JP2004148472A - 放電加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワイヤカット放電加工のセカンドカットにおいて、設定された送り速度を円滑に変更制御し、安定して所望の加工形状精度を得ること。
【解決手段】セカンドカットのコーナを加工するとき、所定の軌跡(PN)をオフセットしたオフセット軌跡(PE)における加工除去距離が変化し始めるワイヤ電極の位置を第1の変更点(B)、加工除去距離が一定になる位置を第2の変更点(D)、加工除去距離が再び変化し始める位置を第3の変更点(E)、加工除去距離が再び直線を加工しているときの加工除去距離と同じになる位置を第4の変更点(F)とする。第1の変更点(B)から第4の変更点(F)の間、所定距離Fn進んだときの加工除去距離(Kn)を順次計算して、それぞれの加工除去距離(Kn)に基づいて設定された送り速度を変更制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤ電極と被加工物とを予め加工プログラムにプログラムされた所定の軌跡に沿って所定の送り速度で相対移動させるワイヤカット放電加工方法に関する。特に、セカンドカットにおけるコーナにおいて送り速度を変更制御するようにしたワイヤカット放電加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤカット放電加工は、被加工物を挟んで上下に設けられたワイヤガイド間に張架されたφ0.3mm以下のワイヤ電極によって所定の加工間隙を隔ててワイヤ電極に対向配置された被加工物を加工間隙に連続的に発生する火花放電によって所望の形状に切断加工する放電加工方法として知られている。
【0003】
所望の形状に被加工物が切断されるようにするためには、所定の軌跡に沿ってワイヤ電極と被加工物とを相対移動させる必要がある。汎用のワイヤカット放電加工装置の多くはコンピュータ数値制御装置を具備しているので、予め所望の加工形状に基づいて作成された加工プログラムでプログラムされた所定の軌跡に沿ってワイヤ電極と被加工物とを相対移動させることができる。加工プログラムの多くはNCプログラムの形式で作成されている。NCプログラムの軌跡はその軌跡を構成する直線または円弧のブロックに分割され、それらブロック毎にNCコードと移動する方向と移動量または移動する座標位置が与えられる。
【0004】
ワイヤカット放電加工では、放電エネルギが大きいほど放電によって形成されるクレータが大きくなるため、加工面あらさが粗くなど面質は悪くなる傾向にある。このようなことから、ワイヤカット放電加工では、よりよい加工性能を得るために、加工時間を考慮しつつ、何回かの加工工程に分けて加工されるのがふつうである。
【0005】
ワイヤカット放電加工においては、最初の加工工程はファーストカット、それ以降の加工工程はセカンドカットと呼ばれている。ファーストカットは、被加工物を所望の形状に切断する加工工程である。セカンドカットは、ファーストカットで得られる加工形状精度を向上させ仕上面あらさを小さくする加工工程である。セカンドカットを何回の加工工程に分けて行うときは、加工の順番からサードカット、フォースカットなどと呼ばれることがあるが、以下はセカンドカットと総称する。
【0006】
セカンドカットにおいて加工形状精度を向上させるためには、ファーストカットほどではないものの加工形状誤差を修正できる量だけ材料を除去できる放電エネルギが必要である。しかし、所望の仕上面あらさは小さければ小さいほど放電エネルギは小さくしなければならない。そのため、セカンドカットは、加工形状誤差を修正することに重点をおいた加工と所望の仕上面あらさを得ることに重点をおいた加工とを別々に行なうように、何回かの加工工程に分けられることがある。何回のカットを行なうかは、一般に、推定される加工時間を考慮しつつ所望の加工面あらさおよび加工形状精度とに基づいて決定される。
【0007】
ファーストカットとセカンドカットでは、放電エネルギが異なるので、加工間隙の大きさや電気的な加工条件の大きさに違いがあるのも当然であるが、加工方法にも大きな違いが生じる。その主な理由は、ファーストカットでは、まだ加工されていない被加工物を切断加工するのに対して、セカンドカットでは、既にファーストカットで不要な部分が除去されていることにある。具体的には、ファーストカットでは、被加工物に対して進行するワイヤ電極は、ちょうど溝の中にあるように、被加工物の切断面に囲まれている状態にある。一方、セカンドカットでは、加工する被加工物の端面以外は開放されている。この違いによって、ファーストカットとセカンドカットとでは加工環境が大きく異なっている。
【0008】
ワイヤカット放電加工では、ワイヤ電極が相対移動する方向が変わる、いわゆるコーナでは、ワイヤ電極の相対移動軌跡が直線のときの加工環境と加工液噴流を供給する状態や放電圧力の方向などが様々に変化するので、単に加工形状精度を得にくいだけではなく、そのばらつきも大きくなる。このような理由から、ファーストカットとセカンドカットとでは、その加工工程の目的に合った制御の方法が実施されることが好ましい。
【0009】
セカンドカットにおけるコーナの制御方法では、例えば、特許文献1および特許文献2に代表的に示された制御方法のように、加工間隙を維持するサーボ方式を採用し、放電エネルギを決定する周知である電気的な加工条件、例えば、ピーク電流値、放電時間、サーボ基準電圧、あるいはサーボゲインなどを変更制御する方法が知られている。この制御方法は、セカンドカット、特に加工形状精度をより正確にしようとする場合は、加工状態に影響しやすいから、制御が難しいばかりでなく、場合によっては制御が不安定になって、かえって望ましい加工形状精度を得ることができない虞れがある。
【0010】
別の制御方法では、定速送りサーボ方式を採用し、送り速度を変更制御する方法が知られている。より具体的には、特許文献3に示されるように、ワイヤ電極の撓みを修正するように送り速度を変更制御する方法や、特許文献4、特許文献5、特許文献6に示されるように、ワイヤ電極の実際の相対移動軌跡における送り速度を計算してNCプログラム軌跡における設定された送り速度を変更制御する方法が知られている。このような制御方法は、安定して目的とする加工形状精度を得ることができる。特に、形状出しを目的とするときは、最終仕上げ形状を得るのではなく、形状を整えることが大事であるので、セカンドカットに有効な制御の方法の1つであると言える。
【0011】
【特許文献1】
特開昭63−105824号公報
【特許文献2】
特表平1−501051号公報
【特許文献3】
特開昭57−114329号公報(第2頁−第3頁)
【特許文献4】
特公平7−11371号公報(第3頁)
【特許文献5】
特公昭56−16007号公報(第2頁−第9頁)
【特許文献6】
特開昭57−194827号公報(第2頁−第4頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
セカンドカットは、被加工物の側面を仕上げる加工工程であるから、ファーストカットにおける加工で除去される領域が異なっている。しかも、セカンドカットにおけるコーナでは、加工除去量が一定ではない。したがって、定速送りのサーボ方式で加工をする場合は、そのままの送り速度で加工を続けると、インコーナでは取残しの誤差が大きくなり、アウトコーナでは除去し過ぎてしまう。特に、加工面仕上げの加工工程ではより小さな電気エネルギで加工するため、それ以前の加工工程で残されている誤差を修正することは困難である。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みて、セカンドカットにおいて定速送り方式でコーナを加工する場合、コーナの加工形状精度に優れるワイヤカット放電加工方法を提供することを目的とする。その他の本発明のワイヤカット放電加工方法の利点は、発明の実施の形態で詳述する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のワイヤカット放電加工方法は、ワイヤ電極と被加工物とを予め加工プログラムにプログラムされたNCプログラム軌跡(PN)に沿って設定された送り速度(F)で相対移動させつつワイヤ電極と被加工物とで形成される加工間隙に所定の加工電圧パルスを印加して加工間隙に繰返し放電を発生させ、NCプログラム軌跡(NP)がコーナであるときに設定された送り速度(F)を変更制御するようにしたワイヤカット放電加工方法において、セカンドカットのとき、NCプログラム軌跡(PN)をオフセットしたオフセット軌跡(PN)における加工除去距離(Kn)が直線を加工するときの加工除去距離(K)よりも増加または減少し始めるワイヤ電極の位置を第1の変更点(B)、ワイヤ電極が第1の変更点(B)を通過し加工除去距離(Kn)が変化しなくなるワイヤ電極の位置を第2の変更点(D)、ワイヤ電極が第2の変更点(D)を通過し加工除去距離(Kn)が減少または増加に転じるワイヤ電極の位置を第3の変更点(E)、ワイヤ電極が第3の変更点(E)を通過し直線を加工するときの加工除去距離(K)と同じになるワイヤ電極の位置を第4の変更点(F)とそれぞれ定め、
第1の変更点(B)から第4の変更点(F)間における所定単位距離(Fn)毎の加工除去距離(Kn)を計算して、計算された加工除去距離(Kn)から適正送り速度(F0)を求め、第1の変更点(B)と第4の変更点(F)間において所定単位距離(Fn)毎に適正送り速度(F0)に変更設定するものである。なお、上記参照符号は、開示された発明を実施の形態に限定するものではない。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、あるインコーナエッジ(内側角隅)を示す図である。この実施の形態では、セカンドカットにおいて複数回の加工工程(カット)を行なっており、図1では、n回カットのときの状態を示している。図1において、符号Tnは加工残距離(残り代)、符号Tn1は前回のカットでの加工残距離、符号Hnはオフセット距離、符号Hn1は前回のカットでのオフセット距離、符号Rnはワイヤ電極の半径にギャップを加算した円(以下、放電円という)の半径、符号Rn1は前回のカットにおける放電円の半径、符号Kは直線を加工しているときの加工除去距離(取り代)である。また、符号PEは、ワイヤ電極の中心の相対移動軌跡(オフセット軌跡)、PE1は、前回のカットにおけるワイヤ電極の中心の相対移動軌跡、符号PNは、NCプログラム軌跡である。なお、符号WPは被加工物、符号WGは放電円である。
【0016】
斜線で示されるエリアは、n回カットで除去される領域である。ワイヤ電極の中心がA地点にあるときは、加工除去距離はKであり、直線を加工しているときは加工除去距離は一定である。ワイヤ電極の中心がB地点に到達したときより後は、ワイヤ電極が所定距離進む毎に加工除去距離は徐々に増加する。本発明では、この加工除去距離が直線を加工するときの加工除去距離よりも増加または減少し始めるワイヤ電極の位置を第1の変更点という。インコーナエッジでは、第1の変更点から加工除去距離が増加し始める。加工除去距離が増えるということは、加工除去面積あるいは加工除去量(体積)が増えるということである。
【0017】
ワイヤ電極の中心がD地点に到達するとワイヤ電極の半面が加工除去距離である。ゆえに、放電円WGの半径Rnと加工除去距離が等しい。ワイヤ電極がNCプログラム軌跡上のコーナE’に対応するE地点に到達するまで加工除去距離はRnと等しいまま変わらない。本発明では、この加工除去距離が変化しなくなるワイヤ電極の位置を第2の変更点という。
【0018】
ワイヤ電極がコーナを折り返して進路が変わるときは、加工除去距離が減少し始める。このときのワイヤ電極の中心は、オフセット軌跡PEのE地点にある。本発明では、この加工除去距離が減少または増加に転じるワイヤ電極の位置を第3の変更点という。このときの加工除去距離は、図1に示されるように、インコーナエッジでは、第3変更点から加工除去距離が減少に転じる。
【0019】
そして、ワイヤ電極がF地点に到達した後、加工除去距離は、A地点と同じように、直線を加工しているときの加工除去距離と同じになる。本発明では、この直線を加工するときの加工除去距離と同じになるワイヤ電極の位置を第4の変更点という。
【0020】
ここで、 直線を加工しているときの加工除去距離Kは、数1で表わされる。第1の変更点であるB地点から第3の変更点であるE地点までの距離BEは、BC+CEである。図1で理解できるように、BCおよびCEは、三角関数を使って数2および数3で表わされる。
【0021】
【数1】
Figure 2004148472
【0022】
【数2】
Figure 2004148472
【0023】
【数3】
Figure 2004148472
【0024】
したがって、B地点以降は、ワイヤ電極の中心の位置から所定距離Fnで進んだときの加工除去距離Knは、数4の通りに変化する。ただし、数4におけるJは、数5を満足する値である。第2の変更点であるD地点にワイヤ電極が到達したときは、加工除去距離は、放電円WGの半径Rnと等しくなる。
【0025】
【数4】
Figure 2004148472
【0026】
【数5】
Figure 2004148472
【0027】
図1に示されるように、仮に前回カットのオフセット軌跡PE1の2つの直線ブロックの交点を(0,0)とおく。このとき、仮に、図1の状態を図2の状態に置き換えてみる。図2からわかるように、このときの前回のカットにおける放電円は、数6で表わされる。また、今回のカットにおける放電円WGは、数7で表わされる。ワイヤ電極が地点Eから折り返すときのaの初期値は、数8で表わされる。また、地点Fでのaの値は、数9で表わされる。また、ワイヤ電極が地点Eから折り返したときからの直線のオフセット軌跡上のある地点におけるbの値は、数10で示される固定の値である。
【0028】
【数6】
Figure 2004148472
【0029】
【数7】
Figure 2004148472
【0030】
【数8】
Figure 2004148472
【0031】
【数9】
Figure 2004148472
【0032】
【数10】
Figure 2004148472
【0033】
E地点からF地点までのある位置におけるコーナにある前回のカットの放電円と今回のカットにおける放電円WGとの交点は、図2の太線で示される弧の上にある。数6と数7との連立方程式の解で得られる交点のy座標の値をynとすると、E地点からF地点までの間の加工除去距離は、数11で表わされる。
【0034】
【数11】
Figure 2004148472
【0035】
直線を加工しているときの加工除去距離をK、各変更点間において変化する加工除去距離をKn、設定された送り速度をFとすると、加工除去距離Knに適する送り速度F0は、数12で示される。ただし、変更される送り速度は機械設定で設定される最大の送り速度Fmaxを超えない。
【0036】
【数12】
Figure 2004148472
【0037】
ここで、例えば、被加工物の材質毎に所定送り速度と板厚との関係を示すデータテーブルを記憶させたデータベースが予め作成されている。被加工物の材質と板厚が設定されることにより、直線を加工しているときの好ましい送り速度Fが設定される。n回目のカットにおける加工残距離Tnと前回のカットにおける加工残距離Tn1は、それぞれ各カットにおける加工条件で得ることができる。また、オフセット値Hnとコーナの角度θは設定値あるいはNCプログラムから得ることができる。
【0038】
実施の形態では、予め定められた予め単位移動距離Fnを設定しておき、単位移動距離毎に加工除去距離を求めて送り速度を変更する。したがって、インコーナエッジで加工除去距離が変化しても、加工除去距離に見合った適する送り速度に円滑に変更制御するから所望の加工形状精度を得ることができる。
【0039】
図3は、あるアウトコーナエッジ(外側角隅)を示す図である。この実施の形態では、セカンドカットにおいて複数回の加工工程(以下、カット)を行なっており、図3では、n回カットのときのコーナにおける状態を示している。図1と同じ符号が付されているものは、図1と同じ意味である。
【0040】
アウトコーナエッジでは、A地点からB地点までは単位移動距離当りの加工除去距離に変化はないが、第1の変更点であるB地点から徐々に減っていく。第2の変更点であるD地点では、加工除去距離がなくなって変化しなくなる。ワイヤ電極がコーナを折り返して第3の変更点であるE地点に到達した後、加工除去距離は増加に転じる。そして、第4の変更点であるF地点に到達した後は、直線を加工するときの加工除去距離になり、その後は一定である。
【0041】
いま仮に、前回のカットで形成された輪郭線TNのエッジの頂点Mを(0,0)とすると、図3の点線矢印で示されるように、予定の輪郭線TNのエッジの頂点Nからオフセット軌跡PEに下ろした垂線との交点からA地点に向かって距離L離れた位置が第1の変更点であるB地点である。この距離Lは、数13で表わされる。
【数13】
Figure 2004148472
【0042】
第1の変更点であるB地点から距離Fn進んだときの放電円WGは、数14で表わされる。頂点Mを(0,0)としたとき、数14における放電円の座標のaおよびbの値は、数15および数16に示される式で表わされる。前回のカットで形成された輪郭線TN1を示す直線は、数17で表わされる。数14と数17の連立方程式により、放電円WGと輪郭線TN1との交点のy座標値ynが求められる。したがって、加工除去距離Knは、直線を加工するときの加工除去距離Kから交点のy座標値ynを減算したものであるから、数18で得られる。
【数14】
Figure 2004148472
【0043】
【数15】
Figure 2004148472
【0044】
【数16】
Figure 2004148472
【0045】
【数17】
Figure 2004148472
【0046】
【数18】
Figure 2004148472
【0047】
第2の変更点であるD地点を通過すると、放電円WGは、一旦外側に抜ける。このときは、加工除去距離は0になる。加工除去距離が0のときは、計算される送り速度が無限大である。したがって、第2の変更点であるD地点以降は、予め機械設定によって設定されている最大の送り速度で移動させる。もちろん、ワイヤ電極を折り返す手前で速度をスローダウンさせるような別の送り制御方法を組み合わせて、ワイヤ電極の変向を円滑に行なうようにすることができる。
【0048】
ワイヤ電極が第3の変更点であるE地点に到達すると、放電円WGが切り残されている頂点と接する。予定の輪郭線TNの頂点Nを(0,0)としたとき、数14における放電円の座標のaおよびbの値は、数19および数20に示される式で表わされる。予定の輪郭線TNを示す直線は、数21で表わされる。数14と数21の連立方程式により、放電円WGと輪郭線TNとの交点のy座標値ynが求められる。頂点Nを(0,0)としたときの放電円WGと輪郭線TNとの交点のy座標値から加工除去距離Knが得られる。
【数19】
Figure 2004148472
【数20】
Figure 2004148472
【数21】
Figure 2004148472
【0049】
第1の変更点から第4の変更点までの間で変化する加工除去距離に適合する送り速度F0を数12で求める。なお、被加工物の材質と板厚に適合し、直線を加工するときの加工除去距離になる送り速度の設定は、インコーナエッジのときと同じである。したがって、アウトコーナエッジで加工除去距離が変化しても、加工除去距離に見合った適する送り速度に変更制御するから所望の加工形状精度を得ることができる。
【0050】
図4は、あるインコーナR(内側円弧)を示す図である。この実施の形態では、セカンドカットにおいて複数回の加工工程(以下、カット)を行なっており、図4では、n回カットのコーナにおける状態を示している。図1または図3と同じ符号が示されているものは、図1および図3と同じ意味である。
【0051】
インコーナRにおけるA地点からB地点までの加工除去距離は変化しないが、第1の変更点であるB地点から徐々に増加する。第1の変更点は、放電円WGが前回のカットで形成された輪郭線TN1における直線と円弧との接続点に到達したときである。第2の変更点であるD地点からは、加工除去距離が一定になる。第2の変更点は、ワイヤ電極がオフセット軌跡のブロックの交点に到達したときである。
【0052】
第3の変更点であるE地点から加工除去距離が徐々に減少する。第3の変更点は、放電円WGが輪郭線TN1における円弧と直線との接続点に到達したときである。第4の変更点であるF地点からは直線を加工するときの加工除去距離と同じになる。第4の変更点は、ワイヤ電極がオフセット軌跡のブロックの交点に到達したときである。
【0053】
インコーナエッジでは、前回のカットで形成された輪郭線にはその放電円の弧の形状が転写されたような輪郭形状の取残しが存在していて、NCプログラム軌跡PNの形状と前回のカットで形成された輪郭線の形状が異なっている。一方、インコーナRでは、NCプログラム軌跡PNの形状と前回のカットで形成された被加工物の輪郭線TNの形状が相似である。インコーナエッジとインコーナRとの差異は、この点以外にはないから、第1の変更点から第2の変更点までの加工除去距離および第3の変更点から第4の変更点までの加工除去距離は、加工残距離Tnに放電円WGの直径を加算した距離だけ離れた距離をPrとして、数4におけるRn1を(Pr−Tn1)に置き換えることによって求めることができる。
【0054】
図5は、あるアウトコーナR(外側円弧)を示す図である。この実施の形態では、セカンドカットにおいて複数回の加工工程(以下、カット)を行なっており、図5では、n回カットのコーナにおける状態を示している。図1ないし図4と同じ符号が示されているものは、図1ないし図4と同じ意味である。
【0055】
アウトコーナRにおけるA地点からB地点までの加工除去距離は変化しないが、第1の変更点であるB地点から徐々に減少する。第1の変更点は、放電円WGが前回のカットで形成された輪郭線TN1における直線と円弧との接続点に到達したときである。第2の変更点であるD地点からは、加工除去距離が一定になる。第2の変更点は、ワイヤ電極がオフセット軌跡のブロックの交点に到達したときである。
【0056】
第3の変更点であるE地点から加工除去距離が徐々に増加する。第3の変更点は、放電円WGが輪郭線TN1における円弧と直線との接続点に到達したときである。第4の変更点であるF地点からは直線を加工するときの加工除去距離と同じになる。第4の変更点は、ワイヤ電極がオフセット軌跡のブロックの交点に到達したときである。
【0057】
このように、アウトコーナRのときは、加工除去距離がインコーナRのときと逆に変化する。したがって、加工残距離Tnに放電円WGの直径を加算した距離だけ離れた距離をPrとすると、インコーナRにおける(Pr−Tn1)を(Pr+Tn1)に置き換えることで加工除去距離が計算できる。換言すれば、インコーナエッジでの加工除去距離を計算する数4におけるRn1を(Pr+Tn1)に置き換えることによって、アウトコーナRの加工除去距離を求めることができることができる。
【0058】
数値制御装置は、コーナの形状が直角を含むインコーナエッジ、アウトコーナエッジ、インコーナR、アウトコーナRであることを、NCプログラムから判断することができる。また、同様に、それぞれのカットにおけるオフセット値と各コーナにおける角度を得ることができる。また、加工条件から直線におけるそれぞれのカットにおける加工残距離を得ることができるから、それぞれのカットにおける加工除去距離を計算することができる。
【0059】
実施の形態では、直線を加工しているときに計算される加工除去距離になる初期の設定送り速度は、予め作成されている被加工物の材質毎に所定送り速度と板厚との関係を示すデータテーブルから得ている。したがって、被加工物の材質や板厚が異なっていても、同じ計算式によって、加工除去距離の変化に見合った送り速度に変更制御される。
【0060】
数値制御装置は、加工除去距離が変化する第1の変更点にワイヤ電極が到達したときから単位距離または単位時間進んだ位置毎に、計算される加工除去距離または既に計算されている加工除去距離に基づいて、初期に設定されている送り速度を数12で得られる加工除去距離に見合った送り速度を求めて、送り速度を変更制御する。なお、機械設定される最高速度に達したときは、それを超える速度には変更されない。
【0061】
以上に示される実施の形態は、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、組合せ、置換え、変更が可能である。例えば、ワイヤ電極が所定単位移動距離進む毎に加工除去面積さらには板厚のデータを用いて加工除去量を計算し、加工面積あるいは加工除去量に基づいて適する送り速度を変更制御するようにすることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上、本発明のワイヤカット放電加工方法によれば、定速送りのサーボ方式でセカンドカットを行なうときに、コーナにおいて変化する加工除去距離に見合った送り速度をに適切に変更制御し、送り速度が円滑に変更されるから、コーナにおける加工除去距離が一定となり、コーナの加工形状精度が向上するという効果を奏する。特に、形状出しの加工工程において安定して所望の加工形状精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のワイヤカット放電加工方法におけるインコーナエッジの状態を示す図である。
【図2】図1に示すインコーナコーナエッジを別の角度で置き換えて示す図である。
【図3】本発明のワイヤカット放電加工方法におけるアウトコーナエッジの状態を示す図である。
【図4】本発明のワイヤカット放電加工方法におけるインコーナRの状態を示す図である。
【図5】本発明のワイヤカット放電加工方法におけるアウトコーナRの状態を示す図である。
【符号の説明】
WP,被加工物
WG,放電円
PN,NCプログラム軌跡
PE,ワイヤ電極の中心の相対移動軌跡(オフセット軌跡)
PE1,前回のカットにおけるワイヤ電極の相対移動軌跡(オフセット軌跡)
Rn,放電円の半径
Rn1,前回のカットにおける放電円の半径
Tn,加工残距離
Tn1,前回のカットにおける加工残距離
Hn,オフセット距離
Hn1,前回のカットにおける加工残距離
θ,コーナ角度
B,第1の変更点
D,第2の変更点
E,第3の変更点
F,第4の変更点

Claims (1)

  1. ワイヤ電極と被加工物とを予め加工プログラムにプログラムされた所定の軌跡に沿って設定された送り速度で相対移動させつつ前記ワイヤ電極と前記被加工物とで形成される加工間隙に所定の加工電圧パルスを印加して前記加工間隙に繰返し放電を発生させ、前記所定の軌跡がコーナであるときに前記設定された送り速度を変更制御するようにしたワイヤカット放電加工方法において、
    セカンドカットのとき、前記所定の軌跡をオフセットしたオフセット軌跡における加工除去距離が直線を加工するときの加工除去距離よりも増加または減少し始めるワイヤ電極の位置を第1の変更点、ワイヤ電極が前記第1の変更点を通過し加工除去距離が変化しなくなるワイヤ電極の位置を第2の変更点、ワイヤ電極が前記第2の変更点を通過し加工除去距離が減少または増加に転じるワイヤ電極の位置を第3の変更点、ワイヤ電極が前記第3の変更点を通過し直線を加工するときの加工除去距離と同じになるワイヤ電極の位置を第4の変更点とそれぞれ定め、前記第1の変更点から前記第4の変更点間における所定単位距離毎の加工除去距離を計算して、前記計算された加工除去距離から適正送り速度を求め、前記第1の変更点と前記第4の変更点間において前記所定単位距離毎に前記適正送り速度に変更設定するワイヤカット放電加工方法。
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