JP2004143520A - 成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】膜の品質の向上、および成膜効率の向上を図る。
【解決手段】フィルム状の被処理体が、周面に沿って走行するようになされている円筒状のキャンを有し、キャンは、筒状部101とフランジ102、103によって構成されて成り、筒状部101の被処理体走行面を冷却する冷却機構を具備し、筒状部101およびフランジ102、103は、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料により形成されているものとする。
【選択図】 図5
【解決手段】フィルム状の被処理体が、周面に沿って走行するようになされている円筒状のキャンを有し、キャンは、筒状部101とフランジ102、103によって構成されて成り、筒状部101の被処理体走行面を冷却する冷却機構を具備し、筒状部101およびフランジ102、103は、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料により形成されているものとする。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状の被処理体を周面に走行させるドラム状のキャンと、内部に冷却機構とを具備する成膜装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
オーディオテープ、ビデオテープ等の磁気テープとしては、高密度磁気記録への要求の高まりと共に、Co−Ni系合金、Co−Cr系合金、Co−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段(真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等)によってポリエステルフィルムやポリアミド、ポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に直接被着した、いわゆる金属薄膜型の磁気記録媒体が提案され、実用化されている。
【0003】
また、この種の磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させ、より大きな出力を得ることが出来るようにするために、磁性層を斜めに蒸着するいわゆる斜方蒸着が提案され、民生用ビデオ(8ミリHi−8方式、DV方式)あるいは業務用ビデオ(DVCAM)の磁気記録媒体として実用化されている。
【0004】
上述したような金属薄膜型の磁気記録媒体は、通常、非磁性支持体上に真空蒸着法によって形成された磁性層と、CVD法によって形成されたダイヤモンドライクカーボン保護層とが積層された構成を有している。
【0005】
このような磁気記録媒体の磁性層および保護層の成膜は、真空蒸着装置やプラズマCVD装置等の各成膜装置において、被処理体を冷却機構を具備する筒形状のキャンの周面に走行させながら行われている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0006】
下記特許文献1においては、キャンの周面に走行する非磁性支持体上に金属磁性薄膜を連続蒸着する際において、キャンや酸素ガス導入管を−20℃以下に冷却し、連続蒸着における非磁性支持体の熱的ダメージを抑制し、磁気記録媒体の電磁変換特性の劣化を回避し、蒸着レートを改善して生産性の向上を図るという、磁気記録媒体の製造方法についての開示がなされている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−205263号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで従来においては、各種成膜装置において被処理体を周面に走行させるキャンの材質としては、スチールや、あるいは真空中でガスの放出を抑制したいときには、オーステナイト系ステンレススチールが適用されていた。上記特許文献1に開示されている方法についても、蒸着装置のキャンの構成材料に関しては何ら特記されていないので、このような従来公知の材料が適用されているものと考えられる。
【0009】
スチールの熱膨張係数は、0〜200℃の温度範囲において、11×10−6〜13×10−6/℃程度であり、オーステナイト系のステンレスの中で、最も一般的に多用されるSUS304で17.3×10−6/℃である。
成膜装置を構成するキャンの材質としてSUS304を適用した場合において、キャンを直径1.2mの円筒形状とし、成膜装置の真空室内の温度を20℃、キャンの冷却機構によって冷却される温度を−30℃、温度差を50℃とすると、1200mm×17.3×10−6/℃×50℃=1.038mmの式により、冷却によってキャンの直径は1mm程度収縮することになる。
【0010】
実際には通常の成膜装置の冷却キャンは、図6の概略断面図に示すように、筒状部101と両端のフランジ102、103とにより構成され、筒状部101の内部にはスパイラル状の冷媒用通路104が設けられており、筒状部101の周面は、冷媒用通路104内を通過する冷媒によって、数分程度で所望の温度に冷却できるようになされている。
【0011】
ところが、図6に示す構造の冷却キャン100は、両端部に配置されているフランジ102、103の内部に冷媒用通路104が設けられていないため、フランジ102、103が冷却されて筒状部101と同じ温度に達するためには、筒状部101よりも長時間必要である。
【0012】
すなわち、図6に示すような構成の冷却キャン100においては、筒状部101が所望の温度まで冷却されたとき、フランジ102、103は充分には冷却されていないため、上述したように直径が収縮した筒状部101の両端部で、フランジ102、103が突っ張り、図7の概略斜視図に示すように全体として鼓状になり、周面を走行する被処理体10が完全に筒状部101に密着できないようになる。
【0013】
図6に示す構成の冷却キャンにおいて長時間冷却を行うと、次第にフランジ102、103にも冷媒熱が伝わり、最終的にはフランジ102、103も冷却前よりも直径が1mm程度収縮し、全体として円筒状になる。しかしながら、完全に円筒状になるまで冷却を行い、その後に材料成膜を行うこととすると、成膜工程全体に長時間を要し、生産性が著しく悪化する。
【0014】
現実的な成膜工程においては、筒状部101が所望の冷却温度に達すると同時に被処理体10上への成膜が開始されるため、鼓状の冷却キャン100の周面に被処理体10を走行させると、被処理体10のフランジ102、103近傍の部分は、張力によって冷却キャン100に密着するが、フランジ102、103から離れるに従い、直径が小さくなるため、冷却キャン100と被処理体10との間に隙間dが生じた状態になる。
【0015】
また、図8の概略断面図に示すように、フランジ102、103の内部にも冷媒用通路104を設けた構成とすることにより、フランジの冷却効率を向上させることも考えられるが、この場合には、フランジ内の冷媒用通路104の近傍部分が早期に冷却収縮し、全面的には均等に冷却されないためフランジの形状に歪みが生じ、やはり被処理体10と冷却キャン100との充分な密着性を確保することができなかった。
【0016】
例えば磁気テープの磁性層成膜工程や、保護層成膜工程においては、磁性層となる金属磁性材料、例えばCoを溶融蒸発させて被処理体10に付着させる真空蒸着法や、磁性層上にダイヤモンドライクカーボン膜を成膜するプラズマCVD法が適用されるが、このとき、被処理体の熱による溶融、変形等を防止するためには、冷却キャンの表面に被処理体10を充分に密着させることが必要となる。
【0017】
フィルムテンションを高くすることによって冷却キャンとの密着性を高める方法も考えられるが、フィルムの両端部において塑性変形を生じやすくなり、製品の歩留まりの低下を招来するおそれがある。
【0018】
そこで本発明においては、各種成膜装置を構成する冷却キャンの構成についての検討を行い、成膜工程において被処理体とキャンとの適切な密着性を確保することのできる成膜装置を提供することとした。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の成膜装置は、被処理体が周面に沿って走行するようになされている円筒状のキャンを有し、キャンは、筒状部と両端部を封止するフランジによって構成されて成り、筒状部の被処理体走行面を冷却する冷却機構を具備するものとし、筒状部およびフランジは、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料により構成されているものとする。
【0020】
本発明の成膜装置によれば、冷却によるキャンの形状変化を低減化させ、成膜工程における被処理体とキャンとの充分な密着性が確保され、迅速な成膜を行うことが可能となり、生産性の向上が図られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の成膜装置について具体的な実施形態を示して説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
一例として、図1に示す磁気記録媒体20を作製する場合を挙げて説明する。この磁気記録媒体20は、長尺状の非磁性支持体1上に強磁性金属薄膜よりなる磁性層2、およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜よりなる保護層3が順次形成され、磁性層2の形成面側とは反対側の主面にバックコート層4が形成された構成を有している。
【0022】
非磁性支持体(ベースフィルム)1形成用材料としては、ポリエステル系が主に用いられている。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエートなどが挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好適なものとされ、これらのポリエステルはホモポリエステルやコポリエステルも適用することができる。
【0023】
磁性層2は、Co、CoNiやその他CoCrTa、CoCrPt、CoCrPtTa、CoPtSiO2、CoPtB−O等の真空薄膜形成技術によって形成するものとする。
【0024】
本発明の成膜装置の一例として、磁性層2を成膜するための連続巻き取り式の真空蒸着装置を示して具体的に説明する。
図2に示す真空蒸着装置40においては、頭部と低部にそれぞれ設けられた排気口41、42から排気されて内部が真空状態となされた真空室43内に、送りロール44と、巻き取りロール45とが設けられ、これら送りロール44から巻き取りロール45に長尺状の非磁性支持体1が順次走行するようになされている。
【0025】
送りロール44から巻き取りロール45に非磁性支持体1が走行する中途部には、冷却キャン100が設けられている。冷却キャン100は非磁性支持体1を図中下方に引き出すように設けられ定速回転する構成とされる。なお冷却キャン100には、内部に冷却機構(図示せず)が設けられている。
【0026】
冷却キャン100は、図3に示すように円筒形状を有するものとし、筒状部101と、この筒状部の両端部を封止するフランジ102、103により構成されており、筒状部101およびフランジ102、103は、熱膨張係数が、5.0×10−6/℃以下、さらに好ましくは2.0×10−6/℃以下(30〜300℃)の材料、例えば、インバーあるいはインバー系合金により構成されているものとする。
【0027】
インバー合金とは、狭義には36Ni−Fe合金等をさすが、類似の特性を有するFe−Ni、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Cr、Fe−Ni−Cr、Fe−Ni−Mn等の合金をインバー系合金と総称している。
本発明の成膜装置においては、特に42アロイ(41〜42%Ni−Fe、熱膨張係数:4.0×10−6〜4.7×10−6/℃(30〜300℃))、およびインバー合金(36%Ni−Fe、熱膨張係数:0.5×10−6〜2.0×10−6/℃(30〜200℃))が、実用的な成膜温度範囲において極めて熱変形量が少ない形状安定性に優れた材料であることから好適な例として挙げられる。
【0028】
送りロール44と冷却キャン100との間、および冷却キャン100と巻き取りロール45との間には、それぞれガイドロール47、48が設けられ、走行する非磁性支持体1に所定のテンションをかけ、円滑に走行するようになされている。
【0029】
真空室43内には、冷却キャン100の下方にルツボ49が設けられ、このルツボ49内に金属磁性材料50が充填されている。一方、真空室43の側壁部には、ルツボ49内に充填された金属磁性材料50を加熱蒸発させるための電子銃51が取り付けられている。この電子銃51は、放出される電子線Xがルツボ49内の金属磁性材料50に照射されるような位置に配設される。そして、電子銃51によって蒸発した金属磁性材料50が冷却キャン100の周面を走行する非磁性支持体1上に磁性層2として被着形成されるようになっている。
【0030】
冷却キャン100を、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料、さらに好ましくは2.0×10−6/℃以下の材料によって構成したことにより、例えば冷却キャンを直径1.2mの円筒状とし、成膜装置の真空室内の温度を20℃、冷却機構によって冷却される温度を−30℃、温度差を50℃とすると、冷却による直径の収縮は0.15〜0.3mmとなり、従来のオーステナイト系ステンレスの場合に比較して1/4〜1/10程度に低減化され、非磁性支持体1と冷却キャン100との適切な密着性が実用上充分な程度に確保でき、金属磁性材料50の被着による破損や熱変形の発生が回避される。
【0031】
具体的には、42アロイ(41〜42%Ni−Fe、熱膨張係数:4.0×10−6〜4.7×10−6/℃)を適用すると、上記条件下において冷却キャンの直径の収縮は0.28mm〜0.24mmとなり、インバー合金(36%Ni−Fe、熱膨張係数:0.5×10−6〜2.0×10−6/℃)を適用すると、冷却キャンの直径の収縮は0.03mmとなり、非磁性支持体1と冷却キャン100との良好な密着性が確保される。
【0032】
冷却キャン100とルツボ49との間であって、冷却キャン100の近傍にシャッタ52が配設されている。このシャッタ52は冷却キャン100の周面を定速走行する非磁性支持体1の所定領域を覆う形で設けられており、シャッタ52により金属磁性材料50が非磁性支持体1に対して所定の角度範囲で斜めに蒸着されるようになっている。さらに真空室43の側壁部を貫通して設けられている酸素ガス導入口54を介して非磁性支持体1の表面に酸素ガスが供給され、磁気特性、耐久性及び耐候性の向上が図られている。
【0033】
磁性層2上の保護層3を構成するダイヤモンドライクカーボン膜は、プラズマCVD法によって形成する。
図4に示すプラズマCVD連続膜形成装置60は、排気系61から排気されて真空状態となされた真空室62内に送りロール63と巻き取りロール64とが設けられ、これら送りロール63と巻き取りロール64間に、被処理体65が順次走行するようになされている。
これら送りロール63から巻き取りロール64に被処理体65が走行する途中には、円筒状の対向電極用の冷却キャン66が設けられている。
【0034】
この冷却キャン66も、図3に示す例と同様に円筒形状を有するものとし、筒状部101と、この筒状部の両端部を封止するフランジ102、103により構成されており、筒状部101およびフランジ102、103は、熱膨張係数が、5.0×10−6/℃以下、さらに好ましくは2.0×10−6/℃以下の材料、例えば、インバー、あるいはインバー系合金により構成されているものとする。
【0035】
被処理体65は、送りロール63から順次送り出され、冷却キャン66の周面を通過し、巻き取りロール64に巻き取られていくようになされている。なお、送りロール63と冷却キャン66との間および冷却キャン66と巻き取りロール64との間には、それぞれガイドロール67が配置され、被処理体65に所定のテンションをかけ、円滑に走行するようになされている。
【0036】
また、対向電極用の冷却キャン66の下方には、例えばパイレックス(登録商標)ガラス、プラスチック等よりなる反応管68が設けられている。
この反応管68は、端部が真空室62の底部を貫通しており、この端部の放電ガス導入口69から成膜用ガスが反応管68内に導入されるようになされている。
また、反応管68内には、金属メッシュ等よりなる電極70が組み込まれている。この電極70には、外部に配設された直流電源71により所定の電位、例えば500〜2000Vの電圧が印加されるようになされている。
【0037】
図4のプラズマCVD連続膜形成装置60においては、電極70に電圧が印加されることで、電極70と冷却キャンとの間にグロー放電が生じる。そして、反応管68内に導入された成膜用ガスは、生じたグロー放電によって分解し、被処理体65上に被着される。
【0038】
冷却キャン66を上記インバー、あるいはインバー系合金によって構成したことにより、上記真空蒸着装置の場合と同様に、冷却キャンの冷却による収縮が著しく低減化され、被処理体65と冷却キャン66との適切な密着性が実用上充分な程度に確保でき、成膜材料の被着による破損や熱変形の発生が回避される。
【0039】
上述のようにして形成した保護層3上および磁性層2形成面側とは反対側の主面に、例えば任意のパーフルオロポリエーテル系の潤滑剤を塗布して潤滑剤層を形成し、目的とする磁気記録媒体20が作製される。
【0040】
上述したように、磁性層2の成膜工程における真空蒸着法においては、電子ビームで溶解した金属磁性材料を蒸発させ非磁性支持体1上に被着させるので、非磁性支持体1の熱による破損や変形を防止するために、非磁性支持体1の全面が冷却キャン100の周面に密着し、確実に冷却されることが必要である。
また、保護層3の成膜工程におけるプラズマCVD法においても、被処理体65がプラズマ温度によって破損したり変形したりすることを防止するため、被処理体の全面が確実に冷却されることが必要である。
【0041】
成膜装置における冷却キャンの冷却温度は一般的に0℃以下、あるいは生産条件によっては−30数℃程度ともなる。このように低温に冷却された冷却キャンを大気中に曝すと冷却キャンの表面が結露するため、成膜品を取り出したり、被処理体を装填したりする一バッチ毎に、装置内部を室温に戻してから大気中に開放しなければならない。すなわち、成膜工程においては一バッチ毎に冷却キャンを冷却したり、昇温したりしなければならず、特に冷却時にキャンの構造に由来する冷却時間差が生じることが冷却キャンの変形の原因となっていた。
これに対し、キャン全体が充分に冷却され筒状部101とフランジ102、103の双方が収縮して変形が収束した状態で成膜工程を行うこととすると、生産効率の悪化を招来する。
【0042】
本発明においては、真空蒸着装置やプラズマCVD連続膜形成装置のような各種成膜装置の冷却キャンを構成する筒状部とフランジの熱変形と材料について検討を行い、特に、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下さらに好ましくは2.5×10−6/℃以下の材料、例えばインバー、あるいはインバー系合金を適用した。これにより従来において適用されていたオーステナイト系ステンレスのSUS304と比較して、冷却による変形量を1/4〜1/10程度に低減することができ、図5に示すように被処理体10と冷却キャンとの良好な密着性を実用充分な程度に確保することができた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の成膜装置によれば、冷却キャンの筒状部の表面に被処理体を適切に密着させて成膜することができるので、製品不良の発生が回避でき、製品の歩留まりが向上した。
【0044】
また、従来の成膜装置においては、キャンの筒状部の表面と被処理体との密着性を確保するために、被処理体へ強いテンションを与えなければならなかったが、本発明の成膜装置によれば、低テンションでも被処理体を冷却キャンの表面に密着させることができ、塑性変形の発生を回避できた。
【0045】
また、本発明の成膜装置によれば、冷却キャンの変形が極めて軽微であるので、筒状部の外表部が、所望の温度に到達した時点で成膜を開始でき、冷却キャン全体が充分に冷却され筒状部とフランジの双方が収縮して変形が収束した状態まで待つ必要がなく、生産性の向上が図られた。
【0046】
従来の成膜装置においては、冷却キャンの変形を低減させるために設定温度を高めに設定する等の手段を必要としていたが、本発明の成膜装置によれば、冷却キャンの変形を極めて軽微にすることが可能であるので、充分に低温に冷却することが可能となり、製品の熱による破損や変形の発生を効果的に回避でき、成膜製品の質の向上が図られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成膜装置によって作製される磁気記録媒体の概略断面図を示す。
【図2】真空蒸着装置の一例の概略構成図を示す。
【図3】本発明の成膜装置を構成する冷却キャンの概略斜視図を示す。
【図4】プラズマCVD連続膜形成装置の概略構成図を示す。
【図5】冷却キャンと被処理体の状態図を示す。
【図6】冷却キャンの概略断面図を示す。
【図7】従来の成膜装置を構成する冷却キャンの概略斜視図を示す。
【図8】冷却キャンの概略断面図を示す。
【符号の説明】
1……非磁性支持体、2……磁性層、3……保護層、4……バックコート層、10……被処理体、20……磁気記録媒体、40……真空蒸着装置、41,42……排気口、43……真空室、44……送りロール、45……巻き取りロール、47,48……ガイドロール、49……ルツボ、50……金属磁性材料、51……電子銃、52……シャッタ、54……酸素ガス導入管、60……プラズマCVD連続膜形成装置、61……排気系、62……真空室、63……送りロール、64……巻き取りロール、65……被処理体、66……冷却キャン、67……ガイドロール、68……反応管、69……放電ガス導入口、70……電極、71……直流電源、100……冷却キャン、101……筒状部、102……フランジ、103……フランジ、104……冷媒用通路
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状の被処理体を周面に走行させるドラム状のキャンと、内部に冷却機構とを具備する成膜装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
オーディオテープ、ビデオテープ等の磁気テープとしては、高密度磁気記録への要求の高まりと共に、Co−Ni系合金、Co−Cr系合金、Co−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段(真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等)によってポリエステルフィルムやポリアミド、ポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に直接被着した、いわゆる金属薄膜型の磁気記録媒体が提案され、実用化されている。
【0003】
また、この種の磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させ、より大きな出力を得ることが出来るようにするために、磁性層を斜めに蒸着するいわゆる斜方蒸着が提案され、民生用ビデオ(8ミリHi−8方式、DV方式)あるいは業務用ビデオ(DVCAM)の磁気記録媒体として実用化されている。
【0004】
上述したような金属薄膜型の磁気記録媒体は、通常、非磁性支持体上に真空蒸着法によって形成された磁性層と、CVD法によって形成されたダイヤモンドライクカーボン保護層とが積層された構成を有している。
【0005】
このような磁気記録媒体の磁性層および保護層の成膜は、真空蒸着装置やプラズマCVD装置等の各成膜装置において、被処理体を冷却機構を具備する筒形状のキャンの周面に走行させながら行われている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0006】
下記特許文献1においては、キャンの周面に走行する非磁性支持体上に金属磁性薄膜を連続蒸着する際において、キャンや酸素ガス導入管を−20℃以下に冷却し、連続蒸着における非磁性支持体の熱的ダメージを抑制し、磁気記録媒体の電磁変換特性の劣化を回避し、蒸着レートを改善して生産性の向上を図るという、磁気記録媒体の製造方法についての開示がなされている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−205263号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで従来においては、各種成膜装置において被処理体を周面に走行させるキャンの材質としては、スチールや、あるいは真空中でガスの放出を抑制したいときには、オーステナイト系ステンレススチールが適用されていた。上記特許文献1に開示されている方法についても、蒸着装置のキャンの構成材料に関しては何ら特記されていないので、このような従来公知の材料が適用されているものと考えられる。
【0009】
スチールの熱膨張係数は、0〜200℃の温度範囲において、11×10−6〜13×10−6/℃程度であり、オーステナイト系のステンレスの中で、最も一般的に多用されるSUS304で17.3×10−6/℃である。
成膜装置を構成するキャンの材質としてSUS304を適用した場合において、キャンを直径1.2mの円筒形状とし、成膜装置の真空室内の温度を20℃、キャンの冷却機構によって冷却される温度を−30℃、温度差を50℃とすると、1200mm×17.3×10−6/℃×50℃=1.038mmの式により、冷却によってキャンの直径は1mm程度収縮することになる。
【0010】
実際には通常の成膜装置の冷却キャンは、図6の概略断面図に示すように、筒状部101と両端のフランジ102、103とにより構成され、筒状部101の内部にはスパイラル状の冷媒用通路104が設けられており、筒状部101の周面は、冷媒用通路104内を通過する冷媒によって、数分程度で所望の温度に冷却できるようになされている。
【0011】
ところが、図6に示す構造の冷却キャン100は、両端部に配置されているフランジ102、103の内部に冷媒用通路104が設けられていないため、フランジ102、103が冷却されて筒状部101と同じ温度に達するためには、筒状部101よりも長時間必要である。
【0012】
すなわち、図6に示すような構成の冷却キャン100においては、筒状部101が所望の温度まで冷却されたとき、フランジ102、103は充分には冷却されていないため、上述したように直径が収縮した筒状部101の両端部で、フランジ102、103が突っ張り、図7の概略斜視図に示すように全体として鼓状になり、周面を走行する被処理体10が完全に筒状部101に密着できないようになる。
【0013】
図6に示す構成の冷却キャンにおいて長時間冷却を行うと、次第にフランジ102、103にも冷媒熱が伝わり、最終的にはフランジ102、103も冷却前よりも直径が1mm程度収縮し、全体として円筒状になる。しかしながら、完全に円筒状になるまで冷却を行い、その後に材料成膜を行うこととすると、成膜工程全体に長時間を要し、生産性が著しく悪化する。
【0014】
現実的な成膜工程においては、筒状部101が所望の冷却温度に達すると同時に被処理体10上への成膜が開始されるため、鼓状の冷却キャン100の周面に被処理体10を走行させると、被処理体10のフランジ102、103近傍の部分は、張力によって冷却キャン100に密着するが、フランジ102、103から離れるに従い、直径が小さくなるため、冷却キャン100と被処理体10との間に隙間dが生じた状態になる。
【0015】
また、図8の概略断面図に示すように、フランジ102、103の内部にも冷媒用通路104を設けた構成とすることにより、フランジの冷却効率を向上させることも考えられるが、この場合には、フランジ内の冷媒用通路104の近傍部分が早期に冷却収縮し、全面的には均等に冷却されないためフランジの形状に歪みが生じ、やはり被処理体10と冷却キャン100との充分な密着性を確保することができなかった。
【0016】
例えば磁気テープの磁性層成膜工程や、保護層成膜工程においては、磁性層となる金属磁性材料、例えばCoを溶融蒸発させて被処理体10に付着させる真空蒸着法や、磁性層上にダイヤモンドライクカーボン膜を成膜するプラズマCVD法が適用されるが、このとき、被処理体の熱による溶融、変形等を防止するためには、冷却キャンの表面に被処理体10を充分に密着させることが必要となる。
【0017】
フィルムテンションを高くすることによって冷却キャンとの密着性を高める方法も考えられるが、フィルムの両端部において塑性変形を生じやすくなり、製品の歩留まりの低下を招来するおそれがある。
【0018】
そこで本発明においては、各種成膜装置を構成する冷却キャンの構成についての検討を行い、成膜工程において被処理体とキャンとの適切な密着性を確保することのできる成膜装置を提供することとした。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の成膜装置は、被処理体が周面に沿って走行するようになされている円筒状のキャンを有し、キャンは、筒状部と両端部を封止するフランジによって構成されて成り、筒状部の被処理体走行面を冷却する冷却機構を具備するものとし、筒状部およびフランジは、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料により構成されているものとする。
【0020】
本発明の成膜装置によれば、冷却によるキャンの形状変化を低減化させ、成膜工程における被処理体とキャンとの充分な密着性が確保され、迅速な成膜を行うことが可能となり、生産性の向上が図られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の成膜装置について具体的な実施形態を示して説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
一例として、図1に示す磁気記録媒体20を作製する場合を挙げて説明する。この磁気記録媒体20は、長尺状の非磁性支持体1上に強磁性金属薄膜よりなる磁性層2、およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜よりなる保護層3が順次形成され、磁性層2の形成面側とは反対側の主面にバックコート層4が形成された構成を有している。
【0022】
非磁性支持体(ベースフィルム)1形成用材料としては、ポリエステル系が主に用いられている。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエートなどが挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好適なものとされ、これらのポリエステルはホモポリエステルやコポリエステルも適用することができる。
【0023】
磁性層2は、Co、CoNiやその他CoCrTa、CoCrPt、CoCrPtTa、CoPtSiO2、CoPtB−O等の真空薄膜形成技術によって形成するものとする。
【0024】
本発明の成膜装置の一例として、磁性層2を成膜するための連続巻き取り式の真空蒸着装置を示して具体的に説明する。
図2に示す真空蒸着装置40においては、頭部と低部にそれぞれ設けられた排気口41、42から排気されて内部が真空状態となされた真空室43内に、送りロール44と、巻き取りロール45とが設けられ、これら送りロール44から巻き取りロール45に長尺状の非磁性支持体1が順次走行するようになされている。
【0025】
送りロール44から巻き取りロール45に非磁性支持体1が走行する中途部には、冷却キャン100が設けられている。冷却キャン100は非磁性支持体1を図中下方に引き出すように設けられ定速回転する構成とされる。なお冷却キャン100には、内部に冷却機構(図示せず)が設けられている。
【0026】
冷却キャン100は、図3に示すように円筒形状を有するものとし、筒状部101と、この筒状部の両端部を封止するフランジ102、103により構成されており、筒状部101およびフランジ102、103は、熱膨張係数が、5.0×10−6/℃以下、さらに好ましくは2.0×10−6/℃以下(30〜300℃)の材料、例えば、インバーあるいはインバー系合金により構成されているものとする。
【0027】
インバー合金とは、狭義には36Ni−Fe合金等をさすが、類似の特性を有するFe−Ni、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Cr、Fe−Ni−Cr、Fe−Ni−Mn等の合金をインバー系合金と総称している。
本発明の成膜装置においては、特に42アロイ(41〜42%Ni−Fe、熱膨張係数:4.0×10−6〜4.7×10−6/℃(30〜300℃))、およびインバー合金(36%Ni−Fe、熱膨張係数:0.5×10−6〜2.0×10−6/℃(30〜200℃))が、実用的な成膜温度範囲において極めて熱変形量が少ない形状安定性に優れた材料であることから好適な例として挙げられる。
【0028】
送りロール44と冷却キャン100との間、および冷却キャン100と巻き取りロール45との間には、それぞれガイドロール47、48が設けられ、走行する非磁性支持体1に所定のテンションをかけ、円滑に走行するようになされている。
【0029】
真空室43内には、冷却キャン100の下方にルツボ49が設けられ、このルツボ49内に金属磁性材料50が充填されている。一方、真空室43の側壁部には、ルツボ49内に充填された金属磁性材料50を加熱蒸発させるための電子銃51が取り付けられている。この電子銃51は、放出される電子線Xがルツボ49内の金属磁性材料50に照射されるような位置に配設される。そして、電子銃51によって蒸発した金属磁性材料50が冷却キャン100の周面を走行する非磁性支持体1上に磁性層2として被着形成されるようになっている。
【0030】
冷却キャン100を、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料、さらに好ましくは2.0×10−6/℃以下の材料によって構成したことにより、例えば冷却キャンを直径1.2mの円筒状とし、成膜装置の真空室内の温度を20℃、冷却機構によって冷却される温度を−30℃、温度差を50℃とすると、冷却による直径の収縮は0.15〜0.3mmとなり、従来のオーステナイト系ステンレスの場合に比較して1/4〜1/10程度に低減化され、非磁性支持体1と冷却キャン100との適切な密着性が実用上充分な程度に確保でき、金属磁性材料50の被着による破損や熱変形の発生が回避される。
【0031】
具体的には、42アロイ(41〜42%Ni−Fe、熱膨張係数:4.0×10−6〜4.7×10−6/℃)を適用すると、上記条件下において冷却キャンの直径の収縮は0.28mm〜0.24mmとなり、インバー合金(36%Ni−Fe、熱膨張係数:0.5×10−6〜2.0×10−6/℃)を適用すると、冷却キャンの直径の収縮は0.03mmとなり、非磁性支持体1と冷却キャン100との良好な密着性が確保される。
【0032】
冷却キャン100とルツボ49との間であって、冷却キャン100の近傍にシャッタ52が配設されている。このシャッタ52は冷却キャン100の周面を定速走行する非磁性支持体1の所定領域を覆う形で設けられており、シャッタ52により金属磁性材料50が非磁性支持体1に対して所定の角度範囲で斜めに蒸着されるようになっている。さらに真空室43の側壁部を貫通して設けられている酸素ガス導入口54を介して非磁性支持体1の表面に酸素ガスが供給され、磁気特性、耐久性及び耐候性の向上が図られている。
【0033】
磁性層2上の保護層3を構成するダイヤモンドライクカーボン膜は、プラズマCVD法によって形成する。
図4に示すプラズマCVD連続膜形成装置60は、排気系61から排気されて真空状態となされた真空室62内に送りロール63と巻き取りロール64とが設けられ、これら送りロール63と巻き取りロール64間に、被処理体65が順次走行するようになされている。
これら送りロール63から巻き取りロール64に被処理体65が走行する途中には、円筒状の対向電極用の冷却キャン66が設けられている。
【0034】
この冷却キャン66も、図3に示す例と同様に円筒形状を有するものとし、筒状部101と、この筒状部の両端部を封止するフランジ102、103により構成されており、筒状部101およびフランジ102、103は、熱膨張係数が、5.0×10−6/℃以下、さらに好ましくは2.0×10−6/℃以下の材料、例えば、インバー、あるいはインバー系合金により構成されているものとする。
【0035】
被処理体65は、送りロール63から順次送り出され、冷却キャン66の周面を通過し、巻き取りロール64に巻き取られていくようになされている。なお、送りロール63と冷却キャン66との間および冷却キャン66と巻き取りロール64との間には、それぞれガイドロール67が配置され、被処理体65に所定のテンションをかけ、円滑に走行するようになされている。
【0036】
また、対向電極用の冷却キャン66の下方には、例えばパイレックス(登録商標)ガラス、プラスチック等よりなる反応管68が設けられている。
この反応管68は、端部が真空室62の底部を貫通しており、この端部の放電ガス導入口69から成膜用ガスが反応管68内に導入されるようになされている。
また、反応管68内には、金属メッシュ等よりなる電極70が組み込まれている。この電極70には、外部に配設された直流電源71により所定の電位、例えば500〜2000Vの電圧が印加されるようになされている。
【0037】
図4のプラズマCVD連続膜形成装置60においては、電極70に電圧が印加されることで、電極70と冷却キャンとの間にグロー放電が生じる。そして、反応管68内に導入された成膜用ガスは、生じたグロー放電によって分解し、被処理体65上に被着される。
【0038】
冷却キャン66を上記インバー、あるいはインバー系合金によって構成したことにより、上記真空蒸着装置の場合と同様に、冷却キャンの冷却による収縮が著しく低減化され、被処理体65と冷却キャン66との適切な密着性が実用上充分な程度に確保でき、成膜材料の被着による破損や熱変形の発生が回避される。
【0039】
上述のようにして形成した保護層3上および磁性層2形成面側とは反対側の主面に、例えば任意のパーフルオロポリエーテル系の潤滑剤を塗布して潤滑剤層を形成し、目的とする磁気記録媒体20が作製される。
【0040】
上述したように、磁性層2の成膜工程における真空蒸着法においては、電子ビームで溶解した金属磁性材料を蒸発させ非磁性支持体1上に被着させるので、非磁性支持体1の熱による破損や変形を防止するために、非磁性支持体1の全面が冷却キャン100の周面に密着し、確実に冷却されることが必要である。
また、保護層3の成膜工程におけるプラズマCVD法においても、被処理体65がプラズマ温度によって破損したり変形したりすることを防止するため、被処理体の全面が確実に冷却されることが必要である。
【0041】
成膜装置における冷却キャンの冷却温度は一般的に0℃以下、あるいは生産条件によっては−30数℃程度ともなる。このように低温に冷却された冷却キャンを大気中に曝すと冷却キャンの表面が結露するため、成膜品を取り出したり、被処理体を装填したりする一バッチ毎に、装置内部を室温に戻してから大気中に開放しなければならない。すなわち、成膜工程においては一バッチ毎に冷却キャンを冷却したり、昇温したりしなければならず、特に冷却時にキャンの構造に由来する冷却時間差が生じることが冷却キャンの変形の原因となっていた。
これに対し、キャン全体が充分に冷却され筒状部101とフランジ102、103の双方が収縮して変形が収束した状態で成膜工程を行うこととすると、生産効率の悪化を招来する。
【0042】
本発明においては、真空蒸着装置やプラズマCVD連続膜形成装置のような各種成膜装置の冷却キャンを構成する筒状部とフランジの熱変形と材料について検討を行い、特に、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下さらに好ましくは2.5×10−6/℃以下の材料、例えばインバー、あるいはインバー系合金を適用した。これにより従来において適用されていたオーステナイト系ステンレスのSUS304と比較して、冷却による変形量を1/4〜1/10程度に低減することができ、図5に示すように被処理体10と冷却キャンとの良好な密着性を実用充分な程度に確保することができた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の成膜装置によれば、冷却キャンの筒状部の表面に被処理体を適切に密着させて成膜することができるので、製品不良の発生が回避でき、製品の歩留まりが向上した。
【0044】
また、従来の成膜装置においては、キャンの筒状部の表面と被処理体との密着性を確保するために、被処理体へ強いテンションを与えなければならなかったが、本発明の成膜装置によれば、低テンションでも被処理体を冷却キャンの表面に密着させることができ、塑性変形の発生を回避できた。
【0045】
また、本発明の成膜装置によれば、冷却キャンの変形が極めて軽微であるので、筒状部の外表部が、所望の温度に到達した時点で成膜を開始でき、冷却キャン全体が充分に冷却され筒状部とフランジの双方が収縮して変形が収束した状態まで待つ必要がなく、生産性の向上が図られた。
【0046】
従来の成膜装置においては、冷却キャンの変形を低減させるために設定温度を高めに設定する等の手段を必要としていたが、本発明の成膜装置によれば、冷却キャンの変形を極めて軽微にすることが可能であるので、充分に低温に冷却することが可能となり、製品の熱による破損や変形の発生を効果的に回避でき、成膜製品の質の向上が図られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成膜装置によって作製される磁気記録媒体の概略断面図を示す。
【図2】真空蒸着装置の一例の概略構成図を示す。
【図3】本発明の成膜装置を構成する冷却キャンの概略斜視図を示す。
【図4】プラズマCVD連続膜形成装置の概略構成図を示す。
【図5】冷却キャンと被処理体の状態図を示す。
【図6】冷却キャンの概略断面図を示す。
【図7】従来の成膜装置を構成する冷却キャンの概略斜視図を示す。
【図8】冷却キャンの概略断面図を示す。
【符号の説明】
1……非磁性支持体、2……磁性層、3……保護層、4……バックコート層、10……被処理体、20……磁気記録媒体、40……真空蒸着装置、41,42……排気口、43……真空室、44……送りロール、45……巻き取りロール、47,48……ガイドロール、49……ルツボ、50……金属磁性材料、51……電子銃、52……シャッタ、54……酸素ガス導入管、60……プラズマCVD連続膜形成装置、61……排気系、62……真空室、63……送りロール、64……巻き取りロール、65……被処理体、66……冷却キャン、67……ガイドロール、68……反応管、69……放電ガス導入口、70……電極、71……直流電源、100……冷却キャン、101……筒状部、102……フランジ、103……フランジ、104……冷媒用通路
Claims (4)
- フィルム状の被処理体が、周面に沿って走行するようになされている円筒状のキャンを有し、
上記キャンは、筒状部と、当該筒状部の両端部を封止するフランジによって構成されて成り、
上記被処理体の走行面を冷却する冷却機構を具備し、
上記筒状部および上記フランジは、熱膨張係数が5.0×10−6/℃以下の材料により形成されていることを特徴とする成膜装置。 - 上記キャンを構成する筒状部およびフランジは、インバー、あるいはインバー系合金により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
- 上記被処理体上に、真空蒸着法によって磁性層の成膜を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
- 上記被処理体上に、プラズマCVD法によって、ダイヤモンドライクカーボン層の形成を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
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