JP2004151000A - 抗ミトコンドリアm2抗体の検出方法及び該検出方法を用いた抗ミトコンドリアm2抗体の免疫学的検出用キット - Google Patents
抗ミトコンドリアm2抗体の検出方法及び該検出方法を用いた抗ミトコンドリアm2抗体の免疫学的検出用キット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】抗ミトコンドリアM2抗体を高感度、特異的かつ迅速に検査することができる免疫学的検出方法及び該検出方法を用いた抗ミトコンドリアM2抗体の免疫学的検出用キットを提供する。
【解決手段】ミトコンドリアM2抗原を感作した不溶性担体粒子と検体を混合し、抗原抗体反応による不溶性担体粒子の凝集反応が生じた場合反応液の吸光度が変化するが、その吸光度変化量を測定し抗ミトコンドリアM2抗体を検出する。不溶性担体粒子として合成高分子ラテックス粒子を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】ミトコンドリアM2抗原を感作した不溶性担体粒子と検体を混合し、抗原抗体反応による不溶性担体粒子の凝集反応が生じた場合反応液の吸光度が変化するが、その吸光度変化量を測定し抗ミトコンドリアM2抗体を検出する。不溶性担体粒子として合成高分子ラテックス粒子を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、検体中の抗ミトコンドリアM2抗体を検出する方法、詳細にはラテックス凝集法による抗ミトコンドリアM2抗体の検出方法及び抗ミトコンドリアM2抗体の免疫学的検出用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
抗ミトコンドリアM2抗体(以下、抗M2抗体)は、自己免疫性疾患の1つである原発性胆汁性肝硬変(Primary Biliary Cirrhosis:PBC)の患者の血清中に高頻度かつ特異的に出現する自己抗体であり、PBCの診断において極めて重要な検査項目の1つとなっている。PBCの発症機序や抗M2抗体の発生機序はいまだに解明されていないが、PBCの病態と抗M2抗体の抗体価とは相関しないと考えられている。
【0003】
1960年代においてPBC患者の血清中にミトコンドリア成分に対する自己抗体が発見されて以来、本抗体の対応抗原の検索が行われてきた。当初ミトコンドリア成分はM1〜M9の抗原成分に分類されたが、その後、M2がPBC自己抗体の特異的対応抗原であることが判明した[例えば、Lancet、i、p.827〜p.831(1965)、J.Hepatology、2、p.123〜p.131(1986)]。さらに、抗M2抗体の対応抗原は呼吸系酵素の2−オキソ酸脱水素酵素複合体(2−OADC)であることが明らかにされた[例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、p.8654〜p.8658(1988)]。2−OADCは3種類の2−オキソ酸を酵素基質とする3種類の類似の酵素群であり、それらはピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)、分岐鎖2−オキソ酸脱水素酵素複合体(BCOADC)及び2−オキソグルタル酸脱水素酵素複合体(OGDC)である。さらに、これらの酵素複合体は主に3種類のサブユニット(E1、E2、E3)から構成されている。PDCはさらにもう1つのサブユニットE3BP(E3 Binding Protein、ProteinX)を結合している。
【0004】
抗M2抗体の主要な対応抗原は、これらのサブユニットの中の4つ、すなわちPDC−E2、E3BP、BCOADC−E2、OGDC−E2であるが、抗M2抗体はこれらの抗原に対する抗体の組合せとしてPBC患者の血清中に出現する。例えば、抗M2抗体として4種類の抗原に対する抗体をすべて含む検体もあれば、BCOADC−E2に対する抗体のみが単独で出現する場合もある。頻度は小さいがPDC−E1のような主要4抗原以外の抗原に対する抗体も検出される場合もある。さらにPBC患者血清中の抗M2抗体の抗体タイプとしてはIgG、IgM、IgAが検出され、やはりそれらの組合せで出現する[例えば、Hepatology、8、p.290〜p.295(1988)]。従って、抗M2抗体は、上記数種類の抗原に対する抗体の組合せであり、さらに各抗体は3種類の抗体タイプの組合せから構成される抗体群と考えることができる。抗M2抗体のスクリーニング目的には1種類の抗体成分からなる抗M2抗体でも検出できることが重要であり、より性能の優れた抗M2抗体の検査方法が開発されることが期待されている。以下、ここでは、抗M2抗体に対する対応抗原としての2−OADCをミトコンドリアM2抗原と呼称する。
【0005】
従来、抗M2抗体の検査方法としては、例えば、WO97/49720、DE19624620A1、特開平3−291568、WO89/05976、DE3237602A1及び特開昭55−30695にも開示されているように、間接蛍光抗体法(IIF法)、ウェスタンブロット法(WB法)、酵素免疫測定法(ELISA法)が知られている。しかしながら、ラット腎切片を用いたIIF法は特異性に問題があり、PBC以外の疾患、例えば梅毒や心筋炎などでも陽性判定となる場合がある。WB法は放射性同位元素等を用いることでより高感度な検出もでき、さらに個々の抗原に対する抗体を同定できるという長所があるが、手技が煩雑であり大量検体の処理には適さない。近年、本発明者らは、高感度で特異性の高いELISA法による抗M2抗体の測定キットを開発した[臨床検査機器・試薬、24、p.323〜p.330(2001);Hepatol.Res.、21、p.1〜p.7(2001);J.Gastroenterol.、36,p.33〜p.38(2001)]。しかし、ELISA法は、反応に要する時間が2時間程度もかかり長く、又使用する試薬の種類も多く高価であり、抗M2抗体をスクリーニングする目的には必ずしも適していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、この発明の目的は、抗M2抗体を高感度、特異的かつ迅速に検査することができる免疫学的検出方法及び該検出方法を用いた抗M2抗体の免疫学的検出用キットを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による抗M2抗体の検出方法は、詳細には、ミトコンドリアM2抗原又は合成されたミトコンドリアM2抗原を感作した不溶性担体粒子と検体を混合し、抗原抗体反応による不溶性担体粒子の凝集反応が生じた場合、反応液の吸光度が変化するが、その吸光度変化量を測定し抗M2抗体を検出することを特徴とする方法である。このような不溶性担体粒子を用いた方法は、例えば、感染症マーカー、凝固繊溶系、腫瘍マーカー等の検出のために用いられてきたが、抗M2抗体の測定には、適切なミトコンドリアM2抗原の入手が困難であった等の理由により適用されてこなかった。本発明者らは、PBC患者血清を適宜希釈した液と、適切な方法で調製したミトコンドリアM2抗原を適切に感作したポリスチレンラテックスを適当な濃度で分散した液とを混合して反応させることにより、意図した感度範囲内で迅速に抗M2抗体を検出できることを発見し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、検出上有効量の哺乳類のミトコンドリア由来の2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子の懸濁液と検体とを混合し、検体中に抗ミトコンドリアM2抗体が存在する場合に生じる担体粒子の凝集反応に基づく反応液の吸光度変化量を変化量測定可能な波長で測定する工程を含む、検体中の抗ミトコンドリアM2抗体の検出方法を提供する。
【0009】
本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」は、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)、分岐鎖2−オキソ酸脱水素酵素複合体(BCOADC)及び2−オキソグルタル酸脱水素酵素複合体(OGDC)からなる群から選択される複数の酵素複合体の、又はPDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの、BCOADCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの及びOGDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むものからなる群から選択される複数の酵素複合体の一部の、複合物(各要素が会合したもの)又は混合物をいう。
【0010】
本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」は、公知の方法[Biochem.J.、191、p.147〜p.154(1980)]でブタ、ウマ等の哺乳類動物の心臓、腎臓、肝臓等の臓器から抽出精製されたもの、又は市販のPDC(Sigma社製)やOGDC(Sigma社製)を利用することもできる。さらに遺伝子組み換え技術により得られるリコンビナントタンパク質抗原を用いることができる。PDC、BCOADC及びOGDCの各E2サブユニットリポイルドメインのリコンビナント融合タンパク質抗原を使用することも提案されている[WO 97/49720、PCT/US97/11016]。しかし、これらのリコンビナント抗原のみで抗M2抗体に対するすべての抗原に対応することは困難である。従って、感作ミトコンドリアM2抗原としては抗M2抗体の検出に必要な対応抗原が含まれているものであればよく、抗原の調製法によって制限されるものではない。本発明者らは、PDC、BCOADC、OGDCを適量含むミトコンドリアM2抗原を調製し、ELISAに用いてその有用性を証明した[臨床検査機器・試薬、24、p.323〜p.330(2001);Hepatol.Res.、21、p.1〜p.7(2001);J.Gastroenterol.、36、p.33〜p.38(2001)]。このようにPDC、BCOADC、OGDCを適量含むように再構成されたものもまた、本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体、及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」に含まれる。
【0011】
本発明の方法は、ミトコンドリアM2抗原、好ましくはそれらのサブユニットから選択されるPDC−E2、E3BP、BCOADC−E2及びOGDC−E2又はそれらのリコンビナント抗原を認識し、かつIgG、IgA及びIgMからなる群より選択されるタイプの抗M2抗体の少なくとも1種を検出しうるものであり、より好ましくは、抗M2抗体の2種以上の組合せを同時に検出しうるものである。
【0012】
そのため、本発明の方法の好ましい実施態様の一つにおいては、「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」として、PDC、BCOADC及びOGDCを適量含む混合物、あるいはPDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの、BCOADCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの及びOGDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むものを含有する混合物を用いる。各複合体又はその一部の混合比は、それぞれの複合体又はその一部の由来、分子量、検定に供する検体に含まれうる抗M2抗体の種類、検体の由来する対象者の状態、検定条件等に応じて適宜設計可能である。例えば、ブタ心臓由来のPDC、BCOADC及びOGDCを用いる場合は、PDC 6重量部に対し、好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.1〜100重量部、より好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.2〜20重量部、さらに好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.5〜5重量部用いる。なお、「それぞれ独立に」とは、BCOADCとOGDCとが別個にその数値範囲内の重量比をとりうることをいい、BCOADCとOGDCとが異なる重量比である場合と、同一の重量比である場合とを含む。
【0013】
本発明者らが検討した結果、検出上有効な量比でPDC、BCOADC、OGDCを適量含むように2−オキソ酸脱水素酵素複合体を再構成することに成功した。したがって、本発明はまた、PDC 6重量部に対し、好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.1〜100重量部、より好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.2〜20重量部、さらに好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.5〜5重量部を含む混合物(組成物)をも提供する。
【0014】
本発明による抗M2抗体の免疫学的検出用キットは、上記記載の抗M2抗体を検出する方法に基づき抗M2抗体を検出するキットであって、ミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子懸濁液又は反応促進剤や非特異反応抑制剤等を含む検体希釈液及びミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子懸濁液からなる。
【0015】
本発明における検体は、基本的には適切な方法で採取された血清であるが、本発明における検出方法の反応を阻害するようなものでなければ血漿や何らかの前処理を施した検体でもかまわず、特に血清に限定されるものではない。
【0016】
不溶性担体粒子としては、粒径の均一な合成有機高分子ラテックスであり、一般にラテックス凝集法で用いられる粒子を使用することができる。例えば、疎水性粒子の代表であるポリスチレンラテックス粒子、化学修飾が可能な親水性のアミノ基、カルボキシル基などを粒子表面に導入した共重合ラテックス粒子などを用いることができる。特に抗原タンパク質の物理吸着性に優れたポリスチレン系ラテックスが好ましい。ラテックス粒子の粒径は0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmである。
【0017】
2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子は、例えば、ブタ心臓由来のPDC、BCOADC及びOGDCを重量比6:2:2で混合してなるミトコンドリアM2抗原と、平均粒径約0.1〜0.5μmのポリスチレンラテックス粒子とを用いる場合は、約10〜10000μg/mL、好ましくは約100〜1000μg/mLのミトコンドリアM2抗原溶液と、該粒子の約0.1〜10%(w/v)懸濁液とを混合することにより得られる。このようにして得られるミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子と同様の反応性及び検出性を有する担体は、本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子」の範囲に含まれる。
【0018】
本発明におけるミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子懸濁液は、ミトコンドリアM2抗原を公知の手段によってラテックス粒子表面に物理(化学)吸着又は化学結合によって感作(結合)したミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子を約0.001〜4.0%(w/v)、好ましくは約0.01〜2.0%(w/v)の濃度になるように感作ラテックス粒子懸濁用緩衝液に懸濁した液である。なお、本明細書で不溶性担体の濃度に関し、「%(w/v)」というときは、特別な場合を除き、wは懸濁質(不溶性担体粒子)の重量を表し、vは懸濁媒(不溶性担体粒子懸濁用の緩衝液)の容積を表す。
【0019】
感作ラテックス粒子の懸濁用緩衝液は、pH6〜9に調整されたものであれば従来公知の緩衝液を用いることができる。例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液やMES緩衝液などのグッド緩衝液である。さらに、反応促進剤として公知のポリエチレングリコール、デキストラン、プルランなどの有機高分子や感作ラテックス粒子の自己凝集を防止するためのキレート剤、高分子電解質等を添加してもよい。
【0020】
ミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子懸濁液とは別に用いる検体希釈液には、pH6〜9のリン酸緩衝液、トリス緩衝液やグッド緩衝液等の公知の緩衝液を用いることができる。緩衝液には、上記反応促進剤やキレート剤、アジド化合物、高分子電解質等の安定化剤、さらに非特異反応を抑制するために動物正常血清などを加えてもよい。検体は希釈せずに用いることもできるが、検体が血清であり、かつ約0.04〜1.0%(w/v)の濃度の感作ラテックス粒子懸濁液を用いる場合は、予め約2〜105倍に希釈して用いることが好ましく、約10〜1000倍に希釈して用いることがより好ましい。
【0021】
ミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子と検体との反応は、感作ラテックス粒子表面での特異的抗原抗体反応と該反応の結果起こる感作ラテックス粒子の凝集反応であり、凝集の程度を測定することにより検体中の抗M2抗体の存在を調べることができる。
【0022】
該ラテックス凝集反応は、スライドガラス上で目視により検知することもできるが、分光光度計を用いて反応液の吸光度の変化(増加)を一定温度の下で経時的に、例えば、検体の希釈液へラテックス懸濁液を添加した直後と、その約1〜60分後、好ましくは約3〜20分後に測定することで正確に追跡することができる。さらに、汎用の生化学自動分析装置を利用することが好ましい。
【0023】
凝集反応に伴う濁度の変化を吸光度の変化量で計測するために吸光度を測定する際用いられる光の波長は約300〜1,000nm、好ましくは約500〜900nm、最も好ましくは約720〜880nmの範囲から適宜選ばれる。
【0024】
汎用の生化学自動分析装置、例えば日立7170型装置を用いて検体中の抗M2抗体を検出する場合次のような手順で行うことができる。検体2μLを反応セルに分注し検体希釈液100μLを加え攪拌後5分間インキュベートする。次に、ラテックス懸濁液100μLを加え攪拌後5分間反応させる。この間反応液は恒温(37℃)に保たれ一定時間間隔で吸光度(波長800nm)が測定される。ラテックス懸濁液添加直後の反応液の吸光度(Ai)と約5分後の反応液の吸光度(Af)の差すなわち吸光度変化量(ΔA800=Af−Ai)の測定値から検体中の抗M2抗体の存在を評価することができる。検体量、試薬量、波長、反応時間などの測定条件は使用する分析機器等に合った適切な条件が設定される。
【0025】
本発明の方法は、抗ミトコンドリアM2抗体のみならず、自己免疫疾患患者に認められる他の自己抗体の検出にも適用可能である。このような自己抗体には、自己免疫性肝炎に認められる平滑筋抗体、抗核抗体、潰瘍性大腸炎患者に認められる結腸リポ多糖体抗体、シェーグレン症候群患者に認められる唾液腺管抗体、甲状腺抗体、IgG抗体が含まれる。
【0026】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
(1)ミトコンドリアM2抗原の調製
1) PDC及びOGDCの調製
ブタ心臓を氷冷下細切し、その約250gに2容の2.7mM EDTA、0.1mM DTT、3%(v/v)TritonX−100、50mM MOPS(pH 7.0)緩衝液を加え、さらに、PMSF及びベンズアミジンを0.1mMの濃度になるように添加した後、ポリトロンを用いてホモジナイズした。得られたホモジネートに等容の2.7mM EDTA、0.1mM DTT、3%(v/v)TritonX−100、50mM MOPS(pH6.8)緩衝液を加えた混合物を10000gで20分間遠心分離した。得られた上清のpHを10%(v/v)酢酸で6.5に調整し、0.12容の35%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG)を加えてから、30分間攪拌した。混合物を25000gで10分間遠心分離して得た沈殿を約400mLの2.7mM EDTA、0.1mM DTT、50mM MOPS(pH6.8)緩衝液に再懸濁した。さらに、25000gで40分間遠心分離し上清を回収した。この上清にMgCl2を13mMになるように加えて30℃に加温した後、溶液を10℃以下に冷却し、TritonX−100を1%の濃度になるように加え、さらに、イオン強度を上げるために終濃度50mMとなるように1Mリン酸ナトリウム緩衝液を加えた。溶液のpHを10%(v/v)酢酸で6.5に調整し、0.12容の35%(w/v)PEGを加えて30分間攪拌した後、25000gで10分間遠心分離し沈殿を集めた。沈殿を約100mLの2.7mM EDTA、0.1mM DTT、1%(v/v)TritonX−100、50mM MOPS(pH6.8)緩衝液に再懸濁した。室温で1時間攪拌した後、40000gで60分間遠心分離した。上清を回収し10%(v/v)酢酸でpHを6.4に調整してから、0.08容の35%(w/v)PEGを加え攪拌した後、25000gで10分間遠心分離した。得られた沈殿を10mLの2.7mM EDTA、1%(v/v)TritonX−100、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)緩衝液に再懸濁してOGDC液を得た。遠心分離して得た上清のpHを0.5M NaOHで6.5に調整してから、0.12容の35%(w/v)PEGを加え30分間攪拌した後、25000gで10分間遠心分離した。得られた沈殿を上記リン酸緩衝液の10mLに再懸濁してPDC液を得た。
【0028】
2)BCOADCの調製
ブタ心臓を氷冷下細切しその約200gに2容の2mM EDTA、3%(v/v)TritonX−100、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、0.1mM DTT、50mM リン酸カリウム(pH7.5)緩衝液を加えポリトロンでホモジナイズした。さらに、等容の同緩衝液を加え攪拌した後、26000gで15分間遠心分離した。得られた上清に0.12容の35%(w/v)PEGを加えて30分間攪拌した後、30000gで15分間遠心分離し沈殿を集めた。沈殿を初期容積の1/3の0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、1mM DTT、30mM リン酸カリウム(pH7.3)緩衝液に充分再懸濁し30分間攪拌した後、混合物を30000gで30分間遠心分離した。さらに、上清に0.12容の35%(w/v)PEGを加えて30分間遠心分離し沈殿を集めた。再度、沈殿を初期容積の1/20の0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、1mM DTT、30mM リン酸カリウム(pH7.3)緩衝液に懸濁し、上記の操作と同様に遠心分離し沈殿を回収した。得られた沈殿を10mLの0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、1mM DTT、30mM リン酸カリウム(pH7.3)緩衝液に懸濁してBCOADC液を得た。
【0029】
3)ミトコンドリアM2抗原の調製
上記1)、2)により得られたPDC液、OGDC液及びBCOADC液のタンパク質濃度をブラッドフォード法で測定し、各抗原(酵素)の量比を約PDC:OGDC:BCOADC=6:2:2となるように混合して感作用ミトコンドリアM2抗原を調製した。
【0030】
(2)ミトコンドリアM2抗原感作ラテックス懸濁液の調製
平均粒径0.45μmのポリスチレンラテックス(イムテックス、固形分10%(w/v)、日本合成ゴム社製)80μLを4℃にて10分間、15,000rpmで遠心分離し上清を除去した後、リン酸緩衝液(50mM リン酸緩衝液(pH7.5)、0.1%NaN3)の1mLを加えて分散した。再び4℃にて10分間、15,000rpmで遠心分離することにより、ラテックスを一度リン酸緩衝液で前洗浄した。ラテックスに最終的に体積0.5mLとなるようにリン酸緩衝液を加えて分散し抗原感作用ラテックス懸濁液(1.6%(w/v))とした。次に、前述の方法で調製したミトコンドリアM2抗原をリン酸緩衝液で希釈して濃度300μg/mLの抗原液を調製した。この抗原液0.5mLに上記ラテックス懸濁液0.5mLを添加混合して、25℃で3時間ローターを用いて攪拌した。このようにミトコンドリアM2抗原をラテックス粒子に感作した。次いで、4℃にて10分間、12,000rpmで遠心分離し上清を除去した後、ウシ血清アルブミン(BSA)溶液(0.1%BSA、50mM リン酸緩衝液(pH7.5)、0.1%NaN3)の1mLを抗原感作ラテックスに加えて充分分散させてから25℃で2時間攪拌した。このようにしてBSAでブロッキング処理をした後、4℃にて10分間、12,000rpmで遠心分離した。同様に同じBSA溶液で抗原感作ラテックスを3回洗浄した。得られた抗原感作ラテックスをBSAを含むリン酸緩衝液(0.1%BSA、50mM リン酸緩衝液(pH7.5)、0.1mM EDTA・2Na、0.1%NaN3)の10mLに超音波処理により均一に分散して固形分0.06%(w/v)のミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子懸濁液(R2)を調製した。
【0031】
(3)検体希釈液の調製
0.5%ポリアクリル酸(重量平均分子量30,000、アルドリッチ社製)、0.1%BSA、0.1mM EDTA・2Na、0.1%NaN3を含む50mM リン酸緩衝液(pH7.5)−生理食塩水(50mM PBS)を検体希釈液(R1)として調製した。
【0032】
(4)検体測定
ELISA法により測定された抗M2抗体価既知のPBC患者血清(4700U/mL)を用いて希釈系列(212〜0.1U/mL)を作製し検体とした。さらに検体希釈液及び一般検体5例も検体とした。測定は日立自動分析装置(7170型)を用いて行なった。分析パラメータは、2ポイントエンド法、測光ポイント22−34、反応時間10分、測定波長800nmに設定した。検体量は20、4及び2μLとした。検体希釈液(R1)と抗原感作ラテックス懸濁液(R2)は夫々100μLとした。ただし、1実験例ではR1を150μLで測定した。検体とR1を混合攪拌し37℃で5分間インキュベートした後、これにR2を加え攪拌した。そのまま37度で5分間反応させた。測光ポイント22(R2を添加攪拌した直後)と34(R2を添加して5分後)における波長800nmでの吸光度の値から吸光度変化量(ΔA800)を算出した。
【0033】
(5)結果
測定結果を表1及び図1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
この結果から分かるように、検体量が増加するに従って検出感度が高くなる一方、プロゾーン現象は抗M2抗体の低濃度域から観察されるようになった。また、検体量が多いと非特異反応の発生頻度は大きくなることが予想される。具体的には、検体量が20μLでは、抗M2抗体の抗体価が20U/mL付近からプロゾーンが観察され抗体価の増加に伴い吸光度変化量(ΔA800×104)が500程度まで低下した。しかし、その値は検体希釈液や正常検体(1〜4)の測定値まで下がることはなかった。正常検体5の値は非特異反応が起こった結果と考えられる。検体量4μLでのプロゾーン域の抗M2抗体価は約100U/mLであった。検体量が2μLの場合、吸光度変化量は抗M2抗体価が100〜200U/mLでプラトーに達するが、検体量4μLや20μLの場合のように低下することはなかった。検体量2μLでR1を150μLとすると100μLの場合と比較して吸光度変化量は全体的に小さくなった。
【0036】
<実施例2>
(1)ミトコンドリアM2抗原感作ラテックスの調製:
実施例1の(2)に記載の方法でミトコンドリアM2抗原をラテックスに感作した後、固形分0.08%(w/v)、0.06%(w/v)及び0.04%(w/v)濃度の感作ラテックス懸濁液を調製した。
【0037】
(2)検体希釈液の調製:
実施例1の(3)で調製した検体希釈液と同じものを用いた。
【0038】
(3)検体測定:
実施例1の(4)で作製した抗M2抗体の希釈系列を検体として測定した。日立7170型自動分析装置の分析パラメータは、実施例1の(4)と同じに設定した。検体量は2μLとし、試薬量はR1、R2ともに100μLとした。
【0039】
(4)結果:
測定結果を表2と図2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
この結果から明らかなように、ラテックス濃度が小さくなるに従って吸光度変化量が低下し、さらに、より低い抗M2抗体価でプロゾーン現象が観察された。しかし、ラテックス濃度0.08%(w/v)の場合では抗M2抗体価が200U/mLでプロゾーンは起こらなかった。抗M2抗体価が約2U/mLより高濃度で抗体価に対応して吸光度変化量が変化(増加)した。
【0042】
<実施例3>
(1)ミトコンドリアM2抗原感作ラテックスの調製
実施例1の(2)に記載の方法でミトコンドリアM2抗原をラテックスに感作した後、固形分0.08%(w/v)濃度の感作ラテックス懸濁液を調製した。
【0043】
(2)検体希釈液の調製
0.5%ポリアクリル酸(重量平均分子量30,000、アルドリッチ社製)、0.1%BSA、0.1mM EDTA・2Na、0.1%NaN3及び0.7 mg/mLのウマ変性ガンマグロブリンを含む50mM PBSを検体希釈液(R1)として調製した。
【0044】
(3)検体測定
PBC検体45例、自己免疫性肝炎検体15例、A型急性肝炎検体7例、B型慢性肝炎検体33例、C型慢性肝炎検体37例、アルコール性肝炎検体3例、アルコール性疾患検体12例、ウィルス性及びアルコール性肝硬変検体14例を用いた。
【0045】
抗M2抗体の測定又は検出は、市販のELISAキットすなわちA社ELISAキット(メサカップ ミトコンドリアM2、医学生物学研究所製)、B社ELISAキット(イムニス ミトコンドリア抗体EIA、特殊免疫研究所製)、C社ELISAキット(カルスタット EIA3 抗ミトコンドリア抗体、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ製)及び本発明による方法を用いて行なった。さらに、WB法による抗M2抗体(IgG及びIgM)の検索も行なった。
【0046】
ELISAキットによる測定及び判定はキットに添付されている取扱説明書に従った。本発明による測定は日立7170型自動分析装置を用い実施例2の(3)に記載の分析パラメータで行なった。WB法による抗M2抗体(IgG及びIgM)の検索は以下の手順で行なった。公知の方法でウシ心筋からミトコンドリアを調製し、これを用いてミトコンドリアM2抗原をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。転写膜を100倍希釈した検体とインキュベートした後、膜を洗浄し、次にペルオキシダーゼ標識抗ヒト免疫グロブリン抗体(IgGとIgM)とインキュベートした。さらに膜を洗浄後、コニカイムノステインHRP−1000(コニカ社製)で染色し抗M2抗体の検索を行なった。
【0047】
(4)結果
PBC患者検体45例の結果を表3に示した。
【0048】
【表3】
【0049】
PBC以外の検体(121例)はすべて各ELISA法及びWB法で抗M2抗体が陰性であった。本実施例におけるラテックス凝集法でのPBC以外の検体の吸光度変化量(ΔA800×104)の平均値(M)は5.9であり標準偏差(SD)39.2であった。
これよりM+3SDは123となることからラテックス凝集法のカットオフ値(ΔA800
×104)を120とし、120以上の場合を抗M2抗体が陽性で120未満を陰性と判定した。この基準によるPBC検体45例の判定結果を各方法での結果と比較して表4に示した。
【0050】
【表4】
ここでは、WB法の結果における±は抗体陽性とみなした。本発明によるラテックス凝集法と他の検査方法との一致率は、A社ELISAキット(抗体価カットオフ参考値:20U/mL)で73%、B社ELISAキット(抗体価カットオフ参考値:10U/mL)で87%、C社ELISAキット(カットオフインデックスカットオフ値1.0)で76%、WB法で84%であった。この結果から明らかなように、本ラテックス凝集法はB社ELISAキットとほぼ同等の性能を有することがわかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、ELISA法又はWB法と同程度の高い検出感度で迅速、簡便に検体中の抗M2抗体を検出することができる。さらに、汎用の生化学自動分析装置を利用して大量検体の抗M2抗体のスクリーニングが可能となる免疫学的検出キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】検体量を変化させた場合の抗M2抗体価と吸光度変化量の関係を説明した図である。
【図2】感作ラテックス濃度を変化させた場合の抗M2抗体価と吸光度変化量の関係を説明した図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、検体中の抗ミトコンドリアM2抗体を検出する方法、詳細にはラテックス凝集法による抗ミトコンドリアM2抗体の検出方法及び抗ミトコンドリアM2抗体の免疫学的検出用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
抗ミトコンドリアM2抗体(以下、抗M2抗体)は、自己免疫性疾患の1つである原発性胆汁性肝硬変(Primary Biliary Cirrhosis:PBC)の患者の血清中に高頻度かつ特異的に出現する自己抗体であり、PBCの診断において極めて重要な検査項目の1つとなっている。PBCの発症機序や抗M2抗体の発生機序はいまだに解明されていないが、PBCの病態と抗M2抗体の抗体価とは相関しないと考えられている。
【0003】
1960年代においてPBC患者の血清中にミトコンドリア成分に対する自己抗体が発見されて以来、本抗体の対応抗原の検索が行われてきた。当初ミトコンドリア成分はM1〜M9の抗原成分に分類されたが、その後、M2がPBC自己抗体の特異的対応抗原であることが判明した[例えば、Lancet、i、p.827〜p.831(1965)、J.Hepatology、2、p.123〜p.131(1986)]。さらに、抗M2抗体の対応抗原は呼吸系酵素の2−オキソ酸脱水素酵素複合体(2−OADC)であることが明らかにされた[例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、p.8654〜p.8658(1988)]。2−OADCは3種類の2−オキソ酸を酵素基質とする3種類の類似の酵素群であり、それらはピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)、分岐鎖2−オキソ酸脱水素酵素複合体(BCOADC)及び2−オキソグルタル酸脱水素酵素複合体(OGDC)である。さらに、これらの酵素複合体は主に3種類のサブユニット(E1、E2、E3)から構成されている。PDCはさらにもう1つのサブユニットE3BP(E3 Binding Protein、ProteinX)を結合している。
【0004】
抗M2抗体の主要な対応抗原は、これらのサブユニットの中の4つ、すなわちPDC−E2、E3BP、BCOADC−E2、OGDC−E2であるが、抗M2抗体はこれらの抗原に対する抗体の組合せとしてPBC患者の血清中に出現する。例えば、抗M2抗体として4種類の抗原に対する抗体をすべて含む検体もあれば、BCOADC−E2に対する抗体のみが単独で出現する場合もある。頻度は小さいがPDC−E1のような主要4抗原以外の抗原に対する抗体も検出される場合もある。さらにPBC患者血清中の抗M2抗体の抗体タイプとしてはIgG、IgM、IgAが検出され、やはりそれらの組合せで出現する[例えば、Hepatology、8、p.290〜p.295(1988)]。従って、抗M2抗体は、上記数種類の抗原に対する抗体の組合せであり、さらに各抗体は3種類の抗体タイプの組合せから構成される抗体群と考えることができる。抗M2抗体のスクリーニング目的には1種類の抗体成分からなる抗M2抗体でも検出できることが重要であり、より性能の優れた抗M2抗体の検査方法が開発されることが期待されている。以下、ここでは、抗M2抗体に対する対応抗原としての2−OADCをミトコンドリアM2抗原と呼称する。
【0005】
従来、抗M2抗体の検査方法としては、例えば、WO97/49720、DE19624620A1、特開平3−291568、WO89/05976、DE3237602A1及び特開昭55−30695にも開示されているように、間接蛍光抗体法(IIF法)、ウェスタンブロット法(WB法)、酵素免疫測定法(ELISA法)が知られている。しかしながら、ラット腎切片を用いたIIF法は特異性に問題があり、PBC以外の疾患、例えば梅毒や心筋炎などでも陽性判定となる場合がある。WB法は放射性同位元素等を用いることでより高感度な検出もでき、さらに個々の抗原に対する抗体を同定できるという長所があるが、手技が煩雑であり大量検体の処理には適さない。近年、本発明者らは、高感度で特異性の高いELISA法による抗M2抗体の測定キットを開発した[臨床検査機器・試薬、24、p.323〜p.330(2001);Hepatol.Res.、21、p.1〜p.7(2001);J.Gastroenterol.、36,p.33〜p.38(2001)]。しかし、ELISA法は、反応に要する時間が2時間程度もかかり長く、又使用する試薬の種類も多く高価であり、抗M2抗体をスクリーニングする目的には必ずしも適していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、この発明の目的は、抗M2抗体を高感度、特異的かつ迅速に検査することができる免疫学的検出方法及び該検出方法を用いた抗M2抗体の免疫学的検出用キットを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による抗M2抗体の検出方法は、詳細には、ミトコンドリアM2抗原又は合成されたミトコンドリアM2抗原を感作した不溶性担体粒子と検体を混合し、抗原抗体反応による不溶性担体粒子の凝集反応が生じた場合、反応液の吸光度が変化するが、その吸光度変化量を測定し抗M2抗体を検出することを特徴とする方法である。このような不溶性担体粒子を用いた方法は、例えば、感染症マーカー、凝固繊溶系、腫瘍マーカー等の検出のために用いられてきたが、抗M2抗体の測定には、適切なミトコンドリアM2抗原の入手が困難であった等の理由により適用されてこなかった。本発明者らは、PBC患者血清を適宜希釈した液と、適切な方法で調製したミトコンドリアM2抗原を適切に感作したポリスチレンラテックスを適当な濃度で分散した液とを混合して反応させることにより、意図した感度範囲内で迅速に抗M2抗体を検出できることを発見し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、検出上有効量の哺乳類のミトコンドリア由来の2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子の懸濁液と検体とを混合し、検体中に抗ミトコンドリアM2抗体が存在する場合に生じる担体粒子の凝集反応に基づく反応液の吸光度変化量を変化量測定可能な波長で測定する工程を含む、検体中の抗ミトコンドリアM2抗体の検出方法を提供する。
【0009】
本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」は、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)、分岐鎖2−オキソ酸脱水素酵素複合体(BCOADC)及び2−オキソグルタル酸脱水素酵素複合体(OGDC)からなる群から選択される複数の酵素複合体の、又はPDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの、BCOADCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの及びOGDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むものからなる群から選択される複数の酵素複合体の一部の、複合物(各要素が会合したもの)又は混合物をいう。
【0010】
本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」は、公知の方法[Biochem.J.、191、p.147〜p.154(1980)]でブタ、ウマ等の哺乳類動物の心臓、腎臓、肝臓等の臓器から抽出精製されたもの、又は市販のPDC(Sigma社製)やOGDC(Sigma社製)を利用することもできる。さらに遺伝子組み換え技術により得られるリコンビナントタンパク質抗原を用いることができる。PDC、BCOADC及びOGDCの各E2サブユニットリポイルドメインのリコンビナント融合タンパク質抗原を使用することも提案されている[WO 97/49720、PCT/US97/11016]。しかし、これらのリコンビナント抗原のみで抗M2抗体に対するすべての抗原に対応することは困難である。従って、感作ミトコンドリアM2抗原としては抗M2抗体の検出に必要な対応抗原が含まれているものであればよく、抗原の調製法によって制限されるものではない。本発明者らは、PDC、BCOADC、OGDCを適量含むミトコンドリアM2抗原を調製し、ELISAに用いてその有用性を証明した[臨床検査機器・試薬、24、p.323〜p.330(2001);Hepatol.Res.、21、p.1〜p.7(2001);J.Gastroenterol.、36、p.33〜p.38(2001)]。このようにPDC、BCOADC、OGDCを適量含むように再構成されたものもまた、本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体、及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」に含まれる。
【0011】
本発明の方法は、ミトコンドリアM2抗原、好ましくはそれらのサブユニットから選択されるPDC−E2、E3BP、BCOADC−E2及びOGDC−E2又はそれらのリコンビナント抗原を認識し、かつIgG、IgA及びIgMからなる群より選択されるタイプの抗M2抗体の少なくとも1種を検出しうるものであり、より好ましくは、抗M2抗体の2種以上の組合せを同時に検出しうるものである。
【0012】
そのため、本発明の方法の好ましい実施態様の一つにおいては、「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体」として、PDC、BCOADC及びOGDCを適量含む混合物、あるいはPDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの、BCOADCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むもの及びOGDCの一部であって抗M2抗体の対応抗原を含むものを含有する混合物を用いる。各複合体又はその一部の混合比は、それぞれの複合体又はその一部の由来、分子量、検定に供する検体に含まれうる抗M2抗体の種類、検体の由来する対象者の状態、検定条件等に応じて適宜設計可能である。例えば、ブタ心臓由来のPDC、BCOADC及びOGDCを用いる場合は、PDC 6重量部に対し、好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.1〜100重量部、より好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.2〜20重量部、さらに好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.5〜5重量部用いる。なお、「それぞれ独立に」とは、BCOADCとOGDCとが別個にその数値範囲内の重量比をとりうることをいい、BCOADCとOGDCとが異なる重量比である場合と、同一の重量比である場合とを含む。
【0013】
本発明者らが検討した結果、検出上有効な量比でPDC、BCOADC、OGDCを適量含むように2−オキソ酸脱水素酵素複合体を再構成することに成功した。したがって、本発明はまた、PDC 6重量部に対し、好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.1〜100重量部、より好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.2〜20重量部、さらに好ましくはBCOADC及びOGDCをそれぞれ独立に約0.5〜5重量部を含む混合物(組成物)をも提供する。
【0014】
本発明による抗M2抗体の免疫学的検出用キットは、上記記載の抗M2抗体を検出する方法に基づき抗M2抗体を検出するキットであって、ミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子懸濁液又は反応促進剤や非特異反応抑制剤等を含む検体希釈液及びミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子懸濁液からなる。
【0015】
本発明における検体は、基本的には適切な方法で採取された血清であるが、本発明における検出方法の反応を阻害するようなものでなければ血漿や何らかの前処理を施した検体でもかまわず、特に血清に限定されるものではない。
【0016】
不溶性担体粒子としては、粒径の均一な合成有機高分子ラテックスであり、一般にラテックス凝集法で用いられる粒子を使用することができる。例えば、疎水性粒子の代表であるポリスチレンラテックス粒子、化学修飾が可能な親水性のアミノ基、カルボキシル基などを粒子表面に導入した共重合ラテックス粒子などを用いることができる。特に抗原タンパク質の物理吸着性に優れたポリスチレン系ラテックスが好ましい。ラテックス粒子の粒径は0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmである。
【0017】
2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子は、例えば、ブタ心臓由来のPDC、BCOADC及びOGDCを重量比6:2:2で混合してなるミトコンドリアM2抗原と、平均粒径約0.1〜0.5μmのポリスチレンラテックス粒子とを用いる場合は、約10〜10000μg/mL、好ましくは約100〜1000μg/mLのミトコンドリアM2抗原溶液と、該粒子の約0.1〜10%(w/v)懸濁液とを混合することにより得られる。このようにして得られるミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子と同様の反応性及び検出性を有する担体は、本発明でいう「2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子」の範囲に含まれる。
【0018】
本発明におけるミトコンドリアM2抗原感作不溶性担体粒子懸濁液は、ミトコンドリアM2抗原を公知の手段によってラテックス粒子表面に物理(化学)吸着又は化学結合によって感作(結合)したミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子を約0.001〜4.0%(w/v)、好ましくは約0.01〜2.0%(w/v)の濃度になるように感作ラテックス粒子懸濁用緩衝液に懸濁した液である。なお、本明細書で不溶性担体の濃度に関し、「%(w/v)」というときは、特別な場合を除き、wは懸濁質(不溶性担体粒子)の重量を表し、vは懸濁媒(不溶性担体粒子懸濁用の緩衝液)の容積を表す。
【0019】
感作ラテックス粒子の懸濁用緩衝液は、pH6〜9に調整されたものであれば従来公知の緩衝液を用いることができる。例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液やMES緩衝液などのグッド緩衝液である。さらに、反応促進剤として公知のポリエチレングリコール、デキストラン、プルランなどの有機高分子や感作ラテックス粒子の自己凝集を防止するためのキレート剤、高分子電解質等を添加してもよい。
【0020】
ミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子懸濁液とは別に用いる検体希釈液には、pH6〜9のリン酸緩衝液、トリス緩衝液やグッド緩衝液等の公知の緩衝液を用いることができる。緩衝液には、上記反応促進剤やキレート剤、アジド化合物、高分子電解質等の安定化剤、さらに非特異反応を抑制するために動物正常血清などを加えてもよい。検体は希釈せずに用いることもできるが、検体が血清であり、かつ約0.04〜1.0%(w/v)の濃度の感作ラテックス粒子懸濁液を用いる場合は、予め約2〜105倍に希釈して用いることが好ましく、約10〜1000倍に希釈して用いることがより好ましい。
【0021】
ミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子と検体との反応は、感作ラテックス粒子表面での特異的抗原抗体反応と該反応の結果起こる感作ラテックス粒子の凝集反応であり、凝集の程度を測定することにより検体中の抗M2抗体の存在を調べることができる。
【0022】
該ラテックス凝集反応は、スライドガラス上で目視により検知することもできるが、分光光度計を用いて反応液の吸光度の変化(増加)を一定温度の下で経時的に、例えば、検体の希釈液へラテックス懸濁液を添加した直後と、その約1〜60分後、好ましくは約3〜20分後に測定することで正確に追跡することができる。さらに、汎用の生化学自動分析装置を利用することが好ましい。
【0023】
凝集反応に伴う濁度の変化を吸光度の変化量で計測するために吸光度を測定する際用いられる光の波長は約300〜1,000nm、好ましくは約500〜900nm、最も好ましくは約720〜880nmの範囲から適宜選ばれる。
【0024】
汎用の生化学自動分析装置、例えば日立7170型装置を用いて検体中の抗M2抗体を検出する場合次のような手順で行うことができる。検体2μLを反応セルに分注し検体希釈液100μLを加え攪拌後5分間インキュベートする。次に、ラテックス懸濁液100μLを加え攪拌後5分間反応させる。この間反応液は恒温(37℃)に保たれ一定時間間隔で吸光度(波長800nm)が測定される。ラテックス懸濁液添加直後の反応液の吸光度(Ai)と約5分後の反応液の吸光度(Af)の差すなわち吸光度変化量(ΔA800=Af−Ai)の測定値から検体中の抗M2抗体の存在を評価することができる。検体量、試薬量、波長、反応時間などの測定条件は使用する分析機器等に合った適切な条件が設定される。
【0025】
本発明の方法は、抗ミトコンドリアM2抗体のみならず、自己免疫疾患患者に認められる他の自己抗体の検出にも適用可能である。このような自己抗体には、自己免疫性肝炎に認められる平滑筋抗体、抗核抗体、潰瘍性大腸炎患者に認められる結腸リポ多糖体抗体、シェーグレン症候群患者に認められる唾液腺管抗体、甲状腺抗体、IgG抗体が含まれる。
【0026】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
(1)ミトコンドリアM2抗原の調製
1) PDC及びOGDCの調製
ブタ心臓を氷冷下細切し、その約250gに2容の2.7mM EDTA、0.1mM DTT、3%(v/v)TritonX−100、50mM MOPS(pH 7.0)緩衝液を加え、さらに、PMSF及びベンズアミジンを0.1mMの濃度になるように添加した後、ポリトロンを用いてホモジナイズした。得られたホモジネートに等容の2.7mM EDTA、0.1mM DTT、3%(v/v)TritonX−100、50mM MOPS(pH6.8)緩衝液を加えた混合物を10000gで20分間遠心分離した。得られた上清のpHを10%(v/v)酢酸で6.5に調整し、0.12容の35%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG)を加えてから、30分間攪拌した。混合物を25000gで10分間遠心分離して得た沈殿を約400mLの2.7mM EDTA、0.1mM DTT、50mM MOPS(pH6.8)緩衝液に再懸濁した。さらに、25000gで40分間遠心分離し上清を回収した。この上清にMgCl2を13mMになるように加えて30℃に加温した後、溶液を10℃以下に冷却し、TritonX−100を1%の濃度になるように加え、さらに、イオン強度を上げるために終濃度50mMとなるように1Mリン酸ナトリウム緩衝液を加えた。溶液のpHを10%(v/v)酢酸で6.5に調整し、0.12容の35%(w/v)PEGを加えて30分間攪拌した後、25000gで10分間遠心分離し沈殿を集めた。沈殿を約100mLの2.7mM EDTA、0.1mM DTT、1%(v/v)TritonX−100、50mM MOPS(pH6.8)緩衝液に再懸濁した。室温で1時間攪拌した後、40000gで60分間遠心分離した。上清を回収し10%(v/v)酢酸でpHを6.4に調整してから、0.08容の35%(w/v)PEGを加え攪拌した後、25000gで10分間遠心分離した。得られた沈殿を10mLの2.7mM EDTA、1%(v/v)TritonX−100、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)緩衝液に再懸濁してOGDC液を得た。遠心分離して得た上清のpHを0.5M NaOHで6.5に調整してから、0.12容の35%(w/v)PEGを加え30分間攪拌した後、25000gで10分間遠心分離した。得られた沈殿を上記リン酸緩衝液の10mLに再懸濁してPDC液を得た。
【0028】
2)BCOADCの調製
ブタ心臓を氷冷下細切しその約200gに2容の2mM EDTA、3%(v/v)TritonX−100、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、0.1mM DTT、50mM リン酸カリウム(pH7.5)緩衝液を加えポリトロンでホモジナイズした。さらに、等容の同緩衝液を加え攪拌した後、26000gで15分間遠心分離した。得られた上清に0.12容の35%(w/v)PEGを加えて30分間攪拌した後、30000gで15分間遠心分離し沈殿を集めた。沈殿を初期容積の1/3の0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、1mM DTT、30mM リン酸カリウム(pH7.3)緩衝液に充分再懸濁し30分間攪拌した後、混合物を30000gで30分間遠心分離した。さらに、上清に0.12容の35%(w/v)PEGを加えて30分間遠心分離し沈殿を集めた。再度、沈殿を初期容積の1/20の0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、1mM DTT、30mM リン酸カリウム(pH7.3)緩衝液に懸濁し、上記の操作と同様に遠心分離し沈殿を回収した。得られた沈殿を10mLの0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM ベンズアミジン、1mM PMSF、1mM DTT、30mM リン酸カリウム(pH7.3)緩衝液に懸濁してBCOADC液を得た。
【0029】
3)ミトコンドリアM2抗原の調製
上記1)、2)により得られたPDC液、OGDC液及びBCOADC液のタンパク質濃度をブラッドフォード法で測定し、各抗原(酵素)の量比を約PDC:OGDC:BCOADC=6:2:2となるように混合して感作用ミトコンドリアM2抗原を調製した。
【0030】
(2)ミトコンドリアM2抗原感作ラテックス懸濁液の調製
平均粒径0.45μmのポリスチレンラテックス(イムテックス、固形分10%(w/v)、日本合成ゴム社製)80μLを4℃にて10分間、15,000rpmで遠心分離し上清を除去した後、リン酸緩衝液(50mM リン酸緩衝液(pH7.5)、0.1%NaN3)の1mLを加えて分散した。再び4℃にて10分間、15,000rpmで遠心分離することにより、ラテックスを一度リン酸緩衝液で前洗浄した。ラテックスに最終的に体積0.5mLとなるようにリン酸緩衝液を加えて分散し抗原感作用ラテックス懸濁液(1.6%(w/v))とした。次に、前述の方法で調製したミトコンドリアM2抗原をリン酸緩衝液で希釈して濃度300μg/mLの抗原液を調製した。この抗原液0.5mLに上記ラテックス懸濁液0.5mLを添加混合して、25℃で3時間ローターを用いて攪拌した。このようにミトコンドリアM2抗原をラテックス粒子に感作した。次いで、4℃にて10分間、12,000rpmで遠心分離し上清を除去した後、ウシ血清アルブミン(BSA)溶液(0.1%BSA、50mM リン酸緩衝液(pH7.5)、0.1%NaN3)の1mLを抗原感作ラテックスに加えて充分分散させてから25℃で2時間攪拌した。このようにしてBSAでブロッキング処理をした後、4℃にて10分間、12,000rpmで遠心分離した。同様に同じBSA溶液で抗原感作ラテックスを3回洗浄した。得られた抗原感作ラテックスをBSAを含むリン酸緩衝液(0.1%BSA、50mM リン酸緩衝液(pH7.5)、0.1mM EDTA・2Na、0.1%NaN3)の10mLに超音波処理により均一に分散して固形分0.06%(w/v)のミトコンドリアM2抗原感作ラテックス粒子懸濁液(R2)を調製した。
【0031】
(3)検体希釈液の調製
0.5%ポリアクリル酸(重量平均分子量30,000、アルドリッチ社製)、0.1%BSA、0.1mM EDTA・2Na、0.1%NaN3を含む50mM リン酸緩衝液(pH7.5)−生理食塩水(50mM PBS)を検体希釈液(R1)として調製した。
【0032】
(4)検体測定
ELISA法により測定された抗M2抗体価既知のPBC患者血清(4700U/mL)を用いて希釈系列(212〜0.1U/mL)を作製し検体とした。さらに検体希釈液及び一般検体5例も検体とした。測定は日立自動分析装置(7170型)を用いて行なった。分析パラメータは、2ポイントエンド法、測光ポイント22−34、反応時間10分、測定波長800nmに設定した。検体量は20、4及び2μLとした。検体希釈液(R1)と抗原感作ラテックス懸濁液(R2)は夫々100μLとした。ただし、1実験例ではR1を150μLで測定した。検体とR1を混合攪拌し37℃で5分間インキュベートした後、これにR2を加え攪拌した。そのまま37度で5分間反応させた。測光ポイント22(R2を添加攪拌した直後)と34(R2を添加して5分後)における波長800nmでの吸光度の値から吸光度変化量(ΔA800)を算出した。
【0033】
(5)結果
測定結果を表1及び図1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
この結果から分かるように、検体量が増加するに従って検出感度が高くなる一方、プロゾーン現象は抗M2抗体の低濃度域から観察されるようになった。また、検体量が多いと非特異反応の発生頻度は大きくなることが予想される。具体的には、検体量が20μLでは、抗M2抗体の抗体価が20U/mL付近からプロゾーンが観察され抗体価の増加に伴い吸光度変化量(ΔA800×104)が500程度まで低下した。しかし、その値は検体希釈液や正常検体(1〜4)の測定値まで下がることはなかった。正常検体5の値は非特異反応が起こった結果と考えられる。検体量4μLでのプロゾーン域の抗M2抗体価は約100U/mLであった。検体量が2μLの場合、吸光度変化量は抗M2抗体価が100〜200U/mLでプラトーに達するが、検体量4μLや20μLの場合のように低下することはなかった。検体量2μLでR1を150μLとすると100μLの場合と比較して吸光度変化量は全体的に小さくなった。
【0036】
<実施例2>
(1)ミトコンドリアM2抗原感作ラテックスの調製:
実施例1の(2)に記載の方法でミトコンドリアM2抗原をラテックスに感作した後、固形分0.08%(w/v)、0.06%(w/v)及び0.04%(w/v)濃度の感作ラテックス懸濁液を調製した。
【0037】
(2)検体希釈液の調製:
実施例1の(3)で調製した検体希釈液と同じものを用いた。
【0038】
(3)検体測定:
実施例1の(4)で作製した抗M2抗体の希釈系列を検体として測定した。日立7170型自動分析装置の分析パラメータは、実施例1の(4)と同じに設定した。検体量は2μLとし、試薬量はR1、R2ともに100μLとした。
【0039】
(4)結果:
測定結果を表2と図2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
この結果から明らかなように、ラテックス濃度が小さくなるに従って吸光度変化量が低下し、さらに、より低い抗M2抗体価でプロゾーン現象が観察された。しかし、ラテックス濃度0.08%(w/v)の場合では抗M2抗体価が200U/mLでプロゾーンは起こらなかった。抗M2抗体価が約2U/mLより高濃度で抗体価に対応して吸光度変化量が変化(増加)した。
【0042】
<実施例3>
(1)ミトコンドリアM2抗原感作ラテックスの調製
実施例1の(2)に記載の方法でミトコンドリアM2抗原をラテックスに感作した後、固形分0.08%(w/v)濃度の感作ラテックス懸濁液を調製した。
【0043】
(2)検体希釈液の調製
0.5%ポリアクリル酸(重量平均分子量30,000、アルドリッチ社製)、0.1%BSA、0.1mM EDTA・2Na、0.1%NaN3及び0.7 mg/mLのウマ変性ガンマグロブリンを含む50mM PBSを検体希釈液(R1)として調製した。
【0044】
(3)検体測定
PBC検体45例、自己免疫性肝炎検体15例、A型急性肝炎検体7例、B型慢性肝炎検体33例、C型慢性肝炎検体37例、アルコール性肝炎検体3例、アルコール性疾患検体12例、ウィルス性及びアルコール性肝硬変検体14例を用いた。
【0045】
抗M2抗体の測定又は検出は、市販のELISAキットすなわちA社ELISAキット(メサカップ ミトコンドリアM2、医学生物学研究所製)、B社ELISAキット(イムニス ミトコンドリア抗体EIA、特殊免疫研究所製)、C社ELISAキット(カルスタット EIA3 抗ミトコンドリア抗体、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ製)及び本発明による方法を用いて行なった。さらに、WB法による抗M2抗体(IgG及びIgM)の検索も行なった。
【0046】
ELISAキットによる測定及び判定はキットに添付されている取扱説明書に従った。本発明による測定は日立7170型自動分析装置を用い実施例2の(3)に記載の分析パラメータで行なった。WB法による抗M2抗体(IgG及びIgM)の検索は以下の手順で行なった。公知の方法でウシ心筋からミトコンドリアを調製し、これを用いてミトコンドリアM2抗原をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。転写膜を100倍希釈した検体とインキュベートした後、膜を洗浄し、次にペルオキシダーゼ標識抗ヒト免疫グロブリン抗体(IgGとIgM)とインキュベートした。さらに膜を洗浄後、コニカイムノステインHRP−1000(コニカ社製)で染色し抗M2抗体の検索を行なった。
【0047】
(4)結果
PBC患者検体45例の結果を表3に示した。
【0048】
【表3】
【0049】
PBC以外の検体(121例)はすべて各ELISA法及びWB法で抗M2抗体が陰性であった。本実施例におけるラテックス凝集法でのPBC以外の検体の吸光度変化量(ΔA800×104)の平均値(M)は5.9であり標準偏差(SD)39.2であった。
これよりM+3SDは123となることからラテックス凝集法のカットオフ値(ΔA800
×104)を120とし、120以上の場合を抗M2抗体が陽性で120未満を陰性と判定した。この基準によるPBC検体45例の判定結果を各方法での結果と比較して表4に示した。
【0050】
【表4】
ここでは、WB法の結果における±は抗体陽性とみなした。本発明によるラテックス凝集法と他の検査方法との一致率は、A社ELISAキット(抗体価カットオフ参考値:20U/mL)で73%、B社ELISAキット(抗体価カットオフ参考値:10U/mL)で87%、C社ELISAキット(カットオフインデックスカットオフ値1.0)で76%、WB法で84%であった。この結果から明らかなように、本ラテックス凝集法はB社ELISAキットとほぼ同等の性能を有することがわかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、ELISA法又はWB法と同程度の高い検出感度で迅速、簡便に検体中の抗M2抗体を検出することができる。さらに、汎用の生化学自動分析装置を利用して大量検体の抗M2抗体のスクリーニングが可能となる免疫学的検出キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】検体量を変化させた場合の抗M2抗体価と吸光度変化量の関係を説明した図である。
【図2】感作ラテックス濃度を変化させた場合の抗M2抗体価と吸光度変化量の関係を説明した図である。
Claims (8)
- 検出上有効量の哺乳類のミトコンドリア由来の2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子の懸濁液と検体とを混合し、検体中に抗ミトコンドリアM2抗体が存在する場合に生じる担体粒子の凝集反応に基づく反応液の吸光度変化量を変化量測定可能な波長で測定する工程を含む、検体中の抗ミトコンドリアM2抗体の検出方法。
- 検出上有効量の哺乳類のミトコンドリア由来の2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体が、検出上有効な量比でピルビン酸脱水素酵素複合体、分岐鎖2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び2−オキソグルタル酸脱水素酵素複合体を含む混合物である、請求項1記載の検出方法。
- ピルビン酸脱水素酵素複合体 6重量部、分岐鎖2−オキソ酸脱水素酵素複合体 0.1〜100重量部、及び2−オキソグルタル酸脱水素酵素複合体0.1〜100重量部を含む組成物。
- 2−オキソ酸脱水素酵素複合体の各抗原を認識し、かつIgG、IgA及びIgMからなる群より選択されるタイプの抗ミトコンドリアM2抗体の少なくとも1種を検出しうる、請求項1又は2記載の検出方法。
- 抗ミトコンドリアM2抗体の2種以上の組合せを同時に検出しうる、請求項4記載の検出方法。
- 不溶性担体粒子が合成高分子ラテックス粒子である、請求項1、2、4及び5のいずれか1項記載の検出方法。
- 不溶性担体粒子が粒径が0.05〜1.0μmの、ポリスチレンラテックス粒子、又はカルボキシル基若しくはアミノ基を導入したポリスチレンラテックス粒子である、請求項1、2及び4〜6のいずれか1項記載の検出方法。
- 哺乳類のミトコンドリア由来の2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子の懸濁液、又は検体希釈のための液と哺乳類のミトコンドリア由来の2−オキソ酸脱水素酵素複合体及び/又は合成された2−オキソ酸脱水素酵素複合体を感作した不溶性担体粒子の懸濁液とを含む、請求項1、2及び4〜7のいずれか1項記載の検出方法を用いて検体中の抗ミトコンドリアM2抗体を検出するためのキット。
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Publications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011057475A1 (zh) * | 2009-11-12 | 2011-05-19 | 上海科新生物技术股份有限公司 | 胶体金层析法肝病检测试纸及其制备方法 |
JP2014523532A (ja) * | 2011-07-01 | 2014-09-11 | イノバ ダイアグノスティックス, インコーポレイテッド | 自己免疫疾患についての診断試験の特異性を増大させるための方法 |
WO2021075426A1 (ja) | 2019-10-15 | 2021-04-22 | キヤノン株式会社 | 粒子、及び粒子の製造方法 |
-
2002
- 2002-10-31 JP JP2002317969A patent/JP2004151000A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US10234453B2 (en) | 2011-07-01 | 2019-03-19 | Inova Diagnostics, Inc. | Method for increasing specificity of diagnostic tests for autoimmune diseases |
WO2021075426A1 (ja) | 2019-10-15 | 2021-04-22 | キヤノン株式会社 | 粒子、及び粒子の製造方法 |
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