JP2004153797A - 超音波発生装置および照明器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構造で例えば、近づいて来た動物を非常に有効に駆逐し、あるいは植物の成長を促す。
【解決手段】基板110上に熱絶縁層111を設けてこの熱絶縁層111上に発熱体薄膜112を設けることにより形成される超音波発生素子11と、この超音波発生素子11の発熱体薄膜112に接続される信号源12とを備えた。信号源12は、周波数可変の電気信号を発熱体薄膜112に加えてこれを駆動することにより、電気信号の周波数に応じた周波数の超音波を発熱体薄膜112の表面から発生させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板上に熱絶縁層を設けてこの熱絶縁層上に発熱体薄膜を設けることにより形成される超音波発生素子などを含む超音波発生装置およびこれを備えた照明器具に関するものである。
従来、超音波発生装置が種々開発され様々な分野で利用されている。例えば、特開平5−289683号公報(特許文献1)には、疑似的に生成された超音波コウモリ音声を、同一振幅レベルで間欠的に放射する出力モードと、コウモリ音声を所定のレベル範囲内において、所定のタイミングで鋸歯状に漸増させながら繰返し放射する出力モードとに切換えてコウモリ音声を発生させる疑似コウモリ音声発生方法が記載され、特に25〜40kHzの超音波の乗った鋸歯状波が、蛾の近接を防ぐのに有効であるとされている。
この種の超音波発生装置では、圧電効果または磁歪効果により機械的振動を発生させる超音波音源が使用される。例えば、円板上にチタン酸バリウムを焼結して両面に電極を焼き付けた圧電セラミック構造の振動発生素子では、電極間に超音波電気信号を印加したとき、機械的振動が発生し、この振動が空気などの媒体に作用して超音波が生じる。
しかし、この種の超音波音源は、固有の共振周波数を持つことになるため、発生する超音波の周波数帯域が狭く、また可変周波数の構成をとることが困難である。
この問題を解決することができるものに、特開平7−107893号公報(特許文献2)に記載された有害動物駆除装置がある。この有害動物駆除装置は、超音波の周波数が固定周波数であることに鑑みてなされたものであり、それぞれ異なる周波数帯域を有する複数の超音波送波器などを備え、これらのうちから少なくとも1つの超音波送波器を選択して駆動する構成になっている。
なお、特開平7−19791号公報(特許文献3)には、収束した熱交換器の外側に設置した外筒上を左右上下に密着スライドしながら超音波発信器より超音波を放射し洗浄することを特徴とする超音波による熱交換器の洗浄方法が記載されている。
特開平5−289683号公報 特開平7−107893号公報 特開平7−19791号公報 特開平11−300274号公報
しかしながら、上記特開平7−107893号公報に記載された装置では、複数の超音波送波器を備える必要があり、また複雑なドライブ回路や信号処理回路が必要となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で例えば、近づいて来た動物を非常に有効に駆逐したり、あるいは植物の成長を促したりすることができる超音波発生装置および照明器具を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1記載の発明の超音波発生装置は、基板上に熱絶縁層を設けてこの熱絶縁層上に発熱体薄膜を設けることにより形成される超音波発生素子と、この超音波発生素子の発熱体薄膜に接続される信号源とを備え、この信号源は、周波数可変の電気信号を前記発熱体薄膜に加えてこれを駆動することにより、前記電気信号の周波数に応じた周波数の超音波を前記発熱体薄膜表面から発生させることを特徴とする。
この構成では、信号源の周波数を変化させると、その周波数の変化に応じて超音波の周波数が変化するから、複数の超音波発生装置を備える必要のない簡単な構造で、例えば、近づいて来た動物を非常に有効に駆逐したり、あるいは植物の成長を促したりすることができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の超音波発生装置において、前記信号源は、前記発熱体薄膜表面から植物の成長促進用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、前記発熱体薄膜に加えることを特徴とする。この構成では植物の成長を促進することができる。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の超音波発生装置において、前記信号源は、前記発熱体薄膜表面から動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、前記発熱体薄膜に加えることを特徴とする。この構成では動物を駆逐することができる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の超音波発生装置において、前記動物駆逐用周波数は、コウモリが発する超音波の周波数に対応することを特徴とする。この構成では、コウモリを天敵とする動物を駆逐することができる。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の超音波発生装置において、前記コウモリが発する超音波の周波数は、30kHz近辺,60kHz近辺,90kHz近辺,120kHz近辺の周波数を含み、これら周波数の各々が5〜30kHzの周波数だけ連続的に減少する特性を有し、前記動物駆逐用周波数は、30kHz近辺,60kHz近辺,90kHz近辺,120kHz近辺の周波数のうち少なくとも60kHz近辺の周波数を含み、少なくともこの周波数から5〜30kHzの周波数だけ連続的に減少することを特徴とする。この構成では、コウモリを天敵とする動物を駆逐することができる。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の超音波発生装置において、前記発熱体薄膜表面からの超音波の送波方向を切り換える切換手段を備えることを特徴とする。この構成では、指向性の鋭い特性を有する超音波発生装置の超音波送波範囲を拡大することができる。
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の超音波発生装置において、前記超音波発生素子は、基板上に複数の熱絶縁層を設けてこれら複数の熱絶縁層上にそれぞれ複数の発熱体薄膜を設けたアレイ構造になっており、前記信号源は、前記アレイ構造の超音波発生素子における各発熱体薄膜への電気信号の位相を制御することにより、前記各発熱体薄膜表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向を切り換えることを特徴とする。この構成では、指向性の鋭い特性を有する超音波発生装置の超音波送波範囲を実質的に拡大することができる。
請求項8記載の発明は、屋外に設置される照明器具であって、請求項1から7のいずれかに記載の超音波発生装置と、光源と、この光源を駆動して点灯する点灯装置とを備えたことを特徴とする。この構成では、例えば近づいて来た動物を非常に有効に駆逐することができる。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の照明器具において、前記超音波発生装置は、前記超音波発生素子が超音波を送波する方角からの超音波を受波する超音波受波部を備え、この超音波受波部によって前記超音波発生素子からの超音波の反射波を受波すれば、周囲に物体が存在していることを検知することを特徴とする。この構成では、例えば近づいて来た動物を検知することができる。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の照明器具において、前記超音波発生素子は、基板上に複数の熱絶縁層を設けてこれら複数の熱絶縁層上にそれぞれ複数の発熱体薄膜を設けたアレイ構造になっており、前記信号源が、前記アレイ構造の超音波発生素子における各発熱体薄膜への電気信号の位相を制御することにより、前記各発熱体薄膜表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向を切り換え、この進行方向が切り換えられた超音波の反射波を前記超音波受波部で受波することにより、周囲の物体の走査を行い、この走査結果が周囲に物体が存在することを示すものであれば、前記信号源が、前記発熱体薄膜表面から動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、前記発熱体薄膜に加えることを特徴とする。この構成では、例えば近づいて来た動物を非常に有効に駆逐することができる。
請求項11記載の発明は、蛾の行動抑制用の発光部を備えた照明器具であって、超音波の波形パターンを記憶する超音波波形記憶部、この超音波波形記憶部に記憶された波形パターンに応じて超音波の波形信号を生成する信号発生部、およびこの信号発生部により生成された波形信号に応じて超音波を発生して出力する超音波発生部により構成される超音波発生装置と、前記発光部の点灯により前記超音波発生装置の超音波の出力タイミングを制御する制御部とを設け、前記超音波波形記憶部にコウモリが発信する超音波の波形パターンと略同一の波形パターンを記憶したことを特徴とする。
この構成では、発光部の光による蛾の行動抑制効果と、超音波の波形パターンをコウモリが発信するそれと略同一にすることで得られる防蛾効果とを組み合わせることで、防蛾効果をより一層高めることができる。つまり、簡単な構造で来た動物(蛾)を非常に有効に駆逐することができる。
請求項12記載の発明は、請求項11記載の照明器具において、前記超音波発生部は熱誘起音源を含み、前記信号発生部の超音波の周波数が目的とする周波数の1/2倍に設定されることを特徴とする。この構成では、熱誘起音源の出力周波数が入力電圧波形の2倍の周波数となる(電圧では2乗倍となる)ため、信号発生部の超音波の周波数を目的とする周波数の1/2倍(電圧では平方根値)に設定することにより、熱誘起音源から目的とする周波数の出力を得ることができる。
請求項13記載の発明は、請求項11記載の照明器具において、前記超音波発生部は熱誘起音源を含み、前記信号発生部は平方根回路を含むことを特徴とする。この構成では、超音波波形記憶部に目的とする超音波の周波数の波形パターンを記憶することにより、平方根回路で1/2倍の周波数となり(電圧では平方根値となり)、熱誘起音源の出力周波数がその2倍の周波数(電圧では2乗倍)になるので、熱誘起音源から目的とする周波数の出力を得ることができる。
請求項14記載の発明は、請求項11から13のいずれかに記載の照明器具において、前記超音波発生装置は、基本波形を周波数変調した超音波を発信することを特徴とする。この構成では、蛾の天敵であるコウモリが発信する超音波の特徴である周波数変調の超音波を発信することができ、蛾を好適に追い払うことができる。
請求項15記載の発明は、請求項11から13のいずれかに記載の照明器具において、前記超音波発生装置は、基本波形を振幅変調した超音波を発信することを特徴とする。この構成では、蛾の天敵であるコウモリが発信する超音波の特徴であるスイープ音を発信することができ、蛾を好適に追い払うことができる。
請求項16記載の発明は、請求項11から13のいずれかに記載の照明器具において、前記超音波発生装置は、基本波の音圧が時系列的に増大する超音波を発信することを特徴とする。この構成では、蛾に対して天敵のコウモリを擬似的に接近させるような音響効果により、蛾を好適に追い払うことができる。
請求項17記載の発明は、請求項11から16のいずれかに記載の照明器具において、前記超音波発生部の音源サイズが超音波の波長よりも短く、その超音波発生部にホーンが具備されていることを特徴とする。この構成では、効率よく超音波を発信することができる。
本発明によれば、簡単な構造で例えば、近づいて来た動物を非常に有効に駆逐したり、あるいは植物の成長を促したりすることができる。
(第1実施形態)
図1は超音波発生装置の構成図、図2は同超音波発生装置の入出力説明図であり、これらの図を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の超音波発生装置には、特開平11−300274号公報(特許文献4)に記載されたデバイスが使用される。すなわち、図1に示すように、同超音波発生装置1は、シリコンなどの基板110上に、シリコンを陽極酸化してできるナノ結晶構造のポーラスシリコンまたは高分子材料膜などの熱絶縁層111を設けて、この熱絶縁層111上にアルミニウムなどの発熱体薄膜112を設けることにより形成される超音波発生素子11と、この超音波発生素子11の発熱体薄膜112に接続される信号源12とを備えている。
この信号源12は、周波数可変の電気信号を発熱体薄膜112に加えてこれを駆動することにより、電気信号の周波数に応じた周波数の超音波SSWを発熱体薄膜112の表面から発生させるものである。
ここで、超音波発生素子11は、図2に示すように、信号源12からの電気信号に応じて発熱体薄膜112の表面温度が変化して、その表面に接する空気層に温度変化を与えることにより、発熱体薄膜112から電気信号の周波数fの2倍の周波数(2f)の圧力波を生み出して超音波を発生させる。このように、本実施形態の超音波発生素子11は、機械振動を伴わない超音波音源となるため、共振周波数を持たず、周波数帯域が広くなる。
以上のように、超音波発生素子11と、この発熱体薄膜112に接続され、周波数可変の電気信号を発熱体薄膜112に加えてこれを駆動することにより、電気信号の周波数fに応じた周波数2fの超音波を発熱体薄膜112の表面から発生させる信号源12とを備えることにより、信号源12の周波数fを変化させると、その周波数fの変化に応じて超音波の周波数2fが変化するから、複数の超音波発生装置を備える必要のない簡単な構造で、例えば、近づいて来た動物を非常に有効に駆逐したり、あるいは植物の成長を促したりすることができる。
より具体的には、蛾、蚊、はえ、ゴキブリなどの害虫およびネズミ、猫、猪、猿などの動物などの駆逐対象のうち、駆逐対象が異なれば有効な駆逐用周波数が異なることになり得るが、第1実施形態の超音波発生装置1によれば、それ1台で、駆逐対象に合わせて入力の電気信号の周波数fを制御することにより、超音波の周波数2fを各種有効な駆逐用周波数から最適な駆逐用周波数に設定することができるから、色々な駆逐対象を非常に有効に駆逐することができる。また、超音波の音圧強度を変えたり、超音波発生素子をアレイ構造にして各発熱体薄膜への電気信号の位相または周波数を制御することにより、慣れによる効果低減を防止することができるとともに、天敵の移動を擬似的に再現した超音波の発生も可能となる。さらに、上記と同様な技術により植物の成長促進も可能となる。
(第2実施形態)
図3は超音波発生装置の出力説明図であり、この図を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の超音波発生装置は、第1実施形態と同様に構成され、信号源12が、発熱体薄膜112の表面から動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、発熱体薄膜112に加えることを特徴とする。
ここで、駆逐対象に入る蛾とこの天敵について説明する。蛾は、大きな触角を持っており、この触角によって匂い分子を捕らえ、食物の所在を嗅ぎ付けたり、音を聞いたりする。蛾には、多くの天敵がおり、代表的なものは鳥、コウモリである。
コウモリは、自ら発生する超音波の反射波を受けて障害物や食物の所在を探知することができる能力を持っている。コウモリが実際に発生する超音波パターンは、2種類に分けられ、単なる周波数変調音(FM音)のパターンと、周波数定常音(CF音)と周波数変調音とを組み合わせたパターンとがある。周波数変調音を用いることで、より様々な情報を得ることができると言われている。このように、コウモリは定位音と呼ばれる超音波(パルス)を発し、標的から戻ってくるこだま(エコー)を聞き比べて標的についての様々な情報を得る。すなわち、エコーが戻ってくるまでの時間(エコー遅延時間)は標的までの距離、エコー周波数のドップラーシフトは標的との相対速度、エコーの振幅変調や周波数変調は羽ばたく昆虫の存在、エコーの強さは標的の大きさや距離、両耳間に到達するエコーの時間差と強度差は標的の水平方向の角度、外耳での反射によるエコーの干渉パターンは標的の垂直方向の角度を表すと考えられている。
このような超音波を補食時にコウモリが発するので、これを天敵とする蛾は、コウモリから身を守るためにその超音波に対して忌避行動をとる。このため、動物駆逐用周波数としてコウモリが発する超音波の周波数を使用すれば、近づいて来た蛾を有効に駆逐することが可能となる。
第2実施形態では、上記パターンのうち後者のパターン、つまり図3に示すように、30kHz近辺の周波数H1,60kHz近辺の周波数H2,90kHz近辺の周波数H3,120kHz近辺の周波数H4を含み、継続時間が比較的長いこれらの周波数の各々が短時間で5〜30kHzの周波数だけ連続的に減少するパターンが、発生するべき超音波の目標パターンとなる。
第2実施形態の超音波発生装置の信号源12は、30.5kHzから24.5Hzへ同じ時間タイミングで変調をかけて、30.5kHzを含みこの周波数から24.5Hzの周波数まで変化する電気信号を発熱体薄膜112に加えることにより、発熱体薄膜112の表面から、最も強い周波数成分となるH2(=61kHz)を含み、この周波数から49Hzの周波数まで変化するパターンの超音波を発生させる。
このように、発熱体薄膜112の表面から、コウモリが発する超音波の周波数に対応する動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、発熱体薄膜112に加えることにより、近づいて来た蛾を非常に有効に駆逐することができる。
(第3実施形態)
図4は超音波発生装置の構成図、図5,図6は同超音波発生装置の動作説明図であり、これらの図を参照しながら本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の超音波発生装置1Aは、図4に示すように、シリコンなどの基板110A上に、シリコンを陽極酸化してできるナノ結晶構造のポーラスシリコンまたは高分子材料膜などの複数の熱絶縁層111を設けて、これら複数の熱絶縁層111上にそれぞれアルミニウムなどの複数の発熱体薄膜112を設けることにより形成されるアレイ構造の超音波発生素子11Aと、この超音波発生素子11Aの各発熱体薄膜112と個別の信号線を介して接続される信号源12Aとを備えている。
信号源12Aは、第1または第2実施形態の信号源との相違点として、超音波発生素子11Aにおける各発熱体薄膜112への電気信号の位相を制御することにより、各発熱体薄膜112の表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向を切り換える機能をさらに有している。
次に超音波発生装置1Aの動作原理について説明する。図5に示すように、超音波発生素子11Aにおける互いに隣り合う2つの発熱体薄膜112に着目したとき、両発熱体薄膜112への電気信号の位相が同位相である場合、両発熱体薄膜112の表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向は、図5(a)に示すように、両発熱体薄膜112間の正面前方(矢印の方向)となる。これに対し、図5(b)に示すように、右側の発熱体薄膜112への電気信号の位相が左側の発熱体薄膜112への電気信号の位相よりも遅れた場合、両発熱体薄膜112の表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向は、両発熱体薄膜112間の正面前方右寄り(矢印の方向)となる。これとは逆に左側の発熱体薄膜112への電気信号の位相の方が遅れた場合には両発熱体薄膜112間の正面前方左寄りとなる。ここに、超音波発生素子11Aにおける各発熱体薄膜112への電気信号の位相を制御することで、図6の例に示すように、各発熱体薄膜112の表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向を任意の方向に切り換えることができるのである。
以上のように超音波発生装置1Aを構成して、発熱体薄膜112の表面からの超音波の送波方向を切り換える切換手段を持たせることにより、指向性の鋭い特性を有する超音波発生装置1Aの超音波送波範囲を拡大することができる。
なお、本発明の切換手段は、超音波発生装置1Aの構成に限らず、機械的に超音波発生素子の超音波の送波角度を切り換える構成でも、あるいはホーンを付加する構成などでもよい。
(第4実施形態)
図7は照明器具の構成図、図8は同照明器具の動作説明図であり、これらの図を参照しながら本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態では、図7に示すように、第3実施形態の超音波発生装置1Aと、超音波受波部2と、光源3と、点灯装置4と、制御部5とにより屋外用の照明器具を構成したことを特徴とする。
超音波受波部2は、超音波発生素子11Aが超音波を送波する方角からの超音波を受波するものであり、超音波センサにより構成される。
光源3は例えば放電灯などであり、点灯装置4は、例えば、商用電源を整流および平滑などして直流電力を得る直流電源部と、この直流電源部で得られた直流電力を交流電力に変換するインバータ部とにより構成され、インバータ部で変換された交流電力を光源3に供給することによりこれを点灯するものである。
制御部5は、例えばマイコンなどにより構成され、照明器具全般の制御などの処理を実行する。例えば、点灯装置4が光源3に交流電力を供給した時点から、照明器具に近づいて来た蛾を検出するべく、信号源12Aを通じて、所定周波数の超音波SSWを超音波発生素子11Aから送波するとともに、その超音波SSWの送波方向を切り換え、そして送波方向を切り換えた超音波SSWの反射波を超音波受波部2で受波することにより、周囲の物体の走査を行い、この走査結果が周囲に物体が存在することを示すものであれば、その物体を害虫の蛾であるとみなす処理(害虫検出処理)が繰り返し実行される。また、蛾であるとみなす処理結果となった場合には、害虫検出処理を停止した状態で、信号源12Aを通じて、超音波発生素子11Aの各発熱体薄膜112の表面から、第2実施形態で説明した動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、各発熱体薄膜112に加える処理(害虫駆逐処理)が実行される。
このように構成される照明器具では、図8に示すように、例えばタイマまたは明るさセンサなどに応じて点灯装置4が光源3に交流電力を供給して光源3が点灯すると、害虫検出処理が繰り返し実行される。そして、その害虫検出処理で、害虫の蛾であるとみなす処理結果が得られた場合(図8に示すように超音波受波部2から「検出パルス」が出力された場合)には、害虫駆逐処理が実行される。これにより、照明器具に近づいて来た蛾が忌避行動を起こし、照明器具から離れるようになる。
なお、第4実施形態では、超音波発生装置を備える屋外用の照明器具を例示したが、本発明の超音波発生装置を害虫などを含む動物駆逐、植物の成長促進等に使用する形態としては、様々な形が考えられ、上記屋外用の照明器具に限定されるものではない。
(第5実施形態)
図9は超音波発生装置を含む照明器具の構成図、図10は同照明器具に含まれる超音波発生装置から出力される超音波の波形例を示す図であり、これらの図を参照しながら本発明の第5実施形態について説明する。
生物は天敵から身を守るための防衛策を持っている。夜行性の生物は太陽の光を感知すると、行動が抑制されるという性質を持っている。また、夜蛾は、天敵であるコウモリが捕獲のために発信する超音波を受信すると、逃避もしくは落下といった行動を取って身を守る。このような各性質のうち、前者の光に関係する性質を利用した防蛾照明器具がすでに市販されているが、まだ完全とは言えないのが実情である。
そこで、第5実施形態の照明器具は、図9に示すように、例えば上記従来の市販の防蛾照明器具として、前述の光源3および点灯装置4により構成される蛾の行動抑制用の発光部3Bを備えるほか、防蛾効果をさらに向上すべく、夜蛾の性質を利用して防蛾用の超音波を発し、農作物を夜蛾の被害から守るための超音波発生装置1Bと、発光部3Bの点灯と同時に超音波発生装置1Bを起動してその超音波の出力タイミングを制御する制御部5Bとをさらに備えるのである。なお、照明器具に併用せずに、その超音波発生装置単独でもその超音波発生装置による防蛾効果が得られることは言うまでもない。また、タイマを用いて超音波発生装置1Bの起動と動作時間とを制御するようにしてもよい。
超音波発生装置1Bは、コウモリが発信する超音波の波形パターンと略同一の波形パターンを記憶する超音波波形記憶部12Bと、この超音波波形記憶部12Bに記憶された波形パターンに応じて超音波の波形信号を生成する信号発生部13Bと、この信号発生部13により生成された波形信号に応じて超音波を発生して出力する超音波発生部11Bとを備えている。
超音波波形記憶部12Bは、例えばメモリカードやハードディスクなどの記録媒体に予め記録されたコウモリの超音波音の波形パターンを読み出す再生装置(記録装置)により構成される。超音波波形記憶部12Bには、基本波形を周波数変調した超音波(FM波)の波形パターンが記憶されている。コウモリの種類によって異なるが、例えばキクガシラコウモリの波形パターンを記憶する場合には、超音波波形記憶部12Bに記憶するべき基本波の音響スペクトルは、ピークが54kHzとなり、40kHz〜70kHzの範囲のFM波となる。また、超音波波形記憶部12Bには、発信初期に基本波形を少しずつ振幅変調(増加変調)した超音波の波形パターンが記憶されている。コウモリの種類によって異なるが、例えばキクガシラコウモリの波形パターンを記憶する場合には、超音波波形記憶部12Bに記憶するべき波形パターンは、照射を開始してから0.5msから1ms後に振幅がピークとなる。さらに、超音波波形記憶部12Bには、コウモリの超音波音がコウモリの種類や生息地域によって異なるため、複数種類の超音波音がデータベース化されて記憶されている。なお、超音波波形記憶部12Bは、上記再生装置に限らずパソコンでもよく、また同様の電気信号波形を生成する周波数解析・合成手段などでもよい。
信号発生部13Bは、超音波波形記憶部12Bから超音波の波形パターンを読み出すタイミングを決定するための1/fゆらぎ回路131およびランダム回路132と、超音波波形記憶部12Bから読み出された超音波の波形パターンの信号を増幅するアンプ134と、このアンプ14の増幅率を調整することにより超音波発生部11Bから出力される超音波の音圧を調整する音圧調整回路135とにより構成されている。
1/fゆらぎ回路131は、図10に示すように、超音波の各基本波間の時間間隔を決定し、ランダム回路132は、基本波列中の基本波の数と基本波列の間隔を決定する。超音波に対する慣れを防ぐべく、例えばキクガシラコウモリを疑似する場合には、基本波同志の間隔は、短い時で1ms、長い時で10msとなる。
音圧調整回路135は、蛾に対して天敵のコウモリを擬似的に接近させるような音響効果を出すため、超音波発生部11Bから出力される超音波の音圧を低い音圧から高い音圧に漸増させる。例えば、コウモリの秒速3m程度の飛来速度を疑似する場合には、1秒間に10倍程度で音圧を変化させる。蛾は30dB以上の音圧を検知できるので、例えば音圧を30dBから50dBに変化させるのが望ましい。また、音圧調整回路135は、単調増加では効果が小さいので、コウモリが蛾を狙うときにとる行動(一直線に蛾に向かうのではなく、途中でする旋回等の行動)をまねて音圧を複雑に変化させるのがより望ましい。
超音波発生部11Bは、例えば周波数帯域の広いスーパーツイータにより構成される。このようにスーパーツイータのオーディオスピーカを使用するのは、圧電セラミックのような音源では周波数帯域が狭いため、単一素子で本実施形態の超音波発生部を実現することが困難であり、制御が困難となる複数素子を使用しなければならないことによる。
また、超音波発生部11Bには、ホーンが具備される。一般に、スピーカの振動面が媒質(空気)に音波を放射するときには、振動面が媒質からの反作用を受け、音が発生する。この場合、振動面の一辺(音源サイズ)を超音波の波長よりも長くすると、音の発生効率が向上する一方、短くすると、振動はしても周囲の空気がすぐ横に逃げ、空気に対する抵抗がなくなり、運動が仕事にならず、振動が媒質にうまく伝わらなくなるため、音の発生効率が悪化する。これを解決するために、先端ほど断面積が大きくなる形状を有するホーンが超音波発生部11Bに具備される。
このように構成される照明器具では、従来の市販の防蛾照明器具としての発光部3Bに加えて、コウモリが発信する超音波の波形パターンに応じた超音波を発信する超音波発生装置1Bをさらに備えるので、防蛾効果をより一層高めることができる。つまり、簡単な構造で、近づいて来た動物(蛾)を非常に有効に駆逐することができるのである。
(第6実施形態)
図11は超音波発生装置を含む照明器具の構成図であり、この図を参照しながら本発明の第6実施形態について説明する。
第6実施形態の照明器具は、第5実施形態との相違点として、図11に示すように、スーパーツイータに代えて周波数帯域の広い熱誘起型音源を超音波発生部11Cに使用し、信号発生部13Bと同様の構成の信号発生部13Cにおけるアンプ134の前段に、平方根回路133を備える構成となっている。
熱誘起型音源は、発熱体の発熱による媒質の膨張および収縮で超音波を発生させるため、電圧Vが熱量Wに変換されることになる。熱量Wは、発熱体の抵抗値をRとすると、
W=V2 /R
の関係式で求められ、熱量W、すなわち出力される音の音圧変化は電圧Vの2乗に比例することになる。ここで、電圧Vを、V=Asinθとすると、
W=(Asinθ)2 /R
=A2 (1−cos2θ)/2R
となり、出力される音の周波数は、入力信号の周波数の2倍となる。このような熱誘起型音源の出力特性のため、平方根回路133をアンプ134の前段に設ける。また、y=sinθとすると、yは位相により正と負の場合があり、yが負の場合は平方根を求めることができないので、超音波波形記憶部12Bから得られる信号にバイアス電圧を加えて正の値とし、平方根回路133で平方根波形が求められる。
以上のように、第6実施形態では、第5実施形態と同様に、目的とする超音波の波形パターンが記憶されている超音波波形記憶部12Bから得られる信号が、平方根回路133で平方根値に処理され、その平方根値に処理された信号が超音波発生部11Cで2乗されて出力されるので、目的とする超音波を出力することができる。これにより、第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、第5,第6実施形態では、基本波形を周波数変調した超音波の波形パターンおよび振幅変調した超音波の波形パターンが超音波波形記憶部12Bに記憶される構成になっているが、これに限らず、それらと同様のコウモリの超音波音をFM変調回路およびAM変詞回路を用いて合成してもよい。
また、第5,第6実施形態では、40kHz〜70kHzの範囲のFM波を利用する構成になっているが40kHz〜90kHzの範囲などのFM波を利用する構成でもよい。
超音波発生装置の構成図である(第1実施形態)。 同超音波発生装置の入出力説明図である。 超音波発生装置の出力説明図である(第2実施形態)。 超音波発生装置の構成図である(第3実施形態)。 同超音波発生装置の動作説明図である。 同超音波発生装置の動作説明図である。 照明器具の構成図である(第4実施形態)。 同照明器具の動作説明図である。 超音波発生装置を含む照明器具の構成図である(第5実施形態)。 同照明器具に含まれる超音波発生装置から出力される超音波の波形例を示す図である。 超音波発生装置を含む照明器具の構成図である(第6実施形態)。
符号の説明
1,1A,1B,1C 超音波発生装置
11,11A 超音波発生素子
110,110A 基板
111 熱絶縁層
112 発熱体薄膜
12 信号源
2 超音波受波部
3 光源
3B 発光部
4 点灯装置
5,5B 制御部

Claims (17)

  1. 基板上に熱絶縁層を設けてこの熱絶縁層上に発熱体薄膜を設けることにより形成される超音波発生素子と、この超音波発生素子の発熱体薄膜に接続される信号源とを備え、この信号源は、周波数可変の電気信号を前記発熱体薄膜に加えてこれを駆動することにより、前記電気信号の周波数に応じた周波数の超音波を前記発熱体薄膜表面から発生させることを特徴とする超音波発生装置。
  2. 前記信号源は、前記発熱体薄膜表面から植物の成長促進用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、前記発熱体薄膜に加えることを特徴とする請求項1記載の超音波発生装置。
  3. 前記信号源は、前記発熱体薄膜表面から動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、前記発熱体薄膜に加えることを特徴とする請求項1記載の超音波発生装置。
  4. 前記動物駆逐用周波数は、コウモリが発する超音波の周波数に対応することを特徴とする請求項3記載の超音波発生装置。
  5. 前記コウモリが発する超音波の周波数は、30kHz近辺,60kHz近辺,90kHz近辺,120kHz近辺の周波数を含み、これら周波数の各々が5〜30kHzの周波数だけ連続的に減少する特性を有し、前記動物駆逐用周波数は、30kHz近辺,60kHz近辺,90kHz近辺,120kHz近辺の周波数のうち少なくとも60kHz近辺の周波数を含み、少なくともこの周波数から5〜30kHzの周波数だけ連続的に減少することを特徴とする請求項4記載の超音波発生装置。
  6. 前記発熱体薄膜表面からの超音波の送波方向を切り換える切換手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超音波発生装置。
  7. 前記超音波発生素子は、基板上に複数の熱絶縁層を設けてこれら複数の熱絶縁層上にそれぞれ複数の発熱体薄膜を設けたアレイ構造になっており、前記信号源は、前記アレイ構造の超音波発生素子における各発熱体薄膜への電気信号の位相を制御することにより、前記各発熱体薄膜表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向を切り換えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の超音波発生装置。
  8. 屋外に設置される照明器具であって、請求項1から7のいずれかに記載の超音波発生装置と、光源と、この光源を駆動して点灯する点灯装置とを備えたことを特徴とする照明器具。
  9. 前記超音波発生装置は、前記超音波発生素子が超音波を送波する方角からの超音波を受波する超音波受波部を備え、この超音波受波部によって前記超音波発生素子からの超音波の反射波を受波すれば、周囲に物体が存在していることを検知することを特徴とする請求項8記載の照明器具。
  10. 前記超音波発生素子は、基板上に複数の熱絶縁層を設けてこれら複数の熱絶縁層上にそれぞれ複数の発熱体薄膜を設けたアレイ構造になっており、前記信号源が、前記アレイ構造の超音波発生素子における各発熱体薄膜への電気信号の位相を制御することにより、前記各発熱体薄膜表面から発生する各超音波同士で互いに強め合う合成波の波面の進行方向を切り換え、この進行方向が切り換えられた超音波の反射波を前記超音波受波部で受波することにより、周囲の物体の走査を行い、この走査結果が周囲に物体が存在することを示すものであれば、前記信号源が、前記発熱体薄膜表面から動物駆逐用周波数の超音波を発生させるための周波数の電気信号を、前記発熱体薄膜に加えることを特徴とする請求項9記載の照明器具。
  11. 蛾の行動抑制用の発光部を備えた照明器具であって、超音波の波形パターンを記憶する超音波波形記憶部、この超音波波形記憶部に記憶された波形パターンに応じて超音波の波形信号を生成する信号発生部、およびこの信号発生部により生成された波形信号に応じて超音波を発生して出力する超音波発生部により構成される超音波発生装置と、前記発光部の点灯により前記超音波発生装置の超音波の出力タイミングを制御する制御部とを設け、前記超音波波形記憶部にコウモリが発信する超音波の波形パターンと略同一の波形パターンを記憶したことを特徴とする照明器具。
  12. 前記超音波発生部は熱誘起音源を含み、前記信号発生部の超音波の周波数が目的とする周波数の1/2倍に設定されることを特徴とする請求項11記載の照明器具。
  13. 前記超音波発生部は熱誘起音源を含み、前記信号発生部は平方根回路を含むことを特徴とする請求項11記載の照明器具。
  14. 前記超音波発生装置は、基本波形を周波数変調した超音波を発信することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の照明器具。
  15. 前記超音波発生装置は、基本波形を振幅変調した超音波を発信することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の照明器具。
  16. 前記超音波発生装置は、基本波の音圧が時系列的に増大する超音波を発信することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の照明器具。
  17. 前記超音波発生部の音源サイズが超音波の波長よりも短く、その超音波発生部にホーンが具備されていることを特徴とする請求項11から16のいずれかに記載の照明器具。
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