JP2004149504A - ビアリール類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物を反応させることを特徴とするビアリール類の製造方法。かかる反応を、例えばタングステン金属、酸化コバルト等の第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物等の存在下に実施することにより、さらに収率よくビアリール類を製造することができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビアリール類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビアリール類は、各種化学製品およびその合成中間体等として極めて重要な化合物であり、一般的には、アリールホウ酸を用いる鈴木カップリング反応、ニッケル触媒およびグリニヤール試薬を用いる反応、アリールヨウ化物を用いるウルマン反応等により製造できることが知られている(例えば非特許文献1参照。)。しかしながら、これらの方法は、いずれも高価な試剤や配位子、触媒を用いており、工業的な観点からは、さらなる改善が望まれていた。
【0003】
一方、上記のような高価な試剤や配位子、触媒を用いないビアリール類の製造方法として、アリールヒドラジン類、酸化剤およびアリール化合物を反応させる方法が提案されている。例えば酸化剤として、酸化銀を用いる方法(例えば非特許文献2参照。)、酢酸マンガンを用いる方法(例えば非特許文献3参照。)、酸化水銀を用いる方法(例えば非特許文献4参照。)、バリウムフェレートを用いる方法(例えば非特許文献5参照。)、酢酸鉛を用いる方法(例えば非特許文献6参照。)、超酸化カリウムを用いる方法(例えば非特許文献7参照。)等が報告されているが、いずれの酸化剤も比較的高価である上、毒性を有していたり、反応後の後処理が面倒であったりするため、工業的により有利な方法の開発が望まれていた。
【0004】
【非特許文献1】
Comprehensive Organic Synthesis,3,499(1991)
【非特許文献2】
J.Chem.Soc.,2512(1957)
【非特許文献3】
J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,3042(2001)
【非特許文献4】
Liebigs Ann.Chem.,190,102(1878)
【非特許文献5】
Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,2185(1988)
【非特許文献6】
J.Chem.Soc.(C),1663(1969)
【非特許文献7】
Aust.J.Chem.,37,2499(1984)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者は、ビアリール類を、工業的により有利に製造する方法について鋭意検討したところ、安価で、取扱いが容易で、しかも反応後には無害な水となるクリーンで優れた酸化剤である過酸化水素を用いることにより、アリールヒドラジン類、またはアリールヒドラジン類とアリール化合物とから、ビアリール類を製造することができること、さらに、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の存在下に前記反応を実施することにより、ビアリール類の収率が向上することを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(1)アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物を反応させることを特徴とするビアリール類の製造方法、(2)前記(1)に記載の反応を、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の存在下に実施するビアリール類の製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
まず、アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物を反応させて、ビアリール類を製造する方法および前記反応を、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の存在下に実施する方法について説明する。
【0008】
アリールヒドラジン類としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環や、例えばピリジン環、ピリミジン環、チアゾール環、オキサゾール環等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を芳香環の構成元素として含む複素芳香環に一つまたは二つ以上のヒドラジノ基が結合したものであればよく、芳香環または複素芳香環上にヒドラジノ基以外の置換基を有していてもよい。
【0009】
かかるアリールヒドラジン類としては、例えば一般式(1)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素芳香族基を表わす。)
で示されるアリールヒドラジン類が挙げられる。
【0010】
芳香環または複素芳香環上に有していてもよいヒドラジノ基以外の置換基としては、例えばハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいカルボアルコキシ基、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基、スルホン基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。なお、これら置換基のうち、隣接する置換基同士が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。
【0011】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基およびこれらアルキル基が、前記ハロゲン原子、後述する置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいカルボアルコキシ基、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基等の置換基で置換された、例えばブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、カルボメトキシメチル基等が挙げられる。
【0012】
置換されていてもよいアルコキシ基としては、前記置換されていてもよいアルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基およびこれらアルコキシ基が、例えば前記ハロゲン原子、アルコキシ基、後述する置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいカルボアルコキシ基、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基等の置換基で置換された、例えばクロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0013】
置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等およびこれらフェニル基、ナフチル基等を構成する芳香環が、前記ハロゲン原子、前記置換されていてもよいアルキル基、前記置換されていてもよいアルコキシ基、アリール基、後述する置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいカルボアルコキシ基、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基等の置換基で置換された、例えば2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基等が挙げられる。
【0014】
置換されていてもよいアリールオキシ基としては、前記置換されていてもよいアリール基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0015】
置換されていてもよいアラルキル基としては、前記置換されていてもよいアルキル基と前記置換されていてもよいアリール基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。置換されていてもよいアラルキルオキシ基としては、前記置換されていてもよいアルコキシ基と前記置換されていてもよいアリール基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
置換されていてもよいアシル基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアルキル基、カルボニル基と前記置換されていてもよいアリール基およびカルボニル基と前記置換されていてもよいアラルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばカルボメチル基、カルボエチル基、カルボフェニル基、カルボベンジル基等が挙げられる。
【0017】
置換されていてもよいカルボアルコキシ基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアルコキシ基とから構成されるものが、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアリールオキシ基とから構成されるものが、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアラルキルオキシ基とから構成されるものがそれぞれ挙げられ、例えばカルボメトキシ基、カルボエトキシ基、カルボフェノキシ基、カルボベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
かかるアリールヒドラジン類としては、例えばフェニルヒドラジン、2−フルオロフェニルヒドラジン、3−フルオロフェニルヒドラジン、4−フルオロフェニルヒドラジン、2−クロロフェニルヒドラジン、3−クロロフェニルヒドラジン、4−クロロフェニルヒドラジン、2−ブロモフェニルヒドラジン、3−ブロモフェニルヒドラジン、4−ブロモフェニルヒドラジン、3−シアノフェニルヒドラジン、4−シアノフェニルヒドラジン、2−カルボメトキシフェニルヒドラジン、2−カルボ−n−ブトキシフェニルヒドラジン、3−カルボメトキシフェニルヒドラジン、4−カルボメトキシフェニルヒドラジン、2−ニトロフェニルヒドラジン、3−ニトロフェニルヒドラジン、4−ニトロフェニルヒドラジン、2−メチルフェニルヒドラジン、3−メチルフェニルヒドラジン、4−メチルフェニルヒドラジン、2−メトキシフェニルヒドラジン、3−メトキシフェニルヒドラジン、4−メトキシフェニルヒドラジン、2−トリフルオロメチルフェニルヒドラジン、3−トリフルオロメチルフェニルヒドラジン、4−トリフルオロメチルフェニルヒドラジン、
【0019】
2−ヒドロキシフェニルヒドラジン、3−ヒドロキシフェニルヒドラジン、4−ヒドロキシフェニルヒドラジン、2−カルボキシフェニルヒドラジン、3−カルボキシフェニルヒドラジン、4−カルボキシフェニルヒドラジン、4−(クロロメチル)フェニルヒドラジン、2−スルホフェニルヒドラジン、3−スルホフェニルヒドラジン、4−スルホフェニルヒドラジン、4−スルホンアミドフェニルヒドラジン、4−スルホン酸エチルフェニルヒドラジン、3−メチルスルホンフェニルヒドラジン、2,3−ジメチルフェニルヒドラジン、3,5−ジメチルフェニルヒドラジン、3,5−ジニトロフェニルヒドラジン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、2,4−ジクロロフェニルヒドラジン、2,6−ジエチルフェニルヒドラジン、2,5−ジフルオロフェニルヒドラジン、3,4−ジフルオロフェニルヒドラジン、2,4−ジフルオロフェニルヒドラジン、3,5−ジフルオロフェニルヒドラジン、3−クロロ−4−フルオロフェニルヒドラジン、2−クロロ−4−メチルフェニルヒドラジン、2−カルボキシ−3−クロロフェニルヒドラジン、2−カルボメトキシ−3−クロロフェニルヒドラジン、4−シアノ−2−クロロフェニルヒドラジン、4−メチル−3−(クロロメチル)フェニルヒドラジン、4−メチル−3−(ブロモメチル)フェニルヒドラジン、4−メチル−3−(カルボメトキシメチル)フェニルヒドラジン、4−メチル−3−(カルバモイルメチル)フェニルヒドラジン、4−メチル−3−シアノフェニルヒドラジン、4−メチル−3−アセチルフェニルヒドラジン、3−スルホンアミド−2−アセチルアミノフェニルヒドラジン、
【0020】
2,3,5−トリクロロフェニルヒドラジン、3,4,5−トリクロロフェニルヒドラジン、2,4−ジフルオロ−5−ニトロフェニルヒドラジン、2,3,5,6−テトラフルオロフェニルヒドラジン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルヒドラジン、2−ベンジルフェニルヒドラジン、3−ベンジルオキシフェニルヒドラジン、4−ベンジルオキシフェニルヒドラジン、2−アミノフェニルヒドラジン、3−アミノフェニルヒドラジン、4−アミノフェニルヒドラジン、1−ナフチルヒドラジン、2−ナフチルヒドラジン、4−ヒドラジノ−1,8−ナフタル酸無水物、2−メチル−2−(3−フルオロ−4−ヒドラジノフェニル)マロン酸ジエチル、4−クロロ−3−ヒドロキシ−2−フルオロフェニルヒドラジン、4−トリフルオロメチル−2,6−ジクロロフェニルヒドラジン、5−メトキシ−2,4−ジクロロフェニルヒドラジン、
【0021】
2−ヒドラジノピリジン、6−ブロモ−2−ヒドラジノピリジン、2−ヒドラジノピリミジン、4−トリフルオロメチル−2−ヒドラジノピリミジン、2−エトキシ−4−フルオロ−6−ヒドラジノピリミジン、2,4−ジメトキシ−6−ヒドラジノピリミジン、2−ヒドラジノキノリン、4−ニトロ−2−ヒドラジノキノリン、2−ヒドラジノベンゾチアゾール、2−ヒドラジノベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−4−メチルベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−メチルベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−6−メチルベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−7−メチルベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−4−エチルベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−イソプロピルベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−4−メトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−メトキシベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−6−メトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−7−メトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5,7−ジメトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−4−エトキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−ベンジルオキシベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−7−ベンジルオキシベンゾチアゾール、
【0022】
2−ヒドラジノ−4−クロロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−クロロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−6−クロロベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−4−フルオロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−フルオロベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−6−フルオロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5,7−ジクロロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−4,6−ジクロロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5,6−ジクロロベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−5,7−ジフルオロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−4,6−ジフルオロベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5,6−ジフルオロベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−5−(2−カルボメトキシエチル)ベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−6−ブロモベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−トリフルオロメチルベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−6−トリフルオロメチルベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−5−シアノベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−6−シアノベンゾチアゾール、2−ヒドラジノ−5−ニトロベンゾキサゾール、2−ヒドラジノ−6−ニトロベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0023】
かかるアリールヒドラジン類は、例えば塩酸、硫酸等の酸との付加塩であってもよい。
【0024】
過酸化水素は、通常水溶液として用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水もしくは有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行なった後用いられる。過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に過酸化水素水を蒸留処理する等の手段により、調製することができる。
【0025】
過酸化水素の使用量は、アリールヒドラジン類に対して、通常1モル倍以上であり、その使用量の上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、アリールヒドラジン類に対して、10モル倍以下である。
【0026】
アリール化合物としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環、例えばピリジン環等のヘテロ原子を構成元素に含む複素芳香環を有する化合物であって、該芳香環、該複素芳香環上に水素原子を少なくとも一つ有しているものであれば特に限定されない。該芳香環、該複素芳香環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば前記ハロゲン原子、前記置換されていてもよいアルキル基、前記置換されていてもよいアルコキシ基、前記置換されていてもよいアリール基、前記置換されていてもよいアリールオキシ基、前記置換されていてもよいアラルキル基、前記置換されていてもよいアラルキルオキシ基、前記置換されていてもよいアシル基、前記置換されていてもよいカルボアルコキシ基、前記置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、前記置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。また、これら置換基のうち、隣接する置換基が結合して、その結合炭素原子を含む環を形成してもよい。
【0027】
かかるアリール化合物としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、シアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、1−シアノ−4−クロロベンゼン、安息香酸、安息香酸メチル、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、4−tert−ブチル安息香酸メチル、アニリン、ニトロベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、メトキシベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピリジン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。
【0028】
アリール化合物の使用量が少ないと、アリールヒドラジン類の自己カップリング反応が進行しやすいため、アリール化合物の使用量は、アリールヒドラジン類に対して、通常10モル倍以上である。その上限は特になく、例えば反応条件下で液体のアリール化合物であれば、溶媒を兼ねて、大過剰量用いてもよい。
【0029】
アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物の反応は、通常反応に不活性な溶媒中で実施される。かかる溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、例えばシクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、アリールヒドラジン類に対して、100重量倍以下である。また、前記したように、アリール化合物が、反応条件下で液体であれば、該アリール化合物を溶媒として用いてもよい。
【0030】
反応温度があまり低いと反応が進行しにくく、また反応温度があまり高いと、原料のアリールヒドラジン類や生成するビアリール類の分解等副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、0〜200℃の範囲である。
【0031】
アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物の反応は、通常その三者を接触、混合することにより実施され、その混合順序は制限されないが、過酸化水素とアリール化合物の混合物中に、アリールヒドラジン類を加えることが好ましい。
【0032】
反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0033】
本反応は、反応の進行に伴って水が副生するため、反応系内に存在する水を除去しながら反応を実施するか、または相間移動触媒の存在下に反応を実施することが好ましい。反応系内に存在する水を除去しながら反応を実施する方法としては、例えば無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水塩化カルシウム、メタホウ酸等の脱水剤を反応系内に共存させる方法、例えば共沸脱水装置を用いる方法等が挙げられる。
【0034】
相間移動触媒としては、相間移動能があるものであれば特に制限されず、例えば第四級アンモニウム塩、アミンN−オキシド類、第四級ホスホニウム塩、クラウンエーテル類、ポリエチレングリコール類等が挙げられ、第四級アンモニウム塩またはアミンN−オキシド類が好ましい。
【0035】
第四級アンモニウム塩としては、例えばトリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリオクチルエチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリカプリルメチルアンモニウムクロリド、トリデシルメチルアンモニウムクロリド、トリヘキシルメチルアンモニウムクロリド、トリデシルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムクロリド、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピコリニウムクロリド等の第四級アンモニウムクロリド類、前記第四級アンモニウムクロリド類を構成する塩素イオンが、臭素イオンに代わった第四級アンモニウムブロミド類、前記第四級アンモニウムクロリド類を構成する塩素イオンが、ヨウ素イオンに代わった第四級アンモニウムヨーダイド類、前記第四級アンモニウムクロリド類を構成する塩素イオンが、亜硫酸イオンに代わった第四級アンモニウム亜硫酸塩、前記第四級アンモニウムクロリド類を構成する塩素イオンが、硫酸イオンに代わった第四級アンモニウム硫酸塩、前記第四級アンモニウムクロリド類を構成する塩素イオンが、硫酸水素イオンに代わった第四級アンモニウム硫酸水素塩等が挙げられる。
【0036】
アミンN−オキシド類としては、例えばトリオクチルアミンN−オキシド、ジラウリルメチルアミンN−オキシド、ラウリルジメチルアミンN−オキシド、ステアリルジメチルアミンN−オキシド、トリカプリルアミンN−オキシド、トリデシルアミンN−オキシド、ジメチルドデシルアミンN−オキシド、トリヘキシルアミンN−オキシド、トリドデシルアミンN−オキシド、ベンジルジメチルアミンN−オキシド、ベンジルジエチルアミンN−オキシド等が挙げられる。なお、これらアミンN−オキシド類は、対応するアミン類を反応系内に加え、反応系内で過酸化水素と反応させて調製してもよい。
【0037】
第四級ホスホニウム塩としては、例えばテトラブチルホスホニウムブロミド等が、クラウンエーテル類としては、例えば12−クラウン−4、18−クラウン−6、ベンゾ−18−クラウン−6等が、ポリエチレングリコール類としては、例えばポリエチレングリコール600(平均分子量:600)、ポリエチレングリコール700(平均分子量:700)、ポリエチレングリコール800(平均分子量:800)等がそれぞれ挙げられる。
【0038】
かかる相間移動触媒を用いる場合のその使用量は、アリールヒドラジン類に対して、通常0.0005モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、アリールヒドラジン類に対して、1モル倍以下である。
【0039】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えばチオ硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするビアリール類を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、ビアリール類を取り出すこともできる。取り出したビアリール類は、蒸留、例えばカラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。
【0040】
水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0041】
アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物を反応させることにより、目的とするビアリール類を得ることができるが、かかる反応を、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、金属化合物と略記する。)の存在下に実施することにより、ビアリール類をさらに収率よく製造することができる。
【0042】
第Va族元素金属もしくは化合物としては、例えばバナジウム金属、ニオブ金属、例えば酸化バナジウム、バナジン酸アンモニウム、バナジウムカルボニル錯体等のバナジウム化合物、例えば酸化ニオブ、塩化ニオブ、ニオブカルボニル錯体等のニオブ化合物等が挙げられる。第VIa族元素金属もしくは化合物としては、例えばタングステン金属、モリブデン金属、例えばホウ化タングステン、炭化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステンカルボニル錯体等のタングステン化合物、例えばホウ化モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン、モリブデンカルボニル錯体等のモリブデン化合物等が挙げられる。
【0043】
第VIIa族元素金属もしくは化合物としては、例えばレニウム金属、例えば酸化レニウム、酸化レニウムの錯体、塩化レニウム、例えばメチルレニウムトリオキシド等のアルキルレニウムトリオキシド等のレニウム化合物等が挙げられる。第VIIIa族元素金属もしくは化合物としては、例えばコバルト金属、例えば酸化コバルト、酸化コバルトの錯体、塩化コバルト等のコバルト化合物等が挙げられる。
【0044】
第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物としては、例えば前記バナジウム化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるバナジウム酸化物、前記ニオブ化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるニオブ酸化物等が挙げられる。第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物としては、例えば前記タングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物、前記モリブデン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるモリブデン酸化物等が挙げられる。
【0045】
第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物としては、例えば前記レニウム化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるレニウム酸化物等が挙げられる。第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物としては、例えば前記コバルト化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるコバルト酸化物等が挙げられる。
【0046】
かかる金属化合物のなかでも、タングステン金属、タングステン化合物、コバルト化合物、ニオブ化合物、モリブデン金属、モリブデン化合物、レニウム化合物、タングステン酸化物、コバルト酸化物、ニオブ酸化物、モリブデン酸化物およびこれらの混合物が好適である。またかかる金属化合物は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0047】
第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物(以下、金属酸化物と略記する。)を調製する際に用いる過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いが容易という点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水を用いる場合は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液を用いる場合は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に過酸化水素水を蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0048】
金属酸化物調製に用いる過酸化水素の使用量は、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0049】
金属酸化物の調製は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0050】
金属酸化物の調製は、通常第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素を混合、接触させることにより行われ、その接触効率をより向上させるため、金属酸化物調製液中で、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。また、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素との接触効率を高め、金属酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状等の粒径の小さなものを用いることが好ましい。
【0051】
金属酸化物調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0052】
第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを、水中、有機溶媒中もしくは有機溶媒と水との混合溶媒中で反応させることにより、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物の全部あるいは一部が溶解して、金属酸化物を含む均一溶液あるいは懸濁液を調製することができるが、該金属酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、触媒として用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。該調製液をそのまま触媒として用いる場合は、該調製液中の過酸化水素量を考慮して、アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物を反応させる際の過酸化水素の使用量を決めてもよい。
【0053】
また、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物および/または第VIIIa族元素金属もしくは化合物と、アリールヒドラジン類と過酸化水素とアリール化合物とを接触、混合して、金属酸化物の調製操作と、アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物の反応を同時に行ってもよい。
【0054】
金属化合物の使用量は、アリールヒドラジン類に対して、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、アリールヒドラジン類に対して、1モル倍以下である。
【0055】
金属化合物を用いる場合も、金属化合物を用いない場合と同様、反応系内の存在する水を除去しながら反応を実施するか、または相間移動触媒の存在下に反応を実施することが好ましい。
【0056】
相間移動触媒としては、上記したものと同様のものが挙げられ、その使用量も同様である。かかる相間移動触媒は、予め上記した金属酸化物触媒調製の際に用いてもよい。
【0057】
なお、金属化合物を用いて、アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物の反応を実施した場合であって、目的とするビアリール類を抽出処理もしくは晶析処理により取り出したときは、反応液を抽出処理して得られる水層や晶析処理して得られる濾液中に、金属化合物触媒が含まれているため、該水層や該濾液をそのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に使用することができる。
【0058】
かくして得られるビアリール類としては、例えばビフェニル、2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、2−クロロビフェニル、3−クロロビフェニル、4−クロロビフェニル、2−ブロモビフェニル、3−ブロモビフェニル、4−ブロモビフェニル、2−フェニルトルエン、3−フェニルトルエン、4−ビフェニルトルエン、2−メトキシビフェニル、3−シアノビフェニル、4−カルボメトキシビフェニル、2−カルボメトキシビフェニル、2−フェニル安息香酸、2−カルボ−n−ブトキシビフェニル、4−ニトロビフェニル、2−トリフルオロメチルビフェニル、3−トリフルオロメチルビフェニル、4−トリフルオロメチルビフェニル、2−スルホビフェニル、4−スルホンアミドビフェニル、4−スルホン酸エチルビフェニル、3−メチルスルホンビフェニル、2,4−ジニトロビフェニル、2,4−ジクロロビフェニル、2,4−ジフルオロビフェニル、3,5−ジフルオロビフェニル、3−クロロ−4−フルオロビフェニル、2−カルボキシ−3−クロロビフェニル、2−カルボメトキシ−3−クロロビフェニル、3−スルホンアミド−2−アセチルアミノビフェニル、
【0059】
2,3,5−トリクロロビフェニル、2,4−ジフルオロ−5−ニトロビフェニル、2,3,5,6−テトラフルオロビフェニル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロビフェニル、2−ベンジルビフェニル、3−ベンジルオキシビフェニル、4−ベンジルオキシビフェニル、4−フェニル−1,8−ナフタル酸無水物、2−メチル−2−[(3−フルオロ−4−フェニル)フェニル]マロン酸ジエチル、4−クロロ−3−ヒドロキシ−2−フルオロビフェニル、4−トリフルオロメチル−2,6−ジクロロビフェニル、5−メトキシ−2,4−ジクロロビフェニル、6−ブロモ−2−フェニルピリジン、2−フェニルピリミジン、4−トリフルオロメチル−2−フェニルピリミジン、2−エトキシ−4−フルオロ−6−フェニルピリミジン、2,4−ジメトキシ−6−フェニルピリミジン、2−フェニルキノリン、4−ニトロ−2−フェニルキノリン、
【0060】
3−tert−ブチル−2−シアノビフェニル、4−(2,5−ジカルボメトキシフェニル)トリフルオロメチルベンゼン、3−フェニルフェノール、2−アミノビフェニル、4−ビフェニル酢酸、4−メチル−2−(カルボメトキシメチル)ビフェニル、4−メチル−3−(カルボメトキシメチル)ビフェニル、4−メチル−3−(クロロメチル)ビフェニル、4−メチル−3−シアノビフェニル、4−メチル−2’,6’−ジメトキシビフェニル、2,2’−ジフルオロビフェニル、3,3’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジブロモビフェニル、3,5−ジニトロビフェニル、3,5−ジニトロフェニルトルエン、2,4’−クロロフルオロビフェニル、2−フェニルピリジン、3−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2,2’−ビピリジル、3,3’−ビピリジル、4,4’−ビピリジル、1−フェニルナフタレン、1,1’−ビナフチル、
【0061】
2−フェニルベンゾチアゾール、2−フェニルベンゾキサゾール、2−(2−メチルフェニル)ベンゾチアゾール、2−(3−メチルフェニル)ベンゾチアゾール、2−(4−メチルフェニル)ベンゾチアゾール、2−(3−メチル4−メトキシフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2−クロロフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2−フルオロフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2,4−ジクロロフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2,5−ジクロロフェニル)ベンゾキサゾール、2−(2,5−ジメチルフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2,5−ジフルオロフェニル)ベンゾキサゾール、2−(4−ニトロフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2−ピリジル)ベンゾチアゾール、2−フェニル−4−メチルベンゾチアゾール、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−フェニル−6−メチルベンゾチアゾール、2−フェニル−7−メチルベンゾチアゾール、2−フェニル−4−エチルベンゾキサゾール、2−フェニル−5−イソプロピルベンゾチアゾール、2−フェニル−4−メトキシベンゾチアゾール、
【0062】
2−(4−メトキシフェニル)−5−メトキシベンゾチアゾール、2−フェニル−6−メトキシベンゾチアゾール、2−フェニル−7−メトキシベンゾキサゾール、2−(4−メトキシフェニル)−5,7−ジメトキシベンゾチアゾール、2−フェニル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール、2−フェニル−5,6−ジメトキシベンゾキサゾール、2−フェニル−4−エトキシベンゾチアゾール、2−フェニル−5−ベンジルオキシベンゾチアゾール、2−フェニル−7−ベンジルオキシベンゾチアゾール、2−フェニル−4−クロロベンゾチアゾール、2−フェニル−5−クロロベンゾキサゾール、2−フェニル−6−クロロベンゾチアゾール、2−フェニル−4−フルオロベンゾチアゾール、2−フェニル−5−フルオロベンゾキサゾール、2−フェニル−6−フルオロベンゾチアゾール、2−(3−メチルフェニル)−6−フルオロベンゾチアゾール、2−(3−メチル−4−ニトロフェニル)−6−フルオロベンゾチアゾール、
【0063】
2−フェニル−5,7−ジクロロベンゾチアゾール、2−フェニル−4,6−ジクロロベンゾキサゾール、2−フェニル−5,6−ジクロロベンゾチアゾール、2−フェニル−5,7−ジフルオロベンゾキサゾール、2−フェニル−4,6−ジフルオロベンゾチアゾール、2−フェニル−5,6−ジフルオロベンゾチアゾール、2−フェニル−5−(2−カルボメトキシエチル)ベンゾチアゾール、2−フェニル−6−ブロモベンゾキサゾール、2−フェニル−5−トリフルオロメチルベンゾチアゾール、2−フェニル−6−トリフルオロメチルベンゾキサゾール、2−フェニル−5−シアノベンゾチアゾール、2−フェニル−6−シアノベンゾキサゾール、2−フェニル−5−ニトロベンゾチアゾール、2−フェニル−6−ニトロベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0064】
続いて、アリールヒドラジン類(ただし、2−ヒドラジノベンゾチアゾール類および2−ヒドラジノベンゾキサゾール類を除く。)と過酸化水素を反応させることを特徴とするビアリール類の製造方法および該反応を、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の存在下に実施するビアリール類の製造方法について、説明する。
【0065】
2−ヒドラジノベンゾチアゾール類と2−ヒドラジノベンゾキサゾール類を除いたアリールヒドラジン類と過酸化水素とを反応させることにより、アリールヒドラジン類二分子が自己カップリングしたビアリール類が得られる。例えばアリールヒドラジン類として、フェニルヒドラジンを用いた場合には、ビフェニルが得られる。
【0066】
2−ヒドラジノベンゾチアゾール類と2−ヒドラジノベンゾキサゾール類を除いたアリールヒドラジン類としては、例えば一般式(4)
(式中、Ar’’は置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素芳香族基を表わす。ただし、置換されていてもよい2−ベンゾチアゾール基および置換されていてもよい2−ベンゾキサゾール基を除く。)
で示されるアリールヒドラジン類が挙げられ、置換されていてもよい芳香族基および置換されていてもよい複素芳香族基としては、前記したものと同様のもの(ただし、置換されていてもよい2−ベンゾチアゾール基および置換されていてもよい2−ベンゾキサゾール基を除く。)が挙げられる。
【0067】
過酸化水素も、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、アリールヒドラジン類に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0068】
アリールヒドラジン類と過酸化水素との反応は、通常反応に不活性な溶媒中で実施される。かかる溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、例えばシクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、アリールヒドラジン類に対して、100重量倍以下である。
【0069】
反応温度があまり低いと反応が進行しにくく、また反応温度があまり高いと、原料のアリールヒドラジン類や生成するビアリール類の分解等副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、0〜200℃の範囲である。
【0070】
本反応は、通常アリールヒドラジン類および過酸化水素を接触、混合することにより実施され、その混合順序は制限されない。
【0071】
アリールヒドラジン類と過酸化水素との反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0072】
本反応においても、反応の進行に伴い水が副生するため、前記したアリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物の反応と同様、反応系内の存在する水を除去しながら反応を実施するか、または相間移動触媒の存在下に反応を実施することが好ましい。反応系内に存在する水を除去しながら反応を実施する方法としては、上記した方法と同様の方法が挙げられる。また相間移動触媒についても、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0073】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えばチオ硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするビアリール類を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、ビアリール類を取り出すこともできる。取り出したビアリール類は、蒸留、例えばカラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。
【0074】
水に不溶の有機溶媒としては、上記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0075】
アリールヒドラジン類として、上記一般式(4)で示されるアリールヒドラジン類を用いた場合には、一般式(5)
(式中、Ar’’は、上記と同一の意味を表わす。)
で示されるビアリール類が得られる。
【0076】
2−ヒドラジノベンゾチアゾール類と2−ヒドラジノベンゾキサゾール類を除いたアリールヒドラジン類および過酸化水素を反応させることにより、アリールヒドラジン類が自己カップリングしたビアリール類を得ることができるが、かかる反応を、第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、金属化合物と略記する。)の存在下に実施することにより、ビアリール類をさらに収率よく製造することができる。
【0077】
金属化合物としては、上記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、アリールヒドラジン類に対して、1モル倍以下である。
【0078】
金属化合物を用いる場合も、金属化合物を用いない場合と同様、反応系内に存在する水を除去しながら反応を実施するか、または相間移動触媒の存在下に反応を実施することが好ましい。
【0079】
相間移動触媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量も同様である。かかる相間移動触媒は、予め上記した金属酸化物触媒調製の際に用いてもよい。
【0080】
なお、金属化合物を用いて、アリールヒドラジン類と過酸化水素との反応を実施した場合であって、目的とするビアリール類を抽出処理もしくは晶析処理により取り出したときは、反応液を抽出処理して得られる水層や晶析処理して得られる濾液中に、金属化合物触媒が含まれているため、該水層や該濾液をそのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に使用することができる。
【0081】
かくして得られるビアリール類としては、例えばビフェニル、2,2’−ジフルオロビフェニル、3,3’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,2’−ビピリジル、3,3’−ビピリジル、4,4’−ビピリジル、1,1’−ビナフチル等が挙げられる。
【0082】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、分析には、ガスクロマトグラフィ(以下、GCと略記する。)を用いた。
【0083】
実施例1
50mLフラスコに、トルエン15gおよび無水硫酸マグネシウム3gを仕込み、30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した後、内温80℃に昇温した。フェニルヒドラジン220mgとトルエン15gとからなる混合液を同温度で1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌、静置後、分液処理し、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、27%であり、異性体比は、o体:m体:p体=61:23:16であった。
【0084】
実施例2
50mLフラスコに、トルエン15g、30重量%過酸化水素水1350mgおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを仕込み、内温80℃に昇温した。フェニルヒドラジン220mgとトルエン5gとからなる混合液を同温度で3時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌、静置後、分液処理し、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、27%であり、異性体比は、o体:m体:p体=63:22:15であった。
【0085】
実施例3
50mLフラスコに、トルエン15gおよび30重量%過酸化水素水1350mgを仕込み、内温80℃に昇温した。フェニルヒドラジン220mgとトルエン5gとからなる混合液を同温度で3時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌、静置後、分液処理し、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、16%であり、異性体比は、o体:m体:p体=60:22:18であった。
【0086】
実施例4
100mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン15gおよび無水硫酸マグネシウム3gを仕込んだ後、30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、4−メチルフェニルヒドラジン250mgとベンゼン15gとからなる混合液を、1時間かけて滴下し、さらに同温度で、1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、4−フェニルトルエンを含む有機層を得た。4−フェニルトルエンの収率は、40%であった。
【0087】
実施例5
100mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン15gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、4−クロロフェニルヒドラジン285mgとベンゼン5gとからなる混合液を、1時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、4−クロロビフェニルを含む有機層を得た。4−クロロビフェニルの収率は、82%であった。
【0088】
実施例6
実施例5において、4−クロロフェニルヒドラジン285mgに代えて2−フルオロフェニルヒドラジン252mgを用いた以外は実施例5と同様に実施して、2−フルオロビフェニルを含む有機層を得た。2−フルオロビフェニルの収率は、80%であった。
【0089】
実施例7
100mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン15gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、4−ニトロフェニルヒドラジン306mgと酢酸エチル10gとからなる混合液を、1時間かけて滴下し、さらに同温度で、1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、4−ニトロビフェニルを含む有機層を得た。4−ニトロビフェニルの収率は、67%であった。
【0090】
実施例8
100mLフラスコに、タングステン金属200mgおよび30重量%過酸化水素水1gを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン40gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩300mgを加えた後、30重量%過酸化水素水11gを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、2,4−ジフルオロフェニルヒドラジン2.9gとベンゼン10gとからなる混合液を、3時間かけて滴下し、さらに同温度で、1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水20gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、2,4−ジフルオロビフェニルを含む有機層を得た。2,4−ジフルオロビフェニルの収率は、90%であった。該有機層から溶媒を留去して、2,4−ジフルオロビフェニルの黄色結晶3.5gを得た。純度は、97.5%(GC面積百分率値)であった。
【0091】
実施例9
200mLフラスコに、タングステン金属400mgおよび水2gを加え、内温40℃に昇温した後、30重量%過酸化水素水2.5gを30分かけて滴下し、同温度で30分攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン90gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩600mgを加えた後、30重量%過酸化水素水33gを、5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、4−フルオロフェニルヒドラジン7.6gとベンゼン20gとからなる混合液を、5時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水20gを加え、分液処理した。もう一度水20gを加え、洗浄処理した後、4−フルオロビフェニルを含む有機層を得た。4−フルオロビフェニルの収率は、90%であった。該有機層から溶媒を留去して、4−フルオロビフェニルの黄色結晶7.5gを得た。純度は、97.0%(GC面積百分率値)であった。
【0092】
実施例10
100mLフラスコに、タングステン金属200mgおよび30重量%過酸化水素水1gを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で30分攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン40gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩300mgを加えた後、30重量%過酸化水素水11gを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、2−メチル−2−[(3−フルオロ−4−ヒドラジノ)フェニル]マロン酸ジエチル1gとベンゼン10gとからなる混合液を、3時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水20gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、2−メチル−2−[(3−フルオロ−4−フェニル)フェニル]マロン酸ジエチルを含む有機層を得た。2−メチル−2−[(3−フルオロ−4−フェニル)フェニル]マロン酸ジエチルの収率は、80%であった。
【0093】
実施例11
実施例5において、4−クロロフェニルヒドラジン285mgに代えて3−シアノフェニルヒドラジン266mgを用いた以外は実施例5と同様に実施して、3−シアノビフェニルを含む有機層を得た。3−シアノビフェニルの収率は、85%であった。
【0094】
実施例12
実施例5において、4−クロロフェニルヒドラジン285mgに代えて4−トリフルオロメチルフェニルヒドラジン353mgを用いた以外は実施例5と同様に実施して、4−トリフルオロメチルビフェニルを含む有機層を得た。4−トリフルオロメチルビフェニルの収率は、88%であった。
【0095】
実施例13
実施例7において、4−ニトロフェニルヒドラジン306mgに代えて2−カルボブトキシフェニルヒドラジン306mgを用いた以外は実施例7と同様に実施して、2−カルボブトキシビフェニルを含む有機層を得た。2−カルボブトキシビフェニルの収率は、30%であった。
【0096】
実施例14
実施例7において、4−ニトロフェニルヒドラジン306mgに代えて2−ヒドラジノ−6−ブロモピリジン120mgを用いた以外は実施例7と同様に実施して、2−フェニル−6−ブロモピリジンを含む有機層を得た。2−フェニル−6−ブロモピリジンの収率は、42%であった。
【0097】
実施例15
実施例7において、4−ニトロフェニルヒドラジン306mgに代えて2−ヒドラジノ−4−トリフルオロメチルピリミジン360mgを用いた以外は実施例7と同様に実施して、2−フェニル−4−トリフルオロメチルピリミジンを含む有機層を得た。2−フェニル−4−トリフルオロメチルピリミジンの収率は、26%であった。
【0098】
実施例16
100mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、4−tert−ブチルシアノベンゼン10gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、フェニルヒドラジン216mgと酢酸エチル5gとからなる混合液を、2時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、5−tert−ブチル−2−シアノビフェニルを含む有機層を得た。5−tert−ブチル−2−シアノビフェニルの収率は、25%であった。
【0099】
実施例17
100mLフラスコに、タングステン金属60mgおよび30重量%過酸化水素水400mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、テレフタル酸ジメチル15g、酢酸エチル15gおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、30重量%過酸化水素水3.3gを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、4−トリフルオロメチルフェニルヒドラジン1gと酢酸エチル15gとからなる混合液を、2時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、4−(2,5−ジカルボメトキシフェニル)トリフルオロメチルベンゼンを含む有機層を得た。4−(2,5−ジカルボメトキシフェニル)トリフルオロメチルベンゼンの収率は、30%であった。
【0100】
実施例18
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を内温30℃に冷却し、トルエン15g、30重量%過酸化水素水1100mgおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、内温50℃に昇温し、フェニルヒドラジン220mgとトルエン5gとからなる混合液を同温度で1時間で滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌した後、静置、分液し、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、39%であった。異性体比はo体:m体:p体=65.4:20.4:14.2であった。
【0101】
実施例19
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を内温30℃に冷却し、トルエン15g、30重量%過酸化水素水1100mgおよびジメチルドデシルアミンN−オキシド60mgを加えた後、内温60℃に昇温し、フェニルヒドラジン220mgとトルエン5gとからなる混合液を同温度で3時間で滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌した後、静置、分液し、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、35%であった。異性体比はo体:m体:p体=62:24:14であった。
【0102】
実施例20
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を内温30℃に冷却し、トルエン15gおよび無水硫酸マグネシウム3gを仕込んだ。30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した後、内温80℃に昇温し、フェニルヒドラジン220mgとトルエン15gとからなる混合液を同温度で1時間で滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌した後、静置、分液し、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、40%であった。異性体比はo体:m体:p体=64:21:15であった。
【0103】
実施例21
実施例20において、タングステン金属40mgに代えて酸化コバルト12mgを用いた以外は実施例20と同様に実施して、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、31%、異性体比は、o体:m体:p体=64:21:15であった。
【0104】
実施例22
実施例20において、タングステン金属40mgに代えてニオブ金属20mgを用いた以外は実施例20と同様に実施して、フェニルトルエンを含む有機層を得た。フェニルトルエンの収率は、32%、異性体比は、o体:m体:p体=64:21:15であった。
【0105】
実施例23
実施例20において、タングステン金属に代えてモリブデン金属を用いる以外は実施例20と同様に実施することにより、フェニルトルエンが得られる。
【0106】
実施例24
実施例20において、タングステン金属に代えてメチルレニウムトリオキシドを用いる以外は実施例20と同様に実施することにより、フェニルトルエンが得られる。
【0107】
実施例25
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を内温30℃に冷却し、クロロベンゼン15gおよび無水硫酸マグネシウム3gを仕込んだ。60重量%過酸化水素水900mgを5分かけて滴下した後、内温80℃に昇温し、この反応液に、フェニルヒドラジン220mgとクロロベンゼン15gとからなる混合液を同温度で1時間で滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌した後、静置、分液し、クロロビフェニルを含む有機層を得た。クロロビフェニルの収率は、39%であった。異性体比はo体:m体:p体=62:20:18であった。
【0108】
実施例26
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を内温30℃に冷却し、ピリジン10gおよび無水硫酸マグネシウム3gを仕込んだ。60重量%過酸化水素水900mgを5分かけて滴下した後、内温80℃に昇温し、この反応液に、フェニルヒドラジン220mgとピリジン8gとからなる混合液を同温度で1時間で滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌した後、静置、分液し、フェニルピリジンを含む有機層を得た。フェニルピリジンの収率は、27%であった。フェニルピリジンの異性体比は、o体:m体:p体=47:28:25であった。
【0109】
実施例27
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を内温30℃に冷却し、トルエン15g、30重量%過酸化水素水1100mgおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、内温80℃に昇温し、3,5−ジニトロフェニルヒドラジン400mgとトルエン5gとからなる混合液を同温度で1時間で滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、室温で攪拌した後、静置、分液し、(3,5−ジニトロフェニル)トルエンを含む有機層を得た。(3,5−ジニトロフェニル)トルエン(三種の異性体混合物)の収率は、70%であった。
【0110】
実施例28
50mLフラスコに、アセトニトリル10gおよび無水硫酸マグネシウム3gを仕込み、30重量%過酸化水素水1100mgを5分かけて滴下した。その後、内温80℃に昇温し、フェニルヒドラジン220mgを5分かけて滴下し、同温度で、1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、ビフェニルを含む有機層を得た。ビフェニルの収率は、6%であった。
【0111】
実施例29
50mLフラスコに、タングステン金属40mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物水溶液を調製した。該水溶液を、内温30℃に調整し、ベンゼン15g、30重量%過酸化水素水1100mgおよびトリメチルオクチルアンモニウム硫酸水素塩60mgを加えた後、内温60℃に昇温し、2−ヒドラジノベンゾチアゾール330mgとベンゼン5gとからなる混合液を、同温度で1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、2−フェニルベンゾチアゾールを含む有機層を得た。2−フェニルベンゾチアゾールの収率は、40%であった。
【0112】
実施例30
50mLフラスコに、ベンゼン15gと13重量%過酸化水素水5.8gを仕込み、内温60℃に昇温し、2−ヒドラジノベンゾチアゾール330mgとベンゼン5gとからなる混合液を、同温度で1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌、保持し、反応させた。室温まで冷却し、水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、2−フェニルベンゾチアゾールを含む有機層を得た。2−フェニルベンゾチアゾールの収率は、10%であった。
【0113】
実施例31
実施例29において、2−ヒドラジノベンゾチアゾール330mgに代えて2−ヒドラジノベンゾキサゾール306mgを用いた以外は実施例29と同様に実施して、2−フェニルベンゾキサゾールを含む有機層を得た。2−フェニルベンゾキサゾールの収率は、23%であった。
【0114】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、安価で、取扱いが容易で、しかも反応後には無害な水となるクリーンで優れた酸化剤である過酸化水素を用いることにより、アリールヒドラジン類とアリール化合物とから、ビアリール類を容易に得ることができ、しかも、入手が容易なタングステン金属、モリブデン金属、酸化コバルト等の第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa続元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物等の存在下に反応を実施することにより、さらに収率よくビアリール類を得ることができるため、工業的に有利である。
Claims (12)
- アリールヒドラジン類、過酸化水素およびアリール化合物を反応させることを特徴とするビアリール類の製造方法。
- 第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の存在下に反応を実施する請求項1に記載のビアリール類の製造方法。
- 過酸化水素水を用いる請求項1に記載のビアリール類の製造方法。
- 相間移動触媒の共存下に反応を実施する請求項4に記載のビアリール類の製造方法。
- 相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩またはアミンN−オキシド類である請求項5に記載のビアリール類の製造方法。
- アリールヒドラジン類(ただし、2−ヒドラジノベンゾチアゾール類および2−ヒドラジノベンゾキサゾール類を除く。)と過酸化水素を反応させることを特徴とするビアリール類の製造方法。
- 第Va族元素金属もしくは化合物、第VIa族元素金属もしくは化合物、第VIIa族元素金属もしくは化合物、第VIIIa族元素金属もしくは化合物、第Va族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第Va族元素酸化物、第VIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIa族元素酸化物、第VIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIa族元素酸化物および第VIIIa族元素金属もしくは化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる第VIIIa族元素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の存在下に反応を実施する請求項7に記載のビアリール類の製造方法。
- 過酸化水素水を用いる請求項7に記載のビアリール類の製造方法。
- 相間移動触媒の共存下に反応を実施する請求項10に記載のビアリール類の製造方法。
- 相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩またはアミンN−オキシド類である請求項11に記載のビアリール類の製造方法。
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