JP2004143392A - セルロースアシレートフィルム、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、画像表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供し、それを用いて光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム、液晶表示装置、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体等を提供する。
【解決手段】セルロースアシレート、重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、重合性モノマー(A)、及び光重合開始剤(L)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程と含む工程により、セルロースアシレートフィルムを製造する。
【選択図】 なし
【解決手段】セルロースアシレート、重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、重合性モノマー(A)、及び光重合開始剤(L)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程と含む工程により、セルロースアシレートフィルムを製造する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、並びに該セルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム、画像表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料に関する。
特に、本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能性光学フィルムやハロゲン化銀写真感光材料の支持体フィルムに関する。さらに、本発明は、有機ELディスプレイ等に適用される各種機能フィルムを構成する光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは、透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)や高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を適宜選択して単独又は混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。また、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術がある(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、これらの支持体でも、長期保存下の膜強度安定性、フィルムの着色等が十分でなかった。
【0004】
更に、セルロースアシレートとの相溶性を高めるものとして低分子量体含量の多い分子量分布を特定化したポリエステルのブレンドが提案されている(例えば、特許文献7参照)。しかしながら、ポリマーが低分子量体であるために、ポリマーとしての特性を十分に発現できないという課題がある。
【0005】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムとして優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性能の向上や、耐久性化が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0006】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来セルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させたりしてしまうなどの問題点を有していた。これらの特性を改良するために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤や帯電防止剤の添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子の添加が提案されている(例えば、特許文献8、特許文献9参照)。
【0007】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行ない製膜速度を向上させる技術がある(例えば、特許文献10参照)。しかしながら、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要な又は有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼすという問題がある。また、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術もある(例えば、特許文献11、特許文献12参照)。
しかしながら、これらの技術を用いても未だ充分ではなく、特に、近年の表示装置の開発は、表示部の大版化または携帯電話等のモバイル表示装置の多用途への普及等が急速に進展しており、光学フィルムの薄層化、光学フィルムへのより一層の寸度安定性や耐久性が望まれている。
【0008】
【特許文献1】
特公昭47−760号公報
【特許文献2】
特公昭43−16305号公報
【特許文献3】
特公昭44−32672号公報
【特許文献4】
特開平2−292342号公報
【特許文献5】
特開平5−197073号公報
【特許文献6】
米国特許第3,277,032号明細書
【特許文献7】
特開2002−22956号公報
【特許文献8】
特開平6−148430号公報
【特許文献9】
特開2002−31715号公報
【特許文献10】
米国特許第3,738,924号明細書
【特許文献11】
特開2002−20410号公報
【特許文献12】
特開2002−47357号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、光学特性を有し、しかも長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた特性を有する上記セルロースアセテートフィルムを用いて得られる光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルムなど)、画像表示装置(特に、液晶表示装置など)、及びハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、膜厚が80μm以下の薄膜でも、引き裂き強度、耐折強度に優れたセルロースアシレートフィルムを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成のセルロースアシレートフィルム、その製造方法、光学フィルム(光学補償フィルム、偏光フィルムなど)、画像表示装置(液晶表示装置など)、ハロゲン化銀写真感光材料などが提供され、本発明の上記目的が達成される。
1.溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、
(i)セルロースアシレート、
(ii)重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量が2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、
(iii)重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)、
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
2.一官能性ポリエステルモノマー(M)が有する上記重合性基が、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基であることを特徴とする上記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0011】
3.上記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を含有する重合性モノマー(B)の少なくとも一種を更に含有することを特徴とする上記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
4.上記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基含有の多官能モノマー(C)の少なくとも一種を更に含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0012】
5.上記の、モノマー(A)、(B)及び(C)の各重合性モノマーが、ラジカル重合及び/又はカチオン重合により重合反応することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
6.上記重合性モノマー(A)が、脂環式炭化水素基を置換基として有する化合物であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
7.上記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0013】
8.セルロースの水酸基への置換度が、下記式(a)〜(c)の全てを満たすセルロースアシレートであることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
式(a):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(b):2.0≦SA’≦3.0
式(c): 0≦SB’≦0.8
上記式中、SA’はアセチル基の置換度であり、SB’は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0014】
9.セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、
(i)セルロースアシレート、
(ii)重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量が2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、
(iii)重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)、
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0015】
10.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
11.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアセレートフィルムを用いた光学用偏光フィルム。
12.1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示素材。
13.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
14.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた画像表示装置。
15。上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
16.上記1〜8のいずれかに記載され、かつその膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロールアシレートフィルムは、セルロースアシレート、一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、重合性モノマー(A)、及び光重合開始剤(L)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程と含む溶液流延方法により製造されるものである。
【0017】
[セルロースアシレート]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて以下に記す。
【0018】
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製して精製リンタと精製高級木材パルプとして用いられる。
【0019】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフィルムの作製]
上述のセルロースを原料から製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。
本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。
式(a):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(b):2.0≦SA’≦3.0
式(c): 0≦SB’≦0.8
【0020】
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
【0021】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB’)は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフィルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0022】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行 発明協会)の9ページに詳細に記載されている。
【0023】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
【0024】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は前記の公技番号 2001−1745の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0025】
次いで、本発明に供される各重合性基含有の化合物について詳述する。
まず、本発明に供される一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)について説明する。
本発明の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)は、ポリエステル構造を有し、その重合体主鎖の片末端のみに重合性基が結合してなる、重量平均分子量が2×104以下の化合物である。
一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)は、重合性モノマー(A)と共重合反応し、クシ型ブロック共重合体を形成することが好ましい。
本発明に供される一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)と重合性モノマー(A)との共重合反応を充分に進行させ、又、形成されたブロック重合体のマクロモノマー(M)に由来するクシ部のポリマー鎖長による高分子鎖同士の絡み合い効果が充分に発現し、膜強度を向上させる上で、一官能性ポリエステルマクロモノマーの重量平均分子量は、好ましくは2×103〜2×104であり、より好ましくは3×103〜1.5×104である。
【0026】
一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)としては、具体的には、下記一般式(MI)又は一般式(MII)で示される重量平均分子量2×103〜2×104のマクロモノマーが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、Tは重合性基を表し、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基を表すのが好ましい。
具体的には、Tがラジカル重合性基の場合は、下記一般式(Ia)で表される基が挙げられる。
【0029】
【化2】
【0030】
一般式(Ia)中、x1及びx2はお互いに同じでも異なってもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜8の炭化水素基、−COO−T0または炭素数1〜8の炭化水素基を介した−COO−T0(T0は炭素数1〜18の炭化水素基を表す)を表す。好ましくは、各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、トリフロロメチル基等)、−COO−T0又は−CH2COOT0{T0は炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、炭素数7〜9のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等)又は置換されてもよいフェニル基(例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基等)を表す}を表す。より好ましくは、x1及びx2のうちのいずれか一方が水素原子を表す。
一般式(Ia)中、A1は、単結合又は−COO−、−OCO−、−(CH2)a−COO−、−CO−、−(CH2)b−OCO−(a、bはそれぞれ1〜3の整数を表す)、−CON(k1)−〔k1は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す〕、−CONHCONH−、−CONHCOO−、−O−、−C6H4−もしくは−SO2−を表す。好ましくは、−COO−、−OCO−、−CH2COO−、−CH2OCO−、−CONH−又は−C6H4−、−CON(k1)−を表す。A1が−C6H4−を表す場合、ベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基等)等が挙げられる。
【0031】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、Tがカチオン重合性基を表す場合、カチオン重合性基は活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる重合性基を含有する官能基が挙げられる。代表例としては、エポキシ基、環状エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル化合物、ビニルオキソ基等が挙げられる。より具体的には、後述するカチオン重合性モノマー(A2)で例示するものが挙げられる。
【0032】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、B1,B2は、各々、TとD1,TとD2を連結する、単結合又は連結する基を表す。連結基として具体的には、
【0033】
【化3】
【0034】
2価の脂環式基(脂環式構造の炭化水素環としては、例えばシクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環、等)、2価のアリール環基(アリール環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、等)で示される基等の原子団の任意の組み合わせで構成されるものである。
【0035】
上記において、j1、j2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、j3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、j4、j5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には上記j3と同一の内容を表す)を表す。
【0036】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、E1及びE2は、互いに同じでも異なってもよく、各々2価の脂肪族基、2価の芳香族基〔各々の2価の有機残基の結合中に、−C(k2)(k3)−、−O−、−S−、−N(k4)−、−SO2−、−COO−、−OCO−、−CONHCl−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CON(k4)−、−SO2N(k4)−及び−Si(k5)(k6)−(k2、k3及びk4はそれぞれk1と同一の内容を表し、k5及びk6はそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基を表す)から選ばれた少なくとも1つの結合基を介在させてもよい〕またはこれら残基の組み合わせにより構成された有機残基を表す。
【0037】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、D1は−CH2−又は−CO−を表す。D2は−O−又は−NH−を表す。
【0038】
一般式(MI)又は一般式(MII)における重合性基Tと繰り返し単位[ ]との連結部分{−B1−D1−}又は{−B2−D2−}の具体例を、重合性基Tがラジカル重合性基である一般式(Ia)[CH(x1)=C(x2)−A1−]で表される場合を例に、{T−B1−D1−}又は{T−B2−D2−}の形にて以下に示すが、該連結部分はこれらに限定されるものではない。また、下記具体例の連結部分に相当する部分は、重合性基Tがカチオン重合性基の場合にも用いることができる。
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
一般式(MI)又は(MII)中、R1は−OH、−OR5又は―N(R6)(R7)を表す(R5は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す)。
R2は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、−COR8又は−CONHR9を表す(R8及びR9はそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基を表す)。
【0042】
一般式(MI)又は(MII)中、E1及びE2は、互いに同じでも異なってもよく、各々、2価の脂肪族基又は2価の芳香族基を含有する2価の有機残基を表す。
2価の脂肪族基としては、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数3〜30のシクロアルカン環基、炭素数6〜30のシクロアルケン環基、2価の芳香族基としては、炭素数6〜14のアリール基、複素原子(複素原子として、酸素原子、イオウ原子、窒素原子)を少なくとも1つ含有する5員〜6員の環数の複素環基もしくは縮環構造を形成してもよい複素環基が挙げられる。
好ましくは、E1及びE2の少なくともいずれか一方が、2価の炭素数3〜30個の脂環式脂肪族基を含有する。より好ましくは、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。特に炭素数6〜25が好ましい。
【0043】
以下に脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。なお、下記構造例において、共役しない位置に二重結合を含有してもよい。
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、後述の式(A1−I)中のRで例示すると同一の内容のものが挙げられる。
【0047】
E1及びE2の具体的な例としては、各々以下の有機残基が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
一般式(MI)で示されるマクロモノマー(以下、マクロモノマー(M1)と称することもある)は、高分子学会編「高分子データハンドブック〔基礎編〕」(1986年刊)培風館等に例示される、ジオール類とジカルボン酸類、ジカルボン酸無水物又はジカルボン酸エステル類との重縮合反応によって合成された、重量平均分子量2×103〜2×104のポリエステルオリゴマーの片末端のヒドロキシル基にのみ、高分子反応により、重合性基を導入する方法で容易に製造する事ができる。
【0051】
ポリエステルの合成法は、従来公知の重縮合反応によって合成されるが、具体的には、滝山栄一郎「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社(1986年刊)、高分子学会編「重縮合と重付加」共立出版(1980年刊)、I.Goodman「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering Vol.12」p1. John Wiley & Sons(1985年刊)等に記載の方法に従って合成することができる。
【0052】
ポリエステルオリゴマーの片末端のヒドロキシル基のみに重合性基を導入する方法としては、ラジカル重合性基を導入する場合、従来公知の低分子化合物におけるアルコール類からエステル化する反応あるいはアルコール類からウレタン化する反応を用いる事で合成することができる。即ち、分子内に重合性二重結合基を含有するカルボン酸類、カルボン酸エステル類、カルボン酸ハライド類又はカルボン酸無水物類との反応でエステル化し、マクロモノマーを合成する方法あるいは、分子内に重合性二重結合基を含有するモノイソシアナート類との反応でウレタン化し、マクロモノマーを合成する方法によって達せられる。具体的には、日本化学会編「新実験化学講座14、有機化合物の合成と反応〔II〕」、第5章、丸善(株)、(1977年刊)、「同、有機化合物の合成と反応〔III〕」、第1652頁、丸善(株)、(1978年刊)等に詳細に記載された方法を用いて合成することができる。
【0053】
また、一般式(MII)で示されるマクロモノマー(以下、マクロモノマー(M2)と称することもある)は、上記した様にして合成したポリエステルオリゴマーの片末端のカルボキシル基のみに重合性基を導入する方法により合成することができる。その導入方法としては、ラジカル重合性基を導入する場合、従来公知の低分子化合物におけるカルボン酸類からエステル化する反応あるいはカルボン酸類から酸アミド化する反応を用いる事で合成することができる。即ち、分子内に重合性二重結合基を含有し且つカルボキシル基と化学反応する官能基(例えば、−OH、ハロゲン体(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、−NH2、−COOR31(R31は、メチル基、トリフロロメチル基、2,2,2−トリフロロエチル基等)、下記式(a)で示す基等)を含有する化合物とポリエステルオリゴマーを高分子反応する事で該マクロモノマーが合成される。
【0054】
【化10】
【0055】
また、マクロモノマー(M1)、マクロモノマー(M2)いずれの場合も、カチオン重合性基を片末端にのみ導入する方法としては、上記のラジカル重合性基を導入する場合に挙げた分子内に重合性二重結合基を含有する化合物中に、重合性二重結合に替えて予めカチオン重合性基を含有した化合物を用いて合成する方法が挙げられる。
【0056】
次に、重合性モノマー(A)について詳述する。
重合性モノマー(A)としては、ラジカル重合性モノマー(A1)とカチオン重合性モノマー(A2)が挙げられる。本発明では、重合性モノマー(A)としてマクロモノマー(M)と共重合可能なものが好ましい。
【0057】
ラジカル重合性モノマー(A1)としては、ラジカル種で重合反応を開始する重合性不飽和二重結合基を含有する化合物が挙げられ、モノマー、オリゴマーのいずれでもよい。ラジカル重合性モノマー(A1)として、具体的には、例えば下記一般式(A1−I)で表されるモノマーが挙げられる。
【0058】
【化11】
【0059】
一般式(A1−I)中、V1は前記一般式(MI)中のA1と同一の内容を表す。a1及びa2は同じでも異なってもよく、それぞれ前記一般式(MI)中のx1、x2と同一の内容を表す。
【0060】
Rは、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0061】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO2R11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO2R11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14)、−SO2(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0062】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0063】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
【0064】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0065】
上記式(A1−I)におけるRで表されるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0066】
上記式(A1−I)におけるRで表される複素環基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
上記ラジカル重合性モノマー(A1)としては、更に好ましくは、前記一般式(MI)又は(MII)において、E1及びE2の少なくともいずれか一方が含有すると好ましいとして記載した環状脂肪族基を置換基中に含有するモノマーが挙げられる。なかでも、下記一般式(A1−II)で表されるモノマーが好ましい。
【0068】
【化12】
【0069】
一般式(A1−II)中、a1、a2及びV1はそれぞれ前記一般式(A1−I)におけるa1、a2及びV1と同義である。
【0070】
R0は、炭素数5〜30個の環状構造を構成する炭化水素基であり、単環式、多環式、架橋環式、スピロ環式等の環状構造が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。好ましくは炭素数6〜25が好ましい。
【0071】
これら脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例としては、前記一般式(MI)又は(MII)においてE1及びE2の少なくともいずれか一方が含有すると好ましいとして記載した環状脂肪族基で例示の構造例(1)〜(51)が挙げられる。
【0072】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、前記式(A1−I)中のRで例示したと同一の内容のものが挙げられる。
【0073】
L1は、式(A1−II)における−V1−と−R0とを連結する基を表し、直接結合又は総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)を表す。好ましくは直接結合又は総原子数1〜12の連結基を表す。但し、R0が単環式脂肪族基の場合は、L1は直接結合ではなく、総原子数が1〜12の連結基であることが好ましく、更には総原子数1〜8の連結基であることが好ましい。
【0074】
L1における連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−複素原子結合(複素原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、複素原子−複素原子結合等から構成される原子団の任意の組み合わせで構成される。例えば、原子団としては、前記一般式(MI)のB1と同様のものが挙げられる。
【0075】
本発明のセルロースアシレート組成物には、カチオン重合性モノマーを併用するのが好ましい。
本発明に用いられるカチオン重合性モノマー(A2)としては、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性モノマーのうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0076】
カチオン重合性モノマーの具体例としては、エポキシ基含有の化合物(脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状エーテル又は環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和炭化水素化合物(ビニル炭化水素化合物)等を挙げることができる。
【0077】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性モノマー(A2)として、エポキシ基含有化合物及びビニルオキシ基含有化合物(以下「ビニルオキシ化合物」とも称する)が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性モノマーとして、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物の混合物を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが一層良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0078】
カチオン重合性モノマー(A2)として上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0079】
また、別種の脂肪族エポキシ樹脂として、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。
さらに、これらのエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなども用いることができる。さらに、信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.28,497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能性エポキシ化合物も用いることができる。
【0080】
また、カチオン重合性モノマー(A2)として上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価又は多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ又はポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシド化合物として、例えば、特開平11−242101号公報の段落番号〔0084〕〜〔0086〕記載の化合物、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0016〕〜〔0029〕記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0081】
環状エーテル化合物であるオキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
具体的には、例えば特開2000−239309号公報の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物、J.V.CRIVELLO etal、J.M.S.PUREAPPL.CHEM.、A30、p.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
【0082】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物を挙げることができる。
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等のスチレン化合物、ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等のビニル基置換脂環炭化水素化合物、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物(V1が−O−に相当の化合物)、2−メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of PolymerScience:Part A:Polymer Chemistry,Vol.32,2895(1994)に記載されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.33,2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal ofPolymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。
【0083】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0084】
本発明では、上記したカチオン重合性モノマー(A2)の1種又は2種以上を用いることができ、特に上述のように、ビニルエーテル類、エポキシ化合物やオキセタン化合物におけるオキシラン構造を有するものが光重合反応性や重合体の膜特性が良好になる点で好ましい。
1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有する多官能性化合物を30質量%以上の割合で含むカチオン重合性モノマーが好ましく用いられる。
【0085】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有する重合性基含有モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0086】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B1)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜2個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有がより好ましい。
カチオン重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B2)と称することもある)は、分子中にカチオン重合性基の1〜10個と光安定化基の少なくとも1個とを含む化合物が好ましく、光安定化基は複数個含有されてもよい。カチオン重合性基を2〜6個含有がより好ましい。
【0087】
光安定化性能を有するモノマー(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」pp235((株)シーエムシー、1990年刊)に記載の従来公知の化合物が挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダードアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、又はベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環、ピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0088】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0089】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、米国特許3493539号、同4528311号、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号、同8−188737号に記載の化合物が挙げられる。
【0090】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832号、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841号等記載の化合物が挙げられる。
【0091】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU1)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有する重合性モノマーが挙げられる。
(BU1−I):T−L2−U1
式(BU1−I)中、Tは前記一般式(MI)又は(MII)のTと同一の内容を表す。
L2はT−と−U1とを連結する基を表し、単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、前記の一般式(A1−II)のL1と同一の内容、又は、下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。L2は、水素原子を除いた原子数が1〜20個の範囲にあり、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることが好ましい。
【0092】
【化13】
【0093】
式(L2a)〜(L2d)中、d1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、d2及びd3は、同じでも異なってもよく、各々水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0094】
上記式(BU1−I)中、U1は1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、下記のベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、又はベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基又はベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。
【0095】
【化14】
【0096】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのベンゼン環の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが好ましくは1個存在する。
【0097】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(A1−I)のRに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜18のアルキル(例えば、炭素数1〜6、好ましくは1〜2のアルキル)、アリール(例えば、炭素数6〜20の、例えば、フェニル基)、ヘテロアリール(例えば、ピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(例えば、炭素数6〜20のアリールオキシ)、アルコキシ(例えば、炭素数1〜6、好ましくは1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、又はハロゲン(例えば、F又はCl、特にベンゾ環上の5位及び/又は6位上に、及び/又はヒドロキシ置換フェニルの5’位上にClを有するもの)であってよい。ベンゾ環の置換基としてはまた、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリル又はチエニル環を挙げることができる。アルキル及びアルコキシ置換基のいずれも1〜5個の(又は1〜2個の)介在する酸素、イオウ又は窒素原子を有してよい。
【0098】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接又は連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
(BH−I):T−L2−U2
式(BH−I)中、「T−L2−」部は、前記式(BU1−I)と同一の内容を表す。
U2は、下記式(U2−I)又は(U2−II)を表す。
【0099】
【化15】
【0100】
式(U2−I)及び(U2−II)中、d11及びd12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表すか、又はd11及びd12は一緒になってペンタメチレン基を表す。d13は、水素原子又はシアノ基を表す。
R21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、−C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、−OCOR23基、又は−OR23基を表す。
R22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(I)中のRの炭化水素基と同一の内容を表す。
Y1は、酸素原子又はイミノ基を表し、Y2は、酸素原子、メチン基又は「−L2−」に直結する基を表す。
【0101】
また、ベンゾフェノン系重合性モノマー及びベンゾトリアゾール系重合性モノマー以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0102】
本発明における、上記重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
また、本発明の光安定化基を含有する重合性モノマー(B)は、分子内に重合性基として、上記したようなラジカル重合性基及びカチオン重合性基の両方を含有していてもよい。
【0103】
以下に、上記の紫外線吸収性基とヒンダートアミン基を含有する重合性モノマーを例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0104】
【化16】
【0105】
【化17】
【0106】
本発明のセルロースアシレート溶液には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性モノマーを更に共存して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フィルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0107】
これらモノマーの具体例として、
(1)ポリオキソアルキレン基を含有するモノマー:特開平7−238115号公報、特開平8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0108】
(2)アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等が挙げられる。
【0109】
(3)ホスホニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報等が挙げられる。
【0110】
また、帯電防止性基を有するカチオン重合性モノマーとしては、紫外線吸収性基含有モノマーの場合と同様にラジカル重合性基に代えて該カチオン重合性基が結合してなるものが挙げられる。
【0111】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上の重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有することが好ましい。
多官能モノマー(C)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜10個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物であり、より好ましくは、2〜6個である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0112】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能又は多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0113】
脂肪族多価アルコール化合物としてのエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等と、不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換又はポリ置換の重合性モノマーを用いることができる。
【0114】
その他のエステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0115】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0116】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号等)エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号等)、更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0117】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは3〜5個である。該硬化剤の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、セルロースアシレートドープ組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0118】
カチオン重合性基を有する多官能性化合物は前記カチオン重合性モノマーと同一の内容のもの、特開平8−277320号記載のエポキシ化合物、特開2002−29162号記載のビニルオキシ基含有化合物等が挙げられる。
また、本発明の多官能性モノマー(C)としては、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号明細書中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕記載の化合物、特開2000−191737号明細書中の段落番号〔0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0119】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、更に、例えば特開平11−199647号明細書中の段落番号〔0030〕に記載の化合物等に記載のオキセタンモノアルコール化合物を含有することが好ましい。セルロースアシレートドープ組成物がオキセタンモノアルコール化合物を含有していることによって、耐水性、耐湿性に優れ且つ力学的特性に優れるセルロースアシレートフィルムを作製することができる。
本発明では、オキセタンモノアルコール化合物のうちの1種又は2種以上を用いることができる。モノオキセタンアルコール化合物の使用量は、カチオン重合開始剤の使用量に対して、1〜30質量%の範囲で用いることが好ましい。この範囲において、重合反応性を阻害しないで膜の強度をより良化することができる。
【0120】
本発明における重合性化合物(マクロモノマー(M)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C))及びその他の重合性化合物)の総添加量は、セルロースアシレート溶液(ドープ溶液)全量の固形分量に対して、0.1質量%〜55質量%が好ましい。より好ましくは、0.5質量%〜30質量%である。
【0121】
マクロモノマー(M)の総量は、セルロースアシレート溶液全量(固形分量)に対して0.05質量%〜45質量%が好ましく、より好ましくは、0.1質量%〜25質量%である。
重合性モノマー(A)の総量は、セルロースアシレート溶液全量(固形分量)に対して0.05質量%〜48質量%が好ましく、より好ましくは、0.5質量%〜30質量%である。
更にはラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との使用割合は任意であるが、(5/95)〜(95/5)質量比が好ましい。より好ましくは(10/90)〜(90/10)質量比であり、更に好ましくは(20/80)〜(80/20)質量比である。
この範囲にあっては、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度が好ましい範囲となり、得られる製膜フィルムの力学的特性にも優れ、点欠陥などの無い極めて均一な面状のフィルムが得られる。さらに、80μm以下の薄膜であっても膜の強度が良好なフィルムが得られ、好ましい。
【0122】
光安定化モノマー(B)は、セルロースアセレート溶液全量(固形分量)に対して0.5質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜20質量%である。
多官能モノマー(C)は、全重合性化合物(マクロモノマー(M)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、及びその他の重合性化合物)の全量に対して1質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜30質量%である。
【0123】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光重合開始剤(L)について詳述する。
本発明の光重合開始剤(L)は、光照射により、ラジカル若しくは酸を発生する化合物である。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0124】
まず、光照射により、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等が挙げられる。
【0125】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林 等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特開昭63−298339号、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0126】
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号〔0039〕〜〔0048〕記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0127】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62ページ((株)技術情報協会刊、1991年)、特開平8−134404号明細書の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、同11−217518号明細書の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0128】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号明細書の段落番号〔0019〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0129】
上記メタロセン化合物としては、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0130】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0131】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号明細書の段落番号〔0022〕〜〔0027〕記載の化合物が挙げられる。
【0132】
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0133】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号明細書に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
【0134】
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、光ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0135】
次に、光重合開始剤(L)として用いることができる酸発生剤(L2)について詳述する。
酸発生剤(L2)としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
また、酸発生剤(L2)として、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物のこれらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号明細書の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0136】
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤(L2)としては、オニウム塩が挙げられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0137】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0138】
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0139】
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全重合性モノマーの全質量100質量部に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、ドープ組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0140】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
【0141】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物には、紫外線照射により重合反応を行なう場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
【0142】
また、近赤外線照射により重合反応を行なう場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。
併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている赤外吸収性の微粒子顔料が利用できる。
染料としては、市販の染料および文献(例えば、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、J.FABIAN、Chem.Rev.、92、pp1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0143】
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノン染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料(例えば、オキソノール系、イミニウム系、シアニン系、ピリリウム系、スクワリウム或いはクロコニウム系、アズレニウムウム系、等)、有機金属錯体などの近赤外線吸収染料が挙げられる。
近赤外線分光増感剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、その使用量は、セルロースアシレート組成物の全固形分に対し、0.01〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に1〜8重量%であることが好ましい。
【0144】
本発明では、耐傷性やフィルムの搬送性を良好に保持するためにセルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されないが、これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましい。
また、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
【0145】
これらの添加剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法は限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、いわゆる直前添加方法であり、その混合にはスクリュー式混練がオンラインで設置して用いられる。添加剤の混合は、混合物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶媒として用いることも好ましい態様である。
【0146】
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは0.001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり、更に好ましくは0.002〜1μmであり、特に好ましくは0.005〜0.5μmである。
セルロースアシレートに対する微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましい。
【0147】
本発明のセルロースアシレート組成物には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができる。その添加する時期はドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、前記の公技番号 2001−1745の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0148】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物(メチレンクロライド等)、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等)が主溶媒として挙げられる。その他の溶媒の例としては、アセトン、炭素原子数4〜12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で。メチレンクロライド、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒またはこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒として、例えば、特開2002−146045号明細書の段落番号[0016]から[0021]等に記載の溶媒系の例が挙げられる。これらの具体的な例は、前記の公開技報2001−1745号の12頁〜16頁に記載の内容が挙げられる。
【0149】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0150】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平4−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については前記の公技番号 2001−1745の22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に前記の公技番号 2001−1745の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0151】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、40℃での粘度が1〜200Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paである。
【0152】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
【0153】
以下、バンド法を例として製膜の工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、前記の公技番号 2001−1745の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0154】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0155】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
【0156】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0157】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の公開技報2001−1745の27〜29頁に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0158】
本発明の光重合反応は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行なえばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、紫外線光域或いは近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0159】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行なうことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1〜100mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0160】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。また、光学フィルム用の場合には20〜120μm、更には30〜80μmも好ましい態様である。
【0161】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行なうことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0162】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行なうことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
【0163】
フィルム上に機能層を付与する場合にフィルムと機能層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、前記の公技番号 2001−1745の32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が前記の公技番号 2001−1745の32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0164】
本発明で作製されたセルロースアシレートフィルムの用途について簡単に述べる。
本発明のセルロースアシレートフィルムからなる光学フィルムは、特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0165】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、画像表示装置、特に液晶表示装置の光学補償シートとして用いると効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0166】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は前記の公技番号 2001−1745の45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0167】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体としても有用である。本発明のセルロースアシレートフィルムは、印刷製版用、医療用、一般写真用等のいずれのハロゲン化銀写真感光材料の支持体として用いることができる。また、その膜厚は30〜250μmであることがより好ましい。このようなハロゲン化銀写真感光材料についてはT. H. James et. al. The Theory of the Photographic Process 第4版 (Macmillan Publishing Co., Inc. 1977)等に記載されている。
【0168】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0169】
<マクロモノマー(M1)の合成例>
マクロモノマー(M1)の合成例1:マクロモノマー(M1−1)
1,6−ヘキサンジオール26.4g、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン−8,9−ジカルボン酸38g、ジブチルスズオキサイド0.01g及びメシチレン150gの混合物をDean−Star環流装置を付したフラスコ中で攪拌しながら環流下に4時間加熱した。トルエン溶媒とともに共沸で留去された水の量は約3.5gであった。室温に冷却後、メタノール800ml中に再沈し、液状物をデカント後補集し、減圧下に乾燥した。
上記反応生成物を、ジメチルホルムアミドに溶解し、0.1Nソジウムメチラートメタノール溶液で電位差滴定する方法によりヒドロキシル基及びカルボキシル基を測定したところ、各々500μmol/grとなった。
上記固形物50g、2−[2−カルボキシエチルカルボニルオキシ]エチルメタクリレート10.6g、t−ブチルハイドロキノン1.0g及び塩化メチレン200gの混合物を、室温で攪拌下に溶解した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(D.C.C)10.2g、4−(N,N−ジメチル)アミノピリジン0.2g及び塩化メチレン50gの混合溶液を、攪拌下に上記混合物に1時間で滴定した。更にそのまま4時間攪拌した。
D.C.C溶液を滴下するにつれ、不溶の結晶が析出した。反応混合物中に3%ギ酸水溶液3gを加えて、室温で2時間攪拌した。反応混合物をセライトを用いた吸引濾過で濾別し、濾液をメタノール500mlに再沈し、固形物を濾集した。これをテトラヒドロフラン100mlに溶解した後、メタノール500リットル中に再度再沈し、固形物を補集後、減圧乾燥した。得られた生成物の収量は42gで、Mwは5×103であった。得られたマクロモノマーを、上記と同様の電位差滴定方法でヒドロキシル基量を測定したところ、5μmol/grで、反応率は99%であった。
【0170】
【化18】
【0171】
マクロモノマー(M1)の合成例2:マクロモノマー(M1−2)
1,4−シクロヘキサンメタンジオール72.1g、無水コハク酸50g、p−トルエンスルホン酸1水和物0.7g及びキシレン200gの混合物を、上記マクロモノマー(M1)合成例1と同様にして反応した。
次に、アクリル酸8.6g及びトルエン75gの混合溶液とt−ブチルハイドロキノン0.5gを上記反応物に加えた後、更に攪拌しながら環流下に4時間反応した。室温に冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、析出した固形物を濾取し、減圧乾燥した。収量は67gで、得られたマクロモノマー(M1−2)の重量平均分子量は8×103であった。
【0172】
【化19】
【0173】
マクロモノマー(M1)の合成例3:マクロモノマー(M1−3)
5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール77.1g、グルタル酸無水物54.2g、ドデセニルコハク酸無水物6.7g及びジズチルスズオキサイド0.01gの混合物を温度120℃に加熱した。窒素気流下に減圧度約30mmHgで2時間攪拌し、更に温度を150℃に加熱して減圧度約5mmHg下で2時間攪拌した。放冷後、テトラヒドロフラン300gを投入して溶解した後、メタノール1リットル中に再沈した。沈殿物を濾集し、減圧乾燥した。
上記固形物50g、2−メタクロイルオキシエチルイソシアナート6.2g、t−ブチルハイドロキノン0.01g、テトラブトキシチタネート0.01g及びテトラヒドロフラン120gの混合物を温度60℃で6時間攪拌した。
放冷後、メタノール600ml中に再沈し、沈殿物を補集・減圧乾燥して、収量41gでMw8×103のマクロモノマー(M1−3)を得た。
【0174】
【化20】
【0175】
マクロモノマー(M1)の合成例4:マクロモノマー(M1−4)
下記構造のジオール化合物64.5g、無水グルタル酸28.6g、p−トルエンスルホン酸0.4g及びメシチレン220gの混合物を、上記マクロモノマー(M1)の合成例1と同様にして反応した。
室温に冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、沈殿物を濾集し減圧乾燥した。上記固形物50gを用いて、上記マクロモノマー(M1)の合成例2に記載のD.C.Cを用いる方法で、下記構造のエポキシ基含有のカルボン酸を用いて反応し、マクロモノマー(M1−4)40gを得た。Mwは7×103であった。
【0176】
【化21】
【0177】
マクロモノマー(M1)の合成例5:マクロモノマー(M1−5)
マクロモノマー(M1−1)の合成例と同様にして合成した下記構造のマクロモノマー(M1−6)50g、メタノール3g、t−ブチルハイドロキノン0.5g及び塩化メチレン150gの混合溶液に、D.C.C.6g、4−N,N−ジメチルアミノピリジン0.1g及び塩化メチレン10gの混合溶液を温度20〜25℃で攪拌下に30分間で滴下し、そのまま更に4時間攪拌した。この反応混合物にギ酸5gを加えて1時間攪拌した後、析出した不溶物を濾別した。濾液をメタノール1リットル中に再沈し、溶媒をデカンテーションで取り除き沈殿物を補集し減圧乾燥した。得られた粘稠物は、収量28gでMwは8.0×103であった。
【0178】
【化22】
【0179】
マクロモノマー(M1)の合成例7〜11:マクロモノマー(M1−7)〜(M1−11)
下記表−Aの各マクロモノマーを前記の合成例と同様にして合成した。各マクロモノマー(M1−7)〜(M1−11)のMwは6×103〜8×103の範囲であった。
【0180】
【表1】
【0181】
<マクロモノマー(M2)の合成例>
マクロモノマー(M2)の合成例1:マクロモノマー(M2−1)
B;sphenol A ethoxylate(Aldvich社製)80.8g、無水コハク酸1.0g、p−トルエンスルホン酸1水和物1.6g及びトルエン200gの混合物を、Dean−Star環流装置を付したフラスコ中で攪拌しながら環流下に4時間加熱した。キシレン溶媒とともに共沸で留去された水の量は約3.4gであった。
冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、沈降物を補集・減圧乾燥して、収量88gの生成物を得た。この反応物をトルエンに溶解し、0.1N水酸化カリウムとメタノール溶液で中和滴定する方法によりカルボキシル基含量を測定し、500μmol/grとなった。
次に上記反応物50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.5g及びトルエン150gの混合溶液とt−ブチルハイドロキノン0.3gを上記反応物に加えた後、D.C.C.10.3g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.1g及び塩化メチレン30gの混合溶液を攪拌下に上記混合物に1時間で滴下した。更に、そのまま、4時間攪拌した。
反応混合物を200メッシュのナイロン布を通して、不溶物を濾別した。濾液をメタノール800ml中に再沈し、粉末を濾集した。これを塩化メチレン100gに溶解し、再度メタノール500ml中に再沈した。粉末を濾集し、減圧下に乾燥し、重量平均分子量(以下Mw)6.3×103のマクロモノマーを35g得た。このマクロモノマーを前記の中和滴定法により滴定して残存するカルボキシル基含量を測定した所、8μmol/grとなり、反応率は99.8%であった。
【0182】
【化23】
【0183】
マクロモノマー(M2)の合成例2:マクロモノマー(M2−2)
トリシクロ〔5.2.1.0.2,6〕デカン−3,4−ジオール67.2g、ピメリン酸40.1g、パラートルエンスルホン酸0.7g及びメシチレン250gの混合物を、前記マクロモノマー(M2)の合成例1と同様にして反応させた。室温に冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、沈降物を補集・減圧乾燥して収量91gの生成物を得た。
上記固形物50g、グリシジメタクリレート5.4g、t−ブチルハイドロキノン1.0g、N,N’−ジメチルドデシルアミン1.0g及びキシレン200gの混合物を、温度140℃で5時間攪拌した。
冷却後、反応溶液をメタノール800ml中に再沈し、液状物をデカント後補集し、減圧下に乾燥し、収量42gでMw5×103の生成物を得た。
【0184】
【化24】
【0185】
マクロモノマー(M2)の合成例3:マクロモノマー(M2−3)
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸43.0g、1,4−シクロヘキサンメタンジオール36.1g及びジブチルスズオキサイド0.005gの混合物を窒素雰囲気に温度140℃に加熱した。減圧度20mmHgで1時間攪拌後、温度160℃で減圧度5mmHgで2時間攪拌した。
放冷後、トルエン180gを加えて溶解した後、メタノール1リットル中に再沈し、沈降物を補集・減圧乾燥して、収量68gを得た。
上記反応生成物50g、下記化合物(a)4.5gを用いて、前記のマクロモノマー(M2)の合成例1と同様のD.C.Cを用いる方法で、マクロモノマーを合成した。収量43gで、Mw8×103であった。
【0186】
【化25】
【0187】
マクロモノマー(M2)の合成例4:マクロモノマー(M2−4)
1,6−ヘキサンジオール120g、無水グルタル酸114.1g、p−トルエンスルホン酸1水和物3.0g及びトルエン250gの混合物を、上記マクロモノマー(M2)の合成例1と同様の条件で反応した。室温に冷却後n−ヘキサン2リットル中に再沈し液状物をデカント後補集し減圧下に乾燥した。
上記のポリエステルオリゴマー50g、エピブロモヒドリン7.0g、ヨウ化カリウム0.1g及びメチルエチルケトン105gの混合物を、温度80℃で8時間攪拌した後、メチルエチルケトン30gを追い出し後、1晩室温で放置した。不溶物をセライトを用いて吸引濾過で濾別して得られた濾液をn−ヘキサン400ml中に再沈した。静置して沈降した液状物をデカントで分収して、テトラヒドロフラン80gに溶解し、ジエチルエーテル400ml中に再沈した。
固形物を濾集し減圧下に乾燥し、重量平均分子量1.2×104のマクロモノマー(M2−4)59gを得た。
【0188】
【化26】
【0189】
マクロモノマー(M2)の合成例5:マクロモノマー(M2−5)
前記マクロモノマー(M2−3)50g及びトリエチルアミン5gをテトラヒドロフラン100gに溶解し、温度5度以下に冷却した。これに、アセチルクロライド4.0gを温度が5度を越えない様にして滴下しそのまま4時間攪拌した。次に、この反応混合物をメタノール800ml中に再沈し、沈降物を補集し、テトラヒドロフラン80mlに溶解してメタノール500mlに再度再沈した。沈降物を補集・減圧乾燥して、収量33gでMw8×103の生成物を得た。
【0190】
【化27】
【0191】
マクロモノマー(M2)の合成例6〜11:マクロモノマー(M2−6)〜(M2−11)
マクロモノマー(M2)の合成例と同様にして、下記表−Bの各マクロモノマー(M2−6)〜(M2−11)を合成した。各マクロモノマーのMwは6×103〜1×104の範囲であった。
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
実施例1、実施例2及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
{実施例1}
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)にて1時間、35℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0195】
【0196】
【化28】
【0197】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧、1.5、1.2であり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0198】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とした。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kW高圧水銀灯を用いて、ドープ表面の全光照射量が400mJ/cm2となる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルロースアセテートを作製した。
【0199】
{実施例2}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)のマクロモノマー(M2−4)及びメチルメタクリレート(モノマー(A−1))の代わりに、マクロモノマー(M1−1)及び下記構造のモノマー(A−2)を同量用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0200】
【化29】
【0201】
{比較例1}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、マクロモノマー(M2−4)を除いた他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚60μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0202】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.7%、偏光度は99.97%であった。
【0203】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作成した。
【0204】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の結果を表−Cに記載した。
【0205】
【表4】
【0206】
表−C記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行なった。
1)膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
○:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0207】
2)ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値。B:経時後の値。
【0208】
3)引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値。 B:経時後の値。
【0209】
4)異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0210】
5)耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
△:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0211】
6)偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
【0212】
P=√(Yp−Yc)/(Yp+Yc)
【0213】
7)耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上6%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0214】
本発明の実施例1及び実施例2のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
更に、重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基を含有化合物を用いた実施例2の試料は、ヘイズ値がより小さく良化し、且つ膜の引き裂き強度が向上していることが見い出された。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、ヘイズ値が強制経時でやや低下し、引き裂き強度及び耐候性において低い値を示した。又、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0215】
実施例3〜実施例7
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、マクロモノマー(M2−4)、モノマー(A−1)及び光重合開始剤(L−1)の代わりに、下表−Dの各化合物を同量づつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚50μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0216】
【表5】
【0217】
得られた実施例3〜7の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行なった。各実施例のものは、実施例2と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0218】
実施例8
(セルローストリアセテート溶液の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の組成物の代わりに、下記内容の組成物(D−8)を用いた他は、実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液を得た。
【0219】
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.9
3、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%) 20質量部
ジクロロメタン 62質量部
アセトン 5質量部
メタノール 6質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 0.7質量部
シリカ微粒子(粒径20nm) 0.1質量部
マクロモノマー(M1−7) 0.4質量部
重合性モノマー:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート0.30質量部
下記光安定化モノマー(1) 0.30質量部
下記光安定化モノマー(2) 0.25質量部
下記光重合開始剤(L−7) 0.15質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン 0.008質量部
【0220】
【化30】
【0221】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で10分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』)で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、『FH 025』)にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0222】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0223】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Eに記載した。
【0224】
【表6】
【0225】
以上の結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。又、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0226】
実施例9〜12
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)のマクロモノマー(M1−7)光安定化モノマー(1)及び(2)の代わりに下記表−F記載の各光安定化モノマーを用いた他は、実施例8と同様にして、セルロースアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0227】
【表7】
【0228】
実施例13〜19
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)のマクロモノマー(M1−7)及び重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)の代わりに、下記表−Gの各マクロモノマー(M)0.3質量部及び各重合性モノマー0.6質量部を用いた他は、実施例8と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0229】
【表8】
【0230】
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0231】
実施例17〜21
実施例8のセルローストリアセテート溶液(D−8)において、重合性モノマー、光重合開始剤及び光安定化モノマーの代わりに下記表−H記載の各化合物を用いた他は、実施例8と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例8と同等の良好な性能であった。
【0232】
【表9】
【0233】
【表10】
【0234】
実施例22
実施例8のセルローストリアセテート溶液(D−8)において、下記構造の近赤外線分光増感剤0.05質量部を更に加えた組成物を用いて、実施例8と同様にして膜厚70μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。但し、光照射は、2kWハロゲンランプを用いてドープ表面の全光照射量が450mJ/cm2となる条件で行った。
次に、実施例1と同様にして偏光板を作製し、その性能を評価した結果、実施例8と同等の性能を示した。
【0235】
【化31】
【0236】
実施例23
特開平11−316378号の(実施例1)において、その第1透明支持体を本発明の実施例1〜22で得られるセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号の(実施例1)を実施して試料1〜22を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0237】
実施例24
特開平7−333433号の実施例1の富士写真フィルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例13〜21のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、特開平7−333433号の実施例1と全く同様にした光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0238】
実施例25
本発明のフィルムは更に多種の光学用途に利用される。本発明の代表として実施例2,8及び実施例17の各フィルムを、例えば特開平10−48420号実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0239】
実施例26
実施例8及び19の本発明の各試料において、そのフィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にしてそのフィルムである本発明の試料を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0240】
【発明の効果】
本発明のセルロースアセテートフィルムは、引き裂き強度、耐折強度及び光学特性に優れ、良好な長期保存安定性を有する。
上記特性に優れた本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学フィルム、偏光板、光学補償フィルムなどに好適に用いられ、これらのフィルムは液晶表示装置などに適用することができる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムはハロゲン化銀写真感光材料の支持体にも好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、並びに該セルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム、画像表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料に関する。
特に、本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能性光学フィルムやハロゲン化銀写真感光材料の支持体フィルムに関する。さらに、本発明は、有機ELディスプレイ等に適用される各種機能フィルムを構成する光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは、透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)や高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を適宜選択して単独又は混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。また、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術がある(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、これらの支持体でも、長期保存下の膜強度安定性、フィルムの着色等が十分でなかった。
【0004】
更に、セルロースアシレートとの相溶性を高めるものとして低分子量体含量の多い分子量分布を特定化したポリエステルのブレンドが提案されている(例えば、特許文献7参照)。しかしながら、ポリマーが低分子量体であるために、ポリマーとしての特性を十分に発現できないという課題がある。
【0005】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムとして優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性能の向上や、耐久性化が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0006】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来セルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させたりしてしまうなどの問題点を有していた。これらの特性を改良するために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤や帯電防止剤の添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子の添加が提案されている(例えば、特許文献8、特許文献9参照)。
【0007】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行ない製膜速度を向上させる技術がある(例えば、特許文献10参照)。しかしながら、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要な又は有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼすという問題がある。また、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術もある(例えば、特許文献11、特許文献12参照)。
しかしながら、これらの技術を用いても未だ充分ではなく、特に、近年の表示装置の開発は、表示部の大版化または携帯電話等のモバイル表示装置の多用途への普及等が急速に進展しており、光学フィルムの薄層化、光学フィルムへのより一層の寸度安定性や耐久性が望まれている。
【0008】
【特許文献1】
特公昭47−760号公報
【特許文献2】
特公昭43−16305号公報
【特許文献3】
特公昭44−32672号公報
【特許文献4】
特開平2−292342号公報
【特許文献5】
特開平5−197073号公報
【特許文献6】
米国特許第3,277,032号明細書
【特許文献7】
特開2002−22956号公報
【特許文献8】
特開平6−148430号公報
【特許文献9】
特開2002−31715号公報
【特許文献10】
米国特許第3,738,924号明細書
【特許文献11】
特開2002−20410号公報
【特許文献12】
特開2002−47357号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、光学特性を有し、しかも長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた特性を有する上記セルロースアセテートフィルムを用いて得られる光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルムなど)、画像表示装置(特に、液晶表示装置など)、及びハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、膜厚が80μm以下の薄膜でも、引き裂き強度、耐折強度に優れたセルロースアシレートフィルムを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成のセルロースアシレートフィルム、その製造方法、光学フィルム(光学補償フィルム、偏光フィルムなど)、画像表示装置(液晶表示装置など)、ハロゲン化銀写真感光材料などが提供され、本発明の上記目的が達成される。
1.溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、
(i)セルロースアシレート、
(ii)重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量が2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、
(iii)重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)、
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
2.一官能性ポリエステルモノマー(M)が有する上記重合性基が、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基であることを特徴とする上記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0011】
3.上記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を含有する重合性モノマー(B)の少なくとも一種を更に含有することを特徴とする上記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
4.上記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基含有の多官能モノマー(C)の少なくとも一種を更に含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0012】
5.上記の、モノマー(A)、(B)及び(C)の各重合性モノマーが、ラジカル重合及び/又はカチオン重合により重合反応することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
6.上記重合性モノマー(A)が、脂環式炭化水素基を置換基として有する化合物であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
7.上記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0013】
8.セルロースの水酸基への置換度が、下記式(a)〜(c)の全てを満たすセルロースアシレートであることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
式(a):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(b):2.0≦SA’≦3.0
式(c): 0≦SB’≦0.8
上記式中、SA’はアセチル基の置換度であり、SB’は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0014】
9.セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、
(i)セルロースアシレート、
(ii)重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量が2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、
(iii)重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)、
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0015】
10.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
11.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアセレートフィルムを用いた光学用偏光フィルム。
12.1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示素材。
13.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
14.上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた画像表示装置。
15。上記1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
16.上記1〜8のいずれかに記載され、かつその膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロールアシレートフィルムは、セルロースアシレート、一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、重合性モノマー(A)、及び光重合開始剤(L)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程と含む溶液流延方法により製造されるものである。
【0017】
[セルロースアシレート]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて以下に記す。
【0018】
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製して精製リンタと精製高級木材パルプとして用いられる。
【0019】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフィルムの作製]
上述のセルロースを原料から製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。
本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。
式(a):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(b):2.0≦SA’≦3.0
式(c): 0≦SB’≦0.8
【0020】
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
【0021】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB’)は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフィルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0022】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行 発明協会)の9ページに詳細に記載されている。
【0023】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
【0024】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は前記の公技番号 2001−1745の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0025】
次いで、本発明に供される各重合性基含有の化合物について詳述する。
まず、本発明に供される一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)について説明する。
本発明の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)は、ポリエステル構造を有し、その重合体主鎖の片末端のみに重合性基が結合してなる、重量平均分子量が2×104以下の化合物である。
一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)は、重合性モノマー(A)と共重合反応し、クシ型ブロック共重合体を形成することが好ましい。
本発明に供される一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)と重合性モノマー(A)との共重合反応を充分に進行させ、又、形成されたブロック重合体のマクロモノマー(M)に由来するクシ部のポリマー鎖長による高分子鎖同士の絡み合い効果が充分に発現し、膜強度を向上させる上で、一官能性ポリエステルマクロモノマーの重量平均分子量は、好ましくは2×103〜2×104であり、より好ましくは3×103〜1.5×104である。
【0026】
一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)としては、具体的には、下記一般式(MI)又は一般式(MII)で示される重量平均分子量2×103〜2×104のマクロモノマーが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、Tは重合性基を表し、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基を表すのが好ましい。
具体的には、Tがラジカル重合性基の場合は、下記一般式(Ia)で表される基が挙げられる。
【0029】
【化2】
【0030】
一般式(Ia)中、x1及びx2はお互いに同じでも異なってもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜8の炭化水素基、−COO−T0または炭素数1〜8の炭化水素基を介した−COO−T0(T0は炭素数1〜18の炭化水素基を表す)を表す。好ましくは、各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、トリフロロメチル基等)、−COO−T0又は−CH2COOT0{T0は炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、炭素数7〜9のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等)又は置換されてもよいフェニル基(例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基等)を表す}を表す。より好ましくは、x1及びx2のうちのいずれか一方が水素原子を表す。
一般式(Ia)中、A1は、単結合又は−COO−、−OCO−、−(CH2)a−COO−、−CO−、−(CH2)b−OCO−(a、bはそれぞれ1〜3の整数を表す)、−CON(k1)−〔k1は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す〕、−CONHCONH−、−CONHCOO−、−O−、−C6H4−もしくは−SO2−を表す。好ましくは、−COO−、−OCO−、−CH2COO−、−CH2OCO−、−CONH−又は−C6H4−、−CON(k1)−を表す。A1が−C6H4−を表す場合、ベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基等)等が挙げられる。
【0031】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、Tがカチオン重合性基を表す場合、カチオン重合性基は活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる重合性基を含有する官能基が挙げられる。代表例としては、エポキシ基、環状エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル化合物、ビニルオキソ基等が挙げられる。より具体的には、後述するカチオン重合性モノマー(A2)で例示するものが挙げられる。
【0032】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、B1,B2は、各々、TとD1,TとD2を連結する、単結合又は連結する基を表す。連結基として具体的には、
【0033】
【化3】
【0034】
2価の脂環式基(脂環式構造の炭化水素環としては、例えばシクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環、等)、2価のアリール環基(アリール環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、等)で示される基等の原子団の任意の組み合わせで構成されるものである。
【0035】
上記において、j1、j2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、j3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、j4、j5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には上記j3と同一の内容を表す)を表す。
【0036】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、E1及びE2は、互いに同じでも異なってもよく、各々2価の脂肪族基、2価の芳香族基〔各々の2価の有機残基の結合中に、−C(k2)(k3)−、−O−、−S−、−N(k4)−、−SO2−、−COO−、−OCO−、−CONHCl−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CON(k4)−、−SO2N(k4)−及び−Si(k5)(k6)−(k2、k3及びk4はそれぞれk1と同一の内容を表し、k5及びk6はそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基を表す)から選ばれた少なくとも1つの結合基を介在させてもよい〕またはこれら残基の組み合わせにより構成された有機残基を表す。
【0037】
一般式(MI)又は一般式(MII)中、D1は−CH2−又は−CO−を表す。D2は−O−又は−NH−を表す。
【0038】
一般式(MI)又は一般式(MII)における重合性基Tと繰り返し単位[ ]との連結部分{−B1−D1−}又は{−B2−D2−}の具体例を、重合性基Tがラジカル重合性基である一般式(Ia)[CH(x1)=C(x2)−A1−]で表される場合を例に、{T−B1−D1−}又は{T−B2−D2−}の形にて以下に示すが、該連結部分はこれらに限定されるものではない。また、下記具体例の連結部分に相当する部分は、重合性基Tがカチオン重合性基の場合にも用いることができる。
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
一般式(MI)又は(MII)中、R1は−OH、−OR5又は―N(R6)(R7)を表す(R5は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す)。
R2は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、−COR8又は−CONHR9を表す(R8及びR9はそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基を表す)。
【0042】
一般式(MI)又は(MII)中、E1及びE2は、互いに同じでも異なってもよく、各々、2価の脂肪族基又は2価の芳香族基を含有する2価の有機残基を表す。
2価の脂肪族基としては、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数3〜30のシクロアルカン環基、炭素数6〜30のシクロアルケン環基、2価の芳香族基としては、炭素数6〜14のアリール基、複素原子(複素原子として、酸素原子、イオウ原子、窒素原子)を少なくとも1つ含有する5員〜6員の環数の複素環基もしくは縮環構造を形成してもよい複素環基が挙げられる。
好ましくは、E1及びE2の少なくともいずれか一方が、2価の炭素数3〜30個の脂環式脂肪族基を含有する。より好ましくは、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。特に炭素数6〜25が好ましい。
【0043】
以下に脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。なお、下記構造例において、共役しない位置に二重結合を含有してもよい。
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、後述の式(A1−I)中のRで例示すると同一の内容のものが挙げられる。
【0047】
E1及びE2の具体的な例としては、各々以下の有機残基が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
一般式(MI)で示されるマクロモノマー(以下、マクロモノマー(M1)と称することもある)は、高分子学会編「高分子データハンドブック〔基礎編〕」(1986年刊)培風館等に例示される、ジオール類とジカルボン酸類、ジカルボン酸無水物又はジカルボン酸エステル類との重縮合反応によって合成された、重量平均分子量2×103〜2×104のポリエステルオリゴマーの片末端のヒドロキシル基にのみ、高分子反応により、重合性基を導入する方法で容易に製造する事ができる。
【0051】
ポリエステルの合成法は、従来公知の重縮合反応によって合成されるが、具体的には、滝山栄一郎「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社(1986年刊)、高分子学会編「重縮合と重付加」共立出版(1980年刊)、I.Goodman「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering Vol.12」p1. John Wiley & Sons(1985年刊)等に記載の方法に従って合成することができる。
【0052】
ポリエステルオリゴマーの片末端のヒドロキシル基のみに重合性基を導入する方法としては、ラジカル重合性基を導入する場合、従来公知の低分子化合物におけるアルコール類からエステル化する反応あるいはアルコール類からウレタン化する反応を用いる事で合成することができる。即ち、分子内に重合性二重結合基を含有するカルボン酸類、カルボン酸エステル類、カルボン酸ハライド類又はカルボン酸無水物類との反応でエステル化し、マクロモノマーを合成する方法あるいは、分子内に重合性二重結合基を含有するモノイソシアナート類との反応でウレタン化し、マクロモノマーを合成する方法によって達せられる。具体的には、日本化学会編「新実験化学講座14、有機化合物の合成と反応〔II〕」、第5章、丸善(株)、(1977年刊)、「同、有機化合物の合成と反応〔III〕」、第1652頁、丸善(株)、(1978年刊)等に詳細に記載された方法を用いて合成することができる。
【0053】
また、一般式(MII)で示されるマクロモノマー(以下、マクロモノマー(M2)と称することもある)は、上記した様にして合成したポリエステルオリゴマーの片末端のカルボキシル基のみに重合性基を導入する方法により合成することができる。その導入方法としては、ラジカル重合性基を導入する場合、従来公知の低分子化合物におけるカルボン酸類からエステル化する反応あるいはカルボン酸類から酸アミド化する反応を用いる事で合成することができる。即ち、分子内に重合性二重結合基を含有し且つカルボキシル基と化学反応する官能基(例えば、−OH、ハロゲン体(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、−NH2、−COOR31(R31は、メチル基、トリフロロメチル基、2,2,2−トリフロロエチル基等)、下記式(a)で示す基等)を含有する化合物とポリエステルオリゴマーを高分子反応する事で該マクロモノマーが合成される。
【0054】
【化10】
【0055】
また、マクロモノマー(M1)、マクロモノマー(M2)いずれの場合も、カチオン重合性基を片末端にのみ導入する方法としては、上記のラジカル重合性基を導入する場合に挙げた分子内に重合性二重結合基を含有する化合物中に、重合性二重結合に替えて予めカチオン重合性基を含有した化合物を用いて合成する方法が挙げられる。
【0056】
次に、重合性モノマー(A)について詳述する。
重合性モノマー(A)としては、ラジカル重合性モノマー(A1)とカチオン重合性モノマー(A2)が挙げられる。本発明では、重合性モノマー(A)としてマクロモノマー(M)と共重合可能なものが好ましい。
【0057】
ラジカル重合性モノマー(A1)としては、ラジカル種で重合反応を開始する重合性不飽和二重結合基を含有する化合物が挙げられ、モノマー、オリゴマーのいずれでもよい。ラジカル重合性モノマー(A1)として、具体的には、例えば下記一般式(A1−I)で表されるモノマーが挙げられる。
【0058】
【化11】
【0059】
一般式(A1−I)中、V1は前記一般式(MI)中のA1と同一の内容を表す。a1及びa2は同じでも異なってもよく、それぞれ前記一般式(MI)中のx1、x2と同一の内容を表す。
【0060】
Rは、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0061】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO2R11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO2R11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14)、−SO2(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0062】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0063】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
【0064】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0065】
上記式(A1−I)におけるRで表されるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0066】
上記式(A1−I)におけるRで表される複素環基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
上記ラジカル重合性モノマー(A1)としては、更に好ましくは、前記一般式(MI)又は(MII)において、E1及びE2の少なくともいずれか一方が含有すると好ましいとして記載した環状脂肪族基を置換基中に含有するモノマーが挙げられる。なかでも、下記一般式(A1−II)で表されるモノマーが好ましい。
【0068】
【化12】
【0069】
一般式(A1−II)中、a1、a2及びV1はそれぞれ前記一般式(A1−I)におけるa1、a2及びV1と同義である。
【0070】
R0は、炭素数5〜30個の環状構造を構成する炭化水素基であり、単環式、多環式、架橋環式、スピロ環式等の環状構造が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。好ましくは炭素数6〜25が好ましい。
【0071】
これら脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例としては、前記一般式(MI)又は(MII)においてE1及びE2の少なくともいずれか一方が含有すると好ましいとして記載した環状脂肪族基で例示の構造例(1)〜(51)が挙げられる。
【0072】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、前記式(A1−I)中のRで例示したと同一の内容のものが挙げられる。
【0073】
L1は、式(A1−II)における−V1−と−R0とを連結する基を表し、直接結合又は総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)を表す。好ましくは直接結合又は総原子数1〜12の連結基を表す。但し、R0が単環式脂肪族基の場合は、L1は直接結合ではなく、総原子数が1〜12の連結基であることが好ましく、更には総原子数1〜8の連結基であることが好ましい。
【0074】
L1における連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−複素原子結合(複素原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、複素原子−複素原子結合等から構成される原子団の任意の組み合わせで構成される。例えば、原子団としては、前記一般式(MI)のB1と同様のものが挙げられる。
【0075】
本発明のセルロースアシレート組成物には、カチオン重合性モノマーを併用するのが好ましい。
本発明に用いられるカチオン重合性モノマー(A2)としては、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性モノマーのうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0076】
カチオン重合性モノマーの具体例としては、エポキシ基含有の化合物(脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状エーテル又は環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和炭化水素化合物(ビニル炭化水素化合物)等を挙げることができる。
【0077】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性モノマー(A2)として、エポキシ基含有化合物及びビニルオキシ基含有化合物(以下「ビニルオキシ化合物」とも称する)が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性モノマーとして、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物の混合物を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが一層良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0078】
カチオン重合性モノマー(A2)として上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0079】
また、別種の脂肪族エポキシ樹脂として、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。
さらに、これらのエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなども用いることができる。さらに、信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.28,497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能性エポキシ化合物も用いることができる。
【0080】
また、カチオン重合性モノマー(A2)として上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価又は多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ又はポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシド化合物として、例えば、特開平11−242101号公報の段落番号〔0084〕〜〔0086〕記載の化合物、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0016〕〜〔0029〕記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0081】
環状エーテル化合物であるオキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
具体的には、例えば特開2000−239309号公報の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物、J.V.CRIVELLO etal、J.M.S.PUREAPPL.CHEM.、A30、p.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
【0082】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物を挙げることができる。
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等のスチレン化合物、ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等のビニル基置換脂環炭化水素化合物、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物(V1が−O−に相当の化合物)、2−メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of PolymerScience:Part A:Polymer Chemistry,Vol.32,2895(1994)に記載されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.33,2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal ofPolymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。
【0083】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0084】
本発明では、上記したカチオン重合性モノマー(A2)の1種又は2種以上を用いることができ、特に上述のように、ビニルエーテル類、エポキシ化合物やオキセタン化合物におけるオキシラン構造を有するものが光重合反応性や重合体の膜特性が良好になる点で好ましい。
1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有する多官能性化合物を30質量%以上の割合で含むカチオン重合性モノマーが好ましく用いられる。
【0085】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有する重合性基含有モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0086】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B1)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜2個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有がより好ましい。
カチオン重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B2)と称することもある)は、分子中にカチオン重合性基の1〜10個と光安定化基の少なくとも1個とを含む化合物が好ましく、光安定化基は複数個含有されてもよい。カチオン重合性基を2〜6個含有がより好ましい。
【0087】
光安定化性能を有するモノマー(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」pp235((株)シーエムシー、1990年刊)に記載の従来公知の化合物が挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダードアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、又はベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環、ピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0088】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0089】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、米国特許3493539号、同4528311号、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号、同8−188737号に記載の化合物が挙げられる。
【0090】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832号、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841号等記載の化合物が挙げられる。
【0091】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU1)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有する重合性モノマーが挙げられる。
(BU1−I):T−L2−U1
式(BU1−I)中、Tは前記一般式(MI)又は(MII)のTと同一の内容を表す。
L2はT−と−U1とを連結する基を表し、単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、前記の一般式(A1−II)のL1と同一の内容、又は、下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。L2は、水素原子を除いた原子数が1〜20個の範囲にあり、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることが好ましい。
【0092】
【化13】
【0093】
式(L2a)〜(L2d)中、d1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、d2及びd3は、同じでも異なってもよく、各々水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0094】
上記式(BU1−I)中、U1は1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、下記のベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、又はベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基又はベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。
【0095】
【化14】
【0096】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのベンゼン環の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが好ましくは1個存在する。
【0097】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(A1−I)のRに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜18のアルキル(例えば、炭素数1〜6、好ましくは1〜2のアルキル)、アリール(例えば、炭素数6〜20の、例えば、フェニル基)、ヘテロアリール(例えば、ピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(例えば、炭素数6〜20のアリールオキシ)、アルコキシ(例えば、炭素数1〜6、好ましくは1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、又はハロゲン(例えば、F又はCl、特にベンゾ環上の5位及び/又は6位上に、及び/又はヒドロキシ置換フェニルの5’位上にClを有するもの)であってよい。ベンゾ環の置換基としてはまた、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリル又はチエニル環を挙げることができる。アルキル及びアルコキシ置換基のいずれも1〜5個の(又は1〜2個の)介在する酸素、イオウ又は窒素原子を有してよい。
【0098】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接又は連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
(BH−I):T−L2−U2
式(BH−I)中、「T−L2−」部は、前記式(BU1−I)と同一の内容を表す。
U2は、下記式(U2−I)又は(U2−II)を表す。
【0099】
【化15】
【0100】
式(U2−I)及び(U2−II)中、d11及びd12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表すか、又はd11及びd12は一緒になってペンタメチレン基を表す。d13は、水素原子又はシアノ基を表す。
R21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、−C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、−OCOR23基、又は−OR23基を表す。
R22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(I)中のRの炭化水素基と同一の内容を表す。
Y1は、酸素原子又はイミノ基を表し、Y2は、酸素原子、メチン基又は「−L2−」に直結する基を表す。
【0101】
また、ベンゾフェノン系重合性モノマー及びベンゾトリアゾール系重合性モノマー以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0102】
本発明における、上記重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
また、本発明の光安定化基を含有する重合性モノマー(B)は、分子内に重合性基として、上記したようなラジカル重合性基及びカチオン重合性基の両方を含有していてもよい。
【0103】
以下に、上記の紫外線吸収性基とヒンダートアミン基を含有する重合性モノマーを例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0104】
【化16】
【0105】
【化17】
【0106】
本発明のセルロースアシレート溶液には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性モノマーを更に共存して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フィルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0107】
これらモノマーの具体例として、
(1)ポリオキソアルキレン基を含有するモノマー:特開平7−238115号公報、特開平8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0108】
(2)アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等が挙げられる。
【0109】
(3)ホスホニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報等が挙げられる。
【0110】
また、帯電防止性基を有するカチオン重合性モノマーとしては、紫外線吸収性基含有モノマーの場合と同様にラジカル重合性基に代えて該カチオン重合性基が結合してなるものが挙げられる。
【0111】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上の重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有することが好ましい。
多官能モノマー(C)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜10個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物であり、より好ましくは、2〜6個である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0112】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能又は多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0113】
脂肪族多価アルコール化合物としてのエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等と、不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換又はポリ置換の重合性モノマーを用いることができる。
【0114】
その他のエステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0115】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0116】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号等)エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号等)、更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0117】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは3〜5個である。該硬化剤の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、セルロースアシレートドープ組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0118】
カチオン重合性基を有する多官能性化合物は前記カチオン重合性モノマーと同一の内容のもの、特開平8−277320号記載のエポキシ化合物、特開2002−29162号記載のビニルオキシ基含有化合物等が挙げられる。
また、本発明の多官能性モノマー(C)としては、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号明細書中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕記載の化合物、特開2000−191737号明細書中の段落番号〔0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0119】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、更に、例えば特開平11−199647号明細書中の段落番号〔0030〕に記載の化合物等に記載のオキセタンモノアルコール化合物を含有することが好ましい。セルロースアシレートドープ組成物がオキセタンモノアルコール化合物を含有していることによって、耐水性、耐湿性に優れ且つ力学的特性に優れるセルロースアシレートフィルムを作製することができる。
本発明では、オキセタンモノアルコール化合物のうちの1種又は2種以上を用いることができる。モノオキセタンアルコール化合物の使用量は、カチオン重合開始剤の使用量に対して、1〜30質量%の範囲で用いることが好ましい。この範囲において、重合反応性を阻害しないで膜の強度をより良化することができる。
【0120】
本発明における重合性化合物(マクロモノマー(M)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C))及びその他の重合性化合物)の総添加量は、セルロースアシレート溶液(ドープ溶液)全量の固形分量に対して、0.1質量%〜55質量%が好ましい。より好ましくは、0.5質量%〜30質量%である。
【0121】
マクロモノマー(M)の総量は、セルロースアシレート溶液全量(固形分量)に対して0.05質量%〜45質量%が好ましく、より好ましくは、0.1質量%〜25質量%である。
重合性モノマー(A)の総量は、セルロースアシレート溶液全量(固形分量)に対して0.05質量%〜48質量%が好ましく、より好ましくは、0.5質量%〜30質量%である。
更にはラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との使用割合は任意であるが、(5/95)〜(95/5)質量比が好ましい。より好ましくは(10/90)〜(90/10)質量比であり、更に好ましくは(20/80)〜(80/20)質量比である。
この範囲にあっては、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度が好ましい範囲となり、得られる製膜フィルムの力学的特性にも優れ、点欠陥などの無い極めて均一な面状のフィルムが得られる。さらに、80μm以下の薄膜であっても膜の強度が良好なフィルムが得られ、好ましい。
【0122】
光安定化モノマー(B)は、セルロースアセレート溶液全量(固形分量)に対して0.5質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜20質量%である。
多官能モノマー(C)は、全重合性化合物(マクロモノマー(M)、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、及びその他の重合性化合物)の全量に対して1質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜30質量%である。
【0123】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光重合開始剤(L)について詳述する。
本発明の光重合開始剤(L)は、光照射により、ラジカル若しくは酸を発生する化合物である。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0124】
まず、光照射により、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等が挙げられる。
【0125】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林 等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特開昭63−298339号、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0126】
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号〔0039〕〜〔0048〕記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0127】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62ページ((株)技術情報協会刊、1991年)、特開平8−134404号明細書の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、同11−217518号明細書の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0128】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号明細書の段落番号〔0019〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0129】
上記メタロセン化合物としては、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0130】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0131】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号明細書の段落番号〔0022〕〜〔0027〕記載の化合物が挙げられる。
【0132】
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0133】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号明細書に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
【0134】
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、光ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0135】
次に、光重合開始剤(L)として用いることができる酸発生剤(L2)について詳述する。
酸発生剤(L2)としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
また、酸発生剤(L2)として、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物のこれらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号明細書の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0136】
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤(L2)としては、オニウム塩が挙げられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0137】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0138】
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0139】
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全重合性モノマーの全質量100質量部に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、ドープ組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0140】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
【0141】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物には、紫外線照射により重合反応を行なう場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
【0142】
また、近赤外線照射により重合反応を行なう場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。
併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている赤外吸収性の微粒子顔料が利用できる。
染料としては、市販の染料および文献(例えば、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、J.FABIAN、Chem.Rev.、92、pp1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0143】
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノン染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料(例えば、オキソノール系、イミニウム系、シアニン系、ピリリウム系、スクワリウム或いはクロコニウム系、アズレニウムウム系、等)、有機金属錯体などの近赤外線吸収染料が挙げられる。
近赤外線分光増感剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、その使用量は、セルロースアシレート組成物の全固形分に対し、0.01〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に1〜8重量%であることが好ましい。
【0144】
本発明では、耐傷性やフィルムの搬送性を良好に保持するためにセルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されないが、これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましい。
また、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
【0145】
これらの添加剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法は限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、いわゆる直前添加方法であり、その混合にはスクリュー式混練がオンラインで設置して用いられる。添加剤の混合は、混合物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶媒として用いることも好ましい態様である。
【0146】
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは0.001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり、更に好ましくは0.002〜1μmであり、特に好ましくは0.005〜0.5μmである。
セルロースアシレートに対する微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましい。
【0147】
本発明のセルロースアシレート組成物には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができる。その添加する時期はドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、前記の公技番号 2001−1745の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0148】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物(メチレンクロライド等)、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等)が主溶媒として挙げられる。その他の溶媒の例としては、アセトン、炭素原子数4〜12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で。メチレンクロライド、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒またはこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒として、例えば、特開2002−146045号明細書の段落番号[0016]から[0021]等に記載の溶媒系の例が挙げられる。これらの具体的な例は、前記の公開技報2001−1745号の12頁〜16頁に記載の内容が挙げられる。
【0149】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0150】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平4−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については前記の公技番号 2001−1745の22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に前記の公技番号 2001−1745の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0151】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、40℃での粘度が1〜200Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paである。
【0152】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
【0153】
以下、バンド法を例として製膜の工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、前記の公技番号 2001−1745の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0154】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0155】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
【0156】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0157】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の公開技報2001−1745の27〜29頁に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0158】
本発明の光重合反応は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行なえばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、紫外線光域或いは近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0159】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行なうことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1〜100mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0160】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。また、光学フィルム用の場合には20〜120μm、更には30〜80μmも好ましい態様である。
【0161】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行なうことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0162】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行なうことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
【0163】
フィルム上に機能層を付与する場合にフィルムと機能層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、前記の公技番号 2001−1745の32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が前記の公技番号 2001−1745の32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0164】
本発明で作製されたセルロースアシレートフィルムの用途について簡単に述べる。
本発明のセルロースアシレートフィルムからなる光学フィルムは、特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0165】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、画像表示装置、特に液晶表示装置の光学補償シートとして用いると効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0166】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は前記の公技番号 2001−1745の45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0167】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体としても有用である。本発明のセルロースアシレートフィルムは、印刷製版用、医療用、一般写真用等のいずれのハロゲン化銀写真感光材料の支持体として用いることができる。また、その膜厚は30〜250μmであることがより好ましい。このようなハロゲン化銀写真感光材料についてはT. H. James et. al. The Theory of the Photographic Process 第4版 (Macmillan Publishing Co., Inc. 1977)等に記載されている。
【0168】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0169】
<マクロモノマー(M1)の合成例>
マクロモノマー(M1)の合成例1:マクロモノマー(M1−1)
1,6−ヘキサンジオール26.4g、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン−8,9−ジカルボン酸38g、ジブチルスズオキサイド0.01g及びメシチレン150gの混合物をDean−Star環流装置を付したフラスコ中で攪拌しながら環流下に4時間加熱した。トルエン溶媒とともに共沸で留去された水の量は約3.5gであった。室温に冷却後、メタノール800ml中に再沈し、液状物をデカント後補集し、減圧下に乾燥した。
上記反応生成物を、ジメチルホルムアミドに溶解し、0.1Nソジウムメチラートメタノール溶液で電位差滴定する方法によりヒドロキシル基及びカルボキシル基を測定したところ、各々500μmol/grとなった。
上記固形物50g、2−[2−カルボキシエチルカルボニルオキシ]エチルメタクリレート10.6g、t−ブチルハイドロキノン1.0g及び塩化メチレン200gの混合物を、室温で攪拌下に溶解した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(D.C.C)10.2g、4−(N,N−ジメチル)アミノピリジン0.2g及び塩化メチレン50gの混合溶液を、攪拌下に上記混合物に1時間で滴定した。更にそのまま4時間攪拌した。
D.C.C溶液を滴下するにつれ、不溶の結晶が析出した。反応混合物中に3%ギ酸水溶液3gを加えて、室温で2時間攪拌した。反応混合物をセライトを用いた吸引濾過で濾別し、濾液をメタノール500mlに再沈し、固形物を濾集した。これをテトラヒドロフラン100mlに溶解した後、メタノール500リットル中に再度再沈し、固形物を補集後、減圧乾燥した。得られた生成物の収量は42gで、Mwは5×103であった。得られたマクロモノマーを、上記と同様の電位差滴定方法でヒドロキシル基量を測定したところ、5μmol/grで、反応率は99%であった。
【0170】
【化18】
【0171】
マクロモノマー(M1)の合成例2:マクロモノマー(M1−2)
1,4−シクロヘキサンメタンジオール72.1g、無水コハク酸50g、p−トルエンスルホン酸1水和物0.7g及びキシレン200gの混合物を、上記マクロモノマー(M1)合成例1と同様にして反応した。
次に、アクリル酸8.6g及びトルエン75gの混合溶液とt−ブチルハイドロキノン0.5gを上記反応物に加えた後、更に攪拌しながら環流下に4時間反応した。室温に冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、析出した固形物を濾取し、減圧乾燥した。収量は67gで、得られたマクロモノマー(M1−2)の重量平均分子量は8×103であった。
【0172】
【化19】
【0173】
マクロモノマー(M1)の合成例3:マクロモノマー(M1−3)
5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール77.1g、グルタル酸無水物54.2g、ドデセニルコハク酸無水物6.7g及びジズチルスズオキサイド0.01gの混合物を温度120℃に加熱した。窒素気流下に減圧度約30mmHgで2時間攪拌し、更に温度を150℃に加熱して減圧度約5mmHg下で2時間攪拌した。放冷後、テトラヒドロフラン300gを投入して溶解した後、メタノール1リットル中に再沈した。沈殿物を濾集し、減圧乾燥した。
上記固形物50g、2−メタクロイルオキシエチルイソシアナート6.2g、t−ブチルハイドロキノン0.01g、テトラブトキシチタネート0.01g及びテトラヒドロフラン120gの混合物を温度60℃で6時間攪拌した。
放冷後、メタノール600ml中に再沈し、沈殿物を補集・減圧乾燥して、収量41gでMw8×103のマクロモノマー(M1−3)を得た。
【0174】
【化20】
【0175】
マクロモノマー(M1)の合成例4:マクロモノマー(M1−4)
下記構造のジオール化合物64.5g、無水グルタル酸28.6g、p−トルエンスルホン酸0.4g及びメシチレン220gの混合物を、上記マクロモノマー(M1)の合成例1と同様にして反応した。
室温に冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、沈殿物を濾集し減圧乾燥した。上記固形物50gを用いて、上記マクロモノマー(M1)の合成例2に記載のD.C.Cを用いる方法で、下記構造のエポキシ基含有のカルボン酸を用いて反応し、マクロモノマー(M1−4)40gを得た。Mwは7×103であった。
【0176】
【化21】
【0177】
マクロモノマー(M1)の合成例5:マクロモノマー(M1−5)
マクロモノマー(M1−1)の合成例と同様にして合成した下記構造のマクロモノマー(M1−6)50g、メタノール3g、t−ブチルハイドロキノン0.5g及び塩化メチレン150gの混合溶液に、D.C.C.6g、4−N,N−ジメチルアミノピリジン0.1g及び塩化メチレン10gの混合溶液を温度20〜25℃で攪拌下に30分間で滴下し、そのまま更に4時間攪拌した。この反応混合物にギ酸5gを加えて1時間攪拌した後、析出した不溶物を濾別した。濾液をメタノール1リットル中に再沈し、溶媒をデカンテーションで取り除き沈殿物を補集し減圧乾燥した。得られた粘稠物は、収量28gでMwは8.0×103であった。
【0178】
【化22】
【0179】
マクロモノマー(M1)の合成例7〜11:マクロモノマー(M1−7)〜(M1−11)
下記表−Aの各マクロモノマーを前記の合成例と同様にして合成した。各マクロモノマー(M1−7)〜(M1−11)のMwは6×103〜8×103の範囲であった。
【0180】
【表1】
【0181】
<マクロモノマー(M2)の合成例>
マクロモノマー(M2)の合成例1:マクロモノマー(M2−1)
B;sphenol A ethoxylate(Aldvich社製)80.8g、無水コハク酸1.0g、p−トルエンスルホン酸1水和物1.6g及びトルエン200gの混合物を、Dean−Star環流装置を付したフラスコ中で攪拌しながら環流下に4時間加熱した。キシレン溶媒とともに共沸で留去された水の量は約3.4gであった。
冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、沈降物を補集・減圧乾燥して、収量88gの生成物を得た。この反応物をトルエンに溶解し、0.1N水酸化カリウムとメタノール溶液で中和滴定する方法によりカルボキシル基含量を測定し、500μmol/grとなった。
次に上記反応物50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.5g及びトルエン150gの混合溶液とt−ブチルハイドロキノン0.3gを上記反応物に加えた後、D.C.C.10.3g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.1g及び塩化メチレン30gの混合溶液を攪拌下に上記混合物に1時間で滴下した。更に、そのまま、4時間攪拌した。
反応混合物を200メッシュのナイロン布を通して、不溶物を濾別した。濾液をメタノール800ml中に再沈し、粉末を濾集した。これを塩化メチレン100gに溶解し、再度メタノール500ml中に再沈した。粉末を濾集し、減圧下に乾燥し、重量平均分子量(以下Mw)6.3×103のマクロモノマーを35g得た。このマクロモノマーを前記の中和滴定法により滴定して残存するカルボキシル基含量を測定した所、8μmol/grとなり、反応率は99.8%であった。
【0182】
【化23】
【0183】
マクロモノマー(M2)の合成例2:マクロモノマー(M2−2)
トリシクロ〔5.2.1.0.2,6〕デカン−3,4−ジオール67.2g、ピメリン酸40.1g、パラートルエンスルホン酸0.7g及びメシチレン250gの混合物を、前記マクロモノマー(M2)の合成例1と同様にして反応させた。室温に冷却後、メタノール1リットル中に再沈し、沈降物を補集・減圧乾燥して収量91gの生成物を得た。
上記固形物50g、グリシジメタクリレート5.4g、t−ブチルハイドロキノン1.0g、N,N’−ジメチルドデシルアミン1.0g及びキシレン200gの混合物を、温度140℃で5時間攪拌した。
冷却後、反応溶液をメタノール800ml中に再沈し、液状物をデカント後補集し、減圧下に乾燥し、収量42gでMw5×103の生成物を得た。
【0184】
【化24】
【0185】
マクロモノマー(M2)の合成例3:マクロモノマー(M2−3)
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸43.0g、1,4−シクロヘキサンメタンジオール36.1g及びジブチルスズオキサイド0.005gの混合物を窒素雰囲気に温度140℃に加熱した。減圧度20mmHgで1時間攪拌後、温度160℃で減圧度5mmHgで2時間攪拌した。
放冷後、トルエン180gを加えて溶解した後、メタノール1リットル中に再沈し、沈降物を補集・減圧乾燥して、収量68gを得た。
上記反応生成物50g、下記化合物(a)4.5gを用いて、前記のマクロモノマー(M2)の合成例1と同様のD.C.Cを用いる方法で、マクロモノマーを合成した。収量43gで、Mw8×103であった。
【0186】
【化25】
【0187】
マクロモノマー(M2)の合成例4:マクロモノマー(M2−4)
1,6−ヘキサンジオール120g、無水グルタル酸114.1g、p−トルエンスルホン酸1水和物3.0g及びトルエン250gの混合物を、上記マクロモノマー(M2)の合成例1と同様の条件で反応した。室温に冷却後n−ヘキサン2リットル中に再沈し液状物をデカント後補集し減圧下に乾燥した。
上記のポリエステルオリゴマー50g、エピブロモヒドリン7.0g、ヨウ化カリウム0.1g及びメチルエチルケトン105gの混合物を、温度80℃で8時間攪拌した後、メチルエチルケトン30gを追い出し後、1晩室温で放置した。不溶物をセライトを用いて吸引濾過で濾別して得られた濾液をn−ヘキサン400ml中に再沈した。静置して沈降した液状物をデカントで分収して、テトラヒドロフラン80gに溶解し、ジエチルエーテル400ml中に再沈した。
固形物を濾集し減圧下に乾燥し、重量平均分子量1.2×104のマクロモノマー(M2−4)59gを得た。
【0188】
【化26】
【0189】
マクロモノマー(M2)の合成例5:マクロモノマー(M2−5)
前記マクロモノマー(M2−3)50g及びトリエチルアミン5gをテトラヒドロフラン100gに溶解し、温度5度以下に冷却した。これに、アセチルクロライド4.0gを温度が5度を越えない様にして滴下しそのまま4時間攪拌した。次に、この反応混合物をメタノール800ml中に再沈し、沈降物を補集し、テトラヒドロフラン80mlに溶解してメタノール500mlに再度再沈した。沈降物を補集・減圧乾燥して、収量33gでMw8×103の生成物を得た。
【0190】
【化27】
【0191】
マクロモノマー(M2)の合成例6〜11:マクロモノマー(M2−6)〜(M2−11)
マクロモノマー(M2)の合成例と同様にして、下記表−Bの各マクロモノマー(M2−6)〜(M2−11)を合成した。各マクロモノマーのMwは6×103〜1×104の範囲であった。
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
実施例1、実施例2及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
{実施例1}
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)にて1時間、35℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0195】
【0196】
【化28】
【0197】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧、1.5、1.2であり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0198】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とした。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kW高圧水銀灯を用いて、ドープ表面の全光照射量が400mJ/cm2となる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルロースアセテートを作製した。
【0199】
{実施例2}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)のマクロモノマー(M2−4)及びメチルメタクリレート(モノマー(A−1))の代わりに、マクロモノマー(M1−1)及び下記構造のモノマー(A−2)を同量用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0200】
【化29】
【0201】
{比較例1}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、マクロモノマー(M2−4)を除いた他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚60μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0202】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.7%、偏光度は99.97%であった。
【0203】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作成した。
【0204】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の結果を表−Cに記載した。
【0205】
【表4】
【0206】
表−C記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行なった。
1)膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
○:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0207】
2)ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値。B:経時後の値。
【0208】
3)引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値。 B:経時後の値。
【0209】
4)異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0210】
5)耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
△:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0211】
6)偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
【0212】
P=√(Yp−Yc)/(Yp+Yc)
【0213】
7)耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上6%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0214】
本発明の実施例1及び実施例2のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
更に、重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基を含有化合物を用いた実施例2の試料は、ヘイズ値がより小さく良化し、且つ膜の引き裂き強度が向上していることが見い出された。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、ヘイズ値が強制経時でやや低下し、引き裂き強度及び耐候性において低い値を示した。又、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0215】
実施例3〜実施例7
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、マクロモノマー(M2−4)、モノマー(A−1)及び光重合開始剤(L−1)の代わりに、下表−Dの各化合物を同量づつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚50μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0216】
【表5】
【0217】
得られた実施例3〜7の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行なった。各実施例のものは、実施例2と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0218】
実施例8
(セルローストリアセテート溶液の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の組成物の代わりに、下記内容の組成物(D−8)を用いた他は、実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液を得た。
【0219】
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.9
3、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%) 20質量部
ジクロロメタン 62質量部
アセトン 5質量部
メタノール 6質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 0.7質量部
シリカ微粒子(粒径20nm) 0.1質量部
マクロモノマー(M1−7) 0.4質量部
重合性モノマー:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート0.30質量部
下記光安定化モノマー(1) 0.30質量部
下記光安定化モノマー(2) 0.25質量部
下記光重合開始剤(L−7) 0.15質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン 0.008質量部
【0220】
【化30】
【0221】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で10分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』)で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、『FH 025』)にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0222】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0223】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Eに記載した。
【0224】
【表6】
【0225】
以上の結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。又、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0226】
実施例9〜12
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)のマクロモノマー(M1−7)光安定化モノマー(1)及び(2)の代わりに下記表−F記載の各光安定化モノマーを用いた他は、実施例8と同様にして、セルロースアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0227】
【表7】
【0228】
実施例13〜19
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)のマクロモノマー(M1−7)及び重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)の代わりに、下記表−Gの各マクロモノマー(M)0.3質量部及び各重合性モノマー0.6質量部を用いた他は、実施例8と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0229】
【表8】
【0230】
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0231】
実施例17〜21
実施例8のセルローストリアセテート溶液(D−8)において、重合性モノマー、光重合開始剤及び光安定化モノマーの代わりに下記表−H記載の各化合物を用いた他は、実施例8と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例8と同等の良好な性能であった。
【0232】
【表9】
【0233】
【表10】
【0234】
実施例22
実施例8のセルローストリアセテート溶液(D−8)において、下記構造の近赤外線分光増感剤0.05質量部を更に加えた組成物を用いて、実施例8と同様にして膜厚70μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。但し、光照射は、2kWハロゲンランプを用いてドープ表面の全光照射量が450mJ/cm2となる条件で行った。
次に、実施例1と同様にして偏光板を作製し、その性能を評価した結果、実施例8と同等の性能を示した。
【0235】
【化31】
【0236】
実施例23
特開平11−316378号の(実施例1)において、その第1透明支持体を本発明の実施例1〜22で得られるセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号の(実施例1)を実施して試料1〜22を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0237】
実施例24
特開平7−333433号の実施例1の富士写真フィルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例13〜21のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、特開平7−333433号の実施例1と全く同様にした光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0238】
実施例25
本発明のフィルムは更に多種の光学用途に利用される。本発明の代表として実施例2,8及び実施例17の各フィルムを、例えば特開平10−48420号実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0239】
実施例26
実施例8及び19の本発明の各試料において、そのフィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にしてそのフィルムである本発明の試料を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0240】
【発明の効果】
本発明のセルロースアセテートフィルムは、引き裂き強度、耐折強度及び光学特性に優れ、良好な長期保存安定性を有する。
上記特性に優れた本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学フィルム、偏光板、光学補償フィルムなどに好適に用いられ、これらのフィルムは液晶表示装置などに適用することができる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムはハロゲン化銀写真感光材料の支持体にも好適に用いられる。
Claims (7)
- 溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、
(i)セルロースアシレート、
(ii)重合体主鎖の片末端に重合性基を有し、かつ重量平均分子量が2×104以下の一官能性ポリエステルマクロモノマー(M)、
(iii)重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)、
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。 - 一官能性ポリエステルモノマー(M)が有する上記重合性基が、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 上記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を含有する重合性モノマー(B)の少なくとも一種を更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 上記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基含有の多官能モノマー(C)の少なくとも一種を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた画像表示装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載され、かつその膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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Cited By (2)
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WO2009148142A1 (ja) * | 2008-06-06 | 2009-12-10 | 旭硝子株式会社 | 液晶性化合物、重合性液晶性組成物、光学異方性材料、光学素子および光情報記録再生装置 |
JP2014123047A (ja) * | 2012-12-21 | 2014-07-03 | Dainippon Printing Co Ltd | 位相差フィルム |
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2002
- 2002-12-11 JP JP2002359522A patent/JP2004143392A/ja active Pending
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WO2009148142A1 (ja) * | 2008-06-06 | 2009-12-10 | 旭硝子株式会社 | 液晶性化合物、重合性液晶性組成物、光学異方性材料、光学素子および光情報記録再生装置 |
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