JP2004143120A - 血圧降下作用に有効な保健食品及び血圧降下剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の血圧降下作用に有効な保健食品は、カボチャエキスを有効成分とすること、及びカボチャエキスにタマネギエキスを添加したことからなる。又、本発明の血圧降下剤は、カボチャエキスを有効成分とすること、及びカボチャエキスにタマネギエキスを添加したことからなる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血圧降下作用に有効な保健食品及び血圧降下剤を提供することに関する。
【0002】
【従来の技術】
高血圧は日本全国で3300万人の患者がいると推定される最も多い病気である。放置すれば心血管障害をはじめとする種々の重篤な生活習慣病の原因となり、死に至る恐ろしい病気である。1993年のWHO/国際高血圧学会による成人高血圧の分類では、180/105mmHg(収縮期血圧/拡張期血圧)以上を中等度・重症高血圧、140/90mmHg以下を正常、その中間の領域を軽症高血圧としている。
【0003】
高血圧の治療には食事や運動など日常生活の管理が最も基本であるが、現在の社会生活では理想的に管理することは容易ではない。医学的に薬物療法を開始する目安は、生活習慣の改善の有無に関わりなく140/90mmHg以上の場合とされている(例えば、非特許文献1参照)。しかも、薬物療法をはじめとする医学的治療を受けている患者数は700万人から800万人と推定されており(旧厚生省による国民生活基礎調査)、完全に高血圧症と診断される人でも30%位は医学的な治療を受けていないといわれる。また、薬物療法には副作用があり、血圧降下作用も強力で時に血圧を下げすぎる危険性もある。従って、薬物を使用する場合は経験ある医師の管理下で行うのが原則である。
【0004】
このような背景から軽度の高血圧を改善する機能を持った食品を日常的に摂取することによって血圧の管理ができるならばその社会的な意義は大きなものがある。医療費の増加に苦しむわが国の実情からも重症になる前に保健食品の摂取で予防できれば国家財政に寄与するところ大である。このような保健食品は既にいくつかあり、例えば杜仲葉配糖体(ゲニポシド酸)、ラクトトリペプチド、かつお節オリゴペプチド、バリルチロシンを含むサーディンペプチド、ガゼインドデカペプチドなどが、厚生労働省の特定保健用食品として「血圧が高めの方の食品」という表示が許可されている。なかでもラクトトリペプチドとサーディンペプチドは広く消費されている。又、マイタケに血圧降下作用があることを記載した文献もある(例えば特許文献1参照)。食品であるからには種類がいろいろとあり好みに応じて消費者が選択できるよう新しいタイプの保健食品の開発は意味のあることである。また、現在の特定保健用食品よりも効果的且つ実用的なものが開発されるならば、さらに価値のある発見となる。しかし、保健食品としてだけでなく薬剤としても使用することが出来ればさらに価値のあるものとなる。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−336914号公報
【非特許文献1】
水島裕編、今日の治療薬2002、南光堂、P561
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、食材として広く利用されている食品のなかから軽度高血圧を改善させる、より効果的な食品及び安全で副作用のない血圧降下剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
われわれは、食材として広く利用されている食品の中から軽度高血圧を改善させる、より効果的な食品を探索した結果、カボチャエキスに血圧降下作用があることを発見した。このような食品は毎日一定量を摂取することが重要であるから、その量があまりに多いと実用的ではない。我々の発見でさらに重要な点は、カボチャエキスにタマネギエキスを添加すると単に両者を加えた以上の血圧降下作用(相乗効果)が得られたことである。しかも、この効果は単独よりもより持続した。実用上のメリットとしてカボチャエキスの量を減らすことができ、摂取しやすい加工食品が可能になったことである。
【0008】
タマネギエキスの血圧降下作用は既に多く報告されている(宮尾興平、食の科学、No.38, Oct.1977, Block E., Angew. Chem.Int.Engl. 1992,31, 1135−1178)。タマネギの黄色い皮を煎じて飲むと血圧によいとされており、現在でも多くの人々が日常的に飲用している。タマネギエキスにはケルセチンの他含硫有機化合物が多く含まれこれらの総合作用で高血圧に効果があると考えられている。今回我々はタマネギの従来から報告されている血圧降下作用をカボチャエキスの作用に加え、in vitroの試験ならびにラットでの動物試験を実施しその相乗作用を証明することが出来た。In vitro試験としては、アンギオテンシン変換酵素の活性を阻害する作用を指標として血圧降下作用を試験した。
【0009】
この試験の意味について以下説明する。
高血圧症のメカニズムとしてレニン・アンギオテンシン系が定説とされている。腎臓から分泌される酵素レニンが肝臓にあるタンパク質アンギオテンシノーゲンに作用してアンギオテンシンIというペプチドが生成され、このアンギオテンシンIはアンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシンIIとなる。このアンギオテンシンIIは血管を収縮させて血圧を上昇させる作用がある。ACEの活性を阻害すれば血圧の上昇が押さえられるためACE阻害薬という1群の高血圧治療剤が開発され臨床的に広く使用されている(水島裕編、今日の治療薬2002、南光堂、P573)。
【0010】
カボチャエキスの血圧降下作用を試験するために実施例3,4に記述した試験を行い、カボチャエキスの血圧降下作用を発見するとともにタマネギエキスを同時に使用すると相乗的に効果が発揮でき日常的に摂取できる実用的な量(1日3〜10g)で血圧降下作用が期待できることを見出した。さらにラットを用いたin vivo試験でこのことを確認した。
【0011】
軽度な高血圧を有する人が日常生活の中で保健食品を摂取することで症状の改善あるいは悪化を防止することができれば、保健上の意義は大きなものがある。そのための食品としての条件は、味や量において摂取しやすいこと、安全に摂取できることが必要である。我々は日常広く食されている食材の中からこのような保健食品をつくることができないかと考え、いろいろな食材を試験したところカボチャにその可能性があることを発見した。しかもタマネギエキスを併用することによってその効果をより効率よく引き出せることも発見した。カボチャにしろタマネギにしろ人類が数千年も前から食材として摂取してきたものである。この豊富な食経験から安全性は十分推測できるし、原料としても安価に入手できるものである。
【0012】
さらに、前述のように以前より長年食されていて安全性が経験上証明されていることから、カボチャエキスの粉末、又カボチャエキスの粉末にタマネギエキスの粉末を添加し、必要に応じて製剤学的に受容可能な添加物(例えば、賦形剤、界面活性剤等)を加えることにより安全で、副作用のない薬剤を作製することも出来る。
このように今回の我々の発見は産業上極めて大きな意義を有するものと考えられるものである。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を記述する。
実施例1
カボチャエキスの作製方法
(前処理)
まずカボチャ(品種えびす)78kgをジェットウオッシャー(有光工業(株)SKY−130II)で表面の土などを洗い流し、次に手作業にて皮むき、うろ種取りを行い果肉を得た。これをフェザーミル(ホソカワミクロン(株)FM−65042)で数ミリ角に粉砕し、粉砕物56kgを得た。
(搾汁液の調製)
二重釜に等量の沸騰水を用意し、そこへこの粉砕物を投入して90℃で10分間保持した。これを袋状の濾布に取り、油圧プレス〔(有)駒形機械製作所 KS−3〕を用いて圧搾し、搾汁液90kgを得た。この液の可溶性固形分含量は5.4%であった。
(濃縮液の調整)
粘度低下のため、この搾汁液に0.01重量%の酵素(三共(株) スクラーゼN)を添加し、45℃で1時間放置した後、90℃まで加熱して酵素を完全に失活させた。この液を濃縮釜(八洲化工機(株)AS型)を用い、加熱温度120℃、160mmHgの条件下で減圧濃縮し濃縮液13kgを得た。この液の可溶性固形分含量は36%であった。
(粉末の調整)
食品用デキストリン〔(株)ニッシ NSD500〕14kgを28kgの湯に溶かし、95℃で20分加熱した。そこへ得られた濃縮液13kgを添加し、均一になるよう70℃で攪拌した。送風温度150℃、排風温度70℃条件下にてスプレードライヤー(大川原化工機(株)L−12型)で粉末化し、30メッシュで篩過してカボチャのエキス末17.5kgを得た。
【0014】
実施例2
タマネギエキスの作製方法
北海道産タマネギ10kgを水洗機で2回水洗し直ちに釜に入れ100℃で加熱煮沸した。得られた煮沸済みタマネギをフェザーミルで破砕し搾汁機で搾汁し、搾汁液9.5kgを得た。遠心薄膜式減圧濃縮機を用いて、加熱温度92℃、蒸発温度42℃および圧力15mmHgで減圧濃縮を行い、濃縮エキス0.9kgを得た。減圧濃縮の際留出してくる成分を活性炭層に通して吸着させた。吸着物をエタノールで溶出させ得られた溶液からエタノールを蒸発により除去し、残存する成分1.5gを得た。これを先に得た濃縮エキスに均一に加えタマネギエキス0.9kgを得た。
【0015】
実施例3
カボチャエキスとタマネギエキスのACE阻害活性及び相互作用の検討結果
[Cushman&Cheungの方法を一部改良した以下の方法に準じて測定した。
生化学実験法38 食品中の生体機能調節物質研究法 川岸瞬朗 編著
学会出版センター (1996)]
[検体]
1)カボチャエキス (日本新薬(株)千歳食品工場製)
2)タマネギエキス (日本新薬(株)千歳食品工場製)
3)市販食品A (ラクトトリペプチドを含む特定保健用食品)
4)市販食品B (サーディンペプチドを含む特定保健用食品)
[方法]
1.試薬
(1)緩衝液:450mlの50mMNa2B4O7と550mlの200mMH3BO3を混合しpH8.3に合わせる。
(2)基質溶液:7.6mMHip−His−Leuおよび608mMNaClをこの緩衝溶液にとかす。
(3)ACE溶液:上記緩衝液にACEを溶かす。(60mU/mlの活性)
2.測定方法
(1)試験管に30mlの試料溶液、250mlの基質溶液を入れ、37℃の恒温水槽に5分間保温する。
(2)100mlのACE溶液(6mU)を添加し直ちに攪拌した後、37℃にて30分間反応させる。
(3)IN塩酸250mlを添加し攪拌して反応を停止させた後、1.5mlの酢酸エチルを添加、十分に攪拌し遊離した馬尿酸を抽出する。
(4)3000rpm10分の遠心後上層の酢酸エチル層を0.5ml回収し試験管に入れる。
(5)デシケータ中で酢酸エチルを吸引除去し、完全に除かれたのを確認した後蒸留水4mlを加え十分に攪拌して馬尿酸を溶解し228nmの吸光度を測定する。
(6)試料溶液を添加したときの吸光度をEs、試料溶液の代わりに蒸留水を加えたときの吸光度をEc、あらかじめ1N塩酸を加えて反応させたときの吸光度をEBとすると、
と表すことができる。
3.阻害活性算出
阻害率50%を示すときの反応液中の試料濃度をIC50値とする。なおいずれの試料も糖度2.0°Bxに統一して測定に供した。
[結果]
[考察]
1)カボチャエキス、タマネギエキスの単体で、いずれもかなり高いACE阻害活性が認められた。
2)特定保健用食品として知られる主力品(市販食品Aおよび市販食品B)の活性は前記結果の通りであるが、カボチャエキス、タマネギエキスの各単体よりも低い値を示した。
3)カボチャエキス+タマネギエキスの場合は相乗効果が顕著に認められ、ACE阻害活性は2倍に増加する傾向を示した。
4)市販食品A+タマネギエキス、市販食品B+タマネギエキスの場合は、相乗効果は認められなかった(相加作用)。
5)カボチャエキスの1日目安摂取量は、市販食品A、Bとの比較から考察する限りエキス固形分30%のパウダーとして3〜10g程度と考えられる。
【0016】
ラット血圧に対するカボチャエキスおよびタマネギエキスの効果:
ラット血圧に対するカボチャエキス、タマネギエキスのそれぞれのエキスあるいは粉末を連続投与した時の血圧に与える影響について実験した。
(実験材料および実験方法)
カボチャエキスは1.5g/ラット/5ml水懸濁液を、またカボチャエキス粉末+タマネギエキス粉末(0.3g/ラット)は5ml水懸濁液中に両者が含有されるものとした。投与はゾンデを用いて一日一回7日間経口投与した。
ラットの血圧は尾動脈血圧をSoftron非観血式自動血圧測定装置を用いて4回測定した。
すなわち初回、投与3回目(測定2回目)、投与5回目(測定3回目)、投与7回目(測定4回目)である。血圧は初回を除き経口投与1時間後に測定した。
[結果]
この結果を図1〜図4に示す。
この図1〜図4に示されているようにカボチャエキスの投与は2回目測定では有意に血圧が低下していた。カボチャエキス+タマネギエキスの投与では2回目測定は有意な低下ではなかったが3,4回目測定では有意に血圧を低下させていた。最低血圧もカボチャエキス+タマネギエキスでは低下傾向を示していた。
対照群(カボチャエキス、タマネギエキスを投与しない群)は2回目測定より安定した血圧の変動を示した。これに対してカボチャエキス群(−19.0mmHG)は2回目測定すなわち3回投与後で、有意にその血圧を低下させていた。しかし、その後はやや上昇し対照群とほぼ同じ値となっていた。カボチャエキス粉末、タマネギエキス粉末を加えたサンプルでは投与回数の増加とともに血圧が低下していた。したがって、今回の実験からカボチャエキス粉末のみでは血圧の一過性の低下を引き起こすことができるのみであるが、これにタマネギエキス粉末を加えることにより更なる血圧の低下が認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】各群の血圧測定値を示す図である。
【図2】カボチャエキスおよびタマネギエキス添加による最高血圧の血圧低下作用(投与前値との差)を示す図である。
【図3】カボチャエキスおよびタマネギエキス添加による最低血圧の血圧低下作用(投与前値との差)を示す図である。
【図4】カボチャエキスおよびタマネギエキス添加による最高血圧の推移を示す図である。
【図5】カボチャエキスおよびタマネギエキス添加による最低血圧の推移を示す図である。
Claims (4)
- カボチャエキスを有効成分とする血圧降下作用に有効な保健食品。
- カボチャエキスにタマネギエキスを添加したことからなる血圧降下作用に有効な保健食品。
- カボチャエキスを有効成分とする血圧降下剤。
- カボチャエキスにタマネギエキスを添加したことからなる血圧降下剤。
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