JP2004143633A - 生分解性不織布及びそれを用いた医療衛生材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性を有し、柔軟な風合いを有し、機械的強度と寸法安定性のよい不織布を提供すること、特に、該特性から、医療衛生材料に適した不織布を安定的に提供すること、また、該特性を有する医療衛生材料を提供すること。
【解決手段】芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の高融点生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊されてなり、かつ部分的に圧着されてなることを特徴とする生分解性不織布と、該不織布を用いた医療衛生材料。
【選択図】なし
【解決手段】芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の高融点生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊されてなり、かつ部分的に圧着されてなることを特徴とする生分解性不織布と、該不織布を用いた医療衛生材料。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有し、良好な機械強度と柔軟性及び良好な風合いを有する不織布に関し、その特性を利用して、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、手術着などの医療衛生材料用として最適に用いられる不織布と、該不織布を用いてなる医療衛生材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、医療衛生材料用不織布には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂が使用されているが、これら樹脂から得られた不織布は、自己分解性がなく自然環境下では極めて安定なものである。
【0003】
このため、使用済みの医療、衛生材料は、焼却炉で焼却されるか、あるいは埋立て処理がなされているが、焼却処理には費用が高くつくばかりか焼却時に発生するガスなどの環境上の問題も発生する可能性がある。また、埋め立て処理についても、自然環境破壊の点から問題になりつつある。
【0004】
このような観点から、近年は自然にやさしい医療衛生材料の早期開発が望まれている。
【0005】
これらに対応するためには、乾式法あるいは溶液浸漬法などにより得られるビスコースレーヨン短繊維不織布、湿式スパンボンド法により得られるレーヨン長繊維不織布や、キチンやアテロコラーゲン等の、天然繊維や天然由来の化学繊維からなる不織布、コットンからなるスパンレース不織布など種々の生分解不織布が知られている。
【0006】
しかしながら、これら従来の生分解性不織布は、不織布を構成する繊維の機械的強度が小さく、また、親水性があるため、吸水時、湿潤時の強度低下が著しく、湿潤・乾燥時の収縮が大きく素材の寸法安定性に欠けるという問題があり、更に素材自体が非熱可塑性樹脂であるため熱接着性を有していないなどの問題もあり、製布加工時にヒートシール性を利用することが不可能であり実用上採用できないという問題がある。
【0007】
これら問題を改善するため、熱可塑性を有し、微生物によって分解可能な脂肪族ポリエステル樹脂を溶融紡糸した多数の長繊維からなり、脂肪族ポリエステル樹脂がグリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体成分を構成単位として含む繊度が1〜10デニールの生分解性不織布及びその製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかし、この不織布は実用上、紡糸性と生分解性をともに満足できるまでに到達するに至っていない。すなわち、溶融紡糸に適し、長繊維不織布に使用できる脂肪族ポリエステルとしては、1,4−ブタジオールとコハク酸から合成されるポリブチレンサクシネート重合物の場合、溶融紡糸性良好で、強度と風合いの優れた生分解性長繊維不織布が得られるが生分解性速度が遅いなど難点があった。
【0009】
また、かかる状況を改善し、優れた生分解性を有しながら、衛生材料用不織布として必要な特性である透液性を柔軟性や風合いをバランス良く不織布に付与するという提案がされている(特許文献2)。
【0010】
すなわち、1,4−ブタジオールとコハク酸から合成されるポリブチレンサクシネート重合体をウレタン結合により高分子量化した後、得られる熱可塑性を有する脂肪族ポリエステルからなる樹脂組成物を異形断面用口金と円形断面口金を備えた押出し紡糸機で別々に加熱溶融して、多数の口金孔から押出し紡糸し、紡出された連続長繊維フィラメント群をエジェクターからの高速エアーで延伸し、衝突板に当てて開繊し、次いで支持体上に捕集、堆積して、それぞれ特定の範囲の繊度と目付からなるウェブをそれぞれ形成させ、これらのウェブを積層して、このウェブの表面から高圧水ジェット流を噴射、乾燥し、交絡一体化したウェブとし、更に、このウェブを熱エンボス処理により、部分的にかつ規則的に熱融着させた区域を設けてなるスパンボンド不織布が提案されている。かかる不織布は、その厚さ方向において円形断面と異形断面の長繊維フィラメントが混在しており、該不織布は生分解性を有し、優れた柔軟性、風合い、強度および透液性などをバランス良く備えることができるというものである。
【0011】
しかし、この不織布は、従来のポリプロピレン、ポリエチレンなどのスパンボンド熱接着品に加え、円形断面と異形断面の不織布ウェブを積層した後、ウェブの表面から高圧ジェット水流を噴射、乾燥させる工程を有しているために、コストが極めて高いものとなり、医療衛生材料など使い捨て用途としてはあまりにも高価なものとなり、商品的に一般的なものではなく、実用に値しないものである。
【0012】
また、芯部が高融点の生分解性熱可塑性重合体成分からなり、鞘部が該芯部重合体より低融点の生分解性熱可塑性重合体成分からなる複合長繊維から構成されかつ構成繊維同士が圧接面積比率5〜50%で熱接着されていることを特徴とする生分解性複合長繊維不織布が提案されている(特許文献3)。
【0013】
しかしながら、かかる提案による生分解性複合長繊維不織布は、高融点成分のまわりを低融点成分が完全に被っているため、融点差が小さいと高融点単成分に近い接着挙動を示し、芯鞘構造として柔軟かつ物性的に良好な不織布が得られにくい。鞘成分が更に低融点となるとエンボスロールは、低温かつ低圧力で接着することができるが、全てのフィラメントが低融点の接着成分で完全に被われているため、エンボス圧着部の接着が強固であり、風合いが硬めとなりやすく、またエンボス温度あるいは圧力を変更し風合い及び物性バランスを調整しようとしても、繊維の全てが接着成分であるため、その調整範囲は極めて狭いものであり、原料ロットの切替え時など原料特性のわずかな変動により、風合い、物性レベルが大きく変化するなどの理由により安定的生産に耐えうるものではなかった。
【0014】
【特許文献1】特開平8−060513号公報
【0015】
【特許文献2】特開平10−219556号公報
【0016】
【特許文献3】特開平6−207324号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題を解決し、生分解性を有し、柔軟な風合いを有し、機械的強度と寸法安定性のよい不織布を提供すること、特に、該特性から、医療衛生材料に適した不織布を安定的に提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討をした結果、本発明に到達したものである。
【0019】
すなわち、本発明の不織布は、以下の(1)記載の構成を有するものである。
また、更に好ましくは、以下の(2)〜(12)に記載の構成を有するものである。
【0020】
また、本発明は、以下の(13)に記載の不織布の製造方法を提供するものである。
(1)芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の高融点生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊されてなり、かつ部分的に圧着されてなることを特徴とする生分解性不織布。
(2)前記芯鞘型繊維Aと繊維Bとの混繊比率(重量比率)が10:90から80:20であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
(3)前記芯鞘型繊維Aの芯成分と鞘成分の比率(重量比率)が95:5から30:70であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性不織布。
(4)前記高融点生分解性樹脂と低融点生分解性樹脂の融点差が10℃以上60℃以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の生分解性不織布。
(5)前記繊維A及び繊維Bの単糸繊度が0.5dtexから10dtexであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の生分解性不織布。
(6)前記不織布を構成する繊維の部分的圧着部の面積比率が5〜30%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の生分解性不織布。
(7)前記不織布が、熱エンボス方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
(8)前記不織布が、 超音波接着方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
(9)前記不織布が、 熱エアースルー方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
(10)前記生分解性樹脂がポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の生分解性不織布。
(11)前記生分解性不織布が長繊維不織布であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の不織布。
【0021】
また、本発明の医療衛生材料は、以下の(12)記載の構成を有するものである。
(12)上記(1)から(11)のいずれかに記載の不織布を用いてなることを特徴とする医療衛生材料。
(13)芯成分樹脂が鞘成分樹脂よりも高融点の樹脂から構成されてなる芯鞘型複合繊維Aと、該芯成分を構成する樹脂と実質的に同一の融点である樹脂を、同一の口金上の別々の口金孔から押出しした後、冷却し、エジェクターを介し4000m/分以上で高速紡糸した後、移動するネット上に捕集し、引続き該捕集された繊維ウェブの構成繊維を熱圧着して不織布とすることを特徴とする不織布の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明をする。
【0023】
本発明に用いられる生分解性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂などが挙げられる。中でも、ポリ乳酸は天然の植物を原料としたものであり、最も自然にやさしい生分解性樹脂である。
【0024】
本発明において、ポリ乳酸とは、主としてL−乳酸を主たる原料とするポリエステルをいい、好ましくは、構成成分の60%以上がL−乳酸であり、40%を超えない範囲でD乳酸を含有するようなポリエステルであってもよい。ポリ乳酸の製法としては、乳酸を原料としていったん環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後、開環重合を行う二段階のラクチド法と、乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られているが、いずれであってもよい。
【0025】
ラクチド法によって得られるポリマーの場合には、ポリマー中に含有される環状二量体が溶媒紡糸時に気化して糸斑発生、紡糸性不調などの原因となるため、溶融紡糸以前にポリマー中に含有する環状二量体の含有量を極力減少させておくことが好ましく0.1wt%以下にすることが望ましい。
【0026】
また、直接重合法の場合には、環状二量体に起因する問題が実質的にないため、製糸性の観点からより好ましいと言える。ポリ乳酸は、生分解性あるいは加水分解性が高いため、自然環境中で容易に分解される利点を有している。ポリ乳酸の重量平均分子量は高いほど好ましく、通常は、少なくとも5万であることが好ましく、より好ましくは10万から30万の範囲内である。重量平均分子量が5万未満である場合、繊維の強力が低くなり好ましくない場合がある。
【0027】
また、分子量が30万を越えるものである場合、粘度が高いため口金から吐出されたフィラメントの曳糸性が乏しく、エアーサッカー等による高速索引が不可能であるため、操業性の点では良好であるものの、フィラメントの物性面で満足すべきものが得られず、不織布としてのシート特性も、用途によっては十分なものでない場合がある。
【0028】
本発明の不織布を構成する芯鞘型繊維Aの芯成分である高融点成分と鞘成分である低融点成分の融点差は、10℃以上50℃までが良く、より好ましくは15℃以上45℃の範囲までである。
【0029】
融点差が10℃未満である場合、繊維Bを構成する高融点フィラメントと、繊維Aの鞘成分を構成する低融点成分との融点差が小さく、A繊維、B繊維の口金吐出後の固化点差が小さいため紡糸性は安定しているが、不織布ウェブとした後、熱接着するに際して、例えばエンボスロールで熱圧着する場合、低融点成分と高融点成分の融点差が小さいため、加熱温度あるいはロールの加圧力を大きくする必要があるため、繊維A及び繊維Bのフィラメント全体に機械的に与えるダメージが大きく、熱接着された不織布が硬くなるばかりか、不織布の物性が悪化し、満足できるものが得られない。
【0030】
また、接着方式が高温加熱した熱風を使用する、いわゆるエアースルー方式である場合、芯鞘型繊維の低融点成分のみを軟化させようとしても熱風温度が高いときには、高融点も軟化し、あるいはまた熱風温度が低い場合には接着に十分なまで鞘成分である低融点ポリマーが軟化しないために接着が不十分となり物性的に弱いものとなってしまい好ましくない。
【0031】
また、低融点ポリマーと高融点ポリマーとの融点差が50℃を越えるものである場合、同一口金から吐出した繊維Aの鞘成分である低融点ポリマーと、繊維Bを構成する高融点ポリマーの固化点差が大きく、糸切れによる繊維Aと繊維Bとの融接着が発生するなど糸切れが発生と、これにともなう欠点が発生するなど良好な不織布が得られないという問題がある。また、芯成分が高融点であって、鞘成分が低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯成分と同様の生分解性樹脂からなる繊維Bとの混繊比率は、5:95から80:20が好ましく、より好ましくは10:90から50:50の範囲内である。
【0032】
繊維Aの混繊比率が5%未満である場合、繊維Aと繊維Bとを均一に混繊することが難しくなり、また接着成分を有する繊維Aの混率が少ないため加熱ロールで熱接着する際、不織布の熱接着が不十分となり、物性的に弱いものとなりがちであること、また毛羽が発生しやすいことなどの問題が生じてくる。
【0033】
また、繊維Aの混繊比率が80%を越えるものである場合、芯成分が高融点で鞘成分が低融点である繊維Aが100%の場合と同様に、十分な接着が得られるが、シートの風合いが硬く、接着成分を有する繊維が多いため、鞘成分原料ロットの切替え時などに原料特性のわずかな変動でも熱接着性が変化し、接着条件の調整が困難となり、結果としてシート特性のバラツキも大きくなり安定的に生産することが難しくなる。また、物性レベルを調整するにしても、接着温度、圧力などの調整範囲が極めて狭く、実質的に調整することが困難な方向である。
【0034】
また、芯鞘型繊維Aの芯成分と鞘成分の比率は95:5から30:70が良く、より好ましくは90:10から50:50の範囲内である。芯成分の比率が95%を越える場合、鞘成分の吐出量が少なくなり、完全に芯成分のまわりを鞘成分で覆いつくすことが難しく芯鞘構造が維持しにくいため、安定して紡糸することが難しい。
【0035】
また、芯成分の比率が30%未満の場合、安定した複合形態は維持できるものの低融点成分100%の繊維を高融点成分Bとの混繊不織布の場合と同様、口金から吐出された繊維Aと繊維Bとの固化点差が大きくなり、糸切れあるいは融接着が増加するなど、紡糸性が悪化する傾向にあり、また、低融点成分が増加するために物性も低くなり用途により好ましくない。
【0036】
前記繊維A及び繊維Bの単糸繊度は0.5dtexから8dtexの範囲内のものが良く、より好ましくは1dtexから5dtexの範囲内のものである。
繊度が0.5dtex未満である場合、紡糸ドラフトが高くなり単糸切れが頻発するため生産としては不適当である。
【0037】
一方、単糸繊度が8dtexを越えるものである場合、紡糸時の冷却が不十分となり融接着が発生するなどにより、満足できる不織布が得られない場合がある。
【0038】
本発明においては、紡糸性品位の兼ね合いから上記単糸繊度の範囲内で低融点成分を鞘成分に有する繊維Aの繊度を高融点単成分である繊維Bの繊度に対し10%〜20%低目とすることで口金から吐出された繊維A及びBの固化点を揃えることができるためより好ましい。
【0039】
また、紡糸性をより安定したものとするためには、低融点成分を鞘成分とする芯鞘型複合繊維Aを高融点成分単成分である繊維Bよりも外周に位置する(紡出時にチムニー側に近い位置)側に口金の配列をすることが好ましい。
【0040】
不織布を構成するための熱接着方法は、従来から行われている熱エアースルー方式、超音波方式、エンボス方式などどんな方式でも特に問題なく加工可能である。エンボス方式における熱圧着温度は低融点樹脂の融点より10℃から50℃低い温度が良く、より好ましくは15℃から40℃低い温度が好ましい。
【0041】
エンボス温度が、低融点樹脂の融点より10℃未満低い温度である場合、低融点樹脂の溶融が激しく、エンボスロールへのシート取られ、ロール汚れが激しくシートが硬くなるばかりか、ロール巻付きも頻繁するなど安定生産が不可能となる場合がある。また、低融点樹脂の融点より50℃以上低い温度である場合、樹脂の溶着が不十分であり、風合い的にはソフトなものとなるが、物性的に弱いものとなるなどの問題点が出てくる。
【0042】
エンボスロールの圧着面積部の面積比率は5%から30%のものがよく、ロールの彫刻はどんなパターンでもよいが、接着温度範囲を広くとる意味からも上ロール及び下ロールともに彫刻したものがより好ましい。
【0043】
また、本発明において製糸性及び物性など効果が損なわれない範囲で、酸化チタン、二酸化ケイ素など無機系微粒子を添加することがエンボスロールと接着シートの離型性が向上より安定した接着性が得られるので好まし、その添加率は、ポリマー中に0.1重量%から1.0重量%であることが好ましい。より好ましくは0.2重量%から0.7重量%の範囲内である。添加率が0.1%未満である場合、エンボスロールと熱接着シートの剥離効果が少なく、また1.0重量%以上である場合、単糸切れなど紡糸性に悪影響を与えることになるので好ましくない。
【0044】
前記無機系微粒子の添加は、繊維Aを構成する芯成分の高融点成分及び鞘成分である低融点成分、また繊維Bの高融点成分など全ての樹脂に添加してもよいが、最も効果が大きいのは繊維Aを構成する芯鞘型繊維の鞘成分である低融点樹脂に添加することが好ましい。また、不織布の目付は10g/m2 から30g/m2 が良く、より好ましくは15g/m2 から25g/m2 の範囲内である。不織布の目付が10g/m2 未満である場合、不織布としての強度が不足、医療、衛生材料として不十分である。また目付が30g/m2 を越えるものである場合、不織布としての強度は十分であるが、剛性が高くなり風合い的に不十分なものとなる場合があり好ましくない。
【0045】
本発明の不織布は、例えば、従来から不織布の製造手法として知られているスパンボンド法を基本方法として用いて製造することができる。
【0046】
より具体的には、例えば、芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が低融点生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと繊維Aの芯成分と同様の高融点生分解性樹脂Bとの混繊複合紡糸が可能な口金を用い規定の吐出量で紡出された連続長繊維フィラメントを冷却した後、エジェクターにより3000m/分から6000m/分で高速牽引し、移動するネットコンベアー上に捕集し、ウェブを形成した後、熱圧着することにより製造することができ、紡糸方法としては丸型口金、丸型エジェクターあるいは矩形口金と矩形エジェクターなどいずれの組合せでもよいが、フィラメントの開繊性を向上させ斑の少ない不織布シートとするためには、矩形口金と矩形エジェクターとの組合せとすることが好ましい。
【0047】
また、より斑が少なく、均一性の高い不織布とするためには、前記スパンボンドとメルトブローとの積層方式あるいはスパンボンドとメルトブローを2層以上積層する方式をとっても良く、この場合の積層方式は、製布ネット上に次々と積層するインライン方式あるいは、それぞれの接着シートを後加工により積層しても良いことは言うまでもない。この場合のメルトブロー不織布に用いる原料は、芯鞘型繊維Aに用いる高融点生分解性樹脂、あるいは低融点生分解性樹脂のいずれでも良いが、スパンボンドの接着性成分と同様である低融点生分解性樹脂を用いた方がスパンボンドとメルトブロー貼合せ部での層間剥離がしにくく、より好ましい。また、メルトブローの繊維径は10μm以下が良く、より好ましくは1μmから8μmの範囲内である。
【0048】
繊維径が1μm未満である場合、口金単孔当りの吐出量も低下させる必要があり、孔詰りによる吐出不良が発生する操業上の問題や、ショットと呼ばれるポリマーの固まりが発生するなど品質上の問題も発生するからである。
【0049】
また、繊維径が10μmよりも大きいものである場合、同一目付であるときメルトブローの構成繊維本数が少ないためにカバーリング効果が少なく、斑改善効果が少ないばかりか剛性も高いものとなってしまうなどの問題が生じてくるので好ましくない。
【0050】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明につき具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0051】
なお、下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
(1)融点(℃):
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い昇温速度20℃/分の条件で測定し得られた融解吸熱曲線において、極値を与える温度を融点とした。
(2)繊維径(μm):
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で100から5000倍の写真を撮影し、各サンプルからn=10本計100本の繊維直径を測定し、平均値を繊維径とした。
(3)繊度(dtex):
上記繊維径よりポリマーの密度の補正し、繊度を算出した。
(4)目付(g/m2 ):
標準状態にサンプルを24時間放置後縦方向50cm×横方向50cmの試料4点を採取各試料の重量を測定し、得られた値の平均値を単位面積当りに換算し不織布の目付(g/m2 )とした。
(5)引張り強力(kg/5cm幅):
JIS−L1096記載のストリップ法に準じて測定した。即ち不織布の試料長が30cm試料幅が5cmの試料片を不織布の縦方向(MD)及び横方向(CD)にそれぞれ5点を作成各試料片ごとに定速伸長形引張り試験機を用いつかみ間隔20cm、引張り速度10cm/分で伸長し、得られた最高引張強力(N/5cm幅)を読み取り、縦方向と横方向の平均値を算出し、それぞれの引張強力とした。
(6)風合い:
不織布より幅20cm、長さ20cmのサンプルを採取5人のモニターによ り評価した。サンプルを手で揉み、不織布の柔軟性を評価し、次の基準で判定し、その合計点で柔軟性のランク分けし、
3点:不織布の手触りが良く柔軟である。
【0052】
2点:不織布の手触り感が普通である。
【0053】
1点:不織布の手触り感が硬いである。
【0054】
合計点数が高いものほど柔軟であると判定した。
(7)生分解性:
大きさ20cm×20cmの不織布を3枚採取し、土壌約10cmに埋め込み6ヶ月放置後の形態変化を目視で評価した。
【0055】
不織布に生分解性が認められたもの:○
不織布に生分解性が認められないもの:×
として判定した。
(8)紡糸性:
製布した不織布を目視検査し、1000m当りの単糸流れ、ドリップ欠点が10個以下のものを○、11〜50個であるものを△、51以上から製布不良であるものを×とし判定した。
【0056】
実施例1
繊維Aの芯成分用として重量平均分子量が20.43でQ値(Mw/Mn)が1.89、融点が170℃であるポリ乳酸樹脂を、また鞘成分として重量平均分子量が14.1万でQ値(Mw/Mn)が1.7、融点が135℃であるポリ乳酸樹脂を、また繊維B用には繊維Aの芯成分と同様の原料を用い、それぞれの原料を別々にエクストルーダーで溶融し、孔径が0.3mm幅であって1m幅当りの穴数が3500孔であり、芯鞘繊維Aと単成分繊維Bを同一口金で紡出可能な矩形口金を用いた紡糸装置により、紡糸温度が230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより紡糸速度4700m/分で単糸繊度2dtexで紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し凸部の面積が18%であるエンボスロールで、エンボス温度95℃、エンボス圧力50kg/cmで不織布を製造した。このとき、表1に示すように、繊維Aの芯鞘比率及び繊維Aと繊維Bとの混繊比率を変更し目付約20g/m2 の不織布を得た。
【0057】
得られた不織布の引張り強力は、医療衛生材料用途として十分なものであり、また、低融点を鞘成分に有する接着性繊維Aが混在しており圧着部がポリマー状に溶着しないためエンボス条件の変動あるいは原料特性の変動があっても、圧着状態に影響を与えにくく、風合い良好な不織布であった。またいずれの水準とも十分な生分解性能を有していることを確認した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2
実施例1と同様の原料構成とし、それぞれの原料を別々のエクストルーダーで溶融し、繊維A及び繊維Bの繊度が2dtex以下では口金孔数が1m幅当り3500孔、孔径が0.3mmφ、5dtexは口金孔数が1500孔/m、孔径が0.35mmφ、10dtex以上は口金孔数が1000孔/m、孔径が0.5mmφであって、いずれも繊維Aと繊維Bの混繊比率が20:80である矩形口金を用い、繊維Aの芯鞘比率が80:20となるよう吐出量を設定し、紡糸温度230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより紡糸速度4900m/分で紡糸し、移動するコンベア上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し、凸部の面積が13%であるエンボス温度95℃で、エンボス圧力40kg/cmで熱圧着した。
【0060】
表2に示したとおり、目付約25g/m2 の不織布を得た。
【0061】
紡糸性は、いずれも良好であり、十分な引張り強力を示し風合いも良好なものであり、また良好な生分解性能を有していることを確認した。
【0062】
【表2】
【0063】
比較例1
芯成分用として重量平均分子量が20.4万でQ値(Mw/Mn)が1.89,融点が170℃であるポリ乳酸樹脂を、また鞘成分用として重量平均分子量が14.1万でQ値(Mw/Mn)が1.7、融点が135℃であるポリ乳酸樹脂を用い、それぞれの原料を別々にエクストルーダーで溶融し、孔径が0.3mmφであって1m幅当りの穴数が3500孔である芯鞘型矩形口金を有する紡糸装置により、紡糸温度が230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより4750m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し凸部の面積が18%であるエンボスロールで、エンボス温度95℃、エンボス圧力50kg/cmで熱圧着、目付が約20g/m2 の不織布を得た。
【0064】
表3に示すように、繊維の繊度を2dtexとし、芯鞘比率を変更したいずれの水準とも、生分解性と一定の引張り強力を有するものの、繊維一本一本の表面が全て低融点成分で覆われているため圧着部がフィルム状に溶着しており、エンボスロールの圧力を40kg/cmに下げても風合い調整が困難で、風合いが硬く、医療衛生材料として満足できるものではなかった。
【0065】
【表3】
【0066】
比較例2
実施例1繊維Aの芯成分と同様のポリ乳酸樹脂を用いエクストルーダーで溶融口金孔径が0.3mmφであって1m幅当りの穴数が3500孔である単成分口金を有する紡糸設備を用い、紡糸温度が230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより紡糸速度4800m/分で紡糸2dtexの単成分繊維を移動するネットコンベアー上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し、凸部の面積が13%であるエンボスロールでエンボス温度を120℃、140℃としエンボス圧力50kg/cmで熱圧着した。
【0067】
エンボス温度120℃では熱圧着不足で毛羽が多く、140℃ではシートの熱圧着性は良好であるが、シートの風合いが硬く満足できるものではなかった。
【0068】
比較例3
実施例2と同条件により単糸繊度を0.3dtex及び13dtexの2水準で紡糸した結果、0.3dtexでは曳糸性がなく口金直下で単糸切れが多発し欠点の少ない満足すべきシートが得られなかった。また、13dtexの場合、冷却長を長くしてもフィラメントの冷却が不十分であり、糸切れが激しく高融点ポリマーと低融点ポリマーの融接着が激しく紡糸不可能であった。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、生分解性を有し、芯成分が高融点成分であり鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊、部分的に熱圧着されているため優れた柔軟性と風合い及び強力を有しかつ安定した操業性と品質を有する医療衛生材料を提供することができるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有し、良好な機械強度と柔軟性及び良好な風合いを有する不織布に関し、その特性を利用して、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、手術着などの医療衛生材料用として最適に用いられる不織布と、該不織布を用いてなる医療衛生材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、医療衛生材料用不織布には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂が使用されているが、これら樹脂から得られた不織布は、自己分解性がなく自然環境下では極めて安定なものである。
【0003】
このため、使用済みの医療、衛生材料は、焼却炉で焼却されるか、あるいは埋立て処理がなされているが、焼却処理には費用が高くつくばかりか焼却時に発生するガスなどの環境上の問題も発生する可能性がある。また、埋め立て処理についても、自然環境破壊の点から問題になりつつある。
【0004】
このような観点から、近年は自然にやさしい医療衛生材料の早期開発が望まれている。
【0005】
これらに対応するためには、乾式法あるいは溶液浸漬法などにより得られるビスコースレーヨン短繊維不織布、湿式スパンボンド法により得られるレーヨン長繊維不織布や、キチンやアテロコラーゲン等の、天然繊維や天然由来の化学繊維からなる不織布、コットンからなるスパンレース不織布など種々の生分解不織布が知られている。
【0006】
しかしながら、これら従来の生分解性不織布は、不織布を構成する繊維の機械的強度が小さく、また、親水性があるため、吸水時、湿潤時の強度低下が著しく、湿潤・乾燥時の収縮が大きく素材の寸法安定性に欠けるという問題があり、更に素材自体が非熱可塑性樹脂であるため熱接着性を有していないなどの問題もあり、製布加工時にヒートシール性を利用することが不可能であり実用上採用できないという問題がある。
【0007】
これら問題を改善するため、熱可塑性を有し、微生物によって分解可能な脂肪族ポリエステル樹脂を溶融紡糸した多数の長繊維からなり、脂肪族ポリエステル樹脂がグリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体成分を構成単位として含む繊度が1〜10デニールの生分解性不織布及びその製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかし、この不織布は実用上、紡糸性と生分解性をともに満足できるまでに到達するに至っていない。すなわち、溶融紡糸に適し、長繊維不織布に使用できる脂肪族ポリエステルとしては、1,4−ブタジオールとコハク酸から合成されるポリブチレンサクシネート重合物の場合、溶融紡糸性良好で、強度と風合いの優れた生分解性長繊維不織布が得られるが生分解性速度が遅いなど難点があった。
【0009】
また、かかる状況を改善し、優れた生分解性を有しながら、衛生材料用不織布として必要な特性である透液性を柔軟性や風合いをバランス良く不織布に付与するという提案がされている(特許文献2)。
【0010】
すなわち、1,4−ブタジオールとコハク酸から合成されるポリブチレンサクシネート重合体をウレタン結合により高分子量化した後、得られる熱可塑性を有する脂肪族ポリエステルからなる樹脂組成物を異形断面用口金と円形断面口金を備えた押出し紡糸機で別々に加熱溶融して、多数の口金孔から押出し紡糸し、紡出された連続長繊維フィラメント群をエジェクターからの高速エアーで延伸し、衝突板に当てて開繊し、次いで支持体上に捕集、堆積して、それぞれ特定の範囲の繊度と目付からなるウェブをそれぞれ形成させ、これらのウェブを積層して、このウェブの表面から高圧水ジェット流を噴射、乾燥し、交絡一体化したウェブとし、更に、このウェブを熱エンボス処理により、部分的にかつ規則的に熱融着させた区域を設けてなるスパンボンド不織布が提案されている。かかる不織布は、その厚さ方向において円形断面と異形断面の長繊維フィラメントが混在しており、該不織布は生分解性を有し、優れた柔軟性、風合い、強度および透液性などをバランス良く備えることができるというものである。
【0011】
しかし、この不織布は、従来のポリプロピレン、ポリエチレンなどのスパンボンド熱接着品に加え、円形断面と異形断面の不織布ウェブを積層した後、ウェブの表面から高圧ジェット水流を噴射、乾燥させる工程を有しているために、コストが極めて高いものとなり、医療衛生材料など使い捨て用途としてはあまりにも高価なものとなり、商品的に一般的なものではなく、実用に値しないものである。
【0012】
また、芯部が高融点の生分解性熱可塑性重合体成分からなり、鞘部が該芯部重合体より低融点の生分解性熱可塑性重合体成分からなる複合長繊維から構成されかつ構成繊維同士が圧接面積比率5〜50%で熱接着されていることを特徴とする生分解性複合長繊維不織布が提案されている(特許文献3)。
【0013】
しかしながら、かかる提案による生分解性複合長繊維不織布は、高融点成分のまわりを低融点成分が完全に被っているため、融点差が小さいと高融点単成分に近い接着挙動を示し、芯鞘構造として柔軟かつ物性的に良好な不織布が得られにくい。鞘成分が更に低融点となるとエンボスロールは、低温かつ低圧力で接着することができるが、全てのフィラメントが低融点の接着成分で完全に被われているため、エンボス圧着部の接着が強固であり、風合いが硬めとなりやすく、またエンボス温度あるいは圧力を変更し風合い及び物性バランスを調整しようとしても、繊維の全てが接着成分であるため、その調整範囲は極めて狭いものであり、原料ロットの切替え時など原料特性のわずかな変動により、風合い、物性レベルが大きく変化するなどの理由により安定的生産に耐えうるものではなかった。
【0014】
【特許文献1】特開平8−060513号公報
【0015】
【特許文献2】特開平10−219556号公報
【0016】
【特許文献3】特開平6−207324号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題を解決し、生分解性を有し、柔軟な風合いを有し、機械的強度と寸法安定性のよい不織布を提供すること、特に、該特性から、医療衛生材料に適した不織布を安定的に提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討をした結果、本発明に到達したものである。
【0019】
すなわち、本発明の不織布は、以下の(1)記載の構成を有するものである。
また、更に好ましくは、以下の(2)〜(12)に記載の構成を有するものである。
【0020】
また、本発明は、以下の(13)に記載の不織布の製造方法を提供するものである。
(1)芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の高融点生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊されてなり、かつ部分的に圧着されてなることを特徴とする生分解性不織布。
(2)前記芯鞘型繊維Aと繊維Bとの混繊比率(重量比率)が10:90から80:20であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
(3)前記芯鞘型繊維Aの芯成分と鞘成分の比率(重量比率)が95:5から30:70であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性不織布。
(4)前記高融点生分解性樹脂と低融点生分解性樹脂の融点差が10℃以上60℃以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の生分解性不織布。
(5)前記繊維A及び繊維Bの単糸繊度が0.5dtexから10dtexであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の生分解性不織布。
(6)前記不織布を構成する繊維の部分的圧着部の面積比率が5〜30%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の生分解性不織布。
(7)前記不織布が、熱エンボス方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
(8)前記不織布が、 超音波接着方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
(9)前記不織布が、 熱エアースルー方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
(10)前記生分解性樹脂がポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の生分解性不織布。
(11)前記生分解性不織布が長繊維不織布であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の不織布。
【0021】
また、本発明の医療衛生材料は、以下の(12)記載の構成を有するものである。
(12)上記(1)から(11)のいずれかに記載の不織布を用いてなることを特徴とする医療衛生材料。
(13)芯成分樹脂が鞘成分樹脂よりも高融点の樹脂から構成されてなる芯鞘型複合繊維Aと、該芯成分を構成する樹脂と実質的に同一の融点である樹脂を、同一の口金上の別々の口金孔から押出しした後、冷却し、エジェクターを介し4000m/分以上で高速紡糸した後、移動するネット上に捕集し、引続き該捕集された繊維ウェブの構成繊維を熱圧着して不織布とすることを特徴とする不織布の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明をする。
【0023】
本発明に用いられる生分解性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂などが挙げられる。中でも、ポリ乳酸は天然の植物を原料としたものであり、最も自然にやさしい生分解性樹脂である。
【0024】
本発明において、ポリ乳酸とは、主としてL−乳酸を主たる原料とするポリエステルをいい、好ましくは、構成成分の60%以上がL−乳酸であり、40%を超えない範囲でD乳酸を含有するようなポリエステルであってもよい。ポリ乳酸の製法としては、乳酸を原料としていったん環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後、開環重合を行う二段階のラクチド法と、乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られているが、いずれであってもよい。
【0025】
ラクチド法によって得られるポリマーの場合には、ポリマー中に含有される環状二量体が溶媒紡糸時に気化して糸斑発生、紡糸性不調などの原因となるため、溶融紡糸以前にポリマー中に含有する環状二量体の含有量を極力減少させておくことが好ましく0.1wt%以下にすることが望ましい。
【0026】
また、直接重合法の場合には、環状二量体に起因する問題が実質的にないため、製糸性の観点からより好ましいと言える。ポリ乳酸は、生分解性あるいは加水分解性が高いため、自然環境中で容易に分解される利点を有している。ポリ乳酸の重量平均分子量は高いほど好ましく、通常は、少なくとも5万であることが好ましく、より好ましくは10万から30万の範囲内である。重量平均分子量が5万未満である場合、繊維の強力が低くなり好ましくない場合がある。
【0027】
また、分子量が30万を越えるものである場合、粘度が高いため口金から吐出されたフィラメントの曳糸性が乏しく、エアーサッカー等による高速索引が不可能であるため、操業性の点では良好であるものの、フィラメントの物性面で満足すべきものが得られず、不織布としてのシート特性も、用途によっては十分なものでない場合がある。
【0028】
本発明の不織布を構成する芯鞘型繊維Aの芯成分である高融点成分と鞘成分である低融点成分の融点差は、10℃以上50℃までが良く、より好ましくは15℃以上45℃の範囲までである。
【0029】
融点差が10℃未満である場合、繊維Bを構成する高融点フィラメントと、繊維Aの鞘成分を構成する低融点成分との融点差が小さく、A繊維、B繊維の口金吐出後の固化点差が小さいため紡糸性は安定しているが、不織布ウェブとした後、熱接着するに際して、例えばエンボスロールで熱圧着する場合、低融点成分と高融点成分の融点差が小さいため、加熱温度あるいはロールの加圧力を大きくする必要があるため、繊維A及び繊維Bのフィラメント全体に機械的に与えるダメージが大きく、熱接着された不織布が硬くなるばかりか、不織布の物性が悪化し、満足できるものが得られない。
【0030】
また、接着方式が高温加熱した熱風を使用する、いわゆるエアースルー方式である場合、芯鞘型繊維の低融点成分のみを軟化させようとしても熱風温度が高いときには、高融点も軟化し、あるいはまた熱風温度が低い場合には接着に十分なまで鞘成分である低融点ポリマーが軟化しないために接着が不十分となり物性的に弱いものとなってしまい好ましくない。
【0031】
また、低融点ポリマーと高融点ポリマーとの融点差が50℃を越えるものである場合、同一口金から吐出した繊維Aの鞘成分である低融点ポリマーと、繊維Bを構成する高融点ポリマーの固化点差が大きく、糸切れによる繊維Aと繊維Bとの融接着が発生するなど糸切れが発生と、これにともなう欠点が発生するなど良好な不織布が得られないという問題がある。また、芯成分が高融点であって、鞘成分が低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯成分と同様の生分解性樹脂からなる繊維Bとの混繊比率は、5:95から80:20が好ましく、より好ましくは10:90から50:50の範囲内である。
【0032】
繊維Aの混繊比率が5%未満である場合、繊維Aと繊維Bとを均一に混繊することが難しくなり、また接着成分を有する繊維Aの混率が少ないため加熱ロールで熱接着する際、不織布の熱接着が不十分となり、物性的に弱いものとなりがちであること、また毛羽が発生しやすいことなどの問題が生じてくる。
【0033】
また、繊維Aの混繊比率が80%を越えるものである場合、芯成分が高融点で鞘成分が低融点である繊維Aが100%の場合と同様に、十分な接着が得られるが、シートの風合いが硬く、接着成分を有する繊維が多いため、鞘成分原料ロットの切替え時などに原料特性のわずかな変動でも熱接着性が変化し、接着条件の調整が困難となり、結果としてシート特性のバラツキも大きくなり安定的に生産することが難しくなる。また、物性レベルを調整するにしても、接着温度、圧力などの調整範囲が極めて狭く、実質的に調整することが困難な方向である。
【0034】
また、芯鞘型繊維Aの芯成分と鞘成分の比率は95:5から30:70が良く、より好ましくは90:10から50:50の範囲内である。芯成分の比率が95%を越える場合、鞘成分の吐出量が少なくなり、完全に芯成分のまわりを鞘成分で覆いつくすことが難しく芯鞘構造が維持しにくいため、安定して紡糸することが難しい。
【0035】
また、芯成分の比率が30%未満の場合、安定した複合形態は維持できるものの低融点成分100%の繊維を高融点成分Bとの混繊不織布の場合と同様、口金から吐出された繊維Aと繊維Bとの固化点差が大きくなり、糸切れあるいは融接着が増加するなど、紡糸性が悪化する傾向にあり、また、低融点成分が増加するために物性も低くなり用途により好ましくない。
【0036】
前記繊維A及び繊維Bの単糸繊度は0.5dtexから8dtexの範囲内のものが良く、より好ましくは1dtexから5dtexの範囲内のものである。
繊度が0.5dtex未満である場合、紡糸ドラフトが高くなり単糸切れが頻発するため生産としては不適当である。
【0037】
一方、単糸繊度が8dtexを越えるものである場合、紡糸時の冷却が不十分となり融接着が発生するなどにより、満足できる不織布が得られない場合がある。
【0038】
本発明においては、紡糸性品位の兼ね合いから上記単糸繊度の範囲内で低融点成分を鞘成分に有する繊維Aの繊度を高融点単成分である繊維Bの繊度に対し10%〜20%低目とすることで口金から吐出された繊維A及びBの固化点を揃えることができるためより好ましい。
【0039】
また、紡糸性をより安定したものとするためには、低融点成分を鞘成分とする芯鞘型複合繊維Aを高融点成分単成分である繊維Bよりも外周に位置する(紡出時にチムニー側に近い位置)側に口金の配列をすることが好ましい。
【0040】
不織布を構成するための熱接着方法は、従来から行われている熱エアースルー方式、超音波方式、エンボス方式などどんな方式でも特に問題なく加工可能である。エンボス方式における熱圧着温度は低融点樹脂の融点より10℃から50℃低い温度が良く、より好ましくは15℃から40℃低い温度が好ましい。
【0041】
エンボス温度が、低融点樹脂の融点より10℃未満低い温度である場合、低融点樹脂の溶融が激しく、エンボスロールへのシート取られ、ロール汚れが激しくシートが硬くなるばかりか、ロール巻付きも頻繁するなど安定生産が不可能となる場合がある。また、低融点樹脂の融点より50℃以上低い温度である場合、樹脂の溶着が不十分であり、風合い的にはソフトなものとなるが、物性的に弱いものとなるなどの問題点が出てくる。
【0042】
エンボスロールの圧着面積部の面積比率は5%から30%のものがよく、ロールの彫刻はどんなパターンでもよいが、接着温度範囲を広くとる意味からも上ロール及び下ロールともに彫刻したものがより好ましい。
【0043】
また、本発明において製糸性及び物性など効果が損なわれない範囲で、酸化チタン、二酸化ケイ素など無機系微粒子を添加することがエンボスロールと接着シートの離型性が向上より安定した接着性が得られるので好まし、その添加率は、ポリマー中に0.1重量%から1.0重量%であることが好ましい。より好ましくは0.2重量%から0.7重量%の範囲内である。添加率が0.1%未満である場合、エンボスロールと熱接着シートの剥離効果が少なく、また1.0重量%以上である場合、単糸切れなど紡糸性に悪影響を与えることになるので好ましくない。
【0044】
前記無機系微粒子の添加は、繊維Aを構成する芯成分の高融点成分及び鞘成分である低融点成分、また繊維Bの高融点成分など全ての樹脂に添加してもよいが、最も効果が大きいのは繊維Aを構成する芯鞘型繊維の鞘成分である低融点樹脂に添加することが好ましい。また、不織布の目付は10g/m2 から30g/m2 が良く、より好ましくは15g/m2 から25g/m2 の範囲内である。不織布の目付が10g/m2 未満である場合、不織布としての強度が不足、医療、衛生材料として不十分である。また目付が30g/m2 を越えるものである場合、不織布としての強度は十分であるが、剛性が高くなり風合い的に不十分なものとなる場合があり好ましくない。
【0045】
本発明の不織布は、例えば、従来から不織布の製造手法として知られているスパンボンド法を基本方法として用いて製造することができる。
【0046】
より具体的には、例えば、芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が低融点生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと繊維Aの芯成分と同様の高融点生分解性樹脂Bとの混繊複合紡糸が可能な口金を用い規定の吐出量で紡出された連続長繊維フィラメントを冷却した後、エジェクターにより3000m/分から6000m/分で高速牽引し、移動するネットコンベアー上に捕集し、ウェブを形成した後、熱圧着することにより製造することができ、紡糸方法としては丸型口金、丸型エジェクターあるいは矩形口金と矩形エジェクターなどいずれの組合せでもよいが、フィラメントの開繊性を向上させ斑の少ない不織布シートとするためには、矩形口金と矩形エジェクターとの組合せとすることが好ましい。
【0047】
また、より斑が少なく、均一性の高い不織布とするためには、前記スパンボンドとメルトブローとの積層方式あるいはスパンボンドとメルトブローを2層以上積層する方式をとっても良く、この場合の積層方式は、製布ネット上に次々と積層するインライン方式あるいは、それぞれの接着シートを後加工により積層しても良いことは言うまでもない。この場合のメルトブロー不織布に用いる原料は、芯鞘型繊維Aに用いる高融点生分解性樹脂、あるいは低融点生分解性樹脂のいずれでも良いが、スパンボンドの接着性成分と同様である低融点生分解性樹脂を用いた方がスパンボンドとメルトブロー貼合せ部での層間剥離がしにくく、より好ましい。また、メルトブローの繊維径は10μm以下が良く、より好ましくは1μmから8μmの範囲内である。
【0048】
繊維径が1μm未満である場合、口金単孔当りの吐出量も低下させる必要があり、孔詰りによる吐出不良が発生する操業上の問題や、ショットと呼ばれるポリマーの固まりが発生するなど品質上の問題も発生するからである。
【0049】
また、繊維径が10μmよりも大きいものである場合、同一目付であるときメルトブローの構成繊維本数が少ないためにカバーリング効果が少なく、斑改善効果が少ないばかりか剛性も高いものとなってしまうなどの問題が生じてくるので好ましくない。
【0050】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明につき具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0051】
なお、下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
(1)融点(℃):
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い昇温速度20℃/分の条件で測定し得られた融解吸熱曲線において、極値を与える温度を融点とした。
(2)繊維径(μm):
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で100から5000倍の写真を撮影し、各サンプルからn=10本計100本の繊維直径を測定し、平均値を繊維径とした。
(3)繊度(dtex):
上記繊維径よりポリマーの密度の補正し、繊度を算出した。
(4)目付(g/m2 ):
標準状態にサンプルを24時間放置後縦方向50cm×横方向50cmの試料4点を採取各試料の重量を測定し、得られた値の平均値を単位面積当りに換算し不織布の目付(g/m2 )とした。
(5)引張り強力(kg/5cm幅):
JIS−L1096記載のストリップ法に準じて測定した。即ち不織布の試料長が30cm試料幅が5cmの試料片を不織布の縦方向(MD)及び横方向(CD)にそれぞれ5点を作成各試料片ごとに定速伸長形引張り試験機を用いつかみ間隔20cm、引張り速度10cm/分で伸長し、得られた最高引張強力(N/5cm幅)を読み取り、縦方向と横方向の平均値を算出し、それぞれの引張強力とした。
(6)風合い:
不織布より幅20cm、長さ20cmのサンプルを採取5人のモニターによ り評価した。サンプルを手で揉み、不織布の柔軟性を評価し、次の基準で判定し、その合計点で柔軟性のランク分けし、
3点:不織布の手触りが良く柔軟である。
【0052】
2点:不織布の手触り感が普通である。
【0053】
1点:不織布の手触り感が硬いである。
【0054】
合計点数が高いものほど柔軟であると判定した。
(7)生分解性:
大きさ20cm×20cmの不織布を3枚採取し、土壌約10cmに埋め込み6ヶ月放置後の形態変化を目視で評価した。
【0055】
不織布に生分解性が認められたもの:○
不織布に生分解性が認められないもの:×
として判定した。
(8)紡糸性:
製布した不織布を目視検査し、1000m当りの単糸流れ、ドリップ欠点が10個以下のものを○、11〜50個であるものを△、51以上から製布不良であるものを×とし判定した。
【0056】
実施例1
繊維Aの芯成分用として重量平均分子量が20.43でQ値(Mw/Mn)が1.89、融点が170℃であるポリ乳酸樹脂を、また鞘成分として重量平均分子量が14.1万でQ値(Mw/Mn)が1.7、融点が135℃であるポリ乳酸樹脂を、また繊維B用には繊維Aの芯成分と同様の原料を用い、それぞれの原料を別々にエクストルーダーで溶融し、孔径が0.3mm幅であって1m幅当りの穴数が3500孔であり、芯鞘繊維Aと単成分繊維Bを同一口金で紡出可能な矩形口金を用いた紡糸装置により、紡糸温度が230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより紡糸速度4700m/分で単糸繊度2dtexで紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し凸部の面積が18%であるエンボスロールで、エンボス温度95℃、エンボス圧力50kg/cmで不織布を製造した。このとき、表1に示すように、繊維Aの芯鞘比率及び繊維Aと繊維Bとの混繊比率を変更し目付約20g/m2 の不織布を得た。
【0057】
得られた不織布の引張り強力は、医療衛生材料用途として十分なものであり、また、低融点を鞘成分に有する接着性繊維Aが混在しており圧着部がポリマー状に溶着しないためエンボス条件の変動あるいは原料特性の変動があっても、圧着状態に影響を与えにくく、風合い良好な不織布であった。またいずれの水準とも十分な生分解性能を有していることを確認した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2
実施例1と同様の原料構成とし、それぞれの原料を別々のエクストルーダーで溶融し、繊維A及び繊維Bの繊度が2dtex以下では口金孔数が1m幅当り3500孔、孔径が0.3mmφ、5dtexは口金孔数が1500孔/m、孔径が0.35mmφ、10dtex以上は口金孔数が1000孔/m、孔径が0.5mmφであって、いずれも繊維Aと繊維Bの混繊比率が20:80である矩形口金を用い、繊維Aの芯鞘比率が80:20となるよう吐出量を設定し、紡糸温度230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより紡糸速度4900m/分で紡糸し、移動するコンベア上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し、凸部の面積が13%であるエンボス温度95℃で、エンボス圧力40kg/cmで熱圧着した。
【0060】
表2に示したとおり、目付約25g/m2 の不織布を得た。
【0061】
紡糸性は、いずれも良好であり、十分な引張り強力を示し風合いも良好なものであり、また良好な生分解性能を有していることを確認した。
【0062】
【表2】
【0063】
比較例1
芯成分用として重量平均分子量が20.4万でQ値(Mw/Mn)が1.89,融点が170℃であるポリ乳酸樹脂を、また鞘成分用として重量平均分子量が14.1万でQ値(Mw/Mn)が1.7、融点が135℃であるポリ乳酸樹脂を用い、それぞれの原料を別々にエクストルーダーで溶融し、孔径が0.3mmφであって1m幅当りの穴数が3500孔である芯鞘型矩形口金を有する紡糸装置により、紡糸温度が230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより4750m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し凸部の面積が18%であるエンボスロールで、エンボス温度95℃、エンボス圧力50kg/cmで熱圧着、目付が約20g/m2 の不織布を得た。
【0064】
表3に示すように、繊維の繊度を2dtexとし、芯鞘比率を変更したいずれの水準とも、生分解性と一定の引張り強力を有するものの、繊維一本一本の表面が全て低融点成分で覆われているため圧着部がフィルム状に溶着しており、エンボスロールの圧力を40kg/cmに下げても風合い調整が困難で、風合いが硬く、医療衛生材料として満足できるものではなかった。
【0065】
【表3】
【0066】
比較例2
実施例1繊維Aの芯成分と同様のポリ乳酸樹脂を用いエクストルーダーで溶融口金孔径が0.3mmφであって1m幅当りの穴数が3500孔である単成分口金を有する紡糸設備を用い、紡糸温度が230℃で紡糸した後、冷却温度15℃のチムニーで冷却した後、矩形エジェクターにより紡糸速度4800m/分で紡糸2dtexの単成分繊維を移動するネットコンベアー上に捕集し、得られたウェブを片面がフラットで片面に凹凸を有し、凸部の面積が13%であるエンボスロールでエンボス温度を120℃、140℃としエンボス圧力50kg/cmで熱圧着した。
【0067】
エンボス温度120℃では熱圧着不足で毛羽が多く、140℃ではシートの熱圧着性は良好であるが、シートの風合いが硬く満足できるものではなかった。
【0068】
比較例3
実施例2と同条件により単糸繊度を0.3dtex及び13dtexの2水準で紡糸した結果、0.3dtexでは曳糸性がなく口金直下で単糸切れが多発し欠点の少ない満足すべきシートが得られなかった。また、13dtexの場合、冷却長を長くしてもフィラメントの冷却が不十分であり、糸切れが激しく高融点ポリマーと低融点ポリマーの融接着が激しく紡糸不可能であった。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、生分解性を有し、芯成分が高融点成分であり鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊、部分的に熱圧着されているため優れた柔軟性と風合い及び強力を有しかつ安定した操業性と品質を有する医療衛生材料を提供することができるものである。
Claims (13)
- 芯成分が高融点である生分解性樹脂であり、鞘成分が芯成分より低融点である生分解性樹脂からなる芯鞘型繊維Aと、繊維Aの芯部と同様の高融点生分解性樹脂からなる繊維Bとが混繊されてなり、かつ部分的に圧着されてなることを特徴とする生分解性不織布。
- 前記芯鞘型繊維Aと繊維Bとの混繊比率(重量比率)が10:90から80:20であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
- 前記芯鞘型繊維Aの芯成分と鞘成分の比率(重量比率)が95:5から30:70であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性不織布。
- 前記高融点生分解性樹脂と低融点生分解性樹脂の融点差が10℃以上60℃以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記繊維A及び繊維Bの単糸繊度が0.5dtexから10dtexであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記不織布を構成する繊維の部分的圧着部の面積比率が5〜30%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記不織布が、熱エンボス方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記不織布が、 超音波接着方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記不織布が、 熱エアースルー方式で接着されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記生分解性樹脂がポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 前記生分解性不織布が長繊維不織布であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の不織布。
- 請求項1から11のいずれかに記載の不織布を用いてなることを特徴とする医療衛生材料。
- 芯成分樹脂が鞘成分樹脂よりも高融点の樹脂から構成されてなる芯鞘型複合繊維Aと、該芯成分を構成する樹脂と実質的に同一の融点である樹脂を、同一の口金上の別々の口金孔から押出しした後、冷却し、エジェクターを介し4000m/分以上で高速紡糸した後、移動するネット上に捕集し、引続き該捕集された繊維ウェブの構成繊維を熱圧着して不織布とすることを特徴とする不織布の製造方法。
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