JP3873607B2 - 流体供給方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子部品、家電製品などの分野における生産工程に用いることができ、接着剤、クリームハンダ、蛍光体、グリース、ペイント、ホットメルト、薬品、食品などの各種液体を定量に吐出・吐出するための流体供給方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、本発明の適用対象の一つである流体塗布装置を例にとり、その従来技術について説明する。
【0003】
液体塗布装置(ディスペンサー)は従来から様々な分野で用いられているが、近年の電子部品の小形化・高記録密度化のニーズにともない、微少量の流体材料を高精度でかつ安定して吐出制御する技術が要請される様になっている。
【0004】
また、たとえばCRT、PDPなどのディスプレイ面に蛍光体を均一に塗布するための、新たな流体塗布手段開発の要望も大きい。
【0005】
表面実装(SMT)の分野を例にとれば、実装の高速化、微小化、高密度化、高品位化、無人化のトレンドの中で、ディスペンサーの課題を要約すれば、
▲1▼ 塗布量の高精度化と1回の塗布量の微小化
▲3▼ 吐出時間の短縮 …高速吐出遮断及び開始ができる
▲4▼ 高粘度の粉流体に対応できる
である。従来、微少流量の液体を吐出させるために、エアパルス方式、ねじ溝式、電磁歪素子によるマイクロポンプ方式などのディスペンサーが実用化されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来先行例のうち、図5に示す様なエアパルス方式によるディスペンサーが広く用いられており、例えば「自動化技術′93.25巻7号」等にその技術が紹介されている。この方式によるディスペンサーは、定圧源から供給される定量の空気を容器200(シリンダ)内にパルス的に印加させ、シリンダ200内の圧力の上昇分に対応する一定量の液体をノズル201から吐出させるものである。
【0007】
エアーパルスの方式のディスペンサーは応答性が悪いという欠点があった。
【0008】
この欠点は、シリンダに封じ込められた空気202の圧縮性と、エアーパルスを狭い隙間に通過させる際のノズル抵抗によるものである。すなわち、エアーパルス方式の場合、シリンダの容積:Cとノズル抵抗:Rできまる流体回路の時定数:T=RCが大きく、入力パルスを印加後、吐出開始にたとえば0.07〜0.1秒程度の時間遅れを見込まねばならない。
【0009】
上記エアーパルス方式の欠点を解消するために、吐出ノズルの入口部にニードルバルブを設けて、このニードルバルブを構成する細径のスプールを軸方向に高速で移動させることにより、吐出口を開閉させるディスペンサーが実用化されている。
【0010】
しかしこの場合、流体の遮断時、相対移動する部材間の隙間はゼロとなり、数ミクロン〜数十ミクロンの平均粒径の粉体は機械的に圧搾作用を受け破壊される。その結果発生する様々な不具合のため、粉体が混入した接着材、導電性ペースト、あるいは蛍光体等の塗布への適用は困難な場合が多い。
【0011】
また同目的のために、粘性ポンプであるねじ溝式のディスペンサーも既に実用化されている。ねじ溝式の場合、ノズル抵抗に依存しにくいポンプ特性を選ぶことができるため、連続吐布の場合は好ましい結果が得られるが、間欠塗布は粘性ポンプの性格上不得手である。そのため従来ねじ溝式では、
(1)モータとポンプ軸の間に電磁クラッチを介在させ、吐出のON、OFF
時にこの電磁クラッチを連結あるいは開放する。
【0012】
(2)DCサーボモータを用いて、急速回転開始あるいは急速停止させる。
【0013】
しかし、上記いずれも機械的な系の時定数で応答性が決まるため、高速間欠動作には制約があった。応答性はエアーパルス方式と比較すると良好であるが、しかし最短時間でも0.05秒程度が限界であった。
【0014】
またポンプ軸の過渡応答時(回転始動時と停止時)の回転特性に不確定要因が多いため、流量の厳密な制御は難しく、塗布精度にも限界があった。
【0015】
微少流量の流体を吐出することを目的として、積層型の圧電素子を利用したマイクロポンプが開発されている。このマイクロポンプには、通常機械式の受動的な吐出弁,吸入弁が用いられる。
【0016】
しかし、バネとボールから構成され圧力差によって吐出弁,吸入弁を開閉させる上記ポンプでは、流動性の悪い、数万〜数十万センチポワズの高粘度のレオロジー流体を、高い流量精度でかつ高速(0.1秒以下)で間欠吐出させることは極めて困難である。
【0017】
さて、近年益々高精度化、超微細化していく回路形成の分野、あるいはPDP,CRTなどの映像管の電極とリブ形成、液晶パネルのシール材塗布、光ディスクなどの製造行程の分野において、微細塗布技術に関する、次のような要望が強い。
【0018】
▲1▼連続吐布後、すばやく塗布を止め、短い時間をおいて連続塗布を急峻に開始できること。そのためには、たとえば0.01秒のオーダーで流量制御できることが理想である。
【0019】
▲2▼粉流体に対応できること。たとえば流路の機械的な遮断により、粉体の圧搾破損、流路の詰まりなどのトラブルがないこと。
【0020】
上述した高粘度流体・粉流体の微少流量塗布に係る、近年の様々な要求に応えるために、本発明者は、ピストンとシリンダの間に相対的な直線運動と回転運動を与えると共に、回転運動により流体の輸送手段を与え、直線運動を用いて固定側と回転側の相対的なギャップを変化させ、流体の吐出量を制御する手段、「流体供給装置及び流体供給方法」を出願中(特願2000−188899号)である。
【0021】
本発明は上記提案をさらに改良するもので、直線運動を与える軸方向駆動手段を固定側に設けることにより、吐出量の一層の高精度化と装置の簡素化を図ったものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の本願の流体供給方法は、ハウジングと、軸の少なくとも一部を収納し前記ハウジングに固定されたスリーブとで形成される空間に流体を供給し、前記軸と前記ハウジングを相対的に回転させながら、前記ハウジングと前記スリーブ間との間に配置され、かつ、前記軸を軸方向に相対変位を与える一対の軸方向駆動手段を駆動させることで、吐出ノズルから前記流体を吐出する流体供給方法において、前記軸方向駆動手段のうち一方は前記ハウジングに固定して固定端とし、他方は前記スリーブに固定して可動端とした状態で、前記軸方向駆動手段によって前記スリーブと前記軸とを軸方向に連続的に相対変化させ、前記軸の吐出側端面と前記ハウジングとの隙間をδとしたとき、δ<10.0μmのとき、前記吐出ノズルから吐出する流体を遮断し、δ≧10μmのとき、前記吐出ノズルから流体を吐出することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を電子部品の表面実装用ディスペンサーに適用した第一の実施例について、図1を用いて説明する。
【0024】
1はモータであり、回転軸2とこのモータ1を収納する上部ハウジング3の間に相対的な回転運動を与えるものである。モータロータ4は回転軸2に固着され、またモータステータ5は上部ハウジング3に収納されている。
【0025】
回転軸2は上部プレート6及び上部ハウジング3に外輪側を支持された軸受A7、と、軸受B8により支持されている。9は上部プレート6の上端部に配置された回転軸2の回転情報を検出するためのエンコーダである。
【0026】
10は中間ハウジング、11は下部ハウジング、12は回転軸2の下端部を収納する可動スリーブである。
【0027】
13は回転軸2の外表面に形成された流体を吐出側に圧送するためのラジアル溝、14は中間ハウジング10に形成された吸入口、15は吐出部である。
【0028】
16は軸方向駆動手段である中空形状の積層型圧電素子であり、下部ハウジング11と可動スリーブ12の間に装着されている。17は可動スリーブ12のつば、18はつば17と下部ハウジング11の間に装着された皿バネである。この皿バネ17によって、積層型圧電素子16には軸方向に予圧が与えられている。
【0029】
19は可動スリーブ12と中間ハウジング10の間、20は可動スリーブ12と下部ハウジング11の間、21は中間ハウジング10と回転軸2の間にそれぞれ設けられた流体シールである。
【0030】
積層型圧電素子16の上端固定側は下部ハウジング11に、下端可動側は可動スリーブ12に固定されている。圧電素子16が印加電圧によって伸縮すると、その伸縮分だけ可動スリーブ12は軸方向に伸縮する。22は中間ハウジング10の設けられた可動スリーブ12の軸方向移動量を検出する変位センサーである。また回転軸2と可動スリーブ12の間で、この部材2、4の相対的な回転によってポンピング作用を得るためのポンプ室23を形成している。
【0031】
上記構成により、本発明の流体供給装置では、回転軸2と可動スリーブ12の間で、相対的な回転運動と微少変位の相対的な直線運動の制御を同時に、かつ独立して行うことができる。
【0032】
さらに実施例では、軸方向駆動手段に積層型圧電素子16を用いて、かつ圧電素子16の一端を固定側であるハウジング側に設置したため、高い位置決め精度が得られる。
【0033】
圧電素子16に加えた入力電圧と変位は比例するため、変位センサーなしのオープンループ制御でも、前記可動スリーブ12の軸方向位置決め制御は可能である。しかし本実施例のような位置検出手段22を設けてフィードバック制御をすれば、積層型圧電素子16のヒステリシス特性も改善できるため、より高い精度の位置決めができる。
【0034】
さて本実施例では、可動スリーブ12の軸方向位置決め機能を用いて、回転軸の定常回転状態を保ったままで、回転軸2の吐出側端面とその対向面間の隙間、すなわち吐出側スラスト端面の隙間の大きさを任意に制御することができる。この機能を用いて、吸入口14から吐出ノズルに至るいかなる流通路の区間も機械的に非接触の状態で、粉流体の遮断・開放ができる。その原理を吐出部15の詳細図2を用いて説明する。
【0035】
図2において、24は回転軸2の吐出側端面、25は可動スリーブ12の吐出側端面に締結された吐出プレートである。この吐出側端面24とその対抗面26(可動スリーブ12側)の相対移動面にシール用スラスト溝が27が形成されている。対抗面26の中央部に吐出ノズル28の開口部29が形成されている。
【0036】
図1で既に説明したラジアル溝13は、スパイラルグルーブ動圧軸受として知られている公知のものであり、またねじ溝ポンプとしても利用されている。
【0037】
またシール用スラスト溝27は、同様にスラスト動圧軸受として知られているものである。さて、スラスト軸受の発生できるシール圧力は次式で与えられる。
【0038】
【式1】
【0039】
(1)式において、ωは回転角速度、R0はスラスト軸受の外径、Riはスラスト軸受の内径、fは溝深さ、溝角度、グルーブ幅とリッジ幅などで決まる関数である。
【0040】
図3のグラフにおける曲線(イ)は、下記表1の条件下で、スパイラルグルーブ型スラスト溝を用いた場合のギャップδに対するシール圧力PSの特性を示すものである。図3のグラフにおける曲線(ロ)は、軸方向流動が無い場合について、ラジアル溝のポンピング圧力と軸先端のギャップδの関係を示す一例である。このラジアル溝のポンピング圧力は、上記スラスト溝同様、ラジアル隙間、溝深さ、溝角度の選択によって広い範囲で選ぶことができる。しかし定性的には、ラジアル溝のポンピング圧力Prは軸先端の空隙の大きさ(すなわちギャップδの大きさ)に依存しない。
【0041】
さて、シール用スラスト溝のギャップδが十分大きいとき、たとえばギャップδ=15μmのとき、発生圧力は小さく、P<0.1kg/mm2である。
【0042】
軸を回転させたままで、回転軸端面を固定側の対向面に接近させる。ギャップδ<10.0μmになると、シール圧力がラジアル溝のポンピング圧力Prより大きくなり、流体の吐出口側への流出は遮断される。
【0043】
図2は流体の流出が遮断された状態を示し、吐出ノズルの開口部29近傍の流体は、スラスト溝27によって遠心方向のポンピング作用[図2の矢印]を受けているために、開口部29近傍は負圧(大気圧以下)となる。この効果により、遮断後、吐出ノズル28内部に残存していた流体は再びポンプ内部に吸引される。その結果、吐出ノズル先端で表面張力による流体魂ができることはなく、糸引き、洟垂れが解消されるのである。
【0044】
さて、本発明の実施例では、回転軸を僅か5〜10μm程度軸方向に移動させることにより、流体の吐出状態のON,OFFを自在に制御することができる。
【0045】
本発明のポイントを要約すれば、スラスト溝によるシール圧力は、ギャップδが小さくなると急激に増大するのに対して、ラジアル溝のポンピング圧力はギャップδの変化に対して極めて鈍感である、という点を利用している。
【0046】
なをラジアル溝、スラスト溝いずれも回転側、固定側のどちらに形成してもよい。
【0047】
また微少粒子が含まれた接着材のような粉流体を塗布する場合は、ギャップδの最小値δminは微少粒子径φdよりも大きく設定すればよい。
【0048】
【式2】
【0049】
同一の発生圧力に対して、より大きなギャップを得るためには、回転数を高くするか、回転軸2スラストシールのつば(図示せず)を設けて、その外径を大きくかつ溝深さ、溝角度等に適切な値を選べば良い。
【0050】
また、連続塗布中にギャップδを変化させれば、流量を連続的に変えることもできる。軸方向駆動手段に電磁歪素子を用いれば、この流量の変化は極めて敏速である。本実施例のこの特徴は、たとえば液晶パネルにシール材を塗布する場合等に効果がだせる。吐出ノズルがコーナー(角)部分を走行する時は、走行スピードが変化するために、線幅を均一にするのは通常困難である。本ディスペンサーを用いれば、必要な個所で流量を微妙かつ高速で変化するように設定(プログラミング)できるため、全個所での線幅を均一に塗布できる。
【0051】
回転軸を収納するスリーブ(可動スリーブ)は本実施例では円筒形状であるが、本発明の適用はこの円筒形状に留まるものではない。回転軸との隙間が変化できる個所を1箇所でも設けられるならば、スリーブ=円筒のイメージにとらわれることなく、可動スリーブはどのような形状でもよい。
【0052】
またスラスト動圧軸受は、実施例のような平板(flat)型ではなく、円錐(conical)型、球面(spherical)型のいずれを用いても良い。
【0053】
球面型の場合は、平板型と比較したとき、同じシール圧力を得るのに大きなギャップを選ぶことができるため、より大きな粒径の粉流体に対応できる。
【0054】
但し球面型、円錐型の場合、軸方向隙間に対する発生圧力の特性が鈍感になるために、底面近傍(吐出ノズル側)の隙間に対して上部(ポンプ室側)の隙間を大きめに設定すればよい。たとえば、回転軸側に設ける球面(凸側)の半径よりも固定側の球面(凹側)の半径を大きく設定してもよい。
【0055】
円錐型、球面型の場合は、ポンプ室7から吐出ノズル28に繋がる流路形状がスムーズとなり、粉体の堆積防止に有効である(図示せず)。
【0056】
また動圧効果が発生できるスパイラルグルーブ、ヘリングボーン以外の型式、たとえば、ステップ軸受、ティルティングパット軸受、あるいは軸受の隙間方向に高い振動を与えて動圧効果を得るスクイーズ・アクション軸受等も適用できる(図示せず)。
【0057】
また上記実施例において、吐出ノズルを除く他の部分をポンプ部と定義すれば、吐出ノズルとポンプ部は一対の構成であった。しかし用途によっては、一個のポンプ部に複数の吐出ノズルを設ける構成もできる(図示せず)。
【0058】
【表1】
【0059】
上記実施例では、軸方向駆動手段に積層型圧電素子を用いたが、希土類と鉄の合金である超磁歪アクチュエータを用いてもよい。この場合、電磁コイルとバイアス永久磁石を設ける必要があるが、最大ストロークは積層型と比べて2倍となる。また微少流量を扱うポンプでは、「非接触シール」を構成するためのギャップδのストロークは、大きくとも数十ミクロンのオーダでよく、超磁歪素子、圧電素子などの電磁歪素子のストロークの限界は問題とならない。
【0060】
また、高粘度流体を吐出させる場合、ラジアル溝によるポンピング作用によって大きな吐出圧の発生が予想される。この場合、軸方向駆動手段には高い流体圧に抗する大きな推力が要求されるため、数百〜数千Nの力が容易に出せる電磁歪型アクチェータが好ましい。電磁歪素子は、数MHz以上の周波数応答性を持っているため、可動スリーブを高い応答性で直線運動させることができる。そのため、高粘度流体の吐出量を高いレスポンスで高精度に制御できる。
【0061】
軸方向駆動手段に電磁歪素子を用いることを利用して、可動スリーブの駆動に高周波振動を重畳させれば、吐出ノズル28に直接軸方向の振動を与えることができる。その結果、吐出ノズル先端近傍に表面張力により通常附着する流体魂が排除され、極めて切れ味のよい塗布ができる。これは、回転軸に対して軸方向相対変位を与える軸方向駆動手段(電磁歪素子)をハウジングと可動スリーブの間に配置したことにより得られる効果である(図示せず)。
【0062】
本発明は、既に提案中の「流体供給装置及び流体供給方法」(特願2000−188899号)と比べて、回転部分に軸方向駆動手段を有しないために、回転数の制約が少なく高速化が図れる。その結果、スラスト動圧シールとラジアル溝ポンプの性能アップが図れる。
【0063】
また一方、上記特願で提案された様々な内容も適用することができる。
【0064】
たとえば、紛流体の圧搾・破壊が問題とならない輸送流体を扱う場合は、回転軸の吐出側端面に動圧溝シールを設けなくてもよい。たとえば、吐出流量を抑制する場合は、流体抵抗が対向面間の隙間の3乗に逆比例することを利用して、隙間を僅少にして流体抵抗を増大させてもよい。
【0065】
以下、本発明の第2の実施例について、図4を用いて説明する。
【0066】
前述した第1の実施例では、ポンプ室内の流体を圧送する手段にねじ溝をポンプを用いたが、以下示す実施例では圧送手段は装置の外部にあり、外部から供給された高圧流体を非接触でシールする手段として本発明を用いた場合を示す。
【0067】
101はモータであり、回転軸102とこのモータを収納する上部ハウジング103の間に相対的な回転運動を与えるものである。モータロータ104は回転軸102に固着され、またモータステータ105は上部ハウジング103に収納されている。回転軸102は軸受A106、と、軸受B107により支持されている。
【0068】
108は中間ハウジング、109は回転軸102の吐出側端部に装着されたスラスト動圧シールのつば、110は吸入口、111は下部ハウジング、112は中間ハウジング108と下部ハウジング111の間に固定されたスラストプレートである。このスラストプレート112は軸方向に弾性変形できるようにヒンジ部113が形成されている。114はつば109の端面に形成されたスラスト動圧シールの溝、115はスラストプレート111の中央部に設けられた吐出通路、116はスラストプレート111を吸引する電磁ソレノイドである。流量制御の応答性がそれほど要求されない対象の場合は、このような電磁式でもよい。
【0069】
117は、吸入口110と吐出通路115を連絡するポンプ室、118はモータ101、軸受107部分への流体の侵入を防止する流体シールである。
【0070】
電磁ソレノイド116に電流が印加されていない状態では、つば109の端面とその対向面間のギャップ:δは充分に狭く動圧シールの効果によって吐出は遮断されている。電磁ソレノイド116に電流を印加すると、電磁石によってスラストプレート112を吸引し、ヒンジ部113のバネに抗して、上記ギャップ:δを増大させる。スラスト動圧シールの発生圧力が低下し、供給流体の圧力以下になると動圧流体シールはその効果を失い、吐出流路は開放される。
【0071】
モータにキャンドルモータを用いて、モータのロータとステータ間を輸送流体の流路とし、かつ輸送流体を潤滑流体として利用する動圧軸受で回転体を支持する構成とすれば、機械的なシール部分も無くすることができる(図示せず)。
【0072】
以上、本発明を用いれば、吸入側から吐出通路に至る全流路を、機械的な非接触状態を保ったままで、紛流体を輸送でき、かつその流量を任意に制御できる。そのため本発明は、流路遮断のための機械的な圧搾と破壊が多くの問題を発生させる紛流体、たとえば、接着材、導電性ぺースト、クリームはんだ、蛍光体材料、あるいは人工血液、磁性流体などの流量制御に極めて効果的である。
【0073】
その具体的な機器としての適用対象は、微小流量を取り扱う実施例のディスペンサーに限定されるものではなく、たとえば、上述した紛流体の製造プロセスの各種設備・機器にも適用できる。
【0074】
【発明の効果】
本発明を用いた流体供給方法により、次の効果が得られる。
(1)吸入側から吐出通路に至る全流路を、機械的な非接触状態を保ったままで、紛流体を輸送し、かつその流量を任意に制御できる。その結果粉体の圧搾破損による流路の詰まり、流体の特性変化などのトラブルが発生しない。
(2)高速吐出遮断と開始ができる。
(3)さらに以下示す特徴を、本発明のポンプは合わせ持つことができる。
【0075】
▲1▼高粘度流体の高速塗布ができる。
【0076】
▲2▼超微少量を高精度で吐出できる。
【0077】
本発明を例えば表面実装のディスペンサー、PDP,CRTディスプレイの蛍光体塗布、液晶パネルのシール材塗布、あるいは紛流体の製造プロセス等に用いれば、その長所をいかんなく発揮でき、効果は絶大なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例によるディスペンサーを示す正面断面図
【図2】上記実施例の吐出部の拡大断面図
【図3】本発明の原理を説明するグラフ
【図4】本発明の第2の実施例によるディスペンサーを示す正面断面図
【図5】従来例のエアーパルス方式を示す図
【符号の説明】
1 回転させる手段
2 軸
10 ハウジング
12 スリーブ
14 吸入口
15 吐出口
16 軸方向駆動手段
Claims (5)
- ハウジングと、軸の少なくとも一部を収納し前記ハウジングに固定されたスリーブとで形成される空間に流体を供給し、前記軸と前記ハウジングを相対的に回転させながら、前記ハウジングと前記スリーブ間との間に配置され、かつ、前記軸を軸方向に相対変位を与える一対の軸方向駆動手段を駆動させることで、吐出ノズルから前記流体を吐出する流体供給方法において、
前記軸方向駆動手段のうち一方は前記ハウジングに固定して固定端とし、他方は前記スリーブに固定して可動端とした状態で、前記軸方向駆動手段によって前記スリーブと前記軸とを軸方向に連続的に相対変化させ、前記軸の吐出側端面と前記ハウジングとの隙間をδとしたとき、δ<10.0μmのとき、前記吐出ノズルから吐出する流体を遮断し、δ≧10μmのとき、前記吐出ノズルから流体を吐出すること
を特徴とする流体供給方法。 - 軸方向駆動手段は、電磁歪素子であることを特徴とする請求項1記載の流体供給方法。
- スリーブと軸の軸方向の相対変位を検知する変位センサーの信号を用いて、軸方向駆動手段により前記軸方向の相対変位を調節することを特徴とする請求項1記載の流体供給方法。
- 電磁歪素子の駆動に高周波もしくは超音波振動を重畳させたことを特徴とする請求項2記載の流体供給方法。
- 軸とハウジングを相対的に回転させる手段にキャンドルモータを用い、かつ、そのモータのロータとステータとの間を輸送流体の流路としたことを特徴とする請求項1記載の流体供給方法。
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