JP2004153933A - 架空線の腐食診断方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる架空線の腐食診断方法およびその装置を提供する。
【解決手段】架空送電線1に自走式の無人の走行装置2を設置する。この走行装置2には、ビデオカメラ6と、このビデオカメラ6の撮像視野を拡大するためのミラー8a,8bを備えた。この走行装置2を走行させ、ビデオカメラ6により架空送電線1の外観像を撮影し、その表面の凹凸程度、色調および外径を調査・測定することにより、架空送電線1における外層線および内層線の腐食程度の診断を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】架空送電線1に自走式の無人の走行装置2を設置する。この走行装置2には、ビデオカメラ6と、このビデオカメラ6の撮像視野を拡大するためのミラー8a,8bを備えた。この走行装置2を走行させ、ビデオカメラ6により架空送電線1の外観像を撮影し、その表面の凹凸程度、色調および外径を調査・測定することにより、架空送電線1における外層線および内層線の腐食程度の診断を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高所に布設される架空送電線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
架空送電線は、布設周辺の環境内に存在する水分、海塩粒子(NaCl)、各種ガス(HCl,Cl2,SOX,NOX,H2S等)などに起因して、早期のうちに腐食することがある。電線が腐食するとその機械的特性や電気的特性等が低下する。さらに電線の腐食が進行すると断線に至り、送電不能の状態を招くケースもある。したがって、条件の厳しい環境下に布設された架空送電線路については、定期的な線路の点検が不可欠となる。
【0003】
通常、これには、架空線に懸架させた宙乗機に人間が乗り、宙乗機を走行させながら電線表面の腐食状態を観察する方法が実行されている。しかし、この診断方法では、診断が不便な宙乗機上で同機を進めながらの作業となるため、作業遂行に多大な労力を要する。さらに、腐食が著しく進行した架空線を診断対象とするとき、電線の断線とそれに伴なう作業者の落下の危険性があるため、安全上の見地からも好ましいものとはいえない。
【0004】
このように人間が宙乗機に乗らずとも診断を行う方法として、降雨の後に電線から落下する水滴を下で受け取ったり、電線の高い部分から水を人工的に注ぎ、電線の低い位置から落下する水滴を下で受け取って回収し、この回収された水に含まれる金属のイオン濃度を測定することによって電線の腐食を診断する方法がある。なお、水滴を下で受け取る場合、電線の直ぐ下で水滴を受け取れるようにするため、リフト等の昇降手段を電線の下方に設置して回収する方法もある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭64−73247号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の公報による診断方法においては、高所に布設された電線から落下する水滴を受け取って回収する場合、架空送電線は通常位置が高いので風で水滴が流されて落下地点が定まらなかったり、落下地点が沼地などの人が容易に行けない難所であった場合は、その地点に行くのが困難となったりする等、回収作業が困難となり、結果的に腐食程度を容易に診断することができない。
【0007】
昇降手段を用いて回収する方法では、架空送電線の下方が上記の難所である場合、昇降手段を設置するのが困難であり、設置不可能であったりするので、やはり回収作業が困難となり、結果的に腐食程度を安全で容易に診断することができない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる架空線の腐食診断方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の架空線の腐食診断方法は、架空線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法において、前記架空線に撮像手段を有する無人自走式の走行装置を走行させ、前記撮像手段で前記架空線の外観像を撮像し、この外観像から前記架空線の表面の凹凸程度或いは色調、或いはその両者を観察することにより前記架空線の最外層素線の腐食程度の診断を行うことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の架空線の腐食診断方法は、架空線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法において、前記架空線に撮像手段を有する無人自走式の走行装置を走行させ、前記撮像手段で前記架空線の外観像を撮像し、この外観像の撮像から前記架空線の外径を測定することにより前記架空線の内部の腐食程度の診断を行うことを特徴としている。
【0011】
上記の架空線の腐食形態は、各々の布設環境で異なっている。架空線の外側、すなわち最外層素線から腐食が進行すると、素線表面の凹凸程度は大きくなるとともに、腐食生成物の影響で色調が異なることとなる。また、架空線の表面より電解質溶液が浸入し、より線の内部で腐食が進行した場合、腐食生成物の影響でより線の外径は増大する特徴がある。従って、架空線の外部腐食の診断のためには、表面の様相、すなわち上記のように、表面の凹凸の程度と色調を調べることが効果的であり、内部腐食の診断のためには、上記のように外径を測定することが有効となる。
【0012】
また、本発明の架空線の腐食診断装置は、架空線の腐食程度を診断するための架空線の腐食診断装置において、前記架空線を無人で走行する自走式の走行装置と、前記走行装置に設置され、前記架空線の外観像を撮像する撮像手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
また、前記走行装置に、前記撮像手段での撮像視野に入らない前記架空線の外観像を映し、この映し出された外観像が前記撮像手段により撮像できるように鏡を設置したことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1に示す本実施の形態に係る架空線の腐食診断装置は、図示せぬ鉄塔間に架線されたACSRタイプの架空送電線1に、電線の腐食程度を診断するための無人自走式の走行装置2を設置したものである。
【0016】
図2に示すように、架空送電線1は、亜鉛メッキが施された鋼線1aを複数本より合わせ、この周囲に複数本のアルミニウム線1bをより合わせて構成されている。この他、アルミニウム被覆を有する鋼線同士をより合わせたAC線、亜鉛メッキ鋼線同士をより合わせたGSW等でもよい。
【0017】
この走行装置2は、フレーム3に、車輪4と、駆動源5と、ビデオカメラ6と、2つのミラー8a,8bとが取り付けられて構成されている。車輪4は、走行装置2を架空送電線1に走行自在に懸架するためのものである。駆動源5は、車輪4を回転させると共に、ビデオカメラ6を駆動させるためのものである。ビデオカメラ6は、そのレンズ7が架空送電線1の上方に配置された状態でフレーム3に取り付けられており、架空送電線1の外観像を撮影するためのものである。
【0018】
図2に示すように、各ミラー8a,8bは、レンズ7に対向する架空送電線1の同一円周上で、且つレンズ7の撮像視野に入らない架空送電線1の外観を映し、この映し出された外観がレンズ7の撮像視野に入るように配置されている。言い換えれば、各ミラー8a,8bは、架空送電線1のビデオカメラ6による撮影視野を拡大するためのものである。
【0019】
なお、ビデオカメラ6に、レンズ7を架空送電線1の円周方向に可動可能な機構を備え、この機能によって、各ミラー8a,8bの方向にレンズ7を向けることによって、各ミラー8a,8bに映された架空送電線1の外観をより適正に撮像できるようにしてもよい。また、ビデオカメラ6の設置位置は、上記の他に架空送電線1の横、下側いずれでもよく、この何れに設置された場合でも、レンズ7と各ミラー8a,8bとの関係が上記のようになっていればよい。各ミラー8a,8bの枚数は、レンズ7の撮像視野に入らない架空送電線1の外観を映し、この映し出された外観がビデオカメラ6により撮像できれば、何枚でもよいが、出来る限り保守が簡単で低コストとなる枚数とする。また、走行装置2およびそれに搭載したビデオカメラ6の操作は、鉄塔上あるいは地上、並びに有線あるいは無線のいずれかによって可能なようになっている。
【0020】
このような走行装置2を架空送電線1上に自動走行させながら、ビデオカメラ6にて架空送電線1の外観像を撮影し、その表面の凹凸程度、色調および外径を調査することで、架空送電線1の腐食程度が診断されることとなる。
【0021】
ここで、本架空線の腐食診断装置によって、架線環境の種々異なる実線路電線の外観像の撮影を行い、その表面凹凸程度、色調、外径の調査を行うことで各々の腐食程度を診断するとともに、電線を撤去して実際の腐食程度を調査した結果を下表1および表2に示し、その説明を行う。
【0022】
まず、表1は、架線環境の異なる実線路電線について、表面の凹凸程度、色調、腐食診断の評価結果と、実際の最外層素線(上記アルミニウム線1bに対応)の腐食程度を示したものである。
【0023】
【表1】
この表1において、線路Aは産業廃棄物焼却場に近接した送電線路の例であり、焼却場から排出される煤煙が送電線に直接降りかかる箇所を評価対象とした。評価の結果、外層線表面の凹凸程度は極めて大きく、素線の欠損が顕著であった。また、その表面色調は、全面的に白色を呈していた。これは、水酸化アルミニウム等の腐食生成物によるものと判断され.、凹凸程度の結果と併せて、最外層素線の腐食程度は極めて大きいと診断された。
【0024】
また、線路Bは工業地帯に架線された送電線路の例である。外層線表面の凹凸程度は大きく、色調は黒色と白色を呈していた。黒色部は塵挨の付着、白色部はアルミの腐食生成物によるものと判断されたことから、外層線の腐食程度は大と診断された。
【0025】
そして、線路Cは市街地に架線された送電線路の例である。外層線表面には凹凸が認められるとともに、その色調は黒色と白色を呈していた。本線路C表面の凹凸程度および白色部の領域は線路Bと比較して小さいことから、外層線の腐食程度は中と診断された。
【0026】
さらに、田園地帯に架線された線路Dでは、表面の凹凸程度が極めて小さく、色調もアルミニウムの金属光沢を有している灰色であることから、外層線の腐食程度は軽微と診断された。
【0027】
なお、表1において、撤去電線の腐食程度とあるのは、以上の腐食診断が下された送電線路A〜Dを構成する送電線を対象として実施した、最外層アルミニウム線の腐食程度の評価結果を示したものである。これによれば、前述した架空送電線外層線の腐食診断結果の正しいことが実証されている。
【0028】
次に、表2は、架線環境のそれぞれ異なる実線路電線について、外径の増大程度評価結果と内部腐食の診断結果、そして実際の電線内部腐食{内層素線(上記鋼線1aに対応)腐食}の程度を示したものである。
表1においては、凹凸程度と色調の両者によって送電線の腐食程度を判断したが、何れか一方によって判断することも可能である。
【0029】
【表2】
表2において、線路Eは海岸に近接した工業地帯の送電線路の例である。架空より線の外径の増大程度が著しく大きいことから、架空線内部の腐食程度は極めて大と診断された。
【0030】
また、線路Fは海岸近接地帯に架線された送電線路の例である。より線の外径の増大している箇所が散見されることから、より線内部の腐食程度は中と診断された。
【0031】
そして、線路Gは山間地帯に架線された送電線路の例である。より線の外径増大箇所が局所的に観察された。外径の増大程度は前述の線路Fよりも小さいことから、本線路の内部腐食程度は小と診断された。
【0032】
一方、田園地帯の線路Hでは、より線の外径はほぼ設計値どおりであり、外径の増大は無いものと判断された。よって、線路Hの内部腐食程度は軽微と診断された。
【0033】
なお、表2において、撤去電線の腐食程度とあるのは、以上の腐食診断が下された送電線路E〜Hを構成する送電線を対象として実施した、内層アルミニウム素線の腐食程度の評価結果を示したものである。これによれば、前述した架空送電線内層素線の腐食診断結果の正しいことが実証されている。
【0034】
以上のように、本実施の形態による架空線の腐食診断装置を用いた腐食程度の診断方法によれば、無人自走式の走行装置2を架空送電線1上に設置して走行させ、架空送電線1の外観像を走行装置2に設置したビデオカメラ6にて撮影するようにして高所での作業が進められるようにしたので、この間、人手を要することがなく安全に架空送電線1の外観を撮像し、その表面凹凸程度、色調、外径の調査を行うことで各々の腐食程度を診断することができる。従って、高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる。
【0035】
なお、本走行装置2に計尺器を設置することで、径間内の位置とその腐食程度の関係を把握することができる。また、ビデオカメラ6に代え、静止画を撮像するカメラを備えても良い。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の架空線の腐食診断方法およびその装置によれば、架空線に自走式の無人の走行装置を設置して走行させ、この走行装置が有する撮像手段により架空線の外観像を撮影し、その表面の凹凸程度、色調或いは外径を調査・測定することにより、架空線における外層線および内層線の腐食程度の診断が可能となった。これより、宙乗機上での腐食診断作業が不要となった。この結果、高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る架空線の腐食診断装置の構成を示す図である。
【図2】上記腐食診断装置におけるビデオカメラとミラーとの取付位置を示す図である。
【符号の説明】
1 架空送電線
1a 鋼線
1b アルミニウム線
2 走行装置
3 フレーム
4 車輪
5 駆動源
6 ビデオカメラ
7 レンズ
8a,8b ミラー
【発明の属する技術分野】
本発明は、高所に布設される架空送電線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
架空送電線は、布設周辺の環境内に存在する水分、海塩粒子(NaCl)、各種ガス(HCl,Cl2,SOX,NOX,H2S等)などに起因して、早期のうちに腐食することがある。電線が腐食するとその機械的特性や電気的特性等が低下する。さらに電線の腐食が進行すると断線に至り、送電不能の状態を招くケースもある。したがって、条件の厳しい環境下に布設された架空送電線路については、定期的な線路の点検が不可欠となる。
【0003】
通常、これには、架空線に懸架させた宙乗機に人間が乗り、宙乗機を走行させながら電線表面の腐食状態を観察する方法が実行されている。しかし、この診断方法では、診断が不便な宙乗機上で同機を進めながらの作業となるため、作業遂行に多大な労力を要する。さらに、腐食が著しく進行した架空線を診断対象とするとき、電線の断線とそれに伴なう作業者の落下の危険性があるため、安全上の見地からも好ましいものとはいえない。
【0004】
このように人間が宙乗機に乗らずとも診断を行う方法として、降雨の後に電線から落下する水滴を下で受け取ったり、電線の高い部分から水を人工的に注ぎ、電線の低い位置から落下する水滴を下で受け取って回収し、この回収された水に含まれる金属のイオン濃度を測定することによって電線の腐食を診断する方法がある。なお、水滴を下で受け取る場合、電線の直ぐ下で水滴を受け取れるようにするため、リフト等の昇降手段を電線の下方に設置して回収する方法もある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭64−73247号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の公報による診断方法においては、高所に布設された電線から落下する水滴を受け取って回収する場合、架空送電線は通常位置が高いので風で水滴が流されて落下地点が定まらなかったり、落下地点が沼地などの人が容易に行けない難所であった場合は、その地点に行くのが困難となったりする等、回収作業が困難となり、結果的に腐食程度を容易に診断することができない。
【0007】
昇降手段を用いて回収する方法では、架空送電線の下方が上記の難所である場合、昇降手段を設置するのが困難であり、設置不可能であったりするので、やはり回収作業が困難となり、結果的に腐食程度を安全で容易に診断することができない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる架空線の腐食診断方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の架空線の腐食診断方法は、架空線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法において、前記架空線に撮像手段を有する無人自走式の走行装置を走行させ、前記撮像手段で前記架空線の外観像を撮像し、この外観像から前記架空線の表面の凹凸程度或いは色調、或いはその両者を観察することにより前記架空線の最外層素線の腐食程度の診断を行うことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の架空線の腐食診断方法は、架空線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法において、前記架空線に撮像手段を有する無人自走式の走行装置を走行させ、前記撮像手段で前記架空線の外観像を撮像し、この外観像の撮像から前記架空線の外径を測定することにより前記架空線の内部の腐食程度の診断を行うことを特徴としている。
【0011】
上記の架空線の腐食形態は、各々の布設環境で異なっている。架空線の外側、すなわち最外層素線から腐食が進行すると、素線表面の凹凸程度は大きくなるとともに、腐食生成物の影響で色調が異なることとなる。また、架空線の表面より電解質溶液が浸入し、より線の内部で腐食が進行した場合、腐食生成物の影響でより線の外径は増大する特徴がある。従って、架空線の外部腐食の診断のためには、表面の様相、すなわち上記のように、表面の凹凸の程度と色調を調べることが効果的であり、内部腐食の診断のためには、上記のように外径を測定することが有効となる。
【0012】
また、本発明の架空線の腐食診断装置は、架空線の腐食程度を診断するための架空線の腐食診断装置において、前記架空線を無人で走行する自走式の走行装置と、前記走行装置に設置され、前記架空線の外観像を撮像する撮像手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
また、前記走行装置に、前記撮像手段での撮像視野に入らない前記架空線の外観像を映し、この映し出された外観像が前記撮像手段により撮像できるように鏡を設置したことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1に示す本実施の形態に係る架空線の腐食診断装置は、図示せぬ鉄塔間に架線されたACSRタイプの架空送電線1に、電線の腐食程度を診断するための無人自走式の走行装置2を設置したものである。
【0016】
図2に示すように、架空送電線1は、亜鉛メッキが施された鋼線1aを複数本より合わせ、この周囲に複数本のアルミニウム線1bをより合わせて構成されている。この他、アルミニウム被覆を有する鋼線同士をより合わせたAC線、亜鉛メッキ鋼線同士をより合わせたGSW等でもよい。
【0017】
この走行装置2は、フレーム3に、車輪4と、駆動源5と、ビデオカメラ6と、2つのミラー8a,8bとが取り付けられて構成されている。車輪4は、走行装置2を架空送電線1に走行自在に懸架するためのものである。駆動源5は、車輪4を回転させると共に、ビデオカメラ6を駆動させるためのものである。ビデオカメラ6は、そのレンズ7が架空送電線1の上方に配置された状態でフレーム3に取り付けられており、架空送電線1の外観像を撮影するためのものである。
【0018】
図2に示すように、各ミラー8a,8bは、レンズ7に対向する架空送電線1の同一円周上で、且つレンズ7の撮像視野に入らない架空送電線1の外観を映し、この映し出された外観がレンズ7の撮像視野に入るように配置されている。言い換えれば、各ミラー8a,8bは、架空送電線1のビデオカメラ6による撮影視野を拡大するためのものである。
【0019】
なお、ビデオカメラ6に、レンズ7を架空送電線1の円周方向に可動可能な機構を備え、この機能によって、各ミラー8a,8bの方向にレンズ7を向けることによって、各ミラー8a,8bに映された架空送電線1の外観をより適正に撮像できるようにしてもよい。また、ビデオカメラ6の設置位置は、上記の他に架空送電線1の横、下側いずれでもよく、この何れに設置された場合でも、レンズ7と各ミラー8a,8bとの関係が上記のようになっていればよい。各ミラー8a,8bの枚数は、レンズ7の撮像視野に入らない架空送電線1の外観を映し、この映し出された外観がビデオカメラ6により撮像できれば、何枚でもよいが、出来る限り保守が簡単で低コストとなる枚数とする。また、走行装置2およびそれに搭載したビデオカメラ6の操作は、鉄塔上あるいは地上、並びに有線あるいは無線のいずれかによって可能なようになっている。
【0020】
このような走行装置2を架空送電線1上に自動走行させながら、ビデオカメラ6にて架空送電線1の外観像を撮影し、その表面の凹凸程度、色調および外径を調査することで、架空送電線1の腐食程度が診断されることとなる。
【0021】
ここで、本架空線の腐食診断装置によって、架線環境の種々異なる実線路電線の外観像の撮影を行い、その表面凹凸程度、色調、外径の調査を行うことで各々の腐食程度を診断するとともに、電線を撤去して実際の腐食程度を調査した結果を下表1および表2に示し、その説明を行う。
【0022】
まず、表1は、架線環境の異なる実線路電線について、表面の凹凸程度、色調、腐食診断の評価結果と、実際の最外層素線(上記アルミニウム線1bに対応)の腐食程度を示したものである。
【0023】
【表1】
この表1において、線路Aは産業廃棄物焼却場に近接した送電線路の例であり、焼却場から排出される煤煙が送電線に直接降りかかる箇所を評価対象とした。評価の結果、外層線表面の凹凸程度は極めて大きく、素線の欠損が顕著であった。また、その表面色調は、全面的に白色を呈していた。これは、水酸化アルミニウム等の腐食生成物によるものと判断され.、凹凸程度の結果と併せて、最外層素線の腐食程度は極めて大きいと診断された。
【0024】
また、線路Bは工業地帯に架線された送電線路の例である。外層線表面の凹凸程度は大きく、色調は黒色と白色を呈していた。黒色部は塵挨の付着、白色部はアルミの腐食生成物によるものと判断されたことから、外層線の腐食程度は大と診断された。
【0025】
そして、線路Cは市街地に架線された送電線路の例である。外層線表面には凹凸が認められるとともに、その色調は黒色と白色を呈していた。本線路C表面の凹凸程度および白色部の領域は線路Bと比較して小さいことから、外層線の腐食程度は中と診断された。
【0026】
さらに、田園地帯に架線された線路Dでは、表面の凹凸程度が極めて小さく、色調もアルミニウムの金属光沢を有している灰色であることから、外層線の腐食程度は軽微と診断された。
【0027】
なお、表1において、撤去電線の腐食程度とあるのは、以上の腐食診断が下された送電線路A〜Dを構成する送電線を対象として実施した、最外層アルミニウム線の腐食程度の評価結果を示したものである。これによれば、前述した架空送電線外層線の腐食診断結果の正しいことが実証されている。
【0028】
次に、表2は、架線環境のそれぞれ異なる実線路電線について、外径の増大程度評価結果と内部腐食の診断結果、そして実際の電線内部腐食{内層素線(上記鋼線1aに対応)腐食}の程度を示したものである。
表1においては、凹凸程度と色調の両者によって送電線の腐食程度を判断したが、何れか一方によって判断することも可能である。
【0029】
【表2】
表2において、線路Eは海岸に近接した工業地帯の送電線路の例である。架空より線の外径の増大程度が著しく大きいことから、架空線内部の腐食程度は極めて大と診断された。
【0030】
また、線路Fは海岸近接地帯に架線された送電線路の例である。より線の外径の増大している箇所が散見されることから、より線内部の腐食程度は中と診断された。
【0031】
そして、線路Gは山間地帯に架線された送電線路の例である。より線の外径増大箇所が局所的に観察された。外径の増大程度は前述の線路Fよりも小さいことから、本線路の内部腐食程度は小と診断された。
【0032】
一方、田園地帯の線路Hでは、より線の外径はほぼ設計値どおりであり、外径の増大は無いものと判断された。よって、線路Hの内部腐食程度は軽微と診断された。
【0033】
なお、表2において、撤去電線の腐食程度とあるのは、以上の腐食診断が下された送電線路E〜Hを構成する送電線を対象として実施した、内層アルミニウム素線の腐食程度の評価結果を示したものである。これによれば、前述した架空送電線内層素線の腐食診断結果の正しいことが実証されている。
【0034】
以上のように、本実施の形態による架空線の腐食診断装置を用いた腐食程度の診断方法によれば、無人自走式の走行装置2を架空送電線1上に設置して走行させ、架空送電線1の外観像を走行装置2に設置したビデオカメラ6にて撮影するようにして高所での作業が進められるようにしたので、この間、人手を要することがなく安全に架空送電線1の外観を撮像し、その表面凹凸程度、色調、外径の調査を行うことで各々の腐食程度を診断することができる。従って、高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる。
【0035】
なお、本走行装置2に計尺器を設置することで、径間内の位置とその腐食程度の関係を把握することができる。また、ビデオカメラ6に代え、静止画を撮像するカメラを備えても良い。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の架空線の腐食診断方法およびその装置によれば、架空線に自走式の無人の走行装置を設置して走行させ、この走行装置が有する撮像手段により架空線の外観像を撮影し、その表面の凹凸程度、色調或いは外径を調査・測定することにより、架空線における外層線および内層線の腐食程度の診断が可能となった。これより、宙乗機上での腐食診断作業が不要となった。この結果、高所に布設された電線の腐食程度を診断する作業を、安全で容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る架空線の腐食診断装置の構成を示す図である。
【図2】上記腐食診断装置におけるビデオカメラとミラーとの取付位置を示す図である。
【符号の説明】
1 架空送電線
1a 鋼線
1b アルミニウム線
2 走行装置
3 フレーム
4 車輪
5 駆動源
6 ビデオカメラ
7 レンズ
8a,8b ミラー
Claims (4)
- 架空線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法において、
前記架空線に撮像手段を有する無人自走式の走行装置を走行させ、前記撮像手段で前記架空線の外観像を撮像し、この外観像の撮像から前記架空線の表面の凹凸程度或いは色調、或いはその両者を観察することにより前記架空線の最外層素線の腐食程度の診断を行う
ことを特徴とする架空線の腐食診断方法。 - 架空線の腐食程度を診断する架空線の腐食診断方法において、
前記架空線に撮像手段を有する無人自走式の走行装置を走行させ、前記撮像手段で前記架空線の外観像を撮像し、この外観像の撮像から前記架空線の外径を測定することにより前記架空線の内部の腐食程度の診断を行う
ことを特徴とする架空線の腐食診断方法。 - 架空線の腐食程度を診断するための架空線の腐食診断装置において、
前記架空線を無人で走行する自走式の走行装置と、
前記走行装置に設置され、前記架空線の外観像を撮像する撮像手段と
を備えたことを特徴とする架空線の腐食診断装置。 - 前記走行装置に、前記撮像手段での撮像視野に入らない前記架空線の外観像を映し、この映し出された外観像が前記撮像手段により撮像できるように鏡を設置した
ことを特徴とする請求項3に記載の架空線の腐食診断装置。
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