JP5135507B2 - カラス忌避装置 - Google Patents
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Description
音声A:周波数が1〜2kHzの正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波から選ばれる1種以上の純音または前記純音を少なくとも1種以上含む複合音から選択される人工音声。
音声B:カラスが逃避する際に発する音声。
音声C:カラスが警戒する際に発する音声。
音声D:カラスが争う際に発する音声。
音声E:カラスが威嚇する際に発する音声。
図1は、本実施の形態におけるカラス忌避装置を説明するためのブロック図である。
図1に示すとおり、本発明のカラス忌避装置は、音声データを記憶可能な媒体からなる音声記憶手段S1と、音声データを読み出す制御手段及び読み出された音声データを音声として出力するスピーカを備えた音声再生手段S2とからなる。音声記憶手段S1と音声再生手段S2は、例えば、コンパクトディスクとコンパクトディスク再生装置のように、音声記憶手段S1を音声再生手段S2から取り出しが可能な装置として構成できるし、半導体メモリ、ハードディスクドライブを組み込んだパーソナルコンピュータとして構成することもできる。
本発明者等が、カラスの生態について観察を行ったところ、カラスが危険を察知して逃避行動に至るまでの間には、複数種の鳴き声があることがわかった。図2に、カラスが逃避行動に至るまでの主な鳴き声5種類のソナグラムを示す。なお、ソナグラムとは、周知のように、横軸に時間、縦軸に周波数(音の高さ)、色の濃淡で音の強さを表し音声を視覚化したものである。図2に示すように、カラスは危険を察知した場合(2−1)に示す警戒の鳴き声を、敵を威嚇する場合には(2−2)に示す威嚇の鳴き声を、危険な場から逃避する場合には(2−3)に示す逃避の鳴き声を、カラス同士で争う場合には(2−4)に示す争いの鳴き声を、タカなどの猛禽と争う場合には(2−5)に示す争いの鳴き声を発する。これら、(2−1)〜(2−5)に示す音声は、いずれも1000〜2000Hzの成分が強い。カラスにとっての危険度は警戒、威嚇、逃避、仲間同士の争い、猛禽との争いの順に高まり、危険度が高くなればなるほど鳴き声が濁ってくる傾向がある。例えば、実際にカラスがタカなどから逃避行動を行う場合には、タカを発見したことを仲間にしらせる警戒の鳴き声(2−1)を発し、その後、タカを威嚇する場合には威嚇の鳴き声(2−2)、タカと争う場合には争いの鳴き声(2−5)を発し、最終的に逃避する場合には逃避の鳴き声(2−3)を発する。
音声Aは、周波数が1〜2kHzの正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波から選ばれる1種以上の純音またはそのような純音を少なくとも1種以上含む複合音から選択される人工音声である。これは、図2にも示すようにカラスの鳴き声が周波数1〜2kHzの範囲に強く現れることに着目して、カラスの注意を引き付けやすくするために、後述する警戒音声の特徴を強調するよう本発明者らが作成した人工音声である。複合音は、1〜2kHzの周波数成分が強い純音を含むよう他の音と合成して作成する。例えば、カラスの鳴き声に含まれる0.1〜15kHzの任意の周波数成分の正弦波および方形波、三角波、のこぎり波の波形でできた純音に、1〜2kHzの周波数成分が強い純音を合成して作成することができる。
人工音声を再生する場合は、時間は0.1〜1.0秒の範囲とすることが好ましく、これを1回再生するだけでもカラスの注意を引き付けることができるが、0.1〜1.0秒の再生音声を2〜20回再生してもよい。音声を再生する間隔は、等間隔とすることで、カラスが警戒の鳴き声を発する状況に似せることができる。このときの間隔は、0.1〜1.0秒の範囲が好ましい。人工音声を再生する場合の一例として、図5に、0.3秒の1.5kHzの方形波からなる純音を0.3秒間隔で3回再生した音声のソナグラムを示す。
図6に、カラスが逃避する際の鳴き声の一例をソナグラムで示す。図6において、6種類の異なる矢印は、異なる個体(6羽のカラス)の鳴き声を表すが、いずれも0.5〜2kHzの周波数成分が最も強い。また、倍音構造(ソナグラムに縦に等間隔で並ぶ縞)がみられる。カラスが逃避する際に発する鳴き声であることを印象付けるために、音声Bとしては、個体数が3以上(3羽以上のカラス)の鳴き声を含み、この鳴き声の再生時間は、1〜300秒であることが好ましい。1秒以上再生しないと、カラスが逃避することを印象付けるのに不十分であり、また、300秒を越えると、状況の現実味がなくなるからである。なお、逃避する際の鳴き声に含まれるノイズは一部で、澄んだ鳴き声に聞こえることもある。
図7に、カラスが警戒する際の鳴き声の一例のソナグラムを示す。図7は、1羽のカラスにより発せられる音声であるが、0.5〜2kHzの周波数成分が最も強く、倍音構造が見られ、0.2秒の鳴き声が0.5秒間隔で3回繰り返されている。
音声Cとしては、倍音構造かつ時間が0.1〜0.5秒間続く一つの鳴き声が3回以上等間隔で繰り返される音声を用いることが好ましい。間隔は0.1〜1秒であることが好ましい。間隔が0.1秒未満ではカラスが警戒することを印象付けるのに不十分であり、また、間隔が1秒を超えると一続きの同じ音声であるとカラスが認識しにくいからである。なお、音声に含まれるノイズは一部で、澄んだ鳴き声に聞こえる場合もある。
ここで、音声Bと音声Cは一つの鳴き声だけの比較では、両者の区別がつきにくいが、音声Bは、音声Cよりも多くのカラスが同時に発しているのに対し、音声Cは、1〜3羽くらいの少数で発しているので、区別がつく。
図8に、カラスが猛禽と争う際の鳴き声の一例のソナグラムを示す。図8は、1羽のカラスにより発せられる音声であるが、0.5〜2kHzの周波数成分が最も強いが、倍音構造ではない。また、一つ一つの鳴き声の時間も0.2〜0.5秒の範囲でばらつきがあり、鳴き声の間隔も0.4秒、1.5秒とばらつきがある。
音声Dとしては、一つの0.2〜1.0秒間続く一つの鳴き声を間隔0.1〜30秒程度の適当な間隔で1回以上、好ましくは2回以上再生する。間隔が0.1秒未満ではカラスが争っていることを印象付けるのに不十分であり、また、間隔が30秒を超えると無音状態が長くなり、現実味がなくなるからである。音声Dには、音声にノイズが混じってもよく、濁った鳴き声に聞こえる場合もある。
音声Eは、図9に示すように、0.5〜2kHzの周波数成分が最も強く、倍音構造が見られ、ノイズが多く含まれる。0.5秒の鳴き声が0.2秒間隔で5回繰り返されている。
音声Eとしては、倍音構造かつ時間が0.1〜1.0秒間続く一つの鳴き声が3回以上等間隔で繰り返される音声を用いることが好ましい。間隔は0.1〜1秒であることが好ましい。間隔が0.1秒未満ではカラスが警戒することを印象付けるのに不十分であり、また、間隔が1秒を超えると一続きの同じ音声であるとカラスが認識しにくいからである。なお、音声に含まれるノイズは一部で、澄んだ鳴き声に聞こえる場合もある。
ここで、音声B、C、Eは倍音構造があるのに対し、音声Dにはない。音声DとEはノイズが含まれ、濁って聞こえる。また、音声Dは等間隔の繰り返しがある鳴き声であるが、音声Eは等間隔の繰り返しがない。
パターン1:音声A(人工音声)→ 音声B(逃避鳴き声)
パターン2:音声A(人工音声)→ 音声C(警戒鳴き声)→ 音声B(逃避鳴き声)
パターン3:音声A(人工音声)→ 音声D(猛禽との争い鳴き声)→ 音声B(逃避鳴き声)
一つのパターンを任意の時間、例えば1〜120分程度、繰り返し再生してもよいし、複数のパターンを組み合わせて再生してもよい。また、パターンの組み合わせは、ランダムでもよい。
一番目、二番目、三番目、それぞれの音声を再生する間隔を適宜調整することは、忌避効果を維持するためには好ましい。
比較例2:人工音声
比較例3:争い鳴き声
比較例4:逃避時鳴き声
本発明例1:人工音声→争い鳴き声→逃避時鳴き声(組合せ)
実験前12時間は、ハシブトカラスを絶食させた。音声の提示とともに給餌し、行動を無人条件下で1時間ビデオにより録画した。提示は、一つの音声につき、3羽の別個体を用い、一度使用した個体は用いなかった。
餌箱3の前、止まり木2、水箱4の前の3地点における3羽のハシブトカラスの平均滞在時間を図11に示した。また、餌箱3の前、止まり木2、水箱4の前の3地点に3羽のハシブトカラスが移動した平均回数を図12に示した。なお、図11の音声無しの平均滞在時間は、餌箱3の前が214秒、止まり木2が1539秒、水箱4の前が48秒と長かったため、20秒を超える棒グラフの記載を省略した。
これは、音声無しの比較例1に比べて、人工音声、争い鳴き声、逃避時鳴き声を単独で提示した比較例2〜4の場合は、ハシブトカラスが頻繁に動き、餌箱3や水箱4にいる時間も短く、落ち着きのないような様子を表す。また、比較例1〜4に比べ、本発明例1は最も均滞在時間(図11)が短く、最も平均回数(図12)が多いことから、忌避効果に優れ、かつ忌避効果が維持されていることが確認できた。
さらに、ビデオ映像からは、本発明例では、音が再生されるのと同時に餌箱3からハシブトカラスが飛び立つ姿とも観察され、音声の提示が何らかの心理的ストレスを引き起こしていると考えられる。さらに、単独の音声を提示した比較例2〜4に比べ、音声を組み合わせた本発明例1では、より短い間隔で頻繁に動いていたことから、音声を組み合わせて提示することで、単独で提示するよりも高い忌避効果が維持できることが確認できた。
Claims (4)
- 下記の音声A〜Eの内2種以上の音声データを記憶した音声記憶手段と、
前記音声データの中から、前記音声Aを最初に再生した後に、前記音声B〜Eの1種又は2種以上を再生する音声再生手段と、
を有することを特徴とするカラス忌避装置。
音声A:周波数が1〜2kHzの正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波から選ばれる1種以上の純音または前記純音を少なくとも1種以上含む複合音から選択される人工音声。
音声B:カラスが逃避する際に発する音声。
音声C:カラスが警戒する際に発する音声。
音声D:カラスが争う際に発する音声。
音声E:カラスが威嚇する際に発する音声。 - 前記音声再生手段において、前記音声Aを再生した後に、前記音声Bを再生することを特徴とする請求項1に記載のカラス忌避装置。
- 前記音声再生手段において、前記音声Aを再生した後に、前記音声Cを再生し、その後前記音声Bを再生することを特徴とする請求項1に記載のカラス忌避装置。
- 前記音声再生手段において、前記音声Aを再生した後に、前記音声Dを再生し、その後前記音声Bを再生することを特徴とする請求項1に記載のカラス忌避装置。
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