JP2004148903A - 空気圧低下の検知装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪の空気圧低下を高い信頼性で検知することを目的とする。
【解決手段】左前輪T1の回転速度V1、右前輪T2の回転速度V2、左後輪T3の回転速度V3、右後輪T4の回転速度V4を回転速度センサS1〜S4で検出し、前輪T1、T2の回転速度差に起因して発生する前輪ヨーレートγFと、後輪T3,T4の回転速度差に起因して発生する後輪ヨーレートγRとを監視する。両者の間に有意な差が生じたら、いずれかの車輪の空気圧が低下したものとする。この際に、運転者の修正操舵によって、空気圧が低下していない車輪に発生する見かけ上のヨーレートに対して修正を加えることで空気圧低下の検知装置とした。
【選択図】 図1
【解決手段】左前輪T1の回転速度V1、右前輪T2の回転速度V2、左後輪T3の回転速度V3、右後輪T4の回転速度V4を回転速度センサS1〜S4で検出し、前輪T1、T2の回転速度差に起因して発生する前輪ヨーレートγFと、後輪T3,T4の回転速度差に起因して発生する後輪ヨーレートγRとを監視する。両者の間に有意な差が生じたら、いずれかの車輪の空気圧が低下したものとする。この際に、運転者の修正操舵によって、空気圧が低下していない車輪に発生する見かけ上のヨーレートに対して修正を加えることで空気圧低下の検知装置とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪の空気圧低下を検知する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両を安定して走行させることを目的として、車輪の空気圧が低下したことを検知するシステムが開発されている。このようなシステムは、各車輪に空気圧センサを取り付けて空気圧を検出する手法と、空気圧により車輪の外径が変化することを利用して回転速度差から空気圧の変化を検出する手法とに大別される。このうち、車輪の回転速度差から空気圧の変化を検出する手法は、アンチロックブレーキシステムなどのために車輪に取り付けられている回転速度センサを利用してシステムを構築できるという利点を有している。
【0003】
回転速度差に着目して行う検出手法の従来技術としては、車両の左前輪の回転数と右後輪の回転数との和と、右前輪の回転数と左後輪の回転数との和を求め、二つの回転数の和を比較することで、カーブの走行中の左右の車輪の回転数差や、前後の車輪間の回転数差(駆動輪とそれに従属して回転する車輪との違いに起因する回転数の差)を相殺することで検知精度を向上させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、車輪の回転速度を検出して車輪の空気圧を検知するにあたり、車両がごく低速状態で走行している場合や、急加速時あるいは急減速時、大きな横加速度を受けているときなど、車両の挙動が過渡状態にあるときは、回転速度差を検知しないように制御ユニットをプログラミングして、誤検知を防止し、信頼性を高めるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭49−85701号公報
【特許文献2】
特開平6−92114号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車両が定常的に直進走行しているときに、例えば前輪の一方の車輪の空気圧が低下すると、径が減少する分だけその車輪の回転速度が増大するが、これに伴い路面との接地面積も増大するので路面に対する転がり抵抗も増大する。同一の車軸に連結される二つの前輪間で転がり抵抗が異なると、前輪のそれぞれに作用する力に差が生じ、その結果として前輪に微小なヨーレートが発生する。このような場合に、運転者は意識の有無にかかわらずそのようなヨーレートを打ち消すように操舵(修正操舵)すると考えられる。すると、後輪は、前輪のヨーレートを打ち消すように、反対方向にヨーレートが発生する。この結果、空気圧が低下していない前輪にも旋回に伴う回転差が発生するので、前輪の左右回転速度差と後輪の左右回転速度差との偏差が計算上では減少することになる。従来の検知手法では、このような運転者がほとんど無意識のうちに行う修正操舵の影響は考慮されておらず、このような場合には車輪の空気圧の低下を検知することができなかった。したがって、本発明は、このような課題を解決して、車輪の空気圧低下を高い信頼性で検知することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する本発明の請求項1にかかる発明は、車輪の回転速度を検出する回転速度センサと、回転速度センサの出力に基づいて算出される変数が閾値を越えたときに車輪の空気圧低下を検知する制御装置とを含み、変数は前輪の回転速度差と後輪の回転速度差との偏差を用いて算出され、変数の算出にあたり空気圧の低下に起因して発生する一方の回転速度差を打ち消すように運転者が操舵したときに他方の回転速度差がこれに追従して変化する回転速度差の変化量を打ち消す補正を行うように構成した空気圧低下の検知装置とした。
【0008】
このような空気圧低下の検知装置は、前輪の回転速度差と、後輪の回転速度差とを比べることで車輪の空気圧低下を判定するものである。ここにおいて、一方の回転速度差に応じた補正を、一方もしくは他方の回転速度差に行った後に判定を行うことで空気圧低下を検知することにした。空気圧低下が発生し、前輪または後輪の一方に回転速度差が発生した場合に運転者が行う修正操舵の量は、一方の回転速度差の大きさから推定することができる。このように推定される修正操舵量に相当する補正を一方もしくは他方の回転速度差に対して行うことで、運転者が行う修正操舵の影響を除去する。
【0009】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の空気圧低下の検知装置において、補正は、一方の回転速度差から算出される一方のヨーレートの値で検索して得られる補正値で他方の回転速度差から算出される他方のヨーレートを除算、もしくは補正値を一方のヨーレートに乗算することにより行われるようにした。
【0010】
この空気圧低下の検知装置は、補正値をあらかじめ作成しておいたマップやテーブルを検索することで行うものである。なお、回転速度差に所定の係数を乗算してヨーレートとし、前輪についてのヨーレート、もしくは後輪についてのヨーレートを用いて検索を行うことにしている。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の空気圧低下の検知装置において、補正は、空気圧低下による転がり抵抗の増加により一方の車軸に発生するヨーモーメントを算出し、ヨーモーメントから転がり抵抗の増加量に見合うヨーレートの変化量を得て、一方の回転速度差から算出される一方のヨーレートから変化量を減算、もしくは他方の回転速度差から算出される他方のヨーレートに変化量を加算することにより行われるようにした。
【0012】
この空気圧低下の検知装置は、補正値をあらかじめ用意しておいた定数や、測定値に基づいて算出するものである。なお、回転速度差に所定の係数を乗算してヨーレートの算出を行うことにしている。
【0013】
請求項4にかかる発明は、請求項2または請求項3に記載の空気圧低下の検知装置において、変数は、回転速度差から算出され、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値と、補正後のヨーレートを用いて算出される車輪径比との積の移動平均とした。
【0014】
この空気圧低下の検知装置は、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値を用いて車輪径比に重み付けを行い、重み付けを行った車輪径比を移動平均した結果で判定を行うものである。車輪径比は、車輪の空気圧と、径と、回転速度が一定の関係を持つことから、前輪の回転速度差と後輪の回転速度差の偏差を車両速度で除算すると得られる。車両が旋回などしている場合には回転速度差が発生する可能性が高いので、このようなときに算出される車輪径比は空気圧変化の判定に対する寄与率を低下させるために重み付けを行うと共に、移動平均をとっている。このため、結果的に直進走行している間の空気圧変化に起因する回転速度差に基づいて検知が行われるようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
最初に、図1を参照して本実施形態における空気圧の低下の検知について、その概要を説明する。車両は4つの車輪を備え、左前輪T1の回転速度をV1とし、これに車軸3を介して連結される右前輪T2の回転速度をV2とする。さらに、左後輪T3の回転速度をV3とし、これに車軸4を介して連結される右後輪T4の回転速度をV4とする。ここで、1つの車輪の空気圧が低下した場合には、その車輪の径が減少し、その分だけ回転速度V1〜V4が増大する。したがって、前輪T1、T2の回転速度差に起因して発生する前輪T1,T2のヨーレート(前輪ヨーレートγF)と、後輪T3,T4の回転速度差に起因して発生する後輪T3,T4のヨーレート(後輪ヨーレートγR)とを比較し、両者の間に有意な差が生じたら、いずれかの車輪の空気圧が低下したものとする。この際に、運転者の修正操舵によって、空気圧が低下していない車輪に発生する見かけ上のヨーレートに対して修正を加えることで空気圧低下の検知精度を高めている。
【0016】
具体例をあげると、転がり抵抗μnの路面を直進走行している車両において、前輪T2の空気圧が低下し、その転がり抵抗がμpに増大すると、前輪T1,T2を繋ぐ車軸3に時計回りの前輪ヨーレートγFが発生する。車両は前輪ヨーレートγFと同じの向き(矢印A)に微小角度だけ曲がることになるが、運転者は無意識のうちに修正操舵を行い、車両を直進させようとする。これにより、前輪ヨーレートγFと反対向きのヨーレート(後輪ヨーレートγR)が後輪T3,T4間の車軸4に発生する。この場合に図2に示すように、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRとの偏差(ヨーレート偏差)は、修正操舵が行われなければ、閾値を越えた値となるが、修正操舵による後輪ヨーレートγRの増大が原因でヨーレートの偏差が減少してしまい、ヨーレートの偏差が閾値未満となることがある。このような場合には、空気圧が低下しているのにも拘わらず、検知されないことになる。以下においては、補正を行うことでこのような不具合を解消している。
【0017】
ここで、空気圧低下の検知装置1は、前輪T1,T2および後輪T3,T4のそれぞれの回転速度V1〜V4を回転速度センサS1〜S4で検出し、ECU(Electronic Control Unit)である制御装置2において各種の処理を行って空気圧の低下の有無を判定するように構成されている。回転速度センサS1〜S4、および制御装置2は、アンチロックブレーキシステムや、トラクションコントロールなどを行う駆動力制御システムの構成要素を利用し、それらのシステムのECUに空気圧の低下検知用のプログラムを搭載することにより実現されるが、別個のECUを備える構成であっても良い。また、制御装置2が空気圧の低下を検知した場合には、判定結果をインストルメントパネル(不図示)などに出力し、運転者に通知するようになっている。
【0018】
回転速度センサS1〜S4は、公知の構成のものが使用できる。例えば、永久磁石と誘導コイルとを備え、車軸と一体になって回転するロータの外周に沿って形成された複数の歯との間で変化する磁束を検知するものがあげられる。ロータの歯は所定のピッチで形成されており、車軸が回転すると突出する歯が車軸の回転速度に応じて周期的に回転速度センサに近接したり、離れたりする。このときに、永久磁石による磁束も同じ周期で変化し、誘導コイルには磁束の変化に直接比例する周期的な電圧が発生する。つまり、回転速度センサS1〜S4は車軸の回転速度に応じた周波数の電圧信号を出力する。なお、回転速度センサS1〜S4は、その他のセンサ、例えば、ホール効果を用いたものや、レーザ光を用いたものなどでも良い。
【0019】
(第一実施形態)
このような装置構成を有する空気圧低下の検知装置1の第一実施形態について、以下に説明する。本実施形態は、空気圧が低下したときに発生するヨーレートに対して運転者が修正操舵を行った際に、前記したヨーレート偏差を打ち消すように発生する見かけのヨーレートを、補正値を検索することで修正して正しい空気圧低下の検知が行えるようにするものである。
【0020】
このような処理を行う制御装置2について説明する。
制御装置2は、CPUやRAM、ROMなどを有し、各種の処理が可能に構成されている。本実施形態の空気圧低下の検知に関連する部分を抽出したブロック図である図3に示すように、制御装置2は回転速度センサS1〜S4の出力を取得して、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRとを主値として、これに必要な補正を行いながら空気圧低下の有無を判定し、その判定結果を出力するようになっている。
【0021】
すなわち、回転速度センサS1〜S4の出力から回転速度算出部21で前輪T1およびT2の回転速度V1およびV2と、後輪T3およびT4の回転速度V3およびV4とをそれぞれ演算し、車両挙動算出部22で車両の挙動を示す各種のパラメータ(前輪ヨーレートγF、後輪ヨーレートγR、車速Vv、推定舵角δ、および推定横方向加速度G)を算出する。車速Vvは回転速度V1〜V4の平均値とする。前輪ヨーレートγF、後輪ヨーレートγR、推定舵角δ、および推定横方向加速度Gは、コンパレータで回転速度V1と回転速度V2とから前輪T1,T2の車輪速差(前輪車輪速差)と、回転速度V3と回転速度V4とから後輪T3,T4の車輪速差(後輪車輪速差)とをそれぞれ求め、前輪車輪速差と後輪車輪速差とにそれぞれ所定値を乗算するなどして求める。
【0022】
補正部23は、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRとを取得し、一方のヨーレートの値を用いて、運転者の修正操舵の影響を打ち消すような補正値をマップ検索して、前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに補正を行う。このような補正は、運転者の修正操舵によるヨーレートの変化(見かけのヨーレート)を打ち消すもので、補正する値は、例えば図4に示すマップ31を検索して得られる補正値C1もしくはC2を用いることができる。このマップ31は車両ごとにあらかじめ実測、あるいは演算された値に基づいて作成されている。
【0023】
なお、図4には前輪ヨーレートγF、後輪ヨーレートγRのどちらで検索しても同じ結果(つまり、補正値C1=補正値C2)となるマップが図示されているが、駆動輪と従属輪との違いを考慮して、前輪ヨーレートγFで検索して補正値C1を得るマップと、後輪ヨーレートγRで検索して補正値C2を得るマップとの2種類のマップを用意しても良い。
【0024】
そして、得られた補正値C1,C2で、図5の表に示すように前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに対して補正を行う。すなわち、前輪T1,T2の一輪が空気圧低下してヨーレートが発生したときなど、前輪ヨーレートγFでマップ検索して補正を行う場合は、
(a1)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFに補正値C1を乗算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(b1)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRを補正値C1で除算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0025】
一方、後輪T3,T4の一輪が空気圧低下してヨーレートが発生したときなど、後輪ヨーレートγRでマップ検索して補正を行う場合は、
(c1)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFを補正値C2で除算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(d1)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRに補正値C2を乗算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0026】
なお、(a1)および(d1)は一方のヨーレート(回転速度差)が増加したときに一方のヨーレート(回転速度差)に補正を行うものであり、(b1)および(c1)は一方のヨーレートが増加したときに他方のヨーレートに補正を行うものである。なお、補正値C1,C2は、(a1)から(d1)のそれぞれにおいて乗算と除算とを逆転、例えば(a1)の場合には前輪ヨーレートγFに補正値C1を除算、するような値であっても良い。
【0027】
径比算出部24は、補正部23から受け渡される二つのヨーレートの値を、例えば下記の式1に代入してヨーレート偏差の車速に対する変化率に係数をかけて得られる径比Diを算出する。ここで、式1においては、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRのどちらか一方は補正後のヨーレートである。また、車速Vvは4輪の平均速度であり、車輪速変換係数C3はあらかじめ決められた定数である。
【0028】
【式1】
【0029】
この径比算出部24は、式1で算出した径比Diを一定時間積分した値Dnを出力するようになっている。これは、各車輪速度V1〜V4の検出タイミングが10ms程度の短時間で行われるために、路面の影響などによる微小時間の過渡的な要因を除外する必要があるからである。このため、積分は例えば1〜数秒に相当する回数(検出タイミングが10msで1秒間あれば積分回数は100回)行われる。
【0030】
移動平均係数設定部25は、前記した車両挙動算出部22で算出された各パラメータである前輪ヨーレートγFおよび後輪ヨーレートγR(共に補正していないもの)と、推定蛇角δと、推定横方向加速度Gとから移動平均係数Wnを設定する。移動平均係数設定部25は各パラメータごとに、その値から正規化した数値(正規値、例えば、0〜1)が得られるようなマップを用意し、正規値で各パラメータどうしの比較を行い、それらのうちの最小の値を移動平均係数Wnに設定する。各パラメータの値を正規化するのは、スケールの異なる状態数を比較しやすくするためである。例えば、推定蛇角δの正規値が「0.2」、推定横方向加速度の正規値が「0.1」で、他のパラメータの正規値がすべて「0.3」であった場合には、最小の正規値「0.1」が移動平均係数Wnになる。一方、最小の正規値が「0.7」であれば、この値が移動平均係数Wnになる。これらのパラメータは、車両の走行方向を示唆するものであるので、これらに基づいて定められる移動平均係数Wnは、その値が大きければ車両が直進して走行する状態に近く、その値が小さければ安定した直進走行からずれた挙動を示す性質を有する。
【0031】
移動平均処理部26は、時系列に取得される複数のデータの傾向を捉えることでその状態変化を読み取るための処理の一例としてあげられる移動平均法を用いて、車両が定常的に直進走行しているときの径比Dnの変化の傾向を調べる。具体的には、積分後の径比Dnに、同じタイムスパンで設定した移動平均係数Wnを重み付けの係数として積算し、その積を所定回数(n;例えば20秒に相当する回数)だけ積分(加算)する。本来であれば積分値を積分回数nで除算して平均値とするべきであるが、処理速度の向上やメモリの節約の観点から本実施形態では積分値のままで処理を行うものとし、得られる径比の積分値を径比Dとする。
【0032】
この移動平均処理では、径比Dnが大きい値で、かつ移動平均係数Wnが大きいときは、積分値である径比Dは大きい値になるし、移動平均係数Wnが小さければ径比Dは小さい値になる。また、径比Dnが小さい値で、かつ移動平均係数Wnが小さいときには径比Dはさらに小さい値になり、移動平均係数Wnが大きいときの径比Dは比較的大きい値になる。つまり、移動平均係数Wnが小さいときは、直進走行していないので、径比Dnに変化があっても、検知の判定にはあまり影響を与えないようにする。反対に、移動平均係数Wnが大きいときは、安定して直進走行している状態に近いので、データの重要性を高めて判定に影響を与えるようにする。ここにおいて、積分値をとることは、移動平均係数Wnが比較的小さい値であっても、長時間持続して径比Dnが所定の値を持ち続ける場合は、判定に影響を与えるようになるという効果も有する。
【0033】
判定部27は、移動平均処理後の径比Dと、あらかじめメモリに登録されている閾値とを比較して、径比Dが閾値を越えていれば、空気圧低下を示す検知信号を出力して、図示しないインストルメントパネルに埋め込まれた警告灯を点灯させて運転者に知らせる。
【0034】
次に、空気圧低下の検知装置1の処理フローの一例について図6のフローチャートなどを参照しながら説明する。
まず、ステップS101で前輪T1,T2の回転差に起因して発生する前輪ヨーレートγFを算出する。この処理は回転速度センサS1,S2の出力信号から図2の回転速度算出部21および車両挙動算出部22により行われる。
ステップS102では後輪T3,T4の回転差に起因して発生する後輪ヨーレートγRを算出する。この処理は回転速度センサS3,S4の出力信号から図2の回転速度算出部21および車両挙動算出部22により行われる。
【0035】
ステップS103では補正部23において前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに必要な補正値を取得する。大きい方のヨーレートで小さい方のヨーレートを補正する場合は、二つのヨーレートγF,γRの大小を比較し、大きい方のヨーレートの値を用いて補正値C1もしくは補正値C2を検索する。
そして、ステップS104で補正値C1もしくは補正値C2を用いて補正を行う。この場合は、前記の(a1)から(d1)のいずれかが採用される。
【0036】
ステップS105では式1を用いて径比Diを算出する。算出した径比DiはステップS106で積分される。ここでの積分は、すでに前回算出した径比Diがメモリされている場合には、前回値にステップS105で算出したばかりの径比Diを加算する。初期条件としては径比Diはメモリされていないので、演算回数i=1のときは、積分した径比Dnは、このときの径比Diに等しくなる。
【0037】
続くステップS107では演算回数iが規定回数N1を上回るか否かを調べる。規定回数N1は前記したように100などの比較的大きな整数値である。ここでは、演算回数i=1であるので、NOと判断され、ステップS8で演算回数iを1つインクリメントし、ここでの処理を終了する。そして、所定時間、例えば、10ms経過後に再び、ステップS101から処理を開始し、演算回数iが規定回数N1を越えるまで、すなわちステップS107の判定式が成立するまで、ステップS101からステップS107までの処理を所定時間間隔で繰り返す。この間、メモリされている径比Dnに新たに算出された径比Dnを加算し、加算した結果を再びメモリする。例えば、演算回数i=3のときの径比Dnは、1回目の径比Diの算出結果と、2回目の径比Diの算出結果と、3回目の径比Diの算出結果との和になる。
【0038】
ステップS107で演算回数iが規定回数N1を越えたら(YES)、ステップS109に進む。ステップS109においては移動平均係数Wnを調べ、その値が「0」であれば(YES)、ステップS110に進んで、メモリに記憶されている径比Dnおよび演算回数iのカウンタをクリアして処理を終了する。これは、移動平均係数Wnが「0」であれば、その間は安定して直進走行していないので、移動平均を算出してはならないからである。
【0039】
一方、ステップS109で移動平均係数Wnの値が「0」でなければ(NO)、ステップS111に進んで移動平均を演算する。移動平均は、そのときの移動平均係数Wnとこれに対応する径比Dnとの積(Wn×Dn)を、所定の時間間隔で移動平均回数nが規定回数N2を越えるまで演算し、その総和をとるものである。例えば、移動平均回数=3のときは、移動平均回数=1のときの積(W1×D1)と、移動平均回数=2のときの積(W2×D2)と、移動平均回数=3のときの積(W3×D3)との和になる。
移動平均はステップS112に示すように移動平均回数nが規定回数N2を越えるまで行われ、規定回数N2に満たない場合(NO)はステップS113で移動平均回数nを1つインクリメントして一旦処理を終了し、所定時間経過後、ステップS101から再び処理を繰り返す。
【0040】
移動平均回数nが規定回数N2を越えたら(ステップS112でYES)、ステップS114で移動平均後の径比Dと閾値とを比較する。径比Dが閾値を越えた場合は、空気圧低下が発生したとみなしてその旨を伝える信号を出力し、ステップS115で警報を点灯させて処理を終了する。一方、ステップS114で閾値よりも径比Dが小さかったときは低下は発生していないのでそのまま処理を終了する。
【0041】
以降は、処理時間間隔が経過した後に再びステップS101から処理を開始し、規定回数N1だけヨーレートγF,γRを積分し、移動平均処理を行う。このときには移動平均回数nが既に規定回数N2を越えているので、新たに算出されたヨーレートγF,γRに基づく径比Dnに、前回までに算出した径比Dを加算して新たに径比Dを算出し、この値に基づいて空気圧低下の検知を行う。
【0042】
このように本実施形態における空気圧低下の検知装置によれば、定常的に直進走行している車両の前輪T1,T2、後輪T3,T4のいずれかの空気圧が低下し、前輪T1,T2の間、もしくは後輪T3,T4の間に回転速度差が発生した場合に、運転者が回転速度差に起因するヨーレートを打ち消すような操舵を行っても確実に空気圧の低下の検知をすることができる。
【0043】
(第二実施形態)
車輪の空気圧が低下すると接地面積が増加し、これに伴って転がり抵抗も増大するが、この際に同一の車軸を有する左側の車輪のかかる力と右側の車輪にかかる力との間に転がり抵抗の増加分に相当するアンバランス、つまりヨーモーメントが発生する。本実施形態はこのヨーモーメントに着目し、転がり抵抗の分に相当するヨーレートを算出して、これを補正に用いることを特徴とする。なお、空気圧低下の検知装置1、および制御装置2の構成は前記の実施形態と同様であり、重複する構成および処理についての説明は省略する。
【0044】
図2に示す補正部23は、マップ検索を用いる代わりに、下記の式2を用いて前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRの補正を行う。
【0045】
【式2】
【0046】
式2において、Mrは転がり抵抗の増加分に相当するヨーモーメント、C4はヨー慣性係数(180/π/ヨー慣性モーメント)である。μnおよびμpは、空気圧正常時および低下時のそれぞれの転がり抵抗である。wnおよびwpは、空気圧正常時および低下時のそれぞれの車輪荷重である。Ltはトレッド長さで、前輪W1,W2に対して計算が行われる場合には前輪W1,W2のトレッド長さが、後輪W3,W4に対して計算が行われる場合は後輪W3,W4のトレッド長さが用いられる。これらのデータは、あらかじめ計測されて補正部23にメモリされているものとする。また、tは車輪速度V1〜V4のデータ計測を行うタイムスパンである。なお、車両に路面抵抗を検出するシステムや、荷重センサを設け、転がり抵抗μn,μpや、加重wn,wpはそれぞれ算出しても良い。
【0047】
そして、計算で得られた補正値であるヨーレートの変化量γPは、図7に示すように前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに加算もしくは減算される。すなわち、前輪T1,T2の一輪が空気圧低下したときなど、前輪T1,T2についてのヨーレートの変化量γP(γP1)を計算する場合は、
(a2)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFから変化量γP1を減算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(b2)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRに変化量γP1を加算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0048】
一方、後輪T3,T4の一輪が空気圧低下したときなど、後輪T3,T4についてのヨーレートの変化量γP(γP2)を計算する場合は、
(c2)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFに変化量γP2を加算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(d2)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRから変化量γP2を減算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0049】
なお、(a2)および(d2)は一方のヨーレート(回転速度差)が増加したときに一方のヨーレートに補正を行うものであり、(b2)および(c2)は一方のヨーレート(回転速度差)が増加したときに他方のヨーレートに補正を行うものである。
【0050】
本実施形態における空気圧低下の検知装置の処理フローは、前記実施形態において図6を用いて説明したものと同様である。ただし、ステップS103の補正値C1,C2の算出はヨーレートの変化量γP(γP1もしくはγP2)の算出になり、ステップS104の補正は前記(a2)〜(d2)のいずれか1つを用いることにより行われる。
【0051】
本実施形態によっても前記と同様に、定常的に直進走行している車両の車輪T1〜T4のいずれかの空気圧が低下し、前輪T1,T2の間、もしくは後輪T3,T4の間に回転速度差が発生した場合に、運転者が回転速度差に起因するヨーレートを打ち消すような操舵を行っても確実に空気圧の低下の検知をすることができる。
【0052】
本発明は前記の各実施形態に限定されずに広く応用することができる。
例えば、移動平均係数Wnを決定するための各パラメータを検出できるセンサを備える場合は、各車輪T1〜T4の回転速度V1〜V4を用いずに各パラメータを特定することも可能である。
【0053】
また、パラメータとしては、この他に車速や、加速度、エンジントルク、エンジン回転速度、シフトポジションなどを加えても良い。これらのパラメータは、車両の速度が定常状態にあることを確認できるものであるので、走行方向に加えて、加速状態などの挙動も捉えることが可能になる。これらのパラメータは前記したすべてを用いる必要はない。また、走行方向を示唆するパラメータと、加速状態を示唆するパラメータとで別々の移動平均係数Wnを設定し、そのそれぞれを移動平均処理部26で径比Dnの重み付けに用いるようにしても良い。
【0054】
径比算出部24における径比Diの積分値である径比Dn、および移動平均処理で得られる移動平均係数Wnを加味した積分値である径比Dは、それぞれ演算回数i、および移動平均回数nで除算した値を用いても良い。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、前輪の回転速度差と後輪の回転速度差との偏差から変数を算出するにあたり、空気圧の低下に起因して発生する一方の回転速度差を打ち消すように運転者が操舵したときに、他方の回転速度差がこれに追従して変化することで生じる回転速度差の変化量を打ち消す補正を行うことにしたので、空気圧低下の検知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における空気圧低下の検知の概要を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態における空気圧低下の検知の概要を説明する図である。
【図3】制御装置のブロック図である。
【図4】補正に用いるマップの一例を示す図である。
【図5】補正を説明する図である。
【図6】空気圧低下の検知の処理を説明するフローチャートである。
【図7】補正を説明する図である。
【符号の説明】
1 検知装置(空気圧低下の検知装置)
2 制御装置
21 回転速度算出部
22 車両挙動算出部
23 補正部
24 径比算出部
26 移動平均処理部
27 判定部
S1,S2,S3,S4 回転速度センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪の空気圧低下を検知する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両を安定して走行させることを目的として、車輪の空気圧が低下したことを検知するシステムが開発されている。このようなシステムは、各車輪に空気圧センサを取り付けて空気圧を検出する手法と、空気圧により車輪の外径が変化することを利用して回転速度差から空気圧の変化を検出する手法とに大別される。このうち、車輪の回転速度差から空気圧の変化を検出する手法は、アンチロックブレーキシステムなどのために車輪に取り付けられている回転速度センサを利用してシステムを構築できるという利点を有している。
【0003】
回転速度差に着目して行う検出手法の従来技術としては、車両の左前輪の回転数と右後輪の回転数との和と、右前輪の回転数と左後輪の回転数との和を求め、二つの回転数の和を比較することで、カーブの走行中の左右の車輪の回転数差や、前後の車輪間の回転数差(駆動輪とそれに従属して回転する車輪との違いに起因する回転数の差)を相殺することで検知精度を向上させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、車輪の回転速度を検出して車輪の空気圧を検知するにあたり、車両がごく低速状態で走行している場合や、急加速時あるいは急減速時、大きな横加速度を受けているときなど、車両の挙動が過渡状態にあるときは、回転速度差を検知しないように制御ユニットをプログラミングして、誤検知を防止し、信頼性を高めるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭49−85701号公報
【特許文献2】
特開平6−92114号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車両が定常的に直進走行しているときに、例えば前輪の一方の車輪の空気圧が低下すると、径が減少する分だけその車輪の回転速度が増大するが、これに伴い路面との接地面積も増大するので路面に対する転がり抵抗も増大する。同一の車軸に連結される二つの前輪間で転がり抵抗が異なると、前輪のそれぞれに作用する力に差が生じ、その結果として前輪に微小なヨーレートが発生する。このような場合に、運転者は意識の有無にかかわらずそのようなヨーレートを打ち消すように操舵(修正操舵)すると考えられる。すると、後輪は、前輪のヨーレートを打ち消すように、反対方向にヨーレートが発生する。この結果、空気圧が低下していない前輪にも旋回に伴う回転差が発生するので、前輪の左右回転速度差と後輪の左右回転速度差との偏差が計算上では減少することになる。従来の検知手法では、このような運転者がほとんど無意識のうちに行う修正操舵の影響は考慮されておらず、このような場合には車輪の空気圧の低下を検知することができなかった。したがって、本発明は、このような課題を解決して、車輪の空気圧低下を高い信頼性で検知することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する本発明の請求項1にかかる発明は、車輪の回転速度を検出する回転速度センサと、回転速度センサの出力に基づいて算出される変数が閾値を越えたときに車輪の空気圧低下を検知する制御装置とを含み、変数は前輪の回転速度差と後輪の回転速度差との偏差を用いて算出され、変数の算出にあたり空気圧の低下に起因して発生する一方の回転速度差を打ち消すように運転者が操舵したときに他方の回転速度差がこれに追従して変化する回転速度差の変化量を打ち消す補正を行うように構成した空気圧低下の検知装置とした。
【0008】
このような空気圧低下の検知装置は、前輪の回転速度差と、後輪の回転速度差とを比べることで車輪の空気圧低下を判定するものである。ここにおいて、一方の回転速度差に応じた補正を、一方もしくは他方の回転速度差に行った後に判定を行うことで空気圧低下を検知することにした。空気圧低下が発生し、前輪または後輪の一方に回転速度差が発生した場合に運転者が行う修正操舵の量は、一方の回転速度差の大きさから推定することができる。このように推定される修正操舵量に相当する補正を一方もしくは他方の回転速度差に対して行うことで、運転者が行う修正操舵の影響を除去する。
【0009】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の空気圧低下の検知装置において、補正は、一方の回転速度差から算出される一方のヨーレートの値で検索して得られる補正値で他方の回転速度差から算出される他方のヨーレートを除算、もしくは補正値を一方のヨーレートに乗算することにより行われるようにした。
【0010】
この空気圧低下の検知装置は、補正値をあらかじめ作成しておいたマップやテーブルを検索することで行うものである。なお、回転速度差に所定の係数を乗算してヨーレートとし、前輪についてのヨーレート、もしくは後輪についてのヨーレートを用いて検索を行うことにしている。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の空気圧低下の検知装置において、補正は、空気圧低下による転がり抵抗の増加により一方の車軸に発生するヨーモーメントを算出し、ヨーモーメントから転がり抵抗の増加量に見合うヨーレートの変化量を得て、一方の回転速度差から算出される一方のヨーレートから変化量を減算、もしくは他方の回転速度差から算出される他方のヨーレートに変化量を加算することにより行われるようにした。
【0012】
この空気圧低下の検知装置は、補正値をあらかじめ用意しておいた定数や、測定値に基づいて算出するものである。なお、回転速度差に所定の係数を乗算してヨーレートの算出を行うことにしている。
【0013】
請求項4にかかる発明は、請求項2または請求項3に記載の空気圧低下の検知装置において、変数は、回転速度差から算出され、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値と、補正後のヨーレートを用いて算出される車輪径比との積の移動平均とした。
【0014】
この空気圧低下の検知装置は、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値を用いて車輪径比に重み付けを行い、重み付けを行った車輪径比を移動平均した結果で判定を行うものである。車輪径比は、車輪の空気圧と、径と、回転速度が一定の関係を持つことから、前輪の回転速度差と後輪の回転速度差の偏差を車両速度で除算すると得られる。車両が旋回などしている場合には回転速度差が発生する可能性が高いので、このようなときに算出される車輪径比は空気圧変化の判定に対する寄与率を低下させるために重み付けを行うと共に、移動平均をとっている。このため、結果的に直進走行している間の空気圧変化に起因する回転速度差に基づいて検知が行われるようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
最初に、図1を参照して本実施形態における空気圧の低下の検知について、その概要を説明する。車両は4つの車輪を備え、左前輪T1の回転速度をV1とし、これに車軸3を介して連結される右前輪T2の回転速度をV2とする。さらに、左後輪T3の回転速度をV3とし、これに車軸4を介して連結される右後輪T4の回転速度をV4とする。ここで、1つの車輪の空気圧が低下した場合には、その車輪の径が減少し、その分だけ回転速度V1〜V4が増大する。したがって、前輪T1、T2の回転速度差に起因して発生する前輪T1,T2のヨーレート(前輪ヨーレートγF)と、後輪T3,T4の回転速度差に起因して発生する後輪T3,T4のヨーレート(後輪ヨーレートγR)とを比較し、両者の間に有意な差が生じたら、いずれかの車輪の空気圧が低下したものとする。この際に、運転者の修正操舵によって、空気圧が低下していない車輪に発生する見かけ上のヨーレートに対して修正を加えることで空気圧低下の検知精度を高めている。
【0016】
具体例をあげると、転がり抵抗μnの路面を直進走行している車両において、前輪T2の空気圧が低下し、その転がり抵抗がμpに増大すると、前輪T1,T2を繋ぐ車軸3に時計回りの前輪ヨーレートγFが発生する。車両は前輪ヨーレートγFと同じの向き(矢印A)に微小角度だけ曲がることになるが、運転者は無意識のうちに修正操舵を行い、車両を直進させようとする。これにより、前輪ヨーレートγFと反対向きのヨーレート(後輪ヨーレートγR)が後輪T3,T4間の車軸4に発生する。この場合に図2に示すように、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRとの偏差(ヨーレート偏差)は、修正操舵が行われなければ、閾値を越えた値となるが、修正操舵による後輪ヨーレートγRの増大が原因でヨーレートの偏差が減少してしまい、ヨーレートの偏差が閾値未満となることがある。このような場合には、空気圧が低下しているのにも拘わらず、検知されないことになる。以下においては、補正を行うことでこのような不具合を解消している。
【0017】
ここで、空気圧低下の検知装置1は、前輪T1,T2および後輪T3,T4のそれぞれの回転速度V1〜V4を回転速度センサS1〜S4で検出し、ECU(Electronic Control Unit)である制御装置2において各種の処理を行って空気圧の低下の有無を判定するように構成されている。回転速度センサS1〜S4、および制御装置2は、アンチロックブレーキシステムや、トラクションコントロールなどを行う駆動力制御システムの構成要素を利用し、それらのシステムのECUに空気圧の低下検知用のプログラムを搭載することにより実現されるが、別個のECUを備える構成であっても良い。また、制御装置2が空気圧の低下を検知した場合には、判定結果をインストルメントパネル(不図示)などに出力し、運転者に通知するようになっている。
【0018】
回転速度センサS1〜S4は、公知の構成のものが使用できる。例えば、永久磁石と誘導コイルとを備え、車軸と一体になって回転するロータの外周に沿って形成された複数の歯との間で変化する磁束を検知するものがあげられる。ロータの歯は所定のピッチで形成されており、車軸が回転すると突出する歯が車軸の回転速度に応じて周期的に回転速度センサに近接したり、離れたりする。このときに、永久磁石による磁束も同じ周期で変化し、誘導コイルには磁束の変化に直接比例する周期的な電圧が発生する。つまり、回転速度センサS1〜S4は車軸の回転速度に応じた周波数の電圧信号を出力する。なお、回転速度センサS1〜S4は、その他のセンサ、例えば、ホール効果を用いたものや、レーザ光を用いたものなどでも良い。
【0019】
(第一実施形態)
このような装置構成を有する空気圧低下の検知装置1の第一実施形態について、以下に説明する。本実施形態は、空気圧が低下したときに発生するヨーレートに対して運転者が修正操舵を行った際に、前記したヨーレート偏差を打ち消すように発生する見かけのヨーレートを、補正値を検索することで修正して正しい空気圧低下の検知が行えるようにするものである。
【0020】
このような処理を行う制御装置2について説明する。
制御装置2は、CPUやRAM、ROMなどを有し、各種の処理が可能に構成されている。本実施形態の空気圧低下の検知に関連する部分を抽出したブロック図である図3に示すように、制御装置2は回転速度センサS1〜S4の出力を取得して、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRとを主値として、これに必要な補正を行いながら空気圧低下の有無を判定し、その判定結果を出力するようになっている。
【0021】
すなわち、回転速度センサS1〜S4の出力から回転速度算出部21で前輪T1およびT2の回転速度V1およびV2と、後輪T3およびT4の回転速度V3およびV4とをそれぞれ演算し、車両挙動算出部22で車両の挙動を示す各種のパラメータ(前輪ヨーレートγF、後輪ヨーレートγR、車速Vv、推定舵角δ、および推定横方向加速度G)を算出する。車速Vvは回転速度V1〜V4の平均値とする。前輪ヨーレートγF、後輪ヨーレートγR、推定舵角δ、および推定横方向加速度Gは、コンパレータで回転速度V1と回転速度V2とから前輪T1,T2の車輪速差(前輪車輪速差)と、回転速度V3と回転速度V4とから後輪T3,T4の車輪速差(後輪車輪速差)とをそれぞれ求め、前輪車輪速差と後輪車輪速差とにそれぞれ所定値を乗算するなどして求める。
【0022】
補正部23は、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRとを取得し、一方のヨーレートの値を用いて、運転者の修正操舵の影響を打ち消すような補正値をマップ検索して、前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに補正を行う。このような補正は、運転者の修正操舵によるヨーレートの変化(見かけのヨーレート)を打ち消すもので、補正する値は、例えば図4に示すマップ31を検索して得られる補正値C1もしくはC2を用いることができる。このマップ31は車両ごとにあらかじめ実測、あるいは演算された値に基づいて作成されている。
【0023】
なお、図4には前輪ヨーレートγF、後輪ヨーレートγRのどちらで検索しても同じ結果(つまり、補正値C1=補正値C2)となるマップが図示されているが、駆動輪と従属輪との違いを考慮して、前輪ヨーレートγFで検索して補正値C1を得るマップと、後輪ヨーレートγRで検索して補正値C2を得るマップとの2種類のマップを用意しても良い。
【0024】
そして、得られた補正値C1,C2で、図5の表に示すように前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに対して補正を行う。すなわち、前輪T1,T2の一輪が空気圧低下してヨーレートが発生したときなど、前輪ヨーレートγFでマップ検索して補正を行う場合は、
(a1)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFに補正値C1を乗算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(b1)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRを補正値C1で除算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0025】
一方、後輪T3,T4の一輪が空気圧低下してヨーレートが発生したときなど、後輪ヨーレートγRでマップ検索して補正を行う場合は、
(c1)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFを補正値C2で除算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(d1)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRに補正値C2を乗算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0026】
なお、(a1)および(d1)は一方のヨーレート(回転速度差)が増加したときに一方のヨーレート(回転速度差)に補正を行うものであり、(b1)および(c1)は一方のヨーレートが増加したときに他方のヨーレートに補正を行うものである。なお、補正値C1,C2は、(a1)から(d1)のそれぞれにおいて乗算と除算とを逆転、例えば(a1)の場合には前輪ヨーレートγFに補正値C1を除算、するような値であっても良い。
【0027】
径比算出部24は、補正部23から受け渡される二つのヨーレートの値を、例えば下記の式1に代入してヨーレート偏差の車速に対する変化率に係数をかけて得られる径比Diを算出する。ここで、式1においては、前輪ヨーレートγFと後輪ヨーレートγRのどちらか一方は補正後のヨーレートである。また、車速Vvは4輪の平均速度であり、車輪速変換係数C3はあらかじめ決められた定数である。
【0028】
【式1】
【0029】
この径比算出部24は、式1で算出した径比Diを一定時間積分した値Dnを出力するようになっている。これは、各車輪速度V1〜V4の検出タイミングが10ms程度の短時間で行われるために、路面の影響などによる微小時間の過渡的な要因を除外する必要があるからである。このため、積分は例えば1〜数秒に相当する回数(検出タイミングが10msで1秒間あれば積分回数は100回)行われる。
【0030】
移動平均係数設定部25は、前記した車両挙動算出部22で算出された各パラメータである前輪ヨーレートγFおよび後輪ヨーレートγR(共に補正していないもの)と、推定蛇角δと、推定横方向加速度Gとから移動平均係数Wnを設定する。移動平均係数設定部25は各パラメータごとに、その値から正規化した数値(正規値、例えば、0〜1)が得られるようなマップを用意し、正規値で各パラメータどうしの比較を行い、それらのうちの最小の値を移動平均係数Wnに設定する。各パラメータの値を正規化するのは、スケールの異なる状態数を比較しやすくするためである。例えば、推定蛇角δの正規値が「0.2」、推定横方向加速度の正規値が「0.1」で、他のパラメータの正規値がすべて「0.3」であった場合には、最小の正規値「0.1」が移動平均係数Wnになる。一方、最小の正規値が「0.7」であれば、この値が移動平均係数Wnになる。これらのパラメータは、車両の走行方向を示唆するものであるので、これらに基づいて定められる移動平均係数Wnは、その値が大きければ車両が直進して走行する状態に近く、その値が小さければ安定した直進走行からずれた挙動を示す性質を有する。
【0031】
移動平均処理部26は、時系列に取得される複数のデータの傾向を捉えることでその状態変化を読み取るための処理の一例としてあげられる移動平均法を用いて、車両が定常的に直進走行しているときの径比Dnの変化の傾向を調べる。具体的には、積分後の径比Dnに、同じタイムスパンで設定した移動平均係数Wnを重み付けの係数として積算し、その積を所定回数(n;例えば20秒に相当する回数)だけ積分(加算)する。本来であれば積分値を積分回数nで除算して平均値とするべきであるが、処理速度の向上やメモリの節約の観点から本実施形態では積分値のままで処理を行うものとし、得られる径比の積分値を径比Dとする。
【0032】
この移動平均処理では、径比Dnが大きい値で、かつ移動平均係数Wnが大きいときは、積分値である径比Dは大きい値になるし、移動平均係数Wnが小さければ径比Dは小さい値になる。また、径比Dnが小さい値で、かつ移動平均係数Wnが小さいときには径比Dはさらに小さい値になり、移動平均係数Wnが大きいときの径比Dは比較的大きい値になる。つまり、移動平均係数Wnが小さいときは、直進走行していないので、径比Dnに変化があっても、検知の判定にはあまり影響を与えないようにする。反対に、移動平均係数Wnが大きいときは、安定して直進走行している状態に近いので、データの重要性を高めて判定に影響を与えるようにする。ここにおいて、積分値をとることは、移動平均係数Wnが比較的小さい値であっても、長時間持続して径比Dnが所定の値を持ち続ける場合は、判定に影響を与えるようになるという効果も有する。
【0033】
判定部27は、移動平均処理後の径比Dと、あらかじめメモリに登録されている閾値とを比較して、径比Dが閾値を越えていれば、空気圧低下を示す検知信号を出力して、図示しないインストルメントパネルに埋め込まれた警告灯を点灯させて運転者に知らせる。
【0034】
次に、空気圧低下の検知装置1の処理フローの一例について図6のフローチャートなどを参照しながら説明する。
まず、ステップS101で前輪T1,T2の回転差に起因して発生する前輪ヨーレートγFを算出する。この処理は回転速度センサS1,S2の出力信号から図2の回転速度算出部21および車両挙動算出部22により行われる。
ステップS102では後輪T3,T4の回転差に起因して発生する後輪ヨーレートγRを算出する。この処理は回転速度センサS3,S4の出力信号から図2の回転速度算出部21および車両挙動算出部22により行われる。
【0035】
ステップS103では補正部23において前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに必要な補正値を取得する。大きい方のヨーレートで小さい方のヨーレートを補正する場合は、二つのヨーレートγF,γRの大小を比較し、大きい方のヨーレートの値を用いて補正値C1もしくは補正値C2を検索する。
そして、ステップS104で補正値C1もしくは補正値C2を用いて補正を行う。この場合は、前記の(a1)から(d1)のいずれかが採用される。
【0036】
ステップS105では式1を用いて径比Diを算出する。算出した径比DiはステップS106で積分される。ここでの積分は、すでに前回算出した径比Diがメモリされている場合には、前回値にステップS105で算出したばかりの径比Diを加算する。初期条件としては径比Diはメモリされていないので、演算回数i=1のときは、積分した径比Dnは、このときの径比Diに等しくなる。
【0037】
続くステップS107では演算回数iが規定回数N1を上回るか否かを調べる。規定回数N1は前記したように100などの比較的大きな整数値である。ここでは、演算回数i=1であるので、NOと判断され、ステップS8で演算回数iを1つインクリメントし、ここでの処理を終了する。そして、所定時間、例えば、10ms経過後に再び、ステップS101から処理を開始し、演算回数iが規定回数N1を越えるまで、すなわちステップS107の判定式が成立するまで、ステップS101からステップS107までの処理を所定時間間隔で繰り返す。この間、メモリされている径比Dnに新たに算出された径比Dnを加算し、加算した結果を再びメモリする。例えば、演算回数i=3のときの径比Dnは、1回目の径比Diの算出結果と、2回目の径比Diの算出結果と、3回目の径比Diの算出結果との和になる。
【0038】
ステップS107で演算回数iが規定回数N1を越えたら(YES)、ステップS109に進む。ステップS109においては移動平均係数Wnを調べ、その値が「0」であれば(YES)、ステップS110に進んで、メモリに記憶されている径比Dnおよび演算回数iのカウンタをクリアして処理を終了する。これは、移動平均係数Wnが「0」であれば、その間は安定して直進走行していないので、移動平均を算出してはならないからである。
【0039】
一方、ステップS109で移動平均係数Wnの値が「0」でなければ(NO)、ステップS111に進んで移動平均を演算する。移動平均は、そのときの移動平均係数Wnとこれに対応する径比Dnとの積(Wn×Dn)を、所定の時間間隔で移動平均回数nが規定回数N2を越えるまで演算し、その総和をとるものである。例えば、移動平均回数=3のときは、移動平均回数=1のときの積(W1×D1)と、移動平均回数=2のときの積(W2×D2)と、移動平均回数=3のときの積(W3×D3)との和になる。
移動平均はステップS112に示すように移動平均回数nが規定回数N2を越えるまで行われ、規定回数N2に満たない場合(NO)はステップS113で移動平均回数nを1つインクリメントして一旦処理を終了し、所定時間経過後、ステップS101から再び処理を繰り返す。
【0040】
移動平均回数nが規定回数N2を越えたら(ステップS112でYES)、ステップS114で移動平均後の径比Dと閾値とを比較する。径比Dが閾値を越えた場合は、空気圧低下が発生したとみなしてその旨を伝える信号を出力し、ステップS115で警報を点灯させて処理を終了する。一方、ステップS114で閾値よりも径比Dが小さかったときは低下は発生していないのでそのまま処理を終了する。
【0041】
以降は、処理時間間隔が経過した後に再びステップS101から処理を開始し、規定回数N1だけヨーレートγF,γRを積分し、移動平均処理を行う。このときには移動平均回数nが既に規定回数N2を越えているので、新たに算出されたヨーレートγF,γRに基づく径比Dnに、前回までに算出した径比Dを加算して新たに径比Dを算出し、この値に基づいて空気圧低下の検知を行う。
【0042】
このように本実施形態における空気圧低下の検知装置によれば、定常的に直進走行している車両の前輪T1,T2、後輪T3,T4のいずれかの空気圧が低下し、前輪T1,T2の間、もしくは後輪T3,T4の間に回転速度差が発生した場合に、運転者が回転速度差に起因するヨーレートを打ち消すような操舵を行っても確実に空気圧の低下の検知をすることができる。
【0043】
(第二実施形態)
車輪の空気圧が低下すると接地面積が増加し、これに伴って転がり抵抗も増大するが、この際に同一の車軸を有する左側の車輪のかかる力と右側の車輪にかかる力との間に転がり抵抗の増加分に相当するアンバランス、つまりヨーモーメントが発生する。本実施形態はこのヨーモーメントに着目し、転がり抵抗の分に相当するヨーレートを算出して、これを補正に用いることを特徴とする。なお、空気圧低下の検知装置1、および制御装置2の構成は前記の実施形態と同様であり、重複する構成および処理についての説明は省略する。
【0044】
図2に示す補正部23は、マップ検索を用いる代わりに、下記の式2を用いて前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRの補正を行う。
【0045】
【式2】
【0046】
式2において、Mrは転がり抵抗の増加分に相当するヨーモーメント、C4はヨー慣性係数(180/π/ヨー慣性モーメント)である。μnおよびμpは、空気圧正常時および低下時のそれぞれの転がり抵抗である。wnおよびwpは、空気圧正常時および低下時のそれぞれの車輪荷重である。Ltはトレッド長さで、前輪W1,W2に対して計算が行われる場合には前輪W1,W2のトレッド長さが、後輪W3,W4に対して計算が行われる場合は後輪W3,W4のトレッド長さが用いられる。これらのデータは、あらかじめ計測されて補正部23にメモリされているものとする。また、tは車輪速度V1〜V4のデータ計測を行うタイムスパンである。なお、車両に路面抵抗を検出するシステムや、荷重センサを設け、転がり抵抗μn,μpや、加重wn,wpはそれぞれ算出しても良い。
【0047】
そして、計算で得られた補正値であるヨーレートの変化量γPは、図7に示すように前輪ヨーレートγFもしくは後輪ヨーレートγRに加算もしくは減算される。すなわち、前輪T1,T2の一輪が空気圧低下したときなど、前輪T1,T2についてのヨーレートの変化量γP(γP1)を計算する場合は、
(a2)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFから変化量γP1を減算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(b2)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRに変化量γP1を加算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0048】
一方、後輪T3,T4の一輪が空気圧低下したときなど、後輪T3,T4についてのヨーレートの変化量γP(γP2)を計算する場合は、
(c2)前輪T1,T2で補正をするときは、前輪ヨーレートγFに変化量γP2を加算し、後輪ヨーレートγRはそのまま用いる。
(d2)後輪T3,T4で補正をするときは、後輪ヨーレートγRから変化量γP2を減算し、前輪ヨーレートγFはそのまま用いる。
【0049】
なお、(a2)および(d2)は一方のヨーレート(回転速度差)が増加したときに一方のヨーレートに補正を行うものであり、(b2)および(c2)は一方のヨーレート(回転速度差)が増加したときに他方のヨーレートに補正を行うものである。
【0050】
本実施形態における空気圧低下の検知装置の処理フローは、前記実施形態において図6を用いて説明したものと同様である。ただし、ステップS103の補正値C1,C2の算出はヨーレートの変化量γP(γP1もしくはγP2)の算出になり、ステップS104の補正は前記(a2)〜(d2)のいずれか1つを用いることにより行われる。
【0051】
本実施形態によっても前記と同様に、定常的に直進走行している車両の車輪T1〜T4のいずれかの空気圧が低下し、前輪T1,T2の間、もしくは後輪T3,T4の間に回転速度差が発生した場合に、運転者が回転速度差に起因するヨーレートを打ち消すような操舵を行っても確実に空気圧の低下の検知をすることができる。
【0052】
本発明は前記の各実施形態に限定されずに広く応用することができる。
例えば、移動平均係数Wnを決定するための各パラメータを検出できるセンサを備える場合は、各車輪T1〜T4の回転速度V1〜V4を用いずに各パラメータを特定することも可能である。
【0053】
また、パラメータとしては、この他に車速や、加速度、エンジントルク、エンジン回転速度、シフトポジションなどを加えても良い。これらのパラメータは、車両の速度が定常状態にあることを確認できるものであるので、走行方向に加えて、加速状態などの挙動も捉えることが可能になる。これらのパラメータは前記したすべてを用いる必要はない。また、走行方向を示唆するパラメータと、加速状態を示唆するパラメータとで別々の移動平均係数Wnを設定し、そのそれぞれを移動平均処理部26で径比Dnの重み付けに用いるようにしても良い。
【0054】
径比算出部24における径比Diの積分値である径比Dn、および移動平均処理で得られる移動平均係数Wnを加味した積分値である径比Dは、それぞれ演算回数i、および移動平均回数nで除算した値を用いても良い。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、前輪の回転速度差と後輪の回転速度差との偏差から変数を算出するにあたり、空気圧の低下に起因して発生する一方の回転速度差を打ち消すように運転者が操舵したときに、他方の回転速度差がこれに追従して変化することで生じる回転速度差の変化量を打ち消す補正を行うことにしたので、空気圧低下の検知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における空気圧低下の検知の概要を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態における空気圧低下の検知の概要を説明する図である。
【図3】制御装置のブロック図である。
【図4】補正に用いるマップの一例を示す図である。
【図5】補正を説明する図である。
【図6】空気圧低下の検知の処理を説明するフローチャートである。
【図7】補正を説明する図である。
【符号の説明】
1 検知装置(空気圧低下の検知装置)
2 制御装置
21 回転速度算出部
22 車両挙動算出部
23 補正部
24 径比算出部
26 移動平均処理部
27 判定部
S1,S2,S3,S4 回転速度センサ
Claims (4)
- 車輪の回転速度を検出する回転速度センサと、前記回転速度センサの出力に基づいて算出される変数が閾値を越えたときに前記車輪の空気圧低下を検知する制御装置とを含み、
前記変数は前輪の回転速度差と後輪の回転速度差との偏差を用いて算出され、前記変数の算出にあたり空気圧の低下に起因して発生する一方の回転速度差を打ち消すように運転者が操舵したときに他方の回転速度差がこれに追従して変化する回転速度差の変化量を打ち消す補正を行うように構成したことを特徴とする空気圧低下の検知装置。 - 前記補正は、前記一方の回転速度差から算出される一方のヨーレートの値で検索して得られる補正値で前記他方の回転速度差から算出される他方のヨーレートを除算、もしくは前記補正値を前記一方のヨーレートに乗算することにより行われるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の空気圧低下の検知装置。
- 前記補正は、空気圧低下による転がり抵抗の増加により一方の車軸に発生するヨーモーメントを算出し、前記ヨーモーメントから転がり抵抗の増加量に見合うヨーレートの変化量を得て、前記一方の回転速度差から算出される一方のヨーレートから前記変化量を減算、もしくは前記他方の回転速度差から算出される他方のヨーレートに前記変化量を加算することにより行われるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の空気圧低下の検知装置。
- 前記変数は、前記回転速度差から算出され、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値と、補正後のヨーレートを用いて算出される車輪径比との積の移動平均であるように構成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の空気圧低下の検知装置。
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