JP2004149686A - 水性塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】住宅建材、家具、壁紙等から揮散される有害なVOCを吸着・分解する機能を有し且つ諸物性に優れている塗膜の形成が可能で、室内に好適に使用できる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションと、フライポンタイト等の特定の気体分子吸着活性物質とを必須成分として含有し、更に、光触媒活性を有する無機化合物等のその他の気体分子吸着活性物質又は分解活性物質を含有する水性塗料組成物であって、異相構造粒子の最外相がエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体で形成されており、最外相を形成する乳化共重合体のTgが−50〜15℃、内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃、最外相を形成する乳化共重合体のTgと内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30〜135℃である、水性塗料組成物。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水性塗料組成物に関し、より詳しくは、揮発性有機化合物(以下、VOCという。)を殆ど含有せず、低い最低造膜温度(以下、MFTという。)を有しながら、非常に優れた凍結−融解安定性、貯蔵安定性をもち、低温成膜性に優れ、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐雨筋汚染性等の諸物性にも優れた塗膜を形成することが可能であり、更に、高沸点の有機溶剤を殆ど含有しないので、速乾性、作業性にも優れていて屋内外の塗装に用いることができ、特に室内の床や壁面、家具、壁紙等から揮散されるホルムアルデヒド等の有害物質を吸着及び分解することができる塗膜を形成することが可能な水性塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、VOCの配合量や毒性の低減に関する環境規制が厳しくなってきた観点や、省資源の観点から、塗料業界では溶媒として有機溶剤を使用した溶剤型塗料から水を使用した水性塗料への転換が急速になされつつある。その代表的な塗料として水性エマルション塗料を挙げることができる。
【0003】
水性エマルション塗料には固有のMFTがあり、それで、被塗装面の温度がMFTよりも低い場合には、造膜助剤としてVOCを添加しなければ、連続した塗膜を得ることはできない。また、水を分散媒として使用しているので、冬季等には凍結防止剤としてVOCを添加する必要がある。それで、水性エマルション塗料と雖も相当量の揮発性有機溶剤を配合する必要があり、塗料業界では水性エマルション塗料中に必要とされるVOCの配合量を更に減量、削減するために鋭意検討が行われており、多段乳化重合法によって得られる種々の異相構造粒子含有エマルションを含有する種々の塗料組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−164178号公報
【特許文献2】
特開2002−003778号公報
【特許文献3】
特開2002−206067号公報
【特許文献4】
特開2002−256202号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特に室内環境においては、塗料以外のVOC発生源も多く、例えば、床、壁面、天井、家具、壁紙、合板の接着剤部分等に含まれるホルムアルデヒド、可塑剤、難燃剤等からVOCが長期にわたって居住空間に揮散され、人体への悪影響が問題となっている。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を背景になされたものであり、環境汚染や、臭気の発生源となる造膜助剤等のVOCを全く含まず、或いは極少量含有するだけで諸物性に優れた塗膜を形成することができ、更に、住宅建材、家具、壁紙等から大気中に揮散される有害なVOCを吸着・分解する機能を有する塗膜を形成することができ、それでシックハウス症候群を起こさせないので室内に好適に使用することができ、また低いMFTを有しながら優れた凍結−融解安定性、貯蔵安定性をもち、低温成膜性に優れ、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能であり、高沸点の有機溶剤を殆ど含有しないので速乾性、作業性にも優れていて屋内外の塗装に用いることができる水性塗料組成物を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、多段乳化重合法によって得られる特定の異相構造粒子含有エマルション、特定の気体分子吸着活性物質及びその他の特定の気体分子吸着活性物質又は分解活性物質を併用することにより、上記の目的が確実に達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明の水性塗料組成物は、
(a)多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションと、
(b)フライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム、二酸化ケイ素、活性アルミナ、活性白土、シリカゲル、活性炭及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種と
を必須成分として含有し、更に、
(c−1)光触媒活性を有する無機化合物、及び/又は、
(c−2)ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類からなる群より選ばれる少なくとも一種、及び/又は
(c−3)金属ハロゲン化物、金属燐酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩及び金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種
を含有する水性塗料組成物であって、
(1)該異相構造粒子の最外相が、エチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体単位を0.5〜10質量%含有し、且つポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体単位を1〜20質量%含有する乳化共重合体で形成されており、
(2)該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が−50〜15℃であり、
(3)該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相がエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が30〜150℃であり、
(4)該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度と、該内部相の該少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度との差が30〜135℃である、
ことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の水性塗料組成物において必須の成分として用いる異相構造粒子含有エマルションは多段乳化重合法によって調製される。この多段乳化重合法は、エチレン性不飽和単量体を含有する水性乳濁液を形成し、従来から公知の乳化重合法を2段階以上、通常は2〜5段階繰り返し実施して、形成されるエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体が異相構造、即ち、特性の異なる最外相と一相以上の内部相からなる粒子を形成させる多段乳化重合法である。
【0010】
多段乳化重合法の代表例として、エチレン性不飽和単量体を含有する水性懸濁液中に乳化剤及び重合開始剤、更に必要に応じて連鎖移動剤や乳化安定剤等を存在させ、通常60〜90℃の加温下で乳化重合し、この工程を複数段階繰り返して実施する多段乳化重合法を挙げることができる。
【0011】
上記の乳化剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、更には、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又はこれらの化合物の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0012】
上記の重合開始剤として、従来からラジカル重合に一般的に使用されているものが使用可能であり、中でも水溶性のものが好適である。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド、4,4’−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0013】
上記の連鎖移動剤として、例えば、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンや、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2−メチル−t−ブチルチオフェノール、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。これらを適宜使用することによって、塗膜の光沢や、成膜性、不粘着性を制御することができる。
【0014】
上記の乳化安定剤として、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
また、上記の多段乳化重合法として、単量体を一括で仕込む単量体一括仕込み法、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体を水及び乳化剤と予め混合して乳化させておき、この乳濁液を滴下するプレエマルション法、或いは、これらを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0015】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、その異相構造粒子の最外相が、エチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体単位を0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜2質量%含有し、且つポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体単位を1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%含有する乳化共重合体で形成されていることが必須である。このような異相構造粒子含有エマルションは各種の安定性が高いだけでなく、塗膜としたときの表面接触角が低いので、耐汚染性において著しい向上を見ることができる。特に、塗膜の水接触角が70度以下になる場合に耐雨筋汚染性の顕著な向上を見ることができる。
【0016】
従って、本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションを上記の多段乳化重合法で製造する際には、異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体は、最外相を形成するのに用いられるエチレン性不飽和単量体の合計質量を基準にして、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%含有し、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜2質量%含有する必要がある。
【0017】
異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体について、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体が、異相構造粒子の最外相を形成するのに用いられるエチレン性不飽和単量体の合計質量を基準にして1質量%未満である場合には、得られる異相構造粒子含有エマルションの凍結−融解安定性が悪くなる傾向があり、逆に20質量%を超える場合には、得られる異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
【0018】
異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体について、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体が、異相構造粒子の最外相を形成するのに用いられるエチレン性不飽和単量体の合計質量を基準にして0.5質量%未満である場合には、異相構造粒子含有エマルションの乳化共重合時の安定性を始め、得られる異相構造粒子の機械的安定性、化学的安定性等、各種安定性について不十分となる傾向があり、逆に10質量%を超える場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性、耐温水白化性が劣る傾向があるので好ましくない。
【0019】
本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、その異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度(以下、Tgという。)が−50〜15℃、好ましくは−30〜0℃であることが必須であり、従って、異相構造粒子の最外相を形成するための多段乳化重合の最終段階で加えるエチレン性不飽和単量体として、そのような乳化共重合体を形成し得るエチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。
【0020】
また、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃、好ましくは30〜95℃であることが必須であり、従って、異相構造粒子の最外相より内側にある少なくとも一相を形成するために加えるエチレン性不飽和単量体として、そのような乳化共重合体を形成し得るエチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。
【0021】
更に、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgと、該内部相の該少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30〜135℃であることが必須である。
【0022】
尚、本発明に於いて、乳化共重合体のTgは、次のFOX式を用いて計算された値である。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・・+W/Tg
(上記のFOX式は、n種の単量体単位からなる乳化共重合体を構成する各々の単量体についてのホモポリマーのガラス転移温度をそれぞれTg、Tg、・・・・、Tg(K)とし、各々の単量体の質量分率をそれぞれW、W、・・・・、W(W+W+・・・・+W=1)としている。)
【0023】
異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgが−50℃未満である場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐汚染性や耐温水性等が悪くなる傾向があり、逆に15℃を超える場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションの低温時における造膜性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
【0024】
一方、内部相を形成する全ての相の乳化共重合体のTgが30℃未満である場合(即ち、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃であるという条件を満足しない場合)には、そのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性や物理的塗膜強度が低下する傾向があり、逆に150℃を超える場合には、異相構造粒子を製造するための乳化重合反応を制御することが困難となる傾向があるので好ましくない。
【0025】
また、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgと、該内部相の該少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30℃未満である場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物の低温成膜性及びそのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の低粘着性を両立させることが困難になる傾向があり、逆に135℃を超える場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物の成膜性及びそのような異相構造粒子含有エマルションを含む水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の透明性が劣る傾向があるので好ましくない。
【0026】
本発明の水性塗料組成物は、上記の諸条件を満足することにより、造膜助剤や凍結防止剤等のVOCを使用しなくとも、また、使用したとしても水性塗料組成物中のVOCの含有量が1質量%未満となる量の添加で、優れた凍結−融解安定性、貯蔵安定性をもち、低温成膜性に優れ、塗装作業性に優れ、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能である。
【0027】
次に、異相構造粒子含有エマルションの製造に用いるエチレン性不飽和単量体について説明する。
異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体は、前記したように、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分として含有する。
【0028】
そのようなエチレン性不飽和単量体として、例えば、下記の一般式(1)又は(2)で示されるものを挙げることができる。
(1) CH=C(R)−C(=O)−O−(X−O)−R
(2) CH=C(R)−(CH−O−(X−O)−R
(式中、Rは−H又は−CHであり、Rは−H又は炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは−(CH−、−(CH−、又は−CHCH(CH)−であり、mは1〜30の整数であり、nは1〜30の整数である。)
【0029】
これらのエチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸やアリルアルコール等にエチレンオキサド及び/又はプロピレンオキサイドを付加重合反応させた後、必要に応じて、炭素数1〜8個のアルキル基でエーテル化することによって容易に調製することができる。この様なエチレン性不飽和単量体の市販品としては、例えば、商品名「MA−30」、「MA−50」、「MA−100」、[MA−150]、「MPG−130MA」(以上、日本乳化剤株式会社製)、「ブレンマーPE」、「ブレンマーPP」、「ブレンマーAP−400」、「ブレンマーAE−350」、「ブレンマーPEP」(以上、日本油脂株式会社製)等を挙げることができる。
【0030】
また、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体は、前記したように、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分として含有する。このようなエチレン性不飽和単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等を挙げることができる。
【0031】
異相構造粒子の各々の相を形成する乳化共重合体の調製に用いるエチレン性不飽和単量体の量的な主要成分としては、従来からアクリル樹脂の製造に使用されている各種エチレン性不飽和単量体を制限無く使用することができる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、α―クロロエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコールや、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応によって得られるエポキシ基含有単量体やオリゴマー;(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α, α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート含有単量体;その他N−メチロール基を有したN−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、更にはエチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を代表的なものとして挙げることができる。
【0032】
これら共単量体は、前記の通り、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgが−50〜15℃となり、異相構造エマルション粒子の内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが30〜150℃となり、該最外相を形成する乳化共重合体のTgと、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgとの差が30〜135℃となるように、適宜組み合わせて使用すればよい。
【0033】
本発明の水性塗料組成物に用いる異相構造粒子含有エマルションにおいては、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が内部架橋構造を有する乳化共重合体で形成されていることが好ましい。このような粒子内部架橋構造を有する乳化共重合体は、内部架橋構造を有する相を形成させるための多段乳化重合の所定の段階で加えるエチレン性不飽和単量体の一部としてジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体を使用して乳化重合させる方法;乳化重合反応時の温度で相互に反応する官能基を持つ単量体の組合せ、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組合せの官能基を持つエチレン性不飽和単量体を選択含有させた単量体混合物を使用して乳化重合させる方法;加水分解縮合反応の生じる(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシリル基含有エチレン性不飽和単量体を含有させた単量体混合物を使用して乳化重合させる方法;等の方法により製造することができる。
【0034】
本発明の水性塗料組成物は、塗装時等の乾燥段階で各々の異相構造粒子相互間の架橋構造、即ち、粒子間架橋構造を形成し得ることが好ましい。このように粒子間架橋構造を形成し得る代表的な水性塗料組成物は、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体が、該最外相を形成する乳化共重合体の質量を基準にして1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%の、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体単位を含有しており、更に水性塗料組成物中には、前記した(c−2)のヒドラジド類、アゾール類、アジン類とは別に、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物が、該カルボニル基数の0.1〜2.0倍、好ましくは0.3〜1.2倍のヒドラジド基数となる量で存在している水性塗料組成物である。
【0035】
上記のような水性塗料組成物において、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体単位の含有量が、最外相を形成する乳化共重合体の質量を基準にして1質量%未満である場合には、粒子間の架橋が不十分となる傾向があり、一方、25質量%を超える場合にはそのような水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の耐水性が悪くなる傾向がある。
【0036】
また、上記の分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物の配合量が異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体中のカルボニル基数の0.1倍未満のヒドラジド基数となる量で存在している場合には、異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体中のカルボニル基との反応が不十分となり、そのような水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の耐ブロッキング性や塗膜強度が得られにくくなる傾向があり、逆に2.0倍よりも多くしても、そのような水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の塗膜強度、耐ブロッキング性の改善が頭打ちとなる。
【0037】
上記のような粒子間架橋構造を形成し得る代表的な水性樹脂組成物は、代表的な方法として、異相構造粒子の最外相を形成する際に、該最外相を形成する乳化共重合体の質量を基準にして1〜25質量%の、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合させ、一方、水性塗料組成物中に、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物を、該カルボニル基数の0.1〜2.0倍のヒドラジド基数となる量で存在させることにより得られる。このようにして得られた水性塗料組成物は塗装時等の乾燥により粒子間架橋構造を形成する。
【0038】
上記のカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体として、例えば、アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等を挙げることができる。特に、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトンが好ましい。
【0039】
上記のカルボニル基の対となる、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物としては、例えば、カルボジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン2酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、チオカルボジヒドラジド等を挙げることができる。これらの中でも、エマルションへの分散性や水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の耐水性のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが好ましい。
【0040】
本発明の水性塗料組成物が、上記のような“粒子内部架橋構造”を有する水性塗料組成物であるか、又は/且つ“粒子間架橋構造”を形成し得る水性塗料組成物である場合には、そのような水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の強靱性、耐ブロッキング性、不粘着性、耐溶剤性等の性能を大幅に向上させることができる。そのため、これら架橋構造を適宜組み込むことが好ましい。
【0041】
本発明の水性塗料組成物は必須成分として(b)フライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム、二酸化ケイ素、活性アルミナ、活性白土、シリカゲル、活性炭及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する。これら(b)群の物質は多孔質構造を有しており、ホルムアルデヒド等の有害物質を始め、煙草の煙や悪臭の原因となる分子を吸着することができる。
【0042】
上記のフライポンタイトは、代表的には、化学式;
(Zn3−x Al)(Si2−x Al)O(OH)
(式中、xは0〜1.75、好ましくは0.3〜1.0である)で示され、酸化物として表した場合の組成がSiO5〜45モル%、ZnO5〜65モル%、及びAl0〜60モル%であり、微細積層板状結晶構造を有し、平均粒子径が約0.5〜20μmであり、比表面積が約20〜300m/gである微粒子である。この様なフライポンタイトは、特公平4−51485号公報、特公平5−44405号公報等に記載されており、市販品として水澤化学工業社製の商品名「ミズカナイト」等を挙げることができる。
【0043】
上記の活性亜鉛華は粒子径が0.2μm以下であり、通常の亜鉛華に比べて粒子径が小さく、また、比表面積が約50〜150m2/gである微粒子である。市販品としては、正同化学工業社製の商品名「活性亜鉛華アゾー」等を挙げることができる。
【0044】
珪酸マグネシウムとして、代表的には、化学式:
2MgO・6SiO・XH
で示される含水珪酸マグネシウムを挙げることができ、平均粒子径が約1〜20μmである微粒子である。市販品としては、協和化学工業社製の商品名「キョーワード600」や、水澤化学工業社製の商品名「エードプラス」等を挙げることができる。
【0045】
二酸化ケイ素は液体をよく吸収する性質があり、非塗料用途として農薬、研磨剤、濾過剤等として多用されている。塗料用途でも増粘剤やつや消し剤として利用されている。市販品としては、昭和化学工業社製の商品名「ラジオライトF」等を挙げることができる。
【0046】
活性アルミナは、バイヤライト、無定型水和ゲル等のアルミナ水和物を200℃以上で焼成して得られる多孔質の中間アルミナであり、市販品としては、住友化学社製の商品名「KC501」等を挙げることができる。
活性白土は、モンモリナイトと可溶性珪酸とを主成分とする酸性白土を酸で処理し、塩基性成分の一部を溶出させたものであり、市販品としては、水澤化学工業社製の商品名「 Galleon Earth NV 」等を挙げることができる。
シリカゲル、活性炭及びゼオライトは周知であり、任意の市販品を用いることができる。
【0047】
これら(b)群の物質は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもでき、その配合量はアルデヒド類等に対する吸着機能を損なわれない範囲で選択でき、水性塗料組成物の非揮発分の0.1〜85質量%となる量が好ましい。0.1質量%未満の場合にはアルデヒド類等に対する吸着機能が不十分となる傾向があり、85質量%を超える場合にはバインダーとの混合安定性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0048】
本発明の水性塗料組成物中においては、上記の(b)群の物質と光触媒活性を有する無機化合物(c−1)とを併用することが好ましい。光触媒活性を有する無機化合物は太陽光や人工照明から発せられる紫外線により励起されて電子と正孔が生成し、それらが無機化合物表面に移動して強い酸化力を示す。この強い酸化力によってこれに接するホルムアルデヒド等のVOCを分解し、雑菌を死滅させ得る。
【0049】
光触媒活性を有する無機化合物(c−1)として、例えば、PdS、CuS、MoS、WS、SbS、BiS、ZnCdS等の硫化半導体、CdSe、InSe、WSe、HgSe、PbSe、CdTe等の金属カルコゲナイト、更に、TiO、ZnO、WO、CdO、InAgO、MnO、CuO、Fe、V、SnO等の酸化物半導体を挙げることができる。また、GaAs、Si、Se、Cd、Zn等の半導体も用いることができる。これらの光触媒活性を有する無機化合物のうちで、CdS、ZnS、TiO、ZnO、SnO、WOが好ましく、特にTiOが好ましい。これらの光触媒活性を有する無機化合物を構成する半導体の結晶構造については特には制限されない。例えば、TiOは、アナターゼ型、ブルタイト型、ルチル型、アモルファス型等のいずれであってもよい。これらの光触媒活性を有する無機化合物は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0050】
光触媒活性を有する無機化合物はゾルやゲルの状態で使用しても粉粒状態で使用してもよい。光触媒活性を有する無機化合物を粉粒状態で使用する場合には、それらの平均粒子径は光触媒活性及び脱臭効果が損なわれない範囲で選択でき、好ましくは0.01〜25μm、より好ましくは0.05〜10μm程度である。光触媒活性を有する無機化合物の粒子径が上記範囲にある場合には、このような粒子径の無機化合物を含有した水性塗料組成物を用いて得られる塗膜は、粒子による可視光の散乱が極めて少ないので、透明性を失うことがない。特に、塗膜に高度な透明性や平滑性、耐久性が要求される場合には、平均粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。
【0051】
光触媒活性を有する無機化合物の配合量は光触媒活性を損なわれない範囲で選択でき、水性塗料組成物の非揮発分の0.1〜85質量%となる量が好ましい。0.1質量%未満の場合には光触媒活性が不十分となる傾向があり、85質量%を超える場合にはそのような水性塗料組成物の成膜性低下及びバインダーの劣化を促進する傾向があるので好ましくない。
【0052】
また、本発明の水性塗料組成物中においては、異相構造粒子相互間の架橋構造を形成するのに用いる分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物とは別に、アルデヒド類を化学的に吸着できるヒドラジド類、アゾール類及びアジン類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(c−2)を併用することも好ましい。
【0053】
上記のヒドラジド類として、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物を挙げることができる。モノヒドラジド化合物の具体例として、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド類を挙げることができる。分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物の例としては、前記で異相構造粒子相互間の架橋構造を形成するのに用いる分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物の例示で列挙したジヒドラジド類を同様に挙げることができる。分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物の具体例として、ポリアクリル酸ヒドラジド等を挙げることができる。上記ヒドラジド化合物は1種を単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0054】
上記のアゾール類及びアジン類として、分子中に異項原子として窒素原子を2個又は3個以上有し、且つ該窒素原子の少なくとも2個が隣接している公知の5員又は6員の複素環化合物を広く使用することができる。これらの複素環化合物には、炭素原子数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル)、1又は2個以上の置換基を有していてもよいアリル基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリルアミノ基、メルカプト基、エステル基、カルボキシル基、ベンゾトリアゾール基等の置換基が1個又は2個以上置換していてもよい。
【0055】
上記のアゾール類として、例えばジアゾール類、トリアゾール類、チアジアゾール類、テトラゾール類等を挙げることができる。ジアゾール類の具体例として、3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、3−フェニル−6−ピラゾロン、3−メチル−1−(3−スルホフェニル)−5−ピラゾロン等のピラゾロン類、ピラゾール、3−メチルピラゾール、1,4−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3−アミノピラゾール、5−アミノ−3−メチルピラゾール、3―メチルピラゾール−5−カルボン酸、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸メチルエステル、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸エチルエステル、3,5−メチルピラゾールジカルボン酸等のピラゾール類等を挙げることができる。
【0056】
トリアゾール類の具体例として、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オン、ウラゾール(3,5−ジオキシ−1,2,4−トリアゾール)、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジン、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0057】
アジン類として、ジアジン類、トリアジン類、ピリダジン類等を挙げることができ、特にピリダジン類を使用することが好ましい。ピリダジン類の具体例として、例えば、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、4,5−ジクロロ−3−ピリダジン、マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン等を挙げることができる。
【0058】
これらのヒドラジド類、アゾール類及びアジン類中でも、アゾール類が好ましく、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール等のトリアゾール類、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類及び3−メチル−5−ピラゾロン等のピラゾロン類が好適に使用できる。
【0059】
これらのヒドラジド類、アゾール類及びアジン類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(c−2)は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもでき、その配合量はアルデヒド類等に対する吸着機能を損なわれない範囲で選択でき、水性塗料組成物の非揮発分の0.1〜35質量%となる量が好ましい。0.1質量%未満の場合にはアルデヒド類等に対する吸着機能が不十分となる傾向があり、35質量%を超える場合にはそのような水性塗料組成物を用いてられる塗膜の耐水性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0060】
更に、本発明の水性塗料組成物中においては、ホルムアルデヒド等を化学的に吸着・分解する機能を有する金属ハロゲン化物、金属燐酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩及び金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(c−3)を配合することが好ましい。より好ましくは、ホルムアルデヒド等のVOCの吸着能が相乗的に向上させるために(c−1)群及び/又は(c−2)群と併用することが好ましい。
【0061】
金属ハロゲン化物として、金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物を挙げることができる。金属フッ化物として、フッ化アンチモン、フッ化カリウム、フッ化銀、フッ化スズ、フッ化バナジウム等を挙げることができる。金属塩化物として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム等のアルカリ土類金属塩化物、塩化亜鉛、塩化アンチモン、塩化アルミニウム、塩化セリウム、塩化チタン、塩化マンガン、塩化リチウム、塩化タングステン等を挙げることができる。同様に、金属臭化物として、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム等のアルカリ土類金属臭化物、臭化亜鉛、臭化アルミニウム、臭化ニッケル、臭化リチウム、臭化タングステン等を挙げることができる。金属ヨウ化物として、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等のアルカリ土類金属ヨウ化物、ヨウ化マンガン、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化銀、ヨウ化リチウム、ヨウ化コバルト等を挙げることができる。
【0062】
金属燐酸塩として四価金属の燐酸塩を用いることが好ましく、燐酸塩を形成する四価金属は、四価の金属である限り、周期表における族については特には制限されない。四価金属として周期表4族元素のチタン、ジルコニウム、ハフニウム等や、周期表14族元素のゲルマニウム、スズ、鉛を挙げることができる。特に、チタン、ジルコニウム、スズの燐酸塩が好ましい。また、燐酸塩を形成する燐酸として種々の燐酸、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三燐酸、四燐酸等を挙げることができる。また、燐酸塩には、オルトリン酸水素塩等の燐酸水素塩も含まれる。
【0063】
金属硝酸塩の具体例として、硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム等を挙げることができる。
金属硫酸塩として、具体例として、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンチモン、硫酸カリウム、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸カルシウム、硫酸チタンを挙げることができる。
【0064】
金属亜硫酸塩の具体例として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アルミニウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等を挙げることができる。
【0065】
金属水酸化物としては二価金属の水酸化物が好適である。二価金属として、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素、クロム、モリブデン等の周期表6族元素、マンガン等の周期表7族元素、鉄、ルテニウム等の周期表8族元素、コバルト、ロジウム等の周期表9族元素、ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素、銅等の周期表11族元素、亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素等を挙げることができる。好ましい二価金属として、遷移金属、例えば、銅、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等を挙げることができる。これらの二価金属の水酸化物は、通常、弱酸性乃至弱アルカリ性領域で水に不溶性又は難溶性である。また、これらの水酸化物は結晶質であってもよいが、好ましくは非晶質である。
【0066】
これらの金属ハロゲン化物、金属燐酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩及び金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(c−3)は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもでき、その配合量はアルデヒド類等に対する吸着機能を損なわれない範囲で選択でき、水性塗料組成物の非揮発分の0.1〜35質量%となる量が好ましい。0.1質量%未満の場合にはアルデヒド類等に対する吸着機能が不十分となる傾向があり、35質量%を超える場合にはそのような水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の平滑性、塗装作業性等が低下する傾向があるので好ましくない。
【0067】
本発明の水性塗料組成物においては、多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルション(a)に加えて、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート基を有する化合物、アジリジン環を有する樹脂、オキサゾリン環を有する樹脂及び、カルボジイミド基を有する樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を、(a)成分中の異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして、0.1〜95質量%、好ましくは1〜30質量%となる量で配合することができる。
【0068】
本発明の水性塗料組成物に、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート基を有する化合物、アジリジン環を有する樹脂、オキサゾリン環を有する樹脂及びカルボジイミド基を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を配合することによって、耐候性、耐水性、密着性、光沢、不粘着性、塗膜強度等の諸物性が更に改善された塗膜を得ることができる。上記の群から選ばれる樹脂の配合量が、(a)成分中の異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.1質量%未満である場合には、それらの諸物性の更なる改善効果が期待できず、逆に95質量%を超える場合には、そのような組成物の低温成膜性、及び形成される塗膜のクリアー性、耐アルカリ性等が劣る傾向があるので好ましくない。
【0069】
上記のエポキシ樹脂として、エポキシ基含有アルコキシシラン、アルキルグリシジルエーテル及びエステル、シクロエポキシ化合物、ビスフェノールA系及びビスフェノールF系の低分子量エポキシ樹脂、或いはこれらの乳化物等を挙げることができ、市販品としては、例えば、商品名「EA1」、「EA2」、「EA20」(以上、カネボウNSC株式会社製)等を挙げることができる。
【0070】
上記のアミノ樹脂として、ブチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化シクロヘキシルベンゾグアナミン樹脂、或いはこれらの水溶化物等を挙げることができる。
【0071】
上記のイソシアネート基を有する化合物としては二個以上のイソシアネート基を分子内に有するものであれば特には限定されない。上記のイソシアネート基を有する化合物の具体例として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、及び、これらジイソシアネートの誘導体であるトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、イソシアヌレート体等のアダクトポリイソシアネート化合物、上記のイソシアネート基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法で単独重合させたもの、或いは他のエチレン性不飽和単量体と共重合させたもの等、或いは、これらの乳化物を挙げることができ、市販品として、商品名「アクアネートAQシリーズ」(日本ポリウレタン工業株式会社製)等を例示することができる。
【0072】
上記のアジリジン環を有する樹脂として、(メタ)アクリル酸−2−アリジニルエチル等のアジリジニル基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法を用いて単独重合させたもの、或いは、他の不飽和単量体と共重合させたものを使用することが可能である。
【0073】
上記のオキサゾリン環を有する樹脂として、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法を用いて単独重合させたもの、或いは、他の不飽和単量体と共重合させたものを使用することができ、市販品としては、商品名「エポクロスWS500」、「エポクロスK201E」(以上、日本触媒株式会社製)等を挙げることができる。
【0074】
カルボジイミド基を有する樹脂として種々のものが知られており、例えば、特開平6−56950号公報、特開平9−77839号公報等に記載の製造方法によって得られるものを使用することができ、市販品としては、商品名「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(以上、日清紡株式会社製)等を挙げることができる。
尚、異相構造粒子含有エマルション(a)成分と、上記の樹脂成分との反応を高める目的で、適宜触媒を使用することももちろん可能である。
【0075】
更に、本発明の水性塗料組成物においては、多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルション(a)に加えて、重量平均分子量1000〜50000の水溶性樹脂を配合することもできる。該水溶性樹脂を、異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.5〜40質量%、好ましくは2〜20質量%となる量で配合することによって、そのような水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の光沢、耐水性、付着性を向上させることができる。該水溶性樹脂の配合量が異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.5質量%未満である場合には、上記のような添加効果が得られず、逆に40質量%を超える場合には、その様な水性塗料組成物を用いて得られる塗膜の耐アルカリ性、耐水性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0076】
本発明の水性塗料組成物で用いることのできる水溶性樹脂として、前記のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含む単量体混合物を公知の方法で重合した後、アミン等の中和剤で中和し、その後水溶化して得られたもの、前記のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含む単量体混合物を公知の方法で重合した後、酸等で中和し、その後水溶化したもの、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
尚、本発明の水性塗料組成物のMFTが30℃を超える場合には造膜助剤をより多く配合する必要があり、それで、本発明の水性塗料組成物はMFTが30℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。水性塗料組成物のMFTが造膜助剤や、可塑剤の添加なしで30℃以下となるように、エチレン性不飽和単量体を適宜組み合わせて多段乳化重合法によって異相構造粒子含有エマルションを製造すればよい。
【0078】
本発明の水性塗料組成物においては、pH調整剤として、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等を配合することも可能である。また、塗料に一般的に使用されているベンガラ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等の各種着色顔料や、体質顔料が特に制限無く利用できる。同様に、塗料としての各機能を付与させるために、増粘剤、分散剤、沈降防止剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜添加してもよい。
【0079】
この様にして得られた水性塗料組成物は各種の無機質素材、金属素材、木材素材、プラスチック素材等に適用でき、自然乾燥させるか、若しくは、50℃以上の温度で強制乾燥させることにより優れた塗膜を形成することが可能である。
また、本発明の水性塗料組成物は、建築物、一般家屋、車両等の気密性が高い環境で用いる素材に塗装しても、塗料を起源とする揮発性有機化合物の発生が全くないか、若しくは極少量の発生に止めることができ、並びに住宅建材、家具、壁紙等から大気中に揮散される有害なVOCを吸着・分解する機能を有する塗膜を形成することができるので、シックハウス症候群を起こさせず、室内に好適に使用することができ、住人や、使用者の健康、自然環境に全く負担が掛からない。
【0080】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の記載において「部」及び「%」は質量基準で示す。
【0081】
<異相構造粒子含有エマルション(a1)〜(a2)、(a4)〜(a5)の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)(「ハイテノールN−08」、第一工業製薬株式会社製)3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、1段目乳化重合として、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表で示す組成(部)で含む乳化物(A)を3時間かけて連続滴下し、滴下終了後、1時間かけて反応槽内の温度を75℃まで下げた。続いて、2段目乳化重合として、予め別様基にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表で示す組成(部)で含む乳化物(B)を4時間かけて連続滴下した。滴下終了後75℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH8.5に調整して、異相構造粒子含有エマルション(a1)〜(a2)、(a4)〜(a5)を得た。
【0082】
<エマルション(a3)の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)(「ハイテノールN−08」、第一工業製薬株式会社製)3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、予め別容器にて撹拌混合しておいた下記の第1表に示す各成分を第1表に示す組成(部)で含む乳化物(A)を3時間かけて連続滴下した。滴下終了後80℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH8.5に調整し、エマルション(a3)を得た。
【0083】
尚、第1表で示した原料の略号は下記の意味を有し、括弧( )内の数値は、Tgを計算するのに用いた各単量体のホモポリマーのTgを示し、また、乳化剤として上記「ハイテノールN−O8」を用いた。
MMA:メタクリル酸メチル(105℃)
BA:アクリル酸ブチル(−54℃)
AA:アクリル酸(106℃)
DVB:ジビニルベンゼン(116℃)
DAAM:ジアセトンアクリルアマイド(65℃)
PEG:ポリエチレングリコール鎖含有モノマー(−50℃)
C=C(CH)−C(=O)−O(CHCHO)
【0084】
本発明の範囲内のエマルション(a1)及び(a2)中に含有される異相構造粒子、本発明の範囲外のエマルション(a4)及び(a5)中に含有される異相構造粒子、及び本発明の範囲外のエマルション(a3)中に含有される粒子の各々のTg、エマルション(a1)〜(a5)のMFT及び凍結−融解安定性をそれぞれ下記方法で試験し、下記評価方法で評価した。それらの結果を第1表に示す。
【0085】
<Tg>
第1表で示したTgについて、[内部相/最外相(℃)]は、「1段目乳化物を単独で乳化重合した場合に得られる共重合体のTg/2段目乳化物を単独で乳化重合した場合に得られる共重合体のTg」であり、[トータル(℃)]は「1段目乳化物と2段目乳化物との混合物を1段で乳化重合した場合に得られる共重合体のTg」である。
【0086】
<MFT>
0〜40℃の範囲で温度勾配をつけたアルミ板上に膜厚0.2mmのアプリケーターでエマルションを塗布し、乾燥させた後、塗膜の状態を目視で観察し、連続塗膜を形成している境界位置の温度をMFTとした。但し、境界位置が40℃を超える場合には、40〜80℃の範囲で温度勾配を付けて同様にしてMFTを求めた。
【0087】
<凍結−融解安定性>
エマルション(a1)〜(a5)をそれぞれ別個の1リットル内面コート缶にほぼ満たしてから密閉し、−20℃の冷凍庫に24時間貯蔵し、凍結させた。
次いで冷凍庫から取り出し、20℃で24時間放置した後、撹拌してエマルションの状態を下記の評価基準で目視で判定すると共に、凍結前後の粘度変化を調べ、またガラス板に6ミルアプリケーターで塗装して、その塗膜外観を下記の評価基準で目視で判定した。
【0088】
(評価基準)
○:凝固物の発生及び粘度変化が無く、塗膜外観も良好である。
△:粘度の変動があったが、凝固物の発生は無く、塗膜外観も良好である。
×:凝固物の発生或いは凝集・ゲル化が見られる。
【0089】
<水溶性樹脂の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、エチレングリコールモノブチルエーテル150部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら70℃まで、昇温した後、メタクリル酸メチル100部、スチレン180部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、アクリル酸30部、及びt−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(「カヤエステルO」、化薬アクゾ株式会社製)の混合物を3時間かけて連続滴下した。滴下終了後70℃で4時間撹拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、反応器より取り出し、100℃で減圧乾燥させてペレット状の樹脂固形物を得た。更に、この樹脂ペレットを25%アンモニア水及び蒸留水で溶解し、固形分40%、重量平均分子量10000の水溶性樹脂を得た。
【0090】
<顔料ペーストの調製>
ステンレス容器に上水243部、ルチル型二酸化チタンホワイト250部、ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤1部、特殊カルボン酸系界面活性剤(商品名「タモール731」、R&H社製)5部、及び変性シリコーン系消泡剤 (商品名「ディフォーマー777」、サンノプコ社製)1部を入れ、攪拌機にて30分間撹拌して顔料ペーストを製造した。
【0091】
実施例1〜3及び比較例1〜4
下記の第2表に示す各成分を第2表に示す組成(部)で含む各々の水性塗料組成物を調製した。それらの水性塗料組成物について低温成膜性、それらの水性塗料組成物から得られた塗膜の60°光沢、耐雨筋汚染性、耐温水白化性、不粘着性、ホルムアルデヒド吸着性及び光分解作用性をそれぞれ下記の方法で試験し、評価した。それらの結果を第2表に示す。
【0092】
尚、第2表で示した原料の略号は下記の意味を有する。
CDH:カルボジヒドラジド
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
AQ−200:ポリイソシアネート樹脂;「アクアネートAQ−200」(日本ポリウレタン工業株式会社製)
【0093】
<低温成膜性>
各々の水性塗料組成物を5℃の低温恒温室中で6ミルアプリケーターを用いてガラス板に塗装し、1日放置した。得られた塗膜の外観を下記の評価基準で目視で判定した。
尚、比較例2及び4においては成膜助剤を添加する以前に試験を実施した。
【0094】
(評価基準)
○:マッドクラック、マイクロクラック等が全く見受けられず、完全に成膜している。
×:局所的に、若しくは、全面的にクラックや剥離が見られる。
【0095】
<初期60°光沢>
カチオン性エマルションシーラーを塗装したフレキシブルボード上に、各々の水性塗料組成物を乾燥膜厚60μmとなるように塗布し、20℃で7日間乾燥させて塗装板テストピースを作製した。尚、MFTが20℃以下であった比較例2及び4の水性塗料組成物については、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「CS−12」、チッソ株式会社製)を撹拌しながら徐々に添加し、MFTを10℃以下にしてから上記のような塗装板テストピースを作製した。
上記のようにして得られた各々の塗装板テストピースについて、JIS K 5600−4−7に準拠し、測定角度を60°として鏡面光沢度(初期60°光沢)を測定した。
【0096】
<耐雨筋汚染性>
各々の水性塗料組成物を300mm×100mm×0.5mmのアルミニウム板の片面にミニローラーで均一に塗装し、23℃の恒温室中で7日間乾燥させた。次いで、これらの塗装板の300mm長さ方向の中間点で、塗装面が外側にくるようにして内角120°となるように折り曲げて試験板を作製した。これらの試験板を、その折り曲げられた一方の部分の150mm方向が地面に対して垂直になり、その上にその折り曲げられた残りの部分が来るようにして(即ち、その残りの部分が塗装面を上にして地面とは120°の角度となるようにして)屋外に設置した。1年後にその外観を下記評価基準で目視で評価した。
【0097】
(評価基準)
○:雨だれによる縦筋が殆どついていない。
△:雨だれによる縦筋が薄くついていたが、軽く擦ると消える。
×:雨だれによる縦筋が幾筋も黒くくっきりとついており、軽く擦っても筋は消えない。
【0098】
<耐温水白化性>
各々の水性塗料組成物に黒色顔料を添加し、マンセル値でN3〜N2になるグレー色の水性塗料組成物を得た。得られたグレーの水性塗料組成物を用いて、上記の<初期60°光沢>で作製した塗装板テストピースと同様の手法で塗装板テストピースを作製し、50℃の温水中に24時間浸し、塗膜の白化度合いを下記評価基準で目視判定した。常温で成膜しない水性塗料組成物は、上記と同様に造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを添加し、上記と同様に試験紙、評価した。
【0099】
(評価基準)
○:塗膜には白化や変色が全く見られない。
△:塗膜が局所的に白みがかっている。
×:塗膜の全面に白みがかった変色が見られる。
【0100】
<不粘着性>
上記の<初期60°光沢>で作製した塗装板テストピースと同様の手法で塗装板テストピースを作製し、その塗膜表面に、カーボン紙のカーボン部と塗膜が接触するようにしてカーボン紙を載せ、更にその上に分銅を載せた。分銅は0.5kg/cm相当の荷重となるようにした。24時間荷重をかけた後、カーボン紙をゆっくりと剥がし、塗膜外観を下記の評価基準で目視で評価した。常温で成膜しない水性塗料組成物は、上記と同様に造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを添加し、上記と同様に試験紙、評価した。
【0101】
(評価基準)
◎:全くカーボンが付着していない。
○:荷重のかかっていた面積の30%未満にカーボンが付着している。
△:荷重のかかっていた面積の30%以上、70%未満にカーボンが付着している。
×:荷重のかかっていた面積の70%以上にカーボンが付着している。
【0102】
<ホルムアルデヒド吸着試験>
各々の水性塗料組成物を70×150mmのアルミ板に塗装質量2gとなるように刷毛で2度塗りし、23℃で7日間乾燥させた。乾燥後、そのアルミ板を5リッターのテドラーバッグに入れ、次いでバッグ内にホルムアルデヒドを濃度が20ppmとなるように封入した。封入1時間後、テドラーバッグ内の残存ホルムアルデヒド濃度を「北川式ガス検知管」(光明理化化学工業株式会社製)を用いて測定した。
【0103】
<光分解作用性>
各々の水性塗料組成物を70×150mmのアルミ板に塗装質量2gとなるように刷毛で2度塗りし、23℃で7日間乾燥させた。乾燥後、そのアルミ板を5リッターのテドラーバッグに入れ、次いでバッグ内にホルムアルデヒドを濃度が5ppmになるように封入し、暗所に3日間静置した。静置後、バッグ内のホルムアルデヒドの濃度を「北川式ガス検知管」を用いて測定した。その後、試験板をテドラーバッグに入れたままで、ブラックライトを用いて紫外線照射した。紫外線照射強度は1mW/cmとなるように調製し、24時間照射を行った。照射後、テドラーバッグ内のホルムアルデヒド濃度を適応した測定範囲内の検知管を用いて濃度測定し、ブラックライト照射前のホルムアルデヒド濃度をA、照射後のホルムアルデヒド濃度をBとして、式〔(A−B)/A〕×100で光分解率を計算した。
【0104】
【表1】
Figure 2004149686
【0105】
【表2】
Figure 2004149686
【0106】
第2表に示すデータから明らかなように、実施例1〜3の水性塗料組成物から得られた塗膜は、優れた塗膜性能を有しており、且つ大気中の有害なVOCを吸着・分解する機能に優れていた。
一方、(b)群の物質を含有しない比較例1、3及び4の水性塗料組成物から得られた塗膜では、大気中の有害なVOCの吸着性が劣っていた。また、異相構造粒子ではなくて均一組成粒子を含有するエマルション(a3)を用いた比較例2の水性塗料組成物では、成膜助剤・可塑剤を含有しないと低温で成膜することができず、成膜助剤を添加して試験を行った場合の不粘着性試験では塗膜に成膜助剤が残存するために不粘着性が著しく劣る結果となり、更に大気中の有害なVOCの吸着性が不十分であった。
【0107】
更に、粒子内部相のTgが0℃、最外相のTgが61℃の異相構造粒子を含有するエマルション(a5)を用いた比較例4の水性塗料組成物から得られた塗膜では、比較例2と同様に低温での成膜性が劣り、残存する成膜助剤の影響で不粘着性が劣る結果となり、更に、エマルション(a5)ではPEG鎖保有モノマーが最外相に共重合していない為に、凍結−融解安定性及び貯蔵安定性が悪く、ゲル化又は、増粘等の粘度変化を起こす結果となり、また塗膜の耐雨筋汚染性が劣っている。
【0108】
【発明の効果】
本発明の水性塗料組成物は、環境汚染や臭気の発生源となる造膜助剤等のVOCを全く含まず、或いは極少量含有するだけで諸物性に優れた塗膜を形成することができ、更に、住宅建材、家具、壁紙等から大気中に揮散される有害なVOCを吸着・分解する機能を有する塗膜を形成することができ、それでシックハウス症候群を起こさせないので室内に好適に使用することができ、また耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐雨筋汚染性等に優れた塗膜を形成することが可能であり、屋内外の塗装に用いることができる。

Claims (6)

  1. (a)多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションと、
    (b)フライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム、二酸化ケイ素、活性アルミナ、活性白土、シリカゲル、活性炭及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種と
    を必須成分として含有し、更に、
    (c−1)光触媒活性を有する無機化合物、及び/又は、
    (c−2)ヒドラジド類、アゾール類及びアジン類からなる群より選ばれる少なくとも一種、及び/又は
    (c−3)金属ハロゲン化物、金属燐酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩及び金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種
    を含有する水性塗料組成物であって、
    (1)該異相構造粒子の最外相が、エチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体単位を0.5〜10質量%含有し、且つポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体単位を1〜20質量%含有する乳化共重合体で形成されており、
    (2)該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が−50〜15℃であり、
    (3)該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相がエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体であって、該内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が30〜150℃であり、
    (4)該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度と、該内部相の該少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度との差が30〜135℃である、
    ことを特徴とする水性塗料組成物。
  2. 異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が内部架橋構造を有するエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体で形成されている請求項1記載の水性塗料組成物。
  3. 異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体が、該最外相を形成する乳化共重合体の質量を基準にして1〜25質量%の、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体単位を含有している請求項1又は2記載の水性塗料組成物。
  4. 水性塗料組成物が、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート基を有する化合物、アジリジン環を有する樹脂、オキサゾリン環を有する樹脂、及びカルボジイミド基を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を、異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.1〜95質量%となる量で追加含有している請求項1、2又は3記載の水性塗料組成物。
  5. 水性塗料組成物が、重量平均分子量1000〜50000の水溶性樹脂を、異相構造粒子の樹脂分質量を基準にして0.5〜40質量%となる量で追加含有している請求項1、2、3又は4記載の水性塗料組成物。
  6. 水性塗料組成物中の揮発性有機化合物の含有量が1質量%未満である請求項1〜5の何れかに記載の水性塗料組成物。
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