JP2004154073A - ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検試料中に存在するポルフィロモナス・ジンジバリス菌を正確及び迅速に検出及び/又は同定することができる分析方法、並びにそれに用いることのできる新規プライマー及びプライマーセットを提供する。
【解決手段】前記分析方法は、被検試料と前記の新規プライマーセットとを用いてDNA断片を増幅する工程、及び前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程を含む。
【選択図】 なし
【解決手段】前記分析方法は、被検試料と前記の新規プライマーセットとを用いてDNA断片を増幅する工程、及び前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程を含む。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis;P.gingivalisと略称することがある)の分析方法に関する。より詳細には、本発明は、歯周病の起因菌を検出及び/又は同定するための診断用検査試薬として、PCR法で合成した二重標識遺伝子増幅生成物に対するイムノクロマトグラフ用ストリップに結合した2種類の標識化合物に特異的なタンパク質又は抗体(モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)を用いた免疫学的な遺伝子検出系に関する。更に詳細には、本検出系が、特定の遺伝子を2種類の標識プライマーを用いて増幅した二重標識DNA生成物のみに反応し、その他の遺伝子と反応しない、診断に有用な免疫学的遺伝子検出系に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポルフィロモナス・ジンジバリスは、ヒト歯周病疾患の原因となる感染因子の1つである。歯周病菌は、嫌気性菌のため、培養して歯周病菌を検体試料中から分離及び同定するには、約1週間かかる。歯周病起因菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス以外に、アクチノバチルス・アクチノマイセテコミタンス(Actinobacillus actinomycetecomitans)、プレボテーラ・インテルメディア(Prevotella intermedia)、バクテロイデス・フォルシタス(Bacteroides forsythus)、トレポネーマ・デンチコーラ(Treponema denticola)、キャンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、又はフソバクテリウム・ヌクレータム(Fusobacterium nucleatum)などが関与している。歯周ポケット内の細菌の菌種及び菌数を調べる検査は重要である。なお、ポルフィロモナス・ジンジバリスは、へミン要求性培地で生育する黒色色素性のグラム陰性桿菌である。
【0003】
歯周病は、嫌気性細菌が関与する歯の支持組織の炎症疾患であり、比較的軽症の歯周炎から、歯の支持組織の破壊に特徴がある劇症の歯周病までの広範囲に及ぶ。歯周炎の進行においては、活動期に歯肉縁下プラーク中の細菌が増加することが報告されている。この細菌の1つは、ポルフィロモナス・ジンジバリスであり、歯肉下プラークのポルフィロモナス・ジンジバリス菌の増加は、歯周炎の悪化に関係しており、5x105個以上では歯周病の起因菌となることが報告されている〔「ペリオドントロジー2000(Periodontology 2000)」,(デンマーク),ムンクスガード・インターナショナル出版社(Munksgaard International Publishers),1994年,第5巻,p.78−111(非特許文献1)]。しかし、これらの細菌は、健康な部位でもしばしば検出され、病的レベルよりも少ない細菌数に制御することが重要である。
【0004】
歯周病の治療を行なう上で、細菌検査及び診断を行なうことが重要となってきており、例えば、歯周病菌の培養、血清検査(例えば、特異抗体によるELISA法や蛍光抗体法)、遺伝子検査(例えば、DNAプローブ法やPCR法)、又は酵素活性測定法などが行なわれている。歯周病菌のどの菌種に感染しているか、あるいは、その菌数が発症の閾値を越えるかどうかが必要となってきている。従って、歯周病菌の疑いのある患者を治療する場合、特定の歯周ポケットに存在する歯周病菌を除菌するため、起因菌の迅速な同定法の開発が望まれている。
【0005】
最近、歯周病患者検体で歯周病菌の迅速性のある検査法として、患者検体から遺伝子を抽出し、歯周病菌に特異的な遺伝子の一部をPCR法で増幅し、その生成物を電気泳動した後、DNAのサイズを確認する方法や、標識DNAプローブとハイブリダイズすることにより歯周病菌の同定が行なわれている。この場合、結果が出るまでに5〜6時間かかる。
特定の部位に歯周病菌が存在しているかどうかを調べる目的で、歯周病菌の迅速診断法として遺伝子診断法が研究されているが、より簡便な診断法に対する関心は依然として高い。
【0006】
【非特許文献1】
「ペリオドントロジー2000(Periodontology 2000)」,(デンマーク),ムンクスガード・インターナショナル出版社(Munksgaard International Publishers),1994年,第5巻,p.78−111
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
歯周病菌感染の診断は、検体(歯周ポケット等の生検組織)から歯周病菌を検出することで確定する。しかし、歯周病菌は嫌気性菌であるため、嫌気性の培養が必要であり、また増殖に時間がかかり、菌種を同定するには1〜2週間の必要である。
本発明の課題は、被検試料(例えば、歯周ポケット内のプラーク、又は培養液)中に存在する歯周病菌の内、歯周病患者の歯周ポケットの歯肉縁下プラーク等に存在する歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌を正確及び迅速に検出及び/又は同定することができる分析方法、並びにそれに用いることのできる新規プライマー及びプライマーセットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、配列番号3又は4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドにより解決することができる。
また、本発明は、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとからなる、プライマーセットに関する。
また、本発明は、配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドに関する。
【0009】
また、本発明は、(1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて、DNA断片を増幅する工程;及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法に関する。
また、本発明は、(1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチドと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドと同種又は異種の標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチドとを用いて、DNA断片を増幅する工程;及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を、前記の各標識物質にそれぞれ特異的に結合可能なパートナーを用いて分析する工程
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法に関する。
また、本発明は、(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子を保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが固定化されているイムノクロマトグラフ用ストリップを含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キットに関する。
また、本発明は、(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーとを担持したラテックス懸濁液
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キットに関する。
また、本発明は、(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドと同種の標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キットに関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔1〕本発明のオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド
本発明のオリゴヌクレオチドには、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが含まれ、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが好ましい。
本発明のオリゴヌクレオチドである、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)、及び配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)を、それぞれ、フォワードプライマー及びリバースプライマーとして用いてPCRを実施することにより、ポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片(例えば、配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド)を増幅することができる。配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド(好ましくは、配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド)も、本発明の範囲に含まれる。なお、本明細書における用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれる。
【0011】
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のゲノム遺伝子は、ポルフィロモナス・ジンジバリス・ゲノムプロジェクト(http://www.pgingivalis.org)で2.2×106bpの塩基配列の解析が行なわれている。また、リボゾームRNAは、ウイルスを除く全生物種に存在し、細菌の分類に約1,500bpの16S rRNA遺伝子配列が用いられている。
なお、16S rRNA遺伝子領域から全ての細菌に共通に使用できるユニバーサルプライマーを設計すれば、全ての細菌由来のDNAを増幅することが可能となる。好気性菌については、既に、ユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅した生成物を制限酵素で切断して同定する方法が報告されている(J.Clinical Micobiology,38,2076−2080,2000)。16S rRNA遺伝子の約1,500bpの塩基配列の内、800〜1,000bpの塩基配列を用いて細菌の系統分類ができることが報告されている(Proc.Natl.Acad.Sci.,82,6955−6959,1985)。
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S rRNA遺伝子、又は16SリボゾームRNAをターゲットにした遺伝子に関して、ユニバーサルプライマーとして配列番号1で表される塩基配列からなるプライマー及び配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーを用いてPCR法で増幅し、1,500bpの16S rRNA遺伝子断片を取得することができる。
【0012】
本発明のオリゴヌクレオチドである、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドにおける、配列番号3で表される塩基配列及び配列番号4で表される塩基配列は、歯周菌として関与している、アクチノバチルス・アクチノミセテコミタンス、プレボテラ・インテルメディア、バクテロイデス・フォルシタス、トレポネマ・デンチコラ、カンピロバクター・レクタス、及びフソバクテリウム・ヌクレアツムの16SrRNA遺伝子の各塩基配列と異なる、ポルフィロモナス・ジンジバリスに特異的な塩基配列である。これらの2種類のプライマーを用いたPCR法で増幅するDNAは、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のみであり、その他の菌種は、増幅しない。
【0013】
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号3で表される塩基配列又は配列番号4で表される塩基配列(塩基数=18)を含み、PCRにおけるプライマーと使用した場合にポルフィロモナス・ジンジバリスを特異的に増幅可能である限り、その塩基数は特に限定されるものではないが、例えば、18塩基〜40塩基であることが好ましく、18塩基〜25塩基であることがより好ましい。
【0014】
本発明のオリゴヌクレオチドは、その5’末端が標識物質で標識化されていることが好ましい。前記標識物質は、PCRに影響を与えることがなく、しかも、その標識物質に特異的に結合可能なパートナーが存在する限り、特に限定されるものではなく、例えば、プライマーの標識化に一般的に用いられる公知の標識物質を使用することができる。このような標識物質としては、例えば、蛍光物質〔例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ジゴキシゲニン、ビオチン等を挙げることができる。これらの標識物質に特異的に結合可能なパートナーとしては、標識物質に対する抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)又はその抗体フラグメント〔例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv等〕を挙げることができる。また、ビオチンに特異的に結合可能なパートナーとしては、抗ビオチン抗体又はそのフラグメント以外にも、例えば、アビジン又はストレプトアビジンを挙げることができる。
【0015】
〔2〕本発明の分析方法及び分析用キット
本発明の分析方法は、
(1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとを用いて、DNA断片を増幅する工程(DNA増幅工程);及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程(分析工程)
を含む。
【0016】
本発明の分析方法で分析することのできる被検試料は、ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある試料である限り、特に限定されるものではないが、例えば、歯周病ポケットのプラーク若しくは生検組織、それらの処理液、又は培養した菌体などを挙げることができる。
【0017】
前記DNA増幅工程は、プライマーセットとして、本発明のオリゴヌクレオチドである、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとの組み合わせを用いること以外は、例えば、通常のPCR法に従って実施することができる。
【0018】
本発明の分析方法で用いる各プライマーは、その5’末端が同種又は異種の標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドであることもできるし、あるいは、標識化されていないオリゴヌクレオチドであることもできる。
各プライマーの5’末端が同種又は異種の標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドを用いると、分析工程において、前記標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法(例えば、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、又はサンドイッチ法など)を用いることができるため、好ましい。電気泳動法を用いることなく、簡易且つ迅速に検出・同定することができるからである。
【0019】
なお、標識物質として同種又は異種の標識物質を用いるかは、後述の分析工程の説明の際に詳述するように、分析工程において利用する分析手法により、適宜決定することができる。
例えば、分析工程における分析手法として、ラテックス凝集法又はサンドイッチ法を利用する場合には、同種の標識物質を用いることもできるし、あるいは、異種の標識物質を用いることもできる。一方、分析工程における分析手法として、イムノクロマトグラフ法を利用する場合には、その実施形態により、利用可能な標識物質の種類が制限されることがあり、異種の標識物質を用いることが必要な場合がある。
【0020】
前記分析工程では、前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する。反応生成物の分析方法としては、PCR産物の分析に用いられる通常の分析方法を用いることができ、例えば、分子生物学的手法、あるいは、標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法(例えば、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、又はサンドイッチ法など)等を挙げることができる。なお、前記DNA増幅工程で得られた反応生成物は、そのまま直接、あるいは、適当な処理を行なった処理物(例えば、適当に希釈又は濃縮した希釈物又は濃縮物)として、分析工程にかけることができる。
【0021】
分子生物学的手法を用いる場合には、例えば、ゲル(例えば、アガロースゲル)電気泳動を実施した後、そのゲルをそのまま、あるいは、メンブレンに転写し、予想されるDNAサイズを有するバンドの有無により、あるいは、プローブとのハイブリダイズの有無により、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在することを決定することができる。
なお、分析工程において分子生物学的手法を用いる場合には、DNA増幅工程で用いる各プライマーは、その5’末端が各々異なる標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドであることもできるし、あるいは、標識化されていないオリゴヌクレオチドであることもできる。
【0022】
一方、分析工程において、標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法を用いる場合には、DNA増幅工程で用いる各プライマーとして、その5’末端が同種又は異種の標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドを用いる。以下、本発明の分析方法において、分析工程で、標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法を用いる態様を、特に、本発明の結合パートナー型分析方法と称する。
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、及びサンドイッチ法を利用する各態様について、以下、この順序に従って説明する。
【0023】
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、イムノクロマトグラフ法を用いる場合には、例えば、イムノクロマトグラフ用ストリップとして、プライマーの標識化に用いた2種類の標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子(すなわち、着色粒子コンジュゲート)を、固相担体に保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが、前記固相担体に固定化(すなわち、固相化)されているイムノクロマトグラフ用ストリップを使用することができる。
【0024】
前記固相担体としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、又はガラス繊維フィルター等を用いることができる。
前記着色粒子としては、例えば、金属コロイド(例えば、金コロイド等)、非金属コロイド(例えば、ポリスチレンコロイド等)、又はリポゾーム等を用いることができる。
標識物質に特異的に結合可能なパートナーとしては、例えば、標識物質に対する抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)又はその抗体フラグメント〔例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv等〕を用いることができる。また、ビオチンに特異的に結合可能なパートナーとしては、抗ビオチン抗体又はそのフラグメント以外にも、例えば、アビジン又はストレプトアビジンを挙げることができる。以下、固相担体に固定化させる前記パートナーを「固定化用パートナー」と称し、着色粒子に結合させ、着色粒子コンジュゲートとして固相担体に保持させる前記パートナーを「保持用パートナー」と称する。
【0025】
本発明の結合パートナー型分析方法で用いることのできる前記イムノクロマトグラフ用ストリップでは、被検試料の展開方向に関して、上流側に、着色粒子コンジュゲートの保持領域(例えば、塗布領域)を設け、下流側に、固定化用パートナーの固定領域を設ける。固定化用パートナー(例えば、抗体)の固相への結合は、例えば、約1μg/mLの抗体溶液を固相担体に加え、室温放置することにより行なうことができる。タンパク質の非特異的吸着をブロックするために、例えば、1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でブロッキングすることが好ましい。
なお、陰性コントロールとして、例えば、マウスIgG又はウサギIgGを固定する領域は、固定化用パートナーの固定領域の更に下流側に設けることもできるし、設けないでおくこともできるが、検査を正確にするためには設ける方が好ましい。
【0026】
イムノクロマトグラフ法を用いる本発明の結合パートナー型分析方法では、固相担体に固定化された固定化用パートナーと、固相担体に保持された着色粒子コンジュゲートとを介して、DNA増幅工程で増幅した二重標識DNA生成物を検出する。担体の役割は、被検出物(二重標識DNA生成物)と着色粒子コンジュゲートとを展開し、固定化された固定化用パートナーと反応させ、更に、未反応物を分離することにある。
【0027】
より具体的には、クロマトグラフ用ストリップの着色粒子コンジュゲートを塗布した側の端に、DNA増幅工程で得られた反応生成物又はその処理物(例えば、希釈物又は濃縮物)が接触すると、この水溶液はクロマトグラフ用ストリップに吸収及び展開され、先端に向かって浸透する。前記接触方法としては、例えば、被検試料滴下部位に滴下する方法、あるいは、容器(例えば、ウェル)内の被検試料を吸着する方法などを挙げることができる。着色粒子コンジュゲートを塗布した領域に達すると、二重標識DNA生成物は、保持用パートナーを介して着色粒子コンジュゲートと結合し、更にクロマトグラフ用ストリップ上を移動する。そして、この二重標識DNA生成物と着色粒子コンジュゲートとの複合体が、固定化用パートナーを固定した領域に達すると、二重標識DNA生成物は、この固定化用パートナーに結合し、トラップされる。その結果、二重標識DNA生成物と着色粒子コンジュゲートとの複合体は、この領域で停止し、これ以上移動しない。イムノクロマトグラフ法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法では、この着色粒子の担体上での集積を目視により観察することにより、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在すること(すなわち、被検試料の陽性又は陰性)を判定することができる。
【0028】
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、ラテックス凝集法を用いる場合には、DNA増幅工程で得られた反応生成物と接触させるラテックス懸濁液として、プライマーを標識化するのに用いた標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液を用いること以外は、通常のラテックス凝集法をそのまま適用して実施することができる。
ラテックス凝集法を用いる場合には、2個1組のプライマーセットに対して用いる標識物質の種類は、同種(すなわち、1種類)であることもできるし、あるいは、異種(すなわち、2種類)であることもできる。同種であると、競合が生じて凝集度に影響を与える可能性があるため、異種の標識物質を用いることが好ましい。
【0029】
2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、異種の標識物質を用いる場合には、それらの2種類の標識物質に、それぞれ、特異的に結合可能な2種類のパートナー(すなわち、一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナー)を担持したラテックス懸濁液を使用する。一方、2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、同種の標識物質を用いる場合には、その1種類の標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液を使用する。
【0030】
ラテックスとしては、通常の免疫分析用試薬に使用可能なラテックスである限り、特に限定されるものではなく、例えば、ポリスチレン、又はスチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体などを挙げることができる。ラテックスの平均粒径は、測定対象物の検出濃度又は測定機器によって適宜選択することができ、例えば、0.05〜0.5μmであることができる。
2種類のパートナーを用いる場合には、それらをラテックス上に担持させる形態としては、例えば、2種類のパートナーを混合した状態で、同一のラテックス上に担持させることもできるし、あるいは、2種類のパートナーを、それぞれ、別々のラテックス上に担持させることもできる。
パートナーを担持するラテックス懸濁液は、公知方法、例えば、物理的又は化学的結合により感作させることにより、調製することができる。
【0031】
DNA増幅工程で得られた反応生成物又はその処理物(例えば、希釈物又は濃縮物)と、前記ラテックス懸濁液とを接触させると、前記反応生成物中に二重標識DNA生成物が存在する場合には、特異的結合反応(例えば、抗原抗体反応)により凝集が生じる。
例えば、抗原抗体反応の条件は、通常の免疫学的ラテックス比濁分析方法の実施条件と同様であることができ、例えば、反応のpHは、6〜8.5で実施することができる。反応温度は0〜50℃であることが好ましく、20〜40℃がより好ましい。反応時間は、適宜決定することができ、例えば、汎用自動分析機では10〜15分間で測定を完了することができる。
【0032】
特異的結合反応(例えば、抗原抗体反応)により生じた凝集の程度は、公知の分析方法、例えば、光学的分析方法により分析することができる。前記光学的分析方法としては、例えば、反応液に光を照射して散乱光又は透過光を分析する方法を挙げることができ、より具体的には、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を測定する光学機器を用いて分析を行なうことができる。好ましい測定波長は300〜800nmである。前記光学機器を用いた分析では、公知の方法に従って、用いるラテックス粒子の大きさ及び/又は濃度の選択、並びに反応時間の設定により、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度の増加又は減少を測定することにより実施することができる。また、これらの方法を併用することも可能である。ラテックス凝集法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法では、ラテックスの凝集の程度を観察することにより、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在すること(すなわち、被検試料の陽性又は陰性)を判定することができる。
【0033】
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、サンドイッチ法を用いる場合には、分析対象化合物に対する抗体の代わりに、プライマーを標識化するのに用いた標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いること以外は、通常のサンドイッチ法をそのまま適用して実施することができる。
2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、異種の標識物質を用いる場合には、それらの2種類の標識物質に、それぞれ、特異的に結合可能な2種類のパートナーを使用する。一方、2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、同種の標識物質を用いる場合には、その1種類の標識物質に特異的に結合可能なパートナーを使用する。
【0034】
具体的には、例えば、プライマーの標識化に用いた2種類の標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能な第1のパートナーを、適当な不溶性担体に固定化する。次に、不溶性担体と体液試料との非特異的結合を避けるために、適当なブロッキング剤〔例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)やゼラチン等〕で不溶性担体の表面を被覆する。続いて、DNA増幅工程で得られた反応生成物又はその処理物(例えば、希釈物又は濃縮物)を加えて一定時間(例えば、5分〜3時間)及び一定温度(例えば、4℃〜40℃、好ましくは室温付近)で接触させ、反応させる(1次反応)。続いて、プライマーの標識化に用いた2種類の標識物質の残る一方に特異的に結合可能な第2のパートナーに標識物質を付した標識化第2パートナーを加えて一定時間(例えば、5分〜3時間)及び一定温度(例えば、4℃〜40℃、好ましくは室温付近)で接触させ、反応させる(2次反応)。これを適当な洗浄液(例えば、界面活性剤を含む生理食塩水)で洗浄してから、不溶性担体上に存在する標識化第2パートナーの量を定量する。その値から、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在すること(すなわち、被検試料の陽性又は陰性)を判定することができる。
2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、同種の標識物質を用いる場合には、前記第1及び第2パートナーに代えて、その1種類の標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いること以外は、同様にして実施することができる。また、1次反応と2次反応とを同時に行なうことも可能である。
【0035】
前記不溶性担体としては、例えば、高分子(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、又はポリサッカライド等)、ニトロセルロース、紙、若しくはアガロース、又はこれらの組み合わせ等を例示することができる。
第2パートナーに付す標識物質としては、例えば、酵素、蛍光物質、又は発光物質を挙げることができる。酵素としては、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、又はβ−D−ガラクトシダーゼ等、また、蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート等、また、発光物質としては、例えば、アクリジニウムエステル又はルシフェリン等を使用することができる。
【0036】
本発明の分析用キットには、分析工程における分析手法としてイムノクロマトグラフ法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法に用いることのできる分析用キット(以下、イムノクロマトグラフ型分析用キットと称する)と、分析工程における分析手法としてラテックス凝集法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法に用いることのできる分析用キット(以下、ラテックス凝集型分析用キットと称する)とが含まれる。
【0037】
本発明のイムノクロマトグラフ型分析用キットは、
(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3で表される塩基配列からなり、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号4で表される塩基配列からなり、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子を保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが固定化されているイムノクロマトグラフ用ストリップ
を含む。
【0038】
本発明のラテックス凝集型分析用キットは、
(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3で表される塩基配列からなり、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号4で表される塩基配列からなり、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーとを担持したラテックス懸濁液
を含む。
【0039】
以下、本発明の具体的な実施手順の一例を示し、本発明をより具体的に説明する。
1)プローブの設計
16S rRNA遺伝子のクローニング用プライマーとして、配列表の配列番号1及び2で表される各塩基配列を設計する。その16S rRNA遺伝子の塩基配列をジデオキシ法で決定する。
標識化合物として5’−末端にFITC又はビオチンを付加する。具体的には、配列表の配列番号3及び4で表される各塩基配列を設計し、その遺伝子増幅生成物の塩基配列として配列表の配列番号5及び6で表される各塩基配列を決定する。
【0040】
2)DNAの合成
381型DNA自動合成装置(アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により、配列表に記載した配列で表されるオリゴDNAを4種類合成する(以下、配列番号1〜4と称する)。DNAのプライマーとして、配列番号1〜4で表される塩基配列からなるDNAは、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S
rRNAの鋳型特異的なプライマーである。
なお、配列番号3で表される塩基配列の5’末端にFITCを含む塩基数18個からなるオリゴDNA、及び配列番号4で表される塩基配列の5’末端にビオチンを含む塩基数18個からなるオリゴDNAを合成する。
【0041】
3)PCR法によるDNA生成物の確認
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌から調製したDNAを用いて、PCR装置で95℃で熱変性し、前記のプライマー(配列番号1及び2)を添加すると、16S DNAに特異的に結合する。
次に、DNAポリメラーゼ、特には耐熱性DNAポリメラーゼ(PwoDNAポリメラーゼ:Roche社)を添加し、以下のPCR法による増幅サイクルを行なう。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔94℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマーとのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で1分30秒間〕からなり、1サイクル毎にDNA量は2倍に増幅されるが、このサイクルを30回繰り返す。
【0042】
4)プラスミドの作製
市販のプラスミドベクターpZErO−1(Invitrogen社)を制限酵素EcoRV(37℃,2時間)で消化して、増幅したPCR産物がベクターに挿入できるようにする。この制限酵素で切断したベクター2.8kbpとPCRにより合成した約1,500bpのDNAをライゲーション・キット(宝酒造)を用いて、16℃で30分間反応させる。
【0043】
5)大腸菌の形質転換
組み換えプラスミドと、市販の大腸菌DH5α株(宝酒造)を50mmol/L−CaCl2で処理して作成したコンピテント細胞とを氷中で30分間インキュベートし、42℃で30秒間熱処理した後、37℃でSOC培地にて1時間培養する。この大腸菌を、50μg/mLゼオシン(Zeocin;Invitrogen社)及び1mmol/Lイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を含むYT寒天平板上にまき、37℃で一夜培養を行なう。
生じたゼオシン耐性で透明なコロニーを、各々新たな50μg/mLゼオシンを含むYTブロスで37℃一夜培養をし、アルカリ溶菌法にてプラスミドDNAを単離する(Molecular Cloning,A LaboratoryMannual 2nd Edition,J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis;Cold Spring Harbor Laboratory,New York)。
【0044】
6)PCR法による二重標識DNA生成物の作製
前記で調製したDNAを、PCR装置において95℃で熱変性し、前記プライマー(配列番号3及び4)を添加すると、16S rRNA遺伝子に特異的に結合する。
次に、Pwo DNAポリメラーゼ(Roche製)を添加し、以下のPCR法による増幅サイクルを行なう。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔94℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマーとのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で30秒間〕からなり、1サイクル毎にDNA量は2倍に増幅されるが、このサイクルを30回繰り返す。
【0045】
7)イムノクロマトグラフ用ストリップの作製
薄片状のクロマトグラフ基材(ニトロセルロース膜)の片方に金コロイド標識したストレプトアビジンを塗布し、他方に第2の抗FITCモノクローナル抗体を固定する。
抗FITC抗体の固相への結合は、例えば、約1μg/mLの抗体溶液をニトロセルロースに加え、室温放置することにより行なうことができる。タンパク質の非特異的吸着をブロックするために、1%BSA/PBSでブロッキングすることができる。
【0046】
イムノクロマトグラフ法では、クロマトグラフ用ストリップの金コロイド標識ストレプトアビジンを塗布した側の端に、被検試料中のPCR法によるDNA生成物、又は希釈液が接すると、この水溶液はクロマトグラフ用ストリップに吸収及び展開され、先端に向かって浸透する。金コロイド標識ストレプトアビジンを塗布した領域に達すると、DNA生成物は金コロイド標識ストレプトアビジンと結合し、更にクロマトグラフ用ストリップ上を移動する。そして、このPCR生成物と金コロイド標識結合物が、抗FITC抗体を固定した領域に達すると、DNA生成物はこの抗FITC抗体に結合し、トラップされる。その結果、金コロイド標識結合物は、この領域で停止し、これ以上移動しない。イムノクロマトグラフ法では、この着色粒子の担体上での集積を目視により観察して、検体の陽性/陰性を判定する。
【0047】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S rRNA遺伝子のクローニング》
本実施例では、市販のキット(Genとるくん;宝酒造製)を用いてポルフィロモナス・ジンジバリスの菌体からゲノムDNAを単離した後、2種類のプライマーとして配列番号1及び配列番号2で表される塩基配列からなるDNAを用いてPCR法で16S rRNA遺伝子を増幅し、約1.5kbpのDNAを得た。このPCR産物をプラスミドpZErO−1のEcoRV サイトを利用して、T4DNAリガーゼで結合して組み換えプラスミドを作成した。各工程の手順は、以下に示す通りである。
【0048】
(1)ポルフィロモナス・ジンジバリスの培養
GAM寒天培地(日水製薬製)にビタミンK及びヘミンを添加し、嫌気バッグ(ダイアヤトロン社)を用いて、ポルフィロモナス・ジンジバリスATCC 33277株の培養を48時間行なった。
【0049】
(2)合成DNAの作成
381型DNA自動合成装置(アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により、4種類のプライマーDNA(配列番号1〜配列番号4)を合成した。配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーDNAの5’−末端は、FITC標識dATPを用い、配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーDNAの5’−末端は、ビオチン標識dGTPを用いて合成した。
ユニバーサルプライマー1(配列番号1)及びユニバーサルプライマー2(配列番号2)の各塩基配列は、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のゲノムDNAの16S rRNA遺伝子を増幅するものである。従って、プライマー1とプライマー2を用いてPCR法で増幅されるDNA生成物(I)は、1,500塩基対である。
【0050】
なお、前記ユニバーサルプライマー(配列番号1及び配列番号2)は、参考文献〔Lane, D.J. (1991). 16S/23S rRNA sequencing. Nucleic acid techniques in bacterial systematics. E. Stackebrandt and M. Goodfellow, eds. New York, NY, John Wiley and Sons: 115−175〕のプライマー27f及びプライマー1492fを引用したものである。
また、ポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC 33277)の16S rRNAの塩基配列は、GenBankのACCESSION:L16492(1474bp)から引用した。配列番号3で表される塩基配列は、その第841番〜第858番であり、配列番号4で表される塩基配列は、第1002番〜第1019番である。また、配列番号1で表される塩基配列は、第8番〜第27番であるが、配列番号2で表される塩基配列は、この中には含まれていない。
【0051】
(3)遺伝子の増幅
実施例1(1)で培養したポルフィロモナス・ジンジバリス菌から調製したゲノムDNAと、実施例1(2)で合成したプライマー1及びプライマー2とを用いてPCRを行なった。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔95℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマー(配列番号1及び2)とのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で1分30秒間〕からなり、このサイクルを30回繰り返した。
【0052】
(4)組み換えプラスミドの作製
クローニングベクターとして、pZErO−1ベクター(Invitrogen製)を用いた。実施例1(3)で得られたDNA生成物(I)とpZErO−1ベクターのEcoRVサイトを利用して、T4DNAリガーゼで結合して組み換えプラスミドを作成した。
具体的には、PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動で分離し、約1,500bpのバンドを切り取り、市販のカラム(GenElute AGAROSE SPIN COLUMN;SIGMA社)で精製した。DNAライゲーション・キット(宝酒造)を用いて、DNA(I)3μLとpZErO−1ベクター(制限酵素EcoRVで処理したもの)1μLとを加え、更にライゲーション溶液I(酵素液)4μLを加えて16℃で30分間反応させ、ライゲーションを行ない、プラスミドDNA(II)を作製した。
【0053】
(5)形質転換
実施例1(4)で得られた組み換えDNAを用いて、常法により形質転換を行なった。すなわち、50mmol/L−CaCl2処理して作製したコンピテントセル(大腸菌DH5α株)にプラスミドDNAを導入した。
【0054】
(6)形質転換体に含まれる16S rRNA遺伝子の単離
実施例1(5)で得られた形質転換体であるコロニーを、50μg/mLゼオシン(Zeocin;Invitrogen社)を含むYT−ブロスに接種し、37℃で一夜培養を行なった。この培養液1.5mLをエッペンドルフチューブに入れ、遠心分離で菌体を集め、アルカリ溶菌法にてプラスミドDNAを単離した。
【0055】
(7)塩基配列の決定
実施例1(6)で得られたDNAと市販のキット(BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit;アプライドバイオシステムズ社)を用いてPCR反応を行ない、この反応溶液をDNAシークエンサー装置(373A−18 DNAシークエンサー装置;アプライドバイオシステムズ製)にアプライし、ジデオキシ法で塩基配列を決定した。
【0056】
【実施例2】
《179bp DNA遺伝子の増幅》
本実施例では、実施例1で作製したポルフィロモナス・ジンジバリスのrRNA遺伝子(1.5kbp)を含むクローンからDNAを単離し、2種類のプライマーとして配列番号3及び配列番号4で表される塩基配列からなるDNAを用いてPCR法でDNA増幅を行ない、そのPCR生成物量及び塩基配列を確認した。
【0057】
(1)遺伝子の増幅
実施例1で作製した1.5kbpのrRNA遺伝子配列を含むプラスミドDNAと、実施例1(2)で合成した2種類の標識プライマー、すなわち、プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)を用いてPCRを行なった。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔95℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマー(配列番号3及び4)とのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で30秒間〕からなり、このサイクル数による二重標識PCR生成物量を確認するため、10回、15回、20回、及び30回の反応を行なった。
【0058】
結果を図1に示す。図1は、PCR生成物の0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。各レーンは、下記のとおりである:
レーン1:DNAマーカー(123bp DNA Ladder;GIBCO BRL製);
レーン2:DNAマーカー(DNA Molecular weight marker VIII;ベーリンガー・マンハイム製);
レーン3:PCRのサイクル数10回の生成物;
レーン4:PCRのサイクル数15回の生成物;
レーン5:PCRのサイクル数20回の生成物;
レーン6:PCRのサイクル数30回の生成物;
レーン7:PCRのサイクル数30回の生成物を10倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;
レーン8:PCRのサイクル数30回の生成物を50倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;
レーン9:PCRのサイクル数30回の生成物を100倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;
レーン10:PCRのサイクル数30回の生成物を200倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;及び
レーン11:PCRのサイクル数30回の生成物を500倍希釈し、その5μLをアプライしたもの。
【0059】
(2)179bpDNAの精製
実施例2(1)で得られたポルフィロモナス・ジンジバリスのPCR生成物を12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にアプライし、DNAマーカー(123bp DNA Ladder;GIBCO BRL製)から判断し、179bpバンドに相応するバンドを切り取り、市販のキット(DNA Prep;ダイアヤトロン社)を用いてDNAを精製した。
【0060】
(3)塩基配列の決定
実施例2(2)で得られたポルフィロモナス・ジンジバリスのDNAと市販のキット(BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit;アプライドバイオシステムズ社)を用いてPCR反応を行ない、この反応溶液をDNAシークエンサー装置(373A−18 DNAシークエンサー装置;アプライドバイオシステムズ製)にアプライし、ジデオキシ法で塩基配列を決定した。
【0061】
【実施例3】
《各種菌体から単離したゲノムを用いたPCR法によるDNA増幅》
本実施例では、実施例1で作製したポルフィロモナス・ジンジバリスのrRNA遺伝子(1.5kbp)を含むクローン、及び各種菌体(ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノバチルス・アクチノミセテコミタンス、プレボテラ・インテルメディア、及び大腸菌の培養菌株)からDNAを単離し、2種類の標識プライマーとして配列番号3及び配列番号4で表される塩基配列からなるDNAを用いてPCR法でDNA増幅を行なった。
【0062】
(1)DNAの分離
寒天平板上の各種培養菌株のコロニーから少量つま楊枝で採取し、市販のDNA調製キット(Genとるくん;宝酒造製)により調製した。
【0063】
(2)遺伝子の増幅
実施例3(1)で得たDNAと、実施例1(2)で合成した2種類の標識プライマー、すなわち、プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)を用いてPCRを行なった。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔95℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマー(配列番号3及び4)とのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で30秒間〕からなり、このサイクルを30回繰り返した。
【0064】
(3)179bpDNAの確認
実施例3(2)で得られたPCR生成物を12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にアプライし、DNAマーカー(123bp DNA Ladder;GIBCO BRL製)を指標として、179bpバンドの有無を確認した。
【0065】
【実施例4】
《イムノクロマトグラフ用ストリップの作製》
本実施例では、PCR生成物捕捉用抗体としてモノクローナル抗FITC抗体(ZYMED Laboratories製)又はポリクローナル抗FITC抗体(ZYMED Laboratories製)を、金コロイド標識物としてストレプトアビジン(TRINA Bioreactives製)を用いて、PCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップを作製した。
【0066】
(1)イムノクロマトグラフ用メンブレンの作製
ポリアミド(ナイロン66)製メンブレン(Immunodyne ABC,孔径=3.0μm;Pall Corporation製)を5mm×20mmのサイズに裁断した。
メンブレンの上流側の一端から8mmの位置に、PCR生成物の検出ゾーンとして、モノクローナル抗FITC抗体溶液又はポリクローナル抗FITC抗体溶液〔各々濃度0.5mg/mL;5mmol/Lホウ酸緩衝液(pH8.5)で希釈〕を幅1mmの線状に塗布した。
また、メンブレンの上流側の一端から13mmの位置に、陰性コントロールゾーンとして、マウスIgG溶液〔濃度0.5mg/mL;5mmol/Lホウ酸緩衝液(pH8.5)で希釈〕を、幅1mmの線状に塗布した。
室温下で1時間、37℃下で30分間静置し、各々の抗体を固相化した。メンブレンを0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む5mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.5)に浸し、室温及び相対湿度20%以下の条件下で30分間緩やかに振とうし、ブロッキングした。メンブレンの過剰のブロッキング液を除き、室温下で一夜静置し、乾燥させ、二重標識PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用抗体固相化メンブレンとした。
【0067】
(2)金コロイド標識ストレプトアビジン懸濁液の作製
ストレプトアビジン(濃度1mg/mL)1mLを2mmol/L−Na2B4O7緩衝液(pH6.5)(以下、Borax緩衝液と称する)3,000mL中で4℃下で一夜透析した。ストレプトアビジン溶液は、4℃下、100,000×gで1時間遠心分離した後、その上清を、100,000×gで1時間遠心分離したBorax緩衝液で100μg/mLとなるように希釈した。金コロイド液(GOLD COLLOID 20nm;British BioCellInternational製)100mLを、0.2mol/L−K2CO3溶液及び0.2mol/L−H3PO4溶液でpH6.5に調整した。金コロイド液20mLを撹拌しながら、希釈したストレプトアビジン溶液2mLを徐々に滴下し、室温下で30分間撹拌した。更に、撹拌しながら10%BSA溶液(pH9.0;4℃下、100,000×gで1時間遠心分離した上清)2.5mLを滴下した後、室温下で30分間撹拌した。10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。沈殿した金コロイド標識ストレプトアビジンを、0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8.0)(0.45μmフィルター濾過)20mLに再懸濁させ、10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。更に、沈殿した金コロイド標識ストレプトアビジンを、0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8.0)(0.45μmフィルター濾過)20mLに再懸濁させ、10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。最後に、沈殿した金コロイド標識ストレプトアビジンを、0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8,0)(0.45μmフィルター濾過)に再懸濁させた後、波長520nmにおける吸光度が約10になるように濃度調整し、表面をシリコン処理したガラス試験管に移し、密栓し、4℃下に保存し、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用金コロイド標識ストレプトアビジン懸濁液とした。
【0068】
金コロイド標識ストレプトアビジン懸濁液は、波長520nmにおける吸光度が3.0になるように、5.0%ショ糖を含む2mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.3)で希釈した後、その7μLを、吸収パッドアキュウィックAW14−20T4(Pall Corporation製)を5mm×5mmのサイズに裁断したものに塗布し、シリカゲルデシケーター内で室温下、一夜減圧(≦50mmHg)乾燥したものを、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用金コロイド標識ストレプトアビジンパッドとした。
【0069】
(3)イムノクロマトグラフ法用吸収パッドの作製
グラスファイバーパッド(タイプA/B;Pall Corporation製)を5mm×18mmのサイズに裁断したものを、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用試料添加パッドとした。グラスファイバーパッド(タイプA/E;Pall Corporation製)を5mm×25mmのサイズに裁断したものを、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用吸収パッドとした。
【0070】
(4)イムノクロマトグラフ用ストリップ
5mm×60mmのサイズに裁断したプラスティック粘着シート(BioDot製)に、上流側より、試料添加パッド、金コロイド標識ストレプトアビジンパッド、抗体固相化メンブレン、及び吸収パッドの順に、各々その両端を隣接する部材と1mm重ね合わせて貼付し、PCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップとした。
【0071】
【実施例5】
《イムノクロマトグラフ法によるPCR生成物の測定》
本実施例では、実施例4で作製したイムノクロマトグラフ用ストリップを用いて、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法を実施した。
【0072】
(1)PCR法のサイクル回数別によるPCR生成物の検出
実施例2(1)で使用した2種類の標識プライマーを用い、PCR法のサイクル回数として、10回、15回、20回、及び30回の反応をそれぞれ行なった。これらのPCR反応液10μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液90μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを、水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、室温下で10分間展開した。
【0073】
メンブレンのモノクローナル抗FITC抗体を固相化した部分、及び陰性コントロール抗体を固相化した部分の金コロイドの捕捉に基づく赤紫〜紫色の着色の有無を目視観察し、PCR生成物の有無を判定した。モノクローナル抗FITC抗体固相化イムノクロマトグラフ用ストリップでのPCR生成物の測定結果を表1に示す。表1において、「−」は陰性、「+」は弱陽性、「++」は中陽性、「+++」は強陽性であることを示す。
今回行なったPCR法では、PCRのサイクル回数10回では二重標識PCR生成物が、まだ、あまり産生されておらず、イムノクロマトグラフ用ストリップで測定することができなかった。PCRのサイクル回数が15回、20回、及び30回では、二重標識PCR生成物をイムノクロマトグラフ用ストリップを用いて測定することができた。
【0074】
【0075】
(2)PCR生成物の希釈溶液の測定
実施例5(1)においてPCR法のサイクル回数として30回を行なった反応液を、20mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.5)で、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、及び1000倍にそれぞれ希釈した溶液、並びに20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)の各100μLを水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、室温下で10分間展開した。
【0076】
メンブレンのモノクローナル抗FITC抗体又はポリクローナル抗FITC抗体を固相化した部分、及び陰性コントロール抗体を固相化した部分の金コロイドの捕捉に基づく赤紫〜紫色の着色の有無を目視観察し、PCR生成物の有無を判定した。
図2に、モノクローナル抗FITC抗体を固相化したメンブレンを組み込んだPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでの結果を示す。
また、表2に、モノクローナル抗FITC抗体を固相化したメンブレンを組み込んだPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでの測定結果を示す。また、表3に、ポリクローナル抗FITC抗体を固相化したメンブレンを組み込んだPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでの測定結果を示す。表2及び表3において、「−」は陰性、「±」は擬陽性、「+」は弱陽性、「++」は中陽性、「+++」は強陽性であることを示す。
【0077】
図2において、レーン1は、50mmol/L−Tris−HCl(pH8.0)100μLをアプライした結果であり、レーン2は、ビオチン結合抗IgG抗体溶液100μLをアプライした結果であり、レーン3〜レーン8は、PCR生成物を10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、及び1000倍にそれぞれ希釈した溶液100μLをアプライした結果であり、レーン9は、希釈用緩衝液(すなわち、リン酸塩緩衝液)100μLをアプライした結果である。図2において、展開方向は、下から上へ向かう方向(すなわち、下方が試料添加パッド側であり、上方が吸収パッド側である)である。また、レーン1及び2に共通して観察される上方のバンドは、陰性コントロールとしてのマウスIgGを塗布したゾーンであり、レーン2のバンドはマウスIgGの検出ゾーンであり、レーン1のバンドは非特異反応で生じたものである。
【0078】
モノクローナル抗FITC抗体を固相化抗体に用いたPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでは、元の被検液を500倍希釈したものまで検出可能であり、ポリクローナル抗FITC抗体を固相化したPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでは、元の被検液を1,000倍希釈したものまで検出可能であった。
【0079】
【0080】
【0081】
(3)培養菌株を用いたPCR生成物の測定
実施例2(1)で使用した2種類の標識プライマー〔プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)〕を用いて、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノマイセテコミタンス(A.actinomycetecomitans)、プレボテーラ・インテルメディア(P.intermedia)、及び大腸菌(E.coli)の培養菌株を用いて、同一のPCR反応を行なった。
これらのPCR反応液10μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液90μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを、水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、同様に室温で10分間展開した。
【0082】
モノクローナル抗FITC抗体固相化イムノクロマトグラフ用ストリップでのPCR生成物の測定結果を表4に示す。表4において、「−」は陰性、「++」は中陽性であることを示す。このイムノクロマトグラフ用ストリップでポルフィロモナス・ジンジバリスのみに特異的に反応する結果が得られた。
【0083】
【0084】
(4)患者試料から得られたPCR生成物の測定
歯周病患者試料を用いて、実施例2(1)で使用した2種類の標識プライマー〔プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)〕を用いて、PCR反応を行なった。
これらのPCR反応液10μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液90μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを、水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、同様に室温で10分間展開した。
【0085】
モノクローナル抗FITC抗体固相化イムノクロマトグラフ用ストリップでの患者検体を用いたPCR生成物の測定結果を表5に示す。表5において、「−」は陰性、「±」は擬陽性、「+」は弱陽性、「++」は中陽性であることを示す。
【0086】
【0087】
【発明の効果】
現在、国内で歯周病菌の迅速検査法として、患者検体から遺伝子を抽出し、歯周病菌に特異的な遺伝子をPCR法で増幅し、その生成物を電気泳動した後、DNAのサイズを確認する方法や標識DNAプローブとハイブリダイズすることにより歯周病菌の同定する研究が行われている。また、歯周病菌が産生するプロテアーゼ活性を測定する酵素法で、歯周病菌の感染の有無を調べる検査が行なわれている。しかし、歯周病菌の菌種や定量ができない欠点がある。従って、歯周病菌の同定を行なうには、更に歯周病菌を培養して菌体を増やした後、生化学性状試験により、1〜2週間かけて菌種の同定が行なわれている。
【0088】
本発明のオリゴヌクレオチド及び本発明の分析方法によれば、被検試料中に存在する歯周病菌の1つ、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S rRNA遺伝子断片を、2種類の標識プライマーを用いてPCR法で増幅した後、その二重標識DNA生成物を、例えば、分子生物学的手法又は免疫学的手法(特には、イムノクロマトグラフィー法)を用いて分析することにより、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌を特異的に検出することができる。また、前記二重標識DNA生成物を免疫学的手法(特には、イムノクロマトグラフィー法)を用いて分析することにより、電気泳動法を用いることなく、簡易且つ迅速に検出・同定することができる。また、常在菌として口腔内に存在する菌数と歯周病に進展する菌数を半定量的に測定することができる。
【0089】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】PCR生成物の電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。
【図2】PCR生成物のイムノクロマト法の結果を示す、図面に代わる写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis;P.gingivalisと略称することがある)の分析方法に関する。より詳細には、本発明は、歯周病の起因菌を検出及び/又は同定するための診断用検査試薬として、PCR法で合成した二重標識遺伝子増幅生成物に対するイムノクロマトグラフ用ストリップに結合した2種類の標識化合物に特異的なタンパク質又は抗体(モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)を用いた免疫学的な遺伝子検出系に関する。更に詳細には、本検出系が、特定の遺伝子を2種類の標識プライマーを用いて増幅した二重標識DNA生成物のみに反応し、その他の遺伝子と反応しない、診断に有用な免疫学的遺伝子検出系に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポルフィロモナス・ジンジバリスは、ヒト歯周病疾患の原因となる感染因子の1つである。歯周病菌は、嫌気性菌のため、培養して歯周病菌を検体試料中から分離及び同定するには、約1週間かかる。歯周病起因菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス以外に、アクチノバチルス・アクチノマイセテコミタンス(Actinobacillus actinomycetecomitans)、プレボテーラ・インテルメディア(Prevotella intermedia)、バクテロイデス・フォルシタス(Bacteroides forsythus)、トレポネーマ・デンチコーラ(Treponema denticola)、キャンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、又はフソバクテリウム・ヌクレータム(Fusobacterium nucleatum)などが関与している。歯周ポケット内の細菌の菌種及び菌数を調べる検査は重要である。なお、ポルフィロモナス・ジンジバリスは、へミン要求性培地で生育する黒色色素性のグラム陰性桿菌である。
【0003】
歯周病は、嫌気性細菌が関与する歯の支持組織の炎症疾患であり、比較的軽症の歯周炎から、歯の支持組織の破壊に特徴がある劇症の歯周病までの広範囲に及ぶ。歯周炎の進行においては、活動期に歯肉縁下プラーク中の細菌が増加することが報告されている。この細菌の1つは、ポルフィロモナス・ジンジバリスであり、歯肉下プラークのポルフィロモナス・ジンジバリス菌の増加は、歯周炎の悪化に関係しており、5x105個以上では歯周病の起因菌となることが報告されている〔「ペリオドントロジー2000(Periodontology 2000)」,(デンマーク),ムンクスガード・インターナショナル出版社(Munksgaard International Publishers),1994年,第5巻,p.78−111(非特許文献1)]。しかし、これらの細菌は、健康な部位でもしばしば検出され、病的レベルよりも少ない細菌数に制御することが重要である。
【0004】
歯周病の治療を行なう上で、細菌検査及び診断を行なうことが重要となってきており、例えば、歯周病菌の培養、血清検査(例えば、特異抗体によるELISA法や蛍光抗体法)、遺伝子検査(例えば、DNAプローブ法やPCR法)、又は酵素活性測定法などが行なわれている。歯周病菌のどの菌種に感染しているか、あるいは、その菌数が発症の閾値を越えるかどうかが必要となってきている。従って、歯周病菌の疑いのある患者を治療する場合、特定の歯周ポケットに存在する歯周病菌を除菌するため、起因菌の迅速な同定法の開発が望まれている。
【0005】
最近、歯周病患者検体で歯周病菌の迅速性のある検査法として、患者検体から遺伝子を抽出し、歯周病菌に特異的な遺伝子の一部をPCR法で増幅し、その生成物を電気泳動した後、DNAのサイズを確認する方法や、標識DNAプローブとハイブリダイズすることにより歯周病菌の同定が行なわれている。この場合、結果が出るまでに5〜6時間かかる。
特定の部位に歯周病菌が存在しているかどうかを調べる目的で、歯周病菌の迅速診断法として遺伝子診断法が研究されているが、より簡便な診断法に対する関心は依然として高い。
【0006】
【非特許文献1】
「ペリオドントロジー2000(Periodontology 2000)」,(デンマーク),ムンクスガード・インターナショナル出版社(Munksgaard International Publishers),1994年,第5巻,p.78−111
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
歯周病菌感染の診断は、検体(歯周ポケット等の生検組織)から歯周病菌を検出することで確定する。しかし、歯周病菌は嫌気性菌であるため、嫌気性の培養が必要であり、また増殖に時間がかかり、菌種を同定するには1〜2週間の必要である。
本発明の課題は、被検試料(例えば、歯周ポケット内のプラーク、又は培養液)中に存在する歯周病菌の内、歯周病患者の歯周ポケットの歯肉縁下プラーク等に存在する歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌を正確及び迅速に検出及び/又は同定することができる分析方法、並びにそれに用いることのできる新規プライマー及びプライマーセットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、配列番号3又は4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドにより解決することができる。
また、本発明は、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとからなる、プライマーセットに関する。
また、本発明は、配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドに関する。
【0009】
また、本発明は、(1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて、DNA断片を増幅する工程;及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法に関する。
また、本発明は、(1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチドと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドと同種又は異種の標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチドとを用いて、DNA断片を増幅する工程;及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を、前記の各標識物質にそれぞれ特異的に結合可能なパートナーを用いて分析する工程
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法に関する。
また、本発明は、(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子を保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが固定化されているイムノクロマトグラフ用ストリップを含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キットに関する。
また、本発明は、(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーとを担持したラテックス懸濁液
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キットに関する。
また、本発明は、(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドと同種の標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キットに関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔1〕本発明のオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド
本発明のオリゴヌクレオチドには、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが含まれ、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが好ましい。
本発明のオリゴヌクレオチドである、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)、及び配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)を、それぞれ、フォワードプライマー及びリバースプライマーとして用いてPCRを実施することにより、ポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片(例えば、配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド)を増幅することができる。配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド(好ましくは、配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド)も、本発明の範囲に含まれる。なお、本明細書における用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれる。
【0011】
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のゲノム遺伝子は、ポルフィロモナス・ジンジバリス・ゲノムプロジェクト(http://www.pgingivalis.org)で2.2×106bpの塩基配列の解析が行なわれている。また、リボゾームRNAは、ウイルスを除く全生物種に存在し、細菌の分類に約1,500bpの16S rRNA遺伝子配列が用いられている。
なお、16S rRNA遺伝子領域から全ての細菌に共通に使用できるユニバーサルプライマーを設計すれば、全ての細菌由来のDNAを増幅することが可能となる。好気性菌については、既に、ユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅した生成物を制限酵素で切断して同定する方法が報告されている(J.Clinical Micobiology,38,2076−2080,2000)。16S rRNA遺伝子の約1,500bpの塩基配列の内、800〜1,000bpの塩基配列を用いて細菌の系統分類ができることが報告されている(Proc.Natl.Acad.Sci.,82,6955−6959,1985)。
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S rRNA遺伝子、又は16SリボゾームRNAをターゲットにした遺伝子に関して、ユニバーサルプライマーとして配列番号1で表される塩基配列からなるプライマー及び配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーを用いてPCR法で増幅し、1,500bpの16S rRNA遺伝子断片を取得することができる。
【0012】
本発明のオリゴヌクレオチドである、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドにおける、配列番号3で表される塩基配列及び配列番号4で表される塩基配列は、歯周菌として関与している、アクチノバチルス・アクチノミセテコミタンス、プレボテラ・インテルメディア、バクテロイデス・フォルシタス、トレポネマ・デンチコラ、カンピロバクター・レクタス、及びフソバクテリウム・ヌクレアツムの16SrRNA遺伝子の各塩基配列と異なる、ポルフィロモナス・ジンジバリスに特異的な塩基配列である。これらの2種類のプライマーを用いたPCR法で増幅するDNAは、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のみであり、その他の菌種は、増幅しない。
【0013】
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号3で表される塩基配列又は配列番号4で表される塩基配列(塩基数=18)を含み、PCRにおけるプライマーと使用した場合にポルフィロモナス・ジンジバリスを特異的に増幅可能である限り、その塩基数は特に限定されるものではないが、例えば、18塩基〜40塩基であることが好ましく、18塩基〜25塩基であることがより好ましい。
【0014】
本発明のオリゴヌクレオチドは、その5’末端が標識物質で標識化されていることが好ましい。前記標識物質は、PCRに影響を与えることがなく、しかも、その標識物質に特異的に結合可能なパートナーが存在する限り、特に限定されるものではなく、例えば、プライマーの標識化に一般的に用いられる公知の標識物質を使用することができる。このような標識物質としては、例えば、蛍光物質〔例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ジゴキシゲニン、ビオチン等を挙げることができる。これらの標識物質に特異的に結合可能なパートナーとしては、標識物質に対する抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)又はその抗体フラグメント〔例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv等〕を挙げることができる。また、ビオチンに特異的に結合可能なパートナーとしては、抗ビオチン抗体又はそのフラグメント以外にも、例えば、アビジン又はストレプトアビジンを挙げることができる。
【0015】
〔2〕本発明の分析方法及び分析用キット
本発明の分析方法は、
(1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとを用いて、DNA断片を増幅する工程(DNA増幅工程);及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程(分析工程)
を含む。
【0016】
本発明の分析方法で分析することのできる被検試料は、ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある試料である限り、特に限定されるものではないが、例えば、歯周病ポケットのプラーク若しくは生検組織、それらの処理液、又は培養した菌体などを挙げることができる。
【0017】
前記DNA増幅工程は、プライマーセットとして、本発明のオリゴヌクレオチドである、配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとの組み合わせを用いること以外は、例えば、通常のPCR法に従って実施することができる。
【0018】
本発明の分析方法で用いる各プライマーは、その5’末端が同種又は異種の標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドであることもできるし、あるいは、標識化されていないオリゴヌクレオチドであることもできる。
各プライマーの5’末端が同種又は異種の標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドを用いると、分析工程において、前記標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法(例えば、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、又はサンドイッチ法など)を用いることができるため、好ましい。電気泳動法を用いることなく、簡易且つ迅速に検出・同定することができるからである。
【0019】
なお、標識物質として同種又は異種の標識物質を用いるかは、後述の分析工程の説明の際に詳述するように、分析工程において利用する分析手法により、適宜決定することができる。
例えば、分析工程における分析手法として、ラテックス凝集法又はサンドイッチ法を利用する場合には、同種の標識物質を用いることもできるし、あるいは、異種の標識物質を用いることもできる。一方、分析工程における分析手法として、イムノクロマトグラフ法を利用する場合には、その実施形態により、利用可能な標識物質の種類が制限されることがあり、異種の標識物質を用いることが必要な場合がある。
【0020】
前記分析工程では、前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する。反応生成物の分析方法としては、PCR産物の分析に用いられる通常の分析方法を用いることができ、例えば、分子生物学的手法、あるいは、標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法(例えば、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、又はサンドイッチ法など)等を挙げることができる。なお、前記DNA増幅工程で得られた反応生成物は、そのまま直接、あるいは、適当な処理を行なった処理物(例えば、適当に希釈又は濃縮した希釈物又は濃縮物)として、分析工程にかけることができる。
【0021】
分子生物学的手法を用いる場合には、例えば、ゲル(例えば、アガロースゲル)電気泳動を実施した後、そのゲルをそのまま、あるいは、メンブレンに転写し、予想されるDNAサイズを有するバンドの有無により、あるいは、プローブとのハイブリダイズの有無により、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在することを決定することができる。
なお、分析工程において分子生物学的手法を用いる場合には、DNA増幅工程で用いる各プライマーは、その5’末端が各々異なる標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドであることもできるし、あるいは、標識化されていないオリゴヌクレオチドであることもできる。
【0022】
一方、分析工程において、標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法を用いる場合には、DNA増幅工程で用いる各プライマーとして、その5’末端が同種又は異種の標識物質で標識化されたオリゴヌクレオチドを用いる。以下、本発明の分析方法において、分析工程で、標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いる分析方法を用いる態様を、特に、本発明の結合パートナー型分析方法と称する。
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、及びサンドイッチ法を利用する各態様について、以下、この順序に従って説明する。
【0023】
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、イムノクロマトグラフ法を用いる場合には、例えば、イムノクロマトグラフ用ストリップとして、プライマーの標識化に用いた2種類の標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子(すなわち、着色粒子コンジュゲート)を、固相担体に保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが、前記固相担体に固定化(すなわち、固相化)されているイムノクロマトグラフ用ストリップを使用することができる。
【0024】
前記固相担体としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、又はガラス繊維フィルター等を用いることができる。
前記着色粒子としては、例えば、金属コロイド(例えば、金コロイド等)、非金属コロイド(例えば、ポリスチレンコロイド等)、又はリポゾーム等を用いることができる。
標識物質に特異的に結合可能なパートナーとしては、例えば、標識物質に対する抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)又はその抗体フラグメント〔例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv等〕を用いることができる。また、ビオチンに特異的に結合可能なパートナーとしては、抗ビオチン抗体又はそのフラグメント以外にも、例えば、アビジン又はストレプトアビジンを挙げることができる。以下、固相担体に固定化させる前記パートナーを「固定化用パートナー」と称し、着色粒子に結合させ、着色粒子コンジュゲートとして固相担体に保持させる前記パートナーを「保持用パートナー」と称する。
【0025】
本発明の結合パートナー型分析方法で用いることのできる前記イムノクロマトグラフ用ストリップでは、被検試料の展開方向に関して、上流側に、着色粒子コンジュゲートの保持領域(例えば、塗布領域)を設け、下流側に、固定化用パートナーの固定領域を設ける。固定化用パートナー(例えば、抗体)の固相への結合は、例えば、約1μg/mLの抗体溶液を固相担体に加え、室温放置することにより行なうことができる。タンパク質の非特異的吸着をブロックするために、例えば、1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でブロッキングすることが好ましい。
なお、陰性コントロールとして、例えば、マウスIgG又はウサギIgGを固定する領域は、固定化用パートナーの固定領域の更に下流側に設けることもできるし、設けないでおくこともできるが、検査を正確にするためには設ける方が好ましい。
【0026】
イムノクロマトグラフ法を用いる本発明の結合パートナー型分析方法では、固相担体に固定化された固定化用パートナーと、固相担体に保持された着色粒子コンジュゲートとを介して、DNA増幅工程で増幅した二重標識DNA生成物を検出する。担体の役割は、被検出物(二重標識DNA生成物)と着色粒子コンジュゲートとを展開し、固定化された固定化用パートナーと反応させ、更に、未反応物を分離することにある。
【0027】
より具体的には、クロマトグラフ用ストリップの着色粒子コンジュゲートを塗布した側の端に、DNA増幅工程で得られた反応生成物又はその処理物(例えば、希釈物又は濃縮物)が接触すると、この水溶液はクロマトグラフ用ストリップに吸収及び展開され、先端に向かって浸透する。前記接触方法としては、例えば、被検試料滴下部位に滴下する方法、あるいは、容器(例えば、ウェル)内の被検試料を吸着する方法などを挙げることができる。着色粒子コンジュゲートを塗布した領域に達すると、二重標識DNA生成物は、保持用パートナーを介して着色粒子コンジュゲートと結合し、更にクロマトグラフ用ストリップ上を移動する。そして、この二重標識DNA生成物と着色粒子コンジュゲートとの複合体が、固定化用パートナーを固定した領域に達すると、二重標識DNA生成物は、この固定化用パートナーに結合し、トラップされる。その結果、二重標識DNA生成物と着色粒子コンジュゲートとの複合体は、この領域で停止し、これ以上移動しない。イムノクロマトグラフ法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法では、この着色粒子の担体上での集積を目視により観察することにより、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在すること(すなわち、被検試料の陽性又は陰性)を判定することができる。
【0028】
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、ラテックス凝集法を用いる場合には、DNA増幅工程で得られた反応生成物と接触させるラテックス懸濁液として、プライマーを標識化するのに用いた標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液を用いること以外は、通常のラテックス凝集法をそのまま適用して実施することができる。
ラテックス凝集法を用いる場合には、2個1組のプライマーセットに対して用いる標識物質の種類は、同種(すなわち、1種類)であることもできるし、あるいは、異種(すなわち、2種類)であることもできる。同種であると、競合が生じて凝集度に影響を与える可能性があるため、異種の標識物質を用いることが好ましい。
【0029】
2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、異種の標識物質を用いる場合には、それらの2種類の標識物質に、それぞれ、特異的に結合可能な2種類のパートナー(すなわち、一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナー)を担持したラテックス懸濁液を使用する。一方、2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、同種の標識物質を用いる場合には、その1種類の標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液を使用する。
【0030】
ラテックスとしては、通常の免疫分析用試薬に使用可能なラテックスである限り、特に限定されるものではなく、例えば、ポリスチレン、又はスチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体などを挙げることができる。ラテックスの平均粒径は、測定対象物の検出濃度又は測定機器によって適宜選択することができ、例えば、0.05〜0.5μmであることができる。
2種類のパートナーを用いる場合には、それらをラテックス上に担持させる形態としては、例えば、2種類のパートナーを混合した状態で、同一のラテックス上に担持させることもできるし、あるいは、2種類のパートナーを、それぞれ、別々のラテックス上に担持させることもできる。
パートナーを担持するラテックス懸濁液は、公知方法、例えば、物理的又は化学的結合により感作させることにより、調製することができる。
【0031】
DNA増幅工程で得られた反応生成物又はその処理物(例えば、希釈物又は濃縮物)と、前記ラテックス懸濁液とを接触させると、前記反応生成物中に二重標識DNA生成物が存在する場合には、特異的結合反応(例えば、抗原抗体反応)により凝集が生じる。
例えば、抗原抗体反応の条件は、通常の免疫学的ラテックス比濁分析方法の実施条件と同様であることができ、例えば、反応のpHは、6〜8.5で実施することができる。反応温度は0〜50℃であることが好ましく、20〜40℃がより好ましい。反応時間は、適宜決定することができ、例えば、汎用自動分析機では10〜15分間で測定を完了することができる。
【0032】
特異的結合反応(例えば、抗原抗体反応)により生じた凝集の程度は、公知の分析方法、例えば、光学的分析方法により分析することができる。前記光学的分析方法としては、例えば、反応液に光を照射して散乱光又は透過光を分析する方法を挙げることができ、より具体的には、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を測定する光学機器を用いて分析を行なうことができる。好ましい測定波長は300〜800nmである。前記光学機器を用いた分析では、公知の方法に従って、用いるラテックス粒子の大きさ及び/又は濃度の選択、並びに反応時間の設定により、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度の増加又は減少を測定することにより実施することができる。また、これらの方法を併用することも可能である。ラテックス凝集法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法では、ラテックスの凝集の程度を観察することにより、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在すること(すなわち、被検試料の陽性又は陰性)を判定することができる。
【0033】
本発明の結合パートナー型分析方法において、分析工程における分析手法として、サンドイッチ法を用いる場合には、分析対象化合物に対する抗体の代わりに、プライマーを標識化するのに用いた標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いること以外は、通常のサンドイッチ法をそのまま適用して実施することができる。
2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、異種の標識物質を用いる場合には、それらの2種類の標識物質に、それぞれ、特異的に結合可能な2種類のパートナーを使用する。一方、2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、同種の標識物質を用いる場合には、その1種類の標識物質に特異的に結合可能なパートナーを使用する。
【0034】
具体的には、例えば、プライマーの標識化に用いた2種類の標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能な第1のパートナーを、適当な不溶性担体に固定化する。次に、不溶性担体と体液試料との非特異的結合を避けるために、適当なブロッキング剤〔例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)やゼラチン等〕で不溶性担体の表面を被覆する。続いて、DNA増幅工程で得られた反応生成物又はその処理物(例えば、希釈物又は濃縮物)を加えて一定時間(例えば、5分〜3時間)及び一定温度(例えば、4℃〜40℃、好ましくは室温付近)で接触させ、反応させる(1次反応)。続いて、プライマーの標識化に用いた2種類の標識物質の残る一方に特異的に結合可能な第2のパートナーに標識物質を付した標識化第2パートナーを加えて一定時間(例えば、5分〜3時間)及び一定温度(例えば、4℃〜40℃、好ましくは室温付近)で接触させ、反応させる(2次反応)。これを適当な洗浄液(例えば、界面活性剤を含む生理食塩水)で洗浄してから、不溶性担体上に存在する標識化第2パートナーの量を定量する。その値から、DNA増幅工程においてポルフィロモナス・ジンジバリスの16S rRNA遺伝子断片が生成したか否かを決定することができ、更には、被検試料中にポルフィロモナス・ジンジバリスが存在すること(すなわち、被検試料の陽性又は陰性)を判定することができる。
2個1組のプライマーセットを標識化する標識物質として、同種の標識物質を用いる場合には、前記第1及び第2パートナーに代えて、その1種類の標識物質に特異的に結合可能なパートナーを用いること以外は、同様にして実施することができる。また、1次反応と2次反応とを同時に行なうことも可能である。
【0035】
前記不溶性担体としては、例えば、高分子(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、又はポリサッカライド等)、ニトロセルロース、紙、若しくはアガロース、又はこれらの組み合わせ等を例示することができる。
第2パートナーに付す標識物質としては、例えば、酵素、蛍光物質、又は発光物質を挙げることができる。酵素としては、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、又はβ−D−ガラクトシダーゼ等、また、蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート等、また、発光物質としては、例えば、アクリジニウムエステル又はルシフェリン等を使用することができる。
【0036】
本発明の分析用キットには、分析工程における分析手法としてイムノクロマトグラフ法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法に用いることのできる分析用キット(以下、イムノクロマトグラフ型分析用キットと称する)と、分析工程における分析手法としてラテックス凝集法を利用する本発明の結合パートナー型分析方法に用いることのできる分析用キット(以下、ラテックス凝集型分析用キットと称する)とが含まれる。
【0037】
本発明のイムノクロマトグラフ型分析用キットは、
(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3で表される塩基配列からなり、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号4で表される塩基配列からなり、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子を保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが固定化されているイムノクロマトグラフ用ストリップ
を含む。
【0038】
本発明のラテックス凝集型分析用キットは、
(1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3で表される塩基配列からなり、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号4で表される塩基配列からなり、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド);及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーとを担持したラテックス懸濁液
を含む。
【0039】
以下、本発明の具体的な実施手順の一例を示し、本発明をより具体的に説明する。
1)プローブの設計
16S rRNA遺伝子のクローニング用プライマーとして、配列表の配列番号1及び2で表される各塩基配列を設計する。その16S rRNA遺伝子の塩基配列をジデオキシ法で決定する。
標識化合物として5’−末端にFITC又はビオチンを付加する。具体的には、配列表の配列番号3及び4で表される各塩基配列を設計し、その遺伝子増幅生成物の塩基配列として配列表の配列番号5及び6で表される各塩基配列を決定する。
【0040】
2)DNAの合成
381型DNA自動合成装置(アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により、配列表に記載した配列で表されるオリゴDNAを4種類合成する(以下、配列番号1〜4と称する)。DNAのプライマーとして、配列番号1〜4で表される塩基配列からなるDNAは、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S
rRNAの鋳型特異的なプライマーである。
なお、配列番号3で表される塩基配列の5’末端にFITCを含む塩基数18個からなるオリゴDNA、及び配列番号4で表される塩基配列の5’末端にビオチンを含む塩基数18個からなるオリゴDNAを合成する。
【0041】
3)PCR法によるDNA生成物の確認
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌から調製したDNAを用いて、PCR装置で95℃で熱変性し、前記のプライマー(配列番号1及び2)を添加すると、16S DNAに特異的に結合する。
次に、DNAポリメラーゼ、特には耐熱性DNAポリメラーゼ(PwoDNAポリメラーゼ:Roche社)を添加し、以下のPCR法による増幅サイクルを行なう。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔94℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマーとのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で1分30秒間〕からなり、1サイクル毎にDNA量は2倍に増幅されるが、このサイクルを30回繰り返す。
【0042】
4)プラスミドの作製
市販のプラスミドベクターpZErO−1(Invitrogen社)を制限酵素EcoRV(37℃,2時間)で消化して、増幅したPCR産物がベクターに挿入できるようにする。この制限酵素で切断したベクター2.8kbpとPCRにより合成した約1,500bpのDNAをライゲーション・キット(宝酒造)を用いて、16℃で30分間反応させる。
【0043】
5)大腸菌の形質転換
組み換えプラスミドと、市販の大腸菌DH5α株(宝酒造)を50mmol/L−CaCl2で処理して作成したコンピテント細胞とを氷中で30分間インキュベートし、42℃で30秒間熱処理した後、37℃でSOC培地にて1時間培養する。この大腸菌を、50μg/mLゼオシン(Zeocin;Invitrogen社)及び1mmol/Lイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を含むYT寒天平板上にまき、37℃で一夜培養を行なう。
生じたゼオシン耐性で透明なコロニーを、各々新たな50μg/mLゼオシンを含むYTブロスで37℃一夜培養をし、アルカリ溶菌法にてプラスミドDNAを単離する(Molecular Cloning,A LaboratoryMannual 2nd Edition,J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis;Cold Spring Harbor Laboratory,New York)。
【0044】
6)PCR法による二重標識DNA生成物の作製
前記で調製したDNAを、PCR装置において95℃で熱変性し、前記プライマー(配列番号3及び4)を添加すると、16S rRNA遺伝子に特異的に結合する。
次に、Pwo DNAポリメラーゼ(Roche製)を添加し、以下のPCR法による増幅サイクルを行なう。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔94℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマーとのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で30秒間〕からなり、1サイクル毎にDNA量は2倍に増幅されるが、このサイクルを30回繰り返す。
【0045】
7)イムノクロマトグラフ用ストリップの作製
薄片状のクロマトグラフ基材(ニトロセルロース膜)の片方に金コロイド標識したストレプトアビジンを塗布し、他方に第2の抗FITCモノクローナル抗体を固定する。
抗FITC抗体の固相への結合は、例えば、約1μg/mLの抗体溶液をニトロセルロースに加え、室温放置することにより行なうことができる。タンパク質の非特異的吸着をブロックするために、1%BSA/PBSでブロッキングすることができる。
【0046】
イムノクロマトグラフ法では、クロマトグラフ用ストリップの金コロイド標識ストレプトアビジンを塗布した側の端に、被検試料中のPCR法によるDNA生成物、又は希釈液が接すると、この水溶液はクロマトグラフ用ストリップに吸収及び展開され、先端に向かって浸透する。金コロイド標識ストレプトアビジンを塗布した領域に達すると、DNA生成物は金コロイド標識ストレプトアビジンと結合し、更にクロマトグラフ用ストリップ上を移動する。そして、このPCR生成物と金コロイド標識結合物が、抗FITC抗体を固定した領域に達すると、DNA生成物はこの抗FITC抗体に結合し、トラップされる。その結果、金コロイド標識結合物は、この領域で停止し、これ以上移動しない。イムノクロマトグラフ法では、この着色粒子の担体上での集積を目視により観察して、検体の陽性/陰性を判定する。
【0047】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S rRNA遺伝子のクローニング》
本実施例では、市販のキット(Genとるくん;宝酒造製)を用いてポルフィロモナス・ジンジバリスの菌体からゲノムDNAを単離した後、2種類のプライマーとして配列番号1及び配列番号2で表される塩基配列からなるDNAを用いてPCR法で16S rRNA遺伝子を増幅し、約1.5kbpのDNAを得た。このPCR産物をプラスミドpZErO−1のEcoRV サイトを利用して、T4DNAリガーゼで結合して組み換えプラスミドを作成した。各工程の手順は、以下に示す通りである。
【0048】
(1)ポルフィロモナス・ジンジバリスの培養
GAM寒天培地(日水製薬製)にビタミンK及びヘミンを添加し、嫌気バッグ(ダイアヤトロン社)を用いて、ポルフィロモナス・ジンジバリスATCC 33277株の培養を48時間行なった。
【0049】
(2)合成DNAの作成
381型DNA自動合成装置(アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により、4種類のプライマーDNA(配列番号1〜配列番号4)を合成した。配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーDNAの5’−末端は、FITC標識dATPを用い、配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーDNAの5’−末端は、ビオチン標識dGTPを用いて合成した。
ユニバーサルプライマー1(配列番号1)及びユニバーサルプライマー2(配列番号2)の各塩基配列は、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のゲノムDNAの16S rRNA遺伝子を増幅するものである。従って、プライマー1とプライマー2を用いてPCR法で増幅されるDNA生成物(I)は、1,500塩基対である。
【0050】
なお、前記ユニバーサルプライマー(配列番号1及び配列番号2)は、参考文献〔Lane, D.J. (1991). 16S/23S rRNA sequencing. Nucleic acid techniques in bacterial systematics. E. Stackebrandt and M. Goodfellow, eds. New York, NY, John Wiley and Sons: 115−175〕のプライマー27f及びプライマー1492fを引用したものである。
また、ポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC 33277)の16S rRNAの塩基配列は、GenBankのACCESSION:L16492(1474bp)から引用した。配列番号3で表される塩基配列は、その第841番〜第858番であり、配列番号4で表される塩基配列は、第1002番〜第1019番である。また、配列番号1で表される塩基配列は、第8番〜第27番であるが、配列番号2で表される塩基配列は、この中には含まれていない。
【0051】
(3)遺伝子の増幅
実施例1(1)で培養したポルフィロモナス・ジンジバリス菌から調製したゲノムDNAと、実施例1(2)で合成したプライマー1及びプライマー2とを用いてPCRを行なった。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔95℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマー(配列番号1及び2)とのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で1分30秒間〕からなり、このサイクルを30回繰り返した。
【0052】
(4)組み換えプラスミドの作製
クローニングベクターとして、pZErO−1ベクター(Invitrogen製)を用いた。実施例1(3)で得られたDNA生成物(I)とpZErO−1ベクターのEcoRVサイトを利用して、T4DNAリガーゼで結合して組み換えプラスミドを作成した。
具体的には、PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動で分離し、約1,500bpのバンドを切り取り、市販のカラム(GenElute AGAROSE SPIN COLUMN;SIGMA社)で精製した。DNAライゲーション・キット(宝酒造)を用いて、DNA(I)3μLとpZErO−1ベクター(制限酵素EcoRVで処理したもの)1μLとを加え、更にライゲーション溶液I(酵素液)4μLを加えて16℃で30分間反応させ、ライゲーションを行ない、プラスミドDNA(II)を作製した。
【0053】
(5)形質転換
実施例1(4)で得られた組み換えDNAを用いて、常法により形質転換を行なった。すなわち、50mmol/L−CaCl2処理して作製したコンピテントセル(大腸菌DH5α株)にプラスミドDNAを導入した。
【0054】
(6)形質転換体に含まれる16S rRNA遺伝子の単離
実施例1(5)で得られた形質転換体であるコロニーを、50μg/mLゼオシン(Zeocin;Invitrogen社)を含むYT−ブロスに接種し、37℃で一夜培養を行なった。この培養液1.5mLをエッペンドルフチューブに入れ、遠心分離で菌体を集め、アルカリ溶菌法にてプラスミドDNAを単離した。
【0055】
(7)塩基配列の決定
実施例1(6)で得られたDNAと市販のキット(BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit;アプライドバイオシステムズ社)を用いてPCR反応を行ない、この反応溶液をDNAシークエンサー装置(373A−18 DNAシークエンサー装置;アプライドバイオシステムズ製)にアプライし、ジデオキシ法で塩基配列を決定した。
【0056】
【実施例2】
《179bp DNA遺伝子の増幅》
本実施例では、実施例1で作製したポルフィロモナス・ジンジバリスのrRNA遺伝子(1.5kbp)を含むクローンからDNAを単離し、2種類のプライマーとして配列番号3及び配列番号4で表される塩基配列からなるDNAを用いてPCR法でDNA増幅を行ない、そのPCR生成物量及び塩基配列を確認した。
【0057】
(1)遺伝子の増幅
実施例1で作製した1.5kbpのrRNA遺伝子配列を含むプラスミドDNAと、実施例1(2)で合成した2種類の標識プライマー、すなわち、プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)を用いてPCRを行なった。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔95℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマー(配列番号3及び4)とのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で30秒間〕からなり、このサイクル数による二重標識PCR生成物量を確認するため、10回、15回、20回、及び30回の反応を行なった。
【0058】
結果を図1に示す。図1は、PCR生成物の0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。各レーンは、下記のとおりである:
レーン1:DNAマーカー(123bp DNA Ladder;GIBCO BRL製);
レーン2:DNAマーカー(DNA Molecular weight marker VIII;ベーリンガー・マンハイム製);
レーン3:PCRのサイクル数10回の生成物;
レーン4:PCRのサイクル数15回の生成物;
レーン5:PCRのサイクル数20回の生成物;
レーン6:PCRのサイクル数30回の生成物;
レーン7:PCRのサイクル数30回の生成物を10倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;
レーン8:PCRのサイクル数30回の生成物を50倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;
レーン9:PCRのサイクル数30回の生成物を100倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;
レーン10:PCRのサイクル数30回の生成物を200倍希釈し、その5μLをアプライしたもの;及び
レーン11:PCRのサイクル数30回の生成物を500倍希釈し、その5μLをアプライしたもの。
【0059】
(2)179bpDNAの精製
実施例2(1)で得られたポルフィロモナス・ジンジバリスのPCR生成物を12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にアプライし、DNAマーカー(123bp DNA Ladder;GIBCO BRL製)から判断し、179bpバンドに相応するバンドを切り取り、市販のキット(DNA Prep;ダイアヤトロン社)を用いてDNAを精製した。
【0060】
(3)塩基配列の決定
実施例2(2)で得られたポルフィロモナス・ジンジバリスのDNAと市販のキット(BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit;アプライドバイオシステムズ社)を用いてPCR反応を行ない、この反応溶液をDNAシークエンサー装置(373A−18 DNAシークエンサー装置;アプライドバイオシステムズ製)にアプライし、ジデオキシ法で塩基配列を決定した。
【0061】
【実施例3】
《各種菌体から単離したゲノムを用いたPCR法によるDNA増幅》
本実施例では、実施例1で作製したポルフィロモナス・ジンジバリスのrRNA遺伝子(1.5kbp)を含むクローン、及び各種菌体(ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノバチルス・アクチノミセテコミタンス、プレボテラ・インテルメディア、及び大腸菌の培養菌株)からDNAを単離し、2種類の標識プライマーとして配列番号3及び配列番号4で表される塩基配列からなるDNAを用いてPCR法でDNA増幅を行なった。
【0062】
(1)DNAの分離
寒天平板上の各種培養菌株のコロニーから少量つま楊枝で採取し、市販のDNA調製キット(Genとるくん;宝酒造製)により調製した。
【0063】
(2)遺伝子の増幅
実施例3(1)で得たDNAと、実施例1(2)で合成した2種類の標識プライマー、すなわち、プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)を用いてPCRを行なった。
1サイクルは、(a)DNAの変性工程〔95℃で2分間〕、(b)1本鎖DNAとプライマー(配列番号3及び4)とのアニーリング工程〔50℃で30秒間〕、及び(c)DNAポリメラーゼによるDNA合成工程〔72℃で30秒間〕からなり、このサイクルを30回繰り返した。
【0064】
(3)179bpDNAの確認
実施例3(2)で得られたPCR生成物を12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にアプライし、DNAマーカー(123bp DNA Ladder;GIBCO BRL製)を指標として、179bpバンドの有無を確認した。
【0065】
【実施例4】
《イムノクロマトグラフ用ストリップの作製》
本実施例では、PCR生成物捕捉用抗体としてモノクローナル抗FITC抗体(ZYMED Laboratories製)又はポリクローナル抗FITC抗体(ZYMED Laboratories製)を、金コロイド標識物としてストレプトアビジン(TRINA Bioreactives製)を用いて、PCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップを作製した。
【0066】
(1)イムノクロマトグラフ用メンブレンの作製
ポリアミド(ナイロン66)製メンブレン(Immunodyne ABC,孔径=3.0μm;Pall Corporation製)を5mm×20mmのサイズに裁断した。
メンブレンの上流側の一端から8mmの位置に、PCR生成物の検出ゾーンとして、モノクローナル抗FITC抗体溶液又はポリクローナル抗FITC抗体溶液〔各々濃度0.5mg/mL;5mmol/Lホウ酸緩衝液(pH8.5)で希釈〕を幅1mmの線状に塗布した。
また、メンブレンの上流側の一端から13mmの位置に、陰性コントロールゾーンとして、マウスIgG溶液〔濃度0.5mg/mL;5mmol/Lホウ酸緩衝液(pH8.5)で希釈〕を、幅1mmの線状に塗布した。
室温下で1時間、37℃下で30分間静置し、各々の抗体を固相化した。メンブレンを0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む5mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.5)に浸し、室温及び相対湿度20%以下の条件下で30分間緩やかに振とうし、ブロッキングした。メンブレンの過剰のブロッキング液を除き、室温下で一夜静置し、乾燥させ、二重標識PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用抗体固相化メンブレンとした。
【0067】
(2)金コロイド標識ストレプトアビジン懸濁液の作製
ストレプトアビジン(濃度1mg/mL)1mLを2mmol/L−Na2B4O7緩衝液(pH6.5)(以下、Borax緩衝液と称する)3,000mL中で4℃下で一夜透析した。ストレプトアビジン溶液は、4℃下、100,000×gで1時間遠心分離した後、その上清を、100,000×gで1時間遠心分離したBorax緩衝液で100μg/mLとなるように希釈した。金コロイド液(GOLD COLLOID 20nm;British BioCellInternational製)100mLを、0.2mol/L−K2CO3溶液及び0.2mol/L−H3PO4溶液でpH6.5に調整した。金コロイド液20mLを撹拌しながら、希釈したストレプトアビジン溶液2mLを徐々に滴下し、室温下で30分間撹拌した。更に、撹拌しながら10%BSA溶液(pH9.0;4℃下、100,000×gで1時間遠心分離した上清)2.5mLを滴下した後、室温下で30分間撹拌した。10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。沈殿した金コロイド標識ストレプトアビジンを、0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8.0)(0.45μmフィルター濾過)20mLに再懸濁させ、10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。更に、沈殿した金コロイド標識ストレプトアビジンを、0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8.0)(0.45μmフィルター濾過)20mLに再懸濁させ、10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。最後に、沈殿した金コロイド標識ストレプトアビジンを、0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8,0)(0.45μmフィルター濾過)に再懸濁させた後、波長520nmにおける吸光度が約10になるように濃度調整し、表面をシリコン処理したガラス試験管に移し、密栓し、4℃下に保存し、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用金コロイド標識ストレプトアビジン懸濁液とした。
【0068】
金コロイド標識ストレプトアビジン懸濁液は、波長520nmにおける吸光度が3.0になるように、5.0%ショ糖を含む2mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.3)で希釈した後、その7μLを、吸収パッドアキュウィックAW14−20T4(Pall Corporation製)を5mm×5mmのサイズに裁断したものに塗布し、シリカゲルデシケーター内で室温下、一夜減圧(≦50mmHg)乾燥したものを、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用金コロイド標識ストレプトアビジンパッドとした。
【0069】
(3)イムノクロマトグラフ法用吸収パッドの作製
グラスファイバーパッド(タイプA/B;Pall Corporation製)を5mm×18mmのサイズに裁断したものを、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用試料添加パッドとした。グラスファイバーパッド(タイプA/E;Pall Corporation製)を5mm×25mmのサイズに裁断したものを、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法用吸収パッドとした。
【0070】
(4)イムノクロマトグラフ用ストリップ
5mm×60mmのサイズに裁断したプラスティック粘着シート(BioDot製)に、上流側より、試料添加パッド、金コロイド標識ストレプトアビジンパッド、抗体固相化メンブレン、及び吸収パッドの順に、各々その両端を隣接する部材と1mm重ね合わせて貼付し、PCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップとした。
【0071】
【実施例5】
《イムノクロマトグラフ法によるPCR生成物の測定》
本実施例では、実施例4で作製したイムノクロマトグラフ用ストリップを用いて、PCR生成物のイムノクロマトグラフ法を実施した。
【0072】
(1)PCR法のサイクル回数別によるPCR生成物の検出
実施例2(1)で使用した2種類の標識プライマーを用い、PCR法のサイクル回数として、10回、15回、20回、及び30回の反応をそれぞれ行なった。これらのPCR反応液10μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液90μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを、水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、室温下で10分間展開した。
【0073】
メンブレンのモノクローナル抗FITC抗体を固相化した部分、及び陰性コントロール抗体を固相化した部分の金コロイドの捕捉に基づく赤紫〜紫色の着色の有無を目視観察し、PCR生成物の有無を判定した。モノクローナル抗FITC抗体固相化イムノクロマトグラフ用ストリップでのPCR生成物の測定結果を表1に示す。表1において、「−」は陰性、「+」は弱陽性、「++」は中陽性、「+++」は強陽性であることを示す。
今回行なったPCR法では、PCRのサイクル回数10回では二重標識PCR生成物が、まだ、あまり産生されておらず、イムノクロマトグラフ用ストリップで測定することができなかった。PCRのサイクル回数が15回、20回、及び30回では、二重標識PCR生成物をイムノクロマトグラフ用ストリップを用いて測定することができた。
【0074】
【0075】
(2)PCR生成物の希釈溶液の測定
実施例5(1)においてPCR法のサイクル回数として30回を行なった反応液を、20mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.5)で、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、及び1000倍にそれぞれ希釈した溶液、並びに20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)の各100μLを水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、室温下で10分間展開した。
【0076】
メンブレンのモノクローナル抗FITC抗体又はポリクローナル抗FITC抗体を固相化した部分、及び陰性コントロール抗体を固相化した部分の金コロイドの捕捉に基づく赤紫〜紫色の着色の有無を目視観察し、PCR生成物の有無を判定した。
図2に、モノクローナル抗FITC抗体を固相化したメンブレンを組み込んだPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでの結果を示す。
また、表2に、モノクローナル抗FITC抗体を固相化したメンブレンを組み込んだPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでの測定結果を示す。また、表3に、ポリクローナル抗FITC抗体を固相化したメンブレンを組み込んだPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでの測定結果を示す。表2及び表3において、「−」は陰性、「±」は擬陽性、「+」は弱陽性、「++」は中陽性、「+++」は強陽性であることを示す。
【0077】
図2において、レーン1は、50mmol/L−Tris−HCl(pH8.0)100μLをアプライした結果であり、レーン2は、ビオチン結合抗IgG抗体溶液100μLをアプライした結果であり、レーン3〜レーン8は、PCR生成物を10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、及び1000倍にそれぞれ希釈した溶液100μLをアプライした結果であり、レーン9は、希釈用緩衝液(すなわち、リン酸塩緩衝液)100μLをアプライした結果である。図2において、展開方向は、下から上へ向かう方向(すなわち、下方が試料添加パッド側であり、上方が吸収パッド側である)である。また、レーン1及び2に共通して観察される上方のバンドは、陰性コントロールとしてのマウスIgGを塗布したゾーンであり、レーン2のバンドはマウスIgGの検出ゾーンであり、レーン1のバンドは非特異反応で生じたものである。
【0078】
モノクローナル抗FITC抗体を固相化抗体に用いたPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでは、元の被検液を500倍希釈したものまで検出可能であり、ポリクローナル抗FITC抗体を固相化したPCR生成物測定用イムノクロマトグラフ用ストリップでは、元の被検液を1,000倍希釈したものまで検出可能であった。
【0079】
【0080】
【0081】
(3)培養菌株を用いたPCR生成物の測定
実施例2(1)で使用した2種類の標識プライマー〔プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)〕を用いて、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノマイセテコミタンス(A.actinomycetecomitans)、プレボテーラ・インテルメディア(P.intermedia)、及び大腸菌(E.coli)の培養菌株を用いて、同一のPCR反応を行なった。
これらのPCR反応液10μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液90μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを、水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、同様に室温で10分間展開した。
【0082】
モノクローナル抗FITC抗体固相化イムノクロマトグラフ用ストリップでのPCR生成物の測定結果を表4に示す。表4において、「−」は陰性、「++」は中陽性であることを示す。このイムノクロマトグラフ用ストリップでポルフィロモナス・ジンジバリスのみに特異的に反応する結果が得られた。
【0083】
【0084】
(4)患者試料から得られたPCR生成物の測定
歯周病患者試料を用いて、実施例2(1)で使用した2種類の標識プライマー〔プライマー3(配列番号3)及びプライマー4(配列番号4)〕を用いて、PCR反応を行なった。
これらのPCR反応液10μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液90μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを、水平に静置したイムノクロマトグラフ用ストリップの試料添加パッドに滴下し、同様に室温で10分間展開した。
【0085】
モノクローナル抗FITC抗体固相化イムノクロマトグラフ用ストリップでの患者検体を用いたPCR生成物の測定結果を表5に示す。表5において、「−」は陰性、「±」は擬陽性、「+」は弱陽性、「++」は中陽性であることを示す。
【0086】
【0087】
【発明の効果】
現在、国内で歯周病菌の迅速検査法として、患者検体から遺伝子を抽出し、歯周病菌に特異的な遺伝子をPCR法で増幅し、その生成物を電気泳動した後、DNAのサイズを確認する方法や標識DNAプローブとハイブリダイズすることにより歯周病菌の同定する研究が行われている。また、歯周病菌が産生するプロテアーゼ活性を測定する酵素法で、歯周病菌の感染の有無を調べる検査が行なわれている。しかし、歯周病菌の菌種や定量ができない欠点がある。従って、歯周病菌の同定を行なうには、更に歯周病菌を培養して菌体を増やした後、生化学性状試験により、1〜2週間かけて菌種の同定が行なわれている。
【0088】
本発明のオリゴヌクレオチド及び本発明の分析方法によれば、被検試料中に存在する歯周病菌の1つ、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の16S rRNA遺伝子断片を、2種類の標識プライマーを用いてPCR法で増幅した後、その二重標識DNA生成物を、例えば、分子生物学的手法又は免疫学的手法(特には、イムノクロマトグラフィー法)を用いて分析することにより、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌を特異的に検出することができる。また、前記二重標識DNA生成物を免疫学的手法(特には、イムノクロマトグラフィー法)を用いて分析することにより、電気泳動法を用いることなく、簡易且つ迅速に検出・同定することができる。また、常在菌として口腔内に存在する菌数と歯周病に進展する菌数を半定量的に測定することができる。
【0089】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】PCR生成物の電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。
【図2】PCR生成物のイムノクロマト法の結果を示す、図面に代わる写真である。
Claims (11)
- 配列番号3又は4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
- 5’末端が標識化されている、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
- 配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとからなる、プライマーセット。
- 各オリゴヌクレオチドの5’末端が標識化されている、請求項1に記載のプライマーセット。
- 配列番号5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
- (1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて、DNA断片を増幅する工程;及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を分析する工程
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法。 - (1)(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスを含有する可能性のある被検試料と、(b)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチドと、(c)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドと同種又は異種の標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチドとを用いて、DNA断片を増幅する工程;及び
(2)前記DNA増幅工程で得られた反応生成物を、前記の各標識物質にそれぞれ特異的に結合可能なパートナーを用いて分析する工程
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法。 - 前記分析工程における分析方法が、イムノクロマトグラフ法、ラテックス凝集法、又はサンドイッチ法である、請求項7に記載の分析方法。
- (1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーが結合された着色粒子を保持し、しかも、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーが固定化されているイムノクロマトグラフ用ストリップを含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キット。 - (1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドとは異なる標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質のいずれか一方に特異的に結合可能なパートナーと、もう一方の標識物質に特異的に結合可能なパートナーとを担持したラテックス懸濁液
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キット。 - (1)配列番号3で表される塩基配列を含み、標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;
(2)配列番号4で表される塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドと同種の標識物質で5’末端が標識化されているオリゴヌクレオチド;及び
(3)前記標識物質に特異的に結合可能なパートナーを担持したラテックス懸濁液
を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析用キット。
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JP2002324275A JP2004154073A (ja) | 2002-11-07 | 2002-11-07 | ポルフィロモナス・ジンジバリスの分析方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009165371A (ja) * | 2008-01-11 | 2009-07-30 | Univ Of Tokushima | 二重標識融合pcrイムノクロマトグラフィー |
CN114174528A (zh) * | 2019-08-07 | 2022-03-11 | 学校法人东京齿科大学 | 判别方法、荧光测定装置和检查剂 |
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2002
- 2002-11-07 JP JP2002324275A patent/JP2004154073A/ja active Pending
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