JP2004146024A - 光記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

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洞井 高志
Shigetoshi Fukuzawa
福澤 成敏
Hiroyuki Arioka
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Abstract

【課題】同一の溶媒に溶解しない複数の有機色素を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の有機色素を含む第1色素膜21aを形成する工程と、吸収波長域が第1の有機色素21aと重複する第2の有機色素を含む第2色素膜21bを形成する工程とを備える。このように、第1色素膜21aの形成と第2色素膜21bの形成とを別工程により行えば、第1の有機色素と第2の有機色素とが同一の溶媒に溶解しない場合であっても、これらを記録層の材料として同時に用いることが可能となる。これにより、選択し得る有機色素の制限が大幅に緩和されることから、高感度、高反射率、高変調度を同時に得ることが可能となり、高速記録に適した光記録媒体を作製することが可能となる。
【選択図】     図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光記録媒体及びその製造方法に関し、特に、記録層に有機色素を含む追記型の光記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録媒体が広く利用されている。これらの光記録媒体は、CD−ROMやDVD−ROMのようにデータの追記や書き換えができないタイプの光記録媒体(ROM型光記録媒体)と、CD−RやDVD−Rのようにデータの追記はできるがデータの書き換えができないタイプの光記録媒体(追記型光記録媒体)と、CD−RWやDVD−RWのようにデータの書き換えが可能なタイプの光記録媒体(書き換え型光記録媒体)とに大別することができる。
【0003】
広く知られているように、ROM型光記録媒体においては、製造段階において基板に形成されるピットによりデータが記録されることが一般的であり、書き換え型光記録媒体においては、例えば、記録層の材料として相変化材料が用られ、その相状態の変化に基づく光学特性の変化を利用してデータが記録されることが一般的である。
【0004】
これに対し、追記型光記録媒体においては、記録層の材料として有機色素が用いられ、その不可逆的な化学変化(場合によっては化学的変化に加えて物理的変形を伴うことがある)に基づく光学特性の変化を利用してデータが記録されることが一般的である。有機色素の不可逆的な化学変化は、通常、所定以上の強度を持つレーザビームを照射することによって行われ、これにより記録層に所望の記録マークを形成することが可能となる。
【0005】
具体的には、追記型光記録媒体にデータを記録する場合、基本的に、記録マークを形成すべき部分においてはレーザビームの強度を十分に高い記録パワー(Pw)に設定し、記録マークを形成すべきでない部分、すなわちブランク領域においてはレーザビームの強度を十分に低い基底パワー(Pb)に設定すればよい。これにより、記録パワー(Pw)を持つレーザビームが照射された部分においては有機色素が分解変質して記録マークとなり、基底パワー(Pb)を持つレーザビームが照射された部分においては、有機色素の分解変質は生じず、ブランク領域となる。したがって、追記型光記録媒体を回転させながら、強度変調されたレーザビームを記録層に照射すれば、追記型光記録媒体に所望のデータを記録することが可能となる。
【0006】
このような追記型光記録媒体の記録層に用いられる有機色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ色素等、種々の有機色素が挙げられ、目的とする特性に応じて最適な有機色素が選択される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年、いっそうの高速記録が望まれており、これを実現するためには追記型光記録媒体の記録層に用いられる有機色素としても、高感度で且つ高反射率・高変調度が得られる有機色素を用いる必要がある。しかしながら、上記特性の全てを単一の有機色素によって満たすことは困難であり、このため、高速記録が可能な追記型光記録媒体における記録層の材料としては、互いに特性の異なる複数の有機色素を同時に用いることが考えられる。
【0008】
ところが、特性の異なる複数の有機色素は同一の溶媒に溶解しないことが多いため、選択し得る有機色素に制限が多いという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、記録層に複数の有機色素が含まれる追記型光記録媒体の改良された製造方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、同一の溶媒に溶解しない複数の有機色素を含む記録層を備えた追記型光記録媒体及びその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一側面による光記録媒体の製造方法は、第1の有機色素を含む第1色素膜を形成する工程と、吸収波長域が前記第1の有機色素と重複する第2の有機色素を含む第2色素膜を形成する工程とを備えている。
【0012】
本発明によれば、第1色素膜の形成と第2色素膜の形成とを別工程により行っていることから、第1の有機色素と第2の有機色素とが同一の溶媒に溶解しない場合であっても、これらを記録層の材料として同時に用いることが可能となる。これにより、選択し得る有機色素の制限が大幅に緩和されることから、高感度、高反射率、高変調度を同時に得ることが可能となり、高速記録に適した光記録媒体を作製することが可能となる。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、前記第1色素膜を形成する工程は、前記第1の有機色素を第1の溶媒に溶解させてなる第1の溶液を基板上に塗布する工程であり、前記第2色素膜を形成する工程は、前記第2の有機色素を第2の溶媒に溶解させてなる第2の溶液を前記第1色素上に塗布する工程である。また、本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第1の有機色素は実質的に前記第2の溶媒に溶解せず、前記第2の有機色素は前記第1の溶媒に実質的に溶解しない。また、本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第1の溶液の塗布及び前記第2の溶液の塗布をスピンコート法により行う。
【0014】
本発明の他の側面による光記録媒体の製造方法は、基板上に、極大吸収波長が450〜600nmの範囲にある主色素を含む色素膜と極大吸収波長が600〜750nmの範囲にある副色素を含む色素膜を連続的に形成し、これによって前記基板上に記録層を形成する工程を備え、波長が655nmである光に対する前記記録層の消衰係数をα、波長が670nmである光に対する前記記録層の消衰係数をβとした場合、
0.03≦α、
0.03≦β、且つ、
0.7≦(β/α)≦1.05
が満たされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、比較的広範囲の波長領域の光に対して優れた記録特性を得ることができ、記録波長が規格化された値からずれた場合であっても情報の記録を良好に行うことができる。特に、650〜680nmの波長範囲の光に対して優れた記録特性を得ることができ、記録波長がDVD−Rについて規格化された値(650nm)から特に655〜680nmの長波長側の範囲にずれた場合であっても情報の記録を良好に行うことができる。しかも、本発明によれば、主色素を含む色素膜と副色素を含む色素膜とを連続的に形成していることから、主色素と副色素とが同一の溶媒に溶解しない場合であっても、これらを記録層の材料として同時に用いることが可能となる。
【0016】
本発明のさらに他の側面による光記録媒体の製造方法は、基板上に、極大吸収波長が450〜600nmの範囲にある主色素を含む色素膜と記録波長における消衰係数が0.3以上である副色素を含む色素膜を連続的に形成し、これによって前記基板上に記録層を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、高耐光性や良好な反射率を維持しつつ、例えば10m/s以上の高速な線速度での記録が可能な光記録媒体を製造することができる。しかも、本発明によれば、主色素を含む色素膜と副色素を含む色素膜とを連続的に形成していることから、主色素と副色素とが同一の溶媒に溶解しない場合であっても、これらを記録層の材料として同時に用いることが可能となる。
【0018】
尚、「主色素を含む色素膜と副色素を含む色素膜とを連続的に形成する」とは、主色素を含む色素膜と副色素を含む色素膜とをこの順に続けて形成し、或いは、副色素を含む色素膜と主色素を含む色素膜とをこの順に続けて形成するとの意であり、形成順序を規定するものではない。
【0019】
また、本発明による光記録媒体は、基板と前記基板上に設けられた記録層とを少なくとも備える光記録媒体であって、前記記録層は、吸収波長域が互いに重複し、実質的に同一の溶媒に溶解しない複数の有機色素をそれぞれ含む複数の色素膜の積層体であることを特徴とする。この場合、前記複数の色素膜の膜厚が互いに異なることが好ましい。これによれば、膜厚の厚い方の色素膜が有する特性を実質的に損なうことなく、膜厚の薄い方の色素膜が有する特性を効果的に加味することが可能となる。
【0020】
また、前記複数の色素膜のうち、膜厚の厚い方の色素膜を構成する材料を主色素とし、膜厚の薄い方の色素膜を構成する材料を副色素とした場合、前記主色素の極大吸収波長が450〜600nmの範囲にあり、前記副色素の極大吸収波長が600〜750nmの範囲にあり、波長が655nmである光に対する前記記録層の消衰係数をα、波長が670nmである光に対する前記記録層の消衰係数をβとした場合、
0.03≦α、
0.03≦β、且つ、
0.7≦(β/α)≦1.05
が満たされていることが好ましい。これによれば、比較的広範囲の波長領域の光に対して優れた記録特性を得ることができ、記録波長が規格化された値からずれた場合であっても情報の記録を良好に行うことができる。特に、650〜680nmの波長範囲の光に対して優れた記録特性を得ることができ、記録波長がDVD−Rについて規格化された値(650nm)から特に655〜680nmの長波長側の範囲にずれた場合であっても情報の記録を良好に行うことができる。
【0021】
また、前記記録層は、波長が655〜670nmの範囲にある光に対する消衰係数が0.03〜0.1であることがさらに好ましい。また、前記主色素は、極大吸収波長の光に対する消衰係数が0.7以上であることがさらに好ましい。また、前記副色素は、情報記録に使用する波長の光に対する消衰係数が0.5以上であることがさらに好ましい。また、前記副色素は、波長が650〜680nmの範囲にある光に対する消衰係数が0.3以上であることがさらに好ましい。これらによれば、記録層に求められる所望の光学特性をより確実に得ることが可能となる。
【0022】
また、前記記録層における前記副色素の含有量が、該記録層の総質量に対して10質量%以下であることがさらに好ましい。これによれば、記録特性(エラーやジッター)への悪影響を抑制することが可能となる。
【0023】
さらに、前記複数の色素膜のうち、膜厚の厚い方の色素膜を構成する材料を主色素とし、膜厚の薄い方の色素膜を構成する材料を副色素とした場合、前記主色素の極大吸収波長が450〜600nmの範囲にあり、記録波長における前記副色素の消衰係数が0.3以上であることもまた好ましい。これによれば、高耐光性や良好な反射率を維持しつつ、例えば10m/s以上の高速な線速度での記録が可能となる。
【0024】
尚、本明細書において、色素が溶媒に「溶解しない」とは、当該色素が当該溶媒に全く溶解しない場合のみならず、当該色素を当該溶媒に溶解させてなる溶液を塗布した場合に、有効な色素膜が形成されない程度に溶解性が低い場合をも含む。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。
【0026】
図1(a)は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体10の外観を示す切り欠き斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA部を拡大した部分断面図である。
【0027】
図1(a),(b)に示す光記録媒体10は、いわゆるDVD−R型の光記録媒体(追記型光記録媒体)であって、その外径は約120mm、厚みは約1.2mmに設定されている。また、図1(b)に示すように、光記録媒体10は光透過性基板11及びダミー基板12と、これらの間に設けられた記録層21、反射層22、保護層23、接着層24とを備えて構成されている。
【0028】
光透過性基板11は、使用されるレーザビームの波長領域において光透過率が十分に高い材料からなる円盤状の基板であり、その一方の面(図1における下面)はレーザビームが入射する光入射面11aを構成し、他方の面(図1における上面)には、その中心部近傍から外縁部に向けて、レーザビームガイド用のグルーブ11bおよびランド11cが螺旋状に形成されている。光透過性基板11は、データの記録/再生時に照射されるレーザビームの光路となるとともに、光記録媒体10に求められる機械的強度を確保するための基体としての役割をも果たす。光透過性基板11の厚さは約0.6mmに設定され、その材料としては、成形の容易性の観点から樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、光学特性・加工性などの点からポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂が特に好ましい。
【0029】
ダミー基板12は、光記録媒体10に求められる厚み(約1.2mm)を確保するために用いられる円盤状の基板であり、その厚さは光透過性基板11と同様、約0.6mmに設定される。ダミー基板12の材料は、ガラス、セラミックス、樹脂等、種々の材料を用いることが可能であるが、ダミー基板12は、光透過性基板11とは異なりレーザビームの光路とはならないことから、高い光透過性を有している必要はない。しかしながら、加工性などの点から、ダミー基板12についてもポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
記録層21は、少なくとも第1色素膜21aと第2色素膜21bとが積層されてなり、光透過性基板11の表面に設けられたグルーブ11bおよびランド11cを覆うように塗布されて形成されている。
【0031】
第1色素膜21a及び第2色素膜21bは、吸収波長域が互いに重複し、且つ、同一の溶媒に溶解しない異なる有機色素、例えば、シアニン、メロシアニン、メチン系色素およびその誘導体、ベンゼンチオール金属錯体、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、アゾ色素などの有機色素からなる。本明細書においては、これら色素膜のうち光透過性基板11側に設けられた色素膜を第1色素膜21aと呼び、ダミー基板12側に設けられた色素膜を第2色素膜21bと呼ぶ。第1色素膜21aと第2色素膜21bの膜厚は互いに異なることが好ましく、図2(a)に示すように第1色素膜21aの方が第2色素膜21bよりも厚くても良いし、図2(b)に示すように第2色素膜21bの方が第1色素膜21aよりも厚くても良い。第2色素膜21bの方が第1色素膜21aよりも厚い場合、第1色素膜21aの大部分がグルーブ11b内にのみ存在するような状態であっても構わない。尚、図2(a),(b)では、保護層23、接着層24及びダミー基板12についての図示は省略されている。尚、本明細書においては、第1色素膜21a及び第2色素膜21bのうち、膜厚の厚い方の色素膜を構成する材料を「主色素」、膜厚の薄い方の色素膜を構成する材料を「副色素」と呼ぶことがある。
【0032】
このような構成からなる記録層21は、所定以上のパワーに設定されたレーザビームが照射されると、第1色素膜21a及び第2色素膜21bがいずれも分解変質し、その光学定数が変化する。記録層41のうち分解変質した領域は「記録マーク(ピット)」として用いられ、分解変質していない領域は「ブランク領域」として用いられる。記録されるデータは、記録マークの長さ(記録マークの前縁から後縁までの長さ)及びブランク領域の長さ(記録マークの後縁から次の記録マークの前縁までの長さ)によって表現される。記録マーク及びブランク領域の長さは、基準となるクロックの1周期に相当する長さをTとした場合、Tの整数倍に設定される。具体的には、DVD−Rにおいては8/16変調方式が採用されており、3T〜11T及び14Tの長さを持つ記録マーク及びブランク領域が使用される。
【0033】
レーザビームが照射された場合の分解変質特性や、分解変質の前後における光学特性の変化については、第1色素膜21a及び第2色素膜21bのうち、膜厚の厚い側の色素膜の特性が支配的となるが、本実施態様においては、これに膜厚の薄い側の色素膜の特性が加味される。例えば、第1色素膜21aの材料として高感度な有機色素材料を選択し、第2色素膜21bの材料として分解変質の前後における変調度の高い有機色素材料を選択すれば、記録層21全体として、高い感度及び高い変調度を得ることができる。但し、記録層21全体の特性としては、各色素膜が有する好ましい特性のみならず、好ましくない特性も現れることから、第1色素膜21a及び第2色素膜21bの材料の選択においては、これについても考慮する必要がある。
【0034】
第1色素膜21aの材料及び第2色素膜21bの材料の好ましい例については後述する。
【0035】
反射層22は、光記録媒体10に記録された記録データの再生時において、光透過性基板11および記録層21を通過したレーザビームを反射するための薄膜層であり、記録層21上に設けられる。反射層22の材料としては、レーザビームを反射可能である限り特に制限されず、例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Au等を用いることができる。これらのうち、高い反射率を有することから、Al、Au、Ag、Cu又はこれらの合金(AlとTiとの合金等)などの金属材料を用いることが好ましい。
【0036】
保護層23は、透過性基板11上に設けられた記録層21及び反射層22を保護する層であって、反射層22の表面を覆うように形成されている。保護層23の材料としては、記録層21及び反射層22を物理的・化学的に保護可能である限り特に限定されないが、アクリル系又はエポキシ系の紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0037】
接着層24は、光透過性基板11、記録層21、反射層22及び保護層23からなる積層体とダミー基板12とを接着する層であり、特に限定されるものではないが、紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
【0038】
次に、第1色素膜21aの材料及び第2色素膜21bの材料の好ましい例について説明する。
【0039】
本例においては、第1色素膜21a及び第2色素膜21bを構成する材料のうち、主色素については極大吸収波長が450nm〜600nmの範囲にある有機色素が選択され、副色素については極大吸収波長が600nm〜750nmの範囲にある有機色素が選択される。これによれば、比較的広範囲の波長領域の光に対して優れた記録特性を得ることができることから、記録波長がDVD−Rについて規格化された値からずれた場合であっても、情報の記録を良好に行うことが可能となる。
【0040】
特に、波長が655nmである光に対する記録層21の消衰係数をα、波長が670nmである光に対する記録層21の消衰係数をβとした場合、下記式(1)〜(3)が全て満たされていることがより好ましい。
0.03≦α・・・(1)
0.03≦β・・・(2)
0.7≦(β/α)≦1.05・・・(3)
上記式(1)〜(3)が全て満たされている場合には、650nm〜680nmの波長領域の光に対して優れた記録特性を得ることができるので、記録波長がDVD−Rについて規格化された値(650nm)から655nm〜680nmの長波長側の範囲にずれた場合であっても、情報の記録を良好に行うことが可能となる。
【0041】
ここで、式(1)〜(3)で表される条件を同時に満たす範囲内で副色素の割合を調整することにより、上記の効果を得ることができることについてのメカニズムは明確に解明されていないが、本発明者らは、以下のように考えている。
【0042】
すなわち、本発明者らは、主色素のみからなる通常の記録層では光吸収率(或いは消衰係数)が短波長側から長波長側にかけて減衰する負の傾斜を有していたのに対し、その記録層に含有させる副色素の含有量を上述の各条件を同時に満たす範囲内で調節することにより、長波長側の光吸収率(或いは消衰係数)の値を増加させ、上記の光吸収率(或いは消衰係数)の減衰の度合いを充分に減少させることが容易に可能となっているからであると考えている。
【0043】
そして、これにより、本発明者らは、記録層における光吸収率(或いは消衰係数)の減衰の度合いを従来の記録層の場合に比較して小さくすることができ、広範囲の波長領域(特に650〜680nmの)の光に対して記録層の光吸収率(或いは消衰係数)を規格化された記録波長の場合と同等の良好な感度で記録可能な水準にコントロールすることが可能となっていると考えている。
【0044】
ここで、本例において、記録層21の消衰係数α及びβをそれぞれ0.03以上としたのは(式(1),(2))、記録再生光に対する記録層21の充分な光吸収率を確保するためである。また、記録層21の充分な反射率を確保する観点から、消衰係数α及びβは、それぞれ0.1以下であることが好ましい。
【0045】
更に、本例において、(β/α)を0.7以上1.05以下としたのは(式(3))、記録波長が規格化された値(650nm)からずれた場合に上述の作用効果を十分に得るためである。
【0046】
また、記録波長が規格化された値からずれた場合であっても充分な記録感度をより確実に得る観点から、本例においては、記録層21は、上記式(1)〜(3)の条件を同時に満たすことに加えて、波長が655〜670nmである光に対する消衰係数が0.03〜0.1であることがさらに好ましい。
【0047】
ここで、波長が655〜670nmである光に対する記録層21の消衰係数が0.03未満となると、充分な記録感度が得られず記録特性が低下する傾向が大きくなる。また、655〜670nmの波長領域で、記録層21の消衰係数のバラツキが大きいと記録感度差も大きくなるので、記録波長のずれにより記録特性が大きくずれるという状況が起こる傾向が大きくなる。そのため、波長が655〜670nmである光に対する消衰係数を上記範囲内に調節することが好ましい。
【0048】
一方、波長が655〜670nmである光に対する記録層21の消衰係数が0.1を超えると、光吸収率が大き過ぎるため充分な反射率が得られなくなる傾向が大きくなる。更に、上述の作用効果をより確実に得る観点から、記録層21の層厚は30〜300nmであることが好ましい。
【0049】
図3は、本例による記録層21に照射される光の波長と、該記録層21に含有されている主色素の消衰係数及び副色素の消衰係数との関係を示すグラフである。なお、図3中、消衰係数のプロフィールAは、主色素の消衰係数のプロフィールを示し、消衰係数のプロフィールBは、副色素の消衰係数のプロフィールを示す。
【0050】
記録層21の光学特性をより確実に得る観点から、記録層21の主色素は極大吸収波長が450〜600nmの範囲にあり、かつ、該極大吸収波長の光に対する消衰係数が0.7以上であることが好ましい。
【0051】
更に、記録層21の光学特性をより確実に得る観点から、上記の副色素は、極大吸収波長が600〜750nmの範囲にあり、かつ、情報記録に使用する波長の光に対する消衰係数が0.3以上であることが好ましい。更に、同様の観点から、副色素は、波長が650〜680nmである光に対する消衰係数が0.3以上であることが好ましい。
【0052】
波長が650〜680nmである光に対する副色素の消衰係数が0.3以上であれば、主色素のみで構成した記録層と同等の高耐光性と、記録再生用レーザー波長における良好な反射率とを確保しつつ、副色素によって記録再生用レーザー波長に対する吸収率を高めることができる結果、記録再生用レーザー波長での記録感度が高められる。つまり、高耐光性および良好な反射率を維持しつつ、10m/s以上の線速度(DVD−Rの4倍速:14m/s)での情報の記録が可能となる。
【0053】
ここで、消衰係数が0.3未満である色素を副色素として採用した場合、目標とする記録感度を得るためには使用量を多くする必要があるが、副色素の使用量を多くした結果、主色素の使用量が少なくなると、エラー率の増加、屈折率の低下による変調度の低下、および反射率の低下を招いて、DVD−Rとしての再生特性および高速記録特性を満足できなくなる。一方、消衰係数が0.3以上の色素を副色素として採用した場合、記録層21に占める副色素の割合を10重量%以下に抑えることができるため、主色素の使用量を十分に確保することができる結果、DVD−Rとしての再生特性および高速記録特性を十分に満足させることができる。
【0054】
更に、上記記録層21の光学特性をより確実に得る観点から、記録層21における副色素の含有量が、該記録層21の総質量に対して10質量%以下であることが好ましい。この副色素の含有量が10質量%を超えると、主色素による記録特性(エラーやジッター)に悪影響をおよぼす傾向が大きくなる。
【0055】
ここで、主色素及び副色素の「極大吸収波長」とは、それぞれの色素のみで厚さ30〜300μmの薄膜を形成し、この薄膜について得られる光吸収スペクトルの極大吸収波長を示す。
【0056】
なお、上記の主色素及び副色素の光吸収スペクトルは、例えば、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、測定対象の色素を1〜20質量%の濃度で有機溶媒に溶解した測定溶液を調製する。次に、この測定溶液をスピンコート法により平滑な面を有する平板(例えば、ポリカーボネート製平板等)上に塗布する。
【0057】
このとき、平板上に塗布された測定溶液の液膜中の色素分子が乾燥過程において特定の方向に配向した状態とならないように、平板の面の状態、塗布液の溶媒、乾燥時間及び乾燥温度等の塗布条件を調節する。また、乾燥後に得られる膜の膜厚が60〜200nm程度になるように測定溶液の塗布量を調節する。次に、50℃〜70℃の温度条件のもとで乾燥することにより主色素又は副色素からなる薄膜を形成する。次に、主色素又は副色素からなる薄膜の形成された平板の透過吸収スペクトルを分光光度計により測定する。
【0058】
上記の測定溶液の調製に使用する有機溶媒としては、主色素及び副色素のうち対応するものを溶解させることができ、大気中における沸点が50℃〜150℃であるものが好ましい。更に、この有機溶媒は、測定溶液のスピンコート時の溶媒揮発の際に主色素及び副色素のうち対応するものの著しい結晶化や会合を進行させないものであることが好ましい。
【0059】
次に、上述の光学特性を有する記録層21の構成材料として使用される主色素及び副色素の具体例について説明する。
【0060】
主色素は、金属又は金属イオンからなる配位中心と、下記一般式(I)で表される配位子とを少なくとも有するアゾ系色素であることが好ましい。
【0061】
【化1】
Figure 2004146024
ここで、式(I)中、Dは、窒素原子及び該窒素原子に結合する炭素原子のそれぞれに結合して複素環又は該複素環を含む縮合環を形成する2価の残基を示し、Eは、互いに結合する2つの炭素原子のそれぞれに結合して縮合環を形成する2価の残基を示し、Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホン酸誘導体基、又は、−NSOQで表される特性基を示し、特性基中のQは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0062】
なお、上記の「スルホン酸誘導体基」とは、スルホン酸基の水素原子が一価の金属原子に置換された構造を有する基を示す。
【0063】
また、式(I)で表される配位子の配位中心となる金属は、式(I)で表される配位子が配位可能であれば、特に限定されないものであるが、Ni2+、Co2+又はCu2+であることが好ましい。更に、式(I)で表される配位子としては、下記一般式(II)〜(VI)で表される配位子であることが好ましい。
【0064】
【化2】
Figure 2004146024
ここで、式(II)中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立にニトリル基又はカルボン酸エステル基を示す。なお、上記カルボン酸エステル基としては、−COOCH、−COOC又は−COOCが好ましい。
【0065】
【化3】
Figure 2004146024
ここで、式(III)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0066】
【化4】
Figure 2004146024
ここで、式(IV)中のR、R、R及びRはそれぞれ、式(III)中のR、R、R及びRと同義である。
【0067】
【化5】
Figure 2004146024
ここで、式(V)中のR、R、R及びRはそれぞれ、式(III)中のR、R、R及びRと同義である。
【0068】
【化6】
Figure 2004146024
ここで、式(VI)中のR、R及びRはそれぞれ、式(III)中のR、R及びRと同義であり、式(VI)中のR及びRはそれぞれ、式(IV)中のR及びRと同義である。
【0069】
更に、上記式(II)〜(VI)で表される配位子と、金属又は金属イオンからなるより好ましい主色素としては、下記式(A1)乃至(A3)で表される色素が挙げられる。
【0070】
【化7】
Figure 2004146024
ここで、式(A1)中、Mは、Ni2+、Co2+又はCu2+を示し、mはMの価数を示す。
【0071】
【化8】
Figure 2004146024
ここで、式(A2)中のM及びmは、それぞれ、式(A1)中のM及びmと同義である。
【0072】
【化9】
Figure 2004146024
ここで、式(A3)中のM及びmは、それぞれ、式(A1)中のM及びmと同義である。
【0073】
以上例示したアゾ系色素は、TFP(テトラフロロプロパノール)への溶解性が高い一方で、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒や、ジメチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素系溶媒、さらには、1−プロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒にはほとんど溶解しない。
【0074】
一方、副色素はフタロシアニン色素であることが好ましく、下記式(B1)又は式(B2)で表されるフタロシアニン色素であることが好ましい。
【0075】
【化10】
Figure 2004146024
【0076】
【化11】
Figure 2004146024
式(B1)に示すフタロシアニン色素は、ジメチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素系溶媒への溶解性が高い一方で、TFP(テトラフロロプロパノール)にはほとんど溶解しない。また、式(B2)に示すフタロシアニン色素は、1−プロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒への溶解性が高い一方で、TFP(テトラフロロプロパノール)にはほとんど溶解しない。
【0077】
したがって、本例においては、主色素と副色素とを同一の溶媒に溶解させることは困難である。
【0078】
以上説明した第1色素膜21aの材料及び第2色素膜21bの材料は、あくまで好適な材料の一例であり、第1色素膜21aの材料及び第2色素膜21bの材料がこれに限定されるものではない。 次に、本実施態様にかかる光記録媒体10の製造方法について説明する。
【0079】
図4は、本実施態様にかかる光記録媒体10の製造方法を示すフローチャートである。
【0080】
まず、スタンパを用いた射出成形法により、グルーブ11b及びランド11cが形成された光透過性基板11を作製する(ステップS1)。また、同じく射出成形法によりダミー基板12を作製する(ステップS2)。ダミー基板12にはグルーブ及びランドを形成する必要はない。尚、光透過性基板11及びダミー基板12の作製は射出成形法に限られず、2P法等、他の方法によって作製しても構わない。
【0081】
次に、光透過性基板11の表面のうち、グルーブ11b及びランド11cが形成された面に、第1色素膜21aの主成分となる有機色素を第1の溶剤に溶解させた溶液を滴下し、光透過性基板11を回転させることにより当該溶液を光透過性基板11上にスピンコートした後、第1の溶媒を蒸発させることにより第1色素膜21aを形成する(ステップS3)。次に、第2色素膜21bの主成分となる有機色素を第2の溶剤に溶解させた溶液を第1色素膜21aの表面に滴下し、光透過性基板11を回転させることにより当該溶液を第1色素膜21a上にスピンコートした後、第2の溶媒を蒸発させることにより第2色素膜21bを形成する(ステップS4)。これにより、第1色素膜21a及び第2色素膜21bの積層体からなる記録層21が完成する。このように、本実施態様においては、記録層21を形成するために2回のスピンコートが行われる。この場合、スピンコートに用いた第1色素膜21aの主成分である有機色素と第2色素膜21bの主成分である有機色素は互いに相溶性がないことから、工業的にみて分離回収が容易である。
【0082】
次に、スパッタリング法により、記録層21上に反射層22を形成する(ステップS5)。但し、反射層22の形成方法としてはスパッタリング法に限られず、反射層22の構成元素を含む化学種を用いた他の気相成長法、例えば、真空蒸着法を用いても構わない。
【0083】
次に、粘度調整されたアクリル系又はエポキシ系の紫外線硬化型樹脂を反射層22上に滴下し、光透過性基板11を回転させることによりこれを反射層22上にスピンコートした後、紫外線を照射することにより保護層23を形成する(ステップS6)。
【0084】
次に、粘度調整された紫外線硬化型接着剤を保護層23上に滴下し、光透過性基板11を回転させることによりこれを保護層23上にスピンコートすることにより、接着層24を形成する(ステップS7)。
【0085】
そして、記録層21、反射層22、保護層23及び接着層24が形成された光透過性基板11とダミー基板12とを貼り合わせ、ダミー基板12側から紫外線を照射することにより、接着層24とダミー基板12とを確実に接着させる(ステップS8)。以上により、光記録媒体10の製造が完了する。
【0086】
このように、本実施態様においては、特性の異なる複数の有機色素をそれぞれ異なる溶媒に溶解させ、異なるスピンコート工程において塗布していることから、これら複数の有機色素が同一の溶媒に溶解しない場合であっても、これらを記録層21の材料として同時に用いることが可能となる。これにより、選択し得る有機色素の制限が大幅に緩和されることから、例えば、高感度、高反射率、高変調度を同時に得ることが可能となり、高速記録に適した光記録媒体を作製することが可能となる。
【0087】
また、本実施態様においては、第1色素膜21aと第2色素膜21bの膜厚が互いに異なっていることから、膜厚の厚い方の色素膜が有する特性を実質的に損なうことなく、膜厚の薄い方の色素膜が有する特性を効果的に加味することが可能となる。
【0088】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0089】
例えば、上記実施態様においては、記録層21を第1色素膜21a及び第2色素膜21bからなる2層構造としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層21を3層以上の積層構造としても構わない。
【0090】
また、上記実施態様においては、スピンコート法によって第1色素膜21a及び第2色素膜21bを形成しているが、その他の塗布方法、例えば、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、バーコート法等を用いても構わない。
【0091】
さらに、上記実施態様においては、図1に示すようにDVD−R型の光記録媒体に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用対象がこれに限定されるものではなく、記録層に有機色素を含む光記録媒体であれば、どのようなタイプの光記録媒体に対しても適用することが可能である。
【0092】
【実施例】
[光記録媒体の準備]
(実施例1)
図4に示した方法と同様の方法により、図1に示す光記録媒体10と同様の構成を有する実施例1の光記録媒体を作製した。具体的な製造方法は次の通りである。
【0093】
まず、射出成型法により、厚さ:約0.6mm、直径:約120mmであり、表面にグルーブ及びランド(トラックピッチ(グルーブのピッチ)=約0.74μm)が形成されたポリカーボネートからなるディスク状の光透過性基板を作製した。次に、同じく射出成型法により、厚さ:約0.6mm、直径:約120mmであり、表面にグルーブ及びランドが形成されていないポリカーボネートからなるディスク状のダミー基板を作製した。
【0094】
次に、この光透過性基板をスピンコート装置にセットし、回転させながら、グルーブ及びランドが形成されている側の表面に、Cibaケミカル社製「Ultra Green」色素(副色素)を0.5wt%含むジブチルエーテル溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約5nmの第1色素膜を形成した。尚、「Ultra Green」色素は、薄膜状態での極大吸収波長が725nmである。さらに、光透過性基板を回転させながら、上記色素膜上に下記化学構造式(A2’)で表されるアゾ系有機色素(主色素)を1.0wt%含むTFP(テトラフロロプロパノール)溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約100nmの第2色素膜を形成した。尚、下記化学構造式(A2’)で表されるアゾ系有機色素は、薄膜状態での極大吸収波長が690nmである。これにより記録膜の形成が完了した。
【0095】
【化12】
Figure 2004146024
尚、第1色素膜の形成に用いることが可能な溶媒としては、上記ジブチルエーテルの他に、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられるが、第2色素膜を構成する上記化学構造式(A2’)で表されるアゾ系有機色素は、これらいずれのエーテル系溶媒にも溶解しない。同様に、第1色素膜を構成するCibaケミカル社製「Ultra Green」色素は、第2色素膜の形成に用いたTFP(テトラフロロプロパノール)溶媒には溶解しない。
【0096】
次に、記録層が形成された光透過性基板をスパッタリング装置にセットし、記録層の表面にAg、Pd及びCuの合金からなる厚さ約150nmの反射層22を形成した。
【0097】
次に、反射層が形成された光透過性基板を再びスピンコート装置にセットし、回転させながら、反射層上に紫外線硬化型アクリル樹脂を滴下し、これをスピンコートした。その後、塗膜に紫外線を照射し硬化させることによって保護層を形成した。さらに、保護層上に紫外線硬化型接着剤を滴下し、これをスピンコートすることにより接着層を形成した。
【0098】
そして、光透過性基板のうち接着層が形成された面に上記ダミー基板を貼り合わせた後、ダミー基板側から紫外線を照射することにより、接着層を硬化させた。
【0099】
以上により、実施例1の光記録媒体が完成した。
【0100】
(実施例2)
記録層の材料が異なる他は、実施例1と同様にして実施例2の光記録媒体を作製した。
【0101】
実施例2における記録層の形成方法は次の通りである。すなわち、光透過性基板をスピンコート装置にセットし、回転させながら、下記化学構造式(A3’)で表されるアゾ系有機色素(主色素)を1.0wt%含むTFP(テトラフロロプロパノール)溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約100nmの第1色素膜を形成した。尚、下記化学構造式(A3’)で表されるアゾ系有機色素は、薄膜状態での極大吸収波長が690nmである。
【0102】
【化13】
Figure 2004146024
さらに、光透過性基板を回転させながら、上記色素膜上に既に示した化学構造式(B1)で表されるフタロシアニン系有機色素(副色素)を0.5wt%含むジメチルシクロヘキサン溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによって厚さが約5nmの第2色素膜を形成した。尚、上記化学構造式(B1)で表されるフタロシアニン系有機色素は、薄膜状態での極大吸収波長が719nmである。これにより記録膜の形成が完了した。
【0103】
尚、第2色素膜の形成に用いることが可能な溶媒としては、上記ジメチルシクロヘキサンの他に、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素系溶媒が挙げられるが、第1色素膜を構成する上記化学構造式(2)で表されるアゾ系有機色素は、これらいずれの炭化水素系溶媒にも溶解しない。同様に、第2色素膜を構成する上記化学構造式(B1)で表されるフタロシアニン系有機色素は、第1色素膜の形成に用いたTFP(テトラフロロプロパノール)溶媒には溶解しない。
【0104】
(実施例3)
記録層の材料が異なる他は、実施例1と同様にして実施例3の光記録媒体を作製した。
【0105】
実施例3における記録層の形成方法は次の通りである。すなわち、光透過性基板をスピンコート装置にセットし、回転させながら、既に示した化学構造式(B2)で表されるフタロシアニン系有機色素(副色素)を0.5wt%含む1−プロパノール溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約5nmの第1色素膜を形成した。尚、上記化学構造式(B2)で表されるフタロシアニン系有機色素は、薄膜状態での極大吸収波長が735nmである。
【0106】
さらに、光透過性基板を回転させながら、上記色素膜上に上記化学構造式(A3’)で表されるアゾ系有機色素(主色素)を1.0wt%含むTFP(テトラフロロプロパノール)溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約100nmの第2色素膜を形成した。これにより記録膜の形成が完了した。
【0107】
尚、第1色素膜の形成に用いることが可能な溶媒としては、上記1−プロパノールの他に、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、第2色素膜を構成する上記化学構造式(A3’)で表されるアゾ系有機色素は、これらいずれのアルコール系溶媒にも溶解しない。同様に、第1色素膜を構成する上記化学構造式(B2)で表されるフタロシアニン系有機色素は、第2色素膜の形成に用いたTFP(テトラフロロプロパノール)溶媒には溶解しない。
【0108】
(比較例1)
記録層の材料が異なる他は、実施例1と同様にして比較例1の光記録媒体を作製した。
【0109】
比較例1における記録層の形成方法は次の通りである。すなわち、光透過性基板をスピンコート装置にセットし、回転させながら、上記化学構造式(A2’)で表されるアゾ系有機色素を1.0wt%含むTFP(テトラフロロプロパノール)溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約100nmの記録層を形成した。すなわち、比較例1の光記録媒体における記録層は、上記実施例1〜4の光記録媒体における記録層とは異なり単一の色素膜によって構成される。
【0110】
(比較例2)
記録層の材料が異なる他は、実施例1と同様にして比較例2の光記録媒体を作製した。
【0111】
比較例2における記録層の形成方法は次の通りである。すなわち、光透過性基板をスピンコート装置にセットし、回転させながら、上記化学構造式(A3’)で表されるアゾ系有機色素を1.0wt%含むTFP(テトラフロロプロパノール)溶液を滴下することによりこれをスピンコートした。その後、塗膜を乾燥させることによってグルーブ部における厚さが約100nmの記録層を形成した。すなわち、比較例2の光記録媒体における記録層も、上記実施例1〜4の光記録媒体における記録層とは異なり単一の色素膜によって構成される。
【0112】
[評価]
次に、上記実施例1〜4及び比較例1,2の光記録媒体に対し、種々の条件にてデータの記録/再生を行い、最も低いジッタを得ることができるレーザビームの記録パワー(最適記録パワー)、並びに、最適記録パワーに設定した場合に得られる変調度及び未記録領域の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
Figure 2004146024
表1に示すように、比較例1,2の光記録媒体においては最適記録パワーが10.0mW以上であるのに対し、実施例1〜4の光記録媒体においては最適記録パワーが7.9mW以下であり、非常に高感度であることが確認された。また、比較例1,2の光記録媒体においては変調度が62.0%以下であるのに対し、実施例1〜4の光記録媒体においては変調度が67.8%以上であり、高い変調度が得られることが確認された。さらに、比較例1,2の光記録媒体においては反射率が47%以下であるのに対し、実施例1〜4の光記録媒体においては反射率が50%以上であり、高反射率であることが確認された。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、特性の異なる複数の有機色素を異なる塗布工程により形成していることから、これら複数の有機色素が同一の溶媒に溶解しない場合であっても、これらを記録層の材料として同時に用いることが可能となる。
【0115】
これにより、選択し得る有機色素の制限が大幅に緩和されることから、高感度、高反射率、高変調度を同時に得ることが可能となり、高速記録に適した光記録媒体を作製することが可能となる。
【0116】
また、記録層を構成する主色素については極大吸収波長が450nm〜600nmの範囲にある有機色素を選択し、副色素については極大吸収波長が600nm〜750nmの範囲にある有機色素を選択すれば、比較的広範囲の波長領域の光に対して優れた記録特性を得ることができることから、記録波長がDVD−Rについて規格化された値からずれた場合であっても、情報の記録を良好に行うことが可能となる。この場合、副色素として、波長が650〜680nmである光に対する消衰係数が0.3以上である有機色素を用いれば、DVD−Rについて規格化された記録再生用レーザー波長での記録感度が高められることから、高耐光性および良好な反射率を維持しつつ、10m/s以上の線速度(DVD−Rの4倍速:14m/s)での情報の記録が可能となる。
【0117】
さらに、記録層を構成する主色素と副色素は互いに相溶性がないことから、工業的にみて分離回収が容易であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体10の外観を示す切り欠き斜視図であり、(b)は(a)に示すA部を拡大した部分断面図である。
【図2】光記録媒体10の主要部を拡大した部分略断面図であり、(a)は第1色素膜21aの方が第2色素膜21bよりも厚い場合、(b)は第2色素膜21bの方が第1色素膜21aよりも厚い場合を示している。
【図3】記録層21に照射される光の波長と、該記録層21に含有されている主色素の消衰係数及び副色素の消衰係数との関係の一例を示すグラフである。
【図4】本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体10の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 光記録媒体
11 光透過性基板
11a 光入射面
11b グルーブ
11c ランド
12 ダミー基板
21 記録層
21a 第1色素膜
21b 第2色素膜
22 反射層
23 保護層
24 接着層

Claims (15)

  1. 第1の有機色素を含む第1色素膜を形成する工程と、吸収波長域が前記第1の有機色素と重複する第2の有機色素を含む第2色素膜を形成する工程とを備える光記録媒体の製造方法。
  2. 前記第1色素膜を形成する工程は、前記第1の有機色素を第1の溶媒に溶解させてなる第1の溶液を基板上に塗布する工程であり、前記第2色素膜を形成する工程は、前記第2の有機色素を第2の溶媒に溶解させてなる第2の溶液を前記第1色素上に塗布する工程であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体の製造方法。
  3. 前記第1の有機色素は実質的に前記第2の溶媒に溶解せず、前記第2の有機色素は前記第1の溶媒に実質的に溶解しないことを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体の製造方法。
  4. 前記第1の溶液の塗布及び前記第2の溶液の塗布をスピンコート法により行うことを特徴とする請求項2または3に記載の光記録媒体の製造方法。
  5. 基板上に、極大吸収波長が450〜600nmの範囲にある主色素を含む色素膜と極大吸収波長が600〜750nmの範囲にある副色素を含む色素膜を連続的に形成し、これによって前記基板上に記録層を形成する工程を備え、波長が655nmである光に対する前記記録層の消衰係数をα、波長が670nmである光に対する前記記録層の消衰係数をβとした場合、
    0.03≦α、
    0.03≦β、且つ、
    0.7≦(β/α)≦1.05
    が満たされていることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
  6. 基板上に、極大吸収波長が450〜600nmの範囲にある主色素を含む色素膜と記録波長における消衰係数が0.3以上である副色素を含む色素膜を連続的に形成し、これによって前記基板上に記録層を形成する工程を備えることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
  7. 基板と前記基板上に設けられた記録層とを少なくとも備える光記録媒体であって、前記記録層は、吸収波長域が互いに重複し、実質的に同一の溶媒に溶解しない複数の有機色素をそれぞれ含む複数の色素膜の積層体であることを特徴とする光記録媒体。
  8. 前記複数の色素膜の膜厚が互いに異なることを特徴とする請求項7に記載の光記録媒体。
  9. 前記複数の色素膜のうち、膜厚の厚い方の色素膜を構成する材料を主色素とし、膜厚の薄い方の色素膜を構成する材料を副色素とした場合、前記主色素の極大吸収波長が450〜600nmの範囲にあり、前記副色素の極大吸収波長が600〜750nmの範囲にあり、波長が655nmである光に対する前記記録層の消衰係数をα、波長が670nmである光に対する前記記録層の消衰係数をβとした場合、
    0.03≦α、
    0.03≦β、且つ、
    0.7≦(β/α)≦1.05
    が満たされていることを特徴とする請求項7又は8に記載の光記録媒体。
  10. 前記記録層は、波長が655〜670nmの範囲にある光に対する消衰係数が0.03〜0.1であることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。
  11. 前記主色素は、極大吸収波長の光に対する消衰係数が0.7以上であることを特徴とする請求項9又は10に記載の光記録媒体。
  12. 前記副色素は、情報記録に使用する波長の光に対する消衰係数が0.5以上であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  13. 前記副色素は、波長が650〜680nmの範囲にある光に対する消衰係数が0.3以上であることを特徴とする請求項12に記載の光記録媒体。
  14. 前記記録層における前記副色素の含有量が、該記録層の総質量に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  15. 前記複数の色素膜のうち、膜厚の厚い方の色素膜を構成する材料を主色素とし、膜厚の薄い方の色素膜を構成する材料を副色素とした場合、前記主色素の極大吸収波長が450〜600nmの範囲にあり、記録波長における前記副色素の消衰係数が0.3以上であることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の光記録媒体。
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