JP2004146296A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極、負極および電解質を用いたリチウムイオン二次電池において、電極と非水電解液が反応し、電池が発熱する。
【解決手段】負極はSiあるいはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有すると、電池の発熱を抑えたリチウムイオン二次電池となる。
【選択図】 なし
【解決手段】負極はSiあるいはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有すると、電池の発熱を抑えたリチウムイオン二次電池となる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウムイオン二次電池の負極の改良に関わり、高い電気容量を有し、信頼性に優れたリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウムまたはリチウム化合物を負極とするリチウムイオン二次電池は、高電圧で高エネルギー密度が期待され、多くの研究が行われている。
【0003】
これまでリチウムイオン二次電池の正極合剤にある、正極活物質には、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、V2O5、Cr2O5、MnO2、TiS2、MoS2などの遷移金属の酸化物およびカルコゲン化合物が知られおり、これらは層状もしくはトンネル構造を有し、リチウムイオンが出入りできる結晶構造を持つ。
【0004】
一方、負極合剤にある、負極活物質としては、容量は比較的小さいがリチウムを可逆的に吸蔵、放出でき、サイクル性、安全性に優れた黒鉛系の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン電池が実用化されている。
【0005】
しかし、黒鉛材料の理論容量は372mAh/gであり、理論密度が2.2g/ccと比較的低いことから、これに代わって、体積あたりで一層高容量な金属材料を負極として利用することが期待されている。
【0006】
金属材料の中でも、特に、Siは4199mAh/g(理論密度2.33g/cc)と高容量で、数多くの改良検討がなされている。このように高容量なSi負極であるが、充電反応と放電反応時のリチウムの挿入・脱離にともなうSi材料の膨脹・収縮の繰り返しによって生ずる微粉化が挙げられる。これによって活物質の反応性が低下し、充放電サイクル寿命を短くする。
【0007】
これらを解決する手段として、合金材料の改良が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
すなわち、固相Aにより形成される核の周囲の全面または一部を、固相Bによって包み込んだ複合粒子であって、前記固相Aはリチウムまたはリチウムと合金化することが可能な少なくとも一種の元素、もしくはリチウムと合金化することが可能な前記元素を含む固溶体または金属間化合物からなり、前記固相Bは、前記固相Aとは組成が異なり、かつ前記固相Aを形成するリチウムまたはリチウムと合金化することが可能な少なくとも一種の元素を含む固溶体または金属間化合物を負極に用いるものである。
【0009】
電池はその信頼性の確保のために、多くの信頼性試験項目が用意されている。(たとえば、非特許文献1参照)。中でも、「内部短絡試験」は、衝突を想定し、電池内部で正極と負極の短絡が発生した場合の信頼性試験であり、重要な項目の一つである。
【0010】
この内部短絡の状況を推察すると、充電状態にある電池内部で正極と負極の短絡が発生した場合に、短絡電流Iが発生し、電池の内部抵抗をRとした場合には、発生する内部発熱量(ジュール熱)はI2Rとなる。高容量なSi負極電池で大きな短絡電流が発生するため、現行炭素負極電池と比べてジュ−ル熱による電池内部温度の上昇が極めて大きな状態となる恐れがある。
【0011】
さらに詳細なメカニズムはわかっていないが、このように電池内部が高温に変化した状態では、通常の充放電反応とは別に、充電状態にある正極材料や負極材料と電解質成分あるいは電池内部の酸素雰囲気などが相互に高温下で活性な状態となって、副反応が生じ、さらに電池温度の上昇を助長させる場合や、これらの副反応によって電解液が分解してガス化し電池内部の圧力を上昇させる場合など、電池の信頼性面の弊害が生じる恐れがあると考えられる。
【0012】
上記弊害を解決するために、従来、正極活物質層の外側に炭酸マグネシウムからなる吸熱層を設け、電池が短絡した場合には炭酸ガスを放出しながら吸熱反応による電池の冷却効果を持った電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−30703号公報
【特許文献2】
特開平10−233237号公報
【非特許文献1】
社団法人 電池工業会編「リチウム電池及びリチウムイオン電池の輸送に関する手引書」、平成14年1月、全頁
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この場合には、炭酸ガスの放出が可逆的ではなく、一度、電池内部に放出されて充填された炭酸ガスのために、電池内圧は高いままの状態であり、温度抑制には有効な場合でも、その後の電池の状態は不安定なものであり、電池の信頼性を損なうおそれもあり、十分に配慮した方法とはいえない。
【0015】
さらには、正極活物質層の外側に炭酸マグネシウムからなる吸熱層を設けるため、発熱する重要箇所が正極内部であるにもかかわらず、その外側から吸熱を作用させるという、いわば間接的な構成を取っているため、急激な発熱に対しては、その作用が遅れる結果となり、冷却効果や炭酸ガスの放出効果がきわめて不充分な構成となっているという課題を有していた。
【0016】
本発明は、以上に鑑み、高容量かつ電池の信頼性を改良し、特に充電状態の負極の温度上昇を直接的に抑制することによって、電池の内部短絡時における電池温度の上昇を抑制したリチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池はリチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極合剤は少なくともSiまたはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有する。
【0018】
さらに、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極はSiまたはSi系合金材料を活物質とし、前記SiまたはSi系合金材料の表面には少なくとも酸化珪素と炭酸リチウムがある。
【0019】
さらに、Si系合金材料はSiと少なくともTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる1種類以上の元素との合金である。
【0020】
さらに、Si系合金材料中は少なくとも2つ以上の相からなり、一方はSi相であり、もう一方はSiと少なくともTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる1種類以上の元素との合金相からなる。
【0021】
さらに、負極合剤において、SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムの含有量がそれぞれ、0.01wt%〜20wt%である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極合剤は少なくともSiまたはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを特徴としている。
【0023】
本発明の作用について説明する。
【0024】
作用1) 電池の内部短絡時に、短絡電流により電池内部が加熱する。この加熱過程で(化1)の通り、負極合剤中の酸化珪素と炭酸リチウムが反応し、炭酸ガス(CO2)と珪酸リチウムを生成する。生成したCO2は電池内部に充填され、結果として、酸素分圧を低下させる。このために、酸素と加熱された電解液溶媒や正極負極の電極材料との急激な発熱反応を抑制され、結果として、過剰な加熱酸化反応を押さえ、電池温度の上昇を抑制する。
【0025】
【化1】
【0026】
作用2) 上記のような負極合剤中の酸化珪素と炭酸リチウムの反応によるCO2と珪酸リチウムの生成反応は吸熱反応と考えられることから、内部短絡とそれに伴う発熱反応状態にある電池を実質的に冷却させる効果がある。
【0027】
作用3) 先述の先行例とは異なり、本発明のCO2放出メカニズムは高温でCO2を放出し、吸熱するのみならず、低温ではCO2を可逆的に吸収し、その結果として、電池内圧もCO2放出前の状態となり、電池の信頼性を確保しやすい。
【0028】
以上のことから、本願発明の負極を用いると、負極活物質と非水電解質が反応し、負極の温度が上昇する。
【0029】
この負極の温度上昇を抑制することが肝要であるため、正極活物質に注目した従来の技術に記載した特許公開公報は本発明に対しては直接的には有効ではない。したがって、高容量と特に内部短絡に関する高信頼性を両立したリチウムイオン二次電池を作成できることを見いだした。
【0030】
なお、本願における合剤とは、活物質と導電材である炭素と結着剤であるテフロン(R)バインダ−と(実施例には酸化珪素と炭酸リチウムも含む場合がある)の混合状態を指す。通常は、水や有機溶剤を用いてペ−ストとし、これを集電板芯剤上に塗布し、乾燥して得る。
【0031】
さらには、負極はSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムが含有してもよい。
【0032】
また、Si系合金材料としてはTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金であることが望ましい。
【0033】
また、Si系合金材料中には組成の異なる少なくとも2つ以上の相が存在し、一方はSi相であり、もう一方はTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金相からなる状態のものがより好ましい。
【0034】
【実施例】
以下に本発明をその実施例によりさらに詳しく説明する。また、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
本実施例では、負極合剤中に、SiあるいはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有する場合について、詳細に検討した。
【0036】
本発明の負極を用いた電池の内部短絡に関する信頼性を評価するため、図1に示す直径18mm、長さ65mmの円筒型電池を以下の手順により作製した。図1は本発明の負極の特性を評価するための円筒型リチウムイオン電池の断面概略図を示す。
【0037】
まず、正極11の作製方法を述べる。正極活物質(図示せず)であるLiCoO2はLi2CO3とCoCO3とを所定のモル比で混合し、大気中において900℃で加熱することによって合成した。さらに、これを100メッシュ以下に分級したものを正極活物質とした。この正極活物質100gに対して導電剤(図示せず)として炭素粉末を10g、結着剤(図示せず)としてポリ4フッ化エチレンディスパージョン8gと純水を加え、ペースト状にし、厚さ15μmのアルミニウム箔の芯材に塗布し、乾燥して正極11を得た。
【0038】
次に、負極12の作製方法を述べる。負極活物質(図示せず)としてはSiあるいはSi系合金材料として、Ti、Ni、Fe、Cu、V、Zrから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金材料を用いた。用いた詳細な合金材料組成は(表1)に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、本発明はこれらの組成に限定されるものではない。
【0041】
(表1)に示したそれぞれの負極活物質に酸化珪素の粉末(試薬特級。100メッシュアンダー)と炭酸リチウム(試薬特級。100メッシュアンダー)と導電剤(図示せず)としての黒鉛粉末、結着剤(図示せず)としてのテフロン(R)バインダ−重量比で80:5:5:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥して負極12とした。
【0042】
セパレ−タ13としては、厚さが25μm、材質として多孔性ポリエチレンからなるものを用いた。
【0043】
電極はスポット溶接にて取り付けた芯材(図示せず)と同材質の正極リード14を有する正極11とスポット溶接にて取り付けた芯材と同材質の負極リード15を有する負極12間に両電極より幅の広い帯状のセパレータ13を介して全体を渦巻状に捲回して構成する。さらに、上記電極の上下それぞれにポリプロピレン製の上部絶縁板16、ならびに下部絶縁板17を配して電槽18に挿入し、電槽18の上部に段部を形成させた後、非水電解液として、1モル/リットルのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとジエチルカ−ボネ−トの等比体積混合溶液を注入し、封口板19で密閉してリチウムイオン二次電池とする。
【0044】
比較例は下記組成の負極を備えたリチウムイオン二次電池を作製した。
【0045】
(比較例1)
比較例1としては、負極合剤中に酸化珪素と炭酸リチウムを含有しない負極を用いた電池を同様に作成して、同様の試験評価を行った。
【0046】
(比較例2)
また、比較例2としては、黒鉛を負極活物質とした負極を採用し、電池を同様に作成し、上記と同様の試験を行った。
【0047】
作製したリチウムイオン二次電池の評価は下記に従った。
【0048】
すなわち、これらの電池は試験温度20℃で、充放電電流3mA/cm2、充放電電圧範囲4.2V〜2.5Vで充放電サイクル試験を行い、10サイクル目の充電後、および100サイクル目の充電後に内部短絡試験に供した。
【0049】
内部短絡試験の詳細は先述の非特許文献1に記載の方法に準じ、具体的には下記の手順を取った。
【0050】
1.4.2Vまで満充電状態とした円筒型試験電池を平面に置く。
【0051】
2.直径15.8mmの棒を電池の中央部に横たえる。
【0052】
3.9.1kgのおもりを61±2.5cmの高さから電池上に落下させる。
【0053】
4.円筒型電池はその縦軸が平面に対して平行にされ、かつ、上記の棒の縦軸に対して垂直にされ、衝突を受ける。衝突回数は1回とする。
【0054】
この試験において、求められる事項としては、試験電池の外部温度が170℃を超えず、試験後6時間以内に破裂や発火が見られないこととされている。
【0055】
なお、本実施例では、可能な限り、実用電池構成を維持した状態で評価するために、電池の内部温度を直接測定せずに、電池外部の表面温度を電池の外装缶表面に貼り付けた熱電対を用いて測定した。
【0056】
試験で得られた内部短絡試験時の電池表面の最高温度と9サイクル目の電池容量についても同様に(表1)に示す。
【0057】
本発明の負極を用いた電池は、比較例2に比べて、高容量かつ内部短絡時の電池表面温度が同程度の信頼性に優れた結果が得られた。また、Si系合金材料がTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金の場合では、電池表面温度は、10サイクル後、100サイクル後ともに、約80℃と低いことがわかった。
【0058】
また、比較例1に比べて、10サイクル後の電池表面温度は明確に低かった。さらに比較例1では、100サイクル後には約150℃まで昇温し、試験要件である170℃には至らないものの、これに近い温度であり、確実に信頼性を確保するにはいたらない。
【0059】
(実施例2)
本実施例では、負極12がSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有する場合について検討した。
【0060】
負極活物質にはSi粉末、あるいはTi2Si合金粉末、NiSi2合金粉末、FeSi合金粉末、CuSi合金粉末を用いた。
【0061】
まず、これらの表面の少なくとも一部に酸化珪素を含有させるために、各粉末状態のままで、大気中にて100℃で3時間の加熱処理を行った。次に、Li2CO3粉末を混合して、ボールミルにて10時間の混合処理を行い、負極活物質とした。
【0062】
ここで、SiあるいはSi系合金材料の表面の状態については、上記の処理後のX線回折分析と電子顕微鏡観察を行った。これらの解析によって、SiあるいはSi系合金材料の表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有する状態であることを確認した。
【0063】
それぞれの負極活物質に導電剤としての黒鉛粉末、結着剤としてのテフロン(R)バインダ−重量比で80:5:5:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥し、負極12とした。
【0064】
以上の方法で得た本発明の負極を用いた電池の内部短絡信頼性を評価するため、実施例1と同様の円筒型電池を作製し、評価方法も実施例1と同様に行った。
【0065】
得られた内部短絡試験時の電池表面の最高温度と試験直前の電池容量を(表2)に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
また、比較例3としては、SiあるいはTi2Si合金、NiSi2合金粉末、FeSi合金粉末、CuSi合金粉末に加熱処理と混合処理を行わないものを負極活物質として用いた電池を同様に作成した。
【0068】
また、比較例4としては、実施例1で作成したとおりの、SiあるいはTi2Si合金、NiSi2合金粉末、FeSi合金粉末、CuSi合金粉末に酸化珪素粉末と炭酸リチウム粉末を混合した負極を用いた電池を作成した。
【0069】
比較例3および比較例4の電池についても同様の試験評価を行った。
【0070】
本実施例の負極を用いた電池は、比較例3、比較例4に比べて、内部短絡時の電池表面温度は明確に低く、信頼性が格段に向上したことがわかった。しかも、100サイクル後の電池表面温度も実施例電池の場合には約60℃と低い状態が維持された。
【0071】
一方、比較例3および比較例4の電池では100サイクル後の電池表面温度が上昇し、特に比較例3では約150℃まで加熱される。試験要件である170℃に近い温度まで上昇するために、電池の信頼性を確実に確保するという点では、不充分といえる。
【0072】
この理由としては、酸化珪素と炭酸リチウムによるCO2発生反応が、活物質であるSiあるいはSi合金の表面に近い部分で行われた場合の方が、電池の過剰な発熱反応を抑制できると考えられる。
【0073】
これは、活物質と電解液と酸素が関係する高温での過剰な発熱反応の場である活物質表面でCO2発生が行われ、さらにこれに伴っての吸熱反応が生じることにより、電池内部温度の上昇が抑制され、内部短絡状態での電池状態がより安定な状態に維持されやすくなる。さらにこのような良好な状態がサイクル後にも、上記のCO2発生反応は活物質であるSiあるいはSi合金の表面に近い部分で行われた場合の方が、維持されやすい。
【0074】
(実施例3)
本実施例では、負極がSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有する場合について、次のような方法で検討した。
【0075】
負極活物質としてはSiあるいはTi2Si合金を用いた。
【0076】
それぞれの負極活物質に導電剤としての黒鉛粉末、結着剤としてのテフロン(R)バインダ−重量比で90:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥し、負極12とした。
【0077】
これ以降の円筒電池の作成工程は実施例1と同様である。
【0078】
これらの電池をそれぞれ2個づつ作成し、試験温度20℃で、充放電電流3mA/cm2、充放電電圧範囲4.2V〜2.5Vで充放電サイクル試験を行い、10サイクル目の充電後および100サイクル目の充電後に電池を60℃の恒温器中にて24時間保存した。
【0079】
この後、それぞれの電池1個を分解し、負極についてX線回折測定と電子顕微鏡観察を行うことによって、本実施例の負極はSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを確認した。
【0080】
この表面状態が得られたメカニズムは、充電状態で高温に保存された負極と電解液との固液界面近傍において、両者の相互作用によって、SiあるいはSi合金の表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムが生成したと推定している。
【0081】
さらに、それぞれの電池について、実施例1と同様な内部短絡試験を行った。
【0082】
(比較例5)
比較例5としては、上記の10サイクルの充電後および100サイクルの充電後に60℃保存を行わない電池について同様な内部短絡試験を行った。
【0083】
この場合の負極についても上記と同様の解析を行った結果、活物質として、SiあるいはSi系合金材料の表面に酸化珪素と炭酸リチウムを実質的に含有しない状態であることを確認した。
【0084】
(比較例6)
比較例6としては、実施例1で作成したとおりの、活物質として、SiあるいはTi2Si合金に酸化珪素粉末と炭酸リチウム粉末を混合した負極を用いた電池を作成し、同様な内部短絡試験を行った。
【0085】
得られた内部短絡試験時の電池表面の最高温度と試験直前の電池容量ならびに使用した負極活物質の種類、炭酸リチウムの混合と60℃処理の有無を(表3)に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
本発明の負極を用いた電池は、比較例5および比較例6と比べて、内部短絡時の電池表面温度は明確に低く、信頼性が格段に向上したことがわかった。しかも、比較例5および比較例6では、100サイクル後の電池表面温度は約100〜約150℃まで上昇し、試験要件である170℃に近い値であって、確実に電池の信頼性を確保するには不充分である。
【0088】
この理由としては、酸化珪素と炭酸リチウムによるCO2発生反応が、活物質であるSiあるいはSi合金の表面に近い部分で行われた場合の方が、電池の過剰な発熱反応を抑制できると考えられる。
【0089】
これは、活物質と電解液と酸素が関係する高温での過剰な発熱反応の場である活物質表面でCO2発生が行われ、さらにこれに伴っての吸熱反応が生じることにより、電池内部温度の上昇が抑制され、内部短絡状態での電池状態がより安定な状態に維持されやすくなると推定している。
【0090】
なお、実施例ではSi合金としてTi2Si合金について説明したが、Ti、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金について、同様の検討を行った結果、同様の効果が得られたことを確認している。
【0091】
(実施例4)
本実施例では、Ti2Si合金材料中に組成の異なる少なくとも2つ以上の相が存在し、一方はSi相、もう一方はTi2Si相である場合について検討した。
【0092】
この合金を負極活物質とし、導電剤としての黒鉛粉末、結着剤としてのテフロン(R)バインダ−重量比で90:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥し、負極12とした。
【0093】
これ以降の円筒電池の作成方法は実施例1と同様である。
【0094】
作成した電池を試験温度20℃で、充放電電流3mA/cm2、充放電電圧範囲4.2V〜2.5Vで充放電サイクル試験を行い、10サイクル目の充電後、および100サイクル目の充電後、および300サイクル目の充電後の電池を60℃にて24時間保存した。また、保存しない電池も用意した。
【0095】
(比較例7)
比較例7として、Ti2Si合金材料として、Ti2Si相のみが存在する合金材料についても上記と同様の検討を行った。
【0096】
なお、内部短絡試験の前に、それぞれの電池1個ずつを分解し、60℃で保存した電池の負極については、X線回折測定と電子顕微鏡観察によってSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを確認している。
【0097】
結果を(表4)に示した。
【0098】
【表4】
【0099】
本発明の電池は内部短絡時の電池表面温度は、いずれも低く、信頼性に優れている。しかも、2相の合金相が存在するものについては、300サイクル後の内部短絡試験についても、電池温度は低い状態が保たれている。
【0100】
これは、単相合金よりも2相を有する合金の方が、充放電サイクル性にすぐれており、リチウム脱挿入反応が負極合金全体にわたって均質に行われやすいと推定できる。
【0101】
したがって、300サイクル後においてもCO2発生反応が合金と電解液界面全体に均質に発生しやすい安定な状態を維持できていると考えている。
【0102】
(実施例5)
本実施例では負極合剤中の、SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムのそれぞれの含有量について詳細に検討した。
【0103】
(表5)に示した通りの、含有量(0〜40wt%)の範囲について検討した。
【0104】
【表5】
【0105】
負極板の作成方法は実施例1の方法に準じ、酸化珪素と炭酸リチウムの含有量のみが異なる点である。
【0106】
SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムの各含有量が0.01wt%より少ない場合には、含有しない場合と内部短絡時の電池温度が同程度であり、抑制効果がほとんど見られない。一方、含有量が20wt%より大きい場合には、内部短絡時の電池表面温度は低いが、電池容量が非常に小さい。これらの電池容量の減少は、酸化珪素と炭酸リチウムの含有で失われた活物質量から推定される容量減少よりも大きく、電子絶縁性の酸化珪素と炭酸リチウムの含有によって、負極板内の集電ネットワ−クが損なわれた結果と推定している。
【0107】
結果として、含有量が0.01wt%〜20wt%の範囲で、高容量でかつ、内部短絡時の電池表面温度が低い電池を構成することができることがわかった。
【0108】
また、100サイクル後には0.01wt%より少ない場合にはさらに温度が上昇し約150℃に至った。一方、0.01wt%〜20wt%の範囲の場合には、100サイクル後に置いても、表面温度は10サイクル後と同等であり、CO2発生メカニズムによる加熱抑制効果が維持されていることが解った。
【0109】
なお、以上の実施例1〜5で用いた合金は以下の方法で合成した。
【0110】
まず、所定の元素を塊状あるいは板状、あるいは粒状のまま任意の比率で混合し、アーク溶解炉で鋳造した。単相の合金材料としては、これを用いた。
【0111】
さらに、合金材料中に組成の異なる少なくとも2つ以上の相が存在する合金材料を選るには上記の得られた鋳造品を、ガスアトマイズ法を用いて球状の合金粒子を得た。このとき、噴射ノズル径は1mmφであり、雰囲気はAr下であり、Arガス噴射圧は100kgf/cm2で行った。
【0112】
これらの合金を45ミクロンメッシュのふるいを通すことで平均粒径28μmの粒子を得た。
【0113】
また、上記の実施例で説明した電池について、300サイクルを繰り返した負極板を取り出し観察したところ、金属リチウムの析出は確認されなかった。
【0114】
また、上記の実施例では円筒型電池を用いた場合についての説明を行ったが、本発明はこの構造に限定されるものではなくコイン型、角型、偏平型などの形状の二次電池においても全く同様の発明効果があったことを確認している。
【0115】
さらに上記の実施例では合金材料の製造方法に鋳造法とガスアトマイズ法について説明しているが、この他に、液体急冷法、イオンビームスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、気相化学反応法、メカニカルアロイ法のどれにおいても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0116】
なお、上記の実施例では正極としてLiCoO2について説明したがLiMn2O4、LiNiO2、などをはじめとする充放電に対して可逆性を有する正極と組み合わせた場合にも同様の効果があることはいうまでもない。
【0117】
【発明の効果】
本発明では、以上述べたように、高容量でかつ、電極の温度上昇が小さい信頼性に極めて優れた負極を用いることにより、より高エネルギー密度(電池容量が高い)の、内部短絡時においても電池の発熱が抑制された信頼性の高いリチウムイオン二次電池を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の負極の特性を評価するための円筒型電池の断面概略図
【符号の説明】
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 正極リード板
15 負極リード板
16 上部絶縁板
17 下部絶縁板
18 電槽
19 封口板
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウムイオン二次電池の負極の改良に関わり、高い電気容量を有し、信頼性に優れたリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウムまたはリチウム化合物を負極とするリチウムイオン二次電池は、高電圧で高エネルギー密度が期待され、多くの研究が行われている。
【0003】
これまでリチウムイオン二次電池の正極合剤にある、正極活物質には、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、V2O5、Cr2O5、MnO2、TiS2、MoS2などの遷移金属の酸化物およびカルコゲン化合物が知られおり、これらは層状もしくはトンネル構造を有し、リチウムイオンが出入りできる結晶構造を持つ。
【0004】
一方、負極合剤にある、負極活物質としては、容量は比較的小さいがリチウムを可逆的に吸蔵、放出でき、サイクル性、安全性に優れた黒鉛系の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン電池が実用化されている。
【0005】
しかし、黒鉛材料の理論容量は372mAh/gであり、理論密度が2.2g/ccと比較的低いことから、これに代わって、体積あたりで一層高容量な金属材料を負極として利用することが期待されている。
【0006】
金属材料の中でも、特に、Siは4199mAh/g(理論密度2.33g/cc)と高容量で、数多くの改良検討がなされている。このように高容量なSi負極であるが、充電反応と放電反応時のリチウムの挿入・脱離にともなうSi材料の膨脹・収縮の繰り返しによって生ずる微粉化が挙げられる。これによって活物質の反応性が低下し、充放電サイクル寿命を短くする。
【0007】
これらを解決する手段として、合金材料の改良が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
すなわち、固相Aにより形成される核の周囲の全面または一部を、固相Bによって包み込んだ複合粒子であって、前記固相Aはリチウムまたはリチウムと合金化することが可能な少なくとも一種の元素、もしくはリチウムと合金化することが可能な前記元素を含む固溶体または金属間化合物からなり、前記固相Bは、前記固相Aとは組成が異なり、かつ前記固相Aを形成するリチウムまたはリチウムと合金化することが可能な少なくとも一種の元素を含む固溶体または金属間化合物を負極に用いるものである。
【0009】
電池はその信頼性の確保のために、多くの信頼性試験項目が用意されている。(たとえば、非特許文献1参照)。中でも、「内部短絡試験」は、衝突を想定し、電池内部で正極と負極の短絡が発生した場合の信頼性試験であり、重要な項目の一つである。
【0010】
この内部短絡の状況を推察すると、充電状態にある電池内部で正極と負極の短絡が発生した場合に、短絡電流Iが発生し、電池の内部抵抗をRとした場合には、発生する内部発熱量(ジュール熱)はI2Rとなる。高容量なSi負極電池で大きな短絡電流が発生するため、現行炭素負極電池と比べてジュ−ル熱による電池内部温度の上昇が極めて大きな状態となる恐れがある。
【0011】
さらに詳細なメカニズムはわかっていないが、このように電池内部が高温に変化した状態では、通常の充放電反応とは別に、充電状態にある正極材料や負極材料と電解質成分あるいは電池内部の酸素雰囲気などが相互に高温下で活性な状態となって、副反応が生じ、さらに電池温度の上昇を助長させる場合や、これらの副反応によって電解液が分解してガス化し電池内部の圧力を上昇させる場合など、電池の信頼性面の弊害が生じる恐れがあると考えられる。
【0012】
上記弊害を解決するために、従来、正極活物質層の外側に炭酸マグネシウムからなる吸熱層を設け、電池が短絡した場合には炭酸ガスを放出しながら吸熱反応による電池の冷却効果を持った電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−30703号公報
【特許文献2】
特開平10−233237号公報
【非特許文献1】
社団法人 電池工業会編「リチウム電池及びリチウムイオン電池の輸送に関する手引書」、平成14年1月、全頁
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この場合には、炭酸ガスの放出が可逆的ではなく、一度、電池内部に放出されて充填された炭酸ガスのために、電池内圧は高いままの状態であり、温度抑制には有効な場合でも、その後の電池の状態は不安定なものであり、電池の信頼性を損なうおそれもあり、十分に配慮した方法とはいえない。
【0015】
さらには、正極活物質層の外側に炭酸マグネシウムからなる吸熱層を設けるため、発熱する重要箇所が正極内部であるにもかかわらず、その外側から吸熱を作用させるという、いわば間接的な構成を取っているため、急激な発熱に対しては、その作用が遅れる結果となり、冷却効果や炭酸ガスの放出効果がきわめて不充分な構成となっているという課題を有していた。
【0016】
本発明は、以上に鑑み、高容量かつ電池の信頼性を改良し、特に充電状態の負極の温度上昇を直接的に抑制することによって、電池の内部短絡時における電池温度の上昇を抑制したリチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池はリチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極合剤は少なくともSiまたはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有する。
【0018】
さらに、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極はSiまたはSi系合金材料を活物質とし、前記SiまたはSi系合金材料の表面には少なくとも酸化珪素と炭酸リチウムがある。
【0019】
さらに、Si系合金材料はSiと少なくともTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる1種類以上の元素との合金である。
【0020】
さらに、Si系合金材料中は少なくとも2つ以上の相からなり、一方はSi相であり、もう一方はSiと少なくともTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる1種類以上の元素との合金相からなる。
【0021】
さらに、負極合剤において、SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムの含有量がそれぞれ、0.01wt%〜20wt%である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極合剤は少なくともSiまたはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを特徴としている。
【0023】
本発明の作用について説明する。
【0024】
作用1) 電池の内部短絡時に、短絡電流により電池内部が加熱する。この加熱過程で(化1)の通り、負極合剤中の酸化珪素と炭酸リチウムが反応し、炭酸ガス(CO2)と珪酸リチウムを生成する。生成したCO2は電池内部に充填され、結果として、酸素分圧を低下させる。このために、酸素と加熱された電解液溶媒や正極負極の電極材料との急激な発熱反応を抑制され、結果として、過剰な加熱酸化反応を押さえ、電池温度の上昇を抑制する。
【0025】
【化1】
【0026】
作用2) 上記のような負極合剤中の酸化珪素と炭酸リチウムの反応によるCO2と珪酸リチウムの生成反応は吸熱反応と考えられることから、内部短絡とそれに伴う発熱反応状態にある電池を実質的に冷却させる効果がある。
【0027】
作用3) 先述の先行例とは異なり、本発明のCO2放出メカニズムは高温でCO2を放出し、吸熱するのみならず、低温ではCO2を可逆的に吸収し、その結果として、電池内圧もCO2放出前の状態となり、電池の信頼性を確保しやすい。
【0028】
以上のことから、本願発明の負極を用いると、負極活物質と非水電解質が反応し、負極の温度が上昇する。
【0029】
この負極の温度上昇を抑制することが肝要であるため、正極活物質に注目した従来の技術に記載した特許公開公報は本発明に対しては直接的には有効ではない。したがって、高容量と特に内部短絡に関する高信頼性を両立したリチウムイオン二次電池を作成できることを見いだした。
【0030】
なお、本願における合剤とは、活物質と導電材である炭素と結着剤であるテフロン(R)バインダ−と(実施例には酸化珪素と炭酸リチウムも含む場合がある)の混合状態を指す。通常は、水や有機溶剤を用いてペ−ストとし、これを集電板芯剤上に塗布し、乾燥して得る。
【0031】
さらには、負極はSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムが含有してもよい。
【0032】
また、Si系合金材料としてはTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金であることが望ましい。
【0033】
また、Si系合金材料中には組成の異なる少なくとも2つ以上の相が存在し、一方はSi相であり、もう一方はTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金相からなる状態のものがより好ましい。
【0034】
【実施例】
以下に本発明をその実施例によりさらに詳しく説明する。また、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
本実施例では、負極合剤中に、SiあるいはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有する場合について、詳細に検討した。
【0036】
本発明の負極を用いた電池の内部短絡に関する信頼性を評価するため、図1に示す直径18mm、長さ65mmの円筒型電池を以下の手順により作製した。図1は本発明の負極の特性を評価するための円筒型リチウムイオン電池の断面概略図を示す。
【0037】
まず、正極11の作製方法を述べる。正極活物質(図示せず)であるLiCoO2はLi2CO3とCoCO3とを所定のモル比で混合し、大気中において900℃で加熱することによって合成した。さらに、これを100メッシュ以下に分級したものを正極活物質とした。この正極活物質100gに対して導電剤(図示せず)として炭素粉末を10g、結着剤(図示せず)としてポリ4フッ化エチレンディスパージョン8gと純水を加え、ペースト状にし、厚さ15μmのアルミニウム箔の芯材に塗布し、乾燥して正極11を得た。
【0038】
次に、負極12の作製方法を述べる。負極活物質(図示せず)としてはSiあるいはSi系合金材料として、Ti、Ni、Fe、Cu、V、Zrから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金材料を用いた。用いた詳細な合金材料組成は(表1)に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、本発明はこれらの組成に限定されるものではない。
【0041】
(表1)に示したそれぞれの負極活物質に酸化珪素の粉末(試薬特級。100メッシュアンダー)と炭酸リチウム(試薬特級。100メッシュアンダー)と導電剤(図示せず)としての黒鉛粉末、結着剤(図示せず)としてのテフロン(R)バインダ−重量比で80:5:5:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥して負極12とした。
【0042】
セパレ−タ13としては、厚さが25μm、材質として多孔性ポリエチレンからなるものを用いた。
【0043】
電極はスポット溶接にて取り付けた芯材(図示せず)と同材質の正極リード14を有する正極11とスポット溶接にて取り付けた芯材と同材質の負極リード15を有する負極12間に両電極より幅の広い帯状のセパレータ13を介して全体を渦巻状に捲回して構成する。さらに、上記電極の上下それぞれにポリプロピレン製の上部絶縁板16、ならびに下部絶縁板17を配して電槽18に挿入し、電槽18の上部に段部を形成させた後、非水電解液として、1モル/リットルのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとジエチルカ−ボネ−トの等比体積混合溶液を注入し、封口板19で密閉してリチウムイオン二次電池とする。
【0044】
比較例は下記組成の負極を備えたリチウムイオン二次電池を作製した。
【0045】
(比較例1)
比較例1としては、負極合剤中に酸化珪素と炭酸リチウムを含有しない負極を用いた電池を同様に作成して、同様の試験評価を行った。
【0046】
(比較例2)
また、比較例2としては、黒鉛を負極活物質とした負極を採用し、電池を同様に作成し、上記と同様の試験を行った。
【0047】
作製したリチウムイオン二次電池の評価は下記に従った。
【0048】
すなわち、これらの電池は試験温度20℃で、充放電電流3mA/cm2、充放電電圧範囲4.2V〜2.5Vで充放電サイクル試験を行い、10サイクル目の充電後、および100サイクル目の充電後に内部短絡試験に供した。
【0049】
内部短絡試験の詳細は先述の非特許文献1に記載の方法に準じ、具体的には下記の手順を取った。
【0050】
1.4.2Vまで満充電状態とした円筒型試験電池を平面に置く。
【0051】
2.直径15.8mmの棒を電池の中央部に横たえる。
【0052】
3.9.1kgのおもりを61±2.5cmの高さから電池上に落下させる。
【0053】
4.円筒型電池はその縦軸が平面に対して平行にされ、かつ、上記の棒の縦軸に対して垂直にされ、衝突を受ける。衝突回数は1回とする。
【0054】
この試験において、求められる事項としては、試験電池の外部温度が170℃を超えず、試験後6時間以内に破裂や発火が見られないこととされている。
【0055】
なお、本実施例では、可能な限り、実用電池構成を維持した状態で評価するために、電池の内部温度を直接測定せずに、電池外部の表面温度を電池の外装缶表面に貼り付けた熱電対を用いて測定した。
【0056】
試験で得られた内部短絡試験時の電池表面の最高温度と9サイクル目の電池容量についても同様に(表1)に示す。
【0057】
本発明の負極を用いた電池は、比較例2に比べて、高容量かつ内部短絡時の電池表面温度が同程度の信頼性に優れた結果が得られた。また、Si系合金材料がTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金の場合では、電池表面温度は、10サイクル後、100サイクル後ともに、約80℃と低いことがわかった。
【0058】
また、比較例1に比べて、10サイクル後の電池表面温度は明確に低かった。さらに比較例1では、100サイクル後には約150℃まで昇温し、試験要件である170℃には至らないものの、これに近い温度であり、確実に信頼性を確保するにはいたらない。
【0059】
(実施例2)
本実施例では、負極12がSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有する場合について検討した。
【0060】
負極活物質にはSi粉末、あるいはTi2Si合金粉末、NiSi2合金粉末、FeSi合金粉末、CuSi合金粉末を用いた。
【0061】
まず、これらの表面の少なくとも一部に酸化珪素を含有させるために、各粉末状態のままで、大気中にて100℃で3時間の加熱処理を行った。次に、Li2CO3粉末を混合して、ボールミルにて10時間の混合処理を行い、負極活物質とした。
【0062】
ここで、SiあるいはSi系合金材料の表面の状態については、上記の処理後のX線回折分析と電子顕微鏡観察を行った。これらの解析によって、SiあるいはSi系合金材料の表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有する状態であることを確認した。
【0063】
それぞれの負極活物質に導電剤としての黒鉛粉末、結着剤としてのテフロン(R)バインダ−重量比で80:5:5:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥し、負極12とした。
【0064】
以上の方法で得た本発明の負極を用いた電池の内部短絡信頼性を評価するため、実施例1と同様の円筒型電池を作製し、評価方法も実施例1と同様に行った。
【0065】
得られた内部短絡試験時の電池表面の最高温度と試験直前の電池容量を(表2)に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
また、比較例3としては、SiあるいはTi2Si合金、NiSi2合金粉末、FeSi合金粉末、CuSi合金粉末に加熱処理と混合処理を行わないものを負極活物質として用いた電池を同様に作成した。
【0068】
また、比較例4としては、実施例1で作成したとおりの、SiあるいはTi2Si合金、NiSi2合金粉末、FeSi合金粉末、CuSi合金粉末に酸化珪素粉末と炭酸リチウム粉末を混合した負極を用いた電池を作成した。
【0069】
比較例3および比較例4の電池についても同様の試験評価を行った。
【0070】
本実施例の負極を用いた電池は、比較例3、比較例4に比べて、内部短絡時の電池表面温度は明確に低く、信頼性が格段に向上したことがわかった。しかも、100サイクル後の電池表面温度も実施例電池の場合には約60℃と低い状態が維持された。
【0071】
一方、比較例3および比較例4の電池では100サイクル後の電池表面温度が上昇し、特に比較例3では約150℃まで加熱される。試験要件である170℃に近い温度まで上昇するために、電池の信頼性を確実に確保するという点では、不充分といえる。
【0072】
この理由としては、酸化珪素と炭酸リチウムによるCO2発生反応が、活物質であるSiあるいはSi合金の表面に近い部分で行われた場合の方が、電池の過剰な発熱反応を抑制できると考えられる。
【0073】
これは、活物質と電解液と酸素が関係する高温での過剰な発熱反応の場である活物質表面でCO2発生が行われ、さらにこれに伴っての吸熱反応が生じることにより、電池内部温度の上昇が抑制され、内部短絡状態での電池状態がより安定な状態に維持されやすくなる。さらにこのような良好な状態がサイクル後にも、上記のCO2発生反応は活物質であるSiあるいはSi合金の表面に近い部分で行われた場合の方が、維持されやすい。
【0074】
(実施例3)
本実施例では、負極がSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有する場合について、次のような方法で検討した。
【0075】
負極活物質としてはSiあるいはTi2Si合金を用いた。
【0076】
それぞれの負極活物質に導電剤としての黒鉛粉末、結着剤としてのテフロン(R)バインダ−重量比で90:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥し、負極12とした。
【0077】
これ以降の円筒電池の作成工程は実施例1と同様である。
【0078】
これらの電池をそれぞれ2個づつ作成し、試験温度20℃で、充放電電流3mA/cm2、充放電電圧範囲4.2V〜2.5Vで充放電サイクル試験を行い、10サイクル目の充電後および100サイクル目の充電後に電池を60℃の恒温器中にて24時間保存した。
【0079】
この後、それぞれの電池1個を分解し、負極についてX線回折測定と電子顕微鏡観察を行うことによって、本実施例の負極はSiあるいはSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを確認した。
【0080】
この表面状態が得られたメカニズムは、充電状態で高温に保存された負極と電解液との固液界面近傍において、両者の相互作用によって、SiあるいはSi合金の表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムが生成したと推定している。
【0081】
さらに、それぞれの電池について、実施例1と同様な内部短絡試験を行った。
【0082】
(比較例5)
比較例5としては、上記の10サイクルの充電後および100サイクルの充電後に60℃保存を行わない電池について同様な内部短絡試験を行った。
【0083】
この場合の負極についても上記と同様の解析を行った結果、活物質として、SiあるいはSi系合金材料の表面に酸化珪素と炭酸リチウムを実質的に含有しない状態であることを確認した。
【0084】
(比較例6)
比較例6としては、実施例1で作成したとおりの、活物質として、SiあるいはTi2Si合金に酸化珪素粉末と炭酸リチウム粉末を混合した負極を用いた電池を作成し、同様な内部短絡試験を行った。
【0085】
得られた内部短絡試験時の電池表面の最高温度と試験直前の電池容量ならびに使用した負極活物質の種類、炭酸リチウムの混合と60℃処理の有無を(表3)に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
本発明の負極を用いた電池は、比較例5および比較例6と比べて、内部短絡時の電池表面温度は明確に低く、信頼性が格段に向上したことがわかった。しかも、比較例5および比較例6では、100サイクル後の電池表面温度は約100〜約150℃まで上昇し、試験要件である170℃に近い値であって、確実に電池の信頼性を確保するには不充分である。
【0088】
この理由としては、酸化珪素と炭酸リチウムによるCO2発生反応が、活物質であるSiあるいはSi合金の表面に近い部分で行われた場合の方が、電池の過剰な発熱反応を抑制できると考えられる。
【0089】
これは、活物質と電解液と酸素が関係する高温での過剰な発熱反応の場である活物質表面でCO2発生が行われ、さらにこれに伴っての吸熱反応が生じることにより、電池内部温度の上昇が抑制され、内部短絡状態での電池状態がより安定な状態に維持されやすくなると推定している。
【0090】
なお、実施例ではSi合金としてTi2Si合金について説明したが、Ti、Ni、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素とSiとの合金について、同様の検討を行った結果、同様の効果が得られたことを確認している。
【0091】
(実施例4)
本実施例では、Ti2Si合金材料中に組成の異なる少なくとも2つ以上の相が存在し、一方はSi相、もう一方はTi2Si相である場合について検討した。
【0092】
この合金を負極活物質とし、導電剤としての黒鉛粉末、結着剤としてのテフロン(R)バインダ−重量比で90:5:5の割合で混合し、石油系溶剤を用いてペ−スト状としたものを厚さ15μmの銅箔の芯材に塗布後、100℃で乾燥し、負極12とした。
【0093】
これ以降の円筒電池の作成方法は実施例1と同様である。
【0094】
作成した電池を試験温度20℃で、充放電電流3mA/cm2、充放電電圧範囲4.2V〜2.5Vで充放電サイクル試験を行い、10サイクル目の充電後、および100サイクル目の充電後、および300サイクル目の充電後の電池を60℃にて24時間保存した。また、保存しない電池も用意した。
【0095】
(比較例7)
比較例7として、Ti2Si合金材料として、Ti2Si相のみが存在する合金材料についても上記と同様の検討を行った。
【0096】
なお、内部短絡試験の前に、それぞれの電池1個ずつを分解し、60℃で保存した電池の負極については、X線回折測定と電子顕微鏡観察によってSi系合金材料を活物質とし、それらの表面の少なくとも一部に酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを確認している。
【0097】
結果を(表4)に示した。
【0098】
【表4】
【0099】
本発明の電池は内部短絡時の電池表面温度は、いずれも低く、信頼性に優れている。しかも、2相の合金相が存在するものについては、300サイクル後の内部短絡試験についても、電池温度は低い状態が保たれている。
【0100】
これは、単相合金よりも2相を有する合金の方が、充放電サイクル性にすぐれており、リチウム脱挿入反応が負極合金全体にわたって均質に行われやすいと推定できる。
【0101】
したがって、300サイクル後においてもCO2発生反応が合金と電解液界面全体に均質に発生しやすい安定な状態を維持できていると考えている。
【0102】
(実施例5)
本実施例では負極合剤中の、SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムのそれぞれの含有量について詳細に検討した。
【0103】
(表5)に示した通りの、含有量(0〜40wt%)の範囲について検討した。
【0104】
【表5】
【0105】
負極板の作成方法は実施例1の方法に準じ、酸化珪素と炭酸リチウムの含有量のみが異なる点である。
【0106】
SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムの各含有量が0.01wt%より少ない場合には、含有しない場合と内部短絡時の電池温度が同程度であり、抑制効果がほとんど見られない。一方、含有量が20wt%より大きい場合には、内部短絡時の電池表面温度は低いが、電池容量が非常に小さい。これらの電池容量の減少は、酸化珪素と炭酸リチウムの含有で失われた活物質量から推定される容量減少よりも大きく、電子絶縁性の酸化珪素と炭酸リチウムの含有によって、負極板内の集電ネットワ−クが損なわれた結果と推定している。
【0107】
結果として、含有量が0.01wt%〜20wt%の範囲で、高容量でかつ、内部短絡時の電池表面温度が低い電池を構成することができることがわかった。
【0108】
また、100サイクル後には0.01wt%より少ない場合にはさらに温度が上昇し約150℃に至った。一方、0.01wt%〜20wt%の範囲の場合には、100サイクル後に置いても、表面温度は10サイクル後と同等であり、CO2発生メカニズムによる加熱抑制効果が維持されていることが解った。
【0109】
なお、以上の実施例1〜5で用いた合金は以下の方法で合成した。
【0110】
まず、所定の元素を塊状あるいは板状、あるいは粒状のまま任意の比率で混合し、アーク溶解炉で鋳造した。単相の合金材料としては、これを用いた。
【0111】
さらに、合金材料中に組成の異なる少なくとも2つ以上の相が存在する合金材料を選るには上記の得られた鋳造品を、ガスアトマイズ法を用いて球状の合金粒子を得た。このとき、噴射ノズル径は1mmφであり、雰囲気はAr下であり、Arガス噴射圧は100kgf/cm2で行った。
【0112】
これらの合金を45ミクロンメッシュのふるいを通すことで平均粒径28μmの粒子を得た。
【0113】
また、上記の実施例で説明した電池について、300サイクルを繰り返した負極板を取り出し観察したところ、金属リチウムの析出は確認されなかった。
【0114】
また、上記の実施例では円筒型電池を用いた場合についての説明を行ったが、本発明はこの構造に限定されるものではなくコイン型、角型、偏平型などの形状の二次電池においても全く同様の発明効果があったことを確認している。
【0115】
さらに上記の実施例では合金材料の製造方法に鋳造法とガスアトマイズ法について説明しているが、この他に、液体急冷法、イオンビームスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、気相化学反応法、メカニカルアロイ法のどれにおいても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0116】
なお、上記の実施例では正極としてLiCoO2について説明したがLiMn2O4、LiNiO2、などをはじめとする充放電に対して可逆性を有する正極と組み合わせた場合にも同様の効果があることはいうまでもない。
【0117】
【発明の効果】
本発明では、以上述べたように、高容量でかつ、電極の温度上昇が小さい信頼性に極めて優れた負極を用いることにより、より高エネルギー密度(電池容量が高い)の、内部短絡時においても電池の発熱が抑制された信頼性の高いリチウムイオン二次電池を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の負極の特性を評価するための円筒型電池の断面概略図
【符号の説明】
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 正極リード板
15 負極リード板
16 上部絶縁板
17 下部絶縁板
18 電槽
19 封口板
Claims (5)
- リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極合剤は少なくともSiまたはSi系合金材料と酸化珪素と炭酸リチウムを含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
- リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な活物質を有する正極合剤を集電体上に積層した正極と、活物質を有する負極合剤を集電体上に積層した負極と、非水電解質とを用いたリチウムイオン二次電池であって、前記負極はSiまたはSi系合金材料を活物質とし、前記SiまたはSi系合金材料の表面には少なくとも酸化珪素と炭酸リチウムがあることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池。
- Si系合金材料はSiと少なくともTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる1種類以上の元素との合金であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
- Si系合金材料中は少なくとも2つ以上の相からなり、一方はSi相であり、もう一方はSiと少なくともTi、Ni、Fe、Cuから選ばれる1種類以上の元素との合金相からなる請求項1から3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
- 負極合剤において、SiあるいはSi系合金材料に対する酸化珪素と炭酸リチウムの含有量がそれぞれ、0.01wt%〜20wt%であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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