JP2004152497A - ゲル状ポリマー電解質電池 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電サイクル特性の向上を目的とするゲル状ポリマー電解質電池の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
【0003】
このうち、非水電解質をゲル化してなるゲル状ポリマー電解質を用いたリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、しかも漏液のおそれがないので、電子機器用電源として有望視されている。
【0004】
このようなゲル状ポリマー電解質電池に使用するポリマー材料としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)系、ポリアルキレンオキシド(PAO)系等のポリマー材料が提案されているが、リチウムイオンに対する導電性に優れていることから、ポリアルキレンオキシド系のポリマーが多く用いられている。
【0005】
しかしながら、ポリアルキレンオキシド系のポリマーを用いたゲル状ポリマー電解質電池は、充放電に伴いポリアルキレンオキシドと負極とが不可逆的に反応するため、サイクル劣化が早いという課題を有している。
【0006】
ところで、通常の電解液系電池(非ゲル状ポリマー電解質電池)においては、電池保存時における自己放電を防止するための技術が種々提案されている。例えば、マレイミド誘導体を非水電解質に添加することにより、自己放電を減少させる技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−219723号公報(第2頁−第4頁)
【特許文献2】
特開平11−45724号公報(第2頁−第5頁)
【0008】
この技術によると窒素含有複素環化合物であるマレイミド誘導体が特殊な共鳴構造を有するため、容易に負極に吸着して被膜を形成する。そして、この被膜が自己放電を減少させるように作用するとされる。しかし、従来技術においてマレイミド誘導体をゲル状ポリマー電解質に使用したという事実はない。この理由は、マレイミド誘導体がポリマー骨格に取り込まれると、上述した特殊な共鳴構造がくずれるため、自己放電を抑制する効果がないからである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の事情に鑑みなされたものであって、ゲル状ポリマー電解質電池の充放電サイクル特性を向上させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、正極と、負極と、ゲル状ポリマー電解質と、を有するゲル状ポリマー電解質電池において、前記ゲル状ポリマー電解質が、非水溶媒と電解質塩とプレポリマーとを含むプレポリマー電解質中のプレポリマーを重合し、ゲル化してなるものであり、前記プレポリマーを重合してなるポリマーが、分子骨格中に下記化4に示す化学構造を有する、ことを特徴とする。
【化4】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【0011】
上記構成によると、ポリマー電解質を構成するポリマーが、その分子骨格中に上記化4の構造を有するが、このような構造を有するポリマーは電気化学的な安定が高い。従って、上記構成によると負極とポリマー電解質との反応が抑制される結果、サイクル特性が向上する。
【0012】
上記構成において、前記プレポリマー電解質を、非水溶媒と、電解質塩と、マレイミド誘導体と、を含むもの、とすることができる。
【0013】
マレイミド誘導体は重合により、ポリマー骨格中に上記化4の構造を有するポリマーを容易に形成する。従って、この構成であるとサイクル特性に優れたゲル状ポリマー電解質電池を確実に実現することができる。
【0014】
また、前記プレポリマー電解質を、非水溶媒と、電解質塩と、下記化3に示すマレイミド誘導体と、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含む化合物と、を含むプレゲル溶液中の前記マレイミド誘導体と前記アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含むもの、とすることができる。
【0015】
マレイミド誘導体のみからなるポリマーを組成分とすると、ゲル状ポリマー電解質は電気化学的に安定であるが、リチウムイオンの導電性が十分でない。これに対し、マレイミド誘導体と、アクリロイル基及び/又はメタクロイル基を含む化合物と、を共重合してなるポリマー電解質であると、電気化学的安定性に優れるとともに、リチウムイオン導電性にも優れる。
【0016】
前記アクリロイル基及び/又はメタクロイル基を含む化合物としては、例えば下記化5に示すポリアルキレンオキシドジエステル、または、下記化6に示すアルコキシポリアルキレンオキシドモノエステルが例示できる。
【0017】
【化5】
R4、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。
nは10以下であることが好ましい。
【0018】
【化6】
R7、R8、R9はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。
nは10以下であることが好ましい。
【0019】
また、上記構成において、前記マレイミド誘導体の含有量としては、前記非水溶媒に電解質塩を溶解させた電解液100体積部に対し、0.3〜6体積部とすることが好ましい。前記マレイミド誘導体の含有量が、前記非水溶媒100体積部に対し、0.3体積部未満であると、ポリマー分子骨格中の上記化4の構造の占める割合が少ないため十分な効果が得られず、6体積部より多いと、ポリマー分子骨格中の上記化4の構造の占める割合が過大であるため、リチウムイオンの導電性が低下し、サイクル劣化を引き起こす。ここで、さらに好ましくは、前記電解液100体積部に対し、前記マレイミド誘導体の含有量を0.5〜5体積部とするのがよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は下記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係るラミネート外装体を用いたゲル状ポリマー電解質電池の正面図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3はゲル状ポリマー電解質電池に用いるラミネート外装体の断面図、図4はゲル状ポリマー電解質電池に用いる電極体の斜視図である。
【0022】
図2に示すように、本発明のゲル状ポリマー電解質電池は電極体1を有しており、この電極体1は収納空間2内に配置されている。この収納空間2は、図1に示すように、ラミネート外装体3の上下端と中央部とをそれぞれ封止部4a・4b・4cで封口することにより形成される。また、収納空間2には、非水溶媒と電解質塩と、プレポリマーとを含むプレポリマー電解質をゲル化してなるゲル状ポリマー電解質が含まれている。また、図4に示すように、上記電極体1は、正極5と、負極6と、これら両電極を離間するセパレータ(図4においては図示せず)とを偏平渦巻き状に巻回することにより作製される。
【0023】
更に、上記正極5はアルミニウムから成る正極リード7に、また上記負極6はニッケルから成る負極リード8にそれぞれ接続され、電池内部で生じた化学エネルギーが電気エネルギーとして外部へ取り出し得るようになっている。
【0024】
尚、図3に示すように、上記ラミネート外装体3の具体的な構造は、アルミニウム層11(厚み:30μm)の両面に、各々、変性ポリプロピレンから成る接着剤層12・12(厚み:5μm)を介してポリプロピレンから成る樹脂層13・13(厚み:30μm)が接着された構造である。
【0025】
前記ゲル状ポリマー電解質は、ポリマー分子骨格中に下記化7に示す構造を有するポリマーである。このようなゲル状ポリマー電解質は、非水溶媒と、電解質塩と、下記化8に示すマレイミド誘導体と、を含むプレポリマー電解質を重合する方法や、非水溶媒と、電解質塩と、マレイミド誘導体と、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含む化合物とを含むプレポリマー電解質を重合する方法によって作製される。
【0026】
【化7】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【0027】
【化8】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【0028】
【実施例】
実施例により、本発明の内容をさらに具体的に説明する。
実施例1−1〜1−4、比較例1−1、1−2に係る電池を作製した。そしてこれらの電池を用いて、マレイミド誘導体の種類、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含む化合物と、サイクル特性との関係を明らかにした。
【0029】
(実施例1−1)
〈正極の作製〉
コバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる正極活物質92質量部と、アセチレンブラックからなる導電剤5質量部と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)からなる結着剤3質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを混合し、活物質スラリーとした。
【0030】
この活物質スラリーを、ドクターブレードにより厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に均一に塗布した後、加熱した乾燥機中を通過させて乾燥することにより、スラリー作製時に必要であった有機溶媒を除去した。次いで、この極板を厚みが0.17mmになるようにロールプレス機により圧延して正極を作製した。
【0031】
〈負極の作製〉
黒鉛からなる負極活物質と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)からなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを混合し、活物質スラリーとした。この活物質スラリーを、ドクターブレードにより負極芯体としての銅箔(厚み20μm)の両面に均一に塗布した後、乾燥機中を通過させて乾燥することにより、スラリー作製時に必要であった有機溶媒を除去した。次いで、この極板を厚みが0.14mmになるようにロールプレス機により圧延して負極を作製した。
【0032】
〈プレポリマー電解質の調製〉
エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1M(モル/リットル)になるよう溶解させ、電解液を作製した。この電解液100体積部に下記化7で表されるメチルマレイミドを1体積部含有させ、この混合溶液12質量部に対し、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA〈オキシプロピレンユニット数:3〉)1質量部を加え、さらに重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートを5000ppm添加し、プレポリマー電解質とした。
【0033】
【化9】
【0034】
〈電極体の作成〉
上記のように作成した正極と負極に、それぞれ正極リード7あるいは負極リード8を取り付けた後、両極をポリエチレン製微多孔膜(厚み:0.025mm)からなるセパレータを間にし、かつ各極板の幅方向の中心線を一致させて重ね合わせた。この後、巻き取り機により巻回し、最外周をテープ止めすることにより偏平渦巻状電極体1を作製した。
【0035】
樹脂層(ポリプロピレン)/接着剤層/アルミニウム合金層/接着剤層/樹脂層(ポリプロピレン)の5層構造から成るシート状のラミネート材を用意した後、このアルミラミネート材における端部近傍同士の樹脂層を重ね合わせ、重ね合わせ部を溶着して封止部4cを形成した。次に、この筒状アルミラミネート材の収納空間2内に電極体1を挿入した。この際、筒状アルミラミネート材の一方の開口部から両リード7,8が突出するように電極体1を配置した。この後、両電極タブが突出している開口部のアルミラミネート材の内側の樹脂層を溶着して封止し、封止部4aを形成した。この際、溶着は高周波誘導溶着装置を用いて行った。
【0036】
もう一方の開口部から上記プレポリマー電解質を注液した後、当該開口部を同様に加熱溶着して封止部4bを形成し、60℃、3時間静置して前記プレポリマー電解質を重合させ、実施例1−1に係るゲル状ポリマー電解質電池を作製した。なお、この電池の公称容量は600mAhであった。
【0037】
(実施例1−2)
メチルマレイミドのかわりに下記化8に示すエチルマレイミドを用いたこと以外は上記実施例1−1と同様にして、実施例1−2に係る本発明電池を作製した。
【0038】
【化10】
【0039】
(実施例1−3)
ポリプロピレングリコールジアクリレートのかわりにポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPGDM〈オキシプロピレンユニット数:3〉)を用いたこと以外は上記実施例1−1と同様にして、実施例1−3に係る本発明電池を作製した。
【0040】
(実施例1−4)
メチルマレイミドのかわりにエチルマレイミドを用いたこと以外は上記実施例1−3と同様にして、実施例1−4に係る本発明電池を作製した。
【0041】
(比較例1−1)
メチルマレイミドを含有させなかったこと以外は、上記実施例1−1と同様にして、比較例1−1に係る比較電池を作製した。
【0042】
(比較例1−2)
メチルマレイミドを含有させなかったこと以外は、上記実施例1−3と同様にして、比較例1−2に係る比較電池を作製した。
【0043】
(電池特性試験)
上記のように作製した本発明電池、比較電池について、下記に示す条件でサイクル特性試験を行った。
【0044】
(サイクル特性試験)
定電流1It(600mA)で4.2V、その後定電圧で30mAまで充電後、1It(600mA)で2.75Vまで放電し、サイクル特性容量維持率を、500サイクル時放電容量/1サイクル時放電容量から求めた。
【0045】
マレイミドの種類、重合性化合物の種類と、サイクル特性容量維持率との関係を下記表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から、マレイミド誘導体を含むプレポリマー電解質をゲル化した実施例電池1−1〜1−4のサイクル特性容量維持率は、83〜84%と十分なものであり、他方、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質をゲル化した比較例電池1−1〜1−2のサイクル特性容量維持率は、60〜62%と本発明電池よりも20%以上低いものとなったことがわかる。
【0048】
このことは、マレイミド誘導体を含むプレポリマー電解質ゲル化した実施例電池において、プレポリマーを重合してなるポリマーは、分子骨格中に図5に示す構造を有するものとなり、このポリマー骨格のAで示す構造が電気化学的に安定であるので、負極とポリマーとが不可逆的に反応することが抑制されたためと考えられる。
他方、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質をゲル化した比較例電池においては、負極とポリマーとの不可逆的な反応が抑制されなかったために、サイクル特性が劣化したものと考えられる。
【0049】
また、上記結果から、マレイミド誘導体と共に用いる重合性化合物としては、アクリロイル基(ポリプロピレングリコールジアクリレート〈PPGDA〉)、メタクリロイル基(ポリプロピレングリコールジメタクリレート〈PPGDM〉)のいずれかを有する化合物であれば良好な結果が得られることがわかる。
【0050】
次に、実施例1−1〜1−4、2−1〜2−6、3−1〜3−6、4−1〜4−6、5−1〜5−6、比較例1−1、1−2に係る電池を作製した。そしてこれらの電池を用いて、マレイミド誘導体の種類及び含有量と、サイクル特性との関係を明らかにした。
【0051】
(実施例2−1)
メチルマレイミドの含有量を7体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−1に係る本発明電池を作製した。
【0052】
(実施例2−2)
メチルマレイミドの含有量を6体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−2に係る本発明電池を作製した。
【0053】
(実施例2−3)
メチルマレイミドの含有量を5体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−3に係る本発明電池を作製した。
【0054】
(実施例2−4)
メチルマレイミドの含有量を3体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−4に係る本発明電池を作製した。
【0055】
(実施例2−5)
メチルマレイミドの含有量を0.5体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−5に係る本発明電池を作製した。
【0056】
(実施例2−6)
メチルマレイミドの含有量を0.3体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−6に係る本発明電池を作製した。
【0057】
(実施例3−1〜3−6)
マレイミド誘導体の含有量を上記実施例2−1〜2−6と同様に変化させたこと以外は、上記実施例1−2と同様にして実施例3−1〜3−6に係る本発明電池を作製した。
【0058】
(実施例4−1〜4−6)
マレイミド誘導体の含有量を上記実施例2−1〜2−6と同様に変化させたこと以外は、上記実施例1−3と同様にして実施例4−1〜4−6に係る本発明電池を作製した。
【0059】
(実施例5−1〜5−6)
マレイミド誘導体の含有量を上記実施例2−1〜2−6と同様に変化させたこと以外は、上記実施例1−4と同様にして実施例5−1〜5−6に係る本発明電池を作製した。
【0060】
下記表2〜表5に、マレイミド誘導体の種類、含有量と、サイクル特性との関係を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
表2〜表5から、マレイミド誘導体を0.3体積部以上且つ6.0体積部以下含むプレポリマー電解質を重合させた実施例電池1−1〜1−4、2−2〜2−6、3−2〜3−6、4−2〜4−6、5−2〜5−6のサイクル特性容量維持率は72〜84%と、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質を重合させた比較電池1−1、1−2のサイクル特性容量維持率の60〜62%よりも、10%以上優れていることがわかる。
【0066】
さらに、マレイミド誘導体を0.5体積部以上且つ5.0体積部以下含むプレポリマー電解質を重合させた実施例電池1−1〜1−4、2−3〜2−5、3−3〜3−5、4−3〜4−5、5−3〜5−5のサイクル特性容量維持率は80〜84%と、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質を重合させた比較電池1−1、1−2よりも約20%優れたサイクル特性容量維持率が得られていることがわかる。
【0067】
この結果は、マレイミド誘導体の含有量が過大であると、電池内のリチウムイオンの伝導性が低下し、サイクル特性を十分に向上させることができなくなり、他方、マレイミド誘導体の含有量が過小であると、ゲル状ポリマー電解質の化学的安定性を向上させる効果が不十分となり、負極とゲル状ポリマー電解質とが不可逆的に反応する結果、サイクル劣化が生じたものと考えられる。
【0068】
上記のことから、プレポリマー電解質中のマレイミド誘導体の含有量は、非水溶媒中に電解質塩を溶解させた電解液100体積部に対して、0.3〜6体積部であることが好ましく、0.5〜5体積部であることがさらに好ましい。
【0069】
なお、上記実施例ではラミネート電池を作製したが、本発明はこの形状に限定されるものではなく、コイン型、角型、円筒形電池等の種々の形状の電池に適用することができる。
【0070】
また、上記実施の形態ではドクターブレードによりスラリーを塗布したが、ダイコーターを用いてもよい。また、活物質スラリーのかわりに活物質ペーストを用い、ローラコーティング法等により塗布することもできる。また、アルミニウム箔のかわりにアルミニウムメッシュを用いても同様に作製することができる。
【0071】
また、正極材料としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物から選択される一種の化合物、あるいは二種以上の化合物を混合して用いることができ、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、鉄酸リチウム、またはこれらの酸化物に含まれる遷移金属の一部を他の元素で置換した酸化物等を用いることができる。
【0072】
また、電解質に使用する非水溶媒としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、スルホン系化合物、エステル類、芳香族炭化水素等から選択される化合物の一種、あるいは二種以上の化合物を混合して用いることができる。これらの内でも、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類が好ましく、特にカーボネート類がさらに好ましい。これらの具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アニソール、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、スルホラン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチルなどがあげられる。
【0073】
また、電解質塩としては、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4等のリチウム塩から選択される化合物の一種、あるいは二種以上の化合物を混合して使用することができる。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は0.5〜2.0モル/リットルとすることが好ましい。
【0074】
【発明の効果】
上記の結果から明らかなように、本発明によると、下記化11に示す構造を分子骨格中に含むポリマーを必須成分とするゲル状ポリマー電解質を用いるが、このポリマーは電気化学的に安定であるので、ゲル状ポリマー電解質電池のサイクル特性を顕著に向上させることができる。
【0075】
【化11】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池の正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池に用いるラミネート外装体の断面図である。
【図4】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池に用いる電極体の斜視図である。
【図5】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池のポリマー骨格を示す部分構造図である。
【符号の説明】
1 電極体
2 収納空間
3 アルミラミネート外装体
4a、4b、4c 封止部
5 正極
6 負極
7 正極リード
8 負極リード
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電サイクル特性の向上を目的とするゲル状ポリマー電解質電池の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
【0003】
このうち、非水電解質をゲル化してなるゲル状ポリマー電解質を用いたリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、しかも漏液のおそれがないので、電子機器用電源として有望視されている。
【0004】
このようなゲル状ポリマー電解質電池に使用するポリマー材料としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)系、ポリアルキレンオキシド(PAO)系等のポリマー材料が提案されているが、リチウムイオンに対する導電性に優れていることから、ポリアルキレンオキシド系のポリマーが多く用いられている。
【0005】
しかしながら、ポリアルキレンオキシド系のポリマーを用いたゲル状ポリマー電解質電池は、充放電に伴いポリアルキレンオキシドと負極とが不可逆的に反応するため、サイクル劣化が早いという課題を有している。
【0006】
ところで、通常の電解液系電池(非ゲル状ポリマー電解質電池)においては、電池保存時における自己放電を防止するための技術が種々提案されている。例えば、マレイミド誘導体を非水電解質に添加することにより、自己放電を減少させる技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−219723号公報(第2頁−第4頁)
【特許文献2】
特開平11−45724号公報(第2頁−第5頁)
【0008】
この技術によると窒素含有複素環化合物であるマレイミド誘導体が特殊な共鳴構造を有するため、容易に負極に吸着して被膜を形成する。そして、この被膜が自己放電を減少させるように作用するとされる。しかし、従来技術においてマレイミド誘導体をゲル状ポリマー電解質に使用したという事実はない。この理由は、マレイミド誘導体がポリマー骨格に取り込まれると、上述した特殊な共鳴構造がくずれるため、自己放電を抑制する効果がないからである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の事情に鑑みなされたものであって、ゲル状ポリマー電解質電池の充放電サイクル特性を向上させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、正極と、負極と、ゲル状ポリマー電解質と、を有するゲル状ポリマー電解質電池において、前記ゲル状ポリマー電解質が、非水溶媒と電解質塩とプレポリマーとを含むプレポリマー電解質中のプレポリマーを重合し、ゲル化してなるものであり、前記プレポリマーを重合してなるポリマーが、分子骨格中に下記化4に示す化学構造を有する、ことを特徴とする。
【化4】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【0011】
上記構成によると、ポリマー電解質を構成するポリマーが、その分子骨格中に上記化4の構造を有するが、このような構造を有するポリマーは電気化学的な安定が高い。従って、上記構成によると負極とポリマー電解質との反応が抑制される結果、サイクル特性が向上する。
【0012】
上記構成において、前記プレポリマー電解質を、非水溶媒と、電解質塩と、マレイミド誘導体と、を含むもの、とすることができる。
【0013】
マレイミド誘導体は重合により、ポリマー骨格中に上記化4の構造を有するポリマーを容易に形成する。従って、この構成であるとサイクル特性に優れたゲル状ポリマー電解質電池を確実に実現することができる。
【0014】
また、前記プレポリマー電解質を、非水溶媒と、電解質塩と、下記化3に示すマレイミド誘導体と、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含む化合物と、を含むプレゲル溶液中の前記マレイミド誘導体と前記アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含むもの、とすることができる。
【0015】
マレイミド誘導体のみからなるポリマーを組成分とすると、ゲル状ポリマー電解質は電気化学的に安定であるが、リチウムイオンの導電性が十分でない。これに対し、マレイミド誘導体と、アクリロイル基及び/又はメタクロイル基を含む化合物と、を共重合してなるポリマー電解質であると、電気化学的安定性に優れるとともに、リチウムイオン導電性にも優れる。
【0016】
前記アクリロイル基及び/又はメタクロイル基を含む化合物としては、例えば下記化5に示すポリアルキレンオキシドジエステル、または、下記化6に示すアルコキシポリアルキレンオキシドモノエステルが例示できる。
【0017】
【化5】
R4、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。
nは10以下であることが好ましい。
【0018】
【化6】
R7、R8、R9はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。
nは10以下であることが好ましい。
【0019】
また、上記構成において、前記マレイミド誘導体の含有量としては、前記非水溶媒に電解質塩を溶解させた電解液100体積部に対し、0.3〜6体積部とすることが好ましい。前記マレイミド誘導体の含有量が、前記非水溶媒100体積部に対し、0.3体積部未満であると、ポリマー分子骨格中の上記化4の構造の占める割合が少ないため十分な効果が得られず、6体積部より多いと、ポリマー分子骨格中の上記化4の構造の占める割合が過大であるため、リチウムイオンの導電性が低下し、サイクル劣化を引き起こす。ここで、さらに好ましくは、前記電解液100体積部に対し、前記マレイミド誘導体の含有量を0.5〜5体積部とするのがよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は下記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係るラミネート外装体を用いたゲル状ポリマー電解質電池の正面図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3はゲル状ポリマー電解質電池に用いるラミネート外装体の断面図、図4はゲル状ポリマー電解質電池に用いる電極体の斜視図である。
【0022】
図2に示すように、本発明のゲル状ポリマー電解質電池は電極体1を有しており、この電極体1は収納空間2内に配置されている。この収納空間2は、図1に示すように、ラミネート外装体3の上下端と中央部とをそれぞれ封止部4a・4b・4cで封口することにより形成される。また、収納空間2には、非水溶媒と電解質塩と、プレポリマーとを含むプレポリマー電解質をゲル化してなるゲル状ポリマー電解質が含まれている。また、図4に示すように、上記電極体1は、正極5と、負極6と、これら両電極を離間するセパレータ(図4においては図示せず)とを偏平渦巻き状に巻回することにより作製される。
【0023】
更に、上記正極5はアルミニウムから成る正極リード7に、また上記負極6はニッケルから成る負極リード8にそれぞれ接続され、電池内部で生じた化学エネルギーが電気エネルギーとして外部へ取り出し得るようになっている。
【0024】
尚、図3に示すように、上記ラミネート外装体3の具体的な構造は、アルミニウム層11(厚み:30μm)の両面に、各々、変性ポリプロピレンから成る接着剤層12・12(厚み:5μm)を介してポリプロピレンから成る樹脂層13・13(厚み:30μm)が接着された構造である。
【0025】
前記ゲル状ポリマー電解質は、ポリマー分子骨格中に下記化7に示す構造を有するポリマーである。このようなゲル状ポリマー電解質は、非水溶媒と、電解質塩と、下記化8に示すマレイミド誘導体と、を含むプレポリマー電解質を重合する方法や、非水溶媒と、電解質塩と、マレイミド誘導体と、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含む化合物とを含むプレポリマー電解質を重合する方法によって作製される。
【0026】
【化7】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【0027】
【化8】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【0028】
【実施例】
実施例により、本発明の内容をさらに具体的に説明する。
実施例1−1〜1−4、比較例1−1、1−2に係る電池を作製した。そしてこれらの電池を用いて、マレイミド誘導体の種類、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含む化合物と、サイクル特性との関係を明らかにした。
【0029】
(実施例1−1)
〈正極の作製〉
コバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる正極活物質92質量部と、アセチレンブラックからなる導電剤5質量部と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)からなる結着剤3質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを混合し、活物質スラリーとした。
【0030】
この活物質スラリーを、ドクターブレードにより厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に均一に塗布した後、加熱した乾燥機中を通過させて乾燥することにより、スラリー作製時に必要であった有機溶媒を除去した。次いで、この極板を厚みが0.17mmになるようにロールプレス機により圧延して正極を作製した。
【0031】
〈負極の作製〉
黒鉛からなる負極活物質と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)からなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを混合し、活物質スラリーとした。この活物質スラリーを、ドクターブレードにより負極芯体としての銅箔(厚み20μm)の両面に均一に塗布した後、乾燥機中を通過させて乾燥することにより、スラリー作製時に必要であった有機溶媒を除去した。次いで、この極板を厚みが0.14mmになるようにロールプレス機により圧延して負極を作製した。
【0032】
〈プレポリマー電解質の調製〉
エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1M(モル/リットル)になるよう溶解させ、電解液を作製した。この電解液100体積部に下記化7で表されるメチルマレイミドを1体積部含有させ、この混合溶液12質量部に対し、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA〈オキシプロピレンユニット数:3〉)1質量部を加え、さらに重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートを5000ppm添加し、プレポリマー電解質とした。
【0033】
【化9】
【0034】
〈電極体の作成〉
上記のように作成した正極と負極に、それぞれ正極リード7あるいは負極リード8を取り付けた後、両極をポリエチレン製微多孔膜(厚み:0.025mm)からなるセパレータを間にし、かつ各極板の幅方向の中心線を一致させて重ね合わせた。この後、巻き取り機により巻回し、最外周をテープ止めすることにより偏平渦巻状電極体1を作製した。
【0035】
樹脂層(ポリプロピレン)/接着剤層/アルミニウム合金層/接着剤層/樹脂層(ポリプロピレン)の5層構造から成るシート状のラミネート材を用意した後、このアルミラミネート材における端部近傍同士の樹脂層を重ね合わせ、重ね合わせ部を溶着して封止部4cを形成した。次に、この筒状アルミラミネート材の収納空間2内に電極体1を挿入した。この際、筒状アルミラミネート材の一方の開口部から両リード7,8が突出するように電極体1を配置した。この後、両電極タブが突出している開口部のアルミラミネート材の内側の樹脂層を溶着して封止し、封止部4aを形成した。この際、溶着は高周波誘導溶着装置を用いて行った。
【0036】
もう一方の開口部から上記プレポリマー電解質を注液した後、当該開口部を同様に加熱溶着して封止部4bを形成し、60℃、3時間静置して前記プレポリマー電解質を重合させ、実施例1−1に係るゲル状ポリマー電解質電池を作製した。なお、この電池の公称容量は600mAhであった。
【0037】
(実施例1−2)
メチルマレイミドのかわりに下記化8に示すエチルマレイミドを用いたこと以外は上記実施例1−1と同様にして、実施例1−2に係る本発明電池を作製した。
【0038】
【化10】
【0039】
(実施例1−3)
ポリプロピレングリコールジアクリレートのかわりにポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPGDM〈オキシプロピレンユニット数:3〉)を用いたこと以外は上記実施例1−1と同様にして、実施例1−3に係る本発明電池を作製した。
【0040】
(実施例1−4)
メチルマレイミドのかわりにエチルマレイミドを用いたこと以外は上記実施例1−3と同様にして、実施例1−4に係る本発明電池を作製した。
【0041】
(比較例1−1)
メチルマレイミドを含有させなかったこと以外は、上記実施例1−1と同様にして、比較例1−1に係る比較電池を作製した。
【0042】
(比較例1−2)
メチルマレイミドを含有させなかったこと以外は、上記実施例1−3と同様にして、比較例1−2に係る比較電池を作製した。
【0043】
(電池特性試験)
上記のように作製した本発明電池、比較電池について、下記に示す条件でサイクル特性試験を行った。
【0044】
(サイクル特性試験)
定電流1It(600mA)で4.2V、その後定電圧で30mAまで充電後、1It(600mA)で2.75Vまで放電し、サイクル特性容量維持率を、500サイクル時放電容量/1サイクル時放電容量から求めた。
【0045】
マレイミドの種類、重合性化合物の種類と、サイクル特性容量維持率との関係を下記表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から、マレイミド誘導体を含むプレポリマー電解質をゲル化した実施例電池1−1〜1−4のサイクル特性容量維持率は、83〜84%と十分なものであり、他方、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質をゲル化した比較例電池1−1〜1−2のサイクル特性容量維持率は、60〜62%と本発明電池よりも20%以上低いものとなったことがわかる。
【0048】
このことは、マレイミド誘導体を含むプレポリマー電解質ゲル化した実施例電池において、プレポリマーを重合してなるポリマーは、分子骨格中に図5に示す構造を有するものとなり、このポリマー骨格のAで示す構造が電気化学的に安定であるので、負極とポリマーとが不可逆的に反応することが抑制されたためと考えられる。
他方、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質をゲル化した比較例電池においては、負極とポリマーとの不可逆的な反応が抑制されなかったために、サイクル特性が劣化したものと考えられる。
【0049】
また、上記結果から、マレイミド誘導体と共に用いる重合性化合物としては、アクリロイル基(ポリプロピレングリコールジアクリレート〈PPGDA〉)、メタクリロイル基(ポリプロピレングリコールジメタクリレート〈PPGDM〉)のいずれかを有する化合物であれば良好な結果が得られることがわかる。
【0050】
次に、実施例1−1〜1−4、2−1〜2−6、3−1〜3−6、4−1〜4−6、5−1〜5−6、比較例1−1、1−2に係る電池を作製した。そしてこれらの電池を用いて、マレイミド誘導体の種類及び含有量と、サイクル特性との関係を明らかにした。
【0051】
(実施例2−1)
メチルマレイミドの含有量を7体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−1に係る本発明電池を作製した。
【0052】
(実施例2−2)
メチルマレイミドの含有量を6体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−2に係る本発明電池を作製した。
【0053】
(実施例2−3)
メチルマレイミドの含有量を5体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−3に係る本発明電池を作製した。
【0054】
(実施例2−4)
メチルマレイミドの含有量を3体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−4に係る本発明電池を作製した。
【0055】
(実施例2−5)
メチルマレイミドの含有量を0.5体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−5に係る本発明電池を作製した。
【0056】
(実施例2−6)
メチルマレイミドの含有量を0.3体積部としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして実施例2−6に係る本発明電池を作製した。
【0057】
(実施例3−1〜3−6)
マレイミド誘導体の含有量を上記実施例2−1〜2−6と同様に変化させたこと以外は、上記実施例1−2と同様にして実施例3−1〜3−6に係る本発明電池を作製した。
【0058】
(実施例4−1〜4−6)
マレイミド誘導体の含有量を上記実施例2−1〜2−6と同様に変化させたこと以外は、上記実施例1−3と同様にして実施例4−1〜4−6に係る本発明電池を作製した。
【0059】
(実施例5−1〜5−6)
マレイミド誘導体の含有量を上記実施例2−1〜2−6と同様に変化させたこと以外は、上記実施例1−4と同様にして実施例5−1〜5−6に係る本発明電池を作製した。
【0060】
下記表2〜表5に、マレイミド誘導体の種類、含有量と、サイクル特性との関係を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
表2〜表5から、マレイミド誘導体を0.3体積部以上且つ6.0体積部以下含むプレポリマー電解質を重合させた実施例電池1−1〜1−4、2−2〜2−6、3−2〜3−6、4−2〜4−6、5−2〜5−6のサイクル特性容量維持率は72〜84%と、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質を重合させた比較電池1−1、1−2のサイクル特性容量維持率の60〜62%よりも、10%以上優れていることがわかる。
【0066】
さらに、マレイミド誘導体を0.5体積部以上且つ5.0体積部以下含むプレポリマー電解質を重合させた実施例電池1−1〜1−4、2−3〜2−5、3−3〜3−5、4−3〜4−5、5−3〜5−5のサイクル特性容量維持率は80〜84%と、マレイミド誘導体を含まないプレポリマー電解質を重合させた比較電池1−1、1−2よりも約20%優れたサイクル特性容量維持率が得られていることがわかる。
【0067】
この結果は、マレイミド誘導体の含有量が過大であると、電池内のリチウムイオンの伝導性が低下し、サイクル特性を十分に向上させることができなくなり、他方、マレイミド誘導体の含有量が過小であると、ゲル状ポリマー電解質の化学的安定性を向上させる効果が不十分となり、負極とゲル状ポリマー電解質とが不可逆的に反応する結果、サイクル劣化が生じたものと考えられる。
【0068】
上記のことから、プレポリマー電解質中のマレイミド誘導体の含有量は、非水溶媒中に電解質塩を溶解させた電解液100体積部に対して、0.3〜6体積部であることが好ましく、0.5〜5体積部であることがさらに好ましい。
【0069】
なお、上記実施例ではラミネート電池を作製したが、本発明はこの形状に限定されるものではなく、コイン型、角型、円筒形電池等の種々の形状の電池に適用することができる。
【0070】
また、上記実施の形態ではドクターブレードによりスラリーを塗布したが、ダイコーターを用いてもよい。また、活物質スラリーのかわりに活物質ペーストを用い、ローラコーティング法等により塗布することもできる。また、アルミニウム箔のかわりにアルミニウムメッシュを用いても同様に作製することができる。
【0071】
また、正極材料としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物から選択される一種の化合物、あるいは二種以上の化合物を混合して用いることができ、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、鉄酸リチウム、またはこれらの酸化物に含まれる遷移金属の一部を他の元素で置換した酸化物等を用いることができる。
【0072】
また、電解質に使用する非水溶媒としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、スルホン系化合物、エステル類、芳香族炭化水素等から選択される化合物の一種、あるいは二種以上の化合物を混合して用いることができる。これらの内でも、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類が好ましく、特にカーボネート類がさらに好ましい。これらの具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アニソール、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、スルホラン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチルなどがあげられる。
【0073】
また、電解質塩としては、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4等のリチウム塩から選択される化合物の一種、あるいは二種以上の化合物を混合して使用することができる。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は0.5〜2.0モル/リットルとすることが好ましい。
【0074】
【発明の効果】
上記の結果から明らかなように、本発明によると、下記化11に示す構造を分子骨格中に含むポリマーを必須成分とするゲル状ポリマー電解質を用いるが、このポリマーは電気化学的に安定であるので、ゲル状ポリマー電解質電池のサイクル特性を顕著に向上させることができる。
【0075】
【化11】
R1は炭素数4以下のアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数2以下のアルキル基を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池の正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池に用いるラミネート外装体の断面図である。
【図4】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池に用いる電極体の斜視図である。
【図5】本発明に係るゲル状ポリマー電解質電池のポリマー骨格を示す部分構造図である。
【符号の説明】
1 電極体
2 収納空間
3 アルミラミネート外装体
4a、4b、4c 封止部
5 正極
6 負極
7 正極リード
8 負極リード
Claims (4)
- 請求項2又は3に記載のゲル状ポリマー電解質電池において、
前記マレイミド誘導体の含有量が、前記非水溶媒に前記電解質塩を溶解させた電解液100体積部に対し、0.3〜6体積部であるゲル状ポリマー電解質電池。
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JP2002313231A JP2004152497A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | ゲル状ポリマー電解質電池 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016528682A (ja) * | 2013-07-12 | 2016-09-15 | 江蘇華東▲リ▼電技術研究院有限公司Jiangsu Huadong Institute Of Li−Ion Battery Co.Ltd. | 電解液添加剤、この電解液添加剤を利用する電解液及びリチウムイオン電池 |
-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002313231A patent/JP2004152497A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016528682A (ja) * | 2013-07-12 | 2016-09-15 | 江蘇華東▲リ▼電技術研究院有限公司Jiangsu Huadong Institute Of Li−Ion Battery Co.Ltd. | 電解液添加剤、この電解液添加剤を利用する電解液及びリチウムイオン電池 |
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