装着したシリンジ装着部356が、Z−Z’方向に移動可能に搭載されている。
【0119】
Y軸方向搬送装置351、352は、Y軸モータ357a、357bによってX軸方向搬送装置353を搬送する。また、X軸方向搬送装置353は、X軸用モータ358によってZ軸方向搬送装置354を搬送する。また、Z軸方向搬送装置354は、Z軸用モータ(図示せず)によってシリンジ装着部356を搬送する。
【0120】
上記装置によって、PDP用の基板に蛍光層が形成される。まず、赤色(R)蛍光体層形成用のペースト状蛍光体を収容したシリンジ359をディスペンサー355に装着する。図22に示すように、PDP基板は蛍光体層を形成する有効表示領域360aと、この有効表示領域の外周部に蛍光体層を形成しない非有効表示領域360bを有する(基板361は図15では図示せず)。
【0121】
この基板361を載置台350の所定位置に載置して固定する。例えば、42インチのPDP用基板の場合、厚さ3.0mmのガラス板からなる基板361の有効表示領域360aには、予め矢印X−X’方向に平行に長さL=560mm,高さH=100μm,幅W=50μmのリブ(光吸収層)が、ピッチPの間隔を保って、1921本形成されている。この1921本のリブによって1920本の溝が形成されているので、RGB蛍光体は、それぞれ640本(=1920本/3)の溝に塗布されることになる。
【0122】
最初に、ディスペンサー355をR蛍光体塗布開始位置まで移動し、Z軸用モータにより、吐出ノズル349の先端を所定の高さに位置決めする。
【0123】
次に、吐出ノズル349からR蛍光体の吐出を開始すると同時に、矢印X方向へ移動して蛍光体塗布を開始する。吐出ノズル349が一本のリブの長さL(図22)だけ塗布線を描き、吐出ノズル349先端が有効表示領域360aから非有効表示領域360bに入ると、蛍光体の吐出は停止する。
【0124】
更に、吐出ノズル349は蛍光体の吐出を停止したままで、3Pだけ矢印Y方向へ移動する。再び、吐出ノズル349からR蛍光体の吐出を開始すると同時に、矢印X’方向へ移動して蛍光体塗布を再開する。上記ステップを繰り返し、塗布本数が640本になると、R蛍光体による作業は終了する。
【0125】
以上が蛍光体塗布の基本ステップであるが、残されたG蛍光体、B蛍光体の塗布については、別途設置されたG蛍光体、B蛍光体専用載置台にパネルを順次移送してもよい。或いは、同一の載置台に、3種類(RGB蛍光体塗布用)のディスペンサーをそれぞれ配置してもよい。
【0126】
なお、吐出ノズルの始終端の位置と、塗布開始・終了のタイミング、及び、ステージの速度と同期した塗布量の制御はあらかじめプログラミングされた始端と終端位置情報、及びステージからの変位・速度情報に基づいて行われる。このようにして、リブ間の溝の内面形状に沿ったRGBの蛍光体層の形成作業がすべて終了すると、ディスペンサーの吐出ノズル先端位置は、ホームポジションに復帰する。以上スクリーンストライブの塗布工程が終了すると、基板を搬送後、蛍光体の乾燥工程へ移行する。
【0127】
以下、本発明の蛍光体層形成方法および形成装置に適用したディスペンサーの第1の実施形態について、図16を用いて説明する。
【0128】
以下に示す本実施形態のディスペンサーは、ピストンとこのピストンを収納するスリーブの間に、相対的な回転運動と直線運動を同時に与える「2自由度アクチュエータ」を有する。すなわち、
▲1▼第1のアクチュエータでピストンを直線駆動することにより、ピストンの吐出側端面に正負のスクイーズ圧力を発生させる。
【0129】
▲2▼回転運動を与える第2のアクチュエータで、ねじ溝が形成されたピストンを回転させてポンピング圧力を発生させ、塗布流体を吐出側に圧送する。
上記▲1▼▲2▼の組み合わせにより、有効表示領域と非有効表示領域の境界部における塗布線の高速遮断・高速開放の制御を実現したものである。
【0130】
図16において、101は第1のアクチェータであり、本実施形態では、高い位置決め精度が得られ、高い応答性を持つと共に大きな発生荷重が得られる超磁歪素子を用いている。102は第1のアクチェータ101によって駆動される主軸(ピストン)である。前記第1のアクチェータは、ハウジング103に収納されており、このハウジング103の下端部(フロント側)に、主軸102を収納するポンプ部104が装着されている。
【0131】
105は第2のアクチェータであり、主軸102とハウジング103の間に相対的な回転運動を与えるものである。モータロータ106は上部主軸107に固着され、また、モータステータ108は上部ハウジング109に収納されている。111,112は超磁歪素子から構成される円筒形状のリア側超磁歪ロッド及びフロント側超磁歪ロッドである。113は超磁歪ロッド111,112の長手方向に磁界を与えるための磁界コイルである。114,115,116は超磁歪ロッド111,112にバイアス磁界を与えるためのリア側,中間部,フロント側の永久磁石である。リア側とフロント側の永久磁石114,116が、超磁歪ロッド111,112と中間部永久磁石115を矜持する形で配置されている。この永久磁石114〜116は、超磁歪ロッド111,112に予め磁界をかけて磁界の動作点を高めるもので、この磁気バイアスにより磁界の強さに対する超磁歪の線形性が改善できる。
【0132】
117は超磁歪ロッド111のリア側に配置され、磁気回路のヨーク材であるリア側ヨーク、118は超磁歪ロッド112のフロント側に配置され、ヨーク材を兼ねたフロント側スリーブ、119は磁界コイル13の外周部に配置された円筒形状のヨーク材である。
【0133】
112→115→111→114→117→119→118→116→112により、超磁歪ロッド111,112の伸縮を制御する閉ループ磁気回路を形成している。なお、主軸102はこの磁気回路に影響を与えないように、非磁性材料を用いている。すなわち、超磁歪ロッド111,112、磁界コイル113、永久磁石114〜116、リア側ヨーク117,フロント側スリーブ118,ヨーク材119により、磁界コイルに与える電流で超磁歪ロッドの軸方向の伸縮を制御できる超磁歪アクチェータ(第1のアクチェータ101)を構成している。
【0134】
120は上部主軸107を回転自在、かつ、軸方向に移動可能に収納するリア側スリーブである。このリア側スリーブ120もまた軸受139により、中間ハウジング121に対して回転自在に支持されている。
【0135】
122はリア側ヨーク117とリア側スリーブ120の間に装着されたバイアスバネである。このバイアスバネ122から加わる軸方向荷重により、超磁歪ロッド111,112はバイアス永久磁石114〜116を介在して、上下のリア側ヨーク17,フロント側スリーブ18に押圧される形で把持されている。この結果、超磁歪ロッド111,112には常に軸方向に圧縮応力が加わるため、繰り返し応力が発生した場合に、引っ張り応力に弱い超磁歪素子の欠点が解消される。
【0136】
フロント側スリーブ118は主軸102を軸方向移動可能に収納している。モータ105から伝達された主軸102の回転動力は、主軸102、フロント側スリーブ118の間に設けられた回転伝達キー123によってフロント側スリーブ118に伝達される。またフロント側スリーブ118も軸受124によって、ハウジング103に回転自在に支持されている。
【0137】
上記構成により、モータ105の回転動力は主軸102とフロント側スリーブ118のみに伝達され、脆性材料である超磁歪素子に捻りトルクは発生しない。
【0138】
また、リング状に形成された超磁歪素子111,112と永久磁石114〜116は、非磁性材料の主軸2を貫通する形で配置されている。また、主軸102の外周部と前記超磁歪ロッド及び前記永久磁石の内周部の間の隙間は十分に小さく設定している。その結果、装置の回転時に各部材に加わる遠心力の影響によって、前記超磁歪ロッド及び前記永久磁石の軸芯が大きくずれることはない。
【0139】
すなわち、各部材を貫通して設けられた主軸2は、脆性材料である超磁歪素子に対して圧縮応力以外は与えない「保護機能」と、回転時の「軸芯ズレの防止機能」を兼ねている。
【0140】
125は第2のアクチェータであるモータ105の上部に配置された上部主軸7の回転位置情報を検出するためのエンコーダである。また、126は上部主軸7(及び主軸102)の上端面127の軸方向変位を検出するための変位センサーである。
【0141】
上記構成により、回転運動と微少変位の直線運動の制御を同時に、かつ、独立して行うことができる「2自由度・複合動作アクチュエータ」が実現できる。更に、本実施形態では、第1のアクチェータに超磁歪素子を用いたために、超磁歪ロッド111,112(及び主軸102)を直線運動させるための動力を、外部から非接触で与えることができる。
【0142】
超磁歪素子に加えた入力電流と変位は比例するため、変位センサーなしのオープンループ制御でも、主軸102の軸方向位置決め制御は可能である。しかし、本実施形態のような位置検出手段を設けてフィードバック制御をすれば、超磁歪素子のヒステリシス特性も改善できるため、より高い精度の位置決めができる。
【0143】
さて、本実施形態では、主軸102の軸方向位置決め機能を用いて、主軸の定常回転状態を保ったままで、主軸の吐出側端面の隙間の大きさを任意に制御することができる。この機能を用いて、吸入口132から吐出ノズル133に至るいかなる流通路の区間も機械的に非接触の状態で、始終端における粉流体の遮断・開放の制御ができる。
【0144】
128は主軸2の外表面に形成された流体を吐出側に圧送するためのラジアル溝、129は流体シール、130はシリンダである。この主軸102とシリンダ130の間で、主軸102とシリンダ130の相対的な回転によってポンピング作用を得るためのポンプ室131(流体輸送室)を形成している。また、シリンダ130には、ポンプ室131と連絡する吸入孔132が形成されている。133はシリンダ130の下端部に装着された吐出ノズル、134はシリンダ130の吐出側端面に締結された吐出プレートである。135は主軸102の吐出側端面に装着されたスラストプレートである。
【0145】
流体圧送手段であるラジアル溝128は、スパイラルグルーブ動圧軸受として知られている公知のものであり、またねじ溝ポンプとしても利用されている。
【0146】
さて、本実施形態では、超磁歪素子で駆動される主軸102(以下「ピストン」と称す)が回転と同時に高速の直線運動ができることを利用して、次の方法で塗布線の始終端に係る課題の解決を図った。
【0147】
▲1▼塗布開始時には、ピストンを急速に降下させると同時にモータの回転を開始する。
【0148】
▲2▼塗布終了時には、ピストンを上昇させると同時にモータの回転を停止する。
【0149】
本実施形態では、ピストンを超磁歪素子で駆動しているため、ピストンの入力信号に対する出力変位の応答性は、10−3sec(1000Herz)のオーダーであった。隙間の変化に対するスクイーズ圧力発生の間の時間遅れは僅少であるため、流量制御の応答性は極めて高い。
【0150】
本実施形態では、塗布線の始点・終点をスムーズに描かせるためのオーバーシュート圧力とサックバック圧力を、ピストンの軸方向運動によって得ることができた。本実施形態では、ピストン変位曲線(図7に一例を示す)は任意の形状を設定することができる。また、ピストンを駆動する超磁歪素子は高い応答性をもつために、変位曲線が急峻な変化をしても十分に追従できる。すなわち、超磁歪素子の変位・速度制御により、モータの回転数制御ではできない微妙な始終端の吐出圧力と流量の制御ができる。
【0151】
本実施形態では、超磁歪素子の軸方向変位の制御と、モータの回転数制御を組み合わせることにより、連続塗布線の始終端の課題を解決すると共に、Uターン区間において、吐出ノズルから材料のリークが無い完全遮断状態を任意の時間保つことができた。Uターン区間を十分に短く設定できる場合は、モータの回転を維持したままで、ピストンのみの駆動により終点での流量遮断と始点での開放ができる。
【0152】
図16の本実施形態では、主軸(ピストン)102の軸方向位置を検出するために、変位センサー126を主軸102の上端に配置した。この変位センサー126の役割は、主軸102の吐出側端面とその対抗面の隙間(図1のhに相当)を制御するためのものである。しかし変位の検出個所と主軸の吐出側端面の距離が長いため、部材の熱膨張が隙間に与える影響が懸念される。
【0153】
例えば、主軸上端と吐出側端面の距離をL=200mm、熱膨張係数α=13×10−6として、主軸とハウジング間の温度差がΔT10℃生じた場合、吐出側端面とその対抗面の隙間hの変動分Δhは、
【0154】
【数15】
Figure 2004154741
【0155】
上記Δhは制御不可能なドリフト成分となる。
【0156】
しかし、流体補給手段が十分に大きな内部抵抗Rを有して、かつ隙間hを十分に大きく(例えば、図13において、hmin=150μm)設定すれば、隙間変動が連続吐出量と遮断性能の両方に影響を与えないヘッド構成が実現できる。
【0157】
本実施形態では、吐出遮断性能は第2次スクイーズ作用を利用しているため、隙間hの絶対値ではなく、隙間の微分の最大値Vmaxで決まる。そのため、上記変位ドリフトの影響は受けない(式9)。
【0158】
本実施形態では、超磁歪素子を用いた2自由度アクチュエータにより、ピストンに軸方向移動と回転の両方の機能を与えてポンプ部を構成した。この構成の代わりに、例えば、軸方向に移動しない回転軸(外周側ピストン)を円筒形状として、この回転軸に中心軸(内周側ピストン)を挿入し、回転軸をモータで駆動し、中心軸を固定側に設置された電磁歪素子等で軸方向に駆動させる構成でもよい。この場合、内周側ピストンの吐出側端面とその対向面の隙間を増減させることにより、終点での流量遮断と始点での開放ができる。要は、流体輸送室の空間を増減できればよいのである。また、外周側ピストンとこの外周側ピストンを収納する固定側の相対移動面にねじ溝を形成すれば、実施例同様に流体圧送手段にできる(図示せず)。
【0159】
ディスプレイパネルの外周部(図22の363)に障害物(例えばウオール)がある場合は、ディスペンサーの本体と障害物が接触しない範囲で、吐出ノズル133の全長を長くとればよい。吐出プレートにパイプを装着し、そのパイプ下端部に適切な内径と長さを持つ吐出ノズルのチップを装着すればよい。
【0160】
また、流体輸送手段であるねじ溝ポンプは、本発明を実施する上で必須条件では無い。外部に設置された圧力源(ポンプ)を利用して、流体をポンプ室131に供給してもよい。この場合はピストンにねじ溝は形成する必要は無い。例えば、流体圧送手段に外部に設置されたギヤポンプを利用して、かつ、Uターン区間を十分に短く設定できる場合は、ピストンのみの駆動により、始終点での流量遮断と開放の制御をすればよい。
【0161】
また、微少粒子が含まれた蛍光体、電極材料のような粉流体を塗布する場合は、ギャップδの最小値δminは微少粒子径φdよりも大きく設定すればよい。
【0162】
【数16】
Figure 2004154741
【0163】
流体補給手段に、前述した粘性式のねじ溝ポンプを用いれば、流体供給源から吐出ノズルに至るまで、機械的な接触部を介在することない流路を構成することができるため、粉流体を輸送するのに有利となる。
【0164】
高粘度流体を吐出させる場合、ポンピング圧力、スクイーズ圧力共極めて大きな流体圧の発生が予想される。この場合、ピストンを駆動する第1のアクチェータには、高い流体圧に抗する大きな推力が要求されるため、数百〜数千Nの力が容易に出せる電磁歪型アクチェータの適用が効果的である。電磁歪素子は、数MHz以上の周波数応答性を持っているため、主軸を高い応答性で直線運動させることができる。そのため、高粘度流体の吐出量を高いレスポンスで高精度に制御できる。
【0165】
また、軸方向駆動手段に超磁歪素子を用いた場合、圧電素子を用いる場合と比べて、伝導ブラシも省略できることから、モータ(回転手段)の負荷を軽減できると共に、全体構成が極めてシンプルとなるため、稼動部の慣性モーメントを極力小さくでき、ディスペンサーの細径化が可能である。
【0166】
なお、本実施形態ではピストンとその対向面の最小隙間は、hmin=150μmに設定した。本実施形態の蛍光体の粒径はφd=7〜9μmであり、hmin≫φdであるため、吸入口から吐出口に至る通路で蛍光体の微粒子を機械的に圧搾・破損することはない。
【0167】
本発明をPDP表面板の電極形成に用いる場合、銀ペーストの粒子径は0.1〜1μmであった。蛍光体の微粒子よりも粒子径は小さいが、比重の大きな電極材のポンプ内部での流動性向上に配慮を要する。この場合でも、ピストン部の最小隙間を、例えばhmin>150μmに形成できる本発明のヘッドは、目詰まり防止の信頼性の点で極めて有利である。PDP表面板の場合、端子部とバス電極部の境界部で電極線の終端(或いは始端)を遮断せねばならないが、本実施形態で説明した蛍光体塗布と同様な方法を用いることができる。また、電極線の線幅が個所によって異なる場合、流体補給手段にねじ溝式を用いれば、流量は回転数に比例するため、線幅に合わせて回転数とステージ速度を設定すればよい。
【0168】
図17は本発明の第2の実施形態を示し、流体補給手段であるねじ溝ポンプと、第1次スクイーズ圧力を発生させるピストンを分離して構成した場合を示す。51は主軸であり、ハウジング52に対して回転方向に移動可能に収納されている。主軸51は回転伝達手段(矢印53)により回転駆動される。54は主軸51とハウジング52の相対移動面に形成されたねじ溝(黒く塗りつぶした部分)、55は流体の吸入口である。
【0169】
56はピストン57を軸方向(矢印58)に移動させる軸方向駆動手段、59はピストン57の端面、60はその固定側対向面、61はハウジング52に装着された吐出ノズルである。ピストン端面59と固定側対向面60が隙間方向に相対移動する2面(吐出室)となる。62は主軸端部、63はピストン外周部、64は主軸端部62とピストン外周部63を結ぶ流通路である。
【0170】
ピストン外周部63には、流通路64を経て、流体補給手段であるねじ溝ポンプ54により常時塗布流体65が供給される。軸方向駆動手段56(具体構造は図示せず)は、ピストン57と固定側であるハウジング52の間に軸方向相対位置に変化を与える。この軸方向駆動手段56によって、ピストン端面59とその対向面60間の隙間hを変化させる点は、図16に記載された実施形態、或いは、図1のモデルと同様である。また、ねじ溝ポンプとピストンの構成条件も同様に、
▲1▼ ピストン端面の隙間hの最小値をh=hminとしたとき、hminは十分に大きく、例えば、hmin>hx1(例えばhx1≒40μm)である。
【0171】
▲2▼ ねじ溝は定量ポンプに近い設計がなされており、その内部抵抗Rは十分に大きい。
【0172】
第2の実施形態に示すように、流体補給手段であるポンプ部66と、軸方向駆動手段によってピストンを駆動する部分(ピストン駆動部67)を分離して塗布装置を構成すれば、適用する対象によっては装置のコンパクト化、簡素化が図れる。例えば、軸方向駆動手段に圧電素子を用いてピストン駆動部を構成れば、圧電素子アクチュエータの部分は充分にコンパクトにできるため、後述するマルチヘッドの場合、装置全体を大幅に簡素化できる。
【0173】
図18の斜視図は本発明の第3の実施形態を示し、流体補給手段であるポンプ部とピストン駆動部をフレキシブルなチューブで連結する構成にして、ポンプ部を固定側に配置し、ピストン駆動部を高速走行するステージ側に配置したものである。この場合、ピストン駆動部は軽量でよいために、パネルに対する吐出ノズル先端の高速速度制御・位置決め制御に有利となる。
【0174】
図18において、150はパネルであり、このパネルの両側を挟んで一対のY軸方向搬送装置151,152が設けられている。また、X軸方向搬送装置153が、Y−Y’方向に移動可能に、前記Y軸方向搬送装置上に搭載されている。
【0175】
更に、Z軸方向搬送装置154が、矢印X−X’方向に移動可能に、前記X軸方向搬送装置上に搭載されている。Z軸方向搬送装置154には、圧電アクチュエータとピストンで構成されるピストン駆動部155が搭載されている。
【0176】
156は流体補給手段であるポンプ部であり、固定側に配置されている。157はこのポンプ部156とピストン駆動部155を繋ぐ流路であるフレキシブルチューブである。
【0177】
[4]その他の適用例 … マルチヘッドの場合
以上説明したディスペンサーの実施形態は、何れも流体補給手段であるポンプ部とピストン駆動部が一対で構成されたシングルヘッドであった。
【0178】
以下、本発明のヘッドをさらに生産タクトアップする方策について述べる。
【0179】
ディスペンサーを用いてパネル面に蛍光体層、銀ペースト電極材等を形成する場合でも、スクリーン印刷方式と同等の生産タクトが要望される。
【0180】
本発明を、例えばPDP背面板の蛍光体塗布、表面板の電極形成プロセスに適用する場合、前述した塗布プロセスの条件に加えて次の条件が必要となる。
【0181】
▲1▼マルチヘッドであること
▲2▼各ヘッドの流量を補正できること
上記▲2▼の理由について以下説明する。第2の実施例(図16)で示したように、流体補給手段であるポンプと、ピストンを駆動する軸方向駆動手段を分離して塗布装置を構成すれば、1セットのポンプ部から複数個のピストン駆動部に流体を分枝して補給することにより、マルチノズルを有する塗布ヘッドが実現できる。
【0182】
図19の矢視図において、200は流体補給手段であるポンプ部、201,202,203は圧電アクチュエータとピストンで構成されるピストン駆動部A,B,Cである。204は内部にポンプ部200と前記ピストン駆動部を繋ぐ流通路(図17の64に相当)が形成された筐体である。
【0183】
通常、流体補給手段であるポンプ部の小型化は限界があるが、ピストン駆動部は小径の圧電アクチュエータ等の適用が可能であり、マルチヘッド構成にした場合、各ノズル間のピッチを充分小さくできる。
【0184】
図19に示したマルチヘッドをサブユニットとして、このサブユニットを複数個組み合わせた塗布装置としてもよい。
【0185】
図20はマルチヘッドの場合の等価回路モデルを示す。
【0186】
squ11、Psqu12、Psqu13は各ピストン駆動部の第1次スクイーズ圧力、Rp1,Rp2,Rp3はピストン端面の半径方向の流体抵抗、Rn1,Rn2,Rn3は各ノズル抵抗である。Rp1〜Rp3の大きさは(式8)で示されるように、隙間hの3乗に逆比例する。すなわちRp1〜Rp3は、塗布装置を解体することなく各ヘッドの流量を個別に調節できる「可変抵抗」である。
【0187】
前述したシングルヘッドの実施形態では、ピストン端面の隙間hを充分に大きく設定して、第1次スクイーズ圧力の発生を極力押さえることにより、総逆流量Q、或いは吐出ノズル上流側圧力Pは隙間hの大きさに依存せず、ポンプ部の条件設定(例えば回転数)だけで決まる構成となっていた。1セットのポンプ部から複数個のピストン駆動部に流体を分枝して補給する場合、各ピストン駆動部の寸法精度、流路抵抗などが厳密に等しく構成できれば、ポンプ部から供給される流量は同一配分される。しかし、数%の塗布量の精度が要求されるディスプレイなどの塗布対象については、実用上は困難である。
【0188】
本実施形態では、各ピストンの最小隙間hminを個別に調整することにより、可変抵抗Rp1〜Rp3の大きさを変えることができ、塗布装置を解体することなく流量を調節できる。
【0189】
最小隙間hminの設定値が大きすぎると、最小隙間hminを変化させても流量に与える影響が小さくなるために流量調整が困難となる。図13のグラフから、最小隙間hminは0<hmin<hx2の領域に入るように設定すればよい。或いは、各ヘッドの流量差が十分に小さければ、隙間hminに対する流量のカーブがなだらかな特性をもつhmin≒hx2近傍を利用して、流量の微調整をすればよい。
【0190】
ピストンの変位は、ピストンの絶対位置を検出する変位センサーを配設して閉ループ制御を施せば、任意の位置決め制御が可能である。但し、圧電素子、超磁歪素子などの電磁歪素子を用いた場合は、ストローク限界(0〜数十ミクロン)があるために、ピストンの最小隙間hminの調節は、機械的な方法と電子制御による方法を組み合わせて用いてもよい。例えば、最初にピストンの位置を機械的に粗く位置決めした後、流量測定のデータを基に、電子制御を用いて再度各ヘッドのピストン位置を補正すればよい。
【0191】
また、流量調節に上記方法を用いる場合でも、供給源ポンプの出力流量の設定方法と併用すれば、ピストン端面隙間が充分に大きなところで、流量調節できる。例えば、流量が大きすぎて、ピストンの最小隙間hminを小さく設定せざるを得ない場合は、ねじ溝ポンプの回転数を低下させれば、hminは大きく設定できるようになる。この点は後述するように、紛流体を扱う場合に有利となる。
【0192】
マルチヘッドのヘッド間の流量差補正に用いた上記方策は、シングルヘッドの場合も適用できる。シングルヘッド、マルチヘッドいずれの場合でも、ポンプのモータ回転数を変える代わりに、hminを調節すれば高速流量制御ができる。モータの回転数制御の応答性は、せいぜい0.01〜0.05秒レベルであり限界があるが、電磁歪素子で駆動されるピストンの制御応答性は0.001秒以下まで可能である。また、ピストンの最小隙間hminで流量を調節するのではなく、ピストン入力変位波形の平均値、或いは、中心値で流量を調節してもよい。
【0193】
なお、本発明における流体補給手段としてのポンプの形態は、ねじ溝式に限らず他の方式のポンプも適用可能である。例えば、スネイクポンプと呼ばれるモーノ式、ギヤ式、ツインスクリュウ式、シリンジ式ポンプなどが適用できる。
【0194】
図21は、本発明に流体補給手段にギヤ式を用いた場合のモデル図であり、700はギヤポンプ、701は流通路、702a,702b,702cは例えば圧電アクチュエータなどで構成される軸方向駆動手段、703a,703b,703cはピストンである。
【0195】
ポンプの最大流量Qmax、最大圧力Pmaxは通常は理論的に求められる場合が多いが、もしそれが困難な場合は実験的に求めても良い。
【0196】
ポンプの内部抵抗Rは、動作点における圧力と流量をP、Qとしたとき、動作点近傍で圧力と流量を微少量変化させて、R=ΔP/ΔQとして実測してもよい。或いは、ポンプの流量と圧力の関係を実測し、動作点における特性曲線の勾配:ΔP/ΔQから内部抵抗を求めてもよい。ポンプとピストンの端面に至る流路に流体抵抗Rs2があれば、ポンプの上記内部抵抗Rに加えた値:Rs0=R+Rs2を流体輸送手段の流体内部抵抗として定義し前述した理論を用いれば良い。この流体抵抗Rs2は例えば、通常よく知られた理論式(例えば(式7),(式8))などから理論的に求めてもよい。或いは、実験的に求めても良い。
【0197】
流体抵抗R、Rも同様に(式7),(式8)から求められるが、形状が複雑ならば数値解析を用いるか、或いは実験的に求めても良い。内径に対して絞り部分長さが短いオリフィスの場合は、線形抵抗の式(例えば(式7))が成り立たなくなるが、この場合は動作点を中心に線形化して、見かけの流体抵抗とすればよい。
【0198】
ピストン駆動部を構成するピストンとその対向面の形状は、円形でなくてもよい。ピストンは長方形の形状でもよい。この場合は等価な面積を持つ円の半径を平均半径とする。微少流量を扱う本実施例のポンプでは、ピストンのストロークは、大きくとも数十ミクロンのオーダでよく、超磁歪素子、圧電素子などの電磁歪素子を用いても、ストロークの限界は問題とならない。
【0199】
応答性を犠牲にするならば、ピストンを駆動する軸方向駆動手段にムービングマグネット型、ムービングコイル型のリニアモータ或いは、電磁ソレノイド等を用いてもよい。この場合、ストロークの制約は解消される(図示せず)。
【0200】
以上の説明は連続塗布だけについて記述したが、[3]具体的な実施の形態、或いは、[4]マルチヘッドの場合、で開示した塗布装置の構造は間欠塗布の場合でも適用できる。すなわち、連続塗布と間欠塗布を同一の塗布装置で兼ねて用いることも可能である。
【0201】
【発明の効果】
本発明を、例えばディスプレイの蛍光体塗布、電極層形成などに適用すれば、従来のスクリーンマスクを用いることなく、基板仕様を数値設定するだけで、任意のサイズの基板に対して、スクリーンストライブを精度よく形成することができると共に、基板の仕様変更に容易に対応できる。また、高速プロセスに対応できるために、従来工法と比べても生産タクトの点で遜色がなく、廃棄する材料がないために、材料ロスを大幅に削減できる。
【0202】
製造工程および製造ラインとも規模を拡大させる必要がなく、単体の装置でスクリーニングすることを可能にし、また多品種少量生産のディスプレイパネルに対して量産効果を上げて製造させ、さらに単体でスクリーニングするため自動化ラインを小規模なマシンで稼動できる。
【0203】
本発明は、PDPなどのディスプレイパネル以外でも、半導体、表面実装、液晶、透明タッチパネル、有機EL,シートデバイスなどの生産工程で用いることができ、その効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示すモデル図
【図2】時間に対するピストン変位を示す図
【図3】時間に対するねじ溝圧力を示す図
【図4】時間に対するスクイーズ圧力を示す図
【図5】時間に対する吐出ノズル上流側圧力を示す図
【図6】図1の吐出部詳細図
【図7】時間に対するピストン変位を示す図
【図8】内部抵抗Rは無視できる程小さい場合の電気回路モデル図
【図9】時間に対する吐出ノズル上流側圧力を示す図
【図10】内部抵抗Rが大きい場合の電気回路モデル図
【図11】時間に対する吐出ノズル上流側圧力を示す図
【図12】総逆流量とピストン最小隙間の関係を示す図
【図13】吐出ノズル上流側圧力とピストン最小隙間の関係を示す図
【図14】流体抵抗R,Rとピストン最小隙間の関係を示す図
【図15】本発明をPDPパネルの蛍光体層装置に適用した場合の概略斜視図
【図16】本発明に適用した第1の実施の形態によるディスペンサーを示す正面断面図
【図17】本発明に適用した第2の実施の形態によるディスペンサーを示す正面断面図
【図18】本発明に適用した第3の実施の形態によるディスペンサーを示す正面断面図
【図19】本発明をマルチヘッドに適用した場合のモデル図
【図20】マルチヘッドの場合の電気回路モデルを示す図
【図21】本発明の流体補給手段のねじ溝ポンプを用いたときのモデル図
【図22】パネル面の有効表示領域と非有効表示領を示す図
【図23】従来のエアー式ディスペンサーを示す図
【図24】従来のディスペンサー方式蛍光体層塗布装置の概略斜視図
【符号の説明】
1 ピストン
2 ハウジング
5 ねじ溝
6 吸入口
7 下部プレート
8 端面
9 端面の固定側対向面
10 吐出ノズル
11 開口部
12 塗布流体
13 ピストン端面の外周部
14 間隙部
15 上流側
16 流体輸送室

Claims (21)

  1. 流体補給手段によりシリンダとピストンで形成される流体輸送室に流体を供給すると共に、前記ピストンと前記シリンダの間に相対的な軸方向運動を与える軸方向駆動手段により塗布開始時には前記流体輸送室の空間を減少させ、塗布遮断時には前記空間を増大させることにより所定の基板位置に有限幅のパターンを連続塗布形成するパターン形成方法および形成装置において、
    前記流体輸送手段の流体内部抵抗をR、前記ピストンの吐出側端面とその対向面間で形成される隙間の半径方向流路の流体抵抗をRとしたとき、R>Rであること
    を特徴とするパターン形成装置。
  2. 隙間の変動によりこの隙間部に発生する流体圧力を第1次スクイーズ圧力、前記隙間の変動により流体補給手段の内部抵抗に依存して発生する流体圧力を第2次スクイーズ圧力、前記隙間の代表値をhとして、吐出遮断時の総逆流量Qが前記第1次スクイーズ圧力の影響を強く受ける前記hの範囲を0<h<hx1、前記Qが前記隙間hの変化に対して鈍感なhの範囲をh>hx1としたとき、前記h>hx1の範囲に設定したこと
    を特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  3. 前記hx1は0<h<hx1の領域におけるhに対する総逆流量Q曲線の包絡線と、h→∞におけるQ=Qseの交点であること
    を特徴とする請求項2記載のパターン形成装置。
  4. >0.05mmであることを特徴とする請求項2記載のパターン形成装置。
  5. 流体補給手段は回転数によって流量が可変できるポンプであることを特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  6. 流体補給手段はねじ溝式ポンプであることを特徴とする請求項5記載のパターン形成装置。
  7. 流体補給手段と、シリンダとピストンで形成される流体輸送室はそれぞれ個別の駆動源で構成され、かつ前記流体補給手段と前記流体輸送室は流通路で連絡されていること
    を特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  8. 流通路は変形容易なフレキシブルチューブであることを特徴とする請求項7記載のパターン形成装置。
  9. 独立した軸方向駆動手段によって隙間方向に相対移動する2面が複数セット配置されており、1セットの流体補給手段がこれらの2面間に流体を分技して供給すると共に、前記各2面間の隙間を可変させて各吐出量を調節したこと
    を特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  10. 2面を相対移動させる手段は電磁歪素子であることを特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  11. ピストンの吐出側端面とは逆方向の端面側に、前記端面の位置を検出する変位センサーを設けたことを特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  12. 一端をフロント側としもう一方の端部をリア側とする電磁歪素子と、この電磁歪素子を貫通しかつこの電磁歪素子の前記リア側に押圧された軸と、前記電磁歪素子と前記軸を収納するハウジングと、前記軸を前記ハウジングに対して相対的に回転自在かつ軸方向に移動可能に支持する手段と、前記軸に回転を与える手段と、前記軸の前記リア側と前記ハウジングの間に設けられた軸方向位置の検出手段と、前記軸のフロント側と前記ハウジングで形成されるポンプ室と外部を連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記ポンプ室内に流入された前記流体を吐出口側に圧送する手段から構成されること
    を特徴とする請求項11記載のパターン形成装置。
  13. 隙間方向に相対移動する2面と、この2面間に吸入口を経て流体を供給する流体補給手段と、前記相対移動面のいずれかに設けられた吐出口より構成され、前記相対移動面間の隙間を吐出開始時には減少させ、かつ吐出終了時には増大させて連続描画をおこなうパターン形成方法において、前記相対移動面の隙間をh、このhの時間微分をv、前記相対移動面の外周部の平均半径をr、前記吐出口開口部の平均半径をr、流体の粘性係数をμ、前記流体補給手段の流体内部抵抗をR、PS0を供給源圧力として、第1次スクイーズ圧力Psqu1、第2次スクイーズ圧力Psqu2
    Figure 2004154741
    として定義し、前記隙間hの時間微分が最大値をもつときの第1次スクイーズ圧力Psqu1=Psqu10、第2次スクイーズ圧力Psqu2=Psqu20としたとき、塗布終了時にはPS0+Psqu10+Psqu20<0としたこと
    を特徴とするパターン形成方法。
  14. 吐出遮断時における前記隙間の時間微分の最大値をVmax、前記相対移動面の外周部の平均半径をr(mm)、前記吐出口開口部の平均半径をr(mm)、流体補給手段の最大流量をQmaxとしたとき、
    Figure 2004154741
    であること
    を特徴とする請求項7記載のパターン形成方法。
  15. 連続描画の対象面はディスプレイパネルであることを特徴とする請求項13記載のパターン形成方法。
  16. 前記ディスペンサーと前記対象面の相対速度に合わせて、前記ねじ溝式ポンプの回転数を制御して吐出量を可変させること
    を特徴とする請求項15記載のディスプレイパネルのパターン形成方法。
  17. 塗布対象面はプラズマディスプレイであることを特徴とする請求項15記載のパターン形成方法。
  18. 複数本の光吸収層が表面に並列形成された基板に対してディスペンサーを相対的に移動させながら、蛍光体ペーストを吐出させることにより、前記光吸収層間の所定の位置に順次前記蛍光体ペーストを塗布して蛍光体層を形成するディスプレイパネルの蛍光体層形成方法であること
    を特徴とする請求項15記載のパターン形成方法。
  19. 前記塗布対象面は蛍光体層を形成する有効表示領域と、この有効表示領域の外周部に蛍光体層を形成しない非有効表示領域を有し、前記ディスペンサーと前記基板が前記非有効表示領域を相対的に走行しているときは前記流体輸送室の空間を増大させることにより前記蛍光体ペーストの吐出は遮断されていること
    を特徴とする請求項18記載のパターン形成方法。
  20. 定常吐出時の流量Qが隙間hの影響を強く受ける範囲を0<h<hx2、前記Qが前記隙間hの変化に対して鈍感なhの範囲をh>hx2としたとき、h>hx2であること
    を特徴とする請求項1記載のパターン形成装置。
  21. x2は0<h<hx2の領域におけるhに対する流量Q曲線の包絡線と、h→∞におけるQ=Qneの交点であること
    を特徴とする請求項20記載のパターン形成装置。
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