JP2004143553A - キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法 - Google Patents

キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004143553A
JP2004143553A JP2002311510A JP2002311510A JP2004143553A JP 2004143553 A JP2004143553 A JP 2004143553A JP 2002311510 A JP2002311510 A JP 2002311510A JP 2002311510 A JP2002311510 A JP 2002311510A JP 2004143553 A JP2004143553 A JP 2004143553A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
film
forming
mgb
vacuum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002311510A
Other languages
English (en)
Inventor
Tetsuji Uchiyama
内山 哲治
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Corp filed Critical Japan Science and Technology Corp
Priority to JP2002311510A priority Critical patent/JP2004143553A/ja
Priority to JP2003363818A priority patent/JP4081795B2/ja
Publication of JP2004143553A publication Critical patent/JP2004143553A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Superconductor Devices And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Abstract

【課題】融点が大きく異なる、従って、蒸気圧が大きく異なる複数の物質の化合物からなる薄膜を、真空蒸着法で形成でき、かつ、同一真空内で熱処理して十分な特性の化合物薄膜を得ることができる方法を提供し、また、この方法を用いたMgB2 超伝導薄膜の形成方法を提供する。
【解決手段】高真空中において、融点の低い物質の膜12を融点の高い物質の膜13で覆った後、昇温し、固相拡散反応または溶融反応により両物質を反応させて化合物薄膜14を形成する。融点の低い物質12は、昇温しても融点の高い物質の膜13によって膜外への拡散が阻まれて膜内にとどまるので両物質の化合物からなる薄膜14が形成できる。また、装置を汚染することがないので、同一の真空で他の物質の薄膜を形成でき、高機能な複合機能デバイスを形成できる。この方法を用いれば、MgB2 超伝導薄膜をin−situで形成できる。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化合物の機能性薄膜を形成する新規な方法およびこの方法を用いたMgB2 超伝導薄膜の形成方法に関する。
本発明の方法は、化合物の構成物質のうち、融点が低い物質の膜を融点の高い物質の膜で覆った後、昇温過程を経て両物質を膜内で互いに反応させるもので、本発明者はこの方法を「キャップメルト法」と名付ける。
【0002】
【従来の技術】
融点が大きく異なる、従って、蒸気圧が大きく異なる複数の物質の化合物からなる有用な物質がある。このような化合物を合成するには、一般に、化合物を構成するそれぞれの物質を混合し、共融点温度近傍の温度で熱処理して反応させる。例えば、このような物質の例としてMgB2 超伝導体がある。MgとBの融点はそれぞれ、651℃、2076℃であり、沸点(蒸気圧が1気圧となる温度)はそれぞれ、1097℃、2527℃である。MgB2 超伝導体の合成は、MgとBの粉体を混合し、共融点温度近傍の温度で熱処理して形成される。MgとBの粉体混合物を熱処理すると、蒸気圧が大きいMgが粉体中を拡散し、拡散途中でBと反応し、MgB2 金属間化合物が形成されると考えられる。
MgB2 超伝導体のバルク体は、超伝導電線等の用途には適している。しかしながら、このような有用な物質を、機能性デバイスとして使用する場合には、薄膜化することが必要不可欠である。例えば、MgB2 超伝導体をジョセフソン素子等のエレクトロニクス・デバイスとして使用するためには、MgB2 超伝導体の薄膜化が必要不可欠である。
【0003】
しかしながら、融点が大きく異なる、従って、蒸気圧が大きく異なる複数の物質の化合物からなる薄膜を形成することは難しい。すなわち、バルク形状の化合物を蒸着物質源として蒸着薄膜を形成すると、蒸気圧の高い物質が先に蒸発してしまい、蒸着薄膜は化合物の特性を示さなくなる。例えば、MgB2 バルク体を蒸発源として蒸着により形成した薄膜は、MgとBの蒸気圧が大きく異なるために、Mgが先に蒸着され、Bが後から蒸着されるため、形成した薄膜は良い超伝導特性を示さない。
【0004】
また、各々の物質を別々の蒸着源から蒸着し、各々の物質が混合した薄膜を共融点温度近傍の温度で熱処理して化合物を合成しようとすると、膜厚が薄いために、蒸気圧の高い物質が蒸気圧の低い物質と反応する間もなく、薄膜外に散逸してしまい、熱処理後の薄膜は化合物の特性を示さない。例えば、MgとBを積層した薄膜を真空中で熱処理してもMgが抜けてしまい、良い超伝導特性を示さない。また、基板温度を高くして各々の物質を別々の蒸着源から蒸着して形成した薄膜は、ある程度化合物の特性を示すが、十分な特性を示さない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
MgB2 超伝導薄膜の形成方法は、現在2つの方法が知られている。
一つは、二段階形成法(two−step synthesis)と呼ばれる方法で、以下のような工程で実施される。まずプレカーサとして基板上にスパッタ、蒸着、CVD等を利用してアモルファスのBを堆積させる。ついで、このB薄膜が堆積した基板を取り出して、ガラス管中に載置し、さらにMgの単体を入れ、高真空に引いてから封をして電気炉中で600〜900℃の高温で熱処理する。すると、蒸気圧の高いMgがガラス管内に蒸気となって満たされ、MgがアモルファスB中に拡散してBと反応し、または、溶融して、MgB2 の金属間化合物超伝導薄膜が形成される。X線回折(XRD)の結果、この方法で得られる薄膜は結晶性がよく、単相ではないが、基板に対してエピタキシャル成長し、特定の配向を示す。また、超伝導転移温度は39Kを示し、MgB2 のバルク焼結体と同じ超伝導転移温度(Tc)が実現できる。
【0006】
もう一つは、熱処理をしない方法(as−grown法)で、真空蒸着装置、分子線エピタキシー装置(MBE)等を利用してMgB2 化学量論組成の薄膜を形成する。この方法は、MgとBを異なる蒸着源から供給し、300℃程度の高温基板上に成膜する。このとき、Mgは蒸気圧が高く散逸しやすいので、化学量論組成とは大きく異なるMg:B=10:1ぐらいの比率で蒸発させる。この方法で得られるMgB2 薄膜も超伝導特性を示す。しかしながら、バルクMgB2 の超伝導特性に比べると超伝導特性が低い。
【0007】
このように、融点が大きく異なる、従って、蒸気圧が大きく異なる複数の物質の化合物からなる薄膜を形成するには、密閉容器中の熱処理を必要とするか、あるいは、熱処理しないで用いなければならない。しかしながら、密閉容器中の熱処理を用いる形成法は、成膜工程と熱処理工程が別々であり、再現性、コストといった点で課題がある。熱処理しない形成法は、十分な特性を有する化合物薄膜が形成できないという課題がある。
【0008】
【非特許文献1】
Jun Nagamatu,Norimasa Nakagawa,Takahiro Muranaka,Yuji Zenitani & Jun Akimitu “Superconductivity at 39K in magnesium diboride”NATURE VOL410 1 MARCH 2001 p63−p64
【非特許文献2】
X.Zeng,他 “In situ Epitaxial MgB2  thin films for superconducting electronics” Nature Materials 1(2002)in press
【非特許文献3】
H.M Christen,他 “Superconducting magnesium diboride films with Tc〜24K grown by pulsed laser deposition with in situ anneal” Physica C353(2001)157−161
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、融点が大きく異なる、従って、蒸気圧が大きく異なる複数の物質の化合物からなる薄膜を、真空蒸着法で形成でき、かつ、同一真空内で熱処理して十分な特性の化合物薄膜を得ることができる方法を提供し、また、この方法を用いたMgB2 超伝導薄膜の形成方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法は、真空中において、融点の低い物質の膜を融点の高い物質の膜で覆った後、昇温し、固相拡散反応または溶融反応により両物質を反応させる。このため、融点の低い物質は、昇温しても融点の高い物質の膜によって膜外への拡散が阻まれて膜内にとどまり、両物質の化合物からなる薄膜が形成される。
また、上記成膜方法は真空蒸着により行い、パルスレーザ蒸着法であれば好ましい。また、スパッタリング法によっても良い。
また、上記方法で熱処理するので、融点の低い物質が膜外に拡散して真空装置を汚すことがないので、同一の真空で、形成した化合物薄膜上に他の物質からなる薄膜を成膜することができる。
【0011】
また、本発明のMgB2 超伝導薄膜の形成方法は、真空中で、基板上にマグネシウム(Mg)を成膜する工程と、Mgの膜上に、ホウ素(B)を成膜する工程と、同一の真空内でMgとBの積層膜を熱処理する工程からなることを特徴とする。成膜方法はレーザパルス蒸着法によって行えば好ましい。熱処理は、520〜580℃で行えば好ましい。また、真空は、10−7Torr以下の高真空であれば好ましい。
この方法によれば、成膜に使用した真空装置内で、かつ、成膜と同一の真空で熱処理ができる、すなわち、成膜後に真空装置から取り出して別の装置で熱処理することを必要とせずにMgB2 超伝導薄膜を形成することができる。また、熱処理によって真空装置が汚染されることがないので、同一真空で、MgB2 超伝導薄膜以外の薄膜、例えば、酸化物高温超伝導体薄膜を同一基板上に形成することができ、従って、複合機能超伝導デバイスが形成できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、実質的に同一の部材には同一の符号を付して説明する。
図1は、本発明のキャップメルト薄膜形成方法に用いる真空蒸着装置の一例であるパルスレーザー蒸着装置の構成を示す図である。
パルスレーザー蒸着装置1は、パルスレーザー光2を導入する透明な窓3を有する真空チャンバー4内に、蒸着物質からなる複数のターゲット5,6と、ターゲット5,6を搭載して回転軸7の周りに回転可能なターゲット・ホルダー8と、加熱可能な基板ホルダー9を有している。
【0013】
成膜するには、ターゲット・ホルダー8を回転し、所定の蒸着物質からなるターゲット5をパルスレーザー光2の照射位置にあわせ、所定のエネルギーを有するパルスレーザー光2を所定の周波数、時間で照射してターゲット5からプルーム(蒸気流)10を生成し、基板ホルダー9に固定された基板11に蒸着する。他の物質を蒸着するには、同様に、ターゲット・ホルダー8を回転し、所定の蒸着物質からなるターゲット6をパルスレーザー光2の照射位置にあわせ、所定のエネルギーを有するパルスレーザー光2を所定の周波数、時間で照射してターゲット6からプルーム10を生成し、基板ホルダー9に固定された基板11に蒸着する。
真空中の熱処理は、基板ホルダー9を所定の温度に加熱して行う。
【0014】
図2は、本発明のキャップメルト薄膜形成方法の工程を示す図である。なお、形成しようとする融点が大きく異なる、従って、蒸気圧が大きく異なる複数の物質の化合物薄膜は、XとYの2種類の物質からなり、Xの物質の融点がYの物質の融点よりも低いものとし、また、図1に示したパルスレーザー蒸着装置を使用して成膜するものとして説明する。
【0015】
始めに、ターゲット・ホルダー8を回転し、X物質からなるターゲット5をパルスレーザー光2の照射位置にあわせ、所定のエネルギーを有するパルスレーザー光2を所定の周波数、時間で照射してターゲット5からプルーム10を生成し、基板ホルダー9に固定された基板11に対して、図2(a)に示すように、所定の膜厚のX物質12を蒸着する。次ぎに、ターゲット・ホルダー8を回転し、Y物質からなるターゲット6をパルスレーザー光2の照射位置にあわせ、所定のエネルギーを有するパルスレーザー光2を所定の周波数、時間で照射してターゲット6からプルーム10を生成し、基板ホルダー9に固定された基板11のX物質からなる膜12上に、図2(b)に示すように、所定の膜厚のY物質13を蒸着する。
【0016】
次に、X物質の薄膜12とY物質の薄膜13が積層した基板11を、基板ホルダー9の加熱機構により所定の温度に上昇し、所定の時間熱処理する。なお、この工程をメルト工程と呼ぶ。メルト工程の温度、すなわち、メルト温度は、X物質とY物質の共融点温度近傍の温度であり、X物質、Y物質いずれの融点温度よりも低い。メルト温度を共融点温度より低くすれば、X物質とY物質の固相拡散により、共融点温度以上にすれば、X物質とY物質が溶融してX物質とY物質が反応し、図2(c)に示すように、所望の化合物薄膜14が得られる。
【0017】
この方法によれば、融点の高いX物質が、Y物質薄膜中に拡散するが、Y物質の融点が高いために、Y薄膜の外に散逸せずにY薄膜中にとどまる。また、Y物質薄膜と反対方向に拡散するX物質は基板に阻まれるので散逸しない。また、溶融状態においても同様に、融点の高いY物質と基板がX物質の薄膜外への散逸を阻止する。
【0018】
次に、本発明のMgB2 超伝導薄膜の形成方法を説明する。
図3は、本発明のMgB2 超伝導薄膜の形成方法の工程を示す図である。
真空装置内を10−7〜10−8Torrの高真空状態、好ましくは10−9〜10−10 Torrの超高真空状態にする。これは真空度が高いほど、MgB2 の成膜時に不純物の混入(特に酸素によるMgの酸化)を避けられるからである。
【0019】
そして図3(a)に示すように、以下の▲1▼〜▲5▼の順でターゲットを変え、室温下の基板に順に積層させて成膜する。
▲1▼ Mg+Bターゲット(MgB2 の化学量論的組成(1:2)よりもMgの割合を多くする)を用いてMg+B薄膜15を形成する。
▲2▼ MgB2 の化学量論組成(1:2)のターゲットを用いてMgB2 薄膜16を積層する。
▲3▼ B単体ターゲットを用いて第1のB薄膜17を積層する。
▲4▼ Mg単体ターゲットを用いてMg薄膜18を積層する。
▲5▼ B単体ターゲットを用いて第2のB薄膜19を積層する。
【0020】
パルスレーザ蒸着法を用いる場合について説明するが、この方法に限らず、分子線エピタキシー法、またはスパッタ法を用いることができる。成膜法は蒸発流の指向性が高いものほど好ましい。蒸発物質が基板のほかに真空チャンバに付着するのを回避するためである。また、蒸発物質が真空チャンバを汚染するのを防ぐためには、成膜時に雰囲気ガスを用いないことも必要である。
【0021】
最終的に形成されるMgB2 超伝導薄膜20は、主にMg+B薄膜15とMgB2 薄膜16から形成される。Mg+B薄膜15を設けるのは、Mgの拡散に伴って生じるMg+B薄膜15及びMgB2 薄膜16中のMgの濃度勾配を補償するためである。また、Mg+B薄膜15とMgB2 薄膜16の膜厚を制御することによって化学量論組成が実現できる。
【0022】
第1のB薄膜17は、メルト過程でMgB2 薄膜16から第1のB薄膜17方向に向かってMgが拡散する際に一緒に抜けるBを補償するために設ける。Mg薄膜18は、メルト過程でMgB2 薄膜16から第1のB薄膜17方向に向かって拡散して抜けるMgを補償するために設ける。第2のB薄膜19は、Mgが薄膜から拡散して真空装置内に散逸するの防止するために設ける。第2のB薄膜19が最も重要であり、第2の薄膜19が、いわば、キャップ(帽子)となり、Mgの散逸を防止するので、第2のB薄膜19以下の膜中のMgの圧力、濃度が高くなり、MgがBと反応してMgB2 超伝導薄膜20が形成される。
【0023】
なお、パルスレーザ蒸着法を用いる場合は、パルスレーザの周波数は高い方がよい。これは、いくら超高真空といっても超伝導性を劣化させる酸化性のガスは存在するため、このような酸化性ガスに晒される時間を短くするためである。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、約550℃に基板温度を上げる。メルト時間は、MgB2 の場合1〜3分が好ましい。メルト時の温度はきわめて重要で、MgB2 薄膜の場合±30℃の範囲内でしか、超伝導性は得られない。
【0025】
本発明の実施例1を示す。
基板としてMgO(100)面方位基板を用い、Kr;Fパルスレーザ蒸着装置を用いて成膜した。パルス周波数は10Hzであり、真空度は、10−9Torrである。また、上記▲1▼の工程で使用したターゲットは、中心角30°の扇形のBと中心角150°の扇形のMgをそれぞれ2片づつ交互に組み合わせて円形にしたものを用いた。また、室温の基板に上記▲1▼〜▲5▼工程を連続して行った。▲1▼〜▲5▼の成膜時間はそれぞれ10分、10分、1分、10分および10分であった。メルト過程は、基板温度を50℃/minの昇温速度で550℃まで上げ、この温度で2分間保持した後、自然冷却させた。この間高真空状態を保った。
【0026】
図4は、本実施例のMgB2 薄膜の超伝導特性を示す図であり、横軸は温度、縦軸は抵抗率である。挿入図は、超伝導転移温度を見やすくするため、温度のスケールを拡大して示した図である。
図からわかるように、この薄膜は超伝導特性を示し、超伝導転移温度Tcは20.3Kである。なお、この例のMgB2 薄膜の超伝導転移温度は、MgB2 バルクの超伝導転移温度に比べて低いが、その原因は、上記Mg+B薄膜15とMgB2 薄膜16の膜厚比が適切でなく、MgとBの組成比がずれたためである。
【0027】
次に、実施例2を示す。
基板に、MgB2 との格子整合性が最もよいAl2 3 (0001)面方位基板を使用した。実施例1と同様のパルスレーザー真空蒸着装置及びターゲットを用い、また、成膜条件とメルト条件も同一にして、MgB2 薄膜を形成した。
【0028】
図5は、本実施例2の超伝導特性を示す図であり、横軸は温度、縦軸は抵抗率である。挿入図は、超伝導転移温度を見やすくするため、温度のスケールを拡大して示した図である。
図からわかるように、この薄膜は超伝導特性を示し、超伝導転移温度Tcは16.5Kである。なお、この例のMgB2 薄膜の超伝導転移温度は、MgB2 バルクの超伝導転移温度に比べて低いが、その原因は、上記Mg+B薄膜15とMgB2 薄膜16の膜厚比が適切でなく、MgとBの組成比がずれたためである。
【0029】
また、本発明の方法によれば、真空装置を蒸気圧の高い物質で汚染することがないので、引き続き同一の真空で他の物質を成膜することができる。例えば、他の物質として、酸化物高温超伝導体を成膜することができる。従来、酸化物高温超伝導体の成膜は、酸化物高温超伝導体の超伝導特性が不純物に極めて敏感であるため、酸化物高温超伝導体専用の真空蒸着装置を必要とした。本発明の方法によれば、MgB2 超伝導体薄膜を成膜後に、この薄膜上に酸化物高温超伝導体薄膜を積層するといったことができる。これによって、さらに高機能な複合機能超伝導デバイスの形成が可能になる。
【0030】
【発明の効果】
上記説明から理解されるように、本発明によれば、真空中において、融点の低い物質の膜を融点の高い物質の膜で覆った後、昇温し、固相拡散反応または溶融反応により両物質を反応させるので、融点の低い物質は、昇温しても融点の高い物質の膜によって膜外への拡散が阻まれて膜内にとどまり、両物質の化合物からなる薄膜が形成できる。また、装置を汚染することがないので、同一の真空で他の物質の薄膜を形成でき、高機能な複合機能デバイスの形成が可能になる。
また、本発明のMgB2 超伝導薄膜の形成方法によれば、in−situでMgB2 超伝導薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のキャップメルト薄膜形成方法に用いる真空蒸着装置の一例であるパルスレーザー蒸着装置の構成を示す図である。
【図2】本発明のキャップメルト薄膜形成方法の工程を示す図である。
【図3】本発明のMgB2 超伝導薄膜の形成方法の工程を示す図である。
【図4】本実施例1のMgB2 薄膜の超伝導特性を示す図である。
【図5】本実施例2のMgB2 薄膜の超伝導特性を示す図である。
【符号の説明】
1  パルスレーザー真空蒸着装置
2  パルスレーザー光線
3  窓
4  真空チャンバー
5  ターゲット
6  ターゲット
7  回転軸
8  ターゲット・ホルダー
9  基板ホルダー
10 プルーム
11 基板
12 X物質の薄膜
13 Y物質の薄膜
14 X物質とY物質の化合物薄膜
15 Mg+B薄膜
16 MgB2 薄膜
17 第1のB薄膜
18 Mg薄膜
19 第2のB薄膜
20 MgB2 超伝導薄膜

Claims (9)

  1. 基板上に化合物の機能性薄膜を形成する方法であって、
    真空中で、
    上記化合物の構成物質のうち融点の低い物質を上記基板上に成膜する工程と、
    上記融点の低い物質の膜上に、上記化合物の構成物質のうち融点の高い物質を成膜する工程と、
    上記基板上に積層した膜を、上記化合物の所望の性質が得られる温度で熱処理する工程と、
    を含むことを特徴とする、キャップメルト薄膜形成方法。
  2. 前記成膜は真空蒸着により行うことを特徴とする、請求項1記載のキャップメルト薄膜形成方法。
  3. 前記真空蒸着はパルスレーザ蒸着であることを特徴とする、請求項2に記載のキャップメルト薄膜形成方法。
  4. 前記成膜はスパッタリングにより行うことを特徴とする、請求項1に記載のキャップメルト薄膜形成方法。
  5. 前記方法で成膜した後、同一の真空で他の成膜を行うことを特徴とする、請求項1に記載のキャップメルト薄膜形成方法。
  6. 真空中で、基板上にマグネシウム(Mg)を成膜する工程と、上記Mgの膜上に、ホウ素(B)を成膜する工程と、上記MgとBの積層膜を熱処理する工程とを含むことを特徴とする、MgB2 超伝導薄膜の形成方法。
  7. 前記成膜はレーザパルス蒸着法によって行うことを特徴とする、請求項6に記載のMgB2 超伝導薄膜の形成方法。
  8. 前記熱処理は520〜580℃で行うことを特徴とする、請求項6に記載のMgB2 超伝導薄膜の形成方法。
  9. 前記真空は、10−7Torr以下の高真空であることを特徴とする、請求項6に記載のMgB2 超伝導薄膜の形成方法。
JP2002311510A 2002-10-25 2002-10-25 キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法 Pending JP2004143553A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002311510A JP2004143553A (ja) 2002-10-25 2002-10-25 キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法
JP2003363818A JP4081795B2 (ja) 2002-10-25 2003-10-23 MgB2超伝導薄膜の作製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002311510A JP2004143553A (ja) 2002-10-25 2002-10-25 キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004143553A true JP2004143553A (ja) 2004-05-20

Family

ID=32456710

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002311510A Pending JP2004143553A (ja) 2002-10-25 2002-10-25 キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004143553A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006046535A1 (ja) * 2004-10-28 2006-05-04 Sumitomo Electric Industries, Ltd. 焼結体、超電導機器、焼結体の製造方法、超電導線材、および超電導線材の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006046535A1 (ja) * 2004-10-28 2006-05-04 Sumitomo Electric Industries, Ltd. 焼結体、超電導機器、焼結体の製造方法、超電導線材、および超電導線材の製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6626995B2 (en) Superconductor incorporating therein superconductivity epitaxial thin film and manufacturing method thereof
Ogale et al. Deposition of copper oxide thin films on different substrates by pulsed excimer laser ablation
JP2003002635A (ja) 超伝導体二ホウ化マグネシウム薄膜、その製造方法および製造装置
EP1489654A1 (en) LnCuO(S, Se, Te) MONOCRYSTALLINE THIN FILM, ITS MANUFACTURING METHOD, AND OPTICAL DEVICE OR ELECTRONIC DEVICE USING THE MONOCRYSTALLINE THIN FILM
JP2007521397A (ja) 反応性蒸発による現場での薄膜の生長
JP2955299B2 (ja) 超伝導体及びマイクロ波又はミリ波装置
Xu et al. Synthesis of La2− xSrxCuO4 films via atomic layer-by-layer molecular beam epitaxy
JP2004143553A (ja) キャップメルト薄膜形成方法及びこの方法を用いたMgB2超伝導薄膜の形成方法
US5139998A (en) Controlled thallous oxide evaporation for thallium superconductor films and reactor design
Hatakeyama et al. Novel solid-phase epitaxy for multi-component materials with extremely high vapor pressure elements: An application to KFe2As2
JPH01309956A (ja) 酸化物系超電導体の製造方法
JP4081795B2 (ja) MgB2超伝導薄膜の作製方法
CN108677154B (zh) 无焙烧Tl源制备Tl-1223高温超导薄膜的方法
JP2986799B2 (ja) 薄膜形成方法及び薄膜形成装置
Krasnosvobodtsev et al. Superconducting films with T c= 39 K prepared from stoichiometric MgB 2 targets
JP2702711B2 (ja) 薄膜超電導体の製造方法
JPH01234323A (ja) 高温超電導薄膜
Guo et al. Preparation of superconducting HgBa2CaCu2Ox and Hg0. 8Bi0. 2Ba2CaCu2Ox films by means of annealing of mercury-free precursor films
JP2785977B2 (ja) プラズマ励起蒸発法による酸化物高温超伝導膜の形成方法とその装置
US4950644A (en) Method for the epitaxial preparation of a layer of a metal-oxide superconducting material with a high transition temperature
JPH01100816A (ja) 高温超電導材
JP2817299B2 (ja) 複合酸化物超電導薄膜の作製方法
JPH01161616A (ja) 超電導体薄膜の形成装置
JPH05213617A (ja) 酸化物超伝導体薄膜の形成方法
WO2004077581A1 (en) Method for depositing a film of superconducting material

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20040323

A072 Dismissal of procedure [no reply to invitation to correct request for examination]

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A072

Effective date: 20040831