JP5976039B2 - 生物排除装置 - Google Patents

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Description

本発明は、排除したい哺乳類を含む動物類(以下、「排除対象生物」と称す)を排除する生物排除装置であって、特に音を利用した生物排除装置に関するものである。
従来から、害獣(例えば、ゴキブリやネズミ、鳥類(カラスやムクドリ、ハト)などの排除対象生物)の排除を目的とした生物排除装置が開示されている。従来の生物排除装置の1つには、異なる超音波帯域の信号を周期的に変化させて、空中に放射する電気音響変換放射器(スピーカ)を備えた構成を採用したものが開示されている。なお、以下の説明において、「排除」には、「駆除」、「忌避」、「回避」が含まれるものとする。
そのようなものとして、「それぞれ異なる周波数帯域を有する複数の超音波送波器と、上記各超音波送波器別に駆動するドライブ回路とを備え、予め定められた複数の駆動モードのうちから1つの駆動モードを選択すると共に、上記駆動モードに基づいて上記ドライブ回路を制御する制御部を備え、上記各モードには上記複数の超音波送波器のうちから少なくとも1つの超音波送波器を不規則に選択し、上記ドライブ回路の駆動周波数、および駆動時間を不規則に制御するランダム帯を設けたことを特徴とする超音波を利用した有害動物駆除装置」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の有害動物駆除装置では、放射器を備えた製品に搭載しているIC等の記憶装置に、予めプログラミングしていた時間と周期に応じて超音波信号を放射するようにしており、音放射を提示する対象物が音に対して慣れるなどの状態が講じないための信号処理を行っていた。
また、有害動物の一例として、様々な業種から排除要求の多いものとして「鳥類」が挙げられる。「鳥類」としては、近年、カラスやムクドリ、ハトなどが対象になっている。このうち、カラスは「鳥類」の中でも高い知能を持っているということは周知であり、専門の研究結果から、カラスは鳥間でのコミュニケーション能力にも長けていることが判明している。
従来の生物排除装置には、カラスの音声を用いて、カラスの音声をスピーカから大きな音圧レベルで放射することで直接的にカラスへ暴露させることで、カラスに対して回避行動をさせるようにしたものもあった(例えば、特許文献2参照)。
特開平7−107893号公報(例えば、2、3ページ) 特許第5135507号公報(例えば、実施例1)
超音波帯域の周波数まで聞き取ることが可能な動物が多く存在することから、特許文献1に記載の技術では、排除対象生物のうち超音波帯域を聞き取る能力を有している動物に対しては、ある一定期間の効果を発揮することができる。
しかしながら、超音波帯域を利用していない、比較的高等なコミュニケーションを有するカラス等の排除対象生物には大きな影響を与えていない等の問題点が有った。
また、超音波信号の発振周波数を変化させたとしても一定のリズムで変化していることには変わりないので、ある程度の時間暴露によって、排除対象生物に、音そのものへの「慣れ」が生じてしまうという問題点もあった。
特許文献2に記載の技術では、排除等に必要な音響信号を、排除対象生物に必ず聞こえさせることが重要になっている。そこで、排除対象生物の音声と同等、又はそれ以上の音圧レベルで音響信号を放射する必要がある。そのため、音放射させるためのスピーカなどからは終夜問わず、排除対象生物の音声以上の音圧レベルの音声が大音量で放射されることになる。よって、生物排除装置の設置環境周囲には排除対象生物の排除に必要な音声信号が音放射されていることになるので、周辺の住民にも同等に暴露されて、設置環境が引き起こす「騒音」という問題を発生させていた。
この発明は、上述の課題を背景になされたもので、排除対象生物に対して、超音波に重畳した音声を直接又は間接的に暴露させるようにした生物排除装置を提供することを目的としている。
本発明に係る生物排除装置は、排除対象生物を排除する生物排除装置であって、前記排除対象生物の原音声及び原音声の特徴的な音響特性を用いた擬似音声を超音波信号に重畳した音声を、前記排除対象生物が発する音声の音圧レベルと同等又は同等以上の音圧レベルとして放射するものであり、前記排除対象生物の原音声は、前記排除対象生物の「警戒時」、「回避準備時」、「回避行動時」、及び、「恐怖時」に発する原音声の単体又はいずれかの組み合わせによる音声パターンを用い、前記排除対象生物の擬似音声は、前記排除対象生物の「警戒時」、「回避準備時」、「回避行動時」、及び、「恐怖時」に発する原音声の単体又はいずれかの組み合わせによる音声パターンの特徴的な周波数特性の変化を再現するように作成し、前記排除対象生物の原音声及び擬似音声は、自動的に組み合わされて、ランダム出力されるようになっており、前記超音波信号の振幅変調時に外来ノイズによって発生したパルス性ノイズも前記音声パターンと同時に前記排除対象生物に暴露するものである。
本発明に係る生物排除装置は、排除対象生物の原音声、危険時や恐怖時に発する原音声の周波数パターンで作成した人工音声(擬似音声)を用いて動物の本能に直接又は間接に訴えて害獣対策を行うことができる。そのため、本発明に係る生物排除装置によれば、動物の行動パターンを知らずに作成した人工的な音響信号を用いた従来品とは異なり、音声を発信する製品そのものの寿命が迎えるまでの長期間に亘って、害獣(有害動物)の排除が行える。
本発明の実施の形態1に係る生物排除装置の基本的な構成を示す基本ブロック概念図である。 2種類のカラスの音声の時間波形例を説明するための説明図である。 カラスの警戒から回避行動までを行わせるための疑似音声例を説明するための説明図である。 信号処理の一連の処理状態例を説明するための説明図である。 カラスが聞くことになる復調後の波形例を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態1に係る生物排除装置の再生手段の一例を説明するための概略構成図である。 図6(B)に示した空中超音波発振子の集合体を一つの放射エリアとして、放射エリアの塊を4個集合させた空中超音波発振子の組み合せ例を示す概略構成図である。 15kHzのランジュバン素子と、このランジュバン素子に取り付けられ、このランジュバン素子に同期して分割共振するように形成した凸部形状を成形した例えば方形の振動板100と、を搭載したランジュバン式の発振方式を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態1に係る生物排除装置の再生手段の他の一例を説明するための概略構成図である。 15kHzで駆動するように構成した各々の再生手段の出力−音圧周波数特性を示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係る生物排除装置の再生手段で再生したときの指向特性を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態2に係る生物排除装置の構成の一例を説明するための概略構成図である。
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態について説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る生物排除装置1の基本的な構成を示す基本ブロック概念図である。以下、図1を参照しながら、生物排除装置1について説明する。生物排除装置1は、排除対象生物に対して、超音波に重畳した音声を直接又は間接的に暴露させるようにしたものである。
生物排除装置1は、 超音波信号創生部10、排除信号部12、処理回路部25、加算部30、アンプ35、再生手段40を備えている。なお、アンプ35は、必須の構成ではない。
超音波信号創生部10は、15kHz以上の超音波帯域の信号を創生する発信回路部として機能している。超音波信号創生部10で創生された信号周波数がキャリア信号として使われる。
排除信号部12は、発信回路部A20および発信回路部B22の集合体として構成される。
発信回路部A20では、排除対象生物の生の原音声信号(排除対象生物用音声信号)が保存されており、排除対象生物に応じた音声を入力しておく部分である。
発信回路部B22は、発信回路部A20に保存されている排除対象生物用音声信号を元にして、ホワイトノイズを用いて、生音声の特徴ある排除対象生物の原音声及び原音声の特徴的な音響特性を用いて再生できるように作成した疑似音声(擬似音声信号)の保存領域部である。
処理回路部25は、代表的な排除を促す音声パターン(第1音声パターン)の周波数特性と、警戒から排除を行わせる複数の疑似音声パターン(第2音声パターン)の周波数特性と、を作成及び保存しておくことで、生音声との自由な組み合わせ出力をランダム出力するものである。つまり、処理回路部25は、第1音声パターンと組み合わせる第2音声パターンを選択し、選択した第2音声パターンと第1音声パターンとを自動的に組み合わせ処理を行い、ランダム出力するようになっている。
加算部30は、排除信号部12の音声と超音波信号創生部10とを結合する部分として機能し、それぞれから出力された信号を変調波形によって振幅変調する。
アンプ35は、加算部30で振幅変調された信号の音圧レベルを増幅するものである。
再生手段40は、アンプ35で増幅された信号を音声等として再生し、離れた場所に伝送するものである。再生手段40は、公知であるパラメトリックスピーカと同等の働きをさせるために、高い音圧レベルを放射させるようにすることが望ましい。
ここで、排除対象生物としてカラスを排除する場合について説明する。
音声コミュニケーションを用いている動物や集団行動をする動物の場合には、仲間を誘導するための音声コミュニケーションを利用していることが知られている。
カラスは、発達した聴覚構造と咽頭構造を有しており、複数の鳴き声を利用し、仲間同士で高等な音声コミュニケーションを行うことが知られている。また、カラスは、大きくハシブトカラスとハシボソカラスの2種類に分類され、それぞれで利用している音声の周波数帯域が異なっている。
図2は、2種類のカラスの音声の時間波形例を説明するための説明図である。図2(A)がハシボソカラスの音声の時間波形例を、図2(B)がハシブトカラスの音声の時間波形例である。なお、図2において、縦軸は周波数(kHz)を、横軸は時間(SEC)を、それぞれ示している。また、図2に示す特性は、あくまでも2種類のカラスの音声の一例であり、カラスの行動内容によっては数十種類の周波数特性を有している。
図2から、音声として出ている周波数帯域が、カラスの種類によって異なることが分かる。図2では、「警戒から回避行動」時までに発する音声の分析結果例を示している。そして、「警戒時→回避準備時→回避行動時」が一連の音声例であり、これ以外にも複数の組み合わせによる音声パターンを有している。
生物排除装置1では、排除対象生物(害獣)と想定したカラスの原音声の、「警戒時→回避準備時→回避行動時」及び「恐怖時」に発する音声のいずれか(単体)、又はいずれかが組み合わせられた時に発する音声パターンを用いるようにしている。図2から、カラスの種類の違いにより、発生する音声の周波数帯域が異なっていることがわかる。そこで、これらの音声パターンによる「生」の音声を使用することで、音声の意味がカラスにとっては確実であり、この音声を用いることで、カラスの排除行動を確実に行わせることができる。
また、実際の環境下では2種類のカラスが混在していることがある。そのため、生物排除装置1では、両種類の「生」の音声を保管して、適当な時間間隔でランダム再生すれば、どちらの種類に対しても効果を発揮することができる。
図3は、カラスの警戒から回避行動までを行わせるための疑似音声例を説明するための説明図である。図3(A)がハシボソカラスの警戒から回避行動までを行わせるための疑似音声例を、図3(B)がハシブトカラスの警戒から回避行動までを行わせるための疑似音声例である。なお、図3において、縦軸は周波数(kHz)を、横軸は時間(SEC)を、それぞれ示している。
図3に示す疑似音声では、生音声の回避準備は無くし、警戒から回避行動までを行わせるように組み合わせており、どちらの種類のカラスに対しても音声発生時間は0.5秒以内にしている。これは、カラスの行動に余裕を持たせないことを狙ったものである。こうすることにより、カラスにとって非常に大きな恐怖を生じさせることができ、すぐに逃げさせる(回避させる)ことができるようになる。
図2の音声特性を解析して、特徴ある周波数を取り出してカラスの種別で音声を作成した場合は下記のようになる。
<ハシボソカラスの疑似音声の場合>
「警戒」の領域では、
800Hz〜1.5kHz、2.2kHz〜3.8kHz、5.5kHz〜6.2kHzを一つの音声再生幅とし、一つの音声再生時間幅を0.05秒として一つの帯域を構成する。
帯域間の消音域は、0.01秒であり、前記帯域を4回再生して0.2秒以内とする。
「回避行動」の領域では、
1.1kHz〜2.0kHz、2.5kHz〜3.5kHz、5.2kHz〜7kHzを一つの音声再生幅とし、一つの音声再生時間幅を0.05秒として一つの帯域を構成する。
帯域間の消音域は0.01秒であり、前記帯域を4回再生して、0.2秒以内とする。
なお、3.5kHz〜5.2kHzの間は、約400Hz間隔でビブラートをかけている。
<ハシブトカラスの疑似音声の場合>
「警戒」の領域では、
400Hz〜1.8kHz、2.2kHz〜3.0kHzを一つの音声再生幅とし、一つの音声再生時間幅を0.05秒として一つの帯域を構成する。
帯域間の消音域は、0.01秒であり、前記帯域を4回再生して0.2秒以内とする。
「回避行動」の領域では、
350Hz〜1.5kHz、2.2kHz〜3.0kHz、4.0kHz〜4.2kHzを一つの音声再生幅とし、一つの音声再生時間幅を0.08秒として一つの帯域を構成する。
帯域間の消音域は、0.01秒であり、前記帯域を4回再生して、0.32秒以内とする。
なお、1.5kHz〜2.2kHzの間は、約200Hz間隔でビブラートをかけている。
両者の音声は、聞いた感じを記載すると「カッ、カッ、カッ、カッ」と、非常に短い音声再生を複数繰り返して一つの音声としており、連続性のある音声にはなっていないのが「警戒」関連の音声の特徴である。
図3に示す疑似音声は、本来のカラスの音声を解析して作り上げているが、本来の音声と比較して、比較的低い周波数帯域で音圧レベルが高い場合がハシブトカラスの種、高い周波数帯域まで再生しているのはハシボソカラスの種であり、2種類のカラスの音声は異なる周波数帯域で再生していることになる。
高等な音声パターンを有するカラス等の場合は、回避行動までを行わせる音声パターンは複数あるので、全ての音声を作成、保存することは困難となる。よって、生物排除装置1では、元音声を利用して、疑似的な音声を複数個作成して保存することで、「慣れ」に対する問題を解決するようにしている。
上述したように、生物排除装置1は、処理回路部25により、代表的な排除を促す音声パターン(第1音声パターン)の周波数特性と、警戒から排除を行わせる複数の疑似音声パターン(第2音声パターン)の周波数特性と、から生音声との自由な組み合わせ出力をランダム出力可能になっている。
なお、生物排除装置1では、発信回路部A20及び発信回路部B22に保存している一つ当たりの音声パターンの長さは、最大で5秒以下とし、長い時間聞かせることによる音の慣れについても防止している。
なお、図2に示す通り、カラスの場合の音声の周波数特性は、500Hz以上から3kHzまでの中帯域であり、人間の可聴周波数帯域に含まれることになり、人間に認識できるレベルである。
よって、単純に、例に示したカラスの音声パターンを再生すると、人間にも聞こえることになってしまう。
また、自然界におけるカラスの音声(鳴き声)の音圧レベルは、例えば、カラスと計測器の距離が10mであった場合でも70dB〜80dBを有しており、非常に高い音圧レベルを有している。
排除信号部12の音声パターンの出力レベル(音声レベル)も、確実な回避行動を行わせるためには、実際にカラスが発生する音声と同等以上の音圧レベルで放射を行う必要がある。
図4は、信号処理の一連の処理状態例を説明するための説明図である。図4に基づいて、信号処理の一連の処理状態の一例について説明する。
超音波を搬送信号として利用する再生方式としては、パラメトリックスピーカ手段があり、これは公知でもある。公知のパラメトリックスピーカは、人間対象のために、ノイズのない音を提供することを目的としている。そのために、公知のパラメトリックスピーカは、デジタル信号処理により振幅変調の問題点を解決して再生している。
生物排除装置1では、振幅変調としての問題点を利用して、カラスの音声と一緒に再生するようにしている。
なお、上記問題点とは、外来ノイズによるパルス性ノイズである。
振幅変調では、復調時にビート現象が発生して、超音波と音声の二つの信号が「うなり」的に発生する場合もある。「うなり」として発生する音声と超音波の2波が、再生手段40から再生されて伝送先のカラスに衝突したときに復調して音声部分がカラスに暴露する。音声以外に、後述する高い音圧レベルの超音波も暴露されることになるので、カラスにとっては、自然界で経験的に浴びている可聴域の音声以外に、自然界で浴びたことのない超音波の高い音圧レベルにも暴露することになる。
高い音圧レベルの超音波は、医療にも使われていることは周知であり、肉体的な振動として感じる。つまり、高い音圧レベルの超音波は、カラスに排除を促す音声のほかに、カラスに経験したことのない超音波の圧力変動を受けさせることで、カラスに対して不快な影響を与えることになる。
また、外来ノイズによるパルス的なノイズは、高い音圧レベルのインパクト信号としてカラスに直接暴露することになる。
図5は、カラスが聞くことになる復調後の波形例を説明するための説明図である。図5に基づいて、カラスが聞くことになる復調後の波形例について説明する。
連続信号による音声の中に不定期にパルス性の信号音が発生して、カラス等の動物に浴びせられることになる。そのため、高等なコミュニケーションを行っている動物にとっては、不快なインパルス音として提供されることになる。
また、振幅変調は簡単な回路構成で構成できるので、安価に回路が成形できると共に、屋外等に設置した場合には、デジタル回路の場合に必要な外来ノイズの強力な対策構造や回路構成、回路に見られる複雑な回路設定等も必要ない。そこで、生物排除装置1では、デジタル処理を必要としない構成を採用し、回路に対するコストメリットも大きいという特徴を持っている。
上述したように、再生手段40は、高い音圧レベルを放射させる必要がある。これは、住宅街等でカラスの排除を行う場合、一般的なスピーカによる再生方法では、住宅街の住民に対してもカラスの音声が暴露されることになる。その場合は、カラスの音声を聞いた人間にとっては単なる「騒音」である。
よって、人間には不快感を与えさせないために、生物排除装置1では、超音波搬送によって、カラスだけに対して音声を暴露させるようにしている。
しかしながら、公知である一般的なパラメトリックスピーカは、目的とする場所に対してのみ「音響信号」を提供するものであり、パラメトリック方式としては、非常に指向性が狭いという特性がある。また、パラメトリックスピーカのための素子の構造が専用でないために、高い音圧レベルで音放射を行うための振動板等の振幅を作れないなどの短所を有している。そのため、従来は目的とする場所にだけ音の提供を人間が聞こえる程度の音圧レベルで提供する程度のものであった。
ただし、排除対象生物の一例であるカラスを対象にした場合、カラスの「ねぐら」や「えさ場」等に集まる個体数は、非常に多く、上記の場所での排除を目的とする場合には、広い範囲(幅のある範囲)に、且つ大きな音圧レベルでの音声の放射が必要になっている。
この場合に、指向性がある程度広げられる中低域用の一般的なスピーカでの音放射が有利であるが、カラスの発音の音圧レベルと同等以上の音圧レベルを広い範囲で放射すると、当然、人間にも暴露されるので、先述の通り、「騒音」として人間に不快を与えてしまうことになる。
以上のことから、目的とする場所に対して、つまりは離れたところに集団で居るカラスに対して、排除に必要な音声を、超音波をキャリアとして大音圧で送ると共に、成るべく広い(幅のある)指向性で音声を提供できるようにすることが重要になる。
そこで、生物排除装置1によれば、離れたところに対して、広い範囲で目的の音声を送ることができるようになっているので、カラス以外の周辺の住宅街等の住民(人間)に対して音(音声)が暴露されることがなく、騒音問題は発生しない。
図6は、生物排除装置1の再生手段40の一例を説明するための概略構成図である。図6では、再生手段40の一例として、空中超音波発振子41を複数個用いたものを図示している。図6(A)が空中超音波発振子41の単体構造の概要を示し、図6(B)が複数個の空中超音波発振子41の組み合せ例を示している。
図6(A)に示すように、空中超音波発振子41の単体構造において、空中超音波発振子41の基本的な構成要素は、ホーン部60、圧電素子のPZT部61、PZTを固着する台座62、PZT61に電圧供給するための電極63である。生物排除装置1では、高い音圧レベルで音放射し、且つ広い指向性を持たせるために、空中超音波発振子41の共振周波数としては15kHz前後を用い、且つ、音を放射する空中超音波発振子41のホーン部60を大型化した構造を採用している。
また、PZT部61の厚みを増すことで圧電作用を起こさせるための印加電圧耐圧を高くできるようにしている。さらに、PZT部61の一次振動成分である共振時(例えば、15kHzにおいて)の振動モードの密(腹)部分全体にホーン部60を固着して、一次の振動伝搬したホーン部60の全体から音放射させるようになっている。この構造により、空中超音波発振子41への入力電圧を高くすることができ、空中超音波発振子41の固有振動の変位量を大きく振動させることが可能となる。
図6(B)に示すように、強い音圧レベルを放射する手段の一つとして、空中超音波発振子41の密集隊形がある。一つの空中超音波発振子41での入力電圧に対するホーン部60から放射される音圧レベルは、ホーン部60の中心軸上30cmで約100dB前後である。ホーン部60の略全体が振動することで、ホーン部60の全体から直線的に超音波の信号が空中に一直線的に放射する。
この空中超音波発振子41を複数個集めて、且つ、密集隊形としたのが図6(B)に示す構成例である。平面視が丸いホーン部60の円弧部分を密集させる手段として、複数個の空中超音波発振子41による三角配置が不要な隙間を作らないことになるので、非常に効率的な密集隊形が形成できる。密集した各々のホーン部60から一直線的に放射音が軸上に密集放射することになるので、図6(B)の構成における中心軸上30cmの位置で音圧レベルを測定すると約130dB前後となる。
図7は、図6(B)に示した空中超音波発振子41の集合体を一つの放射エリアとして、放射エリアの塊を4個集合させた空中超音波発振子41の組み合せ例を示す概略構成図である。図7に基づいて、放射エリアの塊を4個集合させた空中超音波発振子41の組み合せ例について説明する。
放射エリアの塊を4個集合させる場合、図7に示すように、放射エリアを放射エリアAから放射エリアDとして組み合せることが考えられる。上述したように、一つの放射エリアで得られる音圧レベルが130dB/30cmであるので、複数個の放射エリアの組み合わせにより、軸上30cmで156dB前後の音圧レベルの放射音圧を得られることになる。放射面積の拡大により、一つの放射エリアから直線的に音放射が行われることになるので、音声の放射エリアを広げることができるという結果が得られる。なお、指向特性については、後述する図11に示す。
図8は、15kHzのランジュバン素子(図示せず)と、このランジュバン素子に取り付けられ、このランジュバン素子に同期して分割共振するように形成した凸部形状を成形した例えば方形の振動板100と、を搭載したランジュバン式の発振方式を説明するための説明図である。図8に基づいて、ランジュバン式の発振方式について説明する。
ランジュバン素子は、複数枚の圧電素子(PZT)を積層して構成した超音波素子であり、高い入力電圧が入力できる構造的な利点を有している。ランジュバン素子が15kHzの共振周波数振動したときに、その振動は振動板100に固体伝搬する。固体伝搬した共振周波数は、振動板100内を伝搬し、振動板100は、15kHzの波長に応じた振動モードを持つ。
この振動モードに応じるように、振動板100の表面に、15kHzの波長に一致させる凸部102を複数形成している。具体的には、凸部102は、振動板100が有する振動モードの腹と一致した距離寸法で形成されている。ランジュバン素子の振動が振動板100に伝搬して、ランジュバン素子と振動板100とが共振を起こすと、振動板100に設けた複数の凸部102が振動振幅を起こす。こうすることで、振動板100の凸部102から均一に音放射をすることができる。
また、各凸部102の間隔は、15kHzの波長の腹と一致させる。15kHzの一波長は22mmで、半波長は11mm、その半分(λ/4)毎に振動の「腹」及び「節」が発生する。最大振幅は、ふた山あるので、その場所に凸部102を設ければよい。凸部102一つあたりの径はφ6程度とする。こうすれば、複数の凸部102を形成した振動板100の面積全体から音放射が行われることになるので、広い指向特性を有することが可能になる。
図9は、生物排除装置1の再生手段40の他の一例を説明するための概略構成図である。図9では、再生手段40の一例として、制振機能付きドーム型スピーカ70(以下、単にスピーカ70と称する)の構造概要を図示している。図9に基づいて、スピーカ70について説明する。
図9に示すように、スピーカ70は、ドーム振動板71、エッジ部73、及び、台座74を有している。
ドーム振動板71は、エッジ部73を介して台座74の任意位置に固定される。ドーム振動板71は、断面形状がドーム状に構成され、不要な振動を制御するために少なくとも一部に制振材72が塗布されている。
エッジ部73は、台座74のドーム振動板71の周囲に設けられ、自由振動することができるように構成されている。そのため、ドーム振動板71は、電極75に入力した音声信号に応じて駆動することが可能になっている。
台座74は、ドーム振動板71及びエッジ部73を支持するものである。
音声信号は、電極75を介してドーム振動板71を駆動させるボイスコイル(図示せず)に伝送される。この音声信号は、ドーム振動板71を駆動させると共に、入力に応じた変位量を自由振動するエッジ部73によって得ることができる。そのため、アンプ35から供給した強力な入力電圧により、大きな振動振幅が得られると共に、複数のドーム振動板71の配置構成により、高い音圧レベルと広い指向性が得られる。すなわち、このような構造のスピーカ70を複数個用いることで、広い指向性の音放射が可能となる。
一般的なドームスピーカの振動板は、振動板が分割振動することで、比較的広い周波数帯域(例えば、8kHz〜15kHzなど)の音が発振できる。しかし、振動板が広い周波数で振動するということは、15kHzの搬送波の超音波以外に、他の周波数も同時に発生するということでもある。そのため、超音波に重畳した音声が空間伝搬する前に、振動板の振動による音放射が振動板のところで鳴り響くことになってしまう。
そこで、生物排除装置1では、スピーカ70のドーム振動板71の不要な振動を制御するために、ドーム振動板71の一部に制振材72を塗布している。これにより、ドーム振動板71のドーム先端部だけが振動することになる。そのため、制振材72を塗布してない面積が11mmあれば、図8の凸部102と略同等寸法となり、制振材72を塗布していない面積の部分から音放射が行われる。
図10は、15kHzで駆動するように構成した各々の再生手段40の出力−音圧周波数特性を示すグラフである。図10に基づいて、15kHzで駆動するように構成した各々の再生手段40の出力−音圧周波数特性の一例について説明する。図10では、縦軸が出力音圧周波数特性(dB)を、横軸が周波数(Hz)を、それぞれ示している。また、点線は、何れの方式でも得られた再生手段40の共振特性の一例を示し、実線は、各々の再生手段40で駆動させた場合の周波数特性の一例で、駆動する部分の中心から30cm離れた位置での再生周波数帯域を示している。
図10の点線から、キャリアの超音波の周波数である15kHzで再生手段40が共振することがわかる。
また、図10の実線から、カラス対応の音声に対応した周波数の800Hz前後から15kHz前後までが、最大156dB以上の音圧レベルで駆動及び再生していることがわかる。
図11は、再生手段40で再生したときの指向特性を説明するための説明図である。図11に基づいて、再生手段40で再生したときの指向特性について説明する。
カラス等の排除を考慮する場合、例えば、カラス等が鉄塔等に止まっているときには、カラス等が広い面積で滞在していることがほとんどであり、広い面積で音声を放射しなければ、音声の到達しないところのカラスは排除できないことになる。
図11に示す点線は、公知のパラメトリックスピーカによる指向特定を示すものであり、指向性が狭い(中心から20度以内)ことがわかる。そのため、カラスへの音声暴露範囲が狭く、排除効果があまり得られない。
それに対し、図11に示す実線は、生物排除装置1による指向特性を示すものであり、音声の再生エリア(=指向性)は中心から100度前後の範囲に広がっていることがわかる。そのため、生物排除装置1によれば、「ねぐら」など、集団で集まるカラス等の排除対象生物に対して、広い範囲に音声暴露ができ、高い排除効果が得られやすくなる。
以上のように、生物排除装置1では、排除対象生物の危険時や恐怖時に発する音声又は危険時や恐怖時に発する音声の周波数パターンを用いて作成した人工音声を超音波に重畳させて排除対象生物に直接的に暴露するので、排除対象生物の本能に直接訴える手段で害獣対策を行うことができる。そのため、生物排除装置1によれば、排除対象生物の行動パターンを知らずに作成した人工的な音響信号を用いた従来品とは異なり、音声を発信する製品そのものの寿命が迎えるまでの長期間に亘って、害獣(有害動物)の排除を行うことが可能になる。
なお、生物排除装置1をカラスの排除に用いた場合を例に説明したが、それに限定するものではない。生物排除装置1によれば、排除対象生物の音声を超音波に重畳させて再生することで、必要な場所に必要な音声を確実に適用することができる。そのため、害鳥として問題が多い、ムクドリや鳩などにも適用できる。更には、生物排除装置1によれば、音声の代わりに、ランダム変化する超音波を、キャリア用の超音波に重畳させても、離れたところにランダムに変化する超音波が広い指向特性で伝搬する。そのため、強力な音圧レベルによる超音波を暴露できるので、超音波が聞こえる猫や犬などの哺乳類に対しても同等の効果が期待できる。
また、再生手段40から超音波に重畳した排除用音声が、再生手段40から離れたカラス等の排除対象生物に伝搬して排除対象生物に衝突したときに、超音波に含まれている排除用の音声と、更には高い音圧レベルの超音波信号も同時に復調する。そのため、生物排除装置1を設置している環境の全域に高い音圧レベルの音声が常に聞こえることはない。生物排除装置1によれば、再生手段40の近傍にある家屋内に音声が暴露されるということの心配は無い。よって、静かな音放射によって、排除対象生物の排除が可能となる。
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2に係る生物排除装置1の構成の一例を説明するための概略構成図である。図12に基づいて、実施の形態2に係る生物排除装置1について説明する。なお、実施の形態2に係る生物排除装置1の基本的な構成は、実施の形態1に係る生物排除装置1の構成と同様である。また、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。また、実施の形態1と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施の形態2についても同様に適用される。
図12に示すように、実施の形態2に係る生物排除装置1は、各種再生手段40の近傍(音声の放射方向)に、一つ以上の反射板80を備えている。こうすることによって、実施の形態2に係る生物排除装置1は、音声の指向性を広げるようにしている。なお、図12では、図6(B)で説明した一つの集合体の再生手段40を二つのエリアとして表記している例を示している。
キャリアとなっている超音波は、剛体に衝突した場合に、反射して別の方向に音声を伝搬できる特性も有する。その場合の反射面での角度は光と同等の特性であり、入出射角は90度の入出力角度の関係を持つ。よって、複数の反射面を持たせることができれば、360度方向への音放射が可能になる。そのため、複数の反射面を持たせれば、音声の提供を必要とする場所の状況によっては、無指向性の音響放射特性を有することができることになる。
例えば、公共のごみ置き場等でカラスを排除することを目的とする場合などでは、中心となる部分に反射板80および再生手段40を設置して、その周りに家庭用のごみを置くようにするとよい。こうすることで、ごみ置き場全体を、カラス等の排除対象生物から保護することができる。
以上のように、実施の形態2に係る生物排除装置1では、排除対象生物の危険時や恐怖時に発する音声又は危険時や恐怖時に発する音声の周波数パターンを用いて作成した人工音声を超音波に重畳させて排除対象生物に間接的に暴露するので、排除対象生物の本能に直接訴える手段で害獣対策を行うことができる。そのため、生物排除装置1によれば、排除対象生物の行動パターンを知らずに作成した人工的な音響信号を用いた従来品とは異なり、音声を発信する製品そのものの寿命が迎えるまでの長期間に亘って、害獣(有害動物)の排除を行うことが可能になる。
1 生物排除装置、10 超音波信号創生部、12 排除信号部、25 処理回路部、30 加算部、35 アンプ、40 再生手段、41 空中超音波発振子、60 ホーン部、61 PZT部、62 台座、63 電極、70 制振機能付きドーム型スピーカ、71 ドーム振動板、72 制振材、73 エッジ部、74 台座、75 電極、80 反射板、100 振動板、102 凸部、A20 発信回路部、B22 発信回路部。

Claims (12)

  1. 排除対象生物を排除する生物排除装置であって、
    前記排除対象生物の原音声及び原音声の特徴的な音響特性を用いた擬似音声を超音波信号に重畳した音声を、
    前記排除対象生物が発する音声の音圧レベルと同等又は同等以上の音圧レベルとして放射するものであり、
    前記排除対象生物の原音声は、
    前記排除対象生物の「警戒時」、「回避準備時」、「回避行動時」、及び、「恐怖時」に発する原音声の単体又はいずれかの組み合わせによる音声パターンを用い、
    前記排除対象生物の擬似音声は、
    前記排除対象生物の「警戒時」、「回避準備時」、「回避行動時」、及び、「恐怖時」に発する原音声の単体又はいずれかの組み合わせによる音声パターンの特徴的な周波数特性の変化を再現するように作成し、
    前記排除対象生物の原音声及び擬似音声は、
    自動的に組み合わされて、ランダム出力されるようになっており、
    前記超音波信号の振幅変調時に外来ノイズによって発生したパルス性ノイズも前記音声パターンと同時に前記排除対象生物に暴露する
    生物排除装置。
  2. 排除対象生物を排除する生物排除装置であって、
    音放射が可能な再生手段を有し、
    前記排除対象生物の原音声及び原音声の特徴的な音響特性を用いた擬似音声を超音波信号に重畳した音声を、
    前記再生手段から、前記排除対象生物が発する音声の音圧レベルと同等又は同等以上の音圧レベルとして放射し、前記排除対象生物に対して直接的又は間接的に暴露するものであり、
    前記再生手段は、
    ランジュバン素子と、
    前記ランジュバン素子に取り付け、超音波の再生に必要な共振周波数の1/4波長相当に発生する音波の腹及び節に相当する部分に凸部を複数個設けた振動板と、を有している
    生物排除装置。
  3. 排除対象生物を排除する生物排除装置であって、
    音放射が可能な再生手段を有し、
    前記排除対象生物の原音声及び原音声の特徴的な音響特性を用いた擬似音声を超音波信号に重畳した音声を、
    前記再生手段から、前記排除対象生物が発する音声の音圧レベルと同等又は同等以上の音圧レベルとして放射し、前記排除対象生物に対して直接的又は間接的に暴露するものであり、
    前記再生手段は、
    断面形状がドーム状のドーム振動板と、
    前記ドーム振動板の一部に塗布した制振材と、を備え、
    前記ドーム振動板を複数個用いて構成している
    生物排除装置。
  4. 音放射が可能な再生手段を有し、
    前記再生手段から放射した前記音声を、前記排除対象生物に対して直接的又は間接的に暴露する
    請求項1に記載の生物排除装置。
  5. 前記超音波信号の周波数帯域を、15kHz以上とした
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の生物排除装置。
  6. 前記排除対象生物の原音声は、
    前記排除対象生物の「警戒時」、「回避準備時」、「回避行動時」、及び、「恐怖時」に発する原音声の単体又はいずれかの組み合わせによる音声パターンを用いている
    請求項2又は3に記載の生物排除装置。
  7. 前記排除対象生物の擬似音声は、
    前記排除対象生物の「警戒時」、「回避準備時」、「回避行動時」、及び、「恐怖時」に発する原音声の単体又はいずれかの組み合わせによる音声パターンの特徴的な周波数特性の変化を再現するように作成している
    請求項2、3又は6に記載の生物排除装置。
  8. 前記排除対象生物の原音声及び擬似音声は、
    自動的に組み合わされて、ランダム出力される
    請求項に従属する請求項に記載の生物排除装置。
  9. 前記音声パターンの一つ当たりの再生時間の長さを5秒以下とする
    請求項に記載の生物排除装置。
  10. 前記超音波信号の振幅変調時に外来ノイズによって発生したパルス性ノイズも前記音声パターンと同時に前記排除対象生物に暴露する
    請求項又はに記載の生物排除装置。
  11. 前記再生手段は、
    ホーン部及び圧電素子を備えた空中超音波素子を複数個組み合わせて構成している
    請求項に記載の生物排除装置。
  12. 前記再生手段の音声の放射方向に、一枚以上の反射板を備えた
    請求項2〜4のいずれか一項に記載の生物排除装置。
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